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特表2022-550777バクテリオファージ粒子を精製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】バクテリオファージ粒子を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20221128BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20221128BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221128BHJP
【FI】
C12N7/02
C12M1/26
C12N7/00
A61P31/04
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519703
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 US2020053602
(87)【国際公開番号】W WO2021067477
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/908,943
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517317347
【氏名又は名称】アダプティブ ファージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Adaptive Phage Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファクラー, ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】メリル, カール
(72)【発明者】
【氏名】ハイダー, ジャラール
(72)【発明者】
【氏名】ダン, ヴィエット
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB13
4B029DG08
4B029HA05
4B029HA06
4B065AA26X
4B065AA98X
4B065BD14
4B065BD15
4B065BD18
4B065BD21
4B065BD39
4B065CA44
4B065CA47
4B065CA54
4B065CA55
4B065CA56
4B065CA57
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA05
4C087BC83
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZB35
(57)【要約】
例えば、粗製ファージ調製物(例えば、細菌細胞培養物中のファージの増殖から生じる溶解物)から生きているファージを回収する方法が開示される。上記方法は、「ユニバーサル」;すなわち、広い範囲のファージ種および株の精製に適用可能であり得る。上記方法から生じるファージ生成物は、治療用途における使用のために、受容可能に低いエンドトキシン力価(例えば、500EU/ml未満)および十分に高いファージ力価(例えば、>1×10 PFU/ml)を有し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きているファージを粗製ファージ調製物から回収する方法であって、ここで前記方法は、
a)前記粗製ファージ調製物を、サイズ排除フィルターを含む能動的濾過システムに添加する工程であって、ここで前記フィルターは、前記粗製ファージ調製物内に含まれるファージのサイズより小さい孔サイズを含む工程;
b)前記フィルターに一連の緩衝液を通過させる工程であって、ここで前記一連の緩衝液は、
a)イオン性のタンパク質相互作用を破壊する緩衝液;
b)疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液;および
c)前記ファージを沈殿させる緩衝液
を含む、工程;ならびに
c)前記ファージを前記フィルターから回収する工程であって、ここで回収されたファージは生きている、工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記孔サイズは、100kDa未満、150kDa未満、200kDa未満、250kDa未満、300kDa未満、350kDa未満、400kDa未満、450kDa未満、500kDa未満、550kDa未満、600kDa未満、650kDa未満、700kDa未満、750kDaa未満、または800kDaa未満のサイズの物質の通過を許容する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイズ排除フィルターは、中空線維フィルターである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記イオン性のタンパク質相互作用を破壊する緩衝液は、高イオン強度緩衝液を含む;
(b)前記疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液は、界面活性剤および/または非変性有機溶媒を含む;ならびに
(c)前記ファージを沈殿させる緩衝液は、硫酸アンモニウム緩衝液である、
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記高イオン強度緩衝液は、少なくとも250mM、少なくとも300mM、少なくとも350mM、少なくとも400mM、少なくとも450mM、少なくとも500mM、少なくとも550mM、少なくとも600mM、少なくとも650mM、少なくとも700mM、少なくとも750mM、少なくとも800mM、少なくとも850mM、少なくとも900mM、または少なくとも950mM、1Mの塩を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩は、NaClおよび/またはMgClである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤および/または双性イオン界面活性剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液は、
(i)Triton X-100;
(ii)Triton X-100および第2の界面活性剤;
(iii)Triton X-100および高イオン強度溶液;
(iv)Triton X-100およびカオトロピック剤;または
(v)カオトロピック剤、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液は、
(i)双性イオン界面活性剤および高強度イオン性溶液;または
(ii)双性イオン界面活性剤およびカオトロピック剤、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、ステップ2)において前記フィルターに緩衝液a)、b)およびc)のうちのいずれかまたは全てを通過させる工程の間に1またはこれより多くの洗浄ステップをさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記緩衝液a)、b)およびc)は、ステップ2)において任意の順序で前記フィルターに通される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記能動的濾過システムは、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)システムである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、1~3000sec-1、2000~4000sec-1、3000~5000sec-1、4000~6000sec-1、6000~8000sec-1、1000~4000sec-1、2000~5000sec-1、3000~6000sec-1、4000~7000sec-1、5000~8000sec-1、1000~6000sec-1、2000~6000sec-1、3000~6000sec-1、4000~6000sec-1、5000~7000sec-1、6000~8000sec-1、2000sec-1未満、3000sec-1未満、4000sec-1未満、5000sec-1未満、6000sec-1未満、7000sec-1未満または8000sec-1未満の範囲に及ぶ剪断速度で行われる、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、1.5psi~2.0psi、2.0psi~2.5psi、2.5psi~3.0psi、2.5psi~3.5psi、2.5psi~4.0psi、2.5psi~4.5psi、2.5psi~5.0psi、3.0psi~3.5psi、3.0psi~4.0psi、3.0psi~4.5psi、または3.0psi~5.0psiの範囲に及ぶ膜間差圧(TMP)において、1.5psi、2.0psi、2.5psi、3.0psi、3.5psi、4.0psi、4.5psi、または5psiにおいて行われる、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、DNAまたはRNAを分解し得るエンドヌクレアーゼを添加する工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記エンドヌクレアーゼは、DNAase、RNAaseまたはベンゾナーゼから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記エンドヌクレアーゼは、前記粗製ファージ調製物に添加される、請求項15または16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記エンドヌクレアーゼは、溶液中の前記回収されたファージに添加される、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
生きている前記回収されたファージは、遠心分離工程にさらに供される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記粗製ファージ調製物を予備処理して、大きな夾雑物を除去する予備処理ステップをさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記予備処理工程は、遠心分離、ならびに/または多孔性フィルター膜もしくは他のサイズ排除フィルターおよび/もしくはデプスフィルターを経る濾過、または灌流技術を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
