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特表2022-550668半透光性光起電力デバイス及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】半透光性光起電力デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
H01L31/04 120
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022511287
(86)(22)【出願日】2020-08-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2020073584
(87)【国際公開番号】W WO2021037773
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19461571.2
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522065587
【氏名又は名称】サウレ スポルカ アクシイナ
【氏名又は名称原語表記】SAULE SPOLKA AKCYJNA
【住所又は居所原語表記】UL. POSTEPU 14B, 02-676 WARSZAWA, POLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】バブ ヴィヴェク
(72)【発明者】
【氏名】フォルガチ デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151CB13
5F151CB24
5F151DA01
5F151DA20
5F151EA03
5F151EA09
5F151EA10
5F151EA11
5F151EA16
5F151FA01
5F151FA02
5F151FA03
5F151FA04
5F151GA03
5F151GA05
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】
半透明の基板120と、少なくとも1つの透光性光起電力セル100とを備える半透光型光起電力デバイスであって、光起電力セル100は、基板120上に配置された積層体110を備え、積層体110は、前面電極層112、背面電極層113、及びアノード層とカソード層との間のペロブスカイト光活性層111を備える、透過型光起電力デバイスであって、半透明の基板120は、透光性の光起電力セル100を備える。
背面電極層113はカーボンからなり、積層体110は、少なくとも背面電極層113及びペロブスカイト光活性層111を通って延びるレーザー製の半透光性アパーチャ130を含み、半透光性アパーチャ130は、電力変換に寄与する層の積層体110によって完全に囲まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明の基板(120)及び少なくとも1つの半透光性の光起電力セル(100)を備え、
前記光起電力セル(100)は、前記基板(120)上に形成された積層体(110)を有し、前記積層体(110)は、
前面電極層(112)、
背面電極層(113)、及び
アノード層とカソード層との間にペロブスカイト光活性層(111)を有し、
前記背面電極層(113)は炭素を含み、
前記積層体(110)は、少なくとも前記背面電極層(113)と単一の前記光起電力セル(100)の前記ペロブスカイト光活性層(111)を通る、レーザー加工により形成された半透光性開口部(130)を有し、
前記半透光性のアパーチャ(130)は、電力変換に寄与する前記積層体(110)により完全に囲まれ、前記積層体(110)が電気的に連続することを特徴とする半透光型光起電力デバイス。
【請求項2】
前記積層体(110)は、
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電極層(112)との間に設けられた前面電荷輸送層(112a)と、
前記ペロブスカイト層(111)と炭素を含む前記背面電極層(113)との間に設けられた背面電荷輸送層(113a)とをさらに含む、
請求項1記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項3】
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電荷輸送層(112a)との間に設けられた前面パッシベーション層(112b)及び/又は前記ペロブスカイト層(111)と前記背面電荷輸送層(113a)との間に設けられた背面パッシベーション層(113b)とを、さらに含む、
請求項2記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項4】
前記背面電極層(113)は10nmから1000μmの厚さを有する、
請求項2又は3記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項5】
前記光起電力セル(100)を複数有し、それぞれ、
1pmから1000cmの面積の前記半透光性のアパーチャ(130)を有し、隣接する2つの前記半透光性のアパーチャ(130)の間隔が1pmから100cmである、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項6】
n-i-p構造の前記光起電力セルを有する、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項7】
前記光起電力セル(100)の層の前記積層体(110)の構成が、
AZO/SnOi/ペロブスカイト/PTAA/炭素
である、請求項6記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項8】
半透明の基板(120)を準備するステップと、
前記基板(120)上に光起電力セル(100)の積層体(110)を形成するステップとを有し、
前記積層体(110)は、
前面電極層(112)、背面電極層(113)、及び前記前面電極層(112)と前記背面電極層(113)の間にペロブスカイト光活性層(111)とを含み、
前記光起電力セル(100)の前記積層体(110)を形成するステップは、
炭素により前記背面電極層(113)を形成するステップを含み、
さらに、前記光起電力セル(100)の前記積層体(110)において、前記半透光性のアパーチャ(130)をレーザーパターニング(P4)するステップを含み、
前記半透光性のアパーチャ(130)は、少なくとも前記背面電極層(113)と少なくとも前記ペロブスカイト光活性層(111)の一部に延在し、電力変換に寄与する前記積層体(110)に完全に囲まれていることを特徴とする、
少なくとも1つの半透光の光起電力セル(100)を含む半透光型光起電力デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記半透光性のアパーチャ(130)のそれぞれは、単一ステップのレーザー処理(P4)により形成される、
請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記半透光性のアパーチャ(130)は、ナノ秒IRレーザを用いて形成される、
請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
前記半透光性のアパーチャ(130)は、前記光起電力セル(100)のそれぞれの前記積層体(110)に複数形成される、
請求項8乃至10のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
前記半透光性のアパーチャ(130)は、1pmから1000cmの面積を有し、
隣接する2つの前記半透光性開口(130)の間隔は1pmから100cmである、
請求項8乃至11のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項13】
前記積層体(110)を形成するステップは、さらに、
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電極層(112)との間に前面電荷輸送層(112a)を形成するステップと、
前記ペロブスカイト層(111)と前記炭素を含む前記背面電極層(113)との間に背面電荷輸送層(113a)を形成するステップとを有する、
請求項8乃至12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
前記積層体(110)を形成するステップは、さらに、
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電荷輸送層(112a)との間に前面パッシベーション層(112b)を形成するステップ、及び/又は
前記ペロブスカイト層(111)と前記背面電荷輸送層(113a)の間に背面パッシベーション層(113b)を形成するステップを有する、
請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
前記炭素を含む前記背面電極層(113)を形成するステップは、
カーボンペーストを準備するステップと、
前記光起電力セルの前記積層体(110)の最上層としてカーボン層を形成するステップと、
前記積層体(110)での前記カーボン層を乾燥させ炭素を含む前記背面電極層(113)を形成するステップとを有する、
請求項8乃至14のいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半透光型(translucent)光起電力デバイス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜ペロブスカイト型の光起電力デバイス(PVデバイス)は、高い吸収係数、高い電力変換効率、軽量化、高速生産性などの点で魅力的なデバイスである。
【0003】
これらのデバイスの望ましい特徴は、半透明性(セミトランスペアレンシー)又は半透光性(トランスルーセンシー)であることであり、これらはエネルギー消費量の一定の増加に関連している。半透明型及び半透光型の光起電力デバイス、特に軽量で好ましくはフレキシブルなものは、窓やその他のシースルー面に適用するのに適している。そのため、屋根や壁などの不透明な面だけでなく、ビルのガラス壁、自動車の窓や車体へのステッカー、携帯電話やタブレット端末、ノートパソコンなどの電子機器のケースのような形態をとることができる。
【0004】
ペロブスカイト型光起電力デバイスの半透明性/半透光性は、3つの異なる方法で得られることが知られている。第1の方法は、半透明材料を使用することで、デバイスに半透明性を提供する方法である。第2の方法は、光起電力デバイスの各層に金属などの不透明な(光を通さない)材料を使用し、続いて不透過型材料(遮光部材)を部分的に除去することで、シースルー孔(透光孔)を形成し、それによりデバイスを光が通過できるようにする方法である。除去は通常、機械的なスクラブやレーザーアブレーション(レーザーによる切除)によって達成される。第3の方法は、導電性ポリマー層上に金属をグリッド状に堆積し、半透光性を持たせる方法である。この堆積は、インクジェットやスクリーンなど、さまざまな印刷技術によって行われる。
【0005】
上記第1の方法で得られた光起電力デバイスは一般に「半透明型(semi-transparent:セミトランスペアレント)」と呼ばれ、第2、第3の方法で得られたものは「半透光型(translucent:トランスルーセント)」と呼ばれる。
【0006】
レーザーアブレーションは、光起電力デバイスに必要な半透光性を提供するが、光起電力セルの作動材料の一部を除去してしまうため、光起電力デバイス全体の効率が低下する。
しかし、ペロブスカイト型光活性層を持つような、実質的に高効率な光起電力デバイスでは、この欠点は無視できる。
さらに、得られた半透光型デバイスの効率は、アブレーション領域の大きさを増減することで制御可能であり、必要な半透光性とアブレーション材料の体積との適切なバランスが、個々の用途のニーズに応じて光起電力デバイスの必要な特性が得られる。
【0007】
それにもかかわらず、半透光型光起電力デバイスの分野で依然として重要な問題点は、アブレーションの方法そのものに関連しており、従って、透光性をもたらすために形成されたシースルーアパーチャ(透光孔)の特性とも関連している。また、半透光型光起電力デバイスは、使用する材料によっては赤色系の高い透光度を示すものがあり、それにより適用範囲が限定される。
【0008】
それとは異なり、半透光ペロブスカイト型の光起電力デバイスは、ニュートラルカラー半透光性(無彩色透光性)を特徴とする。さらに、ペロブスカイト型光起電力デバイスは高い電力変換効率を示すため、半透光性のシースルー開口部(アパーチャ)が形成された半透光型光起電力デバイスの分野でも利用可能である。
【0009】
