(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】冷却材浄化システムおよびヒートシンクシステムならびにその作動方法
(51)【国際特許分類】
G21C 15/02 20060101AFI20221128BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G21C15/02 R
G21C15/18 R
G21C15/18 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515516
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020052414
(87)【国際公開番号】W WO2021061930
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】バス,デレク
(72)【発明者】
【氏名】ダールグレン,クリスター
(57)【要約】
浄化とヒートシンクとを組み合わせたシステムは、原子炉の冷却材ループと組み合わせて動作する。複合システムは、冷却材ループの高温部および低温部を、任意の蒸気発生器や他の抽出器と並列に接合し、その間に任意の熱除去を行うことができる。また、複合システムは、冷却材から相当な熱を失うことなく、流体冷却材から不純物や破片を取り払うことができる。複合システムの冷却器は、浄化冷却と冷却水からの主要な熱除去との間を移動するために、容量を増やしたり、数を増やしたりすることができ、潜在的には緊急冷却器として機能する。冷却器と高温部および低温部とは、所望の機能に応じて弁付き流路で接合してもよい。冷却材ループの区分は、重力によって流れを促進し、冷却材ループの区分の分離を強化するために、原子炉の上に設けられる冷却器の完全に上に設けられてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉のための流体冷却材を搬送する冷却材ループのための浄化器およびヒートシンクシステムであって、
前記冷却材ループに接合するように構成された入口と、
前記冷却材ループに接合するように構成された第1の出口と、
前記冷却材ループに接合するように構成された第2の出口と、
前記入口から流れる前記流体冷却材から熱を取り払うように構成された冷却器と、
前記冷却器を出る前記流体冷却材から不純物を取り払うように構成された浄化器であって、同浄化器は前記第1の出口と直列流であり、前記第2の出口と並列流である、浄化器と、
を備える、浄化器およびヒートシンクシステム。
【請求項2】
前記浄化器および前記第1の出口への流れをすべて閉じるように構成された少なくとも1つの弁をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記入口および前記第1の出口は前記冷却材ループの同じレグに接合するように配置され、前記第2の出口は前記冷却材ループの反対側のレグに接合するように配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記冷却器は、第1のモードでは前記流体冷却材から約0.5メガワットを吸熱し、第2のモードでは前記流体冷却材から約5MWまたは前記原子炉の定格熱出力の7%を吸熱するように構成されたバイモーダルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記冷却器は、複数のフィン付き熱交換チューブ、および前記複数のフィン付き熱交換チューブに対流流体を吹き付ける少なくとも1つのファンを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記入口は、前記冷却器のモード変更時に体積流量を変更するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記入口から熱交換器に流入する前記流体冷却材の温度を低減するとともに前記熱交換器から前記第1の出口に流入する前記流体冷却材の温度を上昇させるように、前記入口と前記第1の出口との間に接続された前記浄化器と直列に流れる熱交換器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
i)前記第2の出口、または
ii)冷トラップ、前記熱交換器、および前記第1の出口
のi)およびii)のうちの1つのみに前記流体冷却材の流れを許容するように構成された少なくとも1つの弁をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
原子炉の流体冷却材を搬送する冷却材ループのための浄化器およびヒートシンクシステムであって、
