(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキットおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20221128BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20221128BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20221128BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C12N1/00 F
C12N5/071
C12M3/00 Z
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520037
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020053181
(87)【国際公開番号】W WO2021067211
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フェリー,アン ミージン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラール,ヴァシリー ニコラエヴィチ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029GA02
4B029GB09
4B065AA93X
4B065BC46
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地中でスフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキットは、(a)(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤と、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体とを含む。得られたスフェロイド安定化ヒドロゲルおよびそれを製造する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地中でスフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキットであって、
(a)(i)ペクチン酸もしくはその塩、または
(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩
のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤と、
(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、
(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体と
を含む、キット。
【請求項2】
前記PGA化合物が、前記カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地と混合されており、または
前記PGA化合物が、前記カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地とは別個の溶液である、
請求項1記載のキット。
【請求項3】
前記架橋剤が、カルシウム塩であり、
前記カルシウム塩が、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはこれらの組み合わせから選択され、かつ/または
前記カルシウム塩が、25℃で0mg/L超~約20mg/Lの水溶性を有する、
請求項1記載のキット。
【請求項4】
前記キットが、三次元(3D)細胞培養基材をさらに含み、
前記3D細胞培養基材が、少なくとも1つの毛細管構造およびスフェロイド誘引幾何形状を含むマイクロウェルのアレイを有し、かつ/または
前記3D細胞培養基材が、細胞培養容器の少なくとも一部を含む、
請求項1記載のキット。
【請求項5】
前記キットが、
スフェロイド容器;
スフェロイド安定化ヒドロゲルを分解するための消化剤であって、ペクチナーゼと、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレングリコール四酢酸(ETGA)、クエン酸、酒石酸、またはこれらの組み合わせから選択されるキレート剤とを含む、消化剤;または
これらの組み合わせ
を含む、請求項1記載のキット。
【請求項6】
消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法であって、前記方法が、
ポリガラクツロン酸(PGA)化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを形成する条件下で、
(a)カルシウム塩を含む架橋剤およびグルコノラクトンを含むプロトン供与体を、
(i)ペクチン酸もしくはその塩、または
(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩
のうちの少なくとも一方を含むPGA化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップ
を含む、方法。
【請求項7】
前記架橋剤および前記プロトン供与体を、前記PGA化合物を含む前記ゲル化剤を含む前記水性媒体と共に提供するステップ(a)が、
(1)前記架橋剤を、前記PGA化合物を含む前記水性媒体と混合して、水溶液を形成するステップと、
(2)前記グルコノラクトンに前記水溶液を提供することにより、前記PGA化合物の架橋を開始するステップと
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが、
約1%重量/重量の、前記ペクチン酸である前記PGA化合物と、
約2:1の前記プロトン供与体に対する前記架橋剤のモル比と
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、
(b)前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがin situで形成されるように、前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルのゲル化前に、前記架橋剤、前記プロトン供与体、および(a)の前記ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む前記ゲル化剤を含む前記水性媒体と、スフェロイドを含む三次元(3D)細胞培養基材とを提供するステップ
をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記3D細胞培養基材が、少なくとも1つの毛細管構造およびスフェロイド誘引幾何形状を含むマイクロウェルのアレイを有し、
前記スフェロイドが、前記マイクロウェルのアレイに配置されており、
前記提供するステップ(b)が、前記架橋剤、前記プロトン供与体、および(a)の前記ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む前記ゲル化剤を含む前記水性媒体を、前記マイクロウェルのうちの少なくとも1つに適用するステップを含む、
請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第120条のもと、2019年10月3日に出願された米国仮特許出願第62/909963号明細書および2020年7月27日に出願された米国仮特許出願第63/056898号明細書の優先権の利益を主張し、その内容に依拠するものであって、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法および消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキットに関する。