科学雑誌「Translucent、Color-neutral and Efficient Perovskite Thin Film Solar Modules L.Rakocevic、et al,J.Mater.Chem.C、2018、DOI:10.1039/C7TC05863B」 には、半透光性のアパーチャがレーザーアブレーションと機械的スクラビングの両方によって得られる半透光型のペロブスカイト光起電力デバイスが記載されている。本デバイスは、プレーナー型(平面型)n-i-p構造のペロブスカイト型ソーラー光起電力セルモジュールで構成される。このモジュールは、モノリシックに相互接続された光起電力セルで構成されている。光起電力デバイスの製造方法は、不透明なデバイスを形成し、その後、ストリップデザインの追加のパターニング(P4と呼ばれる)を適用することからなる。P4パターニング法では、底部コンタクト層、正孔(ホール)輸送層、ペロブスカイト光活性層、電子輸送層の4つの層の除去する。しかしながら、パターニングP4では、前面(フロント)コンタクト層、すなわち半透明基板上に直接形成された電極を除去しない。パターニングP4は、一実施形態ではピコ秒レーザーアブレーションを使用し、第2の実施形態では機械的スクラビング法を使用して行われる。得られたストリップは互いに平行であり、不透明ストリップと透明ストリップとの交互のデザイン(パターン)を形成し、それぞれの不透明なストリップが単一のモジュールとして機能する。従って、形成された半透光性のアパーチャは、ある程度、1つの光起電力セルを、半透明の前面電極層に形成された電気的に接続された複数の小さなストリップ状(帯状)構造に分割する。そのため、そのデバイスの半透光性のアパーチャは、電力変換に寄与する層のスタック層で完全に囲まれていない(特に、レーザーアブレーション時の上部金属電極の剥離の観点から、P4周辺は非活性である)。この文献は、両方の方法の欠点である,レーザーパターニングが光起電力デバイスの機能層の剥離などの損傷を引き起こすことについて記載している。
【0010】
さらに、特許公報US9257592には、複数の半透光性アパーチャからなる光起電力デバイスが記載されている。このデバイスは、基板、第1電極層、光導電層、及び最外層の第2電極層(金属製)から構成されている。第1の半透光性アパーチャは第2の電極層上に形成され、一方、アパーチャはさらに光導電層まで深さ方向に延長されて、第1の半透光性アパーチャに対応する複数の第2の半透光性アパーチャが形成されていることを特徴としている。各第2の半透光性アパーチャの投影面積は、対応する第1の半透光性アパーチャの投影面積よりも小さい。第1、第2の半透光性アパーチャの面積の大きさが異なるため、短絡を防ぐことができる。しかし、この方法では、第1と第2の半透光性アパーチャを別々に形成するために、複雑な多段階のレーザー法を必要とする。なぜなら、もしレーザー切断をすべての層に対して一度に行うと、熱効果により第2の電極金属層が溶けてしまい、導電層がブリッジして短絡の可能性があるからである。
そのため、第1のステップで第2電極金属層を除去し(大面積の穴を形成)、第2のステップでそれ以上の層を除去する(小面積の穴を形成する)。さらに、そのデバイスの半透光性アパーチャは、電力変換に寄与するスタック層(積層体)によって完全には囲まれていない(特に、アパーチャの周囲に上部電極がないことを考慮すると、その周囲は非活性である)。
【0011】
WO2019/070977A1は、ペロブスカイト光活性材料を用いた光起電力モジュールの大規模な製造方法を記載しているが、モジュールの透光性については明示的に言及していない。本開示によれば、セルは、それぞれのセルを分離するため、それぞれの層のレーザーによる又は機械的なスクライビングの使用(パターニングP1~P3)によって、基板(好適にはガラス)上で処理され得る。
バック(背面側)の電極はカーボン製でもよいが、カーボンは使用可能な多くの材料の1つであるため、この材料を使用することの特別な利点はない。
【0012】
CN109273608Aには、カーボンの代わりに金属でできた少なくとも底部電極層を通って延びる、接線状のレーザーで作られたアパーチャを有する透光型光起電力セルが記載されている。
これらのアパーチャはP3パターニングステップで作られ、単一の光起電力セルの層に完全に囲まれているわけではない。
【0013】
CN108574048Aには、ペロブスカイト型光活性層とカーボンペーストからなる底部電極を含む光起電力モジュールが記載されている。この文献では、カーボン電極の利点として、低コスト、安定性、プロセスの簡便さなどを挙げている。また、ユニット自体の正極と負極を絶縁層で分離することで、短絡を回避する方法についても開示しいる。しかしながら、本開示による光起電力モジュールは、単一のセル内において、セルの光を透過するために設けられたアパーチャを構成しない。各セルの層の積層体によって完全に囲まれておらず、隣接するセル間のアパーチャのみを示している。
【0014】
US4795500は、各光起電力セルのスタック(積層体)に半透光性のアパーチャが複数形成され、アパーチャがスタックで完全に囲まれ、背面電極が金属製で、アパーチャがレーザを用いて形成されている光起電力モジュールを開示している。
しかしながら、US4795500による光起電力モジュールは、高温のレーザー切断工程による短絡と漏れ電流の問題という欠点がある。
【0015】
CN 101 232 058 A には、透光性光起電力モジュールの作製方法が記載されている。また、Y方向に延びるアパーチャとX方向に延びるアパーチャの2種類を設けることで、US4795500の上述の欠点を解決している。
【0016】
US2007/251566A1は、光起電力セルの光入射面上に配置された透光性発光層を含む発光素子を開示している。このデバイスは透光型の光起電力セルと、光起電力セルの裏面側に設けられた光源とから構成されている。このデバイスは、光源から発せられた光が光起電力セルを透過して光起電力セルの表面側に出力されるように配置されている。このデバイスはペロブスカイト光活性層の代わりにシリコンペースの光電変換層を設けたものである。さらに、モジュール内部から外部へ光(LED)を透過させるためのアパーチャが設けられており、背面電極層にカーボンを使用することについては言及されていない。
【0017】
US2006/112987A1には、積層体によって完全に囲まれ、少なくとも背面電極層に作られるレーザー製の半透光性アパーチャを含むソーラーモジュールが記載されている。このモジュールには、ペロブスカイト型の光活性層及びカーボン製の背面電極層はない。
【0018】
US2019/198256A1には、ペロブスカイト光活性層と、光電変換層とアノードとの間に、周期律表の第6族から第15族の金属をそれぞれ含む金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸窒化物からなる群から選択される少なくとも1つと;カーボンとを含む拡散防止層と、を備えるソーラーセルが記載されている。カソードは半透光性であり、アノードは金属製であってもよい。US2019/198256A1には、カーボン電極や、モジュールの各ソーラーセルの積層体に複数形成された半透光性のアパーチャについては記載されていない。
【0019】
CN106356456Bには、ペロブスカイトヘテロ接合を用いたソーラーセルが開示されている。このソーラーセルは、基板、透明電極、電子輸送層、金属骨格層、ペロブスカイト吸収層、正孔輸送層、及び対向電極(背面側の電極)から構成されている。CN106356456Bには、単体の光起電力セルの半透光性を得るために、モジュールの各太陽電池(ソーラーセル)の積層体に複数形成された半透光性アパーチャについて記載も示唆もされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上の公報から、レーザーで作られた半透光性のアパーチャを備えた半透光(トランスルーセント)光起電力デバイスの製造方法をさらに開発し、製造プロセスの簡略化並びに短絡短絡及び剥離効果の回避の両方を提供し、改善された動作特性の半透光型光起電力デバイスを得ることが要望される。さらに、応用範囲の広げるために軽量で柔軟性を有する光起電力デバイスを提供することが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
半透明の基板120と、少なくとも1つの半透光型光起電力セル100とを備え、光起電力セル100は、基板120上に配置された積層体(スタック層)110を含み、積層体110は、アノード層とカソード層との間の前電極層112、背面電極層113、及びペロブスカイト光活性層111を含む半透光型光起電力デバイスが提示されている。背面電極層113は炭素からなり、積層体110は、少なくとも背面電極層113及びペロブスカイト光活性層111を通って延びるレーザー製の半透光性のアパーチャ130を含み、半透光性のアパーチャ130は、電力変換に寄与する層積層体110によって完全に囲まれる。
【0022】
好ましくは、積層体110は、ペロブスカイト層111と前面電極層112との間に配置された表面電荷輸送層112aと、ペロブスカイト層111と炭素製の背面電極層113との間に配置された背面側の電荷輸送層113aとをさらに含む。
【0023】
好ましくは、積層体110は、ペロブスカイト層111と前部電荷輸送層112aとの間に配置された前部パッシベーション層112b、及び/又はペロブスカイト層111と後部電荷輸送層113aとの間に配置された後部パッシベーション層113bをさらに含む。
【0024】
好ましくは、背面電極層113は、10nmから1000μmの厚さを有する。
【0025】
好ましくは、半透光型光起電力デバイスは、複数の半透光型光起電力セル100からなり、それぞれが、1pm~1000cmの面積を有する複数のレーザ加工(により作製された)半透光性のアパーチャ130と、1pm~100cmの隣接する2つの半透光性のアパーチャ130間の間隔と、を備える。
【0026】
好ましくは、半透光型光起電力デバイスは、n-i-p構造の光起電力セルで構成される。
【0027】
好ましくは、半透光型光起電力セル100の積層体110は、以下の構成である。AZOO/SnOi/ペロブスカイト/PTAA/カーボン
【0028】
本開示の別の態様は、少なくとも1つの半透光型光起電力セル110を含む半透光型光起電力デバイスの製造方法を構成する。この方法は、半透明の基板120を提供するステップと、基板上に光起電力セル100の積層体110を形成するステップと、を含み、積層体は、前面電極層112と、背面電極層113と、前面電極層112と背面電極層113の間のペロブスカイト光活性層111と、を含むことを特徴としている。光起電力セル100の積層体110を形成するステップは、カーボンから背面電極層113を形成することを含む。本方法は、光起電力セル100の積層体110層において、半透光性アパーチャ130のレーザーパターニングP4を行うステップをさらに含み、アパーチャ130は、少なくとも背面側の炭素電極層113及びペロブスカイト光活性層111の少なくとも一部を通して延び、電力変換に寄与する層積層体110によって完全に取り囲まれる。
【0029】
好ましくは、各半透光性アパーチャ130は、単一ステップ(1段階)のレーザ処理P4で形成される。
【0030】
好ましくは、半透光性アパーチャ130は、ナノ秒赤外レーザーを用いて形成される。
【0031】
好ましくは、半透光性アパーチャ130は、各光起電力セル100の積層体110に複数形成されている。
【0032】
好ましくは、半透光性アパーチャ130は、1pm~1000cmの面積と、1pm~100cmの2つの隣接する半透光性アパーチャ130間の間隔を有する。
【0033】
好ましくは、積層体110を形成するステップは、ペロブスカイト層111と前面電極層112との間に表面電荷輸送層112aを形成することと、ペロブスカイト層111と炭素を含む背面電極層113との間に背面側の電荷輸送層113aを形成することとをさらに含む。
【0034】
好ましくは、積層体110を形成するステップは、ペロブスカイト層111と前部電荷輸送層112aとの間の前部パッシベーション層112b、及び/又はペロブスカイト層111と後部電荷輸送層113aとの間の後部パッシベーション層113bの形成を更に含む。
【0035】
好ましくは、炭素を含む背面電極層113の形成は、カーボンペーストを提供するステップと、光起電力セルの積層体110の最上層としてカーボン層を形成するステップと、炭素を含む背面電極層113を得るために積層体110のカーボン層を乾燥させるステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本開示の目的は、例示的な実施形態によって図面に示されており、その場合、以下の通りである。
図1A図1Aは、本開示による半透光型光起電力デバイスの光起電力セルの主要要素を示す断面図の模式図である。
図1B図1Bは、本開示による半透光型光起電力デバイスの一実施形態を、全体図及び2つの断面図で示したものである。
図1C図1Cは、本開示による半透光型光起電力デバイスの一実施形態を、全体図及び2つの断面図で示したものである。
図2A図2Aは、本開示による他の実施形態に係る半透光型光起電力デバイスの光起電力セルの主要要素を示す断面図の概略図である。
図2B図2Bは、本開示による別の実施形態に係る半透光型光起電力デバイスの光起電力セルの主要要素を示す断面図の概略図である。
図3図3は、本開示に係る方法によって得られたペロブスカイト光活性デバイスを示す写真である。
図4図4A図4Cは、本開示の方法に従って形成された半透光性アパーチャのSEM写真である。
