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特表2022-550604ヌクレオシドアナログを有するオリゴヌクレオチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ヌクレオシドアナログを有するオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221125BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20221125BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20221125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20221125BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221125BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20221125BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20221125BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221125BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20221125BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
A61P35/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
A61K31/711
A61K48/00
A61K47/62
A61K47/68
A61K47/61
A61K47/64
A61K47/54
A61K47/56
A61K31/7068
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520735
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 US2020054093
(87)【国際公開番号】W WO2021067825
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/909,526
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/927,500
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/977,630
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509127310
【氏名又は名称】サーナオミクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ, デーヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ルー, パトリック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルー, シャオヤン
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ, エリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD33
4C076EE17
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086EA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
(57)【要約】
siRNA配列内にシトシン部分の代わりにゲムシタビン(GEM)を含むsiRNA組成物が提供される。これらのsiRNA分子を含む医薬組成物及びがん等の疾患を治療するために組成物を使用する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオチド及び1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログを含むオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
ヌクレオチドがリボヌクレオチドを含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
ヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログが分子の末端に結合している、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログが分子内にある、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログが分子の2つの鎖間にループとして又はループ内に結合している、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログが、それに対する1つ又は複数のアナログである1つ又は複数のヌクレオチドを置換する、請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
オリゴヌクレオチドが1~10個の抗がんヌクレオシドアナログを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドがsiRNAを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドがmiRNAを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドがDNAアプタマー又はRNAアプタマーを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドががん細胞内の特定の遺伝子の発現を標的とし、それをサイレンシングするか又は低下させる、請求項10から12のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
siRNAが、サイレンシングされた際にがん細胞内の抗がんヌクレオシドの作用を増強する標的をサイレンシングするか、又はサイレンシングされた際に細胞の死滅における抗がんヌクレオシドの作用を増強する遺伝子をサイレンシングする、請求項10に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドがヌクレアーゼの安定性を改善するために化学修飾されたヌクレオチドを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
オリゴヌクレオチドに対する修飾が、2’-0-メチル又は2’-フルオロ又はホスホロチオエートアナログである、請求項16に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
抗がんヌクレオシドアナログが、ゲムシタビン、シタラビン、5-FU、5-デオキシ-5-フルオロウリジン、フルダラビン、カペシタビン、クラドリビン、トロキサシタビン又はクロファラビン、アザシチジン及び5-デオキシアザシチジンからなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
抗がんヌクレオシドアナログがゲムシタビンを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
ヌクレオチドが、複数のゲムシタビンヌクレオシドを連続して含むポリGEM配列を含む、請求項19に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドががん細胞内の特定の遺伝子の発現を標的とし、それをサイレンシングするか又は低下させる、請求項1から20のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
遺伝子が、ATR、ATM、WEE1、CHK1、CHK1A、CHK1B、CHK2、RAD17、BCL2、シチジンデアミナーゼ及びBCLXLからなる群から選択される、請求項21に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
遺伝子がCHK1又はCHK2である、請求項21に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項24】
遺伝子がCHK1又はRAD17である、請求項21に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項25】
標的化リガンドをさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項26】
リガンドががん細胞上の受容体又はタンパク質に対して特異的であり、リガンドが細胞に結合する、請求項25に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項27】
受容体が、がん細胞上で、非がん細胞よりも高いレベルで発現する、請求項26に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
標的化リガンドが、ペプチド、低分子、タンパク質、アプタマー、抗体、ナノボディ、ScFv断片及び炭水化物部分からなる群から選択される、請求項24から27のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
炭水化物部分がGalNacを含む、請求項28に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
標的化リガンドが、腫瘍細胞上で上方制御された特定の受容体を標的とするペプチドを含む、請求項24から27のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
受容体がインテグリン受容体を含む、請求項30に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
インテグリン受容体がアルファ5ベータ3又はアルファ5ベータ6を含み、リガンドがこれらの2つの受容体の間で差次的な親和性を示す、請求項31に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項33】
標的化リガンドが口蹄疫ウイルス(FMV)結合ペプチドに由来する、請求項32に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項34】
標的化リガンドが、FMDV20ペプチド配列(NAVPNLRGDLQVLAQKVART)の10~20のアミノ酸を含む、請求項33に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項35】
ペプチドが標準的なL-アミノ酸よりもD-アミノ酸を含むように最初及び最後の位置で修飾されている({D-ASN}AVPNLRGDLQVLAQKVAR{D-THR})、請求項34に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項36】
ペプチドが、溶解度及び/又はPK性質を改善するように分子に沿ったある点でpeg化されている(例えば、PEG-{D-ASN}AVPNLRGDLQVLAQKVAR{D-THR})、請求項35に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項37】
ペプチド配列がオリゴヌクレオチド-ポリGEM分子に共有結合している、請求項36に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項38】
ペプチドが、オリゴヌクレオチド-ポリGEM分子を、関連する受容体を過剰発現する哺乳動物組織又は器官中のがん細胞に送達する、請求項37に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項39】
オリゴヌクレオチド-ポリGem分子がエンドサイトーシスによってがん細胞に取り込まれる、請求項38に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項40】
オリゴヌクレオチドが、がん細胞を死滅させる、請求項39に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項41】
ヌクレオチド及び1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログを含むオリゴヌクレオチドであって、オリゴヌクレオチドがsiRNA、miRNA、ASO、DNAアプタマー又はRNAアプタマーを含み、1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログがゲムシタビンを含む、オリゴヌクレオチド。
【請求項42】
