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  • 特表-ドロナビノールの経皮送達 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ドロナビノールの経皮送達
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20221125BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K31/352
A61P1/08
A61P25/00
A61K9/70 401
A61K9/08
A61K9/06
A61K47/10
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520408
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020054070
(87)【国際公開番号】W WO2021067806
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/910,255
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522129465
【氏名又は名称】スタートン セラピューティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】フォティオス エム.プラコギアンニス
(72)【発明者】
【氏名】タマンナ ラザー
(72)【発明者】
【氏名】ニサーグ モディ
(72)【発明者】
【氏名】マリナ ボロビンスカヤ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA72
4C076AA73
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD37
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA27
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA71
(57)【要約】
ドロナビノールを含む経皮薬物送達システムが提供される。ドロナビノール経皮送達システムは、所定の期間、所定の速度での薬物血漿濃度を提供し、例えば化学療法に関連する悪心および/または嘔吐の治療および/または予防のための投与頻度を減少させることによって単純化された治療レジメンを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮送達用の剤形でドロナビノールを含む、医薬組成物。
【請求項2】
追加の制吐薬物を含まない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ドロナビノールが、共結晶、アモルファス、コーティング型、結晶性、塩、異性体、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝産物、溶液、合成、エタノール溶液、および天然由来のデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールからなる群から選択される形態である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ドロナビノールが、組成物中で約0.01%~95%w/wまたは約0.01%~95%w/vである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ドロナビノールが、アモルファスドロナビノール、結晶性ドロナビノール、ドロナビノールの共結晶、コーティング型ドロナビノールからなる群から選択され、かつ0.01%~95%w/wまたはw/vの範囲のドロナビノールのエタノール溶液である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ドロナビノールが、塩形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
経皮液体製剤、経皮半固体製剤および/または経皮ポリマーマトリックス製剤として製剤化される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
溶媒、ゲル化剤、ポリマー、浸透エンハンサー、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、pH安定剤、可溶化剤、懸濁剤、分散剤、安定剤、可塑剤、界面活性剤、抗酸化剤、および酸化剤からなる群から選択される単独でまたはそれらの組み合わせでのいずれかで有効量の担体または成分を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記担体または成分が、前記組成物中で約0.01%~95%w/w(またはw/v)の範囲にある、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が、経皮パッチとして製剤化される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記経皮パッチが、リザーバパッチ、マイクロリザーバパッチ、マトリックスパッチ、感圧接着パッチ、および徐放性経皮フィルムからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、マイクロニードルとして製剤化される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記マイクロニードルが、経皮パッチとして製剤化される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
がん化学療法に関連する悪心および/または嘔吐の治療および/または予防および/または制御のための方法であって、
がん化学療法に関連する悪心および/または嘔吐の治療および/または予防および/または制御を必要とする患者を選択することと;および
請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を局所適用するまたは局所適用するように指示すること、
を含み、
前記局所適用することが、少なくとも1日に1回行われる、方法。
【請求項15】
前記組成物が、液体製剤および/または半固体製剤であり、前記局所適用することが、1日2~6回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週に1回行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、または10日に1回、局所適用される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記局所適用することが、ある期間にわたり前記経皮パッチの活性成分の送達の一定速度を提供する、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記局所適用することが、ある期間にわたりドロナビノールの安定な吸収速度を提供する、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記局所適用することが、ある期間にわたりドロナビノールの一定の血清レベルを達成する、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記局所適用することが、ある期間にわたるドロナビノールの経口投与と比較してある期間にわたりドロナビノールの血清レベルにおける減少された変動を達成する、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記局所適用することが、ある期間にわたり治療範囲でドロナビノールの血漿濃度を達成する、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
がん化学療法に関連する悪心および/もしくは嘔吐ならびに/またはAIDS患者における体重減少に関連する食欲不振の治療および/または予防および/または制御のための方法であって、
