(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】組換えインターロイキン-15アナログ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20221128BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20221128BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20221128BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221128BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221128BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221128BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C12N15/24
C07K14/54 ZNA
C12P21/02 C
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519371
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2020117279
(87)【国際公開番号】W WO2021057826
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910910158.5
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522118506
【氏名又は名称】リートー ラボラトリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LETO LABORATORIES CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room A0928, Building Science and Technology complex, 7 North Agricultural Road, Huilongguan Town, Changping District, Beijing 100026, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ イャォ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ジィェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ シァォティン
(72)【発明者】
【氏名】シュ イェンリン
(72)【発明者】
【氏名】ポン ルージャ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD25
4B065CA24
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA02
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸配列が、IL-15アミノ酸配列およびIL-15アミノ酸配列のC末端に付加した1または複数のアミノ酸を含み、この1または複数のアミノ酸は、正電荷を帯びたアミノ酸を含む、IL-15アナログを開示する。本発明のIL-15アナログは、大腸菌における発現が高く、発現量は野生型IL-15の約20倍であり、かつその生体外細胞活性には有意差がない。本発明は、脂肪酸鎖を結合することにより、IL-15アナログの半減期を向上させ、その持効性を向上させたIL-15アナログの複合体をさらに開示する。本発明は、IL-15タンパク質医薬品の産業化への基盤を確立する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列が、IL-15アミノ酸配列およびIL-15アミノ酸配列のC末端に付加した1または複数のアミノ酸を含むことを特徴とするIL-15アナログ。
【請求項2】
前記1または複数のアミノ酸が、正電荷を帯びたアミノ酸を含むことを特徴とする請求項1に記載のIL-15アナログ。
【請求項3】
前記IL-15アナログのアミノ酸配列が、次の特徴を有することを特徴とする請求項2に記載のIL-15アナログ。IL-15-X
a-Y
b-Z
c(式中、X、YおよびZはC末端に付加したアミノ酸配列を表し、a、bおよびcはアミノ酸の個数を表す。
XおよびZは任意のアミノ酸またはその組み合わせであり、aおよびcは0~20である。Yは正電荷を帯びたアミノ酸もしくはその組み合わせ、または正電荷を帯びたアミノ酸および他の任意のアミノ酸の組み合わせであり、bは1~7である。)
【請求項4】
正電荷を帯びたアミノ酸は、H、RおよびKであることを特徴とする請求項3に記載のIL-15アナログ。
【請求項5】
前記Xは、V、I、P、L、E、A、S、C、T、Gのいずれか1つまたはその組み合わせを含むことを特徴とする請求項4に記載のIL-15アナログ。
【請求項6】
前記IL-15アナログのアミノ酸配列が、次の特徴を有することを特徴とする請求項3に記載のIL-15アナログ。
IL-15-Linker-X
a-Y
b-Z
c(式中、LinkerはIL-15アミノ酸配列とC末端に付加したアミノ酸配列との間にあるリンカー配列を表す。)
【請求項7】
Linkerは(GGGGS)
n、(GS)
nまたは(GAPQ)
nであり、nは0~10であることを特徴とする請求項6に記載のIL-15アナログ。
【請求項8】
X
aはLPBTGを含み、Bは任意のアミノ酸であり、Linkerは(GS)
nであることを特徴とする請求項7に記載のIL-15アナログ。
【請求項9】