オリゴヌクレオチドがsiRNA又はmiRNAを含み、1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログがゲムシタビンを含む、請求項41に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項43】
1つ又は複数のゲムシタビンヌクレオシドが、siRNA分子又はmiRNA分子の配列内のシトシン分子を置換する、請求項41又は42に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項44】
1つ又は複数のゲムシタビンヌクレオシドがsiRNAのセンス又はアンチセンス鎖に取り込まれる、請求項43に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項45】
ゲムシタビン又は他の抗がんヌクレオシドアナログが、がん細胞の細胞質内におけるオリゴヌクレオチドの分解時に放出される、請求項41又は42に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項46】
オリゴヌクレオチドがsiRNAであり、ゲムシタビンが、がん細胞内のRISC複合体によるアンチセンス鎖の取り込み時に細胞質中に放出されるsiRNAのセンス鎖上にある、請求項41から45のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項47】
アンチセンスsiRNA鎖が目的の遺伝子をサイレンシングする、請求項46に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項48】
オリゴヌクレオチドがsiRNA又はmiRNAであり、細胞質中に放出されたゲムシタビンが、siRNA又はmiRNAのサイレンシング効果の活性を増強し、がん細胞内の治療効果をもたらす、例えば複製若しくは増殖を防止するか、又はがん細胞を能動的に死滅させる、請求項41から47のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項49】
siRNA又はmiRNAが、サイレンシングされた際に、がん細胞の死滅におけるゲムシタビンの作用を増強する標的遺伝子をサイレンシングする、請求項41から47のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項50】
標的遺伝子が、ATR、ATM、WEE1、CHK1、CHK1A、CHK1B、CHK2、RAD17、BCL2、シチジンデアミナーゼ及びBCLXLからなる群から選択される、請求項49に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項51】
標的遺伝子がCHK1又はRAD17である、請求項49に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項52】
マウス及びヒト細胞において配列に同一性を有するCHK1をサイレンシングし、CHK1に対するCHK_Az siRNA配列上に存在する2つのシトシンと比較してGEMによって置換されていてもよいシトシン部分の数が多いsiRNA配列を含む(配列:SS:5’-AAGAAAGAGAU[GEM]UGUAU[GEM]AAU-dTdT-3’:非-Gem含有AS鎖 5’-AUUGAUACAGAUCUCUUUCUU-dTdT-3’)、請求項49に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項53】
siRNA分子が以下の配列:
SS=5’-CCU GUG GAA UAG UAC UUA CUG CAA U-3’ CHK1 siRNAセンス鎖
AS=5’-A UUG CAG UAA GUA CUA UUC CAC AGG-3’ CHK1 siRNAアンチセンス鎖
を含む、請求項41から52のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項54】
ゲムシタビンがセンス鎖内の選択シトシン部分を置換する:
SS=5’-CCU GUG GAA UAG UA[GEM] UUA [GEM]UG [GEM]AA U-3’(「C」の代わりに[GEM])
AS=5’-A UUG CAG UAA GUA CUA UUC CAC AGG-3’(AS鎖上にGEMなし)、請求項53に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項55】
RAD17についてのマウス及びヒト遺伝子に対するsiRNA配列を含み、センス鎖(SS)がRAD17_7(6):SS-5’CCAACAAUUAUGAUGAAAUUUCUUA-3’である、請求項41から52のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項56】
siRNAのSS上の選択「C」基が下記のようにGEM部分によって置換されている:
SS-5’CCAA[GEM]AAUUAUGAUGAAAUUU[GEM]UUA-3’、請求項55に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項57】
siRNA又はmiRNAが化学修飾されており、特定の受容体にオリゴヌクレオチドを標的化しそれを送達し、次いで細胞に取り込まれるリガンドに直接結合されている、請求項41から56のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項58】
標的化リガンドがGalNacを含み、受容体が肝臓の肝細胞上のASGPR受容体を含む、請求項57に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項59】
標的化リガンドが、治療薬に応答する腫瘍細胞、例えばCHK1サイレンシングに応答する膵臓がん細胞に特異的であり、その増殖が阻害される、請求項57に記載のオリゴヌクレオチド。GEMを、CHK1を標的とするsiRNAに付加すると、膵臓及び他の腫瘍細胞における効果をさらに増強し得る。
【請求項60】
請求項1から59のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項61】
薬学的に許容される担体が水及び以下の塩又はバッファー:リン酸カリウム一塩基性無水NF、塩化ナトリウムUSP、リン酸ナトリウム二塩基性七水和物USP、及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の1つ又は複数を含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
薬学的に許容される担体が、生分解性ヒスチジン-リジンポリマー、生分解性ポリエステル、例えばポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)及びポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、カチオン性脂質、例えばDOTAP、DOPE、DC-Chol/DOPE、DOTMA及びDOTMA/DOPE、PEG化PEI及び脂質、例えばリポフェクトアミンからなる群から選択される1つ又は複数の成分を含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項63】
薬学的に許容される担体が、ヒスチジン-リジンコポリマー(HKP)を含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項64】
HKPが構造(R)K(R)-K(R)-(R)K(X)を含み、R=KHHHKHHHKHHHKHHHK、K=リジン及びH=ヒスチジンである、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
薬学的に許容される担体が分岐状ヒスチジン-リジンコポリマーを含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項66】
分岐状ヒスチジン-リジンポリマーが式(R)K(R)-K(R)-(R)K(X)を有し、R=KHHHKHHHKHHHKHHHK又はR=KHHHKHHHNHHHNHHHNであり、X=C(O)NH2、K=リジン、H=ヒスチジン及びN=アスパラギンである、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
薬学的に許容される担体が、スペルミン-脂質コンジュゲート(SLiC)及びコレステロールを含むリポソームを含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項68】
薬学的に許容される担体が、式Kp{[(H)n(K)m]}y又はKp{[(H)n(K)m]}y-C-x-Z又は式Kp{[(H)a(K)m(H)b(K)m(H)c(K)m(H)d(K)m]}y又はKp{[(H)a(K)m(H)b(K)m(H)c(K)m(H)d(K)m]}y-C-x-Zのペプチドを含み、Kがリジンであり、Hがヒスチジンであり、Cがシステインであり、xがリンカーであり、Zが哺乳動物細胞-標的化リガンドであり、pが0又は1であり、nが1~5の整数であり、mが0~3の整数であり、a、b、c及びdが3又は4のいずれかであり、yが3~10の整数である、請求項60に記載の組成物。
【請求項69】
薬学的に許容される担体が、切断可能な結合を介して架橋された請求項68に記載のペプチドを少なくとも2つ含むポリペプチドを含む、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
組成物がナノ粒子を含む、請求項60から69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含み、第1のオリゴヌクレオチド又は第2のオリゴヌクレオチド又は両方のオリゴヌクレオチドが1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログを含む、組成物。
【請求項72】
オリゴヌクレオチドが、siRNA、miRNA、ASO、DNAアプタマー及びRNAアプタマーからなる群から選択される、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
第1のオリゴヌクレオチドが第1のsiRNAを含み、第2のオリゴヌクレオチドが第1のsiRNAとは異なる第2のsiRNAを含む、請求項71又は72に記載の組成物。
【請求項74】
siRNA標的遺伝子が、ATR、ATM、WEE1、CHK1、CHK1A、CHK1B、CHK2、RAD17、BCL2、シチジンデアミナーゼ及びBCLXLからなる群から選択される、請求項71から73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項75】
第1のsiRNAがCHK1を標的とし、第2のsiRNAがRAD17を標的とする、請求項74に記載の組成物。
【請求項76】
1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログがここに記載する通りである、請求項71から75のいずれか一項に記載の組成物を含む組成物。
【請求項77】
1つ又は複数の抗がんヌクレオシドアナログがゲムシタビンを含む、請求項71から76のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項78】
ここに記載する標的化リガンドをさらに含む、請求項71から77のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項79】
ここに記載する薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項71から78のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項80】
哺乳動物中のがん細胞を死滅させる方法であって、哺乳動物に、治療的有効量の請求項1から59のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド又は請求項60から79のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項81】
がんが、膵臓がん、肝臓がん、結腸がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、乳がん、卵巣がん又は頭頸部がんを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
肝臓がんが、転移性膵臓がん、肝細胞癌又は転移性結腸がんを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
哺乳動物が実験動物である、請求項80から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
哺乳動物がヒトである、請求項80から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
組成物が、がん細胞を含む腫瘍に直接注入される、請求項80から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
siRNA分子が配列:
