(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】反応樹脂用の貯蔵安定性硬化剤組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 26/06 20060101AFI20221128BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20221128BHJP
C04B 26/12 20060101ALI20221128BHJP
C04B 26/14 20060101ALI20221128BHJP
C04B 26/16 20060101ALI20221128BHJP
C04B 26/18 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C04B26/06
C04B14/10 B
C04B26/12
C04B26/14
C04B26/16
C04B26/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518177
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2020077300
(87)【国際公開番号】W WO2021069270
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】メメット-エミン クムル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ビュアゲル
(57)【要約】
本発明は、ラジカル硬化性化合物に基づく反応樹脂用の貯蔵安定性硬化剤組成物であって、水と、過酸化物と、レオロジー添加剤とを含み、該レオロジー添加剤が、フィロケイ酸塩に基づく、貯蔵安定性硬化剤組成物に、ならびに硬化剤成分としての該硬化剤組成物と、ラジカル硬化性化合物に基づく反応樹脂を含む樹脂成分と、を含有する反応樹脂系に関する。反応樹脂系はタップネジで使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル硬化性化合物に基づく反応樹脂系用の硬化剤組成物であって、水と、固体過酸化物と、レオロジー添加剤と、を含み、前記レオロジー添加剤はフィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤である、硬化剤組成物。
【請求項2】
前記フィロケイ酸塩は膨潤性フィロケイ酸塩である、請求項1に記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
前記膨潤性フィロケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたはケイ酸アルミニウムナトリウムである、請求項2に記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
前記レオロジー添加剤は、前記膨潤性フィロケイ酸塩からなるか、または前記膨潤性フィロケイ酸塩を必須成分/主成分として含有する、請求項2または3のいずれかに記載の硬化剤組成物。
【請求項5】
前記レオロジー添加剤は、モンモリロナイトであるか、またはモンモリロナイトを必須成分/主成分として含有する、請求項4に記載の硬化剤組成物。
【請求項6】
前記レオロジー添加剤はベントナイトである、請求項5に記載の硬化剤組成物。
【請求項7】
前記レオロジー添加剤は、前記硬化剤組成物の総重量に基づいて、0.15~5重量%の量で含有されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化剤組成物。
【請求項8】
前記水および前記固体過酸化物は懸濁液の形態で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化剤組成物。
【請求項9】
前記過酸化物は、過酸化ジアセチル、過酸化ジ-p-クロロベンゾイル、過酸化フタロイル、過酸化スクシニル、過酸化ジラウリル、過酸化アセチルシクロヘキサンスルホニル、過炭酸シクロヘキサン、過炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、過酸化シリコン、過酸化シクロヘキサン、過酸化ジベンゾイル、および過酸化ジラウロイルからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化剤組成物。
【請求項10】
ラジカル硬化性化合物を含む樹脂成分を有し、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化剤組成物を含む硬化剤組成物を有する、多成分反応樹脂系。
【請求項11】
前記ラジカル硬化性化合物は、少なくとも1つの反応樹脂、少なくとも1つの反応性希釈剤、または少なくとも1つの反応樹脂と反応性希釈剤との混合物を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の多成分反応樹脂系。
【請求項12】
前記反応樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビスフェノールのメタクリレートに基づく、または他のエチレン性不飽和化合物に基づく化合物である、ことを特徴とする請求項11に記載の多成分反応樹脂系。
【請求項13】
前記樹脂成分は無機添加物質をさらに含む、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の多成分反応樹脂系。
【請求項14】
前記無機添加物質は親水性を有する、ことを特徴とする請求項13に記載の多成分反応樹脂系。
【請求項15】
前記樹脂成分は抑制剤および/または促進剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の多成分反応樹脂系。
【請求項16】
前記多成分反応樹脂系がは2成分バッグ系である、ことを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の多成分反応樹脂系。
【請求項17】
固体基材内、特に、石またはコンクリート内のタップネジを留め付けおよび/または補強するための、請求項10~16のいずれか一項に記載の多成分反応樹脂系の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップネジ(ねじ山形成ねじ)で使用するための反応樹脂用の硬化剤組成物、特に、過酸化物-水系に基づく貯蔵安定性硬化剤組成物に関する。
【0002】
化学的留め付け技術に使用される少なくとも2成分モルタル組成物は、一般に、1つの成分、すなわち樹脂成分中に、ラジカル重合によって硬化可能な樹脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、またはウレタンメタクリレート樹脂を含有し、これらの樹脂は、スチレンまたはモノマーのメタクリレートなどの共重合可能な反応性希釈剤中に溶解され得る。樹脂に加えて、この樹脂成分は通常、促進剤、抑制剤などのさらなる添加剤、ならびに充填剤または増粘剤を含有する。
【0003】
化学的留め付け技術のためのそのようなモルタル組成物の第2の必要な成分、すなわち硬化剤成分は、硬化性樹脂、例えば、過酸化物の重合に必要なラジカル形成剤を含有する。樹脂成分のラジカル重合に必要なラジカル形成剤の量は、樹脂成分中の樹脂の量よりもはるかに少なく、ラジカル形成剤、すなわち過酸化物が、爆発的に分解する可能性があるため、硬化剤成分は通常、担体材料または鈍感剤を含有し、それにより、硬化剤成分の体積が、妥当な値にされ、ラジカル形成剤の爆発のリスクが、低減される。したがって、硬化剤成分は、硬化剤組成物からなるか、または硬化剤組成物を含有する。
【0004】
最後に、樹脂成分および硬化剤成分と化学的に反応するさらなる成分を、1つ以上のさらなる成分中に提供することが可能であり、これらの成分は、時期尚早の反応が起こらないように、互いに分離される。
【0005】
意図されるように使用される場合には、空間的に分離された成分、すなわち樹脂成分および硬化剤成分が、使用中に別々の容器、例えば、マルチチャンバーバッグ内で、マルチチャンバーバッグがボアホールに挿入され、容器が粉砕され、その中に含有された成分が、対応する留め付け要素、例えば、タップネジによって混合されることによって、回転式に導入される。
【0006】
反応樹脂のこのタイプの使用は、個々の成分およびそれらの混合物の両方の特性について、化合物がボアホール内に導入される前に混合される注入装置で使用する場合とは異なる要件をもたらす。
【0007】
一般に、硬化剤、すなわち過酸化物などのラジカル形成剤の量は、樹脂成分中の樹脂の量よりもはるかに少なく、このことが、一貫して良好で再現性のある強度値を達成するために必要な、これらの2つの成分を均一に混合することをはるかに困難にするため、問題が生じる。さらに、特定のラジカル形成剤、例えば、過酸化ジベンゾイルは固体であり、その結果、硬化剤組成物は通常、ラジカル発生剤を溶解させるかまたは分散させるかのいずれかを行い、ラジカル発生剤を、樹脂成分とより容易に混合され得る全体的により大きな体積で提供するために、希釈剤を含有する。これに関連して、樹脂成分の硬化剤成分に対する体積比は、従来7:1~1:1であるが、これは、この体積比を設定するために、無視できない量の液体担体材料を、硬化剤組成物に、したがって硬化剤成分に添加しなければならないという結果をもたらす。
【0008】
反応樹脂系が、意図されたとおり、すなわち、タップネジで使用される場合、ねじは、硬化性化合物で事前に充填されたボアホール内に配置される。ここで、本体の外面と、ボアホールの壁との間の環状ギャップは、無機充填剤でかなりの程度充填されているほとんどのタイプの硬化性化合物には小さすぎる。したがって、比較的高価であり、充填剤を有する硬化性材料と比較して、より低い強度を有する、低粘度の硬化性材料を使用することのみが可能である。
