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特表2022-550723遅発性喘息を治療する方法に使用するためのベンラリズマブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】遅発性喘息を治療する方法に使用するためのベンラリズマブ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221128BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20221128BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P11/06
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518935
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 IB2020058988
(87)【国際公開番号】W WO2021059221
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/907,270
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300022641
【氏名又は名称】アストラゼネカ アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシュ,イアン
(72)【発明者】
【氏名】ニューボールド,ポール
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
遅発性喘息又は重症喘息研究プログラム(SARP)臨床クラスター3若しくは5に該当する喘息を患う患者を治療する方法であって、患者に治療有効量の抗インターロイキン-5受容体(IL-5R)抗体、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法が本明細書で提供される。投与前の患者の喘息のSARP臨床クラスターを判定することにより、ベンラリズマブに対する強化された治療応答を予測する方法も提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅発性喘息を患う患者を治療する方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項2】
重症喘息研究プログラム(SARP)臨床クラスター3又は5に該当する喘息を患う患者を治療する方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項3】
遅発性喘息を患う患者における年間増悪率(AER)を低減させる方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与は、前記患者のAERを低減させる、方法。
【請求項4】
SARP臨床クラスター3に該当する喘息を患う患者におけるAERを低減させる方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与は、前記患者のAERを低減させる、方法。
【請求項5】
SARP臨床クラスター5に該当する喘息を患う患者におけるAERを低減させる方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与は、前記患者のAERを低減させる、方法。
【請求項6】
前記AERは、前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して少なくとも45%低減される、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記AERは、前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して少なくとも50%低減される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
遅発性喘息を患う患者における肺機能を改善する方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項9】
SARP臨床クラスター3に該当する喘息を患う患者における肺機能を改善する方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項10】
SARP臨床クラスター5に該当する喘息を患う患者における肺機能を改善する方法であって、前記患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む方法。
【請求項11】
前記改善された肺機能は、前記患者の予測1秒強制呼気量(FEV)パーセントの、前記投与前の前記患者のFEVと比較した増加によって測定される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記FEVは、気管支拡張薬(BD)前FEVである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BD前FEVは、少なくとも6%増加される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記BD前FEVは、少なくとも14%増加される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記FEVは、気管支拡張薬(BD)後FEVである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記BD後FEVは、少なくとも2%増加される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記BD後FEVは、少なくとも10%増加される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記改善された肺機能は、前記患者の予測強制肺活量(FVC)パーセントの、前記投与前の前記患者のFVCと比較した増加によって測定される、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記FVCは、気管支拡張薬(BD)前FVCである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記BD前FVCは、少なくとも6%増加される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記BD前FVCは、少なくとも12%増加される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記FVCは、BD後FVCである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記BD後FVCは、少なくとも1%増加される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記BD後FVCは、少なくとも7%増加される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記SARP臨床クラスターは、前記投与前の前記患者の喘息について判定されている、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記投与前の前記患者の喘息の前記SARP臨床クラスターを判定することを更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記SARP臨床クラスターの前記判定は、喘息発病の年齢、BD前FEV及びBD後FEVに基づく、請求項2、4~7又は9~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記患者の喘息発病の年齢は、47±9.4歳であり、ベースラインFEVは、66±7.7%であり、及び最大BD後FEVは、78±12%である、請求項1~4、6~9又は11~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記患者の喘息発病の年齢は、33±17.0歳であり、ベースラインFEVは、43±9.4%であり、及び最大BD後FEVは、56±15%である、請求項1~3、5~8又は10~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記SARP臨床クラスターの前記判定は、FEV、FVC、FEV/FVC、最大BD後FEV、最大BD後FVC、BD後FEVのパーセント変化、喘息発病時の年齢、喘息の継続期間、患者の性別、β2作動薬の使用頻度及び吸入コルチコステロイド(ICS)の用量に基づく、請求項2、4~7又は9~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記喘息発病の年齢は、47±9.4歳であり、
前記患者のベースラインFEVは、66±7.7%であり、
前記患者のベースラインFVCは、82±11%であり、
前記患者のベースラインFEV/FVCは、0.65±0.10であり、
前記患者の最大BD後FEVは、78±12%であり、
前記患者の最大BD後FVC%は、91±14%であり、
前記患者のBD後FEVの変化は、0.22+/-0.40であり、及び/又は
前記喘息は、10±7年の継続期間を有している、請求項1~4、6~9又は11~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記喘息発病の年齢は、33±17.0であり、
前記患者のベースラインFEVは、43±9.4であり、
前記患者のベースラインFVCは、65±12%であり、
前記患者のベースラインFEV/FVCは、0.54±0.12であり、
前記患者の最大BD後FEVは、56±15%であり、
前記患者の最大BD後FVC%は、77±15%であり、
