(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】発酵ブロスからの中性オリゴ糖の分離
(51)【国際特許分類】
C07H 1/08 20060101AFI20221128BHJP
C07H 3/06 20060101ALI20221128BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20221128BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20221128BHJP
B01D 61/56 20060101ALI20221128BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20221128BHJP
B01D 71/58 20060101ALI20221128BHJP
C02F 1/42 20060101ALI20221128BHJP
C02F 1/28 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C07H1/08
C07H3/06
B01D61/00 500
B01D61/14 500
B01D61/56
B01D71/02
B01D71/58
C02F1/42 B
C02F1/28 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515875
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2020059201
(87)【国際公開番号】W WO2021064629
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508278309
【氏名又は名称】グリコム・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Glycom A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】カーンジン, ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】シャサーニュ, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】マチーセン, フレミング
(72)【発明者】
【氏名】テーゲルセン, ジェスパー
(72)【発明者】
【氏名】マトウィユク, マーティン
【テーマコード(参考)】
4C057
4D006
4D025
4D624
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057AA05
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4D624AA07
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4D624DB04
4D624DB07
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(57)【要約】
本発明は、中性ヒトミルクオリゴ糖(HMO)の、それが生成された反応環境からの、好ましくは発酵ブロスからの分離及び単離であって、i)任意選択的に、前処理された反応環境を得るための、反応環境の遠心分離、精密ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでの反応環境のろ過の工程と、ii)工程i)からの前処理された反応環境のpHを3~6に設定するか、又は反応環境のpHを直接3~6に設定し、且つ任意選択的に、工程i)からの前処理された反応環境を35~65℃に温めるか、又は反応環境を直接35~65℃に温める工程と、iii)工程ii)で得られた反応環境を、5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させ、且つ透過液を回収する工程とを含み、但し、工程i)が実行されない場合、UF膜は、非高分子膜である、分離及び単離に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を、それが生成された反応環境から、好ましくは発酵ブロスから得るか又は単離する方法であって、
i)任意選択的に、前処理された反応環境を得るための、前記反応環境の遠心分離、精密ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでの前記反応環境のろ過の工程と、
ii)工程i)からの前記前処理された反応環境のpHを3~6に設定するか、又は前記反応環境のpHを直接3~6に設定し、且つ任意選択的に、工程i)からの前記前処理された反応環境を35~65℃に温めるか、又は前記反応環境を直接35~65℃に温める工程と、
iii)工程ii)で得られた前記反応環境を、5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させ、且つ透過液を回収する工程と
を含み、但し、工程i)が実行されない場合、前記UF膜は、非高分子膜である、方法。
【請求項2】
前記UF膜の分子量カットオフは、10~1000kDaである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程ii)は、工程i)からの前記前処理された反応環境の前記pHを設定し、且つそれを温めるか、又は前記反応環境のpHを直接設定し、且つそれを温めることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程i)は、実行されず、前記非高分子膜は、セラミック膜である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程iii)は、45~65℃で実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記UF膜は、セラミック膜であり、及び前記方法は、工程iii)で得られた前記透過液をナノろ過(NF)膜と接触させ、且つ保持液を回収する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記NF膜は、600~3500Daの分子量カットオフ(MWCO)を有し、前記NF膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO
4阻止率は、約50~90%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノろ過保持液は、イオン交換樹脂で処理され、前記イオン交換樹脂による処理は、H
+形態の強カチオン交換樹脂による前記NH保持液の処理、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理からなる、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノろ過保持液は、活性炭で処理され、好ましくは、前記ナノろ過保持液は、30~60℃において、活性炭でのクロマトグラフィーであって、前記炭の量は、前記ナノろ過保持液に含有される前記中性HMOの約2~10重量%である、クロマトグラフィーに供されて、活性炭溶出液を与える、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン交換処理の溶出液は、活性炭で処理され、好ましくは、前記溶出液は、30~60℃において、活性炭でのクロマトグラフィーであって、前記炭の量は、前記溶出液に含有される前記中性HMOの約2~10重量%である、クロマトグラフィーに供されて、活性炭溶出液を与える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
活性炭溶出液は、イオン交換樹脂で処理され、前記イオン交換樹脂による処理は、H
+形態の強カチオン交換樹脂による前記活性炭溶出液の処理、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記中性HMOは、2’-FL、3-FL、DFL、LNT、LNnT又はLNFP-Iである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記中性HMOは、2’-FL又はLNnTである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記中性HMOが生成された前記反応環境は、発酵ブロスである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
発酵は、遺伝子改変微生物、好ましくは大腸菌(E.coli)によって実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子改変微生物は、LacY
+表現型又はLacZ
-、LacY
+表現型の大腸菌(E.coli)細胞である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、中性ヒトミルクオリゴ糖(HMO)の、それが生成される反応混合物からの分離及び単離に関する。
【0002】
[発明の背景]
過去数十年、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)の調製及び商品化への関心が着実に高まっている。HMOの重要性は、このHMOの固有の生物学的活性に直接関係しており、従って、HMOは、栄養用途及び治療用途に重要な潜在的製品となっている。そのため、HMOを工業的に製造する低コストの方法が模索されている。
【0003】
現在まで、140種を超えるHMOの構造が決定されており、ヒトミルク中には、おそらくはるかにより多くのものが存在する(Urashima et al.:Milk oligosaccharides,Nova Biomedical Books,2011;Chen Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.72,113(2015))。HMOは、還元末端でラクトース(Galβ1-4Glc)部分を含み、且つN-アセチルグルコサミン又は1つ若しくは複数のN-アセチルラクトサミン部分(Galβ1-4GlcNAc)及び/或いはラクト-N-ビオース部分(Galβ1-3GlcNAc)で伸長され得る。ラクトース及びN-アセチルラクトサミニル化ラクトース誘導体又はラクト-N-ビオシル化ラクトース誘導体を1つ又は複数のフコース及び/又はシアル酸残基でさらに置換するか、又はラクトースを追加のガラクトースで置換して、これまで知られているHMOを得ることができる。
【0004】
近年、HMO、特に三糖であるものの直接発酵生成が実用化されている(Han et al.Biotechnol.Adv.30,1268(2012)及び本明細書で引用されている参考文献)。そのような発酵技術では、組換え大腸菌(E.coli)システムが使用されており、このシステムでは、ウイルス又は細菌に由来する1つ又は複数のタイプのグリコシルトランスフェラーゼが共発現されて、外部から添加されたラクトースがグリコシル化されており、このラクトースは、大腸菌(E.coli)のLacYパーミアーゼにより内在化されている。しかしながら、組換えグリコシルトランスフェラーゼ、特に4つ以上の単糖単位のオリゴ糖を生成するための一連の組換えグリコシルトランスフェラーゼは、副生成物を常に形成し、そのため、発酵ブロス中にオリゴ糖の複雑な混合物が生じる。さらに、発酵ブロスは、幅広い非オリゴ糖物質、例えば、細胞、細胞断片、タンパク質、タンパク質断片、DNA、DNA断片、エンドトキシン、カラメル化副生成物、ミネラル、塩又は他の荷電分子を必然的に含有する。
【0005】
炭水化物副生成物及び他の夾雑成分からHMOを分離するために、最適な方法として、ゲルろ過クロマトグラフィーと組み合わされた活性炭処理が提案されている(国際公開第01/04341号パンフレット、欧州特許出願公開第A-2479263号明細書、Dumon et al.Glycoconj.J.18,465(2001)、Priem et al.Glycobiology 12,235(2002)、Drouillard et al.Angew.Chem.Int.Ed.45,1778(2006)、Gebus et al.Carbohydr.Res.361,83(2012)、Baumgaertner et al.ChemBioChem 15,1896(2014))。ゲルろ過クロマトグラフィーは、実験室規模の便利な方法ではあるが、工業生産用に効率的にスケールアップすることができない。
【0006】
最近では、欧州特許出願公開第A-2896628号明細書は、微生物発酵により得られた発酵ブロスからの2’-FLの精製プロセスであって、限外ろ過、強カチオン交換樹脂クロマトグラフィー(H+形態)、中和、強アニオン交換樹脂クロマトグラフィー(酢酸塩形態)、中和、活性炭処理、電気透析、第2の強カチオン交換樹脂クロマトグラフィー(H+形態又はNa+形態)、第2の強アニオン交換樹脂クロマトグラフィー(Cl-形態)、第2の活性炭処理、任意選択的な第2の電気透析及び滅菌ろ過の工程を含む精製プロセスを説明している。
【0007】
国際公開第2017/182965号パンフレット及び同第2017/221208号パンフレットは、発酵ブロスからのLNT又はLNnTの精製プロセスであって、限外ろ過、ナノろ過、活性炭処理及び強カチオン交換樹脂(H+形態)、その後の弱アニオン交換樹脂(塩基形態)による処理を含む精製プロセスを開示している。
【0008】
国際公開第2015/188834号パンフレット及び同第2016/095924号パンフレットは、精製された発酵ブロスからの2’-FLの結晶化を開示しており、この精製は、限外ろ過、ナノろ過、活性炭処理及び強カチオン交換樹脂(H+形態)、その後の弱アニオン交換樹脂(塩基形態)による処理を含む。
【0009】
他の先行技術の文献は、ラクトースが少ないか又はラクトースがない発酵ブロスのための緻密な精製方法を開示している。これらの手順によれば、中性HMOの発酵生成中に過剰に添加されたラクトースは、β-ガラクトシダーゼの作用により、発酵完了後にインサイチュで加水分解されており、ラクトースが実質的に残存していないブロスが得られる。従って、国際公開第2012/112777号パンフレットは、2’-FLを精製するための一連の工程であって、遠心分離、炭でのオリゴ糖の捕捉、その後の溶出及びにイオン交換媒体でのフラッシュクロマトグラフィーを含む工程を開示している。国際公開第2015/106943号パンフレットは、2’-FLの精製であって、限外ろ過、強カチオン交換樹脂クロマトグラフィー(H+形態)、中和、強アニオン交換樹脂クロマトグラフィー(Cl-形態)、中和、ナノろ過/透析ろ過、活性炭処理、電気透析、任意選択的な第2の強カチオン交換樹脂クロマトグラフィー(Na+形態)、第2の強アニオン交換樹脂クロマトグラフィー(Cl-形態)、第2の活性炭処理、任意選択的な第2の電気透析及び滅菌ろ過を含む精製を開示している。国際公開第2019/063757号パンフレットは、中性HMOの精製プロセスであって、発酵ブロスからバイオマスを分離すること並びにカチオン交換材料、アニオン交換材料及びカチオン交換吸着樹脂による処理を含む精製プロセスを開示している。
【0010】
しかしながら、HMOの純度を少なくとも維持し、好ましくは改善しつつ、HMOの回収率を改善し、且つ/又は先行技術の方法を簡略化するために、中性HMOを、非炭水化物成分が生成された発酵ブロスの非炭水化物成分から単離及び精製するための代替手順、特に工業スケールに適したものが必要とされている。
【0011】
[発明の概要]
本発明は、中性ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を、それが生成された反応環境から、好ましくは発酵ブロスから得るか又は単離する方法であって、前記HMOは、内在化した炭水化物前駆体から前記HMOを生成し得る遺伝子改変微生物を培養することによって生成されており、方法は、
i)前記反応環境のpHを酸性、例えば約3~約6、好ましくは約5以下に設定し、且つ/又は前記反応環境を室温(若しくは周囲温度)よりも高い温度、好ましくは約30~90℃、より好ましくは約35~85℃に温める工程と、
ii)工程i)で得られた反応環境を、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させる工程であって、この膜は、好ましくは、非高分子材料で構成される、工程と
