(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】使用感が改善された微細粒子構造の増粘剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221128BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221128BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221128BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221128BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221128BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221128BHJP
A23L 29/288 20160101ALI20221128BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20221128BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61K8/31
A61Q1/00
A61K9/06
A61K47/32
A23L29/288
C09K23/52
C09K3/00 103G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519023
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2020012951
(87)【国際公開番号】W WO2021060869
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0117774
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0116124
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ・ジン・ボン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウン・ベ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・スン・シム
【テーマコード(参考)】
4B041
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE01
4B041LP25
4C076AA06
4C076EE13
4C076FF17
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC122
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083CC05
4C083DD33
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF05
(57)【要約】
本発明は、使用感が改善された微細粒子構造の増粘剤に関する。本発明による増粘剤は、水分相で膨潤(swelling)されても粒子の形態を維持するだけでなく、均一な粒子が分散して外観が透明で且つ安定性も高いという長所を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体を含む水相;及び溶解度パラメータ(solubility parameter)が15(MPa)1/2以上である非極性有機溶媒を含む油相を含む水中油型エマルジョン組成物を製造する段階;
60℃以上に加温して油中水型の逆相エマルジョン組成物を製造する段階;及び
反応開始剤を添加して重合反応させて架橋結合重合体を製造する段階を含むことを特徴とする、増粘剤の製造方法:
【化1】
【請求項2】
化学式1で表現される化合物は、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(2-Acrylamido-2-methylpropane Sulfonic acid、AMPS)であることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項3】
化学式1で表現される化合物の含量は、化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体の総重量に対して95~99.5重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項4】
架橋性単量体は、2個以上のアクリレート基、2個以上のアクリルアミド基又は2個以上のビニル基を有する化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項5】
架橋性単量体の含量は、化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体の総重量に対して0.5~5重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項6】
非極性有機溶媒は、炭素数7~17の炭化水素オイルであることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項7】
油相は、一つ以上の界面活性剤を追加で含み、
