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特表2022-550734ウデナフィル組成物を用いた単心室心疾患における運動能力、単心室性能、および心筋性能指数(MPI)を改善する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ウデナフィル組成物を用いた単心室心疾患における運動能力、単心室性能、および心筋性能指数(MPI)を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20221128BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P9/00
A61K45/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519057
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2020032493
(87)【国際公開番号】W WO2021061203
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/905,350
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/936,497
(32)【優先日】2019-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/023,070
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】517023378
【氏名又は名称】メジオン ファーマ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イエーガー,ジェイムズ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ デビッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パリドン,ステファン エム.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA06
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZC201
4C084ZC202
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZA36
4C086ZC20
(57)【要約】
ウデナフィル組成物を用いた、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における運動能力、単心室性能、心拍出量、および心筋性能指数(MPI)を改善するための、フォンタン手術を受けた患者(フォンタン術後患者)を含む単心室心疾患(SVHD)患者を治療する種々の方法。本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善するために、フォンタンを含むSVHD患者に有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を投与することを含む。さらに、本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者のMPIを改善するために、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を投与することを含む。本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の心拍出量を改善するために、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を投与することをさらに含む。本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において以下のうちの少なくとも1もしくは複数または全てを改善するために、少なくとも6歳の、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を投与することをさらに含む:(a)MPIによって評価される、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室の心室性能;(b)無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;(d)VAT時の仕事率;(e)VAT時のVE/VCO;安静時の拡張期血圧;および、(g)安静時の酸素飽和度(%)。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォンタン手術を受けた患者(フォンタン術後患者)の運動耐容能を改善するための、前記患者を治療する方法であって、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩をフォンタン術後患者に毎日投与し、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加させることで、前記フォンタン術後患者の運動耐容能を改善すること、
を含む、方法。
【請求項2】
VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO)を改善することで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
最高運動耐容能時の酸素消費量を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO)を改善することで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が青年患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が約12歳~約19歳である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が約12歳~約18歳である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
フォンタン術後患者の運動耐容能を治療する方法であって、
87.5mgのウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記患者に投与し、VAT時の酸素消費量を増加させることで、前記フォンタン術後患者の運動耐容能を改善すること、
を含む、方法。
【請求項13】
VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO)を改善することで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
最高運動耐容能時の酸素消費量を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO)を改善することで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
VAT時の仕事率を増加させることで、フォンタン術後患者の運動耐容能を改善する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
フォンタン術後患者に生じる副作用が最小限であるかまたは無い、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
フォンタン術後患者に生じる副作用が最小限であるかまたは無い、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
フォンタン術後患者において生理機能低下速度の減少を含む有益な作用をもたらす、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
フォンタン術後患者の無症状生存期間を延長することを含む、フォンタン術後患者に対する有益な作用をもたらす、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
フォンタン術後患者において生理機能低下速度の減少を含む、フォンタン術後患者に対する有益な作用をもたらす、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
フォンタン術後患者の無症状生存期間を延長することを含む、フォンタン術後患者に対する有益な作用をもたらす、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者において静脈容量を増加させ、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
フォンタン術後患者に有効1日量のホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5i)の投与を毎日行うことで、フォンタン術後患者の静脈容量を増加させ、VAT時のフォンタン術後患者の酸素消費量を増加させて、VAT時のフォンタン術後患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項27】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者において血管拡張を誘導することで、患者の静脈容量を増加させ、患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加できるようにして、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
患者の血管拡張の誘導を毎日行うことで、患者の静脈容量を増加させ、患者のVAT時に患者により酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項28】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者における、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の5’-グアノシン一リン酸(5’-GMP)への変換を妨げることで、患者の血管拡張を誘導し、患者の静脈容量を増加させ、患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加できるようにして、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
患者におけるcGMPから5’-GMPへの変換の妨げを毎日行うことで、血管拡張を誘導し、患者の静脈容量を増加させ、患者のVATにおいて患者により酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項29】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者における、一酸化窒素誘導性の環状グアノシン一リン酸(cGMP)シグナルを増強することで、患者において血管拡張を誘導し、患者の静脈容量を増加させ、患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加できるようにして、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
患者におけるcGMPシグナルの増強を毎日行うことで、患者の静脈容量を増加させ、患者のVATにおいて患者により酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項30】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者における、環状グアノシン一リン酸(cGMP)分解を阻害することで、患者において血管拡張を誘導し、患者の静脈容量を増加させ、患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加できるようにして、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
患者においてcGMP分解の阻害を毎日行うことで、患者の静脈容量を増加させ、患者のVATにおいて患者により酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項31】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者(フォンタン術後患者)において、最高静脈容量を達成させることで、フォンタン術後患者が換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の最高酸素消費量を毎日達成できるようにし、さらに、フォンタン術後患者がVAT時の最高運動耐容能を毎日達成できるようにする、毎日法であって、
フォンタン術後患者に有効1日量のホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5i)の投与を毎日行うことで、フォンタン術後患者において最高静脈容量を達成させ、フォンタン術後患者がVAT時の最高酸素消費量を毎日達成できるようにし、フォンタン術後患者がVAT時の最高運動耐容能を毎日達成できるようにすること、
を含む、方法。
【請求項32】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者(フォンタン術後患者)において、最高静脈拡張を誘導することで、フォンタン術後患者が最高静脈容量を毎日達成できるようにし、さらに、フォンタン術後患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の最高酸素消費量を達成できるようにし、フォンタン術後患者がVAT時の最高運動耐容能を毎日達成できるようにする、毎日法であって、
フォンタン術後患者において最高静脈拡張の誘導を毎日行うことで、フォンタン術後患者において最高静脈容量を達成させ、フォンタン術後患者がフォンタン術後患者のVAT時の最高酸素消費量を毎日達成できるようにし、VAT時の最高運動耐容能がフォンタン術後患者によって毎日達成されるようにすること、
を含む、方法。
【請求項33】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者(フォンタン術後患者)において、環状グアノシン一リン酸(cGMP)からグアノシン5’-一リン酸(5’-GMP)への変換を妨げることで、最高静脈拡張を毎日誘導し、フォンタン術後患者における最高静脈容量を達成させ、フォンタン術後患者がフォンタン術後患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の最高酸素消費量を達成できるようにし、フォンタン術後患者がVAT時の最高運動耐容能を毎日達成できるようにする、毎日法であって、
フォンタン術後患者におけるcGMPから5’-GMPへの変換を毎日妨げることで、最高静脈拡張を毎日誘導し、フォンタン術後患者における最高静脈容量を毎日達成させ、フォンタン術後患者により最高酸素消費量を毎日達成させ、フォンタン術後患者が運動する場合は常に、フォンタン術後患者がVAT時の最高酸素消費量と運動耐容能を達成できるようにすること、
を含む、方法。
【請求項34】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者(フォンタン術後患者)における、一酸化窒素誘導性の環状グアノシン一リン酸(cGMP)シグナルを増強することで、患者において血管拡張を誘導し、患者の静脈容量を増加させ、患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加できるようにして、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
患者におけるcGMPシグナルの増強を毎日行うことで、患者の静脈容量を増加させ、患者のVATにおいて患者により酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項35】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者(フォンタン術後患者)における、環状グアノシン一リン酸(cGMP)分解を阻害することで、患者において血管拡張を誘導し、患者の静脈容量を増加させ、患者が患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量を増加できるようにして、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行う、毎日法であって、
患者においてcGMP分解の阻害を毎日行うことで、患者の静脈容量を増加させ、患者のVATにおいて患者により酸素消費量を増加させて、VAT時の患者の運動耐容能の改善を毎日行うこと、
を含む、方法。
【請求項36】
酸素を必要としており、且つ、第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有し、且つ、その静脈シャント、心房シャント、心室シャント、および動脈シャントが作動不能である、患者に対し、増加された要求に応じた酸素を供給することで、酸素を必要とする患者が利用可能な酸素を増加させて、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時に測定される運動耐容能を要求に応じて改善させる、毎日法であって、
患者において、増加された静脈容量が増加された経肺血流を毎日供給することを毎日可能にし、患者の肺を経た患者の増加された経肺血流を患者の中心静脈圧によって補助することで、患者が患者の増加された経肺血流によって増加された酸素摂取量を毎日達成することを可能にし、患者において増加された酸素を要求に応じて供給し、酸素を必要とする患者が利用可能な酸素を要求に応じて増加させ、VATにおいて測定される運動耐容能を要求に応じて増加させること、
を含む、方法。
【請求項37】
患者の運動強度を増加させながら測定した患者の最大酸素消費速度(最大VO2)が、前記酸素の要求に応じた増加なしの場合の患者の最大VO2と比較して改善される、請求項36に記載の毎日法。
【請求項38】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能性単心室症を有し、且つ、その静脈シャント、心房シャント、心室シャント、および動脈シャントが作動不能である、患者に対して、増加された酸素を要求に応じて供給することで、患者が、運動のために増加された酸素を必要とする場合に、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時に要求に応じて増加された仕事率を達成するのに十分な酸素を有するようにする、毎日法であって、
増加された静脈容量を患者において毎日誘導することで、患者の中心静脈圧によって補助された、増加された経肺血流を患者において毎日供給し、患者が患者の肺による増加された酸素摂取を達成することを可能にし、患者において十分な要求に応じた酸素を供給することで、患者が、運動のために酸素を必要とする場合に、患者のVAT時に増加された仕事率を達成するのに十分な要求に応じた酸素を有するようにすること、
を含む、方法。
【請求項39】
患者の運動強度を増加させながら測定した患者の最大酸素消費速度(最大VO2)が改善される、請求項38に記載の毎日法。
【請求項40】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能性単心室症を有し、且つ、その静脈シャント、心房シャント、心室シャント、および動脈シャントが作動不能である、患者に対して、増加された酸素を要求に応じて供給することで、患者が、酸素を必要とする場合に、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時に要求に応じて増加された運動時換気効率(VE/CO2勾配)を達成するのに十分な酸素を有するようにする、毎日法であって、
増加された静脈容量を患者において毎日誘導することで、患者の中心静脈圧によって補助された経肺血流を患者において毎日増加させ、患者が患者の肺による増加された酸素摂取を達成することを可能にし、患者において十分な要求に応じた酸素を供給することで、患者が、運動のために酸を必要とする場合に、患者のVAT時に増加されたVE/CO2勾配を達成するのに十分な要求に応じた酸素を有するようにすること、
を含む、方法。
【請求項41】
最高運動耐容能時の患者の酸素消費量が増加される、請求項40に記載の毎日法。
【請求項42】
第二の機能性心室が介在することなく、患者の体静脈還流が肺動脈に直接接続されている、機能的単心室を有する患者(フォンタン術後患者)における、静脈容量を増加させるかまたは増加の可能性を高めることで、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時のフォンタン術後患者の酸素消費量を増加させるかまたは増加の可能性を高める方法であって、
フォンタン術後患者に有効1日量のホスホジエステラーゼ5阻害剤(PDE5i)を投与することで、フォンタン術後患者の静脈容量を増加させるかまたは増加の可能性を高め、フォンタン術後患者のVAT時の酸素消費量を増加させるかまたは増加の可能性を高めること、
を含む、方法。
【請求項43】
最高VO2をその生理的上限またはその付近まで増加させ、且つ、VAT時のVO2を統計的に有意な量だけ増加させることにより、フォンタン術後患者における酸素利用率を増加させる方法であって、有効なPDE5阻害剤(PDE5i)の投与を含む、方法。
【請求項44】
前記PDE5iがウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
VAT時および最高VO時の両方における運動耐容能を改善することにより、フォンタン手術を受けた患者におけるSVHDを治療する方法であって、有効量の有効なPDE5阻害剤(PDE5i)を投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記PDE5iがウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
最高VO2をその生理的上限またはその付近まで増加させ、且つ、VAT時のVO2を統計的に有意な量だけ増加させることにより、フォンタン術後患者における運動耐容能を改善する方法であって、有効なPDE5阻害剤(PDE5i)を投与することを含む、方法。
【請求項48】
前記PDE5iがウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
フォンタン術後患者の酸素飽和度を増加させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
フォンタン術後患者の拡張期血圧を減少させる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
フォンタン術後患者における心血管効率の低下速度を減少させることを含む、フォンタン術後患者に対する有益な作用をもたらす、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩が、87.5mgのウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の1日2回投与を含む1日量で投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
表11に記載される組成物を含む医薬組成物。
【請求項54】
SVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善するための、機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療する方法であって、前記SVHD患者がSVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善するための治療を必要とする患者であり、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩をSVHD患者に毎日投与することで、SVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善すること、
を含む、方法。
【請求項55】
前記SVHD患者の心室性能がSVHD患者の心筋性能指数(MPI)によって評価される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記投与工程が、
87.5mgのウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を1日2回投与することで、前記有効量のウデナフィルをSVHD患者に投与すること、
を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
SVHD患者に生じる副作用が最小限であるかまたは無い、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩 有効量が約125mg~約175mgの範囲である、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の有効量が約175mgである、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩による毎日の治療を受けていないSVHD患者における機能的単心室の心室性能と比較して、SVHD患者において心室性能改善が増加されたものとなる、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
前記有効量が治療を制限する副作用を引き起こさない、請求項54~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記治療を制限する副作用がPDE6および/またはPDE11の阻害と関連している、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記SVHD患者が少なくとも6歳である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記SVHD患者が少なくとも8歳である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記SVHD患者が少なくとも10歳である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記SVHD患者が少なくとも12歳である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記SVHD患者が青年患者である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記SVHD患者が成人患者である、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記SVHD患者が少なくとも8歳である、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記SVHD患者が少なくとも10歳である、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記SVHD患者が少なくとも12歳である、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記SVHD患者が青年患者である、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記SVHD患者が成人患者である、請求項63~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療する方法であって、前記SVHD患者は心筋性能指数(MPI)によって評価される機能的単心室の心室性能、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、最大下運動負荷時もしくは最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、VAT時の仕事率、二酸化炭素換気当量(VE/VCO)、安静時の拡張期血圧、および/または安静時の酸素飽和度(%)を改善するための治療を必要としており、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記SVHDn患者に毎日投与することで、前記SVHD患者の、
(a)MPIによって評価されるSVHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;
(e)VAT時のVE/VCO
(f)安静時の拡張期血圧;および
(g)安静時の酸素飽和度(%)、
をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、改善すること、
を含む、方法。
【請求項78】
前記(a)、(b)、(d)、(e)、および(f)が改善される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記(a)、(b)、(d)、(e)、および(g)が改善される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記(a)、(b)、(d)、(e)、(f)、および(g)が改善される、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項70~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項70~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項70~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
心筋性能指数(MPI)によって評価される機能的単心室の心室性能、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、最大下運動負荷時もしくは最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、VAT時の仕事率、および二酸化炭素換気当量(VE/VCO)を改善するための治療を必要とする、機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療する方法であって、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記フォンタン術後患者に毎日投与することで、前記SVHD患者の、
