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特表2022-550666真の蒸気圧及びフラッシングの検出装置、並びに関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】真の蒸気圧及びフラッシングの検出装置、並びに関連方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 11/00 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
G01L11/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511121
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2019047071
(87)【国際公開番号】W WO2021034312
(87)【国際公開日】2021-02-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホリングスワース, ジャスティン クレイグ
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC59
2F055EE40
2F055FF49
2F055GG49
(57)【要約】
流体蒸気圧の測定方法が提供される。本方法は、メータ電子機器を有するメータを設けるステップを含み、このメータには、流量計及び密度計のうちの少なくとも1つが含まれる。プロセス流体がメータを通って流れる。メータに関連する低圧位置が規定される。プロセス流体の圧力は、低圧位置でフラッシングが検出可能になるまで調整される。フラッシングが検出可能な場合に、プロセス流体の真の蒸気圧が計算される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体蒸気圧の測定方法であって、
メータ電子機器を有するメータを設けるステップであって、前記メータは、流量計及び密度計のうちの少なくとも1つを備える、ステップと、
前記メータにプロセス流体を流すステップと、
前記メータに関連する低圧位置を規定するステップと、
前記低圧位置における前記プロセス流体の温度を測定するステップと、
前記低圧位置においてフラッシングが検出可能になるまで、前記プロセス流体の静圧を調整するステップと、
フラッシングが検出可能である場合に、前記プロセス流体の真の蒸気圧を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記温度を測定するステップが、IRサーモグラフィを含む、請求項1に記載の流体蒸気圧の測定方法。
【請求項3】
前記フラッシングを検出するステップが、光学分析を含む、請求項1に記載の流体蒸気圧の測定方法。
【請求項4】
前記低圧位置が、流量計マニホールドを含む、請求項1に記載の流体蒸気圧の測定方法。
【請求項5】
前記低圧位置が、差圧要素を含む、請求項1に記載の流体蒸気圧の測定方法。
【請求項6】
前記プロセス流体の前記温度を測定するステップと、
前記温度及び前記真の蒸気圧から、リード蒸気圧を計算するステップと
を含む、請求項1に記載の流体蒸気圧の測定方法。
【請求項7】
前記リード蒸気圧が測定された時点で、蒸気/液体比を測定するステップと、
前記リード蒸気圧が測定された前記時点で、前記蒸気/液体比を前記リード蒸気圧と関連付けるステップとを含む、
請求項1に記載の流体蒸気圧の測定方法。
【請求項8】
プロセス流体の真の蒸気圧を測定するためのシステム(300)であって、
流量計及び密度計の少なくとも1つを備えるメータ(5)と、
前記メータに関連する低圧位置と、
前記メータ(5)と流体連通する圧力調整器(308)と、
前記プロセス流体と流体連通する圧力センサ(312)と、
前記低圧位置で温度を測定するように構成された温度センサと、
前記メータ(5)及び前記圧力センサ(312)と通信するメータ電子機器(20)であって、前記低圧位置でのフラッシングが検出されるまで、前記プロセス流体の静圧を調整するように前記圧力調整器(308)を制御し、フラッシングが検出可能である場合に、前記プロセス流体の真の蒸気圧を計算するように構成される、メータ電子機器(20)と、
を備えるシステム(300)。
【請求項9】
前記温度センサが、IRサーモグラフを備える、請求項8に記載のシステム(300)。
【請求項10】
光学センサが、フラッシングを検出するように構成される、請求項8に記載のシステム(300)。
【請求項11】
前記低圧位置が、流量計マニホールドを含む、請求項8に記載のシステム(300)。