図5A図5Aは、半透光型光起電力デバイスの透過率測定を表す図である。
図5B図5Bは、半透光型光起電力デバイスの順方向走査と逆方向走査のJV特性を表す図である。
図6図6は構造体の断面FIB-SEM画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
開発した半透光型光起電力デバイスの製造方法によれば、品質が向上した半透光性アパーチャを有する光起電力デバイスを得ることができる。特に、金属不純物を含まず、規則的な形状を有し、剥離の影響が少ないアパーチャを得ることができる。特に、得られたアパーチャは金属不純物を含まず、規則的な形状を有し、大きな剥離の影響を受けない。以上の特徴から、得られた光起電力デバイスは短絡が観察されない。さらに、開発された方法は簡素化されており、公知の解決策に従ってそのようなアパーチャを形成するために使用される高価なピコ秒又はフェムト秒レーザーの代わりに、半透光性のアパーチャを形成するための安価なナノ秒レーザーの使用で達成することができる。
【0038】
ナノ秒レーザーは、ピコ秒レーザーよりもはるかに大きな熱影響部を特徴とするが、本発明による光起電力デバイスの構造(背面側のカーボン電極を有する)により、カーボン電極は燃焼し、他の電極と接触(ブリッジ)しないため、ナノ秒レーザーの比較的大きな熱影響部は、形成された構造において問題を引き起こさない。
【0039】
さらに、本開示による光起電力デバイスは、透光性が向上していることを特徴とし、また、軽量でフレキシブルな光起電力(光起電力)モジュールの形態で製造することができる。
【0040】
また、本開示による光起電力デバイスは、その最終的な構造及び使用される材料に応じて、例えば光起電力デバイス、LED(発光ダイオード)などのエレクトロルミネセントデバイス、ファサード、窓などのための建物統合太陽光発電(BI光起電力)などの様々な用途に採用され得る。自動車や公共交通機関の窓などの車両用太陽光発電、モノのインターネット(loT)デバイス、自律型センサー、インダストリー4.0デバイス、スマートホーム/シティ、ポータブル電子機器、電子書籍リーダー、スマートフォン、スマート家具などの電子デバイス。
【0041】
このような効果は、背面側のコンタクト電極に用いるカーボン材料の選定や、光起電力の透光性を高める半透光性アパーチャの形成にレーザーアブレーション技術を適用するなど、さまざまな工夫を凝らすことで得られている。
【0042】
図1A図1Cは、本開示による半透光型光起電力デバイスを模式的に示す。
【0043】
半透光型光起電力デバイスは、光が通過可能な透光性(translucent)の基板120からなる。好ましくは、基板120は可撓性薄板であり、より好ましくは、基板120が容易に可逆的に変形できるように、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製のプラスチック箔であり、従って、最終製品の可撓性を提供することができる。箔、特にPET箔は、蒸気の透過を制限し、それゆえ、光起電力デバイスの作動層を水及びガスの暴露から保護し、それによって、光起電力デバイス特性の劣化を抑制するので、さらに有利であり得る。
【0044】
それにもかかわらず、必要性に応じて、基板120は、例えばガラス板のような厚い及び/又は耐久性のある及び/又は剛性のある材料の形態であってもよい。さらに、基板は、合わせガラスのような半透明の積層体の形態であってもよい。本開示によれば、基板120が光を通過させることができる限り、基板120として様々な材料が使用されてもよい。
【0045】
光起電力デバイスは、少なくとも1つの光起電力セル100をさらに備える。図1Aには、光起電力セルの主要部が断面図で模式的に示されている。
【0046】
光起電力セルは、ペロブスカイト層111に光を透過させることができる半透明性材料からなる前面電極層112と、カーボンからなる不透過性の背面電極層113と、前面電極層112と背面電極層113の間のペロブスカイト層111とを含む積層体110から構成されている。ペロブスカイト層111は、光起電力デバイスの光活性層である。ペロブスカイト材料内では、光フォトンが吸収され、電子-正孔対という電荷のペアに変換される。これらの電荷は、背面電極層113及び前面電極層112にそれぞれ伝搬する。
【0047】
図2Aに示すように、光起電力セルの層の積層体110は、好ましくは、公知のペロブスカイト光起電力セルにおいて通常達成されるように、正孔及び電子をそれぞれ前面電極層112及び背面電極層113に輸送するための2つの電荷輸送層112a及び113aからさらに構成される。
【0048】
光起電力セル100に使用される所望の作動特性及び機能材料に応じて、積層体110は、様々な構造を有することができる。例えば、光起電力セル100の積層体110は、平面的又はメゾスコピックなn-i-p構造を有してよく、この場合、背面電極層113はカソード層を構成し、前面電極層112はアノード層を構成し、従って、電荷を運ぶための電荷輸送層112a及び113aはそれぞれペロブスカイト層111とアノード層112の間の電子輸送層112a及びペロブスカイト層111とカソード層113との間のホール輸送層113aである。
【0049】
別の実施形態では、光起電力セル100の積層体110は、平面的又はメゾスコピックないずれかのp-i-n構造を有していてもよく、この場合、背面電極層113はアノードを構成し、前面電極層112はカソードを構成し、それゆえ、電荷を運ぶための電荷輸送層112a及び113aは、それぞれペロブスカイト層111とカソード層112の間のホール輸送層112a、ならびにペロブスカイト層111とアノード層113の間の電子伝達層113aである。
【0050】
カーボンの仕事関数が深い(5~5.5eV)により、正孔輸送層として、また電極として機能する。従って、n-i-p構造は、正孔抽出のための上部電極としてのカーボンに適している。
【0051】
炭素は有機物であり、ペロブスカイト層から移動したイオンと反応しないため、金属電極よりもデバイスの安定性が長く保たれる。スクリーン、スロット、ドクターブレードコーティングなど、従来の技術で加工可能な溶液とすることができる。カーボンは市販されている安価な材料である。
【0052】
さらに、レーザービームがその電極の材料を焼き、その完全な除去を引き起こすので、背面側のカーボン電極及び他の層を介して単一ステップでパターニングP4(詳細は後述)を行うことが可能であり(溶融し得るため他の層と単一ステップで除去できない背面側の金属電極を有する先行技術の解決策とは対照的に)、従って上部及び下部電極間の接触(ブリッジ)の危険は存在しない。あるいは、所望により、マルチステップパターニングP4も使用することができる。
【0053】
図2Aに示すように、光起電力デバイスの一実施形態を提示すると、基板120はPET箔の形態であってもよく、光起電力セル100は、n-i-p構造の積層体110から構成されてもよい。
【0054】
積層体110は、炭素を含む背面電極層113と、AZO(A O-doped ZnO)からなる半透明型前面電極層112とで構成されている。それにもかかわらず、他の材料が陽極として機能する前面電極層112として使用されてもよく、非限定的な例のグループは、例えばITO(インジウムドープ酸化錫)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)又はDMD(誘電/金属/誘電)構造、例えばITO/Ag/ITOなどを含んでいる。光起電力セルの積層体110は、さらに、カソード112に電子を伝播させるための電荷輸送層112aとしてSnO(二酸化スズ)、カーボン製のアノード113にホールを伝播させるための電荷輸送層113aとしてPTAA(ポリ(トリアルキルアミン))から構成される。また、SnOは、例えばTiOx、ZnO、PCBM又はOXD-7など、他の種々の材料で置換されてもよい。PTAA材料についても同様で、例えば、PTAA材料に置き換えてもよい。NiOx(酸化ニッケル)、CuSCN(チオシアン酸銅(l))、CuO(酸化銅(ll))、MoOx(酸化モリブデン)、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)).P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル))又はSpiro-OMeTAD(N2,N2,N2',N7,N7'-オクタキス(4-メトキシフェニル)-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]-2,2',7,7'-テトラミン)である。
【0055】
炭素を含む背面電極層113がカソードとして配置されるn-i-pデバイス構造の場合、電荷キャリア層の別の非限定的な例を使用することができる。例えば、カーボンカソード層113に正孔を伝播させるための電荷担体層113aは、以下のものからなる群から選択されてもよい。NiOx、CuSCN、CuO、MoOx、PEDOT、P3HT、Spiro-OMeTAD、及びPTAA(ポリ(トリアリルアミン))である。
【0056】
ここで、例えば、アノード表面層112に電子を伝播させるための表面電荷輸送層112aは、ベイからなる群から選択されてもよい。TiOx(酸化チタン)、ZnO(酸化亜鉛)、PCBM(フェニル-C61-酪酸メチルエステル)又はOXD-7(1,3-ビス[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン)、SnOx(酸化錫(ll))であってよい。
【0057】
本開示による光起電力デバイスの別の実施形態において、炭素を含む背面電極層113は、アノードとして実装されてもよい。これまで、カーボンはニップ構造でのみ報告されてきた。本開示の発明者は、効率的な電子輸送のためにn型層とカーボンとの間にバッファ層を設けることによって、カーボンを上部電極とするp-i-nデバイスを作製することが可能であることを見出した。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態では、図2Bに示すように、追加の少なくとも1つのパッシベーション層:前面パッシベーション層112b、及び/又は背面側のパッシベーション層113bが、光活性層111と電荷輸送層112a、113aとの間の光起電力デバイス100に組み込まれてもよい。パッシベーション層112b、113bは、光活性材料111と電荷輸送層112a、113aとの界面における非放射再結合を低減又は抑制する手段として機能する。これは、イオン結合、材料の配位、表面を光活性材料111のバンドギャップより広い領域に変換することで実現できる。これは、イオン結合、材料の配位、表面を光活性物質111のバンドギャップより広い領域に変換することで実現できる。パッシベーション層112b、113bは、以下の群から選択される材料で構成されてもよい。ルイス酸及び塩基、アニオン及びカチオン、双性イオン、半導体及び絶縁体。非網羅的な例としては、光活性層のバルクとは異なる組成のペロブスカイト材料、絶縁体(PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などのポリマー、BCP(バソクプロイン)、PCBM及びその誘導体などの低分子、SAM(Self Assembly Monolayers)等)が挙げられる。)、イオン性材料、など。NaCI, Kl、及びAlOx(Al2O3など)のような金属酸化物。パッシベーション層112b、113bの厚さは、必要に応じて選択することができ、それは光起電力性能を向上させるが、その存在は、レーザーパターニングを介して半透光型デバイスを製造するために必要な工程に大きく影響することはない。
【0059】
p-i-n及びn-i-pの両方の構造で使用できるペロブスカイト材料の非限定的な例は、3次元ABXペロブスカイト構造を含み、これは頂点共有のBXe八面体のネットワークからなり、B原子は2価の金属カチオン(典型的にはGe2+、Sn2+又はPb2+)、Xは1価アニオン(典型的にはCl”、Br”、G)である。Aカチオンは全電荷のバランスをとるために選択され、Cs又は低分子種となる。
また、2次元ペロブスカイトはルドルスデン=ポッパー型(Ruddlesden-Popper型)とDion-Jacobson型に分類され、その結晶構造は一般式Rnーi3n+i で表される。
ここでRは嵩高い(バルキーな)有機カチオンである。例えばフェニルエチルアンモニウム(PEA)とブチルアンモニウム(BA)は、最も広く使われているRカチオンである。
【0060】
炭素を含む背面電極層113は、カーボン(及び場合によっては性能向上のための追加の無機添加物)からなる。このカーボン層はカーボンブラックと導電性グラファイトフレークを結合させるポリマーバインダーを含むことにより柔軟であってもよい。さらに、この層は薄く、好ましくは約20μmである。炭素を含む背面電極層113を形成するために、カーボン材料は、ペーストの形態で供給することができる。そのカーボン層113は、背面コンタクト堆積層として、カーボンペーストを塗布して形成してもよい。ペーストの基本成分は、カーボンブラック、グラファイト、ポリマーバインダー、及びペロブスカイトとの相溶系である。
【0061】