CHK1_AZ SS(内部GEM)5’-AAGAAAGAGAU[GEM]UGUAU[GEM]AAU-dTdT-3’;
AS鎖:
CHK1_AZ AS(Gemなし)5’-AUUGAUACAGAUCUCUUUCUU-dTdT-3’
を含む、請求項41から52のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項87】
前記siRNA分子が、一対の配列:
(a)Chk1_AZ SS(末端GEM):5’-AAGAAAGAGAUCUGUAUCAAU[GEM][GEM]-dTdT-3’
CHK1_AZ AS(Gemなし)5’-AUUGAUACAGAUCUCUUUCUU-dTdT-3’;
(b).Chk1_AZ SS(GEMなし):5’-AAGAAAGAGAUCUGUAUCAAU-dTdT-3’
Chk1_AZ AS(末端GEM)5’-AUUGAUACAGAUCUCUUUC-UU[GEM][GEM]dTdT-3’又は
(c)Chk1_AZ SS(末端GEM):5’-AAGAAAGAGAUCUGUAUCAAU[GEM][GEM]-dTdT-3’
Chk1_AZ AS(末端GEM)5’-AUUGAUACAGAUCUCUUUC-UU[GEM][GEM]dTdT-3’
の1つを含む、請求項41から52のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月2日に出願された米国特許仮出願第62/909526号、2019年10月29日に出願された同第62/927500号及び2020年2月17日に出願された第62/977,630号に対する優先権を主張するものであり、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
siRNAは、センス鎖及び相補的なアンチセンス鎖からなる二本鎖RNA分子である。これらの分子は、各鎖が19~29塩基長である平滑末端分子であっても、又は2塩基のオーバーハング(典型的にはdTdT)を示してもよい。
【0003】
siRNAの各鎖は、典型的には、所望の配列の次の塩基を、成長しているオリゴヌクレオチドに結合している前の塩基にコンジュゲートすることによって、合成剤上で作製される。アミダイト化学又は他の合成手法は、当分野において周知されている。一度合成されると、二本鎖は次いで互いにアニーリングされ、二本鎖を形成する。
【0004】
がん細胞内の選択標的に対するsiRNAは、サイレンシングされた遺伝子標的によってコードされるタンパク質の発現を低下させ得ることが示されている。これらの遺伝子をサイレンシングすることによって、次いで、細胞の増殖を阻害し得る。細胞が具体的に、siRNAがアクセスし得る疾患細胞(例えば、がん細胞)である場合、siRNAは治療薬として作用し得る。さらに、いくつかの場合、現在治療の「ゴールドスタンダード」である選択治療薬(低分子阻害剤、モノクローナル抗体等)の使用は、選択経路の遺伝子をサイレンシングすることにより増強され得ることが見出されている。
【0005】
ゲムシタビン(2’,2’-ジフルオロ2’-デオキシシチジン)は全身的に投与された場合、ヌクレオシドトランスポーターによって取り込まれ、デオキシシチジンキナーゼによるトリリン酸化により活性化され、次いでRNA又はDNAのいずれかに取り込まれ得るピリミジンベースのヌクレオシドアナログである。これは、DNA複製(細胞分裂)の間に核酸シチジンを置換し、腫瘍増殖を阻害し得るが、これは、新規のヌクレオシドがこのヌクレオシド模倣物に結合することができず、細胞のアポトーシスが引き起こされるためである(Damaraju他、Oncogene 22:7524~7536(2003))。
【0006】
ゲムシタビンは、膵臓がんを処置する際の主要な治療薬である(Burris他、J Clin Oncol 15:2403~2413(1997)が、多数の他のがん、例えば胆管細胞癌(Jo and Song、“Chemotherapy of Cholangiocarcinoma:Current Management and Future Directions.Topics in the Surgery of the Biliary Tree”、chapter 3;35~52ページ。http://dx.doi.org/10.5772/intechopen.76134、S.Y.(2018))、非小細胞肺がん(Muggia他、Expert Opinion on Drugs、21:4、403~408(2012))、卵巣がん(Le他、Gynaecol.Oncol.Res.Pract.4:16(2017)及び乳がん(Xie他、Oncotarget、9:7148~7161(2018))の処置において使用されている。ゲムシタビンはヌクレオシドトランスポーターによって取り込まれ、デオキシシチジンキナーゼによって活性化され、RNA及びDNAの両方に取り込まれる。リボヌクレオチドレダクターゼ及びdCMPデアミナーゼの阻害は、その活性化を増強し、一方、シチジンデアミナーゼは、ゲムシタビンをその不活性と考えられる代謝物2’,2’-ジフルオロデオキシウリジンに変換し、これは次いでそのヌクレオチド形態で、チミジル酸合成酵素を阻害し得る。ゲムシタビンはIV点滴によって患者に全身的に投与される。ゲムシタビンの標準的な投与は、1000mg/mにおいて、30分間、週1回の点滴によるものであるが、その有用性は限定的なものであり、これは、腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも分布するために、有意な毒性を示すためである。さらに、いくつかの種類の腫瘍においては、有効性を見るためには、用量が非常に高いレベルに上昇する必要があり、その薬物についての治療指数は非常に限定的であり得る。
【0007】
ゲムシタビンは、主に白金アナログと組み合わせて幅広く使用されている。卵巣がんにおけるゲムシタビンとの組合せの他の選択肢は、リボヌクレオチドレダクターゼの阻害をトリアピン又はヒドロキシウレアによって上昇させることからなる。
【0008】
ゲムシタビン毒性を克服するための種々の方法が試されている。最も見込みがあるものの1つは、正常細胞への送達を低下させながら腫瘍細胞への送達を選択的に強化する標的化された送達剤の使用である。
【0009】
化合物ゲムシタビンの作用を増強する遺伝子の例をいくつか挙げると、RAD17、CHK1、CHK2、ATR、ATMを標的とするsiRNAが挙げられる(参照:Azorsa、J.Transl.Med.7:43(2009);Fredebohm(Journal of Cell Science 126:3380~3389、2013)及びPlunkett他、Semin Oncol 23:3~15(1996))。
【0010】
上記の研究は、(アンタゴニスト、例えば低分子又は抗体等によって)阻害される、又は(siRNA又はmiRNAを使用して)サイレンシングされる際に、薬物の用量応答曲線について、同等の有効性を、より低い用量/濃度で示すような有益なシフトをもたらす、細胞内のさらなる標的を見出すことを目的としている。
【0011】
このような用量応答のシフトは、(例として)RAD17又はCHK1に対するsiRNAについて見られる。
【0012】
これらのsiRNAの、疾患を示す動物/ヒトの腫瘍環境への送達は、種々の標的化された、又は標的化されていない送達剤を使用して達成し得る。これらの送達ビヒクルは、脂質、修飾脂質、ペプチド送達ビヒクル等からなっていても、又はヌクレアーゼ及び循環内で遭遇する他の酵素によるsiRNAの分解を防止するために、骨格の修飾を介して修飾された(化学的に安定な)siRNA分子への標的化リガンドの直接結合を介するものであってもよい。
【0013】
近年、GalNAc修飾siRNAは、肝臓内の肝細胞へのこれらのsiRNAの特異的な送達を促進するために使用されている。GalNac部分は、肝細胞に特異的にかつ多数存在するアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)に非常に高い親和性で結合する。ASGPRは、結合時に細胞内に内在化し、それによって結合したsiRNAを共に細胞内へ運搬すると考えられている。
【0014】
特定の細胞種にペイロードを送達し得る他の標的化リガンドとしては、GLP1ペプチド(膵臓β細胞上のGLP1受容体に結合)、RGDモチーフ(例えば、α5β3インテグリン受容体に結合するcRGD、iRGD又は口蹄疫ウイルス由来のペプチド(α5β3受容体に対するほとんどマイクロモル濃度の親和性と比較して、α5β6インテグリン受容体にnMの親和性で結合))、葉酸リガンド(葉酸受容体に結合)、トランスフェリン受容体に結合するトランスフェリンリガンド及びEGF受容体を介して標的化するEGFRが挙げられる。多くの標的化部分の他の例は、異なる細胞種への送達について特異性を示す。
【0015】
siRNA(遺伝子をサイレンシングする)の、薬物(例えばゲムシタビン)との共送達をもたらし、siRNA又は薬物のいずれかの単独の投与を上回る治療効果をもたらす組成物及び方法が本明細書に記載されている。
【0016】
ゲムシタビン(例えば、5-FU及び他のヌクレオシドアナログ)は、従来の合成方法(手動又は自動化機器の使用)によってDNA又はRNA塩基への直接的な連結を可能にする方法で化学的に合成し得る。
【発明の概要】
【0017】
詳細な説明
siRNA配列内にシトシン部分の代わりにゲムシタビン(GEM)を含むsiRNA組成物が提供される。これらのsiRNA分子を含む医薬組成物及びがん等の疾患を処置するために組成物を使用する方法が提供される。
【0018】
定義
低分子干渉RNA(siRNA):分子が細胞に導入された後、細胞内の遺伝子の発現に干渉する短い二本鎖RNAである二本鎖オリゴヌクレオチドである。例えば、一本鎖標的RNA分子中の相補的なヌクレオチド配列を標的とし、結合する。siRNA分子は、化学的に合成されるか、又は当業者に公知の技術によって構築される。このような技術は、米国特許第5,898,031号、第6,107,094号、第6,506,559号、第7,056,704号、再発行第46,873号及び米国特許第9,642,873号及び欧州特許第1214945号及び第1230375号に記載されており、これらは全てその全体が参照により本明細書に組み入れられる。当技術分野の慣例によれば、siRNAが特定のヌクレオチド配列によって特定される場合、配列は二本鎖分子のセンス鎖を指す。分子を含むリボヌクレオチドの1つ又は複数は、当技術分野で公知の技術によって化学修飾されていてもよい。個々のヌクレオチドの1つ又は複数のレベルにおける修飾に加えて、オリゴヌクレオチドの骨格も修飾されていてよい。さらなる修飾としては、低分子(例えば、糖分子)、アミノ酸、ペプチド、コレステロール及びsiRNA分子へのコンジュゲーションのための他の巨大分子が挙げられる。
【0019】
マイクロRNA(miRNA):一本鎖標的RNA分子中の相補的なヌクレオチド配列を標的とし、結合することによって、遺伝子発現のRNAサイレンシング及び翻訳後調節において機能する小さいノンコーディングRNA分子。
【0020】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO):一本鎖標的RNA分子中の相補的なヌクレオチド配列を標的とし、結合することによって、哺乳動物細胞内の遺伝子の発現を低下させ得る短い一本鎖RNA又はDNA(典型的には11~27塩基)。
【0021】
DNA又はRNAアプタマー:特定の標的分子に結合する一本鎖DNA又はRNAオリゴヌクレオチド。このような標的としては、低分子、タンパク質及び核酸が挙げられる。このようなアプタマーは、通常、in vitro選択の反復又は試験管内進化法(SELEX)によって大きい無作為の配列プールから作製される。
【0022】
ポリGEM配列:複数のゲムシタビンヌクレオシドを連続して含む配列。
【0023】
オリゴGEM:複数のゲムシタビンヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチド。ヌクレオシドは、いずれかの末端、又はオリゴヌクレオチド内に連続していても、又は1つ又は両方の末端に単一のヌクレオシドを含んで、オリゴヌクレオチド内に散在していてもよい。
【0024】
ヒスチジン-リジン共重合体:ヒスチジン及びリジンアミノ酸からなるペプチド又はポリペプチド。このような共重合体は、米国特許第7,070,807号、第7,163,695号及び第7,772,201号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0025】
がんは任意の悪性腫瘍である。
【0026】
悪性腫瘍は、腫瘍性細胞の集団である。
【0027】
肝臓がん:肝臓内の任意の原発性がん、すなわち肝臓中で開始するがん、又は肝臓内の任意の二次がん、すなわち哺乳類の身体内で他の組織から肝臓に転移するがん。原発性肝臓がんの一例は肝細胞癌である。二次肝臓がんの例は結腸がんである。
【0028】
処置すること/処置:がん細胞のいくつか、又は全てを死滅させること、がんのサイズを低下させること、がんの増殖を阻害すること、又はがんの増殖速度を低下させること。
【0029】
抗腫瘍有効性の増強:腫瘍細胞の増殖速度をより低下させること、腫瘍細胞の死滅、及び/又は腫瘍体積の低下において、より大きい効果をもたらすこと、並びに腫瘍を有する患者の寿命を延長することによって、より優れた治療効果を最終的にもたらすことを意味する。