生きている前記回収されたファージは、1EU/ml未満、100EU/ml未満、200EU/ml未満、300EU/ml未満、400EU/ml未満、500EU/ml未満、600EU/ml未満、700EU/ml未満、800EU/ml未満、900EU/ml未満、または1000EU/ml未満のエンドトキシン力価を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
生きている前記回収されたファージは、0.5×10 PFU/mlを超える、1×10 PFU/mlを超える、0.5×10 PFU/mlを超える、または1×10 PFU/mlを超える力価を有する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
生きている前記回収されたファージにおける宿主細胞タンパク質レベルは、100μg/mL未満であるかまたはこれに等しい、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、生きている前記回収されたファージの緩衝液と、患者への投与に適した緩衝液とを交換するステップをさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記緩衝液は、IV投与に適している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法に従って調製される、生きている回収されたファージ。
【請求項28】
前記ファージは、薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、緩衝液および/または希釈剤中に提供される、請求項27に記載の生きている回収されたファージ。
【請求項29】
請求項27または28に記載の生きている回収されたファージでそれを必要とする患者を処置する方法。
【請求項30】
前記患者は、細菌感染症に罹患している、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
生きている前記回収されたファージは、予防的に投与される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記患者は、E.coli、「ESKAPE」病原体またはMDR細菌による感染症に罹患している、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
産業目的のための、請求項27または28に記載の生きている回収されたファージを使用する方法。
【請求項34】
前記産業目的は、限定されないで、環境消毒(例えば、建造物給水システム、病室の中、および/または他の公衆が触れる表面)、表面、床およびカウンター(例えば、食品の準備をするエリアまたは医療施設の中)、医療デバイス(ステント、カテーテル、挿管用チューブ、または換気装置が挙げられるが、これらに限定されない)、他の水分がありかつ温かい環境(例えば、シャワー、送水管および下水管)、水冷却または加熱システム(例えば、冷却塔)、海洋工学システム(例えば、海洋石油・ガス産業のパイプライン)、パイプ、船体上に、ハンドウォッシュ、移植用医療デバイス、産業プロセスにおいて使用される機械類の部品、暗渠、汚水処理施設において使用されるプール、汚水処理施設、産業用液体取り扱い機械類、身体、医療プロセス、農業プロセス、および/または機械類内の傷のコーティングとして、細菌の除去および/またはその増殖の防止を含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、生きているファージを、例えば、粗製ファージ調製物(例えば、細菌細胞培養物中のファージの増殖から生じる溶解物)から回収する方法に関する。上記方法は、「ユニバーサル」;すなわち、広い範囲のファージ種および株の精製に適用可能であり得る。
【背景技術】
【0002】
関連技術の考察
以下の考察において、ある種の物品および方法が、背景および緒言部の目的で記載される。先行技術の「自認」として解釈されるべきものは、本明細書には何も含まれていない。出願人は、適切である場合、本明細書で言及される物品および方法が、適用可能な法律の条項の下で、先行技術を構成しないことを示す権利を明示的に留保する。
【0003】
多剤耐性(MDR)細菌は、驚くべき速度で出現している。現在では、米国で毎年少なくとも200万例の感染症が、MDR生物によって引きおこされ、およそ23,000の死亡例をもたらすと予測される。さらに、遺伝子工学および合成生物学はまた、さらなる高毒性微生物の生成をもたらし得ると考えられる。
【0004】
例えば、Staphylococcus aureusは、皮膚・軟部組織感染症(skin and soft tissue infections)(SSTI)、肺炎、壊死性筋膜炎、および血流の感染症(すなわち、菌血症)を引きおこし得るグラム陽性細菌である。メチシリン耐性S.aureus(「MRSA」)は、臨床現場における大きな懸念であるMDR生物である。なぜならMRSAは、80,000例を超える侵襲性の感染症の原因であり、関連死は12,000例に近く、病院獲得性感染症の主要原因であるからである。さらに、世界保健機関(WHO)は、MRSAを国際的に懸念される生物として特定している。
【0005】
急激に起こりかつ拡がる毒性微生物および抗微生物耐性の潜在的脅威に鑑みて、細菌感染症に対する代替の臨床処置が開発されている最中である。MDR感染症に関する1つのこのような潜在的処置は、ファージの使用を包含する。バクテリオファージ(「ファージ」)は、特異的細菌宿主の内部で複製しかつその細菌宿主を殺滅し得る多様なウイルスセットである。抗細菌剤としてのファージ利用の可能性は、20世紀始め頃にそれらが最初に単離された後に調査され、それらは、いくつかの国では抗細菌剤として臨床的に使用されており、ある種の成功を収めている。これにもかかわらず、ファージ療法は、ペニシリンの発見後に米国で大部分は中止され、ごく近年になって、ファージベースの治療における興味が新たになっている。
【0006】
ファージの成功裡の治療使用は、患者(例えば、MDR細菌病原体による感染症に罹患している患者)への投与に適した、それによって、必然的に、高いファージ力価(すなわち、高ファージ含有量)を有する実現可能なファージ組成物の生成に依拠する。治療適用のためにこのような多数のファージを生成すること(例えば、「増幅」)は、細菌宿主細胞培養物中での増殖を必要とする。しかしこれは、上記培養物から得られるファージ溶解物が、治療用途が意図された組成物における使用と不適合である宿主細胞物質(例えば、宿主細胞タンパク質(HCPs)、細胞壁物質および残留DNA(rDNA))を含むことを意味する。特に、宿主細胞壁物質の中には、グラム陰性細菌(例えば、Escherichia coli宿主細胞)の場合には、エンドトキシン(リポポリサッカリド(LPS)およびリポグリカンとしても公知)が存在し、これは、患者において顕著な毒性および病気を引きおこし得るので、治療用組成物から(例えば、500または1000EU/ml未満のレベルへと)実質的に除去されなければならない。すなわち、ファージは、実質的に精製されているか、または別の方法で宿主細胞物質および他の夾雑物が「除去されて」いる「ファージ生成物」を生成するように、一定の手順に供されなければならず、その結果、それは、治療用組成物として使用され得るか、または使用に適合されなければならない。
【0007】
以前は、ファージの精製は、イオン交換クロマトグラフィーおよび/または塩化セシウム(CsCl)勾配に対する等密度遠心分離によって行われてきた。イオン交換クロマトグラフィーは、イオン交換樹脂に対する生体分子の親和性に基づいて、生体分子(例えば、ファージ)の分離を促進する(Andriaenssens EMら, Virology 434(2):265-270, 2012)。この手順は、荷電されたタンパク質では十分に機能するが、各特有のファージに、そのファージを捕捉および溶離するために必要とされるクロマトグラフィー条件の最適化が必要である。よって、精製のためのこのアプローチは、各ファージ種または株に関する条件を最適化するために必要な作業量を考えれば、治療用ファージ組成物の商業生産に関して扱いづらくなっており、これは、ファージ増幅ステージからの緩衝液/増殖培地条件のバッチ間変動によってさらに複雑にされ得る。他方で、CsCl密度勾配に対する等密度遠心分離は、このようなトラブルシューティングを必要としないが、時間がかかり、容易に拡大縮小可能でなく、他の問題を提示する。例えば、エンドトキシンおよびHCPは、ファージに結合し得、ファージの多数のバンドおよび力価の喪失を生じる。出願人はまた、いくつかのファージ種および株が、この精製プロセスを切り抜けられないことを観察した。
よって、ファージ療法における使用が意図されたファージを回収または調製するための実行可能な代替の手順を開発することが必要である。好ましくは、このような手順は、「ユニバーサル」;すなわち、広い範囲のファージ種および株の精製に適用可能である。さらに、代替の手順は、好ましくは、比較的急速な様式で、大容積を処理し得る回収システム(例えば、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)システム(クロスフローフィルトレーションとしても公知)を含む、連続または単一プロセス濾過タイプのシステム)における使用に適切である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Andriaenssens EMら, Virology 434(2):265-270, 2012
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
この要旨は、単純化された形態(これら形態は、以下の詳細な説明においてさらに記載される)において概念の選択を導入するために提供される。この要旨は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することが意図されるのでもなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることが意図されるのでもない。特許請求される主題の他の特徴、詳細、有用性および利点は、任意の添付の図面において図示され、添付の特許請求の範囲において定義されるそれら局面を含め、以下の書面による詳細な説明から明らかになる。
【0010】
