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特表2022-550526高分子電解質膜、これを含む膜-電極アセンブリー、及びその耐久性測定方法
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  • 特表-高分子電解質膜、これを含む膜-電極アセンブリー、及びその耐久性測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】高分子電解質膜、これを含む膜-電極アセンブリー、及びその耐久性測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1067 20160101AFI20221125BHJP
   H01M 8/1058 20160101ALI20221125BHJP
   H01M 8/1053 20160101ALI20221125BHJP
   H01M 8/1018 20160101ALI20221125BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221125BHJP
【FI】
H01M8/1067
H01M8/1058
H01M8/1053
H01M8/1018
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519060
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2020018954
(87)【国際公開番号】W WO2021133044
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0175274
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】イ ウンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンファ
(72)【発明者】
【氏名】イ ヘソン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA05
5H126BB06
5H126JJ00
5H126JJ03
5H126JJ06
5H126JJ08
5H126JJ09
(57)【要約】
イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性を有することにより、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライサイクルが30,000回以上である程度に高い耐久性を有する膜-電極アセンブリーの製造を担保できる高分子電解質膜、これを含む膜-電極アセンブリー、及びその耐久性測定方法が開示される。本発明の高分子電解質膜は、多数の孔隙を有する多孔性支持体、及び前記孔隙を埋めるイオノマーを含む複合層を含み、150N/mm以上のMD引裂き強度、150N/mm以上のTD引裂き強度、8%以下の突刺し初期変形率、及び10%以下の突刺し最終変形率を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の孔隙を有する多孔性支持体及び前記孔隙を埋めるイオノマー(ionomer)を含む複合層(composite layer)を含み、
150N/mm以上のMD引裂き強度(MD tear strength)、150N/mm以上のTD引裂き強度(TD tear strength)、8%以下の突刺し初期変形率(stab initial strain)、及び10%以下の突刺し最終変形率(stab final strain)を有する、高分子電解質膜。
【請求項2】
前記高分子電解質膜は、80℃及び50%RHの条件で0.03~0.1S/cmの面方向イオン伝導度及び0.03~0.1S/cmの厚さ方向イオン伝導度を有する、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
前記高分子電解質膜は、170~320N/mmのMD引裂き強度、160~320N/mmのTD引裂き強度、1~6%の突刺し初期変形率、及び2~8%の突刺し最終変形率を有する、請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項4】
前記複合層は、第1面、及び該第1面の反対側の第2面を有し、
前記高分子電解質膜は、前記第1面上に配置されており、第1イオノマーを含む第1樹脂層;及び
前記第2面上に配置されており、第2イオノマーを含む第2樹脂層をさらに含み、
前記複合層のイオノマーの少なくとも一部は、前記第1イオノマー及び前記第2イオノマーのうち少なくとも一つと同一であるイオノマーである、請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
前記高分子電解質膜の厚さは、10~50μmであり、
前記複合層の厚さは、前記高分子電解質膜の厚さの30~90%である、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
前記多孔性支持体は、前記第1面を有する第1多孔性サブ支持体、及び前記第2面を有する第2多孔性サブ支持体を含み、
前記第1多孔性サブ支持体は第1孔隙を有し、該第1孔隙は、前記第1イオノマーと同じイオノマーで埋められており、
前記第2多孔性サブ支持体は、第2孔隙を有し、前記第1多孔性サブ支持体に隣接した前記第2孔隙の一部は、前記第1イオノマーと同じイオノマーで埋められており、前記第2樹脂層に隣接した前記第2孔隙の残りは、前記第2イオノマーと同じイオノマーで埋められている、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項7】
前記第1及び第2多孔性サブ支持体は、互いに接触している、請求項6に記載の高分子電解質膜。
【請求項8】
前記多孔性支持体は、前記第1面を有する第1多孔性サブ支持体、前記第2面を有する第2多孔性サブ支持体、及び前記第1及び第2多孔性サブ支持体の間に少なくとも一つの第3多孔性サブ支持体を含み、
前記第1、第2及び第3多孔性サブ支持体は、互いに接触している、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項9】
前記第1イオノマーは、前記第2イオノマーと同一であるか或いは異なる、請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項10】
アノード;
カソード;及び
前記アノードと前記カソードとの間に配置された請求項1による高分子電解質膜を含む、膜-電極アセンブリー。
【請求項11】
高分子電解質膜から所定の大きさ及び形態(predetermined size and shape)を有するサンプルを取る段階;
前記サンプルをASTM F1342に従う突刺しテスト(puncture test)用ホルダー(holder)に固定させる段階;
ASTM F1342に従う突刺しテスト用プローブ(probe)を用いて前記サンプルに対して所定荷重(predetermined load)及び所定速度の突刺し(stabbing)を繰り返し行う段階;
それぞれの突刺しが行われた度に前記サンプルの変位(displacement)を測定する段階;及び
前記測定された変位のうち少なくとも一つを用いて突刺し変形率(stab strain)を算出する段階
を含む、高分子電解質膜の耐久性測定方法。
【請求項12】
前記突刺し変形率算出段階は、
下の式1によって突刺し初期変形率を算出する段階;及び
下の式2によって突刺し最終変形率を算出する段階
を含む、請求項11に記載の高分子電解質膜の耐久性測定方法:
[式1]:IS(%)=[(D-D)/D]×100
[式2]:FS(%)=[(D20-D)/D]×100
ここで、ISは、前記突刺し初期変形率であり、FSは、前記突刺し最終変形率であり、Dは、1番目の突刺しによって起きた変位であり、Dは、2番目の突刺しによって起きた変位であり、D20は、20番目の突刺しによって起きた変位である。
