IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イスラ テクノロジーズ,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-バイオ人工膵臓 図1
  • 特表-バイオ人工膵臓 図2
  • 特表-バイオ人工膵臓 図3
  • 特表-バイオ人工膵臓 図4
  • 特表-バイオ人工膵臓 図5
  • 特表-バイオ人工膵臓 図6A
  • 特表-バイオ人工膵臓 図6B
  • 特表-バイオ人工膵臓 図7
  • 特表-バイオ人工膵臓 図8
  • 特表-バイオ人工膵臓 図9
  • 特表-バイオ人工膵臓 図10
  • 特表-バイオ人工膵臓 図11
  • 特表-バイオ人工膵臓 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】バイオ人工膵臓
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/38 20060101AFI20221125BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20221125BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20221125BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20221125BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20221125BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20221125BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20221125BHJP
【FI】
A61L27/38 100
A61L27/40
A61L27/56
A61L31/12
A61L31/14 500
A61L31/14 400
A61L31/04
A61L27/14
A61P3/10
A61K35/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519479
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020052432
(87)【国際公開番号】W WO2021061940
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/907,434
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522120071
【氏名又は名称】イスラ テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ISLA TECHNOLOGIES,INC.
【住所又は居所原語表記】1100 Industrial Road, Suite 16, San Carlos, CA 94070 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】フォティアディス,サラ,ジョウン
(72)【発明者】
【氏名】フォティアディス,ダグラス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】クレイマー,トーマス,エー.
【テーマコード(参考)】
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C081AB35
4C081AC09
4C081BA16
4C081CA161
4C081CA162
4C081CD34
4C081DA06
4C081DB03
4C081DC03
4C087AA01
4C087BB51
4C087CA04
4C087MA65
4C087NA05
4C087NA10
4C087ZA66
4C087ZC35
(57)【要約】
患者の血管系に移植するためのバイオ人工装置、例えば、バイオ人工膵臓を提供する。本発明のバイオ人工膵臓は、血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、該足場により支持された細胞複合体支持体とを含み、該細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、前記細胞複合体支持体が、薄膜により境界が規定された1つ以上のポケットを備えること、該1つ以上のポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること、および前記薄膜が、前記膵島の生存を支持するのに十分な速度で、血流から酸素とブドウ糖を前記1つ以上のポケット内へと拡散させるように構成されていることを特徴とする。さらに、本発明は、バイオ人工膵臓の製造方法および使用方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持された細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、薄膜により境界が規定された1つ以上のポケットを備えること、
前記1つ以上のポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること、および
前記薄膜が、前記膵島の生存を支持するのに十分な速度で、血流から酸素とブドウ糖を前記1つ以上のポケット内へと拡散させるように構成されていること
を特徴とするバイオ人工膵臓。
【請求項2】
前記細胞複合体を担持した際の前記細胞複合体支持体の厚さが0.30mm~1.0mmである、請求項1に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項3】
前記細胞複合体支持体が、前記1つ以上のポケット間に接合領域をさらに含み、該接合領域において該細胞複合体支持体が前記足場に接合されている、請求項1または2に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項4】
前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項3に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項5】
前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されている、請求項3に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項6】
前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項3に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項7】
前記細胞複合体支持体が、複数のポケットを備え、各ポケット間に接合領域をさらに含み、膵島を含む細胞複合体が各ポケット内に配置されている、請求項3に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項8】
前記細胞複合体支持体が、2つの微多孔質薄膜層を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項9】
各微多孔質薄膜層が、直径100μm未満の細孔を複数備える、請求項8に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項10】
各微多孔質薄膜層の厚さが0.1mm未満である、請求項8に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項11】
前記細胞複合体における膵島の密度が2.5%~100%である、先行する請求項のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項12】
前記細胞複合体における膵島の密度が12%~30%である、請求項11に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項13】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びている、先行する請求項のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項14】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている、請求項1~12のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項15】
前記足場が拡張型ステントである、先行する請求項のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項16】
前記細胞複合体支持体が、前記拡張型ステントのストラットに接合されている、請求項15に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項17】
前記足場および前記細胞複合体支持体が、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項18】
前記足場が生体吸収性である、先行する請求項のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項19】
バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持された細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、密閉された複数のポケットと、複数の接合領域とを備え、該接合領域が前記足場に接合されていること、
前記密閉されたポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること、および
前記細胞複合体支持体が、膵島の生存を支持するのに十分な速度で、血流から酸素とブドウ糖を前記密閉されたポケット内へと拡散させるように構成されていること
を特徴とするバイオ人工膵臓。
【請求項20】
前記細胞複合体を担持した際の前記細胞複合体支持体の厚さが0.30mm~1.0mmである、請求項19に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項21】
前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項19または20に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項22】
前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されている、請求項19または20に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項23】
前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項19または20に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項24】
前記細胞複合体支持体が、前記ポケットの境界を規定する2つの微多孔質薄膜層を備える、請求項19~23のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項25】
各微多孔質薄膜層が、直径100μm未満の細孔を複数備える、請求項24に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項26】
各微多孔質薄膜層の厚さが0.1mm未満である、請求項24または25に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項27】
前記細胞複合体における膵島の密度が2.5%~100%である、請求項19~26のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項28】
前記細胞複合体における膵島の密度が12%~30%である、請求項27に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項29】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びている、請求項19~28のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項30】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている、請求項19~28のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項31】
前記足場が拡張型ステントである、請求項19~30のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項32】
前記細胞複合体支持体が、前記拡張型ステントのストラットに接合されている、請求項31に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項33】
前記足場および前記細胞複合体支持体が、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている、請求項18~32のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項34】
前記足場が生体吸収性である、請求項18~33のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項35】
バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持された細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、1つ以上のポケットを備えること、
前記1つ以上のポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること、および
前記細胞複合体を担持した際の前記細胞複合体支持体の厚さが0.30mm~1.0mmであること
を特徴とするバイオ人工膵臓。
【請求項36】
前記細胞複合体支持体が、前記1つ以上のポケット間に接合領域をさらに含み、該接合領域において該細胞複合体支持体が前記足場に接合されている、請求項35に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項37】
前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項36に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項38】
前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されている、請求項36に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項39】
前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項36に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項40】
前記細胞複合体支持体が、複数のポケットを備え、各ポケット間に接合領域をさらに含み、膵島を含む細胞複合体が各ポケット内に配置されている、請求項36に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項41】
前記細胞複合体支持体が、2つの微多孔質薄膜層を備える、請求項35~40のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項42】
各微多孔質薄膜層が、直径100μm未満の細孔を複数備える、請求項41に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項43】
各微多孔質薄膜層の厚さが0.1mm未満である、請求項41または42に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項44】
前記細胞複合体における膵島の密度が2.5%~100%である、請求項35~43のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項45】
前記細胞複合体における膵島の密度が12%~30%である、請求項44に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項46】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びている、請求項35~45のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項47】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている、請求項35~45のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項48】
前記足場が拡張型ステントである、請求項35~47のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項49】
前記細胞複合体支持体が、前記拡張型ステントのストラットに接合されている、請求項48に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項50】
前記足場および前記細胞複合体支持体が、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている、請求項35~49のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項51】
バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持され、薄膜を備えた細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、2つの微多孔質薄膜層により境界が規定された1つ以上のポケットを備えること、
前記微多孔質薄膜層の厚さが0.1mm未満であり、その細孔の直径が100μm未満であること、および
前記1つ以上のポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること
を特徴とするバイオ人工膵臓。
【請求項52】
前記細胞複合体支持体が、前記1つ以上のポケット間に接合領域をさらに含み、該接合領域において該細胞複合体支持体が前記足場に接合されている、請求項51に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項53】
前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項52に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項54】
前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されている、請求項52に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項55】
前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されている、請求項52に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項56】
前記細胞複合体支持体が、複数のポケットを備え、各ポケット間に接合領域をさらに含み、膵島を含む細胞複合体が各ポケット内に配置されている、請求項52に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項57】
前記細胞複合体における膵島の密度が2.5%~100%である、請求項51~56のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項58】
前記細胞複合体における膵島の密度が12%~30%である、請求項57に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項59】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びている、請求項51~58のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項60】
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている、請求項51~58のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項61】
前記足場が拡張型ステントである、請求項51~60のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項62】
前記細胞複合体支持体が、前記拡張型ステントのストラットに接合されている、請求項61に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項63】
前記足場および前記細胞複合体支持体が、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている、請求項51~62のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項64】
前記足場が生体吸収性である、請求項51~63のいずれか1項に記載のバイオ人工膵臓。
【請求項65】
足場と細胞複合体支持体を含むバイオ人工膵臓を製造する方法であって、
膵島を含む細胞複合体を、細胞複合体支持体のポケット内に開口部から注入する工程;および
前記開口部を閉じる工程
を含む方法。
【請求項66】
前記注入工程が、前記開口部から延びる細管を通して前記細胞複合体を注入することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記細管を引き抜く工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記細管を引き抜く工程が、前記細胞複合体を注入しながら前記細管を引き抜くことを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記足場に前記細胞複合体支持体を接合させる工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞複合体支持体のポケット内に前記細胞複合体を注入する工程を行った後に、前記足場に前記細胞複合体支持体を接合させる工程を行う、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記足場に前記細胞複合体支持体を接合させる工程を行った後に、前記細胞複合体支持体のポケット内に前記細胞複合体を注入する工程を行う、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記細胞複合体支持体が、複数のポケットと複数の接合領域をさらに含み、前記注入工程が、前記複数のポケット内に前記細胞複合体を注入することをさらに含み、前記接合工程が、前記足場に前記複数の接合領域を接合することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
糖尿病に罹患している患者を治療する方法であって、
細胞複合体支持体と、該細胞複合体支持体内に配置され、膵島を含む細胞複合体とを含むバイオ人工膵臓を、前記患者の血管内の移植部位に移植する工程;
前記血管から前記バイオ人工膵臓内へと血液を流れさせる工程;
前記血液から前記細胞複合体内へと酸素を拡散させて、前記膵島における最低酸素濃度を0.05mMに維持する工程;
前記血液から前記細胞複合体内へとブドウ糖を拡散させる工程;
前記血液から前記細胞複合体内へと拡散されたブドウ糖の濃度に応じて前記膵島からインスリンを産生させる工程;および
前記膵島により産生されたインスリンを前記血液に送達する工程
を含む方法。
【請求項74】
前記移植工程が、カテーテルを通して前記血管内の移植部位に前記バイオ人工膵臓を送達すること、および該バイオ人工膵臓を拡張させて送達形態から展開形態にすることを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
患者の血管内に留置されるバイオ人工膵臓移植片であって、
患者の血管内に留置できるように十分に小さい直径を規定する外面と、血液が流れる内腔を規定する内面とを有するステント;および
前記ステントの内面と外面の少なくとも一部を覆う細胞複合体
を含み、
前記細胞複合体が、膵島と、該膵島の生存を維持するための1種以上の生体適合性材料とを含む、
移植片。
【請求項76】
前記ステントが生体吸収性ステントである、請求項75に記載の移植片。
【請求項77】
前記ステントが複数のストラットを含み、該ストラットの少なくとも一部が前記細胞複合体で覆われている、請求項75に記載の移植片。
【請求項78】
前記膵島細胞が、前記1種以上の生体適合性材料のマトリックスの細孔内に埋め込まれている、請求項75に記載の移植片。
【請求項79】
前記膵島細胞が、前記1種以上の生体適合性材料のマトリックス内に分散されている、請求項75に記載の移植片。
【請求項80】
前記1種以上の生体適合性材料が生体吸収性材料である、請求項75に記載の移植片。
【請求項81】
前記生体吸収性ステントが、吸収速度が約3ヶ月~約3年の生体吸収性材料を含む、請求項75に記載の移植片。
【請求項82】
前記生体吸収性ステントが生体吸収性ポリマーを含む、請求項75に記載の移植片。
【請求項83】
前記生体吸収性ステントが生体吸収性金属を含む、請求項75に記載の移植片。
【請求項84】
前記細胞複合体が、生体適合性材料からなる1つ以上の外層を備え、この1つ以上の外層により前記膵島が完全に封入されている、請求項75に記載の移植片。
【請求項85】
前記生体吸収性ステントの管状壁が、前記血管に酸素を供給し、かつ前記膵島の血管新生を促進するための1つ以上の血流路を含む、請求項75に記載の移植片。
【請求項86】
前記管状壁が、互いに間隙を空けて配置された複数のストラットを含み、該複数のストラット間の間隙が、前記1つ以上の血流路に相当する、請求項85に記載の移植片。
【請求項87】
成長因子および抗凝固剤のうちの1種以上を含む、請求項75に記載の移植片。
【請求項88】
前記細胞複合体が、約50,000個~100万個の膵島を含む、請求項75に記載の移植片。
【請求項89】
前記患者の血流と前記移植片の間に位置する内皮細胞の増殖を促進するように構成されている、請求項75に記載の移植片。
【請求項90】
前記生体吸収性ステント、前記細胞複合体および前記細胞を取り囲む半透膜をさらに含み、該半透膜が、前記膵島に対する前記患者の免疫応答を実質的に阻止し、ホルモン、酸素、栄養素および老廃物を透過させるように構成されている、請求項75に記載の移植片。
【請求項91】
患者の血管内に留置されるバイオ人工膵臓移植片であって、
膵島細胞の生存が維持されるように構成され、膵島が内部に分散された生体吸収性材料を含み、
前記膵島細胞が前記生体吸収性材料内に封入されていること、および
前記生体吸収性材料が、患者の血管に接触するように構成された外面と、血液が流れる内腔を規定する内面とを備える管状形状を有すること
を特徴とする移植片。
【請求項92】
前記管状の生体吸収性材料の直径が、前記患者の血管の内径と実質的に同じである、請求項91に記載の移植片。