【0030】
GEM活性の増強のための標的選択
GEMを含むコンストラクト
Azorsa他(J.Transl.Med.7:43(2009))は、培養中の膵臓がん細胞におけるゲムシタビンの効果の増強を示した、CHK1遺伝子に対するsiRNAを特定している。その後、Fredebohm(Journal of Cell Science 126:3380~3389、2013)は、膵臓腫瘍細胞におけるゲムシタビンの効果の増強剤としてCHK1を検証しており、また、サイレンシングした際にゲムシタビンの活性を改善する他の可能性のある標的をいくつか特定した。RAD17は、これらの標的の1つとして特定され、細胞生存率を低下させる上でのゲムシタビンの作用の重大な改善が実証された。
【0031】
RAD17は、CHK1よりも優れた標的であることが提案されたが、これは、この遺伝子を単独でサイレンシングすることは、細胞生存率に対してほとんど影響がなかったが、ゲムシタビンを含めた場合、がん細胞生存率の低下における相乗作用も明らかであったためである。しかしながら、CHK1サイレンシングはゲムシタビンが存在しない場合であっても、それ自体が細胞に対していくらかの毒性を呈することが示されており、これは、CHK1に対するsiRNAの使用が、腫瘍細胞には優先的に取り込まれるが、正常な分裂細胞には取り込まれない方法で投与される必要があることを必要としている。
【0032】
RAD17阻害は、チェックポイントキナーゼの阻害とも協働し得ることが示されている(Shen他、Oncotarget 6:35755~35769(2015))。したがって、膵臓がんに対する活性をさらに増強するために、両方の標的RAD17及びCHK1に対するsiRNAを共送達することも可能であり得る。本明細書に記載するように、RAD17及びCHK1に対するsiRNAは、センス鎖内で共にゲムシタビンヌクレオチドによって修飾されていても、又はセンス鎖の末端に付加されていてもよく、2つのGem修飾siRNAが、単一のポリペプチドナノ粒子内で組み合わされて、細胞にトランスフェクトされた場合に有効性の改善がもたらされるようになっていてもよい。さらに、ヒスチジン-リジン分岐状共重合体を使用して作製したポリペプチドナノ粒子(「PNP」)は、同時に同じ細胞に複数のsiRNAを同時送達し得る。これらのPNPはまた、動物モデルにおける異種移植片として示される場合、広範の腫瘍細胞種にsiRNAを送達するために使用し得る。
【0033】
後述のように、siRNA配列の末端に連結した、及び/又は配列の内部にGEM部分を含むsiRNA分子を調製し得る。これらのGEM含有siRNAは、標的遺伝子をサイレンシングし、GEMの細胞への放出を介して腫瘍を死滅させる上で有効性の増強をもたらす上で機能的なままであり、ここで、遺伝子サイレンシング活性と薬物の効果の間に相乗作用が見られ、すなわち、見られる結果は、siRNA及びGEMを別個の成分として個々に投与することによって達成されるものを上回っている。
【0034】
天然のヌクレオチドによって分離されている場合に、GEMがよりよくプロセシングされるかを決定するために、ゲムシタビンが、ヌクレオチドシチジンのアナログであるため、シチジン(C)の代わりにsiRNA配列に直接取り込まれ得ることを利用した。ゲムシタビンアミダイトは、GEM部分から全体がなるポリマーを形成するために使用し得る(Ma他、Chem.Commun.、55:6603~6606(2019))これらのポリマーは、ナノゲルを形成し、これらは、in vitro及びin vivoのがん細胞モデルにおいて一定の活性を示した。アミダイト官能基を取り込んでいる修飾ヌクレオシドは、修飾ヌクレオシド、例えばGEMを、合成の間に二本鎖の1つの鎖に導入するために使用し得る。siRNA二本鎖からのアンチセンス鎖は、siRNA領域内のセンス鎖の適切な配列とアニーリングしなければならず、アンチセンス鎖は、RISC複合体に取り込まれ、mRNA配列の適合のための監視に使用されるため、修飾ヌクレオシドは、最初にsiRNAのセンス鎖に付加され、アンチセンス鎖に対してセンス鎖の長さの延長部を形成した。複数の(n)非天然ヌクレオシド塩基を、鎖の末端に取り込んで、単一のsiRNA分子の送達によって、複数の(n)非天然ヌクレオシドの共送達がもたらされるようになってもよい。
【0035】
細胞の細胞質内部に一度入ると、アンチセンス鎖はRISC複合体に取り込まれ、適合するmRNA配列が特定されると、mRNAは、酵素DICERによって切断される。センス鎖はこの工程の間に除去され、次いで、細胞質内で切断される。センス鎖の末端に取り込まれた非天然ヌクレオシドアナログは、次いで、内因性のヌクレアーゼによって切断される。遊離したゲムシタビンの分子(又は抗がん非天然ヌクレオシドアナログを含む類似の構造)は、次いで腫瘍細胞複製機構を阻害し、siRNAによって標的化される遺伝子発現の低下と協調して、これらの剤が存在しない場合よりも、腫瘍細胞増殖の低下に対してよりよい効果を示す。
【0036】
GEM残基を取り込む化学的に非修飾のsiRNA分子は、血液の循環、又は組織、微小環境等においてsiRNAを分解から保護する適切なナノ粒子製剤中で送達し得る。目的の腫瘍又は組織内部に一度入ると、siRNAは、腫瘍細胞中に放出され、その細胞傷害性効果をもたらす。
【0037】
GEMアミダイトを使用して合成されるsiRNA分子は、ヒスチジンリジンポリペプチドナノ粒子(HKP PNP)ナノ粒子システムを使用して送達し得る。GEMは、遺伝子を標的とし、次いで腫瘍細胞の死滅におけるゲムシタビンの作用を増強するsiRNA二本鎖配列内に含まれていてよく、治療効果を観察するために投与のために必要とされる量を低下させ、ゲムシタビンを単独で患者に投与した場合に観察される毒性の効果の可能性を低減し得る。後述するように、ゲムシタビンをsiRNAと別々に(すなわち個々の成分として)投与した際に、ゲムシタビンの相乗作用を示した、以前に公開されているCHK1に対するsiRNA配列(Azorsa、上述)を選択した。
【0038】
siRNAは、当技術分野で周知の方法を使用することによって、例えば2’-OMe及び/又は2’-F及び/又はホスホロチオエート修飾の使用によって化学修飾によってヌクレアーゼ分解に対して安定化し得る。siRNAは、標的化部分(例えば、GalNac、RGD、葉酸、TFR、EGFR、ペプチド標的化リガンド、アプタマー又は炭水化物又は、低分子又は抗体又はナノボディであってもよい)に(SS又はASの末端を介して、又は分子に付加された末端GEMも介して)所望により化学的に連結していてもよい。標的化部分は、受容体又は細胞表面上の他の標的に対して親和性を有し、これによりこれらの細胞への取り込みが強化される。非修飾のsiRNAと同様に、SS及びAS鎖は細胞内で分離し、AS鎖は目的の遺伝子のサイレンシングをもたらす一方で、放出されたSS-ポリGEM構造は分解されてGEMを放出し、これは、サイレンシングされた遺伝子と組み合わされて、いずれか単独よりも大きい効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】基本的な構造を示す図である。
図2】ポリGEMテイルを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(「ASO」)配列を示す図である。図2bは、標的化リガンドを介して標的化されたASO送達を示す。
図3】標的化されたオリゴ送達を示す。図3aは、センス鎖に結合した標的化リガンドを示す図である。図3bは、アンチセンス鎖に結合した標的化リガンドを示す。
図4】Gem-ループを有する等しい長さのセンス及びアンチセンス配列を示す図である。
図5】Gem-ループを有するアンチセンスに対する長さが等しくないセンス配列を示す図である。
図6】Gem-ループを有する等しい長さの配列の標的化送達を示す図である。
図7】Gem-ループを有する長さが等しくない配列の標的化送達を示す図である。
図8】膵臓がん細胞株BxPC3の細胞生存率(%)に対するsiRNA又はゲムシタビンの効果を示すグラフである。
図9】CHK1に対して設計された8つの数のsiRNA配列のトランスフェクション時の膵臓がん細胞株生存率の感受性を示すグラフである。
図9-1】CHK1に対して設計された8つの数のsiRNA配列のトランスフェクション時の膵臓がん細胞株生存率の感受性を示すグラフである。
図10】5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、アシクロビル及びACV-TP-Tの構造を示す式である。
図11】各siRNA又はゲムシタビンの膵臓がんBxPc3細胞の細胞生存率に対する効果を示すグラフである。
図12a】力価及び有効性に対する各siRNAのセンス鎖の3’末端における2つのゲムシタビンヌクレオチド付加の効果を示すグラフである。
図12b】力価及び有効性に対する各siRNAのセンス鎖の3’末端における2つのゲムシタビンヌクレオチド付加の効果を示すグラフである。
図12c】力価及び有効性に対する各siRNAのセンス鎖の3’末端における2つのゲムシタビンヌクレオチド付加の効果を示すグラフである。
図12d】力価及び有効性に対する各siRNAのセンス鎖の3’末端における2つのゲムシタビンヌクレオチド付加の効果を示すグラフである。
図13】センス鎖の3’末端にさらなるGEMを付加することの有効性及び力価に対する効果を示すグラフである。
図14】トランスフェクション24時間後の、Chk1/Gem siRNAの異なるバリアントによるBxPc3細胞におけるChk1の下方制御を示すグラフである。
図15】siRNA及びsiRNA-GEMコンストラクトの細胞生存率についての有効性の時間依存性を示すグラフである。
図15-1】siRNA及びsiRNA-GEMコンストラクトの細胞生存率についての有効性の時間依存性を示すグラフである。
図16】AS鎖中のCの代わりにGEMを含む各siRNAの細胞生存率に対する効果及びIC50を示すグラフである。
図17】siRNAのSSにおけるGEMの位置及び修飾の数の、siRNA/Gemの組合せの有効性及び力価に対する効果を示すグラフである。
図18】他の膵臓腫瘍細胞であるMiaPaにおけるコンストラクトの効果を示すグラフである。
図19】MiaPaca細胞に対するGem修飾siRNAの効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
基本的な構造を図1に示す。図2は、ポリGEMテイルを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド(「ASO」)配列を示す。図2bは、標的化リガンドを介した標的化されたASO送達を示す。図3は、標的化されたオリゴ送達を示し、図3aは、センス鎖に結合した標的化リガンドを示し、図3bは、アンチセンス鎖に結合した標的化リガンドを示す。
【0041】
ポリゲムシタビンはまた、同じ長さのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を有する単一オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされてもよい(図4参照)。アニーリング後、二本鎖RNAの2本の鎖間で結合した「ポリゲムシタビンループ」を形成する。単一のオリゴヌクレオチド配列は、2本の鎖と比較して製造コストが低減しており、また生成物の安定性の改善能及び細胞に送達されるsiRNA当たりはるかに多数のGEM分子の送達能を有するため、がん細胞に対する有効性が改善される。さらに、特定の環境において、RNAの2本の鎖は、短い鎖が長い鎖の関連する同族配列へのハイブリダイズが可能になるだけの十分な塩基があれば、同じ長さである必要はない場合もある(図5参照)。これらの環境下において、ゲムシタビンループは2本の鎖の間で対称的でなくてもよい。
【0042】
他の実施形態において、これらのコンストラクトは、他の非標的細胞と比較して、標的細胞上に高いレベルで存在する標的に高い親和性で結合する標的化リガンドを結合することによって、特定の細胞種への送達について標的化されている。標的化された送達のために、複数のリガンドをゲムシタビンループ領域に結合させてもよく(図6参照)、これによって同時に標的に複数のリガンドが標的に結合することによる多価標的化の利点がもたらされる(結合の結合活性の上昇及び、高い可能性で細胞特異性の改善)。標的化リガンドは、リンカーによってループ領域でゲムシタビンとコンジュゲートされる。これによって、標的化された細胞又は組織にオリゴ及びゲムシタビンのコンジュゲートを特異的に送達することが可能になり、ここで、付加的な、又は相乗的、又はより広範の治療効果を誘導し得る。リガンドはまた非対称鎖コンストラクト内でGemループに付加されてもよい(図7)。
【0043】
GEM部分を含むCHK1 siRNA分子の具体例を下記に示す。SS及びAS鎖は、GEMの非存在下において、アニーリングしてCHK1を標的とするsiRNAを形成する。この具体的な配列は、ヒト及びマウスのCHK1遺伝子の間で同一性を有するように設計されており、CHK1_AZ配列よりも遺伝子のサイレンシングにおいて強力であることが示されている(図8及び9参照。
SS=5’-CCU GUG GAA UAG UA[GEM] UUA [GEM]UG [GEM]AA U-3’(「C」の代わりに[GEM])