前記界面活性剤の総HLB値は、6~14であることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項8】
HLB値が3~8である界面活性剤とHLB値が8~16である界面活性剤の2種の界面活性剤を用いることを特徴とする、請求項7に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項9】
反応開始剤は、過酸化物及びアゾ化合物からなるグループから選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項10】
重合反応は、60℃以上で2~6時間の間行われることを特徴とする、請求項1に記載の増粘剤の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法により製造された増粘剤を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項12】
組成物は、化粧料、医薬品、食品安定剤又は滑剤の製造のためのものであることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用感が改善された微細粒子構造の増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水分散増粘剤は、柔らかく厚み感がある展延性を有し、仕上げ感が落ち、多く使用するほどべたつきが高いという短所を有する。
【0003】
このため、シルキーな使用感を有するAMPS(2-Acrylamido-2-methylpropane Sulfonic acid)系増粘剤が報告されている。前記AMPS系増粘剤は、一般的に、沈澱重合法により合成されることが知られている(特許文献1)。前記沈澱重合法を通じて合成すると、増粘剤粒子が無定形状態で存在するので、不規則的な形態で水相に分散して膨潤(swelling)されて剤形の粘度を高めて安定性を付与する。しかし、前記沈澱重合法により収得された増粘剤は、水相に分散するとき、不透明なので透明剤形に適用しにくい。したがって、多様な剤形の開発時に限界が発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用感が改善された微細粒子構造の増粘剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体を含む水相;及び溶解度パラメータ(solubility parameter)が15(MPa)1/2以上である非極性有機溶媒を含む油相;を含む水中油型エマルジョン組成物を製造する段階;
60℃以上に加温して油中水型の逆相エマルジョン組成物を製造する段階;及び
反応開始剤を添加して重合反応させて架橋結合重合体を製造する段階を含む増粘剤の製造方法を提供する。
【0007】
【0008】
また、本発明は、上述した製造方法により製造された増粘剤を含む組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、PIT(phase inversion temperature)重合法を用いて小さい粒子サイズを有する均一な逆相エマルジョン相で重合反応が進行されるようにして均質な微細粒子形態の増粘剤を製造することができる。本発明により製造された球状粒子形態の増粘剤は、水分相で膨潤(swelling)されても粒子の形態を維持するだけでなく、均一な粒子が分散されて外観が透明で且つ安定性も高いという長所を有する。
【0010】
沈澱重合法により合成される大部分の増粘剤は、無定形の形態で鎖がねじれた構造を有し、水相に分散するものとは異なり、本発明により製造(重合)される増粘剤は、微細粒子の形態で水分散されて剤形内でも形態を維持し得る。また、皮膚に塗布するとき、粒子間の物理的結合構造が容易に崩れて展延性、水分感、栄養感などの使用感が改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施例で製造された増粘剤の透明性を比較した写真を示す。
【
図2】
図2は、本発明の実施例で製造された球形微細粒子の形態を測定した結果を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施例2及び比較例1で製造された増粘剤の粒子を比較した写真を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施例で製造された球形微細粒子の形態を測定した結果を示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施例で製造された増粘剤の流変物性を測定した結果を示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施例で製造されたクリームの光学イメージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、(1)下記化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体を含む水相;及び溶解度パラメータ(solubility parameter)が15(MPa)1/2以上である非極性有機溶媒を含む油相を含む水中油型エマルジョン組成物を製造する段階;
(2)60℃以上に加温して油中水型の逆相エマルジョン組成物を製造する段階;及び
(3)反応開始剤を添加して重合反応させて架橋結合重合体を製造する段階を含む増粘剤の製造方法を提供する。
【0013】
【0014】
以下、本発明の構成を具体的に説明する。
【0015】
