(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】既存の義歯を使用して義歯をデジタル的に設計するための方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/34 20060101AFI20221128BHJP
A61C 13/007 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61C13/34 Z
A61C13/007
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518928
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020076709
(87)【国際公開番号】W WO2021058643
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508158023
【氏名又は名称】3シェイプ アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ フィスカ
(57)【要約】
既存の義歯を使用して義歯をデジタル的に設計するための方法。開示されるのは、いわゆる複製義歯の設計を促進するためのコンピュータ実施方法及びユーザインターフェースであり、これにより、既存の義歯は、適合度、審美性、又は他のパラメータを改善するために既存の義歯に対して変更を加えた後に再現される。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル歯科模型において歯牙模型をグループ化するためのデジタルモニタに提示されるユーザインターフェースであって、前記ユーザインターフェースは、第1の3次元作業空間内での前記デジタル歯科模型のレンダリングを含む第1のユーザインターフェースセッション、及びツールバーであって、前記ツールバー上に少なくとも1つのグループ化ボタンを備える、前記ツールバーを含み、前記少なくとも1つのグループ化ボタンを作動させると、少なくとも1つの閉じたスプラインが生成されて、前記デジタル歯科模型の少なくとも1つの歯牙模型と歯肉模型との境界において少なくとも1つの歯を取り囲む、ユーザインターフェース。
【請求項2】
複数のグループ化ボタンが、前記ツールバー内に配置され、前記グループ化ボタンの各々が作動されると、以下の動作:
複数の閉じたスプラインを生成することであって、各スプラインが前記デジタル歯科模型の1つの歯牙模型を取り囲む、生成すること、
前記デジタル歯科模型のすべての歯牙模型を取り囲む1つの閉じたスプラインを生成すること、
複数の閉じたスプラインを生成することであって、各スプラインが前記デジタル歯科模型の歯牙模型のグループを取り囲む、生成すること、及び/又は
前記少なくとも1つの閉じたスプラインのうちの1つのスプラインによって取り囲まれるべき前記デジタル歯科模型の1つ以上の歯牙模型を選択するようにユーザに促すこと
のうちの1つ以上を提供する、請求項1に記載のユーザインターフェース。
【請求項3】
前記少なくとも1つの歯牙模型が、義歯歯牙模型であり、前記デジタル歯科模型が、前記義歯歯牙模型及び義歯床模型を含む適合された既存の義歯模型である、請求項1又は2に記載のユーザインターフェース。
【請求項4】
第2の3次元作業空間内での前記デジタル歯科模型のレンダリングを含む第2のユーザインターフェースセッションをさらに含み、前記デジタル歯科模型が、前記少なくとも1つの閉じたスプラインに基づいて、義歯床模型及び前記少なくとも1つの歯牙模型へとセグメント化される、請求項1~3のいずれか一項に記載のユーザインターフェース。
【請求項5】
前記少なくとも1つの閉じたスプラインを、前記デジタル歯科模型を前記義歯床模型及び前記少なくとも1つの歯牙模型へと切断するための切断スプラインとして使用することにより、前記デジタル歯科模型が、前記少なくとも1つの閉じたスプラインに基づいて前記義歯床模型及び前記少なくとも1つの歯牙模型へとセグメント化される、請求項4に記載のユーザインターフェース。
【請求項6】
義歯床のデジタル模型及び義歯歯牙の少なくとも1つのデジタル模型を含む、義歯のデジタル模型を生成するためのコンピュータ実施方法であって、順番に、
適合された既存の義歯のデジタル模型を獲得するステップと、
前記適合された既存の義歯のデジタル模型を中間義歯床模型及び少なくとも1つの中間義歯歯牙模型へとセグメント化するステップと、
