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特表2022-550773多発性硬化症(MS)を評価するための手段および方法
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  • 特表-多発性硬化症(MS)を評価するための手段および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】多発性硬化症(MS)を評価するための手段および方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20221128BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20221128BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20221128BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G16H50/00
A61B5/16 100
A61B5/107 300
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519682
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020077208
(87)【国際公開番号】W WO2021063936
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19200549.4
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リプスマイヤー フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】シミリオン セドリック アンドレ マリー ビンセント ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スコットランド アルフ
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PS09
4C038VA12
4C038VB35
4C038VC20
5L099AA04
(57)【要約】
本発明は、疾患の追跡および潜在的には診断の分野に関する。具体的には、本発明は、多発性硬化症(MS)に罹患している対象の総運動スコア(EDSS)を予測する方法であって、前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定するステップと、決定された前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを、訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較するステップと、前記比較に基づいて対象のEDSSを予測するステップとを含む、方法に関する。本発明はまた、モバイル装置であって、プロセッサ、少なくとも1つのセンサ、およびデータベース、ならびに前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアを備え、前記ソフトウェアが、前記装置で実行されると本発明の方法を実行する、モバイル装置;ならびに、少なくとも1つのセンサを備えるモバイル装置と、リモート装置とを備えるシステムであって、前記リモート装置が、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアを備え、前記ソフトウェアが、前記装置で実行されると本発明の方法を実行し、前記モバイル装置および前記リモート装置が互いに動作可能に連結されている、システムに関する。さらにまた、本発明は、MSに罹患している対象のEDSSを、前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットからの少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを使用して予測するための、上述したモバイル装置またはシステムの使用を企図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症(MS)に罹患している対象の総運動スコア(EDSS)を予測する方法であって、
a)前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定するステップと、
b)決定された前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを、訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いてランダムフォレスト(RF)分析を使用して生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較するステップと、
c)前記比較に基づいて前記対象のEDSSを予測するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定が、モバイル装置を使用して実行されており、ある実施形態では、前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定が、モバイル装置を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モバイル装置が、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、携帯型マルチメディア装置、またはタブレットコンピュータに含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定が、運動特性、特に、運動パターンもしくは運動タスクを実行するのに必要な時間、または認知タスクを実行する精度、時間もしくは正確さに関する測定を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも32個のパフォーマンスパラメータが使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
表1の少なくとも3個、ある実施形態では少なくとも4個、さらなる実施形態では少なくとも6個のパフォーマンスパラメータが決定され、ある実施形態では表1の少なくとも最初の3個、ある実施形態では最初の4個、さらなる実施形態では最初の6個のパフォーマンスパラメータが決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表1の全てのパフォーマンスパラメータが決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)の前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータが、データ処理装置に有形的に組み込まれた自動アルゴリズムによって前記データセットから導出される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)において前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを基準と比較することが、データ処理装置に実装された自動比較アルゴリズムによって達成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いてランダムフォレスト(RF)分析を使用して生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された前記基準が、前記RF分析からのモデル式、スコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータ実装方法である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
モバイル装置であって、プロセッサ、少なくとも1つのセンサ、およびデータベース、ならびに前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアを備え、前記ソフトウェアが、前記装置で実行されると、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法の少なくともステップa)を実行し、ある実施形態では請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行する、モバイル装置。
【請求項13】
少なくとも1つのセンサを備えるモバイル装置と、リモート装置とを備えるシステムであって、前記リモート装置が、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアを備え、前記ソフトウェアが、前記装置で実行されると請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行し、前記モバイル装置および前記リモート装置が互いに動作可能に連結されている、システム。
【請求項14】
MSに罹患している対象のEDSSを、前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットからの少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを使用して予測するための、請求項12に記載のモバイル装置または請求項13に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患追跡および潜在的には診断の分野に関する。具体的には、本発明は、多発性硬化症(MS)に罹患している対象における総運動スコア(EDSS)を予測する方法であって、前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定するステップと、決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを、訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較するステップと、前記比較に基づいて対象のEDSSを予測するステップとを含む、方法に関する。本発明はまた、モバイル装置であって、プロセッサと、少なくとも1つのセンサと、データベースと、前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアとを備え、該ソフトウェアは、前記装置で実行されると、本発明の方法を実行する、モバイル装置、ならびに、少なくとも1つのセンサを備えるモバイル装置と、リモート装置であって、プロセッサと、データベースと、前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアとを備えるリモート装置と、を備えるシステムであって、該ソフトウェアは、前記装置で動作されると、本発明の方法を実行し、前記モバイル装置および前記リモート装置が互いに動作可能に連結されている、システムに関する。