前記冷却材ループに接合するように構成された入口と、
前記冷却材ループに接合するように構成された出口と、
第1のモードおよび第2のモードにおいて前記システムを流れる前記流体冷却材から熱を除去するように構成されたバイモーダル冷却器であって、同バイモーダル冷却器は、前記第1のモードにおいて前記流体冷却材から約0.5メガワットを吸熱し、前記第2のモードにおいて前記流体冷却材から約5MWまたは前記原子炉の定格熱出力の7%を吸熱するように構成されている、バイモーダル冷却器と、
前記第1のモードで動作している前記冷却器から出る前記流体冷却材から不純物を除去するように構成された浄化器と、
を備える、浄化器およびヒートシンクシステム。
【請求項10】
前記冷却器が前記第2のモードで作動しているときに、前記浄化器への前記流体冷却材の全流量を阻止するように移動可能な少なくとも1つの弁をさらに備える、請求項9に記載のシステム
【請求項11】
前記出口が第1の出口および第2の出口を含み、前記浄化器が前記第1の出口と直列に流れるとともに前記第2の出口と並列に流れる、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記入口および前記第1の出口は前記冷却材ループの同じレグに接合するように配置され、前記第2の出口は前記冷却材ループの反対側のレグに接合するように配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記冷却器が前記第2のモードで作動しているときに、前記第1の入口が体積流量を増加させるように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記冷却器は、複数のフィン付き熱交換チューブ、および前記複数のフィン付き熱交換チューブに対流流体を吹き付ける少なくとも1つのファンを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
原子炉のための流体冷却材を搬送する冷却材ループであって、
前記原子炉から前記流体冷却材に熱を伝達するように構成された熱交換器と、
熱抽出器と、
前記熱交換器から出るとともに前記熱抽出器に入るホットレグと、
前記熱抽出器から出るとともに前記熱交換器に入るコールドレグと、
前記ホットレグおよび前記コールドレグに接合された浄化器およびヒートシンクシステムであって、前記ホットレグおよび前記コールドレグから前記浄化器およびヒートシンクシステムを通って前記流体冷却材が流れるようにした、浄化器およびヒートシンクシステムと、
を備える、冷却剤ループ。
【請求項16】
前記浄化器およびヒートシンクシステムは、
前記ホットレグに接合する入口と、
前記ホットレグに接合する第1の出口と、
前記コールドレグに接合する第2の出口と、
前記入口から流れる前記流体冷却材から熱を除去するように構成された冷却器と、
前記冷却器によって固化された不純物を前記流体冷却材から除去するように構成された浄化器であって、前記第1の出口と直列に流れるとともに前記第2の出口と並列に流れる浄化器と、
を含む、請求項15に記載の冷却材ループ。
【請求項17】
前記浄化器およびヒートシンクシステムは、
前記冷却材ループに接合する入口と、
前記冷却材ループに接合する出口と、
第1のモードおよび第2のモードで前記システムを流れる前記流体冷却材から熱を除去するように構成されたバイモーダル冷却器であって、同バイモーダル冷却器は、前記第1のモードにおいて前記流体冷却材から約0.5MWを吸熱し、前記第2のモードにおいて前記流体冷却材から約5MW以上を吸熱するように構成されている、バイモーダル冷却器と、
前記第1のモードで作動する前記冷却器によって固化された不純物を前記流体冷却材から除去するように構成された浄化器と、
を含む、請求項15に記載の冷却材ループ。
【請求項18】
前記バイモーダル冷却器は、前記熱交換器の垂直上方に設けられる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ホットレグおよび前記コールドレグは、前記熱抽出器に向かって水平に、および垂直下方に延びる部分を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記冷却材ループは、
前記ホットレグと前記コールドレグとの間に接続された熱抽出器と、
前記熱交換器に接続された排水タンクであって、前記熱交換器に流入しない冷却材ループを形成するように、前記熱交換器の反対側にある前記ホットレグおよび前記コールドレグに前記浄化器およびヒートシンクシステムが接合されている、排水タンクと、
をさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
運転温度が高い原子炉では、冷却材に液体金属や溶融塩などの流体熱交換媒体を使用することがある。熱交換媒体は、エネルギー抽出および発電のために原子炉から熱交換器およびタービンのうちの少なくともいずれか一方に熱を伝えるのみならず、運転中や停止中の崩壊熱やその他の不要な熱を除去するヒートシンクとしても機能してもよい。例えば、PRISM炉のような液体ナトリウム冷却高速炉を含む多くの原子炉設計では、発電および冷却のために原子炉から効率的に熱を移動させるために、複数の熱交換媒体のループを使用する。1つのループは、中間熱交換器で加熱された後に、タービンおよび発電機に接続された蒸気発生器を通過する中間ループであってもよい。この中間ループの熱交換には、液体鉛やナトリウム、溶融塩など、任意の流体熱交換媒体を使用することができる。
【背景技術】
【0002】
流体媒体を使用する中間ループでは、原子炉環境での運転中に蓄積する可能性のある不純物や破片を取り払うために、熱交換媒体を浄化することが有効となり得る。
図1は、流体熱交換媒体を搬送する中間ループと組み合わせて使用可能な関連技術による浄化システム10を示す説明図である。例えば、システム10は、液体ナトリウム原子炉または溶融塩原子炉の中間冷却材ループと組み合わせて使用可能なナトリウム浄化ループであってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1に示すように、システム10は、中間冷却材ループの同じレグに接続し得る入力50および出力67を含み、両者間の逆流または短絡を防ぐのに十分な距離だけ、例えば、数フィート離れている。入力50および出力67は、中間冷却材ループからの吸入および中間冷却材ループへの戻りであり、中間ループから/中間ループへの比較的少量の冷却材の除去およびその後の再供給を行うことができる。ポンプ51は、システム10を通して流体冷却材を押し流すことができる。再生熱交換器60は、流入する冷却材流61を初期冷却するために使用され、これによるより低温の排出される冷却材が、出力67によって中間ループに再供給される。冷却された冷却水流62は、続いて冷却器70に流れ、この冷却器70は、さらなる熱を対流させるために開放空気ファン71に露出したフィンを有する一連の小型の管であってもよい。冷却器70は、酸化物などの不純物が流体冷却材から固化または堆積するように、冷却材の温度を十分に低下させることができる。
【0004】
浄化器80は、冷却器70に続いて、化学反応物、触媒、および/または溶液から出る堆積物を含む不純物または破片を取り払う冷トラップ、網、または他のフィルター媒体のような機械的フィルターを含むことができる。バイパス弁81および82は、浄化器80の流れをバイパスすることができ、これにより、起動または運転停止中に浄化器80を通した流れを緩慢に上昇または下降させ、他の方法で制御することができる。より低温にろ過された冷却材は、続いて入力66を通して再生熱交換器60を再び通り、冷却材を運転温度近くまで再加熱してから、出力67を通して中間ループに、通常は中間ループの入口50のすぐ下流に戻される。このように、浄化のためのシステム10を通過した冷却材は、中間ループからの熱損失を最小限に抑えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態としては、浄化および熱除去を組み合わせたシステム、およびそのようなシステムに接合された冷却材ループが挙げられる。冷却材ループは、原子炉と蒸気発生器や熱交換器などの熱抽出器との間を接続するホットレグと、熱抽出器から原子炉に戻る、ホットレグとは反対側のコールドレグとを有してもよい。例示的な実施形態による浄化およびヒートシンクシステムは、ホットレグおよびコールドレグのうちの少なくともいずれか一方に接続し、プラントの状況およびオペレーターの入力のうちの少なくともいずれか一方に応じて、ループ内を流れる流体冷却材から不純物または破片を除去する機能、および流体冷却材から相当量の熱を除去する機能のうちの少なくともいずれか一方を発揮する。複合システムは、ホットレグとコールドレグとの間に選択的に流れを生じさせ、これにより、原子炉がまだ大量の熱を発生させていても、熱抽出器を完全にバイパスして、排水および運転停止操作を可能にしてもよい。同様に、複合システムは1本のレグで作動し、通常の原子炉および熱抽出器の運転中に冷却材を洗浄しながら相当な熱損失を防ぐことができる。また、流路の形成、送液、および/または冷却などの操作に応じて、中間モードも可能である。浄化は、コールドトラップ、例えば出口と直列に接続された冷却器、および冷却材ループに戻る、潜在的には再生熱交換器によって達成することができ、一方、熱吸収は、バイパス出口と並列に接続され、冷却材ループに戻る、潜在的に大容量モードで動作する冷却器によって達成することができる。