【請求項93】
前記管状の生体吸収性材料が、複数の開口部を備えるメッシュ様構造を有する壁面を備える、請求項91に記載の移植片。
【請求項94】
前記患者の血流と前記生体吸収性材料の間に位置する内皮細胞の増殖を促進するように構成されている、請求項91に記載の移植片。
【請求項95】
前記膵島が、前記生体吸収性材料のマトリックスの細孔内に埋め込まれている、請求項91に記載の移植片。
【請求項96】
前記生体吸収性材料が1種以上のポリマー材料を含む、請求項91に記載の移植片。
【請求項97】
前記生体吸収性材料が、生体吸収性材料からなる1つ以上の外層を備え、この1つ以上の外層により前記膵島が完全に封入されている、請求項91に記載の移植片。
【請求項98】
前記管状の生体吸収性材料の壁面が、前記血管に酸素を供給し、かつ前記膵島の血管新生を促進するための1つ以上の血流路を含む、請求項91に記載の移植片。
【請求項99】
前記1つ以上の血流路が、前記壁面の開口部を含む、請求項98に記載の移植片。
【請求項100】
前記膵島の濃度が約5重量%~約99重量%である、請求項91に記載の移植片。
【請求項101】
バイオ人工膵臓移植片を形成させる方法であって、
膵島の生存を維持できるように構成された1種以上の生体適合性材料と膵島を混合することにより細胞複合体を形成させる工程;および
前記膵島細胞の少なくとも一部が前記生体適合性材料に封入された前記細胞複合体で生体吸収性ステントの少なくとも一部をコーティングする工程
を含む方法。
【請求項102】
前記1種以上の生体適合性材料からなる1つ以上の層で前記細胞複合体をコーティングすることにより、前記膵島を完全に封入する工程をさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記細胞複合体で前記生体吸収性ステントをコーティングする工程が、液相堆積法、超音波コーティング法、またはその組み合わせを使用することを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記生体吸収性ステントが、互いに間隙を空けて配置された複数のストラットを有する管状壁を備え、前記生体吸収性ステントのコーティング工程が、前記複数のストラットの少なくとも一部を覆うことを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記細胞複合体における膵島の濃度が約5%~約99%である、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
糖尿病に罹患している患者を治療する方法であって、
膵島細胞と、該膵島細胞の生存を維持するための1種以上の生体適合性材料とを含む細胞複合体で覆われた生体吸収性ステントを含むバイオ人工膵臓移植片を収縮状態で前記患者の血管内に挿入する工程;および
前記患者の血管内の標的部位において前記生体吸収性ステントを拡張させて、前記バイオ人工膵臓移植片を前記血管の壁面と接触させる工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月27日に出願された米国仮出願第62/907,434号に基づく利益を主張するものであり、この出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
参照による援用
本明細書に記載のすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により援用されることを目的としてそれぞれ具体的に記載されているのと同程度に、いずれも参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0003】
本明細書では、管状形状を有する血管内バイオ人工装置について述べる。特定の実施形態において、本発明の血管内バイオ人工装置は、生体吸収性であり、細胞と生体適合性材料からなる細胞複合体を含む。いくつかの実施形態において、この細胞は膵島細胞である。
【背景技術】
【0004】
1型糖尿病は、血糖を調節するインスリンを十分に産生することができないことを特徴とする慢性代謝性疾患である。1型糖尿病は、世界中で4億2000万症例を超える糖尿病の約10%を占める。1型糖尿病の原因は不明であるが、その発症機序には、インスリンを産生するβ細胞が膵臓内で自己免疫により破壊されることが関与していると考えられている。治療をしないまま放置すれば、高血糖に伴う合併症により、血管、神経および臓器が損傷を受け、痙攣や糖尿病性ケトアシドーシスを起こし、死亡に至ることもある。したがって、1型糖尿病患者は、従来、一生インスリンに頼らなければならない。インスリン療法では、一般に、インスリンを静脈内に送達する注射器またはインスリンポンプが使用される。しかしながら、インスリン療法を毎日行っても、制御不能に変動するストレス、食事摂取量および身体活動量から生じる負担を必ずしも常に厳密に軽減できるわけではない。
【0005】
正確な血糖値のモニタリングの負担を軽減する代替療法として、膵島移植がある。膵島移植は、インスリンを産生させ、それを送達する手段として信頼性がより高い。また、近年の技術進歩により、バイオ人工膵臓が開発されている。バイオ人工膵臓では、通常、膵島が半透過性環境に封入されることによって、膵島細胞への酸素とブドウ糖の供給と、膵島細胞からのインスリンと老廃物の放出が可能となっている。様々な種類のバイオ人工膵臓が開発されているものの、これらのバイオ人工膵臓の多くに制限があることが判明している。
【0006】
したがって、糖尿病およびその他の代謝性疾患の治療および管理を行うための改良されたバイオ人工膵臓および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、患者に対してホルモン(インスリンなど)を自律的かつ持続的に制御することができるバイオ人工移植片(バイオ人工膵臓移植片など)について述べる。「バイオ人工」移植片とは、生きた成分と人工の成分から構成された移植片を指す。本発明のバイオ人工移植片は、細胞複合体を含んでいてもよく、この細胞複合体は、生きた細胞と、この細胞の生存を維持するための1種以上の生体適合性材料との組み合わせを含む。場合によっては、前記細胞は、生体適合性材料のマトリックス内に分散されている。また、前記細胞は、生体適合性材料内に封入されていてもよく、この生体適合性材料は、半透過性の免疫障壁として機能することができる。前記細胞を患者の体内に移植することによって、前記細胞から1種以上のホルモンを産生させて、患者の内分泌系を調節することができる。例えば、前記細胞からインスリンおよび/またはグルカゴンを分泌させることによって、患者の血液中の血糖値を調節してもよい。前記細胞は、生体内のフィードバック系に関与することにより、血流中のホルモン濃度に基づいて血糖値を制御する。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、前記細胞複合体は、管状構造(ステントなど)に形成することができ、あるいは管状構造(ステントなど)に担持させることもできる。この管状構造の大きさおよび形状は、生体適合性材料により細胞の生存を維持しながら、患者の血管内に挿入できるように構成することができる。この管状移植片は、折りたたまれた状態で患者の血管内に挿入することができ、患者の血管内の標的部位において拡張できるように、拡張可能なものであってもよい。また、管状移植片を血管内で展開した際に、管状移植片の外壁が血管壁に固定されてもよい。管状移植片を患者の血流の近くに留置することによって、十分な量の酸素および栄養を細胞に供給することができ、細胞により産生されたホルモンを速やかに患者の血流へと送達することができる。
【0009】
場合によっては、本発明のバイオ人工移植片は、このバイオ人工移植片を覆う内皮細胞層の形成を促進するように構成されており、この内皮細胞層は、半透過性の免疫障壁としても機能してもよい。本発明のバイオ人工移植片は、内皮細胞層と血管壁の間のポケット内に封入することができ、このポケットは、患者の免疫系から細胞を保護する役割を果たすこともできる。
【0010】
本発明のバイオ人工移植片は、生体内で徐々に分解して吸収される1種以上の生体吸収性材料(生体再吸収性材料とも呼ばれる)で構成されていてもよい。例えば、本発明のステントは、生体吸収性ポリマーまたは生体吸収性金属で構成されていてもよく、細胞の生存を支持および維持する生体適合性材料も、生体吸収性ポリマーから構成されていてもよい。したがって、細胞が劣化したり、ホルモンを産生しなくなった時点で、本発明のバイオ人工移植片が患者の体内に吸収されるように構成することができ、これによって、患者の体内からバイオ人工移植片を回収する必要性がなくなる。本発明のバイオ人工移植片が生体内に吸収されて排除された後、必要に応じて、1つ以上の追加の移植片を患者の体内に挿入してもよい。
【0011】
本明細書で述べるバイオ人工移植片はいずれも1種以上の疾患または病態の治療に使用することができる。場合によっては、本発明のバイオ人工移植片を使用して、代謝性疾患(1型糖尿病など)に罹患した患者が治療される。しかしながら、本発明のバイオ人工移植片の使用は、何らかの種類の代謝性疾患の治療や代謝性疾患全般に限定されない。例えば、本発明のバイオ人工移植片は、膵島で構成されていてもよく、この膵島から、インスリン、グルカゴン、アミリン、ソマトスタチン、グレリン、および/または膵ポリペプチドが産生されてもよく、これらのホルモンはどのような組み合わせであってもよく、どのような比率であってもよい。別の方法としてあるいは前述の方法に加えて、本発明のバイオ人工移植片は、甲状腺ホルモン産生細胞、副甲状腺ホルモン産生細胞、または副腎ホルモン(例えばコルチゾール)産生細胞で構成することもできる。別の方法としてあるいは前述の方法に加えて、本発明のバイオ人工移植片は、化学療法剤または生物学的薬剤で構成された、細胞以外の粒子で構成することもできる。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、患者の血管内に留置されるバイオ人工膵臓移植片は、
患者の血管内に留置できるように十分に小さい直径を規定する外面と、血液が流れる内腔を規定する内面とを有するステント;および
前記ステントの内面と外面の少なくとも一部を覆う細胞複合体
を含み、
前記細胞複合体が、膵島細胞と、該膵島細胞の生存を維持するための1種以上の生体適合性材料とを含むことを特徴とする。
このステントは生体吸収性ステントであってもよい。このステントは、複数のストラットを含んでいてもよく、このストラットの少なくとも一部が前記細胞複合体で覆われている。前記膵島細胞は、前記1種以上の生体適合性材料のマトリックスの細孔内に埋め込まれていてもよい。前記膵島細胞は、前記1種以上の生体適合性材料のマトリックス内に分散されていてもよい。前記1種以上の生体適合性材料は生体吸収性材料であってもよい。前記生体吸収性ステントは、吸収速度が約3ヶ月~約3年の生体吸収性材料を含んでいてもよい。前記生体吸収性ステントは、生体吸収性ポリマーおよび/または生体吸収性金属を含んでいてもよい。前記細胞複合体は、生体適合性材料からなる1つ以上の外層を備えていてもよく、この1つ以上の外層により前記膵島細胞が完全に封入されていてもよい。前記生体吸収性ステントの管状壁は、前記血管に酸素を供給し、かつ前記膵島細胞の血管新生を促進するための1つ以上の血流路を含んでいてもよい。前記管状壁は、互いに間隙を空けて配置された複数のストラットを含んでいてもよく、該複数のストラット間の間隙が、前記1つ以上の血流路に相当する。前記移植片は、成長因子および/または抗凝固剤などの1種以上の化学薬剤を含むことができる。前記細胞複合体は、約50,000個~100万個の膵島細胞を含んでいてもよい。前記移植片は、前記患者の血流と前記移植片の間に位置する内皮細胞の増殖を促進するように構成されていてもよい。前記移植片は、前記生体吸収性ステント、前記細胞複合体および前記細胞を取り囲む半透膜をさらに含んでいてもよく、該半透膜は、前記膵島細胞に対する前記患者の免疫応答を実質的に阻止し、ホルモン、酸素、栄養素および老廃物を透過させるように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、患者の血管内に留置されるバイオ人工膵臓移植片は、
膵島の生存が維持されるように構成され、膵島が内部に分散された生体吸収性材料を含み、
前記膵島が前記生体吸収性材料内に封入されていること、および
前記生体吸収性材料が、患者の血管に接触するように構成された外面と、血液が流れる内腔を規定する内面とを備える管状形状を有すること
を特徴とする。
前記管状の生体吸収性材料の直径は、前記患者の血管の内径と実質的に同じであってもよい。前記管状の生体吸収性材料は、複数の開口部を備えるメッシュ様構造を有する壁面を備えていてもよい。前記移植片は、前記患者の血流と前記生体吸収性材料の間に位置する内皮細胞の増殖を促進するように構成することができる。前記膵島細胞は、前記生体吸収性材料のマトリックスの細孔内に埋め込むことができる。前記生体吸収性材料は、1種以上のポリマー材料を含んでいてもよい。前記生体吸収性材料は、生体吸収性材料からなる1つ以上の外層を備えていてもよく、この1つ以上の外層により前記膵島が完全に封入されていてもよい。前記管状の生体吸収性材料の壁面は、前記血管に酸素を供給し、かつ前記膵島の血管新生を促進するための1つ以上の血流路を含んでいてもよい。前記1つ以上の血流路は、前記管状の生体吸収性材料の壁面の開口部を含んでいてもよい。前記移植片における前記膵島の濃度は約5重量%~約99重量%であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、バイオ人工膵臓移植片を形成させる方法は、
膵島の生存を維持できるように構成された1種以上の生体適合性材料と膵島を混合することにより細胞複合体を形成させる工程;および
前記膵島の少なくとも一部が前記生体適合性材料に封入された前記細胞複合体でステント(生体吸収性ステント)の少なくとも一部をコーティングする工程
を含む。