さらにまた、本発明は、MSに罹患している対象のEDSSを、前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットからの少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを使用して予測するための上述したモバイル装置またはシステムの使用を企図する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、現在では治癒することができない重度の神経変性疾患である。この疾患に罹患しているのは、世界中で約2から300万人の個体である。これは、若年成人に長期にわたる重度の身体障害を引き起こす中枢神経系(CNS)の最も一般的な疾患である。脳および脊髄の白質内の自己分子に対するB細胞およびT細胞媒介性炎症過程が疾患を引き起こすという概念を支持する証拠がある。しかしながら、その病因はまだよく理解されていない。ミエリン反応性T細胞は、MS患者および健常な個体の双方に存在することが見出されている。したがって、MSの主な異常は、増強されたT細胞活性化状態およびあまりストリンジェントでない活性化要件をもたらす損なわれた調節機構を含む可能性がより高い。MSの病因は、脳炎誘発性、すなわちCNS外の自己免疫性ミエリン特異的T細胞の活性化、それに続く血液脳関門の開放、T細胞およびマクロファージ浸潤、ミクログリア活性化および脱髄を含む。後者は、不可逆的なニューロン損傷を引き起こす(例えば、Aktas 2005,Neuron 46,421-432、Zamvil 2003,Neuron 38:685-688を参照)。
【0003】
より最近になって、T細胞に加えて、Bリンパ球(CD20分子を発現する)がMSにおいて中心的な役割を果たし、以下の少なくとも4つの特定の機能を通じて基礎となる病態生理学に影響を及ぼし得ることが示された:
1.抗原提示:B細胞は、T細胞に自己神経抗原を提示して、それらを活性化することができる。
2.サイトカイン産生:MSを有する患者のB細胞は、T細胞および他の免疫細胞を活性化することができる異常な炎症促進性サイトカインを産生する。
3.自己抗体産生:B細胞は、組織損傷を引き起こし、マクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化することができる自己抗体を産生する。
4.卵胞様凝集体形成:B細胞は、近傍の皮質におけるミクログリア活性化、局所炎症、およびニューロン喪失に関連して、異所性リンパ濾胞様凝集体中に存在する。
【0004】
脳下垂体原性を担う機構についての健全な知識は存在するが、対象におけるCNSへのおよびCNS内の有害なリンパ球応答を調節するための制御機構に関してはほとんど知られていない。
【0005】
MS診断は、現在、医師による臨床調査に基づいている。そのような調査は、特定の身体活動に対する患者の能力の試験を含む。いくつかの試験が開発されており、医師によって日常的に適用されている。これらの試験は、歩行、バランス、および他の運動能力を評価することを目的とする。現在適用されている試験の例は、総合障害度評価尺度(EDSS)または多発性硬化症機能性評価(MSFC)である。これらの試験は、評価および判断の目的のために医師の存在を必要とし、現在、医院または病院で救急車で行われている。ごく最近では、自然環境でMS患者のデータを収集するために、スマートフォン装置を使用してMS患者を監視するいくつかの努力がなされている(Bove 2015,Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2(6):e162)。
【0006】
さらに、MS診断には診断ツールが使用される。そのようなツールは、神経イメージング、脳脊髄液および誘発電位の分析を含む。脳および脊髄の磁気共鳴画像法(MRI)は、脱髄(病変またはプラーク)を視覚化することができる。ガドリニウムを含有する造影剤が静脈内投与されて、活性プラークをマークし、評価の瞬間に症状を伴わないより古い病変の存在から急性炎症を区別することができる。腰椎穿刺から得られた脳脊髄液の分析は、中枢神経系の慢性炎症の証拠を提供することができる。脳脊髄液は、MSを有する人々の75~85%に存在する炎症マーカーであるオリゴクローナル免疫グロブリンバンドについて分析されることができる(Link 2006,J Neuroimmunol.180(1-2):17-28)。しかしながら、上記の技術はいずれもMSに特異的ではない。したがって、診断の確認は、MS診断の前提条件である疾患の空間および時間における播種を実証するために臨床およびMRI調査の繰り返しを必要とし得る。
【0007】
再発寛解型多発性硬化症のために規制当局によって承認されたいくつかの処置があり、これは疾患の経過を修正するものである。これらの処置は、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、酢酸グラチラマー、ミトキサントロン、ナタリズマブ、フィンゴリモド、テリフルノミド、フマル酸ジメチル、アレムツズマブ、およびダクリズマブを含む。インターフェロンおよび酢酸グラチラマーは、再発を約30%減少させる第一選択処置である(例えば、Tsang 2011,Australian family physician 40(12):948-55を参照)。ナタリズマブは、インターフェロンよりも再発率を低下させるが、有害作用の問題のために、他の処置に応答しない者または重篤な疾患を有する患者のために確保された第二選択薬剤である(例えば、Tsang 2011,loc.cit.)。インターフェロンによる臨床的に孤立した症候群(CIS)の処置は、臨床的に明確なMSに進行する可能性を低下させる(Compston 2008,Lancet 372(9648):1502-17)。小児におけるインターフェロンおよび酢酸グラチラマーの有効性は、成人の有効性とほぼ同等であると推定されている(Johnston 2012,Drugs 72(9):1195-211)。
【0008】
近年、オクレリズマブ、アレムツズマブおよびダクリズマブなどの新たなモノクローナル抗体が、MSの治療薬としての可能性を示している。抗CD20 B細胞標的化モノクローナル抗体オクレリズマブは、1つの第2相および第3相III試験(NCT00676715、NCT01247324、NCT01412333、NCT01194570)において再発型および一次進行型の双方のMSにおいて有益な効果を示した。
【0009】
MSは、CNSの臨床的に不均一な炎症性疾患である。したがって、現在の疾患状態の信頼できる診断および同定を可能にし、したがって、特にMSの進行形態に罹患している患者の正確な処置を支援することができる診断ツールが必要とされている。
【0010】
MS管理のために、障害状態が判定される必要がある。EDSSは、患者をその障害状態にしたがって分類するためのスコアリングシステムであり、したがって、援助および/または支援の必要性を判定することを可能にする。
【0011】
EDSSは、MSに罹患している対象における障害の定量的評価に基づくスコアである(Krutzke 1983)。EDSSは、臨床医による神経学的検査に基づいているが、自己実施のためのスコアリングシステムのバージョンも存在する(Collins 2016)。EDSSは、これらの機能システムのそれぞれにおいて機能システムスコア(FSS)を割り当てることによって、8つの機能システムにおける障害を定量化する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の根底にある技術的課題は、前述の必要性に適合する手段および方法の提供に見られることができる。技術的課題は、特許請求の範囲において特徴付けられ、本明細書で以下に記載される実施形態によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
したがって、本発明は、多発性硬化症(MS)に罹患している対象における総合障害度評価尺度(EDSS)を予測する方法であって、
a)前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定するステップと、
b)決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを、訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較するステップと、
c)前記比較に基づいて対象のEDSSを予測するステップと
を含む、方法に関する。
【0014】
本方法は、典型的には、コンピュータ実装方法であって、すなわち、ステップa)からc)は、データ処理装置の使用によって自動化された方法で実行される。詳細はまた、本明細書では以下および添付の実施例にも見出される。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法はまた、ステップ(a)の前に、モバイル装置を使用して、対象によって行われる所定の活動中または所定の時間窓中の前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットを対象から取得するステップを含むことができる。しかしながら、典型的には、本方法は、前記対象とのいかなる物理的相互作用も必要としない、対象からの測定値の既存のデータセットに対して行われるエクスビボ法である。
【0016】
本発明にしたがって言及される方法は、上述したステップから本質的になる方法、または追加のステップを含むことができる方法を含む。
【0017】
以下において使用される場合、用語「有する」、「備える」もしくは「含む」またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0018】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在することができることを示す「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語または同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を指すとき、それぞれの特徴または要素が1回または1回を超えて存在することができるという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現は繰り返されない。
【0019】
