IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソーラー ペースト リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H01L31/04 264
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535952
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021017318
(87)【国際公開番号】W WO2021167818
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/977,997
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521109545
【氏名又は名称】ソーラー ペースト リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 初宜
(72)【発明者】
【氏名】松浦 有美
(72)【発明者】
【氏名】施 ▲テツ▼修
(72)【発明者】
【氏名】張 維軒
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151CB12
5F151CB20
5F151FA06
5F151FA10
5F151GA04
5F151HA20
(57)【要約】
太陽電池は、表面と裏面とを有するシリコン基板と、前記シリコン基板の前記表面に形成され、前記シリコン基板と電気的に接触し、銀成分とガラスバインダーとを含み、かつ前記銀成分以外の他の導電性金属を実質的に含まないフィンガー電極と、前記シリコン基板の前記表面に形成され、前記フィンガー電極と電気的に接触し、銀成分と、ニッケル、銅、ニッケル銅合金及びそれらの混合物からなる群から選択された第2金属と、ガラスバインダーとを含むバスバー電極とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面とを有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記表面に形成され、前記シリコン基板と電気的に接触し、銀成分とガラスバインダーとを含み、かつ前記銀成分以外の他の導電性金属を実質的に含まないフィンガー電極と、
前記シリコン基板の前記表面に形成され、前記フィンガー電極と電気的に接触し、銀成分と、ニッケル、銅、ニッケル銅合金及びそれらの混合物からなる群から選択された第2金属と、ガラスバインダーとを含むバスバー電極とを含む、
太陽電池。
【請求項2】
前記第2金属は、ニッケルである、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第2金属は、銅である、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記フィンガー電極の総重量に基づいて計算すると、前記フィンガー電極は、80wt%~99.5wt%の前記銀成分及び0.5wt%~20wt%の前記ガラスバインダーを含む、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記バスバー電極の総重量に基づいて計算すると、前記バスバー電極は、74wt%~98wt%の前記銀成分、2wt%~25wt%の前記第2金属、及び0.1wt%~3wt%の前記ガラスバインダーを含む、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記フィンガー電極中のガラスバインダーの含有量は、前記バスバー電極中のガラスバインダーの含有量よりも高い、
請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
表面と裏面とを有するシリコン基板を製造するステップと、
バスバー電極を形成するための第1導電性ペーストを前記シリコン基板の前記表面に塗布するステップであって、前記第1導電性ペーストは、ペースト組成物の総重量に基づいて計算すると、(a)68wt%~88wt%の銀成分、(b)ニッケル、銅、ニッケル銅合金及びそれらの混合物からなる群から選択された1wt%~30wt%の金属粉末、(c)0.1wt%~3.3wt%のガラスバインダー、及び(d)3wt%~23wt%の有機ビヒクルを含むステップと、
フィンガー電極を形成するための第2導電性ペーストを前記シリコン基板の前記表面に塗布するステップであって、前記第2導電性ペーストは、ペースト組成物の総重量に基づいて計算すると、(a)70wt%~95wt%の銀成分、(b)0.6wt%~7wt%のガラスバインダー、及び(c)3wt%~23wt%の有機ビヒクルを含み、前記銀成分以外の導電性金属は実質的に含まないステップと、
塗布された導電性ペーストを焼成することにより、前記シリコン基板の前記表面に前記フィンガー電極及び前記バスバー電極を製造するステップとを含む、
太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記フィンガー電極を形成するための前記第2導電性ペースト中のガラスバインダーの含有量は、前記バスバー電極を形成するための前記第1導電性ペースト中のガラスバインダーの含有量よりも多い、
請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
第2金属粉末の平均粒径は、0.1μm~10μmである、
請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
まず、前記第2導電性ペーストを塗布し、次に、前記第1導電性ペーストを塗布する、
請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
まず、前記第1導電性ペーストを塗布し、次に、前記第2導電性ペーストを塗布する、
請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用導電性ペーストに関し、特に、太陽電池用の導電性ペースト中の銀の消費量を低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池産業では、より高い発電効率を求めるために、競争がますます激しくなっている。効率が理論上の限界に近づくにつれて、人々は0.1%でも効率を向上させることを求める。
【0003】
それと同時に、太陽電池メーカーもコストの低減を求める。フィンガー電極及びバスバー電極は、一般的に、高価な銀を使用するため、電極中の銀の使用量を減少させるか又は安価な金属で銀を置き換えることは有益である。しかしながら、効率を低下させずに銀の含有量を減少させることは不可能である。