本発明では、PIT(phase inversion temperature)重合法を用いて増粘剤を製造する。
【0016】
具体的に、本発明では、溶解度パラメータ(solubility parameter)が15(MPa)1/2以上である非極性有機溶媒、水、界面活性剤、具体的に、HLB値が3~8である界面活性剤とHLB値が8~16である界面活性剤の2種、又はHLB値が5~7である界面活性剤とHLB値が9~11である界面活性剤の2種の適切な組み合わせにより、常温では水中油(o/w)エマルジョン相(phase)であるが、一定温度以上で油中水(w/o)エマルジョン相(phase)に転換されるPIT(phase inversion temperature)重合法を用いて小さい粒子サイズを有する均一な逆相エマルジョン相で重合反応が進行されるようにする。これを通じて、本発明では、均質な微細粒子形態の増粘剤を製造することができる。前記方式で重合された球形微細粒子形態の増粘剤は、水分相で膨潤(swelling)されても粒子の形態を維持するだけでなく、均一な粒子が分散されて外観が透明で且つ安定性も高いという長所がある。
【0017】
本発明では、「増粘剤」は、本発明の製造方法によって製造された架橋結合重合体を意味し、前記架橋結合重合体が分散した溶液を意味してもよい。
【0018】
本発明で、段階(1)は、下記化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体を含む水相;及び溶解度パラメータ(solubility parameter)が15(MPa)1/2以上である非極性有機溶媒を含む油相を含む水中油型エマルジョン組成物を製造する段階である。
【0019】
前記水相は、下記化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体を含む。
【0020】
一具体例で、化学式1で表現される化合物は、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(2-Acrylamido-2-methylpropane Sulfonic acid、AMPS)であってもよい。
【0021】
前記化学式1で表現される化合物の含量は、特に制限されず、化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体の総重量(100重量部)に対して95~99.5重量部であってもよい。
【0022】
一具体例で、架橋性単量体は、2個以上のアクリレート基、2個以上のアクリルアミド基又は2個以上のビニル基を有する化合物であってもよい。このような架橋性単量体として、例えば、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate、TMPETA)、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルアセチレン、ポリグリコールジアクリレート、ポリグリコールトリアクリレート及び4-arm-ポリグリコールテトラアクリレートなどからなるグループから選択された一つ以上を用いることができる。本発明では、具体的に、下記化学式2で表現される化合物であるトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate、TMPETA)を用いることができる。前記TMPETAは、架橋点が3個である化合物であって、架橋物の分子量を向上させ得、これを通じて粘度を向上させ得る。
【0023】
【0024】
前記架橋性単量体の含量は、特に制限されず、化学式1で表現される化合物及び架橋性単量体の総重量(100重量部)に対して0.5~5.0重量部であってもよい。
【0025】
一具体例で、水相の溶媒は、水(蒸溜水)であってもよい。
【0026】
一具体例で、水相のpHは、5~9であってもよい。前記pHは、アンモニア水を用いて調節することができる。
【0027】
本発明で油相は、有機溶媒及び界面活性剤を含むことができる。
【0028】
一具体例で、有機溶媒は、溶解度パラメータ(solubility parameter)が15(MPa)1/2以上である非極性有機溶媒であってもよく、具体的に、炭素数7~17の炭化水素オイルであってもよく、炭素数7~17の直鎖の飽和炭化水素オイルであってもよい。前記溶解度パラメータは、当業者によく知られており、物質の相溶性及び溶解度を決定するための指針として慣例的に用いられる。
【0029】
本発明では、このような非極性有機溶媒としてヘプタン(Heptane)を用いることができる。
【0030】
前記ヘプタンは、沸点が98℃であって、他の有機溶媒と比較して本発明による重合工程で制約を受けない。有機溶媒のうち一つであるヘキサン(Hexane)の場合、沸点が68℃であるので、合成温度を60℃以上に上げられないため工程上の制約を多く受けるという問題点がある。工程時の開始剤投入過程で、爆発的な反応により発熱が発生して反応器の内部温度が約5~10℃上がる危険が存在する。反応温度の恒常性を維持するために開始剤をゆっくり投入する方法は、大量生産工程で適用するとき、工程時間の増加を引き起こし、これは生産コストを高めるという短所を有する。また、沸点以上に加温すると、反応物がポンピングされて反応器が爆発する危険性が高くなるので、大量生産時には反応熱の管理が非常に重要な要素である。したがって、本発明では、有機溶媒にヘプタンを用いることによって、工程上の制約なしに本発明が目的とする増粘剤を容易に製造することができる。
【0031】
