(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】トレハロース製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7016 20060101AFI20221125BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221125BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K31/7016
A61P3/00
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520413
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 US2020053226
(87)【国際公開番号】W WO2021067243
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522129753
【氏名又は名称】シーロス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】メーラ, ラジ
(72)【発明者】
【氏名】ワシエフスキ, ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ, ゴパル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC21
4C076FF12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZC21
(57)【要約】
本開示は、対象にトレハロース製剤を投与することにより、対象におけるムコ多糖症の1つ以上の症状を治療または緩和する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含む水性医薬製剤を前記対象に静脈内投与することを含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項2】
ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であって、水性医薬製剤を前記対象に静脈内投与することを含み、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.5であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項3】
ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含む水性製剤を前記対象に静脈内投与することを含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項4】
ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であって、水性製剤を前記対象に静脈内投与することを含み、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項5】
ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、
(a)前記対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を前記対象に静脈内投与することと、を含み、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって静脈内投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項6】
ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であって、
(a)前記対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を前記対象に静脈内投与することと、を含み、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項7】
ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であって、
(a)前記対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を前記対象に静脈内投与することと、を含み、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項8】
ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であって、
(a)前記対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を前記対象に静脈内投与することと、を含み、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記製剤が、約15分~約150分にわたって投与され、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、方法。
【請求項9】
前記ムコ多糖症が、ハーラー症候群(MPS IH)、ハーラー・シャイエ症候群(MPS IH/S)、シャイエ症候群(MPS ISまたはMPS V)、ハンター症候群(MPS II)、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)、サンフィリッポ症候群D(MPS IIID)、モルキオ症候群A(MPS IVA)、モルキオ症候群B (MPS IVB)、マロトー・ラミー症候群(MPS VI)、スライ症候群(MPS VII)、およびナトウィッチ(Natowicz)症候群(MPS IX)からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ムコ多糖症が、ハーラー症候群(MPS IH)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ムコ多糖症が、シャイエ症候群(MPS ISまたはMPS V)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ムコ多糖症が、ハンター症候群(MPS II)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ムコ多糖症が、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ムコ多糖症が、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ムコ多糖症が、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ムコ多糖症が、サンフィリッポ症候群D(MPS IIID)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ムコ多糖症が、モルキオ症候群A(MPS IVA)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ムコ多糖症が、モルキオ症候群B(MPS IVB)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ムコ多糖症が、マロトー・ラミー症候群(MPS VI)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ムコ多糖症が、スライ症候群(MPS VII)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ムコ多糖症が、ナトウィッチ症候群(MPS IX)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記製剤のpHが、約4.5~約6.5である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記製剤のpHが、約5.5である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記製剤が、1mL当たり約0.15未満のエンドトキシン単位を含有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤が、1mL当たり約0.05未満のエンドトキシン単位を含有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が、1mL当たり約0.02未満のエンドトキシン単位を含有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記製剤が、約290mOsm/kg~320mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記製剤が、約300mOsm/kg~310mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記製剤が、約15分~約90分にわたって投与される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記製剤が、約15分~約60分にわたって投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記製剤が、約15分~約45分にわたって投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤が、約15分~約30分にわたって投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記製剤が、約120分~約150分にわたって投与される、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記製剤が、約6%(w/v)~約12%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記製剤が、約7%(w/v)~約11%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記製剤が、約8%(w/v)~約10%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記製剤が、約9%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.25%未満の夾雑物を含有する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.1%未満の夾雑物を含有する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.08%未満の夾雑物を含有する、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.05%未満の夾雑物を含有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記夾雑物が、グルコース、マルトトリオース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記製剤が、約0.01%未満のグルコースおよび約0.01%未満のマルトトリオースを含有する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、小児対象である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、18歳未満である、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、12歳未満である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、8歳未満である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、6歳未満である、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、4歳未満である、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、2歳未満である、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、1歳未満である、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、生後8ヶ月未満である、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が、生後4ヶ月未満である、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が、生後1ヶ月未満である、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、生後1週間未満である、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、子宮内におり、前記対象への前記投与が、母親への投与を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象が、約2歳~約6歳である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象が、約4歳~約6歳である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
対象がリソソーム欠損症を有すると決定することが、遺伝子検査、血液検査、尿検査、インビトロ酵素アッセイ、または前述のうちのいずれかの組み合わせを含む、請求項5~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することが、遺伝子検査を含む、請求項5~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することが、血液検査を含む、請求項5~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することが、尿検査を含む、請求項5~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することが、インビトロ酵素アッセイを含む、請求項5~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することが、羊水穿刺、絨毛膜絨毛サンプリング、またはそれらの組み合わせを含む、請求項5~46または59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記酵素欠損症が、α-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、およびヒアルロニダーゼからなる群から選択される酵素の欠損症である、請求項5~9および22~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記酵素欠損症が、α-L-イズロニダーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記酵素欠損症が、イズロン酸スルファターゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記酵素欠損症が、ヘパランスルファミダーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記酵素欠損症が、N-アセチルグルコサミニダーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記酵素欠損症が、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記酵素欠損症が、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記酵素欠損症が、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記酵素欠損症が、β-ガラクトシダーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記酵素欠損症が、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記酵素欠損症が、β-グルクロニダーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記酵素欠損症が、ヒアルロニダーゼの欠損症である、請求項5~9および22~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
酵素補充療法を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記酵素補充療法が、アルデュラザイム、エラプラーゼ、アガルシダーゼα、アガルシダーゼβ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼα、ベラグルセラーゼα、アルグルセラーゼ、セベリパーゼα、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼα、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼα、および前述のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
基質合成抑制療法を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記基質合成抑制療法が、ミグルスタット、ミガラスタット、ミグリトール、エリグルスタット、ゲニステイン、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(GZ161)、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、イビグルスタット、ベングルスタット、エリグルスタットのうちの1つ以上、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記トレハラーゼ阻害剤が、バリジマイシンA、トレハゾリン、アミグダリン、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項3、4、7、または8~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含む前記医薬製剤との非固定の組み合わせとしてトレハラーゼ阻害剤を投与することをさらに含む、請求項1、2、5、6、または9~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記トレハラーゼ阻害剤が、バリジマイシンA、トレハゾリン、アミグダリン、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記トレハラーゼ阻害剤が、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含む前記医薬製剤とともに、同時にまたは連続して、いずれかの順序で投与される、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