【0004】
US20100096014には、導電性粒子、ガラスフリット、有機バインダー及び溶剤を含む太陽電池用導電性ペーストであって、前記導電性粒子が、(A)銀並びに(B)銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛及びスズからなる群から選択された1種又は複数種の金属を含み、重量割合(A):(B)が、5:95~90:10である太陽電池用導電性ペーストが開示されている。
【0005】
US20140026953には、(a)導電性金属粒子と、(b)ガラスフリットと、(c)有機ビヒクルとを含む導電性ペースト組成物であって、前記導電性金属粒子が、銀粉末と、ニッケル粉末、酸化スズ(IV)粉末及びコアシェル粒子からなる群から選択された少なくとも1種との混合物を含み、当該コアシェル粒子のシェルが銀を含み、コアがニッケル及び/又は酸化スズ(IV)を含む、導電性ペースト組成物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様によれば、本願は、表面と裏面とを有するシリコン基板と、前記シリコン基板の前記表面に形成され、前記シリコン基板と電気的に接触し、銀成分とガラスバインダーとを含み、かつ前記銀成分以外の導電性金属を実質的に含まないフィンガー電極と、前記シリコン基板の前記表面に形成され、前記フィンガー電極と電気的に接触し、銀成分と、ニッケル、銅、ニッケル銅合金及びそれらの混合物からなる群から選択された第2金属と、ガラスバインダーとを含むバスバー電極とを含む太陽電池が提供される。
【0007】
他の態様によれば、本願は、表面と裏面とを有するシリコン基板を提供するステップと、バスバー電極を形成するための第1導電性ペーストを前記シリコン基板の前記表面に塗布するステップであって、前記第1導電性ペーストは、ペースト組成物の総重量に基づいて計算すると、(a)68wt%~88wt%の銀成分、(b)ニッケル、銅、ニッケル銅合金及びそれらの混合物からなる群から選択された1wt%~30wt%の金属粉末、(c)0.1wt%~3.3wt%のガラスバインダー、及び(d)3wt%~23wt%の有機ビヒクルを含むステップと、フィンガー電極を形成するための第2導電性ペーストを前記シリコン基板の前記表面に塗布するステップであって、前記第2導電性ペーストは、ペースト組成物の総重量に基づいて計算すると、(a)70wt%~95wt%の銀成分、(b)0.6wt%~7wt%のガラスバインダー、及び(c)3wt%~23wt%の有機ビヒクルを含み、前記銀成分以外の他の導電性金属は実質的に含まないステップと、塗布された導電性ペーストを焼成することにより、前記シリコン基板の前記表面に前記フィンガー電極及び前記バスバー電極を製造するステップとを含む、太陽電池の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】太陽電池の電極の製造プロセスを説明するための図である。図1Aは、p型シリコン基板10を示す。図1Bは、n型層20を塗布した前記シリコン基板を示す。図1Cは、表面にのみn型層を設けた前記シリコン基板を示す。図1Dは、パッシベーション層30を有する前記シリコン基板を示す。図1Eは、前記表面に導電性ペースト50を有し、前記裏面にアルミニウムペースト60及び銀ペースト70を有する前記シリコン基板を示す。図1Fは、焼成後の前記シリコン基板を示す。
図2】複数のフィンガー電極50a及び複数のバスバー電極50bを有する、太陽電池の表面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施例は、太陽電池及び太陽電池の製造プロセスを示す。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されない。本発明は好ましい実施例び任意の特徴によって具体的に開示されているが、当業者であれば、本発明に対して修正、改良及び変更を行うことができ、かつこれらの修正、改良及び変更は本発明の保護範囲に含まれると考えられることを理解されたい。
【0010】
(太陽電池の製造方法)
太陽電池の製造方法は、シリコン基板を提供し、ペーストを印刷して電極を形成して、塗布された導電性ペーストを焼成するステップを含む。一般的に、バスバー電極を形成するための第1導電性ペーストを前記シリコン基板の前記表面に塗布し、次にフィンガー電極を形成するための第2導電性ペーストを前記シリコン基板の前記表面に塗布するという2段階印刷技術を用いる。あるいは、まず、前記フィンガー電極を印刷し、次に、バスバー電極を印刷してもよい。
【0011】
図1Aは、本実施例におけるp型シリコン基板10を示す。本発明は、他の種類の太陽電池にも適用可能である。例えば、n型シリコン基板を用いることができ、この場合、一般的に、以下のプロセスにおいて逆型のドーピングを用いる。
【0012】
前記シリコン基板は、表面と裏面とを有する。前記表面は、完成した太陽電池内に設けられた、発電のための太陽光受光面と定義される。
【0013】
図1Bに示すように、当該特定の実施例では、リン(Phosphorus、P)又はその類似物を熱拡散することにより、逆導電型のn型層20を製造する。一般的に、オキシ塩化リン(Phosphorus oxychloride、POCl)をリンの拡散源として用いる。特に修正しない場合、n型層20は、前記シリコン基板10の全面に形成される。シリコンウェハは、p型基板10で構成され、かつn型層20のシート抵抗率のオーダーは、一般的に、数十オーム/スクエア(ohm/□)である。
【0014】
レジスト又はその類似物で前記n型層のうちの1つの面を保護した後、前記n型層20の面の大部分をエッチングにより除去することにより、n型層は図1Cに示す1つの主面(表面又は太陽光受光面)のみに残る。次に、溶剤又は除去剤を用いて前記レジストを除去する。
【0015】
そして、本実施例では、プラズマ化学気相成長(Chemical vapor deposition、CVD)などのプロセスにより、図1Dに示すn型層20にパッシベーション層30を形成することができる。パッシベーション層の材料としては、SiN、TiO、Al、SiO又は酸化インジウムスズ(Indium tin oxide、ITO)を用いることができる。一般的に用いられる材料は、Siである。前記パッシベーション層は、反射防止コーティング層と呼ばれる場合もあり、特に、パッシベーション層が前記シリコン基板の前記表面、即ち受光面に形成される場合である。
【0016】
図1Eに示すように、アルミニウムペースト60及び銀ペースト70を前記基板10の前記裏面にスクリーン印刷し、かつ60℃~300℃で連続的に加熱して、印刷されたペーストを乾燥させる。前記表面に電極を形成した後、前記裏面に電極を形成することができる。