【0006】
複合システムは、冷却材ループに対する浄化および大幅な冷却の両者を選択的に行うことができるので、システムは、所望のレベルの組み合わせでこれらのモードの両者の間で動作するように構成されてもよい。例えば、システム内の冷却器は、熱除去のモード乃至レベルを切り替えることができる。あるモードでは、冷却材からの不純物を固化または堆積させるのに十分な少量の熱しか冷却材から取り除かず、また、別のモードでは、冷却材から相当量の熱を、潜在的に崩壊熱や原子炉運転レベルの熱に達するまで奪ってもよい。このような不純物除去レベルからヒートシンクレベルへの変調は、強制対流の増加、流路体積流量の増加、ヒートシンク媒体の変更等によって達成することができる。同様に、入口体積流量を増加させ、ポンプ圧力を増加させ、かつ/または、冷トラップのような浄化器およびシステム内の任意の再生熱交換器を避けながら冷却材ループのホットレグおよびコールドレグを接続する流路を、これらのモード間において、弁などによって形成してもよい。
【0007】
実施例による冷却材ループおよび浄化/冷却器システムは、PRISM原子炉で使用される液体ナトリウム冷却材のような流体媒体を含む様々なプラントおよび冷却材で使用可能である。冷却材ループは、浄化冷却器システムを通してホットレグおよびコールドレグを直接接続することにより、蒸気発生器などの一次熱抽出器全体のバイパスを提供し、保守のために熱抽出器と関連ポンプとを分離してこれらを排水できるようにすることができる。ホットレグおよびコールドレグは、それ自体が原子炉よりも上にある冷却器よりも垂直に高く延びる流体カラムで満たされた部分を含んでいてもよく、ループ内のホットレグおよびコールドレグは、熱抽出器への逆流を防ぐために、原子炉に向かって後退する僅かに角度をなす水平経路により配置されていてもよい。したがって、例示的な実施形態は、冷却器の容量を追加し、かつ/またはループの対向する部分に出口を追加することのみにより、原子炉の浄化器とともに既存のいくつかのタイプの冷却材ループと組み合わせて設置され、運転されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、関連技術による冷却材清浄化システムを示す説明図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による冷却材浄化および放熱システムを示す説明図である。
【
図3】
図3は、原子炉と組み合わせて使用可能な、一実施形態による中間ループを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示的な実施形態は、添付の図面を詳細に説明することでより明らかになるであろう。ここでは、同様の要素は同様の参照符号で表されているが、これらの参照符号は例示のために与えられたものであり、したがって、それらが描写する用語を限定するものではない。
【0010】
これは特許文書であるため、これを読む際には一般的で幅広い解釈のルールを適用すべきである。この文書に記載されているすべてのものは、以下に添付されている特許請求の範囲に含まれる主題の一例である。本明細書に開示されている具体的な構造および機能の詳細は、単に実施例の形成方法および使用方法を説明するためのものである。本明細書で具体的に開示されていないいくつかの異なる実施形態および方法が特許請求の範囲に含まれる可能性がある。したがって、請求項は多くの代替的形態で具現化される可能性があり、本明細書に記載された例のみに限定して解釈されるべきではない。
【0011】
本明細書では、様々な要素を説明するために「第1」、「第2」などの序列用語が使用されることがあるが、これらの要素はこれらの用語によって任意の順序に限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素を他の要素から区別するためにのみ使用される。「第2」以上の序数がある場合、単にその数の要素が存在しなければならず、必ずしも差や他の関係があるわけではない。例えば、例示された実施形態または方法の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書では、「および」、「または」、および「および/または」という用語は、単一の項目、項目のサブグループ、またはすべての項目のみが存在することが明確に示されていない限り、関連するリスト項目の1つまたは複数のうちのすべての組み合わせを含む。「etc.」の使用は、「et cetera」と定義され、前の項目の同じ群に属する他のすべての要素を、任意の「および/または」の1つ以上の組み合わせで含むことを示す。