この方法は、前記1種以上の生体適合性材料からなる1つ以上の層で前記細胞複合体をコーティングすることにより、前記膵島を完全に封入する工程をさらに含んでいてもよい。前記細胞複合体で前記ステントをコーティングする工程は、液相堆積法、超音波コーティング法、またはその組み合わせを使用することを含んでいてもよい。前記ステントは、互いに間隙を空けて配置された複数のストラットを有する管状壁を備えていてもよく、前記ステントのコーティング工程は、前記複数のストラットの少なくとも一部を覆うことを含む。前記細胞複合体における膵島の濃度は約5%~約99%である。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、糖尿病に罹患している患者を治療する方法は、
膵島と、該膵島の生存を維持するための1種以上の生体適合性材料とを含む細胞複合体で覆われた生体吸収性ステントを含むバイオ人工膵臓移植片を収縮状態で前記患者の血管内に挿入する工程;および
前記患者の血管内の標的部位において前記生体吸収性ステントを拡張させて、前記バイオ人工膵臓移植片を前記血管の壁面と接触させる工程
を含む。
【0016】
本発明の別の一態様は、バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持された細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、薄膜により境界が規定された1つ以上のポケットを備えること、
前記1つ以上のポケット内に、膵島を含む(ただしこれに限定されない)細胞複合体が配置されていること、および
前記薄膜が、前記膵島の生存を支持するのに十分な速度で、血流から酸素とブドウ糖を前記1つ以上のポケット内へと拡散させるように構成されていること
を特徴とするバイオ人工膵臓を提供する。
【0017】
この態様によるバイオ人工膵臓の実施形態のいくつかにおいて、前記細胞複合体を担持した際の前記細胞複合体支持体の厚さは0.30mm~1.0mmである。前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体支持体は、前記1つ以上のポケット間に接合領域をさらに含んでいてもよく、該接合領域において該細胞複合体支持体が前記足場に接合されている。このような実施形態において、前記バイオ人工膵臓は、前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよく、前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されていてもよく、かつ/または前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよい。前記細胞複合体支持体は、複数のポケットを備え、かつ各ポケット間に接合領域をさらに含んでいてもよく、膵島を含む(ただしこれに限定されない)細胞複合体が各ポケット内に配置されていてもよい。
【0018】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体支持体は、2つの微多孔質薄膜層を備える。各微多孔質薄膜層は、例えば、直径100μm未満の細孔を複数備えていてもよく、各微多孔質薄膜層の厚さは0.1mm未満であってもよい。
【0019】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体における膵島の密度は2.5%~100%であってもよく、例えば、12%~30%であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びており、いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記足場は拡張型ステントである。このような実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記拡張型ステントのストラットに接合されていてもよい。
【0022】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場および前記細胞複合体支持体は、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている。前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場は生体吸収性であってもよい。
【0023】
本発明のさらに別の一態様において、バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持された細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、密閉された複数のポケットと、複数の接合領域とを備え、該接合領域が前記足場に接合されていること、
前記密閉されたポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること、および
前記細胞複合体支持体が、膵島の生存を支持するのに十分な速度で、血流から酸素とブドウ糖を前記密閉されたポケット内へと拡散させるように構成されていること
を特徴とするバイオ人工膵臓が提供される。
前記細胞複合体を担持した際の前記細胞複合体支持体の厚さは0.30mm~1.0mmであってもよい。
【0024】
この態様によるバイオ人工膵臓の実施形態において、前記1つ以上の接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよく、前記細胞複合体支持体が1箇所以上の縫合により前記足場に接合されていてもよく、かつ/または前記1つ以上の接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよい。
【0025】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体支持体は、2つの微多孔質薄膜層を備える。各微多孔質薄膜層は、例えば、直径100μm未満の細孔を複数備えていてもよく、各微多孔質薄膜層の厚さは0.1mm未満であってもよい。
【0026】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体における膵島の密度は、2.5%~100%であってもよく、例えば、12%~30%であってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びており、いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記足場は拡張型ステントである。このような実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記拡張型ステントのストラットに接合されていてもよい。
【0029】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場および前記細胞複合体支持体は、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている。前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場は生体吸収性であってもよい。
【0030】
本発明のさらに別の一態様において、バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持された細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、1つ以上のポケットを備えること、
前記1つ以上のポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること、および
前記細胞複合体を担持した際の前記細胞複合体支持体の厚さが0.30mm~1.0mmであること
を特徴とするバイオ人工膵臓が提供される。
【0031】
一実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記1つ以上のポケット間に接合領域をさらに含み、該接合領域において該細胞複合体支持体が前記足場に接合されている。このような実施形態において、前記バイオ人工膵臓は、前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよく、前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されていてもよく、かつ/または前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよい。前記細胞複合体支持体は、複数のポケットを備え、かつ各ポケット間に接合領域をさらに含んでいてもよく、膵島を含む(ただしこれに限定されない)細胞複合体が各ポケット内に配置されていてもよい。
【0032】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体支持体は、2つの微多孔質薄膜層を備える。各微多孔質薄膜層は、例えば、直径100μm未満の細孔を複数備えていてもよく、各微多孔質薄膜層の厚さは0.1mm未満であってもよい。
【0033】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体における膵島の密度は、2.5%~100%であってもよく、例えば、12%~30%であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びており、いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記足場は拡張型ステントである。このような実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記拡張型ステントのストラットに接合されていてもよい。
【0036】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場および前記細胞複合体支持体は、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている。前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場は生体吸収性であってもよい。
【0037】
本発明のさらに別の一態様において、バイオ人工膵臓であって、
血管の内壁に嵌合するように構成された足場と、
前記足場により支持され、薄膜を備えた細胞複合体支持体と
を含み、
前記足場が、その内部空洞を長手方向に貫通して延びる血流内腔を備えることにより、該足場が血管に嵌合した際に、該内腔を通って血液が流れること、
前記細胞複合体支持体が、前記足場の内部空洞内を長手方向に延びることにより、前記足場が血管に嵌合した際に、該細胞複合体支持体が血流に暴露されること、
前記細胞複合体支持体が、2つの微多孔質薄膜層により境界が規定された1つ以上のポケットを備えること、
前記微多孔質薄膜層の厚さが0.1mm未満であり、その細孔の直径が100μm未満であること、および
前記1つ以上のポケット内に、膵島を含む細胞複合体が配置されていること
を特徴とするバイオ人工膵臓が提供される。
【0038】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体支持体は、前記1つ以上のポケット間に接合領域をさらに含んでいてもよく、該接合領域において該細胞複合体支持体が前記足場に接合されている。このような実施形態において、前記バイオ人工膵臓は、前記接合領域と前記足場が熱接着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよく、前記細胞複合体支持体が縫合により前記足場に接合されていてもよく、かつ/または前記接合領域と前記足場が圧着されていることにより、前記細胞複合体支持体が該足場に接合されていてもよい。前記細胞複合体支持体は、複数のポケットを備え、かつ各ポケット間に接合領域をさらに含んでいてもよく、膵島を含む(ただしこれに限定されない)細胞複合体が各ポケット内に配置されていてもよい。
【0039】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体支持体は、2つの微多孔質薄膜層を備える。各微多孔質薄膜層は、例えば、直径100μm未満の細孔を複数備えていてもよく、各微多孔質薄膜層の厚さは0.1mm未満であってもよい。
【0040】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記細胞複合体における膵島の密度は、2.5%~100%であってもよく、例えば、12%~30%であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の実質的に全周に沿って延びており、いくつかの実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記足場の内部空洞の全周の一部に沿って延びている。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記足場は拡張型ステントである。このような実施形態において、前記細胞複合体支持体は、前記拡張型ステントのストラットに接合されていてもよい。
【0043】
前記実施形態のすべてまたはそのいくつかにおいて、前記足場および前記細胞複合体支持体は、第1の直径を有する送達形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する展開形態とを有し、前記バイオ人工膵臓が、前記送達形態でカテーテルにより血管内の移植部位に送達され、該移植部位において該カテーテルの外部で前記展開形態に拡張するように構成されている。
【0044】
本発明の別の一態様において、足場と細胞複合体支持体を含むバイオ人工膵臓を製造する方法が提供される。この方法の実施形態のいくつかは、
膵島を含む細胞複合体を、細胞複合体支持体のポケット内に開口部から注入する工程;および