を含む、方法に関する。
【0012】
従って、一実施形態では、本発明は、中性ヒトミルクオリゴ糖(HMO)を、それが生成された反応環境から、好ましくは発酵ブロスから得るか又は単離する方法であって、
i)任意選択的に、反応環境の遠心分離、精密ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでの反応環境のろ過の工程と、
ii)工程i)からのろ液若しくは上清のpHを3~6に設定するか、又は反応環境のpHを直接3~6に設定し、且つ/又は工程i)からのろ液若しくは上清を35~65℃に温めるか、又は反応環境を直接35~65℃に温める工程と、
iii)工程ii)で得られた反応環境を、5~1000kDa、好ましくは10~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させ、且つ透過液を回収する工程と
を含み、但し、工程i)が実行されない場合、UF膜は、非高分子膜である、方法に関する。
【0013】
好ましくは、この方法は、
i)任意選択的に、前処理された反応環境を得るための、反応環境の遠心分離、精密ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでの反応環境のろ過の工程と、
ii)工程i)からの前処理された反応環境(典型的には工程i)からのろ液又は上清である)のpHを3~6に設定するか、又は反応環境のpHを直接3~6に設定し、且つ任意選択的に、工程i)からの前処理された反応環境を35~65℃に温めるか、又は反応環境を直接35~65℃に温める工程と、
iii)工程ii)で得られた反応環境を、5~1000kDa、好ましくは10~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させ、且つ透過液を回収する工程と
を含み、但し、工程i)が実行されない場合、UF膜は、非高分子膜である。
【0014】
より好ましくは、上記工程ii)は、pHの設定及び温めの両方を含み、具体的には、pHの設定を最初に行い、続いて、そのようにして得られた、pHが設定された反応環境又は前処理された反応環境を温める。
【0015】
一実施形態では、上記で開示されている方法は、ナノろ過工程をさらに含む。
【0016】
他の実施形態では、上記で開示されている方法は、1つ又は複数のイオン交換樹脂による処理をさらに含む。
【0017】
他の実施形態では、上記で開示されている方法は、活性炭でのクロマトグラフィーによる処理をさらに含む。
【0018】
他の実施形態では、上記で開示されている方法は、ジビニルベンゼンで架橋されているポリスチレン(PS-DVB)であって、芳香環上において臭素で官能化されているポリスチレンである疎水性固定相を使用するクロマトグラフィーをさらに含む。
【0019】
本方法の一実施形態は、中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離することであって、
i)前記反応環境のpHを酸性、例えば約3~約6、好ましくは約5以下に設定し、且つ/又は前記反応環境を室温(若しくは周囲温度)よりも高い温度、好ましくは約30~90℃、より好ましくは約35~85℃に温める工程と、
ii)工程i)で得られた反応環境を、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させる工程であって、この膜は、好ましくは、非高分子材料で構成される、接触させる工程と、
iii)工程ii)で得られた透過液をナノろ過膜と接触させる工程と
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0020】
本方法の一実施形態は、中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離することであって、
i)前記反応環境のpHを酸性、例えば約3~約6、好ましくは約5以下に設定し、且つ/又は前記反応環境を室温(若しくは周囲温度)よりも高い温度、好ましくは約30~90℃、より好ましくは約35~85℃に温める工程と、
ii)工程i)で得られた反応環境を、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させる工程であって、この膜は、好ましくは、非高分子材料で構成される、接触させる工程と、
iii)工程ii)で得られた透過液をナノろ過(NF)膜と接触させる工程と、
iv)工程iii)で得られた保持液をイオン交換樹脂、好ましくは強カチオンイオン交換樹脂及び弱塩基性イオン交換樹脂で処理して、この保持液を脱塩する工程と
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0021】
本方法の一実施形態は、中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離することであって、
i)前記反応環境のpHを酸性、例えば約3~約6、好ましくは約5以下に設定し、且つ/又は前記反応環境を室温(若しくは周囲温度)よりも高い温度、好ましくは約30~90℃、より好ましくは約35~85℃に温める工程と、
ii)工程i)で得られた反応環境を、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させる工程であって、この膜は、好ましくは、非高分子材料で構成される、接触させる工程と、
iii)工程ii)で得られた透過液をナノろ過(NF)膜と接触させる工程と、
iv)工程iii)で得られた保持液をイオン交換樹脂、好ましくは強カチオンイオン交換樹脂及び弱塩基性イオン交換樹脂で処理して、この保持液を脱塩する工程と、
v)工程iv)で得られた溶液を活性炭(AC)と接触させるか、若しくはジビニルベンゼンで架橋されているポリスチレン(PS-DVB)であって、芳香環上において臭素で官能化されているポリスチレンである疎水性固定相を使用するクロマトグラフィーに供するか、又は任意の順序で両方を行う工程と
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0022】
好ましくは、中性HMOは、2’-FL、3-FL、DFL、LNT、LNnT又はLNFP-Iである。
【0023】
好ましくは、中性HMOが生成された反応環境は、発酵ブロスである。この発酵ブロスは、典型的には、下記を含有する:遺伝子改変微生物、好ましくは適切に設計されている大腸菌(E.coli)が生成する主要化合物としての目的の中性HMO、炭水化物副生成物又は夾雑物、例えば前駆体としてのラクトース、好ましくは外部から添加されたラクトースからの目的の中性HMOの生合成経路における炭水化物中間体、及び/又は生合成経路中での不十分な、不完全な若しくは低下したグリコシル化の結果としてのもの、及び/又は培養条件下での若しくは発酵後操作下での再構成若しくは分解の結果としてのもの、及び/又は発酵中に過剰に添加された未消費遊離体としてのラクトース。さらに、この発酵ブロスは、細胞、タンパク質、タンパク質断片、DNA、カラメル化副生成物、ミネラル、塩、有機酸、エンドトキシン及び/又は他の荷電分子を含有し得る。
【0024】
好ましくは、発酵ブロスをUF前に遠心分離、精密ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでのろ過に供しない場合、UF膜は、非高分子材料で構成される(例えば、このUF膜は、セラミック膜である)。
【0025】
本発明の特定の実施形態は、1つ又は複数のさらなる任意選択的な工程を含む。好ましくは、このさらなる任意選択的な工程は、電気透析ではない。
【0026】
一実施形態では、好ましくは、UF透過液がラクトースに乏しいか又はラクトースを本質的に欠く場合、工程iii)に係るNF工程は、目的の中性ヒトミルクオリゴ糖を確実に保持するMWCOを有するナノろ過膜の使用を含み、即ち、このナノろ過膜のMWCOは、中性ヒトミルクオリゴ糖の分子量の約25~50%、典型的には約150~500Daである。これに関して、中性ヒトミルクオリゴ糖は、NF保持液(NFR)中に蓄積され、一価イオン又は単糖等の塩は、透過液中に蓄積される。
【0027】
他の実施形態では、好ましくは、UF透過液が相当量のラクトースを含有する場合、工程iii)に係るNF工程は、MWCOが、中性HMOを確実に保持し、且つ一価の塩及び二価の塩並びにラクトースの少なくとも一部が膜を通過することを可能にする約600~3500Daであるナノろ過膜の使用であって、このNF膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、このNF膜でのMgSO4阻止率は、約50~90%である、使用を含む。
【0028】
他の実施形態では、工程v)に係る、ジビニルベンゼンで架橋されているポリスチレン(PS-DVB)であって、芳香環上において臭素で官能化されているポリスチレンである疎水性固定相を使用するクロマトグラフィーを、好ましくは目的の中性HMOがLNT、LNnT又はLNFP-Iである場合に利用して、夾雑しているオリゴ糖から目的の中性HMOを分離する。
【0029】
本発明は、別の態様では、発酵プロセス又は酵素プロセスからの水性媒体中の溶解した無機及び有機の塩、酸及び塩基からの中性HMOの分離であって、この水性媒体を工程i)、ii)、iii)、iv)及び任意選択的に工程v)に供する工程を含む分離に関する。
【0030】
[発明の詳細な説明]
[1.用語及び定義]
「中性ヒトミルクオリゴ糖」という用語は、a)1つ又は2つのα-L-フコピラノシル部分で置換されているか、b)ガラクトシル残基で置換されているか、又はc)N-アセチルグルコサミン部分、ラクト-N-ビオース(Galβ1-3GlcNAc)部分若しくはN-アセチルラクトサミン(Galβ1-4GlcNAc)部分により3’-OH基を介して伸長されている還元末端でラクトース単位であるコア構造を含む、ヒト母乳中に見出される非シアル化(従って中性)複合炭水化物を意味する(Urashima et al.:Milk oligosaccharides,Nova Biomedical Books,2011;Chen Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.72,113(2015))。N-アセチルラクトサミン含有誘導体は、N-アセチルラクトサミン及び/又はラクト-N-ビオース(ラクト-N-ビオースは、常に非還元末端である)でさらに置換され得る。N-アセチルラクトサミン含有誘導体及びラクト-N-ビオース含有誘導体は、1つ又は複数のα-L-フコピラノシル部分で任意選択的に置換され得る。中性三糖HMOの例として下記:2’-O-フコシルラクトース(2’-FL、Fucα1-2Galβ1-4Glc)、3-O-フコシルラクトース(3-FL、Galβ1-4(Fucα1-3)Glc)又はラクト-N-トリオースII(GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)が挙げられ;中性四糖HMOの例として下記:2’,3-ジ-O-フコシルラクトース(DFL、Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)Glc)、ラクト-N-テトラオース(LNT、Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)又はラクト-N-neoテトラオース(LNnT、Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)が挙げられ;中性五糖HMOの例として下記:ラクト-N-フコペンタオースI(LNFPI、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)、ラクト-N-フコペンタオースII(LNFPII、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)、ラクト-N-フコペンタオースIII(LNFP III、Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)、ラクト-N-フコペンタオースV(LNFP V、Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4(Fucα1-3)Glc)、ラクト-N-フコペンタオースVI(LNFP VI、Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4(Fucα1-3)Glc)が挙げられ;中性六糖HMOの例として下記:ラクト-N-ジフコヘキソースI(LNDFH I、Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)、ラクト-N-ジフコヘキサオースII(LNDFH II、Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAcβ1-3Galβ1-4(Fucα1-3)Glc)、ラクト-N-ジフコヘキサオースIII(LNDFH III、Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ1-3Galβ1-4(Fucα1-3)Glc)、ラクト-N-ヘキソース(LNH、Galβ1-3GlcNAcβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)Galβ1-4Glc)、パラ-ラクト-N-ヘキサオース(pLNH、Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)、ラクト-N-ネオヘキサオース(LNnH、Galβ1-4GlcNAcβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)Galβ1-4Glc)又はパラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(pLNnH、Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)が挙げられる。
【0031】
「遺伝子改変細胞」又は「遺伝子改変微生物」という用語は、好ましくは、DNA配列中に少なくとも1つの変更を含むように遺伝子操作されている微生物の細胞、例えば細菌細胞又は真菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞を意味する。「少なくとも1つの遺伝子変更」という用語は、野生型細胞の本来の特性に変化をもたらし得る遺伝子変更を意味し、例えば、改変細胞は、野生型細胞中に存在しない酵素の発現をコードする新規の遺伝物質の導入に起因して追加の化学的変換を実施し得るか、又は遺伝子の除去(ノックアウト)に起因して分解のような変換を実行し得ない。遺伝子改変細胞を、当業者に公知の遺伝子操作技術により従来の方法で製造し得る。
【0032】
「内在化した炭水化物前駆体から中性HMOを生成し得る遺伝子改変微生物」という用語は、好ましくは、1種又は複数のグリコシルトランスフェラーゼ酵素であって、活性化糖ヌクレオチドのグリコシル残基を、内在化したアクセプター分子に転移し得、且つ前記中性HMOの合成、前記グリコシルトランスフェラーゼにより炭水化物前駆体(アクセプター)に転移されるのに適した対応する活性化糖ヌクレオチドドナーを生成するための生合成経路及び炭水化物前駆体(アクセプター)の培養培地から細胞(目的の中性HMOを生成するためにこのアクセプターがグリコシル化される)中への内在化の機構に必要な1種又は複数のグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする1種又は複数の内在性遺伝子又は組換え遺伝子を含むように遺伝子操作されている(上記を参照されたい)微生物、例えば、細菌又は真菌(例えば酵母)、好ましくは細菌、より好ましくは大腸菌(E.coli)の細胞を意味する。このグリコシルトランスフェラーゼは、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ及びα-1,4フコシルトランスフェラーゼから選択される。対応する活性化糖ヌクレオチドは、UDP-Gal、UDP-GlcNAc及びGDP-Fucである。
【0033】