前記患者のBD後FEVの変化は、0.50+/-0.55であり、及び/又は
前記喘息は、21±15年の継続期間を有している、請求項1~3、5~8又は10~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者は、前記投与前に≧300細胞/μLのベースライン血液好酸球数を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者におけるAER、FEV及びFVC値は、前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して改善される、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者は、重症喘息を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
重症喘息は、高用量のICSを用いた治療及び/又は連続的若しくはほぼ連続的な経口コルチコステロイド(OC)を用いた治療に関する要件、並びに以下の基準:管理薬を用いる追加的な毎日の治療に関する要件、毎日若しくはほぼ毎日の短時間作用型β作動薬(SABA)の使用を必要とする喘息症状、持続的な気道閉塞、喘息のための1年間あたり1回以上の応急処置訪問、1年間あたり3回以上の経口ステロイドのバースト、経口若しくは吸入コルチコステロイド用量の≦25%の低減に伴う急速な悪化及び/又は過去における致命的な喘息事象の2つ以上によって特徴付けられる、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、1用量あたり約30mgで投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者に少なくとも2用量の前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回又は8週毎に1回投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、12週間にわたって4週毎に1回、且つその後、8週毎に1回投与される、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、非経口的に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、皮下投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、コルチコステロイド療法及び/又は短時間若しくは長時間作用型B作動薬療法に加えて投与される、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの前記投与前に少なくとも1.5の喘息管理質問票スコアを有する、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する喘息患者の治療応答を予測する方法であって、前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に喘息のSARP臨床クラスターを判定することを含む方法。
【請求項47】
前記SARP臨床クラスターがクラスター3又はクラスター5であると判定される場合、前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する強化された応答を予測することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記患者の喘息の前記SARP臨床クラスターがクラスター3又はクラスター5であると判定される場合、前記患者に前記ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを更に含む、請求項46又は47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的手段により提出されており、且つその全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2020年8月31日に作成された上記のASCIIコピーは、IL5R-611-WO-PCT_SL.txtという名称であり、サイズが15,945バイトである。
【背景技術】
【0002】
喘息は、様々な国で人口の1%~18%が罹患する異質性の呼吸器疾患である。これは、典型的には、慢性の気道炎症並びに経時的に変化し、且つ強度が変化する喘鳴、息切れ、胸苦しさ及び咳などの呼吸器症状の病歴を特徴とし、多様な呼気流の制限を伴う。喘息は、個体群統計的、臨床的及び/又は病態生理学的特徴の個別の認識可能なクラスターに基づいて異なる表現型に分類され得るが、これらは、特定の病理学的過程又は治療応答と強く相関していない。Global Initiative for Asthma.Global Strategy for Asthma Management and Prevention(2019)(www.ginasthma.orgから入手可能、2019年9月にアクセス)を参照されたい。
【0003】
2010年に、国立心肺血液研究所(National Heart,Lung,and Blood Institute)の重症喘息研究プログラム(Severe Asthma Research Program)(SARP)は、喘息を患う726人の対象における34の表現型変数の教師なし階層的クラスター分析を用いて、5つの異なる喘息の臨床表現型(すなわちクラスター1、2、3、4及び5)を同定した。Moore,W.C.et al.,Am J Respir Crit Care Med.181:315-323(2010)を参照されたい。この変数は、個体群統計データ(例えば、性別、人種、年齢)、生理学的尺度(例えば、肺機能及びアトピー)及び疾患の重症度に影響する追加の変数(例えば、発病の年齢及び期間)などの喘息患者の広範囲なルーチン評価を網羅した。Mooreは、34の変数を用いる判別分析も実施し、クラスター割り当てのための最も強力な識別変数の11種を同定した。更に、Mooreは、3つのみの変数を用いて約80%の精度で喘息のクラスターを割り当てる単純なアルゴリズムに関して報告した。特定の表現型変数を以下でより詳細に説明する。
【0004】
ベンラリズマブは、好酸球及び好塩基球上に発現するインターロイキン-5受容体アルファ(IL-5Rα)のアルファ鎖に結合するヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。ベンラリズマブは、抗体依存性細胞性細胞毒性を介してこれらの細胞のアポトーシスを誘発する。2つの第三相臨床試験、SIROCCO(ClinicalTrials.gov識別子NCT01928771)及びCALIMA(ClinicalTrials.gov識別子NCT01914757)は、高投与量の吸入コルチコステロイド/長時間作用型β2作動薬(ICS/LABA)と組み合わせたベンラリズマブが、重症の管理されていない喘息を患い、血中好酸球数が≧300細胞/μLの患者に対して、プラセボと比較して喘息の増悪を有意に低減させ、肺機能及び疾病管理を改善したことを実証した。Bleeker,E.R.et al.,Lancet 388:2115-2127(2016))及びFitzGerald,J.M.et al.,Lancet 388:2128-2141(2016)をそれぞれ参照されたい。続いて、8週毎投与のベンラリズマブの30mg皮下製剤(Q8W、最初の3用量は4週毎(Q4W))は、重症の管理されていない好酸球喘息を患う患者に対する追加維持治療としていくつかの市場で認可された。AstraZeneca.Fasenra(商標)(ベンラリズマブ)、Prescribing Information(2017)、www.azpicentral.com/fasenra/fasenra_pi.pdf、最終更新日:2017年11月;最終アクセス日:2018年1月10日;AstraZeneca.Fasenra(商標)(ベンラリズマブ)、Summary of Product Characteristics(2018)、http://ec.europa.eu/health/documents/community-register/2018/20180108139598/anx_139598_en.pdf;最終アクセス日:2018年3月13日を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
喘息の多様性を理解することは、標的化療法に対する応答性を判定すること及び重症喘息を患う患者を治療するための表現型誘導療法の開発のために重要である。ベンラリズマブは、喘息の増悪を有意に低減させ、重症の管理されていない喘息における肺機能を改善するが、喘息の臨床表現型がベンラリズマブの臨床的有効度に影響を与えるか否かの判定及び臨床決定を通知するためのこれらの表現型の同定に対する満たされていない必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で説明する通り、SIROCCO及びCALIMA試験からの2,200人の統合された患者に対する分析により、ベンラリズマブを用いる喘息患者の特定のサブセット又は亜集団の同定は、ベンラリズマブを用いた治療に対する強化された応答を予測する可能性を有することが見出された。
【0007】
特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを用いる方法は、図1~5及び実施例1に示される通りである。
【0008】
特定の態様では、遅発性喘息を患う患者を治療する方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0009】
特定の態様では、重症喘息研究プログラム(SARP)臨床クラスター3又は5に該当する喘息を患う患者を治療する方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0010】
特定の態様では、遅発性喘息を患う患者における年間増悪率(AER)を低減させる方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、その投与は、患者のAERを低減させる。