前記少なくとも1つの中間義歯床模型の解剖学的構造を修正するステップと、
前記中間義歯床模型と前記少なくとも1つの中間義歯歯牙模型との間の結合方式を設計するステップであって、前記結合方式が、前記中間義歯床模型に形成される少なくとも1つの凹部、及び前記少なくとも1つの凹部と一致するように成形される前記少なくとも1つの中間義歯歯牙模型から延びる突出部を備える、ステップと、
前記中間義歯床模型に基づいて最終義歯床模型のデジタルデータファイルを生成し、前記少なくとも1つの中間義歯歯牙模型に基づいて少なくとも1つの最終義歯歯牙模型のデジタルデータファイルを生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記適合された既存の義歯のデジタル模型を獲得する前記ステップは、前記適合された既存の義歯をスキャンすることを含む、請求項6に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
セグメント化する前記ステップは、前記適合された既存の義歯のデジタル模型内の前記適合された既存の義歯の各歯をセグメント化することを含む、請求項6又は7に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
セグメント化する前記ステップは、前記適合された既存の義歯のデジタル模型内の前記適合された既存の義歯の少なくとも2つの歯のグループをセグメント化することを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの中間義歯床模型の解剖学的構造を修正する前記ステップは、仮想乳頭を彫刻することを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
結合方式を設計する前記ステップは、前記少なくとも1つの凹部と前記対応する突出部との間のセメント間隙を、前記少なくとも1つの凹部のデジタル模型と前記少なくとも1つの突出部のデジタル模型との間のオフセットの形状で、提供することを含む、請求項6~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記最終義歯床模型の前記デジタルデータファイル及び前記少なくとも1つの最終義歯歯牙模型の前記デジタルデータファイルを、義歯床及び少なくとも1つの義歯歯牙を製造し、前記義歯床及び前記少なくとも1つの義歯歯牙を接着剤によって組み立てるための3D製造プロセスに提供することをさらに含む、請求項6~11のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法を含む義歯を製造するための方法。
【請求項13】
前記3D製造プロセスは、印刷及びフライス加工を伴う、請求項12に記載の義歯を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、いわゆる複製義歯の設計を促進するためのコンピュータ実施方法及びユーザインターフェースに関し、これは、典型的には、既存の義歯が、適合度、審美性、又は他のパラメータを改善するために既存の義歯に対して変更を加えた後に、再現される、方法を伴う。
【背景技術】
【0002】
デジタル歯科の進歩により、スキャン、設計、及び製造などのデジタル処理を使用して義歯を設計及び製造することは、より魅力的になっている。
【0003】
義歯設計及び製造の1つの態様は、いわゆる複製義歯である。これは、患者が、概してうまく機能する、例えば、噛み合わせ及び審美性が良好である、義歯を既に所持しているプロセスに関する。しかしながら、何らかの理由で、患者は新しい義歯を必要とする場合がある。典型的には、これは、無歯患者にはよくある骨後退に起因し得る。骨後退は、歯肉と義歯との適合度の低減を引き起こすという結果を招き、故に、義歯の新しい歯肉面設計が所望される。
【0004】
義歯の設計及び製造のデジタル/コンピュータ実施方法を提供することは、大きな興味の対象であり、以下において、そのような方法、特に、改善された複製義歯を可能にするプロセスが、開示される。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様において、本明細書に開示されるのは、義歯床のデジタル模型及び義歯歯牙の少なくとも1つのデジタル模型を含む、義歯のデジタル模型を生成するためのコンピュータ実施方法であり、本ステップは、順番に、