AS=5’-A UUG CAG UAA GUA CUA UUC CAC AGG-3’(AS鎖上にGEMなし)
【0044】
他の分子において、さらなるGEMをSSの末端に結合した:
SS=5’-CCU GUG GAA UAG UA[GEM] UUA [GEM]UG [GEM]AA U-[GEM][GEM]….[GEM}3’(「C」の代わりに[GEM]、GEMを3’末端に付加)
AS=5’-A UUG CAG UAA GUA CUA UUC CAC AGG-3’(AS鎖上にGEMなし)
【0045】
ゲムシタビンはシチジンアナログであるため、ゲムシタビン部分を有するRNAオリゴヌクレオチド配列におけるシチジン部分をゲムシタビン部分又はDNAオリゴヌクレオチドにおけるデオキシシチジン部分に置換するのに使用し得る。これらのGEMは、オリゴヌクレオチドの第2の鎖においても依然としてその対応物とハイブリダイズする、すなわち、GEMは、対向する鎖上の「G」(グアノシン/デオキシグアノシン)とハイブリダイズする。したがって、サイレンシングされた場合に、細胞増殖の阻害をもたらし、腫瘍細胞を死滅させ得る遺伝子を標的とするsiRNA配列は、siRNA又はmiRNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか、又はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のような一本鎖配列においても、シトシン部分の代わりにGEM部分を含むことによって増強される。後述するように、CHK1遺伝子をサイレンシングするsiRNAのためにCHK1_AZ配列中の2つのシトシン部分をGEMで置換することによって、siRNA単独の阻害活性が増強される(下記試験参照)。
SS=5’-CCU GUG GAA UAG UA[GEM] UUA [GEM]UG [GEM]AA U-3’(「C」の代わりに[GEM])
AS=5’-A UUG CAG UAA GUA CUA UUC CAC AGG-3’(AS鎖上にGEMなし)
【0046】
GEM付加はまた、センス鎖の3’末端上であっても、又は5’末端上であってもよい。それらはまた、AS鎖の同じ部分に付加されてもよい。付加は、独立して1つ、2つ、3つ、4つ又はそれより多くのGEM部分を含んでいてもよい。
【0047】
他のヌクレオシド抗がん剤を、ゲムシタビンの代わりにオリゴヌクレオチド骨格に結合してもよい。このようなアナログのいくつかの例としては、シタラビン(ara-C)、5-FU、5-デオキシ-5-フルオロウリジン、フルダラビン、カペシタビン、クラドリビン、トロキサシタビン又はクロファラビン、アザシチジン及び5-デオキシアザシチジンが挙げられる(上記Damaraju参照)。
【0048】
多数のsiRNA配列が、センス鎖又はアンチセンス鎖上のポリヌクレオシドアナログ鎖に結合し得る。このようなsiRNA配列の例は、ヌクレオシドアナログの阻害機構に対して逆効果を示すタンパク質をコードする遺伝子をサイレンシングするsiRNAである。例えば、siRNAは、ゲムシタビンの脱アミン化及び不活性化に重要な酵素(シチジンデアミナーゼ又は5’-ヌクレオチダーゼ)又は細胞からのヌクレオシドの放出の増強に重要な酵素-例えば、ヌクレオシドトランスポーター(上述のDamara及びその中に参照文献を参照のこと]をサイレンシングするために使用し得る。
【0049】
これらのコンストラクトにおいて(ヌクレオシドアナログ鎖に結合して)siRNA配列として使用し得る他の可能性のある標的としては、それぞれ、MDR1及びMRP1遺伝子によってコードされる多剤耐性(MDR)タンパク質、例えばP-糖タンパク質(P-gp)及び多剤耐性関連タンパク質-1(MRP1)が挙げられる。これらのタンパク質の発現によって、がん化学療法において使用される広範の薬物に対して抵抗性の表現型が付与される。これらのトランスポーターは、広義にはATP-結合カセットタンパク質(ABC)として分類され、タンパク質スーパーファミリーを構成する。siRNAを使用したMDR1及びMRP1遺伝子のサイレンシングが記載されている。Doenmez and Guenduez、Biomed Pharmacother.65(2):85~9(2011)を参照のこと。サイレンシングし得る遺伝子の他の例としては、メチルトランスフェラーゼ、有機アニオン及びカチオントランスポーター(OAT及びOCT)、オキシドレダクターゼフラボタンパク質及びヌクレオシドトランスポーター(NT)が挙げられ、これらは全て薬物輸送及び細胞内の代謝に関与しており、がん細胞に薬物抵抗性表現型を付与し得る。
【0050】
siRNAについての他の遺伝子標的は、それ自体がサイレンシングされた際にゲムシタビン又は他のヌクレオシドアナログの作用を増強することが検証されているものである。このような遺伝子標的としては、CHK1、RAD17に加えて、ATR及びWEE1が挙げられる。他の標的はサイレンシングされてヌクレオシド活性を増強することが示されているため、これらはまた、適当なヌクレオシドアナログに結合した、それらに対するsiRNAを有していてもよい。
【0051】
Azorsa配列の使用において、SS及びAS鎖上にそれぞれ置換され得る2つのCが存在した。そのため、Cの代わりに2つのGemを取り込むことによってSSが修飾されたコンストラクトを作製し、AS鎖を同様に作製した。次いで2つのGEMを含むSSを非修飾のAS鎖とアニーリングし、GEM修飾AS鎖を非修飾のSSとアニーリングした。さらに、GEM修飾SSをGEM修飾AS鎖とアニーリングした。これらのコンストラクトを全て鎖がいずれも修飾されていないsiRNA及びゲムシタビン単独の用量応答と比較した。
【0052】
Azorsa他(CHK1_AZ)によって特定されたsiRNA配列は、GEM部分を含む分子を調製するのに使用し得るsiRNAの一例である。オリゴヌクレオチド合成剤を使用して、以下のsiRNA鎖を、配列中に存在する天然のシチジン(「C」)基の代わりに含まれるGEM残基を用いて、及び用いずに作製した。
【0053】
C1D-2A(配列 AUUGAUACAGAUCUCUUUCUU)は、シチジン残基の代わりに2つのGEM残基を含み、3’末端にdTdTを有するCHK1 siRNAアンチセンス鎖を指し、これはGEMを全く含まないセンス鎖(SS)(配列 AAGAAAGAGAUCUGUAUCAAU)とアニーリングする。
【0054】
C1D-2Sは、シチジンの代わりに2つのGEM残基を含み、3’末端にdTdTを有するCHK1 siRNAセンス鎖を指し、これはGEMを全く含まないアンチセンス鎖(AS)とアニーリングする。
【0055】
C1D-4は、2つのGEM残基を含むCHK1 siRNAアンチセンス鎖を指し、これは、同様に2つのGEMを含むセンス鎖(SS)とアニーリングしており、すなわちsiRNA当たり4つのgemを含む。両方の鎖が、上述のように3’末端にdTdTを有する。
【0056】
このsiRNAのアナログが2つ、4つ又は6つのGEMがSSの3’末端に付加されて合成され、また、配列内のCがその位置にGEMを挿入することによって修飾され得る、いくつかの異なるsiRNAを設計した。GEMは、GEM含有量の増加が有効性又は力価を改善するかどうかを調査するために、個別に、又は組合せでセンス鎖及びアンチセンス鎖内のCの代わりに挿入された。非修飾のCHK1 siRNA、C1D-2A、C1D-2S及びC1D-4は、CHK1+Gemに感受性を示すことが示されている膵臓がん細胞株BxPC3(Azorsa、上記)にトランスフェクトされた。ゲムシタビン単独の用量応答を、非サイレンシングsiRNAのトランスフェクションと共に(対照として)行った。
【0057】
SSの3’末端にさらにGEMを付加すること(通常のdTdT末端基の前)は、2つのGEMを付加することを上回るさらなる効果を有するものではなく、4つ又は6つを付加した場合、力価及び有効性は上昇しないことが観察された。理論に縛られるものではないが、細胞内に存在するヌクレアーゼは、GEM部分間のポリGEM配列を切断することができず、その前の非修飾のヌクレオチドからGEMを切断することができるのみであり、配列中のGEMに関わらずポリGEM配列内の1つのGEMのみが放出されることが推測された。結果として、SSの3’末端に4又は6つのGEMを有するコンストラクトは、この部位における2つのGEMと比較して、有する力価が同等であるか、又はわずかに低かった。
【0058】
SSにCの代わりにGEMを挿入することによって、同じ時間インキュベートされた非修飾のsiRNA(IC50=3nM;図5、右側パネル))と比較して、IC50及び有効性が改善された産物が得られた(IC50=0.38nM(図6))。C残基の代わりにアンチセンス鎖にGEMを付加することによって、siRNAのRISC複合体へのローディング又は、それに続く同族mRNAの認識及び、その後のDicerによる切断を干渉する能力が得られた。しかし、選択した特定のCHK1 siRNA配列を用いることによって、AS鎖へのGEMの付加は、力価及び有効性を改善したが(IC50 1.8nM)、これはSSについて観察される程度ではないことが見出された。さらに、2つの鎖を組み合わせること(これにより合計4つのGEMを含む)によって、主要な寄与が両方の鎖からのGEMの放出である場合に期待し得るような、力価のさらなる改善(1.98nM)はもたらされなかった。このIC50は、AS鎖単独における2つのGEMと同等であった。siRNAのRISC複合体へのローディングの間に、鎖は分離し、センス鎖が細胞質へと放出されそこで分解されることが知られている。AS鎖はしばらくRISCに維持され、そのため、混合物にGEMを付与することがない-したがって、全てのGEMはSSに由来するものである。
【0059】
これは種々のコンストラクトによって誘導されるサイレンシングのQPCR解析によっても確認された。図4は、SS、AS鎖又は両方の鎖におけるGEMの数に関わらず、siRNAによって同等の遺伝子サイレンシングが得られたことを示している。
【0060】
siRNAが細胞内でプロセシングされる際、アンチセンス鎖はセンス鎖からほどかれ、RISC複合体にローディングされ、ここで同族mRNA配列について細胞を監視する。アンチセンス鎖によって特定及び結合されると、mRNAはDICER酵素によって切断され、アンチセンス鎖はRISCにローディングされ、センス鎖は細胞質中に放出され、ここで分解される。以前の出版物(Ma他、2019)において、10のゲムシタビンの反復配列からなるポリゲムシタビンナノゲルを合成し、これらの構造は自己アニーリングして、膵臓腫瘍細胞において有効性の改善を示すナノゲルを形成した。センス鎖の末端上のGEMの反復配列の付加は、siRNAが細胞内に送達すると同時に、ゲムシタビンの送達において同等の改善をもたらすことが予期された。しかしながら、非修飾のアンチセンス鎖とアニーリングする前に、センス鎖の[3’]末端に2、4又は6つのいずれかのGemを付加することは、予期される力価の上昇をもたらさないことが見出された。むしろ、2、4及び6つのGEM配列は、1つのGEMが各配列から放出されたのと同じ力価しか示さない。これは、エキソ又はエンドヌクレアーゼが、ポリGEM配列を切断できないことの結果でも、又は放出及びそれに続くリン酸化によるgemの活性化が非常に遅いことの結果でもあり得る。これらの構造のそれぞれの細胞生存率試験における有効性の結果は、インキュベーション時間を増加させることによって何の改善も示さなかった(72時間から96時間)。
【0061】
GEMを用いたsiRNA合成
CHK-Az siRNAは、各鎖の3’末端に2塩基(dTdT)のオーバーハングを含む19-mer siRNAであった。センス鎖内にゲムシタビン部分を含むことによって修飾されている場合、これらをセンス鎖の末端とdTdT末端基の前の間に挿入した。dTdT末端は、ヌクレアーゼ分解に対してsiRNAを安定させるのを補助することができ、これは、次いで、切断され、サイレンシングされる同族mRNA配列についてAS鎖を監視する間にRISC複合体中でASから放出される際のセンス鎖からのGemの放出の速度に影響し得る。
【0062】
GEMを有する25merと比較してGEMを有するCHK1_AZによる改善の根拠
我々が設計した25mer siRNAは平滑末端のsiRNAであり、一方Azorsaが使用したsiRNA 配列は、3’末端に2塩基(dTdT)オーバーハングを有する19mer siRNAであった。2つのGEM部分がsiRNA SSの最後のヌクレオチドとdTdTオーバーハングの間に付加される場合、この配列が、BxPC3細胞よりもMiaPaca細胞に対してはるかに高い有効性を示す様子が見られた。配列の末端上にdTdTを含むことは、SSがAS鎖からほどかれ、細胞質中に放出される際の、このコンストラクトにおけるSSからのGEMの放出速度を低下させ得る。これによって、GEMがSSから放出される前に、AS配列が遺伝子のサイレンシングを誘導することが可能になる可能性があり、これによって、BxPC3細胞と比較して、MiaPaca細胞におけるこの組合せの有効性が増強され得る。
【0063】
膵臓がん治療についての改善された選択肢