【0017】
導電性ペースト50を前記パッシベーション層30に塗布して、乾燥させる。太陽電池の前記表面には、一般的に、図2に示す2種類の電極が形成される。一方は、フィンガー電極50aと呼ばれる。図2に示すように、一般的に、多くのフィンガー電極50aを含む。もう一方は、バスバー電極50bと呼ばれ、一般的に、1つ又は複数用いられる。前記フィンガー電極の1つの重要な機能は、シリコン基板に生成された電流を収集することである。収集された電流は、前記バスバー電極を流れ、外部入力/出力に用いられる。前記フィンガー電極は、前記シリコン基板の面に形成されたドープ層と電気的に接触する必要がある。図1の実施例では、前記フィンガー電極は、前記n型層20と電気的に接触する。前記バスバー電極と前記シリコン基板との電気的接触は必須ではない。換言すれば、前記フィンガー電極は前記パッシベーション層30を貫通する必要があるが、前記バスバー電極は必ずしもこのようにする必要がない。
【0018】
本発明では、前記フィンガー電極と前記バスバー電極とは、異なる種類の導電性ペーストを用いる。前記フィンガー電極を形成するための導電性ペーストは、導電性を向上させるように大量の銀成分を含み、かつ前記シリコン基板と電気的に接続するように一定量のガラスバインダーを含む。
【0019】
前記フィンガー電極は、前記銀成分以外の導電性金属を実質的に含まない。本明細書における「実質的に含まない」とは、含有量が、一実施例では1wt%未満であり、他の実施例では0.5wt%未満であり、また他の実施例では0.1wt%未満であり、さらに他の実施例では発見されにくいことを指す。一実施例では、銀成分以外の導電性金属を意図的に添加しない。ガラスバインダーが実質的に無機酸化物で構成され、低い導電性を有するため、導電性金属は、ガラスバインダーを含まないと定義される。
【0020】
一実施例では、前記フィンガー電極は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、合金及びそれらの混合物からなる群から選択された任意の金属元素を含まない。
【0021】
他の実施例では、銀成分以外に、前記フィンガー電極は、293ケルビンで1.00×10シーメンス(S)/m以上の導電率を有する任意の導電性成分を含まない。例えば、これらの導電性金属は、鉄(Fe、1.00×10S/m)、アルミニウム(Al、3.64×10S/m)、ニッケル(Ni、1.45×10S/m)、銅(Cu、5.81×10S/m)、金(Au、4.17×10S/m)、モリブデン(Mo、2.10×10S/m)、マグネシウム(Mg、2.30×10S/m)、タングステン(W、1.82×10S/m)、コバルト(Co、1.46×10S/m)及び亜鉛(Zn、1.64×10S/m)を含む。
【0022】
一実施例では、前記フィンガー電極の総重量に基づいて計算すると、前記フィンガー電極は、焼成後に、80wt%~99.5wt%の銀成分及び0.5wt%~20wt%のガラスバインダーを含む。銀成分の含有量は、一実施例では90wt%~99wt%であり、他の実施例では95wt%~98.5wt%である。ガラスバインダーの含有量は、一実施例では1wt%~10wt%であり、他の実施例では1.5wt%~5wt%である。
【0023】
他の態様では、前記バスバー電極は、銀成分及び第2金属を含む。一実施例では、前記第2金属は、ニッケルである。他の実施例では、前記第2金属は、銅である。他の実施例では、ニッケル及び銅は、両方とも合金又は混合物として用いられる。一実施例では、前記バスバー電極に含まれるガラスバインダーの量は、前記フィンガー電極に含まれるガラスバインダーの量よりも少ないため、前記バスバー電極がより導電しやすい。前記バスバー電極は、前記フィンガー電極と電気的に接触する。
【0024】
一実施例では、前記バスバー電極の総重量に基づいて計算すると、前記バスバー電極は、焼成後に、74wt%~98wt%の銀成分、2wt%~25wt%の第2金属及び0.1wt%~3wt%のガラスバインダーを含む。銀成分の含有量は、一実施例では80wt%~97wt%であり、他の実施例では85wt%~95wt%である。第2金属の含有量は、一実施例では3wt%~20wt%であり、他の実施例では5wt%~15wt%である。ガラスバインダーの含有量は、一実施例では0.15wt%~2wt%であり、他の実施例では0.2wt%~1wt%である。
【0025】
フィンガー電極又はバスバー電極中のガラス及び金属の重量百分率(wt%)は、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively coupled plasma mass spectrometry、ICP-MS)により測定することができる。
【0026】
一般的に、前記シリコン基板に4~12列の前記バスバー電極を形成する。前記シリコン基板のサイズに応じて、一般的に、前記シリコン基板に数十個の前記フィンガー電極を形成する。前記太陽電池の効率を向上させるために、人々は、前記フィンガー電極及び前記バスバー電極で被覆されたシリコン基板の面積百分率が最小とされることが望ましい。一般的に、前記フィンガー電極は線幅が狭く、前記バスバー電極は広いパターンを有する。前記フィンガー電極の幅は、一実施例では10μm~45μmであってもよく、他の実施例では20μm~43μmであってもよく、また他の実施例では30μm~41μmであってもよい。前記バスバー電極の幅は、一実施例では0.3mm~1.5mmであってもよく、他の実施例では0.4mm~1.2mmであってもよく、また他の実施例では0.5mm~1mmであってもよい。
【0027】
前記電極は、印刷された導電性ペーストを加熱することにより形成される。一実施例では、ベルト炉などの赤外線炉において450℃~1000℃の範囲内のピーク温度で加熱し、これは、焼成と呼ばれる。ベルト炉のピーク温度は、炉の最も高温の領域の設定点として理解されるべきである。一実施例では、炉の入口から出口までの加熱総時間は、30秒間~5分間であってもよい。当該加熱条件で、シリコン基板が受けた熱損傷が小さい。一実施例では、加熱曲線は、400℃を超えると、10秒間~60秒間持続し、かつ600℃を超えると、2秒間~10秒間持続することができる。
【0028】