適合された既存の義歯のデジタル模型を獲得するステップと、
適合された既存の義歯のデジタル模型を中間義歯床模型及び少なくとも1つの中間義歯歯牙模型へとセグメント化するステップと、
中間義歯床模型の解剖学的構造(anatomy)を修正するステップと、
中間義歯床模型と少なくとも1つの中間義歯歯牙模型との間の結合方式を設計するステップであって、結合方式が、中間義歯床模型に形成される少なくとも1つの凹部、及び少なくとも1つの凹部と一致するように成形される少なくとも1つの中間義歯歯牙模型から延びる突出部を備える、ステップと、
中間義歯床模型に基づいて最終義歯床模型のデジタルデータファイルを生成し、少なくとも1つの中間義歯歯牙模型に基づいて少なくとも1つの最終義歯歯牙模型のデジタルデータファイルを生成するステップと、を含み得る。
【0006】
上記方法は、上のステップの順番が維持されるとき、特に中間義歯床模型の解剖学的構造が、結合方式が設計される前に修正されるときに、特に有利であるが、それは、この方法が、概して望ましくないアンダーカットを防ぐ、又は少なくとも低減することにより、頑丈な結合方式を確実にしながら、改善された審美を可能にするためである。
【0007】
本説明において、用語「順番」は、ステップの特定の順番が特定の順序で所望されるときに使用されるが、実施形態において、追加のステップが、列挙されたステップの間に発生し得る。例えば、上の態様において、ステップの順番は、互いに対して維持される必要があり、すなわち、
1.既存の義歯のデジタル模型を獲得する、
2.既存の義歯模型を義歯床模型及び義歯歯牙模型へとセグメント化する、
3.義歯床模型の解剖学的構造を修正する、
4.義歯床模型と義歯歯牙模型との間の結合方式を設計する、及び、
5.義歯床及び義歯歯牙のデジタルデータファイルを生成する。
【0008】
代替の態様において、ステップは、順番である必要はなく、入れ替えられ得る。
【0009】
用語「既存の」義歯は、患者が以前から所持する、又は使用している既存の義歯を指す。既存の義歯は、患者が義歯の全体的性能には満足しているが、何らかの改善が所望されるものであり得る。
【0010】
ひいては既存の義歯は適合される。義歯を適合させることにより、義歯技工士は、典型的には、既存の義歯に対して改善を行う。義歯技工士は、患者に対して改善を試験し得る。例えば、骨後退に起因して歯茎と義歯との適合が低下した場合、義歯技工士は、アルギン酸、シリコーン、又は同様の印象材で歯茎接面を埋めるバイトプレートとして既存の義歯を使用し、患者に噛むように求め得、これが既存の義歯における患者の現在の歯茎外形の印象を生成する。
【0011】
他の適合は、例えば、壊れた義歯、例えば壊れた歯を修復することであり得る。適合自体は、いかなる物理的修正もすることなく、単に既存の義歯の適合を検証することであり得る。他の修正は、デジタル的に、又は製造中に行われ得、例えば、ユーザは、既存の義歯の適合には満足しているが、より本物そっくりの歯又は歯肉色を望む場合があり、これは代替の材料又は製作方法によって提供され得る。
【0012】
適合された既存の義歯は、このとき、適合された既存の義歯のデジタル模型を提供するために、異なるスキャン技術を使用してスキャンされ得る。
【0013】
適合の別のやり方は、患者がどういう訳か義歯を紛失したが、既存の(紛失した)義歯のデジタルデータ記録が存在するか、又は歯科医から復元される場合であり得る。この場合、過去の義歯ファイルは、所望の適合及び適合された既存の義歯模型の新規デジタルデータセットの作成のために使用され得る、既存の義歯の一時的なバージョン(いわゆる試適)を製造するために使用される。そのような製造は、過去の型板義歯を適切な品質で3D印刷することであり得る。
【0014】
さらには、用語「適合された」は、既存の義歯に関連して常に使用されるわけではないが、本明細書内で既存の義歯に言及するとき、それは、別のことが具体的に記載されないかぎり、適合された既存の義歯への言及であるということを理解されたい。
【0015】
既存の義歯のデジタル模型を獲得するステップは、故に、既存の義歯をスキャンすることを含み得る。これは、従来の歯科技工室スキャナを使用することによって行われ得、既存の義歯の両側がスキャンされ、完全なデジタル模型を形成するために合併される。別のやり方は、口腔内スキャナを使用し、完全な模型を獲得するために360°から既存の義歯を単純にスキャンすることであり得る。
【0016】