示されたデータから、我々は、ゲムシタビンを含むことによって膵臓がん細胞におけるゲムシタビン作用の有効性の劇的な改善を示し得ると考えられる。複数のGEMをsiRNAのセンス鎖に取り込むことによって、GEMを同じ細胞に送達することができ、ここでsiRNAはその効果を有する。以前の研究(Azorsa、2009)において、CHK1のサイレンシングがゲムシタビンの作用を増強し得ることが示された。したがって、CHK1をサイレンシングすることができるsiRNA配列にGEMを付加することによって、相互作用におけるいくらかの相加性/相乗作用が予期される。ヒスチジンリジンポリペプチドナノ粒子(PNP)を使用することによって、in vitro及びin vivoにおいて多くの異なる種類の腫瘍にsiRNAを送達する能力が示された。そのため、我々は、GEM CHK1 siRNAの送達を、がんを処置するための新規治療様式として研究している。さらに、ポリペプチドナノ粒子は、1を超える標的に対するsiRNAを同時に同じ細胞に送達することができるため、第1のsiRNAと協働し得る第2の遺伝子標的もサイレンシングし得る。出版物(Paul他、2015)によって、膵臓がんにおけるCHK1及びRAD17の阻害の相乗作用が示されたため、GEM-CHK1 siRNAと組み合わせてRAD17のサイレンシングから利益を得ることができることは実現可能である。GEM-Chk1 siRNAによって送達されるゲムシタビンの量が、in vitro及び/又はin vivoにおいて頑強な効果をもたらすには不十分である場合、RAD17 SSをさらに修飾して「C」の代わりにこの配列にGemを導入してもよい。
【0064】
ゲムシタビン選択肢
ゲムシタビン活性は、リボヌクレオチドレダクターゼ及びdCMPデアミナーゼの阻害により増強し得る。
【0065】
ゲムシタビンは、主に白金アナログと組み合わされて幅広く使用されており、他の組合せは、使用されている頻度が低いか、又は現在調査されているところである。ゲムシタビンの標準的な投与は、1000mg/m2における30分間、週に1回の点滴であるが、選択肢、例えばプロドラッグ(例えばCO-1.01、輸送欠損を回避することができる)、固定用量速度の点滴(10mg/m2/分)及び24時間の肝動脈点滴による投与の局所経路、膀胱内滴下又は腹腔内投与による進行型卵巣がんの処置等が調査されている。卵巣がんにおけるゲムシタビンの組合せについての他の選択肢は、リボヌクレオチドレダクターゼの阻害をトリアピン又はヒドロキシウレアを用いて上昇させることからなる。ゲムシタビンのシグナル伝達に対する作用はまた、シグナル伝達経路の組合せについての合理的な概念を提供する。
【0066】
結論
アミダイトとしてのゲムシタビンは、オリゴヌクレオチドの合成の間に含まれていてもよく、ヌクレオチド配列の中に取り込まれる。我々は、GEMをsiRNAに付加することによって、siRNA及びゲムシタビンを同じ細胞に共送達することを可能にし得ることを示した。腫瘍細胞の生存率を低下させる上でのゲムシタビンの効果を改善することが予期される分子標的に対するsiRNAを選択することによって、いずれかの剤単独では見られない有効性の明白な改善が見られる。
【0067】
例としてCHK1及びRAD17を標的とするsiRNAを使用することを選択しながら、ゲムシタビンを同様の結果を有する他の任意のオリゴヌクレオチドに取り込み得る。ゲムシタビン活性を増強するsiRNAの例もまた、cMycを適当な遺伝子標的として記載している(Zhang他、Cancer Metastasis Rev 26:85~110(2013))。したがって、cMycに対するsiRNAはまた、GEMを直接取り込み、がん、例えばNSCLCの処置に使用し得る。実際、オリゴヌクレオチドは、サイレンシング効果を全く有していなくてもよく、単に疾患に対する有効性のためにゲムシタビンを送達するために使用し得る。
【0068】
オリゴヌクレオチドsiRNA構造内の塩基に対する化学修飾(例えば、2’-OMe、2’-フルオロ、ホスホロチオエート修飾等)は、in vivoで投与された際のヌクレアーゼ攻撃に対してオリゴヌクレオチドを安定化し得ることは周知である。このような化学修飾されたオリゴが直接標的化リガンドに連結され、これにより、がん細胞上の受容体への結合を介して直接的な送達が可能になることは実現可能なことである。
【0069】
さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞内の選択遺伝子の発現を変更するために使用されており、これらの一本鎖のオリゴはまた、gemによって修飾されていてもよい。これらの(C塩基における)修飾又は配列の末端への付加は、特定の標的へのハイブリダイゼーション有効性の変更並びにゲムシタビンの共送達を補助するために使用し得る。
【0070】
同様に、miRNA(模倣物又は阻害剤)は、抗がん効果を有することが記載されており、これらは、同じ細胞への共送達(do-delivery)のためにその配列にゲムシタビンを挿入することによって修飾され得る。特に、ゲムシタビンの作用を増強し得るmiRNAは目的のものであろう。
【0071】
最終的に、アプタマーは、選択標的に高親和性で結合するように設計及び作製されたRNA又はDNAオリゴヌクレオチドである。いくつかの例において、これらは、細胞上の受容体又は具体的には、がん細胞上で上方制御されている受容体であり得る。Gemヌクレオチドは、これらの配列に(Cの代わりに)付加又は挿入されて、がん細胞上の標的受容体への高親和性の結合を可能にしてよく、次いで細胞へのオリゴの取り込みが可能になり、ここで、ゲムシタビンが放出され、治療効果が発揮される。
【0072】
ゲムシタビン修飾オリゴヌクレオチド(DNA又はRNA)は、複数のがん種においてがんの処置の選択肢を改善する上で有用であり得る。
【0073】
ゲムシタビンはまた、放射線増感剤(腫瘍の照射処置の有効性を改善する)として作用することができる。したがって、ゲムシタビンが上述のオリゴの修飾を介して特定のがん細胞へ送達されることは実現可能なことであろう。ゲムシタビンが一度送達されると、腫瘍は照射に暴露され、これは次いで腫瘍細胞を死滅させる。時として、この照射暴露がさらに工程中に放出された腫瘍特異的抗原に対する免疫反応をもたらし得る。
【0074】
そのため、ゲムシタビン又は他の非ヌクレオシドアナログを含むオリゴヌクレオチドは、がん及び、非ヌクレオシド(又はヌクレオチド)アナログが有効であり得る他の疾患についての実行可能な処置様式であり得る。非ヌクレオシドアナログ又はヌクレオチドアナログの使用の他の例は、ウイルス性疾患の処置における使用である。例えば、ウイルス性疾患において、非ヌクレオシド(又はヌクレオチド)アナログを含むオリゴヌクレオチドを共投与することが可能であり得る。これらは、ヌクレオシド及びヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、例えばジドブジン、ジダノシン、ザルシタビン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン及びテノホビル又は非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、例えばネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ及びエトラビリンを含み得る。
【実施例
【0075】
実施例1
方法
BxPC3細胞を、2つの384ウェルプレートに500細胞/ウェルで播種した。翌日に、細胞を種々の濃度のCID2A、CID2S、CID4 siRNA(Lipofectamine RNAiMAXを使用して製剤化)又はゲムシタビン(0.1~1000nM)によって72時間処置した。37℃で72時間インキュベーションした後、生存可能細胞の数をCTG2試薬を使用して評価した。未処置の細胞を100%として設定した。
【0076】
siRNA設計
Azorsa chk1配列に対するsiRNAは、論文より取った(Azorsa、上記)。これは、各鎖の3’末端に2塩基のdTdTオーバーハングを有する19merである。さらなるsiRNAを使用してRAD17及びCHK1をサイレンシングする能力について試験するために、25merの平滑末端siRNA配列を、マウスとヒトの間の遺伝子に同一性を有するように設計した。
【0077】
標的サイレンシングのsiRNA検証(qRTPCR)
データは、RAD17又はCHK1のいずれかに対して設計したいくつかのsiRNAの、それぞれの標的遺伝子に対するサイレンシング能に対する相対的な効果を示す。これらの試験は、下記のsiRNAを使用して行った。遺伝子標的サイレンシングの程度は、(50nM)においてsiRNAをトランスフェクトされた細胞において測定し、遺伝子サイレンシングの程度をqRTPCR(βアクチンをデータの基準化のための対照ハウスキーピング遺伝子として使用)を使用して測定した。
【0078】
結果
図8は、膵臓がん細胞株BxPC3が、送達剤としてLipofectamineを使用して投与された非サイレンシングsiRNA(NS/lipo)に対して応答を示さないことを示している。しかし、同じ試薬を使用してCHK1 siRNを投与した場合(Chk_Az/Lipo)、72時間暴露後に用量を上昇させるにつれて約50%までの細胞生存率の低下が観察された。siRNAオリゴヌクレオチドを、2つのシトシンをCHK_Az siRNA配列(2S/lipo)のセンス鎖中のGEMによって置換するか、又は、2つのシトシンをアンチセンス鎖(2A/lipo)中のGEMによって置換して製造した。GEMを含有するセンス鎖を非標識アンチセンス鎖とアニーリングして2Sを形成するか、又はGEMを含有するアンチセンス鎖を非標識センス鎖とアニーリングして2Aを形成するか、又は2つのGEMを含むセンス鎖を2つのGEMを含むアンチセンス鎖とアニーリングして化合物4を形成した。選択した配列において、サイレンシング活性は、2S生成物のCHK1遺伝子についてのみ見られた。ゲムシタビンを表す活性は、2A生成物においてのみ観察された。さらに、GEM-SSがGEM-ASとアニーリングして化合物4を得る場合、siRNA配列についてサイレンシング効果は見られなかったが、siRNA当たり4つのGEMが存在することによって、用量応答の左向きのシフトが観察された。図8のグラフは、グラフの下の表に表されるデータを示す。表は、表の最上列に示す濃度(nM)におけるそれぞれの処置下で存在する生存可能細胞の%を表す。
【0079】
この試験からの結果により、GEMは、siRNAのSS内に付加し得ること及びsiRNAサイレンシングの腫瘍細胞、具体的にはこの膵臓腫瘍株BxPC3を死滅させる上での活性を増強し得ることが確認される。図8を参照のこと。
【0080】
非サイレンシングsiRNA(NS)は、72時間のインキュベーション時間の間、細胞生存率に全く効果を示さなかった。ゲムシタビン暴露(Lipofectamine-gemなし)は、IC50 約7nMの、用量依存的な細胞生存率の低下を示した。非修飾のCHK1 siRNA(Chk-Az)は、0.1nMまでの用量依存的な効果を示したが、その後、効果は細胞生存率の最大阻害50%でプラトーに達した。
【0081】
CHK1 siRNAの有効性に対する内部GEMの効果
2つのGEMがAS鎖に含まれる場合(2A)、用量応答はGEM単独の用量応答曲線に非常に類似していた。2つのGEMがSSに含まれる場合(2S)、用量応答曲線の最初の部分は、CHK1 siRNA(0~0.1nM)によってもたらされるサイレンシングにより類似していた。しかしながら、50%細胞生存率でプラトーに達するCHK1 siRNA効果と異なり、1nMを超える濃度の2Sは、細胞生存率に対する阻害効果をもたらし続け、50nMにおける14%の細胞生存率で最大に達した。この効果は、GEM単独で見られる応答(同じ濃度(50nM)において26%の細胞生存率で最大に達する)により類似していた。それぞれ2つのGEMを含む2つの鎖をアニーリングすることによって、siRNA分子当たり4つのGEMが得られた(C1D-4)。2Aと比較して、この物質について用量応答の左向きのシフトが見られた(力価を上昇させるGEMの数が多いことを反映している)。しかしながら、CHK1 siRNA単独と比較すると、細胞生存率の最初の低下は見られなかったが、曲線はGEM単独のものと平行であり、これは、効果がsiRNA当たり2倍の数のGEMを導入することによってもたされるものに過ぎないことを示している。
【0082】
スクリーニングによって膵臓腫瘍細胞阻害に対する力価を有するsiRNA配列を特定する
図9は、CHK1に対して設計された8つの多数のsiRNA配列のトランスフェクション時の膵臓がん細胞株生存率の感受性を示す。siRNA配列の培養細胞へのトランスフェクションの72時間後の生存可能細胞のパーセント比率を示す(上部パネル-BxPC3細胞、下部パネル-CFPAC細胞)。100%生存率は、非サイレンシング対照siRNA(NS)の存在下における生存率として定義する。CHK1_AZ(AZ)を、コンパレータとして試験した。CD=Cell Death siRNA-細胞にトランスフェクトされた際に多くの細胞種の最大の死滅をもたらすことが知られている。
【0083】
Chk4配列は、BxPC3細胞において最も強い効果をもたらした。これはまた、他の膵臓がん細胞-CFPACにトランスフェクトされた場合に細胞生存率に対して非常に明白な影響を有していた。
【0084】
試験した配列は次の通りである:
1. GGGAGAAGGTGCCTATGGAGAAGTT
2. GGAGAAGTTCAACTTGCTGTGAATA
3. CCAGTTGATGTTTGGTCCTGTGGAA