前記IL-15のC末端に付加した1または複数のアミノ酸が、GSGSGS-HHHHHH、GS-HHHHHH、PLASTKKR、LPKSAKKK、KKKKKKK、(GAPQGAPQ)-LVESAHHH、GS-LVSSAHHK、GS-LIEHHRRK、GS-IVEHRKKK、GS-VPKTGRRR、GS-LVASGKK、GS-HRKSGHHH、GS-LPKTGRHK、KKKTGRRH、LPRSGRHK、LVETHHHH、VRPETHHH、KKK、RHHHH、KRETHHHH、GS-LPETGGSGGSHHHHHH、HLETGKKK、HVESGRRR、RRHTGKKK、HVKTGHHH、HVKSGRHH、HVKSSHRH、GSGSGSGSGS-LVKSGHHH、RPKSGHHK、KKC、LHKAGKHH、K、KKであることを特徴とする請求項1に記載のIL-15アナログ。
【請求項10】
前記IL-15アミノ酸配列は、次のものから選ばれることを特徴とする請求項1に記載のIL-15アナログ。
1)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列。
2)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列を1または複数のアミノ酸の置換、欠失または付加により生成したアミノ酸配列。
3)SEQ ID NO.1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のIL-15アナログをコードするヌクレオチド配列。
【請求項12】
原核生物系において請求項1~10のいずれか1項に記載のIL-15アナログを発現することを特徴とするIL-15アナログの製造方法。
【請求項13】
前記IL-15アナログをコードするヌクレオチド配列を原核生物発現ベクターに連結し、原核生物発現生物宿主菌に導入し、誘導により前記IL-15アナログを発現することを特徴とする請求項12に記載のIL-15アナログの製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載のIL-15アナログをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする組換え発現ベクター。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載のIL-15アナログをコードするヌクレオチド配列が形質変換されたことを特徴とする宿主菌。
【請求項16】
IL-15アナログのアミノ酸配列が、IL-15アミノ酸配列およびIL-15アミノ酸配列のC末端に付加した1または複数のアミノ酸を含み、IL-15アナログが脂肪酸鎖に結合していることを特徴とするIL-15アナログの複合体。
【請求項17】
前記IL-15アナログのアミノ酸配列が、次の特徴のいずれかを有することを特徴とする請求項16に記載のIL-15アナログの複合体。
1)IL-15-X
a-Y
b-Z
c(式中、X、YおよびZはC末端に付加したアミノ酸配列を表し、a、bおよびcはアミノ酸の個数を表す、XおよびZは任意のアミノ酸またはその組み合わせであり、aおよびcは0~20である。Yは正電荷を帯びたアミノ酸もしくはその組み合わせ、または正電荷を帯びたアミノ酸および他の任意のアミノ酸の組み合わせであり、bは1~7である。)
2)IL-15-Linker-X
a-Y
b-Z
c(式中、LinkerはIL-15アミノ酸配列とC末端に付加したアミノ酸配列との間にあるリンカー配列を表す。)
【請求項18】
X
aはLPBTGを含み、Bは任意のアミノ酸であり、Linkerは(GS)
nであり、nは0~10であることを特徴とする請求項17に記載のIL-15アナログの複合体。
【請求項19】
前記脂肪酸鎖は-(CH
2)
m-COOH(式中、mは12~19)であることを特徴とする請求項17または18に記載のIL-15アナログの複合体。
【請求項20】
前記IL-15アナログは、前記脂肪酸鎖とin vitroカップリングの方式で結合していることを特徴とする請求項17に記載のIL-15アナログの複合体。
【請求項21】
前記in vitroカップリングの方式は、次のものを含むことを特徴とする請求項20に記載のIL-15アナログの複合体。
1)酵素反応によってカップリングを行い、酵素反応方式の脂肪酸鎖N末端がいずれもGGGを有する。
2)前記IL-15アナログに導入された自由システイン残基とカップリングを行う。
3)前記IL-15アナログのN末端アミノ基とカップリングを行う。
【請求項22】
酵素反応によってカップリングを行う際に、脂肪酸鎖末端は、グリシンを3個有し、
IL-15アナログに導入された自由システイン残基とカップリングを行う際に、脂肪酸鎖は、マレイミドエステルまたはハロゲン化反応基を有し、
IL-15アナログのN末端アミノ基とカップリングを行う際に、脂肪酸鎖は、ホルミル基またはスクシンイミドエステル官能基を有することを特徴とする請求項21に記載のIL-15アナログの複合体。
【請求項23】
前記IL-15アナログは、IL-15アミノ酸配列の末端に、-GS-LPETGを含む配列が付加されていることを特徴とする請求項16に記載のIL-15アナログの複合体。
【請求項24】
前記脂肪酸鎖が、GGG-PEG2-Lys-(CH
2)
16-COOH、NHS-PEG2-PEG2-γ-Glu-(CH
2)
17-COOH、GGG-PEG4-PEG4-PEG4-Lys-(CH
2)
17-COOH、GGG-PEG4-γ-Glu-γ-Glu-Lys-(CH
2)
17-COOH、HOOC-(CH
2)
16-γ-Glu-γ-Glu-Lys-GGG、HOOC-(CH
2)
16-CONH-γ-Glu-γ-Glu-PEG2-Lys-Br、GGG-γ-Glu-C2DA-2OEG-γ-Glu-(CH
2)
17-COOH、GGG-γ-Glu-C2DA-2OEG-γ-Glu-(CH
2)
19-COOH、GGG-OEG-C2DA-2OEG-γ-Glu-(CH
2)
19-COOH、GGG-OEG-C2DA-2OEG-γ-Glu-Trx-(CH
2)
19-COOH、CHO-PEG2-PEG2-γ-Glu-(CH
2)
17-COOHおよびMal-C2DA-2OEG-γ-Glu-Tn-(CH