(a)MPIによって評価されるSVHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;および
(e)VAT時のVE/VCO
をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、改善すること、
を含む、方法。
【請求項85】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
心筋性能指数(MPI)によって評価される機能的単心室の心室性能、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、VAT時の仕事率、および二酸化炭素換気当量(VE/VCO)を改善するための治療を必要とする、機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療する方法であって、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記SVHD患者に毎日投与することで、前記SVHD患者の、
(a)MPIによって評価されるSVDHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)VAT時の仕事率;および
(d)VAT時のVE/VCO
をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、改善すること、
を含む、方法。
【請求項89】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項84に記載の方法。
【請求項92】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者における心筋性能指数(MPI)を改善する方法であって、前記SVHD患者はMPIの改善を必要とする患者であり、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記SVHD患者に毎日投与することで、前記SVHD患者のMPIを改善すること、
を含む、方法。
【請求項93】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
MPIがパルス組織ドプラ心エコー法(TDE)によって測定される、請求項92~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】

パルス組織ドプラ心エコー法(TDE)を用いてMPIを測定する、
さらなる工程を含む、請求項92~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者における心拍出量を改善する方法であって、前記SVHD患者は心拍出量の改善を必要とする患者であり、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記SVHD患者に毎日投与することで、前記SVHD患者の心拍出量を改善すること、
を含む、方法。
【請求項99】
前記SVHD患者の心拍出量が心筋性能指数(MPI)によって評価される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
MPIがパルス組織ドプラ心エコー法(TDE)によって測定される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
パルス組織ドプラ心エコー法(TDE)を用いてMPIを測定する、
さらなる工程を含む、請求項98に記載の方法。
【請求項102】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項99~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項99~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項99~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
SVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善するための、機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療する方法であって、前記SVHD患者がSVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善するための治療を必要とする患者であり、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩をSVHD患者に毎日投与することで、SVHD患者の機能的単心室の心室性能を改善すること、を含み、
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが300~700ng/mlである、
方法。
【請求項106】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%、より好ましくは、約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記有効量によってさらにもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルTmax薬物動態血漿プロファイルが約1時間~1.6時間である、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項108に記載の方法。
【請求項111】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約2550ng時/ml~約4150ng時/mlである、請求項105に記載の方法。
【請求項112】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項111に記載の方法。
【請求項114】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約5110ng時/ml~約8290ng時/mlである、請求項105に記載の方法。
【請求項115】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項105~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項105~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項105~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療する方法であって、前記SVHD患者は心筋性能指数(MPI)によって評価される機能的単心室の心室性能、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、最大下運動負荷時もしくは最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、VAT時の仕事率、二酸化炭素換気当量(VE/VCO)、安静時の拡張期血圧、および/または安静時の酸素飽和度(%)を改善するための治療を必要としており、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記SVHDn患者に毎日投与することで、前記SVHD患者の、
(b)MPIによって評価されるSVHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;
(e)VAT時のVE/VCO
(f)安静時の拡張期血圧;および
(g)安静時の酸素飽和度(%)、
をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、改善すること、を含み;
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが300~700ng/mlである、
方法。
【請求項121】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%、より好ましくは、約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項120に記載の方法。
【請求項122】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項120に記載の方法。
【請求項123】
前記有効量によってさらにもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルTmax薬物動態血漿プロファイルが約1時間~1.6時間である、請求項120に記載の方法。
【請求項124】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項123に記載の方法。
【請求項126】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約2550ng時/ml~約4150ng時/mlである、請求項120に記載の方法。
【請求項127】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約5110ng時/ml~約8290ng時/mlである、請求項120に記載の方法。
【請求項130】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項129に記載の方法。
【請求項132】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項120~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項120~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項120~131のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者における心筋性能指数(MPI)を改善する方法であって、前記SVHD患者はMPIの改善を必要とする患者であり、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩をSVHD患者に毎日投与することで、SVHD患者のMPIを改善すること、を含み、
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが300~700ng/mlである、
方法。
【請求項136】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%、より好ましくは、約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項135に記載の方法。
【請求項138】
前記有効量によってさらにもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルTmax薬物動態血漿プロファイルが約1時間~1.6時間である、請求項135に記載の方法。
【請求項139】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項138に記載の方法。
【請求項141】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約2550ng時/ml~約4150ng時/mlである、請求項135に記載の方法。
【請求項142】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項141に記載の方法。
【請求項144】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約5110ng時/ml~約8290ng時/mlである、請求項135に記載の方法。
【請求項145】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項135~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項135~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項149】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項145~146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者における心拍出量を改善する方法であって、前記SVHD患者は心拍出量の改善を必要とする患者であり、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩をSVHD患者に毎日投与することで、SVHD患者の心拍出量を改善すること、を含み、
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが300~700ng/mlである、
方法。
【請求項151】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%、より好ましくは、約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項150に記載の方法。
【請求項153】
前記有効量によってさらにもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルTmax薬物動態血漿プロファイルが約1時間~1.6時間である、請求項150に記載の方法。
【請求項154】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約2550ng時/ml~約4150ng時/mlである、請求項150に記載の方法。
【請求項157】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項156に記載の方法。
【請求項159】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約5110ng時/ml~約8290ng時/mlである、請求項150に記載の方法。
【請求項160】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項159に記載の方法。
【請求項162】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項150~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項150~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項150~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療するための経口投与用医薬組成物であって、
前記SVHD患者は、心筋性能指数(MPI)によって評価される機能的単心室の心室性能、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、最大下運動負荷時もしくは最大VO2時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、VAT時の仕事率、二酸化炭素換気当量(VE/VCO)、安静時の拡張期血圧、および/または安静時の酸素飽和度(%)を改善するための治療を必要とする患者であり、
前記医薬組成物は、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含み、
それにより、前記経口用医薬組成物がSVHD患者に毎日経口投与された場合、前記有効量のウデナフィルがSVHD患者においてもたらす、SVHD患者におけるウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルは、300ng/ml~700ng/mlであり、且つ、SVHD患者における以下:
(a)MPIによって評価されるSVHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;
(e)VAT時のVE/VCO
(f)安静時の拡張期血圧;および
(g)安静時の酸素飽和度(%)、
のうちの少なくとも1または複数が改善される、医薬組成物。
【請求項166】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlである、請求項165に記載の経口用医薬組成物。
【請求項167】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%である、請求項166に記載の経口用医薬組成物。
【請求項168】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項166に記載の経口用医薬組成物。
【請求項169】
前記有効量によってさらにもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルTmax薬物動態血漿プロファイルが約1時間~1.6時間である、請求項165に記載の経口用医薬組成物。
【請求項170】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間である、請求項169に記載の経口用医薬組成物。
【請求項171】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項170に記載の経口用医薬組成物。
【請求項172】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項170に記載の経口用医薬組成物。
【請求項173】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約2550ng時/ml~約4150ng時/mlである、請求項165に記載の経口用医薬組成物。
【請求項174】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlである、請求項173に記載の経口用医薬組成物。
【請求項175】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20~約+25%である、請求項174に記載の経口用医薬組成物。
【請求項176】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20~約+25%である、請求項174に記載の経口用医薬組成物。
【請求項177】
前記有効量によってもたらされるSVHD患者におけるウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約5110ng時/ml~約8290ng時/mlである、請求項165に記載の経口用医薬組成物。
【請求項178】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlである、請求項177に記載の経口用医薬組成物。
【請求項179】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項178に記載の経口用医薬組成物。
【請求項180】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUC0-24薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項178に記載の経口用医薬組成物。
【請求項181】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項182】
前記SVHD患者がノーウッド手術を受けた患者である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項183】
前記SVHD患者が両方向性グレン手術を受けた患者である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項184】
前記SVHD患者が少なくとも6歳である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項185】
前記SVHD患者が少なくとも8歳である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項186】
前記SVHD患者が少なくとも10歳である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項187】
前記SVHD患者が少なくとも12歳である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項188】
前記SVHD患者が青年患者である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項189】
前記SVHD患者が成人患者である、請求項165~180のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項190】
前記SVHD患者が少なくとも6歳である、請求項181に記載の経口用医薬組成物。
【請求項191】
前記SVHD患者が少なくとも8歳である、請求項181に記載の経口用医薬組成物。
【請求項192】
前記SVHD患者が少なくとも10歳である、請求項181に記載の経口用医薬組成物。
【請求項193】
前記SVHD患者が少なくとも12歳である、請求項181に記載の経口用医薬組成物。
【請求項194】
前記SVHD患者が青年患者である、請求項181に記載の経口用医薬組成物。
【請求項195】
前記SVHD患者が成人患者である、請求項181に記載の経口用医薬組成物。
【請求項196】
前記SVHD患者が少なくとも6歳である、請求項182に記載の経口用医薬組成物。
【請求項197】
前記SVHD患者が少なくとも8歳である、請求項182に記載の経口用医薬組成物。
【請求項198】
前記SVHD患者が少なくとも10歳である、請求項182に記載の経口用医薬組成物。
【請求項199】
前記SVHD患者が少なくとも12歳である、請求項182に記載の経口用医薬組成物。
【請求項200】
前記SVHD患者が青年患者である、請求項182に記載の経口用医薬組成物。
【請求項201】
前記SVHD患者が成人患者である、請求項182に記載の経口用医薬組成物。
【請求項202】
前記SVHD患者が少なくとも6歳である、請求項183に記載の経口用医薬組成物。
【請求項203】
前記SVHD患者が少なくとも8歳である、請求項183に記載の経口用医薬組成物。
【請求項204】
前記SVHD患者が少なくとも10歳である、請求項183に記載の経口用医薬組成物。
【請求項205】
前記SVHD患者が少なくとも12歳である、請求項183に記載の経口用医薬組成物。
【請求項206】
前記SVHD患者が青年患者である、請求項183に記載の経口用医薬組成物。
【請求項207】
前記SVHD患者が成人患者である、請求項183に記載の経口用医薬組成物。
【請求項208】
心室性能を維持する、心室性能の低下を最低限にする、または心室性能を増加するために、フォンタン手術を受けた単心室心疾患(SVHD)患者(フォンタン術後患者)を治療する方法であって、有効量の有効なPDE5阻害剤を前記患者に投与、好ましくは毎日投与することを含む、方法。
【請求項209】
長期的に、心室性能の低下を最低限にする、または心室性能の低下が起こらないようにすることを含む、請求項208に記載の方法。
【請求項210】
前記PDE5阻害剤が好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、請求項208に記載の方法。
【請求項211】
フォンタン術後患者の心筋性能指数(MPI)を改善する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項212】
SVHD患者の心筋性能指数(MPI)を改善するための、機能的単心室を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療するための経口投与用医薬組成物であって、
前記SVHD患者は前記SVHD患者のMPIを改善するために前記経口用医薬組成物による治療を必要とする患者であり、
前記医薬組成物は、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含み、
それにより、前記SVHD患者のMPIを改善するために前記経口用医薬組成物がSVHD患者に毎日経口投与された場合、前記有効量のウデナフィルは前記SVHD患者においてウデナフィル薬物動態血漿プロファイルをもたらし、
前記ウデナフィル薬物動態血漿プロファイルは、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、300~700ng/mlのCmax、1~1.6時間のTmax、2550~4150ng時/mlまたはそれ以上のAUCτ、および5110~8290ng時/mlのAUC0-24からなるウデナフィル薬物動態血漿プロファイル群から選択される、
医薬組成物。
【請求項213】
前記Cmaxが約500ng/mlである、請求項212に記載の経口用医薬組成物。
【請求項214】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%である、請求項213に記載の経口用医薬組成物。
【請求項215】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項213に記載の経口用医薬組成物。
【請求項216】
前記Tmaxが約1.3時間である、請求項2128に記載の医薬組成物。
【請求項217】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項216に記載の経口用医薬組成物。
【請求項218】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項216に記載の経口用医薬組成物。
【請求項219】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが3350ng時/mlである、請求項212に記載の経口用医薬組成物。
【請求項220】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項219に記載の経口用医薬組成物。
【請求項221】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項219に記載の経口用医薬組成物。
【請求項222】
前記AUC0-24が約6701ng時/mlである、請求項212に記載の医薬組成物。
【請求項223】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項222に記載の経口用医薬組成物。
【請求項224】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項222に記載の経口用医薬組成物。
【請求項225】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項212~224のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項226】
心室性能を改善する、心室性能を維持する、または心室性能の低下速度を減少させるために、フォンタン手術を受けた単心室心疾患(SVHD)患者(フォンタン術後患者)を治療する方法であって、有効量の有効なPDE5阻害剤を前記患者に投与すること、好ましくは毎日投与することを含む、方法。
【請求項227】
フォンタン手術を受けた単心室心疾患(SVHD)患者(フォンタン術後患者)を治療する方法であって、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を前記フォンタン術後患者に毎日投与することで、前記SVHD患者の、
(a)MPIによって評価されるSVHD患者の単心室の心室性能;
(b)無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;
(e)VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO);
(f)安静時の拡張期血圧;および/または
(g)安静時の酸素飽和度(%)を、(a)~(g)をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで改善することを含んで、
改善すること、を含む、方法。
【請求項228】
SVHD患者のある特定のマーカーを改善するための、機能性単心室症を有する単心室心疾患(SVHD)患者を治療するための経口投与用医薬組成物であって、前記マーカーは、心筋性能指数(MPI)、無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量によって評価される運動耐容能、VAT時の仕事率、およびVAT時のVE/VCOを含み、前記SVHD患者は、前記SVHD患者のマーカーを改善するために前記経口用医薬組成物による治療を必要としている患者であり、前記医薬組成物は、
有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含み、
それにより、前記SVHD患者のマーカーを改善するために前記経口用医薬組成物がSVHD患者に毎日経口投与された場合、前記有効量のウデナフィルは前記SVHD患者においてウデナフィル薬物動態血漿プロファイルをもたらし、
前記ウデナフィル薬物動態血漿プロファイルは、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、300~700ng/mlのCmax、1~1.6時間のTmax、2550~4150ng時/mlまたはそれ以上のAUCτ、および5110~8290ng時/mlのAUC0-24からなるウデナフィル薬物動態血漿プロファイル群から選択される、
経口投与用医薬組成物。
【請求項229】
前記Cmaxが約500ng/mlである、請求項228に記載の経口用医薬組成物。
【請求項230】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+25%である、請求項229に記載の経口用医薬組成物。
【請求項231】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルCmax薬物動態血漿プロファイルが約500ng/mlの約-20%~約+20%である、請求項229に記載の経口用医薬組成物。
【請求項232】
前記Tmaxが約1.3時間である、請求項228に記載の医薬組成物。