【請求項13】
前記サンプルは、50mm×50mmの正方形の形態を有し、
前記所定荷重は、10Nであり、
前記所定速度は、100mm/minである、請求項12に記載の高分子電解質膜の耐久性測定方法。
【請求項14】
前記テスト方法は、23±2℃の温度及び50±5%の相対湿度で行われる、請求項13に記載の高分子電解質膜の耐久性測定方法。
【請求項15】
前記サンプルにかかる初期荷重(initial load)は、0.2Nである、請求項14に記載の高分子電解質膜の耐久性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜、これを含む膜-電極アセンブリー、及びその耐久性測定方法に関し、特に、イオン伝導度等の性能の低下が無く、優れた機械的物性を有することにより、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライ(wet/dry)サイクルが30,000回以上である程度に高い耐久性を有する膜-電極アセンブリーの製造を担保できる高分子電解質膜、これを含む膜-電極アセンブリー、及びその耐久性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然気体のような炭化水素系の燃料物質内に含まれている水素と酸素の酸化/還元反応のような化学反応エネルギーを電気エネルギーに直接変換させる発電システムを備えている電池であり、高いエネルギー効率性と汚染物排出の少ない環境へのやさしさという特徴から、化石エネルギーを代替可能な次世代清浄エネルギ源として脚光を浴びている。
【0003】
このような燃料電池は、単位電池の積層によるスタック構成によって様々な範囲の出力を出し得る長所を有し、小型リチウム電池に比べて4~10倍のエネルギー密度を示すことから、小型及び移動用の携帯電源として注目されている。
【0004】
燃料電池において電気を実質的に発生させるスタックは、膜-電極アセンブリー(Membrane-Electrode Assembly,MEA)及びセパレーター(separator)(又は、バイポーラプレート(Bipolar Plate)ともいう。)からなる単位セルが数個~数十個で積層された構造を有し、膜-電極アセンブリーは一般に、電解質膜を挟んでその両側にアノード(anode)(“燃料極”ともいう。)とカソード(cathode)(“空気極”ともいう。)がそれぞれ形成された構造をなす。
【0005】
燃料電池は、電解質の状態及び種類によって、アルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell,PEMFC)などに区別できるが、特に、高分子電解質燃料電池は、100℃未満の低い作動温度、速い始動及び応答特性、並びに優れた耐久性などの長所から、携帯用、車両用及び家庭用の電源装置として脚光を浴びている。
【0006】
高分子電解質燃料電池の代表の例には、水素ガスを燃料として使用する陽イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell,PEMFC)、液状のメタノールを燃料として使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell,DMFC)などを挙げることができる。
【0007】
高分子電解質燃料電池において起きる反応を要約すると、まず、水素ガスのような燃料がアノードに供給されると、アノードでは水素の酸化反応によって水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質膜を通じてカソードに伝達され、生成された電子は、外部回路を通じてカソードに伝達される。酸素が供給されるカソードでは、酸素が水素イオン及び電子と結合し、酸素の還元反応によって水が生成される。
【0008】
一方、高分子電解質燃料電池の商業化を実現するには解決すべき多くの技術的障壁がまだ存在しているが、必須の改善要因は、高性能、長寿命、低価格化の実現である。これらに最も多い影響を及ぼす構成要素が膜-電極アセンブリーであり、中でも高分子電解質膜は、膜-電極アセンブリーの性能及び価格に最大の影響を及ぼす核心要素の一つである。
【0009】
特に、輸送用燃料電池に適用される膜-電極アセンブリーでは、長時間運転に対する機械的耐久性(mechanical durability)の確保が何より重要である。一般に、膜-電極アセンブリーの機械的耐久性は、燃料電池の駆動中に膨脹及び収縮を反復する高分子電解質膜の耐久性に実質的に依存する。
【0010】
高分子電解質膜の機械的耐久性を増加させるための一環として、多孔性支持体(porous support)にイオノマー分散液を含浸させて製造する強化複合膜(reinforced composite membrane)タイプの高分子電解質膜が提案されている。しかしながら、前記多孔性支持体の厚さが増加するほどイオン伝導度のような高分子電解質膜の電気的性能が低下するため、前記多孔性支持体の厚さを無制限に増加させるわけにはいかず、よって、多孔性支持体の厚さの調節を用いた高分子電解質膜の機械的耐久性の向上には限界があった。
【0011】
一方、膜-電極アセンブリーの機械的耐久性の評価は、一般に、NEDOプロトコルに従ってウェット/ドライ(wet/dry)サイクル回数を測定することによって行われるが、このような評価には長時間(50日以上)がかかる問題がある。しかも、膜-電極アセンブリーの耐久性評価のためには、実際に膜-電極アセンブリーサンプルを作る必要があるが、(i)耐久性評価のための膜-電極アセンブリーサンプルの製作に長時間がかかるだけでなく、(ii)電極の形成に高価の貴金属が使用されるため、膜-電極アセンブリーサンプルに高い製作コストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一観点は、イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性を有することにより、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライサイクルが30,000回以上である程度に高い耐久性を有する膜-電極アセンブリーの製造を担保できる高分子電解質膜を提供することである。
【0013】
本発明の他の観点は、イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性を有する高分子電解質膜を含むことにより、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライサイクルが30,000回以上である程度に高い耐久性を有する膜-電極アセンブリーを提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の観点は、膜-電極アセンブリーを実際に製造しなくともその機械的耐久性を把握可能にすることにより、膜-電極アセンブリー及び燃料電池の研究及び開発にかかる時間及び費用を相当に節減できる、高分子電解質膜の耐久性測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一観点によって、多数の孔隙を有する多孔性支持体及び前記孔隙を埋めるイオノマー(ionomer)を含む複合層(composite layer)を含み、150N/mm以上のMD引裂き強度(MD tear strength)、150N/mm以上のTD引裂き強度(TD tear strength)、8%以下の突刺し初期変形率(stab initial strain)、及び10%以下の突刺し最終変形率(stab final strain)を有する、高分子電解質膜が提供される。
【0016】
前記高分子電解質膜は、80℃及び50%RHの条件で0.03~0.1S/cmの面方向(In-Plane)イオン伝導度及び0.03~0.1S/cmの厚さ方向(Through-Plane)イオン伝導度を有してよい。
【0017】
前記高分子電解質膜は、170~320N/mmのMD引裂き強度、160~320N/mmのTD引裂き強度、1~6%の突刺し初期変形率、及び2~8%の突刺し最終変形率を有してよい。