【請求項12】
前記低圧位置が、差圧要素を含む、請求項8に記載のシステム(300)。
【請求項13】
前記メータ電子機器(20)が、前記リード蒸気圧が測定された時点で、蒸気/液体比を測定し、前記リード蒸気圧が測定された前記時点で、前記蒸気/液体比を前記リード蒸気圧と関連付けるように構成された、請求項8に記載のシステム(300)。
【請求項14】
前記メータ(5)が、
1つ又はそれ以上の導管(103、103’)と、
前記1つ又はそれ以上の導管(103、103’)への振動信号を生成するように構成され、前記1つ又はそれ以上の導管(103、103’)に取り付けられた、少なくとも1つのドライバ(104)と、
前記1つ又はそれ以上の導管(103、103’)から振動信号を受信するように構成され、前記1つ又はそれ以上の導管(103、103’)に取り付けられた、少なくとも1つのピックオフ(105、105’)と
を備える、請求項8に記載のシステム(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動式メータに関し、より詳細には、リアルタイム蒸気圧測定のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リード蒸気圧(RVP)は、燃料の品質基準を測定し施行するための最も広く認識されている特性の1つである。真の蒸気圧は、ガソリン、液体天然ガス、及び液化石油ガスなどの揮発性流体の流動及び貯蔵を取り扱う用途では、重要な特性である。蒸気圧は、取扱い中に揮発性流体がどのように機能し得るかの指標を提供し、さらに、気泡が形成され圧力が高まる可能性が高い条件を示す。このように、揮発性流体の蒸気圧測定は安全性を高め、輸送容器及びインフラストラクチャの損傷を防止する。
【0003】
流体の蒸気圧が高すぎると、ポンピング及び移送動作中にキャビテーションが発生する可能性がある。さらに、容器又はプロセスラインの蒸気圧は、温度変化のために安全レベルを超えて上昇する可能性がある。したがって、貯蔵及び移送に先立ってRVPを知ることがしばしば必要となる。
【0004】
通常、RVPは、サンプルを取得し、それらを試験のために実験室に移して、サンプルの値を測定することによって決定される。このことは、規制上の燃料品質基準の施行にとって困難な問題を引き起こす。最終結果の取得が遅延し、研究室の維持コストがかかり、サンプルの取り扱いに関して安全性及び法的証拠に脆弱性があるためである。真の蒸気圧は、これと同じプロセスによって測定されることが多く、実験室で測定されたRVPから、経験的測定値に基づくルックアップテーブル及びデータベースに依拠することによって、流動温度での真の蒸気圧に変換される。
【0005】
したがって、プロセス条件下で、連続的、リアルタイムに真の蒸気圧及び/又はRVPを測定することができるインライン装置又はシステムが必要とされている。このことは、本実施形態によって実現され、当分野の進歩が達成される。オンサイト測定では、定期的なサンプリングが不要となり、サンプル採取時と実験室での試験時との間で、流体特性が変化するリスクが完全に排除されるため、より信頼性が高い。さらに、リアルタイム測定を行うことによって、危険な状態を直ちに改善することができるため、安全性が向上する。さらに、単純なオンサイト検査で規制を施行し得るため、費用を節約し、ほとんど遅延やプロセス停止なしに検査及び施行の決定を行うことができる。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、流体の蒸気圧を測定する方法が提供される。本方法は、メータ電子機器を有するメータを設けるステップを含み、このメータには、流量計及び密度計のうちの少なくとも1つが含まれる。プロセス流体がメータを通って流れ、メータに関連する低圧位置が規定される。低圧位置におけるプロセス流体の温度が測定される。プロセス流体の静圧は、低圧位置でフラッシングが検出可能になるまで調整される。フラッシングが検出可能な場合の、プロセス流体の真の蒸気圧が測定される。
【0007】
一実施形態によれば、プロセス流体の真の蒸気圧を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、流量計及び密度計のうちの少なくとも1つを含むメータを備える。低圧位置がメータに関連付けられる。圧力調整器が、メータと流体連通している。圧力センサが、プロセス流体と流体連通している。温度センサが、低圧位置の温度を測定するように構成される。メータ電子機器が、メータ及び圧力センサと通信しており、このメータ電子機器は、圧力調整器を制御して、低圧位置でのフラッシングが検出されるまでプロセス流体の静圧を調整し、フラッシングが検出可能な場合にプロセス流体の真の蒸気圧を計算するように構成される。