出願人は、有利なことには、ファージの比較的限られた粒度範囲(すなわち、大部分の種および株のファージ粒子は、長さ24~200nmのサイズの範囲に及ぶ)から利益を得、従って、ユニバーサルであり得るか、または少なくとも、治療上重要なかなりの数のファージの精製に適用可能であり得る精製法を実証し得るファージ回収法を特定および開発しようとした。よって、本発明の方法は、エンドトキシン、HCPおよび残留宿主細胞DNAのような不要な物質がフィルターを通過して自由に洗浄され、その結果、それらが除去され得ると同時に、ファージ粒子を保持するように選択的フィルターを使用する。しかし、これは、不要な物質(すなわち、夾雑物)を上記ファージ粒子から解離し、不要な物質(特に、それらの疎水性脂質領域を通じて、大きな凝集物(ミセル)を形成することが公知であるエンドトキシン)のいかなる大きな凝集物をも、ファージを実質的に損傷するまたは変性させる(すなわち、その結果、生きているファージがほとんどまたは全く存在しない)ことなく破壊する(脱凝集する)ためのプロセスの同定に依拠した。本明細書中以降に記載され、実施例において例示されるように、出願人は実際に、現在まで、試験した全てのファージ種および株で成功した、培養物中の大規模ファージ増幅後に、宿主細胞物質(特に、エンドトキシン)からファージを信頼性高く回収し得るファージ回収法を特定した。
【0011】
本発明は、生きているファージを粗製ファージ調製物から回収する方法であって、ここで上記方法は、
1)上記粗製ファージ調製物を、サイズ排除フィルターを含む能動的濾過システムに添加する工程であって、ここで上記フィルターは、上記粗製ファージ調製物内に含まれるファージのサイズより小さい孔サイズを含む工程;
2)上記フィルターに一連の緩衝液を通過させる工程であって、ここで上記一連の緩衝液は、
a)イオン性のタンパク質相互作用を破壊する緩衝液;
b)疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液;および
c)上記ファージを沈殿させる緩衝液
を含む、工程;ならびに
3)上記ファージを上記フィルターから回収する工程であって、ここで上記回収されたファージは生きている、工程、
を包含する方法に関する。
【0012】
上記方法は、能動的濾過システム(例えば、連続濾過システム(例えば、TFF))において行われるために適している。
【0013】
用語、本発明の方法から生じる「ファージ生成物(phage product)」は、治療適用のために受容可能に低いエンドトキシン力価(例えば、500EU/ml未満)および高いファージ力価(例えば、1×10 PFU/mlより大きい)を有し得る。よって、上記ファージ生成物は、細菌感染症を処置するためのファージ療法における使用のためのファージを含む組成物の使用に、またはその調製に適切であり得る。
【0014】
従って、本発明はまた、本発明の方法に従って調製されるファージ生成物に関する。
【0015】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って、必要に応じて、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、緩衝液および/または希釈剤と組み合わせて調製されるファージ生成物を含む治療用組成物に関する。
【0016】
さらになお、本発明は、患者における細菌感染症のファージ療法の方法(特に、患者における細菌感染症を処置する方法)であって、上記方法は、本発明の方法に従って精製されるファージ、または上記で規定されるとおりの治療用組成物を上記患者に投与する工程を包含する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
以下の定義は、以下の書面による説明において使用される具体的用語に関して提供される。
【0018】
定義
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの、ある(a)」、「1つの、ある(an)」、および「上記、この、その(the)」は、文脈が別段明確に指示しなければ、複数形への言及を含む。また、当業者によって理解されるように、用語「ファージ(phage)」は、単一のファージまたは1より多くのファージに言及するために使用され得る。
【0019】
本発明は、本発明の構成要素を「含む、包含する(comprise)」ことができる(制限のない)または「から本質的になる(consist essentially of)ことができる。本明細書で使用される場合、「含む、包含する」とは、記載される要素、または構造もしくは機能におけるそれらの等価物に加えて、記載されていない任意の他の要素を意味する。用語「有する(having)」および「含む、包含する、が挙げられる(including)」はまた、文脈が別段示唆しなければ、制限のないものとして解釈されるべきである。
【0020】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」とは、当業者によって決定されるとおりの特定の値に関する受容可能な範囲内を意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるか(例えば、測定システムの制限)に一部依存する。例えば、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、およびより好ましくはさらに1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に、生物学的システムまたはプロセスに関して、その用語は、値の規模、好ましくは5倍以内、およびより好ましくは2倍以内を意味し得る。別段述べられなければ、用語「約」が、その特定の値の許容可能な誤差範囲(例えば、±1~20%、好ましくは±1~10%およびより好ましくは±1~5%)以内を意味する。なおさらなる実施形態において、「約」は、±5%を意味することが理解されるべきである。
【0021】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各々の間に入る値、およびその述べられた範囲の中の任意の他の述べられたもしくは間に入る値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲の中に含まれ得、また、述べられた範囲における任意の具体的に排除される境界に従って、本発明内に包含される。その述べられた範囲が、その境界のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれる境界の両方いずれも排除する範囲はまた、本発明に包含される。
【0022】
本明細書で記載される全ての範囲は、端点を含む(2つの値の「間の(between)」範囲を記載するものを含む)。「約」、「概して(generally)」、「実質的に(substantially)」、「およそ」などのような用語は、それが絶対ではないが、先行技術上では読んで理解されないように、用語または値を修飾するとして解釈されるべきである。このような用語は、それら用語が当業者によって理解されるように、状況およびそれらが修飾する用語によって定義される。これは、少なくとも、値を測定するために使用される所定の技術に関する予測される実験誤差、技術的誤差、および機器の誤差の程度を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「および/または(and/or)は、2またはこれより多くの項目のリストの中で使用されるとき、列挙された特徴のうちのいずれか1つが存在し得るか、または列挙された特徴のうちの2もしくはこれより多くの任意の組み合わせが存在し得ることを意味する。例えば、組成物が、特徴A、B、および/またはCを含むと記載される場合、上記組成物は、Aの特徴のみ;Bのみ; Cのみ;AおよびBの組み合わせ;AおよびCの組み合わせ;BおよびCの組み合わせ;またはA、B、およびCの組み合わせを含み得る。
【0024】
用語「バクテリオファージ(bacteriophage)」または「ファージ(phage)」とは、当業者によって理解されるように、適切な宿主細胞、すなわち、細菌宿主細胞の中でのみ複製する非細胞性感染性因子をいう。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ファージ療法(phage therapy)」とは、細菌感染症または細菌が引き起こす疾患を処置するための任意の療法をいい、この療法は、処置を必要とする被験体(例えば、患者)に、細菌に感染させる、これを殺滅するかまたはその増殖を阻害するために使用され得る1またはこれより多くの治療用組成物を投与することを包含し得る。その治療用組成物は、1またはこれより多くの生きているファージを抗細菌剤として含み(例えば、1つのファージ株またはファージ「カクテル」を含む組成物)、1より多くの抗生物質、1もしくはこれより多くの殺菌剤、および/または1もしくはこれより多くの他の治療用分子(例えば、殺菌活性を有する低分子または生物製剤)を含むさらなる治療用組成物をさらに含み得るか、または別の方法でそのさらなる治療用組成物との組み合わせにおいて投与され得る。1より多くの治療用組成物がファージ療法に関与する場合、上記組成物は、異なる宿主範囲を有し得る(例えば、1つは、広い宿主範囲を有していてもよく、1つは狭い宿主範囲を有していてもよく、および/または上記組成物のうちの1もしくはこれより多くは、互いと相乗効果的に作用してもよい)。さらに、当業者によって理解されるように、ファージ療法において使用される治療用組成物はまた、代表的には、種々の従来の薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、緩衝液、および/または希釈剤から選択される不活性成分の範囲を含む。用語「薬学的に受容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、生物学的システム(例えば、細胞、細胞培養物、組織、または生物)と適合性の非毒性物質をいうために使用される。薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、緩衝液、および/または希釈剤の例は、当業者が精通しており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(最新版), Mack Publishing Company, Easton, Paに見出され得る。例えば、薬学的に受容可能な賦形剤としては、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化物質、結合剤、安定化剤、保存剤、増量剤、吸着剤、消毒剤(disinfectant)、界面活性剤、糖アルコール、ゲル化剤または粘性増強添加剤、矯味矯臭剤、および着色剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なキャリアとしては、高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカリド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、トレハロース、脂質凝集物(例えば、油滴またはリポソーム)、および不活性ウイルス粒子が挙げられる。薬学的に受容可能な希釈剤としては、水および生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