【0018】
前記複合層は、第1面、及び該第1面の反対側の第2面を有し、前記高分子電解質膜は、前記第1面上に配置されており、第1イオノマーを含む第1樹脂層;及び、前記第2面上に配置されており、第2イオノマーを含む第2樹脂層をさらに含むことができ、前記複合層のイオノマーの少なくとも一部は、前記第1イオノマー及び前記第2イオノマーのうち少なくとも一つと同じイオノマーであってよい。
【0019】
前記高分子電解質膜の厚さは、10~50μmであってよく、前記複合層の厚さは、前記高分子電解質膜の厚さの30~90%であってよい。
【0020】
前記多孔性支持体は、前記第1面を有する第1多孔性サブ支持体及び前記第2面を有する第2多孔性サブ支持体を含むことができ、前記第1多孔性サブ支持体は第1孔隙を有するが、前記第1孔隙は、前記第1イオノマーと同じイオノマーで埋められていてよく、前記第2多孔性サブ支持体は第2孔隙を有するが、前記第1多孔性サブ支持体に隣接した前記第2孔隙の一部は、前記第1イオノマーと同じイオノマーで埋められていてよく、前記第2樹脂層に隣接した前記第2孔隙の残りは、前記第2イオノマーと同じイオノマーで埋められていてよい。
【0021】
前記第1及び第2多孔性サブ支持体は、互いに接触していてよい。
【0022】
前記多孔性支持体は、前記第1面を有する第1多孔性サブ支持体、前記第2面を有する第2多孔性サブ支持体、及び前記第1及び第2多孔性サブ支持体の間に少なくとも一つの第3多孔性サブ支持体を含むことができ、前記第1、第2及び第3多孔性サブ支持体は、互いに接触していてよい。
【0023】
前記第1イオノマーは、前記第2イオノマーと同一であっても異なってもよい。
【0024】
本発明の他の観点によって、アノード;カソード;及び、前記アノードと前記カソードとの間に配置された上記の高分子電解質膜を含む、膜-電極アセンブリーが提供される。
【0025】
本発明のさらに他の観点によって、高分子電解質膜から所定の大きさ及び形態(predetermined size and shape)を有するサンプルを取る段階;前記サンプルをASTM F1342に従う突刺しテスト(puncture test)用ホルダー(holder)に固定させる段階;ASTM F1342に従う突刺しテスト用プローブ(probe)を用いて前記サンプルに対して所定荷重(predetermined load)及び所定速度の突刺し(stabbing)を繰り返し行う段階;それぞれの突刺しが行われた度に前記サンプルの変位(displacement)を測定する段階;及び、前記測定された変位のうち少なくとも一つを用いて突刺し変形率(stab strain)を算出する段階を含む、高分子電解質膜の耐久性測定方法が提供される。
【0026】
前記突刺し変形率算出段階は、下の式1によって突刺し初期変形率を算出する段階;及び、下の式2によって突刺し最終変形率を算出する段階を含むことができる。
【0027】
[式1]:IS(%)=[(D-D)/D]×100
【0028】
[式2]:FS(%)=[(D20-D)/D]×100
【0029】
ここで、ISは、前記突刺し初期変形率であり、FSは、前記突刺し最終変形率であり、Dは1番目の突刺しによって起きた変位であり、Dは、2番目の突刺しによって起きた変位であり、D20は、20番目の突刺しによって起きた変位である。
【0030】
前記サンプルは、50mm×50mmの正方形の形態を有してよく、前記所定荷重は、10Nであってよく、前記所定速度は100mm/minであってよい。
【0031】
前記測定方法は、23±2℃の温度及び50±5%の相対湿度で行われてよい。
【0032】
前記サンプルにかかる初期荷重(initial load)は、0.2Nであってよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、多孔性支持体内へのイオノマーの含浸性が改善された高分子電解質膜を提供することができる。したがって、本発明の高分子電解質膜は、イオン伝導度などの電気的性能に優れる他、高い引裂き強度と突刺し抵抗力(stabbing resistance)を有するので、向上した機械的耐久性を示す。
【0034】
特に、本発明の高分子電解質膜は、本発明の範囲の引裂き強度及び突刺し変形率を有するので、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライサイクルが30,000回以上である高耐久性の膜-電極アセンブリーの製造を担保することができる。
【0035】
また、本発明によれば、膜-電極アセンブリーの機械的耐久性の評価のために一般に測定されるNEDOプロトコルに従うウェット/ドライサイクルに、高分子電解質膜の引裂き強度の他にもその突刺し変形率が直接に関連していることが究明され、したがって、高分子電解質膜の製造段階で前記高分子電解質膜の引裂き強度及び突刺し変形率を測定することにより、膜-電極アセンブリーを実際に製造しなくとも、前記高分子電解質膜を用いて製造される膜-電極アセンブリーの機械的耐久性を容易に予測でき、膜-電極アセンブリー及び燃料電池の研究及び開発にかかる時間及び費用を相当に節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例に係る高分子電解質膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100の断面図である。
【0039】
図1に例示するように、本発明の高分子電解質膜100は、多数の孔隙を有する多孔性支持体10、及び前記孔隙を埋めるイオノマー21,22を含む複合層110を含む。
【0040】
前記多孔性支持体10は、熱的及び化学的分解に対する抵抗性が高い過フッ素化重合体[例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はテトラフルオロエチレンとCF=CFC2n+1(nは1~5の実数)又はCF=CFO-(CFCF(CF)O)2n+1(mは0~15の実数、nは1~15の実数)との共重合体]を含むことができる。非排他的な例として、商業的に販売されている延伸されたポリテトラフルオロエチレンフィルム(e-PTFE film)が前記多孔性支持体10として用いられてよい。
【0041】
代案として、前記多孔性支持体10は、炭化水素系高分子で形成された不織ウェブ(nonwoven web)であってよい。例えば、前記多孔性支持体10は、40~5000nmの平均直径を有するナノ繊維がランダムに配列されているナノウェブ(nanoweb)であってよい。前記炭化水素系高分子は、優れた耐化学性を有し、高湿の環境で水分による形態変形の恐れがない高分子、例えば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルブチレン、ポリウレタン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの2以上の共重合体、又はこれらの2以上の混合物であってよい。特に、ポリイミドは、優れた耐熱性、耐化学性及び形態安定性を有するという点で、前記多孔性支持体10の形成のための好ましい候補物質の一つである。
【0042】
前記多孔性支持体10の多孔度は、45%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60~90%であってよい。前記多孔性支持体10の多孔度が45%未満であれば、前記多孔性支持体10内のイオノマー量が過度に少なくなるため、高分子電解質膜100のイオン伝導度が低下する。一方、前記多孔性支持体10の多孔度が90%を超えると、その本然の補強機能が崩れる他にその形態安定性も低下してしまい、後工程が円滑に進行されないことがある。
【0043】
前記イオノマー21,22は、陽イオン交換基を有する陽イオン伝導体、又は陰イオン交換基を有する陰イオン伝導体である。
【0044】