一具体例で、界面活性剤として一つ以上の界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤のHLB値は、6~14、7~10又は8~9であってもよい。このとき、総HLB値は、一つの界面活性剤を用いる場合、前記一つの界面活性剤のHLB値を意味し、二つ以上の界面活性剤を用いる場合、二つ以上の界面活性剤のHLB値の和を意味することができる。前記総HLB値が6以下である場合、界面活性剤の強い疎水性のため、常温から油中水型の逆相エマルジョンで存在して転相過程なしに重合されるので、エマルジョンのサイズが小さくなる効果が十分ではないことがある。また、総HLB値が14以上である場合、界面活性剤の強い親水性のため、外相が水相である水中油型エマルジョンが維持されて球形粒子が形成されないので、製造された増粘剤の無定形状態の増加する恐れがある。
【0032】
一具体例で、界面活性剤として2種の界面活性剤を用いることができる。この場合、HLB値が3~8である界面活性剤とHLB値が8~16である界面活性剤を組み合わせて用いることができ、又は、HLB値が5~7である界面活性剤とHLB値が9~11である界面活性剤を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明では、界面活性剤としてポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(Polyoxyethylene(3)oleyl ether、HLB=6.6)及びポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(Polyoxyethylene(6)oleyl ether、HLB=9.6)を組み合わせて用いることができる。具体的に、ポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(Polyoxyethylene(3)oleyl ether、HLB=6.6)及びポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(Polyoxyethylene(6)oleyl ether、HLB=9.6)を1:1の重量比で組み合わせて用いることができ、このとき、HLB値は、8.1であってもよい。
【0034】
前記界面活性剤の含量は、特に制限されず、有機溶媒の種類によって変わることができる。具体的に、前記界面活性剤の含量は、有機溶媒の全体重量(100重量部)に対して5~30重量部であってもよい。前記含量範囲でエマルジョンの転相が可能であり、PIT重合が容易に行われ得る。
【0035】
一具体例で、水相及び油相の重量比は、30:70~70:30であってもよい。
【0036】
本発明で、段階(2)は、60℃以上に加温して油中水型の逆相エマルジョン組成物を製造する段階である。
【0037】
段階(1)で製造されたエマルジョンは、常温で水中油型を有するが、加温によって油中水型のエマルジョンに転相され得る。前記転相により生成されるエマルジョンは、エマルジョンのサイズが小さくなる効果を有することができ、後述した段階で製造される重合体の粒子サイズが小さいという効果を有する。
【0038】
一具体例で、反応温度は、具体的に、62℃以上、65℃以上、70℃以上又は75℃であってもよく、その上限は、100℃であってもよい。前記温度範囲で安定的に増粘剤を製造することができる。
【0039】
本発明で、段階(3)は、反応開始剤を添加して重合反応させて架橋結合重合体を製造する段階である。
【0040】
一具体例で、反応開始剤の種類は、ラジカル重合を始める能力を有するものであれば特に制限されず、例えば、過酸化物及びアゾ化合物などからなるグループから選択され得る。前記過酸化物開始剤として、benzoyl peroxide、acetyl peroxide、dilauryl peroxide、di-tert-butyl peroxide、cumyl hydroperoxide、hydrogen peroxide、potassium persulfateなどを用いることができ、アゾ化合物開始剤として、Azo nitrile、Azo ester、Azo amide、Azo imidazolin、Azo amidine、Macro Azo initiatorなどを用いることができる。本発明では、開始剤として4,4’-Azobis(4-cyanovaleric acid)を用いることができる。
【0041】
本発明では、逆相エマルジョンを製造した後、開始剤を添加及び反応させて本発明が目的とする粘度を有する架橋結合重合体、すなわち、増粘剤を得ることができ、前記増粘剤の収得率を高めることができる。本発明では、上述した製造方法により製造される架橋結合重合体が形成された溶液を増粘剤として用いることができ、また、前記溶液を沈降剤で沈降させてパウダー形態の増粘剤を最終製造してもよい。このとき、沈降剤としてアセトンなどを用いることができる。
【0042】
一具体例で、前記段階は、65℃以上で2~6時間の間行うことができる。
【0043】
また、本発明は、上述した増粘剤の製造方法により製造された増粘剤を提供する。
【0044】
本発明による増粘剤は、球形の微細粒子形態を有し、水、エタノール又は水-エタノール混合溶液中で膨潤し、外観上肉眼的に均一な高粘度溶液を提供することができる。
【0045】
本発明によって製造された増粘剤は、10~300μmの平均粒径を有することができる。
【0046】
また、本発明で製造された増粘剤は、1%(w/v)水分散液で25℃での粘度が500~70,000cPs、又は5,000~50,000cPsであってもよい。