発酵に関連して、「バイオマス」という用語は、発酵細胞、例えば無傷の細胞、破壊された細胞、細胞断片、タンパク質、タンパク質断片、多糖に由来する懸濁物質、沈殿物質又は不溶性物質を指す。酵素反応に関連して、「バイオマス」という用語は、使用される酵素に由来する(主に変性している及び/又は沈殿している)タンパク質又はタンパク質断片を指す。バイオマスを例えば遠心分離、精密ろ過、限外ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでのろ過により上清又は反応混合物から分離し得る。
【0034】
「Brix」という用語は、水溶液の糖度(溶液100g中の糖のg)であるBrix度を指す。これに関して、本出願のN-アセチルグルコサミン含有中性オリゴ糖溶液のBrixは、N-アセチルグルコサミン含有中性オリゴ糖及びそれに付随する炭水化物を含む溶液の全炭水化物含有量を指す。Brixを、較正された屈折計で測定する。
【0035】
塩の阻止率(%)は、(1-κp/κr)・100(式中、κpは、透過液中の塩の導電率であり、κrは、保持液中の塩の導電率である)として算出する。保持液の濃度は、塩に関する供給濃度と実質的に等しい。塩の阻止を測定する手順は、下記の実施例で開示されている。
【0036】
炭水化物の阻止率(%)は、(1-Cp/Cr)・100(式中、Cpは、透過液中の炭水化物の濃度であり、Crは、保持液中の炭水化物の濃度である)として算出する。保持液の濃度は、炭水化物に関する供給濃度と実質的に等しい。炭水化物の阻止を測定する手順の一例は、下記の実施例で開示されている。
【0037】
2種の炭水化物に関する分離係数は、(Cp1/Cr1)/(Cp2/Cr2)(式中、Cp1及びCp2は、それぞれ透過液中の第1の炭水化物及び第2の炭水化物の濃度であり、Cr1及びCr2は、それぞれ保持液中の第1の炭水化物及び第2の炭水化物の濃度である)として算出する。
【0038】
「純水フラックス」とは、特定の条件(約23~25℃、10bar及び300l/hの一定クロスフロー)下での単位時間当たり、単位面積当たりの膜を通過する純水(例えば、蒸留水、RO水)の体積として定義される。
【0039】
「脱塩」は、好ましくは、液体からミネラル又はミネラル塩を除去するプロセスを意味する。本発明に関連して、脱塩は、好ましくは、イオン交換処理の工程を指し、特に第2のイオン交換体からの溶出液がミネラル若しくはミネラル塩を含有しないか又は非常に少ない量のみ含有するようなカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の後続適用を指す。さらに、特にナノろ過工程が脱塩と組み合わされた場合、脱塩は、ナノろ過工程で起こり得る。
【0040】
「精密ろ過」は、好ましくは、約0.1~10μmの範囲の孔を有する膜に発酵ブロス又は酵素反応混合物を通してろ過する前処理分離プロセスを意味する。およその分子量に関して、この膜は、保持液中の、分子量が一般的に500,000g/molを超える巨大分子を分離し得る。
【0041】
数値に関連して、本発明の明細書全体を通して使用される「およそ」又は「約」という用語は、前記数値が、示された値の10%まで逸脱する可能性があることを意味する。
【0042】
[2.中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離する方法]
本発明は、水性媒体から中性HMOを得るか又は単離する方法であって、この水性媒体は、前記中性HMOが生成された発酵ブロス又は酵素反応混合物である、方法に関する。この反応環境は、中性HMOが、副生成物及び前記中性HMOの合成に必要な残留物のようないくつかの物質を伴うか又はこれらの物質によって夾雑されている複雑なマトリックスである。従って、中性HMOは、いくつかの連続工程を用いてこの中性HMOを副生成物及び残留物から分離することにより、この反応環境から得られるか又は単離され、その結果、この中性HMOは、反応環境中に存在した場合と比べてはるかに純粋な形態で得られるか又は単離される。そのため、本発明は、先行技術と比較して有益な方法で目的の中性HMOを得ることができるか又は単離することができる精製方法を提供する。そのような利点は、対応する方法の工程に関して下記で開示されている。
【0043】
バイオテクノロジー方法を使用すると、中性HMOが生成される方法(発酵又はインビトロでの酵素)に関係なく、反応環境は、バイオマスを含有する。従って、本発明の方法は、この反応環境からバイオマスを分離して、目的の中性HMOを含む水溶液を得る工程を強制的に含む。この反応環境からバイオマスを分離することは、任意選択的に予備ろ過(即ち遠心分離、精密ろ過又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでのろ過)に続いて、限外ろ過(UF、下記の詳細を参照されたい)を含む。UFには、通常、ナノろ過工程(NF、下記の詳細を参照されたい)が続く。さらに、本発明の方法は、任意選択的に、しかしながら好ましくは、イオン交換樹脂による処理、有利にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂による処理を含む。加えて、本発明の方法は、任意選択的に、脱色のための活性炭処理及び/又は残留する疎水性夾雑物を除去するための中性固相でのクロマトグラフィー工程、好ましくは逆相クロマトグラフィーを含み得る。これらの任意選択的な工程をいずれもUF及びNF後に任意の順序で実施され得る。さらに、本発明の方法は、任意選択的に、特に中性HMOの水溶液を濃縮及び又は脱塩(desalinating)/脱塩(demineralizing)するために、少なくとも1つのNF工程を含み得る。代わりに、(例えば、供給物の低い塩含有量に起因して)脱塩が不要である場合、任意選択的な追加のNFを蒸発に置き換え得る。
【0044】
UF、NF、「イオン交換樹脂による処理」、「活性炭処理」及び「中性固相でのクロマトグラフィー」の工程を、対応する節において下記で詳細に述べる。
【0045】
従って、本方法は、任意の順序で下記の分離/精製工程を含む:
a)限外ろ過(UF)、
b)ナノろ過(NR)、及び
c)イオン交換樹脂及び/又は中性固相でのクロマトグラフィーによる処理。
【0046】
好ましくは、本方法は、電気透析を含まない。
【0047】
有利には、工程a)を工程b)前に行う。より有利には、工程a)を工程b)及びc)のいずれかの前に行う。好ましくは、本方法を、工程a)後に工程b)が続き、且つ工程b)後に工程c)が続く順序で実施する。
【0048】
一実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収、及び
- このREのクロマトグラフィー
を含む。
【0049】
別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収、及び
- このCEのイオン交換樹脂による処理
を含む。
【0050】
本発明の方法は、UF、NF、クロマトグラフィー又はイオン交換樹脂処理後に活性炭処理を含み得る。
【0051】
一実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、及び
- このCCEのイオン交換樹脂による処理
を含む。
【0052】
好ましくは、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、及び
- このCCEの、H+形態の強カチオン交換樹脂及び遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理
を含む。
【0053】
より好ましくは、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、及び
- このCCEの、H+形態の強カチオン交換樹脂及び遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理
を含み、且つこの方法は、電気透析を含まない。
【0054】
別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収、及び
- このREの活性炭処理
を含む。
【0055】
好ましくは、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの、H+形態の強カチオン交換樹脂及び遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理並びに樹脂溶出液(RE)の回収、及び
- このREの活性炭処理
を含む。
【0056】
より好ましくは、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの、H+形態の強カチオン交換樹脂及び遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理並びに樹脂溶出液(RE)の回収、及び
このREの活性炭処理
を含み、且つこの方法は、電気透析を含まない。
【0057】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収、及び
- このCEの活性炭処理
を含む。
【0058】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、及び
- このCCEのクロマトグラフィー
を含む。
【0059】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収、
- このCEの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、及び
- このCCEのイオン交換樹脂による処理
を含む。
【0060】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びこのナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収、
- このCEのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収、及び
- このREの活性炭処理
を含む。
【0061】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収、
- このREのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収、及び
- このCEの活性炭処理
を含む。
【0062】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収、
- このREの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、及び
- このCCEのクロマトグラフィー
を含む。
【0063】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- このUFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、
- このCCEのイオン交換樹脂による処理及び樹脂溶出液(RE)の回収、及び
- このREのクロマトグラフィー
を含む。
【0064】
さらに別の実施形態では、本方法は、
- 反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過(UF)及び限外ろ過透過液(UFP)の回収、
- UFPのナノろ過(NF)及びナノろ過保持液(NFR)の回収、
- このNFRの活性炭処理及び炭溶出液(CCE)の回収、
- このCCEのクロマトグラフィー及びクロマトグラフィー溶出液(CE)の回収、及び
- このCEのイオン交換樹脂による処理
を含む。
【0065】
本発明の方法は、目的の中性HMOが高度に富化されている溶液を提供し、この溶液からHMOを高収率で得ることができ、好ましくは満足のいく純度、例えば食品用途の厳しい規制要件を満たす純度で得ることができる。
【0066】
[2.1.中性HMOの生成]
[2.1.1遺伝子改変微生物による中性HMOの生成]
遺伝子改変細胞を培養することによる中性HMOの生成は、好ましくは、下記の通りに実施する。
【0067】
外部から添加されたアクセプターは、遺伝子改変細胞により培養培地から内在化し、このアクセプターは、1つ又は複数の酵素的グリコシル化工程を含む反応において目的の中性HMOに変換される。一実施形態では、この内在化は、外来性アクセプターが細胞の細胞膜にわたって受動的に拡散する受動的輸送機構により起こり得る。この流れは、内在化するアクセプター分子に関する細胞外空間及び細胞内空間での濃度差により導かれ、アクセプターは、濃度がより高い場所から、濃度がより低いゾーンに移動して平衡となる傾向があると考えられる。別の実施形態では、外来性アクセプターは、この外来性アクセプターが細胞の輸送タンパク質又はパーミアーゼの影響下で細胞の細胞膜にわたって拡散する能動的輸送機構により細胞中に内在化し得る。ラクトースパーミアーゼ(LacY)は、単糖又は二糖、例えばガラクトース、N-アセチル-グルコサミン、ガラクトース化単糖(例えば、ラクトース)及びN-アセチル-グルコサミン化単糖に対する特異性を有する。これらの炭水化物誘導体の全ては、能動的輸送により、LacYパーミアーゼを発現する細胞(そのような細胞は、本明細書ではLacY+表現型細胞とも称される)に容易に取り込まれて、この細胞中に蓄積された後にグリコシル化され得る(例えば、国際公開第01/04341号パンフレット、Fort et al.J.Chem.Soc.,Chem.Comm.2558(2005)、Drouillard et al.Angew.Chem.Int.Ed.45,1778(2006)、国際公開第2012/112777号パンフレット、同第2015/036138号パンフレットを参照されたい)。好ましくは、ラクトースパーミアーゼをコードするlacY遺伝子を発現する細胞は、目的の中性HMOへの生合成経路中に内在化したアクセプター及び/又は対応する中間体を分解し得る酵素を欠いている。好ましくは、この細胞は、内在性lacZ遺伝子の不活性化又は欠失に起因してβ1,4-ガラクトシダーゼ活性を欠いている(そのような細胞は、本明細書ではLacZ-.表現型細胞とも称される)か、又は少なくともβ1,4-ガラクトシダーゼの活性が低下している(例えば、国際公開第2012/112777号パンフレットに係る、ガラクトシダーゼ活性が低い大腸菌(E.coli)を参照されたい)。
【0068】
好ましい一実施形態では、外部から添加されるアクセプターは、ラクトースであり、このラクトースの内在化は、細胞のラクトースパーミアーゼ、より好ましくはLacYにより媒介される能動的輸送機構により起こる。他の実施形態では、外来性アクセプターは、グルコース、例えば国際公開第2015/150328号パンフレットで開示されているグルコースである。
【0069】
細胞中に内在化すると、アクセプターは、既知の技術、例えばこの細胞の染色体に組み込むことによるか又は発現ベクターを使用することにより、この細胞中に導入されている対応する異種遺伝子又は核酸配列により発現される1種又は複数のグリコシルトランスフェラーゼによりグリコシル化される。目的の中性HMOを作るのに必要なグリコシルトランスフェラーゼは、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ及びα-1,4フコシルトランスフェラーゼから選択される。遺伝子改変細胞は、通常、対応するグリコシルトランスフェラーゼにより転移されるのに適した1種又は複数の単糖ヌクレオチドドナーを生成するための生合成経路を含む。ほとんどの微生物は、天然の中心炭素代謝によりUDP-Gal又はUDP-GlcNAcを生成し得る。GDP-Fucに関して、遺伝子改変細胞は、2つの方法によりUDP-Gal又はUDP-GlcNAcを生成し得る。GDP-Fucは、グリセロール、フルクトース又はグルコースのような単純炭素源から始まる段階的な反応系列において、GDP-Fucのデノボ生合成経路に関与する酵素(ManB、ManC、Gmd及びWcaG)の作用下で細胞により作られ得る。代わりに、遺伝子改変細胞は、キナーゼによりリン酸化され、続いてピロホスホリラーゼによりGDP-Fucに変換される再利用フコースを利用し得る(例えば、国際公開第2010/070104号パンフレットを参照されたい)。
【0070】