図1Fに示すように、アルミニウムは、焼成中に不純物としてアルミニウムペーストからシリコン基板10の前記裏面に拡散することにより、高濃度のアルミニウムドーパントを含有するp+層40を形成する。焼成により、乾燥したアルミニウムペースト60がアルミニウム裏面電極61となる。また、裏面の銀ペースト70が銀裏面電極71に焼成される。焼成中に裏面のアルミニウムと裏面の銀との境界が合金状態となることにより、電気的接続を実現する。一実施例では、アルミニウム電極は、p+層40を形成する必要があることに部分的に起因して、裏面電極のほとんどの領域を占める。また、一実施例では、アルミニウム電極へのはんだ付けが困難であるため、銀ペースト70を用いて裏面の限られた領域に裏面電極71を形成して、太陽電池セル間を銅リボン又はその類似物により相互接続する電極とする。
【0029】
前記表面における表面電極51は、導電性ペースト50で製造される。図1Fに示すように、焼成期間において、少なくともフィンガー電極50aがパッシベーション層30をファイアースルーすることにより、n型層20と電気的に接触することができる。前記導電性ペーストの浸透機能を「ファイアースルー」と呼ばれる。一実施例では、バスバー電極50bがパッシベーション層30をファイアースルーしない。前記バスバー電極中のガラスバインダーの量が少ないため、前記バスバー電極はより高い導電性を有することができ、それによりバスバー電極において導電性が低く、かつ安価な他の金属を用いることができる。
【0030】
p型太陽電池を実施例として示すが、本発明はn型太陽電池又は導電性ペーストを用いる任意の他の種類の太陽電池に用いることができる。
【0031】
次に、本発明の前記太陽電池を製造するための前記第1導電性ペースト及び第2導電性ペーストについて説明する。
【0032】
(フィンガー導電性ペースト)
前記フィンガー電極を形成するフィンガー導電性ペーストは、(a)銀成分、(b)ガラスバインダー及び(c)有機ビヒクルを含む。
【0033】
(i)銀成分
前記銀成分は、ペーストが電流を伝送することを可能にする。前記銀成分は、空気中で焼成した後に融着することができるが、酸化物を形成せず、それにより導電性の高いバルク材料を提供する。前記銀成分は、フレーク状又は球状の粉末を含むか又は両方を含む。
【0034】
一実施例では、前記銀成分は、実質的に銀粉末である。前記銀粉末の総含有量に基づいて計算すると、前記銀粉末は、一実施例では90%以上、他の実施例では95%以上、また他の実施例では99%以上の銀元素を含有する。
【0035】
一実施例では、前記銀成分は、銀含有合金である。前記銀含有合金の総含有量に基づいて計算すると、前記銀含有合金は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上の銀元素を含有する。一実施例では、前記銀含有合金は、銀-銅合金、銀-金合金、銀-白金合金、銀-銅-金合金又は銀-銅-ゲルマニウム合金である。
【0036】
一実施例では、前記銀成分は、銀-銅コアシェル粒子などの銀めっき粉末である。前記銀めっき粉末の総含有量に基づいて計算すると、前記銀めっき粉末は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上の銀元素を含有する。
【0037】
銀粉末、銀含有合金及び銀めっき粉末のうちの2種又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、前記銀成分は、一実施例では70~95重量百分率(Weight percent、wt%)であり、他の実施例では75wt%~93wt%であり、また他の実施例では80wt%~91wt%である。前記導電性ペースト中の上記含有量を有する銀成分は、太陽電池への応用に対して十分な導電性を維持することができる。
【0039】
前記銀成分の粒径は、一実施例では0.1μm~10μmであり、他の実施例では0.5μm~7μmであり、また他の実施例では1μm~4μmである。上記粒径を有する前記銀成分は、有機バインダー及び溶剤に十分に分散し、かつ前記基板に平らに塗布することができる。一実施例では、前記銀成分は、異なる粒径又は異なる粒子形状を有する2種又は複数種の銀成分の混合物であってもよい。
【0040】
粒径は、レーザー回折散乱法で粒径分布を測定することにより得られ、かつD50により規定することができ、D50とは、累積粒径分布が50%(又は50%を超える粒径)に達する点を指す。粒径分布は、MicrotracモデルX-100などの市販の装置により測定することができる。
【0041】
前記フィンガー電極を形成するための導電性ペーストは、銀成分以外の他の導電性金属を実質的に含まない。本明細書における「実質的に含まない」とは、含有量が、一実施例では1wt%未満であり、他の実施例では0.5wt%未満であり、また他の実施例では0.1wt%未満であり、さらに他の実施例では発見されにくいことを指す。ガラスバインダーが、一般的に、導電性がほとんど又はまったくない無機酸化物で構成されるため、導電性金属は、以下に説明するガラスバインダーを含まない定義される。
【0042】
一実施例では、前記フィンガー電極を形成するための導電性ペーストは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)及びそれらの任意の混合物からなる群から選択された任意の金属元素を含まない。
【0043】
他の実施例では、銀成分以外に、前記フィンガー電極用の導電性ペーストは、293ケルビンで1.00×10シーメンス(S)/m以上の導電率を有する任意の導電性成分を含まない。例えば、これらの導電性金属は、鉄(Fe、1.00×10S/m)、アルミニウム(Al、3.64×10S/m)、ニッケル(Ni、1.45×10S/m)、銅(Cu、5.81×10S/m)、金(Au、4.17×10S/m)、モリブデン(Mo、2.10×10S/m)、マグネシウム(Mg、2.30×10S/m)、タングステン(W、1.82×10S/m)、コバルト(Co、1.46×10S/m)及び亜鉛(Zn、1.64×10S/m)を含む。
【0044】
(ii)ガラスバインダー
ガラスバインダーは、ペーストに混合される場合、一般的に、ガラスフリットと呼ばれ、その後の焼成プロセスにおいて前記パッシベーション層を貫通して電気的接触を形成することに役立つ。また、ガラスバインダーは、電極とシリコン基板との接合に役立つ。ガラスバインダーは、無機酸化物を含む。ガラスバインダーは、一実施例では90wt%以上の無機酸化物、他の実施例では95wt%以上の無機酸化物、また他の実施例では98wt%以上の無機酸化物、さらに他の実施例では100wt%の無機酸化物で構成される。一実施例では、ガラスバインダーは、さらに、導電性粉末の融着を促進することができる。
【0045】
前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、ガラスバインダーの含有量は、一実施例では0.6wt%~7wt%である。前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、当該含有量は、他の実施例では0.8wt%~6wt%であり、また他の実施例では1wt%~5wt%である。このような高含有量のガラスバインダーを添加することにより、前記太陽電池の電気的特性を向上させることができる。