【0047】
また、本発明は、上述した増粘剤を含む化粧料組成物を提供する。
【0048】
増粘剤の含量は、特に制限されず、目的とする化粧料によって適切に決定され得る。使用性の観点から、前記増粘剤は、0.01~10重量%、又は0.1~5重量%で含まれ得る。
【0049】
化粧料は、剤形によって油性基剤、界面活性剤、粉体、保湿剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、薬剤、染料、顔料、香料、水などを発明の効果を損傷させない範囲で適切に配合して製造することができる。
【0050】
本発明の化粧料の種類は、特に制限されない。例えば、基礎化粧料、メーキャップ化粧料、パック化粧料、毛髪化粧料などに応用することができる。
【0051】
また、本発明による増粘剤は、医薬品、食品安定剤又は滑剤組成物に用いられ得る。このとき、増粘剤の含量は、その使用目的によって適切に調節され得、公知の追加の成分を含むことができる。
【0052】
以下、本発明を実施例を通じて詳しく説明する。下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。本実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義される。
【実施例】
【0053】
比較例1
【0054】
溶媒であるtert-ブタノール(tert-butanol)100gにアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(2-Acrylamido-2-methylpropane Sulfonic acid、AMPS)17gと炭化水素アンモニウム(Ammonium bicarbonate)6.5gを入れて70℃で十分にとかした後、架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacyrlate)1.6gをtert-ブタノール6.4gにとかして添加した。最後に、ジラウロイルペルオキシド(dilauroyl peroxide)0.2gを添加して2時間反応させ、アセトンで増粘剤を沈降して収得した。
【0055】
実施例1
【0056】
水相:蒸溜水63gにアクリルアミドジメチプロパンスルホン酸17gとトリメチロールプロパントリエトキシレートトリアクリレート(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)0.5gをとかした後、アンモニア(Ammonia)水でpH7-9に中和させた。
【0057】
油相:ヘプタン(Hepane)80gにポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(Polyoxyethylene(3)oleyl ether)とポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(Polyoxyethylene(6)oleyl ether)をそれぞれ10gずつ入れてよく混ぜた。
【0058】
水相と油相を反応器に入れて70℃に加温した後、開始剤4,4’-Azobis(4-cyanovaleric acid)を0.1gを入れて3時間反応させ、アセトンで増粘剤を沈降して収得した
【0059】
実施例2
【0060】
水相:蒸溜水63gにアクリルアミドジメチプロパンスルホン酸17gとトリメチロールプロパントリエトキシレートトリアクリレート1.0gをとかした後、アンモニア水でpH7-9に中和させた。
【0061】
油相:ヘプタン80gにポリオキシエチレン(3)オレイルエーテルとポリオキシエチレン(6)オレイルエーテルをそれぞれ10gずつ入れてよく混ぜた。
【0062】
水相と油相を反応器に入れて70℃に加温した後、開始剤4,4’-Azobis(4-cyanovaleric acid)を0.1gを入れて3時間反応させ、アセトンで増粘剤を沈降して収得した。
【0063】
実施例3
【0064】
水相:蒸溜水63gにアクリルアミドジメチプロパンスルホン酸17gとトリメチロールプロパントリエトキシレートトリアクリレート1.5gをとかした後、アンモニア水でpH7-9に中和させた。
【0065】
油相:ヘプタン80gにポリオキシエチレン(3)オレイルエーテルとポリオキシエチレン(6)オレイルエーテルをそれぞれ10gずつ入れてよく混ぜた。
【0066】
水相と油相を反応器に入れて70℃に加温した後、開始剤4,4’-Azobis(4-cyanovaleric acid)を0.1gを入れて3時間反応させ、アセトンで増粘剤を沈降して収得した。
【0067】
比較例2
【0068】
水相:蒸溜水63gにアクリルアミドジメチプロパンスルホン酸17gとトリメチロールプロパントリエトキシレートトリアクリレート1.0gをとかした後、アンモニア水でpH7-9に中和させた。
【0069】
油相:ヘキサン(Hexane)80gにポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル10gとポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル5gをそれぞれ入れてよく混ぜた。
【0070】
水相と油相を反応器に入れて70℃に加温した後、開始剤4,4’-Azobis(4-cyanovaleric acid)を0.1gを入れて3時間反応させ、アセトンで増粘剤を沈降して収得した。
【0071】
実験例1.透明性の比較
【0072】
比較例1及び実施例2で製造された組成物(増粘剤)の透明性を比較した。
【0073】