対象への静脈内投与のためのすぐに使用できる水性医薬製剤であって、前記製剤が、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、
前記製剤のpHが、約4.5~7.0であり、
前記製剤が、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
前記製剤が、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約5%(w/v)から約15%(w/v)の量で前記製剤中に存在し、
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有し、
前記製剤が、密封された容器内に配置され、
前記製剤が、無菌である、すぐに使用できる水性医薬製剤。
【請求項87】
前記容器が、ガラス容器またはプラスチック容器からなる群から選択される、請求項86に記載の製剤。
【請求項88】
前記容器が、ガラス容器である、請求項86または87に記載の製剤。
【請求項89】
前記製剤が、10mL、20mL、30mL、または40mLからなる群から選択される総量として製剤化される、請求項86~88のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項90】
前記製剤が、30mLの総量として製剤化される、請求項86~89のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項91】
前記容器が、プラスチック容器である、請求項86または87に記載の製剤。
【請求項92】
前記プラスチック容器が、可撓性である、請求項91に記載の製剤。
【請求項93】
前記プラスチック容器が、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーを含む、請求項91または92に記載の製剤。
【請求項94】
前記プラスチック容器が、エチレン-プロピレンとスチレン-エチレンブチレン-スチレン(SEBS)とのコポリマーを含む、請求項91または92に記載の製剤。
【請求項95】
前記プラスチック容器が、ポリプロピレンを含む、請求項91または92に記載の製剤。
【請求項96】
前記プラスチック容器が、ポリプロピレンの単層または多層を含む、請求項95に記載の製剤。
【請求項97】
前記プラスチック容器が、フィルムバッグである、請求項91~96のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項98】
前記プラスチック容器が、注入ポートおよびチューブポートをさらに含む、請求項91~97のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項99】
前記製剤が、湿蒸気中で滅菌されている、請求項86~98のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項100】
前記製剤が、無菌的に滅菌されている、請求項86~98のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項101】
前記製剤のpHが、約4.5~約6.5である、請求項86~100のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項102】
前記製剤のpHが、約5.5である、請求項86~101のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項103】
前記製剤が、1mL当たり約0.15未満のエンドトキシン単位を含有する、請求項86~102のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項104】
前記製剤が、1mL当たり約0.05未満のエンドトキシン単位を含有する、請求項86~103のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項105】
前記製剤が、1mL当たり約0.02未満のエンドトキシン単位を含有する、請求項86~104のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項106】
前記製剤が、約290mOsm/kg~320mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項86~105のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項107】
前記製剤が、約300mOsm/kg~310mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項86~106のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項108】
前記製剤が、約6%(w/v)~約12%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項86~107のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項109】
前記製剤が、約7%(w/v)~約11%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項86~108のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項110】
前記製剤が、約8%(w/v)~約10%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項86~109のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項111】
前記製剤が、約9%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む、請求項86~110のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項112】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.5%未満の夾雑物を含有する、請求項86~111のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項113】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.25%未満の夾雑物を含有する、請求項86~112のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項114】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.1%未満の夾雑物を含有する、請求項86~113のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項115】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.08%未満の夾雑物を含有する、請求項86~114のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項116】
前記実質的に精製されたトレハロースが、約0.05%未満の夾雑物を含有する、請求項86~115のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項117】
前記夾雑物が、グルコース、マルトトリオース、またはそれらの組み合わせを含む、請求項86~116のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項118】
前記製剤が、約0.01%未満のグルコースおよび約0.01%未満のマルトトリオースを含有する、請求項117に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年10月1日に出願された米国仮出願第62/908,784号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、新規トレハロース組成物、組成物を作製するためのプロセス、および療法における組成物の使用に関する。より具体的には、それは、ムコ多糖症の症状の治療および/または改善に有用なトレハロース組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ムコ多糖症(MPS)は、複数の臓器系の異常および平均余命の低下を特徴とする遺伝性リソソーム蓄積症(LDS)の群である。MPSは、不均一な進行性の障害であり、対象は、典型的には、出生時に正常に見えるが、幼児期に骨格、関節、気道、および心臓の症状、ならびに聴覚、視覚、および認知障害を含む臨床疾患の発症を経験する。MPSは、グリコサミノグリカン(GAG)の分解に必要な単一の特定のリソソーム酵素の活性の不足によって引き起こされる。Muenzer,et al.,Rheumatology,Volume50,Suppl.Issue No.5,pp.v4-v12(2011)を参照されたい。
【0004】
グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸を除いて、細胞外マトリックス中のプロテオグリカンの分解産物である。プロテオグリカンは、タンパク質分解で切断され、細胞内消化のためにリソソームに入るGAGを生じさせる。分解される分子に応じて、GAGのリソソーム分解には、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、およびコンドロイチン硫酸の4つの異なる経路がある。グリコサミノグリカンの段階的分解には、10個の異なる酵素が必要である。これらの酵素の各々の不足が報告されており、7つの異なるMPSが発生し、それらすべてが様々な程度で一連の臨床的特徴を共有している。Couthino,et al.,Biochem.Res.Intl.,Volume2012,Article ID471325,pp.1-16を参照されたい。
MPSの現在の治療選択として、造血幹細胞移植(HSCT)および酵素補充療法(ERT)が挙げられる。しかしながら、HSCTは、侵襲的かつ高価であり、ERTも高価であり、酵素の不均一な分布を提供し、骨、肺、および脳などのある特定の領域を未治療のままにする。これらの治療は両方とも、高度な医療施設へのアクセスを必要とする。したがって、効果的かつ侵襲性の低いMPS治療が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Muenzer,et al.,Rheumatology,Volume50,Suppl.Issue No.5,pp.v4-v12(2011)
【非特許文献2】Couthino,et al.,Biochem.Res.Intl.,Volume2012,Article ID471325,pp.1-16
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、水性医薬製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0007】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であり、水性医薬製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、約4.5~7.5であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0008】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、水性医薬製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、製剤のpHは、約4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0009】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、水性医薬製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、製剤のpHは、約4.5~7.5であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0010】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0011】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0012】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、製剤のpHは、4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0013】
また、本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であり、その方法は、(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、製剤のpHは、4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0014】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明で使用するために本明細書に記載されており、当該技術分野で周知である他の好適な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。本明細書に記載のすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が制御するものとする。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】異なる知られているMPS、各MPSに関連する遺伝子およびタンパク質、ならびにMPS関連遺伝子および/またはMPS関連タンパク質の調節不全により凝集する糖化合物を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療」という用語は、治療的手段を指す。有益なまたは望ましい臨床結果には、検出可能または検出不可能に関わらず、疾患の安定した状態(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延または減速、および寛解(部分的または全体的)が含まれるが、これらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを意味する場合がある。いくつかの実施形態では、治療には、本明細書で定義されるように、疾患の1つ以上の症状の緩和が含まれる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「緩和する」または「緩和」は、疾患または障害または状態に関連する症状の全体的または部分的な低下、疾患の程度の減少、および病状の改善または軽減を指す(例えば、疾患の1つ以上の症状)。
【0019】
本明細書で使用される場合、「MPS関連」という用語は、ムコ多糖症に関連する核酸(例えば、DNAまたはRNA)および/またはタンパク質を指し、例えば、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくレベルの調節不全を有することは、ムコ多糖症の発症につながる。MPS関連遺伝子の非限定的な例には、例えば、IDUA、IDS、SGSH、NAGLU、HGSNAT、GNS、GALNS、GLB1、ARSB、GUSB、およびHYAL1が含まれる。MPS関連タンパク質の非限定的な例には、例えば、α-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、およびヒアルロニダーゼが含まれる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、およびヒトなどの哺乳動物を含む任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、治療および/または緩和されるべき疾患または障害の少なくとも1つの症状を経験している、かつ/または示している。いくつかの実施形態では、対象は、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの活性もしくはレベルの調節不全によりMPSを有すると特定または診断されている(例えば、規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みアッセイまたはキットを使用して決定される)。いくつかの実施形態では、対象は、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である試料を有する(例えば、規制当局承認済みアッセイまたはキットを使用して決定される)。いくつかの実施形態では、対象は、MPSを有することが疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの活性またはレベルの調節不全を有する試料を有することを示す臨床記録を有する(および任意選択で、臨床記録は、対象が本明細書で提供される組成物のうちのいずれかで治療されるべきであると示す)。いくつかの実施形態では、対象は、小児対象である。
【0021】