【0046】
ガラスバインダーの組成物は、特定の組成物に限定されない。例えば、鉛フリーガラス又は鉛含有ガラスを用いることができる。
【0047】
一実施例では、ガラスバインダーは、鉛含有ガラスフリットを含み、当該鉛含有ガラスフリットは、酸化鉛と、酸化テルル(TeO)及び酸化ビスマス(Bi)からなる群から選択された1種又は複数種の酸化物とを含む。ガラスバインダーの総重量に基づいて計算すると、酸化鉛(PbO)は、一実施例では17wt%~47wt%であり、他の実施例では22wt%~42wt%であり、また他の実施例では25wt%~39wt%である。
【0048】
ガラスバインダーの総重量に基づいて計算すると、酸化テルル(TeO)は、一実施例では17wt%~47wt%であり、他の実施例では22wt%~42wt%であり、また他の実施例では25wt%~39wt%である。
【0049】
ガラスバインダーの総重量に基づいて計算すると、酸化ビスマス(Bi)は、一実施例では8wt%~24wt%であり、他の実施例では11wt%~25wt%であり、また他の実施例では13wt%~23wt%である。
【0050】
他の実施例では、ガラスバインダーは、SiO、LiO、NaO、B、WO、CaO、Al、ZnO、MgO、TiO、ZrO、BaO、MgO、KO、CuO、AgO及びそれらの任意の混合物からなる群から選択された無機酸化物をさらに含む。
【0051】
当該分野で周知の方法によってガラスバインダーを製造することができる。例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩などの原料を混合して溶融し、焼入れによりカレットを製造し、次に機械的粉砕(湿式粉砕又は乾式粉砕)を行うことにより、ガラスバインダー又はガラスフリットを製造することができる。その後、必要に応じて所望の粒度に分級する。
【0052】
(iii)有機ビヒクル
前記導電性ペーストは、有機バインダー及び溶剤を含む有機ビヒクルを含む。
【0053】
一実施例では、前記有機バインダーは、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ForalynTM(水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル)、ダンマルゴム、ウッドロジン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、低級アルコールエステルのポリメタクリル酸又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0054】
一実施例では、溶剤は、テルペン(例えば、α-テルピネオール又はβ-テルピネオール又はそれらの混合物)、TexanolTM(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、ケロシン、フタル酸ジブチル、ブチルCarbitolTM、ブチルCarbitolTM酢酸塩、ヘキサンジオール、エチレングリコールモノブチリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチル、ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ジエステル(例えばInvista製のDBE(登録商標)、DBE(登録商標)-2、DBE(登録商標)-3、DBE(登録商標)-4、DBE(登録商標)-5、DBE(登録商標)-6、DBE(登録商標)-9、及びDBE(登録商標)-1B)、オクチルエポキシタレート、イソテトラデカノール及びナフサ、又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0055】
前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、有機ビヒクルの含有量は、一実施例では3wt%~23wt%であり、他の実施例では5wt%~20wt%であり、また他の実施例では7wt%~18wt%である。
【0056】
焼成ステップにおいて、有機媒体を焼き切ることができるため、製造された電極は、理論的に残留物を含まない。しかしながら、当該残留物が電極の電気的特性を低下させない限り、これにより得られた電極は、一定量の残留物を残す可能性がある。
【0057】
(iv)添加剤
必要に応じて、増粘剤、安定剤、分散剤、粘度調整剤及び界面活性剤などのいずれかの添加剤を導電性ペーストに添加することができる。前記添加剤の量は、得られた導電性ペーストの所望の特性に依存し、かつ当業者によって選択することができる。前記導電性ペーストには、複数の添加剤を添加してもよい。
【0058】
以上は前記フィンガー電極を形成するための前記導電性ペーストの成分を説明したが、前記導電性ペーストは、原料に由来するか又は製造プロセスによる汚染に由来する不純物を含む可能性がある。しかしながら、不純物の存在は、前記導電性ペーストの予期される特性を顕著に変更しない限り、許容する(良性と定義する)ことができる。前記導電性ペーストが良性の不純物を含んでも、前記導電性ペーストで製造されたフィンガー電極は、本明細書に記載された十分な電気的特性を得ることができる。
【0059】
(v)(粘度及び固形分含有量)
前記導電性ペーストの粘度は、一実施例では100Pa・s~600Pa・sであり、他の実施例では150Pa・s~500Pa・sであり、また他の実施例では200Pa・s~400Pa・sである。上記粘度であれば、一般的に、優れた印刷性が得られることが見出される。
【0060】
本発明では、#14型スピンドル及びSC4-14/6Rユーティリティカップを有するBrookfield HBT粘度計を用いて25℃、10rpmで測定することにより得られた値は、前記導電性ペーストの粘度である。
【0061】
前記導電性ペースト中の無機固体の含有量は、導電性ペーストの総重量に対する無機固体の百分率(wt%)で計算される。前記無機固体は、一般的に、導電性金属/合金粉末及びガラスフリットで構成される。前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、前記無機固体の含有量は、一実施例では68.5wt%~96.7wt%であり、他の実施例では85wt%~94wt%である。
【0062】
(バスバー導電性ペースト)
前記バスバー電極を形成するバスバー導電性ペーストは、(a)銀成分、(b)第2金属、(c)ガラスバインダー、及び(d)有機ビヒクルを含む。