例えば、特許文献1(CN104966548)で言及されているようなカーボンペーストを使用することができ、溶剤系:イソプロパノール、酢酸エチル、クロロベンゼンを有している。スラリーのバインダーにはアクリル樹脂やエチルセルロース、導電性フィラーには片状黒鉛、触媒にはナノカーボンブラック粉末、無機添加物にはZrOやNiOが用いられる。
【0062】
カーボンペーストは、半自動スクリーン印刷機を用いてデバイススタックに堆積させることができる。印刷プロセスには、ポリエステルメッシュサイズ156-250スレッド/インチ、スクリーンテンション25N/cm以上のスクリーンを選択することができる。成膜後、赤外線エミッターでアニールし、溶媒を除去して導電性を向上させることができる。
【0063】
図1B及び図1Cは、本開示の一実施形態による半透光型光起電力デバイスを示し、図1Bは、上面図においてデバイスを模式的に示し、図1Cは、光起電力デバイスのA-A線及びB-B線に沿った2つの断面図を模式的に示している。
【0064】
光起電力デバイスは、少なくとも1つの光起電力セル100から構成されるが、好ましくは、2つ以上の光起電力セル100から構成されてもよい。図1B、図1Cは、2つの光起電力セル100からなる光起電力デバイスを示している。それにもかかわらず、光起電力デバイスは、2つ以上の光起電力セル100から構成されてもよい。1つの光起電力デバイスに実装される光起電力セル100の数は、工学的要件、利用可能な面積、合理的な設計(シート抵抗による損失)に依存する。
【0065】
光起電力デバイスの少なくとも1つの光起電力セル100は半透明であり、好ましくは光起電力デバイスの光起電力セル100の50%以上が半透明であり、さらに好ましくは光起電力デバイスの全ての光起電力セル100が半透明である。
【0066】
光起電力デバイスの各透光性光起電力セル100は、基板120上に配置された光起電力セルの層の積層体110に形成された少なくとも1つの半透光性アパーチャ130、好ましくは複数の半透光性アパーチャ130から構成される。
【0067】
図1Bは、光起電力セル100内に設けられた半透光性アパーチャ130の配列の非限定的な例を示す図である。
【0068】
半透光性アパーチャ130は、光起電力デバイスの透光性をもたらす。従って、半透光性アパーチャ130が占める面積(さらに透明領域と呼ぶ)が大きいほど、光起電力デバイスの透光性は高くなる。
【0069】
光起電力セル作動層の積層体110内の半透光性アパーチャ130は、光起電力セルの作動面積の減少を提供し、従って、透明面積比は、用途及びモジュール設計のための特定の要件に応じて、好ましくはそれぞれの光起電力セルの総面積の10~90%を構成している。これにより、光起電力デバイスの可視的な透光性を有する適切な特性が得られる。
【0070】
好ましくは、必要な光透過率や光起電力デバイスの性能に応じて、個々のニーズに応じて透明面積比を選択する。
【0071】
光起電力セル100は、好ましくは、ある光起電力セルのアノードと別の光起電力セルのカソードとの間の接合によって互いに電気的に接続されている。
【0072】
各半透光性アパーチャ130は、レーザービームが積層体110を貫通し、従ってスタックの材料を除去するように、一回の操作で、レーザービーム処理によって形成される。カーボン背面電極層113の使用により、先行技術の解決策に存在するような、アパーチャ130の端部における剥離効果を排除することができることが判明した。
【0073】
さらに、積層体110のすべての層が除去される場合、前面電極層及び背面電極層の両方の除去は、各形成された半透光性のアパーチャ130、従って光起電力デバイス全体の透光性を増加させることを提供する。
【0074】
基板120は、半透光性アパーチャ130を形成しながら、最適化されたレーザーパラメータ(以下の表1に示す)により、レーザービームによる影響を受けず、基板を損傷することなく層を除去することができる。高いレーザー出力を使用すると、基板を損傷する可能性があり、低い出力では層を完全に除去することができない。そのため、レーザー処理後も基板120は連続し、光起電力デバイスの内部を環境から保護するバリアーを構成している。基板120は、半透光性アパーチャ130を形成しながら、最適化されたレーザーパラメータ(以下の表1に示す)により、レーザービームによる影響を受けず、基板を損傷することなく層を除去することができる。高いレーザー出力を使用すると、基板を損傷する可能性があり、低い出力では層を完全に除去することができない。そのため、レーザー処理後も基板120は連続し、光起電力デバイスの内部を環境から保護するバリアーを構成している。
【0075】
半透光型光起電力デバイスの製造方法は、プラスチック箔などの透光性の基板120を提供し、以下に説明するように、連続した堆積及びレーザパターニングステップP1~P4によって、光起電力セル(複数可)のワーキングレイヤーの積層体110を形成することを含む。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。P1パターニングでは、前面電極の材料に応じて様々なレーザーを用いることができ、例えば、透明導電性酸化物(TCO)の場合、典型的には赤外レーザーを用いることができる。第2のレーザーパターニングP2、は、前面電極層112上に表面電荷輸送層112aを蒸着した後に必要となる場合があり、これは、光起電力セルの構造に応じて、電子輸送層又はホール輸送層のいずれかであり、p-i-n又はn-i-pのいずれかであってもよい。レーザパターニングP2は、電荷輸送層112aを局所的に除去する。通常、P2のパターニングでは、IR又は他の可視レーザを使用することができる。半透光型光起電力デバイスの製造方法は、プラスチック箔など透光性の基板120を提供し、以下に説明するように、連続した堆積及びレーザパターニングステップP1~P4によって、光起電力セル(複数可)のワーキングレイヤーの積層体110を形成することを含む。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。P1パターニングでは、前面電極の材料に応じて様々なレーザーを用いることができ、例えば、透明導電性酸化物(TCO)の場合、典型的には赤外レーザーを用いることができる。第2のレーザーパターニングP2は、前面電極層112上に表面電荷輸送層112aを蒸着した後に必要となる場合があり、これは、光起電力セルの構造に応じて、電子輸送層又はホール輸送層のいずれかであり、p-i-n又はn-i-pのいずれかであってもよい。レーザパターニングP2は、電荷輸送層112aを局所的に除去する。通常、P2のパターニングでは、IR又は他の可視レーザを使用することができる。
【0076】
次に、カーボン不透明背面電極層113を成膜し、パターニング工程P3を実施し、個々のセルの境界を規定したり、個々のセルに対して分離したりする。
【0077】
P3パターニングステップの完了後、カーボン層は背面電極層113を形成し、そのようなデバイスは、それ自体が不透明である連続カーボン背面電極層113の存在により、不透明(非透過性)光起電力セルのみから構成されている。
【0078】
次に、積層体110にレーザーパターニングP4を施し、光起電力セル100において、その作動層の積層体110内に、少なくとも1つ、好ましくは複数の半透光性アパーチャ130を形成し、アパーチャ130が少なくとも背面電極層113及びペロブスカイト光活性層111の少なくとも一部を通して延在するようにする。これにより、太陽電池は、半透光性を有するものとなる。任意選択的に、半透光性をさらに向上させるために、アパーチャ130は、背面電極層113から前面電極層112まで積層体110の全ての層を通って延びてもよい。
【0079】
P4 パターニングでは、レーザーは基板120とは反対側の積層体110に影響を与える。各半透光性アパーチャ130は、アパーチャ130の深さに沿って除去されるべき光起電力セルの積層体110の層をレーザービームが一度に貫通するように、レーザー処理の1ステップで作られる。
【0080】
その結果、半透光性アパーチャ130は、電力変換に寄与する層積層体110によって(言い換えれば、太陽電池の活性領域によって)完全に囲まれ、すなわち、すべての層がアパーチャ130に直接隣接し、アパーチャ130の垂直壁に沿って互いに隣接する(先行技術とは対照的に、スタックの最上層がアパーチャ壁から離れるか剥離されている)。
【0081】
単一のレーザパターニングステップP4でアパーチャ130を形成することにより、その深さに沿ったアパーチャ130の断面は実質的に均一である(すなわち、底に向かってわずかに狭まる実質的にまっすぐな側壁のウェルを形成している)。
【0082】
半透光性アパーチャ130の形成は、それぞれは単一のステップで、積層体110の前面側から背面側の層までを貫通し、同様に方法の簡素化及び製造工程の短縮を提供する。P4パターニングでは、レーザービームは基板に影響を与えない。これは、レーザーのパラメータを最適化することで実現される。さらに、アパーチャ130が形成された後、アパーチャ130の少なくとも一部は、光起電力セルの色外観を提供し得るインク又は顔料などの機能化剤で充填されてもよい。
【0083】
半透光型光起電力デバイスにおける前述の強化は、開発された光起電力セル積層体110の構造、すなわち、炭素を含む背面電極層113の実装によってもたらされる。これは、本来は不透明であるが、レーザー処理によってのみ、-レーザーで作られた半透光性アパーチャ130の存在によって、半透光になる。
【0084】
背面電極層113に含まれる炭素材料は、そのレーザ処理により、完全な酸化燃焼を起こすと考えられている。従って、カーボン材料は、レーザーとカーボンとの相互作用の副産物で半透光性アパーチャ130の内部を汚染することなく、レーザーによって除去される。不透明な背面電極層に一般的に使用される金属材料とは異なり、おそらく、カーボンは、レーザービームとの相互作用時に、溶融又は蒸発せず、それによって、上述した効果を提供する。このため、本方法によれば、半透光性アパーチャ130は、背面電極層113の除去されていない残留物を構成せず、これにより、短絡効果やカーボン層の剥離の排除(カーボン層が溶解しないため)がさらに実現される。
【0085】
また、開発された方法には、太陽電池の作動層を貫通する半透光性のアパーチャ130を形成することによって透光性を得るという更なる利点がある。とりわけ、本開示による方法によって得られる光起電力デバイスは、背面電極層用の材料の様々な導電性を示すことができる。層を厚くすると抵抗値が下がり、導電率が上がるが、材料費が高くなる。この絶妙なバランスで、デバイスの性能と適切なコストを両立させることが最適となる。また、導電性の銀や銅のペーストも市販されており、スクリーン印刷で厚膜を形成することができる。しかし、P3はミクロン単位の厚さの層を除去するために高出力を必要とし、下部電極を損傷する可能性があるため、好ましくないとのことである。また、透明化のためのP4レーザーも、下部電極を溶かしてショートさせる可能性があるため、適さない。このため、P3レーザーによる除去に適した100nmまでの薄層金属電極を形成し、高充填率デバイスを形成する研究を行っている。
【0086】
さらに、カーボン材料を使用することで、従来のメタルグリッド方式で必要であった横方向の導通層を追加する必要がない。光を通す半透光性アパーチャ130を形成するため、使用するペロブスカイト層は厚くてもよい-開発した構造ではペロブスカイト材料が光バリアを構成しないためである。ペロブスカイトの活性領域が厚いほど光を吸収し、高い光電流を発生させることができる。
【0087】
さらに、背面電極層113として、金属の代わりにカーボン層を実施することに起因して、半透光性アパーチャ130の形成を達成するために、標準的な安価なレーザを使用することができる。開発された方法によれば、より高価なピコ秒レーザーやフェムト秒レーザーを使用する必要がないため、全体的な製造コストの削減を提供することができる。
【0088】
例えば、この方法によれば、P4パターニングステップでIRレーザーを使用することができ、従って、P1~P3のパターニングステップで使用されるのと同じである。
【0089】
半透光性アパーチャ130のアレイは、個々のニーズに応じて様々なパターンを形成することができる。また、アレイは、様々な美的創作物の形態をとってもよい。
【0090】
半透光性アパーチャ130は、レーザ光によって得られる様々な形状であってよい。それにもかかわらず、好ましくは、光活性領域、すなわち、各透光性光起電力セルの積層体110の非透光性領域は、電気的に連続である。言い換えれば、光活性(不透明)領域は、それによって、半透光性アパーチャ130の間を走る連続的な経路の形態をとり、光起電力セルで発生したすべての電荷を収集することができる。
【0091】
好ましくは、半透光性アパーチャ130は、光起電力セル内に均一又は不均一に分布する円形の形状である。半透光性アパーチャ130は、透光性の必要性に応じて、様々な面積であってよく、一方、半透光性アパーチャ130の面積は、単一の光起電力セル内で異なっていてよい。好ましくは、各半透光性アパーチャ130は、1pm~1000cmの範囲の面積を有してよく、2つの最も近い半透光性アパーチャ130間の間隔(レーザーの分解能に依存する)は、1pm~100cmの範囲である 複数のレーザースポットは、互いに隣接して形成することも、互いに重なることも可能である。