【0008】
[態様]
一態様によれば、流体の蒸気圧を測定する方法が提供される。本方法は、メータ電子機器を有するメータを設けるステップを含み、このメータには、流量計及び密度計のうちの少なくとも1つが含まれる。プロセス流体がメータを通って流れ、メータに関連する低圧位置が規定される。低圧位置におけるプロセス流体の温度が測定される。プロセス流体の静圧は、低圧位置でフラッシングが検出可能になるまで調整される。フラッシングが検出可能な場合の、プロセス流体の真の蒸気圧が測定される。
【0009】
好ましくは、温度測定にはIRサーモグラフィを含む。
【0010】
好ましくは、フラッシング検出には光学的分析を含む。
【0011】
好ましくは、低圧位置は流量計マニホールドを備える。
【0012】
好ましくは、低圧位置は差圧要素を含む。
【0013】
好ましくは、この方法は、プロセス流体の温度を測定するステップと、温度及び真の蒸気圧からリード蒸気圧を計算するステップとを含む。
【0014】
好ましくは、この方法は、リード蒸気圧が測定された時点で蒸気/液体比を測定するステップと、リード蒸気圧が測定された時点で蒸気/液体比をリード蒸気圧と関連付けるステップとを含む。
【0015】
一態様によれば、プロセス流体の真の蒸気圧を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、流量計及び密度計のうちの少なくとも1つを含むメータを備える。低圧位置がメータに関連付けられる。圧力調整器が、メータと流体連通している。圧力センサが、プロセス流体と流体連通している。温度センサが、低圧位置の温度を測定するように構成される。メータ電子機器が、メータ及び圧力センサと通信しており、このメータ電子機器は、圧力調整器を制御して、低圧位置でのフラッシングが検出されるまでプロセス流体の静圧を調整し、フラッシングが検出可能な場合にプロセス流体の真の蒸気圧を計算するように構成される。
【0016】
好ましくは、温度センサは、IRサーモグラフを備える。
【0017】
好ましくは、光学センサは、フラッシングを検出するように構成される。
【0018】
好ましくは、低圧位置は流量計マニホールドを備える。
【0019】
好ましくは、低圧位置は差圧要素を含む。
【0020】
好ましくは、メータ電子機器は、リード蒸気圧が測定された時点で蒸気/液体比を測定し、リード蒸気圧が測定された時点で蒸気/液体比をリード蒸気圧と関連付けるように構成される。
【0021】
好ましくは、メータは、1つ又はそれ以上の導管と、1つ又はそれ以上の導管に振動信号を生成するように構成された、1つ又はそれ以上の導管に取り付けられた少なくとも1つのドライバ、並びに1つ又はそれ以上の導管から振動信号を受信するように構成された、1つ又はそれ以上の導管に取り付けられた、少なくとも1つのピックオフを備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による、流量計センサアセンブリを示す図である。
図2】一実施形態による、メータ電子機器を示す図である。
図3】一実施形態による、蒸気圧測定システムを示す図である。
図4】一実施形態による、蒸気圧測定方法を示す図である。
図5】一実施形態による、蒸気圧測定の別の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図5及び以下の説明は、本発明の最良の形態を作成及び使用する方法を、当業者に教示するための具体例を示す。本発明の原理を教示するために、いくつかの従来の態様は簡略化又は省略されている。当業者は、本発明の範囲内にある、これらの実施例からの変形を理解するであろう。当業者は、以下に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて、本発明の複数の変形を構成することができることを、理解するであろう。結果として、本発明は、以下に記載する具体例に限定されず、特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ限定される。
【0024】
例えば、振動密度計及びコリオリ流量計などの振動センサが一般に知られており、流量計の導管又は密度計を含む導管を通って流れる物質に関する、質量流量及び他の情報を測定するために使用される。例示的な流量計は、すべてJ.E.Smithらに対する、米国特許第4,109,524号明細書、米国特許第4,491,025号明細書、及び再発行特許第31,450号に開示されている。これらの流量計は、直線形状又は曲線形状の1つ又はそれ以上の導管を有する。例えば、コリオリ質量流量計の各導管構成は、単純な曲げタイプ、ねじりタイプ、又は結合タイプであり得る、固有振動モードのセットを有する。各導管は、好ましいモードで振動するように駆動することができる。