用語「能動的濾過システム(active filtration system)」とは、濾過されるべき材料(すなわち、供給流体)が、一定のまたは変動する印加圧の下で上記フィルターと接触し、重力下で単に濾過されるのではない(すなわち、その結果、供給流体は、そのフィルターを通して「押し出される」)濾過システムをいうこととして理解されるべきである。代表的には、能動的濾過システムは、適切な所望の圧力において供給物質を提供するためにポンプを含む。能動的濾過システムの特定の例は、連続濾過システムとして当業者に公知である。本発明の方法は、特に、連続濾過システムにおいて行われることに十分に適しているが、バッチ式の能動的濾過システムがまた、使用され得る。
【0027】
用語「連続濾過システム(continuous filtration system)」とは、その供給が連続してフィルターの「前方に」再循環され、任意の「フィルターケーク」(これは、フィルターを経る通過を遮断し得る)を連続して「洗い流す」ように配列される濾過システムをいうこととして理解されるべきである。このようなシステムの特定の例としては、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)システム(クロスフローフィルトレーションシステムとしても公知)が挙げられる。TFFシステムは、代表的には、背圧制御(BPC)バルブからのいくらかの背圧で操作され、この圧は、供給流体を、フィルターを経て夾雑物(これは、「透過物(permeate)」または「廃棄物」を形成する)とともに押し出す。フィルターの前方に残っている供給流体は、再循環される(そして所望であれば、新たな供給流体とともに添加される)。上記BPCバルブは、調節され(すなわち、圧を増大または減少させ)て、物質がTFFシステムを経て処理されるにつれて、変動を補償し得る。
【0028】
本発明は、ファージ療法における使用のためのファージを含む組成物の調製における使用に適した、生きているファージを回収する方法に関する。上記方法は、「ユニバーサル」;すなわち、広い範囲のファージ種および株の回収に適用可能であり得る。
【0029】
より詳細には、本発明は、生きているファージを粗製ファージ調製物から回収する方法であって、ここで上記方法は、
1)上記粗製ファージ調製物を、サイズ排除フィルターを含む能動的濾過システムに添加する工程であって、ここで上記フィルターは、上記粗製ファージ調製物内に含まれるファージのサイズより小さい孔サイズを含む工程;
2)上記フィルターに一連の緩衝液を通過させる工程であって、ここで上記一連の緩衝液は、
a)イオン性のタンパク質相互作用を破壊する緩衝液;
b)疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液;および
c)前記ファージを沈殿させる緩衝液;
を含む、工程;ならびに
3)上記ファージを上記フィルターから回収する工程であって、ここで上記回収されたファージは生きている、工程、
を包含する方法に関する。
【0030】
上記粗製ファージ調製物は、代表的には、細菌細胞培養物中のファージ(例えば、ファージ「ストック」またはファージストックのライブラリーから得られるおよび/または選択されるファージ)の増幅から生じる溶解物である。細菌細胞培養物中のファージのこのような増幅は、例えば、適切な細菌宿主(例えば、E.coli細菌(EcoIII))の小規模または大規模の液体培養物を含む、当業者に公知の標準的技術(例えば、Sambrook J ら, Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Lab. Press, Plainview, NYに記載される標準的技術)のうちのいずれかに従って行われ得る。しかし、本発明の回収方法は、大規模培養物(すなわち、「大バッチ増幅」)に適しておりかつこれが意図される。上記粗製ファージ調製物は、清澄プロセス(例えば、大きな細胞デブリを除去する遠心分離)および/または多孔性フィルター膜(例えば、0.22μM)もしくは他のサイズ排除フィルターおよび/またはデプスフィルターを経る濾過で、ならびに/あるいは1もしくはこれより多くの灌流技術(例えば、当業者に明らかなもの)を使用することによって、大きな夾雑物を除去するために予備処理され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記粗製ファージ調製物中のファージは、治療上重要なファージ;すなわち、ファージ療法における使用に適したファージである。従って、例えば、上記粗製ファージ調製物中のファージは、深刻な健康上の脅威を引きおこす細菌病原体(E.coli、「ESKAPE」病原体(すなわち、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumonia、Acinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacter sp)が挙げられるが、これらに限定されない)および/またはMDR細菌(すなわち、多数の抗細菌薬物、例えば、抗生物質に耐性を示す細菌)(メチシリン耐性S.aureus(MRSA)、バンコマイシン耐性Enterococci(VRE)、ならびにセフトリアキソンおよびフルオロキノロンに耐性の(ESBL)生成Enterobacteriaceaeが挙げられるが、これらに限定されない)による感染症に罹患している患者のファージ療法における使用に適したファージであり得る。
【0032】
上記方法のステップ1)において、上記粗製ファージ調製物は、サイズ排除フィルターを含む能動的濾過システムに添加される。適切なサイズ排除フィルターは、当業者に公知であり、例えば、ポリマー膜および線維性の膜、モレキュラーシーブおよび中空線維フィルター(例えば、改変ポリエーテルスルホン(mPES)中空線維フィルター)を含むフィルターが挙げられる。上記サイズ排除フィルターは、上記粗製ファージ調製物中に存在するファージ粒子を保持する。いくつかの好ましい実施形態において、上記サイズ排除フィルターは、好ましくは、少なくとも100kDa、より好ましくは少なくとも150kDa、200kDa、250kDaもしくは300kDa、さらにより好ましくは少なくとも350kDaもしくは400kDa、および最も好ましくは少なくとも450kDaもしくは500kDaの分子量を有する粗製ファージ調製物中に存在する物質を保持するように選択される。言い換えると、上記サイズ排除フィルターは、好ましくは、100kDa未満、より好ましくは150kDa、200kDa、250kDaもしくは300kDa未満、さらにより好ましくは350kDaもしくは400kDa未満、および最も好ましくは450kDaもしくは500kDa未満の夾雑物物質が、上記フィルターを通過し、それによって、上記粗製ファージ調製物から除去されて、濃縮されたファージ調製物を生成することを可能にするように選択される。従って、いくつかの好ましい実施形態において、上記サイズ排除フィルターは、約100~約500kDaの範囲の分子量カットオフ(MWCO)を有するものである。従って、このようなサイズ排除フィルターは、100kDa未満、150kDa未満、200kDa未満、250kDa未満、300kDa未満、350kDa未満、400kDa未満、450kDa未満、500kDa未満、550kDa未満、600kDa未満、650kDa未満、700kDa未満、750kDa未満、または800kDa未満のサイズの物質の通過を可能にする孔サイズで提供され得る。
【0033】
実施例において示されるように、試験を行った剪断速度は、<3000 sec-1を維持した。この剪断速度は、より高くてもよく、好ましい剪断速度は、6000 sec-1以下である。好ましい実施形態において、上記剪断速度は、1~3000 sec-1、2000~4000sec-1、3000~5000sec-1、4000~6000sec-1、6000~8000sec-1、1000~4000sec-1、2000~5000sec-1、3000~6000sec-1、4000~7000sec-1、5000~8000sec-1、1000~6000sec-1、2000~6000sec-1、3000~6000sec-1、4000~6000sec-1、5000~7000sec-1、6000~8000sec-1、2000sec-1未満、3000sec-1未満、4000sec-1未満、5000sec-1未満、6000sec-1未満、7000sec-1未満、または8000sec-1未満の範囲に及ぶ。
【0034】
また、実施例において示されるように、膜間差圧(TMP)は、2.5psiに設定され、5psiを超えない。好ましい実施形態において、上記TMPは、1.5psi~2.0psi、2.0psi~2.5psi、2.5psi~3.0psi、2.5psi~3.5psi、2.5psi~4.0psi、2.5psi~4.5psi、2.5psi~5.0psi、3.0psi~3.5psi、3.0psi~4.0psi、3.0psi~4.5psi、または3.0psi~5.0psiの範囲に及ぶ。さらに好ましい実施形態において、上記psiは、1.5psi、2.0psi、2.5psi、3.0psi、3.5psi、4.0psi、4.5psi、または5psiに設定される。
【0035】
上記方法のステップ2)において、一連の緩衝液は、フィルターを通過する。上記緩衝液は、実質的にファージの大部分が生きたままである様式で、夾雑物をファージ粒子から解離する、および/または存在し得る夾雑物の任意の凝集物を脱凝集することを補助し得る。夾雑物をファージ粒子から解離する、および/またはファージ調製物中に存在し得る夾雑物の任意の凝集物を脱凝集することによって、上記方法は、サイズ排除フィルターによるこれらの不要な物質の除去を可能にする。ステップ2)において使用される緩衝液は、
a)イオン性のタンパク質相互作用を破壊する緩衝液;
b)疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液;および