前記開口部を閉じる工程
を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記注入工程は、前記開口部から延びる細管を通して前記細胞複合体を注入する工程を含む。いくつかの実施形態は、前記細管を引き抜く工程をさらに含み、この工程は、例えば、前記細胞複合体を注入しながら前記細管を引き抜くことにより行ってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態は、前記足場に前記細胞複合体支持体を接合させる工程を含み、例えば、前記足場に前記細胞複合体支持体を接合させる工程を行った後に、前記細胞複合体支持体のポケット内に前記細胞複合体を注入する工程を行ってもよく、あるいは前記細胞複合体支持体のポケット内に前記細胞複合体を注入する工程を行った後に、前記足場に前記細胞複合体支持体を接合させる工程を行ってもよい。
【0047】
前記細胞複合体支持体が、複数のポケットと複数の接合領域とをさらに含む実施形態において、前記注入工程は、前記複数のポケット内に前記細胞複合体を注入する工程をさらに含んでいてもよく、前記接合工程は、前記足場に前記複数の接合領域を接合する工程を含んでいてもよい。
【0048】
本発明のさらに別の一態様において、糖尿病に罹患している患者を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態において、この方法は、
細胞複合体支持体と、該細胞複合体支持体内に配置され、膵島を含む細胞複合体とを含むバイオ人工膵臓を、前記患者の血管内の移植部位に移植する工程;
前記血管から前記バイオ人工膵臓内へと血液を流れさせる工程;
前記血液から前記細胞複合体内へと酸素を拡散させて、前記膵島における最低酸素濃度を0.05mMに維持する工程;
前記血液から前記細胞複合体内へとブドウ糖を拡散させる工程;
前記血液から前記細胞複合体内へと拡散されたブドウ糖の濃度に応じて前記膵島からインスリンを産生させる工程;および
前記膵島により産生されたインスリンを前記血液に送達する工程
を含む。
いくつかの実施形態において、前記移植工程は、カテーテルを通して前記血管内の移植部位に前記バイオ人工膵臓を送達する工程、および該バイオ人工膵臓を拡張させて送達形態から展開形態にする工程を含む。
【0049】
これらの特徴および利点ならびにその他の特徴および利点は、本明細書において説明されている。
【0050】
本明細書に記載の実施形態の新規な特徴は、添付の請求項において具体的に記載されている。本明細書に記載の実施形態の特徴および利点は、一例としての実施形態および添付の図面に記載の以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A-1B】血管内に留置されたバイオ人工移植片を示す。図1Aは、血管内に留置されたバイオ人工移植片の部分断面透視図を示す。図1Bは、血管内に留置されたバイオ人工移植片の軸方向断面図を示す。
【0052】
図2A-2B】バイオ人工移植片上で再内皮化した血管の軸方向断面図を示す。
【0053】
図3A-3B】1つ以上の半透膜層を有する別のバイオ人工移植片を変形例として示す。図3Aは、バイオ人工移植片の縦断面図を示し、図3Bは、バイオ人工移植片の軸方向断面図を示す。
【0054】
図4A-4C】バルーン送達システムを使用して血管内に留置したバイオ人工移植片を示す。
【0055】
図5】バイオ人工移植片を形成させる方法を示したフローチャートを示す。
【0056】
図6A】本発明の実施形態による細胞複合体支持体の正面図を示す。
【0057】
図6B図6Aの6B-6B線における図6Aの細胞複合体支持体の断面図を示す。
【0058】
図7】細胞複合体支持体の各ポケット内に充填チューブが配置された、図6Aの細胞複合体支持体の一部の正面図を示す。
【0059】
図8】細胞複合体支持体を接合してもよい足場の平面図を示す。
【0060】
図9図8の足場に接合した図6Aの細胞複合体支持体の平面図を示す。
【0061】
図10A-10B】本発明の一実施形態によるバイオ人工膵臓の送達形態および展開形態を示した端面図を示す。
【0062】
図11A-11B】本発明の別の一実施形態によるバイオ人工膵臓の送達形態および展開形態を示した端面図を示す。
【0063】
図12A-12B】本発明のさらに別の一実施形態によるバイオ人工膵臓の送達形態および展開形態を示した端面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本明細書では、患者の体内に移植することにより、患者の血流中に1種以上のホルモンを放出させて、患者の内分泌系を調節するためのバイオ人工移植片(バイオ人工膵臓移植片など)を開示する。本発明のバイオ人工移植片は、血管壁に隣接するように、あるいは血管壁に一体化するように血管内に留置することができる。本発明のバイオ人工移植片は、ホルモンを産生する生きた細胞(膵島など)を含むことができる。本発明のバイオ人工移植片は、患者の血流の近傍に留置されることから、患者の血流にホルモンを速やかに送達することができ、細胞に対して良好な血管新生を促すことができる。
【0065】
図1Aおよび図1Bは、いくつかの実施形態によるバイオ人工移植片100を血管102内に留置した状態を示す。バイオ人工移植片100は、足場104(ステントなど)と、この足場により支持された細胞複合体107とを含んでいてもよい。この細胞複合体107は、細胞(膵島など)と、1種以上の生体適合性材料とを含む。バイオ人工移植片が患者の血管102内に留置されると、血流からブドウ糖と酸素が細胞複合体107に供給され、細胞複合体107から1種以上のホルモンを産生させることができる。この1種以上のホルモンが、バイオ人工移植片100の内腔110および血管102の内部の患者の血液中に放出されることによって、患者の内分泌系が調節されてもよい。場合によっては、このバイオ人工移植片100を使用して、糖尿病を含む代謝性疾患などの疾患または症状を治療する。バイオ人工移植片100を使用して糖尿病を治療する場合、バイオ人工移植片100はバイオ人工膵臓である。
【0066】
細胞複合体はどのような種類のものであってもよい。いくつかの実施形態において、細胞複合体は、膵島を含んでいてもよく、例えば、ヒト成人の膵島(自家移植片または同種移植片);異種膵島(例えばブタ);胎児β細胞;幹細胞から分化した膵島様細胞;肝細胞、膵腺房細胞、膵管細胞などのその他の種類の細胞から分化転換した膵島様細胞;遺伝子組換え非β細胞および/もしくは遺伝子改変非β細胞;またはこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。場合によっては、細胞複合体は、甲状腺ホルモン産生細胞および/または副腎ホルモン産生細胞などの、膵島以外の種類の細胞を含む。また、細胞複合体は、膵島とその他の種類の細胞の組み合わせを含んでいてもよい。細胞の種類は、疾患または症状に応じて選択してもよく、そのような疾患または症状の治療用ホルモンに応じて選択してもよい。様々な種類の細胞を使用することによって、様々な種類のホルモンを産生させてもよく、かつ/または産生されるホルモンの量を変えてもよい。細胞複合体に含まれる細胞が膵島の場合、この膵島は、インスリン、アミリン、グルカゴン、ソマトスタチン、グレリンおよび膵ポリペプチドのうちの1種以上を産生してもよく、これらのホルモンはどのような組み合わせであってもよく、どのような比率であってもよい。いくつかの実施形態において、細胞複合体に含まれる細胞はヒト細胞であり、このヒト細胞は、例えば、細胞の単離を行う研究室から得られたものであってもよい。いくつかの実施形態において、細胞複合体に含まれる細胞は動物細胞(ブタ細胞)である。場合によっては、細胞複合体に含まれる細胞は遺伝子改変細胞である。場合によっては、バイオ人工移植片は幹細胞を含む。
【0067】
細胞複合体は、生体適合性材料のマトリックス内に埋め込まれた細胞を含んでいてもよく、このマトリックスは、この細胞の生存を維持するように構成されていてもよい。この細胞は、生体適合性材料に封入されていてもよい。場合によっては、図1Bに示すように、細胞複合体107は、生体適合性材料108からなる1つ以上の外層112を含み、この外層112は、細胞106を覆うことにより実質的に完全に細胞106を封入することによって、膵島細胞と患者の免疫応答(例えば、血流中のリンパ球、抗体、マクロファージおよび/または補体分子)の間に障壁を形成することができる。生体適合性材料108は半透過性材料であってもよく、生体適合性材料108が半透過性材料であると、栄養素(ブドウ糖など)および/または酸素が該生体適合性材料108を透過して拡散することにより細胞106へと到達し、かつ細胞106から放出されたホルモンおよび/または老廃物が該生体適合性材料108を透過して拡散することにより細胞複合体107から出て行くことが可能となる。場合によっては、生体適合性材料108は、1種以上の栄養素が浸透するものであってもよい。
【0068】
生体適合性材料108は、細胞106を含む細孔の網状構造を備えた多孔質材料であってもよい。したがって、細胞106は生体適合性材料108のマトリックス内に分散されていてもよい。場合によっては、生体適合性材料108のマトリックス内において細胞106が集塊を形成している。生体適合性材料108は、生体吸収性材料であってもよく、すなわち、生体内で安全に溶解し、かつ/または生体内に吸収されるように構成された材料であってもよい。場合によっては、生体適合性材料108は、人工ポリマー材料および/または天然ポリマー材料を含む。特定の実施形態において、生体適合性材料108は、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)、アガロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらの任意の組み合わせなどを含む。いくつかの実施形態において、生体適合性材料108は、2種以上のポリマーを含む。
【0069】
バイオ人工移植片100の細胞複合体107に含まれる細胞の数およびその濃度は、様々に変更してもよい。いくつかの実施形態において、細胞複合体107は、約50,000~100万個(例えば、約50,000~100,000個、約500,000~100万個、または約100,000~約100万個)の細胞(例えば膵島)を含む。いくつかの実施形態において、細胞複合体107に含まれる細胞(例えば膵島)の濃度(重量濃度)は、約5%~約100%(例えば、約5%~99%、約5%~約90%、約50%~約90%、または約60%~約80%)である。
【0070】
生体適合性材料108は、生きた細胞および/または生きた組織に実質的に有害でなく毒性を持たない材料であれば、どのような材料であってもよい。生体適合性材料108は、所定の期間にわたって膵島の生存を維持できるように構成されていてもよい。場合によっては、この所定の期間は、約3ヶ月~約5年間(例えば、約6ヶ月~2年間、約3ヶ月~2年間、約1年~3年間、または約9ヶ月~2年間)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、生体適合性材料108は、細胞106の生存の維持を補助する1種以上の薬剤を含む。例えば、1種以上の酵素および/またはpH調整剤を、生体適合性材料108の内部に注入または組み込むことによって、細胞106に好適な環境を維持してもよい。場合によっては、VEG-Aおよび/またはVEG-Fを用いて血管新生を促進する。生体適合性材料108は、内皮細胞や間葉系幹細胞などのその他の種類の細胞も含むことができる。また、生体適合性材料108は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ラミニンおよび/またはプロテオグリカンなどの細胞外マトリックス成分を含むこともできる。さらに、生体適合性材料108は、酸素ラジカル捕捉剤および/または酸素含有分子を含んでいてもよい。
【0071】
足場104は、通常、管状壁を備えていてもよく、血管102の内部でステントが展開されると、この管状壁の外面によって、血管102の内部にステントを留置できるように十分に小さい外径が規定され、この管状壁の内面によって、血液が流れる内腔110が規定される。例えば、足場104の壁面は、互いに間隙を空けて配置されたストラットで構成された網状構造を含んでいてもよい。このストラットは、ワイヤーまたは細線で構成されたメッシュ構造または網目状構造であってもよく、ワイヤーとワイヤーの間または細線と細線の間に開口部(間隙または穴とも呼ぶ)を備えている。足場104により、細胞複合体107(細胞106と生体適合性材料108)が支持される。例えば、足場104の内面の少なくとも一部は、細胞マトリックス107で覆われていてもよい。場合によっては、足場104の外面の少なくとも一部も、細胞マトリックス107で覆われている(あるいは、足場104の内面は細胞マトリックス107で覆われていないが、足場104の外面の少なくとも一部が細胞マトリックス107で覆われている)。足場が複数のストラットを備える実施形態において、足場104のストラットの少なくとも一部は細胞マトリックス107で覆われていてもよい。場合によっては、足場104は、径方向に折りたたむことができ、かつ/または径方向に拡張できるように設計されている。
【0072】
いくつかの実施形態において、細胞複合体107が、足場104の開口部(例えば、ステントのストラット間の開口部)の一部またはそのすべてを部分的または実質的に完全に塞ぐように、細胞複合体107により足場104が覆われている。足場104のストラット間の開口部の少なくとも一部が塞がれずに残った場合、塞がれなかった開口部は、バイオ人工移植片100の壁内を通る経路として機能することによって、細胞106および/または血管102への酸素の供給を向上させてもよい。いくつかの実施形態において、バイオ人工移植片100の壁面に沿った領域における足場104の開口部の大きさは、約0.5mm2~25mm2(例えば、約1~5mm2、約5~25mm2、または約0.5~20mm2)である。バイオ人工移植片100の壁面は、血流路として機能する1つ以上の別の開口部を備えていてもよい。このような、バイオ人工移植片100の壁面に沿った追加の血流開口部または別の血流開口部の大きさは、100μm2~10,000μm2(例えば、約144~10,000μm2、約1,000~5,000μm2、または約500~9,000μm2)であってもよい。