4. CCTGTGGAATAGTACTTACTGCAAT
5. GGAATAACTCACAGGGATA
6. GGGATATTAAACCAGAAAA
7. GCAGAACCAGTTGATGTTT
8. GGAATAGTACTTACTGCAA
【0085】
Chk4は、BxPC3細胞においてCHK-AZ(Azorsa論文からのCHK1 siRNA配列)よりも高い力価を示した。さらに、この配列は3つのシトシンを有し、ここでGEMはCHK1_AZ上の2つと比較して置換されてよい。これにより、分子当たりで、より多数のGEMを送達することによって、CHK1遺伝子のサイレンシングにおいてより多い力価を有する可能性がもたらされ、修飾CHK1_AZと比較してこの活性がさらに増強され、力価及び有効性が改善される。
【0086】
これらのデータは以下を示す:
1.CHK1 siRNAのSSに2つのGEMを配置することによって、siRNA単独と比較して有効性が改善される。
2.AS鎖上の2つのGEMを配置-siRNAサイレンシング効果に対する効果は見られないが、GEMの細胞生存率に対する効果は見られる
3.AS及びSSのアニーリング-2つのGEMをそれぞれ含むことによって、分子当たり4つのGEMが得られる。しかし、#2と同様に、AS鎖上の2つのGEMは、AS鎖が遺伝子サイレンシング効果をもたらすことを防止し、siRNA当たり4つのGEMを送達しているために、力価の改善が見られるのみである。
4.各鎖の3’末端におけるdTdT部分の付加は、GEMの放出を遅延化してもよく、これにより、遺伝子サイレンシング効果から離れた効果を区別することが可能になる
5.AS鎖内のGEMは、AS鎖がRISC複合体に結合し、標的化された遺伝子のサイレンシングを誘導する能力を妨害する場合、siRNA有効性を阻害し得る。しかし、AS鎖の3’末端上のGEMは、AS鎖によって誘導されるサイレンシングによってさらなる活性を示すことが示された。1つ又は2つのGEMを、このさらなる活性のために付加してもよい。さらなるGEMも付加し得る。
6.SS上のGEMは、細胞生存率に対する阻害効果を付加されたsiRNA介在性サイレンシングを示すことによって有効性を改善する。
【0087】
2xGEMを有するこのSS鎖を2xGEMを有するAS鎖と組み合わせることによって、4つのGEMによってよりよい有効性がもたらされるが、siRNAによる標的化された遺伝子のサイレンシングは見られない。
【0088】
改善されたCHK1 siRNA(CHK_DE4)は、以前の試験におけるAzorsa配列よりも優れたサイレンシングを示した。
【0089】
試験した配列は以下の通りである:(これらはセンス鎖配列を表す)
【0090】
したがって、SS=
SS=5’-CCU GUG GAA UAG UA[GEM] UUA [GEM]UG [GEM]AA U-3’(「C」の代わりに[GEM])
AS=5’-A UUG CAG UAA GUA CUA UUC CAC AGG-3’(AS鎖上のGEMなし)
【0091】
ASを全て修飾された塩基として作製する。SSは全て修飾されている(2’-O-Me)として作製し、比較のために全てを非修飾として作製する。
【0092】
目的のさらなる配列:
CHK1A:標的配列:CHK1-A:AAGAAAGAGAUCUGUAUCAAU;「C」の代わりにGEMがある2つの箇所
CHK1B:標的配列:Chk1-B:UUGGAAUAACUCCACGGGAUA。この配列内にGEMを配置する場所が4箇所ある。
【0093】
我々は、CHK1-B_AZ WITH 4 GEM SSが、CHK1Aにおいて2よりも優れた活性を示すことを予期している。
【0094】
ゲムシタビンは、多数のがん、例えば、膀胱、膵臓、卵巣、乳がん及び非小細胞肺がんを処置するために使用される。これらの他のがん種は、本明細書に記載する方法を使用して、活性を増強するためのさらなるsiRNA分子を任意に使用して処置し得る。
【0095】
実施例2
膵臓がんBxPC3細胞を1000細胞/mlで播種し、384ウェルプレート中で単層として増殖させた。細胞にLipofectamine(ThermoFisher)を使用してCHK1又はRad17に対して示されるsiRNAを用いてトランスフェクトするか、又はX軸上に示す濃度のゲムシタビンで処置した。5%CO、37℃で96時間インキュベーションした後に、細胞生存率をCell Titer Glo(Perkin Elmer)を使用して、Ultrasensitive発光検出オプティクスを備えたPerkin Elmer Envisionプレートリーダーにおいて試薬によってもたらされる発光シグナルをモニターすることによって決定した。図面から、ゲムシタビン(GEM)が、約6nMのIC50及び、>80%の細胞死滅の細胞最大有効性で、用量依存的な細胞生存率の阻害をもたらすことが見られる。RAD17に対する25merの平滑末端siRNAは、細胞生存率の60%のみの低下及び約5nMのIC50の最大有効性の用量依存的な細胞生存率の阻害をもたらした。以前に公開された上記Azorsa由来のCHK1に対する19mer siRNA配列を使用することによって、Rad17 siRNAと同等の細胞生存率の最大有効性が観察された。CHK1に対する平滑末端の25mer siRNAは、100nMにおける細胞生存率の約90%阻害を有し、Azorsa CHK1 siRNA配列よりも高い有効性を示した。後者のsiRNAについてのIC50は、Azorsa配列(約0.3nM)についてのものと同等であった。図11に示す結果は、CHK1及びRAD17単独に対するsiRNAが膵臓がん細胞生存率を阻害し得ることを示す。
【0096】
実施例3
示されるsiRNA配列のセンス鎖のそれぞれについて3’末端に付加されたゲムシタビンヌクレオチドアミダイトを使用してsiRNAを合成した。siRNAを細胞にトランスフェクトし、図1に詳述するようにインキュベートした。全ての配列の最大有効性はここで、10nMを超える濃度において細胞生存率の>95%阻害まで改善された。非常に低い濃度(0.1nM)において、ゲムシタビン修飾RAD17 siRNAは、それ自体は細胞生存率に対して何の影響もないが、ゲムシタビン修飾CHK1 siRNAはこの同じ濃度において、細胞生存率の31%阻害(25mer)又は56%阻害(19mer)をもたらした。ゲムシタビンヌクレオチドを、siRNA配列内のシチジンヌクレオチドを置換し得るかを見るために試験した。AZ CHk1配列は、GEMによって置換された2つの「C」基を有し、このsiRNA(CHK1-AZ-2S)が、3’末端に2つのGEMを有するsiRNA(CHK-AZ-Poly2)とほとんど同一の挙動を示すことが見られる。図12a~12dは、力価及び有効性に対する各siRNAのセンス鎖の3’末端における2つのゲムシタビンヌクレオチド付加の効果を示す。
【0097】
実施例4
1000細胞/ウェルで384ウェルプレートに播種したBxPC3細胞は、siRNA コンストラクトによってトランスフェクトされるか、又は図中に示す濃度のゲムシタビンに暴露された。試験した試料は、ゲムシタビン単独(GEM)、CHK1に対する非修飾の19mer siRNA(CHK-AZ)及び、センス鎖の3’末端に同じアンチセンス鎖へのアニーリング前に2つ(Poly-2)、4つ(Poly-4)又は6つ(Poly-6)のゲムシタビンヌクレオチドが付加されているsiRNAの同じ配列である。種々の剤に120時間暴露した後、細胞生存率をCell Titer Glo(PE)を添加することによって決定し、プレートを10~20分間振盪した後、細胞生存率に相関する発光シグナルをPE Envisionプレートリーダーにおいて決定した。図13は、センス鎖の3’末端にさらなるGEMを付加することの有効性及び力価に対する効果を示す。
【0098】
膵臓がん細胞生存率に対する有効性のこのような改善が、2つのGEMヌクレオチドをsiRNAのSSに付加することによって得られたため、さらにGEMを付加することがsiRNAの有効性及び/又は力価をさらに改善すると推論された。この目的のために、非修飾の19mer siRNA(CHK-AZ)を、2つのGemがSSの3’末端に付加された(Poly-2)、4つのGEMが付加された(Poly-4)又は6つ(Poly-6)のGEMが付加された同じ配列と比較した。これらの配列を、ゲムシタビン単独(GEM)と比較した。試験は、図1と同様にBxPC3細胞にsiRNAをトランスフェクションすることによって行ったが、細胞生存率の測定前の暴露時間は120時間であった。インキュベーション時間がより長いため、siRNAの用量応答は、はるかに低い濃度において調査した。これにより、真のIC50値を確認することが可能になった。GEMはそれ自体でこの細胞株における完全用量応答をもたらし、このインキュベーション時間において、50nMを超える濃度において細胞生存率の100%の低下及び3nMのIC50がもたらされた。非修飾の19mer siRNA(CHK-AZ)からは、0.16nMのIC50が得られた。しかし、有効性はこの延長した暴露時間においてさえも細胞生存率の約70%阻害で最大に達した。2つ、4つ又は6つのGemのsiRNAの3’末端への付加は、全て生成物の最大有効性を、細胞生存率が10nMを超える濃度において10%未満になるように改善した。しかし、より多くのGEMがsiRNAの力価を改善するという予測は満たされず、2つのGEMを有する配列は、4つのGem又は6つのGemのコンストラクトのいずれよりも強力であった。2つのGEMのコンストラクトは、ゲムシタビン単独(3nM)と比較して、115倍のIC50(0.026nM)の改善を示した。これらのデータから、siRNAのSSの3’末端における2を超えるGEMは、細胞生存率アッセイにおいてコンストラクトの力価又は有効性に対してさらなる効果を有さなかったことが示される。
【0099】
実施例4
BxPC3細胞(12ウェルプレートのウェル当たり2.5x10細胞)はChk1/Gem siRNA(50nM)の異なるバリアントでトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後、Chk1 RNAの相対的なレベルをSybr Green RT-PCRによって決定した。B-アクチンの発現レベルを基準化因子として使用した。全ての試料におけるmRNAレベルを、ΔΔCt法を用いて、未処置細胞に対して算出した。
2AGem/Chk-CHK1 siRNAのアンチセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換
2AGem/NS-非サイレンシングsiRNAのアンチセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換
2SGem/Chk-CHK1 siRNAのセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換
2SGem/NS-非サイレンシングsiRNAのセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換
4Gem/CHK-CHK1 siRNA CHK1 siRNAのセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換及びCHK1 siRNAのアンチセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換
4Gem/NS-非サイレンシングsiRNAのセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換及び非サイレンシングsiRNAのアンチセンス鎖上のCを2つのゲムシタビンが置換
Blnk-未処置試料
Chk_Az(a)-非修飾のCHK1 siRNA
NS-非サイレンシングsiRNA単独
【0100】
図14は、センス/アンチセンス鎖内にゲムシタビンを挿入する効果及び遺伝子サイレンシングに対する効果を示す(qPCR結果)。
【0101】
実施例5
BxPC3細胞においてGEM修飾siRNAを用いて観察された結果は、これらの剤に対する暴露時間に依存していた。図15は、siRNA及びsiRNA-GEMコンストラクトの細胞生存率についての有効性の時間依存性を示す。化合物に暴露された細胞の生存率を、48時間(左パネル)、72時間(中央パネル)又は120時間(右パネル)における種々の濃度において試験した。各時点において、非標識siRNA(CHK-Az)は、最高濃度(100nM)においてGEM修飾siRNA(3’末端に含まれる2つ、4つ又は6つのゲムシタビン部分を有するPoly-2、Poly-4又はPoly-6)よりも弱い効果を示すことが見られる。2つのGem(Poly-2)を含むsiRNAを、4つ(Poly-4)又は6つのGem(Poly-6)と比較して、力価又は有効性には大きな差異がなかったが、ポリGEMコンストラクトのいずれかによる細胞死滅の程度は暴露時間の増加に伴って上昇した(48時間における約40%から、72時間における約70%及び120時間における100%)。このデータから、細胞に入るsiRNA当たり1つ又は2つのみのゲムシタビン分子が放出されることが示される。さらに、時間依存性は、GEM自体の影響を増強するために頑強な遺伝子サイレンシングを得るためにかかる時間を反映していても、又は放出されたGEMを活性化するために必要な工程も時間を要し得ることを示していてもよい。これは、ゲムシタビン部分の放出及び、その後ヌクレアーゼ安定GEMヌクレオシドを延長配列に取り込むことによって複製フォークをブロックし得る活性部分をもたらすために、必要なヌクレオチドの三重リン酸化に必要な時間である。これはまた、特定の細胞種についての細胞周期及び分裂(複製)時間に依存していてもよく、BxPC3については、これは約48~60時間であるため、120時間においては、72時間における1回と比較して、2~3回の分裂周期を通過している。