前記陽イオン伝導体は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホン酸フルオリド基及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つの陽イオン交換基を含むフッ素系高分子であってよい。例えば、前記陽イオン伝導体は、ポリ(ペルフルオロスルホン酸)、ポリ(ペルフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルとの共重合体、脱フッ素化した硫化ポリエーテルケトン、又はこれらの2以上の混合物であってよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
代案として、前記陽イオン伝導体は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホン酸フルオリド基及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一つの陽イオン交換基を含む炭化水素系高分子であってよい。例えば、前記陽イオン伝導体は、スルホン化したポリイミド(sulfonated polyimide,S-PI)、スルホン化したポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone,S-PAES)、スルホン化したポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone,SPEEK)、スルホン化したポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole,SPBI)、スルホン化したポリスルホン(sulfonated polysulfone,S-PSU)、スルホン化したポリスチレン(sulfonated polystyrene,S-PS)、スルホン化したポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化したポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化したポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化したポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化したポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化したポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化したポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化したポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化したポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化したポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化したポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化したポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、又はこれらの2以上の混合物であってよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記陰イオン伝導体は、ヒドロキシイオン、カーボネート又はビカーボネートのような陰イオンを移送させ得るポリマーである。前記陰イオン伝導体としては、一般に、金属水酸化物がドープされたポリマーを使用でき、具体的に、金属水酸化物がドープされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニリデンフルオリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)又はポリ(エチレングリコール)などを使用することができる。
【0047】
本発明の高分子電解質膜100は、150N/mm以上(例えば、170~320N/mm)のMD引裂き強度(MD tear strength)及び150N/mm以上(例えば、160~320N/mm)のTD引裂き強度(TD tear strength)を有する。
【0048】
本明細書で使われる用語である“MD”及び“TD”は、“Machine Direction”及び“Traverse Direction”をそれぞれ意味する。前記“Machine Direction”は、高分子電解質膜100が製造される際のその移動方向であり、前記“Traverse Direction”は、前記“Machine Direction”に垂直な方向である。
【0049】
本発明において、高分子電解質膜100の“引裂き強度”は、次のように測定される値である。
【0050】
[引裂き強度]
【0051】
50mm×50mmのサンプルを取った後、万能試験機(Universal Test Machine:UTM)(Instron 5966)を用いてASTM D624に従って下記の条件下に、前記サンプルが裂けるまでかかった最大力(maximum force)を測定する。
【0052】
- 温度:23±2℃
【0053】
- 相対湿度:50±5%
【0054】
- テスト速度(test speed):500±50mm/min
【0055】
続いて、次式3を用いて前記サンプルの引裂き強度を算出する。
【0056】
[式3]:TS=F/d
【0057】
ここで、TSは、前記サンプルの引裂き強度(N/mm)であり、Fは、前記サンプルにかかった最大力(N)であり、dは、前記サンプルの中央部における3地点でそれぞれ測定された厚さの算術平均である中間厚さ(median thickness)(mm)である。
【0058】
上のような方式で5個のサンプルの引裂き強度をそれぞれ求めた後、それらの算術平均を算出することにより、高分子電解質膜100の引裂き強度が得られる。
【0059】
高分子電解質膜100が上述の範囲のMD引裂き強度及びTD引裂き強度を有するとしても、そのような高分子電解質膜100を用いて通常の方法によって製造される膜-電極アセンブリーが、業界で要求される程度の高い耐久性(すなわち、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライサイクル>30,000回)を常に満たすわけではない。言い換えると、150N/mm以上のMD引裂き強度及び150N/mm以上のTD引裂き強度は、膜-電極アセンブリーが30,000回以上のウェット/ドライサイクルを満たすための必要条件であるだけで、その充分条件にはなり得ない。
【0060】
したがって、高分子電解質膜100が150N/mm以上のMD引裂き強度及び150N/mm以上のTD引裂き強度を有するとしても、それを用いて通常の方法によって製造される膜-電極アセンブリーが十分の耐久性を有するか否かを把握するためには、膜-電極アセンブリーサンプルを実際に製作し、NEDOプロトコルに従う耐久性テストを行うことが要求される。これは、時間がかかる他、コスト高も招く。
【0061】
本発明によれば、150N/mm以上のMD引裂き強度及び150N/mm以上のTD引裂き強度を有する高分子電解質膜100が、ある程度(a certain degree)以上の突刺し抵抗力(stab resistance)を有すると、それを用いて通常の方法で製造される膜-電極アセンブリーが30,000回以上のウェット/ドライサイクルを常に満たすという事実が発見された。したがって、本発明によれば、高分子電解質膜100の引裂き強度に加えてその突刺し抵抗力も測定することにより、膜-電極アセンブリーを実際に製造しなくとも、前記膜-電極アセンブリーが、業界で要求される機械的耐久性を満たすか否かを把握することができ、その結果、膜-電極アセンブリー及び燃料電池の研究及び開発にかかる時間及び費用を相当に節減できる。
【0062】