本明細書で使用される「小児対象」という用語は、診断または治療の時点で21歳未満の対象を指す。「小児」という用語は、さらに次のような様々な亜集団に分けることができる:新生児(出生から生後1か月まで)、乳児(1か月から2歳まで)、子供(2歳~12歳まで)、および青年(12歳~21歳まで(22歳の誕生日までであるが、それを含まない)。Berhman RE,Kliegman R,Arvin AM,Nelson WE.Nelson Textbook of Pediatrics,15th Ed.Philadelphia:W.B.Saunders Company,1996、Rudolph AM,et al.Rudolph’s Pediatrics,21st Ed.New York:McGraw-Hill,2002、およびAvery MD,First LR.Pediatric Medicine,2nd Ed.Baltimore:Williams&Wilkins;1994。いくつかの実施形態では、小児対象は、出生~生後28日まで、生後29日~2歳未満、2歳~12歳未満、または12歳~21歳まで(22歳の誕生日までであるが、それを含まれない)である。いくつかの実施形態では、小児対象は、出生から生後28日まで、生後29日から1歳未満、生後1ヶ月から生後4ヶ月未満、生後3ヶ月から生後7か月未満、生後6か月から1歳未満、1歳~2歳未満、2歳~3歳未満、2歳~7歳未満、3歳~5歳未満、5歳~10歳未満、6歳~13歳未満、10歳~15歳未満、または15歳~21歳未満である。
【0022】
「MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全」という句は、遺伝子変異を指す。例えば、野生型α-L-イズロニダーゼタンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含むα-L-イズロニダーゼタンパク質の発現をもたらすIDUA遺伝子の変異、野生型α-L-イズロニダーゼタンパク質と比較して1つ以上の点変異を伴うα-L-イズロニダーゼタンパク質の発現をもたらすIDUA遺伝子の変異、または野生型α-L-イズロニダーゼタンパク質と比較して少なくとも1つのアミノ酸が挿入されたα-L-イズロニダーゼタンパク質の発現をもたらすIDUA遺伝子の変異。特定のMPS関連タンパク質の点変異/挿入/欠失の非限定的な例を表1に示す。
【0023】
「野生型」という用語は、MPSを有しない(および任意選択で、MPSを発症するリスクが高くない、かつ/またはMPSを有することが疑われてもいない)対象において見られるか、またはMPSを有しない(および任意選択で、MPSを発症するリスクが高くない、かつ/もしくはMPSを有することが疑われてもいない)対象からの細胞もしくは組織で見られる核酸(例えば、IDUAなどの特定の遺伝子またはmRNA)もしくはタンパク質を示す。
【0024】
「本質的にからなる」または「からなる」という句は、特定されていないいかなる要素、ステップ、または成分をも除外し、例えば、通常関連する不純物を除いて、記載されているもの以外の材料を除外する。
【0025】
「規制当局」という用語は、その国での医薬品の医療使用を承認するための国の機関を指す。例えば、規制当局の非限定的な例は、アメリカ食品医薬品局(FDA)である。
【0026】
治療方法
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、水性医薬製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0027】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、水性医薬製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、
製剤のpHは、約4.5~7.5であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0028】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、水性製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0029】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、水性製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0030】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、
(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0031】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、
(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0032】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、
(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤が、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0033】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、
(a)対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することと、
(b)水性医薬製剤を対象に静脈内投与することと、を含み、製剤が、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含み、
製剤のpHは、約4.5~7.0であり、
製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、
製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、
製剤は、約15分~約150分にわたって投与され、
実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、
実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。
【0034】
いくつかの実施形態は、ムコ多糖症の治療を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、対象に水性医薬製剤を静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから実質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、5.0~6.0であり、製剤は、1mL当たり約0.25未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約300mOsm/kg~310mOsm/kgの浸透圧を有し、製剤は、約15分~約60分かけて投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約8%(w/v)~約10%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。いくつかの実施形態では、ムコ多糖症は、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)、およびサンフィリッポ症候群D(MPS IIID)から選択される。他の実施形態は、ムコ多糖症の1つ以上の症状の緩和を必要とする対象においてそれを行う方法を提供し、その方法は、水性製剤を対象に静脈内投与することを含み、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、約5.0~6.0であり、製剤は、1mL当たり約0.25未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約300mOsm/kg~310mOsm/kgの浸透圧であり、製剤は、約15分~約60分かけて投与され、実質的に精製されたトレハロースは、約8%(w/v)~約10%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有する。いくつかの実施形態では、ムコ多糖症は、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)、およびサンフィリッポ症候群D(MPS IIID)から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約4.5~7.0である。いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約4.5、約4.8、約5、約5.3、約5.5、約5.8、約6、約6.3、約6.5、約6.8、約7、またはその間の任意の値である。いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約4.4~約6.6である。他の実施形態では、製剤のpHは、約4.5~約6.5である。さらに他の実施形態では、製剤のpHは、約5~約6である。いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約5.5である。
【0036】
いくつかの実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.05、約0.10、約0.15、約0.20、約0.25、約0.30、約0.35、約0.40、約0.45、約0.50、約0.55、約0.60、約0.65、または約0.70のエンドトキシン単位などの、1mL当たり約0.75未満、例えば、検出不可能なレベルの1mL当たりのエンドトキシン単位から1mL当たり最大約0.75のエンドトキシン単位を含有する。いくつかの実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.50未満のエンドトキシン単位を含有する。他の実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.25未満のエンドトキシン単位を含有する。さらに他の実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.20未満のエンドトキシン単位を含有する。いくつかの実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.01~約0.15のエンドトキシン単位、またはその間の任意の値を含有する。いくつかの実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.15未満のエンドトキシン単位を含有する。他の実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.10未満のエンドトキシン単位を含有する。さらに他の実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.05未満のエンドトキシン単位を含有する。いくつかの実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.02未満のエンドトキシン単位を含有する。他の実施形態では、製剤は、1mL当たり約0.01未満のエンドトキシン単位を含有する。さらに他の実施形態では、製剤は、1mL当たり検出不可能な量のエンドトキシン単位を含有する。エンドトキシンレベルを検出するための方法は、当技術分野で知られており、例えば、ウサギパイロジェン試験(USP<151>)、単球活性化試験、リムルスアメーバ細胞溶解物アッセイ、およびHPLCベースの方法が含まれる。
【0037】
いくつかの実施形態では、製剤は、約290mOsm/kg~320mOsm/kg、またはその間の任意の値、例えば、約290、約295、約300、約305、約310、約315、または約320mOsm/kgの浸透圧を有する。他の実施形態では、製剤は、約300mOsm/kg~約310mOsm/kgの浸透圧を有する。いくつかの実施形態では、製剤は、約290mOsm/kg、約300mOsm/kg、約310mOsm/kg、または約320mOsm/kgの浸透圧を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、製剤は、約15分~約150分、またはその間の任意の値にわたって投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、約15分~約90分にわたって投与される。他の実施形態では、製剤は、約15分~約60分にわたって投与される。他の実施形態では、製剤は、約15分~約45分にわたって投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、約15分~約30分にわたって投与される。他の実施形態では、製剤は、約120分~約150分にわたって投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、約150分未満、約120分未満、約90分未満、約60分未満、約45分未満、または約30分未満にわたって投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、製剤は、約5%(w/v)~約15%(w/v)の実質的に精製されたトレハロース、またはその間の任意の値、例えば、約5、約6、約7、約8、9、約10、約11、約12、約13、約14、または約15%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約6%(w/v)~約12%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。他の実施形態では、製剤は、約7%(w/v)~約11%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。さらに他の実施形態では、製剤は、約8%(w/v)~約10%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約9%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。他の実施形態では、製剤は、約10%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。さらに他の実施形態では、製剤は、約8%(w/v)の実質的に精製されたトレハロースを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物、例えば、HPLCによる検出不可能なレベルの夾雑物から約0.5%の夾雑物、またはその間の任意の値を含有する。いくつかの実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.08、約0.10、約0.12、約0.15、約0.18、約0.20、約0.22、約0.25、約0.28、約0.30、約0.32、約0.35、約0.38、約0.40、約0.42、約0.45、約0.48、または約0.5%の夾雑物を含有する。他の実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.25%未満の夾雑物を含有する。さらに他の実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.1%未満の夾雑物を含有する。いくつかの実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.08%未満の夾雑物を含有する。他の実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.05%未満の夾雑物を含有する。さらに他の実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.02%未満の夾雑物を含有する。いくつかの実施形態では、実質的に精製されたトレハロースは、約0.01%未満の夾雑物を含有する。いくつかの実施形態では、実質的に精製されたトレハロース中の夾雑物は、グルコース、マルトトリオース、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.01%未満のグルコースおよび約0.01%未満のマルトトリオースを含有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、対象は、小児対象である。他の実施形態では、対象は、18歳未満である。さらに他の実施形態では、対象は、12歳未満である。いくつかの実施形態では、対象は、8歳未満である。他の実施形態では、対象は、6歳未満である。さらに他の実施形態では、対象は、4歳未満である。いくつかの実施形態では、対象は、2歳未満である。他の実施形態では、対象は、1歳未満である。さらに他の実施形態では、対象は、生後8ヶ月未満である。いくつかの実施形態では、対象は、生後4ヶ月未満である。他の実施形態では、対象は、生後1ヶ月未満である。さらに他の実施形態では、対象は、生後1週間である。いくつかの実施形態では、対象は、約2歳~約6歳である。他の実施形態では、対象は約4歳~約6歳である。
【0042】
いくつかの実施形態では、対象は、子宮内におり、対象への静脈内投与は、母親への静脈内投与を含む。
【0043】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、酵素補充療法を対象に投与することをさらに含む。本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、対象は、以前に酵素補充療法を投与されている。いくつかの実施形態では、酵素補充療法は、アルデュラザイム、エラプラーゼ、アガルシダーゼα、アガルシダーゼβ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼα、ベラグルセラーゼα、アルグルセラーゼ、セベリパーゼα、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼα、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼα、および前述のうちのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、対象に基質合成抑制療法を投与することをさらに含む。本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、対象は、以前に基質合成抑制療法を投与されている。いくつかの実施形態では、基質合成抑制療法は、ミグルスタット、ミガラスタット、ミグリトール、エリグルスタット、ゲニステイン、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(GZ161)、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、イビグルスタット、ベングルスタット、エリグルスタットのうちの1つ以上、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、製剤は、実質的に精製されたトレハロースおよびトレハラーゼ阻害剤を排他的な有効成分として含む。いくつかの実施形態では、トレハラーゼ阻害剤は、バリジマイシンA、トレハゾリン、アミグダリン、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含む医薬製剤との非固定の組み合わせとしてトレハラーゼ阻害剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、トレハラーゼ阻害剤は、バリジマイシンA、トレハゾリン、アミグダリン、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、トレハラーゼ阻害剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含む医薬製剤とともに、同時にまたは連続して、いずれかの順序で投与される。