がん化学療法に関連する悪心および/もしくは嘔吐ならびに/またはAIDS患者における体重減少に関連する食欲不振の治療および/または予防および/または制御を必要とする患者を選択することと;
請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物を局所適用するまたは局所適用するように指示すること、
を含み、
前記適用することが、がん化学療法に関連する悪心および/もしくは嘔吐ならびに/またはAIDS患者における体重減少に関連する食欲不振の治療および/または予防および/または制御のためのドロナビノールの局所送達を達成する、方法。
【請求項23】
前記医薬組成物が、1日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、または10日に1回、局所適用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬組成物が、1日2~6回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、局所適用される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物が、液体製剤または半固体製剤である、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬組成物が、経皮送達システムである、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年10月3日に出願された米国仮出願第62/910,255号の利益を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、化学療法を受けている患者が一般的に経験する悪心および嘔吐などの、悪心および嘔吐の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
悪心および嘔吐は、がん化学療法の一般的な副作用である。ドロナビノールおよび5-HT3受容体拮抗薬などの薬物が、がん化学療法に伴う悪心および嘔吐の治療に推奨されている。時々、悪心および嘔吐を防止するために、1つ以上の薬物を使用できる(Herrsted J.,ら、2016年Updated MASCC/ESMO Consensus Recommendations:Prevention of Nausea and Vomiting Following High Emetic Risk ChemotherapySupport Care Cancer.2017年1月;25(1):277-288.Epub 2016年7月22日を参照されたい)。
【0004】
ドロナビノールは、ゴマ油に含まれるデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(デルタ-9-THC)の合成形態である。ドロナビノールは、悪阻の治療における使用が承認されており、経口カプセル(MARINOL)および経口液剤(SYNDROS)として入手可能である。ドロナビノールの経口カプセルの添付文書または薬物ラベルに記載されているとおり、本薬物は、従来の制吐剤治療に適切に応答できなかった患者のがん化学療法に関連する悪心および嘔吐の治療に適応される。それはまた、AIDS患者の体重減少に関連する食欲不振の治療にも適応される(NDAマリノールのラベル、ラベリング、ラベルアクション日2006年6月21日。2017年7月13日にアクセス(以下「ラベル」)を参照)。
【0005】
多くの短所が、ドロナビノール経口カプセルに関連する。最初の難題は、投与レジメンである。制吐効果のために、以下の投与レジメンが推奨される:化学療法の1~3時間前に、初回用量5mg/m2を経口投与する。化学療法後、薬物を、2~4時間ごとに、合計4~6回/日投与する。臨床応答に応じて、その用量が十分に効果的でない場合、用量を、2.5mg/m2の増分で、約15mg/m2まで増加する。この投与レジメンは、すでに悪心および嘔吐を経験している患者にとっては不都合である。第2の難題は、薬理学的応答が用量に関連しており、患者間のばらつきがあることである。第3の難題は、最大用量において、精神症状を乱す可能性が高まることである。第4の課題は、経口投与後に、ドロナビノールが初回通過肝代謝を受け、高い脂質溶解度を有することであり、このため、投与された用量の10%~20%が体循環に到達する。別の難題は、室温では有効成分のドロナビノールがカプセル中で不安定であることであり、そのためカプセルは、密閉容器中に梱包され、冷蔵庫または8℃~15℃での保管が推奨される(ラベルを参照)。ドロナビノールカプセルは、室温で3ヶ月間のみ安定である。これは、合成デルタ-9-THCが急速な酸化ならびに酸および塩基性分解を呈するためである。さらに、合成デルタ-9-THCは、光で、および高温で、より急速に分解する。したがって、ドロナビノールカプセルが、元の容器で冷蔵保管されない場合、カプセル中のデルタ-9-THCの濃度は低下し、治療上必要な濃度を下回る可能性がある。
【0006】
以前の研究は、マリファナ植物カンナビスサティバLから天然由来のデルタ-9-THCを用いて行われていた。しかし、サティバLなどの植物源から純粋なデルタ-9-THCを抽出することは困難である。これは、最終生成物中に存在する少量の別の活性カンナビジオール(カンナビノール、デルタ-8-THC、カンナビジオール、およびカンナビクロメンなど)による抽出物の混入によって生じる。したがって、最終抽出物中のTHCの量は、抽出プロセスに依存し、これは、他の考慮事項の中でも、THCの精神に作用する特性のために重要である。あるいは、デルタ-9-THCの合成形態は、その天然由来の対応物の抽出プロセスとは対照的に、より制御された手順で開発される。例えば、合成により生成されたデルタ-9-THCは、他の活性カンナビジオールの存在により混入されていない、夾雑のないデルタ-9-THCから本質的に構成される。したがって、デルタ-9-THCの合成型は、天然抽出されたデルタ-9-THCではラットの皮膚を通る最大フラックス0.01μg/cm2/時を示す、天然由来のデルタ-9-THCを使用した以前に公開された研究と比較して、改善された経皮透過性を提供できる(米国特許第6503532号)。
【0007】
米国特許第6328992号もまた、カンナビノイドの経皮送達の調製物に関連する。しかしながら、本開示は、組み合わせた異なるカンナビノイドを記載しており、純粋な合成デルタ-9-THCのみの使用は記載していない。さらに、’992特許発明者は、医薬品グレードではなくかつU.S.Food and Drug Administration Inactive Ingredient Listing(FDA IIG)に含まれない、透過性エンハンサーの使用について記載している。したがって、’992の開示は、任意の医薬的有用性を有する組成物を提供しない。さらに、’992特許は、経皮透過性試験用の受容培地での50%エタノールを含むラット皮膚の使用を記載する。しかし、エタノールは、真皮の皮膚構造を破壊し、in vitroフラックス値を増加させ得るため、医薬品用途の経皮パッチに適切でない結果をもたらす。例えば、エタノール処理されたラットの皮膚は、ヒトの死体の皮膚よりも透過性がほぼ10倍高い。
【0008】
米国特許第8449908号は、ヒトの死体の皮膚を介する96時間で累積量10000ngのTHCの送達を示す。この量は、フラックス60ng/cm2/時を表す。パッチ面積は、次式を使用して算出できる:
In-Vitroフラックス(ng/cm2/時)=(Css(ng/mL)*CL(L/kg*時)*BW(Kg))/パッチ面積(cm2
パッチ面積(cm2)=(Css(ng/mL)*CL(L/kg*hr)*BW(kg))/In-Vitroフラックス(ng/cm2/時)
=(1.38*0.2*70*1000)/60
=322cm2
【0009】
5mg/日のデルタ-9-THCの治療投与量を送達するために、経皮製剤は、患者の皮膚の少なくとも325cm2の表面積を覆う必要がある。これは、あらゆる経皮薬物送達システム(TDDS)にとって実用的でないパッチサイズである。
【0010】
したがって、経口投与および天然由来のデルタ-9-THCに関連する上記の欠点を克服できるドロナビノールの改善された薬物送達システムが必要である。本明細書で提供されるように、合成デルタ-9-THCを含むドロナビノールの経皮送達は、経口薬物送達に関連する難題に対処できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以下に記載し、図示される以下の態様およびその実施形態は、範囲を制限するものではなく、例示的かつ図示的であることを意図している。