【0063】
(i)銀成分
前記銀成分は、ペーストが電流を伝送することを可能にする。前記銀成分は、空気中で焼成した後に融着することができるが、酸化物を形成せず、それにより導電性の高いバルク材料を提供する。前記銀成分は、フレーク状又は球状の粉末を含むか又は両方を含む。
【0064】
一実施例では、前記銀成分は、実質的に銀粉末である。前記銀粉末の総含有量に基づいて計算すると、前記銀粉末は、一実施例では90%以上、他の実施例では95%以上、また他の実施例では99%以上の銀元素を含有する。
【0065】
一実施例では、前記銀成分は、銀含有合金である。前記銀含有合金の総含有量に基づいて計算すると、前記銀含有合金は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上を含有し、また他の実施例では90%以上の銀元素を含有する。一実施例では、前記銀含有合金は、銀-銅合金、銀-金合金、銀-白金合金、銀-銅-金合金又は銀-銅-ゲルマニウム合金である。
【0066】
一実施例では、前記銀成分は、銀-銅コアシェル粒子などの銀めっき粉末である。前記銀めっき粉末の総含有量に基づいて計算すると、前記銀めっき粉末は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上の銀元素を含有する。
【0067】
銀粉末、銀含有合金及び銀めっき粉末のうちの2種又は2種以上を併用してもよい。
【0068】
前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、前記銀成分は、一実施例では68~88重量百分率(wt%)であり、他の実施例では72wt%~87wt%であり、また他の実施例では77wt%~85wt%である。前記導電性ペースト中の上記含有量を有する銀成分は、前記バスバー電極に対して十分な導電性を維持することができる。
【0069】
前記銀成分の粒径は、一実施例では0.1μm~10μmであり、他の実施例では0.5μm~7μmであり、また他の実施例では1μm~4μmである。上記粒径を有する前記銀成分は、有機バインダー及び溶剤に十分に分散し、かつ前記基板に平らに塗布することができる。一実施例では、前記銀成分は、異なる粒径又は異なる粒子形状を有する2種又は複数種の銀成分の混合物であってもよい。
【0070】
粒径は、レーザー回折散乱法で粒径分布を測定することにより得られ、かつD50により規定することができ、D50とは、累積粒径分布が50%(又は50%を超える粒径)に達する点を指す。粒径分布は、MicrotracモデルX-100などの市販の装置により測定することができる。
【0071】
(ii)第2金属
第2金属を用いるため、前記バスバー電極は、高価な貴金属の需要量を減少させることにより、本発明の太陽電池を低コストで製造すると同時に、電池性能を維持することができる。前記第2金属は、ニッケル、銅、ニッケル銅合金及びそれらの混合物からなる群から選択される。前記第2金属成分は、形状がフレーク状又は球状の粉末を含むか又は両方を含む。
【0072】
一実施例では、前記第2金属粉末は、実質的に、ニッケル粉末である。前記第2金属粉末の総含有量に基づいて計算すると、前記第2金属粉末は、一実施例では90%以上、他の実施例では95%以上、また他の実施例では99%以上のニッケル元素を含有する。
【0073】
一実施例では、前記第2金属粉末は、実質的に、銅粉末である。前記第2金属粉末の総含有量に基づいて計算すると、前記第2金属粉末は、一実施例では90%以上、他の実施例では95%以上、また他の実施例では99%以上の銅元素を含有する。
【0074】
一実施例では、前記第2金属粉末は、ニッケル含有合金又は銅含有合金である。ニッケル含有合金の総含有量に基づいて計算すると、ニッケル含有合金は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上のニッケル元素を含有する。銅含有合金の総含有量に基づいて計算すると、銅含有合金は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上の銅元素を含有する。
【0075】
一実施例では、前記第2金属粉末は、ニッケルめっき粉末又は銅めっき粉末である。ニッケルめっき粉末の総含有量に基づいて計算すると、ニッケルめっき粉末は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上のニッケル元素を含有する。銅めっき粉末の総含有量に基づいて計算すると、銅めっき粉末は、一実施例では50%以上、他の実施例では70%以上、また他の実施例では90%以上の銅元素を含有する。
【0076】
2種又は2種以上の第2金属粉末を併用してもよい。
【0077】
前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、前記第2金属粉末は、一実施例では1wt%~30wt%であり、他の実施例では5wt%~20wt%であり、また他の実施例では7wt%~15wt%である。前記導電性ペースト中の上記含有量を有する第2金属粉末は、太陽電池への応用に対して十分な導電性を維持することができると同時に、製造された太陽電池の競争力を向上させることに役立つ。
【0078】
前記第2金属粉末の粒径は、一実施例では0.1μm~10μmであり、他の実施例では0.5μm~7μmであり、また他の実施例では1μm~4μmである。上記粒径を有する前記第2金属粉末は、有機バインダー及び溶剤に十分に分散し、かつ前記基板に平らに塗布することができる。一実施例では、前記第2金属粉末は、異なる粒径又は異なる粒子形状を有する2種又は複数種の第2金属の混合物であってもよい。
【0079】
粒径の測定値は、SEM画像により25~30個の粒子を分析することで得られる。平均粒径は、25~35個の一次粒子の直径を測定し、4000×倍率のSEM画像において個数平均値をとることにより算出することができる。SEM画像は、Hitachi SEMモデル3500などの市販の装置により得ることができる。
【0080】
(iii)ガラスバインダー
ガラスバインダーは、ペーストに混合される場合、一般的に、ガラスフリットと呼ばれ、その後の焼成プロセスにおいて前記パッシベーション層を貫通して電気的接触を形成することに役立つ。ガラスバインダーは、電極とシリコン基板との接合に役立つ。ガラスバインダーは、無機酸化物を含む。ガラスバインダーは、一実施例では90wt%以上の無機酸化物、他の実施例では95wt%以上の無機酸化物、また他の実施例では98wt%以上の無機酸化物、さらに他の実施例では100wt%の無機酸化物で構成される。一実施例では、ガラスバインダーは、さらに、導電性粉末の融着を促進することができる。