【0047】
いくつかの実施形態は、対象への静脈内投与のためのすぐに使用できる水性医薬製剤を提供し、製剤は、実質的に精製されたトレハロースから本質的になる単一の有効成分を含み、製剤のpHは、4.5~7.0であり、製剤は、1mL当たり約0.75未満のエンドトキシン単位を含有し、製剤は、約280mOsm/kg~330mOsm/kgの浸透圧を有し、実質的に精製されたトレハロースは、約5%(w/v)~約15%(w/v)の量で製剤中に存在し、実質的に精製されたトレハロースは、約0.5%未満の夾雑物を含有し、製剤は、密封された容器内に配置され、製剤は、無菌である。
【0048】
いくつかの実施形態では、容器は、ガラスバイアル(例えば、フリントガラスバイアル)、アンプル、PVC(塩化ポリビニル)容器などのプラスチック可撓性容器、VisiV(商標)プラスチック容器(Hospira,Inc.Lake Forest、Ill)、およびCR3エラストマーコポリエステルエーテル容器(Hospira,Inc.、Lake Forest、Ill)、CZ樹脂容器、およびポリプロピレン容器を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、容器は、BPAを含まない。
【0049】
いくつかの実施形態では、容器は、ガラス容器またはプラスチック容器からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、容器は、ガラス容器である。他の実施形態では、容器は、プラスチック容器である。いくつかの実施形態では、製剤は、10mL~100mL、またはその間の任意の値の総量として製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、10mL、20mL、30mL、または40mLからなる群から選択される総量として製剤化される。他の実施形態では、製剤は、10mLの総量として製剤化される。さらに他の実施形態では、製剤は、20mLの総量として製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤は、30mLの総量として製剤化される。他の実施形態では、製剤は、40mLの総量として製剤化される。
【0050】
いくつかの実施形態では、プラスチック容器は、可撓性である。いくつかの実施形態では、プラスチック容器は、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーを含む。他の実施形態では、プラスチック容器は、エチレン-プロピレンとスチレン-エチレンブチレン-スチレン(SEBS)とのコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、プラスチック容器は、ポリプロピレンを含む。いくつかの実施形態では、プラスチック容器は、ポリプロピレンの単層または多層を含む。いくつかの実施形態では、プラスチック容器は、フィルムバッグである。いくつかの実施形態では、プラスチック容器は、注入ポートおよびチューブポートをさらに含む。いくつかの実施形態では、製剤は、湿蒸気中で滅菌されている。他の実施形態では、製剤は、無菌的に滅菌されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、製剤の無菌性を維持するか、または製剤の汚染を防ぐことができる容器に配置される。いくつかの実施形態では、容器は、密封された容器である。いくつかの実施形態では、製剤は、容器に配置され、単回使用投与量として製剤化される。他の実施形態では、製剤は、容器に配置され、複数回使用用量として製剤化される。
【0052】
したがって、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載のトレハロース製剤を対象に投与することを含む、と診断された(または有すると特定された)対象を治療するための方法である。また、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の製剤を対象に投与することを含む、MPSを有すると特定されたか、または診断された対象を治療するための方法である。いくつかの実施形態では、対象、または対象からの試料において特定のMPS関連遺伝子またはMPS関連タンパク質、またはそれらの活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済み試験またはアッセイの使用を通じてか、または本明細書に記載のアッセイの非限定的な例のうちのいずれかを実行することによって、MPSを有すると特定または診断された対象。いくつかの実施形態では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。他の実施形態では、対象は、血液または尿などの体液中の凝集生成物のレベルを測定することによって、MPSを有すると特定または診断されている。
【0053】
また、提供されるのは、MPSの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であり、その方法は、(a)対象におけるMPS関連遺伝子および/またはMPS関連タンパク質の調節不全を検出することと、(b)本明細書に記載の製剤を対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、対象は、対象において、または対象からの試料においてMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済み試験またはアッセイの使用を通じてか、または本明細書に記載のアッセイの非限定的な例のうちのいずれかを実行することによって、MPSを有すると決定される。いくつかの実施形態では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。
【0054】
また、提供されるのは、対象から得られた試料に対してアッセイを実施して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定することと、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定された対象に本明細書に記載のトレハロース製剤を投与する(例えば、特異的または選択的に投与する)ことと、を含む、対象を治療する方法である。これらの方法のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、酵素補充療法または基質合成抑制療法などの別の療法を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、MPSを有することが疑われる対象、MPSの1つ以上の症状を呈する対象、またはMPSを発症するリスクが高い対象である。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局承認済みアッセイ、例えば、FDA承認済みキットである。
【0055】
また、提供されるのは、対象から得られた試料に対してアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)を実施して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定するステップを通じてMPSを有すると特定または診断された対象においてMPSを治療する際に使用するためのトレハロース製剤であり、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全の存在により、対象がMPSを有すると特定される。また、提供されるのは、対象から得られた試料に対してアッセイを実施して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定するステップを通じてMPSを有すると特定または診断された対象においてMPSを治療するための薬剤の製造のための本明細書に記載のトレハロース製剤の使用であり、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全の存在により、対象がMPSを有すると特定される。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態は、対象が、アッセイの実施を通じて、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定され、本明細書に記載のトレハロース製剤を投与するべきであると、対象の臨床記録(例えば、コンピューター可読媒体)に記録することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局承認済みアッセイ、例えば、FDA承認済みキットである。
【0056】
また、提供されるのは、MPSの治療を必要とする対象、またはMPSを有すると特定もしくは診断された対象においてそれを行う際に使用するための本明細書に記載のトレハロース製剤である。また、提供されるのは、MPSを有すると特定または診断された対象においてMPSを治療するための薬剤の製造のための本明細書に記載のトレハロース製剤の使用である。いくつかの実施形態では、対象は、対象、または対象からの試料においてMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みキットの使用を通じて、MPSを有すると特定または診断される。
【0057】
また、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のトレハロース製剤を小児対象に投与することを含む、MPSと診断された(または有すると特定された)小児対象を治療するための方法である。また、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のトレハロース製剤を小児対象に投与することを含む、MPSを有すると特定または診断された小児対象を治療するための方法である。いくつかの実施形態では、小児対象、または小児対象からの試料においてMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済み試験またはアッセイの使用を通じてか、または本明細書に記載のアッセイの非限定的な例のうちのいずれかを実行することによって、MPSを有すると特定または診断された対象。いくつかの実施形態では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。
【0058】
また、提供されるのは、リソソーム蓄積障害の治療を必要とする小児対象において、それを行うための方法が提供され、その方法は、(a)小児対象におけるリソソーム蓄積障害がMPSであるかどうかを決定することと、(b)リソソーム蓄積症がMPSであると決定された場合、本明細書に記載のトレハロース製剤を小児対象に投与することと、を含む。これらの方法のいくつかの実施形態は、酵素補充療法または基質合成抑制療法などの別の療法を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、酵素補充療法(例えば、アルデュラザイム、エラプラーゼ、アガルシダーゼα、アガルシダーゼβ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼα、ベラグルセラーゼα、アルグルセラーゼ、セベリパーゼα、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼα、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼα)および/または基質合成抑制療法(例えば、ミグルスタット、ミガラスタット、ミグリトール、エリグルスタット、ゲニステイン、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(GZ161)、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、イビグルスタット、ベングルスタット、エリグルスタット、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩)で以前に治療された。
【0059】
いくつかの実施形態では、小児対象は、小児対象、または小児対象からの試料においてMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済み試験またはアッセイの使用を通じてか、または本明細書に記載のアッセイの非限定的な例のうちのいずれかを実行することによって、MPSを有すると決定される。いくつかの実施形態では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。
【0060】
また、提供されるのは、小児対象から得られた試料に対してアッセイを実施して、小児対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定することと、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定された小児対象に本明細書に記載のトレハロース製剤を投与する(例えば、特異的または選択的に投与する)ことと、を含む、小児対象を治療する方法である。これらの方法のいくつかの実施形態は、酵素補充療法または基質合成抑制療法などの別の療法を小児対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、小児対象は、酵素補充療法(例えば、アルデュラザイム、エラプラーゼ、アガルシダーゼα、アガルシダーゼβ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼα、ベラグルセラーゼα、アルグルセラーゼ、セベリパーゼα、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼα、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼα)および/または基質合成抑制療法(例えば、ミグルスタット、ミガラスタット、ミグリトール、エリグルスタット、ゲニステイン、(S)-キヌクリジン-3-イル(2-(2-(4-フルオロフェニル)チアゾール-4-イル)プロパン-2-イル)カルバメート(GZ161)、キヌクリジン-3-イル(2-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)プロパン-2-イル)カルバメート、イビグルスタット、ベングルスタット、エリグルスタット、または前述のうちのいずれかの組み合わせ、または前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩)で以前に治療された。いくつかの実施形態では、小児対象は、MPSを有することが疑われる小児対象、MPSの1つ以上の症状を呈する小児対象、またはMPSを発症するリスクが高い小児対象である。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局承認済みアッセイ、例えば、FDA承認済みキットである。追加のアッセイも当技術分野で知られている。
【0061】
また、提供されるのは、小児対象から得られた試料に対してアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)を実施して、小児対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定するステップを通じてMPSを有すると特定または診断された小児対象においてMPSを治療する際に使用するための本明細書に記載のトレハロース製剤であり、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全の存在により、小児対象がMPSを有すると特定される。また、提供されるのは、小児対象から得られた試料に対してアッセイを実施して、小児対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定するステップを通じてMPSを有すると特定または診断された小児対象においてMPSを治療するための薬剤の製造のための本明細書に記載のトレハロース製剤の使用であり、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全の存在により、小児対象がMPSを有すると特定される。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態は、小児対象が、アッセイの実施を通じて、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定され、本明細書に記載のトレハロース製剤を投与するべきであると、対象の臨床記録(例えば、コンピューター可読媒体)に記録することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局承認済みアッセイ、例えば、FDA承認済みキットである。
【0062】
また、提供されるのは、MPSの治療を必要とする小児対象、またはMPSを有すると特定もしくは診断された小児対象においてそれを行う際に使用するための本明細書に記載のトレハロース製剤である。また、提供されるのは、MPSを有すると特定または診断された小児対象においてMPSを治療するための薬剤の製造のための本明細書に記載のトレハロース製剤の使用である。いくつかの実施形態では、小児対象は、小児対象、または小児対象からの試料においてMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みキットの使用を通じて、MPSを有すると特定または診断される。