【0012】
一態様では、経皮送達用の剤形でドロナビノールを含む医薬組成物が提供される。
【0013】
一実施形態では、医薬組成物は、追加の制吐薬物を含まない。
【0014】
一実施形態では、ドロナビノールは、共結晶、アモルファス、コーティング型、結晶性、塩、異性体、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝産物、溶液、合成、エタノール溶液、および天然由来のデルタ-9-テトラヒドロカンナビノールからなる群から選択される形態である。
【0015】
一実施形態では、ドロナビノールは、組成中で、約0.01%~95%w/wまたは約0.01%~95%w/vである。
【0016】
一実施形態では、ドロナビノールは、アモルファスドロナビノール、結晶性ドロナビノール、ドロナビノールの共結晶、コーティング型ドロナビノール、およびドロナビノールのエタノール溶液からなる群から選択され、ドロナビノールの0.01%~95%w/wまたはw/vの範囲にある。
【0017】
一実施形態では、ドロナビノールは、塩の形態である。
【0018】
一実施形態では、組成物は、経皮液体製剤、経皮半固体製剤、および/または経皮ポリマーマトリックス製剤として製剤化される。
【0019】
一実施形態では、有効量の担体または成分は、単独でまたはそれらの組み合わせのいずれかで、組成物に含まれる。一実施形態では、担体または成分は、溶媒、ゲル化剤、ポリマー、浸透促進剤、皮膚軟化剤、皮膚刺激低減剤、緩衝剤、pH安定剤、可溶化剤、懸濁剤、分散剤、安定剤、可塑剤、界面活性剤、抗酸化剤、および酸化剤からなる群から選択される。
【0020】
一実施形態では、担体または成分は、組成中で、約0.01%~95%w/wまたはw/vの範囲である。
【0021】
一実施形態では、医薬組成物は、経皮パッチとして製剤化される。
【0022】
一実施形態では、経皮パッチは、リザーバパッチ、マイクロリザーバパッチ、マトリックスパッチ、感圧接着パッチ、および徐放性経皮フィルムからなる群から選択される。
【0023】
一実施形態では、医薬組成物は、マイクロニードルとして製剤化される。
【0024】
一実施形態では、マイクロニードルは、経皮パッチとして製剤化される。
【0025】
一実施形態では、がん化学療法に関連する悪心および/または嘔吐の治療および/または予防および/または制御のための方法は、がん化学療法に関連する悪心および/または嘔吐の治療および/または予防および/または制御を必要としている患者を選択すること、および本明細書に記載の医薬組成物を局所適用すること、または局所適用するように指示することを含み、局所適用することは、少なくとも1日に1回行われる。
【0026】
一実施形態では、組成物は液体製剤および/または半固体製剤であり、局所適用は、1日2~6回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週に1回行われる。
【0027】
一実施形態では、組成物は、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、または10日に1回、局所適用される。
【0028】
一実施形態では、局所適用することは、ある期間にわたって経皮パッチの活性成分の一定の送達速度を提供する。
【0029】
一実施形態では、局所適用することは、ある期間にわたってドロナビノールの安定した吸収速度を提供する。
【0030】
一実施形態では、局所適用することは、ある期間にわたってドロナビノールのある一定の血清レベルを達成する。
【0031】
一実施形態では、局所適用することは、ある期間にわたるドロナビノールの経口投与と比較して、ある期間にわたってドロナビノールの血清レベルの変動の減少を達成する。
【0032】
一実施形態では、局所適用することは、ある期間にわたって治療範囲でのドロナビノールの血漿濃度を達成する。
【0033】
一実施形態では、がん化学療法に関連する悪心および/もしくは嘔吐、ならびに/またはAIDS患者の体重減少に関連する食欲不振の治療および/または予防および/または制御のための方法は、がん化学療法に関連する悪心および/もしくは嘔吐、ならびに/またはAIDS患者の体重減少に関連する食欲不振の治療および/または予防および/または制御を必要としている患者を選択すること、および本明細書に記載の医薬組成物を局所適用すること、または局所適用するように指示することを含み、適用することは、がん化学療法に関連する悪心および/もしくは嘔吐、ならびに/またはAIDS患者の体重減少に関連する食欲不振の治療および/または予防および/または制御のためのドロナビノールの局所送達を達成する。
【0034】
一実施形態では、医薬組成物は、1日1回、2日1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、または10日に1回、局所適用される。
【0035】
一実施形態では、医薬組成物は、1日2~6回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、局所適用される。
【0036】
一実施形態では、医薬組成物は、液体製剤または半固体製剤である。
【0037】
一実施形態では、医薬組成物は、経皮送達システムである。
【0038】
上記の例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図面を参照し、以下の説明を検討することによって明らかになるであろう。
【0039】
本方法および組成物などの追加の実施形態は、以下の説明、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。前述および以下の説明から理解できるように、本明細書に記載の個々のおよびすべての特徴、ならびにそのような特徴の2つ以上の個々のおよびすべての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しない条件で、本開示の範囲内に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組み合わせは、本開示の任意の実施形態から具体的に除外され得る。本開示の追加の態様および利点は、特に添付の実施例および図面と併せて検討した場合に、以下の説明および特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】経口経路(白丸)または経皮経路(黒丸)を介して送達された場合の、時間(時)と対応させて、薬物の血漿濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
経皮薬物送達では、経皮パッチまたは経皮組成物が、皮膚表面に局所適用される。経皮パッチまたは経皮組成物の局所適用の期間中、薬物は、継続的に放出され、無傷の皮膚を介して(経細胞、細胞間および経付属器経路を介して)送達されて、全身効果を達成する。したがって、一度適用されると、経皮組成物または経皮パッチは、その適用の期間に応じて、その1日を通して、またはさらに1日を超えて(最大1週間以上であり得る)、薬物を体循環に送達できる。
【0042】
経皮送達は、現在1日4~6回経口投与されるドロナビノールの投与頻度を減少させ得る。経皮送達を介して、ドロナビノールの経皮組成物または経皮製剤または経皮パッチを皮膚に局所適用でき、それにより局所適用期間全体にわたって薬物を送達できる。要件に応じて、局所塗布の期間は、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回であり得る。したがって、経皮送達は、投与頻度を減少させることによって、経口送達の複数回投与レジメンを脱却できる。
【0043】
さらに、経皮薬物送達では、薬物は局所適用の期間を通してゆっくりと継続的に送達されるため、1日での複数回投与に関連する薬物血漿濃度のピークおよびトラフはない。したがって、ドロナビノールの経皮送達により、患者は、薬物血漿濃度が劇的に変化することなく、長期間にわたって薬物の治療効果を有することができる。
【0044】