【0012】
ある要素が他の要素に「接続されている」、「結合されている」、「嵌合されている」、「取り付けられている」、「固定されている」などと呼ばれる場合、その要素は他の要素に直接接続されていてもよいし、介在する要素が存在していてもよいことが理解されよう。一方、ある要素が他の要素に「直接接続されている」「直接結合されている」などと表現される場合、そこには介在する要素は存在しない。要素間の関係を表すその他の用語も同様に解釈されるべきである(例えば、「between」と「direct between」、および「adjacent」と「direct adjacent」など)。同様に、「通信可能に接続されている」などの用語は、無線で接続されているか否かにかかわらず、仲介装置やネットワークなどを含む2つの電子装置間の情報交換およびルーティングのあらゆる変形例を含む。
【0013】
本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、言語が明示的に別のことを示していない限り、単数形および複数形の両者を含むことを意図している。「a」および「an」などの不定冠詞は、以前に導入されたかどうかにかかわらず、任意の修正された用語を導入または参照し、「the」などの定冠詞は、以前に導入された同じ用語を参照する。したがって、「a」や「an」は、以前に導入されたか新しいことが認められている項目を修飾し、定冠詞は、直前に提示されたものと同じ項目を修飾するものと理解される。本明細書で使用されている「comprises」、「comprising」、「includes」、および/または「including」という用語は、記載された特徴、特性、ステップ、操作、要素、および/またはコンポーネントの存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、特性、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループの存在または追加をそれら自体排除するものではないことが、さらに理解されるであろう。本明細書では、「軸線方向」および「垂直方向」とは、重力に沿って配向された同じ上下方向である。「横断方向」および「水平方向」とは、「軸線方向」に直交する方向であり、特定の軸線方向の高さで所定の平面における横の方向である。
【0014】
以下で説明する構造および操作は、図に記載された順序とは異なる場合がある。例えば、連続して表示されている2つの操作および図のうちの少なくともいずれか一方は、実際には同時に実行されることもあれば、関係する機能/行為に応じて逆の順序で実行されることもある。同様に、以下で説明する例示的な方法の中の個別の操作は、個別にまたは連続的に繰り返し実行され、以下で説明する単一の操作とは別に、ループまたは他の一連の操作を提供することができる。以下に説明する特徴および機能を有する任意の実施形態または方法は、任意の実行可能な組み合わせで、例示の実施形態の範囲内にあるものと推定されるべきである。
【0015】
本発明者らは、浄化システムが、単に冷却水から不純物を除去するのみならず、原子炉のヒートシンクとして使用されてもよいことを新たに認識した。本発明者らはさらに、プラントの保守時など、中間冷却材ループが排出され作業されている間、浄化システムを代替的冷却材ループまたは並列冷却材ループとして使用できることを新たに認識した。浄化システムのこれらの用途は、その確立された機能に反するものであるが、本発明者らは、従来、他のシステムを使用し、かつ/またはプラントを完全に停止することによって解決されてきた緊急冷却および運転保守の長年の課題を解決することができると認識した。以下に説明する例示的な実施形態は、本発明者らが発見したこれらの課題および他の課題の解決を一意に可能にする。
【0016】
本発明は、ヒートシンク浄化システム、それを用いた原子炉、およびその使用方法である。本発明とは対照的に、以下で説明するいくつかの例示的な実施形態および例示的な方法は、本発明として、かつ/または本発明に関連して使用することができる様々な異なる構成の単なるサブセットを示している。
【0017】
図2は、商用原子力発電所で使用可能な例示的な一実施形態による崩壊熱除去システム100を示す説明図である。
図2に示すように、例示的な実施形態によるシステム100のいくつかの要素は、