【0009】
特許文献1、特許文献2、特許文献3または特許文献4から知られているものなど、アンカーロッド用として知られているシェル系は、それらが過度に粗粒の充填剤を含有しているか、またはシェルが、従来のタップネジで破砕され得ないか、もしくはシェル自体が、破砕されたときに過度に大きな粒子を生成するかいずれかのために、非常に小さい環状ギャップに起因して、セルフタッピンねじでの使用には適さない。この用途では、ねじは、セットされる前に数回転しかできないので、材料が確実に硬化するように、硬化性材料の迅速な混合が確実に行われなければならないが、これは、既知の材料では、これまで不可能であった。このために、十分に低粘度の成分が、必要とされる。
【0010】
従来技術によれば、鈍感剤と呼ばれるものが、硬化剤組成物中のラジカル形成剤の流動性および濃度、または硬化剤組成物の体積を調整するために使用され、この鈍感剤が、希釈剤として作用し、ラジカル形成剤の望ましくない分解を回避する。様々なタイプの非反応性可塑剤、例えば、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、液体ポリエステル、またはポリアルキレングリコール誘導体などのジカルボン酸エステルが、そのような鈍感剤としてすでに使用されており、それらに関して、特許文献5、特許文献6、および特許文献7を参照することができる。鈍感剤の欠点は、鈍感剤が、硬化したモルタル内で可塑剤として機能することである。
【0011】
有機/無機ハイブリッド系は、特許文献8からも知られており、この系は、水を鈍感剤として使用することを可能にする。このことは、成分が混合された後、水が、存在する水硬凝結性化合物(hydraulically condensable compounds)によって結合され、したがって、硬化した材料中ではもはや可塑化機能を有しないという利点を有する。
【0012】
しかしながら、水性ハイブリッド系の欠点は、水で鈍感化された過酸化物が沈降安定性ではないため、これに基づいて配合された硬化剤組成物の調製が複雑であるということである。硬化剤組成物は、充填する前に、攪拌され、増粘された添加剤でなければならない。しかしながら、このようにして得られた硬化剤組成物は、タップネジで使用するには粘度が高すぎるため、ヒュームドシリカなどの従来の増粘剤は、使用できない。
【0013】
タップネジで使用するためのそのような少なくとも2成分モルタル組成物の硬化剤成分としての硬化剤組成物の形成への従来のアプローチは、従来の硬化剤組成物の粘度が高すぎて、タップネジで使用できないか、または粘度が十分に低い場合、特に固体過酸化物の沈降に関して、安定性が不十分であるかのいずれかにより、完全に満足し得るものでないことが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0431302号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0432087号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0312776号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0638705号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3226602号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0432087号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1371671号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第4231161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、少なくとも2成分モルタル組成物の硬化剤成分として使用するための硬化剤組成物であって、その組成物によって、簡単な方法でタップネジに使用するための硬化剤成分の必要な流動性を達成するだけでなく、硬化剤成分の高い安定性も達成することが可能な、硬化剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、硬化剤組成物が、ラジカル形成剤に加えて、水と、フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有するということで達成され得ることが示された。
【0017】
本発明をよりよく理解するために、本明細書で使用される用語の以下の説明が有用であると考えられる。本発明の意味において、
-「反応樹脂混合物」とは、少なくとも1つの反応樹脂および/または少なくとも1つの反応性希釈剤の混合物を意味し、混合物は、任意選択で、促進剤および/または抑制剤を含有し得、
-「ラジカル硬化性化合物に基づく反応樹脂」は、略して「反応樹脂」または「ベース樹脂」とも呼ばれ、通常は固体または高粘度の「ラジカル硬化性」、すなわち、重合を通じて硬化して樹脂マトリックスを形成するラジカル重合性化合物を意味し、反応樹脂は、それ自体がバルク反応の反応生成物であり、これは、生成物を分離せずに存在し、そのため、ラジカル硬化性化合物に加えて、反応樹脂、反応性希釈剤、安定剤、および使用される場合には触媒を含有し得る、反応が終了した後にベース樹脂を生成するための反応バッチも含み、
-「反応性希釈剤」とは、反応樹脂を希釈し、それによって、その適用のために必要な粘度を付与し、反応樹脂と反応し得る官能基を含有し、重合(硬化)中、大部分が、硬化組成物の成分となる、液体または低粘度のモノマーおよびオリゴマーを意味し、
-「抑制剤」とは、重合反応(硬化)を抑制することができる化合物を意味し、この化合物は、重合反応、したがって貯蔵中の反応樹脂の望ましくない時期尚早の重合(この機能において、安定剤とも呼ばれることも多い)、および/または硬化剤を添加した直後の重合反応遅延の開始を回避する働きをし、抑制剤の仕事は、それが使用される量に依存し、
-「硬化剤」とは、反応樹脂などのラジカル硬化性化合物の重合(硬化)を引き起こす、または開始する物質を意味し、
-「促進剤」とは、重合反応(硬化)を促進することができる化合物を意味し、この化合物は、特に硬化剤からのラジカルの形成を促進するために、すなわち、硬化剤をより迅速に活性化するために使用され、
-「固体過酸化物」とは、20℃の温度で固体の物理的状態を有し、低エネルギー消費で均一であり、例えば、光への曝露(光分解性)または熱の供給(熱分解性)によって分解され得るペルオキシ基-O-O-を含有する物質(硬化剤)を意味し、ここで、ラジカル反応(例えば、重合)を開始し得る2つのラジカルフラグメントが形成され、
-「樹脂成分」とは、反応樹脂と、抑制剤および/または促進剤などの無機および/または有機添加物質(充填剤および添加剤)との混合物を意味し、
-「硬化剤組成物」とは、硬化剤と、鈍感剤、すなわち硬化剤のための安定剤などの無機および/または有機添加物質(充填剤および添加剤)との混合物を意味し、
-「硬化剤成分」とは、硬化剤組成物からなるか、または該組成物を成分として含有する、2成分または多成分反応樹脂系の成分を意味し、
-「充填剤」とは、有機または無機化合物、特に、パッシブおよび/または反応性および/または機能性でありうる無機化合物を意味し、「パッシブ」とは、結合が硬化樹脂マトリックスによって変更されずに囲まれていることを意味し、「反応性」とは、該化合物が重合して樹脂マトリックスになり、樹脂成分と共に拡張されたネットワークを形成することを意味し、「機能性」とは、化合物が、重合されて樹脂マトリックスにならないが、配合において特定の機能を果たすことを意味し、
-「2成分反応樹脂系」とは、反応樹脂の硬化が、2つの成分の混合後にのみ起こるように、一般に、反応樹脂成分および硬化剤成分の2つの別々に貯蔵された成分を含む反応樹脂系を意味し、
-「多成分反応樹脂系」とは、反応樹脂の硬化が、成分のすべてが混合された後にのみ起こるように、複数の別々に貯蔵された成分を含む反応樹脂系を意味し、
-「(メタ)アクリル…/…(メタ)アクリル…」は、「メタクリル…/…メタクリル…」化合物および「アクリル…/…アクリル」化合物の両方を包含し、「メタクリル…/…メタクリル…」化合物が、本発明において好適であり、
-例えば、「反応性希釈剤」という単語に先行するなど、あるクラスの化合物に先行する冠詞としての「a」または「an」は、このクラスの化合物に含まれる1つ以上の化合物、例えば、様々な「反応性希釈剤」が意図され得ることを意味し、
-「少なくとも1つ」とは数値的に「1つ以上」を意味し、好ましい態様では、この用語は数値的に「1つ」を意味し、
-「含有する(contain)」、「含む(comprise)」、および「含む(include)」は、言及されたものに加えて、さらなる構成要素が存在する可能性があることを意味する。これらの用語は、包括的であることを意図しているため、「からなる」も包含する。「からなる」は、排他的であることを意図しており、それ以上の構成要素が存在してはならないことを意味する。好ましい態様では、「含有する(contain)」、「含む(comprise)」、および「含む(include)」という用語は、「からなる」という用語を意味する。
【0018】
本発明の第1の目的は、請求項1に記載の硬化剤組成物である。従属請求項2~9は、本発明のこの主題の好適な態様に関する。
【0019】
また、本発明の第2の目的は、ラジカル硬化性化合物を含む樹脂成分を有し、請求項1に記載の硬化剤組成物を含む硬化剤組成物を有する、請求項10に記載の多成分反応樹脂系である。さらなる従属請求項11~16は、本発明のこの主題の好適な態様に関する。
【0020】
また、本発明の第3の目的は、固体基材、特に、石またはコンクリート内のタップネジを留め付けおよび/または補強するための、請求項17に記載の多成分モルタル組成物の使用である。