【0081】
一実施例では、前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、ガラスバインダーの含有量は、0.1wt%~3.3wt%である。前記フィンガー電極と前記シリコン基板との十分な電気的接続を実現するため、前記バスバー電極中のガラスバインダーの含有量を減少させることができる。前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、該含有量は、他の実施例では0.15wt%~2.2wt%であり、また他の実施例では0.2%~1.2wt%である。
【0082】
ガラスバインダーの組成物は、特定の組成物に限定されない。例えば、鉛フリーガラス又は鉛含有ガラスを用いることができる。
【0083】
一実施例では、ガラスバインダーは、鉛含有ガラスフリットを含み、当該鉛含有ガラスフリットは、酸化鉛と、酸化ケイ素(SiO)及び酸化ホウ素(B)からなる群から選択された1種又は複数種の酸化物とを含む。
【0084】
ガラスバインダーの総重量に基づいて計算すると、酸化鉛(PbO)は、一実施例では30wt%~80wt%であり、他の実施例では37wt%~73wt%であり、また他の実施例では45wt%~68wt%である。
【0085】
ガラスバインダーの総重量に基づいて計算すると、酸化ケイ素(SiO)は、一実施例では5wt%~25wt%であり、他の実施例では8wt%~20wt%であり、また他の実施例では10wt%~18wt%である。
【0086】
ガラスバインダーの総重量に基づいて計算すると、酸化ホウ素(B)は、一実施例では2wt%~15wt%であり、他の実施例では3wt%~12wt%であり、また他の実施例では5wt%~10wt%である。
【0087】
他の実施例では、ガラスバインダーは、TeO、LiO、NaO、Bi、WO、CaO、Al、ZnO、MgO、TiO、ZrO、BaO、MgO、KO、CuO、AgO及びそれらの任意の混合物からなる群から選択された無機酸化物をさらに含む。
【0088】
当該分野で周知の方法によってガラスバインダーを製造することができる。例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩などの原料を混合して溶融し、焼入れによりカレットを製造し、次に機械的粉砕(湿式粉砕又は乾式粉砕)を行うことにより、ガラスバインダー又はガラスフリットを製造することができる。その後、必要に応じて所望の粒度に分級する。
【0089】
(iv)有機ビヒクル
前記導電性ペーストは、有機バインダー及び溶剤を含む有機ビヒクルを含む。
【0090】
一実施例では、前記有機バインダーは、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ForalynTM(水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル)、ダンマルゴム、ウッドロジン、フェノール樹脂、アクリル樹脂、低級アルコールエステルのポリメタクリル酸又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0091】
一実施例では、溶剤は、テルペン(例えば、α-テルピネオール又はβ-テルピネオール又はそれらの混合物)、TexanolTM(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、ケロシン、フタル酸ジブチル、ブチルCarbitolTM、ブチルCarbitolTM酢酸塩、ヘキサンジオール、エチレングリコールモノブチリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチル、ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ジエステル(例えばInvista製のDBE(登録商標)、DBE(登録商標)-2、DBE(登録商標)-3、DBE(登録商標)-4、DBE(登録商標)-5、DBE(登録商標)-6、DBE(登録商標)-9、及びDBE(登録商標)-1B)、オクチルエポキシタレート、イソテトラデカノール及びナフサ、又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0092】
前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、有機ビヒクルの含有量は、一実施例では3wt%~23wt%であり、他の実施例では5wt%~20wt%であり、また他の実施例では7wt%~18wt%である。
【0093】
焼成ステップにおいて、有機媒体を焼き切ることができるため、製造された電極は、理論的に残留物を含まない。しかしながら、当該残留物が電極の電気的特性を低下させない限り、これにより得られた電極は、一定量の残留物を残す可能性がある。
【0094】
(v)添加剤
必要に応じて、増粘剤、安定剤、分散剤、粘度調整剤及び界面活性剤などの様々な添加剤を導電性ペーストに添加することができる。前記添加剤の量は、得られた導電性ペーストの所望の特性に依存し、かつ当業者によって選択することができる。前記導電性ペーストには、複数の添加剤を添加してもよい。
【0095】
以上は前記バスバー電極を形成するための前記導電性ペーストの成分を説明したが、前記導電性ペーストは、原料に由来するか又は製造プロセスによる汚染に由来する不純物を含む可能性がある。しかしながら、不純物の存在は、前記導電性ペーストの予期される特性を顕著に変更しない限り、許容する(良性と定義する)ことができる。前記導電性ペーストが良性の不純物を含んでも、前記導電性ペーストで製造されたバスバー電極は、本明細書に記載された十分な電気的特性を得ることができる。
【0096】
(vi)粘度及び固形分含有量
前記導電性ペーストの粘度は、一実施例では100Pa・s~600Pa・sであり、他の実施例では150Pa・s~500Pa・sであり、また他の実施例では200Pa・s~400Pa・sである。上記粘度であれば、一般的に、優れた印刷性が得られることが見出される。
【0097】
前記導電性ペースト中の無機固体の含有量は、導電性ペーストの総重量に対する無機固体の百分率(wt%)で計算される。前記無機固体は、一般的に、導電性金属/合金粉末及びガラスフリットで構成される。前記導電性ペーストの総重量に基づいて計算すると、前記無機固体の含有量は、一実施例では68.5wt%~96.7wt%であり、他の実施例では85wt%~94wt%である。
(実施例)
【0098】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらに限定されない。実施例における「部」は、重量部を指す。