2)
19-COOHから選ばれることを特徴とする請求項16に記載のIL-15アナログの複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学分野に属し、具体的には、組換えインターロイキン-15アナログおよびその発現に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-15(IL-15)は、約12~14kDのサイトカインであり、天然のヒトインターロイキン15成熟ペプチドは、114個アミノ酸を含有し、4個のシステイン残基を含み、Cys35とCys85、Cys42とCys88が結合し、形成された2対の分子内ジスルフィド結合が、IL-15の立体配座および生物学的活性の保持のために重要な役割を果たしている。
【0003】
大多数のサイトカインと同様に、IL-15は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を促進するなど、個体の正常な免疫反応において作用する。 IL-15とIL-2は、共通の受容体IL-2Rβ鎖およびγ鎖を有するため、その生物学的活性が類似している。しかしながら、異なるα鎖受容体を有するため、IL-2はTreg細胞を活性化させ、Teff細胞およびNK細胞のアポトーシス(AICD)を誘導し、臨床用途が極めて制限される。同ファミリーのIL-15には、Treg活性化およびAICDの機能がないため、IL-15は、治療において大きな潜在性を秘めている。
【0004】
IL-15受容体のαサブユニットとIL-15は親和性が高く、生理的状態でIL-15の多くがαサブユニットと複合体(IL-15-Rα)を形成し、受容体のβ鎖およびγ鎖サブユニットに対するIL-15の親和性を増強し、T細胞およびNK細胞を活性化させる。そのため、ALTORや恒瑞等の企業は、αサブユニットの特徴を利用し、融合または非融合の方法を用いて、IL-15とαサブユニット(またはその一部)によって複合体を形成しており、動物試験において良好な生物学的利用能および安定性が示されている。
【0005】
IL-15受容体のαサブユニットは、骨髄系細胞表面に発現し、マクロファージ、抗原提示細胞、ならびにNK細胞およびT細胞を含み、同様に生体内の抗腫瘍において重要な役割を果たしている。そのため、IL-15-Rα複合体は生体内のαサブユニットに依存せず、IL-15単体の安定性を高めるが、天然のIL-15とは機能的に微妙な違いがあり、このような違いによって、生体内の抗腫瘍において本質的な違いが現れる可能性がある。
【0006】
IL-15は、IL-2よりも高い安全性および活性を有しているが、タンパク質医薬品として、天然の野生型のIL-15には原核生物および真核生物発現の発現量が低く、精製が困難であり、半減期が短いなど、医薬品開発における明らかなボトルネックが存在してことにより、産業化が難しいため、その外因性発現について研究し、高い生産効率を得る必要がある。また、in vitro再生により得られたIL-15アナログのN末端またはC末端においてヒト血清アルブミン結合体脂肪酸鎖を結合し、持効性の効果を達成することもでき、腫瘍等の治療に対して一定の意義を有する。
【発明の概要】
【0007】
従来技術におけるIL-15の生産効率の低さに鑑み、本発明は、発現量が高く、精製が相対的に簡単なIL-15アナログを提供する。また、本発明は、IL-15の半減期を向上させ、その持効性を向上させたIL-15アナログの複合体をさらに提供する。
【0008】
本発明の一態様において、IL-15アナログを提供し、1つの具体的な実施形態において、このIL-15アナログのアミノ酸配列は、IL-15アミノ酸配列およびIL-15アミノ酸配列のC末端に付加した1または複数のアミノ酸を含む。
【0009】
さらに、前記1または複数のアミノ酸は、正電荷を帯びたアミノ酸を含む。
【0010】
さらに、IL-15アナログのアミノ酸配列は、次の特徴を有する。IL-15-Xa-Yb-Zc。式中、X、YおよびZはC末端に付加したアミノ酸配列を表し、a、bおよびcはアミノ酸の個数を表す。
【0011】
XおよびZは任意のアミノ酸またはその組み合わせであり、aおよびcは0~20である。Yは正電荷を帯びたアミノ酸もしくはその組み合わせ、または正電荷を帯びたアミノ酸および他の任意のアミノ酸の組み合わせであり、bは1~7である。
【0012】
さらに、正電荷を帯びたアミノ酸は、H、RおよびKである。
【0013】
選択可能に、前記Xは、V、I、P、L、E、A、S、C、T、Gのいずれか1つまたはその組み合わせを含む。
【0014】
選択可能に、IL-15アナログのアミノ酸配列は、次の特徴を有する。IL-15-Linker-Xa-Yb-Zc。式中、LinkerはIL-15アミノ酸配列とC末端に付加したアミノ酸配列との間にあるリンカー配列を表す。
【0015】
さらに、Linkerは(GGGGS)n、(GS)nまたは(GAPQ)nであり、nは0~10である。
【0016】
さらに、XaはLPBTGを含み、Bは任意のアミノ酸であり、Linkerは(GS)nである。
【0017】
選択可能に、IL-15アナログのアミノ酸配列は、次に示すとおりである。IL-15-GSGSGS-HHHHHH、IL-15-GS-HHHHHH、IL-15-PLASTKKR、IL-15-LPKSAKKK、IL-15-KKKKKKK、IL-15-(GAPQGAPQ)-LVESAHHH、IL-15-GS-LVSSAHHK、IL-15-GS-LIEHHRRK、IL-15-GS-IVEHRKKK、IL-15-GS-VPKTGRRR、IL-15-GS-LVASGKK、IL-15-GS-HRKSGHHH、IL-15-GS-LPKTGRHK、IL-15-KKKTGRRH、IL-15-LPRSGRHK、IL-15-LVETHHHH、IL-15-VRPETHHH、IL-15-KKK、IL-15-RHHHH、IL-15-KRETHHHH、IL-15-GS-LPETG-GSGGSHHHHHH、IL-15-HLETGKKK、IL-15-HVESGRRR、IL-15-RRHTGKKK、IL-15-HVKTGHHH、IL-15-HVKSGRHH、IL-15-HVKSSHRH、IL-15-GSGSGSGSGS-LVKSGHHH、IL-15-RPKSGHHK、IL-15-KKC、IL-15-LHKAGKHH、IL-15-K、IL-15-KK。