【0021】
本発明による硬化剤組成物は、鈍感剤としての水に加えて、ラジカル形成剤としての固体過酸化物、好ましくは、有機過酸化物を含有する。特に好適な固体過酸化物は、アルキルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過炭酸塩、パーケタール、および無機過酸化物(これらが固体である場合)からなる群から選択される。本発明の最も好適な態様によれば、硬化剤組成物は、過酸化ジアセチル、過酸化ジ-p-クロロベンゾイル、過酸化フタロイル、過酸化スクシニル、過酸化ジラウリル、過酸化アセチルシクロヘキサンスルホニル、過炭酸シクロヘキサン、過炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、過酸化シリコン、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ジベンゾイル、および/または過酸化ジラウロイルを含有する。過酸化ジベンゾイルまたは過酸化ジラウロイルなどの過酸化ジアシルの使用は、-25℃~+60℃の温度範囲での、したがって、従来の屋外建設現場での処理に特に好適である。
【0022】
過酸化物は、好ましくは、水と一緒に懸濁液として存在する。対応する懸濁液は、例えば、United Initiatorsからの水性過酸化ジベンゾイル懸濁液(BP20SAQ、BP40SAQ)など、異なる濃度で市販されている。Perkadox 40L-W(Nouryon)、Luperox(登録商標)EZ-FLO(Arkema)、Peroxan BP40W(Pergan)。
【0023】
過酸化物は、樹脂成分に基づいて、2~50重量%、好ましくは5~45重量%、特に好ましくは10~40重量%の量で、反応樹脂系に含有され得る。
【0024】
本発明による硬化剤組成物は、レオロジー添加剤として、フィロケイ酸塩、特に、活性化または膨潤性フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤を含有する。膨潤性フィロケイ酸塩は、特に好ましくは、ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたはケイ酸アルミニウムナトリウムである。
【0025】
本発明の好適な態様では、レオロジー添加剤は、膨潤性フィロケイ酸塩からなるか、またはこれを主成分として含有する。「主成分」とは、膨潤性フィロケイ酸塩が、レオロジー添加剤の半分超、すなわち、50重量%超、特に、60~80重量%を構成することを意味する。残部は、粘土鉱物、特に、付随する鉱物などの他の鉱物で構成される。
【0026】
レオロジー添加剤モンモリロナイトが、特に好適であるか、またはこれを主成分、例えば、ベントナイトとして含有する。
【0027】
使用されるレオロジー添加剤の量は、水の量に実質的に依存し、当業者は、硬化剤組成物が、必要な粘度および流動性を有するように、これらの成分および任意選択で使用される成分の正しい比率を選択することができる。硬化剤組成物は、好ましくは、硬化剤組成物の総重量に基づいて、0.15~5重量%、特に好ましくは、1~3重量%の量でレオロジー添加剤を含有する。
【0028】
代替の態様では、特に、例えば親水性ヒュームドシリカなどのシリカに基づく、さらなる無機増粘剤が、レオロジー添加剤に添加され得る。
【0029】
フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤に加えて、本発明による硬化剤組成物は、好ましくは、充填剤および/または添加剤などのさらなる添加物質を含有しない。
【0030】
レオロジー添加剤は、非常に特に好ましくは、有機増粘剤、特にキサンタンガムまたはセルロースなどの多糖類を含まない。
【0031】
上記の成分に加えて、硬化剤組成物は、界面活性剤、乳化剤、不凍剤、緩衝液などのさらなる添加剤も含有し得る。
【0032】
それにもかかわらず、フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤に加えて、硬化剤組成物は、樹脂成分について以下に記載される充填剤を少量含有し得る。この量は、硬化剤組成物または該組成物を含有する硬化剤成分の粘度または流動性などの特性、特に、硬化剤組成物または該組成物を含む硬化剤成分の安定性が悪影響を受けないように、選択されるべきである。
【0033】
水は、硬化剤組成物の成分に応じて、重量パーセントが合計で100になるような量で含有される。
【0034】
本発明による硬化剤組成物は、2成分反応樹脂系も含む多成分反応樹脂系の硬化剤成分として使用され得る。
【0035】
したがって、本発明は、樹脂成分と、硬化剤成分としての上記の硬化剤組成物と、を含む多成分反応樹脂系にも関する。樹脂成分は、少なくとも1つのラジカル硬化性化合物を含有する。ラジカル硬化性化合物は、反応樹脂であり得る。代替的に、1つのラジカル硬化性化合物は、反応性希釈剤であり得る。さらなる代替案によれば、ラジカル硬化性化合物は、少なくとも1つの反応樹脂と、少なくとも1つの反応性希釈剤との混合物、反応樹脂混合物も含み得る。
【0036】
反応樹脂として好適なラジカル硬化性化合物は、当業者に知られているように、エチレン性不飽和化合物、炭素-炭素三重結合を有する化合物、およびチオール-イン/エン樹脂である。
【0037】
特に好ましくは、ラジカル硬化性化合物である反応樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビスフェノールの(メタ)アクリレートに基づく不飽和化合物、またはさらなるエチレン性不飽和化合物に基づく化合物である。
【0038】
これらの化合物のうち、エチレン性不飽和化合物の群が好ましく、この群は、スチレンおよびその誘導体、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、イタコネート、ジシクロペンタジエン化合物、および不飽和脂肪を含み、これらの中で、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂が特に好適であり、例えば、欧州特許出願公開第EP1935860号、独国特許出願公開第19531649号、国際特許出願公開第02/051903号、および国際特許出願公開第10/108939号に記載されている。この場合、その耐加水分解性および優れた機械的特性のために、ビニルエステル樹脂(同義語:(メタ)アクリレート樹脂)が最も好ましい。ビニルエステルウレタン樹脂、特に、ウレタンメタクリレートが、非常に特に好ましい。これらとしては、好適な樹脂として、独国特許第102011017626号に記載されているウレタンメタクリレート樹脂が挙げられる。この点に関して、独国特許第102011017626号および、とりわけ、これらの樹脂の組成に関する記載、特に、独国特許第102011017626号の実施例の記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明に従って使用され得る好適な不飽和ポリエステルの例は、J.M.S.-Rev.Macromol.Chem.Phys.,C40(2 and 3),p.139-165(2000)においてM.Malikらによって分類されるように、以下のカテゴリーに分類される、
(1)オルト樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸、および1,2-プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、または水素化ビスフェノールAなどのグリコールに基づく、
(2)イソ樹脂:これらは、イソフタル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸およびグリコールから調製される。これらの樹脂は、オルト樹脂よりも高い割合の反応性希釈剤を含有し得る。
(3)フマル酸ビスフェノールA:これらは、エトキシル化ビスフェノールAおよびフマル酸に基づく、
(4)HET酸樹脂(ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸樹脂):これらは、不飽和ポリエステル樹脂の調製中に塩素/臭素含有無水物またはフェノールから得られる樹脂である。
【0040】
これらの樹脂クラスに加えて、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)と呼ばれるものは、不飽和ポリエステル樹脂としても区別され得る。DCPD樹脂のクラスは、シクロペンタジエンとのディールスアルダー反応によって、上記の樹脂タイプの1つを修飾することによって得られるか、あるいは該樹脂は、代替的に、ジカルボン酸、例えばマレイン酸とジシクロペンタジエニルとの第1の反応によって、次いで、不飽和ポリエステル樹脂の通常の調製の第2の反応によって得られ、後者は、DCPDマレイン酸エステル樹脂と呼ばれる。
【0041】
不飽和ポリエステル樹脂は、好ましくは、500~10,000ダルトンの範囲、より好ましくは、500~5,000の範囲、およびさらにより好ましくは、750~4,000の範囲の分子量Mnを有する(ISO 13885-1による)。不飽和ポリエステル樹脂は、0~80mgKOH/g樹脂の範囲、好ましくは、5~70mgKOH/g樹脂の範囲の酸価を有する(ISO 2114-2000による)。DCPD樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂として使用される場合、酸価は、好ましくは、0~50mgKOH/g樹脂である。
【0042】
本発明において、ビニルエステル樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびエポキシ(メタ)アクリレートも含む(メタ)アクリレート官能化樹脂と呼ばれる、少なくとも1つの(メタ)アクリレート末端基を有するオリゴマー、プレポリマー、またはポリマーである。