【請求項233】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+25%である、請求項232に記載の経口用医薬組成物。
【請求項234】
前記ウデナフィルTmaxが約1.3時間の約-20%~約+20%である、請求項232に記載の経口用医薬組成物。
【請求項235】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが3350ng時/mlである、請求項228に記載の経口用医薬組成物。
【請求項236】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項235に記載の経口用医薬組成物。
【請求項237】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約3350ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項235に記載の経口用医薬組成物。
【請求項238】
前記AUC0-24が約6701ng時/mlである、請求項228に記載の医薬組成物。
【請求項239】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+25%である、請求項238に記載の経口用医薬組成物。
【請求項240】
前記SVHD患者における前記ウデナフィルAUCτ薬物動態血漿プロファイルが約6701ng時/mlの約-20%~約+20%である、請求項238に記載の経口用医薬組成物。
【請求項241】
前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項228~240のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項242】
SVHD患者のマーカーが、最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能をさらに含む、請求項228~240のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項243】
SVHD患者のマーカーが、最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能をさらに含み、前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項228~240のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項244】
SVHD患者のマーカーがMPIをさらに含む、請求項228~240のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【請求項245】
SVHD患者のマーカーがMPIをさらに含み、前記SVHD患者がフォンタン手術を受けたフォンタン術後患者である、請求項228~240のいずれか一項に記載の経口用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府利益に関する陳述
本研究は、少なくとも部分的には、米国立衛生研究所の国立心肺血液研究所(NHLBI)からの助成金により資金を得た。主な助成金支援は、ニュー・イングランド・リサーチ・インスティチュート社(New England Research Institutes、Inc.)に対する、NHLBIの助成金U24 HL135691および/またはU01 HL068270を通じて行われた。小児心臓ネットワーク(Pediatric Heart Network)臨床現場への助成金(UG1 HL135685、UG1 HL135680、UG1 HL135683、UG1 HL135689、UG1 HL135682、UG1 HL135665、UG1 HL135646、UG1 HL135678、UG1 HL135666)。政府は本明細書で開示されるデータおよび発明に一定の権利を有する場合がある。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/905,350号、2019年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/936,497号、および2020年5月11日に出願された米国仮特許出願第63,023,070号に基づく優先権を主張するものである。上記仮出願は参照によってその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0003】
ウデナフィル組成物を用いて、フォンタン術後患者を含む単心室心疾患(SVHD)患者における、運動能力、単心室の性能、および心筋性能指数(MPI)を改善する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
心臓は、循環系の血管を通じて血液を送り出す筋肉性の臓器である。ヒトでは、心臓は両肺と胸部の間に位置しており、左側と右側とに分けられる。正常なヒトの心臓は、左心房および左心室を左側とし、右心房および右心室を右側とする、4つの心腔を有する。酸素の少ない血液(「青色の血液」)は右心房を通じて右側に進入し、新鮮な酸素を含んだ血液(「赤色の血液」)は左心室を通じて左側に存在する。心臓は三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、および大動脈弁という4つの弁を有する。これらの弁は、心臓内での血液の逆流を防ぎ、血液を前方の肺および身体へと流れさせる。
【0005】
ヒトの心臓は、1日におよそ100,000回拍動(拡大収縮)し、毎分5~6クォートの血液、あるいは一日約2,000ガロン、を送り出す。心臓の主要なポンプ室である左心室が、新鮮な酸素を含んだ血液(赤色の血液)を、大動脈弁を通じて身体へと送り出す。この血液はその後、動脈および細動脈を通じて身体の全ての部分へと循環し、酸素および栄養分を送達する。血液は、循環して流れながら、酸素および栄養分を二酸化炭素および代謝廃棄物と交換する。この過程で、血液は、酸素が豊富な血液(赤色の血液)から酸素が乏しい血液(青色の血液)へと推移する。この酸素が乏しい血液はその後、身体の各静脈を通って右心房へと戻ってくる。この青色の血液は、三尖弁を通って右心房から右心室へと通過した後、右心室によって肺へと送り出されて、二酸化炭素を酸素と交換する。この新たな新鮮な酸素を含んだ血液(赤色の血液)は肺から肺静脈を経て左心房へと戻ってくる。この血液は、僧帽弁を通って左心房から左心室へと通過した後、身体へと送り出されて、新たに循環を開始する。
【0006】
このように、正常なヒトの心血管系は、直列に繋がれた肺循環と体循環とからなり、右心室と左心室のポンプ作用によって駆動される。Gewillig M.:Congenital heart disease.The FONTAN CIRCULATION.Heart、91巻:頁839~846(2005年)。
【0007】
単心室心疾患(SVHD)は、機能する心室(ポンプ室)が1つしか存在しないことを各々もたらす、心奇形の一群を包含する希少な小児科疾患である。換言すると、正常な心臓(4つの心腔、2つの心室)を持って生まれた新生児と異なり、SVHD新生児は機能する心室を1つしか持たずに(1つのポンプ室)、すなわち、単心室の心臓を持って生まれてくる。機能しない、または欠損した心室(ポンプ室)は、十分に機能しないほどにこの単心室よりも小さい場合や、全く存在しない場合や、あるいは、循環を通じて血液が正常に流れることへの寄与を妨げるように構成されている場合がある。SVHDの例としては、左心低形成症候群、三尖弁閉鎖症、両房室弁左室挿入などが挙げられる。
【0008】
典型的に、SVHD新生児は、酸素が乏しい血液(青色の血液)と酸素が豊富な血液(赤色の血液)との混合物が単心室で混ざり合ってしまうことから、チアノーゼ性の青色を呈している。心臓を出発する血液混合物中の酸素の含量は、SVHD心臓欠損の種類、重症度、および場所に強く依存している。一部のSVHD新生児はチアノーゼが軽度であるが、他はチアノーゼが重度となり、生存するために身体の酸素要求量を満たすための早期介入を必要とする。残念ながら、外科的処置なしでは、SVHDを持って生まれてきた新生児のほとんどは生存しない。
【0009】
SVHDには2つの主要なサブタイプがあると見なすことができる。1つ目のサブタイプでは、左心室と大動脈(身体へと通じる大動脈)が未発達であり、心臓は介入処置なしでは身体に血液を送り出すことができない。2つ目のサブタイプでは、右心室と肺動脈(肺へと通じる大動脈)が未発達であり、心臓は肺に血液を送り出すことができない。
【0010】
1つ目のサブタイプの、未発達な左心室と大動脈を持って生まれた乳児の場合、身体への血流を安定化するために生後数日間または数週間以内に緊急介入が必要となる。この介入はノーウッド手術と呼ばれ(図5参照)、パッチ材と共に肺動脈弁と肺動脈を用いた、大動脈(身体へと通じる大動脈)の再建を含む。ノーウッド手術では、身体に血液を供給する目的のために肺動脈を利用するため、血液が肺に至るための道も含む必要がある。これは、大動脈循環から肺循環への血液の「シャント」を含ませることにより達成される。このシャントは、通常、右鎖骨下動脈(右腕に血液を供給する動脈)と右肺動脈との間に配置される管状移植片である。ノーウッド手術は、新生児が乳児期を生存することを可能にするものであるが、恒久的な解決法にはならない。この間に合わせの処置は、心臓の1つのポンプ室に、身体と肺への両方に血液を送り出すことを強いて、ストレス下に置く。このストレスを軽減するために、2つの追加の手術が実施される。これらのうち1つ目は、グレン吻合手術またはヘミフォンタン手術であり(図6参照)、4~6か月の時点に行うものであり、上大静脈(上半身の大静脈)を肺動脈に直接連結することを含む。これにより、上半身からの青色の血液が、心室ポンプを必要とせずに肺に戻って、酸素の充満を行うことができる。最後の外科手術として、フォンタン手術(図1Aおよび図7参照)が、通常18~48月齢時に行われ、下大静脈(下半身の大静脈)を肺動脈に直接連結することを含む。これにより、下半身からの青色の血液が、心室ポンプ、具体的には肺への血液の送り出し、を必要とせずに肺に戻って、酸素の充満を行うことができる。フォンタン手術後、全ての青色の血液が肺に戻り、全ての赤色の血液が肺から心臓に戻るが、これは、正常な4心腔の心臓でのように肺を経由して心臓に血液を送り出すことに専念した心室ポンプの助けなしに達成されている。
【0011】
2つ目のサブタイプである、未発達の右心室と肺動脈を持って生まれた乳児の場合、緊急新生児期介入は不要である場合が多い。この群の乳児は、肺への血流が少な過ぎないか、肺への血流が多過ぎないか、あるいは、成長と発達を可能にするために適した血流量が存在するか、を確認するために密接なモニタリングを必要とする。肺への血流が少な過ぎる場合、ノーウッド手術の一部として行われることと同様に、シャントが配置される場合が多い。肺への血流が多過ぎる場合、うっ血性心不全の発生を回避するために、肺への血流量を減少させる目的で、肺動脈を囲んでリストリクターが配置される場合がある。肺への血流量が適切出ある場合、未発達の右心室と肺動脈を持って生まれた乳児は、外科的処置の必要なく、生後数か月を乗り切る場合がある。肺への血流量が少な過ぎても、多過ぎても、あるいは適切でも、このタイプのSVHDを持って生まれた乳児は、心臓への負荷を軽減し、また青色の血液と赤色の血液とを分離するために、4~6月齢時のグレン吻合手術またはヘミフォンタン手術および18~48月齢時のフォンタン手術を尚も必要とする。
【0012】
フォンタン手術後は、単心室心疾患のサブタイプは重要性が薄れるが、というのも、全ての患者に、(i)心臓を迂回して上下大静脈から直接肺へと向かう血流が受動的であること、および、(ii)単心室が身体に血液を送り出していること、という、共通の生理状態が残されているためである。過去40~50年間に亘り、この「フォンタン循環(Fontan circulation)」によって何千人もの患者が生存可能にはなったが、正常な状態からはほど遠いものである。血液を押し出して肺を経て心臓へと戻す心室ポンプが存在しないため、フォンタン循環は、この仕事を達成するために身体の静脈で生じた圧力に頼らなければならない。これは、静脈内の「血圧」を大いに上昇させ、また、心拍出量減少と呼ばれる、一定時間内に身体中を循環できる流量の制限も引き起こす。
【0013】
長期的には、静脈内の血圧上昇と心拍出量減少とが組み合わさった場合、一連の長期合併症が予測可能なものとなり、最終的には、生存期間が著しく減少することとなる。フォンタン循環に関連した合併症として、腎臓および肝臓に対する障害、肺や胃腸管におけるタンパク質損失をもたらすリンパ循環過負荷、脳卒中リスクを含んだ出血および血液凝固障害、並びに、心臓それ自体のポンプ能の進行性機能障害が挙げられる。
【0014】
運動を実行する能力は、多くの型の心疾患において、循環の健全性のマーカーとして用いられる。フォンタン循環患者の場合でも、運動は同様に健康の重要な尺度となり、予後を十分に予測させるものである。運動能力は、フォンタン循環患者においては、小児期では維持されている場合が多いが、典型的には、青年期および成人早期の間に低下し始める。この悪化は、心不全症状の有病率、入院、および死亡率の増加と相関しており、しばしばこれらは、フォンタン循環それ自体の合併症によるものである。場合によっては、心臓移植が治療法の選択肢として残されている場合があるが、心臓移植にはそれ自体に一連のリスクが付いてまわり、フォンタン循環患者は、多くの臓器系の慢性的且つ進行性の機能障害のために、心臓移植の候補としては得てして不良な場合がある。
【0015】
この非常に深刻な先天性心疾患が長く存在していたにもかかわらず、今日まで、米国食品医薬品局(FDA)にも世界中の他のいかなる等価機関にも、フォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療するための薬物療法は承認されていない。すなわち、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の寿命の延長、並びに、当該疾患の進行および心臓移植の必要性の回避または遅延を目的とした、SVHDおよびフォンタン循環の合併症に関連した、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に対する、新規の薬物療法が、真に必要とされており、需要がある。
【0016】
また、(i)心筋性能指数(「MPI」)の改善、(ii)単心室性能の改善、(iii)換気性無酸素性作業閾値(ventilatory anaerobic threshold)(VAT)時および/もしくは最大有酸素容量(最大VOまたはVO最大値)時の運動耐容能の改善、(iv)VAT時の仕事率の改善、(v)VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO)の改善、並びに/または、(vi)単心室の心機能の改善のための、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に対する新規薬物療法も、真に必要とされ、需要がある。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療する新規方法の開発を通じて、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の現在の治療法に伴う、上記の欠点および不利点を克服するものである。
【0018】
概して、本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療するための、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の使用を対象とする。より具体的には、本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することで、特に当該患者のMPIおよび運動耐容能または運動能力を改善することを含む。
【0019】
概して、本発明の方法は、有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、毎日投与することで、
(a)MPIによって評価されるSVHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;
(e)VAT時のVE/VCO
(f)安静時の拡張期血圧;および
(g)安静時の酸素飽和度(%)、
をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、改善することを含む。
【0020】
好ましくは、本発明の方法は、上記の(a)~(g)を改善するものであり、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで改善することを含む。好ましくは、本発明の方法は、少なくとも、上記の(a)~(e)の組み合わせを改善するものである。最も好ましくは、本発明において、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を毎日投与することによって、上記の(a)~(g)が改善され、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで改善されることを含む。
【0021】
本発明の方法における単心室性能の改善は、収縮機能と拡張機能の両方の改善を包含する。これらは、血液プールMPIの改善、組織ドプラMPIの改善、心拍出量(ドプラ法由来の拍出量曲線下の積分値と心拍数の積によって評価)の改善、および単心室心機能の他の尺度の改善によって示すことができ、これらに限定はされない。本発明の方法における運動耐容能または運動能力の改善としては、無酸素性作業閾値(「VAT」)時の運動耐容能もしくは運動能力の改善、および/または、最大下運動負荷時もしくは最大VO時の運動耐容能もしくは運動能力の改善が挙げられるが、これらに限定はされない。また、本発明においては、本発明の方法がフォンタン術後患者を含むSVHD患者に対して実施された場合、VAT時の仕事率の改善、VAT(VE/VCO)時の二酸化炭素換気当量の改善、安静時の拡張期血圧の改善、および/または、安静時の酸素飽和度(%)の改善、が得られる。
【0022】
概して、「有効量」とは、治療を制限する副作用を引き起こすことなく、治療効果または薬理学的効果を引き出すまたは誘導するのに十分な、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の量を意味するものとして、本明細書では使用される。
【0023】
より具体的には、「有効量」とは、PDE6および/もしくはPDE11の阻害と関連した、治療を制限する毒性、治療を制限する副作用、並びに/またはいかなる他の治療を制限する副作用も引き起こすことなく、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において、治療効果または薬理学的効果を引き出すまたは誘導するのに十分な、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の量を意味するものとして、本明細書では使用される。
【0024】
本発明におけるウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の「有効量」の一例として、約87.5mg~約175mgを含むがこれに限定はされない範囲内の総1日量が挙げられる。より好ましくは、本発明におけるウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の「有効量」は、約125mg~約175mgの範囲内の総1日量を包含する。さらにより好ましくは、本発明におけるウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の「有効量」は、経口投与量を包含し、毎日投与される一回投与量を包含するがこれに限定はされず、一日一回または二回投与される約75mgまたは87.5mgの一回投与量および一日一回投与される約125mgの一回投与量を包含する。
【0025】
また、本発明は、視覚情報伝達または視覚機能の妨害、背痛、筋肉痛、精子の濃度または質などの治療を制限する副作用を引き起こすことなく、特に、MPI、心室性能、心拍出量、VAT時の運動耐容能または運動能力、最大下運動負荷時またはVO最大値時の運動耐容能または運動能力、VAT時の仕事率、VAT時のVE/VCO、安静時の拡張期血圧、および安静時の酸素飽和度(%)を、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで改善するために、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を、投与、好ましくは毎日投与すること、を含む方法を企図している。換言すると、本発明は、ホスホジエステラーゼ-6(「PDE6」)および/またはホスホジエステラーゼ-11(「PDE11」)の阻害に関連した治療を制限する副作用を引き起こすことのない、有効量の有効なPDE5阻害剤、好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩による、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の、治療、好ましくは毎日治療を企図している。本明細書で使用される場合、PDE6は、PDE6の、任意のアイソザイム、バリアント、PDE6α、PDE6β、PDE6γ、PDE6R、および/またはPDE6Cなどの触媒サブユニットおよび/または阻害サブユニットを、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで包含する。本明細書で使用される場合、PDE11は、ホスホジエステラーゼ-11A(PDE11A)、並びに、PDE11の、任意のアイソザイム、バリアント、PDE11A1、PED11A2、PDE11A3、および/またはPDE11A4を含むPDE11Aなどの触媒サブユニットおよび/または阻害サブユニットを、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで包含する。
【0026】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者におけるMPIを改善する方法に関する。本明細書で使用される場合、MPIとは、全体的な心機能を評価するための、収縮機能と拡張機能の両方の尺度となるものである。上記方法は、患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0027】
本発明において、MPIに関しての、「改善する、改善すること、改善、または改善された」とは、本明細書においては、単心室性能を改善すること、すなわち、機能的単心室の拡張収縮機能を改善すること、を意味するものと理解されたい。換言すると、機能的単心室が、心拍毎により良好にまたはより効率的に絞り込まれる。結果として、本発明の方法を実施するまたは本発明の方法において治療されるフォンタン術後患者を含むSVHD患者の、心拍出量および一定時間内に身体中を循環できる血流量は、増加または改善され、特に本発明の方法において治療されていないフォンタン術後患者を含むSVHD患者と比較して、増加または改善される。すなわち、本発明の方法は、本発明の方法を行わない場合の(例えば、ウデナフィル投与を行わない場合の)MPI、または他の開示された単心室性能の尺度と比較した場合に、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における、MPI、または他の開示された心室性能の尺度、の改善をもたらす。例えば、上記の改善は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)の、血液プールMPI、または他の開示された単心室性能の尺度と比較した場合の、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約18%以上、約19%以上、約20%以上、約21%以上、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、または約30%以上とすることができる。上記方法は、患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0028】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室の収縮機能を改善する方法に関する。上記方法は、SVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0029】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室の拡張機能を改善する方法に関する。上記方法は、SVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0030】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室の心拍出量を改善する方法に関する。上記方法は、SVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0031】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室の搾り出し能を改善する方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において静脈圧の上昇を減少させることにより静脈圧を改善する方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0033】
1つの実施形態では、本発明は、一定時間内にフォンタン術後患者を含むSVHD患者の身体中を循環できる血流量を改善する方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0034】
すなわち、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において機能的単心室の全体的な単心室性能を改善する方法に関する。上記方法は、SVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における安静時の拡張期血圧を改善することで、フォンタン術後患者の安静時拡張期血圧を含む、SVHD患者の安静時拡張期血圧を有意に低下させる方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0036】
さらに別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における安静時の酸素飽和度(%)を改善する方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0037】
さらに別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における運動能力または運動耐容能を改善する方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における換気性無酸素性作業閾値(「VAT」)時の運動能力または運動耐容能を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法で治療されていない、または本発明の方法を実施していない(例えば、本発明の方法におけるウデナフィル毎日投与を実施していない)フォンタン術後患者を含むSVHD患者におけるVAT時のVOと比較して、フォンタン術後患者を含むSVHD患者におけるVAT時のVOを改善するものである。例えば、上記の改善は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)のVAT時のVOと比較した場合の、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約18%以上、約19%以上、約20%以上、約21%以上、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、または約30%以上とすることができる。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者における最大下運動負荷時または最大VO時の運動能力または運動耐容能を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)の最大下運動負荷時のVOと比較して、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の最大下運動負荷時のVOを改善するものである。例えば、上記の改善は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)の最大下運動負荷時のVOと比較した場合の、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約18%以上、約19%以上、約20%以上、約21%以上、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、または約30%以上とすることができる。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者におけるVAT時の仕事率を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)のVAT時の仕事率と比較して、フォンタン術後患者を含むSVHD患者のVAT時の仕事率を改善するものである。例えば、上記の改善は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)のVAT時のVOと比較した場合の、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約18%以上、約19%以上、約20%以上、約21%以上、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、または約30%以上とすることができる。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者におけるVAT時のVAT時の二酸化炭素換気当量(「VE/VCO」)を改善する方法に関する。本発明の方法は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)のVAT時のVE/VCOと比較して、フォンタン術後患者を含むSVHD患者のVAT時のVE/VCOを改善するものである。例えば、上記の改善は、本発明の方法を実施しない場合(例えば、ウデナフィル毎日投与を実施しない場合)のVAT時のVOと比較した場合の、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約18%以上、約19%以上、約20%以上、約21%以上、約22%以上、約23%以上、約24%以上、約25%以上、約26%以上、約27%以上、約28%以上、約29%以上、または約30%以上とすることができる。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0042】