【0073】
足場104は、適切な材料であればどのような材料から構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、足場104は、生体内で溶解し、かつ/または生体内に吸収されるように構成された1種以上の生体吸収性材料を含む。いくつかの実施形態において、足場104の生体吸収性材料は、細胞複合体107の生体適合性材料108と同じ生体吸収性材料を含む。いくつかの実施形態において、足場104の生体吸収性材料は、細胞複合体107の生体適合性材料108とは異なる材料を含む。足場104の生体吸収性材料は、ポリ乳酸系ポリマー、チロシンポリカーボネートポリマーおよびサリチル酸ポリマーのうちの1種以上などのポリマー系材料を含んでいてもよい。ステント104の生体吸収性材料は、鉄、マグネシウムおよび亜鉛のうちの1種以上などの金属系材料を含んでいてもよい。この金属系材料は1種以上の金属合金を含んでいてもよい。
【0074】
いくつかの変形例において、バイオ人工移植片100は、実質的に生体吸収性ではない1種以上の材料を含む。例えば、足場104および/または生体適合性材料108は、生体内で実質的に分解されず、かつ/または実質的に生体内に吸収されない材料で構成されていてもよい。このような場合、バイオ人工移植片100またはその一部は、患者の血管から回収されるように構成されていてもよい。例えば、細胞106が十分な量のホルモンを産生できなくなった時点で、バイオ人工移植片100を患者の体内から回収してもよい。特定の一実施形態において、生体適合性材料108と細胞106は生体吸収性であるが、足場104は実質的に生体吸収性ではない(例えば、ニチノール、チタン、ステンレス鋼、および/または生体内に吸収されないポリマーで構成されている)。したがって、生体適合性材料108と細胞106が生体内に吸収された時点で(あるいはその一部が吸収された時点で)、例えば、回収用カテーテル装置を使用して足場104を回収してもよい。いくつかの実施形態において、ステント104は生体内に吸収されない材料で構成されている。
【0075】
足場104が生体吸収性材料で構成されている場合、この生体吸収性材料は、所定の期間内に生体内で溶解して吸収されるように構成されていてもよい。この所定の期間は、生体吸収性材料の種類、足場104の大きさ、および/または患者の体内のバイオ人工移植片100の位置などの様々な要因に応じて様々に変動しうる。いくつかの実施形態において、足場104の生体吸収性材料の吸収速度は、約3ヶ月~約3年間(例えば、約6ヶ月~2年間、約3ヶ月~2年間、約1年~3年間、または約9ヶ月~2年間)であってもよい。いくつかの実施形態において、足場104の生体吸収性材料は、細胞106がホルモンを産生しなくなる時点付近で生体内に吸収されるように構成されている。いくつかの実施形態において、足場104の生体吸収性材料は、細胞106がホルモンを産生できなくなった時点を過ぎてから生体内に吸収されるように構成されている。このような構成とすることによって、細胞106からホルモンが産生されている期間から少なくとも細胞106がホルモンの産生を停止するまで、この細胞106を含む細胞複合体が確実に足場104の生体吸収性材料により支持される。いくつかの実施形態において、足場104の生体吸収性材料は、細胞106がホルモンを産生できなくなる前に生体内に吸収されるように構成されている。例えば、細胞106は、足場104が吸収された後でも、「ポケット」内において機能し続けてもよい。
【0076】
バイオ人工移植片100は、患者の体内のどの動脈内に留置してもよく、患者の体内のどの静脈内に留置してもよい。場合によっては、酸素を豊富に含む血液および栄養素に細胞複合体を暴露することができるように、動脈内に留置することが好ましい。すなわち、動脈は、静脈よりも酸素分圧が高い場合がある。さらに、動脈内の血流は、体内でも比較的免疫保護された部位であってもよい。また、静脈は、血流が遅く、血圧が低い場合があることから、恐らくは血栓のリスクが高い。一方で、静脈が損傷を受けた場合、生体は側副静脈経路を形成できる可能性があることから、静脈内にバイオ人工移植片を留置することにも利点がある。
【0077】
いくつかの実施形態において、血管102の直径は少なくとも約0.5cmであってもよい。いくつかの実施形態において、血管102の直径は、約0.5cm~約4cm(例えば、約0.5~3cm、約1~2cm、約1~3cm、約2~3cm、約1~4cm、約3~4cm、約1.5~3.5cm、または約2.5~4cm)であってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、バイオ人工移植片100は、患者の膵臓内、脾臓内、腎臓内、肝臓内、心臓内および/もしくはその他の臓器内の動脈もしくは静脈の内部、または患者の膵臓、脾臓、腎臓、肝臓、心臓および/もしくはその他の臓器の近傍の動脈もしくは静脈の内部に留置される。場合によっては、バイオ人工移植片100は、特定の臓器から離れた部位または臓器全般から離れた部位に留置される。いくつかの実施形態において、脾動脈、脾静脈、腹腔動脈、腸骨動脈、腎動脈下大動脈、胸大動脈、腹大動脈、頸動脈、肝動脈、後膵動脈、大膵動脈、膵横動脈、前後上膵十二指腸動脈、前後下膵十二指腸動脈、前後上膵十二指腸静脈および/または前後下膵十二指腸静脈のうちの1箇所以上に1つ以上のバイオ人工移植片100を展開してもよい。場合によっては、脾臓は不可欠な臓器とは考えられていない場合があることから、バイオ人工移植片100を脾臓の近傍またはその内部に留置する。場合によっては、脾動脈は比較的長いため、複数のステントおよび/または長いステントを展開できることから、バイオ人工移植片100を脾動脈に留置することによって、いくつかの利点が得られる。また、場合によっては、腎動脈下大動脈は比較的大きな直径を有しうるため、生理学的な細胞量を支持できる大きな直径のステントを留置できることから、バイオ人工移植片100を腎動脈下大動脈に留置することによって、いくつかの利点が得られる。さらに、腎動脈下大動脈は、大腿動脈から比較的容易にアクセス可能であってもよく、ステント内再狭窄が極めて起こりにくい。いくつかの実施形態において、バイオ人工移植片100は、腎動脈下大動脈および/または腸骨動脈などの腸骨動脈分岐部またはその近傍に留置される。場合によっては、腸骨動脈分岐部などの分岐部またはその近傍にバイオ人工移植片100を移植することによって、バイオ人工移植片100が血管内を移動してしまう可能性を低下させてもよい。また、腹大動脈および腸骨動脈は、比較的直径が大きいことから、ステント内再狭窄がほとんど発生しないと考えられる。バイオ人工移植片100の留置に関しては、血栓形成の可能性、免疫反応の可能性、血管の形状(例えば、蛇行した血管は、まっすぐな血管と比べてバイオ人工移植片の留置が難しい場合がある)などが考慮に入れられる場合もある。場合によっては、2つ以上のバイオ人工移植片100を患者の血管系に留置する。例えば、2つ以上のバイオ人工移植片100を、同じ動脈内、別の動脈内、同じ静脈内、別の静脈内、または動脈と静脈の任意の組み合わせにおいて展開してもよい。
【0079】
バイオ人工移植片100は、患者の血管102に展開されると、該血管102の内壁と接触するように構成することができる。バイオ人工移植片100の外面の直径は、血管102の内径と実質的に同じであってもよい。場合によっては、足場104は、血流による力に耐えられるように構成されていてもよい。すなわち、足場104が折りたたまれることなく、血液が足場104の内腔110を通って流れることが可能となる。足場104は、折りたたまれることなく、血管102の壁面からの半径方向内向きの圧力に耐えられるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、足場104は、血管内腔の直径を部分的かつ効果的に増大させるのに十分な半径方向力を加えることができるように構成することができる。このような構成とすることによって、血管102の内腔を閉塞することなく、全体的な直径が大きいステントを留置することが可能であってもよい。
【0080】
場合によっては、足場104と生体適合性材料108は、管状の連続した生体吸収性材料で構成されていてもよく、その内部に細胞106が分散されていてもよい。この管状の生体吸収性材料の壁面は、メッシュ状または網目状のストラット間に開口部を有するメッシュ構造または網目状構造を備えていてもよく、これらの開口部は、本明細書で述べるように、細胞106および/または血管102に酸素を供給するための血流路として機能してもよい。場合によっては、本明細書で述べるように、管状の生体吸収性材料の壁面は、ストラット間において血流路として機能する複数の開口部の代わりに別の開口部を備えており、あるいは、ストラット間において血流路として機能する複数の開口部に加えて別の開口部を備えている。管状の生体吸収性材料の壁面は、血管102の内壁に接着するように構成されてもよく、このような構成とすることによって、足場104の内腔110を血液が流れることができるように、この内腔110の形状を維持してもよい。
【0081】
バイオ人工移植片100は、患者の体内に移植した際に遭遇すると予想される温度範囲内で動作するように設計してもよい。すなわち、バイオ人工移植片100は、名目上、平均体温付近(例えば約37℃)および体温の変動幅の範囲内で動作するように構成することができる。
【0082】
バイオ人工移植片100の大きさは、例えば、血管102の大きさに応じて変更してもよい。いくつかの実施形態において、バイオ人工移植片100の長さは、約2cm~10cm(例えば、約2~3cm、約3~10cm、約5~10cm、または約6~10cm)である。
【0083】
場合によっては、再内皮化により増殖した内皮層によってバイオ人工移植片が覆われる。図2Aおよび図2Bは、いくつかの実施形態において、バイオ人工移植片100上で再内皮化した血管壁102の一例を示す。図2Aは、移植されたバイオ人工移植片100が、血糖値の変化に応答して、バイオ人工移植片100の内腔110内(および血管102内)でインスリンを分泌することを示す。図2Bに示すように、一定期間の経過後、バイオ人工移植片100上に内皮細胞層120が形成されてもよい。この再内皮化により、内皮細胞層120と血管壁102の間に、バイオ人工移植片100を留置可能なスペース、すなわち「ポケット」を形成することができる。バイオ人工移植片100内の細胞は、ポケット内においてホルモン(例えばインスリン)を産生し続け、内腔110内へとホルモンを分泌する。内皮細胞層120は、患者の免疫応答から細胞106を保護するとともに、膵島細胞106への栄養素および/または酸素の拡散と、細胞106からのホルモンおよび/または老廃物の拡散とを可能とする半透過性の障壁として機能してもよい。内皮細胞層120は、本明細書で述べるように、生体適合性材料108からなる1つ以上の外層112を備えていてもよく、このような外層を備えていなくてもよい。
【0084】
バイオ人工移植片100(例えば、足場104および/または生体適合性材料108)の生体吸収性材料は、細胞106がホルモン(例えばインスリン)を産生し続けている間に、徐々に生体内に吸収されるように構成することができる。細胞106は、一定期間が経過すると、ホルモン(例えばインスリン)を産生することができなくなってもよく、これは、生体適合性材料108が生体内に吸収されることによるものであってもよく、細胞の自然寿命によるものであってもよく、その両方によるものであってもよい。バイオ人工移植片が吸収されて、ポケット内において細胞が崩壊し、かつ/またはホルモン(例えばインスリン)の分泌を停止した時点で、新たなバイオ人工移植片を血管102内に展開してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、バイオ人工移植片は、1種以上の化学薬剤(例えば、低分子、薬剤および/またはタンパク質)が含まれるように修飾されてもよい。例えば、バイオ人工移植片100は、内皮細胞の増殖を促進するように、血管内皮細胞成長因子(例えば、VEG-Aおよび/またはVEG-F)などの成長因子を含んでいてもよい。バイオ人工移植片100は、抗凝固剤(ヘパリンなど)を含んでいてもよい。前記薬剤の代わりとなる化学薬剤または追加の化学薬剤として、TNF-α阻害剤などの抗炎症薬、および/またはシロリムスやタクロリムスなどの免疫抑制剤を挙げることができる。このような化学薬剤は、細胞複合体および/または足場104の生体適合性材料108の表面に塗布されていてもよく、またはこれらの生体適合性材料に組み込まれていてもよい。いくつかの実施形態によれば、バイオ人工移植片100は、膵島細胞以外の1種以上の細胞をさらに含むことができる。例えば、甲状腺ホルモン(例えば、甲状腺ホルモンT4/T3)が放出されるように、瀘胞細胞を細胞複合体108に組み込んでもよく、内分泌系を調節するその他の薬剤を細胞複合体108に組み込んでもよい。細胞複合体108は、副甲状腺ホルモン(PTH)を産生する細胞、副腎ホルモン(例えば、コルチゾールおよび/もしくはアルドステロン)を産生する細胞、ならびに/または性ホルモンを産生する細胞を含んでいてもよい。また、バイオ人工移植片100が幹細胞を含む場合もある。
【0086】
バイオ人工移植片は、どのような方法で患者の体内に送達してもよい。場合によっては、バイオ人工移植片は、カテーテル法を使用して血管内に送達される。また、本明細書で述べるように、バイオ人工移植片は折りたたむことができ、拡張することもできる。したがって、いくつかの実施形態において、バイオ人工移植片は、血管内手技を使用して血管内に展開することができる。そのような手技の一例では、バルーン送達システムが使用される。
【0087】