【0092】
面積及び間隔が上記与えられた範囲に失敗する半透光性アパーチャ130の実質的に均一な分布は、巨視的なスケールで、光起電力デバイス全体の半透明(半透明)の印象をユーザに与えることができる。これは、半透光性アパーチャ130の寸法及び間隔が選択されていることに起因する。
【0093】
そのため、半透光型光起電力デバイスは、建物のガラスパネルを覆うために使用できる。
例 n-i-p型光起電力セル構造の半透光型光起電力デバイスの作製。
【0094】
この半透光型光起電力デバイスは、フレキシブルPET基板上にEASTMAN社製AZO(300nm)を前面電極層とし、PETとAZOを一体化して箔を作製したものである。光起電力セルスタックの残存層は、スピンコートにより順に成膜した。Sn0(電子輸送層)、化学量論比Cso.os(MAo.i7FAo.83)o.95Pb(lo.83Bro.i7)3 のペロブスカイト(ペロブスカイト光活性層)である),の順で堆積した。ここで、Csはセシウム,MAはメチルアンモニウム,FA0.83はホルムアミジニウム,Pbは鉛,Iはヨウ素,Brは臭素,PTAA(正孔輸送層として)である。
背面電極層には、EMS社製カーボンペースト(CI-2042)をブレードコートし、ガス急冷法により 80 °C 前後の温度で5分間アニールを行った。FIB-SEMで測定したカーボンペーストの厚さは20pmで、約20W/sqのシート抵抗が得られた。半透明化は、直径200pm、間隔500pmの半透光性アパーチャ(スポット)のマトリックスをアブレーション(切除)することによって達成した。レーザーアブレーションは、PET基板を乱さないように実施した。レーザーパターニングに使用したパラメータを以下の表1に示す。
【0095】
(表1) レーザーパターニングに使用したパラメータ
【0096】
図3は、得られた半透光型光起電力デバイスの全体写真であり、形成されたアパーチャによって透光性が得られていることがわかる。次に、形成されたアパーチャの詳細を調べるために、SEM写真を撮影した。図4A図4Cに示すSEM写真は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。得られた写真からわかるように、アパーチャは直径200pmの円形の規則的な形状であり、目に見える剥離効果はない。
【0097】
さらなる調査の過程で、積層体(110)の完全な除去を示し(画像1)、活性層積層体(110)を示す(画像2)半透光性のアパーチャ(130)内部の構造の断面FIB-SEM(Focus Ion Beam - Scanning Electron Microscope)画像を示した。
【0098】
図6の画像1では、レーザーパルスが基板まで全ての層をアブレーションしていることが確認できる。
【0099】
その後、得られたデバイスをJ-V逆スキャンし、JV特性を評価した。その結果、図5Bに示すように、デバイスが機能し、発電していることが確認された。
【0100】
さらに、このデバイスを透過率測定した結果を図5Aに示す。この結果、デバイスが光を透過することが確認された。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
【手続補正書】
【提出日】2021-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明の基板(120)及び少なくとも1つの半透光性の光起電力セル(100)を備え、
前記光起電力セル(100)は、前記基板(120)上に形成された積層体(110)を有し、前記積層体(110)は、
アノード層を構成する前面電極層(112)、
カソード層を構成する背面電極層(113)、及び
前記アノード層と前記カソード層との間にペロブスカイト光活性層(111)を有し、
前記背面電極層(113)は、カーボンブラック、グラファイト及び高分子バインダーを基本成分として構成され、
前記光起電力セル(100)の前記積層体(110)は、少なくとも前記背面電極層(113)と単一の前記光起電力セル(100)の前記ペロブスカイト光活性層(111)を通る、レーザー加工により形成された半透光性開口部(130)を有し、
前記半透光性のアパーチャ(130)は、電力変換に寄与する前記積層体(110)により完全に囲まれ、前記積層体(110)が電気的に連続することを特徴とする半透光型光起電力デバイス。
【請求項2】
前記半透明の基板(120)は、可撓性を有する、
請求項1記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項3】
前記積層体(110)は、
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電極層(112)との間に設けられた前面電荷輸送層(112a)と、
前記ペロブスカイト層(111)と前記背面電極層(113)との間に設けられた炭素を含む背面電荷輸送層(113a)とを、さらに含む、
請求項1又は2記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項4】
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電荷輸送層(112a)との間に設けられた前面パッシベーション層(112b)及び/又は前記ペロブスカイト層(111)と前記背面電荷輸送層(113a)との間に設けられた背面パッシベーション層(113b)とを、さらに含む、
請求項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項5】
前記背面電極層(113)は10nmから1000μmの厚さを有する、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項6】
前記光起電力セル(100)を複数有し、それぞれ、
μm から1000cmの面積の前記半透光性のアパーチャ(130)を有し、隣接する2つの前記半透光性のアパーチャ(130)の間隔が1μmから100cmである、
請求項1乃至のいずれか1項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項7】
n-i-p構造の前記光起電力セルを有する、
請求項1乃至のいずれか1項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項8】
前記光起電力セル(100)の層の前記積層体(110)の構成が、
AZO/SnOi/ペロブスカイト/PTAA/炭素
である、請求項記載の半透光型光起電力デバイス。
【請求項9】
半透明の基板(120)を準備するステップと、
前記基板(120)上に光起電力セル(100)の積層体(110)を形成するステップとを有し、
前記積層体(110)は、
アノードを構成する前面電極層(112)、カソードを構成する背面電極層(113)、及び前記前面電極層(112)と前記背面電極層(113)の間にペロブスカイト光活性層(111)とを含み、
前記光起電力セル(100)の前記積層体(110)を形成するステップは、
基本成分がカーボンブラック、グラファイト、高分子バインダー及びペロブスカイトと相溶性のある溶剤系であるカーボンペーストから前記背面電極層(113)を形成するステップを含み、
さらに、前記光起電力セル(100)の前記積層体(110)において、前記半透光性のアパーチャ(130)をレーザーパターニング(P4)するステップを含み、
前記半透光性のアパーチャ(130)は、少なくとも前記背面電極層(113)と少なくとも前記ペロブスカイト光活性層(111)の一部に延在し、電力変換に寄与する前記積層体(110)に完全に囲まれていることを特徴とする、
少なくとも1つの半透光の光起電力セル(100)を含む半透光型光起電力デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記半透光性のアパーチャ(130)のそれぞれは、単一ステップのレーザー処理(P4)により形成される、
請求項記載の製造方法。
【請求項11】
前記半透光性のアパーチャ(130)は、ナノ秒IRレーザを用いて形成される、
請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
前記半透光性のアパーチャ(130)は、前記光起電力セル(100)のそれぞれの前記積層体(110)に複数形成される、
請求項9乃至11のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項13】
前記半透光性のアパーチャ(130)は、1μm から1000cmの面積を有し、
隣接する2つの前記半透光性開口(130)の間隔は1μmから100cmである、
請求項9乃至12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
前記積層体(110)を形成するステップは、さらに、
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電極層(112)との間に前面電荷輸送層(112a)を形成するステップと、
前記ペロブスカイト層(111)と前記炭素を含む前記背面電極層(113)との間に背面電荷輸送層(113a)を形成するステップとを有する、
請求項9乃至13のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項15】
前記積層体(110)を形成するステップは、さらに、
前記ペロブスカイト層(111)と前記前面電荷輸送層(112a)との間に前面パッシベーション層(112b)を形成するステップ、及び/又は
前記ペロブスカイト層(111)と前記背面電荷輸送層(113a)の間に背面パッシベーション層(113b)を形成するステップを有する、
請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記炭素を含む前記背面電極層(113)を形成するステップは、
カーボンペーストを準備するステップと、
前記光起電力セルの前記積層体(110)の最上層としてカーボン層を形成するステップと、
前記積層体(110)での前記カーボン層を乾燥させ炭素を含む前記背面電極層(113)を形成するステップとを有する、
請求項9乃至15のいずれか1項記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半透光性(translucent)光起電力デバイス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜ペロブスカイト型の光起電力デバイス(PVデバイス)は、高い吸収係数、高い電力変換効率、軽量化、高速生産性などの点で魅力的なデバイスである。
【0003】
これらのデバイスの望ましい特徴は、半透明性(セミトランスペアレンシー)又は半透光性(トランスルーセンシー)であることであり、これらはエネルギー消費量の一定の増加に関連している。半透明型及び半透光型の光起電力デバイス、特に軽量で好ましくはフレキシブルなものは、窓やその他のシースルー面に適用するのに適している。そのため、屋根や壁などの不透明な面だけでなく、ビルのガラス壁、自動車の窓や車体へのステッカー、携帯電話やタブレット端末、ノートパソコンなどの電子機器のケースのような形態をとることができる。
【0004】
ペロブスカイト型光起電力デバイスの半透明性/半透光性は、3つの異なる方法で得られることが知られている。第1の方法は、半透明材料を使用することで、デバイスに半透明性を提供する方法である。第2の方法は、光起電力デバイスの各層に金属などの不透明な(光を通さない)材料を使用し、続いて不透過型材料(遮光部材)を部分的に除去することで、シースルー孔(透光孔)を形成し、それによりデバイスを光が通過できるようにする方法である。除去は通常、機械的なスクラブやレーザーアブレーション(レーザーによる切除)によって達成される。第3の方法は、導電性ポリマー層上に金属をグリッド状に堆積し、半透光性を持たせる方法である。この堆積は、インクジェットやスクリーンなど、さまざまな印刷技術によって行われる。
【0005】
上記第1の方法で得られた光起電力デバイスは一般に「半透明型(semi-transparent:セミトランスペアレント)」と呼ばれ、第2、第3の方法で得られたものは「半透光型(translucent:トランスルーセント)」と呼ばれる。
【0006】
レーザーアブレーションは、光起電力デバイスに必要な半透光性を提供するが、光起電力セルの作動材料の一部を除去してしまうため、光起電力デバイス全体の効率が低下する。
しかし、ペロブスカイト型光活性層を持つような、実質的に高効率な光起電力デバイスでは、この欠点は無視できる。
さらに、得られた半透光型デバイスの効率は、アブレーション領域の大きさを増減することで制御可能であり、必要な半透光性とアブレーション材料の体積との適切なバランスが、個々の用途のニーズに応じて光起電力デバイスの必要な特性が得られる。
【0007】
それにもかかわらず、半透光型光起電力デバイスの分野で依然として重要な問題点は、アブレーションの方法そのものに関連しており、従って、透光性をもたらすために形成されたシースルーアパーチャ(透光孔)の特性とも関連している。また、半透光型光起電力デバイスは、使用する材料によっては赤色系の高い透光度を示すものがあり、それにより適用範囲が限定される。