【0025】
いくつかのタイプの質量流量計、特にコリオリ流量計は、密度の直接測定を実行して、質量を密度で割った商を通じて、体積情報を提供するように動作することができる。例えば、Rueschによる米国特許第4,872,351号は、コリオリ流量計を使用して未知の多相流体の密度を測定する、ネット・オイル・コンピュータに関するものである。Buttlerら対する米国特許第5,687,100号は、振動管密度計として動作する質量流量計における、質量流量効果の密度測定値を補正する、コリオリ効果密度計を教示している。
【0026】
材料は、流量計の入口側に接続されたパイプラインから流量計に流入し、導管を通って導かれ、流量計の出口側を通って流量計を出る。振動システムの固有振動モードは、導管と導管内を流れる材料との合成質量によって、部分的に定義される。
【0027】
流量計を通る流れがない場合、導管に加えられる駆動力は、導管に沿ったすべての点を、同一の位相で、又は流量ゼロで測定される時間遅延である、小さな「ゼロオフセット」で振動させる。材料が流量計を通って流れ始めると、コリオリの力により、導管に沿った各点が異なる位相を有する。例えば、流量計の入口端の位相は、中央のドライバ位置の位相よりも遅れるが、出口の位相は、中央のドライバ位置の位相よりも先行する。導管上のピックオフは、導管の動きを表す正弦波信号を生成する。ピックオフから出力された信号は、ピックオフ間の時間遅延を決定するために処理される。2つ以上のピックオフ間の時間遅延は、導管を通って流れる材料の質量流量に比例する。
【0028】
ドライバに接続されたメータ電子機器は、ドライバを動作させ、ピックオフから受信した信号から、プロセス材料の質量流量及び/又は他の特性を測定するための駆動信号を生成する。このドライバは、周知である多くの構成のうちの、1つを備えることができる。しかしながら、磁石及び対向駆動コイルが、流量計業界において大きな成功を収めている。交流電流を駆動コイルに流して、導管を所望の導管振幅及び導管周波数で振動させる。ドライバ構成と非常に類似した磁石及びコイルの構成として、ピックオフを設けることも当分野では知られている。ドライバが運動を誘導する電流を受け取る間、ピックオフでは、ドライバによって提供されるこの運動を使用して、電圧を誘導することができる。ピックオフによって測定される時間遅延の大きさは非常に小さく、しばしばナノ秒単位で測定される。したがって、トランスデューサ出力を非常に正確にする必要がある。
【0029】
図1は、流量計5を示し、限定するものではないが、例えばこれをコリオリ流量計又は密度計などの、任意の振動式メータとすることができる。流量計5は、センサアセンブリ10及びメータ電子機器20を備える。センサアセンブリ10は、プロセス材料の質量流量及び密度に応答する。メータ電子機器20は、リード線100を介してセンサアセンブリ10に接続され、経路26にわたる密度、質量流量、及び温度情報、並びに他の情報を提供する。センサアセンブリ10は、フランジ101及び101’、一対のマニホールド102及び102’、一対の平行な導管103(第1の導管)及び103’(第2の導管)、ドライバ104、測温抵抗体(RTD)などの温度センサ106、並びに、磁石/コイルピックオフ、ひずみゲージ、光学センサ、又は当分野で公知である他の任意のピックオフなどの、一対のピックオフ105及び105’を含む。導管103は入口脚部107及び出口脚部108を有し、導管103’は入口脚部107’及び出口脚部108’を有する。導管103及び103’は、それらの長さに沿って少なくとも1つの対称位置で曲がり、それらの長さ全体にわたって基本的に平行である。各導管103及び103’は、それぞれ軸W及びW’を中心に振動する。
【0030】
導管103の脚部107及び108、並びに導管103’の脚部107’及び108’は、導管取付けブロック109及び109’に固定的に取り付けられ、次いで、これらのブロックは、マニホールド102及び102’に固定的に取り付けられる。これにより、センサアセンブリ10を通る連続的に閉じた材料経路が提供される。
【0031】
フランジ101及び101’が、測定されているプロセス材料を運ぶプロセスライン(図示せず)に接続されると、材料は、フランジ101の第1のオリフィス(図1の視点では見えない)を通って流量計5の第1の端部110に入り、マニホールド102を通って導管取付けブロック109に導かれる。マニホールド102内で材料は分割され、導管103及び103’を通って送られる。導管103及び103’を出ると、プロセス材料は、マニホールド102’内で単一の流れに再結合され、その後、フランジ101’によってプロセスライン(図示せず)に接続された、第2の端部112を出るように送られる。