c)前記ファージを沈殿させる緩衝液
を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記a)イオン性のタンパク質相互作用を破壊する緩衝液は、高イオン強度緩衝液(例えば、250~950mM、より好ましくは500~650mMの範囲のイオン強度を有する緩衝液(例えば、少なくとも250mM、少なくとも300mM、少なくとも350mM、少なくとも400mM、少なくとも450mM、少なくとも500mM、少なくとも550mM、少なくとも600mM、少なくとも650mM、少なくとも700mM、少なくとも750mM、少なくとも800mM、少なくとも850mM、少なくとも900mM、または少なくとも950mM、1Mの塩(例えば、塩化ナトリウムおよび/または塩化マグネシウム))の溶液)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記b)疎水性/親水性相互作用を破壊する緩衝液は、適切な界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン誘導体(例えば、Triton(登録商標) X-100、ポリソルベート20(Tween(登録商標) 20)またはポリソルベート80(Tween(登録商標) 80))のような非イオン性界面活性剤および/またはラウリルジメチルアミンオキシド(LDAO)のような双性イオン界面活性剤および/または非変性有機溶媒(例えば、エタノール、ブタノール、グリセロールまたはジメチルスルホキシド(DMSO))および/またはカオトロピック剤(例えば、グアニジン塩酸塩(GuHCl; Wilson MJら, J Biotechnol. 88(1):67-75, 2001)、チオ尿素および尿素)を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記緩衝液b)は、Triton x-100およびポリソルベート20から選択される非イオン性界面活性剤を含む。Triton X-100およびポリソルベート20は、それぞれ、ミセル分子量 約90kDaおよび98kDaを有し、従って、例えば、100kDa未満の物質の通過を可能にする孔サイズ(すなわち、100kDaのMWCO)を有するサイズ排除フィルターを容易に通過し得る。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、上記緩衝液b)は、
(i)Triton X-100;
(ii)Triton X-100および第2の界面活性剤(例えば、LDAOのような双性イオン界面活性剤);
(iii)Triton X-100および高イオン強度溶液;
(iv)Triton X-100およびカオトロピック剤;または
(v)カオトロピック剤、
を含む。
【0040】
いくつかの他の好ましい実施形態において、上記緩衝液b)は、
(vi)双性イオン界面活性剤および高イオン強度溶液;または
(vii)双性イオン界面活性剤およびカオトロピック剤、
を含む。
【0041】
緩衝液b)の1つの特に好ましい実施形態は、1~2%(v/v) Triton X-100+500mM NaClを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記ファージを沈殿させる緩衝液c)は、当業者に公知のファージのような大きな生体分子を沈殿させるための標準的な薬剤のうちのいずれかを含み、これは、上記ファージを実質的に損傷も与えず、変性もさせない(すなわち、その結果、上記ファージの実質的に大部分が生きたままである)。上記ファージを沈殿させるための1つの特に適切な薬剤は、硫酸アンモニウム(すなわち、(NHSO)の飽和溶液である。これは、能動的濾過システム中でなおも効果的であることが見出された。実際に、出願人は、システムが(NHSO濃度の一様な段階的増大を可能にするのと同様に、沈殿剤(例えば、(NHSO)でのファージの沈殿が、特に、連続タイプ濾過システム(例えば、TFF)に十分に適しており、ファージ粒子の信頼性のあるかつ一様な沈殿をもたらすことを見出した。これはまた、上記ファージが、夾雑物のサイズ排除フィルターの通過を遮断し得る大きな凝集物を形成しないようにし得る。さらに、TFFの文脈において、TFFシステムにおけるファージの沈殿は、ファージ回収が、閉じた無菌環境から、およびファージの喪失をもたらし得る遠心分離の必要性なしに達成され得ることを意味する。
【0043】
従って、いくつかの好ましい実施形態において、上記緩衝液c)は、硫酸アンモニウム緩衝液である。しかし、代わりに、上記緩衝液c)は、硫酸ナトリウム(NaSO)緩衝液または硫酸マグネシウム(MgSO)緩衝液であり得る。このような薬剤の混合物はまた、適切であり得る(例えば、(NHSOおよびMgSO)。さらに、いくつかの実施形態において、上記緩衝液c)は、カオトロピック剤(例えば、GuHCl)を含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記方法は、DNAまたはRNAを分解し得るエンドヌクレアーゼを添加する工程をさらに包含する。例えば、エンドヌクレアーゼ(例えば、DNAase、RNAaseまたはベンゾナーゼ)は、2本鎖DNA、1本鎖DNAまたは1本鎖RNAを切断するために上記方法に加えられ得る。いくつかの好ましい実施形態において、上記エンドヌクレアーゼは、上記粗製ファージ調製物に添加される。さらに、上記エンドヌクレアーゼは、さらなるステップとして上記方法の間に添加され得る、および/または任意の残留核酸を除去するために、溶液中の上記回収されたファージに添加され得る。
【0045】
上記緩衝液a)、b)およびc)は、しかし特に緩衝液a)およびb)は、上記方法のステップ2)において、任意の順序で上記フィルターを通過し得る。また、緩衝液a)、b)およびc)の各々またはいずれかが、上記フィルターを1回またはこれより多く通過し得る。さらに、上記緩衝液a)、b)およびc)のうちのいずれか2種またはこれより多くが、上記フィルターを1回より多く通過する場合、個々の緩衝液が上記フィルターを通過した回数は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、緩衝液a)は、上記フィルターを通過し得、続いて、緩衝液b)が2回通過し、この緩衝液は、同じであっても異なっていてもよく、必要に応じて、洗浄ステップによって隔てられてもよく(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(例えば、1×PBS)を使用する)、その後、緩衝液c)が上記フィルターを通過して、ファージを沈殿させる。1回またはこれより多くの洗浄ステップ(例えば、1×PBSを使用する)は、緩衝液a)、b)およびc)のうちのいずれかまたは全ての間に行われ得る。さらに、1回またはこれより多くの洗浄ステップは、いかなる残りの緩衝液c)(例えば、(NHSO)をも除去もしくは低減し、そのファージ粒子を(例えば、5~10容積の1×PBSまたは別の患者への投与に適した緩衝液を使用することによって)再溶解するように、緩衝液c)がフィルターを最後に通過した後に行われ得る。
【0046】
出願人は、ステップ2)が、ファージ粒子からの夾雑物の解離および/または夾雑物の任意の凝集物の脱解離を可能にする(それによって、これらの不要な物質の除去が可能になるように)のみならず、高イオン強度溶液が、そのファージ粒子を安定化し、精製され、生きているファージを得るにあたって上記方法の成功に寄与することを見出した。
【0047】
上記方法のステップ3)は、その沈殿したファージの「回収」を可能にする。上記方法が、TFFのような連続濾過システムを使用して行われる場合、ファージ回収は、フィルターの「前方」で閉じた無菌環境から、およびファージの喪失をもたらし得る遠心分離の必要性なしに(例えば、ファージをリザーバーへと回収する、および回収されたファージをリザーバーからポンプ輸送する/ピペットで操作することによって)容易に達成され得る。にも拘わらず、いくつかの実施形態において、生きている回収されたファージは、遠心分離工程に供され得る。
【0048】
生きている上記回収されたファージまたは「ファージ生成物」は、夾雑物に関して試験され得(特に、標準的カブトガニ血球細胞溶解物(Limulus Amebocyte Lysate)(LAL)アッセイを使用して、残留エンドトキシンに関して試験され得)、および所望され場合、本発明の方法のステップのうちの1またはこれより多くに再度供され得る。サイズ排除フィルターで濾過するという少なくともさらなるステップに再度供される場合、上記サイズ排除フィルターは、所望されるのであれば、より高いMWCOを有するフィルターで置き換えられ得る。
【0049】
本発明の方法は、規則的に、またはより好ましくは連続してもしくは実質的に連続して、ファージ調製物からの夾雑物(特に、エンドトキシン)の除去をモニターするように操作され得る。例えば、ステップ2)においてフィルターを通過する物質(すなわち、透過物)は、例えば、標準的LALアッセイによって、エンドトキシンに関して評価され得る。さらにまたは代わりに、透過物は、210/254nm(エンドトキシン)、260nm(HCPs)および280nm(残留DNA)の吸光度変化を検出するように、当業者に公知の標準的分光光度技術によって分析され得る。TFFのような連続濾過システムの使用は、透過物の頻繁なサンプリングおよび分析を可能にすることによって、「リアルタイム」モニタリングに適している。実際に、市販のシステムが存在しており(例えば、Spectrum LabsによるKonduitシステム(Repligen; <https://www.repligen.com/>)、これは、TFFのような連続濾過システムの文脈において本発明の精製法の進捗を自動的にモニターするために設定され得る。すなわち、上記Konduitシステムは、260nmおよび280nmでのUV吸光度をモニター、ならびに導電性をモニターすることによって、TFF進捗を自動化するように操作した。従って、Konduitシステムを使用してTFFを自動化するよりむしろ、上記システムは、本発明の方法が行われるように、粗製ファージ調製物からの夾雑物の除去をモニターするように適合され得る。さらなるセンサがまた、210/254nmの吸光度を試験して、透過物中のエンドトキシンの検出を可能にするように、適用され得る。
【0050】