1つの実施形態では、本発明は、異常なSVHD心臓の心臓再建術を受けたフォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療するための改善された方法であって、本発明の毎日法によって、フォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療する従来法と比較して、有害事象が少なくなるまたはその重症度が低下する、方法に関する。
【0043】
別の実施形態では、本発明の方法は、重篤な有害事象、中等度の有害事象、または軽度の有害事象を、存在する場合に、少なくする。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0044】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン手術を受けたSVHD患者を治療するための、改善された方法に関する。1つのそのような実施形態では、フォンタン術後患者は、左心低形成症候群(HLHS)と診断されたものであるが、まずノーウッド手術(例えば、図5参照)を、続いてヘミフォンタン手術または両方向性グレン手術(例えば、図6参照)を受け、その後フォンタン手術を受けている(例えば、図1Aおよび図7参照)。別のそのような実施形態では、フォンタン術後患者は、まずヘミフォンタン手術または両方向性グレン手術を受け、その後フォンタン手術を受けている。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。
【0045】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療するための改善された方法であって、上記SVHDが、房室管欠損(AV Canal)患者、両房室弁左室挿入(DILV)患者、両大血管右室起始症(DORV)患者、エブスタイン奇形患者、HLHS患者、僧帽弁閉鎖症(通常HLHSを伴う)患者、純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)患者、左室性単心室症患者、三尖弁閉鎖症患者、および狭窄を伴う三尖弁閉鎖症患者からなるSVHD群から選択される、方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。例示的な実施形態において、本発明の方法は、好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を、1日1回、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与することを含む。
【0046】
別の実施形態では、本発明の方法は、好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を、1日2回、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与することを含む。
【0047】
別の実施形態において、本発明の方法は、好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を、1日3回以上、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与することを含む。
【0048】
別の実施形態では、フォンタン術後患者を含むSVHD患者は、約2~約18歳の小児患者である。成人患者の治療も本発明の方法によって企図されている。
【0049】
さらに別の実施形態では、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療するための改善された方法であって、非ウデナフィル薬を処方されたフォンタン術後患者を含むSVHD患者と比較して、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の服薬スケジュールのコンプライアンスの改善を示す、方法に関する。
【0050】
最後に、さらに別の実施形態では、本発明の方法は、ユニークな特徴を示す薬物動態プロファイルをもたらす場合がある。上記薬物動態プロファイルは、300~700ng/ml、または、より具体的には約500ng/ml、のCmax;1時間~1.6時間、または、より具体的には約1.3時間、のTmax;2550~4150ng時/ml、または、より具体的には約3350ng時/ml、のAUCτ;および、5110~8290ng時/ml、または、より具体的には約6701ng時/ml、のAUC0-24を含むとすることができる。
【0051】
当然のことながら、本発明は、本発明のウデナフィル製剤と治療学的に同等のウデナフィル製剤も企図している。換言すると、本発明は、互いに、(i)治療学的に同等であり、(ii)生物学的に同等であり、(iii)代替可能であり、且つ、(iv)本発明の方法においてフォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与する場合、本発明の目的の実行または実施に有効なバイオアベイラビリティを有する、ウデナフィル製剤を企図している。
【0052】
すなわち、本発明の1つの実施形態において、本発明は、薬物動態プロファイルの90%信頼区間(90%CI)において、平均値の比率が約0.8~約1.25の範囲内にある、製剤を企図している。本発明における別の実施形態では、本発明は、薬物動態プロファイルの90%信頼区間(90%CI)において、平均値の比率が約0.8~約1.2の範囲内にある、代替可能なウデナフィル製剤を企図している。すなわち、本発明は、本発明の方法で治療されるか、または本発明の方法を実践する、フォンタン術後患者を含むSVHD患者であって、患者のCmax、Tmax、およびAUCなどの薬物動態プロファイルの最大約45%変動し得る(すなわち-20~+25%)、ウデナフィル血漿中濃度を有する患者を企図している。より好ましくは、本発明は、本発明の方法で治療されるか、本発明の方法を実践する、フォンタン術後患者を含むSVHD患者であって、患者のCmax、Tmax、AUCt、およびAUC0-24などの薬物動態プロファイルの最大約40%(すなわち、-20~+20%)変動し得る、ウデナフィル血漿中濃度を有する患者を企図している。例として、本発明は、本発明の方法で治療されるか、本発明の方法を実践する、フォンタン術後患者を含むSVHD患者であって、以下のウデナフィル薬物動態プロファイル:
(a)約500ng/mlの約-20%~約+25%であるCmax血漿中濃度、より好ましくは、約500ng/mlの約-20%~約+20%であるウデナフィルCmax血漿中濃度;
(b)約1.3時間の約-20%~約+25%であるTmax、より好ましくは、1.3時間の約-20%~約+20%であるウデナフィルTmax;
(c)約3350ng時/mlの約-20%~約+25%であるAUC、より好ましくは、約3350ng時/mlの約-20%~約+20%であるウデナフィルAUC
(d)約6701ng時/mlの約-20%~約+25%であるAUC0-24、より好ましくは、約6701ng時/mlの約-20%~約+20%であるウデナフィルAUC0-24
を個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、有する患者を企図している。
【0053】
すなわち、本発明は、本発明の方法において使用するための、生物学的に同等且つ代替可能なウデナフィル製剤を企図している。さらに、本発明は、本発明の方法において、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与された場合に、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において上記のCmax、Tmax、AUC、および/またはAUC0-24をもたらす、ウデナフィル製剤を企図している。
【0054】
上記の発明の概要が、本発明の開示の実施形態の各々またはあらゆる実施の説明を意図したものではないことは、理解されたい。上記の説明は、例示的な実施形態のさらなる例示であり、特許請求された本発明の説明を与えるものである。本明細書中のいくつかの場所で、例を挙げて手引きを行っているが、これらの例は様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの場合で、上記の例は例示群としてのみ働き、限定的な例であると見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
上記および他の、本発明の目的、利点、および特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の、実施形態の例示である、図面の簡単な説明、発明を実施するための形態、および実施例から、当業者には容易に理解される。
【0056】
図1A図1Aは、例示的なフォンタン生理の模式図である。
図1B図1Bは、実施例1~2に記載された、フォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)試験に用いられたスクリーニング法(被験者の無作為化および治療)である。最高VO(VO最大値)は最高運動時の酸素消費量を表す。RERは呼吸交換率を表す。
図2A図2Aは、治療群ごとの、ベースラインから第26週までの、最高または最大VO平均値における変化の違いを、標準偏差と共に示している。
図2B図2Bは、基準パーセント以上の最高VOの改善(x軸)を示した被験者の割合(y軸)を示している。
図3A図3Aは、治療群ごとの、ベースラインから第26週までの、VAT時のVO平均値における変化の違いを、標準偏差と共に示している。
図3B図3Bは、基準パーセント以上のVAT時VOの改善(x軸)を示した被験者の割合(y軸)を示している。
図4A図4Aは、治療群ごとの、ベースラインから第26週までの、VAT時の仕事率平均値における変化の違いを、標準偏差と共に示している。
図4B図4Bは、基準パーセント以上の仕事率の改善(x軸)を示した被験者の割合(y軸)を示している。
図5図5は、左心低形成症候群(HLHS)を有する再建SVHD心臓の、例示的なノーウッド手術(ステージ1)の模式図である。
図6図6は、左心低形成症候群(HLHS)を有する再建SVHD心臓の、例示的な両方向性グレン手術(ステージ2)の模式図である。
図7図7は、左心低形成症候群(HLHS)を有する再建SVHD心臓の、心外開窓型フォンタン手術である、例示的なフォンタン手術(ステージ3)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
I.フォンタン生理
フォンタン生理(Fontan physiology)は、機能的単心室という共通の特徴を共有している先天性心疾患クラスに対しての、最終的な姑息術である。これらのクラスには、形成不全(機能不全)の左心室または右心室をもたらす欠損症が含まれる。通常、一連の2または3回の手術を通じて、体循環と肺循環とを分離することで、上記の先天性心疾患によって引き起こされる、酸素を含む血液と酸素を含んでいない血液の混合を大幅に解消する。これは、上下大静脈を肺動脈に直接取り付けること、すなわち両大静脈肺動脈吻合、によって達成される。これにより、以下の通りに作用するフォンタン生理が生じる:(1)体循環性単心室(single systemic ventricle)が酸素を含んだ血液(赤色の血液)を大動脈から全身の体動脈血管床へと送り出し、(2)体静脈血(青色の血液)が大静脈により戻り、この青色の血液が、肺動脈弁下型心室(sub-pulmonary ventricle)の助けなしに、肺における酸素摂取のために受動的に肺血管床を通過して、青色の血液を酸素化し、(3)この新たな酸素を含んだ血液(赤色の血液)がその後、通常の機能性の体循環性心房を介して機能性の体循環性単心室ポンプへと戻って、この赤色の血液-青色の血液循環サイクルが繰り返される。これの解剖学的構造を図1Aおよび図7に示す。
【0058】
フォンタン手術は、両大静脈肺動脈吻合を形成するものであり、体循環系と肺循環系とを分離し、低酸素血症と心室容量負荷の両方を取り除く。しかし、フォンタン手術後は、青色の血液を肺動脈に押し進めるための心室ポンプがなくなってしまう。代わりとして、青色の血液は、体静脈からの受動的流動を介して肺に戻ることとなる。すなわち、この種の姑息術の主な生理学的結果として、肺循環性の青色血流が体静脈床から心房への圧力勾配に完全に依存することとなる。肺血管床を通じた正常な循環流は、右心室が発生させる圧力の増加によって増強される。健常青年においては、これは、安静時の肺動脈に存在する圧力を約20~25mmHg増加させる結果となり、運動によって倍増し得る。このフォンタン生理では、肺動脈弁下型心室がないため、青色の血液が肺動脈に入る際の圧力の増強が起こらない。安静時では、肺血管床内の圧力勾配は顕著に少なくなる。この圧力勾配を運動によって増加させる能力は、中心静脈圧が上昇し続けることに対する身体の許容能によって非常に限定されたものとなる。
【0059】
肺血流を駆動するための静脈圧の受動的な低下に完全に依存していることの結果として、フォンタン生理は肺血管抵抗の変化に極めて敏感である。通常の生理における肺抵抗の十分に正常な範囲内の増加であっても、フォンタン生理に対して有害な影響を与えることとなる。ウデナフィルの使用は、この種の姑息術を受けた先天性心疾患に対し独特な、有望な治療法となる。PDE-5阻害剤の他の用途と異なり、この治療法は、肺血管抵抗も肺血管圧も上昇していない集団において、肺血管抵抗を低下させるためのものである。これは、(i)構造的に正常な心臓と、肺動脈高血圧症(PAH)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺血管疾患とを有する患者、(ii)うっ血性心疾患などの心不全を有する患者、または、(iii)二心室修復による姑息術を受けた(それにより肺動脈弁下型心室を有する)先天性心疾患と関連肺血管疾患とを有する非常に希少な患者、と比較した場合、このクラスの薬剤の明確に異なる用途である。
【0060】
II.フォンタン術後患者に関連した臨床測定
機能的単心室または単心室性先天性心疾患を持って生まれた小児の場合、フォンタン手術が現在の標準治療となっている。フォンタン手術は根治的というよりも姑息的なものであり、機能的単心室心疾患を有する小児対象の生存率を大きく増加した一方で、この手術は、患者の減少につながるおそれがある一連の副作用や合併症ももたらし、不整脈、心室機能障害、および、蛋白喪失性腸症(PLE)や形成性気管支炎といった珍しい臨床症候群などの合併症、並びに、肝臓および腎臓の合併症を伴う。
【0061】
ある実施形態では、本開示の発明は、フォンタン手術後の患者の健康の指標となる、特定の臨床的に意味のある生理学的測定値を改善する、またはその低下を防止することに関する。そのような測定値としては、運動負荷試験、血管機能試験、および心室性能の心エコー評価が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0062】
III.運動負荷試験
運動負荷試験としては、最大下運動負荷時または換気性無酸素性作業閾値(VAT)時のVO値の評価を挙げることができる。VO最大値、または最大酸素消費量とは、激しい運動の際に個人が利用することができる酸素の最大量を指す。この測定値は、心血管の健康状態および有酸素性持久力の信頼できる指標と一般的に見なされている。高レベルの運動時に使用できる酸素が多いほど、その人が生産できるエネルギーは多くなる。筋肉は長時間(有酸素)運動に酸素を必要とし、血液は筋肉に酸素を運び、心臓は有酸素運動の要求量を満たすために十分な量の血液を送り出さなければならないため、この試験は心肺体力の基準となっている。
【0063】
VOは、対象にマスクを着けさせ、吸気と呼気の体積およびガス濃度を測定することによって、測定される場合が多い。この測定はしばしば臨床現場と研究の両方で用いられており、最も正確とみなされている。試験は通常、疲労困憊まで強度を上げながらトレッドミル上で運動するか自転車エルゴメータに乗るかのどちらかを含み、対象の最大下運動負荷時および/または対象の無酸素性作業閾値時に読み取りを行うように設計される。
【0064】
フォンタン手術を受けたSVHD患者を含むSVHD患者では、通常、時間とともにVO測定値が減少していく。しかし、本発明の方法を実施する場合、または本発明の方法でフォンタン術後患者を含むSVHD患者を治療した場合、VO測定値は、(i)VO測定値のさらなる低下が起こらなかったことを示して、同様のレベルに維持されるか、あるいは、(ii)VOが増加したこと、且つ/またはVO測定値の低下速度が減少、すなわち、改善したことを示して、治療に伴い改善され、これらは各々、本発明の治療または方法が臨床的に有益であることを示している。SVHD患者によっては、本発明における治療は、運動時に測定されるVOの低下を著しく遅延または低減する場合がある。
【0065】
1つの実施形態では、本発明は、SVHD患者またはフォンタン手術を受けた対象のVO測定値を改善または維持する方法に関する。本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。本発明のいくつかの実施形態では、VOは最大下運動負荷時に測定されるが、他の実施形態では、VOは対象の無酸素性作業閾値(VAT)時に測定される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明の、本開示の方法および組成物を、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与すると、時間の経過と共に、運動耐容能は低減されないか、最小限しか低減されない。より具体的には、本発明の、本開示の方法および組成物は、時間の経過と共に、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約35%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満の運動耐容能低減をもたらす場合がある。運動耐容能低減の算出に用いられる一回目の測定と二回目の測定の間の期間は、例えば、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約7か月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、もしくは約12か月間;約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約11年間、約12年間、約13年間、約14年間、もしくは約15年間、またはこれらの任意の組み合わせ、例えば、1年3か月;4年7か月など、とすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の、本開示の方法および組成物は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与することで、運動耐容能の改善をもたらし得る。より具体的には、本発明の、本開示の方法および組成物は、最大下運動負荷時のVOにおいて、1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、または50%以上の改善をもたらし得る。あるいは、本発明の、本開示の方法および組成物は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の換気性無酸素性作業閾値(VAT)時のVOにおいて、1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、または50%以上の改善をもたらし得る。
【0068】
IV.血管機能試験
血管内皮機能障害は、介入研究において血管の健康を評価する場合の重要な転帰である。血管内皮機能障害が、従来の循環器疾患(CVD)危険因子と明らかに関連しており、1~6年間間隔の心血管イベントを独立して予測するものであることが、現在では十分に確立されている。
【0069】
血管機能を測定するためのFDAが承認した方法である脈幅トノメトリ法(pulse amplitude tonometry)(PAT)は、反応性充血に応答した内皮依存性血管拡張および血流依存性血管拡張(FMD)の代替的な尺度として用いられることが増えてきている。PAT用デバイスは、指先プレチスモグラフィーを用いてデジタルの脈波振幅(PWA)を記録する。PWAは、安静時のベースライン期、5分間の前腕閉塞、およびカフ解放後の反応性充血という3期の間に連続的に測定され得る。FMDと異なり、PAT試験は高度に熟練した技術者に依存的ではなく、試験後の解析も大部分は自動化されている。最も重要なこととして、内皮機能のPAT尺度が、6年間の追跡調査期間に亘りCVDイベントを予測するものであることを、少なくとも1つの縦断的研究が示している。これらの重大な利点から、PAT試験は、予後予測因子としての意義および信頼性を確かめることができれば、臨床実施に適したものとなり得る。
【0070】
フォンタン手術を以前に受けたSVHD患者を含むSVHD患者では、通常、時間の経過とともに、血管機能の低下が起こる。フォンタン術後患者を含むSVHD患者の血管機能を改善する、またはそのさらなる低下を防止する、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の治療を行うことは、当該治療が、臨床的に有益であり、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の生活の質を改善、または心血管機能の低下を防止できることを示すこととなるだろう。
【0071】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン手術を以前に受けたSVHD患者を含むSVHD患者の血管機能を改善または維持する方法に関する。上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。いくつかの実施形態では、血管機能はPAT指数を用いて測定される。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の、本開示の方法および組成物を、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与すると、時間の経過と共に、血管機能は低減されないか、最小限しか低減されない。血管機能は従来公知の任意の手法を用いて測定することができ、例えば、脈幅トノメトリ測定法、反応性充血指数の自然対数、反応性充血指数、フラミンガム(RHI)、最大閉塞/対照に対する曲線下面積、最大閉塞/対照までの平均値、および他の公知のエンドPAT指数が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明のいくつかの実施形態では、血管機能はPAT指数を用いて測定される。より具体的には、本発明の、本開示の方法および組成物は、時間の経過と共に、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約35%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満の血管機能低減をもたらす場合がある。血管機能低減の算出に用いられる一回目の測定と二回目の測定の間の期間は、例えば、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約7か月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、もしくは約12か月間;約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約11年間、約12年間、約13年間、約14年間、もしくは約15年間、またはこれらの任意の組み合わせ、例えば、1年3か月;4年7か月など、とすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の、本開示の方法および組成物は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与することで、血管機能の改善をもたらし得る。血管機能は従来公知の任意の手法を用いて測定することができ、例えば、脈幅トノメトリ測定法、反応性充血指数の自然対数、反応性充血指数、フラミンガムRHI、最大閉塞/対照に対する曲線下面積、最大閉塞/対照までの平均値、および他の公知のエンドPAT指数が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明のいくつかの実施形態では、血管機能はPAT指数を用いて測定される。より具体的には、本開示の方法および組成物は、血管機能の1または複数の測定値において、約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上の改善をもたらす場合があり、上記の測定値としては、脈幅トノメトリ測定法、反応性充血指数の自然対数、反応性充血指数、フラミンガムRHI、最大閉塞/対照に対する曲線下面積、最大閉塞/対照までの平均値、および他の公知のエンドPAT指数が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0074】
V.心室性能の心エコー評価
心室性能と心筋収縮能は、顕性心不全が現れる前に心血管系の健康状態の障害を明らかにすることができる、重要な測定値である。心室性能は、心エコー法を用いて評価し、心筋性能指数またはMPIを介して定量化することができる。MPIは、収縮機能と拡張機能とを組み合わせた指数である。具体的には、MPIは、等容性収縮時間と等容性弛緩時間の和を駆出時間で割ったものと定義される。
【0075】
様々なバージョンのMPIが当該技術分野において公知であり、各バージョンのMPIを心室性能の評価に用いてよい。例えば、MPI指数として、血液プールMPIおよび組織ドプラMPIを挙げることができ、これらに限定はされない。MPIは、パルス組織ドプラ心エコー法(TDE)を用いることにより測定することができる。TDEを用いてMPIを算出するには、機能的単心室の等容性収縮時間(IVCT)と、等容性弛緩時間(IVRT)と、駆出時間(ET)とを測定する。次に、IVCTとIVRTとを足し合わせ、その和をETで割ることにより、MPIが求められる。
【0076】
フォンタン手術を以前に行った患者では、通常、時間の経過とともに、心室性能が低下していく。患者の心室性能が、維持される、時間が経過しても最小限の減少しか示さない、または、増加するような、患者の治療は、当該治療が、臨床的に有益であり、且つ、患者の生活の質を改善できるか、あるいは、心血管機能の低下を抑制できることを示している。
【0077】
1つの実施形態では、本発明は、フォンタン手術を以前に受けた被験者の心室性能を、維持する、その減少を最小限とする、または増加する方法に関する。本発明の方法は、患者に有効量の有効なPDE5阻害剤を投与、好ましくは毎日投与することを含み、上記PDE5阻害剤は好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である。本発明のいくつかの実施形態では、心室性能は心筋性能指数(MPI)を用いて評価される。いくつかの実施形態では、MPIは血液プールMPIであってもよく、他の実施形態では、MPIは組織ドプラMPIであってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の、本開示の方法および組成物は、フォンタン術後患者に投与することで、時間の経過による心室性能の低減を、最小限にするかなくすことができる。心室性能は従来公知の任意の方法を用いて測定することができ、例えば、心筋性能指数(MPI)、血液プールMPI、組織ドプラMPI、平均等容性収縮・弛緩などの公知の心室性能指数が挙げられ、これらに限定はされない。より具体的には、本発明の、本開示の方法および組成物は、時間の経過による、心室性能の低減を、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約35%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満とすることができる。心室性能低減の算出に用いられる一回目の測定と二回目の測定の間の期間は、例えば、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約7か月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、もしくは約12か月間;約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約11年間、約12年間、約13年間、約14年間、もしくは約15年間、またはこれらの任意の組み合わせ、例えば、1年3か月;4年7か月など、とすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明の、本開示の方法および組成物は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に投与することで、時間の経過とともに、心室性を改善することができる。心室性能は従来公知の任意の方法を用いて測定することができ、例えば、心筋性能指数(MPI)、血液プールMPI、組織ドプラMPI、平均等容性収縮・弛緩などの公知の心室性能指数が挙げられ、これらに限定はされない。例えば、本発明の、本開示の方法および組成物は、任意の公知の方法で測定した場合に、心室性能を約1%以上、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上改善させることができ、上記の方法としては、心筋性能指数(MPI)、血液プールMPI、組織ドプラMPI、平均等容性収縮・弛緩などの公知の心室性能指数が挙げられ、これらに限定はされない。
【0080】
VI.本発明の方法
本発明の、本開示の方法は、運動耐容能および/または心室性能の改善を必要とする、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において、運動性能および心室性能を改善すること、に関する。概して、上記方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩である、有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩を、毎日投与することで、
(a)MPIによって評価されるSVHD患者の機能的単心室の心室性能;