【0018】
さらに、IL-15のアミノ酸配列は、次のものから選ばれる。
1)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列
2)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列を1または複数のアミノ酸の置換、欠失または付加により生成したアミノ酸配列
3)SEQ ID NO.1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列
【0019】
本発明の2つ目の態様において、上記のIL-15アナログをコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0020】
本発明の3つ目の態様において、原核生物系において上記のIL-15アナログを発現するIL-15アナログの製造方法を提供する。
【0021】
さらに、IL-15アナログをコードするヌクレオチド配列を原核生物発現ベクターに連結し、原核生物発現生物宿主菌に導入し、誘導によりIL-15アナログを発現する。
【0022】
選択可能に、IL-15アナログは、封入体の方式で発現し、封入体を再生する。
【0023】
選択可能に、封入体を8M尿素溶液に溶解し、イオン交換および逆相クロマトグラフィー法によって精製する。
【0024】
選択可能に、原核生物発現ベクターはpET41aであり、発現宿主菌は大腸菌BL21(DE3)またはC41(DE3)である。
【0025】
本発明の4つ目の態様において、上記のIL-15アナログをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0026】
本発明の5つ目の態様において、上記のIL-15アナログをコードするヌクレオチド配列が形質転換された宿主菌を提供する。
【0027】
本発明の6つ目の態様において、IL-15アナログのアミノ酸配列が、IL-15アミノ酸配列およびIL-15アミノ酸配列のC末端に付加した1または複数のアミノ酸を含み、IL-15アナログが脂肪酸鎖に結合している、IL-15アナログの複合体を提供する。
【0028】
さらに、前記IL-15アナログのアミノ酸配列は、次の特徴のいずれかを有する。
1)IL-15-Xa-Yb-Zc、式中、X、YおよびZはC末端に付加したアミノ酸配列を表し、a、bおよびcはアミノ酸の個数を表す、XおよびZは任意のアミノ酸またはその組み合わせであり、aおよびcは0~20である。Yは正電荷を帯びたアミノ酸もしくはその組み合わせ、または正電荷を帯びたアミノ酸および他の任意のアミノ酸の組み合わせであり、bは1~7である。
2)IL-15-Linker1-Xa-Yb-Zc、式中、LinkerはIL-15アミノ酸配列とC末端に付加したアミノ酸配列との間にあるリンカー配列を表す。
【0029】
さらに、XaはLPBTGを含み、Bは任意のアミノ酸であり、Linkerは(GS)nであり、nは0~10である。
【0030】
さらに、脂肪酸鎖は-(CH2)m-COOHである。式中、mは12~19である。
【0031】
さらに、IL-15アナログは、前記脂肪酸鎖とin vitroカップリングの方式で結合している。
【0032】
さらに、in vitroカップリングの方式は、次のものを含む。
1)酵素反応によってカップリングを行い、酵素反応方式の脂肪酸鎖N末端がいずれもGGG(アミノ酸glycine)を有する
2)IL-15アナログに導入された自由システイン残基とカップリングを行う
3)IL-15アナログのN末端アミノ基とカップリングを行う
【0033】
さらに、酵素反応によってカップリングを行う際に、脂肪酸鎖Nは、グリシンを3個有する。
【0034】
IL-15アナログに導入された自由システイン残基とカップリングを行う際に、脂肪酸鎖は、マレイミドエステルまたはハロゲン化反応基を有する。
【0035】
IL-15アナログのN末端アミノ基とカップリングを行う際に、脂肪酸鎖は、ホルミル基またはスクシンイミドエステル官能基を有する。
【0036】
選択可能に、IL-15アミノ酸配列の末端に、-GS-LPETGを含む配列を付加する。
【0037】
代替方法として、脂肪酸鎖から選ばれたもの:GGG-PEG2-Lys-(CH2)16-COOH及びNHS-PEG2-PEG2-γ-Glu-(CH2)17-COOH, GGG-PEG4-PEG4-PEG4-Lys-(CH2)17-COOH、GGG-PEG4-γ-Glu-γ-Glu-Lys-(CH2)17-COOH、HOOC-(CH2)16-γ-Glu-γ-Glu-Lys-GGG、HOOC-(CH2)16-CONH-γ-Glu-γ-Glu-PEG2-Lys-Br、GGG-γ-Glu-C2DA-2OEG-γ-Glu-(CH2)17-COOH、GGG-γ-Glu-C2DA-2OEG-γ-Glu-(CH2)19-COOH、GGG-OEG-C2DA-2OEG-γ-Glu-(CH2)19-COOH、GGG-OEG-C2DA-2OEG-γ-Glu-Trx-(CH2)19-COOH、CHO-PEG2-PEG2-γ-Glu-(CH2)17-COOH及びMal-C2DA-2OEG-γ-Glu-Tn-(CH2)19-COOH。
【0038】
本研究によって、IL-15のC末端にアミノ酸を付加することは、大腸菌におけるIL-15の発現に寄与することがわかり、かつ正電荷を帯びたアミノ酸は、IL-15の発現を著しく増強できることがわかった。本発明のIL-15アナログは、大腸菌における発現が高く、発現量はC末端に追加のアミノ酸を有さないIL-15の約20倍以上であった。本発明のIL-15アナログ本体の全部または大部分に天然野生型IL-15のアミノ酸配列が保たれており、そのin vitro細胞活性には有意差がなく、これは、IL-15タンパク質医薬品の産業化への基盤を確立する。