【0074】
図1で、左側容器は、比較例1重合された増粘剤の1%(w/v)水溶液を含む容器であり、右側容器は、実施例2で重合された増粘剤の1%水溶液を含む容器を示す。
【0075】
前記
図1に示したように、比較例1で製造された増粘剤は不透明であるが、実施例で製造された増粘剤は、水溶液上で透明であることが確認できる。
【0076】
実験例2.球形粒子形態の測定
【0077】
実施例及び比較例で製造された球形粒子の形態を測定した。
【0078】
図2は、実施例2で製造された増粘剤の粒子であって、具体的に、
図2で、(a)は、実施例2で重合反応時に形成される水中油エマルジョンの液滴状態(70℃)を示し、(b)は、重合された微細粒子増粘剤のhydrodynamic volume sizeを示し、(c)は、増粘剤を含む水溶液の光学イメージを示す。
【0079】
前記
図2に示したように、実施例2により製造された増粘剤は、球形の粒子形態で存在することが確認できる。
【0080】
図3は、比較例1(a)及び実施例2(b)で製造された増粘剤の粒子を比較した結果(光学イメージ)を示す。
【0081】
前記
図3に示したように、比較例1で重合された増粘剤では、微細粒子が確認できない。実施例2による方法で重合される場合、水溶液中に微細粒子相の増粘剤が存在することが確認できる。
【0082】
一方、
図4は、実施例2及び比較例2で重合された微細粒子増粘剤のhydrodynamic volume size比較結果を示す。
【0083】
前記
図4に示したように、ヘプタンを有機溶媒で用いた実施例2の増粘剤がヘキサンを用いた場合より高いボリュームサイズを有することが確認できる。
【0084】
実験例3.粘度比較
【0085】
実施例2及び比較例2で製造された増粘剤の粘度をBrookefield LVT(Brookefield、MA)を用いて64 spindle、10~30rpmの条件で測定した。
【0086】
前記粘度は、増粘剤を1%(w/v)含む水溶液に対して測定した。
【0087】
結果、比較例2の増粘剤を含む水溶液の粘度は、2,000cPs、実施例2の増粘剤を含む水溶液の粘度は、14,000cPsであると測定された。
【0088】
前記測定結果を通じて、本発明による増粘剤の粘度が比較例に比べて向上することが確認できる。
【0089】
実験例4.流変物性の比較
【0090】
製造された増粘剤の流変物性を測定した。流変物性は、Discovery hr-3 hybrid rheometer(TA Instruments)を用いて測定した。
【0091】
【0092】
図5で、(a)及び(b)は、それぞれ比較例1及び実施例2で製造された増粘剤の流変物性測定結果を示す。
【0093】
流変学的に高分子溶液内で高分子チェーンはねじれ構造を有しているため、高いせん断応力(shear stress)でねじれ構造が緩む現象が発生するが、この構造が完全に緩む直前にこれに抵抗する現象が発生する。これをオーバーシューティング(overshooting)現象と言うが、無定形状態の比較例1では、このような現象が発生することが確認できる。
【0094】
一方、実施例2は、増粘剤が微細粒子形態で存在するため、高いせん断応力でオーバーシューティング現象がほとんどなしに構造が崩れる現象が発生することが確認できる。このような流変学的な特徴のため、本発明による増粘剤は、化粧品剤形で使用感、特に、展延性が向上するものと判断される。
【0095】
製造例1.エマルジョンクリーム剤形
【0096】
下記表1の成分及び含量でクリームを製造した。
【表1】
【0097】
実験例4.使用感パネル評価
【0098】
(1)方法
トレーニングされたパネル20人を選定して使用感評価を進行した。
前記使用感評価は、柔らかさ、厚み感、水分感及びべたつきを対象としてそれぞれ5点満点で進行した。
【0099】
【0100】
前記表2に示したように、クリーム3が柔らかさ及び厚み感の項目で最も高い評価を得たことが確認できる。
具体的に、比較例1の増粘剤の水溶液0.4%(w/v)での粘度は、5,500cPsであるが、<クリーム1>剤形に適用したとき、4,000cPsに減少する一方、実施例2の増粘剤は、水溶液0.4%(w/v)での粘度は、1,500cPsであるが、<クリーム3>剤形に適用したとき、6,500cPsに増加することが確認できる。
【0101】
一方、
図6は、クリーム1(a)及びクリーム3(b)の光学イメージを示す。
【0102】
図6に示したように、剤形を光学顕微鏡で調査した結果、剤形内の増粘剤の球状粒子が共存して剤形の流動性に影響を与えて一層安定的な剤形を形成したことが確認できる。
【0103】
比較例1の増粘剤は、剤形内でねじれ構造が乳化剤により収縮現象が発生して粘度が低くなる一方、実施例2の増粘剤は、粒子形態としてhydrodynamic volumeを有しているので、乳化剤の影響を大きく受けないと共に剤形内でも一定体積を維持していることから、剤形内での流動性を妨害する乳化粒子と微細粒子の共存により増粘効果が倍加したと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明ではPIT(phase inversion temperature)重合法を用いて小さい粒子サイズを有する均一な逆相エマルジョン相で重合反応が進行されるようにして均質な微細粒子形態の増粘剤を製造することができる。本発明により製造された球状粒子形態の増粘剤は、水分相で膨潤(swelling)されても粒子の形態を維持するだけでなく、均一な粒子が分散されて外観が透明で且つ安定性も高いという長所を有する。
【国際調査報告】