【0043】
末端位置にのみ不飽和基を有するビニルエステル樹脂は、例えば、エポキシオリゴマーまたはポリマー(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ、またはテトラブロモビスフェノールAに基づくエポキシオリゴマー)を、例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドと反応させることによって得られる。好適なビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリレート官能化樹脂、およびエポキシオリゴマーまたはポリマーをメタクリル酸またはメタクリルアミドと、好ましくはメタクリル酸と、および任意選択で、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコールなどの鎖延長剤と反応させることによって得られる樹脂である。そのような化合物の例は、米国特許第3297745号、米国特許第3772404号、米国特許第4618658号、英国特許出願公開第2217722号、独国特許出願公開第3744390号、および独国特許出願公開第4131457号から知られている。
【0044】
特に適切で好ましいビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリレート官能化樹脂であり、これは、例えば、二官能性および/またはより高官能性のイソシアネートを適切なアクリル化合物と、任意選択で、例えば、独国特許出願公開第3940309号に記載されているような、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有するヒドロキシ化合物の助けを借りて、反応させることによって得られる。非常に特に適切で好ましいのは、独国特許第102011017626号に記載されているウレタンメタクリレート樹脂(ビニルエステルウレタン樹脂とも呼ばれる)であり、その組成は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
脂肪族(環状または直鎖状)および/または芳香族の二官能性またはより高官能性のイソシアネートもしくはそのプレポリマーが、イソシアネートとして使用され得る。そのような化合物の使用は、濡れ性を高め、したがって、接着特性を改善するのに役立つ。芳香族二官能性またはより高官能性のイソシアネートまたはそのプレポリマーが、好ましく、芳香族二官能性またはより高官能性のプレポリマーが、特に好ましい。鎖剛直化を増加させるためのトリレンジイソシアネート(TDI)、ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、およびポリメリックジイソシアナトジフェニルメタン(pMDI)、ならびに柔軟性を改善するヘキサンジイソシアネート(HDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられ得、それらの中で、ポリメリックジイソシアナトジフェニルメタン(pMDI)が、非常に特に好ましい。
【0046】
好適なアクリル化合物は、アクリル酸、および炭化水素基に置換したアクリル酸、例えば、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸と多価アルコールとのヒドロキシル含有エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、またはネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートである。ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、特に、そのような化合物が、鹸化反応を立体的に防止するのに役立つので、好ましい。アクリル酸は、炭化水素基に置換したアクリル酸よりもアルカリ安定性が低いため、あまり好ましくない。
【0047】
任意選択で使用され得るヒドロキシ化合物は、適切な2価以上のアルコール、例えば、エチレンまたはプロピレンオキシドの二次生成物、例えば、エタンジオール、ジ-もしくはトリエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、他のジオール、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエタノールアミン、さらにビスフェノールAもしくはF、またはそれらのエトキシル化/プロポキシル化および/または水素化またはハロゲン化生成物、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールおよびペンタエリスリトールなどの高級アルコール、ヒドロキシル含有ポリエーテル、例えば、脂肪族または芳香族オキシランのオリゴマー、および/またはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、スチレンオキシド、およびフランなどのより高員環の環状エーテル、ビスフェノールAまたはFのものなどの主鎖に芳香族構造単位を含むポリエーテル、上記のアルコールまたはポリエーテルに基づくヒドロキシル基含有ポリエステル、およびジカルボン酸もしくはそれらの無水物、例えば、アジピン酸、フタル酸、テトラもしくはヘキサヒドロフタル酸、ヘテリック酸(heteric acid)、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、セバシン酸などである。特に好ましいのは、樹脂の鎖を強化する芳香族構造単位を有するヒドロキシ化合物、架橋密度を高めるためのフマル酸などの不飽和構造単位を含有するヒドロキシ化合物、分岐または星型ヒドロキシ化合物、特に、3価以上のアルコール、および/またはその構造単位を含有するポリエーテルまたはポリエステル、反応性希釈剤中の樹脂またはそれらの溶液のより低い粘度およびより高い反応性ならびに架橋密度を達成するための分岐または星型のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0048】
ビニルエステル樹脂は、好ましくは、500~3,000ダルトン、より好ましくは、500~1,500ダルトンの範囲の分子量Mnを有する(ISO 13885-1による)。ビニルエステル樹脂は、0~50mgKOH/g樹脂の範囲、好ましくは、0~30mgKOH/g樹脂の範囲の酸価を有する(ISO 2114-2000による)。
【0049】
ラジカル硬化性化合物として本発明に従って使用され得るこれらの反応樹脂のすべては、例えば、より低い酸価、水酸化物数、または無水物数を達成するために、当業者に知られている方法に従って修飾され得るか、または柔軟な単位をバックボーンなどに導入することによって、より柔軟にされ得る。
【0050】
さらに、反応樹脂は、過酸化物などのラジカル開始剤で重合され得る他の反応基、例えば、イタコン酸、シトラコン酸、およびアリル基などに由来する反応基を含有し得る。
【0051】
本発明の一態様では、反応樹脂系の樹脂成分は、反応樹脂に加えて、少なくとも1つのさらに低粘度のラジカル重合性化合物を反応性希釈剤として含有する。これは、反応樹脂に適切に添加されるため、樹脂成分に含有される。
【0052】
反応性希釈剤として適切な、特に低粘度のラジカル硬化性化合物は、欧州特許出願公開第1935860号および独国特許出願公開第19531649号に記載されている。反応樹脂系は、好ましくは、反応性希釈剤として(メタ)アクリル酸エステルを含有し、以下の(メタ)アクリル酸エステル、すなわち、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エタンジオール-1,2-ジ(メタ)アクリレート、プロパンジオール-1,3-ジ(メタ)アクリレート、ブタンジオール-1,2-ジ(メタ)アクリレート、ブタンジオール-1,3-ジ(メタ)アクリレート、ブタンジオール-1,4-ジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール-1,6-ジ(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのアルカンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチルトリグリコール(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンおよびジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレン(メタ)アクリレート、PEG200ジ(メタ)アクリレートなどのオリゴおよびポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルクロトネート、ビスフェノールA(メタ)アクリレート、ノボラックエポキシジ(メタ)アクリレート、ジ-[(メタ)アクリロイル-マレオイル]-トリシクロ-5.2.1.0.2.6デカン、3-(メタ)アクリロイル-オキシメチル-トリシロ-5.2.1.0.2.6デカン、3-(メタ)シクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、デカリル2-(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、およびアルコキシル化トリ、テトラ、およびペンタメチルアクリレートが、特に好適に使用される。
【0053】