【0039】
本発明は、in vitroカップリングの方式によって脂肪酸鎖をIL-15アナログと連結し、IL-15アナログ-脂肪酸鎖カップリング生成物を形成するものである。脂肪酸鎖がアルブミンの配位子であることにより、血液中のアルブミンと結合することができるため、生体内に入ったIL-15アナログ-脂肪酸鎖がIL-15アナログ-脂肪酸鎖-アルブミン複合体を形成する。分子量を増大させ、腎臓のろ過作用から逃れさせることができるとともに、アルブミンがFcRnと結合することにより、それによって誘導される再循環経路を介して細胞内のリソソームの加水分解によって誘導される保護機序を回避し、IL-15アナログ-脂肪酸鎖の持効機序を達成する。本発明のIL-15アナログの複合体は、中国の大部分の企業が採用的しているIL-15受容体αサブユニットと共発現して複合体を形成する医薬品形式を採用しておらず、天然IL-15と同様の細胞生物学モデルを保っており、すなわち、IL15Rα受容体との結合を完全に保つことにより、シグナル伝達に関与して機能する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の比較例における大腸菌中で野生型IL-15が発現したSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2a】本発明の実施例における大腸菌中でIL-15アナログが発現したSDS-PAGE電気泳動図である。IL-15アナログ1~3および5~8のSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2b】IL-15アナログ9~13のSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2c】IL-15アナログ4およびアナログ14~18のSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2d】IL-15アナログ19~27のSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2e】IL-15アナログ28~33のSDS-PAGE電気泳動図である。
【
図2f】アナログ34~43のSDS-PAGE電気泳動図であり、そのうちアナログ38-~ 43-は、C末端に特定のアミノ酸が付加されていないことを表す。
【
図2g】アナログ34~43のSDS-PAGE電気泳動図であり、そのうちアナログ38-~ 43-は、C末端に特定のアミノ酸が付加されていないことを表す。
【
図3】IL-15およびIL-15アナログ1~33の発現量比較図である(単位:mg/ml/10OD)。
【
図4】再生し精製したIL-15およびIL-15アナログ11、18、21、28のSDS-PAGE電気泳動図である。図中、Marker左側は還元SDS-PAGEの結果であり、電気泳動ローディングバッファーに還元剤2-メルカプトエタノールを加えた。Marker右側は非還元SDS-PAGEの結果であり、電気泳動ローディングバッファーに還元剤2-メルカプトエタノールを加えなかった。
【
図5】実施例3におけるRP-UPLCでIL-15アナログを検出した複合体純度クロマトグラムである(純度>95%)。
【
図6】実施例3におけるLC-MSでIL-15アナログを同定した複合体分子量である。
【
図7】実施例4におけるLC-MSでIL-15アナログを同定した複合体分子量である。
【
図8】実施例7におけるマウス生体内でのIL-15アナログ21およびIL-15アナログの複合体の腫瘍抑制効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施例を組み合わせ、本発明についてさらに説明するが、これらの実施例の目的は例証にすぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではないと理解すべきである。
【0042】
以下の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、例えば、Sambrookらの分子クローニング:実験室マニュアル(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載の条件、またはメーカーが推奨する条件などの常套の条件による。採用した試薬は、特に説明がない場合、いずれも市販されている、または一般ルートで入手可能な試薬である。
【0043】
本発明の具体的な実施形態において、正電荷を帯びたアミノ酸は、ロイシン(Lys、K)、アルギニン(Arg、R)、ヒスチジン(His、H)である。
【0044】
形質転換の基礎としたIL-15のアミノ酸配列は、次のものから選ぶ。
1)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列
2)SEQ ID NO.1で示されるアミノ酸配列を1または複数のアミノ酸の置換、欠失または付加により生成したアミノ酸配列
3)SEQ ID NO.1と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列
【0045】
本発明の具体的な実施形態において、IL-15のC末端に1または複数のアミノ酸、特に正電荷を帯びたアミノ酸を付加することにより、IL-15の発現、特に原核生物発現系における発現を高めることができる。
【0046】
いくつかの具体的な実施形態において、IL-15アナログのアミノ酸配列は、次の一般式によって表すことができる。IL-15-Xa-Yb-Zc、すなわち、IL-15のC末端にアミノ酸配列Xa-Yb-Zcが付加されている。式中、X、YおよびZはC末端に付加したアミノ酸配列を表し、a、bおよびcはアミノ酸の個数を表す。XおよびZは任意のアミノ酸またはその組み合わせであり、aおよびcは0~20である。Yは正電荷を帯びたアミノ酸もしくはその組み合わせ、または正電荷を帯びたアミノ酸および他の任意のアミノ酸の組み合わせであり、bは1~7である。