中性HMOは、例えば、下記に従って遺伝子改変微生物により生成され得る:Dumon et al.Glycoconj.J.18,465(2001)、Priem et al.Glycobiology 12,235(2002)、Dumon et al.Biotechnol.Prog.20,412(2004)、Drouillard et al.Angew.Chem.Int.Ed.45,1778(2006)、Gebus et al.Carbohydr.Res.361,83(2012)、Baumgaertner et al.ChemBioChem 15,1896(2014)及びEnzyme Microb.Technol.75-76,37(2015)、国際公開第01/04341号パンフレット、同第2010/070104号パンフレット、同第2010/142305号パンフレット、同第2012/112777号パンフレット、同第2014/153253号パンフレット、同第2015/032412号パンフレット、同第2015/036138号パンフレット、同第2015/150328号パンフレット、同第2015/197082号パンフレット、同第2016/008602号パンフレット、同第2016/040531号パンフレット、同第2017/042382号パンフレット、同第2017/101958号パンフレット、同第2017/188684号パンフレット、米国特許出願公開第2017/0152538号明細書、国際公開第2018/077892号パンフレット、同第2018/194411号パンフレット又は同第2019/008133号パンフレット。
【0071】
好ましい実施形態では、遺伝子改変微生物は、大腸菌(E.coli)である。
【0072】
従って、好ましい実施形態では、生成プロセスは、
a)LacY+表現型又はLacZ-、LacY+表現型の遺伝子改変大腸菌(E.coli)細胞を提供する工程であって、前記細胞は、
- 中性HMOの合成に必要なβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ及びα-1,4フコシルトランスフェラーゼからなる群から選択されるグリコシルトランスフェラーゼをコードする1種又は複数の組換え遺伝子と、
- 上記で列挙された対応するグリコシルトランスフェラーゼに関するUDP-GlcNAc、UDP-Gal又はGDP-Fucへの生合成経路をコードする1種又は複数の遺伝子と
を含む、工程と、
b)外来性ラクトース及び好適な炭素源の存在下において、このLacY+表現型又はLacZ-、LacY+表現型の遺伝子改変大腸菌(E.coli)を培養し、それにより中性HMOを含む発酵ブロスを生成する工程と
を含む。
【0073】
そのように生成された発酵ブロスは、生成細胞及び培養培地の両方で中性HMOを含む。細胞内HMOを回収し、それにより生成物の力価を上昇させるために、上記で説明されている方法は、例えば、加熱により細胞を破壊するか又は透過させる任意選択的な工程c)をさらに含み得る。
【0074】
中性HMOを含む発酵ブロスは、他の炭水化物化合物を伴い得る。典型的には、別の炭水化物化合物は、中性HMOを作るための発酵プロセスにおいてアクセプターとして使用されて変換されないままのラクトースである。加えて、別の付随する炭水化物化合物は、所望の中性HMOへの生合成経路中の中間炭水化物、例えばLNT又はLNnTの生成の場合のラクト-N-トリオースII)であり得る。例えば、国際公開第2012/112777号パンフレット又は同第2015/036138号パンフレットで開示されているように、これらの量を、下記で開示される分離/精製工程に発酵ブロスを供する前に、この発酵ブロス中で実質的に低減させ得るが、そのようにすることは、必須ではない。特許請求される方法は、一実施形態では、炭水化物化合物を伴う中性HMOを非炭水化物夾雑物から分離するのに適しているが、炭水化物化合物の相対的割合は、特許請求される方法の過程で実質的に変化しない。従って、特許請求される方法の目的は、一態様では、炭水化物化合物を伴う中性HMOの、発酵ブロス又は酵素反応環境からの水性媒体中の非炭水化物夾雑物からの分離であり、付随する炭水化物化合物を含むあらゆる他の夾雑物からの中性HMOの精製ではない。中性ヒトミルクオリゴ糖は、栄養目的で使用されることが意図されており、従って、最終栄養組成物中の主要な中性HMO以外の付随する炭水化物の存在は、有害ではないか、又はそれは、さらに有利であり得る。しかしながら、特許請求される方法の別の実施形態は、炭水化物夾雑物及び非炭水化物夾雑物から分離することにより中性HMOを精製し、それにより実質的に純粋な形態の中性HMOを得るのに適している。
【0075】
従って、中性ヒトミルクオリゴ糖がLNTであり、且つ発酵により生成される一実施形態では、付随する炭水化物は、主に、ラクトース(発酵で利用されて未反応のままであるアクセプターとして)、ラクト-N-トリオースII(GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、LNTへの生合成経路中の中間炭水化物として)及びp-LNH II(Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、LNTと同様に生物特性を有する過剰グリコシル化LNTとして)である。中性ヒトミルクオリゴ糖がLNnTであり、且つ発酵により生成される別の実施形態では、付随する炭水化物は、主に、ラクトース(発酵で利用されて未反応のままであるアクセプターとして)、ラクト-N-トリオースII(GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、LNnTへの生合成経路中の中間炭水化物として)及びp-LNnH(Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、LNnTと同様の生物特性を有する過剰グリコシル化LNnTとして)である。中性ヒトミルクオリゴ糖がラクト-N-トリオースII(GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)であり、且つ発酵により生成される別の実施形態では、付随する炭水化物は、主に、ラクトース(発酵で利用されて未反応のままであるアクセプターとして)である。中性HMOが2’-FL(Fucα1-2Galβ1-4Glc)であり、且つ発酵により生成される他の実施形態では、付随する炭水化物は、主に、ラクトース(発酵で利用されて未反応のままであるアクセプターとして)及び2’-FLと同様の生物特性を有する過剰フコシル化2’-FLとしてのDFL(Fucα1-2Galβ1-4[Fucα1-3]Glc)である。中性ヒトミルクオリゴ糖がLNFP I(フコシル化LNT、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)であり、且つ発酵により生成される他の実施形態では、付随する炭水化物は、主に、ラクトース(発酵で利用されて未反応のままであるアクセプターとして)、ラクト-N-トリオースII(GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、LNFP-Iへの生合成経路中の中間炭水化物として)、LNT(LNFP-Iへの生合成経路中の中間炭水化物として)、p-LNH II(Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-3GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc、LNTと同様の生物特性を有する過剰グリコシル化LNTとして)及び2’-FLである。上述した付随する炭水化物の全ては、中性HMOとも見なされる。
【0076】
さらに、発酵ブロス中には、非HMO炭水化物夾雑物がさらに存在している可能性がある。これは、典型的には、ラクツロース及びそのグリコシル化誘導体である。ラクツロースは、ラクトースが発酵への添加前及び/又は発酵中に加熱滅菌される場合、転移によりラクトースから形成され得る。ラクツロースも細胞に内在化することから、同時に起こる生体内変換反応でラクトースと同様にグリコシル化され得る。しかしながら、ラクツロース及びそのグリコシル化誘導体の量は、バイオマス分離後のブロスの全乾燥固形物の数十重量%を超えない。
【0077】
本発明によれば、発酵ブロスを、中性HMOの、他の非炭水化物化合物と、任意選択的に、下記で説明するブロスの炭水化物化合物とからの分離/精製の手順にさらに供する。
【0078】
[2.1.2.エクスビボでの酵素反応による中性HMOの生成]
中性HMOは、生体外で起こる反応又は反応系列でのラクトースへの単糖の添加又は連続的添加により、酵素的に生成され得る。典型的には、好適な酵素は、pHが適切に設定されている、出発アクセプター(通常、ラクトース)及び対応するドナーを含有する反応混合物に添加される対応するグリコシルトランスフェラーゼ又は(トランス)グリコシダーゼであり得る。中性HMOが四糖以上である場合、最初の酵素的工程での三糖生成物は、四糖を作るためのその後の酵素的工程のアクセプターとして機能し、以下同様である。多酵素合成の場合、単一の工程を別々の容器で連続的に実施し得、特定のシナリオでは、酵素カスケード反応を1つのフラスコ中で実行し得る。
【0079】
グリコシルトランスフェラーゼにより媒介される酵素的合成では、ラクトースから目的の中性HMOを作るのに必要なグリコシルトランスフェラーゼは、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,6-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、β-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、α-1,2-フコシルトランスフェラーゼ、α-1,3-フコシルトランスフェラーゼ及びα-1,4フコシルトランスフェラーゼから選択され、ドナーは、使用されるグリコシルトランスフェラーゼに応じて、UDP-GlcNAc、UDP-Gal及びGDP-Fucから選択される。中性HMOに対するそのようなタイプの酵素的アプローチは、例えば、国際公開第98/44145号パンフレット、Albermann et al.Carbohydr.Res.334,97(2001)又はScheppokat et al.Tetrahedron:Asymmetry 14,2381(2003)で開示されている。
【0080】
(トランス)グリコシダーゼにより媒介される中性HMOの酵素的合成では、好適な酵素は、α1,2-(トランス)フコシダーゼ、α1,3-(トランス)フコシダーゼ、α1,4-(トランス)フコシダーゼ、β1,3-(トランス)ラクト-N-ビオシダーゼ、β1,6-(トランス)ラクト-N-ビオシダーゼ、β1,3-(トランス)N-アセチルラクトサミニダーゼ、β1,6-(トランス)N-アセチルラクトサミニダーゼ、β1,3-(トランス)ガラクトシダーゼ、β1,4-(トランス)ガラクトシダーゼ、β1,3-(トランス)N-アセチルグルコサミニダーゼ及びβ1,6-(トランス)N-アセチルグルコサミニダーゼからなる群から選択される。トランスグリコシダーゼは、加水分解活性が低く、及び/又はアクセプターへのドナーの転移活性がかなり高い点でグリコシダーゼと異なる。例えば、アミノ酸配列を変更させることにより、ヒドロラーゼ活性がトランスグリコシダーゼ作用に有利に消失する指向性トランスグリコシダーゼ酵素変異体を生成することが可能である。好適なドナーに関して、このドナーは、非還元末端で(トランス)グリコシダーゼにより転移される糖部分(例えば、α1,2-(トランス)フコシダーゼの場合、2’-FL;β1,4-(トランス)ガラクトシダーゼの場合にはラクトース;β1,3-(トランス)N-アセチルラクトサミニダーゼの場合にはLNnT等)を有するか、又はアジド、フルオロ、p-ニトロフェニル等のようなアノマー位置で良好な脱離基により活性化されている糖部分を有する二糖又はオリゴ糖であり得る。中性HMOを生成するためのそのような酵素反応は、例えば、国際公開第2012/156897号パンフレット、同第2012/156898号パンフレット、同第2016/063261号パンフレット、同第2016/063262号パンフレット、同第2016/157108号パンフレット、同第2016/199069号パンフレット又は同第2016/199071号パンフレットで広く教示されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明によれば、酵素反応混合物を、中性HMOの他の非炭水化物化合物と、任意選択的に、下記で説明する炭水化物化合物とからの分離/精製の手順にさらに供する。
【0082】
[2.2 中性HMOの、それが生成された反応環境からの取得]
[2.2.1.限外ろ過前の反応環境の任意選択的な前処理]
発酵ブロスは、典型的には、生成された中性HMO以外に、使用された微生物の細胞のバイオマスと、タンパク質、タンパク質断片、DNA、DNA断片、エンドトキシン、生体アミン、無機塩、未反応の炭水化物アクセプター、例えばラクトース、糖様副生成物、単糖、着色体等とを含有する。任意選択的に、発酵ブロス又は酵素反応混合物の巨大分子をより容易にろ過可能にするために、反応環境のpHを約2.5~7.5に調整し、且つ/又は反応環境を30~75℃の加熱処理に供し、且つ/又は反応環境を綿状沈殿/凝集により清澄化する。同様に任意選択的に、反応環境(上記で開示されているように処置されているか又は処置されていない)を遠心分離し、精密ろ過し又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでろ過し、それによりバイオマス又は沈殿した/綿状沈殿した/変性した酵素の少なくとも一部が除去される。
【0083】
そのため、本発明に関連して使用される「前処理された反応環境」という用語は、上記の工程の少なくとも1つを含む。
【0084】
[2.2.2.反応環境又は前処理された反応環境の限外ろ過(UF)]
特許請求される方法のUF工程は、
a)前記反応環境のpHを酸性、例えば約3~約6、好ましくは約5以下に設定し、且つ/又は前記反応環境を室温(若しくは周囲温度)よりも高い温度、好ましくは約30~90℃、より好ましくは約35~85℃に温めることと、
b)工程i)で得られた反応環境を、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と接触させることであって、この膜は、好ましくは、非高分子材料で構成される、接触させることと
を含む。
【0085】
限外ろ過工程により、ブロスの可溶性成分からバイオマス(又は前処理された反応環境のバイオマスの残存部分)及び好ましくは同様に高分子量の浮遊固形物が分離され、この可溶性成分は、透過液へと限外ろ過膜を通過する。このUF透過液(UFP)は、生成された中性HMOを含有する水溶液である。
【0086】
好ましい実施形態では、反応環境を遠心分離するか、精密ろ過するか、又はフィルタプレス若しくはドラムフィルタでろ過する場合、UF膜は、非高分子材料、より好ましくはセラミック材料で構成される。
【0087】
一実施形態では、反応環境のpH又は前処理、例えば、遠心分離された反応環境のpHを酸性、例えば約3~約6に設定し、好ましくは約5以下、好ましくは約4以下、より好ましくは約3~4の値に設定する。上記で開示されているようにpHを設定することは、特に有利であり、なぜなら、より効果的な変性及び沈殿に起因して、可溶性タンパク質及びDNA等の溶解した生体分子の量が大幅に減少するからである。溶解した生体分子の量がより少ないと、後続する工程において、MWCOがより高いUV膜を使用することが可能になり、そのため、より高い生産性への要因であるより良好なフラックスが得られる。
【0088】
他の実施形態では、反応環境又は前処理、例えば遠心分離された反応環境を周囲温度、即ち室温又は反応環境温度よりも高い温度、例えば約30~約90℃、好ましくは約35~85℃、例えば約35~75℃、より好ましくは約50~75℃、例えば約60~65℃の範囲内の温度まで加熱する。UF前のこの加熱処理により、反応環境中の生存微生物の総数(総微生物数)が大幅に減少し、そのため、本方法の後段での滅菌ろ過工程が不要となる場合がある。さらに、この加熱処理により、より効果的な変性及び沈殿に起因して可溶性タンパク質の量が減少し、これによりイオン交換処理工程(後の任意選択的な工程)での残存タンパク質の除去効果が増加する。
【0089】