【0032】
導管103及び103’は、それぞれ曲げ軸W-W及びW’-W’を中心として、実質的に同じ質量分布、慣性モーメント、及びヤング率を有するように選択され、導管取付けブロック109及び109’に適切に取り付けられる。導管103及び103’のヤング率は温度と共に変化し、この変化が流量及び密度の計算に影響を及ぼすため、導管の温度を連続的に測定するために、導管103及び103’の少なくとも1つには、温度センサ106が取り付けられる。導管の温度、したがってそこを通過する所与の電流に対して温度センサ106の両端に現れる電圧は、主に導管を通過する材料の温度に左右される。導管103及び103’のあらゆる温度変化に起因する、導管103及び103’の弾性率の変化を補償するために、温度センサ106の両端に現れるこの温度依存電圧が、メータ電子機器20によって周知の方法で使用される。温度センサ106は、メータ電子機器20に接続されている。
【0033】
両方の導管103及び103’は、流量計の第1の位相外れ曲げモードと呼ばれるモードで、それぞれの曲げ軸W及びW’を中心として反対方向に、ドライバ104によって駆動される。このドライバ104には、導管103’に取り付けられた磁石、及び導管103に取り付けられた対向コイルなど、周知である多くの構成のいずれかを含むことができ、両方の導管を振動させるために、ここに交流電流が流される。適切な駆動信号が、メータ電子機器20によって、リード線113を介してドライバ104に印加される。この説明は2つの導管103及び103’に向けられているが、他の実施形態では、単一の導管のみを設けてもよく、又は3つ以上の導管を設けてもよいことを理解されたい。複数のドライバ、及び第1の位相外れ曲げモード以外のモードで導管を駆動するドライバ(複数可)のための、複数の駆動信号を生成することも、本発明の範囲内である。
【0034】
メータ電子機器20は、リード線114上の温度信号と、リード線115及び115’上にそれぞれ現れる左右の速度信号とを受信する。メータ電子機器20は、ドライバ104に対してリード線113上に現れる駆動信号を生成して、導管103及び103’を振動させる。メータ電子機器20は、左右の速度信号及び温度信号を処理して、センサアセンブリ10を通過する材料の質量流量及び密度を計算する。この情報は、他の情報と共に、メータ電子機器20によって経路26を介して利用手段に適用される。メータ電子機器20の回路の説明は、本発明を理解するために必要なものではなく、この説明を簡潔にするために省略してある。図1の説明は、単にある実現可能な振動式メータの動作の一実施例として提供されており、本発明の教示を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0035】
コリオリ流量計の構造が記載されているが、コリオリ質量流量計によって提供される追加の測定能力なしに、振動管又はフォーク密度計で本発明を実施できることは、当業者に明らかであろう。
【0036】
図2は、一実施形態による流量計5のメータ電子機器20のブロック図である。動作中、流量計5は、質量流量、体積流量、個々の流れ成分の質量流量及び体積流量、並びに、例えば、個々の流れ成分の体積流量及び質量流量の両方を含む総流量の測定値又は平均値のうちの、1つ又はそれ以上を含む、出力され得る様々な測定値を提供する。
【0037】
流量計5は振動応答を生成する。振動応答は、メータ電子機器20によって受信及び処理されて、1つ又はそれ以上の流体測定値を生成する。この値は、監視、記録、保存、合計、及び/又は出力することができる。
【0038】
メータ電子機器20は、インターフェース201、このインターフェース201と通信する処理システム203、及びこの処理システム203と通信する記憶システム204を含む。これらの構成要素は別個のブロックとして示されているが、メータ電子機器20は、統合された構成要素及び/又は個別の構成要素の様々な組み合わせで構成され得ることを理解されたい。
【0039】
インターフェース201は、流量計5のセンサアセンブリ10と通信するように構成される。インターフェース201は、リード線100(図1参照)に結合し、例えば、ドライバ104、ピックオフセンサ105及び105’、並びに温度センサ106と信号を交換するように構成することができる。インターフェース201は、経路26を介して、例えば外部装置と通信するように、さらに構成されてもよい。
【0040】