【0011】
特定の態様では、SARP臨床クラスター3に該当する喘息を患う患者におけるAERを低減させる方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、その投与は、患者のAERを低減させる。
【0012】
特定の態様では、SARP臨床クラスター5に該当する喘息を患う患者におけるAERを低減させる方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、その投与は、患者のAERを低減させる。
【0013】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、AERは、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して少なくとも45%低減される。特定の態様では、AERは、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して少なくとも50%低減される。
【0014】
特定の態様では、遅発性喘息を患う患者の肺機能を改善する方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0015】
特定の態様では、SARP臨床クラスター3に該当する喘息を患う患者における肺機能を改善する方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0016】
特定の態様では、SARP臨床クラスター5に該当する喘息を患う患者における肺機能を改善する方法は、患者に治療有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0017】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、改善された肺機能は、患者の予測1秒強制呼気量(FEV)パーセントの、投与前の患者のFEVと比較した増加によって測定される。特定の態様では、FEVは、気管支拡張薬(BD)前FEVである。特定の態様では、BD前FEVは、少なくとも6%増加される。特定の態様では、BD前FEVは、少なくとも14%増加される。特定の態様では、FEVは、気管支拡張薬(BD)後FEVである。特定の態様では、BD後FEVは、少なくとも2%増加される。特定の態様では、BD後FEVは、少なくとも10%増加される。
【0018】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、改善された肺機能は、患者の予測強制肺活量(FVC)パーセントの、投与前の患者のFVCと比較した増加によって測定される。特定の態様では、FVCは、気管支拡張薬(BD)前FVCである。特定の態様では、BD前FVCは、少なくとも6%増加される。特定の態様では、BD前FVCは、少なくとも12%増加されする。特定の態様では、FVCは、BD後FVCである。特定の態様では、BD後FVCは、少なくとも1%増加される。特定の態様では、BD後FVCは、少なくとも7%増加される。
【0019】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、SARP臨床クラスターは、投与前の患者の喘息について判定されている。
【0020】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、方法は、投与前の患者の喘息のSARP臨床クラスターを判定することを更に含む。
【0021】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、SARP臨床クラスターの判定は、喘息発病の年齢、BD前FEV及びBD後FEVに基づく。
【0022】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、患者の喘息発病の年齢は、47±9.4歳であり、ベースラインFEVは、66±7.7%であり、及び最大BD後FEVは、78±12%である。
【0023】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、患者の喘息発病の年齢は、33±17.0歳であり、ベースラインFEVは、43±9.4%であり、及び最大BD後FEVは、56±15%である。
【0024】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、SARP臨床クラスターの判定は、FEV、FVC、FEV/FVC、最大BD後FEV、最大BD後FVC、BD後FEVのパーセント変化、喘息発病時の年齢、喘息の継続期間、患者の性別、β2作動薬の使用頻度及び吸入コルチコステロイド(ICS)の用量に基づく。
【0025】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、喘息発病の年齢は、47±9.4歳であり、患者のベースラインFEVは、66±7.7%であり、患者のベースラインFVCは、82±11%であり、患者のベースラインFEV/FVCは、0.65±0.10であり、患者の最大BD後FEVは、78±12%であり、患者の最大BD後FVC%は、91±14%であり、患者のBD後FEVの変化は、0.22+/-0.40であり、及び/又は喘息は、10±7年の継続期間を有している。
【0026】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、喘息発病の年齢は、33±17.0であり、患者のベースラインFEVは、43±9.4であり、患者のベースラインFVCは、65±12%であり、患者のベースラインFEV/FVCは、0.54±0.12であり、患者の最大BD後FEVは、56±15%であり、患者の最大BD後FVC%は、77±15%であり、患者のBD後FEVの変化は、0.50+/-0.55であり、及び/又は喘息は、21±15年の継続期間を有している。
【0027】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、患者は、投与前に≧300細胞/μLのベースライン血液好酸球数を有する。
【0028】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、患者におけるAER、FEV及びFVC値は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して改善される。
【0029】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、患者は、重症喘息を有する。
【0030】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、重症喘息は、高用量のICSを用いた治療及び/又は連続的若しくはほぼ連続的な経口コルチコステロイド(OC)を用いた治療に関する要件並びに以下の基準:管理薬を用いる追加的な毎日の治療に関する要件(例えば、長時間作用型β作動薬(LABA)、テオフィリン若しくはロイコトリエン拮抗薬)、毎日若しくはほぼ毎日の短時間作用型β作動薬(SABA)の使用を必要とする喘息症状、持続的な気道閉塞(予測FEV<80%、日中ピーク呼気流変動>20%)、喘息のための1年間あたり1回以上の応急処置訪問、1年間あたり3回以上の経口ステロイドのバースト、経口若しくは吸入コルチコステロイド用量の≦25%の低減に伴う急速な悪化及び/又は過去における致命的な喘息事象の2つ以上によって特徴付けられる。
【0031】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、1用量あたり約30mgで投与される。
【0032】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、方法は、患者への少なくとも2用量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0033】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回又は8週毎に1回投与される。本明細書で提供される方法の特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、4週毎に1回投与される。本明細書で提供される方法の特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、12週間にわたって4週毎に1回、且つその後、8週毎に1回投与される。
【0034】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、非経口的に投与される。特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、皮下投与される。
【0035】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、コルチコステロイド療法及び/又は短時間若しくは長時間作用型B作動薬療法に加えて投与される。
【0036】
本明細書で提供される方法の特定の態様では、患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に少なくとも1.5の喘息管理質問票スコアを有する。
【0037】
特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する喘息患者の治療応答を予測する方法は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に喘息のSARP臨床クラスターを判定することを含む。特定の態様では、方法は、SARP臨床クラスターがクラスター3又はクラスター5であると判定される場合、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する強化された応答を予測することを含む。特定の態様では、方法は、患者の喘息のSARP臨床クラスターがクラスター3又はクラスター5であると判定される場合、患者にベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】SARP喘息の臨床クラスター、すなわちクラスター1、2、3、4及び5を各クラスターの代表的な臨床的、個体群統計的及び/又は病態生理学的特徴と共に示す。