本発明に係る高分子電解質膜100の耐久性測定方法は、高分子電解質膜100から所定の大きさ及び形態を有するサンプルを取る段階、前記サンプルをASTM F1342に従う突刺しテスト用ホルダーに固定させる段階、ASTM F1342に従う突刺しテスト用プローブを用いて前記サンプルに対して所定荷重及び所定速度の突刺しを繰り返し行う段階、それぞれの突刺しが行われた度に前記サンプルの変位を測定する段階、及び前記測定された変位の少なくとも一つを用いて突刺し変形率(stab strain)を算出する段階を含む。
【0063】
本発明の一実施例によれば、前記突刺し変形率算出段階は、突刺し初期変形率を算出する段階、及び突刺し最終変形率を算出する段階を含むことができる。
【0064】
より具体的に、本発明において、高分子電解質膜100の“突刺し初期変形率”及び“突刺し最終変形率”は、次のように測定される。
【0065】
[突刺し初期変形率及び突刺し最終変形率]
【0066】
50mm×50mmのサンプルを取った後、万能試験機(UTM)(Instron 5966)を用いて前記サンプルの突刺し抵抗力を測定する。反復的突刺しを実行するためのアクセサリとして、Instron社から提供するASTM F1342に従う突刺しテスト(puncture test)用ジグ(サンプルホルダー及びプローブ)を利用する。具体的に、前記サンプルをホルダー(holder)に固定させた状態(ベースレベルから前記サンプルまでの距離:100mm)で、プローブ(probe)で反復的突刺し(load:10N)を下の条件下で行い、それぞれの突刺しによる前記距離の減少[すなわち、‘変位(displacement)’]を測定する。このとき、0.2Nの荷重(load)がかかった時の変位が零点(zero point)と見なされる。
【0067】
- 温度:23±2℃
【0068】
- 相対湿度:50±5%
【0069】
- モード:圧縮モード(Compression Mode)
【0070】
- 循環周期(Cyclic Period):20回
【0071】
- テスト速度(Test Speed):100mm/min
【0072】
前記プローブで突刺し(load:10N)を2回反復実施した時の変形率(すなわち、“突刺し初期変形率”)及び20回反復実施した時の変形率(すなわち、“突刺し最終変形率”)を、下の式1及び式2によってそれぞれ算出する。
【0073】
[式1]:IS(%)=[(D-D)/D]×100
【0074】
[式2]:FS(%)=[(D20-D)/D]×100
【0075】
ここで、ISは、突刺し初期変形率であり、FSは、突刺し最終変形率であり、Dは、1番目の突刺しによる変位(mm)であり、Dは、2番目の突刺しによる変位(mm)であり、D20は、20番目の突刺しによる変位(mm)である。
【0076】
本発明の高分子電解質膜100は、上述した本発明の範囲のMD/TD引裂き強度及び突刺し初期/最終変形率を有することにより、NEDOプロトコルに従って測定されるウェット/ドライサイクルが30,000回以上である高耐久性の膜-電極アセンブリーの製造を担保できる。
【0077】
すなわち、膜-電極アセンブリーの機械的耐久性の評価のために一般的に測定されるNEDOプロトコルに従うウェット/ドライサイクルに高分子電解質膜100のMD/TD引裂き強度及び突刺し初期/最終変形率が直接に関連することが、本発明によって究明された。したがって、高分子電解質膜100の製造段階において前記高分子電解質膜100の引裂き強度及び突刺し変形率を測定することにより、膜-電極アセンブリーを実際に製造しなくともその機械的耐久性を容易に予測でき、膜-電極アセンブリー及び燃料電池の開発にかかる時間及び費用が相当節減し得る。
【0078】
本発明の一実施例によれば、前記高分子電解質膜100は、80℃及び50%RHの条件で0.03~0.1S/cm、例えば0.046~0.1S/cmの面方向(In-Plane)イオン伝導度及び0.03~0.1S/cm、例えば0.042~0.1S/cmの厚さ方向(Through-Plane)イオン伝導度を有することができる。本発明の高分子電解質膜100が優れた機械的物性を有しながらも、このように高いイオン伝導度を有し得る具体的理由は後述する。
【0079】
すなわち、本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100は、イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性(すなわち、150N/mm以上のMD引裂き強度、150N/mm以上のTD引裂き強度、8%以下の突刺し初期変形率、及び10%以下の突刺し最終変形率)を有することにより、ウェット/ドライサイクル30,000回以上の高い耐久性はもとより、優れた電気的性能を有する膜-電極アセンブリーの製造を担保できる。
【0080】
本発明において、面方向イオン伝導度及び厚さ方向イオン伝導度は、次の方法によってそれぞれ測定される。
【0081】
[面方向イオン伝導度]
【0082】
高分子電解質膜100の面方向イオン伝導度は、磁気浮遊天秤(Magnetic Suspension Balance)装置(Bell Japan社)を用いて80℃及び50%RHで測定する。
【0083】
[厚さ方向イオン伝導度]
【0084】
高分子電解質膜100の厚さ方向イオン伝導度は、厚さ方向膜テストシステム(Through-Plane Membrane Test System)(Scribner Associates,MTS740)を用いて定電流4端子法によって測定する。具体的に、サンプル(10mm×30mm)に対して、80℃及び50%RH条件下で交流電流をサンプルの両面に印加しながらサンプル内で発生する交流電位差を測定し、膜抵抗(R)(Ω)を得る。次に、下の式4を用いて高分子電解質膜100の厚さ方向イオン伝導度を算出する。
【0085】
[式4]:σ=L/[R×A]
【0086】
[ここで、σは、厚さ方向イオン伝導度(S/cm)であり、Lは、電極間の距離(cm)であり、Rは、膜抵抗(Ω)であり、Aは、膜の有効面積(cm)である。]
【0087】
図1に例示するように、本発明の一実施例によれば、前記複合層110は、第1面、及び該第1面の反対側の第2面を有し、前記高分子電解質膜100は、前記第1面上に配置されている第1樹脂層120、及び前記第2面上に配置されている第2樹脂層130をさらに含むことができる。
【0088】
前記第1樹脂層120は、第1イオノマー21を含むことができ、前記第2樹脂層130は、第2イオノマー22を含むことができる。
【0089】
前記複合層110のイオノマーの少なくとも一部は、前記第1イオノマー21及び前記第2イオノマー22のうち少なくとも一つと同じイオノマーであってよい。
【0090】
前記高分子電解質膜100の厚さは、10~50μmであってよく、前記複合層110の厚さは、前記高分子電解質膜100の厚さの30~90%、好ましくは35~85%、より好ましくは40~80%であってよい。前記複合層110の厚さ比率が30%未満であれば、多孔性支持体10の使用による前記高分子電解質膜100の機械的耐久性及び寸法安定性向上の効果がわずかである。一方、前記複合層110の厚さ比率が90%を超えると、前記第1及び第2樹脂層120,130の厚さが薄すぎるため、高分子電解質膜100のイオン伝導度が低くなる。
【0091】
図1に例示するように、本発明の一実施例に係る多孔性支持体10は、第1多孔性サブ支持体11及び第2多孔性サブ支持体12を含む。
【0092】
前記第1多孔性サブ支持体11は、前記複合層110の前記第1面を有する。すなわち、前記第1多孔性サブ支持体11の一面が、前記複合層110の前記第1面を構成する。これと類似に、前記第2多孔性サブ支持体12は、前記複合層110の前記第2面を有する。すなわち、前記第2多孔性サブ支持体12の一面が、前記複合層110の前記第2面を構成する。
【0093】
前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12は、同じ種類の支持体であってもよく、異なる種類の支持体であってもよい。例えば、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12はいずれもe-PTFEフィルム(e-PTFE films)又は不織ウェブ(nonwoven webs)であってよい。前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12がいずれもe-PTFEフィルムである場合に、それらはその延伸方向が互いに垂直となるように積層されてよい。