代替的に、デジタル模型を獲得するステップは、本明細書に開示されるコンピュータ実施方法にデジタル模型のデジタルデータファイルをロードすることを単に含み得る。
【0017】
本開示において、模型への言及は、コンピュータ処理ユニット/デバイスのメモリ内に存在するデジタルコンピュータ模型を示唆する。したがって、模型が物理的又は製造模型であることが具体的に記載されない限り、本明細書で言及されるような模型は、典型的には3次元模型を形成するデータセットとして記憶される、デジタル模型である。
【0018】
同じ文脈で、そのような模型に対してなされるいかなる行為、修正、又は設計も、本質的にデジタルであり、例えばユーザインターフェースを通じて、デジタル設計環境で実施される。
【0019】
コンピュータ実施方法における適合された既存の義歯のデジタル模型では、デジタル模型は、中間義歯床模型及び少なくとも1つの中間義歯歯牙模型へとセグメント化される。
【0020】
セグメント化は、異なるやり方で行われ得る。1つの実施形態において、ユーザは、既存の義歯模型の各歯を識別し、コンピュータ実施方法は、形状認識アルゴリズム又は機械学習を適用することによって、この識別においてユーザを支援し得る。
【0021】
セグメント化はまた、完全に自動的に行われ得、各歯は、高度な訓練されたニューラルネットワーク、機械学習、深層学習などにより、識別及びセグメント化される。
【0022】
コンピュータ実施方法は、その後、既存の義歯模型の義歯歯牙(複数可)と義歯床との境界を識別する歯茎-歯牙境界スプラインを識別し得る。境界スプラインは、ユーザによって手動で決定され得、歯牙及び歯肉境界を決定するためにニューラルネットワークを使用するセグメント化サービスもまた、境界スプラインを決定するために使用され得、既存の義歯模型を形成するメッシュ上のエッジ検出、又は3次元デジタル模型上のエッジ及び/若しくは限界線を決定するための他の既知の手段が使用され得る。
【0023】
別の実施形態において、コンピュータ実施方法は、模型を咬合平面に垂直の複数の2D断面要素へとスライスすることを含むプロセスを実施する。これらの複数の断面スライスは、各スライスについて歯牙/歯茎境界点を位置特定するために曲率解析にかけられる。点は、模型にマッピングされ、境界スプラインを形成するために相互接続される。
【0024】
歯茎-歯牙境界スプラインは、その後、所望される場合は手動でさらに修正され得る。
【0025】
歯茎-歯牙境界スプラインは、各歯について生成され得、義歯床から歯をセグメント化するために使用され得、その結果として、各歯が別個の義歯歯牙模型を形成する。すなわち、義歯床模型をセグメント化するステップは、適合された既存の義歯のデジタル模型内の既存の義歯の各歯をセグメント化することを含む。
【0026】
代替的に、歯茎-歯牙境界スプラインは、歯のグループのために代替的に生成され得、これにより、歯のグループが、単一の義歯歯牙模型へセグメント化される。これは、各々がいくつかの歯を含むいくつかの義歯歯牙模型を提供し得る。例えば、前義歯歯牙は、1つの前義歯歯牙模型にグループ化され得、後方歯は、第1の後方義歯歯牙模型及び第1の後方義歯歯牙模型と反対の側の第2の後方義歯歯牙模型にグループ化され得る。
【0027】
さらに代替の実施形態において、1つの歯茎-歯牙境界スプラインがすべての歯について生成され、これにより、1つの単一義歯歯牙模型が歯に対して生成される。
【0028】
生成された歯茎-歯牙境界スプラインは、次いで、既存の義歯模型を中間義歯床模型及び1つ以上の中間義歯歯牙模型へと分けるために使用される。
【0029】
2つ以上の歯を含む義歯歯牙模型へとセグメント化する1つの利点は、最終の製造された構造が、より強力でより機械的に安定していることであり、また相対配向が維持され、これが、最終の製造された義歯床における最終の製造された義歯歯牙の配置を促進及び支援することである。
【0030】
しかしながら、いくつかの応用において、単一の歯をセグメント化するという選択肢は、すべての歯を含む1ユニットブリッジセグメントの場合に単一の挿入方向に従う代わりに、個々の挿入方向が使用され得ることから、解剖学的彫刻(anatomical sculpting)ステップにおいてさらなる設計自由度を提供し得る。
【0031】
加えて、個々の歯のためにセグメントを設計する柔軟性は、歯が、例えば材料のブロックからフライス加工される場合、製造中のより最適な材料使用を可能にし得る。
【0032】