【0008】
それとは異なり、半透光ペロブスカイト型の光起電力デバイスは、ニュートラルカラー半透光性(無彩色透光性)を特徴とする。さらに、ペロブスカイト型光起電力デバイスは高い電力変換効率を示すため、半透光性のシースルー開口部(アパーチャ)が形成された半透光型光起電力デバイスの分野でも利用可能である。
【0009】
科学雑誌「Translucent、Color-neutral and Efficient Perovskite Thin Film Solar Modules L.Rakocevic、et al,J.Mater.Chem.C、2018、DOI:10.1039/C7TC05863B」 には、半透光性のアパーチャがレーザーアブレーションと機械的スクラビングの両方によって得られる半透光型のペロブスカイト光起電力デバイスが記載されている。本デバイスは、プレーナー型(平面型)n-i-p構造のペロブスカイト型ソーラー光起電力セルモジュールで構成される。このモジュールは、モノリシックに相互接続された光起電力セルで構成されている。光起電力デバイスの製造方法は、不透明なデバイスを形成し、その後、ストリップデザインの追加のパターニング(P4と呼ばれる)を適用することからなる。P4パターニング法では、底部コンタクト層、正孔(ホール)輸送層、ペロブスカイト光活性層、電子輸送層の4つの層の除去する。しかしながら、パターニングP4では、前面(フロント)コンタクト層、すなわち半透明基板上に直接形成された電極を除去しない。パターニングP4は、一実施形態ではピコ秒レーザーアブレーションを使用し、第2の実施形態では機械的スクラビング法を使用して行われる。得られたストリップは互いに平行であり、不透明ストリップと透明ストリップとの交互のデザイン(パターン)を形成し、それぞれの不透明なストリップが単一のモジュールとして機能する。従って、形成された半透光性のアパーチャは、ある程度、1つの光起電力セルを、半透明の前面電極層に形成された電気的に接続された複数の小さなストリップ状(帯状)構造に分割する。そのため、そのデバイスの半透光性のアパーチャは、電力変換に寄与する層のスタック層で完全に囲まれていない(特に、レーザーアブレーション時の上部金属電極の剥離の観点から、P4周辺は非活性である)。この文献は、両方の方法の欠点である,レーザーパターニングが光起電力デバイスの機能層の剥離などの損傷を引き起こすことについて記載している。
【0010】
さらに、特許公報US9257592には、複数の半透光性アパーチャからなる光起電力デバイスが記載されている。このデバイスは、基板、第1電極層、光導電層、及び最外層の第2電極層(金属製)から構成されている。第1の半透光性アパーチャは第2の電極層上に形成され、一方、アパーチャはさらに光導電層まで深さ方向に延長されて、第1の半透光性アパーチャに対応する複数の第2の半透光性アパーチャが形成されていることを特徴としている。各第2の半透光性アパーチャの投影面積は、対応する第1の半透光性アパーチャの投影面積よりも小さい。第1、第2の半透光性アパーチャの面積の大きさが異なるため、短絡を防ぐことができる。しかし、この方法では、第1と第2の半透光性アパーチャを別々に形成するために、複雑な多段階のレーザー法を必要とする。なぜなら、もしレーザー切断をすべての層に対して一度に行うと、熱効果により第2の電極金属層が溶けてしまい、導電層がブリッジして短絡の可能性があるからである。
そのため、第1のステップで第2電極金属層を除去し(大面積の穴を形成)、第2のステップでそれ以上の層を除去する(小面積の穴を形成する)。さらに、そのデバイスの半透光性アパーチャは、電力変換に寄与するスタック層(積層体)によって完全には囲まれていない(特に、アパーチャの周囲に上部電極がないことを考慮すると、その周囲は非活性である)。
【0011】
WO2019/070977A1は、ペロブスカイト光活性材料を用いた光起電力モジュールの大規模な製造方法を記載しているが、モジュールの透光性については明示的に言及していない。本開示によれば、セルは、それぞれのセルを分離するため、それぞれの層のレーザーによる又は機械的なスクライビングの使用(パターニングP1~P3)によって、基板(好適にはガラス)上で処理され得る。
バック(背面側)の電極はカーボン製でもよいが、カーボンは使用可能な多くの材料の1つであるため、この材料を使用することの特別な利点はない。
【0012】
CN109273608Aには、カーボンの代わりに金属でできた少なくとも底部電極層を通って延びる、接線状のレーザーで作られたアパーチャを有する透光型光起電力セルが記載されている。
これらのアパーチャはP3パターニングステップで作られ、単一の光起電力セルの層に完全に囲まれているわけではない。
【0013】
CN108574048Aには、ペロブスカイト型光活性層とカーボンペーストからなる底部電極を含む光起電力モジュールが記載されている。この文献では、カーボン電極の利点として、低コスト、安定性、プロセスの簡便さなどを挙げている。また、ユニット自体の正極と負極を絶縁層で分離することで、短絡を回避する方法についても開示しいる。しかしながら、本開示による光起電力モジュールは、単一のセル内において、セルの光を透過するために設けられたアパーチャを構成しない。各セルの層の積層体によって完全に囲まれておらず、隣接するセル間のアパーチャのみを示している。
【0014】
US4795500は、各光起電力セルのスタック(積層体)に半透光性のアパーチャが複数形成され、アパーチャがスタックで完全に囲まれ、背面電極が金属製で、アパーチャがレーザを用いて形成されている光起電力モジュールを開示している。
しかしながら、US4795500による光起電力モジュールは、高温のレーザー切断工程による短絡と漏れ電流の問題という欠点がある。
【0015】
CN 101 232 058 A には、透光性光起電力モジュールの作製方法が記載されている。また、Y方向に延びるアパーチャとX方向に延びるアパーチャの2種類を設けることで、US4795500の上述の欠点を解決している。
【0016】
US2007/251566A1は、光起電力セルの光入射面上に配置された透光性発光層を含む発光素子を開示している。このデバイスは透光型の光起電力セルと、光起電力セルの裏面側に設けられた光源とから構成されている。このデバイスは、光源から発せられた光が光起電力セルを透過して光起電力セルの表面側に出力されるように配置されている。このデバイスはペロブスカイト光活性層の代わりにシリコンペースの光電変換層を設けたものである。さらに、モジュール内部から外部へ光(LED)を透過させるためのアパーチャが設けられており、背面電極層にカーボンを使用することについては言及されていない。
【0017】
US2006/112987A1には、積層体によって完全に囲まれ、少なくとも背面電極層に作られるレーザー製の半透光性アパーチャを含むソーラーモジュールが記載されている。このモジュールには、ペロブスカイト型の光活性層及びカーボン製の背面電極層はない。
【0018】
US2019/198256A1には、ペロブスカイト光活性層と、光電変換層とアノードとの間に、周期律表の第6族から第15族の金属をそれぞれ含む金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸窒化物からなる群から選択される少なくとも1つと;カーボンとを含む拡散防止層と、を備えるソーラーセルが記載されている。カソードは半透光性であり、アノードは金属製であってもよい。US2019/198256A1には、カーボン電極や、モジュールの各ソーラーセルの積層体に複数形成された半透光性のアパーチャについては記載されていない。
【0019】
CN106356456Bには、ペロブスカイトヘテロ接合を用いたソーラーセルが開示されている。このソーラーセルは、基板、透明電極、電子輸送層、金属骨格層、ペロブスカイト吸収層、正孔輸送層、及び対向電極(背面側の電極)から構成されている。CN106356456Bには、単体の光起電力セルの半透光性を得るために、モジュールの各太陽電池(ソーラーセル)の積層体に複数形成された半透光性アパーチャについて記載も示唆もされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上の公報から、レーザーで作られた半透光性のアパーチャを備えた半透光(トランスルーセント)光起電力デバイスの製造方法をさらに開発し、製造プロセスの簡略化並びに短絡短絡及び剥離効果の回避の両方を提供し、改善された動作特性の半透光型光起電力デバイスを得ることが要望される。さらに、応用範囲の広げるために軽量で柔軟性を有する光起電力デバイスを提供することが要望される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、請求項1記載の半透光型光起電力デバイス、および請求項9記載の半透光型光起電力デバイスの製造方法に関するものである。好ましい実施形態は、従属請求項に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本開示の目的は、例示的な実施形態によって図面に示されており、その場合、以下の通りである。
図1A図1Aは、本開示による半透光型光起電力デバイスの光起電力セルの主要要素を示す断面図の模式図である。
図1B図1Bは、本開示による半透光型光起電力デバイスの一実施形態を、全体図及び2つの断面図で示したものである。
図1C図1Cは、本開示による半透光型光起電力デバイスの一実施形態を、全体図及び2つの断面図で示したものである。
図2A図2Aは、本開示による他の実施形態に係る半透光型光起電力デバイスの光起電力セルの主要要素を示す断面図の概略図である。
図2B図2Bは、本開示による別の実施形態に係る半透光型光起電力デバイスの光起電力セルの主要要素を示す断面図の概略図である。
図3図3は、本開示に係る方法によって得られたペロブスカイト光活性デバイスを示す写真である。
図4図4A図4Cは、本開示の方法に従って形成された半透光性アパーチャのSEM写真である。
図5A図5Aは、半透光型光起電力デバイスの透過率測定を表す図である。
図5B図5Bは、半透光型光起電力デバイスの順方向走査と逆方向走査のJV特性を表す図である。
図6図6は構造体の断面FIB-SEM画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
開発した半透光型光起電力デバイスの製造方法によれば、品質が向上した半透光性アパーチャを有する光起電力デバイスを得ることができる。特に、金属不純物を含まず、規則的な形状を有し、剥離の影響が少ないアパーチャを得ることができる。特に、得られたアパーチャは金属不純物を含まず、規則的な形状を有し、大きな剥離の影響を受けない。以上の特徴から、得られた光起電力デバイスは短絡が観察されない。さらに、開発された方法は簡素化されており、公知の解決策に従ってそのようなアパーチャを形成するために使用される高価なピコ秒又はフェムト秒レーザーの代わりに、半透光性のアパーチャを形成するための安価なナノ秒レーザーの使用で達成することができる。
【0024】
ナノ秒レーザーは、ピコ秒レーザーよりもはるかに大きな熱影響部を特徴とするが、本発明による光起電力デバイスの構造(背面側のカーボン電極を有する)により、カーボン電極は燃焼し、他の電極と接触(ブリッジ)しないため、ナノ秒レーザーの比較的大きな熱影響部は、形成された構造において問題を引き起こさない。
【0025】
さらに、本開示による光起電力デバイスは、透光性が向上していることを特徴とし、また、軽量でフレキシブルな光起電力(光起電力)モジュールの形態で製造することができる。
【0026】
また、本開示による光起電力デバイスは、その最終的な構造及び使用される材料に応じて、例えば光起電力デバイス、LED(発光ダイオード)などのエレクトロルミネセントデバイス、ファサード、窓などのための建物統合太陽光発電(BI光起電力)などの様々な用途に採用され得る。自動車や公共交通機関の窓などの車両用太陽光発電、モノのインターネット(loT)デバイス、自律型センサー、インダストリー4.0デバイス、スマートホーム/シティ、ポータブル電子機器、電子書籍リーダー、スマートフォン、スマート家具などの電子デバイス。
【0027】
このような効果は、背面側のコンタクト電極に用いるカーボン材料の選定や、光起電力の透光性を高める半透光性アパーチャの形成にレーザーアブレーション技術を適用するなど、さまざまな工夫を凝らすことで得られている。
【0028】
図1A図1Cは、本開示による半透光型光起電力デバイスを模式的に示す。
【0029】
半透光型光起電力デバイスは、光が通過可能な透光性(translucent)の基板120からなる。好ましくは、基板120は可撓性薄板であり、より好ましくは、基板120が容易に可逆的に変形できるように、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製のプラスチック箔であり、従って、最終製品の可撓性を提供することができる。箔、特にPET箔は、蒸気の透過を制限し、それゆえ、光起電力デバイスの作動層を水及びガスの暴露から保護し、それによって、光起電力デバイス特性の劣化を抑制するので、さらに有利であり得る。
【0030】