本発明の方法から生じる生きている回収されたファージは、治療適用のために、受容可能に低いエンドトキシン力価(例えば、500EU/ml未満)および全宿主細胞タンパク質レベル(例えば、100μg/mL未満またはこれに等しい)、ならびに高いファージ力価(例えば、0.5×10PFU/mlより大きいが、好ましくは1×10 PFU/mlまたは0.5×10 PFU/mlより大きい、およびより好ましくは1×10 PFU/mlより大きい)を有し得る。よって、生きている上記回収されたファージは、細菌感染症を処置するためのファージ療法における使用のためのファージを含む組成物における使用に、またはその組成物の調製に適切であり得る。ファージ療法における使用の前に、生きている上記回収されたファージは、生きている上記回収されたファージの緩衝液を患者への(特に、IV投与による)投与に適した緩衝液と交換するステップに供され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、生きている上記回収されたファージは、1EU/ml未満、100EU/ml未満、200EU/ml未満、300EU/ml未満、400EU/ml未満、500EU/ml未満、600EU/ml未満、700EU/ml未満、800EU/ml未満、900EU/ml未満、または1000EU/ml未満のエンドトキシン力価を有する。
【0052】
代表的には、米国食品医薬品局(FDA)のような規制当局は、エンドトキシン夾雑物を含む可能性がある治療用組成物の投与を受けるヒト患者が、静脈内(IV)投与1時間あたりの5EU/kg 体重以下の割合でエンドトキシンを受けることを要求する。従って、成人の平均体重(男性および女性に関してそれぞれ89.7kgおよび77.3kg)に基づくと、平均的な成人男性は、約450EU/時間を受けることができ、平均的な成人女性は、約385EU/時間を受けることができる。医師は、最大量のエンドトキシンが超えないことを確実にするために、患者のベッドサイドで本発明の方法に従って回収される、生きているファージを容易に製剤化し得る。
【0053】
本発明はまた、本発明の方法に従って調製されるファージ生成物に関する。
【0054】
さらに、本発明はまた、本発明の方法に従って調製されたファージ生成物を、必要に応じて、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、緩衝液および/または希釈剤と組み合わせて含む治療用組成物に関する。
【0055】
このような組成物は、1またはこれより多くのファージタイプ(例えば、ファージ「ストック」から得られるファージを含む、1またはこれより多くのファージ株)を含み得る;すなわち、上記組成物は、ファージカクテルを含み得る。さらに、上記組成物は、必要に応じて、例えば、1もしくはこれより多くの抗生物質、1またはこれより多くの殺菌剤、および/または1またはこれより多くの他の治療用分子(例えば、殺菌活性を有する低分子または生物製剤)をさらに含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記治療用組成物は、治療用途(例えば、例えば、患者へのIV投与、関節内、髄腔内投与、局所適用(眼内を含む)、および/または噴霧療法が挙げられるが、これらに限定されない)に適している。
【0057】
なおさらに、本発明はまた、患者における細菌感染症のファージ療法の方法(特に、患者における細菌感染症を処置する方法)であって、上記方法は、本発明の方法に従って精製されたファージまたは上記で記載されるとおりの治療用組成物を、上記患者に投与する工程を包含する方法に関する。
【0058】
処置は、ヒトかまたは動物か(例えば、獣医学的適用において)にかかわらず、ある種の所望の治療効果が達成される(例えば、細菌感染症の進行の阻害または遅れ)任意の処置および治療であり得、細菌感染症の進行速度の低減、その進行の速度の停止、その状態の改善、その状態の治癒または寛解(部分的であろうが全体であろうが)、その状態の1もしくはこれより多くの症状および/または徴候を防止、遅らせる、和らげるまたは停止させる、あるいは処置の非存在下で予測されるものを超える被験体または患者の生存を長期化することを含む。
【0059】
予防的手段(すなわち、予防)としての処置がまた、含まれる。例えば、細菌感染症に罹りやすいかまたはその発生もしくは再発のリスのある被験体は、本明細書で記載されるように処置され得る。このような処置は、上記被験体における感染症の発生または再発を防止または遅らせ得る。または他の抗生物質のように、生きている上記回収されたファージの投与は、歯科作業または手術を受けようとしている患者に、事前に予防的に与えられ得る。
【0060】
インビボでの投与は、1用量において、連続してもしくは間欠的に(例えば、適切な間隔での分割用量において)影響を及ぼされ得る。投与の最も有効な手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に使用される製剤、治療目的、処置されている標的細胞、および処置されている被験体に伴って変動する。単回または多数回の投与は、医師によって選択されている用量レベルおよびパターンで行われ得る。
【0061】
さらなる使用は、産業適用(例えば、建造物給水システムおよび病室および表面におけるような環境消毒)を含み得る。
【0062】
より具体的には、生きている上記回収されたファージは、表面、床およびカウンター(例えば、食品の準備をするエリアまたは医療施設の中)、医療デバイス(ステント、カテーテル、挿管用チューブ、または換気装置が挙げられるが、これらに限定されない)、他の水分がありかつ温かい環境(例えば、シャワー、送水管および下水管)、水冷却または加熱システム(例えば、冷却塔)、海洋工学システム(例えば、海洋石油・ガス産業のパイプライン)、パイプ、船体上に、医療労働者(health worker)、患者などによる毒性細菌の拡がりを排除するのを助けるハンドウォッシュとして、細菌を除去するおよび/またはその増殖を防止するために使用され得る。さらなる産業用途としては、移植用医療デバイス、産業プロセスにおいて使用される機械類の部品、暗渠、汚水処理施設において使用されるプール、汚水処理施設、産業用液体取り扱い機械類、身体、医療プロセス、農業プロセス、および/または機械類内の傷のコーティングが挙げられ得る。
【0063】
なおさらなる用途としては、生物工学における適用(例えば、ファージディスプレイおよび病原体検査が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられ得る。
【0064】
なおさらなる用途としては、食品生産における適用、使用(例えば、農業における作物の病原体コントロールおよび/または食品の消毒が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられ得る。
【0065】
本明細書中の発明は、実施形態を参照しながら記載されているが、これらに実施形態、および本明細書で提供される例が本発明の原理および適用を例証するに過ぎないことは、理解されるべきである。従って、多くの改変が例証的実施形態および例に対して行われ得ること、および他の再配列が添付の特許請求の範囲によって規定されるとおりの本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく考案され得ることは、理解されるべきである。本明細書で引用される全ての特許出願、特許、文献および参考文献は、それらの全体において参考として援用される。
【実施例
【0066】
実施例
本発明はここで、以下の実施例を参照しながらさらに例証される。以下に続くものが例証によるものに過ぎず、詳細に対する改変が本発明の範囲内になおも入りつつ行われ得ることは、認識される。
【0067】
実施例1:大規模E.coli培養物からのEcCH79Ф79バクテリオファージの回収
E.coliバクテリオファージ EcCH79φ79の回収を、以下のように着手した。このバクテリオファージは、代表的なPodoviridaeの形態を有する74±<1nmの長さおよび55±2nmの幅の粒度を有する。
【0068】
大バッチ増幅および初期濾過
宿主E.coli株を、25mLのトリプティックソイブロス(TSB)増殖培地中、37℃で、振盪インキュベーターにおいて一晩増殖させた。その一晩培養物を使用して、1.8LのTSB培地を含む2本の4L フラスコの各々に播種し、37℃で175RPMにおいて振盪しながらインキュベートした。細菌増殖を、分光光度法を介して1時間ごとにモニターした。培養物が対数増殖期中期に一旦達した(OD600 約0.1)後、その大バッチ培養物の両方を、プレート溶解物増幅(plate lysate amplification)からのEcCH79φ79ファージストックに感染多重度(MOI) 約0.0025において感染させた。両方のフラスコを、37℃で、175RPMにおいて振盪しながら再度インキュベートした。培養物の生存度を、溶解の検出のために1時間間隔でモニターした。細胞溶解に相当するOD600の劇的な低下が一旦検出された後、両方の大バッチ培養物を、清澄のために採取した。両方の大バッチフラスコをプールし、大きな細胞デブリを、遠心分離を介して除去した。その上清を集め、0.88μm、0.45μmおよび0.22μmのフィルターを通して逐次的に濾過した。その濾液を、2つのオートクレーブにかけたガラス瓶へとプールし、さらなる処理のために4℃で貯蔵した。
【0069】
タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)設定、消毒および操作
この実施例において使用されるTFFは、KR2i TFFシステム(Repligen)であった。上記KR2i TFFシステムは、Pharmapure 25管材、圧力変換器とともにアセンブリし、表面積1600cmを有する300kDa分子量カットオフ(MWCO)の改変ポリエーテルスルホン(mPES)、中空線維フィルター(S04-E300-05-N)を装備した使い捨て流路を利用した。その流路全体を、0.1M NaOHで消毒し、続いて、1×PBSで中和した。
【0070】
上記TFF操作パラメーターを、製造業者のソフトウェアシステムによってリアルタイムで追跡した。操作の一般的パラメーターまたは「ベストプラクティス」は、以下のとおりである:
【0071】
剪断速度を、<3000 1/秒で維持する。
【0072】
膜間差圧(TMP)を2.5psiに設定し、5psiを超えない。
【0073】
操作者は、ベストプラクティスガイドライン内に入ることが必要とされるように、機器の設定(流速、TMPなど)を調節し得る。精製サイクルの間に、各洗浄ステップを、ダイア容積(diavolume)(DV)単位で測定する。ダイア容積は、洗浄されている溶解物の容積に等しい。例えば:TFFに含まれる溶解物が200mLである場合、2×DVの洗浄は、400mLの洗浄緩衝液からなる。
【0074】
溶解物の初期濃縮