原理上は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アルキル化スチレン、例えば、tert-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、およびビニルおよびアリル化合物など、他の従来のラジカル重合性化合物も、単独で、または前段落に記載の(メタ)アクリル酸エステルとの混合物として使用され得る。この種のビニルまたはアリル化合物の例は、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-およびポリアルキレングリコールビニルエーテル、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-およびポリアルキレングリコールアリルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、およびトリメチロールプロパントリアリルエーテルである。
【0054】
好ましい反応性希釈剤は、実施例で使用されるさらなる反応性希釈剤である。
【0055】
ラジカル硬化性化合物は、樹脂成分に基づいて、10~99.99重量%、好ましくは、15~97重量%、特に好ましくは、30~95重量%の量で、反応樹脂系に含有され得る。ラジカル硬化性化合物は、ラジカル硬化性化合物もしくは反応性希釈剤に基づく反応樹脂、または反応樹脂と2つ以上の反応性希釈剤との混合物のいずれかであり得る。
【0056】
ラジカル硬化性化合物が反応樹脂混合物である場合、反応樹脂系に含有され得る混合物の量は、ラジカル硬化性化合物の量に対応し、すなわち、樹脂成分に基づいて、10~99.99重量%、好ましくは、15~97重量%、特に好ましくは、30~95重量%であり、反応樹脂の割合は、反応樹脂混合物に基づいて、0~100重量%、好ましくは、30~65重量%であり、反応性希釈剤またはいくつかの反応性希釈剤の混合物の割合は、0~100重量%、好ましくは、35~70重量%である。
【0057】
ラジカル硬化性化合物の総量は、充填の程度、すなわち、以下にリストされる充填剤、特に親水性充填剤を含む無機充填剤、他の無機添加物質、および水硬性または重縮合性化合物の量に依存する。
【0058】
さらなる態様では、本発明による反応樹脂系の樹脂成分は、少なくとも1つの促進剤も含有する。これは、硬化反応を促進する。
【0059】
適切な促進剤は当業者に既知である。これらは、適切には、アミンである。
【0060】
好適なアミンは、米国特許出願公開第2011071234号に記載されている以下の化合物、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジ-イソプロピルアミン、トリ-イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソ-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-イソ-ブチルアミン、トリ-イソ-ブチルアミン、ペンチルアミン、イソ-ペンチルアミン、ジ-イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノヘキサノール、エトキシアミノエタン、ジメチル(2-クロロエチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス(2-クロロエチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチルステアリルアミン、ジアルキルアミン、エチレンジアミン、N、N’-ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ペルメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノプロパン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、4-アミノ-1-ジエチルアミノペンタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N、N-ジメチルアミノエタノール、2-(2-ジエチルアミノエトキシ)エタノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン、トリス[2(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]アミン、3-アミノ-1-プロパノール、メチル(3-アミノプロピル)エーテル、エチル-(3-アミノプロピル)エーテル、1,4-ブタンジオール-ビス(3-アミノプロピルエーテル)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、1-ジエチルアミノ-2-プロパノール、ジ-イソ-プロパノールアミン、メチル-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2-ヒドロキシプロピル)アミン、4-アミノ-2-ブタノール、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチルプロパンジオール、5-ジエチルアミノ-2-ペンタノン、3-メチルアミノプロピオニトリル、6-アミノヘキサン酸、11-アミノウンデカン酸、6-アミノヘキサン酸エチルエステル、11-アミノヘキサン酸-イソプロピルエステル、シクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N、N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミン、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、ヘキサヒドロトルイジン、ヘキサヒドロベンジルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N、N-ジメチルアニリン、N、N-ジエチルアニリン、N、N-ジ-プロピルアニリン、イソブチルアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ヒドロキシエチルアニリン、ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、クロロアニリン、アミノフェノール、アミノ安息香酸およびそれらのエステル、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、α-フェニルエチルアミン、キシリジン、ジ-イソ-プロピルアニリン、ドデシルアニリン、アミノナフタレン、N-メチルアミノナフタレン、N、N-ジメチルアミノナフタレン、N、N-ジベンジルナフタレン、ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、ジアミノ-ジメチル-ジシクロヘキシルメタン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノビフェニル、ナフタレンジアミン、ベンジジン、2,2-ビス(アミノフェニル)プロパン、アミノアニソール、アミノチオフェノール、アミノジフェニルエーテル、アミノクレゾール、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-フェニルモルホリン、ヒドロキシエチルモルホリン、N-メチルピロリジン、ピロリジン、ピペリジン、ヒドロキシエチルピペリジン、ピロール、ピリジン、キノリン、インドール、インドレニン、カルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、ピリミジン、キノキサリン、アミノモルホリン、ジモルホリンエタン、[2,2,2]-ジアザビシクロオクタン、およびN、N-ジメチル-p-トルイジンから選択される。
【0061】
好ましいアミンは、アニリンおよびトルイジン誘導体、ならびにN、N-ジメチルアニリン、N、N-ジエチルアニリン、N、N-ジメチル-p-トルイジン、N、N-ビス(ヒドロキシアルキル)アリールアミン、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)トルイジン、N、N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、N、N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)トルイジン、N、N-ビス(3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N、N-ジブトキシヒドロキシプロピル-p-トルイジン、および4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルメタンなどのN,N-ビスアルキルアリールアミンである。
【0062】
高分子アミン、例えば、N、N-ビス(ヒドロキシアルキル)アニリンとジカルボン酸との重縮合によって、またはエチレンオキシドとこれらのアミンとの重付加によって得られるものなどもまた、促進剤として好適である。
【0063】
好ましい促進剤は、N、N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)トルイジン、N、N-ビス(2-ヒドロキシエチル)トルイジン、およびパラ-トルイジンエトキシレート(Bisomer(登録商標)PTE)である。
【0064】
促進剤は、樹脂成分に基づいて、0~10重量%、好ましくは、0.01~5重量%、特に好ましくは、0.5~3重量%の量で、反応樹脂系に含有され得る。
【0065】
さらに別の態様では、本発明による反応樹脂系の樹脂成分は、樹脂成分の貯蔵安定性のため、およびゲル化時間を設定するための両方の抑制剤を含有する。抑制剤は、単独で、または促進剤と一緒に反応樹脂系に含有され得る。適切に調整された促進剤-抑制剤の組み合わせは、好ましくは、処理時間またはゲル化時間を設定するために使用される。
【0066】