処理システム203には、任意の方法の処理システムを含めることができる。処理システム203は、流量計5を動作させるために、記憶されたルーチンを読み出し、実行するように構成される。記憶システム204は、流量計ルーチン205、バルブ制御ルーチン211、駆動ゲインルーチン213、及び蒸気圧ルーチン215などの、ルーチンを記憶することができる。記憶システム204は、測定値、受信値、作業値、及び他の情報を記憶することができる。いくつかの実施形態では、記憶システムは、質量流量(m)221、密度(ρ)225、密度閾値(226)、粘度(μ)223、温度(T)224、圧力209、駆動ゲイン306、駆動ゲイン閾値302、ガス混入閾値244、ガス混入分率248、及び当分野で公知である他の任意の変数を記憶する。各ルーチン205、211、213、215には、言及した任意の信号、及び当分野で公知である他の変数を含むことができる。他の測定/処理ルーチンも考慮されており、それらは本明細書及び特許請求の範囲内にある。
【0041】
流量計ルーチン205は、流体定量値及び流量測定値を、生成及び記憶することができる。これらの値は、実質的に瞬時の測定値を含むことができ、又は、合計値若しくは累積値を含むことができる。例えば、流量計ルーチン205は、質量流量測定値を生成し、それらを、例えば記憶システム204の質量流量221記憶部に記憶することができる。流量計ルーチン205は、例えば、密度測定値225を生成し、それらを記憶システム204に記憶することができる。質量流量221及び密度225の測定値は、前述のように、また当分野で知られているように、振動応答から決定される。質量流量及び他の測定値は、実質的に瞬時値を含むことができ、サンプルを含むことができ、ある時間間隔にわたる平均値を含むことができ、又はある時間間隔にわたる累積値を含むことができる。この時間間隔は、特定の流体状態、例えば液体のみの流体状態、あるいは液体及び混入ガスを含む流体状態が検出される、時間ブロックに対応するように選択することができる。さらに、他の質量流量及び体積流量、並びに関連する定量値が考慮されており、これらは本明細書及び特許請求の範囲内である。
【0042】
上述したように、駆動ゲイン306は、流量ゼロ/偽合計状態を示す信号として利用することができる。駆動ゲイン閾値302を使用して、流れの期間、流量ゼロ、単相/二相流体の相境界、及びガス混入/混合相流を識別することができる。同様に、密度測定値225に適用される密度閾値226も、ガス混入/混合相流を識別するために、駆動ゲイン306とは別個に、又は一緒に使用することができる。駆動ゲイン306は、例えば、限定はしないが、液相や気相など異なる密度の流体の存在に対する、流量計5の導管振動の、感度の尺度として利用することができる。エネルギー入力及び結果として生じる振幅に対する減衰の複合効果は、拡張駆動ゲインとして知られており、これは、100%を超える電力が利用可能であった場合に、目標振動振幅を維持するために、必要となる電力の推定値を表す。
【数1】
【0043】
本明細書で提供される実施形態において、駆動ゲインという用語は、いくつかの実施形態では、駆動電流、ピックオフ電圧、又は特定の振幅で流管103及び103’を駆動するのに必要な電力量を示す、測定又は導出された任意の信号を指すことができることに留意されたい。関連する実施形態では、駆動ゲインという用語は、ノイズレベル、信号の標準偏差、減衰関連測定値、及び混合相流を検出するための当分野で公知である他の任意の手段といった、多相流を検出するために利用される、任意の尺度を包含するように拡張することができる。一実施形態では、これらの尺度をピックオフセンサ105及び105’にわたって比較して、混合相流を検出することができる。
【0044】
振動する導管103及び103’は、管内のすべての流体が密度に関して均質である限り、それらの第1の共振周波数で振動を維持するために、ほとんどエネルギーを必要としない。異なる密度の2つ(又はそれ以上)の非混和性成分からなる流体の場合、管の振動によって、各成分で大きさの異なる変位が引き起こされる。この変位の差はデカップリングとして知られており、このデカップリングの大きさは、成分の密度の比、並びに逆ストークス数に依存することが明らかとなっている。
【数2】

ここで、ωは振動周波数、νは流体動粘度、γは粒子半径である。気泡の場合のように、粒子は流体よりも低い密度を有し得ることに留意されたい。
【0045】
成分間で生じるデカップリングは、管の振動に減衰を生じさせるため、振動を維持するためにより多くのエネルギーを必要とし、さもなければ一定量のエネルギー入力に対して振動振幅が低減する。
【0046】