図2】ベンラルジマブに対するSIROCCO及びCALIMA(N=2,281)第三相臨床試験からの患者のパーセンテージ及び合計数による、SARPクラスター分布を示す円グラフである。患者は、クラスター2、3、4及び5の基準を満たした。
図3図3A~3Bは、組み合わせベンラルジマブアーム(ベンラリズマブの4週毎(Q4W)30mg及び8週毎(最初の3用量は、Q4Wであった)30mg治療群の組み合わせデータを用いる)の、プラセボと対比した年間増悪率(AER)を示す棒グラフである(全て好酸球数)。図3Aは、プラセボと対比したクラスター毎のAER及び標準偏差(SD)を示す。「b」は、p>0.05を示し、「c」は、p<0.0001を示す。図3Bは、ベンラリズマブで1年間治療した後の、プラセボと対比したクラスター毎のAERの減少パーセンテージを示す。
図4】1秒強制呼気量(FEV)(正常予測%)によって測定した、ベンラルジマブを投与された患者にクラスターを割り当てることによる、治療前及び後の肺機能の改善を示す棒グラフを示す(ベンラリズマブの4週毎(Q4W)30mg及び8週毎(最初の3用量はQ4W)30mg治療群の組み合わせデータを用いる)(全て好酸球数)。気管支拡張薬(BD)前及び後の値の全ての比較では、いずれもベースライン及びベンラリズマブ治療後でクラスカル・ワリスp<0.0001を用いた。
図5】強制肺活量(FVC)(正常予測%)によって測定した、ベンラルジマブを投与された患者にクラスターを割り当てることによる、治療前及び後の肺機能の改善を示す棒グラフを示す(ベンラリズマブの4週毎(Q4W)30mg及び8週毎(最初の3用量はQ4W)30mg治療群の組み合わせデータを用いる)(全て好酸球数)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「少なくとも1つ」は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、その存在の1つ以上を指す。例えば、「抗IL-5α抗体」は、1つ以上の抗IL-5α抗体を示すと理解される。したがって、用語「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0040】
用語「約」は、数値範囲、カットオフ又は具体的な値に関連して使用される場合、列挙された値が、この列挙された値から最大10%程度変動し得ることを示すために使用される。本明細書で使用される数値の多くは、実験的に決定されていることから、そのような決定は、異なる実験間で変動し得、且つ多くの場合に変動するであろうことを当業者は理解すべきである。本明細書で使用される値は、この固有の変動により過度に制限されると見なされるべきではない。そのため、用語「約」は、指定された値からの±10%以下の変動、±5%以下の変動、±1%以下の変動、±0.5%以下の変動又は±0.1%以下の変動を包含するように使用される。
【0041】
用語「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」は、別途注記のない限り、非限定的用語(すなわち「含むが、限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0042】
本明細書において「A及び/又はB」などの語句に用いられる用語「及び/又は」は、以下の実施形態を含むことが意図される:「A及びB」、「A又はB」、「A」並びに「B」。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B及び/又はC」などの語句で用いられるとき、以下の実施形態:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することが意図される。
【0043】
特に明記されない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、用語「又は」は、包括的であると理解される。
【0044】
本明細書で使用するとき、「治療する」及び同様の用語は、喘息症状の重症度及び/又は頻度を低下させること、喘息症状及び/又はその症状の根本原因を除去すること、喘息症状及び/又はその根本原因の頻度又は可能性を低下させること並びに喘息により直接的又は間接的に引き起こされる損傷を改善又は修正することを指す。
【0045】
本明細書で使用するとき、「治療有効用量」は、本明細書に開示又は例示される生物学的又は治療的結果などであるが、それらに限定されない特定の生物学的又は治療的結果を達成するのに有効である、本明細書に記載されるベンラリズマブの量を指す。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「患者」及び「対象」は、互換的に使用され、ヒトを含むが、それに限定されない動物界のメンバーを指す。好ましい一実施形態では、患者は、ヒトである。
【0047】
本明細書で使用するとき、用語「遅発性喘息」は、初期診断時に少なくとも16歳であった患者における喘息の診断を指す。いくつかの実施形態では、「遅発性喘息」を患う患者は、初期診断時に16~56歳又は33~47歳である。例えば、いくつかの実施形態では、16、33、47又は56歳時に喘息と診断された患者は、「遅発性喘息」を有すると見なされる。
【0048】
本明細書で使用するとき、別段の記載がない限り、用語「重症喘息」は、米国胸部学会(ATS)ワークショップの合意によって特徴付けられる喘息である。例えば、重症喘息は、高用量のICSを用いた治療及び/又は連続的若しくはほぼ連続的な経口コルチコステロイド(OC)を用いた治療に関する要件並びに以下の基準:管理薬を用いる追加的な毎日の治療に関する要件(例えば、LABA、テオフィリン若しくはロイコトリエン拮抗薬)、毎日若しくはほぼ毎日のSABAの使用を必要とする喘息症状、持続的な気道閉塞(予測FEV<80%、日中ピーク呼気流変動>20%)、喘息のための1年間あたり1回以上の応急処置訪問、1年間あたり3回以上の経口ステロイドのバースト、経口若しくは吸入コルチコステロイド用量の≦25%の低減に伴う急速な悪化及び/又は過去における致命的な喘息事象の2つ以上によって特徴付けられる。Moore et al.,J Allergy Clin Immunol 119:405-413(2007)を参照されたい。
【0049】
本明細書で使用するとき、「SARP臨床クラスター」又は「SARPクラスター」は、国立心肺血液研究所の重症喘息研究プログラム(SARP)によって同定され、且つ参照によりその全体が組み込まれるMoore,W.C.et al.,Am J Respir Crit Care Med.181:315-323(2010)に記載される5つの喘息の臨床的表現型のクラスター(すなわちクラスター1、2、3、4及び5)を指す。本明細書で使用するとき、SARP臨床クラスター3及び臨床クラスター5に分類される喘息患者は、「遅発性喘息」を有するとも言われる。
【0050】
本明細書で使用するとき、「1秒強制呼気量(FEV)」は、1秒間に強制的に吐き出され得る空気の最大量を指す。本明細書に記載されるように、FEVは、ベースライン、例えば気管支拡張薬(BD)投与前又は後であるが、ベンラリズマブ治療前に決定されるベースライン値で測定され得る。いくつかの実施形態では、FEVは、BD投与前又は後であるが、ベンラリズマブによる治療後に測定され得る。したがって、本明細書で使用するとき、「ベースライン%予測FEV」は、ベンラリズマブの投与前(BD前又は後)に測定されたFEVを指す。本明細書で使用するとき、「最大BD後%予測FEV」は、BD後(ベンラリズマブの投与前又は後)に測定されたFEVを指す。
【0051】
本明細書で使用するとき、「強制肺活量(FVC)」は、完全吸気から開始して可能な限り強制的且つ完全に行われる呼気中に送達される量を指す。本明細書に記載されるFEV及びFVC値は、喘息を患う患者の肺機能を評価するための代表的な指標である。本明細書に記載されるように、FVCは、ベースライン、例えば気管支拡張薬(BD)投与前又は後であるが、ベンラリズマブ治療前に決定されるベースライン値で測定され得る。いくつかの実施形態では、FVCは、BD投与前又は後であるが、ベンラリズマブによる治療後に測定され得る。したがって、本明細書で使用するとき、「ベースライン%予測FVC」は、ベンラリズマブの投与前(BD前又は後)に測定されたFVCを指す。本明細書で使用するとき、「最大BD後%予測FVC」は、BD後(ベンラリズマブの投与前又は後)に測定されたFVCを指す。
【0052】
本明細書で使用するとき、喘息の「増悪」は、息切れ、喘鳴、咳及び胸苦しさを含む、急性又は亜急性の喘息症状の進行性悪化の発現を指す。「年間増悪率」又は「AER」は、1年あたりに患者が喘息の増悪を経験する回数を指す。
【0053】
本明細書で使用するとき、「喘息管理質問票」又は「ACQ」は、喘息症状(夜間の覚醒、覚醒時症状、活動の制限、息切れ、喘鳴)並びに毎日の救急気管支拡張薬(BD)の使用及びFEVを評価する患者報告式の質問表を指す。Juniper et al.,Eur.Respir.J.14:902-907(1999)及びJuniper et al.,Chest 115:1265-1270(1999)を参照されたい。質問は、同等に重み付けられ、0(十分に管理されている)~6(全く管理されていない)で採点される。≦0.75の平均スコアは、十分に管理された喘息を示し、0.75~≦1.5のスコアは、部分的に管理された喘息を示し、>1.5のスコアは、管理されていない喘息を示す。Juniper et al.,Respir.Med.100:616-621(2006)。少なくとも0.5の個々の変化は、臨床的に重要であると見なされる。Juniper et al.,Respir.Med.99:553-558(2005)。「ACQ-6」は、元のACQスコアからFEVの測定を省略した、喘息症状(夜間の覚醒、覚醒時症状、活動の制限、息切れ、喘鳴及び短時間作用型β作動薬の使用)を評価するACQの短縮版である。