(b)VAT時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(c)最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量によって評価される運動耐容能;
(d)VAT時の仕事率;
(e)VAT時のVE/VCO
をそれぞれ個々に、または任意の組み合わせで、改善すること;
(f)安静時の拡張期血圧;および
(g)安静時の酸素飽和度(%)、
をそれぞれ個々に、まとめて、または任意の組み合わせで、改善すること、を含む。
【0081】
好ましくは、本発明の方法は、上記の(a)~(g)を改善するものであり、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで改善することを含む。より好ましくは、本発明において、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、有効量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を毎日投与することによって、上記の(a)~(g)が改善され、個々に、まとめて、または任意の組み合わせで改善されることを含む。
【0082】
前述の通り、また、本明細書で使用される場合、有効なPDE5阻害剤とは、各種組織に血液を供給している血管を内張りしている平滑筋細胞における、環状GMPに対するcGMP特異的なホスホジエステラーゼ5(PDE5)の分解作用を阻害するものである。
【0083】
前述の通り、また、本明細書で使用される場合、MPIとは、焦点型(focused)心エコー図によって求められる、心室の収縮拡張機能の尺度であり、また、各種心疾患の予後・進行マーカーである。この数値は、等容性収縮時間(ICT)と等容性弛緩時間(IRT)の和を駆出時間(ET)で割ったものと定義され、単心室について算出することができる。心筋性能指数の変化は、機能的単心室の流出入路の血液プールドプラ評価から得られる速度によって求められる。換言すると、MPIは、包括的な心機能不全および心室性能を評価するための、包括的な収縮期および弛緩期の時間間隔の尺度である。さらに、MPIはドプラ指数であるため、心室形状に依存せず、SVHD患者においてどちらの心室が機能的単心室であるかによって、左室機能および右室機能のいずれにも適用することができる。
【0084】
より具体的には、上記方法は、有効量の有効なPDE5阻害剤またはその製薬上許容される塩、好ましくはウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を、毎日投与することで、光受容体ホスホジエステラーゼ酵素(PDE6)の阻害による失明もしくは視力喪失、11A1(PDE11A1)などのPDE11の阻害による背痛および/もしくは筋肉痛、並びに/または、11A3(PDE11A3)などのPDE11の阻害による精子濃度の減少を含むがこれらに限定はされない、治療を制限する副作用を引き起こすことなく、上記の改善のうちの1または複数を奏することを含む。Kayik,Gら:Investigation of PDE5/PDE6 and PDE5/PDE11 selective potent tadalafil-like PDE5 inhibitors using combination of molecular modeling approaches, molecular fingerprint-based virtual screening protocols and structure-based pharmacophore development.、Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry、32巻(1号):頁311~330(2017年);Pomara G.およびMorelli G.:Inhibition of phosphodiesterase 11 (PDE11) impacts on sperm quality.、Int J Impot Res、17巻:頁385~386(2005年)、並びに、Huang S.A.およびLie,J.D.:Phosphodiesterase-5 (PDE5) Inhibitors.In the Management of Erectile Dysfunction.、Pharmacy and Therapeutics、38巻(7号):頁407~419(2013年7月)。
【0085】
極めて独特で且つ驚くべきこととして、本発明の方法は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者において、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の酸素消費量と、最大下運動負荷時または最大VO時の酸素消費量を増加および/または最大化することで、運動耐容能を改善し、また、VAT時の仕事率とVAT時のVE/VCOを増加および/または最大化するものである。
【0086】
また、極めて独特で且つ驚くべきこととして、本発明の方法は、SVHD患者、すなわちフォンタン術後患者、のMPIを改善するものである。換言すると、本発明の方法は、機能的単心室の収縮拡張機能と、全体的な心機能の両方を改善するものである。換言すると、本発明の方法は、充填排出特性、すなわち、末梢組織の需要に応えるため新鮮な酸素を含んだ血液を身体に送り出すための、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の、機能的単心室の搾り出し能および再建された異常SVHD心臓の全体的能力、を改善するものである。
【0087】
MPI改善の臨床的価値は、FUEL試験において、プラセボ治療を受けたSVHD患者、すなわちフォンタン術後患者、と比較した場合の、本発明の方法による治療を受けたSVHD患者、特にフォンタン術後患者、におけるMPIの統計的に有意な改善によって、証明される。
【0088】
MPI改善の臨床的価値は、前述の、TDEを用いた、等容性収縮時間、等容性弛緩時間、および駆出時間によって評価される、単心室性能の改善によっても証明される。
【0089】
「等容性収縮時間」(IVCT)とは、本明細書では、収縮期の早期に起こる単心室性イベントを意味し、このイベント中、当該単心室は体積変化なしに(等容的に)収縮する。搾り出しイベントであるこの心周期の期間は、全ての心臓弁が閉じたままで起こる。
【0090】
「等容性弛緩時間」(IVRT)とは、本明細書では、弁の閉鎖から発せられるII音から、弁の開放に追従して機能的単心室の充満が開始されるまでの、心周期、すなわち収縮と弛緩の周期、のインターバル期間を意味する。IVRTは、機能的単心室の拡張機能障害の指標となる場合がある。
【0091】
「駆出時間」(ET)とは、本明細書では、弁の開閉時の弁を挟んだ圧力差を測定することにより求められる、再建異常心臓の単心室駆出時間(UVET)を意味する。
【0092】
「1回拍出量」とは、本明細書では、機能的単心室が1回の収縮で循環系に送り出すことのできる新鮮な酸素を含んだ血液の量を意味する。
【0093】
「心拍出量」とは、本明細書では、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の機能的単心室が1分間に循環系に送り出すことのできる血液の量を意味する。1回拍出量と心拍数によって心拍出量が求められる。
【0094】
本発明の方法における、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の治療における改善は、それぞれが独特で驚くべきものであるが、フォンタン術後患者を含むSVHD患者の治療における改善の組み合わせは、特に独特で驚くべきものである。
【0095】
別の実施形態では、驚くべきことに、シルデナフィルまたはタダラフィルなどのウデナフィル以外のPDE5阻害剤を用いた以前の非常に限定された研究と比較して、ウデナフィルを投与した場合、本発明の方法は改善された結果を示した。さらに別の実施形態では、驚くべきことに、シルデナフィルまたはタダラフィルなどのウデナフィル以外のPDE5阻害剤を用いた他の以前の治療と比較して、ウデナフィルを投与した場合、本発明の方法は、副作用が少なくなり、且つ/または、副作用の重症度が小さくなった。
【0096】
いくつかの実施形態では、フォンタン術後患者は成人期のヒトとすることができ、一方で他の実施形態では、フォンタン術後患者は青年期のヒトとすることができる。いくつかの実施形態では、フォンタン術後患者は約12歳~約19歳とすることができ、一方で他の実施形態では、フォンタン術後患者は約12歳~18歳とすることができる。さらに他の実施形態では、フォンタン術後患者は約12歳~約16歳とすることができる。さらに他の実施形態では、フォンタン術後患者は約6歳~成人とすることができる。1つの実施形態では、フォンタン術後患者は18歳未満とすることができる。
【0097】
VII.投与量および剤形
ウデナフィルの構造を以下に示す。
【0098】
【化1】
【0099】
いくつかの実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約0.01~約150mg/kgの総1日量で投与することができる。別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約0.01mg/kgから最大約30mg/kgの総1日量で投与することができる。別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約2.5mg、約5mg、約7.5mg、約10mg、約12.5mg、約15mg、約17.5mg、約20mg、約22.5mg、約25mg、約27.5mg、約30mg、約32.5、約35mg、約37.5mg、約40mg、約42.5mg、約45mg、約47.5mg、約50mg、約52.5mg、約55mg、約57.5mg、約60mg、約62.5mg、約65mg、約67.5mg、約70mg、約72.5mg、約75mg、約77.5mg、約80mg、約82.5mg、約85mg、約87.5mg、約90mg、約92.5mg、約95mg、約97.5mg、約100mg、約102.5mg、約105mg、約107.5mg、約110mg、約112.5mg、約115mg、約(bout)117.5mg、約120mg、約122.5mg、約125mg、約127.5mg、約130mg、約132.5mg、約135mg、約137.5mg、約140mg、約142.5mg、約145mg、約147.5mg、約150mg、約152.5mg、約155mg、約157.5mg、約160mg、約162.5mg、約165mg、約167.5g、約170mg、約172.5mg、約175mg、約180mg、約182.5mg、約185mg、約187.5mg、約190mg、約192.5mg、約195mg、約197.5mg、約200mg、約202.5mg、約205mg、約207.5mg、約210mg、約212.5mg、約215mg、約217.5mg、約220mg、約222.5mg、約225mg、約227.5mg、約230mg、約232.5mg、約235mg、約237.5mg、約240mg、約242.5mg、約245mg、約247.5mg、約250mg、約252.5mg、約255mg、約257.5mg、約260mg、約262.5mg、約265mg、約267.5mg、約270mg、約272.5mg、または約275mgなどの、約2.5mg~約275mgの投与量で投与することができ、ただし、係る個々の投与量はいずれも、当該製剤が販売を承認されないほどの、治療を制限する毒性も治療を制限する副作用も引き起こさないものである。さらに別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約27.5mg、約30mg、約32.5、約35mg、約37.5mg、約40mg、約42.5mg、約45mg、約47.5mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約87.5mg、約90mg、約95mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、または約275mgなど、約5mg~約275mgの総1日量で投与することができ、但し、係る個々の総1日量はいずれも、当該総1日量が販売を承認されないほどの治療を制限する毒性も治療を制限する副作用も引き起こさないものである。
【0100】
さらなる別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約25mg、約37.5mg、約50mg、約75mg、約87.5mg、125mg、約175mg、約200mg、約225mg、約250mg、約275mg、約300mg、約325mg、約350mg、約375mg、約400mg、約425mg、約450mg、約475mg、約500mg、約525mg、約550mg、約575mg、約600mg、約625mg、約650mg、約675mg、または約700mgなど、約25mg~約700mgの総1日量で投与することができ、ただし、係る個々の総1日量はいずれも、当該総1日量が販売を承認されないほどの治療を制限する毒性も治療を制限する副作用も引き起こさないものである。
【0101】
別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約37.5mg、約75mg、約87.5mg、125mg、または約175mgの総1日量で投与することができる。別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、約37.5mg~約175mgの総1日量範囲で、投与することができ、好ましくは75mg~約175mgの総1日量範囲で、より好ましくは約87.5mg~約175mgの総1日量範囲で、最も好ましくは125mg~約175mgの総1日量範囲で、投与することができる。好ましい実施形態では、ウデナフィルまたは任意のその製薬上許容される塩は、任意の投与量あるいは任意の総1日量でフォンタン術後患者に投与することができ、ただし、選択された個々の投与量のいずれも、選択された個々の総1日量のいずれも、当該総1日量が販売を承認されないほどの治療を制限する毒性も治療を制限する副作用も引き起こさないものである。
【0102】
すなわち、本発明は、任意の投与量、任意の総1日量、任意の治療レジメン、任意の剤形で、フォンタン術後患者を含むSVHD患者に、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を投与することを企図しており、ただし、いずれの係る投与量、総1日量、治療レジメン、または剤形が選択された場合も、販売が承認されないほどの治療を制限する毒性も治療を制限する副作用も引き起こさない。特に、本発明は、フォンタン術後患者を含むSVHD患者にウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を有効量で投与することで、未治療SVHD患者と比較して、MPI、単心室性能、収縮機能および/または拡張機能、心室搾り出し能、心拍出量、VAT時および/または最大VO時の運動耐容能または運動能力、VAT時の仕事率、VAT時のVE/CO、安静時の拡張期血圧、安静時の酸素飽和度(%)を改善すること、且つ/あるいは、SVHDの進行の低下速度を減少させること、を企図しており、ただし、上記治療有効量は、PDE6および/もしくはPDE11の阻害と関連した、治療を制限する毒性も、治療を制限する副作用も、並びに/または、当該製剤の販売が承認されないほどの治療を制限する副作用も引き起こさないものである。
【0103】
1つの実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、1日1回投与することができる。
【0104】
別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、1日1回投与することもできるし、あるいは、複数回に分割して投与することもでき、例えば1日2回、1日3回、1日4回、または1日にそれ以上の回数投与することもできる。
【0105】
さらに別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、治療的有効血中レベルが、24時間の投与期間のうち、少なくとも約1.5時間~約24時間維持されるように、より具体的には、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、少なくとも約15時間、少なくとも約16時間、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、または少なくとも約24時間維持されるように、1日2回投与することができる。すなわち、本発明は、ウデナフィルおよび/またはDA8164活性代謝物などの任意のウデナフィル活性代謝物による、24時間の投与期間内の任意の期間の、有効血中レベルの維持、を企図している。
【0106】
いくつかの実施形態において、1日2回投与される場合のウデナフィルまたは製薬上許容される塩の総1日量は、1日1回投与される場合のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の総1日量よりも少なくすることができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、1日2回投与される場合のウデナフィルまたは製薬上許容される塩の総1日量は、より高用量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩が1日1回投与された場合と同じ、24時間中の時間数、治療的有効血中レベルを維持することができる。他の実施形態では、1日2回投与される場合のウデナフィルまたは製薬上許容される塩の総1日量は、同じ用量のウデナフィルまたはその製薬上許容される塩が1日1回投与された場合よりも多い、24時間中の時間数、治療的有効血中レベルを維持することができる。すなわち、本発明は、任意の総1日量のウデナフィルまたは任意のその許容される塩を、1日1回、または分割量で1日複数回、例えば、1日2回、1日3回、1日4回、もしくは1日にそれ以上の回数、投与することにより、治療的有効血中レベルを24時間維持すること、を企図している。
【0108】
1つの実施形態では、驚くべきことに、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を1日2回投与した場合、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を1日1回投与するよりも副作用が少なくなる。別の実施形態では、驚くべきことに、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩の1日2回の投与は、1日1回の投与よりも少ない総1日量で、治療的有効レベルのウデナフィルを達成することができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、ウデナフィルの製薬上許容される塩は、酸付加塩とすることができる。1つの実施形態では、ウデナフィルの酸付加塩は、塩酸付加塩、臭化水素酸付加塩、硫酸付加塩、またはリン酸付加塩などの無機酸付加塩とすることができる。別の実施形態では、酸付加塩は、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、グリコール酸塩、コハク酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ガラクツロン酸塩、エンボン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、シュウ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、アジピン酸塩、またはシクラミン酸塩などの有機酸付加塩とすることができる。特定の実施形態では、ウデナフィルの製薬上許容される塩は、シュウ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、桂皮酸塩、アジピン酸塩、またはシクラミン酸塩とすることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩は、医薬組成物として投与することができる。1つの実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含む医薬組成物は、臨床応用上、種々様々な経口用剤形または非経口用剤形に製剤化することができる。それぞれの剤形には、各種の崩壊剤、界面活性剤、賦形剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤などの希釈剤、または他の製薬上許容される医薬品添加物を含ませることができる。
【0111】
ウデナフィル組成物は、製薬上許容される任意の方法を用いて投与することができ、例えば、エアゾール製剤を介して、または、頬用もしくは鼻用のゲル製剤もしくはスプレー製剤を介して、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、経口投与、直腸内投与、経眼(ocular)投与、非経口投与(静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与、大槽内投与、腹腔内投与)、肺内投与、腟内投与、局所投与、外用投与、乱切後外用投与、粘膜投与することができる。
【0112】
さらに、ウデナフィル組成物は、固体剤形などの、任意の製薬上許容される剤形に製剤化することができ、例えば、錠剤、丸剤、菓子錠剤、カプセル剤、カプレット剤、口腔内崩壊剤形、舌下用剤形、頬側用剤形、液体、液状分散液、液状懸濁液、溶液、エアゾール剤、肺用エアゾール剤、鼻用エアゾール剤、および半固体剤、すなわち、軟膏剤、クリーム剤、薄膜剤、およびゲル材、並びに、経皮パッチなどの貼付剤が挙げられるが、これらに限定はされない。さらに、上記組成物は、放出制御製剤、徐放性製剤、即放性製剤、放出調節製剤、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。さらに、上記組成物は経皮送達系であってもよい。
【0113】
別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含む医薬組成物は、経口投与用の固体剤形に製剤化することができ、上記固体剤形は、散剤、粒剤、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、キャッシュ(caches)、口腔内崩壊剤形、舌下用剤形、頬側用剤形、菓子錠剤、または丸剤とすることができる。さらに別の実施形態では、上記固体剤形には、炭酸カルシウム、デンプン、スクロース、ラクトース、微結晶性セルロース、またはゼラチンなどの1種または複数種の賦形剤を含ませることができる。加えて、上記固体剤形には、上記賦形剤の他に、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含ませることができる。いくつかの実施形態では、上記の経口用剤形は、即放性型または放出調節型とすることができる。放出調節剤形としては、放出制御剤形、徐放性剤形、放出調節または持続放出剤形、腸内放出剤形などが挙げられる。放出調節剤形で用いられる賦形剤は当業者に一般的に知られているものである。
【0114】
例えば、固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、経口用剤形崩壊剤、または封入材として働くものであってもよい、1種または複数種の物質としてもよい。散剤、粒剤、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、キャッシュ(caches)、菓子錠剤、または丸剤などの経口用剤形は、5%~70%のウデナフィルを含有することが好ましい。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース(例えば、ラクトース一水和物)、ペクチン、デキストリン、デンプン(例えば、コーンスターチ)、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化ケイ素(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、低融点ワックス、カカオ脂などである。「調製」という用語は、封入材を含むかまたは含まない、ウデナフィルの固体、液体、または半固体マトリックスの製剤を包含することが意図される。
【0115】
液状製剤としては、水剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられ、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液などである。非経口注射の場合、液状製剤は、ポリエチレングリコール水溶液に溶解させて製剤化できる。例えば、経口使用において好適な水溶液は、ウデナフィルを水に溶解し、所望により好適な着色剤、加香剤、安定剤、および粘稠化剤を添加することで、調製することができる。別の例では、経口使用に好適な水性懸濁剤は、微粉化したウデナフィルを、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウムなどの周知の懸濁化剤などの粘稠性物質を含む水に分散させることで調製することができる。
【0116】
また、使用の直前に、経口投与用の液状製剤に変換されることが意図される、固形製剤も包含される。このような液体形態としては水剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられる。1つの実施形態では、上記医薬組成物は、懸濁剤、乳剤、またはシロップ剤などの経口投与用の液体剤形に製剤化することができ、ウデナフィルの他に、着色剤、加香剤、安定剤、緩衝剤(リン酸塩、ホウ酸塩、および硫酸塩などの無機酸の塩といった、pHを静注用の所望の範囲に調整するための緩衝剤など)、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、溶解補助剤などを含んでもよい。他の実施形態では、上記液体剤形は、水および流動パラフィンなどの通常用いられる単純な希釈剤の他に、保湿剤、甘味剤、芳香族化合物、または保存剤などの種々の医薬品添加物を含むことができる。特定の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含む組成物は、小児患者への投与に好適であるように製剤化することができる。
【0117】
1つの実施形態では、上記医薬組成物は、無菌の水性の溶液、懸濁液、乳濁液、または非水溶液などの、非経口投与用の剤形に製剤化することができる。他の実施形態では、上記の非水溶液または懸濁液は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、またはオレイン酸エチルなどの注射用エステルを含むことができる。あるいは、上記の医薬組成物は、直腸内投与用または膣内投与用の剤形に製剤化することができる。坐剤の基剤として、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン系油、またはグリセリンゼラチンを用いることができる。
【0118】
上記医薬製剤は、組成中に界面活性剤などの適切な助溶剤を必要とする場合がある。このような助溶剤として、ポリソルベート20、ポリソルベート60、およびポリソルベート80;プルロニックF-68、プルロニックF-84、およびプルロニックP-103;シクロデキストリン;並びに、ポリオキシル35ヒマシ油が挙げられる。このような助溶剤は、通常は約0.01重量%~約2重量%のレベルで使用される。製剤を調剤する際の変動性を低減するため、製剤の懸濁液もしくはエマルションの各成分の物理的分離を低減するため、且つ/または、製剤を改善するために、単純な水溶液の粘度よりも大きな粘度が望ましい場合がある。そのような粘度上昇剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸およびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、並びに上記の組み合わせが挙げられる。このような薬剤は、通常は約0.01重量%~約2重量%のレベルで使用される。
【0119】
医薬製剤は単位用量形態であることが好ましい。そのような形態では、製剤は、適切な量のウデナフィルまたは任意の許容されるその医薬品塩を含有する単位用量に小分けされる。この単位用量形態は、分包などのパッケージ化された製剤とすることができ、パッケージは個別量の製剤を含有し、バイアルまたはアンプル内にパッケージ化された錠剤、カプレット剤、カプセル剤、口腔内崩壊剤形、舌下用剤形、頬側用剤形、および散剤などである。また、この単位用量形態は、カプセル剤、錠剤、カプレット、丸剤、口腔内崩壊剤形、舌下用剤形、頬側用剤形、カシェ剤、または菓子錠剤そのものとすることもできるし、あるいは、これらのいずれかを適切な数だけパッケージ化した形態とすることもできる。
【0120】
医薬組成物は、即放性、徐放性、持続放出性、放出調節、利便性、および/または快適性を与えるための成分を含んでもよい。このような成分としては、高分子量陰イオン性粘膜模倣性(mucomimetic)ポリマー、ゲル化多糖類、および微粉薬物担体基質が挙げられる。
【0121】
別の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含む医薬組成物は、口腔内崩壊剤形、舌下用剤形、または頬側用剤形として製剤化することができる。このような剤形は、舌下に投与される舌下錠または溶液組成物と、頬と歯茎の間に配置されるバッカル錠とからなる。
【0122】
上記医薬製剤は、コーティング剤をさらに含有させて調製してもよく、例えば、紫外光によりフリーラジカルを生成可能な遮光剤、酸化チタンなどの金属酸化物など、および、フリーラジカルスカベンジャーとして、例えば、安息香酸などの有機酸などのコーティング剤である。加えて、上記コーティング剤としては、水溶性ポリマー(例えば、ヒプロメロースまたはヒドロキシプロピルセルロース)、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、シェラック、酢酸コハク酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼイン、アルギン酸ナトリウム、およびマンニトールを含有する腸溶コーティング層、並びに/または、エチルセルロース、中鎖トリグリセリド、オレイン酸、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸などを含む腸溶コーティング水溶液をさらに挙げることができ、これらに限定はされない。
【0123】