したがって、1つの実施形態において、デジタル模型をセグメント化するステップは、適合された既存の義歯のデジタル模型内の適合された既存の義歯の少なくとも2つの歯のグループをセグメント化することを含む。
【0033】
中間義歯床模型及び少なくとも1つの中間義歯歯牙模型へとセグメント化された既存の義歯のデジタル模型では、模型は、個々に修正され得る。
【0034】
好ましくは、中間義歯床模型の解剖学的構造(anatomy)は、修正される。例えば、乳頭が、彫刻/修正され得る。乳頭は、歯の間の歯間歯肉である。
【0035】
歯肉歯槽粘膜境、歯肉溝などの他の歯肉解剖学的構造が、追加的又は代替的に、修正され得る。代替的又は追加的に、中間義歯歯牙模型もまた、必要に応じて修正され得る。
【0036】
先に論じられるように、模型の解剖学的構造が修正された後に、義歯床模型と義歯歯牙模型との間の結合機構を設計することが好ましい。
【0037】
中間義歯床模型と少なくとも1つの中間義歯歯牙模型との間の結合方式は、好ましくは、義歯床模型内の少なくとも1つの凹部及び少なくとも1つの中間義歯歯牙模型の各々から延びる突出部として設計され、各突出部は、義歯床模型に形成される対応する凹部と適合/一致するように成形される。
【0038】
1つの実施形態において、結合方式を設計するステップはまた、少なくとも1つの凹部と対応する突出部との間のセメント間隙を、少なくとも1つの凹部のデジタル模型と少なくとも1つの突出部のデジタル模型との間のオフセットの形状で、提供することを含み得る。
【0039】
1つの実施形態において、凹部及び突出部は、デジタル形状を押し出すための基準として歯茎-歯牙境界スプラインを使用して形成される。押し出しの方向は、自動的に決定され得るが、ユーザは、義歯歯牙模型のいわゆる挿入方向を識別することによって押し出し方向を決定してもよい。したがって、異なる挿入方向、以て押し出し方向が、いくつかの義歯歯牙模型が存在する実施形態のために、規定され得る。
【0040】
そのような押し出しは、アンダーカットが防止されるという利点も提供し、特に、結合方式を設計するステップが義歯床模型又は義歯歯牙模型の解剖学的構造を修正する前に実施される態様においては、いかなるそのような修正も、最終物理的義歯床及び最終物理的義歯歯牙を最終物理的義歯へと組み立てる能力に影響を及ぼさない。
【0041】
押し出しに続いて、少なくとも1つの突出部は、所望される場合さらに修正され得る。ユーザは、床の材料厚などの設計制約を考慮しながら製造後に物理的義歯床内に歯をしっかりと固定するために、結合深さ、結合角度、丸みの半径、及び歯底(fillet)の丸みなど、突出部を成形するためにさらなる結合設定を指定し得る。これらの設定は、最適化アルゴリズムから自動的に提供され得る。
【0042】
凹部及び突出部は、同時に設計され得る。代替的に、突出部が設計され得、続いて凹部が、義歯床模型から突出部模型を減算することによって生成され得る。これは、例えば、当該技術分野において一般的に知られるブール演算によって行われ得る。追加の調節が、接着剤/セメント空間及びドリル補償を説明するように適用され得る。
【0043】
別の態様において、本明細書に開示されるコンピュータ実施方法を含む義歯を製造するための方法が本明細書に開示され、最終義歯床模型のデジタルデータファイル及び少なくとも1つの最終義歯歯牙模型のデジタルデータファイルは、義歯床及び少なくとも1つの義歯歯牙を製造し、義歯床及び少なくとも1つの義歯歯牙を接着剤などによって組み立てるための、印刷又はフライス加工などの3D製造プロセスに提供される。
【0044】
さらなる態様において、デジタル歯科模型において歯牙模型をグループ化するためのデジタルモニタに提示される第1のユーザインターフェースセッションを提示するユーザインターフェースが開示され、第1のユーザインターフェースセッションは、3次元作業空間内でのデジタル歯科模型のレンダリング、及びツールバーであって、ツールバー上に少なくとも1つのグループ化ボタンを備える、ツールバーを含み、少なくとも1つのグループ化ボタンを作動させると、少なくとも1つの閉じたスプラインが生成されて、デジタル歯科模型の少なくとも1つの歯牙模型と歯肉模型との境界において少なくとも1つの歯を取り囲む。
【0045】
1つの実施形態において、ユーザインターフェースは、ツールバー内に配置される複数のグループ化ボタンを備え得、グループ化ボタンの各々が作動されると、以下の動作:
複数の閉じたスプラインを生成することであって、各スプラインがデジタル歯科模型の1つの歯牙模型を取り囲む、生成すること、
デジタル歯科模型のすべての歯牙模型を取り囲む1つの閉じたスプラインを生成すること、
複数の閉じたスプラインを生成することであって、各スプラインがデジタル歯科模型の歯牙模型のグループを取り囲む、生成すること、及び/又は少なくとも1つの閉じたスプラインのうちの1つのスプラインによって取り囲まれるべきデジタル歯科模型の1つ以上の歯牙模型を選択するようにユーザに促すこと、のうちの1つ以上を提供する。
【0046】
1つの実施形態において、少なくとも1つの歯牙模型は、義歯歯牙模型であり、デジタル歯科模型は、義歯歯牙模型及び義歯床模型を含む適合された既存の義歯模型である。
【0047】
さらなる実施形態において、第2のユーザインターフェースセッションは、3次元作業空間内でのデジタル歯科模型のレンダリングをさらに含み、デジタル歯科模型は、少なくとも1つの閉じたスプラインに基づいて、義歯床模型及び少なくとも1つの歯牙模型へとセグメント化される。
【0048】
例えば、デジタル歯科模型は、少なくとも1つの閉じたスプラインを、デジタル歯科模型を義歯床模型及び少なくとも1つの歯牙模型へと切断するための切断スプラインとして使用することにより、少なくとも1つの閉じたスプラインに基づいて義歯床模型及び少なくとも1つの歯牙模型へとセグメント化され得る。
【0049】
本開示の上記及び/又は追加の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して、本開示の実施形態の以下の例証的かつ非限定的な詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の上側スキャンステップの間のスキャンセッションの第1のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図2】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の下側スキャンステップの間のスキャンセッションの第2のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図3】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の間の併合を伴う第3のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図4】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の歯牙識別ステップの間の第4のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図5】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法のセグメント化ステップの間の第5のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図6】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の間のグループ化を伴う第6のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図7】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の第1の彫刻ステップの間の第7のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図8】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の第2の彫刻ステップの間の第8のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図9】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の結合機構ステップの間の第9のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図10】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の結合機構ステップの間の第10のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図11】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の間のブール減算を伴う第11のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【