それにもかかわらず、必要性に応じて、基板120は、例えばガラス板のような厚い及び/又は耐久性のある及び/又は剛性のある材料の形態であってもよい。さらに、基板は、合わせガラスのような半透明の積層体の形態であってもよい。本開示によれば、基板120が光を通過させることができる限り、基板120として様々な材料が使用されてもよい。
【0031】
光起電力デバイスは、少なくとも1つの光起電力セル100をさらに備える。図1Aには、光起電力セルの主要部が断面図で模式的に示されている。
【0032】
光起電力セルは、ペロブスカイト層111に光を透過させることができる半透明性材料からなる前面電極層112と、カーボンからなる不透過性の背面電極層113と、前面電極層112と背面電極層113の間のペロブスカイト層111とを含む積層体110から構成されている。ペロブスカイト層111は、光起電力デバイスの光活性層である。ペロブスカイト材料内では、光フォトンが吸収され、電子-正孔対という電荷のペアに変換される。これらの電荷は、背面電極層113及び前面電極層112にそれぞれ伝搬する。
【0033】
図2Aに示すように、光起電力セルの層の積層体110は、好ましくは、公知のペロブスカイト光起電力セルにおいて通常達成されるように、正孔及び電子をそれぞれ前面電極層112及び背面電極層113に輸送するための2つの電荷輸送層112a及び113aからさらに構成される。
【0034】
光起電力セル100に使用される所望の作動特性及び機能材料に応じて、積層体110は、様々な構造を有することができる。例えば、光起電力セル100の積層体110は、平面的又はメゾスコピックなn-i-p構造を有してよく、この場合、背面電極層113はカソード層を構成し、正面電極層112はアノード層を構成し、従って、電荷を運ぶための電荷輸送層112a及び113aはそれぞれペロブスカイト層111とアノード層112の間の電子輸送層112a及びペロブスカイト層111とカソード層113との間のホール輸送層113aである。
【0035】
別の実施形態では、光起電力セル100の積層体110は、平面的又はメゾスコピックないずれかのp-i-n構造を有していてもよく、この場合、背面電極層113はアノードを構成し、正面電極層112はカソードを構成し、それゆえ、電荷を運ぶための電荷輸送層112a及び113aは、それぞれペロブスカイト層111とカソード層112の間のホール輸送層112a、ならびにペロブスカイト層111とアノード層113の間の電子伝達層113aである。
【0036】
カーボンの仕事関数が深い(5~5.1eV)により、正孔輸送層として、また電極として機能する。従って、n-i-p構造は、正孔抽出のための上部電極としてのカーボンに適している。
【0037】
炭素は有機物であり、ペロブスカイト層から移動したイオンと反応しないため、金属電極よりもデバイスの安定性が長く保たれる。スクリーン、スロット、ドクターブレードコーティングなど、従来の技術で加工可能な溶液とすることができる。カーボンは市販されている安価な材料である。
【0038】
さらに、レーザービームがその電極の材料を焼き、その完全な除去を引き起こすので、背面側のカーボン電極及び他の層を介して単一ステップでパターニングP4(詳細は後述)を行うことが可能であり(溶融し得るため他の層と単一ステップで除去できない背面側の金属電極を有する先行技術の解決策とは対照的に)、従って上部及び下部電極間の接触(ブリッジ)の危険は存在しない。あるいは、所望により、マルチステップパターニングP4も使用することができる。
【0039】
図2Aに示すように、光起電力デバイスの一実施形態を提示すると、基板120はPET箔の形態であってもよく、光起電力セル100は、n-i-p構造の積層体110から構成されてもよい。
【0040】
積層体110は、炭素を含む背面電極層113と、AZO(Al -doped ZnO)からなる半透明型前面電極層112とで構成されている。それにもかかわらず、他の材料が陽極として機能する前面電極層112として使用されてもよく、非限定的な例のグループは、例えばITO(インジウムドープ酸化錫)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)又はDMD(誘電/金属/誘電)構造、例えばITO/Ag/ITOなどを含んでいる。光起電力セルの積層体110は、さらに、カソード112に電子を伝播させるための電荷輸送層112aとしてSnO (二酸化スズ)、カーボン製のアノード113にホールを伝播させるための電荷輸送層113aとしてPTAA(ポリ(トリアルキルアミン))から構成される。また、SnO は、例えばTiOx、ZnO、PCBM又はOXD-7など、他の種々の材料で置換されてもよい。PTAA材料についても同様で、例えば、PTAA材料に置き換えてもよい。NiOx(酸化ニッケル)、CuSCN(チオシアン酸銅())、CuO(酸化銅(II))、MoOx(酸化モリブデン)、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)).P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル))又はSpiro-OMeTAD(N2,N2,N2',N7,N7'-オクタキス(4-メトキシフェニル)-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]-2,2',7,7'-テトラミン)である。
【0041】
炭素を含む背面電極層113がカソードとして配置されるn-i-pデバイス構造の場合、電荷キャリア層の別の非限定的な例を使用することができる。例えば、カーボンカソード層113に正孔を伝播させるための電荷担体層113aは、以下のものからなる群から選択されてもよい。NiOx、CuSCN、CuO、MoOx、PEDOT、P3HT、Spiro-OMeTAD、及びPTAA(ポリ(トリアリルアミン))である。
【0042】
ここで、例えば、アノード表面層112に電子を伝播させるための表面電荷輸送層112aは、ベイからなる群から選択されてもよい。TiOx(酸化チタン)、ZnO(酸化亜鉛)、PCBM(フェニル-C61-酪酸メチルエステル)又はOXD-7(1,3-ビス[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン)、SnOx(酸化錫(ll))であってよい。
【0043】
本開示による光起電力デバイスの別の実施形態において、炭素を含む背面電極層113は、アノードとして実装されてもよい。これまで、カーボンはニップ構造でのみ報告されてきた。本開示の発明者は、効率的な電子輸送のためにn型層とカーボンとの間にバッファ層を設けることによって、カーボンを上部電極とするp-i-nデバイスを作製することが可能であることを見出した。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態では、図2Bに示すように、追加の少なくとも1つのパッシベーション層:前面パッシベーション層112b、及び/又は背面側のパッシベーション層113bが、光活性層111と電荷輸送層112a、113aとの間の光起電力デバイス100に組み込まれてもよい。パッシベーション層112b、113bは、光活性材料111と電荷輸送層112a、113aとの界面における非放射再結合を低減又は抑制する手段として機能する。これは、イオン結合、材料の配位、表面を光活性材料111のバンドギャップより広い領域に変換することで実現できる。これは、イオン結合、材料の配位、表面を光活性物質111のバンドギャップより広い領域に変換することで実現できる。パッシベーション層112b、113bは、以下の群から選択される材料で構成されてもよい。ルイス酸及び塩基、アニオン及びカチオン、双性イオン、半導体及び絶縁体。非網羅的な例としては、光活性層のバルクとは異なる組成のペロブスカイト材料、絶縁体(PMMA(ポリメタクリル酸メチル)などのポリマー、BCP(バソクプロイン)、PCBM及びその誘導体などの低分子、SAM(Self Assembly Monolayers)等)が挙げられる。)、イオン性材料、など。NaCl、Kl、及びAlOxAl など)のような金属酸化物。パッシベーション層112b、113bの厚さは、必要に応じて選択することができ、それは光起電力性能を向上させるが、その存在は、レーザーパターニングを介して半透光型デバイスを製造するために必要な工程に大きく影響することはない。
【0045】
p-i-n及びn-i-pの両方の構造で使用できるペロブスカイト材料の非限定的な例は、3次元ABXペロブスカイト構造を含み、これは頂点共有のBX 八面体のネットワークからなり、B原子は2価の金属カチオン(典型的にはGe2+、Sn2+又はPb2+)、Xは1価アニオン(典型的にはCl Br )である。Aカチオンは全電荷のバランスをとるために選択され、Cs又は低分子種となる。
また、2次元ペロブスカイトはルドルスデン=ポッパー型(Ruddlesden-Popper型)とDion-Jacobson型に分類され、その結晶構造は一般式 n-1 3n+1 で表される。
ここでRは嵩高い(バルキーな)有機カチオンである。例えばフェニルエチルアンモニウム(PEA)とブチルアンモニウム(BA)は、最も広く使われているRカチオンである。
【0046】
炭素を含む背面電極層113は、カーボン(及び場合によっては性能向上のための追加の無機添加物)からなる。このカーボン層はカーボンブラックと導電性グラファイトフレークを結合させるポリマーバインダーを含むことにより柔軟であってもよい。さらに、この層は薄く、好ましくは約20μmである。炭素を含む背面電極層113を形成するために、カーボン材料は、ペーストの形態で供給することができる。そのカーボン層113は、背面コンタクト堆積層として、カーボンペーストを塗布して形成してもよい。ペーストの基本成分は、カーボンブラック、グラファイト、ポリマーバインダー、及びペロブスカイトとの相溶系である。
【0047】
例えば、特許文献1(CN104966548)で言及されているようなカーボンペーストを使用することができ、溶剤系:イソプロパノール、酢酸エチル、クロロベンゼンを有している。スラリーのバインダーにはアクリル樹脂やエチルセルロース、導電性フィラーには片状黒鉛、触媒にはナノカーボンブラック粉末、無機添加物にはZrO やNiOが用いられる。
【0048】
カーボンペーストは、半自動スクリーン印刷機を用いてデバイススタックに堆積させることができる。印刷プロセスには、ポリエステルメッシュサイズ156-250スレッド/インチ、スクリーンテンション25N/cm以上のスクリーンを選択することができる。成膜後、赤外線エミッターでアニールし、溶媒を除去して導電性を向上させることができる。
【0049】
1B及び図1Cは、本開示の一実施形態による半透光型光起電力デバイスを示し、図1Bは、上面図においてデバイスを模式的に示し、図1Cは、光起電力デバイスのA-A線及びB-B線に沿った2つの断面図を模式的に示している。
【0050】
光起電力デバイスは、少なくとも1つの光起電力セル100から構成されるが、好ましくは、2つ以上の光起電力セル100から構成されてもよい。図1B図1Cは、2つの光起電力セル100からなる光起電力デバイスを示している。それにもかかわらず、光起電力デバイスは、2つ以上の光起電力セル100から構成されてもよい。1つの光起電力デバイスに実装される光起電力セル100の数は、工学的要件、利用可能な面積、合理的な設計(シート抵抗による損失)に依存する。
【0051】
光起電力デバイスの少なくとも1つの光起電力セル100は半透明であり、好ましくは光起電力デバイスの光起電力セル100の50%以上が半透明であり、さらに好ましくは光起電力デバイスの全ての光起電力セル100が半透明である。
【0052】
光起電力デバイスの各透光性光起電力セル100は、基板120上に配置された光起電力セルの層の積層体110に形成された少なくとも1つの半透光性アパーチャ130、好ましくは複数の半透光性アパーチャ130から構成される。
【0053】
1Bは、光起電力セル100内に設けられた半透光性アパーチャ130の配列の非限定的な例を示す図である。
【0054】
半透光性アパーチャ130は、光起電力デバイスの透光性をもたらす。従って、半透光性アパーチャ130が占める面積(さらに透明領域と呼ぶ)が大きいほど、光起電力デバイスの透光性は高くなる。
【0055】
光起電力セル作動層の積層体110内の半透光性アパーチャ130は、光起電力セルの作動面積の減少を提供し、従って、透明面積比は、用途及びモジュール設計のための特定の要件に応じて、好ましくはそれぞれの光起電力セルの総面積の10~90%を構成している。これにより、光起電力デバイスの可視的な透光性を有する適切な特性が得られる。
【0056】
好ましくは、必要な光透過率や光起電力デバイスの性能に応じて、個々のニーズに応じて透明面積比を選択する。
【0057】
光起電力セル100は、好ましくは、ある光起電力セルのアノードと別の光起電力セルのカソードとの間の接合によって互いに電気的に接続されている。
【0058】
各半透光性アパーチャ130は、レーザービームが積層体110を貫通し、従ってスタックの材料を除去するように、一回の操作で、レーザービーム処理によって形成される。カーボン背面電極層113の使用により、先行技術の解決策に存在するような、アパーチャ130の端部における剥離効果を排除することができることが判明した。