【0054】
有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することにより、遅発性喘息を患う対象を治療するための方法が本明細書で提供される。有効量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することにより、特定の喘息臨床表現型、例えば重症喘息研究プログラム(SARP)のクラスター3及びクラスター5(Moore,W.C.et al.,Am J Respir Crit Care Med.181:315-323(2010)に該当する喘息を患う対象を治療するための方法も本明細書で提供される。本明細書に記載されるように、特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、追加の喘息療法と同時に患者に投与される。
【0055】
ベンラリズマブ及びその投与
ベンラリズマブは、インターロイキン-5受容体のアルファ鎖(IL-5Rα)を標的化するヒト化非フコシル化モノクローナル抗体(mAb)である。Kolbeck,R.et al.,J Allergy Clin.Immunol.125:1344-1353(2010)を参照されたい。ベンラリズマブは、ナチュラルキラー細胞を伴う好酸球排除のアポトーシスプロセスである、改善された抗体依存性細胞媒介性細胞毒性を介して直接的、急速且つほぼ完全な血中好酸球の枯渇を誘導することにより、その効果を発揮する。同上、Pham,T.H.et al.,Resp.Med.111:21-29(2016)。気道の好酸球(組織及び喀痰)も広範に枯渇する。Laviolette,M.et al.,J Allergy Clin.Immunol.132:1086-1096(2013)。
【0056】
本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ(又はその抗体結合フラグメント)に関する情報は、米国特許出願公開第2010/0291073号明細書、米国特許第7,718,175号明細書、同第7,179,464号明細書、同第8,101,185号明細書及び米国特許出願公開第2019/0201535号明細書に見出すことができ、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ及びその抗原結合フラグメントは、重鎖及び軽鎖又は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
【0057】
更なる態様では、本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1~4のアミノ酸配列のいずれか1つを含む。具体的な態様では、本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0058】
具体的な態様では、本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。具体的な態様では、本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列番号7~9のKabatにより定義されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、軽鎖可変領域は、配列番号10~12のKabatにより定義されるCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。当業者は、Chothiaにより定義されるか、Abmにより定義されるか、又は他のCDRを容易に同定することができるであろう。具体的な態様では、本明細書で提供される方法に使用するためのベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,018,032号明細書で開示されるKM1259抗体の可変重鎖及び可変軽鎖CDR配列を含む。
【0059】
2つの第三相臨床試験、SIROCCO(ClinicalTrials.gov識別子NCT01928771)及びCALIMA(ClinicalTrials.gov識別子NCT01914757)は、高投与量の吸入コルチコステロイド/長時間作用型β2作動薬(ICS/LABA)と組み合わせたベンラリズマブが、重症の管理されていない喘息を患い、血中好酸球数が≧300細胞/μLの患者に対して、プラセボと比較して喘息の増悪を有意に低減させ、肺機能及び疾病管理を改善したことを実証した。それぞれBleeker,E.R.et al.,Lancet 388:2115-2127(2016))及びFitzGerald,J.M.et al.,Lancet 388:2128-2141(2016)を参照されたい。続いて、8週毎に1回(Q8W)投与され、最初の3用量が4週毎に1回(Q4W)投与されるベンラリズマブの30mg皮下製剤は、重症の管理されていない好酸球喘息を患う患者に対する追加維持治療としていくつかの市場で認可された。AstraZeneca.Fasenra(商標)(ベンラリズマブ)、Prescribing Information(2017)、www.azpicentral.com/fasenra/fasenra_pi.pdf、最終更新日:2017年11月;最終アクセス日:2018年1月10日;AstraZeneca.Fasenra(商標)(ベンラリズマブ)、Summary of Product Characteristics(2018)、http://ec.europa.eu/health/documents/community-register/2018/20180108139598/anx_139598_en.pdf;最終アクセス日:2018年3月13日を参照されたい。
【0060】
特定の態様では、喘息で診療所又はEDを受診する患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与される。ベンラリズマブが最大で12週以上にわたって好酸球数を低下又は枯渇させる能力を前提とすると(米国特許出願公開第2010/0291073号明細書を参照されたい)、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、喘息症状を減らす恩恵がなおも患者にもたらされている間、1回のみ又はまれに投与され得る。
【0061】
更なる態様では、患者は、追加の後続用量を投与される。後続用量は、患者の年齢、体重、医師の指示に従う能力、臨床評価、好酸球数(血中又は喀痰中好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン測定値(EDN)、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値及び主治医の判断などの他の因子に依存して様々な時間間隔で投与され得る。
【0062】
ベンラリズマブの用量間の間隔は、4週毎、5週毎、6週毎、8週毎、10週毎、12週毎又はそれよりも長い間隔であり得る。特定の態様では、用量間の間隔は、4週毎、8週毎又は12週毎であり得る。特定の態様では、喘息患者が増悪、例えば軽度、中度又は重度の増悪を発症した後、直ちに患者に単回用量又は最初の用量が投与される。例えば、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、診療所若しくは病院の受診中に投与され得るか、又は急性増悪後、1、2、3、4、5、6、7日若しくはそれを超える日数、例えば7日以内の非常に重度の増悪の場合、ベンラリズマブの投与前に患者の症状を安定化させことを可能にし得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも2用量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントが患者に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも3用量、少なくとも4用量、少なくとも5用量、少なくとも6用量又は少なくとも7用量が患者に投与される。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、4週間、8週間、12週間、24週間又は1年間にわたって投与される。
【0064】
患者に投与されるベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの量は、患者の年齢、体重、臨床評価、好酸球数(血中又は喀痰中好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン測定値(EDN)、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値及び主治医の判断などの他の因子などの様々なパラメータに依存する。特定の態様では、投薬量又は投薬間隔は、好酸球レベルに依存的ではない。
【0065】
特定の態様では、患者は、約2mg~約100mg、例えば約20mg~約100mg又は約30mg~約100mgの用量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを1用量以上投与される。特定の態様では、患者は、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg又は約100mgの用量のベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを1用量以上投与される。
【0066】
特定の態様では、本明細書で提供される方法によるベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、非経口投与を介したものである。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、例えば、上腕、大腿又は腹部への皮下注射によって投与される。