図3を参照すると、一実施形態による蒸気圧測定システム300が提供される。入口304及び出口307を有するプロセスライン303が提供され、プロセスライン303は、入口304を通ってプロセスライン303に入るプロセス流体を運ぶように構成される。プロセスライン303を通る流体の流れを制御する、上流圧力調整器308が設けられている。プロセスライン303を通る流体の流れを制御する、下流圧力調整器310が設けられている。メータ電子機器20を有する流量計5が、上流圧力調整器308と下流圧力調整器310との間に配置され、上流圧力調整器308を通過するプロセス流体を受け取るように構成される。システム300には、圧力センサ312及び温度センサ314も存在する。圧力センサ312及び温度センサ314は、流量計5の下流に示されているが、これらのセンサ312及び314は、流量計5の前段に配置してもよく、又は流量計5内に組み込んでもよい。
【0047】
低圧点は、一般に摩擦圧力損失、速度による静圧の低下、及びベルヌーイの定理によって規定されるため、一実施形態では、速度制御システムで圧力を制御することができる。そのような実施形態では、可変速ポンプ及び圧力制御弁は、共に流体速度を調整することができる。この実施形態では、流量を増加させてもメータ内の静圧が増加しないように、制御弁はメータより下流に配置されてもよく、ポンプはメータより上流に配置される。したがって、メータ内の静圧は、上流弁で静圧を低減すること、及び下流にあるポンプとの両方によって制御することもできる。メータ内の速度を増加させることによっても、静圧は減少する。メータ管内の圧力は、上流と下流の圧力、及び流速を知ることによって予測することができる。ポンプ速度を上げるか、又はフラッシングが検出されるまでバルブを閉じることによって、メータ内の圧力が下げられる。
【0048】
メータ電子機器20は、上流圧力調整器308、下流圧力調整器310、圧力センサ312、及び温度センサ314と通信している。メータ電子機器20は、上流圧力調整器308及び下流圧力調整器310を制御することができる。メータ電子機器20は、圧力センサ312からの圧力測定値、及び温度センサ314からの温度測定値を受信する。メータ電子機器20は、プロセス流体の圧力を監視し、蒸気圧に達したことを示す第2の相の導入を流量計5が検出するまで、その圧力を低下させるように構成される。一実施形態では、単一の圧力調整器308のみが存在する。研究により、高精度の温度測定を行うことで、フラッシング/キャビテーションの非常に初期の兆候を検出し得ることが明らかになっている。様々な実施形態では、極端に局所的な温度低下が検出され、これは(気化潜熱による)相変化を示すものである。したがって、フラッシングは、これが最初に発生した位置及び時間で検出される。
【0049】
様々な実施形態では、振動管センサ又は専用の圧力降下要素の形状と配置によって、フラッシングが最初に発生する場所を正確に予測することが可能となる。これにより、温度測定をその点に集中させることができる。したがって、様々な実施形態では、図4の方法350に示すように、ステップ352で低圧位置が規定される。
【0050】
プロセス流体が通常のプロセス条件下で単相である場合、例えば、ステップ354に示すように、上流圧力調整器308を部分的に閉じることによって圧力を下げることができる。一実施形態では、低圧位置における温度変化を検出するために高分解能IRサーモグラフィが利用される。一実施形態では、IRサーモグラフィは、フラッシングの発生を検出するために、光学センサ及び光学分析と組み合わされる。最初のフラッシングの厳密な位置が正確に知られることから、特にIRサーモグラフィについて述べるが、十分な感度を有する他の温度測定装置を使用することもできると考えられる。
【0051】
低圧位置、したがってフラッシングが最初に発生する点は、一般に、振動管センサの出口マニホールド102’の近くにある。フラッシングは、従来の方法によって検出可能な位置より、実質的に手前の位置で発生する。したがって、ステップ356では、この位置で温度測定を行うことで、極めて早期のフラッシング検出が可能となる。フラッシング検出により、ステップ358では、単相/二相流体の相境界を特定することができる。また、フラッシングに関連する温度が測定され、記録される。ステップ360では、フラッシングが検出された時点の温度を考慮して、真の蒸気圧が計算される。
【0052】
一実施形態では、そのような変化を検出するのに十分な感度を有する温度測定装置が、流量計マニホールドに配置される。
【0053】
一実施形態では、蒸気圧測定には、蒸気圧がどの蒸気/液体比で測定されるか指定することを、含めることができる。この方法では、蒸気0%でのフラッシングが検出可能である。振動管センサでの他の測定値を使用して、その増加につれて蒸気/液体比を決定することもでき、その結果、蒸気圧は、0%から始まる複数の蒸気/液体比で測定することができる。