経皮送達では、薬物は皮膚を介して体循環に送達され、それは初回通過肝代謝を逃れ、そのため所望の治療活性を達成するためにより少ない薬物が必要とされ、結果として有害効果または有害作用が低減する。ドロナビノールは、高脂溶性を有し、経口投与後肝初回通過代謝を受けるため、投与量の10%~20%が体循環に達する。そのため、経口投与と比較して、経皮送達では、少用量のドロナビノールが、望ましい治療効果をもたらし得、かつ高用量に関連する精神症状の乱れも克服する。
【0045】
また、本明細書に記載の経皮デルタ-9-THC送達は、従来のシステムと比較して、承認された薬物製品にリストされた成分のFDA IIGデータベースを使用して、ヒトの死体の皮膚を介するほぼ10倍高いin vitro透過性を提供する。
【0046】
例えば、マリノール(ドロナビノールカプセル)のFDAラベルによると、絶食状態で1日2回健康なボランティア(n=34;20~25歳)に与えた場合、次の薬物動態(PK)パラメータが判明した(ラベルを参照)。
【表1】
【0047】
さらに、PKパラメータによれば、ドロナビノールカプセルによる5mg/日の経口送達の最大血漿濃度は、1.32ng/mLであり、20mg/日の経口送達の最大血漿濃度は、7.88ng/mLである。経口送達PK値は、経時的な血漿濃度のピークおよび谷を示している。経口送達とは対照的に、経皮薬物送達は、所定の速度で薬物分子を送達し、経時的に一定の平均血漿濃度を維持する(図1)。
【0048】
平均血漿濃度は、次の方法で算出される:
5mg/日の平均血漿濃度=AUC(0-t)/t=2.88/12=0.24ng/mL
20mg/日=15.2/12=1.27ng/mL
【0049】
したがって、経皮薬物送達システム(TDDS)は、平均血漿濃度0.24~1.27ng/mLでデルタ-9-THCを送達するように計算される。
【0050】
悪心および嘔吐を防止するために、経口経路は、多くの場合、最も簡便ではない。患者は、すでに悪心および嘔吐を経験しており、薬物投与の直後に嘔吐した場合、用量が吸収されたか嘔吐されたかは、不確実なままである。一方、経皮的ドロナビノールは皮膚を介して送達され、これは、この種の不確実性を完全に排除する。
【0051】
さらに、ドロナビノールカプセルの経口投与に関連する中枢神経系(CNS)の副作用などの、様々な追加の副作用がある。副作用は用量に関連するため、経口投与量を受ける患者は、必要に応じて投与量を調整および減少できるように、綿密なモニタリングを必要とする。
【0052】
あるいは、本明細書で提供されるTDDSシステムは、所定の定義された入力速度で一定の薬物送達を提供する。したがって、提供されるTDDSシステムは、一定の入力速度により一定の平均血漿濃度をもたらし、経口送達されたデルタ-9-THCに関連する血漿濃度のPKのピークおよび谷を呈さない。したがって、現在提供されるTDDSシステムは、経口送達される同等物と比較して、CNSの副作用を引き起こす可能性も低い。例えば、デルタ-9-THCの有害作用は、デルタ-9-THCの投与量7mg/m2では誘発されない。
【0053】
さらに、経口投与量は、有害作用を回避するために、1日1回摂取する代わりに、1日4~6回提供される必要がある。さらに、経口投与量は、初回通過代謝を受け、経口用量の10~20%のみが血漿中で利用可能になり、非効率的な送達方法かつ活性医薬品の大きな損失をもたらす。さらに、任意の薬物分子から治療効果を達成するために、薬物は、定常状態の血漿濃度または治療ウィンドウ内の血漿濃度(最小および最大の治療有効濃度の間)を達成するための継続的送達を有しなければならない。したがって、本明細書で提供されるデルタ-9-THCのTDDSシステムは、カンナビジオールベースの医薬品の分野で長く感じられ、満たされていないニーズに対処する。
【0054】
また、経皮送達は、容易で、非侵襲的であり、かつ簡便である。経皮パッチまたは経皮組成物の投与は、患者が経皮パッチまたは経皮組成物を自分で局所適用できるので、医学的監督を必要としない。
【0055】
ドロナビノールに関して、薬理学的応答における患者間のばらつきは、経皮組成物または経皮パッチからの薬物送達の速度を制御することにより薬物血漿濃度を制御できるので、経皮送達ではより少ないと予想される。ドロナビノールのアルファ半減期は、約4時間であり、経口投与により、それは身体内で急速に代謝される。対照的に、経皮送達では、少量のドロナビノールを、経口投与よりも長期間送達し得る。ドロナビノールの経皮製剤はまた、即時放出剤形よりも多くの乱用抑止力をもたらす。
【0056】
さらに、何らかの有害作用の場合、副作用または緊急の経皮送達は、皮膚から経皮パッチまたは経皮組成物を取り除くことによっていつでも治療を終了する自由を与える。
【0057】
上述の理由により、がん化学療法に関連する悪心および嘔吐を予防するために、経皮送達は、従来の送達システムよりも患者にやさしく、単純化され、かつ簡便な治療レジメンを提供できる。経皮送達は、ドロナビノールの投与頻度を減少させ得る。必要に応じて、投与頻度は、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回であり得る。
【0058】
がん化学療法に関連する悪心および嘔吐を予防するために、患者は、様々な異なる薬物を処方され、そのうちのいくつかは、1日に複数回投与される。経皮パッチまたは経皮組成物で制吐薬物(複数可)を製剤化することにより、化学療法によりすでに弱っており、疲労した患者に、かなり単純化された投与レジメンを提供する。必要に応じて、薬物を含む経皮パッチまたは経皮組成物の投与頻度は、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回であり得る。これは、患者のコンプライアンスにとって、大きい一助となるであろう。
【0059】
ドロナビノールは、不安定な薬物である。ドロナビノールの安定性は、ドロナビノールの共結晶、ドロナビノールのコーティング、ドロナビノールの結晶、アモルファス形態、および/または不活性物質などの調製によって改善できる。
【0060】
一実施形態では、ドロナビノールを含む経皮パッチまたは送達システムの形態である、経皮薬物送達組成物が企図される。経皮送達は、投与頻度を減少させることにより、単純化された治療レジメンで、所定の期間、所定の速度で薬物血漿濃度を提供できる。好ましくは、ドロナビノールは、これに限定されないが、ドロナビノールの共結晶、ドロナビノールのアモルファス形態、コーティング型ドロナビノール、ドロナビノールの結晶形態などの群から選択される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ドロナビノール」は、単独でまたはそれらの組み合わせのいずれかでの、ドロナビノールのすべての形態を指し、これらに限定されない、以下の形態;例えば、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、または合成デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールの遊離塩基、または塩、または異性体、またはアモルファス、または結晶、または共結晶、または固溶体、またはプロドラッグ、または類似体、または誘導体、または代謝物、またはコーティング型形態、または天然抽出物、またはドロナビノールの溶液、を指す。例えば、ドロナビノールの遊離形態、またはその塩、またはその異性体、またはそのアモルファス形態、またはその結晶形態、またはその共結晶、またはその固溶体、またはそのプロドラッグ、またはその類似体、またはその誘導体、またはその代謝物、またはそのコーティング型形態、またはデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール、または合成デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールの天然抽出物、ドロナビノールのエタノール溶液。ドロナビノールは、薬学的に許容される塩の形態、例えば、酸付加塩または塩基性塩、またはその溶媒和物(その水和物)であり得る。好適な酸付加塩は、無毒性塩を形成する酸から形成される。
化学名:(6aR-トランス)-6a、7,8,10a-テトラヒドロ-6,6,9-トリメチル1-3-ペンティ1-6H-ジベンゾ[b,d]ピラン-1-オール
実験式:C21302
分子量:314.47
構造:式(I)
【化1】
【0062】