さらに、以下において使用されるように、「特に」、「より特には」、「具体的には」、「より具体的には」、「典型的には」、および「より典型的には」という用語または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、追加の/代替の特徴とともに使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、追加の/代替の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関する制限なしに、本発明の範囲に関する制限なしに、およびそのように導入された特徴を本発明の他の追加の/代替のまたは非追加の/代替の特徴と組み合わせる可能性に関する制限なしに、追加の/代替の特徴であることが意図される。
【0020】
本方法は、圧力測定のデータセットが取得されると、対象によってモバイル装置上で実行されることができる。したがって、モバイル装置およびデータセットを取得する装置は、物理的に同一、すなわち同じ装置とすることができる。そのようなモバイル装置は、典型的にはデータ取得手段、すなわち、定量的または定性的に物理的および/または化学的パラメータを検出または測定し、それらを本発明にかかる方法を実行するために使用されるモバイル装置内の評価ユニットに送信される電子信号に変換する手段を備えるデータ取得ユニットを有するものとする。データ取得ユニットは、データ取得手段、すなわち、定量的または定性的に物理的および/または化学的パラメータを検出または測定し、それらをモバイル装置から離れており、本発明にかかる方法を実行するために使用される装置に送信される電子信号に変換する手段を備える。典型的には、前記データ取得手段は、少なくとも1つのセンサを備える。複数のセンサ、すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10以上の異なるセンサがモバイル装置において使用されることができることが理解されよう。データ取得手段として使用される典型的なセンサは、ジャイロスコープ、磁力計、加速度計、近接センサ、温度計、湿度センサ、歩数計、心拍数検出器、指紋検出器、タッチセンサ、ボイスレコーダ、光センサ、圧力センサ、位置データ検出器、カメラ、発汗分析センサなどのセンサである。評価ユニットは、典型的には、プロセッサ、データベース、および前記装置に有形的に組み込まれ、前記装置上で実行されると本発明の方法を実行する、ソフトウェアを備える。より典型的には、そのようなモバイル装置はまた、評価ユニットによって実行された分析の結果をユーザに提供することを可能にするスクリーンなどのユーザインターフェースを備えることができる。
【0021】
あるいは、これは、前記データセットを取得するために使用されたモバイル装置に対して遠隔にある装置上で実行されてもよい。この場合、モバイル装置は、単にデータ取得手段、すなわち、定量的または定性的に物理的および/または化学的パラメータを検出または測定し、それらをモバイル装置から離れており、本発明にかかる方法を実行するために使用される装置に送信される電子信号に変換する手段を備えるものとする。典型的には、前記データ取得手段は、少なくとも1つのセンサを備える。複数のセンサ、すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10以上の異なるセンサがモバイル装置において使用されることができることが理解されよう。データ取得手段として使用される典型的なセンサは、ジャイロスコープ、磁力計、加速度計、近接センサ、温度計、湿度センサ、歩数計、心拍数検出器、指紋検出器、タッチセンサ、音声レコーダ、光センサ、圧力センサ、位置データ検出器、カメラ、汗分析センサ、GPS、バリストカルジオグラフィなどのセンサである。したがって、モバイル装置および本発明の方法を実行するために使用される装置は、物理的に異なる装置であってもよい。この場合、モバイル装置は、データ送信のための任意の手段によって本発明の方法を実行するために使用される装置に対応することができる。そのようなデータ送信は、同軸、ファイバ、光ファイバ、またはツイストペア、10 BASE-Tケーブルなどの永続的または一時的な物理的接続によって達成されることができる。あるいは、例えば、Wi-Fi、LTE、LTEアドバンストまたはブルートゥースなどの電波を使用する一時的または永続的な無線接続によって達成されてもよい。したがって、本発明の方法を実行するための唯一の要件は、モバイル装置を使用して対象から取得された測定のデータセットの存在である。前記データセットはまた、本発明の方法を実行するために使用される装置にデータを転送するためにその後に使用されることができる永続的または一時的メモリ装置上で取得モバイル装置から送信または記憶されることができる。この設定で本発明の方法を実行するリモート装置は、典型的には、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記装置に有形的に組み込まれ、前記装置上で実行されると本発明の方法を実行する、ソフトウェアを備える。より典型的には、前記装置はまた、評価ユニットによって実行された分析の結果をユーザに提供することを可能にする画面などのユーザインターフェースを備えることができる。
【0022】
本明細書で使用される「予測する」という用語は、EDSSを直接決定するのではなく、測定されたデータセットから決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータと、そのようなパフォーマンスパラメータとEDSSとの既存の相関関係とに基づいてEDSSを決定することを指す。当業者によって理解されるように、そのような予測は、好ましいが、通常、調査された対象の100%では正しくない場合がある。しかしながら、この用語は、EDSSが対象の統計的に有意な部分において正確に予測されることができることを必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン-ホイットニー検定などを使用して、当業者によってさらに難なく決定されることができる。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983に見出すことができる。典型的に想定される信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、典型的には、0.2、0.1、0.05である。この用語はまた、EDSSに基づくMSの任意の種類の診断、監視または病期分類を包含し、特に、MSに関連する任意の症状または任意の症状の進行の評価、診断、監視および/または病期分類に関する。
【0023】
本明細書で使用される「多発性硬化症(MS)」という用語は、典型的には、それに罹患している対象に長期および重度の障害を引き起こす中枢神経系(CNS)の疾患に関する。本発明にしたがって使用される用語にも包含される以下のMSの4つの標準化されたサブタイプ定義が存在する:再発寛解、二次進行性、原発性進行性および進行性再発。再発型のMSという用語も使用され、再発寛解型および再発の重畳を伴う二次性進行性MSを包含する。再発寛解型は、予測不可能な再発とそれに続く数ヶ月から数年の寛解期間を特徴とし、臨床疾患活動性の新たな徴候はない。発作中に罹患した欠損(活動状態)は、治癒するか、または後遺症を残すことがある。これは、MSに罹患している対象の85から90%の初期経過を表す。二次性進行性MSは、初期再発寛解型MSを有し、その後、明確な寛解期間を何ら伴うことなく急性発作の間に進行性の神経学的低下を有し始めるものを表す。時折、再発および軽度の寛解が現れることがある。疾患発症と再発寛解から二次性進行性MSへの転換との間の時間の中央値は約19年である。原発性進行性サブタイプは、最初のMS症状後に寛解を全く有しない対象の約10から15%を表す。それは、寛解および改善がないか、または偶発的および軽微なものにすぎない、発症からの障害の進行によって特徴付けられる。原発性進行性サブタイプの発症年齢は、他のサブタイプよりも遅い。進行性再発性MSは、発症から、安定した神経学的低下を有するが、明らかな重畳発作も患っている対象を表す。この後者の進行性再発表現型が原発性進行性MS(PPMS)の変異体であり、McDonald 2010基準によるPPMSの診断が進行性再発変異体を含むことが現在受け入れられている。
【0024】
MSに関連する症状は、感覚の変化(知覚低下および知覚異常)、筋力低下、筋攣縮、運動困難、協調およびバランスの困難(運動失調)、発話の問題(構音障害)または嚥下の問題(嚥下障害)、視覚的問題(眼振、視神経炎および視力低下、または複視)、疲労、急性または慢性の疼痛、膀胱、性的および腸の問題を含む。様々な程度の認知障害、ならびにうつ病または不安定な気分の情動症状もまた、頻繁な症状である。障害の進行および症状の重症度の主な臨床的尺度は、総合障害度評価尺度(EDSS)である。MSのさらなる症状は当該技術分野で周知であり、医学および神経学の標準的な教科書に記載されている。
【0025】
本明細書で使用される「進行性MS」という用語は、疾患および/またはその症状の1つ以上が経時的に悪化する状態を指す。典型的には、進行は、活動状態の出現を伴う。前記進行は、疾患の全てのサブタイプで起こり得る。しかしながら、典型的には、「進行性MS」は、再発寛解型MSに罹患している対象において本発明にしたがって判定されるものとする。
【0026】
MS管理のために、障害状態が判定される必要がある。総合障害度評価尺度(EDSS)は、患者をその障害状態にしたがって分類するためのスコアリングシステムであり、したがって、支援および/または支援の必要性を判定することを可能にする。
【0027】
したがって、本明細書で使用される「総合障害度評価尺度(EDSS)」という用語は、MSに罹患している対象における障害の定量的評価に基づくスコアを指す(Krutzke 1983)。EDSSは、臨床医による神経学的検査に基づいている。EDSSは、これらの機能システムのそれぞれにおいて機能システムスコア(FSS)を割り当てることによって、8つの機能システムにおける障害を定量化する。機能系は、錐体系、小脳系、脳幹系、感覚系、腸および膀胱系、視覚系、脳系および他の(残りの)系である。EDSSステップ1.0から4.5は、歩行障害の無いMS罹患対象を指し、EDSSステップ5.0から9.5は、歩行障害を有する対象を特徴付ける。
【0028】
各可能な結果の臨床的意味は、以下のとおりである:
・0.0:神経学的検査で正常
・1.0:障害なし;1つのFSで極軽度の徴候
・1.5:障害なし;2つ以上のFSで極軽度の徴候
・2.0:1つのFSで極軽度の障害
・2.5:1つのFSで軽度の障害または2つのFSで極軽度の障害
・3.0:歩行障害は無いが、1つのFSで中程度の障害、または3つ~4つのFSで中程度の障害
・3.5:歩行障害は無いが、1つのFSで中程度の障害および1つまたは2つのFSで軽度の障害を有する;または2つのFSで中程度の障害;または5つのFSで軽度の障害