【0047】
いくつかの具体的な実施形態において、IL-15アナログのアミノ酸配列は、次の一般式によって表すことができる。IL-15-Linker-Xa-Yb-Zc、すなわち、IL-15のC末端にLinker配列、およびアミノ酸配列Xa-Yb-Zcが付加されている。式中、X、YおよびZはC末端に付加したアミノ酸配列を表し、a、bおよびcはアミノ酸の個数を表す。XおよびZは任意のアミノ酸またはその組み合わせであり、aおよびcは0~20である。Yは正電荷を帯びたアミノ酸もしくはその組み合わせ、または正電荷を帯びたアミノ酸および他の任意のアミノ酸の組み合わせであり、bは1~7である。
【0048】
いくつかの選択可能な具体的な実施形態において、Linkerは、(GGGGS)n、(GS)nまたは(GAPQ)nであってよく、nは1~5である。
【0049】
いくつかの具体的な実施形態において、IL-15アナログのアミノ酸配列の上記一般式におけるXaは、LPBTGを含み、Bは任意のアミノ酸であり、Linkerは(GS)nであり、nは0~10である。1つの具体的な実施形態において、このIL-15アナログは、IL-15アミノ酸配列の末端に、-GS-LPETGを含む配列が付加されている。
【0050】
いくつかの具体的な実施形態において、IL-15アナログの持効性を高めるため、IL-15アナログをin vitroで脂肪酸鎖とカップリングする。脂肪酸鎖のin vitroカップリングの方式は、次のものであってよい。
1)N末端アミノ基とのカップリングは、例えば、ホルミル基またはスクシンイミドエステル等を用いる。
2)定点での導入する自由システイン残基とのカップリングは、例えば、IL-15アナログC末端に自由なシステイン残基を導入し、マレイミド基またはハロゲン化基を用いる。
3)酵素反応により、例えば、Sortase A酵素は、IL-15 C末端に有する小ペプチドLPETGを利用することができ、N末端にGGGを有する脂肪酸鎖をこれとカップリングする(Bentley MLら (2008). J Biol Chem 283: 14762~14771)。脂肪酸鎖の構成は、表1に示す構成を含んでもよい。
【0051】
大腸菌における実施例1の野生型IL-15およびIL-15アナログの発現
1.1 発現ベクターの構築
【0052】
野生型IL-15ヌクレオチド配列は、上海生工公司が合成した。
(1) プライマー設計
付加する必要のある異なるアミノ酸の塩基配列をリバースプライマーに導入することにより、IL-15のC末端配列を変えた。野生型IL-15、構築したIL-15アナログのアミノ酸配列、ヌクレオチド配列および構築時に使用したプライマー配列を表2に示す。
【0053】
アナログ34~43は、野生型IL-15に変異を導入してIL-15変異体を形成した後、IL-15変異体の基礎の上でC末端に配列GSLPETGGSGGSHHHHHHを付加して形成されたものであり、アナログ34-~43-は、変異導入後に形成されたIL-15変異体である。変異アナログ34~43およびC末端にGSLPETGGSGGSHHHHHH配列を付加していないアナログ38-~アナログ43-のヌクレオチド配列は、金唯智公司が合成し、pET41aベクターにクローニングした。
【0054】
(2) PCR増幅
3種類の場合に分けた。
1種類目は、リバースプライマーを1個しか必要とせず、PCRを計1サイクル行った。試料注入体系:50 μL(1管配置)
プライマー:フォワードプライマーおよびリバースプライマー。鋳型:IL-15。アニーリング温度:61℃。伸長時間:30秒
【0055】
2種類目は、リバースプライマーを2個必要とし、PCRを計2サイクル行った。
1サイクル目のPCRの試料注入体系:20 μL(1管配置)
プライマー:フォワードプライマーおよびリバースプライマー1。鋳型:IL-15。アニーリング温度:61℃。伸長時間:30秒
2サイクル目のPCRの試料注入体系:50 μL(1管配置)
プライマー:フォワードプライマーおよびリバースプライマー2。鋳型:1サイクル目のPCR産物。アニーリング温度:61℃。伸長時間:30秒
【0056】
3種類目は、リバースプライマー3個とし、PCRを計3サイクル行った。
1サイクル目のPCRの試料注入体系:20 μL(1管配置)
プライマー:フォワードプライマーおよびリバースプライマー1。鋳型:IL-15。アニーリング温度:61℃。伸長時間:30秒
2サイクル目のPCRの試料注入体系:20 μL(1管配置)
プライマー:フォワードプライマーおよびリバースプライマー2。鋳型:1サイクル目のPCR産物。アニーリング温度:61℃。伸長時間:30秒
3サイクル目のPCRの試料注入体系:50 μL(1管配置)
プライマー:フォワードプライマーおよびリバースプライマー3。鋳型:2サイクル目のPCR産物。アニーリング温度:61℃。伸長時間:30秒
【0057】
PCR試料注入体系:20 μL
5×TransStart(登録商標) FastPfu Fly buffer4 μL
フォワードプライマー(5 μM)1.2 μL
リバースプライマー(5 μM)1.2 μL
dNTPs (2.5 mM)1.6 μL
鋳型0.5 μL
Pfu DNA polymerase0.4 μL
ddH2Oを20 μL補充
【0058】
PCR試料注入体系:50 μL
5×TransStart(登録商標) FastPfu Fly buffer10 μL
フォワードプライマー(5 μM)3 μL
リバースプライマー(5 μM)3 μL
dNTPs (2.5 mM)4 μL
鋳型0.5 μL
Pfu DNA polymerase1 μL
ddH2Oを50 μL補充
【0059】
【0060】
(3) ベクター酵素切断
反応系:30 μL、よく混ぜた後37℃で一晩置いた。
【0061】
(4) ゲルからのPCR産物および酵素切断したベクターの回収
【0062】
【0063】
ベクターとセグメントのモル比は2:1であり、37℃で30 分反応させ、直ちに氷上で冷却し、DH5αに導入して形質転換した。
【0064】
(6) 菌検査