【0094】
図1に例示するように、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12は、互いに接触していてよい。前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12がタイトに(tightly)相互接触しているので、それらが互いに区別可能な異なる種類の多孔性支持体でなければ、それらの界面が視覚的に確認不可能であってよい。すなわち、前記多孔性支持体10は、見掛け単一多孔性支持体(apparent single porous support)であってよい。
【0095】
前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12を有する本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100は、前記多孔性支持体10と同じ厚さを有する(すなわち、同一又は類似の機械的物性を提供する)実際単一多孔性支持体(actual single porous support)によって補強された高分子電解質膜に比べて、様々な面において多い利点を提供する。例えば、本発明の一実施例によれば、前記多孔性支持体10と同じ厚さを有する実際単一多孔性支持体がイオノマーで含浸される場合に比べて、(i)イオノマー含浸工程において前記イオノマーと直接に接触する多孔性支持体10の表面積が大きいので、イオノマー溶液又は分散液に対する多孔性支持体10の濡れ性(wetting)が良好であり、支持体の使用による高分子電解質膜100のイオン伝導度の低下を最小化でき(すなわち、支持体の孔隙内に存在している空気がよりよく抜け出ながらその空いた空間をアイオーノーが埋めることにより、イオン伝導度に悪影響を及ぼす微細気泡が最終高分子電解質膜内に残留することが防止されながら、水素イオンの移動経路であるウォーターチャネルが支持体の厚さ方向によく形成され得、(ii)高分子電解質膜の変形を緩衝可能な面積が増えるので、高分子電解質膜の突刺し変形率がより低くなり得る(すなわち、突刺し抵抗力が向上し得る)。
【0096】
結果的に、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12を有する本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100は、イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性を有することができる。
【0097】
前記第1多孔性サブ支持体11は、多数の第1孔隙を有するが、これらの第1孔隙は、前記第1樹脂層120の前記第1イオノマー21と同じイオノマーで埋められていてよい。
【0098】
前記第2多孔性サブ支持体12は、多数の第2孔隙を有するが、前記第1多孔性サブ支持体11に隣接した前記第2孔隙の一部は、前記第1樹脂層120の前記第1イオノマー21と同じイオノマーで埋められていてよく、前記第2樹脂層130に隣接した前記第2孔隙の残りは、前記第2樹脂層130の前記第2イオノマー22と同じイオノマーで埋められていてよい。
【0099】
すなわち、本発明の一実施例によれば、前記第1及び第2イオノマー21,22間の界面が前記第2多孔性サブ支持体12内に存在するので[すなわち、前記第2多孔性サブ支持体12内に存在する第1イオノマー21がアンカー(anchor)として働くので]、接着剤及び/又は熱圧着によって多孔性支持体が接合された積層構造に劣らず、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12間の強い接着力が確保できる他に、前記接着剤及び/又は熱圧着による支持体の接合時に起こり得るイオン伝導度の低下も防止することができる。したがって、本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100は、イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性を有することができる。
【0100】
前記第1イオノマー21は、前記第2イオノマー22と同一であっても異なってもよい。
【0101】
以下では、図1に例示する本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100の製造方法を具体的に説明する。
【0102】
本発明の一実施例に係る方法は、(i)第1イオノマー21を含む第1混合液(mixed liquid)をキャスティング(casting)する段階、(ii)前記第1混合液上に乾燥状態(dry state)の第1多孔性サブ支持体11を載せることにより、前記第1多孔性サブ支持体11を全体的に湿潤状態(wet state)にする段階、(iii)前記第1多孔性サブ支持体11が全体的に湿潤状態になった直後に、前記第1多孔性サブ支持体11上に乾燥状態の第2多孔性サブ支持体12を付け加える(add on)が、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12が接触するように付け加える段階、(iv)第2イオノマー22を含む第2混合液を、前記第2多孔性サブ支持体12上に加える(applying)ことにより、前記第2多孔性サブ支持体12を全体的に湿潤状態にする段階、及び(v)湿潤状態の前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12を乾燥させる段階を含む。
【0103】
前記第1多孔性サブ支持体11が前記第1混合液によって全体的に湿潤状態に維持される間に、前記第2多孔性サブ支持体12がその上に付け加えられることにより、前記第2多孔性サブ支持体12の第2孔隙の一部が前記第1混合液で埋められ得る。したがって、前述したように、前記第2多孔性サブ支持体12の第2孔隙の一部に存在する第1イオノマー21がアンカーとして働くので、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12間の強い接着力が確保され得、高分子電解質膜100の機械的物性が顕著に向上し得る。
【0104】
さらに、本発明によれば、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12間のこのような高い接着力が、別の接着剤使用及び/又は熱圧着(hot press)工程無しで得られるので、前記接着剤及び/又は熱圧着を用いた支持体の接合時に起き得るイオン伝導度低下を防止することができる。したがって、本発明の一実施例に係る高分子電解質膜100は、イオン伝導度のような性能の低下無しにも優れた機械的物性を有することができる。
【0105】
すなわち、本発明の高分子電解質膜100は、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12の間に、イオノマーのみからなる樹脂層を含まないという点で、2以上の高分子電解質膜を製造した後に接着剤及び/又は熱圧着を用いてそれらを接合させることによって製造される積層型高分子電解質膜と区別される。本発明と違い、このような積層型高分子電解質膜は、(i)前述したように、接着剤及び/又は熱圧着によるイオン伝導度の低下を必然的に伴うだけでなく、(ii)多孔性支持体の間にイオノマーのみからなる樹脂層が存在することにより、水素ガス移動に対する抵抗が相対的に低くなり、その結果、相対的に高い水素透過度によって化学的耐久性が顕著に低下する。
【0106】
前述したように、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12は、同じ種類の支持体であってもよく、異なる種類の支持体であってもよい。例えば、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12はいずれもe-PTFEフィルム(e-PTFE films)又は不織ウェブ(nonwoven webs)であってよい。