(実施例1)
【0099】
1.バスバーペーストの調製
ブチルCarbitolTM酢酸塩、DBE-3、TexanolTM、エチルセルロース、Foralyn及び添加剤で構成された有機ビヒクルと粘度調整剤とを15分間混合する。均一に分散させるために、0.6部のガラスフリットを17.4部の有機ビヒクルに分散させ、15分間混合する。ガラスフリットは、PbO-SiO-B型である。次に、8.2部のニッケル(Ni)粉末を徐々に添加し、次に73.8部の銀粉末を徐々に添加する。SEM画像の分析測定により得られたNi粉末の粒径(数平均)は、4μmである。ニッケル粉末の形状は、粗い立方体である。レーザー回折散乱法で測定されたAg粉末は、1.2μmの粒径(D50)を有する球状の粉末である。混合物を、圧力が0psiから400psiまで徐々に増加しながら、3本ロールミルに繰り返して通過させる。ロール間のギャップを1milに調整する。
【0100】
最後に、追加の有機媒体又は希釈剤を混合して、ペーストの粘度を調整する。Brookfield HBT粘度計と#14型スピンドルとSC4-14/6R型ユーティリティカップとを用いて、10rpm及び25℃で測定した粘度は300Pa・sである。
【0101】
2.太陽電池の製造
印刷作業は、Bacciniプリンタ(Applied Materials社製)で行われる。上記で得られたバスバーペースト及び市販のフィンガーペースト(DuPont PV22A)を、所望のバスバー及びフィンガーパターンでウェハに順にスクリーン印刷する。フィンガーペーストPV22Aは、銀ペーストであり、他の導電性成分を含まない。ウェハは、英業達太陽エネルギー社(lnventec Solar Energy Corporation)から得られたP型単結晶PERC(裏面パッシベーション化エミッタセル、Passivated Emitter Rear Cell)電池である。バスバースクリーンは400メッシュであり、線径が18μmであり、乳剤の厚さが10μmである(Murakamiスクリーン社製)。フィンガースクリーンは440メッシュであり、線径が13μmであり、乳剤の厚さが12μmである(Murakamiスクリーン社製)。
【0102】
印刷されたペーストをベルト炉で200℃で30秒間乾燥させ、次にIR加熱型ベルト炉(CF-7210B、Despatch Industries社)で895℃の設定ピーク温度で焼成し、フィンガー電極及びバスバー電極を製造する。炉温を、前記シリコン基板の上面の測定温度728℃に対応するように895℃に設定する。炉の入口から出口までの焼成時間は72秒間である。焼成分布曲線の昇温勾配は7秒内に400℃から600℃まで上昇し、かつ600℃を超える段階で4.7秒間維持する。K型熱電対で前記シリコン基板の上面の温度を測定し、かつ環境データロガー(Datapaq(登録商標) Furnace Tracker(登録商標) System、DP9064Aモデル、Datapaq Ltd.)で当該温度を記録する。炉のベルト速度は660cpmである。
【0103】
3.テスト手順
3-1.電池I-V特性
製造された太陽電池の効率を市販のIVテスター(FRIWO(登録商標)、BERGER社)でテストする。IVテスターにおけるキセノンアークランプは、大気質値が1.5であるときに、既知の強度及びスペクトルで太陽光をシミュレーションすることにより、nベースの太陽電池のp型エミッタ側を照射する。テスターは、「4点プローブ法」で負荷抵抗の設定値が約400の条件で電流(I)及び電圧(V)を測定することにより、電池のI-V曲線を決定する。バスバーは電池の表面に形成され、かつIVテスターの複数のプローブに接続されることにより、電気信号をプローブによりデータ処理コンピュータに伝送して、短絡電流、開回路電圧、フィルファクタ(Fill-factor FF)、直列抵抗及び電池効率を含む太陽電池のI-V特性を得ることができる。
【0104】
3-2.剥離力
952-Sフラックス(Kester)を用いて180℃で銅リボンをテスト用太陽電池のバスバーにはんだ付けして、180度の剥離接着力テストを行う。平均剥離力を算出するために、少なくとも3つのサンプルをテストする。
(実施例2)
【0105】
4μmではなく、2.5μmの粒径(数平均)を有するニッケル(Ni)粉末を用いることを除いて、実施例1と同じ方法で太陽電池を製造する。Ni粉末の形状は、粗くて不規則である。実施例1で用いられた手順に従って、太陽電池のIV特性及び剥離力をテストする。
(実施例3)
【0106】
ニッケル粉末ではなく、2μmの粒径(数平均)を有する銅(Cu)粉末を用いることを除いて、実施例1と同じ方法で太陽電池を製造する。Cu粉末の形状は、滑らかな球状である。実施例1で用いられた手順に従って、太陽電池のIV特性及び剥離力をテストする。
(比較例1)
【0107】
第2金属を用いることを除いて、実施例1と同じ方法で太陽電池を製造する。実施例1で用いられた手順に従って、太陽電池のIV特性及び剥離力をテストする。
(比較例2)
【0108】
ニッケル粉末ではなく、3μmの粒径(数平均)を有する酸化アルミニウム(Al)粉末を用いることを除いて、実施例1と同じ方法で太陽電池を製造する。Al粉末の形状は、滑らかな球状である。実施例1で用いられた手順に従って、太陽電池のIV特性及び剥離力をテストする。
(比較例3)
【0109】
ニッケル粉末ではなく、5μmの粒径(数平均)を有する酸化アルミニウム(Al)粉末を用いることを除いて、実施例1と同じ方法で太陽電池を製造する。Al粉末の形状は、滑らかな球状である。実施例1で用いられた手順に従って、太陽電池のIV特性及び剥離力をテストする。
(比較例4)
【0110】
1.5μmの粒径(数平均)を有するアルミニウム(Al)粉末を用いることを除いて、実施例1と同じ方法で太陽電池を製造する。Al粉末の形状は、滑らかな球状である。実施例1で用いられた手順に従って、太陽電池のIV特性及び剥離力をテストする。
【0111】
以下の表1に実施例及び比較例のテスト結果を示す。実施例1、実施例2及び実施例3の効率は、第2金属を含まない比較例1の効率に相当する。10wt%のAg(例えば、比較例1における82wt%のAgのうちの8.2wt%のAg)をNi又はCu粉末に置き換えると、効率及び剥離力の損失が最も小さく、貴金属Agの使用量が顕著に減少する。比較例2及び比較例3は両方とも、FFの低下によって効率損失が顕著である。比較例4では、IV特性値が低すぎるため、測定することができず、かつリボンが電極に貼り付けられないため、剥離力を測定することができない。
【0112】
【表1】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
【国際調査報告】