当業者に知られているように、ラジカル重合性化合物のために従来使用されている抑制剤は、抑制剤として適切である。抑制剤は、好ましくは、フェノール化合物および非フェノール化合物、例えば、安定ラジカルおよび/またはフェノチアジンから選択される。
【0067】
フェノール類、例えば、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、6,6’-ジ-tert-ブチル-4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-メチレン-ジ-p-クレゾール、ピロカテコールおよびブチルピロカテコール類、例えば、4-tert-ブチルピロカテコール、4,6-ジ-tert-ブチルピロカテコール、ヒドロキノン類、例えば、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジメチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチルヒドロキノン、ベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロ-1、4-ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、ナフトキノン、またはそれらの2つ以上の混合物は、フェノール系抑制剤として好適である。
【0068】
フェノチアジンおよび/もしくは誘導体もしくはそれらの組み合わせなどのフェノチアジン類、またはガルビノキシルおよびN-オキシルラジカルなどの安定な有機ラジカルは、非フェノール系または嫌気性抑制剤、すなわち、フェノール系抑制剤とは対照的に、酸素なしでも有効である抑制剤と見なされる。
【0069】
使用され得るN-オキシルラジカルの例は、独国特許第19956509号に記載されているものである。好適な安定なN-オキシルラジカル(ニトロキシルラジカル)は、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOLとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン(TEMPONとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチル-4-カルボキシ-ピペリジン(4-カルボキシ-TEMPOとも呼ばれる)、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン、1-オキシル-2,2,5,5-テトラメチル-3-カルボキシルピロリジン(3-カルボキシ-PROXYLとも呼ばれる)、アルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、およびジエチルヒドロキシルアミンから選択され得る。さらに好適なN-オキシル化合物は、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトキシム、サリチルオキシム、ベンゾキシム、グリオキシム、ジメチルグリオキシム、アセトン-O-(ベンジルオキシカルボニル)オキシムなどのオキシム類である。
【0070】
これらの化合物は特に適切で、通常は必要である。なぜなら、さもなければ、好ましくは3ヶ月以上、特に6ヶ月以上の所望の貯蔵安定性を達成することができないからである。したがって、UV安定性および、特に、貯蔵安定性が、大幅に高められ得る。
【0071】
さらに、独国特許第102011077248号に記載のように、ヒドロキシル基に対してパラ位で置換したピリミジノールまたはピリジノール化合物が、抑制剤として使用され得る。
【0072】
好適な抑制剤は、1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPO)および1-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オール(TEMPOL)、カテコール、特に好ましくは、tert-ブチル-ピロカテコール、およびBrenzkであり、所望の特性は、官能基(他の方法で使用される反応性希釈剤と比較して)、BHT、およびフェノチアジンによって達成される。
【0073】
抑制剤は、反応樹脂系の所望の特性に応じて、単独で、またはそれらの2つ以上の組み合わせで使用され得る。フェノール系抑制剤と非フェノール系抑制剤との組み合わせは、反応樹脂組成物のゲル化時間の実質的にドリフトのない設定を設定することによっても示されるように、相乗効果を可能にする。
【0074】
抑制剤は、樹脂成分に基づいて、0~5重量%、好ましくは、0.001~3重量%、特に好ましくは、0.01~1重量%の量で、反応樹脂系に含有され得る。いくつかの抑制剤が含有される場合、上記の量は、抑制剤の総量に対応する。
【0075】
本発明の一態様によれば、樹脂成分は、充填剤および/または他の添加剤などの無機添加物質を含有する。
【0076】
使用される充填剤は、従来の充填剤、好ましくは、石英、ガラス、砂、石英砂、石英粉末、磁器、コランダム、セラミック、タルク、ケイ酸(例えば、ヒュームドシリカ)、ケイ酸塩、粘土、二酸化チタン、チョーク、バライト、長石、玄武岩、水酸化アルミニウム、花崗岩、または砂岩などの鉱物または鉱物様充填剤、サーモセットなどの高分子充填剤、石膏、クイックライムまたはセメント(例えば、アルミナセメントまたはポートランドセメント)などの水硬性充填剤、アルミニウム、カーボンブラックなどの金属、および木材、鉱物、もしくは有機繊維など、またはそれらの2つ以上の混合物であり、これらは、粉末として、粒状の形態で、または成形体の形態で添加され得る。充填剤は、任意の所望の形態、例えば、粉末もしくは細粉末として、または、例えば円筒形、環状、球形、小板、ロッド、サドル、または結晶の形態などの成形体として、さもなければ繊維形態(細繊維状充填剤)で存在し得、対応するベース粒子は、好ましくは、10mmの最大直径を有する。ただし、球状の不活性物質(球形)は、好適な、より顕著な補強効果を有する。
【0077】
充填剤は、好ましくは、0.01~90、特に、0.01~60、特に、0.01~50重量%の量で、樹脂成分中に存在する。
【0078】
さらに考えられる添加剤は、任意選択で有機的に後処理されたヒュームドシリカ、ベントナイト、アルキルおよびメチルセルロース、ヒマシ油誘導体などのレオロジー添加剤、フタル酸またはセバシン酸エステルなどの可塑剤、安定剤、帯電防止剤、増粘剤、柔軟剤、硬化触媒、レオロジー助剤、湿潤剤、例えば、それらの混合の制御を改善するために、成分を異なって染色するための染料もしくは、特に、顔料などの着色添加剤、またはそれらの2つ以上の混合物である。例えばアセトンなどの低アルキルケトン、ジメチルアセトアミドなどのジ-低アルキル低アルカノイルアミド、キシレンもしくはトルエンなどの低アルキルベンゼン、フタル酸エステルもしくはパラフィン、または水などの非反応性希釈剤(溶媒)もまた、関連する成分(反応樹脂モルタル、硬化剤)に基づいて、好ましくは、最大30重量%、例えば、1~20重量%の量で存在し得る。
【0079】
本発明の一態様では、存在するラジカル硬化性化合物に加えて、樹脂成分は、水硬性または重縮合性無機化合物、特に、セメントも含有する。そのようなハイブリッドモルタル系が、独国特許出願公開第4231161号に詳述されている。この場合、樹脂成分は、好ましくは、水硬性または重縮合性無機化合物として、セメント、例えば、ポートランドセメントまたはアルミン酸塩セメントを含有し、遷移金属酸化物を含まないか、または低レベルの遷移金属を有するセメントが、特に好ましい。石膏も、それ自体水硬性無機化合物として、またはセメントとの混合物として使用され得る。樹脂成分は、重縮合性無機化合物として、シリカ系重縮合性化合物、特に、ヒュームドシリカなどの可溶性、溶解および/またはアモルファスシリカ含有物質を含み得る。
【0080】
水硬性または重縮合性化合物は、樹脂成分に基づいて、0~30重量%、好ましくは、1~25重量%、特に好ましくは、5~20重量%の量で、反応樹脂系に含有され得る。
【0081】
前述のように、硬化剤組成物の粘度および貯蔵安定性が悪影響を受けなければ、硬化剤成分は、充填剤および/または無機添加剤も含有し得、これらの充填剤および添加剤は、上記のものと同じである。
【0082】
タップネジを使用する際の迅速で信頼性の高い混合を確実にし、タップネジを使用する際の清潔で安全な取り扱いを確実にするために、硬化剤成分だけでなく樹脂成分の粘度もできる限り低く保つ必要があるが、同時に、樹脂成分と硬化剤成分とを混合した後の材料の高粘度を可能にする必要がある。これにより、ユーザーまたは直接作業環境を汚染するリスクなしに、ネジを清潔かつ安全に設定することが可能になる。
【0083】
したがって、特に好適な態様では、樹脂成分は、親水性を有する無機充填剤を含有する。
【0084】
ここで、充填剤の表面は特に、さらに内部の成分も親水性を有し得る。「親水性」とは、充填剤が、水と相互作用するか、または水と反応し得ることを意味する。これにより、樹脂成分と含水硬化剤成分とを混合した直後に、得られる材料が非常に高粘度になり、安定し、したがって、もはやボアホールから流れ出ないことが確実になり、このことは、オーバーヘッド固定または壁固定に特に有利である。特に、無機充填剤の表面は、親水性コーティング、プライマー、またはシールによって修正され得る。
【0085】
親水性を有する無機充填剤の例としては、表面が親水性表面処理剤で処理されているものが挙げられる。そのような親水性表面処理剤の例としては、なかんずく、シラン表面処理剤、チタン酸塩表面処理剤、アルミニウム表面処理剤、アルミン酸ジルコニウム表面処理剤、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコン、およびステアリン酸アルミニウムが挙げられ、中でも、シラン表面処理剤が、好ましい。
【0086】
本発明による多成分反応樹脂系のさらに好適な態様によれば、無機充填剤は、アルカリ土類金属およびその塩、ベントナイト、炭酸塩、シリカ、シリカゲル、アルカリ土類金属のシリカとの塩、およびケイ酸塩からなる群から選択される鉱物、特に、シリカを含む。