図1の関連技術によるシステム10と同様であってもよい。このように例示的な実施形態によるシステム100は、複数の異なる原子力発電所設計において、溶融熱伝達媒体を搬送する中間ループと関連して使用することも可能である。例示的な実施形態によるシステム100は、中間ループからの追加の、より高い容量の入口150、および中間ループへの追加の、より高い容量の出口180を含む。入口150は、例えば、冷却材が原子炉から出る中間ループの高温側すなわちホットレグ4(
図3)への弁付き接続部であってもよい。同様に、出口180は、例えば、冷却材が原子炉に入る中間ループのより低温側すなわちコールドレグ8(
図3)への弁付き接続部であってもよい。入口150および出口180は、遠く離間していてもよく、潜在的には中間ループの反対の側であってもよい。
【0018】
例示的な実施形態による崩壊熱除去システム100は、中間ループの熱の相当な部分を放散または吸熱するために、流量および熱伝達容量が増加している。このように、システム100は、熱損失を回避する代わりに、そのような熱を中間ループ、ひいては原子炉から除熱することによって、崩壊熱除去システムとして機能することができる。この大規模なヒートシンクに対応するために、追加のまたはより大規模な冷却器170およびファン171、並びに追加の並列かつ/またはより大容量のポンプ151が、例示的な実施形態によるシステム100を通して向けられるより大量の冷却材から相当量の熱を除熱するために使用されてもよい。例えば、システム100は、プラントのフル定格熱出力の約7%に相当する熱を除熱することができる。もちろん、熱量はプラントによって異なるが、一例として、定格840メガワットのプラントから5メガワットの熱を吸熱してもよい。また、他の熱除去システムと組み合わせて崩壊熱を部分的に除去するなど、冷却器および流路の選択的な活性化により、より小さな値を達成することも可能である。
【0019】
選択的活性化は、例えば、冷却器170が、より大きな流れを選択的に収容するためのフィンを有する複数の並列チャネルを含むこと、および/またはファン171が、相当量の熱を対流させるために選択的に活性化できる複数の速度または複数のファン若しくは高圧ブロワを含むことによって達成され得る。あるいは、例えば、より大規模な冷却器170は、冷却材から相当量の熱を選択的に放散するためにオンにすることができる他の冷却材媒体、浸漬部、向流熱交換器、プリント回路熱交換器、プレート-フレーム熱交換器、および他のヒートシンクを並行して含むことができる。このように、冷却器170は、冷却材から0.5MW以下などの少ない熱を除去する浄化モードから、冷却材から5MW程度以上などの相当な熱を除去する吸熱モードへとシームレスに変化することができる。
【0020】
例示的な実施形態による崩壊熱除去システム100は、増加した崩壊熱除去と、冷トラップなどの浄化に使用可能な低レベルの冷却との間で調整され得る。例えば、接続部150および180は、過剰な熱損失なしに、通常のプラント運転中に、弁などによって遮断されてもよく、システム100は、浄化器80を備えた浄化システムとして機能し、出口67に流れを戻し、中間ループで入口50から付近に流れを受承してもよい。原子炉の運転停止または他の冷却システムの損失を伴う過渡現象の間など、追加の冷却が必要な場合、接続部150および180を開いてより大きな冷却材の流れを可能にし、ポンプ151、冷却器170、および/またはファン171の速度、数、および/またはタイプを増加して、より大きな冷却材の流れによる熱放散を増加させてもよい。同様に、弁81および弁82のうちの少なくともいずれか一方は、例示的な実施形態によるシステム100が崩壊ヒートシンクレベルに選択的に調整されるときに、浄化器80および再加熱器60のうちの少なくともいずれか一方を避けるために閉じられてもよい。浄化器80を閉じることにより、接続部150と180との間に直接および/または専用の冷却材の流れが生じ、追加の冷却状態における例示によるシステム100を通る吸熱が改善されてもよい。このように、例示的な実施形態によるシステムは、冷トラップやその他の浄化器を使用するほぼすべての冷却材ループと互換性があり、選択的に活性化可能な増加ヒートシンクのオプション機能を依然として提供する。
【0021】
図3は、PRISM炉や溶融塩炉などの高温炉を含む原子炉で使用可能な、例示的な一実施形態による中間冷却材ループ200を示す説明図である。
図3に示すように、例示的な実施形態による中間冷却材ループ200は、核燃料を有する炉心2を収容する原子炉1を含むいくつかの関連するまたは従来の原子炉構成要素とのインターフェースとなることができる。中間熱交換器3は、原子炉1からの熱を中間冷却材ループ200に伝え、そこから蒸気発生器6のような抽出器や発電用の熱交換器に熱を伝えてもよい。
【0022】
図3に示すように、中間冷却材ループ200は、入口150および出口180を介して例示的な実施形態による崩壊熱除去システム100(