さらに他の実施態様では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含む医薬組成物は、経鼻用剤形として製剤化することができる。本発明のそのような剤形は、経鼻送達用の、溶液組成物、懸濁液組成物、乳濁液組成物、およびゲル組成物を含む。
【0124】
1つの実施形態では、上記医薬組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、またはシロップなどの、経口投与用の液体剤形に製剤化することができる。他の実施形態では、上記液体剤形は、水および流動パラフィンなどの通常用いられる単純な希釈剤の他に、保湿剤、甘味剤、芳香族化合物、または保存剤などの種々の医薬品添加物を含むことができる。特定の実施形態では、ウデナフィルまたはその製薬上許容される塩を含む組成物は、小児患者への投与に好適であるように製剤化することができる。
【0125】
上記医薬組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、投与時間、投与様式、排泄率、および疾患の重症度によって変えることができる。
【0126】
VIII.運動負荷試験
運動負荷試験としては、最大下運動負荷時または換気性無酸素性作業閾値(VAT)時のVO値の評価を挙げることができる。VO最大値(「最高VO」)、または最大(「最高」)酸素消費量とは、激しい運動の際に個人が利用することができる酸素の最大量を指す。この測定値は、心血管の健康状態および有酸素性持久力の信頼できる指標と一般的に見なされている。理論的には、運動時に使用できる酸素が多いほど、その人が生産できるエネルギーは多くなる。筋肉は長時間(有酸素)運動に酸素を必要とし、血液は筋肉に酸素を運び、心臓は有酸素運動の要求量を満たすために十分な量の血液を送り出さなければならないため、この試験は心肺体力に対して用いられる場合が多い。しかしながら、最高VOは、多くの循環器疾患状態の代替として有用であり得るが、フォンタン術後の評価項目としてはそれほど適切ではない可能性がある。この独特な生理においては、右心室の収縮(ポンピング)ではなく、中心静脈圧、すなわち心拍出量が、経肺血流の主な駆動因子である。Gewillig MおよびGoldberg DJ.、Failure of the fontan circulation.Heart Fail Clin.、10巻(1号):頁105~116(2014年1月);Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月);Gewillig M、Brown SC、Eyskens B、Heying R、Ganame J、Budts W、La Gerche A、およびGorenflo M.、The Fontan circulation: who controls cardiac output?、Interact Cardiovasc Thorac Surg.、10巻(3号):頁428~433(2010年3月);並びに、Goldberg DJ、Avitabile CM、McBride MG、およびParidon SM.、Exercise capacity in the Fontan circulation.、Cardiol Young.、23巻(6号):頁824~830(2013年12月)。激しい運動による心拍出要求量の増加に伴い、フォンタン循環における中心静脈圧はその要求を満たすために上昇しなければならないが、最終的には、それを超えてもはや上昇することのできない決定的な上限に達する。Navaratnam D、Fitzsimmons S、Grocott M、Rossiter HB、Emmanuel Y、Diller GP、Gordon-Walker T、Jack S、Sheron N、Pappachan J、Pratap JN、Vettukattil JJ、およびVeldtman G.、Exercise-Induced Systemic Venous Hypertension in the Fontan Circulation.、Am J Cardiol.、117巻(10号):頁1667~1671(2016年5月15日)。亜最大運動負荷時では、中心静脈圧の上昇はこの生理的上限には達しないため、この運動レベルでのアウトカムは、肺血管系の薬理学的処置に対する感受性がより高い可能性がある。
【0127】
VOは、対象にマスクを着けさせ、吸気と呼気の体積およびガス濃度を測定することによって、測定される場合が多い。この測定はしばしば臨床現場と研究の両方で用いられており、最も正確とみなされている。試験は通常、疲労困憊まで強度を上げながらトレッドミル上で運動するか自転車エルゴメータに乗るかのどちらかを含み、対象の最大下運動負荷時および/または対象の無酸素性作業閾値時に読み取りを行うように設計される。
【0128】
以前にフォンタン手術を受けた患者では、通常、時間の経過とともにVO測定値が減少していく。本明細書で開示される方法により患者を治療して、患者のVO測定値が同様のレベルに維持された場合は、VO機能のさらなる低下が起こらなかったことを示し、あるいは、治療に伴い改善された場合は、当該治療が臨床的に有益であり、心血管機能を改善するか、心血管機能の低下を防止するか、心血管機能の低下速度を下げる可能性があることを示している。
IX.心筋性能指数(MPI)
【0129】
概言すると、MPI(ドプラ法で導かれる指数またはTei指数とも称される)は、焦点型(focused)心エコー図によって求められる、心室の収縮拡張機能の尺度である。MPIは、収縮期の時間間隔と弛緩期の時間間隔を組み合わせて心機能を評価するものである。より具体的には、MPIは、心臓時間間隔を用いた数値により表される心室性能の評価に用いることができる。この数値は、等容性収縮時間(ICT)と等容性弛緩時間(IRT)の和を駆出時間(ET)で割ったものに等しく、左心室または右心室のどちらについても算出することができる。Pellett,A.A.ら:The Tei Index:Methodology and Disease.State Values.、Echocardiography: A Jrnl.of CV Ultrasound & Allied Tech.、21巻(7号):頁669~672(2004年);およびUlucay,A.、Tatli E.:Myocardial performance index.、Anadolu Kardiyol Derg.、8巻(2号):頁143~8(2008年4月)(共に、その全体が参照によって本明細書に援用される)。FUEL試験では、MPIによって機能的単心室の性能が評価された。すなわち、FUEL試験からのMPI結果は、機能的単心室の流出入路血液プールドプラ評価から得られる速度によって求めたものである。換言すると、FUEL試験のMPIは、機能的単心室の心室流出入のパルスドプラ法速度スペクトルを用いて、心臓時間間隔を測定することにより求めたものである。
【0130】
X.心エコー検査
心エコーは、本プロトコル用の特殊な訓練を受けた音波検査者により実施された。目的の主要アウトカムは、ドプラ法に基づいた流出入持続時間測定値を用いたMPIとした。主心室への流入の持続時間と主半月弁を通過する流出の持続時間を測定し、標準式を用いたMPIの算出に用いた。Tei C、Ling LH、Hodge DO、他:New index of combined systolic and diastolic myocardial performance:a simple and reproducible measure of cardiac function-a study in normals and dilated cardiomyopathy.、J Cardiol、26巻(6号):頁357~66(1995年);および、Pellet AAら:The Tei Index:Methodology and Disease State Values.、Echocardiography:A Jrnl Of CV Ultrasound & Allied Tech、21巻(7号):頁669~672(2004年)。さらなる組織ドプラ画像を得て、前述の組織ドプラ法に基づいたMPIの算出に用いた。Harada K、Tamura M、Toyono M、他:Comparison of the right ventricular Tei index by tissue Doppler imaging to that obtained by pulsed Doppler in children without heart disease.、Am J Cardiol、90巻(5号):頁566~9(2002年)。可能な限り、3回の測定を行って、平均の持続時間を計算に用いた。
【0131】
これらの方法は、下記の非限定例によりさらなる理解を得ることができる。
【実施例
【0132】
実施例1
フォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)試験
FUEL試験は世界各国の30施設で実施した。FUEL試験は、フォンタン姑息術を受けたSVHDを有する青年における、ウデナフィルの第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験であった。(メジオン・ファーマ社(Mezzion Pharma Co.Ltd.)からの資金援助の下、国立心肺血液研究所が資金援助する小児心臓ネットワークによって実施された;ClinicalTrials.gov番号:NCT02741115)。
【0133】
主要目的は、6か月間に亘って、フォンタン生理を有する青年において、運動耐容能に対するウデナフィルの影響を求めることとした。主要アウトカムは、ベースラインから26週目の来院までの、最高運動時(最大または最高VO時)の酸素消費量における変化とした。副次運動アウトカムは、最大運動負荷時のさらなる尺度における変化、および、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の亜最大運動の尺度における変化とした。臨床的副次目的の主要アウトカムは、心エコー法より得られる収縮期および弛緩期の心室機能の尺度である、心筋性能指数(MPI)における変化、PAT法より得られる末梢血管機能の尺度である、対数変換反応性充血指数(lnRHI)における変化、並びに、対数変換血清中BNP値における変化とした。有害事象の報告を通じて安全性のモニタリングを行い、有害事象の報告は、試験コーディネーターアウトリーチの事前指定プロトコルに従い、各施設の試験チームのメンバーとの、臨時の患者・家族との情報交換を通じて収集された。
【0134】
試験集団
12歳以上18歳以下であり、フォンタン手術を受けたことがあり、PDE5阻害剤による治療を受けておらず、40kg以上であり、且つ、自転車エルゴメータ法の最低身長要求値(132cm以上)を満たす者を、組入れ対象とした。ウデナフィルの運動能力に対する影響を分離するため、重度の心室機能障害を有する患者、重度の房室弁閉鎖不全を有する患者、事前臨床運動負荷試験で最高酸素消費量が年齢と性別による予測値の50%未満であった患者は除外した。選択基準および除外規準の完全な一覧を表1に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
無作為化および試験手順
組入れ後の被験者を、置換ブロックランダム化を用いてウデナフィルまたはプラセボに1:1比で割り付け、心室の形態(左室型と右室型、あるいは混合型)ごとに層別化した。試験の適格性およびコンセントの確認後、インターネットを使ったアルゴリズムによって無作為に割り付けた。
【0137】
投薬開始前に完了されたベースライン臨床検査では、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値を測定するための採血、標準的な自転車エルゴメータ漸増プロトコルを用いた心肺運動負荷試験(CPET)、標準的な心エコー図、並びに、フィンガーカフ(EndoPAT;イタマー・メディカル社(Itamar Medical)、イスラエル)によって測定される、末梢動脈トノメトリ法(PAT)を用いた、末梢血管機能の評価を行った。CPETの際に、最高運動時の呼吸交換率(RER)が1.10以上と定義される、最大下運動負荷を達成した被験者を、無作為化および試験薬投薬開始に適格であるとした。最大下運動負荷を達成しなかった被験者は、最初の試みの2週間以内の次の機会に、運動負荷試験を繰り返した。試験終了時の臨床検査では、血清中BNPの反復測定、CPET、心エコー図、およびPATを行った。
【0138】
統計解析
第一種の過誤0.05で、最大VOにおけるベースラインから26週目の試験までの変化の平均治療間差10%を検出する90%の検出力を可能にするために、群当たり200人の被験者というサンプルサイズを選んだ。以下を前提とした:ベースライン標準偏差は7.235ml/kg/分であり、最大VO測定値間の相関は0.33であり、脱落率および試験未完了率は10%であり、15%の被験者が26週目の運動負荷試験で最大下運動負荷を達成できない。これらの前提は、履歴データに基づくものであり、被験者間相関を評価するための保守的なアプローチと最大下運動負荷の未達成を反映したものである。
【0139】
主たる解析では、治療を意図した集団を用いて、治療群間の主要アウトカムにおける変化の差を評価した。この差の評価は、心室の形態(左室型単心室と右室型単心室、あるいは混合型)と治療群を固定因子とし、ベースライン最大VOを連続型共変量とした、共分散分析(ANCOVA)で行った。26週目の来院時のデータがない被験者については、この値をベースライン値と同じもの(変化なし)として補完した。副次的解析には、各副次評価項目で測定可能な値を示してプロトコルを完了することができた被験者が含まれた。連続的なデータ点である副次アウトカムの解析は、主要アウトカムの場合で記載された方法で行った。換気性無酸素性作業閾値時の知見の一般化可能性を評価するために、人口統計的特性および臨床的特徴の比較を、対応のあるVAT時VOデータがない被験者と、当該コホートの残りからなる被験者との間で行った。
【0140】
試験結果
2016年7月から2018年5月までに、30施設で、1376人の患者をスクリーニングした。図1B。これらのうち、200名をウデナフィルに、200名をプラセボに、無作為に割り付けた。無作為化時の平均年齢は15.5歳であり、平均身長は163.6cmであり、平均体重は58.1kgであった。被験者の60%は男性であり、81%は自身の人種的アイデンティティを白人と記載した。プラセボ群の被験者はウデナフィル群の被験者と比べて身長が高かったが、それ以外ベースライン特性は群間で同様であった。
【0141】
主要目的:運動の尺度
最大運動時データ(VO最大値)は、ベースライン試験時は全被験者において入手でき、26週目の試験時は379人の被験者(189人はウデナフィル群、190人はプラセボ群)において入手できた。26週目の試験時のデータが無い理由としては、患者の脱落やデータ収集ミス(n=14)、被験者が1.10以上のRERを達成できないこと(n=7)、が挙げられる。ウデナフィル群とプラセボ群の間には、安静時心拍数、呼吸数、収縮期血圧においての、ベースラインから26週目試験までの変化に差は無かった。ウデナフィル群には、小さいが統計的に有意な安静時酸素飽和度の増加があり、また、小さいが統計的に有意な拡張期血圧の減少があった。
【0142】
安静時のデータと運動能力の結果を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
拡張期血圧の安静時解析により、プラセボ群(+0.2の増加、改善なし)と比較して、ウデナフィル群の拡張期血圧に統計的に有意な変化(減少は改善を表す)(-2.9の減少、改善)が示された(p=0.003)。
【0145】
酸素飽和度(%)の安静時解析により、プラセボ群(-0.3の減少、改善なし)と比較して、ウデナフィル群の酸素飽和度(%)に統計的に有意な変化(増加は改善を表す)(+0.5の増加、改善)が示された(p=0.002)。
【0146】
最大運動時の分析により、プラセボ群では3.7mL/分の減少(-0.2%)が起こったのに対し、ウデナフィル群ではVO最大値が44mL/分(2.8%)増加したが、その差は統計的有意性(p=0.071)に届くものではなかった。
【0147】
さらに、VAT時VOを算出するための代謝データを、上記の表2に示すように、317人の被験者から入手でき、ウデナフィル群は170人、プラセボ群は181人であった。規模が大きいコホートと比較して、このサブグループのベースライン時の人口統計的特性や臨床的特徴に違いは見られなかった。対応のあるVAT時VOデータがある場合で、プラセボ群での8mL/分の減少(-0.7%)に対し、ウデナフィル群では30mL/分(1.92%)という統計的に有意(p=0.023)な改善が生じた。VAT時に測定された二酸化炭換気当量(VE/VCO)は、プラセボ群での0.05(0.2%)と比較して、ウデナフィル群では0.8(2.1%)という有意(p=0.011)な減少(換気効率の改善)を示し、一方で、仕事率は、プラセボ群での0.31ワット(0.78%)と比較して、ウデナフィル群では3.5ワット(5.5%)という有意(p=0.029)な改善を示した。よって、1日2回の87.5mgによるフォンタン術後患者の治療は、換気性無酸素性作業閾値時の運動能力の複数の尺度において、統計的に有意な改善を示した。
【0148】
副次目的の尺度
MPI尺度のための対応のある心エコーデータを、250人(63%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は122人、プラセボ群は128人であった。表3。プラセボ群 +0.01の増加、改善なし)と比較した場合、ウデナフィル治療群のMPIに統計的に有意(p=0.028)な変化(減少は改善を表す)(-0.02の減少、改善)があった。
【0149】
対応のあるPATより得られた血管機能データは、328人(81%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は163人、プラセボ群は165人であった。ウデナフィル群とプラセボ群ともに、lnRHIにおける改善は有意なものではなかった(0.07、0.05、p=0.59)。対応のある血清BNP値の尺度は、378人(95%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は187人、プラセボ群は191人であった。対数血清BNP値の変化は、群間で差はなかった(p=0.18)。対応のある心エコーデータ、対応のあるPATより得られた血管機能データ、および対応のある血清BNP値の尺度を表3に示す。
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】
【0152】
安全性および忍容性
【0153】
【表5】
【0154】
ウデナフィルとプラセボは、被験者に対し忍容性良好であった。試験コホートに死亡者はいなかった。合計24人の被験者(6%)が重篤有害事象を引き起こし、14人はウデナフィル群、10人はプラセボ群であった。試験薬との関連性があるかもしれない、ある可能性が高い、または確定的であると考えられる事象が、ウデナフィル群では3例、プラセボ群では2例あった。ウデナフィル群で生じた事象には、片側網膜動脈血栓症、片側網膜静脈血栓症、一過性下肢両麻痺、および一過性呼吸困難が含まれる。いずれかの治療群の被験者の少なくとも5%に生じた、試験薬との関連性があるかもしれない、ある可能性が高い、または確定的であると考えられる高頻度の非重篤有害事象を表4に示す。頭痛、顔面潮紅、腹痛、鼻出血、および勃起(男性被験者)がウデナフィル群で多くみられた。他の有害事象は全て群間で同様の頻度で起こった。
【0155】
実施例2
さらなるFUEL試験の結果
以下の例は、参照によってその全体が本明細書に援用される、Goldberg,DJら:Results of the Fontan Udenafil Exercise Longitudinal (FUEL) Trial.Circulation、141巻(8号):141:頁641-651(2020年)で言及されている上記のFUEL試験について、さらなる説明を行うものである。
【0156】
フォンタン手術は、肺血管抵抗の重要性が大きい循環である、両大静脈肺動脈吻合を形成するものである。時間の経過とともに、この循環は、運動能力の低下に関連する心血管効率の劣化をもたらす。生理機能を改善し薬物療法の指針となることを目的とした厳密な臨床試験が不足している。
【0157】
FUEL試験は、30施設で実施された第III相臨床試験である。被験者は1日2回87.5mgのウデナフィル、またはプラセボに1:1の比で無作為に割り付けた。主要アウトカムは最高運動時酸素消費量における変化の群間差とした。副次アウトカムには、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の亜最大運動における変化の群間差、心筋性能指数(MPI)、反応性充血指数(lnRHI)の自然対数、および血清中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が含まれた。
【0158】
2017年~2019年の間に、北アメリカおよび大韓民国の30か所の臨床施設で、400人のフォンタン生理を有する被験者の無作為化が行われた。無作為化時の平均年齢は15.5±2歳であり、被験者の60%が男性で81%が白人であった。400人全ての被験者が主たる解析に含まれ、欠測値を有する21人の被験者(11人はウデナフィルに、10人はプラセボに無作為に割り付け)について26週目の評価項目を補完した。無作為化された被験者の間で、最高酸素消費量は、ウデナフィル群で44±245mL/分(2.8%)増加し、プラセボ群では3.7±228mL/分(-0.2%)減少した(p=0.071)。VAT時解析により、ウデナフィル群とプラセボ群の比較で、酸素消費量(+33±185(3.2%)mL/分に対し-9±193(-0.9%)mL/分、p=0.012)、二酸化炭素換気当量(-0.8に対し-0.06、p=0.014)、および仕事率(+3.8ワットに対し+0.34ワット、p=0.021)において、統計的に有意な改善が示された。MPIの解析でも、同じ期間に、プラセボ摂取群と比較して、ウデナフィル治療群で統計的に有意(p=0.028)な改善が示された。lnRHIと血清BNP値の変化には差はなかった。
【0159】
FUEL試験において、ウデナフィル(87.5mg、1日2回)による治療は、最高運動時の酸素消費量の改善(p=0.071)と、(i)換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の運動能力の複数の尺度、(ii)MPI、(iii)安静時の拡張期血圧、および(iv)安静時の酸素飽和度(%)において、統計的に有意な改善を伴った。
【0160】
FUEL試験は、メジオン・ファーマ社から資金援助され、国立心肺血液研究所が資金援助する小児心臓ネットワークによって実施された。ClinicalTrials.gov番号:NCT02741115(その全体が参照によって本明細書に援用される)。
【0161】
臨床的観点
新局面
・Circulationの刊行物が、先天性心疾患における最も大きな医療介入試験である、フォンタンウデナフィル運動縦断(FUEL)試験の結果を記載している。Goldberg D.J.ら:Results of the FUEL Trial.Circulation、141巻(8号):141:頁641~651(2020年)
・実施例4に組み込まれたような、Goldberg D.J.ら:Results of the FUEL Trial.、Circulation、141巻(8号):141:頁641~651(2020年)に対するCirculation正誤表が、FUEL試験の補正されたMPI結果を記載している。
・ウデナフィルによる治療は、最高酸素消費量を統計的有意には増加させなかったが、注目に値する最高酸素消費量の増加をもたらした。
・ウデナフィルによる治療は、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の運動能力の尺度、VAT時の仕事率、VAT時の二酸化炭素換気当量(VE/VCO)、MPI、安静時の拡張期血圧、および安静時の酸素飽和度において、統計的に有意な改善をもたらした。
・ウデナフィルは、FUEL試験被験者に忍容性良好であり、副作用は、ホスホジエステラーゼ5阻害剤との関連性が以前から知られていたものに限定されていた。
【0162】
臨床的意味
・ウデナフィルは、大規模な第III相臨床試験で評価が行われ、フォンタン姑息術後の青年における運動能力の尺度に定量化可能な利益を示した、最初の薬物である。
・これらの知見は、ウデナフィルによる治療法が、両大静脈肺動脈吻合法を受けた患者コホートの、生理機能、運動能力、仕事率、VE/VCO2、MPI、心拍出量、搾り出し能(squeezing performance)、一定時間内に身体内を循環できる流量、安静時の拡張期血圧および/または酸素飽和度、並びに、機能的単心室の性能を改善し得るものであることを示唆している。
・進行中の調査では、単心室性先天性心疾患と共に生きている人の長期間の臨床経過に対するウデナフィルによる慢性治療の影響を割り出すことが求められている。
【0163】
単心室先天性心疾患(SVHD)を持って生まれた小児は、長期生存のために欠陥のある心臓を再建するために、一連の段階的な外科的処置を必要とする。
心臓を再建するためのこの一連の段階的外科的処置において最後に予定される姑息的手術であるフォンタン手術は、両大静脈肺動脈吻合を形成することにより、体循環と肺循環を分離するものである。Fontan FおよびBaudet E.、Surgical repair of tricuspid atresia.Thorax.、26巻(3号):頁240~248(1971年5月);並びに、Kreutzer G、Galindez E、Bono H、De Palma C、およびLaura JP.、An operation for the correction of tricuspid atresia.The Journal of thoracic and cardiovascular surgery.、66巻(4号):頁613~621(1973年10月)。
【0164】
しかし、肺動脈弁下型ポンプが存在しないため、得られるフォンタン循環は、肺血流が受動的であり、中心静脈圧が慢性的に上昇しており、心拍出量が低いことを特徴としている。Gewillig MおよびGoldberg DJ.、Failure of the fontan circulation.Heart Fail Clin.、10巻(1号):頁105~116(2014年1月); Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月); Gewillig M、Brown SC、Eyskens B、Heying R、Ganame J、Budts W、La Gerche A、およびGorenflo M.、The Fontan circulation: who controls cardiac output?、Interact Cardiovasc Thorac Surg.、10巻(3号):頁428~433(2010年3月);並びに、Goldberg DJ、Avitabile CM、McBride MG、およびParidon SM.、Exercise capacity in the Fontan circulation.、Cardiol Young.、23巻(6号):頁824~830(2013年12月)。フォンタン生理は小児期においては良好な忍容性を示すが、心血管系の効率は青年期を通じて低下していき、成人期に至る。Dennis M、Zannino D、du Plessis K、Bullock A、Disney PJS、Radford DJ、Hornung T、Grigg L、Cordina R、d’Udekem Y、およびCelermajer DS.、Clinical Outcomes in Adolescents and Adults After the Fontan Procedure.、J Am Coll Cardiol.、71巻(9号):頁1009~1017(2018年3月6日);Fernandes SM、McElhinney DB、Khairy P、Graham DA、Landzberg MJ、およびRhodes J.、Serial cardiopulmonary exercise testing in patients with previous Fontan surgery.、Pediatr Cardiol.、31巻(2号):頁175~180(2010年2月);Giardini A、Hager A、Pace Napoleone C、およびPicchio FM.、Natural history of exercise capacity after the Fontan operation: a longitudinal study.、Ann Thorac Surg.、85巻(3号):頁818~21(2008年3月);Jenkins PC、Chinnock RE、Jenkins KJ、Mahle WT、Mulla N、Sharkey AM、およびFlanagan MF.、Decreased exercise performance with age in children with hypoplastic left heart syndrome.、J Pediatr.、152巻(4号):頁507~512(2008年4月);Paridon SM、Mitchell PD、Colan SD、Williams RV、Blaufox A、Li JS、Margossian R、Mital S、Russell J、Rhodes J、および小児心臓ネットワークの研究者、A cross-sectional study of exercise performance during the first 2 decades of life after the Fontan operation.、J Am Coll Cardiol.、52巻(2号):頁99~107(2008年7月8日);並びに、Atz AM、Zak V、Mahony L、Uzark K、D’Agincourt N、Goldberg DJ、Williams RV、Breitbart RE、Colan SD、Burns KM、Margossian R、Henderson HT、Korsin R、Marino BS、Daniels K、McCrindle BW、および小児心臓ネットワークの研究者、Longitudinal Outcomes of Patients With Single Ventricle After the Fontan Procedure.、J Am Coll Cardiol.、69巻(22号):頁2735~2744(2017年6月6日)。この低下は、運動耐容能の低下、全体的な心機能の低下、単心室性能の低下、並びに、心不全症状の有病率の増加、入院の増加、および死亡率の増加と相関している。Diller GP、Dimopoulos K、Okonko D、Li W、Babu-Narayan SV、Broberg CS、Johansson B、Bouzas B、Mullen MJ、Poole-Wilson PA、Francis DP、およびGatzoulis MA.、Exercise intolerance in adult congenital heart disease: comparative severity, correlates, and prognostic implication.、Circulation.、112巻(6号):頁828~35(2005年8月9日);Diller GP、Giardini A、Dimopoulos K、Gargiulo G、Muller J、Derrick G、Giannakoulas G、Khambadkone S、Lammers AE、Picchio FM、Gatzoulis MA、およびHager A.、Predictors of morbidity and mortality in contemporary Fontan patients: results from a multicenter study including cardiopulmonary exercise testing in 321 patients.、Eur Heart J.、31巻(24号):頁3073~3083(2010年12月);Downing TE、Allen KY、Glatz AC、Rogers LS、Ravishankar C、Rychik J、Faerber JA、Fuller S、Montenegro LM、Steven JM、Spray TL、Nicolson SC、Gaynor JW、およびGoldberg DJ.、Long-term survival after the Fontan operation: Twenty years of experience at a single center.、The Journal of thoracic and cardiovascular surgery.、154巻(1号):頁243~253 e2(2017年7月);Khairy P、Fernandes SM、Mayer JE, Jr.、Triedman JK、Walsh EP、Lock JE、およびLandzberg MJ.、Long-term survival, modes of death, and predictors of mortality in patients with Fontan surgery.、Circulation.、117巻(1号):頁85~92(2008年1月1日);Pundi KN、Johnson JN、Dearani JA、Pundi KN、Li Z、Hinck CA、Dahl SH、Cannon BC、O’Leary PW、Driscoll DJ、およびCetta F.、40-Year Follow-Up After the Fontan Operation: Long-Term Outcomes of 1,052 Patients.、J Am Coll Cardiol.、66巻(15号):頁1700~1710(2015年10月13日);Cunningham JW、Nathan AS、Rhodes J、Shafer K、Landzberg MJ、およびOpotowsky AR.、Decline in peak oxygen consumption over time predicts death or transplantation in adults with a Fontan circulation.、Am Heart J.、189巻:頁184~192(2017年7月);並びに、Udholm S、Aldweib N、Hjortdal VE、およびVeldtman GR.、Prognostic power of cardiopulmonary exercise testing in Fontan patients: a systematic review.、Open Heart.、5巻(1号):e000812(2018年7月)。