【0087】
無機充填剤は、蒸着もしくは燃焼などの乾式法によって、または沈殿などの湿式法によって、生成され得る。市販の製品も、使用され得る。反応樹脂系のレオロジー特性を考慮すると、親水性無機充填剤は、好ましくは、80m2/g超、好ましくは、150m2/g超、およびより好ましくは、150~400m2/gの表面積を有する微細充填剤である。
【0088】
本発明による多成分反応樹脂系のさらに好適な態様によれば、無機充填剤は、酸化ケイ素ベースの充填剤を含む。
【0089】
本発明による多成分反応樹脂系のさらに特に好適な態様によれば、無機充填剤は、シリカを含む。
【0090】
シリカは、任意の特定の種類またはその製造に限定されない。シリカは、天然シリカまたは合成シリカであり得る。
【0091】
シリカは、好ましくは、コロイド状シリカ、湿式化学的に生成されたシリカ、例えば、沈降シリカ、シリカゲル、シリカゾル、例えば、アーク、プラズマ内で、または火炎加水分解により生成される、発熱性または熱的に生成されるシリカ、シリカスモーク、シリカガラス(クォーツガラス)、溶融シリカ(溶融クォーツ)、および珪藻土の形態の放散虫および珪藻の骨格からなる群から選択されるアモルファスシリカである。
【0092】
親水性無機充填剤の割合は、多成分反応樹脂系の所望の特性に依存する。親水性無機充填剤は、通常、各場合における樹脂成分に基づいて、0~15重量%、好ましくは、0.1~10重量%、特に好ましくは、1~7重量%の範囲の量で使用され、総充填剤含有量は、上記の範囲内、すなわち、樹脂成分に基づいて、0.01~90、特に、0.01~60、特に、0.01~50重量%の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下に記載される実施形態では、各場合における所与の量(重量%)は、個々の成分、すなわち、特に断りのない限り、樹脂成分および硬化剤成分に関連する。実際の量は、各成分の重量%が合計で100になるようなものである。
【0094】
本発明による硬化剤組成物の好適な実施形態では、該組成物は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0095】
この第1の実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。
【0096】
本発明による硬化剤組成物のさらに好適な実施形態では、該組成物は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-膨潤性フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0097】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。
【0098】
本発明による硬化剤組成物のさらにより好適な実施形態では、該組成物は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-膨潤性ケイ酸アルミニウムマグネシウム、またはケイ酸アルミニウムナトリウムに基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0099】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。
【0100】
本発明による硬化剤組成物の非常に特に好適な実施形態では、該組成物は、
-固体過酸化物、特に、過酸化ジベンゾイルである少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-膨潤性フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤としてのベントナイトと、を含有する。
【0101】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。
【0102】
本発明による硬化剤組成物は、反応樹脂系の硬化剤成分として使用され得る。
【0103】
そのような反応樹脂系の第1の好適な実施形態では、樹脂成分は、
-少なくとも1つのラジカル硬化性化合物と、
-少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0104】
この第1の実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。より好適な態様では、反応樹脂は、抑制剤によって安定化され、および/または樹脂成分と硬化剤成分との混合物のゲル化時間は、任意選択のさらなる抑制剤によって調整される。この第1の実施形態のさらに好適な態様では、樹脂成分は、
-10~99.99重量%、好ましくは、15~97重量%、特に好ましくは、30~95重量%の少なくとも1つのラジカル硬化性化合物と、
-0.01~90重量%、好ましくは、3~85重量%、特に好ましくは、5~70重量%の少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-2~50重量%、好ましくは、5~45重量%、特に好ましくは、10~40重量%の過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-50~98重量%、好ましくは、55~95重量%、特に好ましくは、60~90重量%の水と、
-0.15~5重量%、好ましくは、1~3重量%のフィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0105】
反応樹脂系のさらに好適な第2の実施形態では、樹脂成分は、結果として、
-ラジカル硬化性化合物として、少なくとも1つの反応樹脂と、少なくとも1つの反応性希釈剤との少なくとも1つの反応脂混合物と、
-少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0106】
この第2の実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第2の実施形態のさらに好適な態様では、樹脂成分は、
-ラジカル硬化性化合物として、混合物の85~99.99重量%、好ましくは、90~99.9重量%、特に好ましくは、93~99重量%の、該混合物の総重量に基づいて、0~99.9重量%、好ましくは、20~80重量%の少なくとも1つの反応樹脂と、該混合物の総重量に基づいて、0~99.99重量%、好ましくは、80~20重量%の少なくとも1つの反応性希釈剤と、からなる反応樹脂混合物と、
-0.01~15重量%、好ましくは、0.1~10重量%、特に好ましくは、1~7重量%の少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-硬化剤として、2~50重量%、好ましくは、5~45重量%、特に好ましくは、10~40重量%の少なくとも1つの過酸化物と、
-50~98重量%、好ましくは、55~95重量%、特に好ましくは、60~90重量%の水と、
-0.15~5重量%、好ましくは、1~3重量%のフィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0107】
反応樹脂系のさらに好適な第3の実施形態では、樹脂成分は、
-ラジカル硬化性化合物として、少なくとも1つの反応樹脂と、反応性希釈剤との反応樹脂混合物と、
-少なくとも1つの抑制剤と、
-少なくとも1つの促進剤と、
-少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0108】
この第3の実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第3の実施形態のさらに好適な態様では、樹脂成分は、
-ラジカル硬化性化合物として、混合物の85~99.99重量%、好ましくは、90~99.9重量%、特に好ましくは、93~99重量%の、該混合物の総重量に基づいて、0~99.9重量%、好ましくは、20~80重量%の少なくとも1つの反応樹脂と、該混合物の総重量に基づいて、0~99.99重量%、好ましくは、80~20重量%の少なくとも1つの反応性希釈剤と、からなる反応樹脂混合物と、
-0.011~5重量%、好ましくは、0.01~3重量%、特に好ましくは、0.1~1重量%の少なくとも1つの無機充填剤と、
-0.01~10重量%、好ましくは、0.5~5重量%、より好ましくは、1~3重量%の少なくとも1つの促進剤と、
-0.001~5重量%、好ましくは、0.01~3重量%、より好ましくは、0.1~1重量%の少なくとも1つの抑制剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-硬化剤として、2~50重量%、好ましくは、5~45重量%、特に好ましくは、10~40重量%の少なくとも1つの過酸化物と、
-50~98重量%、好ましくは、55~95重量%、特に好ましくは、60~90重量%の水と、
-0.15~5重量%、好ましくは、1~3重量%のフィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0109】
この実施形態の好適な態様では、樹脂成分と硬化剤成分との混合物の粘度は、混合直後に混合物が安定するように、無機添加剤によって調整される。反応樹脂系のさらに好適な第4の実施形態では、樹脂成分は、結果として、
-ラジカル硬化性化合物として、少なくとも1つの反応樹脂と、反応性希釈剤とからなる、少なくとも1つの反応樹脂混合物と、
-少なくとも1つの抑制剤と、
-少なくとも1つの促進剤と、
-親水性を有する少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
硬化剤成分は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0110】