図2)と連動している。例えば、入口150は、冷却材が最初に原子炉1を出てそのエネルギーが最も高いホットレグ4の底部から冷却材を取り込み、出口180は、冷却材が原子炉1に戻されそのエネルギーが最も低いコールドレグ8の底部に冷却材を戻してもよい。典型的な冷トラップ浄化の場合、入口50および出口67(
図2)は、例示的な実施形態による中間冷却材ループ200において温度の極値で分離され得る入口150および出口180とは異なり、熱損失を防ぐために同じレグの同じまたは近傍の位置から取り得る。過渡状態またはより大きな熱吸収が望まれる場合、入口50および出口67のうちの少なくともいずれか一方を閉じ、入口150および出口180を開くかまたは有効にして、最終的に中間熱交換器3を通って逆流する冷却材から熱を除去し、原子炉1を冷却することができる。
【0023】
例示的な実施形態による中間冷却材ループ200は、中間ポンプ7および蒸気発生器6、または他の熱抽出器と組み合わせて動作可能であり、冷却材から熱を引き出して電気を生成することも可能である。中間ポンプ7および蒸気発生器6のうちの少なくともいずれか一方は、冷却材ループ200が依然として冷却材を循環させ、入口150および出口180を通して吸熱する間、任意に休止させ、排水することができる。例えば、中間ポンプ7、蒸気発生器6、並びに/またはホットレグ4およびコールドレグ8の一部は、排水弁を開いて冷却材を重力で排水タンク5へ駆動することおよび/またはアクティブなポンプ駆動によって、排水タンク5に排水することができる。
【0024】
ホットレグ4およびコールドレグ8の配管の勾配が適切であれば、ポンプ7および蒸気発生器6およびその関連配管の排水を行うことができる。例えば、ホットレグ4およびコールドレグ8の水平配管は、垂直に対して僅かな角度をなし、例えば、蒸気発生器6に向かって僅かに下がり、原子炉1から離れる方向に、1メートルの長さあたり5乃至10ミリメートルの垂直落差があってもよい。この下がる傾斜は、後述する例示的な位置決めと組み合わせて、逆流をさらに防止し、例示的な実施形態による中間冷却材ループ200の一部のみを通る冷却材ループを確実にすることができる。
【0025】
ホットレグ4およびコールドレグ8は、ホットレグ4内の流体カラムが垂直高さ240に、コールドレグ8内の流体カラムが垂直高さ280になるように配置されてもよい。ループ200の他の部分が排水されても、これらのレグの流体カラムは残っていてもよい。ホットレグ4の入口150およびコールドレグ8の出口180の上の垂直高さ250および280に流体カラムが存在するため、冷却材は、ホットレグ4およびコールドレグ8の下部を介して中間熱交換器3と崩壊熱除去システム100(
図2)との間で依然として循環させることができる。このようにして、中間熱交換器3を介して原子炉1からなお除熱しながら、空になった蒸気発生器6、中間ポンプ7、および/または冷却材ループ200の任意の他の排水された部分の修理またはその他の作業を行うことが可能である。もちろん、システム100を備えた例示的な実施形態による冷却材200は、完全に充填されたループで使用することもできる。
【0026】
同様に、
図3において、システム100、またはシステム100の少なくとも冷却器170(
図2)は、垂直高さ230で中間熱交換器3の上の垂直高さ231に配置されてもよい。垂直高さ230と垂直高さ231との差により、熱交換器3で加熱された冷却水が、濃度が低下することにより上昇し、冷却器170に流れて冷却され濃度が上昇し、濃度差によって熱交換器3に戻るという自然循環駆動力を生じさせることができる。この構成とそれに伴う自然循環により、ポンプ151や7などによる積極的なポンプの必要性がなくなるか、または低減する可能性がある。システム100の他の全ての冷却材充填部分が冷却材カラムの標高240および280よりも下にある場合、重力により、およびシステム100の下に空隙が形成されないことにより、熱交換器3を通してループ200に自然循環が生じる。
【0027】
図2および
図3に示すように、例示的な実施形態による中間冷却材ループ200および例示的な実施形態による崩壊熱除去システム100は、いくつかのタイプの原子炉および既存の構成要素と組み合わせて使用することができる。ループ200およびシステム100のいくつかの機能は、入口50の容量を入口150の容量に増加させ、冷却器の吸熱容量を増加させ、専用の戻り出口180をコールドレグ8に追加することのみにより達成できる。ループ200およびシステム100は、冷却材の比較的小さな流れから不純物および破片のうちの少なくともいずれか一方を取り払うために典型的な原子炉運転中に使用することができ、また、事故またはプラント保守中等の過渡または非電気発生状態中に原子炉1から崩壊熱またはさらには運転熱までの全てまたは相当な部分を除去するために選択的に調整可能である。同様に、複数のループ200およびシステム100は、1つの原子炉1と組み合わせて使用可能であり、原子炉1からのさらなる相当な量の熱移動および吸熱を行う。