【0102】
実施例6
我々はさらに、GEMヌクレオチドをsiRNAのアンチセンス(AS)鎖のsiRNAにおけるシチジンヌクレオチドの置換に使用し得るかを決定した。これを調査するために、我々は再びAzorsa他由来のCHK1に対する19mer siRNA配列を使用した。図16において:
2A-CHK1は、CHK1をサイレンシングするsiRNAのAS鎖において2つのGEMがCを置換していることを指す
2A/NSは、非サイレンシング(NS)siRNA配列において2つのGEMがCを置換していることを指す
2S/Chk1は、CHK1に対するsiRNAのセンス鎖において2つのGEMがCを置換していることを指す。
2S/NSは、非サイレンシング(NS)siRNAのセンス鎖において2つのGEMがCを置換していることを指す。
CID4/Chk1は、SS及びAS鎖の両方がそれぞれ2つのGemを含むCHK1 siRNAを指し、4つのGEMが存在する単一のsiRNAが作製される。
CID4/NSは、SS及びAS鎖の両方がそれぞれ2つのGemを含む非サイレンシング(NS)siRNAを指し、アニーリング時に4つのGEMが存在する単一のsiRNAが作製される。
【0103】
これらのコンストラクトはそれぞれウェル当たり1000細胞の密度の384ウェルプレート内のBxPC3細胞にトランスフェクトされた。細胞を次いで、5%CO及び95%湿度、37℃におけるトランスフェクション後、Cell Titer Glo(PE)を以前に記載されているように使用して細胞生存率を測定する前に120時間インキュベートした。
【0104】
この試験によって、CHK1を標的とするsiRNA(2S/Chk1)のSSに2つのGEMを取り込むことで、この遺伝子をサイレンシングする効果と細胞内でゲムシタビンを放出する効果の組合せ効果が得られ、完全な有効性をも維持しながら、IC50(0.35nM)のシフトがもたらされることが示された。これは、2つのGEMを非サイレンシング(NS)siRNAのSSへの取り込みと比較し、ここで、GEMの放出との相乗作用を見るためにCHK1をサイレンシングする利点は得られず、GEM放出の見かけ上のIC50(5.4nM)に対する効果のみが見られる。したがって、Chk1 siRNAに2つのGEMを付加するだけで、NS siRNA SSに2つのGEMを有するよりも約15倍の改善が見られる。
【0105】
CHK1及びNS siRNAのAS鎖に2つのGEMを付加することによって、CHK1-GEM IC50(2A-Chk1)は、NS siRNA(2A/Ns)の6.68nMと比較して1.975nMに低下したことが分かる。このことから、CHK1のAS配列にGEMを有することは、NS-GEMと比較してある程度の有効性が得られるが、効果の差はわずか3倍であり、CHK1のAS鎖にGEMを挿入するとSSの2つのGEMと比較して6倍程度の力価の低下がもたらされることが示された。これは、AS鎖中のGEMがAS鎖のサイレンシング能力に干渉しており、そのために、CHK1遺伝子をサイレンシングすることによって誘導される増強が得られないことが示される。CHK1 AS及びSS鎖の両方にそれぞれ2つのGEMが組み込まれたsiRNA鎖の組合せについてのIC50(CID4/Chk1;1.8nM)は、AS鎖にのみ2つのGEMを取り込んだsiRNAのIC50(2A-Chk1;1.98nM)と非常に近い。これは、4つのGEMを付加することによる利点がほとんどないことを示しており、SSに2つのGEMを有する場合と同等の力価が見られる。これは、AS鎖がRISC複合体の中で遺伝子サイレンシングのために保持される(しかし、この鎖上のGemは良好なサイレンシングを妨げる)一方、センス鎖上の2つのGEM(これはRISCに組み込まれる際にAS鎖からほどかれ、その後、細胞質内のヌクレアーゼによって切断される)は放出され、観察される最大活性に寄与するという予測と一致している。2S/NS IC50(5.4nM)はCID4/NS IC50(5.19nM)と非常に類似しているため、これはNS siRNAについてさえも一致している。
【0106】
2S/NS、2A/NS、CID4/NSの曲線は全て重なっており、CHK1がサイレンシングされた場合よりもはるかに低いIC50を有している。前者のsiRNAは遺伝子サイレンシングを行わないため、その効果は全て、切断時にSS上に存在する2つのGEMの放出のみによるものであり、ゲムシタビン単独の用量反応と同様のIC50値及び同等の効果をもたらす(図13及び図14を参照)。図16は、AS鎖中のCの代わりにGEMを含むことの影響を示す。
【0107】
実施例7:
表1:ポリGEM Chk1-Az siRNA配列の構造
下記の表は、Azorsa 19mer siRNAと共に使用したポリGEMコンストラクトのセンス鎖の配列を示す。2つ、4つ、又は6つのGemヌクレオチドを、dTdT2塩基オーバーハング前のsiRNAの3’末端のSSに挿入した。合成後、HPLCにより2つのGEM dの放出のみによって各オリゴの純度を評価し、3つのオリゴのそれぞれについて75~82%の純度が観察された(右列)。これらの配列(又はGEMを付加していない同じSS)のそれぞれを、次に対応する塩基適合AS鎖とアニーリングしてsiRNA二重鎖を形成した。各二重鎖の濃度はA260/A280測定により決定し、これを3列目に示す。
【0108】
上記の配列を使用してアニーリングし、二重鎖の25mer平滑末端siRNAを生成した。配列1は、GEMをSS配列に取り込んでいない25mer平滑末端siRNAである。配列2は、センス鎖の3’末端に2つのGEMが結合しており、次いで配列#1と同じAS鎖とアニーリングされる。配列5及び6は、同じAS鎖であるが、SSの最初の2塩基が除去されて配列が短縮されている(これは、他方の鎖をAS鎖として強制的に使用することを目的としている)。配列5及び6は、配列6が配列5の13位(元のSS配列では15位)のシチジン基の代わりにGEMを含まない点で異なっている。この排除の原理は、この位置にGEMを挿入することで、サイレンシングの間にAS鎖をRISC複合体にローディングするために必要であり得るSSの切断がブロックされるかどうかを決定することであった。配列7は配列6と同じであるが、センス鎖の5’末端に存在する2つのシチジンの代わりに2つのGEMを含む(siRNA当たりにより多くのGEMを付加することによって、最終的なコンストラクトの力価又は有効性が改善されるかどうかを見るため)。配列3はRAD17に対する非標識25mer平滑末端siRNAであり、一方、配列4は同じsiRNAであるがSSの3’末端に結合した2つのさらなるGEMを有する。
【0109】
表2に示すsiRNA配列を、120時間の暴露後にBxPC3膵臓がん細胞生存率に対する有効性及び力価について試験した。上図は、120時間暴露後に決定されたBxPC3細胞の生存率に対するゲムシタビン単独(GEM)の滴定の効果を示す。IC50は約5nMであったが、100nMにおいてすら最大有効性は生存細胞率の85%に過ぎない。
【0110】
RAD17に対する非飾飾のsiRNA(SL-P49-3)は、IC50が約4nMであり、細胞生存率の約60%のみの阻害の最大有効性で細胞生存率の用量依存的な低下を示した。このsiRNAがセンス鎖の3’末端に付加された2つのゲムシタビン部分を有する場合、力価に変化はなく(IC50 約4nM)、有効性の劇的な改善(30nMで100%細胞死滅)が見られる。
【0111】
25mer平滑末端siRNA配列は、GEM修飾なしで使用した場合、非常に強力な細胞死滅効果を持つことが示された(SL-P49-1;IC50 0.25nM及び100nMで有効性90%)。
【0112】
RAD17と同様に、SSの3’末端に2つのGEMを付加することによって、IC50値は同等であるが、より大きな有効性(30nMで約100%阻害)を有する生成物(SL-P49-2)が得られた。
【0113】
図17は、siRNAのSSにおけるGEMの位置及び修飾の数の、siRNA/Gemの組合せの有効性及び力価に対する効果を示す。
【0114】
2つのGem(SL-P49-6)又は3つのGem(SL-P49-5)のいずれかを含むCHk1 siRNAのSSの5’端を短くすることによって、同じ効果(IC50 約3nM、30nMにおいて83~97%の最大有効性)が得られた。このことは、いずれかのsiRNA形態の単一のGEMの放出によって増強された平凡なサイレンシング効果を示している。
【0115】
Cの代わりに4つのGEMを含む同じSS配列(SL-P49-7)を使用することによって、2つのGEMのみを含む配列(SL-49P-2)と同様のIC50及び有効性値が得られた。この結果は、このsiRNAアンチセンス配列が最大量の遺伝子サイレンシングを提供していることを示しているが、2つ又は4つのいずれかのGemを含むSSから放出されたGEMは、同等の有効性の改善をもたらし、これは、4つのGemを放出しても2つと比較して有効性が改善しないため、Gemによる効果が飽和しているに違いないことが示された。1分子につき1つを超えるGemを放出すると、さらなるGEMの切断は見られず、さらなる効果がもたらされない可能性がある。我々は、エキソヌクレアーゼが同じ配列の他のGEMに直接結合している場合、第2のGEMを切断して放出できない可能性があることを考えた(例えば、表2及び上図のSL-P49-2)。しかし、ヌクレアーゼ感受性のヌクレオチドによってGEMを分離した場合(例えばSL-49P-5又はSL-49P-7)ですら、力価又は有効性のさらなる改善は見られなかった。この結果から、単一のGemのみが、見られる効果をもたらし得ることが示される。これは、siRNA RISCのローディングの間にAS鎖からSSを放出するのに必要な時間、その後の複製中のDNAフォーク構造に挿入するためのリン酸化を必要とするGEMの放出に伴う細胞質におけるSSの分解の結果であり得る。あるいは、放出されるGEMの量は、細胞の複製周期と相関し、そのため、フォークへのGemの取り込み速度という点では限定的であり得る。
【0116】
実施例8
ゲムシタビン又はBxPC3細胞に対して用いた(図1)のと同じ非修飾のsiRNA及び暴露時間(96時間)を用いて、他の膵臓がん細胞株MiaPaca-2に対する効果を試験した。BxPC3細胞と同様に、ゲムシタビン単独では、IC50値及び最大有効性が同等であり、用量依存的な細胞生存率の低下がもたらされた。CHK1に対して設計された19mer siRNA(CHK-Az)及び25mer平滑末端siRNAは、いずれも同等の有効性(最大阻害約80%)を示したが、これはBxPC3細胞において19merで観察された60%阻害よりはるかに大きく、これらの細胞に対して25merと同等であった。しかし、RAD17 siRNAは、MiaPaca細胞に対して単独で使用した場合(最大阻害は約30%に過ぎない)、BxPC3細胞に対する(最大阻害約60%)よりもはるかに低い有効性を示した。図18は、他の膵臓腫瘍細胞であるMiaPaにおけるコンストラクトの効果を示す。
【0117】
実施例9
MiaPaca細胞では、2つの非修飾のsiRNA、Chk1_de(25merの平滑末端配列)又はChk-Az(2塩基dTdTオーバーハングを有する19mer)は、80%阻害という同様の最大有効性を示した。CHK1-Azの配列への2つのGEMの付加-SSの3’末端(Chk-az-Poly2)又はSS内のCの置換(Chk1-AZ-2S)によって、MiaPaca細胞を死滅させる際のsiRNAの有効性の有意な改善がもたらされた(10nMにおいて最大阻害約100%)。25mer siRNA(Chkde_2Gem)のSSの3’末端に2つのGEMを付加した場合も同様であり、これによっても10nMにおいてMiaPaca細胞に対して約100%の最大有効性がもたらされた。RAD17を標的とする非修飾の25mer siRNAは、MiaPaca細胞生存率に対してほとんど有効性を示さなかった(最大約25%)一方で、このsiRNAのSSの3’末端に2つのGemを付加することによって、このコンストラクトの有効性が劇的に改善された(30nMにおいて93%の阻害)。全ての修飾siRNAは、ゲムシタビンを単独で使用して達成可能なものを超える最大有効性を示した(100nMで90%の最大阻害)。図19は、MiaPaca細胞に対するGem修飾siRNAの効果を示す。
【0118】
本発明は、その特定の実施形態に関連して記載され、多くの詳細が説明の目的で示されているが、本発明は追加の実施形態の影響を受けやすく、本明細書に記載された特定の詳細は、本発明の基本原理から逸脱せずに変化し得ることは当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9-1】
図10
図11
図12a
図12b
図12c
図12d
図13
図14
図15
図15-1】
図16
図17
図18
図19
【配列表】
2022550604000001.app
【国際調査報告】