図3Aおよび図3Bは、バイオ人工移植片100の一変形例を示す。このバイオ人工移植片100では、半透過性材料からなる1つ以上の層によって、足場104と細胞複合体107と細胞106が取り囲まれている。図3Aは、バイオ人工移植片100の縦断面図を示し、図3Bは、バイオ人工移植片100の軸方向断面図を示す。1つ以上の半透膜層320により、足場104と細胞複合体107を封入することができる。すなわち、1つ以上の半透膜層320は、足場の内径350と足場の外径352を覆うことができる。この1つ以上の半透膜層320の間に細胞複合体107を注入することができる。1つ以上の半透膜層320は、細胞106に対する患者の免疫応答を実質的に阻止することができ、かつ細胞複合体内の細胞への酸素および栄養素の透過と、細胞複合体内の細胞からのホルモンおよび老廃物の透過が可能な生体適合性材料であれば、どのような生体適合性材料で構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の半透膜層320は、天然ポリマーおよび/または合成ポリマー(例えばPTFE)で構成されている。場合によっては、1つ以上の半透膜層320は、バイオ人工移植片100の近位端340と遠位端342で互いに密閉接合された2枚の半透過性材料を含む。いくつかの実施形態において、この2枚の半透過性材料は、(例えば加熱成形により)互いに密閉接合される。いくつかの実施形態において、シーラント360を用いて、2枚の半透過性材料を互いに密閉接合する。シーラント360は、患者の血管内に留置中に密閉を維持することができる生体適合性材料であれば、どのようなもので構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、シーラント360は、生体適合性接着剤および/または生体適合性化学物質からなるシーラントであってもよい。
【0088】
図4A~4Cは、バルーン送達システムを使用して血管内に留置したバイオ人工移植片の一例を示す。バルーン送達システムは、膨張式バルーン450とガイドワイヤー452を備えていてもよい。バイオ人工移植片100のステントを折りたたんだ状態で、バイオ人工移植片100の内部に、空気を抜いた状態のバルーン450を装着して、バイオ人工移植片100を血管内に挿入することができる。バイオ人工移植片100は、バルーン450に装着した状態で製造してもよく、あるいは、バイオ人工移植片100を製造した後に、バルーン450に装着してもよい。図4Aは、バイオ人工移植片100を装着したバルーン450が、ガイドワイヤー452の補助によって、血管102の内腔を通るように案内されることを示している。バルーン送達システムが挿入されるアクセス部位は、標的血管と標的血管内の標的部位に応じて様々に異なっていてもよい。アクセス部位が、大腿動脈や橈骨動脈などの動脈である場合もある。
【0089】
図4Bに示すように、バルーン送達システムが血管102内の標的部位に到達したら、バルーン450を膨張させて、血管102内でバルーン450を拡張させることができる。バルーン450を拡張することによって、バイオ人工移植片100を拡張させて、折りたたまれた状態から拡張された状態へと展開させ、血管102の内面と接触させることができる。場合によっては、バイオ人工移植片100は、展開されて完全に拡張した状態またはほぼ完全に拡張した状態になる。バイオ人工移植片100を拡張させた後、バルーン450の空気を抜き、ガイドワイヤー452を用いて血管102からバルーン450を除去することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、1種以上の放射線不透過性マーカーを使用して、患者の体内への送達中に、バルーン送達システムおよび/またはバイオ人工移植片100を可視化してもよい。例えば、バイオ人工移植片100の両端またはその近傍にリング状マーカーを配置し、高周波イメージング技術を使用することによって、医師がこのリング状マーカーを確認することができ、これによって、患者の体内への送達中にバイオ人工移植片100の位置を推定できるようにしてもよい。バイオ人工移植片100を患者の体内に留置した後、バルーン送達システムおよび/またはバイオ人工移植片100と患者の体内から放射線不透過性マーカーを除去可能であってもよい。
【0091】
別の実施形態において、バイオ人工移植片100は、バルーンを使用せずに血管102内に移植できるように構成されている。例えば、足場104(図1A~3B)は、自己拡張型ステントであってもよい。特定の一変形例において、この自己拡張型ステントは、送達カテーテル内に圧縮収納されて血管102内に留置してもよい。送達カテーテルの外側シースを引き抜くことによって、自己拡張型ステントをばねのように拡張させて、血管102内の標的部位において所望の拡張径とすることができる。
【0092】
本明細書で述べるバイオ人工移植片は、様々な技術を使用して製造することができる。図5は、いくつかの実施形態に従ってバイオ人工移植片を形成させる方法を示したフローチャートを示す。例えば、生体吸収性であってもよい1種以上の生体適合性材料と細胞を組み合わせることによって、細胞複合体を形成してもよい(502)。特定の実施形態において、生体適合性材料は、アルギン酸塩、PEG、アガロースおよび/またはコラーゲンポリマーを含んでいてもよい。生体適合性ポリマーの溶液(例えば水溶液)と膵島細胞を混合して、スラリーを形成してもよい。いくつかの実施形態において、1種以上の化学薬剤(例えば薬物)および/または膵島細胞以外の細胞をスラリーに加えて、これらの化学薬剤および/または膵島細胞以外の細胞を細胞複合体に組み込む。
【0093】
患者の血管内に挿入するように設計された足場(例えばステント)は、細胞複合体でコーティングすることができる(504)。足場は、生体吸収性ポリマーまたは金属ステントなどの、生体吸収性材料および/または生体適合性材料で構成されていてもよい。場合によっては、1種以上の化学薬剤で足場を前処理して、ステントへの細胞複合体の接着を促進する。この化学薬剤は、1種以上のペプチドコーティングを含んでいてもよい。例えば、RGDモチーフ(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸からなるペプチド)などの、インテグリン結合モチーフを用いて、足場への細胞の接着を促進することができる。場合によっては、生体適合性材料からなる1つ以上の層で足場をコーティングする。いくつかの実施形態において、患者の体内に留置した際に足場から化学薬剤(例えば薬物)が溶出されるように、足場は1種以上の化学薬剤を含む。1種以上の化学薬剤は、ステントにコーティングされていてもよく、かつ/または足場の材料中に組み込まれていてもよい。様々なコーティング法を使用してもよい。いくつかの実施形態において、液相堆積法、超音波コーティング法、スプレー堆積法、またはこれらの任意の組み合わせを使用して細胞複合体を堆積させる。いくつかの実施形態において、細胞複合体は、溶液(例えば水溶液)として堆積させる。細胞複合体を含む溶液を堆積させた後、ある程度乾燥させてもよい。場合によっては、細胞複合体を含む溶液は、溶液の状態(例えば水分を保ったまま)で維持してもよい。
【0094】
いくつかの実施形態において、足場上に堆積させた細胞複合体は、生体適合性材料からなる1つ以上の層でコーティングしてもよい(506)。生体適合性コーティングは、患者の血流中を流れる血液に暴露されることによって細胞が足場から徐々に削り取られないように、細胞複合体に含まれる細胞を封入する役割を果たし、これと同時に、酸素およびブドウ糖が細胞に到達でき、細胞から老廃物が除去できるように構成されていてもよい。これらの生体適合性コーティングの各層は、非常に薄くてもよく、例えば、約1nm~約1mmであってもよい。生体適合性コーティング全体の厚さは、約1nm~約5mmであってもよい。
【0095】
図6A図9は、バイオ人工膵臓600の一実施形態を示す。膵島と生体適合性材料から構成された細胞複合体602は、細胞複合体支持体606のポケット604内に配置される。いくつかの実施形態において、細胞複合体602における膵島の密度は、2.5%~100%であってもよく、12%~30%であってもよい。細胞複合体602における膵島の密度が100%未満である実施形態では、多孔質媒体が残りの割合を占めてもよく、この多孔質媒体としては、例えば、アルギン酸塩、アガロース、PEG、キトサンなどのうちの1種以上が挙げられる。
【0096】
バイオ人工膵臓が血管内に移植された際に膵島の生存を維持し、かつ血糖値に応答してインスリンを放出することができるように、バイオ人工膵臓内を流れる血液(恐らくは血管壁内の栄養血管の毛細血管網からの血液)から供給される酸素とブドウ糖をバイオ人工膵臓内の膵島に到達させなければならない。血糖値が高いほど、膵島による酸素消費量は多くなる。したがって、本発明のバイオ人工膵臓移植片は、膵島の生存を維持するのに十分な速度で、血流から酸素とブドウ糖が細胞複合体の内部へと拡散可能な構造を備える。また、本発明のバイオ人工膵臓移植片の細胞複合体内の膵島の密度は、膵島に到達する酸素濃度で支持可能な膵島密度を超えず、かつ細胞複合体内の膵島に到達したブドウ糖に応答して十分な量のインスリンを供給することが可能な膵島密度である。本明細書に記載の実施形態において、最低濃度0.05mMの酸素が細胞複合体支持体を通過して細胞複合体内のすべての膵島に行き渡る。
【0097】
この実施形態において、細胞複合体支持体606は、ポケット604の境界を規定する2つの微多孔質薄膜層608,610を備える。微多孔質薄膜層608と微多孔質薄膜層610は、細胞複合体支持体602の外縁と各ポケット604間の接合領域612において互いに接合されている。細胞複合体602は各ポケット604内に配置される。いくつかの実施形態において、各微多孔質薄膜層の厚さは0.1mm未満である。いくつかの実施形態において、足場を通って流れる血液中のブドウ糖と酸素が、膵島の生存を維持するのに十分な速度でポケット604内に侵入して細胞複合体602に到達することができ、かつ細胞複合体内の膵島により産生されたインスリンが血流に到達できるように、微多孔質薄膜層の細孔の直径は100μm未満であってもよい。また、微多孔質薄膜層の細孔は、バイオ人工膵臓600が移植された血管の栄養毛細血管からブドウ糖および/または酸素が細胞複合体に到達できるように構成されていてもよい。血管内にバイオ人工膵臓を留置することによって、その血管内で栄養毛細血管網の血管新生が起こってもよい。いくつかの実施形態において、図6Bに示すように、構築された細胞複合体支持体の厚さTは、0.30mm~1.0mmであってもよい。
【0098】
本発明の実施形態において、細胞複合体支持体606が備える2つの微多孔質薄膜層608,610は、ePTFE、親水性ePTFE、ナイロン、ポリエチレン、PEEKなどのポリマーで構成されていてもよい。微多孔質薄膜層608の上面において、微多孔質薄膜層608の外縁618の全周と接合領域612部位に接着剤(例えばFEPやポリウレタンなど)を塗布し、微多孔質薄膜層608と微多孔質薄膜層610を熱接着してもよい。細管620(例えば、直径が300~500μmのポリエチレン管)を、各ポケット604部位の微多孔質薄膜層608の上面に配置してもよい。図7に示すように、各細管620はポケットの一端において開放端を有し、各細管620の一部が微多孔質薄膜層608の境界を超えて延びている。次に、第2の微多孔質薄膜層610の底面を微多孔質薄膜層608の上面に載せて、第2の微多孔質薄膜層610を細管620上に覆い被せてもよい。次に、オーブンまたはシール装置を用いて2枚の微多孔質薄膜層と接着剤を(例えば200°F~500°Fに)加熱することにより、接合領域612と細胞複合体支持体606の外縁618において微多孔質薄膜層を互いに熱接着してもよい。
【0099】
別の実施形態では、接着剤を使用せずに、微多孔質薄膜層608,610を構成するポリマーの融点が十分に低いことを利用して微多孔質薄膜層608,610同士を接合する。接合領域612および/または外縁618において、微多孔質薄膜層608の底面と微多孔質薄膜層610の上面に熱を加えることによって、微多孔質薄膜層608,610を構成するポリマーを局所的に溶解させる。次に、ポリマーが再凝固して、接合領域612および/または外縁618において溶着部が形成される。
【0100】
細胞複合体602と細胞複合体支持体606を製造する方法の1つとして、微多孔質ヒドロゲル(例えば、アルギン酸塩、フィブリン、キトサン、アガロース、ポリエチレングリコール)と膵島を37℃で混合して膵島密度を12%~30%とし、ポリマー架橋剤を加えてヒドロゲルを硬化させることによって、膵島を保護するための物理的安定性を高めてもよい。ハミルトンシリンジを用いて、細管620を通して細胞複合体をポケット604内に注入してもよい。細胞複合体を注入しながら、各ポケット604から各細管620を徐々に引き抜くことにより、各ポケット内に細胞複合体が均一に分布されるようにしてもよい。細胞複合体の注入が完了し、各ポケット604から各細管620を引き抜いたら、前述の方法で各ポケット604の外縁をヒートシールすることにより各ポケットを密閉し、細胞複合体の漏れを防いでもよい。各ポケット604をヒートシールした後、細胞複合体支持体を室温(すなわち4℃)で冷却してもよい。細胞複合体支持体606への細胞複合体602の注入は、足場に細胞複合体支持体を接合する前に行ってもよく、足場に細胞複合体支持体を接合した後に行ってもよい。
【0101】
バイオ人工膵臓600は、下行大動脈などの血管の内壁に嵌合できるように、円筒体として構成してもよく、またはその一部を円筒体として構成してもよい。図8および図9は、説明を目的として、足場614および細胞複合体支持体606を平面状に示したものである。この実施形態において、足場614は、その内部に空洞を持つ円筒状のメッシュステントである。足場614は、例えば、ニチノールなどの形状記憶合金で形成してもよく、生体吸収性材料で形成してもよい。足場614は、圧縮して患者の血管内(下行大動脈など)に送達することができ、(例えば自己拡張により)拡張して患者の血管内に展開することができる。細胞複合体支持体606の接合領域612および/または外縁618は、熱接着、圧着、縫合、接着剤、またはその他の適切な接合機構によって、足場614のフィラメント616に接合することができる。この実施形態において、細胞複合体支持体606は、実質的に足場の内部空洞全体を取り囲んでいる。別の実施形態において、細胞複合体支持体は、足場の内部空洞の一部のみの境界を規定している。