【0059】
さらに、積層体110のすべての層が除去される場合、前面電極層及び背面電極層の両方の除去は、各形成された半透光性のアパーチャ130、従って光起電力デバイス全体の透光性を増加させることを提供する。
【0060】
基板120は、半透光性アパーチャ130を形成しながら、最適化されたレーザーパラメータ(以下の表1に示す)により、レーザービームによる影響を受けず、基板を損傷することなく層を除去することができる。高いレーザー出力を使用すると、基板を損傷する可能性があり、低い出力では層を完全に除去することができない。そのため、レーザー処理後も基板120は連続し、光起電力デバイスの内部を環境から保護するバリアーを構成している。基板120は、半透光性アパーチャ130を形成しながら、最適化されたレーザーパラメータ(以下の表1に示す)により、レーザービームによる影響を受けず、基板を損傷することなく層を除去することができる。高いレーザー出力を使用すると、基板を損傷する可能性があり、低い出力では層を完全に除去することができない。そのため、レーザー処理後も基板120は連続し、光起電力デバイスの内部を環境から保護するバリアーを構成している。
【0061】
半透光型光起電力デバイスの製造方法は、プラスチック箔などの透光性の基板120を提供し、以下に説明するように、連続した堆積及びレーザパターニングステップP1~P4によって、光起電力セル(複数可)のワーキングレイヤーの積層体110を形成することを含む。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。P1パターニングでは、前面電極の材料に応じて様々なレーザーを用いることができ、例えば、透明導電性酸化物(TCO)の場合、典型的には赤外レーザーを用いることができる。第2のレーザーパターニングP2、は、前面電極層112上に表面電荷輸送層112aを蒸着した後に必要となる場合があり、これは、光起電力セルの構造に応じて、電子輸送層又はホール輸送層のいずれかであり、p-i-n又はn-i-pのいずれかであってもよい。レーザパターニングP2は、電荷輸送層112aを局所的に除去する。通常、P2のパターニングでは、IR又は他の可視レーザを使用することができる。半透光型光起電力デバイスの製造方法は、プラスチック箔など透光性の基板120を提供し、以下に説明するように、連続した堆積及びレーザパターニングステップP1~P4によって、光起電力セル(複数可)のワーキングレイヤーの積層体110を形成することを含む。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。例えば、図1Cに示すように、レーザーパターニングP1によって前面電極を除去するステップは、別々のセル領域を作成するために実施されてもよい。P1パターニングでは、前面電極の材料に応じて様々なレーザーを用いることができ、例えば、透明導電性酸化物(TCO)の場合、典型的には赤外レーザーを用いることができる。第2のレーザーパターニングP2は、前面電極層112上に表面電荷輸送層112aを蒸着した後に必要となる場合があり、これは、光起電力セルの構造に応じて、電子輸送層又はホール輸送層のいずれかであり、p-i-n又はn-i-pのいずれかであってもよい。レーザパターニングP2は、電荷輸送層112aを局所的に除去する。通常、P2のパターニングでは、IR又は他の可視レーザを使用することができる。
【0062】
次に、カーボン不透明背面電極層113を成膜し、パターニング工程P3を実施し、個々のセルの境界を規定したり、個々のセルに対して分離したりする。
【0063】
P3パターニングステップの完了後、カーボン層は背面電極層113を形成し、そのようなデバイスは、それ自体が不透明である連続カーボン背面電極層113の存在により、不透明(非透過性)光起電力セルのみから構成されている。
【0064】
次に、積層体110にレーザーパターニングP4を施し、光起電力セル100において、その作動層の積層体110内に、少なくとも1つ、好ましくは複数の半透光性アパーチャ130を形成し、アパーチャ130が少なくとも背面電極層113及びペロブスカイト光活性層111の少なくとも一部を通して延在するようにする。これにより、太陽電池は、半透光性を有するものとなる。任意選択的に、半透光性をさらに向上させるために、アパーチャ130は、背面電極層113から前面電極層112まで積層体110の全ての層を通って延びてもよい。
【0065】
P4 パターニングでは、レーザーは基板120とは反対側の積層体110に影響を与える。各半透光性アパーチャ130は、アパーチャ130の深さに沿って除去されるべき光起電力セルの積層体110の層をレーザービームが一度に貫通するように、レーザー処理の1ステップで作られる。
【0066】
その結果、半透光性アパーチャ130は、電力変換に寄与する層積層体110によって(言い換えれば、太陽電池の活性領域によって)完全に囲まれ、すなわち、すべての層がアパーチャ130に直接隣接し、アパーチャ130の垂直壁に沿って互いに隣接する(先行技術とは対照的に、スタックの最上層がアパーチャ壁から離れるか剥離されている)。
【0067】
単一のレーザパターニングステップP4でアパーチャ130を形成することにより、その深さに沿ったアパーチャ130の断面は実質的に均一である(すなわち、底に向かってわずかに狭まる実質的にまっすぐな側壁のウェルを形成している)。
【0068】
半透光性アパーチャ130の形成は、それぞれは単一のステップで、積層体110の前面側から背面側の層までを貫通し、同様に方法の簡素化及び製造工程の短縮を提供する。P4パターニングでは、レーザービームは基板に影響を与えない。これは、レーザーのパラメータを最適化することで実現される。さらに、アパーチャ130が形成された後、アパーチャ130の少なくとも一部は、光起電力セルの色外観を提供し得るインク又は顔料などの機能化剤で充填されてもよい。
【0069】
半透光型光起電力デバイスにおける前述の強化は、開発された光起電力セル積層体110の構造、すなわち、炭素を含む背面電極層113の実装によってもたらされる。これは、本来は不透明であるが、レーザー処理によってのみ、-レーザーで作られた半透光性アパーチャ130の存在によって、半透光になる。
【0070】
背面電極層113に含まれる炭素材料は、そのレーザ処理により、完全な酸化燃焼を起こすと考えられている。従って、カーボン材料は、レーザーとカーボンとの相互作用の副産物で半透光性アパーチャ130の内部を汚染することなく、レーザーによって除去される。不透明な背面電極層に一般的に使用される金属材料とは異なり、おそらく、カーボンは、レーザービームとの相互作用時に、溶融又は蒸発せず、それによって、上述した効果を提供する。このため、本方法によれば、半透光性アパーチャ130は、背面電極層113の除去されていない残留物を構成せず、これにより、短絡効果やカーボン層の剥離の排除(カーボン層が溶解しないため)がさらに実現される。
【0071】
また、開発された方法には、太陽電池の作動層を貫通する半透光性のアパーチャ130を形成することによって透光性を得るという更なる利点がある。とりわけ、本開示による方法によって得られる光起電力デバイスは、背面電極層用の材料の様々な導電性を示すことができる。層を厚くすると抵抗値が下がり、導電率が上がるが、材料費が高くなる。この絶妙なバランスで、デバイスの性能と適切なコストを両立させることが最適となる。また、導電性の銀や銅のペーストも市販されており、スクリーン印刷で厚膜を形成することができる。しかし、P3はミクロン単位の厚さの層を除去するために高出力を必要とし、下部電極を損傷する可能性があるため、好ましくないとのことである。また、透明化のためのP4レーザーも、下部電極を溶かしてショートさせる可能性があるため、適さない。このため、P3レーザーによる除去に適した100nmまでの薄層金属電極を形成し、高充填率デバイスを形成する研究を行っている。
【0072】
さらに、カーボン材料を使用することで、従来のメタルグリッド方式で必要であった横方向の導通層を追加する必要がない。光を通す半透光性アパーチャ130を形成するため、使用するペロブスカイト層は厚くてもよい-開発した構造ではペロブスカイト材料が光バリアを構成しないためである。ペロブスカイトの活性領域が厚いほど光を吸収し、高い光電流を発生させることができる。
【0073】
さらに、背面電極層113として、金属の代わりにカーボン層を実施することに起因して、半透光性アパーチャ130の形成を達成するために、標準的な安価なレーザを使用することができる。開発された方法によれば、より高価なピコ秒レーザーやフェムト秒レーザーを使用する必要がないため、全体的な製造コストの削減を提供することができる。
【0074】
例えば、この方法によれば、P4パターニングステップでIRレーザーを使用することができ、従って、P1~P3のパターニングステップで使用されるのと同じである。
【0075】
半透光性アパーチャ130のアレイは、個々のニーズに応じて様々なパターンを形成することができる。また、アレイは、様々な美的創作物の形態をとってもよい。
【0076】
半透光性アパーチャ130は、レーザ光によって得られる様々な形状であってよい。それにもかかわらず、好ましくは、光活性領域、すなわち、各透光性光起電力セルの積層体110の非透光性領域は、電気的に連続である。言い換えれば、光活性(不透明)領域は、それによって、半透光性アパーチャ130の間を走る連続的な経路の形態をとり、光起電力セルで発生したすべての電荷を収集することができる。
【0077】
好ましくは、半透光性アパーチャ130は、光起電力セル内に均一又は不均一に分布する円形の形状である。半透光性アパーチャ130は、透光性の必要性に応じて、様々な面積であってよく、一方、半透光性アパーチャ130の面積は、単一の光起電力セル内で異なっていてよい。好ましくは、各半透光性アパーチャ130は、1μm ~1000cmの範囲の面積を有してよく、2つの最も近い半透光性アパーチャ130間の間隔(レーザーの分解能に依存する)は、1μm~100cmの範囲である 複数のレーザースポットは、互いに隣接して形成することも、互いに重なることも可能である。
【0078】
面積及び間隔が上記与えられた範囲に失敗する半透光性アパーチャ130の実質的に均一な分布は、巨視的なスケールで、光起電力デバイス全体の半透明(半透明)の印象をユーザに与えることができる。これは、半透光性アパーチャ130の寸法及び間隔が選択されていることに起因する。
【0079】
そのため、半透光型光起電力デバイスは、建物のガラスパネルを覆うために使用できる。
例 n-i-p型光起電力セル構造の半透光型光起電力デバイスの作製。
【0080】
この半透光型光起電力デバイスは、フレキシブルPET基板上にEASTMAN社製AZO(300nm)を前面電極層とし、PETとAZOを一体化して箔を作製したものである。光起電力セルスタックの残存層は、スピンコートにより順に成膜した。SnO (電子輸送層)、化学量論比Cs 0.05 (MA 0.17 FA 0.83 ) 0.95 Pb(I 0.83 Br 0.17 のペロブスカイト(ペロブスカイト光活性層)である),の順で堆積した。ここで、Csはセシウム,MAはメチルアンモニウム,FA0.83はホルムアミジニウム,Pbは鉛,Iはヨウ素,Brは臭素,PTAA(正孔輸送層として)である。
背面電極層には、EMS社製カーボンペースト(CI-2042)をブレードコートし、ガス急冷法により80前後の温度で5分間アニールを行った。FIB-SEMで測定したカーボンペーストの厚さは20μmで、約20Ω/sqのシート抵抗が得られた。半透明化は、直径200μm、間隔500μmの半透光性アパーチャ(スポット)のマトリックスをアブレーション(切除)することによって達成した。レーザーアブレーションは、PET基板を乱さないように実施した。レーザーパターニングに使用したパラメータを以下の表1に示す。
【0081】
(表1) レーザーパターニングに使用したパラメータ
【0082】
図3は、得られた半透光型光起電力デバイスの全体写真であり、形成されたアパーチャによって透光性が得られていることがわかる。次に、形成されたアパーチャの詳細を調べるために、SEM写真を撮影した。図4A図4Cに示すSEM写真は、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したものである。得られた写真からわかるように、アパーチャは直径200μmの円形の規則的な形状であり、目に見える剥離効果はない。
【0083】
さらなる調査の過程で、積層体(110)の完全な除去を示し(画像1)、活性層積層体(110)を示す(画像2)半透光性のアパーチャ(130)内部の構造の断面FIB-SEM(Focus Ion Beam - Scanning Electron Microscope)画像を示した。
【0084】
図6の画像1では、レーザーパルスが基板まで全ての層をアブレーションしていることが確認できる。
【0085】
その後、得られたデバイスをJ-V逆スキャンし、JV特性を評価した。その結果、図5Bに示すように、デバイスが機能し、発電していることが確認された。
【0086】
さらに、このデバイスを透過率測定した結果を図5Aに示す。この結果、デバイスが光を透過することが確認された。
【国際調査報告】