ドロナビノールは、合成デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールである。デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールは、カンナビスサティバL中に存在する天然成分である。
【0063】
本開示の実施形態では、ドロナビノールの好ましい形態は、これに限定されないが、ドロナビノール共結晶、ドロナビノールアモルファス形態、コーティング型ドロナビノール、ドロナビノール結晶形態などの群から選択される。ドロナビノールの共結晶、コーティング型ドロナビノール、ドロナビノールの結晶形態を調製し得る。
【0064】
薬物のアモルファス形態は、明確な構造を有しない。薬物のアモルファス形態は、結晶形態と比較してより高い溶解度を有する。様々な技術および方法を使用して、アモルファス形態の薬物を製造する。
【0065】
業界向けの医薬品共結晶ガイダンスの規制分類で述べられているように、「共結晶は、同じ結晶格子中の2つ以上の異なる分子、典型的には、薬物と共結晶形成剤(「共形成剤」)で構成される結晶性材料である」(U.S.Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research(CDER),Regulatory Classification of Pharmaceutical Co-Crystals Guidance for Industry Draft Guidance,Pharmaceutical Quality/CMC Revision 1,August 2016 https://www.fda.gov/downloads/Drugs/Guidances/UCM516813.pdfを参照のこと、2017年7月12日にアクセス)。様々な方法が、共結晶の調製に利用可能である。各薬物は、異なる化学構造および物理化学的性質を有し、このため、共結晶化反応の成功率を予測することは困難である。様々な実験条件下での試験が、薬物の共結晶を形成するためのアプローチを決定するために行われている(Nate Schultheiss,AnnNewmanPharmaceutical Cocrystals and their Physicochemical Properties.Cryst Growth Des.2009年1月3日;9(6):2950-2967を参照のこと)。
【0066】
薬物のコーティングは、ポリマーまたは他の賦形剤を使用して行うことができる。様々な技術が、薬物のコーティングに使用される。薬物の安定性は、カプセル化によっても高めることができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、遊離塩基の酸付加塩または付加塩を含む。その範囲内のドロナビノールの「薬学的に許容される塩」という用語は、すべての可能な異性体およびそれらの混合物、ならびに任意の薬学的に許容される代謝物、生体前駆体および/またはプロドラッグ、例えば、本開示の化合物の1つとは異なるが、哺乳動物、特にヒトなどの対象に投与すると、in vivoで直接的または間接的に本開示の化合物に変換される構造式を有する、化合物である。
【0068】
一実施形態では、ドロナビノールは、単一の塩として、塩の組み合わせとして、または塩基形態と1つ以上の塩形態との組み合わせとしてのいずれかで、薬学的に許容される塩形態の形態で経皮システムに組み込まれる。ドロナビノールの様々な形態の例としては、これらに限定されないが、遊離塩基、塩、ラセミ形態、異性体、アモルファス、結晶性、共結晶、固溶体、プロドラッグ、類似体、誘導体、代謝物、溶液、水和物などが挙げられる。治療剤は、薬学的に許容される塩の形態、例えば、酸付加塩または塩基性塩、またはその溶媒和物(その水和物)であり得る。好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成され、限定されないが、例は、酢酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸ナトリウム、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩の塩である。好適な塩基性塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成され、限定されないが、例は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、およびジエタノールアミンの塩である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、同義的に使用される。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)および霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物を指し、最も好ましくはヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、農場の動物(例えば、ウマ、ブタ、またはウシ)、またはペット(例えば、イヌまたはネコ)などの非ヒト動物である。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0070】
本明細書で使用される場合、「剤」という用語は、疾患または状態の予防、治療、管理および/または診断に使用するための任意の分子、化合物、方法論および/または物質を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、疾患または状態およびそれらの1つ以上の症状の発現、再発、または発症の予防をもたらす、重症度を低下させる、疾患または状態の期間を短縮する、疾患または状態の1つ以上の症状を改善する、疾患または状態の進行を防ぐ、疾患または状態の退行を引き起こす、および/または別の治療法の治療効果(複数可)を強化または改善するために十分である、治療法の量を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という句は、動物、より具体的にはヒトで使用するために、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されたこと、または米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、疾患または障害を治療するおよび/または管理するために使用される、任意の分子、化合物、および/または物質を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「治療法(複数可)」という用語は、疾患または状態、またはその1つ以上の症状の予防、治療、および/または管理に使用できる、任意の方法(複数可)、組成物(複数可)、および/または剤(複数可)を指してよい。特定の実施形態では、「治療法(複数可)」という用語は、小分子療法を指す。
【0075】
本明細書で使用される「誘導体」または「誘導体化」という用語は、本開示の化合物の化学修飾、またはそれらの薬学的に許容される塩またはそれらの混合物を含む。すなわち、「誘導体」は、所与の対象において改善された薬理学的機能的活性を誘導できる、本開示の化合物の機能的同等物であり得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「組成物」および「製剤」という用語は、同義的に使用される。
【0077】
本明細書で使用される場合、「局所送達」という用語は、皮膚を介した体循環への薬物の送達を意味する。
【0078】
経皮組成物
特定の実施形態によれば、本明細書に記載の経皮組成物は、がん化学療法に関連する悪心および/または嘔吐の予防および/または治療のためのものである。
【0079】
本明細書に記載の特定の実施形態によれば、医薬組成物または経皮製剤は、共結晶、アモルファス形態、結晶形態、そのコーティング形態、その溶液、ならびに無水および/もしくは含水単独、またはそれらの組み合わせであり得るその塩などの群から選択される形態のドロナビノールを含む。より好ましくは、経皮製剤は、単独で、またはそれらの組み合わせのいずれかで以下の形態:アモルファスまたは共結晶または結晶性またはコーティング型、またはそのエタノール溶液、から選択されるドロナビノールを含み得る。
【0080】