【0102】
いくつかの実施形態において、一方または両方の微多孔質薄膜層は、その外表面に、ヒドロゲル、ヘパリン、成長因子(例えば、VEGFやVEGAなど)および免疫療法剤(例えば、シロリムスやタクロリムスなど)のうちの1種以上を備えていてもよい。
【0103】
本発明のバイオ人工膵臓は、カテーテルを通して腎動脈下大動脈などの血管内の所望の移植部位に送達してもよい。送達形態のバイオ人工膵臓の直径は小さくてもよく、展開形態のバイオ人工膵臓の直径は大きくてもよい。送達形態のバイオ人工膵臓の直径は1~10mmであってもよく、展開形態のバイオ人工膵臓の直径は5mm~25mmであってもよい。
【0104】
図10A~Bは、本発明の一実施形態によるバイオ人工膵臓700の送達形態および展開形態を示す。前述の実施形態と同様に、バイオ人工膵臓700は、足場714に接合された細胞複合体支持体706を備える。細胞複合体(例えば、前述した膵島と微多孔質ヒドロゲルからなる細胞複合体)を細胞複合体支持体706内に担持させる。図10Aに示すように、バイオ人工膵臓700は、直径が小さくなった送達形態で送達カテーテル730内に装着され、このとき、細胞複合体を含むポケット704は半径方向内向きに延びており、接合領域712は足場714に接合された状態のままである。足場714の外表面(例えば、足場のストラット734など)は、カテーテル730の内面の突出部732に係合されている。血管736内の所望の移植部位において、カテーテルの遠位端からバイオ人工膵臓700が押し出されると、足場714が自己拡張し、各ポケット704が半径方向外向きに移動する。図10A~Bは、必ずしも正確な寸法ではない。
【0105】
図11A~Bは、本発明の別の一実施形態によるバイオ人工膵臓800の送達形態および展開形態を示す。前述の実施形態と同様に、バイオ人工膵臓800は、足場814に接合された細胞複合体支持体806を備える。細胞複合体(例えば、前述した膵島と微多孔質ヒドロゲルからなる細胞複合体)を細胞複合体支持体806内に担持させる。この実施形態では、他の実施形態と比べて、細胞複合体支持体806により覆われている足場814の内表面の面積が小さく、足場814は、閉じた円筒形でなく、開放端838と開放端840を有している。図11Aに示すように、バイオ人工膵臓800は、足場814が螺旋状に巻かれて直径が小さくなった送達形態で送達カテーテル830内に装着されている。血管836内の所望の移植部位においてカテーテルの遠位端からバイオ人工膵臓800が押し出されると、螺旋状に巻かれた足場814がほどけて自己拡張する。図11Bは、足場814がほどけて、開放端同士が実質的に対向している状態を示す。しかしながら、血管836の直径に応じて、足場814の開放端838と開放端840は離れて配置されて、側面が閉じていない円筒形または細管を形作ってもよく、あるいは、開放端838と開放端840が一部重なって一部が螺旋状になっていてもよい。図11A~Bは、必ずしも正確な寸法ではない。
【0106】
図12A~Bは、本発明のさらに別の一実施形態によるバイオ人工膵臓900の送達形態および展開形態を示す。前述の実施形態と同様に、バイオ人工膵臓900は、足場914に接合された細胞複合体支持体906を備える。細胞複合体(例えば、前述した膵島と微多孔質ヒドロゲルからなる細胞複合体)を細胞複合体支持体906内に担持させる。図12Aに示すように、バイオ人工膵臓900は、細胞複合体支持体906と足場914が半径方向内向きに折りたたまれた部分938を形成することにより直径が小さくなった送達形態で送達カテーテル930内に装着されている。血管936内の所望の移植部位においてカテーテルの遠位端からバイオ人工膵臓900が押し出されると、図12Bに示すように、足場914が自己拡張して、折りたたまれた部分938が実質的になくなる。図12A~Bは、必ずしも正確な寸法ではない。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明のステントおよび/または細胞複合体は、三次元(3D)プリンティングを使用して製造される。場合によっては、本発明のステントおよび/または細胞複合体を含む移植片の全体が、三次元(3D)プリンティングを使用して製造される。
【0108】
本明細書において、特定の特徴または構成要素が、別の特徴または構成要素に「基づく」とされる場合、この特定の特徴または構成要素は、この別の特徴または構成要素に直接基づいていてもよく、中間的な特徴および/または構成要素が存在していてもよい。これに対して、特定の特徴または構成要素が、別の特徴または構成要素に「直接基づく」とされる場合、中間的な特徴や構成要素は存在しない。また、特定の特徴または構成要素が、別の特徴もしくは構成要素と「関連性があるもの」、別の特徴もしくは構成要素に「追加されたもの」、または別の特徴もしくは構成要素に「組み合わせたもの」である場合、この特定の特徴または構成要素は、この別の特徴または構成要素と直接関連性があってもよく、この別の特徴または構成要素に直接追加されたものであってもよく、この別の特徴または構成要素に直接組み合わせたものであってもよく、あるいは中間的な特徴または構成要素が存在していてもよい。これに対して、特定の特徴または構成要素が、別の特徴もしくは構成要素と「直接関連性があるもの」、別の特徴もしくは構成要素に「直接追加されたもの」、または別の特徴もしくは構成要素に「直接組み合わせたもの」であるとされる場合、中間的な特徴や構成要素は存在しない。本明細書において、一実施形態を参照しながら特定の特徴および構成要素について説明または提示してきたが、これらの特徴および構成要素は、別の実施形態にも適用することができる。当業者であれば、別の特徴に「関連して」述べられた構造または特徴に関する説明が、この関連する特徴と一部重複した部分や、この関連する特徴の基礎となる部分を含んでいてもよいことは十分に理解できるであろう。
【0109】
本明細書において使用された用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定するものではない。例えば、本明細書において、単数形の「a」、「an」および「the」は、別段の明確な記載がない限り複数のものも含む。また、本明細書において、「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書に記載の特徴、工程、操作、構成要素および/または成分の存在を特定するものであるが、1つ以上の別の特徴、工程、操作、構成要素、成分および/またはこれらの群の存在や追加を除外するものではない。本明細書において、「および/または」という用語は、先に挙げた関連する1つ以上の項目のあらゆる組み合わせを含み、「/」と略記してもよい。
【0110】
本明細書において、「~の下」、「~の下方」、「~よりも下方」、「~の上」、「~の上方」などの空間的関係を表す用語は、図面に示すような、1つの構成要素または特徴と別の構成要素または特徴との関係性に関する説明を容易にするために使用されることがある。このような空間的関係を表す用語は、使用時または操作時の図示した装置の方向に加えて、この装置の様々な方向を包含する。例えば、別の構成要素または特徴に対して「下」または「下方」として図示された構成要素は、図面中の装置を上下逆さにした場合、この別の構成要素または特徴に対して「上方」に位置することになる。したがって、「~の下」という代表的な用語は、「上方」と「下方」の両方の方向を包含していてもよい。また、図面に記載の装置は別の方向に配置してもよく(90度回転してもよく、その他の方向であってもよい)、これに応じて、本明細書において使用される空間的関係を示す用語が解釈される。同様に、「上方向」「下方向」、「垂直」、「水平」などの用語も、別段の記載がない限り、本明細書において説明のみを目的として使用される。
【0111】
本明細書において、様々な特徴/構成要素(工程を含む)を説明するために、「第1」や「第2」という用語が使用される場合があるが、別段の記載がない限り、これらの特徴/構成要素はこれらの用語に限定されない。これらの用語は、1つの特徴/構成要素を、別の特徴/構成要素と区別するために使用してもよい。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下に記載の第1の特徴/構成要素を第2の特徴/構成要素と呼んでもよく、これと同様に、以下に記載の第2の特徴/構成要素を第1の特徴/構成要素と呼んでもよい。
【0112】
本明細書および後述の請求項において、別段の記載がない限り、「含む(comprise)」という用語、ならびにこの変化形である「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」という用語は、本発明の方法および物(例えば、組成物、装置を含む機器、方法など)において様々な構成要素を組み合わせて使用できることを意味する。例えば、「含む」という用語は、本明細書に記載の構成要素または工程のいずれかを含むことを示唆しているが、その他の構成要素や工程を除外するものではない。
【0113】
概して、本明細書に記載の装置および方法は包括的なものであるが、すべての構成要素および/もしくは工程、または構成要素のサブセットおよび/もしくは工程のサブセットは排他的なものであってもよく、様々な構成要素、工程、副構成要素または副工程「からなる」と表現してもよく、あるいは様々な構成要素、工程、副構成要素または副工程「から実質的になる」と表現してもよい。
【0114】
別段の記載がない限り、本明細書(実施例を含む)および請求項に記載のあらゆる数値は、明確な記載がなくとも、「約」または「程度」という用語で修飾されているものとして解釈してもよい。「約」または「程度」という用語は、本明細書に記載の数値および/またはレベルが、妥当な想定範囲内にあることを示す場合に使用してもよい。例えば、数値は、本明細書に記載の数値(または数値範囲)の±0.1%の範囲内の数値、本明細書に記載の数値(または数値範囲)の±1%の範囲内の数値、本明細書に記載の数値(または数値範囲)の±2%の範囲内の数値、本明細書に記載の数値(または数値範囲)の±5%の範囲内の数値、本明細書に記載の数値(または数値範囲)の±10%の範囲内の数値などであってもよい。別段の記載がない限り、本明細書に記載の数値はいずれもその数値のおおよその数値を含むと解釈すべきである。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「約10」という数値も開示されている。本明細書に記載のあらゆる数値範囲は、その数値範囲の一部に含まれるあらゆる部分範囲を含む。また、当業者であれば容易に理解できるように、特定の数値が開示されている場合、「その数値以下」、「その数値以上」およびそれらの数値の間で設定可能な数値範囲も開示されている。例えば、「X」という数値が開示されている場合(例えば、Xが数値である場合)、「X以下」や「X以上」といった数値も開示されている。また、本出願の全体を通して、様々な形式でデータが提供されているが、これらのデータは、上限値および下限値を示すとともに、データ点の任意の組み合わせを示す範囲を示す。例えば、「10」という特定のデータ点と「15」という別の特定のデータ点が開示されている場合、10よりも大きい数値、10以上の数値、10未満の数値、10以下の数値、10と等しい数値、15よりも大きい数値、15以上の数値、15未満の数値、15以下の数値、15と等しい数値も開示されており、10~15という範囲も開示されている。また、特定の2つの単位の間の各単位も開示されている。例えば、「10」および「15」という数値が開示されている場合、11、12、13および14という数値も開示されている。
【0115】
一例として様々な実施形態を説明してきたが、請求項に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において様々な変更を行ってもよい。例えば、前述の方法において様々な工程を実施する順序は、別の実施形態では変更されることが多くてもよく、さらに別の実施形態では、前述の方法の1つ以上の工程をまとめて省略してもよい。様々な装置およびシステムの実施形態の任意の特徴が、いくつかの実施形態に含まれていてもよく、別のいくつかの実施形態には含まれていなくてもよい。したがって、前述の説明は、主に典型的な目的に対して提供されたものであり、請求項で規定される本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0116】
本明細書に記載の例示および実例は、本発明の主題が実施されうる特定の実施形態を説明することのみを目的として示されており、本発明を限定するものではない。本明細書で述べるように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的かつ論理的な置換および変更を行えるように、その他の実施形態を利用してもよく、本明細書の記載からその他の実施形態を派生させてもよい。本明細書において、このような進歩的な主題の実施形態は、実際に2つ以上の実施形態が開示されている場合、便宜上、個別にあるいはまとめて単に「発明」と呼んでもよいが、本願の範囲を1つの発明または1つの発明概念に自発的に限定するものではない。したがって、本明細書において特定の実施形態が例示および記載されていたとしても、本明細書に記載の特定の実施形態を、同じ目的を達成できると見込まれる別の構成で置き換えてもよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる適用例または変形例を包含する。前述の説明を精査した当業者であれば、前述の実施形態の組み合わせ、および本明細書に具体的に記載されていないその他の実施形態を容易に理解できるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】