1.5mLの遠心管にAmp含有LB培地0.5 mLを加え、良好に成長したシングルコロニーを接種し、合計5管接種し、37℃でシェーカーで振とう培養した。3 時間培養した後、1 μL取って鋳型とし、菌液PCRを行った。
反応系:10 μL
【0065】
【0066】
PCR完了後に、アガロースゲル電気泳動で検出し、陽性クローンを3個選択してシーケンシング(生物工学)を行った。
【0067】
(7) 陽性菌液の保存およびプラスミドの抽出
正確にシーケンシングされた陽性クローンを、Amp耐性のLB液体培地5 mLに接種し、接種量は10 μLとした。菌液500 μLを取り1.5 mLの遠心管に加え、40%のグリセロール500 μLを加え、保存に用いた。名称、宿主菌、日付を書き、パラフィルムを用いて封をし、-80℃の冷蔵庫に入れて保存した。
【0068】
残りの菌液を遠心分離して菌体を収集し、プラスミド抽出に用いた。
【0069】
1.2 野生型IL-15およびIL-15アナログのタンパク質発現
【0070】
(1) BL21(DE3)形質転換
a) プラスミド2 μLを取り、BL21(DE3)コンピテントセル100 μLに加え、直ちによく混ぜ、氷上に30 分置いた。
b) 42℃で90 秒熱ショック活性化し、2 分急速に氷浴した。
c) LB培地500 μLを加え、37℃、rpm≦200で60 分振とう培養した。
d) 6000rpmで1分遠心分離し、大部分の上清を捨て、約100-150 μLを残し、菌体を再懸濁した後、Amp含有LBプレートに塗布し、37℃で一晩培養した。
【0071】
(2) 小量発現
a) 保菌:単クローンをAmp耐性のLB培地1 mL中に1個取り、37℃、220 rpmで約5時間振とう培養し、40%グリセロール1mLを加え、2管に分け、-80℃で凍結保存した。
b) 前のステップの管にAmp含有LB液体培地2.5 mLを加え、37℃、220 rpmで一晩振とう培養した。
c) 一晩培養した菌液を、1:50の比でAmp含有LB培地20mlに移し、37℃、220 rpmでOD600=0.6まで培養し(約3時間)、最終濃度0.5mMのIPTGを加え、37℃、220 rpmで3時間培養した。
【0072】
(3) SDS-PAGEによる発現量の同定
a) 培養液のOD600を測定し、菌液10ODを取り、10000rpmで2分遠心分離し、上清を捨てた。
b) 1 mL溶解液 (10mM Tris-HCl、 pH 8.0)で菌体を再懸濁し、氷上に置き、超音波の条件130W、4分、on 3秒、off 3秒で超音波処理して細胞を溶解した。
c) 超音波処理終了後、80μLを取ってT(lysis total)とマークし、残りの液体を12000rpmで10分遠心分離し、上清(lysis supernatant、S)および沈殿(lysis pellet、P)を得た。T、PおよびS 80μLにそれぞれ5×Reduce loading buffer 20μLを加え、各試料を12.5μL(0.1OD)取り、SDS-PAGE電気泳動を行った。
【0073】
IL-15野生型の電気泳動図は、
図1に示すとおりであり、全溶解液であっても、上清または沈殿であっても、基本的に野生型IL-15の発現が検出されなかった。IL-15アナログ1~アナログ33の電気泳動図は、
図2a~
図2eに示すとおりであり、IL-15アナログの発現量は、野生型IL-15よりも著しく高かったが、C末端にGSLPETGGSGGSHHHHHH配列を有するIL-15アナログ(アナログ34~43)の発現量も、
図2fおよび2gに示したように、C末端に配列を有していないIL-15アナログ(アナログ38- ~ 43-)よりも著しく高かった。
【0074】
(4) HPLCによる発現量の同定
a) 発現後に細胞10ODを収集し、10mM、pH8.0のTris-HCl buffer 1mlを用いて、再懸濁した。
b) 超音波処理して破砕し、条件はゲル電気泳動の試料処理(上述(3))の条件と同じとした。
c) 破砕した試料を、12000rpmで10分遠心分離し、上清を捨てた。
d) 沈殿を、新たに配合した8M Urea/10mM Tris-HCl、pH8.0、 10mM DTT 1mlで、室温で約1時間振とう溶解した。
e) 0.2μmシリンジフィルターでろ過し、ロードして高速クロマトグラフィー分析を行った。C4分析カラムを用いて、0.1% TFAを含む脱イオン水を移動相Aとし、0.1%TFAを含むアセトニトリルを移動相Bとし、次いで、20%Bから60%Bの勾配で15分間分析した。
【0075】
HPLC定量結果は、
図3に示したとおりであり、IL-15アナログ1~33の発現量は、野生型IL-15の発現量よりも20倍程度高かった。
【0076】
実施例2 IL-15アナログin vitro細胞活性実験
【0077】
2.1 IL-15アナログの準備
封入体で発現したIL-15アナログ11、アナログ18、アナログ21およびアナログ28を8M尿素溶液に溶解し、イオン交換および逆相クロマトグラフィー法によって精製し(具体的な方法は、Yunier Rodriguez-Alvarez et al, Preparative Biochemistry and Biotechnology, 47:9, 889-900を参照)、比較的純粋なタンパク質を精製した。SDS-PAGE電気泳動図は
図4に示すとおりであった。
【0078】
2.2 CTLL-2細胞実験
CTLL-2細胞の増殖実験は、一般的に用いられている細胞レベルでインターロイキン刺激免疫細胞活性を測定する実験である。そのため、ここでは、CTLL-2細胞に対する野生型IL-15およびIL-15アナログの増殖効果によって、IL-15アナログの生物学的活性を見た。
1)CTLL-2細胞の準備:FBSおよびRat-T-Stimを含有する培養液を用いて細胞を再懸濁した。
2)試料注入:96ウェル培養プレートに細胞を接種し、各ウェル0.1 mlとした。同時に、測定する試料IL-15アナログ11、18、21および28のタンパク質(すなわち、2.1で調製したタンパク質)をそれぞれ連続希釈し、各ウェルに0.1 mlを加え、希釈濃度ごとにいずれも3ウェル設けた。培養液対照ウェル(100 μL細胞+100 μL培養液)をさらに設けた。37度、5%CO2で72時間インキュベートした。