【0107】
一般に、e-PTFEフィルムは、その延伸方向の機械的物性(例えば、引張強度、伸び率など)と延伸方向に垂直な方向の機械的物性との間に無視できない差異が存在する不等方性フィルムである。したがって、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12はいずれもe-PTFEフィルムである場合に、それらをその延伸方向が互いに垂直となるように前記第2多孔性サブ支持体12を前記第1多孔性サブ支持体11上に付け加えることにより、高分子電解質膜100の機械的物性をより向上させることができる。
【0108】
第2イオノマー22を含む第2混合液を前記第2多孔性サブ支持体12上に加えることにより、前記第2多孔性サブ支持体12を全体的に湿潤状態にする段階は、(i)前記第1イオノマー21と前記第2イオノマー22が同じ場合には、前記第2多孔性サブ支持体12を前記第1多孔性サブ支持体11に付け加えた後に、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12を一緒に前記第2混合液に浸漬させる段階、又は(ii)前記第2多孔性サブ支持体12の露出面上に前記第2混合液をバーコーティング、コンマコーティング、スロットダイ、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレードなどの方法を用いて塗布する段階を含むことができる。
【0109】
前記第1及び第2混合液のそれぞれは、水、親水性溶媒、有機溶媒、又はこれらの2以上の混合溶媒中に前記第1イオノマー21又は前記第2イオノマー22が溶解又は分散されている溶液又は分散液であってよい。
【0110】
前記親水性溶媒は、炭素数1~12の直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和炭化水素を主鎖として含み、アルコール、イソプロピルアルコール、ケトン、アルデヒド、カーボネート、カルボキシレート、カルボン酸、エーテル及びアミドからなる群から選ばれる一つ以上の官能基を有するものであってよく、脂環式又は芳香族シクロ化合物を主鎖の少なくとも一部として含むことができる。
【0111】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、又はこれらの2以上の混合物であってよい。
【0112】
前記第1イオノマー21又は前記第2イオノマー22で前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12の孔隙を完全に埋めるために、温度及び時間などの様々な要素、例えば、前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12の厚さ、前記第1及び第2混合液の濃度、及び溶媒/分散媒の種類のうち少なくとも一つが適切に調節されてよい。
【0113】
合わせられた前記第1及び第2多孔性サブ支持体11,12を乾燥させる段階は、60℃~150℃で15分~1時間1次乾燥させ、150℃~190℃で3分~1時間2次乾燥させてなり得、具体的に、60℃~120℃で15分~1時間1次乾燥させ、170℃~190℃で3分~1時間2次乾燥させてなり得る。前記1次乾燥温度が60℃未満であるか或いは1次乾燥時間が15分未満であると、溶媒/分散媒が1次的に抜けられないため、高い密度の(dense)膜が得られず、2次乾燥温度が190℃を超えるか或いは2次乾燥時間が1時間を超えると、イオン交換基(例えば、スルホン酸基)が分解され、膜の性能が低下する問題があり得る。
【0114】
選択的に(optionally)、図1に例示する高分子電解質膜100は、2個の多孔性サブ支持体11,12のみを含んでいるが、本発明の高分子電解質膜100は、要求される具体的物性を考慮して2個を超える多孔性サブ支持体を含んでもよい。
【0115】
本発明の他の実施例によれば、高分子電解質膜100が多数の多孔性サブ支持体11,12の代わりに単一多孔性支持体10を含み、前記単一多孔性支持体10の孔隙に含浸されるイオノマー分散液は、イオノマーを溶媒に添加した後に共鳴音波方式で混合することによって製造されてもよい。このように製造されるイオノマー分散液は、高い分散安全性を有する。
【0116】
前記共鳴音波方式による混合によって得られた混合物に高圧をかけることにより、イオノマー分散液の分散安定性をより増加させることができる。
【0117】
本発明において、高い分散安定性を有するイオノマー分散液は、流動計(Rheometer)を用いてせん断速度(shear rate)を0.001s-1から1000s-1まで増加させた後、1000s-1から0.001s-1まで減少させながら前記イオノマー分散液の粘度及びせん断応力をそれぞれ測定する時に、下の式5で定義される粘度比(viscosity ratio)が1.7以下であり、下の式6で定義されるせん断応力比(shear stress ratio)が1.5以下であるイオノマー分散液を意味する。
【0118】
[式5]:粘度比=η2/η1
【0119】
(ここで、η1は、せん断速度増加過程中に測定された、せん断速度が1s-1の時の前記イオノマー分散液の第1粘度であり、η2は、せん断速度減少過程中に測定された、せん断速度が1s-1の時の前記イオノマー分散液の第2粘度である。)
【0120】
[式6]:せん断応力比=σ2/σ1
【0121】
(ここで、σ1は、せん断速度増加過程中に測定された、せん断速度が1s-1の時のせん断応力である第1せん断応力であり、σ2は、せん断速度減少過程中に測定された、せん断速度が1s-1の時のせん断応力である第2せん断応力である)
【0122】
高含量のイオノマー固形物を含有しながらも十分に高い分散安定性を有するイオノマー分散液は、高分子電解質膜100におけるイオノマーのモルホロジーを最適化でき、それにより、高分子電解質膜100のイオン伝導度及び耐久性の全てを向上させることができる。すなわち、前記高分子電解質膜100は、150N/mm以上のMD引裂き強度、150N/mm以上のTD引裂き強度、8%以下の突刺し初期変形率、及び10%以下の突刺し最終変形率といった優れた機械的耐久性を有する他にも、80℃及び50%RHの条件で0.03~0.1S/cmの面方向イオン伝導度及び0.03~0.1S/cmの厚さ方向イオン伝導度を有することができる。
【0123】
具体的に、高い分散安定性を有するイオノマー分散液は、含浸性に優れる他、粒子サイズも小さくて均一であるので、多孔性支持体10に含浸及びコーティングされて強化複合膜タイプの高分子電解質膜100を形成する際に水素イオン移動経路を提供するウォーターチャネル(water channel)を面方向の他に厚さ方向にもよく形成させることにより、前記高分子電解質膜100の面方向及び厚さ方向のイオン伝導度を全て向上させることができる。
【0124】
上述した高い分散安定性を有するイオノマー分散液は、多数の多孔性サブ支持体11,12を有する高分子電解質膜100にも適用可能であることは勿論である。
【0125】
本発明の膜-電極アセンブリーは、アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された前記高分子電解質膜100を含む。前記膜-電極アセンブリーは、高分子電解質膜として本発明に係る高分子電解質膜100を使用する以外は通常の燃料電池用膜-電極アセンブリーと同一であるので、本明細書においてその詳細な説明は省略する。
【0126】
以下、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、様々な別の形態で具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0127】
[製造例:高分子電解質膜の製造]
【0128】
(実施例1)
【0129】