一実施形態では、上記の工程a)は、前記任意選択的に前処理された反応環境のpHを設定することと、前記任意選択的に前処理された反応環境を温めることとを含み、好ましくは、このpHの設定を行い、続いてこの加温を行う。好ましくは、上記の工程a)は、前記任意選択的に前処理された反応環境のpHを5以下に設定することと、前記任意選択的に前処理された反応環境を約30~90℃、好ましくは約35~85℃、例えば約35~75℃、より好ましくは約50~75℃、例えば約60~65℃に温めることとを含み、これによりタンパク質の溶解性が特に低下し、それにより後続のUF工程でのUF透過液へのタンパク質の漏出が減少する。
【0090】
本方法での工程b)では、非高分子材料で構成されるUF膜、好ましくはセラミック膜を使用する。この非高分子UF膜は、UFを高温で実行する場合、この温度に対して耐性を示す。また、非高分子膜、有利にはセラミック膜の適用可能なフラックスは、通常、MWCOが同一であるか又は類似する高分子UF膜の場合と比べて高く、加えて、非高分子膜、有利にはセラミック膜は、ファウリング又は詰まりを起こし難い。工業用途では、UF膜の再生は、コスト及び技術的に重要な要素である。非高分子膜、有利にはセラミック膜は、懸濁固形分が高い発酵流を限外ろ過する場合に必要であり得る厳しい定置洗浄(CIP)条件、例えば高温での苛性/強酸処理(高分子膜には適用不能)を使用することを可能にする。さらに、非高分子膜、有利にはセラミック膜は、高いクロスフローで循環する固体粒子に対する不活性及び耐摩耗性に起因して寿命がより長い。
【0091】
分子量カットオフ(MWCO)範囲が約5~約1000kDa、例えば、約10~1000、5~250、5~500、5~750、50~250、50~500、100~250、100~500、100~750、250~500、250~750、500~750kDa又は任意の他の好適な部分範囲である任意の従来の非高分子限外ろ過膜、有利にはセラミック膜を使用し得る。
【0092】
本方法の工程b)は、低温(約5℃~rt)、約室温又は高温で行われ得、好ましくは高温で行われ得る。この高温は、好ましくは、約65℃を超えず、好適な温度範囲は、例えば、約35~50、35~65、45~65、50~65、55~65又は60~65℃であり得る。UF工程を高温で行うことにより、反応環境中の生存微生物の総数(総微生物数)が大幅に減少し、そのため、本方法の後段での滅菌ろ過工程が不要となる場合がある。さらに、より効果的な変性及び沈殿に起因して可溶性タンパク質の量が減少し、これによりイオン交換処理工程(後の任意選択的な工程)での残存タンパク質の除去効果が増加する。
【0093】
好ましくは、工程b)を高温で実行する場合、先行する工程a)において反応環境のpHを約5以下に設定することが有利であり、なぜなら、タンパク質の溶解性が特に低下し、それによりUF透過液へのタンパク質の漏出が減少するからである。
【0094】
限外ろ過工程をデッドエンドモード又はクロスフローモードで適用し得る。
【0095】
一実施形態では、本発明の方法において単一のUF工程のみを行う。
【0096】
他の実施形態では、本発明の方法は、MWCOが異なる膜を使用する(例えば、2つの限外ろ過分離であって、第1の膜のMWCOは、第2の膜のMWCOと比べて高い、2つの限外ろ過分離を使用する)複数の限外ろ過工程を含み得、但し、少なくとも1つのUF膜は、非高分子膜、好ましくはセラミック膜である。この配置により、ブロスの分子量がより高い成分の分離効果が良好になり得る。
【0097】
さらに一実施形態では、限外ろ過を透析ろ過と組み合わせ得る。
【0098】
上記で開示されている工程a)及びb)を含む限外ろ過を行った後、UF透過液は、利用された膜のMWCO、任意選択的に一連の膜が使用される場合には最後の膜のMWCOと比べて分子量が低い物質、例えば目的の中性HMOを含有する。
【0099】
[2.2.3.ナノろ過]
本発明の方法は、ナノろ過(NF)工程を含む。好ましくは、このNF工程は、反応環境又は遠心分離された反応環境の限外ろ過の直後であり、即ち、このNF工程の供給物は、目的の中性HMOを含有するUF透過液である。任意選択的に、このUF透過液を、このNF工程を行う前に、活性炭(下記を参照されたい)を使用することにより脱色し得る。このナノろ過工程を有利に使用して、UF透過液を濃縮し得、且つ/又は中性HMOと比べて分子量が小さいイオン、主に一価イオン及び有機物、例えば、単糖を除去し得る。ナノろ過膜は、先行する工程で使用された限外ろ過膜と比べてMWCOが低く、目的の中性HMOが確実に保持される。
【0100】
ナノろ過の第1の態様では、NF膜のMWCOは、目的の中性HMOの分子量の約25~50%、典型的には約150~500Daである。これに関して、目的の中性HMOは、NF保持液(NFR)中に蓄積される。ナノろ過を、水による透析ろ過と組み合わせて、一価イオン等の透過性塩をより効果的に除去し得るか、又はこの塩の量をより効果的に減少させ得る。
【0101】
第1の態様の一実施形態では、UF透過液が透析ろ過されることなくナノろ過されるようにNFがUFに後続し、中性HMOを含有するNF保持液を回収して、本方法のさらなる分離工程に供する。
【0102】
第1の態様の他の実施形態では、UF透過液がナノろ過された後に透析ろ過されるようにNFがUFに後続し、中性HMOを含有するNF保持液を回収して、本方法のさらなる分離工程に供する。
【0103】
ナノろ過の第1の態様は、ラクトースを含有しないか又はごくわずかな量(多くとも目的の中性HMOの重量の約1~2%)のラクトースを含有するUF透過液に有利に適用される。
【0104】
より多くのラクトースを含有するUF透過液に有利に適用されるナノろ過の第2の態様では、膜は、MWCOが、三又はより高次の中性HMOを確実に保持し、且つラクトースの少なくとも一部がこの膜を通過することを可能にする600~3500Daであり、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である。
【0105】
「三又はより高次の中性HMOを確実に保持する」という用語は、好ましくは、ナノろ過工程中、膜を三又はより高次の中性HMOが通過しないか又は少なくとも有意に通過せず、そのため、この大部分が保持液中に存在することを意味する。「ラクトースの少なくとも一部が膜を通過することを可能にする」という用語は、好ましくは、ラクトース(少なくとも一部)が膜を透過して透過液中に回収され得ることを意味する。ラクトースの阻止が高い(約90%)場合、ラクトースの全て又は少なくとも大部分を透過液中に移動させるために、純水による後続の透析ろ過が必要な場合がある。ラクトースの阻止が高いほど、効率的な分離のために、より多くの透析ろ過水が必要である。
【0106】
NFの第2の態様に従って適用されるナノろ過膜は、三及びより高次の中性HMOを効率的に保持するために、この中性HMOに対して厳格であるであろう。好ましくは、三又はより高次の中性HMOの阻止は、95%超、より好ましくは97%、さらにより好ましくは99%である。MWCOが3500Da超である膜は、三又はより高次の中性HMOのより多くの又は有意な量が膜を通過することを可能にすると予想され、そのため、三又はより高次の中性HMOの保持の減少が示され、従って本発明の目的に不適であり、除外され得る。ラクトースの阻止が80~90%以下であることが好ましい。ラクトースの阻止が90±1~2%となる場合、実質的に満足する分離を達成するために、三糖又は四糖の中性HMOの阻止は、好ましくは、約99%以上であるであろう。
【0107】
オリゴ糖の阻止率及び分離係数は、国際公開第2019/003133号パンフレットで開示されているように測定して算出される。
【0108】
上記の要件は、膜がMgSO4に対して比較的緩い、即ち、この阻止が約50~90%である場合に同時に満たされる。これに関して、上記の膜は、三及びより高次の中性HMOに対して厳格であり、且つ単糖及びラクトース並びにMgSO4に対して緩い。従って、ヒトミルクオリゴ糖を酵素的に、又は発酵により作る際の前駆体であるラクトースを、良好な有効性でナノろ過により中性ヒトミルクオリゴ糖生成物から分離することが可能であり、加えて、二価イオンの相当部分を透過液に通過させることも可能である。いくつかの実施形態では、MgSO4阻止率は、30~90%、20~80%、40~90%、40~80%、60~90%、70~90%、50~80%、50~70%、60~70%又は70~80%である。好ましくは、前記膜でのMgSO4阻止率は、80~90%である。同様に好ましくは、この膜は、NaClの阻止率がMgSO4の場合と比べて低い。一実施形態では、NaClの阻止率は、約50%以下である。他の実施形態では、NaClの阻止率は、約40%以下である。他の実施形態では、NaClの阻止率は、約30%以下である。他の実施形態では、NaClの阻止率は、約20%以下である。約20~30%のNaCl阻止において、保持液中の全ての一価塩の相当な減少も達成可能である。
【0109】
膜でのNaCl及びMgSO4の阻止の決定は、国際公開第2019/003133号パンフレットで開示されている。
【0110】
同様に好ましくは、いくつかの実施形態では、膜の純水フラックスは、少なくとも50l/m2h(23~25℃、10bar及び300l/hの一定クロスフローで測定した場合)である。好ましくは、膜の純水フラックスは、少なくとも60l/m2h、少なくとも70l/m2h、少なくとも80l/m2h又は少なくとも90l/m2hである。
【0111】
NF工程の第2の態様で好適なナノろ過膜の活性層又は上層は、好ましくは、ポリアミドで作られる。タイプが異なる膜、例えばラクトース及び3’-SLを分離するための活性層としてスルホン化PESを有するNTR-7450は、有望な分離効果を有するように見えるが(Luo et al.(Biores.Technol.166,9(2014);Nordvang et al.(Separ.Purif.Technol.138,77(2014))、本発明で使用される上記の膜は、中性HMOからのラクトースの良好な分離を常に示す。加えて、上述したNTR-7450膜は、ファウリングが発生しやすく、このファウリングにより、典型的にはフラックスが低下してラクトース阻止が増加し、従って分離係数が低下する。さらに好ましくは、ポリアミド膜は、アミンとしてフェニレンジアミン構成要素又はピペラジン構成要素を有するポリアミド、より好ましくはピペラジンを有するポリアミド(ピペラジン系ポリアミドとも称される)である。
【0112】
さらに好ましくは、本発明の目的に好適な膜は、薄膜複合(TFC)膜である。
【0113】
好適なピペラジン系ポリアミドTFC膜の一例は、TriSep(登録商標)UA60である。
【0114】
NF工程の第2の工程で好適なナノろ過膜は、上記の特徴のいくつか又は全てを特徴とし、そのため、下記の利点の1つ又は複数が提供される:三又はより高次の中性HMOからラクトースを選択的に及び効率的に除去し、富化された三又はより高次の中性HMO画分が得られること;一価及び二価の塩を効率的に除去し、それによりイオン交換工程が不要であり得るか、又は脱塩が依然として必要である場合、イオン交換処理に必要な樹脂が大幅に少ないこと;先行技術において同一又は類似の目的のために使用される他の膜と比較して、ナノろ過中の高いフラックスが維持され得、そのため、操作時間が短縮されること;上記で開示されている膜は、先行技術の解決策と比較して詰まりを起こし難いこと;上記で開示されている膜は、完全に洗浄されて再生され得、従って性能が実質的に低下することなく再利用され得ること。
【0115】
NF工程の第2の態様の一実施形態では、この工程は、
- UF透過液を、三又はより高次の中性HMOを確実に保持し、且つラクトースの少なく一部が膜を通過することを可能にする600~3500Daの分子量カットオフ(MWCO)を有するナノろ過膜と接触させることであって、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約50~90%である、接触させることと、
- その後の任意選択的な前記膜による透析ろ過と、
- 三又はより高次の中性HMOが富化された保持液を回収することと
を含む。
【0116】
他の実施形態では、NF工程は、
- UF透過液を、三又はより高次の中性HMOを確実に保持し、且つラクトースの少なく一部が膜を通過することを可能にする600~3500Da、好ましくは1000~3500Daの分子量カットオフ(MWCO)を有するピペラジン系ポリアミドナノろ過膜と接触させることであって、前記膜でのMgSO4阻止率は、約80~90%であり、
- 前記膜でのNaCl阻止率は、MgSO4,の場合と比べて低く、及び/又は
- 前記膜の純水フラックス値は、少なくとも約50l/m2hである、
接触させることと、
- その後の任意選択的な前記膜による透析ろ過と、
- 三又はより高次の中性HMOが富化された保持液を回収することと
を含む。
【0117】
好ましくは、この膜のNaCl阻止率は、最大でMgSO4阻止率の半分である。
【0118】
上述した利点の全てを達成するために、NF工程の第2の態様で適用されるナノろ過膜は、好ましくは、
- 600~3500Da、好ましくは1000~3500DaのMWCOを有するピペラジン系ポリアミド膜であり、
- 約50~90%、好ましくは80~90%のMgSO4阻止を有し、
- 約30%以下のNaCl阻止を有し、及び
- 約50l/m2h(23~25℃、10bar及び300l/hの一定クロスフローで測定)、好ましくは約90l/m2hの純水フラックス値を有する。
【0119】
NF工程の第2の態様の一実施形態では、三又はより高次の中性HMOに対するラクトースの分離係数は、約10超、好ましくは15~25超、より好ましくは30~50超、さらにより好ましくは75~100超である。
【0120】
NF工程の第2の態様の他の実施形態では、LNTri IIに対するラクトースの分離係数は、約10超、好ましくは約20超、より好ましくは約30超である。
【0121】
NF工程の第2の態様の他の実施形態では、LNT又はLNnTに対するラクトースの分離係数は、約30超、より好ましくは約50超である。
【0122】
NF工程の第2の態様の他の実施形態では、pLNnH又はpLNH IIに対するラクトースの分離係数は、約150超、より好ましくは約250超である。
【0123】
NF工程の第2の態様を、透過液側と比較して正圧を有する接線流又はクロスフローろ過による従来のナノろ過、その後の透析ろ過(両方の操作をバッチモード又は好ましくは連続モードで実施することが可能である)に使用される条件下で行い得る。任意選択的な透析ろ過を、上記で開示されているナノろ過工程後の保持液に純水を添加し、ナノろ過と同一か又は同様の条件下での透過液の持続的除去によるろ過プロセスを継続することにより行う。水添加の好ましい様式は、連続であり、即ち、添加の流速は、透過液の流速とほぼ一致している。NFをバッチモードで実施することが可能であり、このモードでは、保持液流は、供給タンクに戻されてリサイクルされ、透析ろ過(DF)を、この供給タンクに精製水又は脱イオン水を連続的に添加することに行う。最も好ましくは、DF水を、特定の量の透過液を除去することによる少なくとも数回の前濃縮後に添加する。DFの開始前に濃縮係数が高いほど、良好なDF効果が達成される。DFの完了後、余分な量の透過液を除去することにより、更なる濃縮を達成することが可能である。代わりに、NFを連続モードで実施することが可能であり、好ましくはマルチループシステムで実施することが可能であり、このシステムでは、保持液は、各ループから次のループに移される。この場合、DF水を、各ループでの透過液の流速に一致する流速か又はより低い流速において各ループで別々に添加することが可能である。バッチモードのDFと同様に、DFの効果を改善するために、より高い濃縮係数を達成するために例えば最初のループにおいて少ない水を添加すべきであるか、又は水を添加すべきではない。マルチループシステムでの水の分配並びに他のプロセスパラメータ、例えば膜貫通圧、温度及びクロスフローは、日常的に最適化される。
【0124】
NF工程の第2の態様に適用される供給溶液のpHは、好ましくは、約7以下、より好ましくは約3~7、さらにより好ましくは約4及び5又は約5及び6である。3未満のpHは、膜及び溶質の性質に悪影響を及ぼす場合がある。
【0125】
NF工程の第2の態様に適用される好都合な温度範囲は、約10~約80℃である。より高い温度は、より高いフラックスをもたらし、そのため、プロセスが加速される。膜は、より高い温度でフロースルーに対してより開放的であることが予想されるが、これにより分離係数が大きく変化することはない。本発明に係るナノろ過分離を行うための好ましい温度範囲は、約15~45℃、例えば20~45℃である。