集めたおよび逐次的濾液(「濾過された溶解物」)を、連続フェッドバッチとしてTFFシステムのリザーバーへと装填した。これらの条件下で、上記溶解物を、300kDa MWCOフィルターに対して濾過されている間に処理リザーバーへと連続的に供給した。これは、上記溶解物が上記システムへと供給され、同時に濃縮されることを可能にした。
【0075】
この初期濃縮の間に、<300kDaの不純物の除去が観察され、残りのファージを、約200~400mLの間の処理容積へと濃縮した。エンドトキシンもまた、約10倍濃縮された。
【0076】
精製サイクル
初期濃縮が完了した際に、その濃縮された溶解物を、以下の精製サイクルに供した:
【0077】
高イオン性塩洗浄(500nM 塩化ナトリウム) - 上記濃縮された溶解物を、高イオン強度塩、すなわち、500mM NaClで最初に洗浄した。この初期洗浄は、2つの目的を果たした;第1に、塩濃度を増大させることによって、上記ファージからのエンドトキシンの解離を促進すること、および第2に、上記溶解物から増殖培地およびより小さなタンパク質を除去すること。このプロセスの間に、増殖培地(TSB)のうちの大部分が、破壊された/解離したタンパク質とともに除去された。
【0078】
界面活性剤洗浄(Triton X-100) - 高イオン性塩洗浄の後に、その溶解物を、次いで非イオン性界面活性剤、TX-100で洗浄して、遊離のおよび結合したエンドトキシンを、ファージから除去した。TX-100は、薬学的賦形剤として適合性ではないことから、それを、上記システムを1×PBS緩衝液で4×DV 洗浄で洗浄することによって除去した。
【0079】
ファージ沈殿
上記ファージの沈殿を、TFFシステム内で行って、遠心分離の間のファージ力価の喪失を低減し、エンドトキシンの除去効率を増大させた。簡潔には、上記ファージを、上記生成物を5×DVの(NHSO飽和溶液で洗浄することによって沈殿させた。硫酸アンモニウムの濃度を増大させるにつれて、タンパク質(ファージ)は沈殿し、両方のリザーバー中のおよびフィルター接続部における物質は、著しく濁った。上記高イオン強度内での(NHSOの濃度および/または界面活性剤洗浄をゆっくりと増大させることによって、凝集物が形成される(すなわち、沈殿したファージ)間に、上記中空線維フィルターの通過を遮断するファージの大きな凝集が回避され得ることを見出した。沈殿ステージの完了の際に、精製したファージ生成物を、10 DVの1×PBSで洗浄して(NHSOを除去し、ファージ凝集物を可溶化した。
【0080】
ファージの定量
精製法の過程の間の溶解物中におよび最終ファージ生成物(すなわち、1×PBS洗浄後のファージ生成物)中に存在するバクテリオファージを、標準的なフルプレート滴定(full plate titer)法またはスポット滴定法(spot titer method)を、以下に簡潔に記載されるように使用して定量した。
【0081】
フルプレート滴定法 - 活性なファージ粒子(すなわち、生きているファージ)またはプラーク形成単位(PFU)を、SM緩衝液またはPBS 1:10中に上記溶解物またはファージ生成物を段階希釈することによって測定して、10-1から10-8までの希釈を網羅した。次いで、宿主細菌株の新鮮な培養物を、プレートされるべき希釈物の数に相当するチューブの本数へとアリコートに分けた。さらなるチューブも準備して、細菌コントロールプレートとして供した。次いで、各希釈物からのファージのアリコートを、宿主細胞培養物を含む各チューブに添加し、次いで、37℃で10~18分間インキュベートして、宿主細胞へのファージの結合を可能にした。インキュベートした後、2.5mLの融解したソフトアガーを、各チューブへとピペットで移し、別個のTSAプレートの表面にわたってデカントした。一旦固化した後、上記プレートを、37℃で一晩または菌叢形成までインキュベートした。計数可能なプラーク(30~300)を有するプレートをスコア付けし、複製プレートの平均を、相当する希釈係数とともに使用して、最終ファージ力価を決定した。
【0082】
スポット滴定法 - 上記溶解物またはファージ生成物を、SM緩衝液またはPBS中に1:10で段階希釈して、10-1から10-8までの希釈を網羅した。次いで、宿主細菌株の新鮮な培養物を、プレートされるべき希釈物の数に相当するチューブの本数へとアリコートに分けた。さらなるチューブも準備して、細菌コントロールプレートとして供した。2.5mLの融解ソフトアガーを、各チューブへとピペットで移し、別個のTSAプレートの表面にわたってデカントした。一旦固化した後、ファージの各希釈物のうちの10μLを、各プレート上に三連または六連でスポットし、乾燥させた。そのスポットが一旦乾燥した後、上記プレートを、37℃で一晩または菌叢形成までインキュベートした。計数可能なプラークを有するプレートをスコア付けし、
複製プレートの平均を、相当する希釈係数とともに使用して、最終ファージ力価を決定した。
【0083】
エンドトキシン試験
精製法の過程の間の溶解物中におよび最終ファージ生成物に存在するエンドトキシンレベルを、市販のカブトガニ血球細胞溶解物(LAL)濁度測定キットと、Pyros Kinetix Flex Incubating Kinetic Tube Reader(Associates of Cape Cod, Inc. <http://www.acciusa.com/>)とを使用して測定した。アッセイを、製造業者の説明書および/または推奨に従って行った。
【0084】
ファージ回収の結果を表1に示す。
【表1】
【0085】
500mM NaClでの初期洗浄は、全エンドトキシンにおいて有意な変化を示さなかった。これはおそらく、ファージ粒子および/または他のタンパク質夾雑物からのエンドトキシンの脱凝集の結果であったが、溶解物からの実際の除去はほとんどまたは全くなかった。しかし、1% TX-100での洗浄後に、エンドトキシン力価は99.57%(2.37-logs)低下し、これの次に、硫酸アンモニウム沈殿からエンドトキシンがさらにわずかに低減された(表1を参照のこと)。
【0086】
硫酸アンモニウムは、ファージ滴定およびエンドトキシンアッセイの両方の測定において干渉を引きおこす。従って、上記サンプルを定量するために、少量をγ線照射された透析カセット(ThermoFisher)に装填し、1×PBSに対して透析して、残留塩分を試験の前に除去した。最後のPBS洗浄の後に、ファージ力価は、1.3×1013 PFUへと増大する(90% 増大)ことが見出された。これはおそらく、ファージ粒子を夾雑物から遊離させるという結果であった。精製「ファージ生成物」の最後のエンドトキシン力価は、527EU/mL(上記精製法から全エンドトキシンの3-log低減)であった。
【0087】
さらなる洗浄ステップを、上記ファージ生成物に適用して、エンドトキシンをさらに低減することができた。さらに、上記ファージ生成物はまた、適切な緩衝液中に、患者または成人平均体重の推奨される寛容性(5.0EU/kg 体重)未満のレベルへと希釈され得る。これは、低いエンドトキシン含有量を有する高力価治療用ファージ組成物(>1×10PFU/mL)の調製を可能にする(表1を参照のこと)。顕著なことには、遠心分離(ファージの喪失を生じ得る)は、沈殿後の上記ファージの回収には必要とされなかった。
【0088】
実施例2:大規模E.coli培養物からのEcCH27Ф38バクテリオファージの回収
E.coli バクテリオファージEcCH27φ38の回収を、以下のように着手した。このバクテリオファージは、代表的なPodoviridaeの形態を有する73±4nmの長さおよび59±3nmの幅の粒度を有する。
【0089】
大バッチ増幅および初期濾過
宿主細菌株を、実施例1に記載されるように増殖させた。上記培養物が対数増殖期中期に一旦達した(OD600 約0.4)後、その大バッチ培養物に、約0.0025のMOIでのプレート溶解物増幅からのEcCH27φ38ファージストックを感染させた。上記フラスコを、実施例1に記載されるように再度インキュベートし、OD600の劇的な低下が検出されたら直ぐに、上記培養物をプールした。大きな細胞デブリを、遠心分離を介して除去する。その上清を集め、実施例1に記載されるものと同じ様式で逐次的に濾過した。その濾液をプールし、さらなる処理のために4℃で貯蔵した。
【0090】
タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)設定、消毒および操作
上記TFFシステム、消毒および操作は、実施例1に記載されるとおりであった。よって、上記TFF流路は、表面積1600cmを有する300kDa分子量カットオフ(MWCO)の改変ポリエーテルスルホン(mPES)、中空線維フィルター(S04-E300-05-N)を備えた。
【0091】
溶解物の初期濃縮
上記濾液(「濾過済み溶解物」)を、連続フェッドバッチとして上記TFFのリザーバーへと装填した。よって、上記溶解物を、上記300kDa MWCOフィルターに対して濾過している間に、処理リザーバーへと連続供給した。上記溶解物のこの初期濃縮の間に、<300kDaの不純物を除去した。上記ファージをまた、約200~400mLの間の処理容積へと濃縮した。
【0092】
精製サイクル
初期濃縮が完了した際に、その濃縮された溶解物を、以下の精製サイクルに供した:
【0093】
高イオン性塩洗浄(500nM NaCl/1×PBS) - 上記濃縮された溶解物を、高イオン強度塩で最初に洗浄し、この場合には、1×PBS中500mM NaClを使用した。このプロセスの間に、増殖培地(TSB)のうちの大部分が、破壊された/解離したタンパク質とともに除去されることを観察した。
【0094】
界面活性剤洗浄(Triton X-100 + 500mM NaCl/1×PBS) - 高イオン性塩洗浄の後に、その溶解物を、次いで、1% TX-100 + 500mM NaCl/1×PBS溶液で洗浄した。TX-100およびNaClはその後、1×PBS緩衝液の4×DVで上記溶解物を洗浄することによって除去した。その後、上記界面活性剤からいくらかの残留発泡が存在したことが認められた。これは、残留TX-100を除去するためには、いくらかの引き続いての洗浄、または精製サイクルの反復が必要とされたことを示す。いずれにしても、この実施例では、精製サイクルを、エンドトキシンをさらに低減するように反復した。
【0095】
ファージ沈殿
上記ファージの沈殿を、TFFシステム内で行って、遠心分離の間のファージ力価の喪失を低減し、エンドトキシンの除去効率を増大させた。簡潔には、上記ファージ、上記生成物を3×DVの(NHSO飽和溶液で洗浄することによって沈殿させた。硫酸アンモニウムの濃度を増大させるにつれて、タンパク質(ファージ)は沈殿し、両方のリザーバー中のおよびフィルター接続部における物質は、著しく濁った。上記高イオン強度内での(NHSOの濃度および/または界面活性剤洗浄をゆっくりと増大させることによって、凝集物が形成される(すなわち、沈殿したファージ)間に、上記中空線維フィルターの通過を遮断するファージの大きな凝集が回避され得ることを見出した。沈殿ステージの完了の際に、精製したファージ生成物を、5 DVの1×PBSで洗浄して(NHSOを除去し、ファージ凝集物を可溶化した。