【0063】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全によりMPSを有すると特定または診断されている。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である試料を有する。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である試料を有する対象であり得る。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する対象であり得る。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、MPSを有することが疑われる(例えば、本明細書に記載されるように、MPS関連遺伝子および/またはMPS関連タンパク質に1つ以上の変異を有する)。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるのは、MPSの治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法であり、その方法は、a)対象からの試料におけるMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出することと、b)本明細書に記載のトレハロース製剤を投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、1つ以上のタンパク質点変異/挿入/欠失を含む。タンパク質の点変異/挿入/欠失の非限定的な例を表1に示す。いくつかの実施形態では、点変異/挿入/欠失は、表1に記載されているそれらのタンパク質変異からなる群から選択される。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【0064】
国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)が提供するClinVarデータベースを使用して、表1に示されるように既知の病原性遺伝的変異体を特定した。Richards et al.,Genet.Med.,17(5):405-24(2015)を参照されたい。本明細書で使用される場合、「fs」は、フレームシフトをもたらした遺伝的変異体を指す。例えば、Val251Phefsは、バリンからフェニルアラニンへの変化をもたらした、アミノ酸位置251でのフレームシフト変異を指す。
【0065】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する(例えば、本明細書に記載されるように、MPS関連遺伝子および/またはMPS関連タンパク質に1つ以上の変異を有する)ことを示す臨床記録を有する。いくつかの実施形態では、臨床記録は、対象が本明細書に記載のトレハロース製剤で治療されるべきであることを示す。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する対象は、MPS関連遺伝子および/またはMPS関連タンパク質に1つ以上の点変異を有する対象である。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を伴う対象は、規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みアッセイまたはキットを使用して決定される。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を伴う試料は、規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みアッセイまたはキットを使用して決定される。
【0066】
また、提供されるのは、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有することを示す臨床記録を有する対象に、本明細書に記載のトレハロース製剤を投与することを含む、対象を治療する方法である。また、提供されるのは、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有することを示す臨床記録を有する対象においてMPSを治療するための薬剤の製造のための本明細書に記載のトレハロース製剤の使用である。これらの方法および使用のうちのいくつかの実施形態は、対象から得られた試料に対してアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)を実施して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定し、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると特定されていることを、対象の臨床ファイル(例えば、コンピューター可読媒体)に情報を記録するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、アッセイは、インビトロアッセイである。例えば、次世代シーケンシングなどの遺伝子技術を利用するか、または試料中のGAGレベルを測定するか、または試料中の1つ以上の酵素の活性を測定するアッセイ。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みキットである。
【0067】
また、本明細書に提供されるのは、対象を治療する方法である。いくつかの実施形態では、方法は、対象から得られた試料に対してアッセイを実施して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定することを含む。いくつかのそのような実施形態では、方法はまた、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定された対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象から得られた試料に対して実施されるアッセイを介して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくはレベルの調節不全を有することを決定することを含む。そのような実施形態では、方法はまた、本明細書に記載のトレハロース製剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくはレベルの調節不全は、MPS関連遺伝子における1つ以上の点変異である(例えば、表1など、本明細書に記載されている点変異のうちの1つ以上)。MPS関連遺伝子における1つ以上の点変異は、例えば、表1に記載されているアミノ酸置換のうちの1つ以上を有するMPS関連タンパク質の翻訳をもたらす可能性がある。これらの方法のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、酵素補充療法または基質合成抑制療法などの別の療法を対象に投与することをさらに含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、脳および/または中枢神経系(CNS)浸透度を示すトレハロース製剤を提供する。したがって、本明細書に記載の方法は、血液脳関門を通過することができ、脳および/または他のCNS構造において治療有効量のトレハロースを提供することができるトレハロースを提供する。例えば、認知作用などの脳および/またはCNSに影響を与える、MPSを伴う対象の治療。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、筋肉組織(骨格筋および平滑筋を含む)への浸透度を示すトレハロース製剤を提供する。したがって、本明細書に記載の方法は、筋肉組織に浸透することができるトレハロースを提供し、したがって、筋線維において治療有効量のトレハロースを提供する。例えば、運動感覚または運動作用などの筋肉に影響を与える、MPSを伴う対象の治療。
【0070】
また、提供されるのは、MPSを有すると特定または診断された対象のための治療を選択する方法(例えば、インビトロ方法)である。いくつかの実施形態は、MPSを有すると特定または診断された対象に選択された治療を投与することをさらに含み得る。例えば、選択された治療には、本明細書に記載のトレハロース製剤の投与が含まれ得る。いくつかの実施形態は、対象から得られた試料に対してアッセイを実施して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定し、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると決定された対象を、MPSを有すると特定または診断するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、対象は、対象、または対象からの試料においてMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みキットの使用を通じて、MPSを有すると特定または診断されている。いくつかの実施形態では、アッセイは、インビトロアッセイである。例えば、次世代シーケンシングなどの遺伝子技術を利用するか、または試料内のGAGレベルを測定するか、または試料内の1つ以上の酵素の活性を測定するアッセイ。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局承認済み、例えば、FDA承認済みキットである。
【0071】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象からの試料を使用して、対象がMPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを決定するために使用されるアッセイには、例えば、次世代シーケンシング、免疫組織化学、蛍光顕微鏡検査、サザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、FACS分析、ノーザンブロッティング、PCRベースの増幅(例えば、RT-PCRおよび定量的リアルタイムRT-PCR)、酵素活性アッセイ、および試料中のGAGレベルを測定するためのアッセイが含まれ得る。アッセイは、MPS関連遺伝子、MPS関連タンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出するための、当技術分野で知られている他の検出方法を利用することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子は、IDUA、IDS、SGSH、NAGLU、HGSNAT、GNS、GALNS、GLB1、ARSB、GUSB、およびHYAL1から選択される。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子は、IDUAである。他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、IDSである。さらに他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、SGSHである。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子は、NAGLUである。他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、HGSNATである。さらに他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、GNSである。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子は、GALNSである。他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、GLB1である。さらに他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、ARSBである。いくつかの実施形態では、MPS関連遺伝子は、GUSBである。他の実施形態では、MPS関連遺伝子は、HYAL1である。
【0073】
いくつかの実施形態では、MPS関連タンパク質は、α-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、およびヒアルロニダーゼから選択される。いくつかの実施形態では、MPS関連タンパク質は、α-L-イズロニダーゼである。他の実施形態では、MPS関連タンパク質は、イズロン酸スルファターゼである。さらに他の実施形態では、MPS関連タンパク質は、N-アセチルグルコサミニダーゼである。いくつかの実施形態では、MPS関連タンパク質は、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼである。他の実施形態では、MPS関連タンパク質は、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼである。さらに他の実施形態では、MPS関連タンパク質は、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼである。いくつかの実施形態では、MPS関連タンパク質は、β-ガラクトシダーゼである。他の実施形態では、MPS関連タンパク質は、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼである。さらに他の実施形態では、MPS関連タンパク質はβ-グルクロニダーゼである。いくつかの実施形態では、MPS関連タンパク質は、ヒアルロニダーゼである。
【0074】
いくつかの実施形態では、ムコ多糖症(または「MPS」)は、ハーラー症候群(MPS IH)、ハーラー・シャイエ症候群(MPS IH/S)、シャイエ症候群(MPS ISまたはMPS V)、ハンター症候群(MPS II)、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)、サンフィリッポ症候群D(MPS IIID)、モルキオ症候群A(MPS IVA)、モルキオ症候群B(MPS IVB)、マロトー・ラミー症候群(MPS VI)、スライ症候群(MPS VII)、およびナトウィッチ(Natowicz)症候群(MPS IX)からなる群から選択される。
【0075】
いくつかの実施形態では、ムコ多糖症(または「MPS」)は、ハーラー症候群(MPS IH)である。他の実施形態では、MPSは、ハーラー・シャイエ症候群(MPS IH/S)である。さらに他の実施形態では、MPSは、シャイエ症候群(MPS ISまたはMPS V)である。いくつかの実施形態では、MPSは、ハンター症候群(MPS II)である。いくつかの実施形態では、MPSは、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)、およびサンフィリッポ症候群D(MPS IIID)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、MPSは、サンフィリッポ症候群A(MPS IIIA)である。他の実施形態では、MPSは、サンフィリッポ症候群B(MPS IIIB)である。さらに他の実施形態では、MPSは、サンフィリッポ症候群C(MPS IIIC)である。いくつかの実施形態では、MPSは、サンフィリッポ症候群D(MPS IIID)である。いくつかの実施形態では、MPSは、モルキオ症候群A(MPS IVA)である。他の実施形態では、MPSは、モルキオ症候群B(MPS IVB)である。さらに他の実施形態では、MPSは、マロトー・ラミー症候群(MPS VI)である。いくつかの実施形態では、MPSは、スライ症候群(MPS VII)である。他の実施形態では、MPSは、ナトウィッチ症候群(MPS IX)である。
【0076】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定すること、リソソーム酵素欠損症を有すると決定された対象を治療すること、またはリソソーム酵素欠損症を有すると決定された対象における1つ以上の症状を軽減することを含む。対象がリソソーム欠損症を有するという決定は、様々な試験、例えば、遺伝子検査、血液検査、尿検査、インビトロ酵素アッセイ(例えば、酵素活性に対して細胞および/もしくは組織および/もしくは体液の試料を試験する)、または前述のうちのいずれかの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することは、遺伝子検査を含む。他の実施形態では、対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することは、血液検査を含む。さらに他の実施形態では、対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することは、尿検査を含む。いくつかの実施形態では、対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することは、インビトロ酵素アッセイを含む。いくつかの実施形態では、対象がリソソーム酵素欠損症を有すると決定することは、羊水穿刺、絨毛膜絨毛サンプリング、またはそれらの組み合わせを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、リソソーム酵素欠損症を有すると決定された対象における1つ以上の症状の緩和には、呼吸器感染症、睡眠時無呼吸、聴力損失、耳感染症、角膜混濁、下痢、皮膚腫瘍、骨の形状および/またはサイズの不規則性、心臓弁の構造および/または機能の不規則性、声のかすれ、関節のこわばり、攻撃的な行動、腹部膨満、脊柱管狭窄症、ならびに発達遅延の頻度の減少が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、酵素欠損症は、α-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファターゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、およびヒアルロニダーゼからなる群から選択される酵素の欠損症である。いくつかの実施形態では、酵素欠損症は、α-L-イズロニダーゼの欠損症である。他の実施形態では、酵素欠損症は、イズロン酸スルファターゼの欠損症である。さらに他の実施形態では、酵素欠損症は、N-アセチルグルコサミニダーゼの欠損症である。いくつかの実施形態では、酵素欠損症は、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼの欠損症である。他の実施形態では、酵素欠損症は、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼの欠乏症である。さらに他の実施形態では、酵素欠損症は、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼの欠損症である。いくつかの実施形態では、酵素欠損症は、β-ガラクトシダーゼの欠損症である。他の実施形態では、酵素欠損症は、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼの欠損症である。さらに他の実施形態では、酵素欠損症は、β-グルクロニダーゼの欠損症である。いくつかの実施形態では、酵素欠損症は、ヒアルロニダーゼの欠損症である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象におけるMPSの凝集生成物のうちの1つ以上の減少を提供する(例えば、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、および/またはヒアルロン酸の1つ以上)。例えば、対象におけるヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、および/またはヒアルロン酸のうちの1つ以上のレベルの減少(例えば、約20%~約99%の減少、約20%~約95%の減少、約20%~約90%の減少、約20%~約85%の減少、約20%~約80%の減少、約20%~約75%の減少、約20%の減少~約70%の減少、約20%の減少~約65%の減少、約20%の減少~約60%の減少、約20%の減少~約55%の減少、約20%の減少~約50%の減少、約20%の減少~約45%の減少、約20%の減少~約40%の減少、約20%の減少~約35%の減少、約1%の減少~約30%の減少、約20%の減少~約25%の減少、約20%~約99%の減少、約25%~約99%の減少、約30%~約99%の減少、約35%~約99%減少、約40%~約99%減少、約45%~約99%の減少、約50%~約99%の減少、約55%~約99%の減少、約60%~約99%の減少、約65%~約99%の減少、約70%~約99%の減少、約75%~約95%の減少、約80%~約99%の減少、約90%~約99%の減少、約95%~約99%の減少、約20%~約40%の減少、約25%~約50%の減少、約35%~約55%の減少、約40%~約60%の減少、約50%の減少~約75%の減少、約60%の減少~約80%の減少、または約65%~約85%の減少)。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、本発明を説明する。