本開示の一実施形態は、これらに限定されないが、経皮製剤、経皮パッチ、局所製剤、マイクロニードル、イオントフォレーシス、または定量的経皮スプレーを含み得る経皮薬物送達システムであり得る。
【0081】
経皮製剤は、例えば、これらに限定されないが、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液などの液体を含む。経皮製剤としては、半固形物、例えば、限定されないが、ゲル、軟膏、乳濁液、クリーム、懸濁液、ペースト、ローション、香油などが挙げられる。経皮パッチに組み込まれた液体製剤および/またはゲル製剤が、好ましい。ポリマーマトリックスを含む経皮製剤は、限定されないが、接着性マトリックスまたは非接着性マトリックスであり得る。
【0082】
限定されないが、経皮パッチは、好ましくは、ただしこれらに限定されないが、リザーバーパッチ、マトリックスパッチ、二層マトリックスパッチ、多層マトリックスパッチ、マイクロリザーバパッチ、接着システム、経皮的に適用可能なテープなどに限定されない、当技術分野で述べられるすべての経皮薬物送達システムを含み得る。
【0083】
本開示の特定の実施形態において、経皮パッチは、リザーバーまたはマトリックスに含まれるドロナビノールと、および経皮パッチを皮膚に付着できるようにし、経皮パッチから患者の皮膚を通ってドロナビノールが通過できるようにする接着剤とを含む。経皮送達システムは、閉塞性、半閉塞性、または非閉塞性であり得、また接着性または非接着性であり得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、経皮パッチは、所定の期間にわたって経皮パッチの活性成分の一定の送達速度を提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日、8~13日、2週間、または15日である。
【0085】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載の経皮パッチは、所定の時間にわたって、患者による経皮パッチの活性成分の安定な吸収速度を提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日、8~13日、2週間、または15日である。
【0086】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の経皮パッチは、所定の時間にわたって患者の経皮パッチの活性成分の一定の血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、所定の期間は、約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日、8~13日、2週間、または15日である。
【0087】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の経皮パッチは、所定の時間にわたる患者の治療範囲における経皮パッチの活性成分の血漿濃度をもたらす。いくつかの実施形態では、所定の期間は、約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日、8~13日、2週間、または15日である。
【0088】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の経皮パッチは、所定の時間にわたり、患者における活性成分の投与量の変動を低減することを可能にする。いくつかの実施形態では、所定の期間は、約24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、7日、8~13日、2週間、または15日である。
【0089】
当技術分野で述べられる局所製剤としては、例えば、これらに限定されないが、軟膏、クリーム、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、ペースト、香油、ゲル、ローション、ムースなどの半固体などが挙げられる。溶液、懸濁液、マイクロ懸濁液、ナノ懸濁液、分散液、ナノ分散液などの液体。スプレー、エアロゾル、マグマなど。ドロナビノールを含む局所製剤は、ドロナビノールの経皮送達のために皮膚表面に局所適用できる。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態の経皮製剤および/または局所製剤は、溶媒、ゲル化剤、ポリマー、生分解性ポリマー、浸透エンハンサー、エモリエント、皮膚刺激性還元剤、緩衝剤、pH安定剤、可溶化剤、懸濁剤、分散剤、安定化剤、可塑剤、粘着付与剤、界面活性剤、揮発性化学物質、抗酸化剤、酸化剤、キレート剤、錯化剤、希釈剤、賦形剤、パッチを調製するための材料、マトリックスパッチまたはリザーバパッチを調製するための材料などの担体または成分に限定されることなく、単独で、またはそれらの組み合わせのいずれかで有効量の担体または成分を含み得る。
【0091】
ドロナビノールは、上記の単一担体、担体の混合物、および担体の組み合わせの中に溶解され、懸濁され、分散され、または均一に混合されてよい。
【0092】
ドロナビノールの所望の最適な経皮および/または局所製剤は、単独でまたはそれらの組み合わせのいずれかで、実施例1~実施例11に記載されるように、これに限定されないが、以下の担体を含んでよい。
【0093】
実施例
実施例1
経皮製剤および/または局所製剤は、限定されないが(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノールなど)などのアルコールC1~C20、限定されないが(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチエングリコール、グリセリンなど)などの多価アルコール、グリコール、限定されないが(Nメチル2-ピロリドン、2-ピロリドンなど)などのグリコールの誘導体、ピロリドン、限定されないが(ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシドなど)などのスルホキシド、限定されないが(エタノール、プロパノール、酢酸エチル、アセトン、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、IPA)などのマトリックスパッチの製造に使用できるジメチルイソソルビド、ミネラルオイル、植物油、水、極性溶媒、半極性溶媒、非極性溶媒、揮発性化学物質、限定されないが酢酸、乳酸、レブリン酸、脂肪酸などの酸、塩基およびその他を含むが限定されない、溶媒を、単独でまたはそれらの組み合わせで含む。言及された溶媒は、一実施形態では、0.01%~95%w/w(またはw/v)の範囲である。
【0094】
実施例2
経皮製剤および/または局所製剤は、以下を含むが限定されない、ゲル化剤および/または増粘剤および/または懸濁剤を、単独でまたは組み合わせて含む;限定されないが(寒天、アルギン酸および誘導体、カッシアトラ、コラーゲン、ゼラチン、ゲランガム、グアーガム、ペクチン、カリウム、またはナトリウムカラゲナン、トラガカンス、キサンサム、ガムコーパル、キトサン、樹脂など)などの天然ポリマー、多糖類およびその誘導体、限定されないセルロースおよびその誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロースなど)などの半合成ポリマーおよびその誘導体、限定されないがカルボキシビニルポリマーまたはカルボマー(カルボポール940、カルボポール934、カルボポール971p NF)などの合成ポリマーおよびその誘導体、限定されないが(ケイ酸塩、ベントナイト)などのポリエチレン、およびそのコポリマーなど、粘土、限定されないが(PVP、Kollidon 30、ポロキサマー)などの二酸化ケイ素、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー(eudragit)、アクリル酸エステル、ポリアクリレートコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンホモポリマーおよびポリビニルピロリドンコポリマー、限定されないが(bio-psa 4302、bio-psa 4202など)などのイソブチレン、酢酸エチルビニルコポリマー、天然ゴム、合成ゴム、感圧接着剤、例えば、シリコーンポリマー、限定されないが(DURO-TAK 87-2156、DURO-TAK 387-2287など)などのアクリル感圧接着剤、限定されないが(ポリイソブチレン低分子量、ポリイソブチレン中分子量、ポリイソブチレン35000mwなど)などのポリイソブチレン、アクリルコポリマー、ゴムベースの接着剤、ホットメルト接着剤、スチレン-ブタジエンコポリマー、ベントナイト、すべての水および/または有機溶媒などのポリイソブチレン膨潤性ポリマーなど。一実施形態では、言及された剤は、0.1%、70%、w/wまたはw/vの範囲である。