この第4の実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第4の実施形態のさらに好適な態様では、反応樹脂系は、第3の態様で与えられる量でより詳細に指定される成分を含有する。
【0111】
反応樹脂系の特に好適な第5の実施形態では、樹脂成分は、
-反応樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく少なくとも1つの化合物と、
-少なくとも1つの反応性希釈剤と、
-少なくとも1つの抑制剤と、
-少なくとも1つの促進剤と、
-親水性を有する少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
樹脂成分は、
-固体過酸化物である少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-膨潤性フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤として、を含有する。
【0112】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第5の実施形態のさらに好適な態様では、反応樹脂系は、第3の態様で与えられる量でより詳細に指定される成分を含有する。
【0113】
反応樹脂系のより特に好適な第6の実施形態では、樹脂成分は、
-ウレタン(メタ)アクリレート反応樹脂に基づく少なくとも1つの化合物と、
-少なくとも1つの反応性希釈剤と、
-少なくとも1つの抑制剤と、
-少なくとも1つの促進剤と、
-親水性を有する少なくとも1つの無機充填剤と、を含有し、
樹脂成分は、
-固体過酸化物、特に、過酸化ジベンゾイルである少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-膨潤性ケイ酸アルミニウムマグネシウムまたはケイ酸アルミニウムナトリウムに基づくレオロジー添加剤と、を含有する。
【0114】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第6の実施形態のさらに好適な態様では、反応樹脂系は、第3の態様で与えられる量でより詳細に指定される成分を含有する。
【0115】
反応樹脂系の特に好適な第7の実施形態では、樹脂成分は、
-反応樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく少なくとも1つの化合物と、
-少なくとも1つの反応性希釈剤と、
-少なくとも1つの抑制剤と、
-少なくとも1つの促進剤と、
-親水性を有する無機充填剤として、親水性を有する少なくとも1つの無機充填剤、親水性ヒュームドシリカと、に付着し、
樹脂成分は、
-固体過酸化物、特に、過酸化ジベンゾイルである少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩ベースのレオロジー添加剤としてのベントナイトと、を含有する。
【0116】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第7の実施形態のさらに好適な態様では、反応樹脂系は、第3の態様で与えられる量でより詳細に指定される成分を含有する。
【0117】
反応樹脂系の特に好適な第8の実施形態では、樹脂成分は、
-反応樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートに基づく少なくとも1つの化合物と、
-少なくとも1つの反応性希釈剤と、
-少なくとも1つの抑制剤と、
-少なくとも1つの促進剤と、
-親水性を有する無機充填剤としての少なくとも1つの親水性ヒュームドシリカと、に付着し、
樹脂成分は、
-固体過酸化物、特に、過酸化ジベンゾイルである少なくとも1つの硬化剤と、
-水と、
-フィロケイ酸塩ベースのレオロジー添加剤としてのベントナイトと、を含有する。
【0118】
この実施形態の好適な態様では、固体過酸化物は、水中に懸濁している。この第8の実施形態のさらに好適な態様では、反応樹脂系は、第3の態様で与えられる量でより詳細に指定される成分を含有する。
【0119】
本発明によれば、フィロケイ酸塩に基づくレオロジー添加剤は、多成分反応樹脂系、典型的には、2成分系で使用される。この多成分系は、カートリッジ系またはフィルムパウチ系の形態であり得る。反応樹脂系は、穴内のタップネジで使用される。穴は、天然または非天然起源のくぼみ、すなわち、亀裂、隙間、ボアホールなどであり得る。これらは、典型的にはボアホール、特に、様々な基材、特にコンクリート、気泡コンクリート、レンガ積み、砂石灰レンガ、砂岩、天然石、ガラスなどに基づくものなどの鉱物基板、および鋼製のものなどの金属基板のボアホールである。
【0120】
本発明に従って、膨潤性フィロケイ酸塩がレオロジー添加剤として使用される反応樹脂系は、本発明によれば、穴内のタップネジで使用される。穴は、天然または非天然起源のくぼみ、すなわち、亀裂、隙間、ボアホールなどであり得る。これらは、典型的にはボアホール、特に、様々な基材、特にコンクリート、気泡コンクリート、レンガ積み、石灰岩、砂岩、天然石、ガラスなどに基づくものなどの鉱物基板、および鋼製のものなどの金属基板のボアホールである。
【0121】
膨潤性フィロケイ酸塩が、本発明に従ってレオロジー添加剤として使用される反応樹脂組成物は、この添加剤を含有する成分の粘度が低いことと、レオロジー添加剤を使用しない実施形態、またはフィロケイ酸塩を含有しない他のレオロジー添加剤を用いる実施形態と比較して、成分の貯蔵安定性が高いことと、を特徴とする。
【0122】
本発明は、いくつかの実施例および比較例を参照して、以下でより詳細に説明される。すべての実施例は、特許請求の範囲の技術的範囲内に含まれる。しかしながら、本発明は、実施例に示される特定の態様に限定されない。
【実施例】
【0123】
実施例および参考(略語の説明)で使用された成分のリスト、ならびにそれらの商品名および供給元は、
Aerosil(登録商標)200: 親水性ヒュームドシリカ、Evonik(CAS番号:112945-52-5、比表面積200m2/g、平均粒度0.2~0.3μm(骨材))、
Optigel-CK: 活性化フィロケイ酸塩(ベントナイト)、BYK-Chemie GmbH(比重2.6g/cm3、かさ密度550~750kg/m3、含水率10%±2%)、
Optigel-WX: キサンタンガムで活性化されたフィロケイ酸塩(ベントナイト)、BYK-Chemie GmbH(比重2.2g/cm3、かさ密度500~650kg/m3、含水率最大13%)、
Xanthan gum XGT TNAS: キサンタンガム、Jungbunzlauer Austria AG(CAS番号11138-66-2)、
BP20SAQ: 過酸化ジベンゾイル20%、水中懸濁液、United Initiators GmbH & Co. KG。
【0124】
表1に示されるように、過酸化ベンゾイルの20%水性懸濁液の異なる濃度の異なる増粘剤との混合物が、最初に過酸化ベンゾイル懸濁液を導入し、関連する添加剤を添加することによって、調製された。混合物が、最初に手で予備撹拌され、次いで、増粘剤が十分に組み込まれるまで、以下のプログラムに従ってスピードミキサー(High Speed Mixer DAC 400 FVZ、Hauschild & Co.KG)で混合された。
ミキシングプログラム: 1000rpmで10秒、
2500rpmで20秒、
1500rpmで15秒
【0125】
硬化剤-増粘剤混合物(硬化剤組成物)の動粘度の測定
本発明による硬化剤-増粘剤混合物(硬化剤組成物)の動粘度(表1)が、プレートコーン測定システム(温度制御ユニットUTC-20を備えたHAAKE(登録商標)RheoStress(登録商標)RS600、測定形状C20/1°Ti L01 026)を使用して、DIN 53019に従って測定された。コーンの直径は、20mmであり、角度は、1°であり、ギャップは、0.052mmであった。測定は、23℃の温度で、25rpmの一定のせん断速度で実施された。測定時間は、180秒であった。このせん断速度を達成するために、サンプルが、最初に30秒間23℃に保持され、次いで、120秒の持続時間を有する0~25rpmのランプが、上流に接続された。これらはニュートン液体であるため、測定ステージにわたる線形評価が、100/秒の一定のせん断速度で測定ステージにわたって行われ、粘度が決定された。各場合において、3回の測定が行われ、平均値がそれぞれ、表1に示されている。
【表1】
【表2】
【0126】
表1に示される動粘度の測定結果は、本発明に従って新たに調製された硬化剤組成物が、使用量に応じて136mPa・s~249mPa・sの範囲の粘度を有し、したがって依然として流動性を有したことを示す。40℃で16週間貯蔵後、過酸化物の沈降は観察されず、硬化剤組成物は、増粘剤含有量が4重量%であっても、すべて流動性を有した。
【0127】
表2に示される動粘度の測定結果は、新たに調製された比較硬化剤組成物が、使用される増粘剤の量に応じて、場合によっては依然として流動性を有することを示す。しかしながら、比較硬化剤組成物の一部は、もはや流動性を有しないほど高い粘度を有した。+40℃で16週間貯蔵後、比較硬化剤組成物の一部は、非常に増粘され、固体過酸化物の沈降が、観察された。他の部分では、過酸化物の沈降が、観察された。したがって、貯蔵安定性は、提供されなかった。
【0128】
表1および2に示される、本発明による硬化剤組成物(表1)および比較硬化剤組成物(表2)の動粘度の測定結果は、本発明による硬化剤組成物が、比較硬化剤組成物と比較して、貯蔵後も流動性を有したままであり、沈降を示さなかったことを示す。
【0129】
したがって、水性過酸化物懸濁液を使用する場合に成分の貯蔵安定性を確保し得る硬化剤組成物を開発することが可能であった。
【国際調査報告】