【0096】
ファージの定量
精製法の過程の間の溶解物中におよび最終ファージ生成物(すなわち、1×PBS洗浄後のファージ生成物)中に存在するバクテリオファージを、実施例1に記載される様式で定量した。
【0097】
エンドトキシン試験
精製法の過程の間の溶解物中におよび最終ファージ生成物に存在するエンドトキシンレベルを、実施例1に記載されるように測定した。
【0098】
回収の結果を表2に示す。
【表2】
【0099】
実施例1においても観察されたように、500mM NaClでの初期洗浄は、全エンドトキシンにおいて有意な変化を示さなかった。しかし、1% TX-100 + 500mM NaClでの2×DV洗浄後には、エンドトキシン力価は98.3%(1.77 log)低下し、この次に、第2のTX-100 + 500mM NaCl洗浄後にさらに98.4%(1.44 log)低下した(表2を参照のこと)。エンドトキシンレベルのさらなる2-log低減が、上記ファージの硫酸アンモニウム沈殿で達成された。
【0100】
ファージ力価のある種の喪失が、この実施例における精製法にわたって観察された。すなわち、最後のPBS洗浄後、上記ファージ力価は、3.6×1010 PFU/mLから6×10 PFU/mLへと減少した(表2を参照のこと)。力価の減少は、沈殿したファージの再懸濁の間にファージが喪失されることによって説明できた。第2の可能性は、力価の減少が、PBS洗浄後にファージ凝集物が分解されていないという結果である。
【0101】
上記精製法は、32.9EU/mLという最終的エンドトキシン力価(全エンドトキシンのほぼ5-log低減)を達成した。この力価では、上記ファージ生成物は、ファージ療法のための組成物として使用するための受容可能なエンドトキシン力価を達成するために、さらに精製または希釈する必要はない。また、上記ファージ力価は低下した一方で、それは治療適用にとってはなお十分高い(>1×10 PFU/mL)。顕著なことには、この実施例では、沈殿後の上記ファージの回収のために遠心分離(これはファージの喪失を生じ得る)は必要とされなかった。
【0102】
実施例3:大規模培養物からのさらなるバクテリオファージの精製
実施例1および2のEcCH79Ф79およびEcCH27Ф38を含めて、14種の特有のファージ株は、本発明の方法に従って、現在までに成功裡に精製された。これらのファージの精製はまとめて、少なくとも3種の公知のファージ形態を表し、7種の宿主細菌種を網羅している(以下の表3を参照のこと)。現在まで試験した全28種のバクテリオファージに関して、上記ファージ粒子を成功裡に精製し、精製法を「切り抜け」、生存した。上記結果は、本発明の精製法が、ユニバーサルファージ精製法を提供し(すなわち、広い範囲のファージ種および株にわたって成功裡に適用可能であるべき方法を提供し)、ファージ療法における使用のためのファージを含む組成物の調製に適切であることを示す。
【0103】
さらなる試験実行において、上記精製法は、エンドトキシン、宿主細胞タンパク質、および残留DNAの段階的低減を示した(データは示さず)。これら夾雑物の各々の低減は、S.aureusファージ、SaWIQ0488Φ1の精製において示された。このバッチでは、3.6Lの濾過バッチ溶解物を、10×濃縮工程を含む精製サイクルを通じて処理した。上記バルク濾過物質は、上記アッセイの上側の範囲を超えるエンドトキシン濃度を有し、>12500EU/mL(>4.5×10 全EUを生じた。精製後に、上記エンドトキシン濃度は、全EUにおいて少なくとも2.3 log低減に対して、667EU/mL(合計2.5×10 EU)に低減した。上記バッチ溶解物において測定されたHCP濃度は、上記アッセイの上側の範囲を超え、>810ng/mL(合計>2.9×10ng)を生じた。上記HCP濃度は、精製前に全HCPにおいて少なくとも1.7 log低減に対して144ng/mL(合計5.3×10ng)に低減した。上記バッチ溶解物中で測定したrDNA濃度は、5053.9ng/mL(合計1.8×10ng)を生じた。精製後、上記rDNA濃度は、全rDNAにおいて1.1 log低減に対して4169.9ng/mL(合計1.5×10ng)に低減した。
【0104】
試験法:
エンドトキシン含有量を、LALエンドトキシンキットを使用して測定した(上で記載される)。
【0105】
宿主細胞タンパク質含有量を、製造業者のプロトコールに従って、Cygnus Technologies S. aureus Host Cell Proteins ELISA Kit(F320)を使用して測定した。品質コントロールサンプルを、各HCP試験に含めて、実行が正確な結果を提供することを担保した(生成物スパイクコントロール、ゼロ標準およびS.aureus Host-Cell Protein標準)。
【0106】
残留DNA含有量を、Quant-It High Sensitivity(Quant-It HS)およびQuant-It Broad Range(Quant-it BR)蛍光プローブ(ThermoFisher Scientific)によって、製造業者のプロトコールに従って決定した。上記バルク材料からのサンプルを、0.22μm フィルターで予め濾過し、100kDa MWCO Amiconフィルター上で洗浄して、残留宿主細胞DNAの消化されたフラグメントを除去し、上記サンプルを読み取る前に、PBS中で再懸濁した。精製したファージ材料を、rDNA濃度を測定する前に、Amiconフィルタープロセスにおいて洗浄しなかった。
【表3-1】
【表3-2】
【0107】
実施例4、5および6.多数回の精製サイクルでの大規模培養物からのKp531φ2、KpKH52φ07BおよびEcCH56φ56Aの回収
プロセス由来の夾雑物(細菌エンドトキシン、宿主細胞タンパク質など)の濃度のバッチ間バリエーションは、所望の結果を達成するために再処理を必要とし得る。これは、特に、異なる宿主細菌種および/または株において異なるファージを増幅および精製する場合に該当し得、操作者が、システムにおけるこれらの変化を補償することを必要とする。本発明は、夾雑物を、バクテリオファージ力価を保存しながら所望のレベルへと低減するまで、同じ方法または方法の組み合わせを使用して材料が再処理され得るという点で融通性を示した。材料の成功裡の再処理の3つの例を、以下に提供した:
【0108】
実施例4および5:Kp531φ2およびKpKH52φ07B
2つのKlebsiellaファージ、Kp531φ2およびKpKH52φ07Bを、別個のバッチ培養物において増幅し、バルク夾雑物を、遠心分離、続いて、0.88μm、0.45μm、および0.22μmを経る連続濾過を介して除去した。その予め濾過したKp531φ2およびKpKH52φ07Bのバッチをともに装填し、300kDa MWCO中空線維フィルターを備えたTFF流路における精製を通じて処理した。具体的には、各バッチを、約10×濃縮し、500mM NaClでの4 DV洗浄、0.1% Triton X-100での2 DV洗浄、1×PBSでの4 DV、Triton X-100での2 DV洗浄、1×PBSでの4 DV洗浄、続いて、(NHSOでの3 DV洗浄、続いて、1×PBSでの10×DV洗浄に供した。次いで、その精製した材料を、100kDa MWCO中空線維フィルターを備えた第2の濾過流路へと装填し、10 DVの注射グレードの賦形剤で洗浄して、残留塩および/または界面活性剤を上記精製緩衝液からさらに除去した。次いで、その精製した材料を濃縮し、残留夾雑物について試験する。
【0109】
処理後、上記ファージ力価およびエンドトキシン含有量を、Kp531φ2およびKpKH52φ07Bバッチの両方に関して試験した。バッチは両方とも、高いファージ力価、Kp531φ2は1.9×10 PFU/mLおよびKpKH52φ07Bは1.4×1011 PFU/mLを有したが、試験したところエンドトキシン含有量は高く、Kp531φ2は9,138EU/mLおよびKpKH52φ07Bは83,600EU/mLであった。高いエンドトキシン含有量に起因して、両方のバッチを、精製プロセスを経て2回目の再処理を行い、続いて、第2の仕上げの工程を行った。再処理後に、Kp531φ2およびKpKH52φ07Bのエンドトキシン含有量は、それぞれ、565EU/mLおよび488EU/mLであった。さらに、Kp531φ2およびKpKH52φ07Bはともに、それぞれ、高い力価、7.3×10PFU/mLおよび1.0×1011PFU/mLを維持した。
【0110】
実施例6:EcCH56φ56A
E.coliファージバッチ、EcCH56φ56Aを、バッチ培養物中で増幅し、バルク夾雑物を、遠心分離、続いて、0.88μm、0.45μm、および0.22μmを経る連続濾過を介して除去した。その精製した材料を、300kDa MWCO中空線維フィルターを備えたTFF流路における精製を経て処理した。具体的には、上記バッチを約10×濃縮し、500mM NaClでの4 DV洗浄、0.1% Triton X-100での2 DV洗浄、1×PBSでの4 DV洗浄、Triton X-100での2 DV洗浄、1×PBSでの4 DV洗浄、続いて、(NHSOでの3 DV洗浄、続いて、1×PBSでの10× DV洗浄に供した。
【0111】
精製後に、バッチを、ファージ力価およびエンドトキシン含有量に関して試験した。上記バッチは、高いファージ力価、1.2×1010PFU/mLを維持したが、エンドトキシン含有量も高かった(52,745EU/mL)。高いエンドトキシン含有量に起因して、EcCH56phi56Aバッチを、2回目の精製プロセスを経て再処理した。その力価は、第2の精製実行の後に、6.8×1010PFU/mLであった。次いで、仕上げの工程を続けた。ここでは精製した材料を、次いで100kDa MWCO中空線維フィルターを備えた第2の濾過流路に装填し、10 DVの注射グレードの賦形剤で洗浄して、残留塩および/または界面活性剤を精製緩衝液からさらに除去し、治療用途のためのファージを調製した。再処理後に、EcCH56φ56Aのエンドトキシン含有量は、30EU/mLであり、5.2×1010PFU/mLという高い力価を維持した。
【0112】
本発明は、発明の趣旨から逸脱することなく、構成および詳細において変動し得る本明細書で先に記載された実施形態に限定されない。本明細書で言及される任意の特許、特許出願または他の刊行物の教示全体は、本明細書で完全に示されているかのように参考として援用される。
【国際調査報告】