【0126】
ナノろ過分離での好ましい印加圧力は、約2~50bar、例えば約10~40barである。一般的に、圧力が高いほどフラックスが高い。
【0127】
特定の実施形態では、本発明の方法は、好ましくは活性炭処理(下記を参照されたい)、及び/又はイオン交換処理(下記を参照されたい)、及び/又は中性固定相でのクロマトグラフィー(下記を参照されたい)に続いて、追加の(1つ又は複数の)NF工程を含み得、このNF工程では、主な目的は、目的の中性HMOを含有する水溶液を濃縮することである。
【0128】
[2.2.4.イオン交換樹脂による処理]
上記で開示されているUF透過液又は上記で開示されているNF保持液として得られる中性HMOの水溶液をイオン交換樹脂により任意選択的にさらに精製し得る。任意のUF透過液及びNF保持液を、イオン交換樹脂による処理前に、活性炭(下記を参照されたい)を使用することにより任意選択的に脱色し得る。残存する塩、色体、イオン化可能な基を含有する生体分子(例えば、タンパク質、ペプチド、DNA及びエンドトキシン)、イオン化可能な官能基(例えば、生体アミン、アミノ酸等の代謝産物でのアミノ基)を含有する中性又は双性のイオン化合物、酸含有基を有する化合物(例えば、有機酸、アミノ酸)を樹脂による処理によってさらに除去し得る。特に、樹脂溶出液の低い塩含有量(脱塩)は、「イオン交換樹脂による処理」でカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が適用される場合に達成され得る。
【0129】
一実施形態によれば、イオン交換樹脂は、カチオン交換樹脂、好ましくは強酸性カチオン交換樹脂であり、好ましくはプロトン化された形態である。この工程では、正に帯電した物質が樹脂に結合することから、この物質を供給溶液から除去し得る。中性HMOの溶液を、正に帯電した物質がカチオン交換樹脂上に吸着され、且つ中性HMOが通過することを可能にするであろう任意の好適な方法でカチオン交換樹脂と接触させる。結果として得られた液体は、カチオン交換樹脂との接触後、対応する酸)の形態のアニオン以外に中性HMOを含み、(1つ又は複数の前の精製工程後に依然として残っている場合に)ラクトースのような中性炭水化物を含有する。この酸を従来の方法で中和し得る。
【0130】
一実施形態によれば、イオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂である。このアニオン交換樹脂は、好ましくは、OH-形態を有する強アニオン交換樹脂であり得る。この工程では、負に帯電した物質が樹脂に結合することから、この物質を供給溶液から除去し得る。中性HMOの水溶液を、負に帯電した物質がアニオン交換樹脂上に吸着され、且つ中性HMOが通過することを可能にするであろう任意の好適な方法でアニオン交換樹脂と接触させる。結果として得られた液体は、アニオン交換樹脂との接触後、水、カチオン(対応する塩基の形態)及び(1つ又は複数の前の精製工程後に依然として残っている場合に)ラクトースのような中性炭水化物を主に含有する。この塩基を従来の方法で中和し得る。
【0131】
必要な純度で中性HMOを得るために、上記で開示されているイオン交換樹脂処理の一方で十分な場合がある。必要に応じて、カチオン交換樹脂クロマトグラフィー及びアニオン交換樹脂クロマトグラフィーの両方を任意の順序で適用し得る。
【0132】
一実施形態では、カチオン樹脂処理及びアニオン樹脂処理の両方が適用される場合、カチオン交換樹脂は、H+形態であり、且つアニオン交換樹脂は、遊離塩基形態の弱アニオン樹脂である。カチオン交換樹脂は、好ましくは、強交換体である。この特定の配置により、残存する培養培地からの塩及び荷電分子の除去に加えて、培養培地中に残っていたタンパク質、DNA及び着色体/カラメル体を効率的に物理吸着し得る。
【0133】
遊離塩基形態の弱塩基性アニオン交換体(即ち、樹脂の官能基は、第一級、第二級又は第三級のアミンである)の適用は、OH-形態の強塩基性アニオン交換体の適用と比較して有利である。この強塩基性交換体は、その強塩基性に起因して、中性HMOのアノマーOH-基を脱プロトン化する能力を有する。これにより、中性HMOの構造の再構成反応が始まり、そのため、副生成物が生じ、且つ/又は相当量の中性HMOが樹脂に結合する。その結果、両方の事象は、中性のHMOの回収率の低下の一因となる。
【0134】
さらに、H+形態の強カチオン交換樹脂処理直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂の適用は、下記のさらなる利点を有する:
- カチオン交換体から回収された酸性溶出液が効果的に中和され、従って2種のイオン交換体による処理間に余分な中和工程を必要とすることなく、中性溶出液が得られること、
-後に除去する必要があるであろうCl-、AcO-又はHCO3
-のような強アニオン交換体のアニオンが導入されないこと、
- 本設定により、樹脂負荷の導電率が効率的にほぼ2桁低下し、導電率が低く(約200μS/cm未満、好ましくは約100μS/cm未満、より好ましくは約50μS/cm未満)、結果として塩電解質含有量が低い溶出液が直接得られること。
【0135】
一実施形態では、特許請求される方法の任意選択的なイオン交換樹脂処理工程は、中性HMOの水溶液(この水溶液は、上記で開示されているように活性炭により任意選択的に脱色され得るUF透過液であるか、又は上記で開示されているように活性炭により任意選択的に脱色され得るNF保持液である)の、H+形態の強カチオン交換樹脂による処理、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理からなる。
【0136】
他の実施形態では、中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離するための特許請求される方法は、
- 中性HMOの水溶液(この水溶液は、上記で開示されているように活性炭により任意選択的に脱色され得るUF透過液であるか、又は上記で開示されているように活性炭により任意選択的に脱色され得るNF保持液である)の、H+形態の強カチオン交換樹脂による処理、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理からなるイオン交換樹脂処理工程を含み、及び
- 電気透析を含まない。
【0137】
他の実施形態では、中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離するための特許請求される方法は、中性HMOの水溶液(この水溶液は、上記で開示されているように活性炭により任意選択的に脱色され得るUF透過液であるか、又は上記で開示されているように活性炭により任意選択的に脱色され得るNF保持液である)の、H+形態の強カチオン交換樹脂による処理、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂による処理からなる単一のイオン交換樹脂処理工程のみを含む。H+形態の強カチオン交換樹脂、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂からなる単一のイオン交換処理工程により、国際公開第2019/063757号パンフレットで開示されている3種のイオン交換体の樹脂設定と同程度に溶出液の導電率が低下する。加えて、樹脂供給物を活性炭で既に処理してない場合、供給溶液の少なくとも約10倍の減色が達成可能である。
【0138】
他の実施形態では、中性HMOを、それが生成された反応環境から得るか又は単離するための特許請求される方法は、いかなるイオン交換処理工程も含まず、但し、この方法は、好ましくは、最終工程として中性HMOの結晶化を含む。有利には、中性HMOは、2’-FLであり、結晶化を、例えば国際公開第2016/095924号パンフレットで開示されているように、酢酸水溶液を使用して行う。
【0139】
イオン交換樹脂を使用する場合、この樹脂の架橋度をイオン交換カラムの操作条件に応じて選択し得る。高度に架橋された樹脂は、耐久性及び高い機械的強度という利点を示すが、低い空隙率及び物質移動の低下という問題がある。低架橋樹脂は、より壊れやすく、且つ移動相の吸収により膨潤する傾向がある。イオン交換樹脂の粒径は、帯電した物質が依然として効率的に除去されつつ、溶出液の効率的な流れを可能にするように選択される。カラムの溶出側に負圧を印加するか又はカラムの負荷側に正圧を印加し、溶出液を回収することにより、好適な流速も得ることができる。正圧及び負圧の両方の組み合わせも使用し得る。イオン交換処理を従来の方法で実行し得、例えばバッチ式又は連続で実行し得る。
【0140】
好適な酸性カチオン交換樹脂の非限定的な例は、例えば、下記であり得る:Amberlite IR100、Amberlite IR120、Amberlite FPC22、Dowex 50WX、Finex CS16GC、Finex CS13GC、Finex CS12GC、Finex CS11GC、Lewatit S、Diaion SK、Diaion UBK、Amberjet 1000、Amberjet 1200、Dowex 88。
【0141】
好適な塩基性アニオン交換樹脂の非限定的な例は、例えば、下記であり得る:Amberlite IRA67、Amberlite IRA 96、Amberlite IRA743、Amberlite FPA53、Diaion CRB03、Diaion WA10、Dowex 66、Dowex Marathon、Lewatit MP64。
【0142】
H+形態の強カチオン交換樹脂、その直後の遊離塩基形態の弱アニオン交換樹脂からなる単一のイオン交換処理工程の場合、樹脂負荷中における目的の中性HMOの量は、両方の樹脂に関して、少なくとも約0.5kg/l樹脂、より好ましくは少なくとも約0.8kg/l樹脂、例えば約1.0~1.5kg/l樹脂であり、ここで、樹脂の量は、水中で完全に膨潤している湿潤樹脂の量に対応する。
【0143】
[2.2.5 活性炭処理]
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、任意選択的な活性炭処理の工程を含む。この任意選択的な活性炭処理は、全て上記で開示されているUF工程、NF工程又はイオン交換処理工程のいずれかに後続し得る。この活性炭処理は、必要に応じて着色剤を除去し、且つ/又は塩等の他の水溶性夾雑物の量を減少させるのに役立つ。さらに、この活性炭処理により、前工程後に付随して残る場合がある残存するか又は微量のタンパク質、DNA又はエンドトキシンが除去される。
【0144】
目的の中性HMOのような炭水化物物質は、この炭水化物物質の水溶液、例えばUF工程、NF工程又はイオン交換処理工程後に得られる水溶液から炭粒子の表面に結合する傾向がある。同様に、着色剤もこの炭に吸着し得る。これらの炭水化物及び着色物質は、吸着されるが、炭に結合していないか又はより弱く結合している水溶性物質は、水により溶出され得る。溶出液を水から水性アルコール、例えばエタノールに変更することにより、吸着した中性HMOが容易に溶出されて別の画分に回収され得る。吸着した着色物質は、依然として炭に吸着したままであり、そのため、この任意選択的な工程で脱色及び部分的な脱塩の両方が同時に達成され得る。しかしながら、溶出溶媒中の有機溶媒(エタノール)の存在に起因して、脱色の効果は、溶出が純水により行われる場合と比較して低い(下記を参照されたい)。
【0145】
特定の条件下では、中性HMOは、炭粒子に吸着しないか、又は少なくとも実質的に吸着せず、水による溶出により、中性HMOの水溶液がその量を実質的に失うことなく得られ、さらに着色物質が吸着したたままである。この場合、溶出のためにエタノール等の有機溶媒を使用する必要はない。中性HMOがその水溶液から炭に結合するであろう条件を決定することは、通常の技能の問題である。例えば、一実施形態では、中性HMOの量と比較して、より希釈された中性HMOの溶液又はより多い量の炭が使用され、別の実施形態では、中性HMOの量と比較して、より濃縮された中性HMOの溶液及びより少ない量の炭が適用される。
【0146】
炭処理を、撹拌下で中性HMOの水溶液に炭粉末を添加し、この炭をろ過し、撹拌下で水性エタノールに再懸濁させ、ろ過によりこの炭を分離することにより行い得る。より大規模の精製では、中性HMOの水溶液を、好ましくはセライトと任意選択的に混合され得る炭が充填されているカラムに負荷し、次いでこのカラムを必要な溶出液で洗浄する。中性HMOを含有する画分を回収する。溶出に使用した場合に残存するアルコールを例えば蒸発によりこれらの画分から除去して、中性HMOの水溶液を得ることができる。
【0147】
好ましくは、使用される活性炭は、粒状である。これにより、高圧を印加することなく好都合な流速が確保される。
【0148】
同様に好ましくは、UF工程、NF工程又はイオン交換処理工程からの目的の中性HMOを含有する水溶液の活性炭処理、より好ましくは活性炭クロマトグラフィーを高温で行う。高温では、色体、残存タンパク質等の炭粒子への結合は、より短い接触時間で起こり、従って流速が好都合に上昇され得る。さらに、高温で行われる活性炭処理により、中性HMOの水溶液中の生存微生物の総数(総微生物数)が実質的に減少し、そのため、本方法の後の工程での滅菌ろ過工程が不要になる場合がある。この高温は、少なくとも30~35℃、例えば少なくとも40℃、少なくとも50℃、約40~50℃又は約60℃である。
【0149】
同様に好ましくは、適用される炭の量は、負荷に含有される中性HMOの約10重量%以下、より好ましくは約2~6重量%である。これは、経済的であり、なぜなら、上記で開示されている全ての利点は、非常に少ない量の炭で好都合に達成され得るからである。
【0150】
活性炭処理、好ましくはクロマトグラフィーを水溶液中の目的の中性HMOの量に対して約10重量%以下、好ましくは約2~6重量%の活性炭で高温において行うことが特に好ましい。
【0151】
[2.2.6 中性固相でのクロマトグラフィー精製]
この任意選択的な工程では、全て上記で詳細に開示されているUF工程、NF工程、イオン交換処理工程又は活性炭処理からの中性HMOの水溶液を中性固相でのクロマトグラフィーによりさらに精製し得る。
【0152】
UF工程、NF工程、イオン交換処理工程又は活性炭処理後に得られた水溶液は、除去すべき少量の他の可溶性疎水性不純物を含有する場合がある。この不純物を、この水性媒体を中性固相でのクロマトグラフィー、有利には逆相クロマトグラフィーに供することにより除去し得る。これにより、疎水性部分を含有する夾雑物は、疎水性相互作用に起因して、固定相のゲルマトリックス(樹脂)の疎水性リガンド、例えばアルキル側鎖又はアリール側鎖に吸着して、その結果として保持されるが、より親水性の中性HMOは、逆相クロマトグラフィー媒体上に結合せず、従って移動相として使用される水性媒体により溶出される。
【0153】
逆相クロマトグラフィーを従来の方法で実行し得る。好ましくは、逆相シリカ及び有機ポリマー、特にスチレン又はジビニルベンゼンとメタクリル酸ポリマーとのコポリマーからなる群から選択される疎水性クロマトグラフィー媒体が使用される。このシリカは、好ましくは、C1~C18(C1、C4、C5、C8及びC18が最も一般的である)の長さの範囲の直鎖アルキル炭化水素又は他の疎水性リガンド(例えば、フェニル若しくはシアノ)で誘導体化される。
【0154】
逆相クロマトグラフィーでの移動相として使用される水性媒体に有機溶媒を添加して、この水性媒体の極性を変更し、それにより精製を高め得る。この目的のために、低級アルカノール、例えばメタノール、エタノール及びイソプロパノール、又はアセトニトリル、又はテトラヒドロフラン、又はアセトンのような多くの有機溶媒、好ましくは水と混和する溶媒を使用し得る。
【0155】
同様に中性HMOの精製を高めるために、逆相クロマトグラフィー前に水性媒体のpHを好ましくはpH約3~8、例えば約4~7に調整する。これは、好ましくは、例えばギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムの添加により、従来方法で達成される。
【0156】
同様に中性HMOの精製を高めるために、逆相クロマトグラフィー前に水性媒体に好ましくは塩を溶解させる。この塩により、非糖類夾雑物の疎水性相互作用が増加して、疎水性クロマトグラフィー媒体によるこの非糖類夾雑物の除去が増加する。使用され得る塩として、下記が挙げられる:Na2SO4、K2SO4、(NH4)2SO4、NaCl、NH4Cl、NaBr、NaSCN及びNaClO4。