3)MTS添加:各ウェルにCellTiter96(登録商標) AQueous One Solution Reagentを20μl加え、37度、5%CO2で2~4時間インキュベートした。
4)測定:マイクロプレートリーダーで波長490 nmにおける吸光度(A)を測定し、EC50値を計算した。
【0079】
結果は表3に示すとおりであり、IL-15アナログおよび野生型IL-15の細胞活性には有意差が認められなかった。
【0080】
実施例3 IL-15アナログの複合体の調製(酵素反応法)
精製したIL-15アナログ21(IL-15-GS-LPETG-GSGGSHHHHHH)を用いて、ペプチド転移酵素SortaseA酵素を触媒とする結合反応によってN末端にGGGを有する脂肪酸鎖(816366)とIL-15-GS-LPETG-GSGGSHHHHHHとを結合した。反応は、Sortase A:IL-15:脂肪酸鎖の割合を1:6:30として行い、反応bufferは50mM Tris-HCl、1mM CaCl
2、150mM NaClとし、pH8.0、室温で3時間反応させた後に精製した。精製は、逆相クロマトグラフィーC8(賽分科技)を採用し、結合していないIL-15アナログ21、反応していない脂肪酸鎖および結合した生成物を分け、最終生成物の純度をUPLCで検査した(
図5参照)。LC-MS(
図6)の同定により、IL-15アナログ21は、すでに脂肪酸鎖と結合し、IL-15アナログ21-816366を形成していることがわかった。
【0081】
実施例4 IL-15アナログの複合体の調製(IL-15アナログN末端アミノ基に脂肪酸鎖を結合)
精製したIL-15アナログ21を用いて、スクシンイミドエステルを有する脂肪酸鎖(820044)によって、中性pHにおいてN末端のアミノ基と結合した。反応は、IL-15:脂肪酸鎖の割合を1:1として行い、反応bufferはPBSとし、pH7.2で室温で1時間反応させた後に精製した。精製は、逆相クロマトグラフィーC8(賽分科技)を採用し、結合していないIL-15、反応していない脂肪酸鎖および結合した生成物を分け、最終生成物をLC-MSで同定し、
図7に示すように、IL-15はすでに脂肪酸鎖に結合し、IL-15アナログ21-820044を形成していることがわかった。
【0082】
実施例5 IL-15アナログ21とIL-15アナログの複合体およびIL15Rα受容体の結合実験
本実施例で用いたIL-15アナログの複合体は、実施例3において調製したものである。
【0083】
本実施例では、バイオレイヤー干渉法(biolayer interferomeory、BLI)を採用し、標的タンパク質と受容体との間の親和性を測定した。方法は、Estep,Pら、High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270-8を参照することができる。実験で用いた受容体タンパク質IL15Rα-hisは、北京志道生物科技有限公司が製造したものである。緩衝液の配合は、10mM HEPES、150mM NaCl、3 mM EDTAおよび0.05% tween20とした。受容体IL15Rα-hisは、HISIKセンサ(Pall Fortebio社、製品番号#18-5120)に予め固定化しておき、次いで確立された方法で、baseline、loading、baseline、AssociationおよびDissociationのステップで行った。データ取得および分析作業は、それぞれOctet RED96ソフトウェアData acquisition 11.0およびData analysis 11.0を採用して行った。
【0084】
IL-15アナログおよびIL-15アナログの脂肪酸鎖の結合生成物と、IL15Rα受容体との親和性は、表4に示すとおりであった。結合前のIL-15アナログに比べ、IL-15アナログの脂肪酸鎖結合生成物とIL15Rα受容体との親和性は、有意差が認められなかった。
【0085】
実施例6 マウス生体内におけるIL-15アナログ21とIL-15アナログの複合体の半減期
本実施例で用いたIL-15アナログの複合体は、実施例3において調製したものである。
【0086】
C57BL/6マウス8匹を4匹ずつ2群に分け、各時点で2匹から循環採血した。マウスの尾にIL-15 0.5mg/kgを静脈注射し、投与直後、10分、30分、1.5時間、4時間後に採血し、マウスの尾に持効性IL-15 0.5mg/kgを静脈注射し、投与直後、1時間、2時間、4時間後に採血し、各時点で眼窩から50-100μl採血した。血清を取り、IL-15 ELISAアッセイを行った。
【0087】
半減期の計算公式:t1/2=0.693/k、k=(lnc0-lnc)/tにより、IL-15の半減期は約5分であり、持効性IL-15は1.5時間に達することがわかった。
【0088】
実施例7 マウス生体内におけるIL-15アナログ21およびIL-15アナログの複合体の腫瘍抑制実験
本実施例で用いたIL-15アナログの複合体は、実施例3において調製したものである。
【0089】
6~8週齢のC57BL/6マウス15匹を無作為に3群に分け、それぞれ試薬対照群(PBS)、IL-15群および持効性IL-15群とし、各群マウス5匹とした。Day1に、マウスの頸背部皮下にB16-F10細胞を2×105/100 μL/匹で接種した。4日目~8日目に、PBS群およびIL-15群にそれぞれ静脈注射(i.v.)の方式で5日連続で投与し、投与量は20 μg/100 μL/匹または100μL/匹(PBS群)とした。IL-15アナログの複合体群は、Day4およびDay7に同様の投与方法で2回投与し、各回の同じ投与量は20 μg/100 μL/匹とした。Day10より腫瘍の大きさの観察を開始し、6日間観察を続けた。
【0090】
結果は
図8に示すとおりであり、対照群と比べ、IL-15および持効性IL-15は、いずれも著しい腫瘍抑制作用を有した。
【配列表】
【国際調査報告】