【0081】
実施例1:サンフィリッポ症候群A型またはB型の患者におけるIVトレハロース注射の安全性および有効性を評価するための研究
方法論:サンフィリッポ症候群A型およびB型の治療のついてのIVトレハロース注射90mg/mLの3部構成研究を実施する。尿中のGAGの排泄が上昇し、かつ/または血漿中および/もしくは尿中のHSのレベルが上昇している、遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型の患者が対象となる。研究は、以下の3つの部分で実施する。
【0082】
第1部:第1部には、4週間のスクリーニング期間と、それに続く最初の30週間の用量漸増期間(7週間の非盲検用量漸増期間と、それに続く23週間の治療)がある(表1)。研究のこの期間を使用して、IVトレハロースの漸増用量レベルの安全性および忍容性を評価し、30週目にMDRIを使用する研究の第2部で強化コホートとして継続する患者を特定し、神経認知および行動の症状およびバイオマーカーの間の経時的関連を評価する。
【0083】
スクリーニング期間中、尿中GAG、ならびに尿中および血漿中HSバイオマーカーを7日間隔で3回収集し、ベースラインの排泄量および血漿中濃度を確立する。患者は、身体検査、安全性ラボ、心電図(ECG)、体積測定のための肝臓および脾臓のCTスキャン、ならびにABRのベースライン評価を受ける。神経認知および行動の評価は、VABS-3、BSID-IIIまたはKABC-IIのいずれか、およびSBRSを使用して実行する。生活の質は、PedsQL(商標)を使用して評価する。
【0084】
可動性のベースライン評価には、TUG試験が含まれる。ベースラインの機能および運動能力が評価され、評価中に患者をビデオに録画する。評価には、9穴ペグ試験(9-HPT)、TUG試験、10メートル歩行試験、および粗大運動機能尺度(GMFM)の事前に指定された項目が含まれる。その後、独立した理学療法士または他の資格のある臨床医が、評価を完了した患者のビデオを確認し、CGICスケールを使用して評価を実行する能力における患者の変化の程度をスコアリングする。
【0085】
介護者は、理学療法士または他の資格のある臨床医による面接を通じてCaGISが与えられる。嚥下のベースライン評価には、80mLの冷水飲用試験およびシドニー嚥下質問票が含まれる。聴力のベースライン評価は、ABR試験によって実行する。
【0086】
用量漸増:用量漸増は、治療の1週目に開始し、開始用量0.25g/kgのトレハロースを週に1回60分かけて静脈内投与する。3週目(0.25g/kgの最初の2週間の投与後)に、患者は、安全性ラボ、選択されたバイオマーカー(尿中GAG、尿中および血漿中HS)、およびPKレベルを評価する。治験依頼者の主任医務官または医学の学位を持つ被指名人、主任研究者(PI)、臨床試験の安全性データ審査の経験を持つ外部医師、およびPK専門家で構成される安全審査委員会(SRC)を召集する。SRCは、3週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性、PK、およびバイオマーカーのデータを審査する。安全性、PK、またはバイオマーカーの懸念が認識されない場合、4週目に用量を0.50g/kgに増加する。委員会は提案を行うが、用量を増加するか、同じ用量を継続するか、または治療を中止するかの最終的な決定は、すべての決定ポイントにおいて地元のPIの責任である。6週目(0.50g/kgの週2回の投与後)に、患者は、安全性ラボ、バイオマーカー、およびPKレベルを評価する。SRCは、6週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性、PK、およびバイオマーカーのデータを審査する。SRCによって認識された安全性、PK、またはバイオマーカーの問題がない場合、7週目に用量を0.75g/kgに増加する。9週目(0.75g/kgの週2回の投与後)に、患者は、安全性ラボ、バイオマーカー、およびPKレベルを評価する。SRCは、9週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性、PK、およびバイオマーカーのデータを審査する。SRCによって認識された安全性、PK、またはバイオマーカーの問題がない場合、用量は、0.75g/kgのままになる。
【0087】
患者は、7週目までに彼らの最大耐量(MTD)に達し、30週間の治療期間の終わりまで彼らのMTDで治療を継続する。30週目に、すべての安全性および有効性の測定を実行し、これには、有害事象、身体検査、安全性ラボ、バイオマーカー、ECG、PK、肝臓および脾臓のCT、ABR、神経認知および行動試験、嚥下、可動性、ビデオ評価、ならびに生活の質の評価が含まれる。
【0088】
第2部の治療課題:各患者が30週目に安全性および有効性の評価を完了すると、独立したDMCを召集し、患者データを審査する。DMCは、臨床専門家および独立した統計家で構成される。事前に定義された基準(MDRI)を使用して、DMCは、研究の第2部でプラセボを受ける(強化コホート)か、またはIVトレハロースを受け続ける(積極的治療コホート)かのいずれかを患者を割り当てる。
【0089】
研究に含めるための基準は、例えば、(i)30週目に次のバイオマーカー(尿中GAGまたはHS、血漿中HS)のうちのいずれかにおいて少なくとも事前に指定された最小の減少を有する対象、または(ii)30週目での神経認知または行動評価における疾患の進行の遅延もしくは安定化または改善の証拠である。これらの対象は、研究の第2部でプラセボを受ける。この患者群は、研究の第2部の強化コホートを構成する。事前に定義された基準を満たさない患者は、研究の第2部の積極的な治療コホートの一部としてIVトレハロース治療を継続する。
【0090】
第2部:第2部は、18週間の評価期間であり、2週間の移行と、それに続く強化コホートのプラセボへの16週間のクロスオーバー、および積極的治療コホートのIVトレハロースの継続で構成される(表2)。研究のこのフェーズを使用して、プラセボへの一方向のクロスオーバー後の強化コホートでの効果の喪失(悪化)を評価し、積極的な治療コホートでの継続的な安全性および忍容性、ならびに継続的なIVトレハロースの効果を評価し、かつサンフィリッポ症候群A型およびB型の患者におけるGAGおよびHSへの影響ならびに神経認知および行動症状によって評価されるIVトレハロースの有効性を決定する。
【0091】
すべての患者は、2週間の移行期間中にIVトレハロースを受ける。第2部の治療が割り当てられると、患者は、16週間の治療期間中にプラセボまたは継続的なIVトレハロースを受ける。
【0092】
16週間の治療期間は、33週~48週までであり、患者は、(i)個々のMTDで毎週IVトレハロース90mg/mLを受ける積極的な治療コホート、および(ii)毎週IVプラセボ(塩化ナトリウム注射、0.9%、USP)を受ける強化コホートの2つの治療コホートのうちの1つに割り当てられる。
【0093】
各研究サイトでは、盲検化された治療の割り当てが、投与のための有効成分またはプラセボを調製する盲検化されていない薬剤師または被指名人に提供される。
【0094】
安全性ラボ、ECG、および有効性の評価は、40週目および48週目に行われるが(安全性ラボの評価は34週目にも)、バイオマーカーの評価は、治療のクロスオーバー期間中2週間ごとに行われる。すべての結果は、DMC議長によって監視される。強化コホートの患者に対するプラセボへの一方向のクロスオーバーは、16週間続くことを目的としている。第2部のバイアスを制御するために、薬剤師または被指名人、薬局モニター、および統計家のみが治験薬の割り当てを認識し、これは、積極的な治療コホートまたは強化コホートへの割り当てが明らかにされないためである。
【0095】
研究の第2部の治療の割り当ては、研究に対する48週間後の有効性の評価のためのMDRIの決定におけるバイアスを防ぐために盲検化される。
【0096】
第3部:最後の24週間の非盲検延長期間中、すべての患者は、個々のMTDでIVトレハロース90mg/mLを毎週受ける(表3)。安全性ラボの評価は、50週目および56週目に行い、その後、非盲検延長期間中は8週間ごとに行う。バイオマーカーの評価は、最初の8週間は2週間ごとに行い、その後、非盲検延長期間中は4週間ごとに行う。ECGおよびすべての有効性評価は、72週目(最終訪問)に実行する。
【0097】
76週間の研究を完了した患者は、販売承認の代わりにの別の治療延長プロトコルの下で治療を継続してもよい。
【0098】
診断の例示的な基準ならびに包含および除外の主な基準を以下に示す。
【0099】
包含:
1.親または法定後見人によって署名された書面によるインフォームドコンセントの提供
2.遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型、
a.SGSH(A型)またはNAGLU(B型)遺伝子のホモ接合または複合ヘテロ接合の病原性変異体を実証するゲノムDNA分析
3.スクリーニング時の尿中GAGおよび/または尿中もしくは血漿中HSの排泄量の増加(3回の評価の平均>正常値の上限[ULN])
4.男性または女性、6~21歳(境界値を含む)
5.妊娠の可能性のある女性患者に対するスクリーニング時に、尿またはベータヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)の妊娠結果が陰性
6.指示された性的禁欲または避妊のガイドラインを順守する意欲
除外:
1.サンフィリッポ症候群A型またはB型に対する幹細胞もしくは遺伝子治療、または酵素補充療法(ERT)の事前投与
2.以前に糖尿病またはヘモグロビンA1c(HgbA1c)と診断された結果がスクリーニング時に6.0%を超える
3.過去4~6週間で1週間に1回以上の発作として定義される、制御不良の発作。
4.神経発達試験に対する協力を妨げるのに十分な視覚または聴覚障害
5.治験責任医師の意見で、安全性または有効性データの解釈を混乱させるであろう、または患者を過度のリスクにさらすであろう任意の他の病状
6.プロトコルに必要な評価または手順に協力できない
7.IVトレハロースによる前治療
8.トレハロースに対する既知の過敏症
9.同意書に署名する前30日以内のゲニステインに富む大豆イソフラボンの使用
10.同意書に署名する前7日以内の経口トレハロースの使用
11.スクリーニング時の血清学的検査でのB型肝炎またはC型肝炎感染の証拠
12.現在、除外の理由ではない抗血小板治療以外の抗凝固治療(例えば、ワルファリン、エノキサパリン)を受けている
13.現在、別の臨床試験に参加しているか、または計画された最初の投薬前90日未満に介入試験を完了している
【0100】
臨床試験用医薬品、投与量、および投与方法:トレハロース90mg/mLの溶液を、0.25g/kgの用量から開始する最大0.75g/kgの用量で、上記のような用量漸増方式で週1回60±5分かけて第1部において静脈内投与する。患者には、第2部(それぞれ積極的治療コホートおよび強化コホート)において週に1回60±5分かけてトレハロースIVまたはプラセボを投与し、第3部においてすべての患者にIVトレハロースを投与する。留置カテーテルは、許可されていない。
【0101】
参照療法、投与量、および投与方法:プラセボ(塩化ナトリウム注射、0.9%、USP静脈投与)
【0102】
制限された薬:IVトレハロース90mg/mLとの既知の薬物間相互作用がない。患者がミグルスタットの研究を開始する場合、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。患者は、研究中にミグルスタットによる治療を開始することは許可されていない。カンナビジオール(CBD)オイルは許可されているが、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。行動薬(覚醒剤、非覚醒剤、向精神薬)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。経口トレハロースおよびゲニステインに富む大豆イソフラボンは、研究中は許可されていない。てんかんの悪化または急性疾患を経験しない限り、患者は、研究中に併用薬を変更すべきではない。患者は、症状、AE、併発疾患を治療し、病気を予防するためにのみ、標準的なケアとして医学的に必要な併用薬、例えばワクチンを受けてもよい。ビタミンまたはハーブサプリメントなどの市販薬(OTC)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。
【0103】
統計的方法:この臨床調査に登録された患者は、症状および臨床症状に対する不均一集団を表すことを予期される。これらの違いを説明するために、患者の評価では、マルチドメインレスポンダーインデックス(MDRI)を使用する。応答を確立するための基準は、DMC憲章に文書化され、これは、DMCの管轄下にあって、研究の第2部のクロスオーバー部分への参加について患者を制裁し、効果の喪失を評価することが前提である。DMCは、患者内ベースでのMDRIの決定におけるバイアスを防ぐために、研究の第2部における治療の割り当てを知らされない。
【0104】
評価可能な対象の数、平均値、中央値、標準偏差(SD)、最大値、および最小値を含む継続的な安全性および有効性データの記述的要約は、治療および予定された訪問によって提供される。カテゴリ変数の要約には、評価可能な数、頻度、およびパーセンテージが含まれる。さらに、必要に応じて、ベースラインからの変化およびベースラインからの変化率について、ベースライン後の各訪問で同じ記述統計が提供される。
【0105】
この研究に対して、次の分析集団が定義されている。
・安全性集団:部分注入を含む、治験薬を少なくとも1回分受けているすべての患者。
・完全分析セット(FAS):第1部で治験薬を少なくとも1回分受けており、かつ研究の第1部の間にMDRIを決定するためのベースライン後の有効性評価を少なくとも1回受けたすべての患者。この患者のプールから、反応を調査して、第1部の間の反応および強化集団に入れることを決定する。
・強化集団:MDRIの評価のために研究の第2部のクロスオーバー部分に入る患者。強化集団は、有効性を確立するための主要な集団になる。
・PK集団:治験薬を少なくとも1回分受けており、かつPK分析用の評価可能な血液試料が少なくとも1回収集されたすべての患者。
【0106】
安全性分析の焦点は、研究に登録され、試験薬を少なくとも1回分受けたすべての同意された患者で構成される安全性集団に基づいている。安全性分析は、研究の過程で記録されたAE、身体検査、ECG、バイタルサイン、および臨床検査評価に基づいている。忍容性は、2つの定義された治療パターンを使用して時間に関して定義され、これらは、研究中に治験薬を受ける安全集団および第2部の間にプラセボを受ける強化集団である。記述統計は、すべてのパラメーターについて用意され、両側95%信頼限界を含む疾患の種類ごとに層別化する。
【0107】
実施例2:サンフィリッポ症候群A型またはB型の患者における機能的転帰に対するIVトレハロース注射治療の安全性および有効性を評価するための研究
方法論:サンフィリッポ症候群A型およびB型の治療のためのIVトレハロース注射90mg/mLの安全性および有効性を評価するための、82週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施する。特定の変異または早期診断に基づいて急速に進行する疾患があると考えられ(6歳未満)、Vineland-3でのAEqが24か月以上であり、尿中のGAGの排泄の上昇、および/または血漿および/もしくは尿中のHSのレベルの上昇を有する、遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型の3~12歳の患者が対象となる。患者は、1:1でランダム化されて、IVトレハロースまたはプラセボの毎週の注入を受ける。ランダム化は、疾患の種類(AまたはB)によって層別化する。
【0108】
この研究には、4週間のスクリーニング期間が含まれる。スクリーニング期間中、尿中GAG、ならびに尿中および血漿中HSバイオマーカーを7日間隔で3回収集し、ベースラインの排泄量および血漿中濃度を確立する。患者は、身体検査、安全性ラボ、CSF HSレベル、および心電図(ECG)のベースライン評価を受ける。神経認知および行動の評価は、Vineland-3、BSID-IIIまたはKABC-II(Vineland-3でのAEqに基づく)のいずれか、およびSBRSを使用して実行する。生活の質は、PedsQL(商標)を使用して評価する。
【0109】