【0067】
好ましい実施形態では、ベンラリズマブの用量は、4週毎に1回投与される約30mgである。好ましい実施形態では、ベンラリズマブの用量は、皮下注射により、最初の3用量について4週毎に1回、続いてその後、8週毎に1回投与される約30mgである。
【0068】
追加の喘息療法
特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントは、追加の喘息療法と組み合わせて又は併用して、本明細書で提供される方法に従って投与される。こうした追加の喘息療法としては、限定されないが、コルチコステロイド療法、長期作用型若しくは短期作用型気管支拡張薬(BD)治療、長時間作用型β作動薬(LABA)治療、短時間作用型β作動薬(SABA)治療、酸素補給法又は例えば米国喘息教育予防プログラム(NAEPP)のガイドラインに記載される他の標準療法が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に、本明細書に記載される追加の喘息療法を使用していることができる。
【0069】
本明細書で使用するとき、「コルチコステロイド療法」としては、吸入コルチコステロイド(ICS)療法(高投与量ICSを含む)、経口コルチコステロイド及び全身コルチコステロイドが挙げられる。
【0070】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に中用量の吸入コルチコステロイド(ICS)使用を処方されたか又は使用している。特定の態様では、喘息患者は、中用量のICSをベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントと同時に使用する。中用量のICSは、1日用量が少なくとも600μg~1,200μgのブデソニドであるか、又は均等な用量の別のICSであり得る。
【0071】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に高用量のICSを処方されたか又は使用している。特定の態様では、喘息患者は、高用量のICSをベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントと同時に使用する。高用量のICSは、1日用量が少なくとも1,200μgのブデソニドであるか、又は均等な用量の別のICSであり得る。高用量のICSは、1日用量が1,200μg超~2000μgのブデソニド、又は均等な用量の別のICSでもあり得る。
【0072】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に経口コルチコステロイドを処方されたか又は使用している。特定の態様では、喘息患者は、経口コルチコステロイドをベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントと同時に使用する。特定の態様では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与により、喘息患者の経口コルチコステロイドの使用が減少する。特定の態様では、その投与により、喘息患者の経口コルチコステロイドの使用が少なくとも50%減少する。
【0073】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に長時間作用型β作動薬(LABA)を処方されたか又は使用している。特定の態様では、喘息患者は、LABAをベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントと同時に使用する。
【0074】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に短時間作用型β作動薬(SABA)を処方されたか又は使用している。特定の態様では、喘息患者は、SABAをベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントと同時に使用する。
【0075】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前にICS及びLABAの両方を処方されたか又は使用している。
【0076】
特定の態様では、喘息患者は、ICS及びLABAの両方をベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントと同時に使用する。
【0077】
SARP変数を用いた喘息表現型の判定
特定の態様では、喘息を患う患者にベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与する前に、国立心肺血液研究所の重症喘息研究プログラム(SARP)における726例の喘息対象のクラスター分析で同定された3、4、5、6、7、8、9、10又は11種の臨床的特徴(別名、変数)を使用して患者の臨床的喘息表現型を判定する。Moore,W.C.et al.,Am J Respir Crit Care Med.181:315-323(2010)を参照されたい。SARPにより同定された5つの異なる喘息の臨床表現型(すなわちクラスター1、2、3、4及び5)及び図1は、各クラスターの特徴を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態では、喘息を患う患者にベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与する前に、以下の11種の臨床的特徴のいずれか又は全てが評価された:喘息発病時の年齢、1秒強制呼気量(FEV)、強制肺活量(FVC)、FEV/FVC、最大気管支拡張薬(BD)後FEV、最大BD後FVC、BD後FEVのパーセント変化、喘息の継続期間、患者の性別、β2作動薬の使用頻度及び高投与量吸入コルチコステロイド(ICS)の用量。こうした表現型の特徴付けは、例えば、総合的質問表(例えば、個体群統計、喘息症状の頻度、喘息発病の年齢、喘息の継続期間、β作動薬及びコルチコステロイドなどの喘息薬の用量及び頻度を評価するため)、肺機能検査(例えば、BD前FEV及びFVC並びにBD後FEV及びFVC)及び過去12ヶ月における喘息増悪回数の判定を用いて評価することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、喘息を患う患者にベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与する前に、以下の3種の臨床的特徴が評価された:喘息発病時の年齢、BD前FEV及び最大BD後FEV
【0080】
いくつかの実施形態では、患者の喘息発病の年齢は、16歳以上であり、これは、本明細書では、「遅発性喘息」と定義される。いくつかの実施形態では、患者の喘息発病の年齢は、16~56歳の範囲である。いくつかの実施形態では、患者の喘息発病の年齢は、47±9.4歳である。いくつかの実施形態では、患者の喘息発病の年齢は、33±17.0歳である。
【0081】
いくつかの実施形態では、患者のベースラインBD前FEVは、66±7.7%である。いくつかの実施形態では、患者のベースラインBD前FEVは、43±9.4である。
【0082】
いくつかの実施形態では、患者の最大BD後FEVは、78±12%である。いくつかの実施形態では、患者の最大BD後FEVは、56±15%である。
【0083】
いくつかの実施形態では、患者の喘息発病の年齢は、47±9.4歳であり、ベースラインBD前FEVは、66±7.7%であり、及び最大BD後FEVは、78±12%である。この表現型特徴付けを有する患者は、SARP臨床クラスター3に該当する。
【0084】
いくつかの実施形態では、患者の喘息発病の年齢は、33±17.0歳であり、ベースラインBD前FEVは、43±9.4%であり、及び最大BD後FEVは、56±15%である。この表現型特徴付けを有する患者は、SARP臨床クラスター5に該当する。
【0085】
ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントでSARP臨床クラスター3又は臨床クラスター5の患者を治療するための方法
実施例1で説明し、表3並びに図3A及び3Bで示すように、全てのクラスターの患者は、ベンラリズマブで治療した後にプラセボと対比してAERの低減を有したが、SARP臨床クラスター3又は臨床クラスター5(すなわち遅発性喘息クラスター)の患者は、AERの低減が最大であり、クラスター3は、プラセボと比較して-48%のAERの低減を示し、クラスター5は、プラセボと比較して-50%のAERの低減を示した。更に、クラスター3及び5のAER低減は、患者の血中好酸球濃度が≧300細胞/μLであるときに更により顕著であり、クラスター3の患者でプラセボと比較して-57%のAERの低減及びクラスター5の患者でプラセボと比較して-53%のAERの低減を示した。表4を参照されたい。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、AERを少なくとも45%(例えば、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較して45%低減させる。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与されていない患者と比較してAERを少なくとも50%低減させる。
【0087】
いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、患者のAERを投与前の患者のAERと比較して低減させる。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、患者のAERを少なくとも0.5低減させる。
【0088】
いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、患者のAERを少なくとも1.0低減させる。
【0089】