・4.0:補助なしで完全に歩行可能であり、比較的重度の身体障害にもかかわらず、1日に最大約12時間である。補助なしで500メートル歩行可能
・4.5:補助なしで完全に歩行可能であり、1日中働くことができ、そうでなければ完全な活動にいくつかの制限があるか、または最小限の補助が必要。比較的重度の障害。補助なしで300メートル歩行可能
・5.0:補助なしで約200メートル歩行可能。身体障害は、完全な日常活動を損なう
・5.5:100メートル歩行可能;身体障害は、完全な日常活動を不可能にする
・6.0:休息なし、あるいは休息しながら100メートル歩行するのに、時々あるいは常時、片側に補助具(杖、松葉杖または装具)が必要
・6.5:休息なしで20メートル歩行するのに、常時、両側に支持(杖、松葉杖または装具)が必要
・7.0:補助があっても5メートルを超えて歩くことはできない、基本的に車椅子での生活、車椅子への移動・操作は自立;車椅子で1日約12時間活動
・7.5:数歩以上は歩くことができない、終日車椅子での生活、車椅子への移動に支援を必要とする場合がある;車椅子の操作はできるが、1日の活動のために電動車椅子を必要とする場合がある
・8.0:基本的にベッド、椅子、または車椅子での生活だが、一日の大半はベッド外で生活;身の回りの多くのことはできる;一般に上肢を使うことは可能
・8.5:一日の大半は基本的にベッドでの生活;上肢機能はある程度残っている;身の回りのある程度のことはできる
・9.0:寝たきりの状態、コミュニケーションと食事は可能
・9.5:効果的にコミュニケーションまたは飲食が不可能
・10.0:MSによる死亡
【0029】
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物、典型的には哺乳動物に関する。特に、対象は、霊長類であり、最も典型的にはヒトである。本発明にかかる対象は、MSに罹患しているか、またはMSに罹患していると疑われる、すなわち、前記疾患に関連する症状の一部または全部を既に示している可能性がある。
【0030】
「少なくとも1つ」という用語は、1つ以上のパフォーマンスパラメータ、すなわち少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそれ以上の異なるパフォーマンスパラメータが本発明にしたがって決定されることができることを意味する。したがって、本発明の方法にしたがって決定されることができる異なるパフォーマンスパラメータの数に上限はない。しかしながら、典型的には、32個の異なるパフォーマンスパラメータが使用される。より典型的には、パラメータは、能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから選択される。典型的には、前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定は、運動特性、特に運動パターンもしくは運動タスクを実行するのに必要な時間、または認知タスクを実行する精度、時間もしくは正確さに関する測定を含む。
【0031】
本明細書で使用される「パフォーマンスパラメータ」という用語は、対象が特定の活動を実行する能力を示すパラメータを指す。典型的には、パフォーマンスパラメータは、運動パラメータ、特に、運動パターンもしくは運動タスクを実行するのに必要な時間を示すパラメータ、または認知タスクを実行する精度、時間、もしくは正確さを示すパラメータである。より典型的には、パフォーマンスパラメータは、能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力を示すパフォーマンスパラメータから選択される。本発明にしたがって使用される特定のパフォーマンスパラメータは、本明細書の他の箇所でより詳細に列挙されている(以下の表1を参照)。実施形態では、「歩行」という表現は、本明細書では「能動的および受動的な歩行」に使用される。同様に、実施形態では、「姿勢」という用語は「能動的および受動的な姿勢」に使用されることができる。
【0032】
「測定のデータセット」という用語は、測定中に対象からモバイル装置によって取得されたデータ全体、またはパフォーマンスパラメータを導出するのに有用な前記データの任意のサブセットを指す。
【0033】
少なくとも1つのパフォーマンスパラメータは、典型的には、以下の活動の実行中に対象から収集された測定のデータセットから決定されることができる。以下の試験は、典型的には、本明細書の他の箇所で指定されるようなモバイル装置などのデータ取得装置上でコンピュータ実装される。
【0034】
(1)歩行および姿勢の受動的監視のための試験
モバイル装置は、典型的には、活動の全てまたはサブセットの受動的監視を実行するかまたは当該監視からデータを取得するように適合される。特に、受動的監視は、歩行の測定値、一般に日常における移動量、日常における移動の種類、日常生活における一般的な移動性、および移動行動の変化からなる群から選択される、1日以上または1週間以上などの所定の時間枠の間に行われる1つ以上の活動の監視を包含するものとする。
【0035】
関心のある典型的な受動的監視パフォーマンスパラメータ:
a.歩行の頻度および/または速度;
b.起立/着席、静止およびバランスをとる量、能力および/または速度
c.一般的な移動性の指標としての訪問場所の数;
d.移動行動の指標としての訪問場所の種類。
【0036】
(2)認知能力の試験:eSDMT試験
モバイル装置はまた、典型的には、コンピュータ実装の符号数字モダリティ試験(eSDMT)を実行するかまたは当該試験からデータを取得するように適合される。従来の紙バージョンのSDMT試験は、最大90秒間に表示される120個の一連の記号と、所定の順序で9個の記号および1から9までのそれぞれの一致する数字を有する参照キーの凡例(3つのバージョンが利用可能である)とからなる。スマートフォンベースのeSDMTは、患者が自己管理することを意図しており、一連の記号、典型的には110個の同じ一連の記号、および論文/口頭バージョンのSDMTの参照キーの凡例、典型的には3つの参照キーの凡例の間の(ある試験から次の試験への)ランダムな交替を使用する。eSDMTは、論文/口頭バージョンと同様に、90秒時間などの所定の時間窓において、抽象記号と特定の桁とを対にする速度(正しい対の回答の数)を測定する。試験は、典型的には毎週行われるが、代わりに、より高い頻度(例えば、毎日)またはより低い頻度(例えば、隔週)で行われてもよい。あるいは、試験は、110を超える記号および参照キーの凡例のより多くのおよび/または進化的バージョンを包含することもできる。記号シーケンスはまた、ランダムに、または任意の他の修飾された予め指定されたシーケンスにしたがって施されることができる。
【0037】
関心のある典型的なeSDMTパフォーマンスパラメータ:
1.正答数
a.90秒間の全正答(CR)の総数(口頭/紙SDMTと同様)
b.時刻0から30秒までの正答数(CR0~30
c.時刻30から60秒までの正答数(CR30~60
d.時刻60から90秒までの正答数(CR60~90
e.時刻0から45秒までの正答数(CR0~45
f.時刻45から90秒までの正答数(CR45~90
g.時刻iからj秒までの正答数(CRi~j)であり、i、jは、1から90秒の間であり、i<jである。
2.エラー数
a.90秒間のエラー(E)の総数
b.時刻0から30秒までのエラー数(E0~30
c.時刻30から60秒までのエラー数(E30~60
d.時刻60から90秒までのエラー数(E60~90
e.時刻0から45秒までのエラー数(E0~45
f.時刻45から90秒までのエラー数(E45~90
g.時刻iからj秒までのエラー数(Ei~j)であり、i、jは、1から90秒の間であり、i<jである。
3.回答数
a.90秒間の全回答(R)の総数
b.時刻0から30秒までの回答数(R0~30
c.時刻30から60秒までの回答数(R30~60
d.時刻60から90秒までの回答数(R60~90
e.時刻0から45秒までの回答数(R0~45
f.時刻45から90秒までの回答数(R45~90
4.正答率
a.90秒間にわたる平均正答率(AR):AR=CR/R
b.時刻0から30秒までの平均正答率(AR):AR0~30=CR0~30/R0~30
c.時刻30から60秒までの平均正答率(AR):AR30~60=CR30~60/R30~60
d.時刻60から90秒までの平均正答率(AR):AR60~90=CR60~90/R60~90
e.時刻0から45秒までの平均正答率(AR):AR0~45=CR0~45/R0~45
f.時刻45から90秒までの平均正答率(AR):AR45~90=CR45~90/R45~90
5.タスク終了時の疲労指数
a.最後の30秒間の速度疲労指数(SFI):SFI60~90=CR60~90/max(CR0~30,CR30~60
b.最後の45秒間のSFI:SFI45~90=CR45~90/CR0~45
c.最後の30秒間の精度疲労指数(AFI):AFI60~90=AR60~90/max(AR0~30,AR30~60
d.最後の45秒間のAFI:AFI45~90=AR45~90/AR0~45
6.最長連続正答シーケンス
a.90秒間の全ての連続正答(CCR)の最長シーケンス内の正答数
b.時刻0から30秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR0~30
c.時刻30から60秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR30~60
d.時刻60から90秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR60~90
e.時刻0から45秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR0~45
f.時刻45から90秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR45~90
7.回答間の時間ギャップ
a.2つの連続する回答間のギャップ(G)時間の連続変数分析
b.90秒間にわたる2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ(GM)時間
c.時刻0から30秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM0~30
d.時刻30から60秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM30~60
e.時刻60から90秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM60~90
f.時刻0から45秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM0~45
g.時刻45から90秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM45~90