【0095】
実施例3
本開示の経皮製剤および/または局所製剤は、単独でまたはその組み合わせでのいずれかで、以下に限定されない、当業者に知られている浸透エンハンサーを含み得る;限定されないが(ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、デシメチルスルホキシド、ジメチルイソソルビドなど)などのスルホキシド、および同様の化学物質、限定されないが(N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドンなど)などのアゾン、ピロリドン、限定されないが(プロピレングリコールモノラウレート、ブチルエタノエート、エチルエタノエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、メチルエタノエート、デシルオレエート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノラウレート、ラウリルラウレートなど)などのエステル、脂肪酸エステル、限定されないが(カプリン酸、カプリリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、リノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸など)などの脂肪酸、限定されないが(オレイルアルコール、ナタノール、ドデカノール、プロピレングリコール、グリセロールなど)などのアルコール、脂肪アルコール、およびグリコール、限定されないが(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)などのエーテルアルコール、限定されないがトリアセチン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエステル、エッセンシャルオイルなどの尿素、トリグリセリド、限定されないが(ブリジ、ラウリル硫酸ナトリウム、tween、ポリソルベート)などの界面活性剤タイプのエンハンサー、テルペン、テルペノイド、および書籍「経皮浸透エンハンサー(Percutaneous Penetration Enhancers」)(Eric W.Smith,Howard I.Maibach,2005.Nov,CRC press)中で言及されるすべての経皮浸透または透過エンハンサー。言及された剤は、一実施形態では、0.01%~95%w/w(またはw/v)の範囲である。
【0096】
実施例4
経皮製剤および/または局所製剤は、単独でまたはその組み合わせで、以下を含むがこれらに限定されない、可塑剤を含む;グリセロールおよびそのエステル、リン酸エステル、グリコール誘導体、糖アルコール、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、酒石酸エステル、アジペート、フタル酸エステル、トリアセチン、オレイン酸エステル、および書籍「Handbook of Plasticizers」(George Wypych,2004,Chem Tec Publishing)中で言及される経皮薬物送達システムで使用できるすべての可塑剤。言及された剤は、一実施形態では、0.01%~95%w/w(またはw/v)の範囲である。
【0097】
実施例5
経皮製剤および/または局所製剤は、単独でまたはその組み合わせでのいずれかで、以下に限定されない、皮膚軟化剤、保湿剤、および/または皮膚刺激低減剤を含む;ワセリン、ラノリン、鉱油、ジメチコン、酸化亜鉛、グリセリン、プロピレングリコールなど。言及された剤は、一実施形態では、0.01%~95%w/w(またはw/v)の範囲である。
【0098】
実施例6
経皮製剤および/または局所製剤は、単独でまたはその組み合わせで、以下に限定されない、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤を含む;アニオン性、カチオン性、非イオン性および両性界面活性剤を含む界面活性剤、限定されないが、例えば商品名SPANでのオレイン酸ソルビタン、スパン80、スパン20など、およびポリソルベート、限定されないが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80など、プロピレングリコールモノカプリレートI型、プロピレングリコールモノカプリレートII型、プロピレングリコールジカプリレート、中鎖トリグリセリド、プロピレングリコールモノラウレートII型、リノレオイルポリオキシル-6グリセリド、オレオイル-ポリオキシ1-6-グリセリド、ラウロイルポリオキシル-6-ギルセリド、ポリグリセリ1-3-ジオレエート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノラウレートI型、ポリグリセリル-3-ジオレエート、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドなど、シクロデキストリンなど。言及された剤は、一実施形態では、0.01%~95%w/w(またはw/v)の範囲である。
【0099】
実施例7
いかなる限定もされないコーティング、カプセル化、マイクロカプセル化、ナノカプセル化、凍結乾燥、キレート剤、錯化剤などの異なる技術および成分を使用して、製剤中のドロナビノールの安定性および/または溶解性を高めることができる。
【0100】
実施例8
経皮製剤および/または局所製剤は、単独でまたはその組み合わせでのいずれかで、以下に限定されない、補助pH緩衝剤およびpH安定剤、ならびに製剤の適切なpHを好ましくは4.0~8.0の範囲に維持することが当業者に知られている同様の化合物を含む;リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液など、限定されないが(カルボン酸、無機酸、スルホン酸、ビニル性カルボン酸、脂肪酸など)などの酸、限定されないが(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム)などの塩基など。上記の剤は、一実施形態では、0.01%~30%w/wまたはw/vの範囲である。
【0101】
実施例9
経皮製剤および/または局所製剤は、安定な製剤を提供するために、限定されないがメタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸、BHA、およびBHTなどの、抗酸化剤、酸化剤、安定剤、変色剤、防腐剤および類似の化合物または化学物質を含む。言及された剤は、一実施形態では、0.01%~50%w/w(またはw/v)の範囲である。
【0102】
実施例10
軟膏および/またはクリームベース、ゲル、ローション、および他の局所製剤に製剤化されたドロナビノールを含む経皮製剤および/または局所製剤。
【0103】
実施例11
当業者に知られるパッチ形態、例えば、限定されないが、リザーバパッチ、マトリックスパッチ、接着剤中の薬物、経皮フィルムなどで、本開示の経皮送達システムを作るための材料は、単独でまたはそれらの組み合わせでのいずれかで、限定されないが、ポリマー、コポリマー、誘導体、バッキングフィルム、剥離膜、剥離ライナーなどを含み得る。感圧接着剤(限定されないが、シリコーンポリマー、ゴムベースの接着剤、アクリルポリマー、アクリルコポリマー、ポリイソブチレン、アクリル酸-イソオクチルアクリレートコポリマー、ホットメルト接着剤、ポリブチレンなど)、バッキングフィルム(限定されないが、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン、塩化ポリビニル、金属箔、ポリエステル、アルミ化フィルム、ポリエチレンなど)、剥離膜(限定されないが、微孔性ポリエチレン膜、微孔性ポリプロピレン膜、速度制御エチレン酢酸ビニルコポリマー膜など)、剥離ライナー(限定されないが、シリコン処理ポリエステル膜、フルオロポリマーでコーティングされたポリエステル膜、ポリエステル膜、シリコン処理されたポリエチレンテレフタレート膜など)、テープなど。