【0165】
フォンタン手術後、肺血流は、中心静脈圧と、肺血管抵抗と、体心房圧(systemic atrial pressure)との間の関係に依存したものとなる。この構築において、肺血流および単心室前負荷の調節因子としての肺血管抵抗の役割は、拡大されており、循環効率に極めて重要である。Gewillig MおよびGoldberg DJ.、Failure of the fontan circulation.Heart Fail Clin.、10巻(1号):頁105~116(2014年1月);Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月);Gewillig M、Brown SC、Eyskens B、Heying R、Ganame J、Budts W、La Gerche A、およびGorenflo M.、The Fontan circulation: who controls cardiac output?、Interact Cardiovasc Thorac Surg.、10巻(3号):頁428~433(2010年3月);並びに、Goldberg DJ、Avitabile CM、McBride MG、およびParidon SM.、Exercise capacity in the Fontan circulation.、Cardiol Young.、23巻(6号):頁824~830(2013年12月)。以前の報告において、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤を包含する肺血管拡張剤の投与が調査されており、様々な結果が出ている。Agnoletti G、Gala S、Ferroni F、Bordese R、Appendini L、Pace Napoleone C、およびBergamasco L.、Endothelin inhibitors lower pulmonary vascular resistance and improve functional capacity in patients with Fontan circulation.、The Journal of thoracic and cardiovascular surgery.、153巻(6号):頁1468~1475(2017年6月);Goldberg DJ、French B、McBride MG、Marino BS、Mirarchi N、Hanna BD、Wernovsky G、Paridon SM、およびRychik J.、Impact of oral sildenafil on exercise performance in children and young adults after the fontan operation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial.、Circulation.、123巻(11号):頁1185~1193(2011年5月22日);Hebert A、Mikkelsen UR、Thilen U、Idorn L、Jensen AS、Nagy E、Hanseus K、Sorensen KE、およびSondergaard L.、Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study.、Circulation.、130巻(23号):頁2021~2030(2014年12月2日);Mori H、Park IS、Yamagishi H、Nakamura M、Ishikawa S、Takigiku K、Yasukochi S、Nakayama T、Saji T、およびNakanishi T.、Sildenafil reduces pulmonary vascular resistance in single ventricular physiology.、Int J Cardiol.、221巻:頁122~127(2016年10月15日);Rhodes J、Ubeda-Tikkanen A、Clair M、Fernandes SM、Graham DA、Milliren CE、Daly KP、Mullen MP、およびLandzberg MJ.、Effect of inhaled iloprost on the exercise function of Fontan patients: a demonstration of concept.、Int J Cardiol.、168巻(3号):頁2435~2440(2013年10月3日);Schuuring MJ、Vis JC、van Dijk AP、van Melle JP、Vliegen HW、Pieper PG、Sieswerda GT、de Bruin-Bon RH、Mulder BJ、およびBouma BJ.、Impact of bosentan on exercise capacity in adults after the Fontan procedure: a randomized controlled trial.、Eur J Heart Fail.、15巻(6号):頁690~698(2013年6月);Tunks RD、Barker PC、Benjamin DK, Jr.、Cohen-Wolkowiez M、Fleming GA、Laughon M、Li JS、およびHill KD.、Sildenafil exposure and hemodynamic effect after Fontan surgery.、Pediatr Crit Care Med.、15巻(1号):頁28~34(2014年1月);Van De Bruaene A、La Gerche A、Claessen G、De Meester P、Devroe S、Gillijns H、Bogaert J、Claus P、Heidbuchel H、Gewillig M、およびBudts W.、Sildenafil improves exercise hemodynamics in Fontan patients.、Circ Cardiovasc Imaging.、7巻(2号):頁265~273(2014年3月);Goldberg DJ、French B、Szwast AL、McBride MG、Marino BS、Mirarchi N、Hanna BD、Wernovsky G、Paridon SM、およびRychik J.、Impact of sildenafil on echocardiographic indices of myocardial performance after the Fontan operation.、Pediatr Cardiol.、33巻(5号):頁689~696(2012年6月);並びに、Giardini A、Balducci A、Specchia S、Gargiulo G、Bonvicini M、およびPicchio FM.、Effect of sildenafil on haemodynamic response to exercise and exercise capacity in Fontan patients.、Eur Heart J.、29巻(13号):頁1681~1687(2008年7月)。
【0166】
長時間作用性PDE5阻害剤であるウデナフィルの第I/II相試験(メジオン・ファーマ社、ソウル、大韓民国)が、フォンタン生理を有する青年期患者において完了しており、試験された全ての投与計画で忍容性が示された。Goldberg DJ、Zak V、Goldstein BH、Chen S、Hamstra MS、Radojewski EA、Maunsell E、Mital S、Menon SC、Schumacher KR、Payne RM、Stylianou M、Kaltman JR、deVries TM、Yeager JL、Paridon SM、および小児心臓ネットワークの研究者、Results of a phase I/II multi-center investigation of udenafil in adolescents after fontan palliation.、Am Heart J.、188巻:頁42~52(2017年6月)。87.5mgの1日2回投与において、平均血清中濃度は最も高くなり、用量制限有害事象は発生しなかった。小児心臓ネットワーク(PHN)のフォンタンウデナフィル運動縦断的(Fontan Udenafil Exercise Longitudinal)(FUEL)試験(NCT02741115)で、フォンタン姑息術を受けた青年期患者において、6か月間に亘り、運動能力並びに他の心血管転帰および機能的転帰に対するウデナフィルの効果を評価した。
【0167】
方法
上記FUEL試験は、フォンタン姑息術を受けたことがあるSVHD青年患者における、標準治療に加えた、ウデナフィルの国際多施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験であった。上記試験は、国立心肺血液研究所(NHLBI)が資金提供するPHNが、規制上のスポンサーであるメジオン・ファーマ社と共同で開始したものであり、食品医薬品局からの特別プロトコル評価を受けた。上記FUELプロトコルおよび同意書、並びにその後の全ての修正は、DSMB、各試験センターの治験審査委員会または同等機関、並びに、合衆国、カナダ、および大韓民国の規制当局による承認を得たものである。被験者、あるいは18歳未満の場合は法的保護者からはコンセントを得た。18歳を超えている参加者からはアセントを得た。試験デザインは以前に公表されていたものである。Goldberg DJ、Zak V、Goldstein BH、McCrindle BW、Menon SC、Schumacher KR、Payne RM、Rhodes J、McHugh KE、Penny DJ、Trachtenberg F、Hamstra MS、Richmond ME、Frommelt PC、Files MD、Yeager JL、Pemberton VL、Stylianou MP、Pearson GD、Paridon SM、および小児心臓ネットワークの研究者、Design and rationale of the Fontan Udenafil Exercise Longitudinal (FUEL) trial.、Am Heart J.、201巻:頁1~8(2018年7月)。
【0168】
試験集団
12歳以上18歳以下であり、フォンタン手術を受けたことがあり、PDE5阻害剤による治療を受けておらず、40kg以上であり、且つ、自転車エルゴメーター法の最低身長要求値(132cm以上)を満たす者を、組入れ対象とした。ウデナフィルの運動能力に対する影響を分離するため、重度の心室機能障害を有する患者、重度の房室弁閉鎖不全を有する患者、事前臨床運動負荷試験で最高酸素消費量が年齢と性別による予測値の50%未満であった患者は除外した。試験プロトコルについて、選択基準および除外規準の完全な一覧を上記の表1に示す。
【0169】
無作為化および試験手順
組入れ後の被験者を、置換ブロックランダム化を用いて二重盲検的にウデナフィルまたはプラセボに1:1比で割り付け、心室の形態(左心室型と右心室型、あるいは混合型)ごとに層別化した。試験の適格性およびコンセントの確認後、インターネットを使ったアルゴリズムによって無作為に割り付けた。
【0170】
投薬開始前に完了されたベースライン臨床検査では、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値を測定するための採血、標準的な自転車エルゴメータ漸増プロトコルを用いた心肺運動負荷試験(CPET)(フォンタン生理を有する小児および青年において以前に報告、Sleeper LA、Anderson P、Hsu DT、Mahony L、McCrindle BW、Roth SJ、Saul JP、Williams RV、Geva T、Colan SD、Clark BJ、および小児心臓ネットワークの研究者、Design of a large cross-sectional study to facilitate future clinical trials in children with the Fontan palliation.Am Heart J.、152巻(3号):頁427~433(2006年9月) 、標準的な心エコー図、並びに、フィンガーカフ(EndoPAT;イタマー・メディカル社、イスラエル)によって測定される、末梢動脈トノメトリ法(PAT)を用いた、末梢血管機能の評価を行った。CPETの際に、最高運動時の呼吸交換率(RER)が1.10以上と定義される、最大下運動負荷を達成した被験者を、無作為化および試験薬投薬開始に適格であるとした。最大下運動負荷を達成しなかった被験者は、最初の試みの2週間以内の次の機会に、運動負荷試験を繰り返した。試験終了時の臨床検査では、血清中BNPの反復測定、CPET、心エコー図、およびPATを行った。
【0171】
主要評価項目および副次評価項目
主要目的は、6か月間に亘って、フォンタン生理を有する青年において、運動耐容能に対するウデナフィルの影響を求めることとした。主要アウトカムは、ベースラインから26週目の来院までの、最高運動時(最高VO時)の酸素消費量における変化の群間差とした。副次運動アウトカムは、最大運動負荷時のさらなる尺度における変化、および、換気性無酸素性作業閾値(VAT)時の亜最大運動の尺度における変化の群間差とした。運動負荷試験における値の測定は全て、最初に各参加施設の運動生理学者と医師によって行われた。これらはその後、各施設で、訓練を受けた2名のレビュアー(MGM、SMP)のうちの1名により、各施設の運動チームと共同で、盲検方式で、正確を期すための再調査を行った後、最終決定とした。最高VOおよびVAT時VOともに、身体習慣(body habits)の短期的変化に基づく交絡が導入されることを避けるため、指標補正を行っていない(unindexed)酸素消費量を評価した。体重に対して補正された酸素消費量の解析を表5に示す。
【0172】
【表6】
【0173】
補完は以下の通りに行った。
・生存は確認されているが、試験を中断(且つ26週目の最大VO2が欠測)した被験者は、利用可能な最新の値(例えば、入手可能な場合は試験来院の終了時の値、そうでない場合はベースライン来院時の値)を割り当てた。
・26週目を完了したが、肉体的に、2回の試行後も心肺運動負荷試験で最大努力に達することができなかった被験者は、当該被験者がベースライン運動負荷試験において最大努力を満足した際の、当該被験者らのベースライン値を割り当てた。
1つの例外として、被験者330011は、RERが1.10であったため、含めると判断された。
【0174】
臨床的副次目的の主要アウトカムは、心エコー法より得られる収縮期および弛緩期の心室機能の尺度である、心筋性能指数(MPI)における変化の群間差、PAT法より得られる末梢血管機能の尺度である、対数変換反応性充血指数(lnRHI)における変化の群間差、並びに、対数変換血清中BNP値における変化の群間差とした。これらの副次アウトカムのそれぞれの測定はコアラボで行った。有害事象の報告を通じて安全性のモニタリングを行い、有害事象の報告は、試験コーディネーターアウトリーチの事前指定プロトコルに従い、各施設の試験チームのメンバーとの、臨時の患者・家族との情報交換を通じて収集された。
【0175】
統計解析
第一種の過誤0.05で、最高VOにおけるベースラインから26週目の試験までの変化の平均治療間差10%を検出する90%の検出力を可能にするために、群当たり200人の被験者というサンプルサイズを選んだ。ベースライン標準偏差は7.235ml/kg/分であり、最高VO測定値間の相関は0.33であり、脱落率および試験未完了率は10%であり、15%の被験者が26週目の運動負荷試験で最大下運動負荷を達成できないことを前提とした。これらの前提は、履歴データに基づくものであり、被験者間相関を評価するための保守的なアプローチと最大下運動負荷の未達成を反映したものであり、解析は独立した2標本の平均のt検定を用いて行った。主たる解析では、治療を意図した集団を用いて、治療群間の主要アウトカムにおける変化の差を評価した。この差の評価は、心室の形態(左室型単心室と右室型単心室、あるいは混合型)と治療群を固定因子とし、ベースライン最高VOを連続型共変量とした、共分散分析(ANCOVA)で行った。26週目の来院時のデータがない被験者については、この値をベースライン値と同じもの(変化なし)として補完した。α値は両側検定により0.05とした。全ての統計解析は、SAS統計ソフトウェア9.4(SASインスティチュート社(SAS Institute, Inc.)、ケーリー、ノースカロライナ州)を用いて行った。副次的解析には、各副次評価項目で測定可能な値を示してプロトコルを完了することができた被験者が含まれた。連続的なデータ点である副次アウトカムの解析は、主要アウトカムの場合で記載された方法で行った。換気性無酸素性作業閾値時の知見の一般化可能性を評価するために、スチューデントt検定およびフィッシャーの正確検定を用いて、人口統計的特性および臨床的特徴の比較を、対応のあるVAT時VOデータがない被験者と、当該コホートの残りからなる被験者との間で行った。ウデナフィルコホートとプラセボコホートとの間の有害事象の比較にはフィッシャーの正確検定を用いた。
【0176】
結果
被験者:2016年7月から2018年5月までに、30施設で、1376人の患者をスクリーニングした。図1B。これらのうち、200名をウデナフィルに、200名をプラセボに、無作為に割り付けた。無作為化時の平均年齢は15.5歳であり、平均身長は163.6cmであり、平均体重は58.1kgであった。被験者の60%は男性であり、81%は自身の人種的アイデンティティを白人と記載した。表6において、プラセボ群の被験者はウデナフィル群の被験者と比べて身長が高かったが、それ以外ベースライン特性は群間で同様であった。
【0177】
【表7】
【0178】
運動の尺度
安静時、亜最大運動時、および最大運動時の尺度を表2に示す。最大運動時データは、ベースライン試験時は全被験者において入手でき、26週目の試験時は379人の被験者(189人はウデナフィル群、190人はプラセボ群)において入手できた。26週目の試験時のデータが無い理由としては、患者の脱落やデータ収集ミス(n=14)、被験者が1.10以上のRERを達成できないこと(n=7)、が挙げられる。ウデナフィル群とプラセボ群の間には、安静時心拍数、呼吸数、収縮期血圧においての、ベースラインから26週目試験までの変化に差は無かった。ベースライン時(薬剤暴露前)の最高分時換気量はプラセボ群の方が高かったが、分時換気量の変化には群間に差は無かった。ウデナフィル群には、小さいが統計的に有意な安静時酸素飽和度の増加があり、また、小さいが統計的に有意な拡張期血圧の減少があった。
【0179】
最大運動時の分析により、プラセボ群では3.7mL/分の減少(-0.2%)が起こったのに対し、ウデナフィル群では最高VOが44mL/分(2.8%)増加したが、その差は統計的有意性に届くものではなかった。図2A図2B、p=0.071。VAT時VOを算出するための代謝データを、351人の被験者から入手でき、ウデナフィル群は170人、プラセボ群は181人であった。規模が大きいコホートと比較して、このサブグループのベースライン時の人口統計的特性や臨床的特徴に違いは見られなかった。表7。対応のあるVAT時VOデータがある場合で、ウデナフィル群では29.7mL/分(2.85%)という統計的に有意な改善が生じ、それに対し、プラセボ群では9mL/分の減少(-0.8%)が生じた。図3A図3B、p=0.023。VAT時に測定された二酸化炭換気当量(VE/VCO)は、プラセボ群での0.05と比較して、ウデナフィル群では0.8という有意(p=0.0114)な減少(換気効率の改善)を示し、一方で、仕事率は、プラセボ群での0.31ワット(0.5%)と比較して、ウデナフィル群では3.5ワット(5.2%)という有意な改善を示した。図4A図4B、p=0.029。
【0180】
【表8】
【0181】
副次目的
MPI尺度のための対応のある心エコーデータを、250人(63%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は122人、プラセボ群は128人であった。表3。プラセボ群(+0.01の増加、改善なし)と比較した場合、ウデナフィル治療群のMPIに統計的に有意な変化(減少は改善を表す)(-0.02の減少、改善)があった(p=0.028)。対応のあるPATより得られた血管機能データは、328人(81%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は163人、プラセボ群は165人であった。ウデナフィル群とプラセボ群ともに、lnRHIにおける改善は有意なものではなかった(0.07、0.05、p=0.59)。対応のある血清BNP値の尺度は、378人(95%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は187人、プラセボ群は191人であった。対数血清BNP値の変化は、群間で差はなかった(p=0.18)。
【0182】
安全性および忍容性
ウデナフィルとプラセボは、被験者に対し忍容性良好であった。試験コホートに死亡者はいなかった。合計24人の被験者(6%)が重篤有害事象を引き起こし、14人はウデナフィル群、10人はプラセボ群であった。試験薬との関連性があるかもしれない、ある可能性が高い、または確定的であると考えられる事象が、ウデナフィル群では3例、プラセボ群では2例あった。ウデナフィル群で生じた事象には、片側網膜動脈血栓症、片側網膜静脈血栓症、一過性下肢両麻痺、および一過性呼吸困難が含まれる。試験薬との関連性があるかもしれない、ある可能性が高い、または確定的であると考えられる高頻度の非重篤有害事象を表4に示す。頭痛、顔面潮紅、腹痛、鼻出血、および勃起(男性被験者)がウデナフィル群で多くみられた。持続勃起症の発症は報告されなかった。他の有害事象は全て群間で同様の頻度で起こった。
【0183】
考察
FUEL試験として、フォンタン手術を受けたSVHDを患う小児においてウデナフィルの第III相臨床試験を行った。治療群と比較した場合、ウデナフィル群における最高VOの相対的改善は統計的有意性に届かなかったが、ウデナフィルによる治療は、亜最大運動の事前指定副次評価項目においては統計的に有意な改善をもたらした。ウデナフィルに無作為に割り付けられた被験者は、酸素消費量、仕事率、無酸素性作業閾値時の換気効率、および心筋性能指数において、より優れた増加を示した。PAT由来の反応性充血指数には相対的改善は見られなかった。全体的に、ウデナフィルは、重篤有害事象がほとんどなく、副作用がPDE5阻害剤治療に関連していることが知られているものに限定されており、忍容性良好であった。Goldberg DJ、French B、McBride MG、Marino BS、Mirarchi N、Hanna BD、Wernovsky G、Paridon SM、およびRychik J.、Impact of oral sildenafil on exercise performance in children and young adults after the fontan operation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial.、Circulation.、123巻(11号):頁1185~1193(2011年5月22日);Goldberg DJ、Zak V、Goldstein BH、McCrindle BW、Menon SC、Schumacher KR、Payne RM、Rhodes J、McHugh KE、Penny DJ、Trachtenberg F、Hamstra MS、Richmond ME、Frommelt PC、Files MD、Yeager JL、Pemberton VL、Stylianou MP、Pearson GD、Paridon SM、および小児心臓ネットワークの研究者(Pediatric Heart Network I.)、Design and rationale of the Fontan Udenafil Exercise Longitudinal (FUEL) trial.、Am Heart J.、201巻:頁1~8(2018年7月);並びに、Chang HJ、Song S、Chang SA、Kim HK、Jung HO、Choi JH、Lee JS、Kim KH、Jeong JO、Lee JH、およびKim DK.、Efficacy and Safety of Udenafil for the Treatment of Pulmonary Arterial Hypertension: a Placebo-controlled, Double-blind, Phase IIb Clinical Trial.、Clin Ther.、41巻(8号):頁1499~1507(2019年8月)。
【0184】