ベースラインの粗大運動機能および微細運動機能は、理学療法士によって評価され、スコアリングのためにビデオで撮影する。評価には、9穴ペグテスト(9-HPT)、タイムアップアンドゴー(TUG)試験、10メートル歩行試験、および粗大運動機能尺度(GMFM)の事前に指定された項目が含まれる。独立した理学療法士または他の資格のある臨床医が、評価を完了した患者のビデオを確認し、CGICスケールを使用して評価を実行する能力の患者の変化の程度をスコアリングする。
【0110】
投薬および用量滴定:スクリーニング後、適格な患者は、彼らの参加期間中、IVトレハロースまたはプラセボのいずれかの毎週の注入を受けるようにランダム化する。研究に参加するすべての患者は、9週間の用量滴定期間中、安全審査委員会(SRC)によって約3週間ごとに彼らの安全性データが監視される。
【0111】
9週間の用量滴定期間中に、IVトレハロースにランダム化された患者を、0.75g/kgのIVトレハロースまたはMTDに滴定する。プラセボ(通常の生理食塩水)にランダム化された患者は、体重ベースの等量のプラセボを受ける。盲検用量滴定は、治療の1週目に開始し、割り当てられた開始用量0.25g/kgのトレハロースまたは対応するプラセボを週に1回60分かけて静脈内投与する。3週目(0.25g/kgの最初の2週間の投与後)に、患者は、安全性ラボを評価する。治験依頼者の主任医務官または被指名人、主任研究者(PI)(または指定された治験分担医師)、臨床試験の安全性データ審査の経験を持つ外部医師、およびPK専門家(非盲検)で構成されるSRCを召集する。SRCは、3週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性およびPKのデータ(利用可能な場合)を審査する。安全上の懸念が認識されていない場合、4週目に用量を0.50g/kgに増加する。SRCが提案を行うが、用量を増加するか、同じ用量を継続するか、または治療を中止するかの最終的な決定は、すべての決定ポイントにおいて地元のPIの責任である。6週目(0.50g/kgの2週間の投与後)に、患者は、安全性ラボを評価する。SRCは、6週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性データを審査する。SRCによって認識された安全性の問題がない場合、7週目に用量を0.75g/kgに増加する。9週目(IVトレハロースに割り当てられた患者に0.75g/kgを2週間投与した後)、患者は、安全性ラボを評価する。SRCは、9週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性データを審査する。SRCによって認識された安全性の問題がない場合、用量は、0.75g/kgのままになる。
【0112】
患者は、7週目までに彼らのMTDに到達し、78週間の治療期間の終わりまで彼らのMTDで治療を継続することが予期される。
【0113】
安全性および有効性:安全性の一次評価は、重篤および非重篤なTEAEの発生率である。
【0114】
有効性評価は、13、26、39、52、65、および78週目に実行する。有効性の一次評価は、78週目に評価される神経認知機能である。一次評価項目は、78週目での、IVトレハロースで治療された患者とプラセボで治療された患者との間のVineland3(3つのドメインは、社会化、日常生活スキル、および運動機能)でのAEqのベースラインからの平均変化の比較である。
【0115】
独立したデータ監視委員会(DMC)は、DMC憲章で定義される時点で安全性およびPKのデータを審査する。加えて、16人の患者が52週目に達したときか、または試験を中止したときに、無益性分析を実行する。
【0116】
現在の試験を完了した患者は、延長研究に登録する資格があり得る。
【0117】
診断の例示的な基準ならびに包含および除外の主な基準を以下に示す。
【0118】
包含:
1.親または法定後見人によって署名された書面によるインフォームドコンセントの提供
2.遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型、
a.SGSH(A型)またはNAGLU(B型)遺伝子のホモ接合または複合ヘテロ接合の病原性変異体を実証するゲノムDNA分析
3.スクリーニング時の尿中GAGおよび/または尿中もしくは血漿中HSの排泄量の増加(3回の評価の平均>正常値の上限[ULN])
4.男性または女性、3~12歳(境界値を含む)
5.スクリーニング時のVineland-3で年齢相当スコア(AEq)が24か月以上。これは、コミュニケーション、日常生活スキル、社会化、および運動スキルの4つのドメインからのスコアの合計に基づいて決定する。
6.6歳前の遺伝子型または診断によって定義される、急速に進行するサンフィリッポ症候群A型またはB型の患者
7.妊娠の可能性のある女性患者に対するスクリーニング時に、尿または血清ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)の妊娠結果が陰性
8.指示された性的禁欲または避妊のガイドラインを順守する意欲
【0119】
除外:
1.サンフィリッポ症候群A型またはB型に対する幹細胞もしくは遺伝子治療、または酵素補充療法(ERT)の事前投与
a.同意時にERT療法から少なくとも1年経っている患者は、過去12か月以内のVineland、BSID、またはKABC評価による、AEqの≧3か月の減少の文書化された証拠とともに登録してもよい。
2.以前に糖尿病またはヘモグロビンA1c(HgbA1c)と診断された結果がスクリーニング時に6.0%を超える
3.過去4~6週間で1週間に1回以上の発作として定義される、制御不良の発作。
4.神経発達試験に対する協力を妨げるのに十分な視覚または聴覚障害
5.治験責任医師の意見で、安全性または有効性データの解釈を混乱させるであろう、または患者を過度のリスクにさらすであろう任意の他の病状
6.プロトコルに必要な評価または手順に協力できない
7.IVトレハロースによる前治療
8.トレハロースに対する既知の過敏症
9.同意書に署名する前30日以内のゲニステインに富む大豆イソフラボンの使用
10.同意書に署名する前7日以内の経口トレハロースの使用
11.スクリーニング時の血清学的試験でのB型肝炎またはC型肝炎感染の証拠
12.現在、除外の理由ではない抗血小板治療以外の抗凝固治療(例えば、ワルファリン、エノキサパリン)を受けている
13.現在、別の臨床試験に参加しているか、または計画された最初の投薬の90日以内に介入試験を完了している
【0120】
臨床試験用医薬品、投与量、および投与方法:トレハロース90mg/mLの溶液を週に1回60±5分かけて静脈内投与する。トレハロースは、0.25g/kgの用量から開始する最大0.75g/kgの用量で、上記のような用量滴定法(1週目~9週目)で投与する。留置カテーテルは、許可されていない。
【0121】
参照療法、投与量、および投与方法:プラセボ(塩化ナトリウム注射、0.9%、USP)を週に1回60±5分かけて静脈内投与する。プラセボは、上記のような用量滴定法(1週目~9週目)で、0.25g/kgに相当する体重ベースの容量から開始する最大0.75g/kgに相当する重量ベースの容量で投与する。留置カテーテルは、許可されていない。
【0122】
制限された薬:IVトレハロース90mg/mLとの既知の薬物間相互作用がない。患者がミグルスタットの研究を開始する場合、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。患者は、研究中にミグルスタットによる治療を開始することは許可されていない。カンナビジオール(CBD)オイルは許可されているが、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。行動薬(覚醒剤、非覚醒剤、向精神薬)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。経口トレハロースおよびゲニステインに富む大豆イソフラボンは、研究中は許可されていない。てんかんの悪化または急性疾患を経験しない限り、患者は、研究中に併用薬を変更すべきではない。患者は、AE、併発疾患、不安などの症状を治療し、病気を予防するための標準的なケアとして医学的に必要な併用薬、例えば、ワクチンを受けてもよい。ビタミンまたはハーブサプリメントなどの市販薬(OTC)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。
【0123】
統計的方法:
分析集団:次の分析集団をすべての統計分析およびプレゼンテーションに使用する。
・完全分析セット(FAS)には、任意の試験薬を受けるすべてのランダム化患者が含まれる。
・パープロトコルセット(PPS)には、FASのすべての患者が含まれるが、主要なプロトコル違反のために除外された患者は除かれ、主要なプロトコル違反は、研究結果の解釈に影響を与え得る違反である(包含基準の違反、研究の過程において指定された量の試験薬より少ない量を受ける、一次評価が利用できない)。
・安全性セット(SAF)には、任意の試験薬を受けるすべての患者が含まれる。
・PK分析セット(PKS)には、PK分析を可能にするのに十分な数の血漿トレハロース濃度が利用可能なSAFのすべての患者が含まれる。PK分析から除外された患者は、除外の理由とともにPKレポートにリストされる。
【0124】
FASは、有効性のすべての仮説検定に使用する。PPSは、確証または感度の有効性分析に使用する。SAFは、すべての安全性分析に使用する。
【0125】
試料サイズに関する考慮事項:
試料サイズは、主に実現可能性に基づくが、しかしながら、16人の患者(治療群ごとに8人)は、両側検定、アルファ0.05を使用し、2.9ヶ月のAEqのベースラインからの変化の標準偏差を想定して、AEqで少なくとも4.4か月の治療群間の差異を検出する80%の能力を有すると推定される。
【0126】
統計的方法:研究のための計画されたデータ分析の詳細な説明を統計分析計画(SAP)に文書化する。SAPで特に明記されていない限り、すべての統計的試験は、両側検定であり、全体的な研究ごとのアルファ0.05を使用する。有効性データの分析を分析し、結果は、ランダム化された治療の割り当てによって提示される。安全性データは、実際に受けた治療ごとに要約する。
【0127】
一次有効性分析では、78週目のAEqのベースラインからの変化の一次評価項目に対して、反復測定の主効果混合モデル(MMRM)を使用する。モデルには、治療、疾患の種類、訪問(カテゴリ)、固定効果としての訪問による治療の相互作用、共変量としてのベースラインAEq、およびランダム効果としての患者が含まれる。確証モデリングには、治療、疾患の種類、時間、および患者によるMMRM主効果モデルが含まれる。モデルの仮定が評価され、パラメトリックな仮定が不適切な場合は、ランクに基づく分析を実施する。確証感度分析には、78週目のベースラインAEqからの変化に対する共変量としてベースラインAEqを用いる主効果の共分散分析(ANCOVA)の欠測値のための多重代入アプローチが含まれる。同じ統計的方法論を二次連続評価項目の分析に適用する。AEqでの3か月の進行までの時間に基づく二次分析は、カプラン-マイヤー曲線の提示、およびログランク検定による推論治療比較である。78週までに進行する患者の割合の二次分析は、フィッシャーの直接確率検定およびコクラン-マンテル-ヘンツェル検定による。
【0128】
二次有効性評価項目の多様性は、アルファを制御するために条件付きシーケンスアプローチを採用する。一次評価項目の一次分析を最初に試験し、統計的有意性を条件として二次評価項目に進む。二次評価項目の分析におけるI型のエラーの制御に関する詳細は、SAPに記載されている。
【0129】
継続的な評価項目の観測値およびベースラインからの変化は、平均値、中央値、四分位数、および標準偏差を使用して、治療群および訪問ごとに記述的に要約する。バイナリ評価項目は、治療群および訪問ごとの頻度およびパーセンテージを使用して要約する。
【0130】
独立したデータ監視委員会および中間分析:外部の独立したデータ監視委員会(DMC)は、DMC憲章で定義される時点で安全性およびPKデータを審査する。加えて、DMCは、有効性データの中間分析(IA)の結果を審査する。
【0131】
16人の患者が52週目の訪問を完了したときか、または試験を中止したときに、有効性の無益性に関する非盲検IAを実施する。IAは、(1)AEqのベースラインからの平均変化、および(2)AEqの3か月の進行までの時間の分析で構成される。分析の結果は、DMCに提示され、DMCは、研究を計画通りに継続するか、または有効性の無益性のために中止するかについて提案を行う。有効性の成功に対して試験を中止したり、治験依頼者または研究の実施に関与している他者に盲検化されていない早期の結果を提供したりする計画はない。提案された停止境界を含む、IAに関する統計的方法論の詳細は、DMC憲章および中間分析計画(IAP)に含まれる。
【0132】
実施例3:サンフィリッポ症候群の患者における機能的転帰に対する静脈内トレハロース注射治療の安全性および有効性を評価するための研究
方法論:サンフィリッポ症候群の治療のためのIVトレハロース注射90mg/mLの安全性および有効性を評価するための、78週間の非盲検シングルアーム研究を実施する。Vineland3でのAEqが≧12か月である、遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群(任意の種類)の3~25歳の患者が対象となる。Vineland-3でのAEqが≧24か月である、遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型の3~12歳(境界値を含む)のいかなる患者も、最初に上記の実施例で説明される研究への登録に検討されなければならない。そのような患者が上記の実施例で説明される研究のスクリーニング脱落である場合、彼らは、この研究への登録を検討され得る。加えて、上記の実施例に記載される研究を完了した患者は、上記の実施例に記載される研究の完了時に、AEqに関係なく、現在の研究に対象となる。
【0133】
この研究には、新規患者に対して最大6週間のスクリーニング期間が含まれる。スクリーニング期間中、尿中GAG、ならびに尿中および血漿中HSバイオマーカーを7日間隔で3回収集し、ベースラインの排泄量および血漿中濃度を確立する。患者は、身体検査、安全性ラボ、および心電図(ECG)のベースライン評価を受ける。神経認知および行動の評価は、Vineland3およびSBRSを使用して実行する。生活の質は、PedsQL(商標)、CaGIS、およびCaGICを使用して評価する。ベースラインの粗大運動機能は、10メートルの歩行試験を使用して評価する。スクリーニングに失敗した患者は、一度再スクリーニングされ得る。
【0134】
上記の実施例に記載される研究に参加した患者には、この研究において引き続きBSID-IIまたはKABCIIを投与する。彼らの最後の評価(例えば、ラボ分析、スクリーニングラボ、Vineland-3、BSID-IIIおよび/またはKABC-IIスコア、10メートル歩行試験、CaGIS、およびCaGIC)は、現在の研究のベースラインデータとして機能し、したがって、現在の研究ではこれらの患者に対するスクリーニング期間はない。上記の実施例に記載される研究に参加した患者は、上記の実施例に記載される研究の完了から3週間以内に現在の研究に登録されなければならない。
【0135】
投薬および用量滴定:スクリーニング後、適格な患者は、彼らの参加期間中、毎週IVトレハロースの注入を受ける。研究に参加するすべての患者は、12週間の用量滴定期間中、安全審査委員会(SRC)によって約3週間ごとに彼らの安全性データが監視される。
【0136】
12週間の用量滴定期間中、上記の実施例で説明される研究を完了した患者を含め、すべての患者を0.75g/kgのIVトレハロースまたはMTDに滴定する(研究の盲検化を維持するため)。用量滴定は、治療の1週目に開始し、開始用量0.25g/kgのトレハロースを60分間かけて静脈内投与する。4週目(0.25g/kgの最初の3週間の投与後)に、患者は、その注入および安全性ラボにより採取されたPK試料を評価する。治験依頼者の主任医務官または被指名人、サイトの主任研究者(PI)(または指定された治験分担医師)、臨床試験安全性データ審査の経験を持つ外部医師、およびPK専門家で構成されるSRCを招集する。SRCは、4週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性およびPKデータを審査する。安全上の懸念が認識されていない場合、5週目に用量を0.50g/kgに増加する。SRCが提案を行うが、用量を増加するか、同じ用量を継続するか、または治療を中止するかの最終的な決定は、すべての決定ポイントにおいて地元のPIの責任である。8週目(0.50g/kgの3週間の投与後)に、患者は、PK試料を採取し、安全性ラボを評価する。SRCは、8週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性データを審査する。SRCによって認識された安全性の問題がない場合、9週目に用量を0.75g/kgに増加する。12週目(IVトレハロースに割り当てられた患者に0.75g/kgを3週間投与した後)、患者は、PK試料を採取し、安全性ラボを評価する。SRCは、12週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性データを審査する。SRCによって認識された安全性の問題がない場合、用量は、0.75g/kgのままになる。
【0137】
患者は、12週目までに彼らのMTDに到達し、72週間の治療期間の終わりまで彼らのMTDで治療を継続することが予期される。
【0138】
安全性および有効性:一次安全性評価項目は、重篤および非重篤なTEAEの発生率である。
【0139】
有効性評価は、12、24、48、および72週目に実行する。一次有効性評価項目は、Vineland3の72週目のABCスコアのベースラインからの変化である。ABCは、コミュニケーション、日常生活スキル、および社会化のドメインの標準スコアから計算する。
【0140】
診断の例示的な基準ならびに包含および除外の主な基準を以下に示す。
【0141】
包含:
1.親または法定後見人によって署名された書面によるインフォームドコンセントの提供。
2.遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型、B型、C型、またはD型。
a.ホモ接合または複合ヘテロ接合の病原性変異体を実証するゲノムDNA分析。
3.Vineland-3でスコア≧24か月を有する患者は、上記の実施例で説明される研究を完了したか、または上記の実施例で説明される研究の他のスクリーニング基準を満たさなかったかのいずれかでなければならない。
4.男性または女性、3~25歳(境界値を含む)。
5.次のいずれかを満たすAEqを有する。
a.スクリーニング時のVineland-3のAEqが≧12か月。これは、コミュニケーション、日常生活スキル、および社会化の3つのサブドメインからのAEqの平均値に基づいて決定される。
b.患者が上記の実施例で説明される研究を完了したことを前提とする任意のAEq。