【0157】
逆相クロマトグラフィーを他に従来の方法において、例えばバッチ式又は連続的に実行し得る。精製を、実験室規模又は工業規模の従来のクロマトグラフィーカラム又は容器を使用することにより容易に行い得、疎水性クロマトグラフィー媒体を(例えば、ビーズとして)容易に充填し得るか又は懸濁させ得る。
【0158】
[2.2.6.1 臭素官能化PS-DVB疎水性固定相でのクロマトグラフィー]
典型的には、高度に疎水性の固定クロマトグラフィー媒体の適用は、高度に極性のオリゴ糖の分離に適していない(例えば、国際公開第2017/221208号パンフレットを参照されたい)。しかしながら、目的の中性HMOの微生物的生成又は酵素的生成中、目的の中性HMO以外の付随のオリゴ糖が副生成物として形成される場合がある(上記の2.1を参照されたい)。これらのいくつかを、反応環境(上記の2.1を参照されたい)から又は特殊な条件下でのナノろ過(上記の2.2.2を参照されたい)により、直接除去し得るか又は少なくともその量を減少させ得る。
【0159】
目的の中性HMOが、付随するオリゴ糖の夾雑が非常に少量である高純度で利用可能であることが求められる場合、ジビニルベンゼンで架橋された臭素官能化ポリスチレン(PS-DVB)疎水性固定相でのクロマトグラフィーを含むさらなる精製工程が必要な場合がある。
【0160】
好ましくは、BPS-DVB樹脂の臭素化レベルは、約25~61w/w%、例えば約25~35w/w%である。
【0161】
上記のクロマトグラフィー分離プロセスは、バッチプロセスとしてもマルチカラム設定においても頑強であり、R&D研究室からパイロットプラント、次いで工業用フルスケールまで幅広い。固相及び関連のクロマトグラフィーの実行を、例えば水性アルコールを使用して勾配が適用される方法で行うことができるが、有機溶媒を用いることなく完全に実行することもできる(純水)。このプロセスは、高温(例えば、最大で約60℃)で十分に機能し、微生物増殖のリスクの低減及び生産性の増加という利点をもたらす。加えて、固相を、例えば水性酢酸を使用して完全に再生し得、それにより、この固相は、食品関連の処理に非常に適している。
【0162】
分離方法を従来の方法で実行し得る。目的の中性HMOを含む水溶液をこのクロマトグラフィーでの移動相として使用する。この水溶液に有機溶媒、好ましくはC1~C4アルコールを添加し得る。この水溶液のpHは、好ましくは、約3~約8、より好ましくは約4~約7である。必要に応じて、このpHを、酸、塩基又は緩衝剤の水溶液の添加により従来の方法で必要な値に調整し得る。分離を、実験室規模又は工業規模の従来のクロマトグラフィーカラム又は容器を使用することにより容易に行い得、PS-DVB-Br樹脂を(例えば、ビーズとして)充填し得るか又は懸濁させ得る。好ましくは、分離方法をカラムで実施する。
【0163】
分離の程度は、多くのパラメータ、例えば流速/溶出速度の性質、回収される画分の量、樹脂の質量又は樹脂床の量に対するオリゴ糖負荷の質量等に依存する。これらのパラメータを通常の技術により最適化し得る。「分離」という用語は、目的の中性HMOの、付随するオリゴ糖からの完全分離を意味し、即ち、この中性HMOは、他のオリゴ糖を含有しない純粋な形態で画分から回収されて単離される。また、「分離」という用語は、部分的分離も意味し、この部分的分離では、目的の中性HMOを純粋な形態で少なくとも1つの画分から得ることができるか、又は画分での付随するオリゴ糖に対する目的の中性HMOの比率が供給溶液での比率と比べて高く、それにより目的の中性HMOが富化される。
【0164】
好ましくは、BPS-DVB固定媒体でのクロマトグラフィーは、
- BPS-DVB媒体上に、目的の中性HMOを含有する水溶液を負荷することと、
- 任意選択的にC1~C4アルコールを含有する水で溶出させることと、
次いで
- 少なくとも目的の中性HMOが富化されている画分を回収することと
を含む。
【0165】
クロマトグラフィー後、BPS-DVB媒体を、水混和性有機溶媒を含有する水で溶出することにより再生して再利用し得る。
【0166】
目的の中性HMOを、上記で説明されているBPS-DVBでのクロマトグラフィーにより、付随するオリゴ糖から分離する方法では、目的の中性HMO及び付随するオリゴ糖は、少なくとも1つの構造的特徴が互いに異なり、例えば少なくとも1つの単糖単位が異なるか、単糖単位の数が異なるか、又は少なくとも1つのグリコシド間連結の方向が異なる(α又はβ)。一実施形態では、オリゴ糖の1つは、他と比べて少なくとも2つ多い単糖単位からなり、例えば、オリゴ糖の1つは、三糖であり、且つ他は、五糖であるか、又はオリゴ糖の1つは、四糖であり、且つ他は、六糖である。他の実施形態では、目的の中性HMOの1つは、少なくとも1つのGlcNAc単位を含むが、付随するオリゴ糖は、含まない。他の実施形態では、オリゴ糖の1つは、他と比べて多いGlcNAc単位を含む。
【0167】
好ましくは、目的の中性は、四糖、例えばLNnTであり、付随するオリゴ糖は、五糖又は六糖、例えばpLNnHである。同様に好ましくは、中性HMO四糖は、LNTであり、付随するオリゴ糖は、五糖又は六糖、例えばpLNH IIである。
【0168】
[2.2.7 単離形態で目的の中性HMOを得ること]
上記の2.2.2~2.2.6のいずれかで開示されている分離/精製工程後、そのようにして得られた目的の中性HMOを噴霧乾燥、凍結乾燥又は結晶化により固体形態で得ることができる。従って、本発明の方法は、単離形態、好ましくは乾燥形態で目的の中性HMOを得るための1つ又は複数のさらなる工程を含み得、例えば、UF工程、NF工程、活性炭処理、イオン交換処理及び/若しくは中性固相でのクロマトグラフィー後に得られた中性HMOの水溶液を噴霧乾燥させる工程を含み得るか、又はUF工程、NF工程、活性炭処理、イオン交換処理及び/若しくは中性固相でのクロマトグラフィー後に得られた中性HMOの水溶液を噴霧乾燥させる工程を含み得るか、又はUF工程、NF工程、活性炭処理、イオン交換処理及び/若しくは中性固相でのクロマトグラフィー後に得られた中性HMO(但し、目的の中性HMOは、結晶形態で存在する)を結晶化させる工程を含み得る。代わりに、UF工程、NF工程、活性炭処理、イオン交換処理及び/又は中性固相でのクロマトグラフィー後に得られた中性HMOを、例えば蒸留、好ましくは真空蒸留又はナノろ過により水を除去することにより、濃縮水溶液又はシロップの形態で提供することができる。
【0169】
目的の中性HMOが噴霧乾燥形態で単離される場合、好ましくは、例えば国際公開第2013/185780号パンフレットで開示されているように行うか、又は噴霧乾燥プロセスを110~190℃のノズル温度及び60~110℃の出口温度において、例えば目的の中性HMOの15~65w/v%水溶液で実施し、但し、このノズル温度は、出口温度と比べて少なくとも10℃高い。
【0170】
目的の中性HMOが結晶形態で単離される場合、結晶化は、好ましくは、
- 国際公開第2016/095924号パンフレットで開示されているように水性酢酸から実施して、国際公開第2011/150939号パンフレットに係る2’-FL多形IIを単離すること、又は
- 国際公開第2011/100980号パンフレットで開示されているように水性メタノールから実施して、このパンフレットで特徴付けられているLNnT多形を単離すること
によって実施される。
【0171】
[3.本発明の好ましい実施形態]
好ましい実施形態及びより好ましい実施形態を含む、本発明の実施形態は、電気透析工程を含まない。
【0172】
本方法の一実施形態は、中性HMOを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)前記反応ブロスのpHをpH=3~5に設定する工程、
b)任意選択的に、工程a)で得られたpH調整ブロスを5~15℃まで冷却して1~15日にわたり保存する工程、
c)工程a)又は工程b)のブロスを60~65℃まで加熱する工程、
d)工程c)で得られたブロスを、約5~1000kDa、例えば10~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程であって、この膜は、セラミック膜である、工程、
e)工程d)で得られた透過液の任意選択的な滅菌ろ過の工程、
f)工程d)で得られた透過液又は工程e)で得られた滅菌ろ過透過液を、600~3500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜と接触させる工程であって、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、工程、
g)工程f)で得られた保持液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂により処理して、この保持液を脱塩する工程、
h)30~60℃での、工程g)で得られた溶液の活性炭クロマトグラフィーの工程であって、この炭の量は、負荷に含有される中性HMOの約2~10重量%である、工程、
i)工程h)で得られた溶液を150~500Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
j)工程i)の溶液を噴霧乾燥させることにより水を除去して、非晶質固体として中性HMOを得るか、又は工程i)で得られた溶液から中性HMOを結晶化させる工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0173】
本方法の一実施形態は、中性HMOを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)前記反応ブロスのpHを約5.5のpHに設定する工程、
b)工程a)で得られたブロスを遠心分離する工程、
c)任意選択的に、工程b)の上清を60~65℃まで加熱する工程、
d)工程b)又は工程c)の上清を、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
e)工程d)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500Daを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
f)30~60℃での、工程e)で得られた保持液の活性炭クロマトグラフィーの工程であって、この炭の量は、負荷に含有される中性HMOの約2~10重量%である、工程、
g)工程f)で得られた溶液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
h)工程g)で得られた溶液を150~500Dの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
i)工程i)の溶液を噴霧乾燥させて、非晶質固体として中性HMOを得るか、又は工程h)で得られた溶液から中性HMOを結晶化させる工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0174】
本方法の一実施形態は、2’-FLを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)このブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500Daを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
d)30~60℃での、工程c)で得られた保持液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
e)2’-FLの濃度が約400~700g/lに達するまで、工程d)で得られた溶液を蒸発させる工程、
f)メタノール又は酢酸、好ましくは酢酸を用いて、工程e)で得られた溶液から2’-FLを結晶化させて、2’-FL多形IIを得る工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0175】
本方法の一実施形態は、2’-FLを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)このブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500DaのMWCOを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
d)30~60℃での、工程c)で得られた保持液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
e)工程d)で得られた溶液を、600~3500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜と接触させる工程であって、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、工程、
f)工程e)で得られた透過液を蒸発させるか、又は工程e)で得られた透過液を150~300Daの膜でナノろ過して、2’-FLの濃度が約400~700g/lに達するまでこの溶液を濃縮する工程、
g)酢酸を用いて、工程f)で得られた溶液から2’-FLを結晶化させて、2’-FL多形IIを得る工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0176】
本方法の一実施形態は、2’-FLを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)このブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500DaのMWCOを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
d)工程c)で得られた保持液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
e)30~60℃での、工程d)で得られた溶液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
f)工程e)で得られた溶液を蒸発させるか、又は工程e)で得られた溶液を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
g)酢酸を用いて、工程f)で得られた溶液から2’-FLを結晶化させて2’-FL多形IIを得るか、又は工程f)で得られた溶液を噴霧乾燥させて非晶質粉末として2’-FLを得る工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0177】
本方法の一実施形態は、中性HMOを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)前記反応ブロスのpHを約3~6のpHに設定する工程、
b)任意選択的に、工程a)のブロスを30~65℃まで加熱する工程、
c)工程a)又はb)のブロスを、約10~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
d)工程c)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500DaのMWCOを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
e)30~60℃での、工程d)で得られた保持液の活性炭クロマトグラフィーの工程であって、この炭の量は、負荷に含有される中性HMOの約2~10重量%である、工程、
f)工程e)で得られた溶液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
g)工程f)で得られた溶液を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
h)工程g)で得られた溶液から中性HMOを結晶化させる工程であって、
この中性HMOは、2’-FL、LNnT又はLNTである、工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0178】
本方法の一実施形態は、3-FLを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)このブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500DaのMWCOを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