8.正答間の時間ギャップ
a.2つの連続した正答間のギャップ(Gc)時間の連続変数分析
b.90秒間にわたる2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM)
c.時刻0から30秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM0~30
d.時刻30から60秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM30~60
e.時刻60から90秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM60~90
f.時刻0から45秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM0~45
g.時刻45から90秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM45~90
9.eSDMT中に取り込まれた微細指運動スキル機能パラメータ
a.90秒にわたって回答を入力しながら、タッチスクリーン接触時間(Tts)、タッチスクリーン接触時間(Dts)と最も近いターゲット桁キーの中心との偏差、および、誤って入力されたタッチスクリーン接触時間(Mts)(すなわち、キーヒットをトリガしない、またはキーヒットをトリガしないが画面上の二次スライドに関連付けられる接触)の連続変数分析
b.時刻0から30秒までのエポック別の各変数:Tts0~30、Dts0~30、Mts0~30
c.時刻30から60秒までのエポック別の各変数:Tts30~60、Dts30~60、Mts30~60
d.時刻60から90秒までのエポック別の各変数:Tts60~90、Dts60~90、Mts60~90
e.時刻0から45秒までのエポック別の各変数:Tts0~45、Dts0~45、Mts0~45
f.時刻45から90秒までのエポック別の各変数:Tts45~90、Dts45~90、Mts45~90
10.単一記号または記号のクラスタによるパフォーマンスの記号固有分析
a.9つの記号のそれぞれの個別のCRおよびそれらの全ての可能なクラスタ化された組み合わせ
b.9つの記号のそれぞれの個別のARおよびそれらの全ての可能なクラスタ化された組み合わせ
c.9つの記号のそれぞれについて個別に記録された回答およびそれらの全ての可能なクラスタ化された組み合わせに対する以前の回答からのギャップ時間(G)
d.9つの記号の誤った置換のタイプを個別に探索し、9桁の回答を個別に探索することによって優先的な不正確な回答を認識するためのパターン分析。
11.学習および認知予備力分析
a.eSDMTの連続実施間のCR(全体的および#9に記載の記号特異的)におけるベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
b.eSDMTの連続実施間のAR(全体的および#9に記載の記号特異的)におけるベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
c.eSDMTの連続実施間の平均GおよびGM(全体的および#9に記載の記号特異的)のベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
d.eSDMTの連続実施間の平均GcおよびGcM(全体的および#9に記載の記号特異的)のベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
e.eSDMTの連続実施間のSFI60~90およびSFI45~90におけるベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
f.eSDMTの連続実施間のAFI60~90およびAFI45~90のベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
g.eSDMTの連続実施間のTtsのベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
h.eSDMTの連続実施間のDtsのベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
i.eSDMTの連続実施間のMtsのベースライン(最初の2回の試験の実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
【0038】
(3)能動的な歩行および姿勢の能力の試験:5UTTおよび2MWT試験
歩行パフォーマンスならびに歩行およびストライドの動態の測定のための、センサベース(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、全地球測位システム[GPS])のコンピュータ実装試験、特に2分間歩行試験(2MWT)および5回Uターン試験(5UTT)。
【0039】
一実施形態では、モバイル装置は、2分間歩行試験(2MWT)を実行するかまたは当該試験からデータを取得するように適合される。この試験の目的は、2分間歩行試験(2MWT)で歩行特徴を取り込むことによって、長距離歩行における困難性、疲労性、または異常パターンを評価することである。データは、モバイル装置から取り込まれる。身体障害の進行または新たな再発の場合、ストライド長およびステップ長の減少、ストライドの持続時間の増加、ストライドおよびステップの非対称性の増加および低い周期性が観察されることができる。歩行中の腕のスイングの動的性も、モバイル装置を介して評価される。対象は、「できるだけ速く、できるだけ長く2分間歩くが、安全に歩く」ように指示される。2MWTは、屋内または屋外で、患者がUターンなしで200メートル以上まっすぐ歩くことができることを確認した場所の平坦な地面で行われる必要がある単純な試験である。対象は、必要に応じて、通常の履物ならびに補助装置および/または矯正器具を着用することができる。試験は、典型的には毎日行われる。
【0040】
特定の目的の典型的な2MWTパフォーマンスパラメータ:
1.歩行速度および痙縮の代わり:
a.例えば2分間で検出された総ステップ数(ΣS)
b.2分以内に停止が検出された場合の総停止回数(ΣRs)
c.2MWT全体の歩行ステップ時間(WsT)持続時間の連続変数分析
d.2MWT全体の歩行ステップ速度(WsV)(ステップ/秒)の連続変数分析
e.2MWT全体のステップ非対称率(あるステップから次のステップまでのステップ持続時間の平均差を平均ステップ持続時間で割ったもの):SAR=平均Δ(WsT-WsTx+1)/(120/ΣS)
f.20秒の各エポックについて検出されたステップの総数(ΣSt,t+20
g.20秒の各エポックにおける平均歩行ステップ持続時間:WsTt,t+20=20/ΣSt,t+20
h.20秒の各エポックにおける平均歩行ステップ速度:WsVt,t+20=ΣSt,t+20/20
i.20秒の各エポックにおけるステップ非対称率:SARt,t+20=平均Δt,t+20(WsT-WsTx+1)/(20/ΣSt,t+20
j.生体力学的モデリングによる歩幅および総歩行距離
2.歩行疲労指数:
a.減速指数:DI=WsV100~120/max(WsV0~20,WsV20~40,WsV40~60
b.非対称指数:AI=SAR100~120/min(SAR0~20,SAR20~40,SAR40~60
【0041】
別の実施形態では、モバイル装置は、5回Uターン試験(5UTT)を実行するかまたは当該試験からデータを取得するように適合される。この試験の目的は、快適なペースで短距離を歩行しながらUターンを行う際の困難性または異常パターンを評価することである。5UTTは、屋内または屋外で平坦な地面で行われる必要があり、患者は、「安全に歩行し、数メートル離れた2つの地点の間を行き来するUターンを5回連続して行う」ように指示される。このタスク中の歩行特徴データ(Uターン中のステップカウント、ステップ持続時間および非対称性の変化、Uターン持続時間、ターン速度およびUターン中の腕振りの変化)は、モバイル装置によって取り込まれる。対象は、必要に応じて、通常の履物ならびに補助装置および/または矯正器具を着用することができる。試験は、典型的には毎日行われる。
【0042】
関心のある典型的な5UTTパフォーマンスパラメータ:
1.完全なUターンの開始から終了までに必要な平均ステップ数(ΣSu)
2.完全なUターンの開始から終了までに必要な平均時間(Tu)
3.平均歩行ステップ持続時間:Tsu=Tu/ΣSu
4.ターン方向(左/右)
5.ターン速度(度/秒)
【0043】
一実施形態では、表1に列挙されたパフォーマンスパラメータから選択された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータが決定される。さらなる実施形態では、表1のパフォーマンスパラメータのうちの少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または少なくとも30個が決定される。さらなる実施形態では、表1のパフォーマンスパラメータのうちの少なくとも3個、さらなる実施形態では少なくとも5個、さらなる実施形態では少なくとも10個、さらなる実施形態では少なくとも15個、さらなる実施形態では少なくとも20個、さらなる実施形態では少なくとも25個、さらなる実施形態では少なくとも30個が決定される。さらなる実施形態では、表1に列挙された全てのパフォーマンスパラメータが決定される。
【0044】
(表1)能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の典型的なパフォーマンスパラメータ
【0045】
しかしながら、本発明の方法によれば、さらなる臨床的、生化学的、または遺伝的パラメータが考慮されることができる。
【0046】
本明細書で使用される「モバイル装置」という用語は、上記の測定のデータセットを取得するのに適した少なくとも1つのセンサおよびデータ記録機器を含む任意のポータブル装置を指す。これはまた、モバイル装置上の圧力測定試験を電子的にシミュレートするためのデータプロセッサおよび記憶ユニット、ならびにディスプレイを必要とすることができる。データプロセッサは、中央処理装置(CPU)および/または1つ以上のグラフィック処理装置(GPU)および/または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つ以上のテンソル処理装置(TPU)および/または1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを備えることができる。さらに、対象データの活動から、モバイル装置自体または第2の装置のいずれかで本発明の方法によって評価されるべきデータセットに記録およびコンパイルされるべきである。想定される特定の設定に応じて、取得されたデータセットをモバイル装置からさらなる装置に転送するために、モバイル装置がデータ送信機器を備えることが必要な場合がある。本発明にかかるモバイル装置として特によく適しているのは、スマートフォン、ポータブルマルチメディア装置またはタブレットコンピュータである。あるいは、データ記録および処理装置を備えた携帯型センサが使用されてもよい。さらに、実行される活動試験の種類に応じて、モバイル装置は、試験のために実行される活動に関する対象のための指示を表示するように適合されるべきである。対象によって実行される特定の想定される活動は、本明細書の他の箇所に記載されており、本明細書に記載されているような能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の試験を包含する。