【0028】
例示的な実施形態および方法を上記のように説明したが、当業者であれば、例示的な実施形態は、依然として以下の特許請求の範囲内にありながら、日常的な実験によって変形させたり代用したりすることができることを理解できるであろう。例えば、異なる温度および冷却材を許容するのみにより、任意の数の異なる原子炉タイプおよび熱力学サイクルを例示的な実施形態で使用することができる。このような変形例は、本特許請求の範囲から逸脱しているとはみなされない。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉
(1)のための流体冷却材を搬送する冷却材ループ
(200)のための浄化器およびヒートシンクシステム
(100)であって、
前記冷却材ループ
(200)に接合するように構成された入口
(50,150)と、
前記冷却材ループ
(200)に接合するように構成された第1の出口
(67)と、
前記冷却材ループ
(200)に接合するように構成された第2の出口
(180)と、
前記入口
(50,150)から流れる前記流体冷却材から熱を取り払うように構成された冷却器
(170,171)と、
前記冷却器
(170,171)を出る前記流体冷却材から不純物を取り払うように構成された浄化器
(80)であって、同浄化器
(80)は前記第1の出口
(67)と直列流であり、前記第2の出口
(180)と並列流である、浄化器
(80)と、
を備える、浄化器およびヒートシンクシステム
(100)。
【請求項2】
前記浄化器
(80)および前記第1の出口
(67)への流れをすべて閉じるように構成された少なくとも1つの弁
(81,82)をさらに備える、請求項1に記載のシステム
(100)。
【請求項3】
前記入口
(50,150)および前記第1の出口
(67)は前記冷却材ループ
(200)の同じレグ
(4)に接合するように配置され、前記第2の出口
(180)は前記冷却材ループ
(200)の反対側のレグ
(8)に接合するように配置される、請求項1に記載のシステム
(100)。
【請求項4】
前記冷却器
(170,171)は、第1のモードでは前記流体冷却材から約0.5メガワットを吸熱し、第2のモードでは前記流体冷却材から約5MWまたは前記原子炉
(1)の定格熱出力の7%を吸熱するように構成さ
れる、請求項1に記載のシステム
(100)。
【請求項5】
前記冷却器
(170)は、複数のフィン付き熱交換チューブ、および前記複数のフィン付き熱交換チューブに対流流体を吹き付ける少なくとも1つのファン
(171)を含む、請求項4に記載のシステム
(100)。
【請求項6】
前記入口
(50,150)は、前記冷却器
(170)のモード変更時に体積流量を変更するように構成されている、請求項4に記載のシステム
(100)。
【請求項7】
前記入口
(50,150)から熱交換器
(60)に流入する前記流体冷却材の温度を低減するとともに前記熱交換器
(60)から前記第1の出口
(67)に流入する前記流体冷却材の温度を上昇させるように、前記入口
(50,150)と前記第1の出口
(67)との間に接続された前記浄化器
(80)と直列に流れる熱交換器
(60)をさらに備える、請求項1に記載のシステム
(100)。
【請求項8】
i)前記第2の出口
(180)、または
ii)
前記浄化器(80)、前記熱交換器
(60)、および前記第1の出口
(67)
のi)およびii)のうちの1つのみに前記流体冷却材の流れを許容するように構成された少なくとも1つの弁
(81,82)をさらに備える、請求項7に記載のシステム
(100)。
【請求項9】
請求項1に記載の前記浄化器およびヒートシンクシステム
(100)を作動する方法であって、
前記入口(50,150)から前記浄化器(80)を通って前記第1の出口(67)を退出するように前記流体冷却材を流すステップを含む、前記浄化器およびヒートシンクシステム
(100)の作動方法。
【請求項10】
前記冷却器
(170,171)のモードを変更するステップと、
前記浄化器(80)を通って前記第1の出口(67)を退出する前記流体冷却材の流れを停止するステップと、
前記第2の出口(180)を退出するように前記流体冷却材を流すステップと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】