d)工程c)で得られた保持液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
e)30~60℃での、工程d)で得られた溶液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
f)工程e)で得られた溶液を蒸発させるか、又は工程e)で得られた溶液を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
g)工程f)で得られた溶液を噴霧乾燥させて、非晶質粉末として3-FLを得る工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0179】
本方法の一実施形態は、LNnTを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)このブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、600~3500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜と接触させる工程であって、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、工程、
d)30~60℃での、工程c)で得られた保持液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
e)工程d)で得られた溶液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
f)工程e)で得られた溶液を蒸発させるか、又は工程e)で得られた溶液を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
g)メタノールを用いて、工程f)で得られた溶液からLNnTを結晶化させる工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0180】
本方法の一実施形態は、LNnTを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)このブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、600~3500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜と接触させる工程であって、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、工程、
d)工程c)で得られた保持液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
e)30~60℃での、工程d)で得られた溶液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
f)工程e)で得られた溶液を蒸発させるか、又は工程e)で得られた溶液を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
g)メタノールを用いて、工程f)で得られた溶液からLNnTを結晶化させる工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0181】
本方法の一実施形態は、LNnTを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)ブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500DaのMWCOを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
d)30~60℃での、工程c)で得られた保持液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
e)工程d)で得られた溶液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
f)ジビニルベンゼンで架橋された臭素官能化ポリスチレン(PS-DVB)疎水性固定相による、工程e)で得られた溶液のクロマトグラフィーを行って、LNnTが富化された画分を回収する工程、
g)工程f)で得られた画分を蒸発させるか、又は工程f)で得られた画分を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
h)工程g)で得られた溶液を噴霧乾燥させて、非晶質粉末としてLNnTを得る工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0182】
本方法の一実施形態は、LNnTを、それが生成された発酵ブロスから得るか又は単離することであって、
a)ブロスのpHを約3~約6のpHに設定し、且つ/又は前記ブロスを約35~65℃の温度に温める工程、
b)工程a)のブロスを、約5~1000kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する限外ろ過(UF)膜と任意選択的に40~65℃で接触させる工程、
c)工程b)で得られた透過液を、ナノろ過(NF)膜であって、
- 600~3500DaのMWCOを有し、この膜の活性(上)層は、ポリアミドで構成され、前記膜でのMgSO4阻止率は、約20~90%、好ましくは50~90%である、ナノろ過(NF)膜、又は
- 150~500DaのMWCOを有するナノろ過(NF)膜
と接触させる工程、
d)工程c)で得られた保持液をH+形態の強カチオンイオン交換樹脂、続いて塩基形態の弱塩基イオン交換樹脂で処理して、この溶液を脱塩する工程、
e)30~60℃での、工程d)で得られた溶液の活性炭クロマトグラフィーの工程、
f)ジビニルベンゼンで架橋された臭素官能化ポリスチレン(PS-DVB)疎水性固定相による、工程e)で得られた溶液のクロマトグラフィーを行って、LNnTが富化された画分を回収する工程、
g)工程f)で得られた画分を蒸発させるか、又は工程f)で得られた画分を150~300Daの膜でナノろ過して、この溶液を濃縮する工程、
h)工程g)で得られた溶液を噴霧乾燥させて、非晶質粉末としてLNnTを得る工程
を含む、得るか又は単離することに関する。
【0183】
[実施例]
[全般:]
目的の中性HMOの濃度を、37℃で屈折率検出器を使用して、1.1ml/分の流速及び25℃で、64v/v%のアセトニトリルを用いるTSKgel Amide-80(150mm×4.6mm、粒径:3μm)によるHPLCでアッセイした。
【0184】
有機不純物の濃度を、帯電エアロゾル検出器(CAD)を使用して、1.1ml/分の流速及び25℃で、72v/v%のアセトニトリルを用いるapHera NH2ポリマー(250mm×4.6mm;5μm)によるHPLCで測定した。
【0185】
[実施例1]
発酵:2’-FL含有ブロスを、LacZ-、LacY+表現型の遺伝子改変大腸菌(E.coli)株を使用する発酵により生成し、前記株は、GDP-フコースのフコースを内在化ラクトースに転移させ得るα1,2-フコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする組換え遺伝子と、GDP-フコースへの生合成経路をコードする遺伝子とを含む。この発酵を、外部から添加したラクトースと、好適な炭素源(例えば、国際公開第2015/197082号パンフレットに係る炭素源)との存在下でこの株を培養することにより実施し、それにより発酵ブロス中の主要な炭水化物不純物としてのDFL及び未反応のラクトースを伴う2’-FLが生成された。
【0186】
この発酵が完了した後、発酵ブロスを10℃まで冷却し、pHが4.0で安定するまで数時間かけて25%硫酸溶液を添加した。
【0187】
得られたブロス(16.69kg)は、99.86g/lの2’-FL、11.4g/lのラクトース及び3.61g/lのDFLを含有し、導電率は、5.65mS/cmであり、及びBWM(生物湿塊)は、28.3%であり、このBMWを、室温での小さいブロスサンプルの遠心分離により得られる上清の除去後の湿った固体塊をこのブロスサンプルの初期質量で除算することにより算出する。
【0188】
ブロスの一部(約(cca.)10kg)を、15kDaセラミック膜を備えたMMS SW18膜ろ過システムに移し、約45分にわたり60℃で平衡化した。バッチ限外ろ過をTMP=6bar及び0.9m/s クロスフロー速度で開始した。残りのブロスを少量ずつ添加した。供給量を約半分(濃縮係数、CF=2)まで減少させた後、初期供給量と同量の水(16.7kg、「1容量DF」)で透析ろ過(DF)を開始し、DF開始前の透過液流速とほぼ一致する5.4l/hの流速で連続的に添加した。結果として、UF透過液28.45kgを透明な褐色溶液として得、このUF透過液は、52.8g/lの2’-FL、4.94g/lのラクトース、1.33g/lのDFL及び26.3mg/lのタンパク質を含有し、Brixは、8.5であり、導電率は、5.96mS/cmであり、pHは、4.43であった。2’-FLの回収率は、96%であった。
【0189】
得られたUF透過液(28.42kg)を、spiral-wound Trisep-UA60 1812膜(仕様書によるとMWCO 1000~3500Da)を備えた別のSW18膜ろ過システムに分割して移した。NF透過液の回収を、NF透過液20.38kgが0.9のBrixで回収されるまでTMP=35barで開始した。保持液のpHを50%NaOH溶液10mlで4.3から5.5に調整した。この時点で水25kgによる連続DFを5.5l/hの流速で開始した。このDF中、TMPは、40.0barまで上昇し、温度は、45℃で安定した。そのようにして得られた(第1の)NF保持液(5.76kg、Brix 27.7、d=1.12g/cm3、導電率3.02mS/cm、pH5.64)は、202.43g/lの2’-FL、7.24g/lのラクトース、7.63g/lのDFL及び100.1mg/lのタンパク質を含有し、ラクトース/2’-FL比率は、最初のUF透過液での9.4%から3.6%に低下した。他の低分子の量も効率的に減少した。同様に、凍結乾燥後の固体サンプル中の全2’-FL純度は、62.4%(UF透過液中)から82.6%(NF保持液)に改善された。算出した工程収率は、78.6%であった。この収率を改善するために、DF透過液(27.30kg)を、上記で説明したように少量(約2.31)に濃縮し、続いて水10kgによる透析ろ過により、同一のNFシステムで再処理して、第2のNF保持液(1.365kg)を得た。第1のNF保持液及び第2のNF保持液を合わせた2’-FLの回収率は、94%であった。UF+NF工程の2’-FL回収率は、75.4%(第1のNFの再処理を行っていない)であり、これは、第1のNF透過液の再処理により90%まで改善された。
【0190】
第1のNF保持液(5.74kg)を、再生されたDowex 66樹脂(弱アニオン交換体、第三級アミン、遊離塩基形態)0.8lが充填された別の1リットルカラムに接続された、再生されたDowex 88樹脂(スルホン酸基を有する強カチオン交換体、H+形態)0.8lが充填されたチューブ内径5cmの1リットルカラムに約2.4l/hの流速で通過させた。最初の空隙容量640mlを廃棄し、続いて主要画分を回収した。全ての供給溶液が消費された後、脱イオン水 約1.6lによる溶出を同一の流速で継続した。回収した主要画分は、重量が6760gであり(密度1.09、Brix 21.8、導電率0.152mS/cm、pH6.21)、180.17g/lの2’-FL、5.97g/lのラクトース、6.2g/lのDFL及びわずか0.9mg/lのタンパク質を含有し、2’-FLの回収は、ほぼ定量的であった。加えて、導電率の低下から、塩含有量の95%超の減少が推定され、色も暗褐色から淡黄色に大幅に薄くなった。同様の供給量及び組成による別の実行では、400nmでのUV吸光により、NF保持液での>3.0から脱塩後の0.44までの色の減少を定量した。有効性を説明すると、樹脂による負荷は、全固形物に関して約2kg/lの湿潤樹脂であり、且つ2’-FLに関して約1.4kg/lの湿潤樹脂であった。NF工程が150~300kDaのMWCOのNF膜により実施された場合、色及び導電率の同一の低下を達成するために、少なくとも5倍超の樹脂(1/5以下の負荷を意味する)が必要である。
【0191】
上記の脱塩工程で得られた淡黄色溶液(6.74kg)を、水に懸濁されてヒートジャケット付GE XK-16/100カラムに充填された顆粒活性炭(88g、供給物中の総固形物に対して6w/w%)に60℃及び1.5l/hの流速で通過させ、続いて、脱イオン水200mlを通過させて、無色透明溶液(6919g、密度1.086、Brix 20.7、導電率0.16mS/cm、pH6.1)を得、この溶液は、174.65g/lの2’-FL、5.60g/lのラクトース、5.95g/lのDFL及び<1mg/lのタンパク質を含有し、2’-FLの収率は、ほぼ定量的であった。同様の供給量及び組成による別の実行では、400nmでのUV吸光により色の減少を定量して、供給物での0.44から炭クロマトグラフィー後の0.01までの色の大幅な減少を得た。
【0192】
前工程からの溶液を減圧下で3.45kg(Brix 41.6)まで濃縮し、この溶液のpHを少量の37%HCl溶液によりpH=6.5から4.83に調整した。得られた濃縮シロップを200nmフィルタにより滅菌ろ過し、脱イオン水で洗浄した。そのようにして得られたシロップ(3.97kg、Brix 36.2)を7部に分けて凍結乾燥させて最終生成物1405gを得、この最終生成物を移して粉砕して白色粉体を得、この白色粉体は、下記を含有した:86.07%の2’-FL、3.83%のラクトース、4.75%のDFL及び2.81%の残留水;タンパク質<0.0017%、カリウム<10mg/kg、マグネシウム<5mg/kg、ナトリウム220mg/kg、銅<0.1mg/kg、鉄<0.5mg/kg、マンガン<0.1mg/kg、鉛<0.01mg/kg、亜鉛0.2mg/kg、アンモニウム<50mg/kg、リン酸塩<50mg/kg、硫酸塩20mg/kg、塩化物282mg/kg、硫酸塩灰分0.09%、エンドトキシン0.003EU/mg、総プレート数(微生物学的パラメータ)<10cfu/g。
【0193】
[実施例2]
2’-FL発酵ブロスのいくつかのサンプルを、室温で撹拌しつつ25%H2SO4溶液の添加によりpH調整し、pHを20分にわたる平衡後及び2時間後に測定した。得られた液体のサンプルを室温で遠心分離し、他のサンプルを10分にわたり60℃で恒温した後、室温で遠心分離した。得られた上清を可溶性タンパク質含有量に関してBradford試験により分析した。結果を下記の表にまとめる。結果として、低いpH(<4)及び中程度の加熱処理(60℃)の組み合わせにより、未処理ブロスと比較して、可溶性タンパク質の量を最大0.1部減少させ得る。
【0194】
【0195】
[実施例3]
実施例1で説明したように20lスケールで生成したいくつかの2’-FL発酵ブロスを様々なpH値に調整し、実施例1で説明したのと同一の60℃でのUF条件下で処理した。UF透過液中のタンパク質含有量は、pH調整なしのpH=6.3でのUF実行と比較して、pH=3.8で5倍減少しており、これは、実施例2で得られた同様のpH値での上清中のタンパク質の減少と一致する。さらに、pH5.8及び6.3では、タンパク質含有量の差違をほとんど観察しなかったが、pH3.8対pH4.35では、2倍のタンパク質減少が達成され得た。
【0196】
[実施例4]
LNnTを、国際公開第2017/182965号パンフレットで開示されている遺伝子改変大腸菌(E.coli)細胞を使用する発酵により製造し、それにより中間体ラクト-N-トリオースII、pLNnH及び未反応のラクトースを伴うLNnTを含有するブロスが生成された。
【0197】
得られたブロスをpH=5.0に調整して3等分した。各部を、それぞれ実施例1での2’-FLに関して説明されたのと同一の方法(CF=2.0までの濃縮、続いて最初の供給量に対する1容量の水によるDFを含む)で40℃、50℃及び60℃での50nmセラミック膜によるバッチモードのUFにより処理した。LNnTの収率及びUF透過液中のタンパク質含有量を下記の表にまとめる。
【0198】
【国際調査報告】