【0047】
少なくとも1つのパフォーマンスパラメータの決定は、データセットから所望の測定値をパフォーマンスパラメータとして直接導出することによって達成されることができる。あるいは、パフォーマンスパラメータは、データセットからの1つ以上の測定値を統合することができ、したがって、計算などの数学的演算によってデータセットから導出されることができる。典型的には、パフォーマンスパラメータは、自動アルゴリズムによって、例えば、データ処理装置に有形的に組み込まれて測定のデータセットにフィードされると前記データセットからパフォーマンスパラメータを自動的に導出するコンピュータプログラムによって、データセットから導出される。
【0048】
本明細書で使用される「基準」という用語は、決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータとEDSSとの間の相関を確立することを可能にする識別子を指す。基準は、典型的には、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得される(Breiman 2001)。前記訓練データは、典型的には、既知のEDSSを有するMSに罹患している対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットである。基準は、決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータから予測されるEDSSを計算することを可能にするモデル式とすることができる。あるいは、それは、相関曲線またはスコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および予測されるEDSSが導出されることができる少なくとも1つの残差プロットなどの他のグラフ表示であってもよい。回帰モデルは、モバイル装置などのデータ処理装置内の処理ユニットを使用してRFによって上記のように訓練データを分析することによって確立されることができる。したがって、基準は、典型的には、RF分析からのモデル式、スコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットである。
【0049】
決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを基準と比較することは、コンピュータなどのデータ処理装置に実装された自動比較アルゴリズムによって達成されることができる。前記アルゴリズムは、回帰モデルから予測EDSSを導出することを目的とする。これは、例えば、少なくとも1つのパフォーマンスパラメータをモデル式に入力することによって、またはそれを相関曲線もしくは他のグラフ表示と比較することによって、行うことができる。比較の結果、対象におけるEDSSを予測することができる。
【0050】
予測されたEDSSは、その後、対象または医師などの別の人に示される。典型的には、これは、モバイル装置または評価装置のディスプレイに予測EDSSを表示することによって達成される。あるいは、薬物治療または特定の生活様式などの治療のための推奨が、対象または他の人に自動的に提供される。この目的のために、予測されたEDSSは、データベース内の異なるEDSSに割り当てられた推奨と比較される。予測されたEDSSが記憶されたEDSSおよび割り当てられたEDSSのうちの1つと一致すると、予測されたEDSSと一致する記憶された診断への推奨の割り当てにより、適切な推奨が識別されることができる。したがって、典型的には、推奨およびEDSSがリレーショナルデータベースの形態で存在することが想定される。しかしながら、適切な推奨の特定を可能にする他の構成も可能であり、当業者に知られている。
【0051】
典型的には、対象におけるEDSSを予測するための本発明の方法は、以下のように実施されることができる。
【0052】
まず、少なくとも1つのパフォーマンスパラメータが、モバイル装置を使用して前記対象から取得された能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定値の既存のデータセットから決定される。前記データセットは、モバイル装置からコンピュータなどの評価装置に送信されていてもよく、またはデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを導出するためにモバイル装置内で処理されてもよい。
【0053】
第二に、決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータは、例えば、モバイル装置のデータプロセッサによって、または評価装置(例えばコンピュータ)によって実行されるコンピュータ実装比較アルゴリズムを使用することによって、基準と比較される。前記基準は、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得される。比較の結果は、比較に使用される基準に関して評価され、前記評価に基づいて、対象のEDSSが自動的に予測される。
【0054】
第三に、EDSSは、対象または医師などの他の人に示される。
【0055】
本発明はまた、上記に照らして、具体的には、MSに罹患している対象におけるEDSSを予測する方法であって、
a)モバイル装置を使用して、対象によって実行された所定の活動中の能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットを前記対象から取得するステップと、
b)モバイル装置を使用して前記対象から取得された測定のデータセットから決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定するステップと、
c)決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較するステップと、
d)前記対象におけるEDSSを予測するステップと、を含む、方法を企図する。
【0056】
有利には、本発明の基礎となる研究では、MS患者の能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから取得されたパフォーマンスパラメータが、それらの患者のEDSSを予測するためのデジタルバイオマーカーとして使用されることができることが見出された。パフォーマンスパラメータは、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較されることができる。前記データセットは、EDSSを使用する複雑で主観的な試験ではなく、対象が特定の試験を実行する全方位スマートフォン、携帯型マルチメディア装置またはタブレットコンピュータなどのモバイル装置を使用することによって、MS患者から便利な方法で取得されることができる。取得されたデータセットは、その後、デジタルバイオマーカーとして適切なパフォーマンスパラメータについて本発明の方法によって評価されることができる。前記評価は、同じモバイル装置上で実行されることができ、または別個のリモート装置上で実行されることができる。さらに、そのようなモバイル装置を使用することにより、予測されたEDSSに基づく生活様式または治療に関する推奨が、直接、すなわち医師の診療所または病院の救急車で医師の相談なしに患者に提供されることができる。本発明のおかげで、本発明の方法によって決定された実際のパフォーマンスパラメータを使用することにより、MS患者の生活状態が実際のEDSSに対してより正確に調整されることができる。それにより、患者の現在の状態に対してより効率的な薬物治療または呼吸補助などの治療手段が選択されることができる。
【0057】
本発明の方法は、以下のために使用されることができる:
- 疾患状態を評価すること;
- 特に、現実の生活、日常的な状況および大規模で患者を監視すること;
- 生活スタイル、サポート、および/または治療推奨で患者を支援すること;
- 例えば臨床試験中にも薬物有効性を調査すること;
- 治療的意思決定を促進および/または支援すること;
- 病院経営を支援すること;
- リハビリテーション測定管理を支援すること;
- より高密度の認知、運動および歩行活動を刺激するリハビリテーション機器として疾患状態を改善すること
- 健康保険査定および管理を支援すること;および/または
- 公衆衛生管理における決定を支援すること。
【0058】
上記の用語の説明および定義は、以下に記載される実施形態に準用される。
【0059】
以下では、本発明の方法の特定の実施形態を説明する。
【0060】
さらなる実施形態では、前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定は、モバイル装置を使用して実行されている。
【0061】
一実施形態では、前記モバイル装置は、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、携帯型マルチメディア装置、またはタブレットコンピュータに含まれる。
【0062】
さらなる実施形態では、前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定は、運動特性、特に運動パターンもしくは運動タスクを実行するのに必要な時間、または認知タスクを実行する精度、時間もしくは正確さに関する測定を含む。
【0063】
さらなる実施形態では、少なくとも32個のパフォーマンスパラメータが使用される。
【0064】
さらなる実施形態では、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された前記基準は、分析(ある実施形態ではRF分析)からのモデル式、スコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットである。
【0065】
本発明はまた、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、または前記コンピュータプログラムが有形的に組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体も企図し、前記コンピュータプログラムは、データ処理装置またはコンピュータで実行されると上記のような本発明の方法を実行する、命令を含む。具体的には、本開示は、以下をさらに包含する:
- 本明細書に記載されている実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合された少なくとも1つのプロセッサを備える、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- コンピュータロード可能データ構造であって、前記データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合されている、コンピュータロード可能データ構造、
- コンピュータスクリプトであって、前記コンピュータプログラムが、前記プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合されている、コンピュータスクリプト、
- コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するためのプログラム手段を含む、コンピュータプログラム、
- コンピュータが読み取り可能な記憶媒体上に記憶された先行実施形態のプログラム手段を含む、コンピュータプログラム、
- 記憶媒体であって、前記記憶媒体にデータ構造が記憶されており、前記データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークのメイン記憶部および/またはワーキング記憶部にロードされた後で、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合されている、記憶媒体、
- コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶されることができる、または記憶媒体上に記憶されることができる、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品、
- モバイルを使用して対象から取得された圧力測定のデータセットを含む、典型的には暗号化されたデータストリーム信号、および
- モバイルを使用して対象から得られた圧力測定のデータセットから導出された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを含む、典型的には暗号化されたデータストリーム信号。
【0066】
本発明は、さらに、モバイル装置を使用して、MSに罹患している前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定する方法であって、
a)モバイル装置を使用して、前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを導出することと、
b)決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを基準と比較することであって、前記基準が、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得される、比較することと、を含み、
典型的には、少なくとも1つのパフォーマンスパラメータが、前記対象のEDSSを予測するのを助けることができる、方法に関する。
【0067】
本発明はまた、本発明の方法(すなわち、EDSSを予測する方法)のステップと、治療時にMSおよび/またはEDSSの改善が対象において生じる場合に治療応答を判定するか、または治療時にMSおよび/またはEDSSの悪化が対象において生じる場合またはMSおよび/またはEDSSが変化しないままである場合に応答の失敗を判定するさらなるステップと、を含む、MSに対する治療の有効性を判定する方法を包含する。
【0068】
本明細書で使用される「MSに対する治療」という用語は、薬物療法、呼吸補助などを含むあらゆる種類の医学的治療を指す。この用語はまた、生活様式の推奨およびリハビリテーション措置も包含する。典型的には、本方法は、薬物ベースの治療、特にMSの処置に有用であることが知られている薬物を用いた治療の推奨を包含する。そのような薬物は、抗CD20抗体、より典型的には、オクレリズマブを適用する治療とすることができる(Hutas 2008)。さらに、前述の方法は、さらなる実施形態では、推奨される治療を対象に適用する追加のステップを含むことができる。
【0069】
さらに、本発明にしたがって包含されるのは、MSに対する治療の有効性を判定する方法であって、本発明の前述の方法(すなわち、EDSSを予測する方法)のステップと、治療時にMSおよび/またはEDSSの改善が対象において生じる場合に治療応答を判定するか、または治療時にMSおよび/またはEDSSの悪化が対象において生じる場合またはMSおよび/またはEDSSが変化しないままである場合に応答の失敗を判定するさらなるステップと、を含む、方法である。
【0070】
本発明にしたがって言及される「改善」という用語は、全体的な疾患状態またはその個々の症状、特に予測されるEDSSの任意の改善に関する。同様に、「悪化」は、全体的な疾患状態またはその個々の症状、特に予測されるEDSSの悪化を意味する。進行性疾患としてのMSは、典型的には全体的な疾患状態およびその症状の悪化に関連するため、上述した方法に関連して言及される悪化は、疾患の正常な経過を超える予想外のまたは非典型的な悪化である。未変化のMSは、全体的な疾患状態およびそれに伴う症状が疾患の正常な経過の範囲内にあることを意味する。
【0071】
さらに、本発明は、対象のMSを監視する方法であって、本発明の方法(すなわち、EDSSを予測する方法)のステップを所定の監視期間中に少なくとも2回行うことによって、前記疾患が対象において改善するか、悪化するか、または変化しないままであるかを判定することを含む、方法に関する。EDSSが改善する場合、疾患は改善し、EDSSが悪化する場合、疾患は悪化し、EDSSが変化しないままである場合、疾患も同様である。
【0072】
本発明は、プロセッサと、少なくとも1つのセンサと、データベースと、前記装置に有形的に組み込まれ、前記装置上で実行されると本発明の方法を実行する、ソフトウェアと、を備えるモバイル装置に関する。
【0073】
したがって、前記モバイル装置は、データセットを取得することができ、そこからパフォーマンスパラメータを決定するように構成される。さらに、それは、基準との比較を実行し、予測、すなわちEDSSの予測を確立するように構成される。さらに、モバイル装置はまた、典型的には、訓練データに対して少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから基準を取得および/または生成することもできる。モバイル装置が前記目的のためにどのように設計されることができるかについてのさらなる詳細は、本明細書の他の箇所で既に詳細に説明されている。
【0074】
システムは、少なくとも1つのセンサを備えるモバイル装置と、プロセッサおよびデータベースを備えるリモート装置と、前記装置に有形的に組み込まれ、前記装置上で実行されると本発明の方法を実行する、ソフトウェアと、を備え、前記モバイル装置および前記リモート装置が互いに動作可能に連結されている。
【0075】
「互いに動作可能に連結されている」の下で、装置は、一方の装置から他方の装置へのデータ転送を可能にするように接続されることを理解されたい。典型的には、少なくとも対象からデータを取得するモバイル装置が、本発明の方法のステップを実行するリモート装置に接続され、取得されたデータを処理のためにリモート装置に送信することができることが想定される。しかしながら、リモート装置はまた、その適切な機能を制御または監視する信号などのデータをモバイル装置に送信することができる。モバイル装置とリモート装置との間の接続は、同軸、ファイバ、光ファイバ、またはツイストペア、10 BASE-Tケーブルなどの永続的または一時的な物理的接続によって達成されることができる。あるいは、例えば、Wi-Fi、LTE、LTEアドバンストまたはブルートゥースなどの電波を使用する一時的または永続的な無線接続によって達成されてもよい。さらなる詳細は、本明細書の他の箇所に見出すことができる。データ取得のために、モバイル装置は、データ取得のための画面または他の機器などのユーザインターフェースを備えることができる。典型的には、活動測定は、モバイル装置に含まれる画面上で実行されることができ、前記画面は、例えば5.1インチ画面を含む異なるサイズを有してもよいことが理解されよう。
【0076】
さらに、本発明は、MSに罹患している対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットからの少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを使用して前記対象のEDSSを予測するための本発明のモバイル装置またはシステムの使用を企図することが理解されよう。
【0077】
本発明はまた、特に現実の生活、日常的な状況および大規模で患者を監視するための本発明のモバイル装置またはシステムの使用を企図する。
【0078】
さらにまた、生活様式および/または治療推奨を有する患者を支援するための本発明のモバイル装置またはシステムの使用が本発明によって包含される。
【0079】
さらに、本発明は、例えば臨床試験中にも薬物の安全性および有効性を調査するための本発明のモバイル装置またはシステムの使用を企図することが理解されよう。
【0080】
さらに、本発明は、治療的意思決定を促進および/または支援するための本発明のモバイル装置またはシステムの使用を企図する。
【0081】
さらにまた、本発明は、リハビリテーション機器として疾患状態を改善し、病院管理、リハビリテーション措置管理、健康保険査定および管理を支援し、かつ/または公衆衛生管理における決定を支援するための、本発明のモバイル装置またはシステムの使用を提供する。
【0082】
以下に、本発明のさらなる特定の実施形態が列挙される。
【0083】
実施形態1:多発性硬化症(MS)に罹患している対象の総運動スコア(EDSS)を予測する方法であって、
a)前記対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットから少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを決定するステップと、
b)決定された少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを、訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された基準と比較するステップと、
c)前記比較に基づいて対象のEDSSを予測するステップと
を含む、方法。
【0084】