図12】新規義歯のデジタル設計を構築するための方法の間の模型終了処理を伴う第12のユーザインターフェースセッションの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明において、本開示がどのように実践され得るかを例証により示す、添付の図面に対して言及がなされる。
【0052】
図1~
図12は、本明細書に開示されるような方法の例を示し、適合された既存の義歯は、3D印刷又はフライス加工を使用して製造される準備の整った新規義歯のデジタル設計を構築するために使用される。
【0053】
図1~
図3は、適合された既存の義歯のデジタル模型がどのように獲得され得るかを示す。
【0054】
スキャンセッションの第1のユーザインターフェースセッション1000は、
図1に示される。歯12を含む既存の義歯9の咬合側10は、上側スキャンステップ1001の間にスキャンされた。
【0055】
咬合側スキャン10は、トリミングのための閉じた線1004など、トリムツール1003を使用して、トリムステップ1002においてトリミングされている。
【0056】
咬合側スキャンのトリミング後、スキャンセッションからの歯肉側スキャン11が、
図2に示されるような下側スキャンステップ1006において第2のユーザインターフェースセッション1005に提供される。
【0057】
印象材13は、既存の義歯9に使用されており、
図1及び
図2に関して開示されるようにスキャンされている義歯9である適合された既存の義歯を提供するために、患者の現在の歯茎表面であるかのような印象を出すために使用される。
【0058】
咬合側スキャン10のトリムステップ1002と同様に、歯肉側スキャン11がユーザによってトリミングされるトリムステップ1007も実施される。
【0059】
そして、咬合側スキャン10及び歯肉側スキャン11は、整列ステップ1008において整列される。例示的な実施形態において、これは、スキャンの歯12が整列基準のための重複面として使用され得るので、自動的に実施され得る。
【0060】
整列された咬合側スキャン10及び歯肉側スキャン11は、次いで、
図3に示されるような第3のユーザインターフェースセッション1009に示されるように、適合された既存の義歯14のデジタル模型へと併合される。
【0061】
セグメント化プロセスは、続いて、
図4~
図6に示されるように開始される。
【0062】
図4は、第4のユーザインターフェースセッション1010を示し、これにより、各々別個の義歯/人工歯12は、歯牙識別ステップ1011において適合された既存の義歯14のデジタル模型上で識別される。
【0063】
歯牙識別1011に続いて、歯茎-歯牙スプライン15は、
図5に示される第5のユーザインターフェースセッション1013内のセグメント化ステップ1012において各歯12について導出される。
【0064】
セグメント化ステップ1012において、ユーザは、
図6に示される第6のユーザインターフェースセッション1015に示されるように、グループ化ツール1014を使用することによって、歯をグループへとグループ化することを選択することができる。今回の場合、ユーザは、第1、第2、及び第3の歯茎-歯牙スプライン16、17、及び18が生成されることを結果としてもたらす、3つのグループを生成することを選択する。各歯茎-歯牙は、歯のグループの歯境界を規定する閉じたスプラインである。
【0065】
歯茎-歯牙スプライン16、17、及び18を使用して、適合された既存の義歯14のデジタル模型は、
図7に示される第7のユーザインターフェースセッション1016に示されるように、中間義歯床模型19、第1の中間歯牙模型20、第2の中間歯牙模型21、及び第3の中間歯牙模型22へとセグメント化され得る。
【0066】
第7のユーザインターフェースセッション1016及び第8のユーザインターフェース1017を示す
図7及び
図8は、中間義歯床模型19ならびに中間歯牙模型20、21、及び22の解剖学的構造がどのように2つの彫刻ステップ1019及び1020において修正され得るかを例証する。例えば、
図8の義歯床の乳頭23は、彫刻ツールキット1018を使用してそれらをデジタル的に修正することによって増強されている。