また、実施例1で説明し、図4(FEV)及び図5(FVC)で示すように、肺機能の改善は、クラスター3、4及び5においてベンザリズマブがプラセボと対比してより高く、同時にBD後応答に対する効果を維持した。クラスター3(+130mL;p=0.0005)及びクラスター5(+160mL;p<0.0001)は、プラセボと対比して、ベンラリズマブを用いたベースラインからのFEVの改善が最大であった。クラスター5のFEVは、ベースラインと対比して410mL増加した(p<0.0001)。
【0090】
したがって、いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、気管支拡張薬(BD)前FEVを改善する。いくつかの実施形態では、BD前FEVは、少なくとも6%(例えば6%~30%、6%~25%、6%~20%又は6%~15%)増加される。いくつかの実施形態では、BD前FEVは、少なくとも14%(例えば14%~30%、14%~25%又は14%~20%)増加される。
【0091】
いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与は、気管支拡張薬(BD)後FEVを改善する。いくつかの実施形態では、BD後FEVは、少なくとも2%(例えば2%~25%、2%~20%、2%~15%、2%~10%又は2%~5)増加される。いくつかの実施形態では、BD後FEVは、少なくとも10%(例えば10%~25%、10%~20%又は10%~15%)増加される。
【0092】
本明細書で提供される方法は、喘息の増悪を顕著に低減させることができる。低減は、大きい患者集団に基づく推測される予測増悪に基づいて又は個々の患者の増悪歴に基づいて測定することができる。特定の態様では、患者集団は、過去1年に全身性コルチコステロイドのバーストを必要とする増悪を≧2回経験した患者である。特定の態様では、患者集団は、過去1年に全身性コルチコステロイドのバーストを必要とする増悪を≧2回経験し、且つ過去1年に全身性コルチコステロイドのバーストを必要とする増悪を≦6回経験した患者である。特定の態様では、患者集団は、好酸球数が少なくとも300細胞/μLの患者である。
【0093】
特定の態様では、本明細書で提供される方法、すなわちベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与を使用することにより、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与後24週間にわたり患者が経験する増悪の回数が、患者の病歴から予測される増悪回数と比較して、同等の患者集団において予測される平均増悪回数と比較して又は同一期間にわたりプラセボで治療された同等の集団と比較して減少する。特定の態様では、患者は、定期的な間隔、例えば4週毎、5週毎、6週毎、8週毎、12週毎又は患者の年齢、体重、医師の指示に従う能力、臨床評価、好酸球数(血中又は喀痰中好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン測定値(EDN)、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値及び主治医の判断などの他の因子に基づいて計画される通りにベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの後続用量を投与され得る。本明細書で提供される方法を使用することで、24週にわたり増悪の頻度を10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%低減させることができる。
【0094】
他の態様では、本明細書で提供される方法、すなわち喘息患者に対するベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与を使用することにより、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与後52週間にわたり患者が経験する増悪の回数(すなわち年間増悪率)が、患者の病歴から予測される増悪回数と比較して、同等の患者集団において予測される平均増悪回数と比較して又は同一期間にわたりプラセボで治療された同等の集団と比較して減少する。特定の態様では、患者は、定期的な間隔、例えば4週毎、5週毎、6週毎、8週毎、12週毎又は患者の年齢、体重、医師の指示に従う能力、臨床評価、好酸球数(血中又は喀痰中好酸球)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)測定値、好酸球由来ニューロトキシン測定値(EDN)、主要塩基性タンパク質(MBP)測定値及び主治医の判断などの他の因子に基づいて計画される通りにベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの後続用量を投与され得る。特定の態様では、間隔は、4週毎、8週毎又は12週毎である。本明細書で提供される方法を使用することで、年間の増悪を10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%減少させることができる。
【0095】
特定の態様では、本明細書で提供される方法、すなわち喘息患者(例えば、本明細書に記載される遅発性喘息を患う患者)に対してベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与を使用することにより、年間増悪率が低減し、強制呼気量(FEV)が増加し、且つ/又は喘息質問表スコア(例えば、喘息管理質問票(ACQ))が改善される。
【0096】
特定の態様では、患者は、「好酸球陽性」であり、これは、その患者の喘息が好酸球性である可能性が高いことを意味する。
【0097】
特定の態様では、喘息患者(例えば、本明細書に記載される遅発性喘息を患う患者)は、例えば、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に特定の血中好酸球数を有する。血中好酸球数は、例えば、細胞鑑別と共に全血球算定(CBC)を使用して測定することができる。
【0098】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に少なくとも300細胞/μLの血中好酸球数を有する。特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に300細胞/μL以上(≧)の血中好酸球数を有する。特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に少なくとも350細胞/μL、少なくとも400細胞/μL、少なくとも450細胞/μL又は少なくとも500細胞/μLの血中好酸球数を有する。
【0099】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に300細胞/μL未満の血中好酸球数を有する。特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に少なくとも100細胞/μL、少なくとも150細胞/μL、少なくとも180細胞/μL、少なくとも200細胞/μL又は少なくとも250細胞/μLの血中好酸球数を有する。
【0100】
特定の態様では、喘息患者は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に少なくとも300細胞/μLの血中好酸球数を有し、且つ高用量のICSを使用している。
【0101】
特定の態様では、喘息患者(例えば、本明細書に記載される遅発性喘息を患う患者)は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に、予測値の少なくとも40%且つ90%未満の1秒強制呼気量(FEV)を有する。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前、FEVは、予測値の70%超であった。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前、FEVは、予測値の70%超且つ90%未満であった。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前、FEVは、予測値の少なくとも75%であった。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前、FEVは、予測値の少なくとも75%且つ90%未満であった。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前、FEVは、予測値の少なくとも80%であった。いくつかの実施形態では、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前、FEVは、予測値の少なくとも80%且つ90%未満であった。
【0102】
ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する強化された応答の予測
一態様では、本開示は、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する喘息患者の治療応答を予測する方法であって、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントの投与前に、本明細書に記載される通りに喘息のSARP臨床クラスターを判定することを含む方法を提供する。
【0103】
いくつかの実施形態では、方法は、SARP臨床クラスターがクラスター3又はクラスター5であると判定される場合、ベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントに対する強化された応答を予測することを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、方法は、患者の喘息のSARP臨床クラスターがクラスター3又はクラスター5であると判定される場合、患者にベンラリズマブ又はその抗原結合フラグメントを投与することを更に含む。
【0105】