フォンタン手術とその改変法は、さもなければ死に至っていたSVHD患者世代を生存させてきたが、当該手術によって形成された循環は、中心静脈圧が慢性的に上昇し、心拍出量が慢性的に減少するという、固有の生理学的欠陥を抱えている。Gewillig MおよびGoldberg DJ.、Failure of the fontan circulation.Heart Fail Clin.、10巻(1号):頁105~116(2014年1月);Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月);並びに、Gewillig M、Brown SC、Eyskens B、Heying R、Ganame J、Budts W、La Gerche A、およびGorenflo M.、The Fontan circulation: who controls cardiac output?、Interact Cardiovasc Thorac Surg.、10巻(3号):頁428~433(2010年3月)。フォンタン循環における心血管系効率への根本的な制限は多く、一般的には、肺血管抵抗の異常、単心室拡張機能の異常、体血管および肺血管の内皮障害、病的な血管リモデリングなどが挙げられる。Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月);Averin K、Hirsch R、Seckeler MD、Whiteside W、Beekman RH, 3rd、およびGoldstein BH.、Diagnosis of occult diastolic dysfunction late after the Fontan procedure using a rapid volume expansion technique.、Heart.、102巻(14号):頁1109~1114(2016年7月15日);Goldstein BH、Connor CE、Gooding L、およびRocchini AP.、Relation of systemic venous return, pulmonary vascular resistance, and diastolic dysfunction to exercise capacity in patients with single ventricle receiving fontan palliation.、Am J Cardiol.、105巻(8号):頁1169~1175(2010年4月15日);Hays BS、Baker M、Laib A、Tan W、Udholm S、Goldstein BH、Sanders SP、Opotowsky AR、およびVeldtman GR.、Histopathological abnormalities in the central arteries and veins of Fontan subjects.、Heart.、104巻(4号):頁324~331(2018年2月);Khambadkone S、Li J、de Leval MR、Cullen S、Deanfield JE、およびRedington AN.、Basal pulmonary vascular resistance and nitric oxide responsiveness late after Fontan-type operation.、Circulation.、107巻(25号):頁3204~3208(2003年7月1日);Mitchell MB、Campbell DN、Ivy D、Boucek MM、Sondheimer HM、Pietra B、Das BB、およびColl JR.、Evidence of pulmonary vascular disease after heart transplantation for Fontan circulation failure.、J Thorac Cardiovasc Surg.、128巻(5号):頁693~702(2004年11月);並びに、Sarkola T、Jaeggi E、Slorach C、Hui W、Bradley T、およびRedington AN.、Assessment of vascular remodeling after the Fontan procedure using a novel very high resolution ultrasound method: arterial wall thinning and venous thickening in late follow-up.、Heart Vessels.、28巻(1号):頁66~75(2013年1月)。上記循環のそれぞれの病的特徴は有望な治療標的になり得るが、肺血管抵抗を低下させるように設計された薬剤による薬物療法については、それらの薬剤の、忍容性の範囲の広さ、肺高血圧症の治療に対する効力、およびフォンタン術後の心拍出量の調節因子としての肺血管抵抗の固有の役割から、洞察が得られる。Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月)。
【0185】
フォンタン循環を有する患者における他の肺血管拡張剤を用いた以前の研究は多義的なものであった。Agnoletti G、Gala S、Ferroni F、Bordese R、Appendini L、Pace Napoleone C、およびBergamasco L.、Endothelin inhibitors lower pulmonary vascular resistance and improve functional capacity in patients with Fontan circulation.、J Thorac Cardiovasc Surg.、153巻(6号):頁1468~1475(2017年6月);Goldberg DJ、French B、McBride MG、Marino BS、Mirarchi N、Hanna BD、Wernovsky G、Paridon SM、およびRychik J.、Impact of oral sildenafil on exercise performance in children and young adults after the fontan operation: a randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover trial.、Circulation.、123巻(11号):頁1185~1193(2011年5月22日);Hebert A、Mikkelsen UR、Thilen U、Idorn L、Jensen AS、Nagy E、Hanseus K、Sorensen KE、およびSondergaard L.、Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study.、Circulation.、130巻(23号):頁2021~2030(2014年12月2日);Mori H、Park IS、Yamagishi H、Nakamura M、Ishikawa S、Takigiku K、Yasukochi S、Nakayama T、Saji T、およびNakanishi T.、Sildenafil reduces pulmonary vascular resistance in single ventricular physiology.、Int J Cardiol.、221巻:頁122~127(2016年10月15日);Rhodes J、Ubeda-Tikkanen A、Clair M、Fernandes SM、Graham DA、Milliren CE、Daly KP、Mullen MP、およびLandzberg MJ.、Effect of inhaled iloprost on the exercise function of Fontan patients: a demonstration of concept.、Int J Cardiol.、168巻(3号):頁2435~2440(2013年10月3日);Schuuring MJ、Vis JC、van Dijk AP、van Melle JP、Vliegen HW、Pieper PG、Sieswerda GT、de Bruin-Bon RH、Mulder BJ、およびBouma BJ.、Impact of bosentan on exercise capacity in adults after the Fontan procedure: a randomized controlled trial.、Eur J Heart Fail.、15巻(6号):頁690~698(2013年6月);Tunks RD、Barker PC、Benjamin DK, Jr.、Cohen-Wolkowiez M、Fleming GA、Laughon M、Li JS、およびHill KD.、Sildenafil exposure and hemodynamic effect after Fontan surgery.、Pediatr Crit Care Med.、15巻(1号):頁28~34(2014年1月);Van De Bruaene A、La Gerche A、Claessen G、De Meester P、Devroe S、Gillijns H、Bogaert J、Claus P、Heidbuchel H、Gewillig M、およびBudts W.、Sildenafil improves exercise hemodynamics in Fontan patients.、Circ Cardiovasc Imaging.、7巻(2号):頁265~273(2014年3月);Goldberg DJ、French B、Szwast AL、McBride MG、Marino BS、Mirarchi N、Hanna BD、Wernovsky G、Paridon SM、およびRychik J.、Impact of sildenafil on echocardiographic indices of myocardial performance after the Fontan operation.、Pediatr Cardiol.、33巻(5号):頁689~696(2012年6月);並びに、Giardini A、Balducci A、Specchia S、Gargiulo G、Bonvicini M、およびPicchio FM.、Effect of sildenafil on haemodynamic response to exercise and exercise capacity in Fontan patients.、Eur Heart J.、29巻(13号):頁1681~1687(2008年7月)。一連の肺血管拡張剤クラスに跨るいくつかの小規模単一施設試験では、単回投与後に急性の改善が起こることが分かったが、これらの試験では、持続的作用や長期使用についての検討はなされていなかった。Rhodes J、Ubeda-Tikkanen A、Clair M、Fernandes SM、Graham DA、Milliren CE、Daly KP、Mullen MP、およびLandzberg MJ.、Effect of inhaled iloprost on the exercise function of Fontan patients: a demonstration of concept.、Int J Cardiol.、168巻(3号):頁2435~2440(2013年10月3日);Tunks RD、Barker PC、Benjamin DK, Jr.、Cohen-Wolkowiez M、Fleming GA、Laughon M、Li JS、およびHill KD.、Sildenafil exposure and hemodynamic effect after Fontan surgery.、Pediatr Crit Care Med.、15巻(1号):頁28~34(2014年1月);Van De Bruaene A、La Gerche A、Claessen G、De Meester P、Devroe S、Gillijns H、Bogaert J、Claus P、Heidbuchel H、Gewillig M、およびBudts W.、Sildenafil improves exercise hemodynamics in Fontan patients.、Circ Cardiovasc Imaging.、7巻(2号):頁265~273(2014年3月);並びに、Giardini A、Balducci A、Specchia S、Gargiulo G、Bonvicini M、およびPicchio FM.、Effect of sildenafil on haemodynamic response to exercise and exercise capacity in Fontan patients.、Eur Heart J.、29巻(13号):頁1681~1687(2008年7月)。フォンタン術後の青年患者および成人患者におけるエンドセリン受容体拮抗薬の使用を評価した中規模試験が2つあったが、これら2つの試験は互いに矛盾する結果を示し、このコホートにおける第I相試験が行われていなかった。Hebert A、Mikkelsen UR、Thilen U、Idorn L、Jensen AS、Nagy E、Hanseus K、Sorensen KE、およびSondergaard L.、Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study.、Circulation.、130巻(23号):頁2021~2030(2014年12月2日);並びに、Schuuring MJ、Vis JC、van Dijk AP、van Melle JP、Vliegen HW、Pieper PG、Sieswerda GT、de Bruin-Bon RH、Mulder BJ、およびBouma BJ.、Impact of bosentan on exercise capacity in adults after the Fontan procedure: a randomized controlled trial.、Eur J Heart Fail.、15巻(6号):頁690~698(2013年6月)。さらに、有益性が示唆された研究においても、この有益性には、薬剤の推定上の有益性を相殺する可能性が高い副作用である、ヘモグロビン値の低下が伴った。Hebert A、Mikkelsen UR、Thilen U、Idorn L、Jensen AS、Nagy E、Hanseus K、Sorensen KE、およびSondergaard L.、Bosentan improves exercise capacity in adolescents and adults after Fontan operation: the TEMPO (Treatment With Endothelin Receptor Antagonist in Fontan Patients, a Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Study Measuring Peak Oxygen Consumption) study.、Circulation.、130巻(23号):頁2021~2030(2014年12月2日)。このFUEL試験は、フォンタン姑息術後のSVHD青年患者における第I相臨床試験によって決定された用量での特定の肺血管拡張剤の使用に伴う生理学的有益性を示唆する、最初の大規模多施設試験である。
【0186】
フォンタン生理と共に生きることの課題は、運動能力の評価によって十分に示されている。フォンタン生理を有する青年期の若者は健常者と比べて運動耐容能が低下しており、この差異は、時間の経過とともに際立ったものとなり、入院率の増加や心不全症状を伴う。Fernandes SM、McElhinney DB、Khairy P、Graham DA、Landzberg MJ、およびRhodes J.、Serial cardiopulmonary exercise testing in patients with previous Fontan surgery.、Pediatr Cardiol.、31巻(2号):頁175~180(2010年2月);Giardini A、Hager A、Pace Napoleone C、およびPicchio FM.、Natural history of exercise capacity after the Fontan operation: a longitudinal study.、Ann Thorac Surg.、85巻(3号):頁818~21(2008年3月);Jenkins PC、Chinnock RE、Jenkins KJ、Mahle WT、Mulla N、Sharkey AM、およびFlanagan MF.、Decreased exercise performance with age in children with hypoplastic left heart syndrome.、J Pediatr.、152巻(4号):頁507~512(2008年4月);Paridon SM、Mitchell PD、Colan SD、Williams RV、Blaufox A、Li JS、Margossian R、Mital S、Russell J、Rhodes J、および小児心臓ネットワークの研究者、A cross-sectional study of exercise performance during the first 2 decades of life after the Fontan operation.、J Am Coll Cardiol.、52巻(2号):頁99~107(2008年7月8日);Atz AM、Zak V、Mahony L、Uzark K、D’Agincourt N、Goldberg DJ、Williams RV、Breitbart RE、Colan SD、Burns KM、Margossian R、Henderson HT、Korsin R、Marino BS、Daniels K、McCrindle BW、および小児心臓ネットワークの研究者、Longitudinal Outcomes of Patients With Single Ventricle After the Fontan Procedure.、J Am Coll Cardiol.、69巻(22号):頁2735~2744(2017年6月6日);Diller GP、Dimopoulos K、Okonko D、Li W、Babu-Narayan SV、Broberg CS、Johansson B、Bouzas B、Mullen MJ、Poole-Wilson PA、Francis DP、およびGatzoulis MA.、Exercise intolerance in adult congenital heart disease: comparative severity, correlates, and prognostic implication.、Circulation.、112巻(6号):頁828~35(2005年8月9日);Diller GP、Giardini A、Dimopoulos K、Gargiulo G、Muller J、Derrick G、Giannakoulas G、Khambadkone S、Lammers AE、Picchio FM、Gatzoulis MA、およびHager A.、Predictors of morbidity and mortality in contemporary Fontan patients: results from a multicenter study including cardiopulmonary exercise testing in 321 patients.、Eur Heart J.、31巻(24号):頁3073~3083(2010年12月);Cunningham JW、Nathan AS、Rhodes J、Shafer K、Landzberg MJ、およびOpotowsky AR.、Decline in peak oxygen consumption over time predicts death or transplantation in adults with a Fontan circulation.、Am Heart J.、189巻:頁184~192(2017年7月);並びに、Udholm S、Aldweib N、Hjortdal VE、およびVeldtman GR.、Prognostic power of cardiopulmonary exercise testing in Fontan patients: a systematic review.、Open Heart.、5巻(1号):e000812(2018年7月)。年齢および性別ごとに予測される50%以下運動耐容能は、それを超えると循環に関連した病的状態がよく見られるようになるおおよその閾値であり、典型的には20代の間に起こるが、それよりも早く起こる場合もある。Diller GP、Giardini A、Dimopoulos K、Gargiulo G、Muller J、Derrick G、Giannakoulas G、Khambadkone S、Lammers AE、Picchio FM、Gatzoulis MA、およびHager A.、Predictors of morbidity and mortality in contemporary Fontan patients: results from a multicenter study including cardiopulmonary exercise testing in 321 patients.、Eur Heart J.、31巻(24号):頁3073~3083(2010年12月)。運動耐容能を改善する能力は、循環機能改善のマーカーとして、より一般的には、フォンタン手術を行った患者の長期的健康において重大な意味を持ちやすい。この試験は、ウデナフィルが、フォンタン術後患者における薬理学的介入後の運動耐容能の主要な測定値を改善するのに役立つ可能性があることを示唆している。
【0187】
FUEL試験では、最高VOが、比較的測定が容易であり、これまでの試験で心臓事象の承認された代替として使用されていることから、最高VOの変化を検出するように検出力が設定された。Dallaire F、Wald RM、およびMarelli A.、The Role of Cardiopulmonary Exercise Testing for Decision Making in Patients with Repaired Tetralogy of Fallot.、Pediatr Cardiol.、38巻(6号):頁1097~1105(2017年8月);Mancini D、LeJemtel T、およびAaronson K.、Peak VO (2): a simple yet enduring standard.、Circulation.、101巻(10号):頁1080~1082(2000年3月);Okonko DO、Grzeslo A、Witkowski T、Mandal AK、Slater RM、Roughton M、Foldes G、Thum T、Majda J、Banasiak W、Missouris CG、Poole-Wilson PA、Anker SD、およびPonikowski P.、Effect of intravenous iron sucrose on exercise tolerance in anemic and nonanemic patients with symptomatic chronic heart failure and iron deficiency FERRIC-HF: a randomized, controlled, observer-blinded trial.、J Am Coll Cardiol.、51巻(2号):頁103~112(2008年1月15日);並びに、Redfield MM、Chen HH、Borlaug BA、Semigran MJ、Lee KL、Lewis G、LeWinter MM、Rouleau JL、Bull DA、Mann DL、Deswal A、Stevenson LW、Givertz MM、Ofili EO、O’Connor CM、Felker GM、Goldsmith SR、Bart BA、McNulty SE、Ibarra JC、Lin G、Oh JK、Patel MR、Kim RJ、Tracy RP、Velazquez EJ、Anstrom KJ、Hernandez AF、Mascette AM、Braunwald E、およびTrial R.、Effect of phosphodiesterase-5 inhibition on exercise capacity and clinical status in heart failure with preserved ejection fraction: a randomized clinical trial.、JAMA.、309巻(12号):頁1268~1277(2013年3月27日)。しかしながら、最高VOは、多くの循環器疾患状態の代替として有用であり得るが、フォンタン術後の評価項目としてはそれほど適切ではない可能性がある。この独特な生理においては、右心室の収縮ではなく、中心静脈圧、すなわち心拍出量が、経肺血流の主な駆動因子である。Gewillig MおよびGoldberg DJ.、Failure of the fontan circulation.Heart Fail Clin.、10巻(1号):頁105~116(2014年1月); Egbe AC、Connolly HM、Miranda WR、Ammash NM、Hagler DJ、Veldtman GR、およびBorlaug BA.、Hemodynamics of Fontan Failure: The Role of Pulmonary Vascular Disease.、Circ Heart Fail.、10巻(12号):e004515(2017年9月);Gewillig M、Brown SC、Eyskens B、Heying R、Ganame J、Budts W、La Gerche A、およびGorenflo M、The Fontan circulation: who controls cardiac output?、Interact Cardiovasc Thorac Surg.、10巻(3号):頁428~433(2010年3月);並びに、Goldberg DJ、Avitabile CM、McBride MG、およびParidon SM.、Exercise capacity in the Fontan circulation.、Cardiol Young.、23巻(6号):頁824~830(2013年12月)。激しい運動による心拍出要求量の増加に伴い、フォンタン循環における中心静脈圧はその要求を満たすために上昇しなければならないが、最終的には、それを超えてもはや上昇することのできない決定的な上限に達する。Navaratnam D、Fitzsimmons S、Grocott M、Rossiter HB、Emmanuel Y、Diller GP、Gordon-Walker T、Jack S、Sheron N、Pappachan J、Pratap JN、Vettukattil JJ、およびVeldtman G.、Exercise-Induced Systemic Venous Hypertension in the Fontan Circulation.、Am J Cardiol.、117巻(10号):頁1667~1671(2016年5月15日)。亜最大運動負荷時では、中心静脈圧の上昇は生理的上限には達しないため、この運動レベルでのアウトカムは、肺血管系の薬理学的処置に対する感受性がより高い可能性がある。このことは、最高運動時と比較した場合の、無酸素性作業閾値時の酸素消費量および仕事率の両方が比較的高い割合であることにより証明され、運動時に中心静脈圧がほとんど変化せず、且つ、VAT時および最高VO時のVOの向上の傾向または低下の傾向が同等である、肺動脈弁下型心室を有する患者の生理機能とは異なっている。
【0188】
本明細書で報告した知見は重要なものであるが、この試験は限定されたものである。まず、被験者への負担を最小限にするために、試験デザインには、心臓磁気共鳴画像法や浸潤性カテーテル検査で得ることができるような血行動態の詳細な測定を含めなかった。加えて、PATアウトカムの評価では、プラセボに優るウデナフィルの利点は示されなかった。[?]これらの研究で得られた複数の測定値のさらなる調査は、この最初の解析では行われなかったが、今後の解析の目的となるであろう。最後に、FUEL試験の期間が、長期的な安全性の評価の妨げとなったが、現在進行中のFUEL非盲検延長試験で対処中である。
【0189】
標準治療に加えてウデナフィル(87.5mg、1日2回)を投与した場合、最高運動時の酸素消費量に統計的に有意な改善は見られなかったが、換気性無酸素性作業閾値時の運動能力の複数の尺度に統計的に有意な改善が示された。FUEL試験は、フォンタン術後患者の測定可能な生理的有用性を実証した初の大規模多施設プラセボ対照無作為化試験として、Fontan循環の約50年の経歴において画期的なものであり、先天性心疾患の科学的発展を可能にする官民連携のモデルとなるものである。ウデナフィルがSVHDを有する大規模コホート内の部分集団に選択的に有益であるかどうかを判定し、治療の長期的な忍容性と安全性を評価するための、さらなる研究が必要である。
【0190】
本実施例2で引用された開示は、本明細書に完全な記述がなされたかの如く、その全体が参照によって本明細書に援用されたものとする。
【0191】
実施例3
ウデナフィル錠剤の製剤化
87.5mgのウデナフィルを含有する錠剤の製剤化の例を、表11に詳述する。表11に報告したようなウデナフィル製剤を、上記の実施例1および実施例2で述べた、FUEL試験に組入れられたフォンタン術後患者に用いた。
【0192】
【表9】
【0193】
実施例4
フォンタン姑息術を受けたSVHD被験者における心筋性能の心エコー指標に対するウデナフィルの影響
FUEL試験の目標は、フォンタン手術後の機能的単心室生理を有する約12歳~約18歳の青年において、心筋性能の心エコー尺度に対するウデナフィルの影響を求めることであった。FUEL試験は無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、合衆国(26人)、カナダ(2人)、および韓国(2人)に位置する異なる30施設で、フォンタン手術後の約12歳~約18歳の青年において実施した。フォンタン術後患者は、プラセボまたはウデナフィル(87.5mg、1日2回)を26週間投与されるように無作為化した。
【0194】
各被験者は26週間の始めと終わりに心エコーを受けた。MPI尺度のための対応のある心エコーデータを、250人(63%)の被験者から入手でき、ウデナフィル群は122人、プラセボ群は128人であった。表3。プラセボ群(+0.01の増加、改善なし)と比較した場合、ウデナフィル治療群のMPIに統計的に有意な変化(-0.02の減少、改善)があった(p=0.028)。MPIの変化は、機能的単心室の流出入路の血液プールドプラ評価から得られる速度によって求めた。全ての測定は、ウィスコンシン州小児病院の心エコーコアラボで行った。ウデナフィルで治療された被験者は、同じ期間プラセボを摂取した被験者との比較で、心筋性能指数(MPI)において統計的に有意(p=0.028)な改善を示した(減少は改善を示す)。
【0195】
これらのデータは、プラセボ群と比較した場合の、ウデナフィル群におけるMPIの改善を示すものである(-0.02と+0.01、p=0.028)。心筋性能は、フォンタン手術を受けたSVHD患者を含む、SVHD患者の長期健康における重要な因子であり、この生理側面における改善は、運動能力において注意される改善を補完し、ウデナフィル治療の利益が多元的であり得ることを示唆するものである。
【0196】
本明細書で参照または引用される、全ての特許、特許文献、論文、要旨、正誤表、および刊行物を含む全ての開示は、米国特許出願番号14/788,211、米国特許公開第2019/0030037号、米国特許第10,137,128号、米国特許出願番号15/887,523、米国特許公開第2018/0169103号、および米国特許第10,653,698号も含んで、それぞれが個別に完全に援用されたかのように、それら全体が参照によって本明細書に援用される。
【0197】
「関連出願」で引用された他の関連する先の出願と矛盾する場合は、本願が、定義を含めて、優先されるものとする。
【0198】
本発明の要旨を逸脱しない範囲で、本発明に対する様々な修正および変更が当業者には明白であろう。例示された実施形態および実施例は、例としてのみ示しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。本発明の範囲は以下に記載する特許請求項の範囲によってのみ限定を受ける。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
【国際調査報告】