6.妊娠の可能性のある女性患者に対するスクリーニング時に、尿または血清ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)の妊娠結果が陰性
7.親または法的に認可された代表者は、指示に従って性的禁欲または避妊ガイドラインの受け入れのいずれかを監督および提供する。
【0142】
除外:
1.サンフィリッポ症候群A型、B型、C型、またはD型に対する幹細胞もしくは遺伝子治療、または酵素補充療法(ERT)の事前投与。
a.同意時にERT療法から少なくとも1年経っている患者は、臨床的利益の証拠がないことを前提として登録してもよい。
2.以前に糖尿病またはヘモグロビンA1c(HgbA1c)と診断された結果がスクリーニング時に6.0%を超える。
3.過去4~6週間で1週間に1回以上の発作として定義される、制御不良の発作。
4.神経発達試験に対する協力を妨げるのに十分な視覚または聴覚障害
5.治験責任医師の意見では、安全性または有効性データの解釈を混乱させる、または患者を過度のリスクにさらすその他の病状。
6.プロトコルに必要な評価または手順に協力できない。
7.上記の実施例に記載される研究に以前に登録された患者を除く、IVトレハロースによる以前の治療であり、上記の実施例に記載される研究における治療の割り当ては、現在の研究への登録時に明らかにされない。
8.トレハロースに対する既知の過敏症。
9.同意書に署名する前30日以内のゲニステインに富む大豆イソフラボンの使用。
10.同意書に署名する前7日以内の経口トレハロースの使用。
11.スクリーニング時の血清学的検査でのB型肝炎またはC型肝炎感染の証拠。
12.上記の実施例に記載される研究を完了し、上記の実施例に記載される研究の完了から3週間以内に現在の研究に登録した患者を除き、現在別の臨床試験に参加しているか、または現在の研究で計画された最初の投与前90日未満に介入試験を完了している。
【0143】
治験薬、投与量、および投与方法:トレハロース90mg/mLの溶液を週に1回60±5分かけて静脈内投与する。トレハロースは、0.25g/kgの用量から開始する最大0.75g/kgの用量で、上記のような用量滴定法(1週目から12週目)で投与する。留置カテーテルは、許可されていない。
【0144】
制限された薬:IVトレハロース90mg/mLとの既知の薬物間相互作用がない。患者がミグルスタットの研究を開始する場合、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。患者は、研究中にミグルスタットによる治療を開始することは許可されていない。カンナビジオール(CBD)オイルは許可されているが、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。行動薬(覚醒剤、非覚醒剤、向精神薬)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。経口トレハロースおよびゲニステインに富む大豆イソフラボンは、研究中は許可されていない。てんかんの悪化または急性疾患を経験しない限り、患者は、研究中に併用薬を変更すべきではない。患者は、有害事象(AE)、併発疾患、不安などの症状を治療し、病気を予防するための標準的なケアとして医学的に必要な併用薬、例えば、ワクチンを受けてもよい。ビタミンまたはハーブサプリメントなどの市販薬(OTC)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。
【0145】
統計的方法:
分析集団:次の分析集団をすべての分析およびプレゼンテーションに使用する。
・完全分析セット(FAS)および安全性セット(SAF)は、同じであり、研究中に研究薬を受けるすべての患者が含まれる。
・PK分析セット(PKS)には、PK分析を可能にするのに十分な数の血漿トレハロース濃度が利用可能なFAS/SAFのすべての患者が含まれる。PK分析から除外された患者は、除外の理由とともにPKレポートにリストされる。
【0146】
試料サイズの考慮事項:この非盲検シングルアーム研究の試料サイズは、実現可能性に基づいている。直接的な新規登録者と同様に、上記の実施例で説明される研究を完了したすべての患者は、最大で合計24人の患者に対して、登録が許可される。
【0147】
統計的方法:研究のための計画されたデータ分析の詳細な説明を統計分析計画(SAP)に文書化する。
【0148】
継続的な有効性および薬力学的評価項目のベースラインからの観察値および変化は、平均値、中央値、四分位数、最小値、最大値、標準偏差、標準誤差、および95%信頼区間を使用した研究訪問によって記述的に要約する。バイナリ評価項目は、訪問ごとの頻度およびパーセンテージを使用して要約する。記述統計は、エントリーカテゴリによって定義された次のサブグループについて提示する。
・上記の実施例に記載される研究を完了し、その研究中に二重盲検トレハロースを受けた患者
・上記の実施例に記載される研究を完了し、その研究中に二重盲検プラセボを受けた患者
・上記の実施例に記載される研究に以前に登録したことがない新規患者。
【0149】
安全性データは、上記のサブグループだけでなく、集団全体について調査訪問によって要約する。
【0150】
実施例4:サンフィリッポ症候群A型またはB型の患者における機能的転帰およびバイオマーカーに対する静脈内トレハロース注射の安全性および有効性研究
方法論:IVの安全性および有効性を評価するための57週間の非盲検試験
サンフィリッポ症候群A型およびB型の治療のためのトレハロース注射90mg/mLを実施する。
【0151】
特定の変異または早期診断に基づいて急速に進行する疾患があると考えられ(6歳未満)、尿中のGAGの排泄の上昇、および/または血漿および/もしくは尿中のHSのレベルの上昇を有する、遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型の3~16歳の患者が対象となる。患者は、毎週IVトレハロースの注入を受ける。
【0152】
安全性集団は、トレハロースの少なくとも1回の注入または部分注入を受けるすべての患者で構成される。主要な有効性集団は、同意時に3歳~7歳である安全性集団の患者のサブグループで構成される(コホート1)。
【0153】
この研究には、4週間のスクリーニング期間が含まれる。スクリーニング期間中、尿中GAG、ならびに尿中および血漿中HSバイオマーカーを7日間隔で3回収集し、ベースラインの排泄量および血漿中濃度を確立する。患者は、身体検査、安全性ラボ、および心電図(ECG)のベースライン評価を受ける。
【0154】
神経認知および行動の評価は、Vineland-3、BSID-III、およびSBRSを使用して実行する。睡眠は、Promis(登録商標)ペアレントプロキシ睡眠障害ショートフォーム8Aを使用して評価する。評価者トレーニング計画は、サイト評価者のための教育および
経験要件、ならびにトレーニングおよび認定ためのプロセスを概説する。
【0155】
投薬および用量滴定:スクリーニング後、適格な患者は、52週間にわたって毎週IVトレハロースの注入を受ける。研究評価の終了は、最終注入から1週間後の53週目に実行する。
【0156】
最初の9週間は、用量滴定期間である。トレハロースの用量は、0.25g/kg~0.75g/kg、または最大耐量(MTD)まで滴定する。用量滴定は、治療の1週目に開始し、開始用量0.25g/kgを週に1回60分かけて静脈内投与する。3週目(0.25g/kgの最初の2週間の投与後)に、患者は、安全性ラボを評価する。治験依頼者の主任医療責任者または被指名人、主任研究者(PI)(または指定された治験分担医師)、および臨床試験の安全性データ審査の経験を持つ外部医師、およびPK専門家で構成される安全性審査委員会(SRC)を招集する。SRCは、3週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性およびPKのデータ(利用可能な場合)を審査する。安全上の懸念が認識されていない場合、4週目に用量を0.50g/kgに増加する。SRCが提案を行うが、用量を増加するか、同じ用量を継続するか、または治療を中止するかの最終的な決定は、すべての決定ポイントにおいて地元のPIの責任である。6週目(0.50g/kgの2週間の投与後)に、患者は、安全性ラボを評価する。SRCは、6週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性データを審査する。SRCによって認識された安全性の問題がない場合、7週目に用量を0.75g/kgに増加する。9週目(IVトレハロースに割り当てられた患者に0.75g/kgを2週間投与した後)、患者は、安全性ラボを評価する。SRCは、9週目の投与から1週間以内に、各患者の安全性データを審査する。SRCによって認識された安全性の問題がない場合、用量は、0.75g/kgのままになる。患者は、7週目までに彼らのMTDに到達し、52週間の治療期間の終わりまで彼らのMTDで治療を継続することが予期される。研究評価の終了は、最終注入の1週間後(53週目)に実行する。
【0157】
安全性および有効性:安全性の一次評価は、重篤および非重篤なTEAEの発生率、身体検査所見、バイタルサイン、ならびに臨床試験である。
【0158】
この研究では、3~16歳の患者を、3~7歳(コホート1)と8~16歳(コホート2)(境界値を含む)を含めた2つのコホートに分けて登録する。有効性は、Vineland-3、BSID-III、およびSBRSを使用して評価する。有効性評価は、すべての患者で13、26、39、および52週目に実行する。ただし、この疾患は急速に進行するため、有効性の一次評価は、3~7歳のコホートに限定する。サンフィリッポA型およびB型の患者における2つの自然史研究に基づくと(Shapiro et.al 2016およびWhitely et.al 2018)、3~7歳の患者の69%が、12か月間で、Vineland-3で3か月を超えて減少すると予想される。したがって、有効性の一次評価は、Vineland-3で評価される神経認知機能(社会化、日常生活スキル、および運動機能の3つのドメイン)である。一次評価項目は、自然史データと比較した、52週間にわたってVineland-3で3か月を超えて減少した患者の割合の比較である。追加の二次有効性評価項目には、様々な時点でのVineland-3のAEqのベースラインからの変化、およびバイオマーカーの変化が含まれる。探索的評価項目には、BSID-IIIおよびSBRSのベースラインからの変化の評価が含まれる。加えて、有効性は、各スケールのベースラインからの変化に関する記述統計を使用して、8~16歳のコホートで探索する。
【0159】
血漿および尿で測定されるバイオマーカーレベルは、3、6、9、13、26、39、および52週目に監視する。
【0160】
サンフィリッポの患者は、重大な睡眠障害を経験するため、Promis(登録商標)ペアレントプロキシ睡眠障害ショートフォーム8Aを使用して、13、26、39、および52週目の睡眠パターンに対する治療の効果を決定する。
【0161】
SRCに加えて、独立したデータ監視委員会(DMC)が、DMC憲章で定義される時点(少なくとも13、26、および39週目)での安全性データを審査する。現在の試験を完了した患者は、延長研究に登録する資格があり得る。
【0162】
試料サイズの正当化:サンフィリッポA型またはB型の最大20人の患者が登録される。試料サイズは、病気の孤立した性質のため、統計的考察に基づいていない。ただし、有効性の一次評価には、3歳~7歳までの少なくとも10人の患者を登録する必要がある。
【0163】
診断の例示的な基準ならびに包含および除外の主な基準を以下に示す。
【0164】
包含:
1.親または法定後見人によって署名された書面によるインフォームドコンセントの提供
2.遺伝的に確認されたサンフィリッポ症候群A型またはB型
a.SGSH(A型)またはNAGLU(B型)遺伝子のホモ接合または複合ヘテロ接合の病原性変異体を実証するゲノムDNA分析
3.スクリーニング時の尿中GAGおよび/または尿中もしくは血漿中HSの排泄量の増加(3回の評価の平均>正常値の上限[ULN])
4.男性または女性、3~16歳(境界値を含む)
5.6歳前の遺伝子型または診断によって定義される、急速に進行するサンフィリッポ症候群A型またはB型の患者
6.妊娠の可能性のある女性患者に対するスクリーニング時に、尿または血清ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)の妊娠結果が陰性
7.プロトコルに概説されている性的禁欲または避妊のガイドラインを順守する意欲
【0165】
除外:
1.サンフィリッポ症候群A型またはB型に対する幹細胞もしくは遺伝子治療、または酵素補充療法(ERT)の事前投与
a.同意時にERT療法から少なくとも1年経っている患者は、治療の実証可能な効果なしに登録してもよい。
2.以前に糖尿病またはヘモグロビンA1c(HgbA1c)と診断された結果がスクリーニング時に6.0%を超える
3.過去4~6週間で1週間に1回以上の発作として定義される、制御不良の発作。
4.神経発達試験に対する協力を妨げるのに十分な視覚または聴覚障害
5.治験責任医師の意見で、安全性または有効性データの解釈を混乱させるであろう、または患者を過度のリスクにさらすであろう任意の他の病状
6.プロトコルに必要な評価または手順に協力できない
7.IVトレハロースによる前治療
8.トレハロースに対する既知の過敏症
9.同意書に署名する前30日以内のゲニステインに富む大豆イソフラボンの使用
10.同意書に署名する前7日以内の経口トレハロースの使用
11.スクリーニング時の血清学的検査でのB型肝炎またはC型肝炎感染の証拠
12.現在、除外の理由ではない抗血小板治療以外の抗凝固治療(例えば、ワルファリン、エノキサパリン)を受けている
13.現在、別の臨床試験に参加しているか、または計画された最初の投薬前90日未満に介入試験を完了している
【0166】
臨床試験用医薬品、投与量、および投与方法:トレハロース90mg/mLの溶液を週に1回60±5分かけて静脈内投与する。
【0167】
トレハロースは、0.25g/kgの用量から開始する最大0.75g/kgの用量で、上記のような用量滴定法(1週目~9週目)で投与する。留置カテーテルは、許可されていない。
【0168】
治療期間:この研究には、4週間のスクリーニング期間、および9週間の用量滴定期間を含む52週間の治療期間が含まれる。
【0169】
制限された薬:IVトレハロース90mg/mLとの既知の薬物間相互作用がない。患者がミグルスタットの研究を開始する場合、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。患者は、研究中にミグルスタットによる治療を開始することは許可されていない。カンナビジオール(CBD)オイルは許可されているが、用量は、研究全体を通して同じでなければならない。行動薬(覚醒剤、非覚醒剤、向精神薬)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。経口トレハロースおよびゲニステインに富む大豆イソフラボンは、研究中は許可されていない。てんかんの悪化または急性疾患を経験しない限り、患者は、研究中に併用薬を変更すべきではない。患者は、AE、併発疾患、不安などの症状を治療し、病気を予防するための標準的なケアとして医学的に必要な併用薬、例えば、ワクチンを受けてもよい。ビタミンまたはハーブサプリメントなどの市販薬(OTC)は、患者が同意時に服用している場合、許可される。可能であれば、用量および頻度は、研究全体を通して同じでなければならない。
【0170】
統計的方法:安全性集団は、トレハロースの少なくとも1回の注入または部分注入を受けるすべての患者で構成される。主要な有効性集団は、同意書に署名した時点で3歳~7歳である、安全性集団の患者のサブグループで構成される(コホート1)。
【0171】
安全性分析には、治療により発現した有害事象の発生率および重症度、重篤な有害事象の発生率、身体検査所見、バイタルサイン、ならびに臨床検査の説明的な要約が含まれる。AEおよびSAEは、器官別大分類、優先使用語、重症度、および薬物との関係によって表にする。
【0172】
主要な有効性評価項目は、52週目にVineland-3年齢相当スコア(AEq)が少なくとも3か月減少した患者(同意書に署名した時点で3~7歳)の割合である。これは、患者が標準治療で治療された縦断的自然史研究(上記)から得られる歴史的対照群(16人の患者)と比較する。一次分析は、層別変数として疾患の種類(AまたはB)を用いたコクラン-マンテル-ヘンツェル、カイ2乗検定を使用した群間の比較である。任意の治療/層細胞において、患者数が不十分な場合は、フィッシャーの直接確率検定を使用する。
【0173】
計画された試料サイズは、主に実現可能性に基づくが、しかしながら、治療群の10人の患者および歴史的対照群の16人の患者は、それぞれ、0.09および0.69の有意な(両側、α=0.05)真の減少率(52週目のAEqで少なくとも3ポイント)として、80%の検出する能力を有すると推定される。治療群で試料サイズが16に増加すると、80%の能力を提供すると推定される割合は、0.16に増加する。これは、治療群および歴史的対照群が同等の患者集団から効果的にサンプリングされ、未治療の場合でも、Vineland-3のAEqの減少率が同等であることを想定する。上記の仮定の下で、治療群の最小有意減少率は、試料サイズが10および16の場合、それぞれ0.21および0.28と推定される。
【0174】
AEqのベースラインからの平均変化について、治療群と歴史的対照群との差異に関して二次分析を実施する。これは、反復測定(MMRM)に対して混合効果モデルを使用し、これには、治療、疾患の種類(AまたはB)、訪問(カテゴリ)、および固定効果としての訪問による治療の相互作用、共変量としてのベースラインAEq、およびランダム効果としての患者が含まれる。追加の支持モデルは、治療、疾患の種類、時間(連続)、およびベースラインAEqによるMMRMを使用して、AEq変化の傾きに対する治療効果を評価する。
【0175】
二次評価項目および探索的評価項目の分析は、説明的に提示し、上記と同じ統計モデルで分析する。
【0176】
研究の試料サイズが小さいことを考えると、ドロップアウトおよび欠落値の発生は、有効性の推論および推定に大きな影響を与える可能性がある。したがって、すべての治療を受けた患者について、52週目のVineland-3の評価を取得することが重要になる。52週目の安全性および有効性の評価のために、中止した患者を診療所に戻すためにあらゆる努力が払われる。これらの評価は、一次有効性分析で使用する。中止し、52週目のVineland-3の評価が欠測している患者については、AEqは、一次分析に関して3か月減少したと見なす。Vineland-3のAEqの変化の一次および二次分析からの結論に対する欠測データの影響について、追加の感度分析を実施する。これらのための方法は、SAPで説明する。
【国際調査報告】