実施形態2:前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定が、モバイル装置を使用して実行されており、ある実施形態では、前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定が、モバイル装置を使用して実行される、実施形態1に記載の方法。
【0085】
実施形態3:前記モバイル装置が、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、携帯型マルチメディア装置、またはタブレットコンピュータに含まれる、実施形態2に記載の方法。
【0086】
実施形態4:前記能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定が、運動特性、特に運動パターンもしくは運動タスクを実行するのに必要な時間、または認知タスクを実行する精度、時間もしくは正確さに関する測定を含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態5:少なくとも32個のパフォーマンスパラメータが使用される、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態6:表1の少なくとも3個、ある実施形態では少なくとも4個、さらなる実施形態では少なくとも6個のパフォーマンスパラメータが決定され、実施形態では表1の少なくとも最初の3個、ある実施形態では最初の4個、さらなる実施形態では最初の6個のパフォーマンスパラメータが決定される、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態7:表1の全てのパフォーマンスパラメータが決定される、実施形態1または2に記載の方法。
【0090】
実施形態8:ステップa)の少なくとも1つのパフォーマンスパラメータが、データ処理装置に有形的に組み込まれた自動アルゴリズムによってデータセットから導出される、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態9:ステップb)において少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを基準と比較することが、データ処理装置に実装された自動比較アルゴリズムによって達成される、実施形態1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態10:訓練データに対して前記少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを用いて(ある実施形態ではランダムフォレスト(RF)分析を使用して)生成されたコンピュータ実装回帰モデルから取得された前記基準が、分析、ある実施形態ではRF分析からのモデル式、スコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットである、実施形態1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態11:コンピュータ実装方法である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
実施形態12:モバイル装置であって、プロセッサと、少なくとも1つのセンサと、データベースと、前記装置に有形的に組み込まれ、前記装置上で実行されると実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法の少なくともステップa)を実行し、ある実施形態では実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法を実行する、ソフトウェアと、を備えるモバイル装置。
【0095】
実施形態13:少なくとも1つのセンサを備えるモバイル装置と、リモート装置とを備えるシステムであって、前記リモート装置が、プロセッサと、データベースと、前記装置に有形的に組み込まれたソフトウェアとを備え、前記ソフトウェアが、前記装置で実行されると実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法を実行し、前記モバイル装置および前記リモート装置が互いに動作可能に連結されている、システム。
【0096】
実施形態14:MSに罹患している対象からの能動的および受動的な歩行および姿勢の能力ならびに認知能力の測定のデータセットからの少なくとも1つのパフォーマンスパラメータを使用して前記対象のEDSSを予測するための、実施形態12に記載のモバイル装置または実施形態13に記載のシステムの使用。
【0097】
本明細書を通して引用された全ての参考文献は、それらの開示内容全体に関して、および本明細書で言及された特定の開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】異なるモデル、すなわちk最近傍(kNN);線形回帰;部分最終二乗(PLS);ランダムフォレスト(RF);および極ランダム化ツリー(XT)によって取得されたEDSS予測結果を示しており、f:モデルに含まれる特徴量、y軸:r(予測値と実績値との相関);上行:試験データセット、下行:訓練データであり、下行では、上のグラフは、「平均」予測、すなわち対象あたりの全ての観測値の平均値に対する予測に関連し、下のグラフは、「全」予測、すなわち全ての個々の観測値に対する予測に関連する。最良の結果は、RFを使用して取得される。
【実施例
【0099】
以下の実施例は、単に本発明を例示するにすぎない。いかなる場合でも、それらは本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0100】
実施例1:多発性硬化症患者においてデジタル技術を使用して遠隔患者監視を行うことの実現可能性を評価するための予想されるパイロット試験(FLOODLIGHT)の結果
試験集団は、以下の組み入れ基準および除外基準を使用することによって選択した:
重要な選択基準:
署名付きインフォームドコンセント様式
治験責任医師の判断により、治験実施計画書を遵守できていること。
年齢18~55歳以上
MSの確定診断を有し、改訂されたMcDonald 2010基準にしたがって確認される
0.0以上5.5以下のEDSSスコア
体重:45~110kg
妊娠可能な女性の場合:試験期間中に許容可能な受胎調節方法を使用する旨の合意
重要な除外基準:
治験責任医師の裁量による重症患者および不安定患者
登録前の最後の12週間における投薬レジメンの変更または疾患修飾療法(DMT)の切り替え
妊娠中もしくは授乳中、または試験中に妊娠することを意図している
【0101】
この研究の主な目的は、コンプライアンスレベル(%)として定量化されたスマートフォンとスマートウォッチベースの評価の順守を示し、満足度アンケートを使用して、スマートフォンおよびスマートウォッチの評価スケジュールと日常生活への影響について、患者および健康管理者からフィードバックを取得することである。さらに、さらなる目的が対処され、特に、Floodlight試験を使用して行われた評価と従来のMS臨床転帰との間の関連性が判定され、Floodlight測定が疾患活動性/進行のマーカーとして使用されることができ、経時的なMRIおよび臨床転帰の変化に関連するかどうかが確立され、Floodlight試験バッテリがMSを有する患者と有しない患者との間、およびMSを有する患者の表現型間で区別できるかどうかが判定された。
【0102】
能動的試験および受動的監視に加えて、以下の評価をスケジューリングされた各診療所訪問で実施した:
・SDMTの口頭バージョン
・運動機能および認知機能の疲労尺度(FSMC)
・時限25フィート歩行試験(T25-FW)
・ベルグバランス尺度(BBS)
・9孔ペグ試験(9HPT)
・患者健康アンケート(PHQ-9)
・MSのみを有する患者:
・脳MRI(MSmetrix)
・総合障害度評価尺度(EDSS)
・患者決定疾患ステップ(PDDS)
・MSIS-29のペンおよび紙バージョン
【0103】
診療所での試験を実施している間、患者および健常対照は、スマートフォンおよびスマートウォッチを携帯/装着して、診療所での測定とともにセンサデータを収集するように求められた。
【0104】
要約すると、試験の結果は、患者がスマートフォンおよびスマートウォッチベースの評価に非常に関与していることを示した。さらに、試験とベースラインで記録された診療所の臨床転帰測定との間には相関関係があり、これは、スマートフォンベースのFloodlight試験バッテリが現実世界のシナリオでMSを継続的に監視するための強力なツールになることを示唆している。さらに、歩行中およびUターン中のターン速度のスマートフォンに基づく測定は、EDSSと相関するように見えた。
【0105】
実施例2:機械学習アルゴリズムを使用したFloodlight試験の分析
52人の対象からのFloodlight POC試験からのデータが、kNN、線形回帰、PLS、RF、およびXTによって調査された。合計で、7つの試験からの889個の特徴がモデル構築中に評価された。この予測に使用された試験は、対象が所与の時間スパンにおいて可能な限り多くの記号を数字に一致させなければならない記号数字モダリティ試験(SMDT);対象が親指と人差し指を使用して、所与の期間内に画面上に表示される可能な限り多くのトマトを絞らなければならない、ピンチング試験;対象が画面上の形状をトレースしなければならない描画A形状試験;対象が30秒間直立しなければならない立位バランス試験;対象が短いスパンを歩いた後に180度ターンしなければならない5回Uターン試験;対象が2分間歩行しなければならない2分間歩行試験;最後に歩行の受動的監視であった。最良の相関を有するモデルを特定するために、異なる技術によって構築されたモデルが機械学習アルゴリズムによって調査された。図1は、多発性硬化症を示す総合障害度評価尺度値を予測するための分析モデル、特に回帰モデルの相関プロットを示している。図1は、特に、それぞれの分析モデルに含まれる特徴の数の関数fとして、特に左から右にkNN、線形回帰、PLS、RF、およびXTについて、各回帰器タイプについての予測されたターゲット変数と真のターゲット変数との間のスピアマン相関係数rを示している。上行は、試験データセットに対して試験されたそれぞれの分析モデルの性能を示している。下行は、訓練データに対して試験されたそれぞれの分析モデルの性能を示している。最良に機能する回帰モデルは、円および矢印で示される0.77のr値を有する、モデルに含まれる32個の特徴を有するRFであることが分かった。以下の表は、RFアルゴリズム(最良相関)からの特徴、特徴が導出された試験、特徴およびランキングの簡単な説明を示している。
【0106】
【0107】
これらの特徴は、試験対象からのデータおよびRF分析を使用してEDSS値を識別するために使用される。
【0108】
参考文献
図1
【国際調査報告】