【0054】
一実施形態では、0%以外の蒸気/液体比で蒸気圧を測定する必要がないと考えられる場合、必要な圧力降下が現れるように差圧要素を設けることができる。この点での温度測定又はサーモグラフィが、フラッシング検出に利用される。
【0055】
図5を参照すると、システム300で使用される蒸気圧測定方式の一実施例を説明する、フロー図400が示されている。ステップ402では、システム300内のプロセス流体の圧力が測定される。これは、圧力センサ312によって行われる。ステップ403では、システム300内のプロセス流体の温度が測定される。プロセス流体が通常のプロセス条件下で単相である場合、ステップ404に示すように、上流圧力調整器308を部分的に閉じることによって流動圧を下げることができる。ステップ406では、駆動ゲイン及び/又は密度を測定することができ、上述したように、これらを多相流の存在を判定するために利用すること、並びに単相/二相流体相境界を特定するために利用することができる。ステップ402でプロセス流体の圧力が測定されており、ステップ404でプロセス流体の圧力が低下しているため、ステップ406では、駆動ゲイン及び/又は蒸気圧に達したことを示す密度測定値によって、第2の相の導入が特定される。ステップ408では、第2の相の存在が検出された点における圧力及び温度の両方を記録することによって、真の蒸気圧の検出が示される。ステップ410では、真の蒸気圧が記録された時点の温度を考慮して、測定された真の蒸気圧からRVPが計算される。
【0056】
プロセス流体が既にいくらかの蒸気を含む場合、これは駆動ゲイン及び/又は密度を測定することによって検出され、下流圧力調整器310を部分的に閉じて、第2の相がもはや存在しない時点での蒸気圧及び温度を測定する目的で、圧力を増加させることができることに留意されたい。いずれの場合も、プロセス流体の真の蒸気圧を示すために利用されるのは、単相/二相流体の相境界、及びこの境界におけるプロセス流体に関連する温度/圧力である。
【0057】
他の実施形態では、上流/下流圧力調整器の構成が、蒸気圧に達するのに十分な圧力変化をもたらさない場合には、他の圧力調整器及び圧力制御方法を使用することができる。他の実施形態では、真の蒸気圧(TVP)と標準温度での蒸気圧(例えば、リード蒸気圧(RVP))との間で変換する能力を提供するために、温度測定も含めることができる。TVPは、測定された温度における、液体製品の実際の蒸気圧である。TVPを直接測定することは困難であり、測定装置内の液体の組成や温度に依存する。TVP及び温度が分かれば、他の任意の温度における真の蒸気圧及び/又はRVPは、メータ電子機器20に記憶された経験的相関データから計算することができる。経験的相関データには、ルックアップテーブル、数学的アルゴリズム、及び/又は数学的曲線を含むことができる。直接RVP測定では、通常、実験室的分析のためにサンプルを送ることが必要となる。
【0058】
一実施形態では、システム300は、主流流れのサンプルのみを測定するスリップ流れ内に配置され、したがって材料プロセスへの影響が低減される。RVPは組成に大きく依存するため、組成が合理的に均質である場合に、スリップ流れのサンプルは効果的になる。これにより、システムのサイズを小さくし、コストを抑え、目立たなくすることができる。
【0059】
上記の実施形態の詳細な説明は、本発明の範囲内にあると本発明者らが考える、すべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者であれば、上述した実施形態の特定の要素を様々に組み合わせたり排除したりして、さらなる実施形態を作成することができ、そのようなさらなる実施形態は、本発明の範囲及び教示に含まれることを認識するであろう。上述の実施形態を全体的又は部分的に組み合わせて、本発明の範囲及び教示内にある、追加の実施形態を作成することができることも、当業者には明らかであろう。
【0060】
したがって、本発明の具体的な実施形態及び実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な均等な変更が可能である。本明細書で提供される教示は、上述され、添付の図面に示されている実施形態だけでなく、他の振動システムにも適用することができる。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲から判断されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】