第1多孔性サブ支持体(e-PTFE、気孔サイズ:0.10μm~0.15μm、厚さ:6μm、MD/TD引張伸びの比率1.1)を、当量(EW)が800g/eqである高度にフッ素化した高分子を20重量%の含有量で含む第1イオノマー分散液(“共鳴音波方式混合+高圧分散”、粘度比:1.01、せん断応力比:1.01)で濡らした。
【0130】
前記第1多孔性サブ支持体が濡れた状態で第2多孔性サブ支持体(e-PTFE、気孔サイズ:0.10μm~0.15μm、厚さ:6μm、MD/TD引張伸びの比率1.1)を、延伸方向が交差するようにして前記第1多孔性サブ支持体に付け加えた。
【0131】
前記第1多孔性サブ支持体と第2多孔性サブ支持体とが合わせられた状態で、当量(EW)が800g/eqである高度にフッ素化した高分子を20重量%の含有量で含む第2イオノマー分散液(“共鳴音波方式混合+高圧分散”、粘度比:1.01、せん断応力比:1.01)をさらに塗布した。
【0132】
その後、60℃で1時間、150℃で30分間乾燥させて高分子電解質膜を製造した。
【0133】
(実施例2)
【0134】
第1多孔性サブ支持体(e-PTFE、気孔サイズ:0.10μm~0.15μm、厚さ:6μm、MD/TD引張伸びの比率1.2)を、当量(EW)が800g/eqである高度にフッ素化した高分子を20重量%の含有量で含む第1イオノマー分散液(共鳴音波方式混合、粘度比:1.26、せん断応力比:1.09)で濡らした。
【0135】
前記第1多孔性サブ支持体が濡れた状態で、第2多孔性サブ支持体(e-PTFE、気孔サイズ:0.10μm~0.15μm、厚さ:6μm、MD/TD引張伸びの比率1.2)を延伸方向が交差するようにして前記第1多孔性サブ支持体に付け加えた。この時、前記第1多孔性サブ支持体の延伸方向と前記第2多孔性サブ支持体の延伸方向とが直交するように積層した。
【0136】
前記第1多孔性サブ支持体が第2多孔性サブ支持体上に付け加えられた状態で、当量(EW)が800g/eqである高度にフッ素化した高分子を20重量%の含有量で含む第2イオノマー分散液(共鳴音波方式混合、粘度比:1.26、せん断応力比:1.09)をさらに塗布した。
【0137】
その後、60℃で1時間、150℃で30分間乾燥させて高分子電解質膜を製造した。
【0138】
[高分子電解質膜の物性測定]
【0139】
前記実施例の高分子電解質膜のMD引裂き強度、TD引裂き強度、突刺し初期変形率、突刺し最終変形率、面方向イオン伝導度及び厚さ方向イオン伝導度を次の方法によってそれぞれ測定し、その結果を下表1に示した。
【0140】
*MD/TD引裂き強度
【0141】
50mm×50mmのサンプルを取った後、万能試験機(UTM)(Instron 5966)を用いてASTM D624に従って下記の条件下に、前記サンプルが引き裂かれるまでMD/TD方向にかかった最大力(maximum force)を測定した。
【0142】
- 温度:23±2℃
【0143】
- 相対湿度:50±5%
【0144】
- テスト速度(test speed):500±50mm/min
【0145】
次に、下の式3を用いて前記サンプルのMD/TD引裂き強度を算出した。
【0146】
[式3]:TS=F/d
【0147】
ここで、TSは、前記サンプルのMD/TD引裂き強度(N/mm)であり、Fは、前記サンプルにかかった最大力(N)であり、dは、前記サンプルの中央部における3地点でそれぞれ測定された厚さの算術平均である中間厚さ(median thickness)(mm)である。
【0148】
上のような方式で5個のサンプルのMD/TD引裂き強度をそれぞれ求めた後、それらの算術平均を算出することにより、高分子電解質膜のMD/TD引裂き強度を得た。
【0149】
*突刺し初期変形率及び突刺し最終変形率
【0150】
50mm×50mmのサンプルを取った後、万能試験機(UTM)(Instron 5966)を用いて前記サンプルの突刺し抵抗力を測定した。反復的突刺しを実行するためのアクセサリとして、Instron社から提供するASTM F1342に従う突刺しテスト(puncture test)用ジグ(サンプルホルダー及びプローブ)を利用した。具体的に、前記サンプルをホルダー(holder)に固定させた状態(ベースレベルから前記サンプルまでの距離:100mm)でプローブ(probe)を用いて反復的突刺し(load:10N)を次の条件下で行い、それぞれの突刺しによる前記距離の減少[すなわち、‘変位(displacement)’]を測定した。この時、0.2Nの荷重(load)がかかった時の変位が零点(zero point)と見なされた。
【0151】
- 温度:23±2℃
【0152】
- 相対湿度:50±5%
【0153】
- モード:圧縮モード
【0154】
- 循環周期:20回
【0155】
- テスト速度:100mm/min
【0156】
前記プローブで突刺し(load:10N)を2回反復実施した時の変形率(すなわち、“突刺し初期変形率”)及び20回反復実施した時の変形率(すなわち、“突刺し最終変形率”)を、下の式1及び式2によってそれぞれ算出した。
【0157】
[式1]:IS(%)=[(D-D)/D]×100
【0158】
[式2]:FS(%)=[(D20-D)/D]×100
【0159】
ここで、ISは、突刺し初期変形率であり、FSは、突刺し最終変形率であり、Dは、1番目の突刺しによる変位(mm)であり、Dは、2番目の突刺しによる変位(mm)であり、D20は、20番目の突刺しによる変位(mm)である。
【0160】
*面方向イオン伝導度
【0161】
高分子電解質膜100の面方向イオン伝導度は、磁気浮遊天秤(Magnetic Suspension Balance)装置(Bell Japan社)を用いて80℃及び50%RHで測定した。
【0162】
*厚さ方向イオン伝導度
【0163】
高分子電解質膜100の厚さ方向イオン伝導度は、厚さ方向膜テストシステム(Through-Plane Membrane Test System)(Scribner Associates,MTS740)を用いて定電流4端子法によって測定した。具体的に、サンプル(10mm×30mm)を取り、80℃及び50%RH条件下で交流電流をサンプルの両面に印加しながら、サンプル内で発生する交流電位差を測定し、膜抵抗(R)(Ω)を得る。次に、下の式4を用いて高分子電解質膜100の厚さ方向イオン伝導度を算出する。
【0164】
[式4]:σ=L/[R×A]
【0165】
[ここで、σは、厚さ方向イオン伝導度(S/cm)であり、Lは、電極間の距離(cm)であり、Rは、膜抵抗(Ω)であり、Aは膜の有効面積(cm)である。]
【0166】
[膜-電極アセンブリー(MEA)のウェット/ドライサイクル測定]
【0167】
高分子電解質膜を用いて膜-電極アセンブリー(MEA)を製造した後、そのウェット/ドライサイクルをNEDOプロトコルに従って測定した。具体的に、80℃で、アノード及びカソードに窒素ガスを800NmL/minの流量でそれぞれ注入しながら、加湿(150%RH、2分)及び乾燥(0%RH、2分)からなるウェット/ドライサイクルを反復した。1000サイクルごとに前記MEAの水素透過度(hydrogen crossover)をLSV(linear sweep voltammetry)を用いて測定した。具体的に、80℃及び100%RHで、アノードに水素ガスを200NmL/minの流量で注入し、カソードに窒素ガスを200NmL/minの流量で注入しながら、0.2~0.5V区間を0.5mV/sのスキャン速度(scan rate)でスイープ(sweep)し、0.4~0.5V区間の電流密度データを抽出した。前記データを線形解析(linear fitting)し、電圧が0である区間の電流密度値を取った。測定された水素透過度が最初水素透過度の10倍以上になると評価を終了し、その時まで行われたサイクル回数を、前記MEAのウェット/ドライサイクルとして取った。例えば、総15,000サイクル終了後に測定された水素透過度は、最初水素透過度の10倍未満であったが、総16,000サイクル終了後に測定された水素透過度が、最初水素透過度の10倍以上になった場合は、MEAのウェット/ドライサイクルは“15,000サイクル以上”となる。
【0168】
【表1】
図1
【国際調査報告】