【0067】
中間義歯床模型19及び中間義歯歯牙模型20、21、22の解剖学的構造(外側の目に見える表面)が満足のいく結果を提供するように修正された後、結合機構が、
図9内のユーザインターフェースセッション1021及び
図10内のユーザインターフェースセッション1022に示されるように結合機構ステップ1023において生成される。
【0068】
図9及び
図10は、義歯床とは独立して示される中間義歯歯牙模型20、21、及び22を示す。突出部24、25、及び26は、それぞれの歯茎-歯牙境界スプライン16、17、及び18に基づいて生成される。突出部は、歯の解剖学的構造の下に延びるため、審美的に正しい必要はない。
【0069】
図9では、第1の中間義歯歯牙模型20の挿入方向27が決定され、突出部24は、第2及び第3の中間義歯歯牙模型21及び22の突出部25及び26と比較して、設計において低減されている。
【0070】
同様に、
図10に示されるように、第2及び第3の中間義歯歯牙模型21、22の突出部25及び26は、第1の突出部24と同様に設計される。また、第3の中間義歯歯牙模型22の挿入方向28が決定される。義歯歯牙は上で論じられるようにグループで提供されるため、異なる方向が提供され得、これは、アンダーカットを低減するため、ならびに最終製品の審美性及び安定性を改善するために有利であり得る。
【0071】
結合設定、挿入方向、及び同様のものを設計するためのツール1024は、第9及び第10のユーザインターフェースセッション1021及び1022に提供される。
【0072】
図11に示される第11のユーザインターフェースセッション1025において、中間義歯歯牙模型20、21、及び22は、ブール減算を使用して中間義歯床模型19から減算される。これが、第1、第2、及び第3の凹部30、31、及び32を作成する。
【0073】
ポケット設定ツール1026は、ユーザインターフェースに提供される。このツールは、ユーザが、製造された義歯床及び歯牙模型を接着することを可能にするために凹部に小さいオフセットを提供する接着剤空間を決定することを可能にする。追加的に、義歯がフライス加工によって製造されることになる場合は、ドリル補償が選択され得る。
【0074】
そして、
図12内の第12のユーザインターフェースセッション1027に示されるように、すべての模型は、製作のために最終処理されて、最終義歯床模型40、第1の最終義歯歯牙模型41、第2の最終義歯歯牙模型42、及び第3の最終義歯歯牙模型43を提供する。
【0075】
これらの最終模型は、次いで、印刷又はフライス加工製造機構などの3D製造機構に配送され得る。
【0076】
クレームは、先行するクレームのいずれかを指し得、「いずれか」とは、先行するクレームのうちの「いずれか1つ以上」を意味すると理解される。
【0077】
用語「獲得する」は、本明細書で使用される場合、例えば医用撮像デバイスを使用して医用画像を物理的に獲得することを指し得るが、それはまた、例えば、以前に取得した画像又はデジタル表現をコンピュータにロードすることを指し得る。
【0078】
用語「備える(comprises/comprising)」は、本明細書で使用されるとき、記載された特徴、整数、ステップ、又は構成要素の存在を指定するとされるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、又はそれらのグループの存在又は追加を除外しないということは強調されるべきである。
【0079】
上に説明される、及び以下における、方法の特徴は、ソフトウェアに実装され得、コンピュータ実行可能命令の実行によって引き起こされるデータ処理システム又は他の処理手段において実行され得る。命令は、RAMなどのメモリ内に、記憶媒体から、又はコンピュータネットワークを介した別のコンピュータからロードされるプログラムコード手段であり得る。代替的に、説明された特徴は、ソフトウェアの代わりに、又はソフトウェアと組み合わせて、ハードワイヤード回路によって、実装され得る。
【0080】
いくつかの実施形態が詳細に説明され示されているが、本発明は、それらに限定されず、以下のクレームに規定される主題の範囲内で他のやり方でも具現化され得る。特に、他の実施形態が利用され得、構造的及び機能的修正が本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることを理解されたい。
【国際調査報告】