【0104】
本開示の経皮製剤および/または局所製剤および/または経皮送達システムは、少なくとも治療有効用量のドロナビノールを送達できる。ドロナビノールの治療有効用量は、化学療法に関連する悪心および/または嘔吐を治療および/または予防するために必要とされるヒト血漿中のドロナビノールの治療濃度を指す。さらに、経皮製剤または局所製剤または経皮送達システムにおけるドロナビノールの正確な治療有効量は、これらに限定されないが、患者の状態などの要因に基づいて当業者によって決定され得る。経皮製剤または局所製剤または経皮送達システムは、患者の要件に基づき最適な治療結果を達成するために、異なる投与強度およびパッチサイズで利用可能であろう。
【0105】
別の実施形態では、本開示の経皮製剤および/または局所製剤および/または経皮送達システムは、少なくとも治療有効用量のドロナビノールを送達できる。治療効果のあるドロナビノール用量は、マリノールラベル「AIDS患者の体重減少に関連する食欲不振」(ラベルを参照)に記載されているように、治療に必要とされるヒト血漿中のドロナビノールの治療濃度を指す。さらに、経皮製剤または局所製剤または経皮送達システムにおけるドロナビノールの正確な治療有効量は、これらに限定されないが、患者の状態などの要因に基づいき当業者によって決定され得る。経皮製剤または局所製剤または経皮送達システムは、患者の要件に基づき最適な治療結果を達成するために、異なる投与強度およびパッチサイズで利用可能であろう。
【0106】
ドロナビノールの経皮製剤または経皮パッチは好ましくは、ただしこれらに限定されないが、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日~約13日に1回、2週間に1回、15日に1回などの投与レジメンのいずれかで皮膚表面に適用できる。
【0107】
実施例12
経皮送達用の合成デルタ-9-THC製剤(製剤番号001、002、006、007、008および009)を、表2に示されるように成分を混合することによって調製した。
【表2】
【0108】
THCを除き、表2の成分のすべてを、18時間撹拌しながら共に混合した。次に、エタノール中のTHCを賦形剤混合物に添加して、最終経皮製剤を調製した。
【0109】
調製された経皮製剤を次に、以下のようにフラックス測定試験に供した。-80℃で保存されたヒトの死体の皮膚を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で室温にて解凍し、試験で使用する前に欠陥について視覚的検査した。経皮フラックスを次に、13mLの容量を有する、円筒形のドナーコンパートメントと別個のウォータージャケット付き円筒形のレセプターコンパートメントで構成される標準的なフランツ拡散セルを使用して測定した。ヒトの死体の皮膚を、真皮側がレセプターコンパートメントに面するように、2つのコンパートメントの間に固定した。ドナーコンパートメントを、上記のように調製された経皮THC製剤で満たした。レセプターコンパートメントを、レセプター培地で満たし、一定の温度で保持し、絶えず撹拌して、THCが皮膚を通ってレセプターコンパートメントに拡散するときにTHCを収集した。レセプター体液が常に皮膚と接触していることを確認することが重要である。レセプターコンパートメントを、デルタ-9-THCのアッセイのために24時間間隔で空にし、新しいレセプター溶液と交換した。レセプターコンパートメント中の沈下状態を維持するために、レセプターコンパートメント中のデルタ-9-THC濃度をその溶解度の10%未満に維持することが重要である。実験条件を表3に示す。
【表3】
【0110】
ヒトの死体の皮膚を通るTHCのフラックスを、最低96時間(4日)測定した。フラックス測定結果を表4に示す。
【表4】
【0111】
実施例13
経皮送達用の追加の合成デルタ-9-THC製剤(製剤番号010~018)を、表5に示すとおり成分を混合することにより調製した。
【表5】
【0112】
経皮送達用の合成デルタ-9-THC製剤(010-018)を、実施例12に記載される同じ手順で調製した。フラックス測定もまた、実施例12に記載されるように実施した。実験条件は、実施例12の表3に提供されるものと同じである。
【0113】
ヒトの死体の皮膚を通るTHCのフラックスを、最低96時間(4日)測定した。フラックス測定実験の結果を表6に示す。
【表6】
【0114】
実施例14
経皮送達用の追加の合成デルタ-9-THC製剤(製剤番号019~027)を、表7に示されるように成分を混合することにより、調製した。
【表7】
【0115】
経皮送達用の合成デルタ-9-THC製剤(019~027)を、実施例12に記載される同じ手順で調製した。フラックス測定もまた、実施例12に記載されるように実施した。実験条件は、実施例12の表3に提供されるものと同じである。
【0116】
ヒトの死体の皮膚を通るTHCのフラックスを、最低72時間(3日)測定した。フラックス測定実験の結果を表8に示す。
【表8】
【0117】
実施例15
経皮送達用の追加の合成デルタ-9-THC製剤(製剤番号028~034)を、表9に示すとおり成分を混合することにより調製した。
【表9】
【0118】
経皮送達用の合成デルタ-9-THC製剤(製剤番号028~034)を、実施例12に記載された同じ手順によって調製した。フラックス測定もまた、実施例12に記載されるように実施した。実験条件は、実施例12の表3に提供されるものと同じである。
【0119】
ヒトの死体の皮膚を通るTHCのフラックスを、最低120時間(5日)測定した。フラックス測定実験の結果を表10に示す。
【表10】
【0120】
実施例16
経皮送達パッチ用の追加の合成デルタ-9-THC製剤(製剤番号035~038)を、表11に示すように成分を混合することによって調製した。
【表11】
【0121】
合成デルタ-9-THCを含む経皮パッチを調製するために、THCを除き、表11のすべての成分を、18時間撹拌しながら一緒に混合した。次に、THCを、製剤を広げる30分前に添加した。製剤を、市販のベンチトップスプレッダーを使用して広げた。具体的には、製剤マトリックスを、8x14インチ(20.3x35.6センチ)の剥離ライナーシート(3M 9744など)に0.5mmの厚さに均等に広げる。シートを次に、100°F(37.8℃)のオーブンに1時間入れて、酢酸エチルおよびエタノール接着剤溶剤を蒸発させる。光および酸化による分解を阻害するために、酸素に対する低透過性を有する不透明バッキング膜(3M 9730 NRフィルムなど)を次に、手作業でシートに注意深く塗布して、気泡およびボイドの形成を回避する。円形のダイ(直径1.5インチ(3.8センチ))を使用して、その後の試験のためにパッチ(7cm2)を切断した。
【0122】
上記の実施例における経皮製剤のフラックス測定の一般的な手順は、以下のとおりであった。-80℃で保存されたヒトの死体の皮膚を、室温でPBS中にて解凍し、使用前に欠陥の有無を目視検査した。経皮フラックスを、13mLの容量を有する、円筒形のドナーコンパートメントと別個のウォータージャケット付き円筒形のレセプターコンパートメントで構成される標準的なフランツ拡散セルを使用して測定した。ヒトの死体の皮膚を、真皮側がレセプターコンパートメントに面するように、2つのコンパートメントの間に固定した。経皮接着パッチのフラックス測定の一般的な手順は、次のとおりである。剥離ライナーを、パッチから剥離し、接着面をヒトの死体の皮膚に貼付する(実施例16、表11のみ)。経皮パッチを、ドナーコンパートメントと接触している皮膚の側のパッチで皮膚に接着させた。レセプターコンパートメントを、レセプター培地で満たし、一定の温度で保持し、絶えず撹拌して、THCが接着したパッチから、皮膚を通ってレセプターコンパートメントに拡散するときにTHCを収集した。レセプター液は常に皮膚に接触していることが確認された。レセプターコンパートメントを、デルタ-9-THCのアッセイのために24時間間隔で空にし、新しいレセプター溶液と交換した。レセプターコンパートメントの沈下状態を維持するために、レセプターコンパートメント中のデルタ-9-THC濃度を、その溶解度の10%未満に維持した。実験条件は、実施例12の表3に提供されるものと同じである。
図1
【国際調査報告】