下記の実施例で本発明を更に例示するが、当然のことながら、本発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。
【実施例
【0106】
実施例1
背景
喘息は、個体群統計的、臨床的及び/又は病態生理学的特徴の異なるクラスターにより様々な表現型に分類され得る異質性の疾患である。2010年に、国立心肺血液研究所の重症喘息研究プログラム(SARP)は、726人の対象における教師なし階層的クラスター分析を用いて、5つの異なる喘息の臨床表現型(すなわちクラスター1、2、3、4及び5)を同定した。Moore,W.C.et al.,Am J Respir Crit Care Med.181:315-323(2010)を参照されたい。
【0107】
SIROCCO(Bleeker,E.R.et al.,Lancet 388:2115-2127(2016))及びCALIMA(FitzGerald,J.M.et al.,Lancet 388:2128-2141(2016))第三相臨床試験において、ベンラリズマブは、高投与量の吸入コルチコステロイド(ICS)/長時間作用型β2作動薬を投与されている、ベースライン血中好酸球数が≧300細胞/μLである、重症の管理されていない喘息を患う患者の喘息の増悪を有意に低減させ、肺機能を改善した。本実施例では、SIROCCO/CALIMA研究に無作為抽出された患者は、プラセボと比較したベンラリズマブの治療効果の差を有する患者の亜表現型の可能性を評価するために、SARP臨床クラスター(図1を参照されたい)を介して特徴付けられた。
【0108】
方法
48週間SIROCCO(n=1,082)(Bleeker,E.R.et al.,Lancet 388:2115-2127(2016)及び56週間CALIMA(n=1,199)研究から患者(N=2,281)に関するデータを統合した。(FitzGerald,J.M.et al.,Lancet 388:2128-2141(2016)。これらの研究では、採用は、血中好酸球数が≧300細胞/μL及び<300細胞/μLの患者をそれぞれ約2:1の比で参加させることを目的とした。患者は、無作為抽出されて、4週毎(Q4W)若しくは8週毎(最初の3用量はQ4W)のいずれかでのベンラリズマブ30mg又はプラセボを皮下投与された。これらの分析におけるベンラリズマブ治療アームに関してデータを組み合わせた。
【0109】
以下の11種の臨床的特徴を用いる判別関数によって患者をSARP臨床クラスターに割り当てた:1秒強制呼気量(FEV)、強制肺活量(FVC)、FEV/FVC、最大気管支拡張薬(BD)後FEV、最大BD後FVC、BD後FEVのパーセント変化、喘息発病時の年齢、喘息の継続期間、性別、β2作動薬の使用頻度及び高用量吸入コルチコステロイド(ICS)の用量。Moore,W.C.et al.,Am J Respir Crit Care Med.181:315-323(2010)を参照されたい。ベースライン臨床的特徴と、クラスター、治療群及びベースライン血中好酸球数(<300細胞/μL及び≧300細胞/μL)にわたる応答とを比較した。更に、増悪率、増悪率の低減及び肺機能の測定値をクラスカル・ワリス検定で分析した(名目p値)。
【0110】
結果
全ての血中好酸球数にわたり統合されたSIROCCO/CALIMA患者の個体群統計及びベースライン臨床的特徴を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
SIROCCO/CALIMAからの患者を5種のSARPクラスターの4種に分類した。図2を参照されたい。患者の17%をクラスター2に分類した(n=393)。これらのうち、81%は、ファディアトープ検定によりアトピー性であり、喘息発病の平均年齢は、15歳であった。患者の28%をクラスター3に分類した(n=641)。これらのうち、50%は、ファディアトープ検定によりアトピー性であり、喘息発病の平均年齢は、47歳であった。患者の17%をクラスター4に分類した(n=386)。これらのうち、82%は、ファディアトープ検定によりアトピー性であり、喘息発病の平均年齢は、11歳であった。患者の38%をクラスター5に分類した(n=861)。これらのうち、55%は、ファディアトープ検定によりアトピー性であり、持続性の気流閉塞を患い、喘息発病の平均年齢は、33歳であった。これらのクラスターは、異なる個体群統計及びベースライン臨床的特徴を有する個別の患者亜集団を構成する(表2を参照されたい)。
【0113】
【表2】
【0114】
全てのクラスターにおける血中好酸球数にわたり統合された患者は、ベンラリズマブを用いた年間増悪率がプラセボと対比して低減した(図3及び表3を参照されたい)。
【0115】
【表3】
【0116】
遅発性喘息を伴うクラスターは、年間増悪率の低減が最大であった。具体的には、クラスター3は、年間増悪率の低減が
-48%(p<0.0001)であり、クラスター5は、年間増悪率の低減が-50%(p<0.0001)であった。各クラスターを血中好酸球数≧300細胞/μL対<300細胞/μLの患者で更に亜分類すると、≧300細胞/μLの患者は、より顕著な増悪率の低減を経験した(表4)。
【0117】
【表4】
【0118】
早発性クラスターであるクラスター2の年間増悪率の低減は、-24%(p=0.08)であった。別の早発性クラスターであるクラスター4の年間増悪率の低減は、-34%(p=0.28)であった。クラスター3及びクラスター5(いずれも遅発性クラスター)は、年間増悪率の低減がそれぞれ-57%(p<0.0001)及び-53%(p<0.0001)であった。
【0119】
肺機能の改善は、クラスター3、4及び5ではベンラリズマブがプラセボと対比してより高く、同時に気管支拡張薬後応答に対する効果を維持した(図4及び5を参照されたい)。クラスター3(+130mL;p=0.0005)及びクラスター5(+160mL;p<0.0001)は、プラセボと対比して、ベンラリズマブを用いたベースラインからのFEVの改善が最大であった。クラスター5のFEVは、ベースラインと対比して410mL増加した(p<0.0001)。
【0120】
結論
SARPクラスターから同定した11種のベースライン臨床的変数を用いたクラスター分析によれば、SIROCCO/CALIMA研究からの喘息を患う患者は、クラスター2、3、4及び5に分類された。大半の患者は、遅発性の重症喘息を伴うクラスター3及び5に割り当てられた。ベンラリズマブ治療は、全てのクラスターにわたり年間増悪率の低減をもたらしたが、ベースライン血中好酸球数全体にわたって評価すると、低減は、クラスター2及び4(早発性疾患)と比較してクラスター3及びクラスター5(遅発性疾患を患う患者)でより大きかった。ベンラリズマブの治療は、全てのクラスターにわたり予測FEV%及び予測FVC%として表される気管支拡張薬前の肺機能も改善し、クラスター5(重症の気道閉塞疾患を患う患者)で大きい改善があった。FVCの改善と共に、BD後応答に対する影響を維持しながらのFEVの改善(予測%)は、気道の再形成及び/又は粘液栓における変化が気流閉塞の低減をもたらすことを示唆する。一般に、ベースライン血中好酸球数によりクラスターを階層化すると、ベンラリズマブ治療後の肺機能の改善及び増悪率は、<300細胞/μLの患者と対比して≧300細胞/μLの患者で更に改善されていた。
【0121】
この研究は、より大きいAERの低減及び改善された肺機能によって証明される、ベンラリズマブを用いた治療に対する強化された応答が、SARPクラスター2及び4と比較して、SARPクラスター3及び5に該当する遅発性喘息患者において観察されたことを示す。
【0122】
当業者は、本明細書に記載される本開示の具体的な態様に対する多くの均等物を理解するか、又は日常の実験のみを用いて確認することができるであろう。こうした均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0123】
様々な刊行物が本明細書に引用されるが、それらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0124】
前述の本発明は、理解を明瞭にすることを意図して、図面及び実施例を介してある程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更形態及び修正形態がなされ得ることが明白であろう。
【0125】
配列表
配列番号1(米国特許出願公開第20100291073号明細書からの配列1)
生物:ホモサピエンス(Homo sapiens)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGTSEDIINYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGYTLPYTFGQGTKVEIK
配列番号2(米国特許出願公開第20100291073号明細書からの配列2)
生物:ホモサピエンス(Homo sapiens)
【化1】
配列番号3(米国特許出願公開第20100291073号明細書からの配列3)
生物:ホモサピエンス(Homo sapiens)
【化2】
配列番号4(米国特許出願公開第20100291073号明細書からの配列4)
生物:ホモサピエンス(Homo sapiens)
【化3】
配列番号5(米国特許出願公開第20100291073号明細書からの配列5)
生物:ホモサピエンス(Homo sapiens)
【化4】
配列番号6(米国特許出願公開第20100291073号明細書からの配列6)
生物:ハツカネズミ(Mus musculus)
【化5】
配列番号7-VH CDR1
SYVIH
配列番号8-VH CDR2
YINPYNDGTKYNERFKG
配列番号9-VH CDR3
EGIRYYGLLGDY
配列番号10-VL CDR1
GTSEDIINYLN
配列番号11-VL CDR2
HTSRLQS
配列番号12-VL CDR3
QQGYTLPYT
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022550723000001.app
【国際調査報告】