【背景技術】
【0003】
三次元(以下、「3D」)細胞培養は、細胞が三次元で増殖しかつ/または相互作用(主に互いに)することを可能にする、人工的に作製された環境である。3D細胞培養は、二次元(以下、「2D」)細胞培養単層と比較して、組織の天然の微小環境をより密接に模倣する向上した細胞-細胞相互作用を提供する。例えば、2D細胞培養単層で増殖させた細胞は、それらが培養される基材に付着する場合があるが、3D細胞培養で増殖させた細胞は、それらが培養される基材に付着するのではなく、互いに相互作用する場合がある。
【0004】
過去10年間に、3D細胞培養は、多種多様なガン性および非ガン性細胞系統をスフェロイドまたは3D細胞コロニーに成長させるために使用されてきた。スフェロイドは、創薬、毒性学および再生医療の分野において、3D組織モデリングに使用されている。スフェロイド誘引幾何形状を有する多くの3D細胞培養基材が開発されてきたが、このような3D細胞培養基材上に生成されたスフェロイドの輸送は困難となりうる。例えば、スフェロイドは、中程度の期間(例えば、約1時間)でも、直接的なスフェロイド-スフェロイド接触が確立される場合、一緒に融合する傾向を示すため、個々のスフェロイドが物理的に分離されていない3D細胞培養基材中で輸送されるスフェロイドは、スフェロイド凝集体の形成を生じさせうる。さらに、個々のスフェロイドが物理的に分離されている3D細胞培養基材中で輸送されるスフェロイドも、輸送中のスフェロイドの変位により、スフェロイド凝集体の形成を生じさせうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、輸送中のスフェロイドを安定化させる継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが開示される。消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、(a)(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(以下、PGA)化合物を含むゲル化剤またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤と、(b)二価カチオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体とを含む。
【0007】
他の実施形態では、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法が開示される。この方法は、(a)架橋剤およびプロトン供与体を、(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むPGA化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップを含み、架橋剤が二価イオンの塩を含み、プロトン供与体がラクトン、エステル、または他のゆっくり分解する酸、例えばグルコノラクトンを含む。架橋剤およびプロトン供与体は、PGA化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを形成する条件下で、PGA化合物を含む水性媒体と共に提供される。
【0008】
さらに他の実施形態では、カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地中でスフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキットが提供される。このキットは、(a)(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物またはアルギン酸を含むゲル化剤と、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体とを含む。
【0009】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方により、種々の実施形態が説明され、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概観またはフレームワークを提供することを意図していると理解されたい。添付の図面は、種々の実施形態の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載された種々の実施形態を示し、説明と共に、特許請求される主題の基本方式および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルの調製を示す模式図であり、ここで、スフェロイドは、細胞培養培地中において、3D細胞培養基材(すなわち、3D細胞培養フラスコ)中で培養される。
【
図1B】消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルの調製を示す模式図であり、ここで、細胞培養培地が
図1Aの3D細胞培養フラスコ中で培養されたスフェロイドから除去される。
【
図1C】消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルの調製を示す模式図であり、ここで、消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルは、
図1Bの3D細胞培養フラスコ中で培養されたスフェロイドに重ねられた配置で提供される。
【
図2A】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルの消化を示す模式図であり、ここで、消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルは、3D細胞培養フラスコ中で培養されたスフェロイドに重ねられた配置で提供される。
【
図2B】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルの消化を示す模式図であり、ここで、消化溶液は、
図2Aの消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルに提供される。
【
図2C】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルの消化を示す模式図であり、ここで、
図2Bの消化溶液は、細胞培養培地に置き換えられる。
【
図3A】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、2D細胞培養単層上で増殖させた対照HepG2細胞の明視野画像である。
【
図3B】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、2D細胞培養単層上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、生きた対照HepG2細胞の蛍光画像である。
【
図3C】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、2D細胞培養単層上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、死んだ対照HepG2細胞の蛍光画像である。
【
図4A】重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、2D細胞培養単層上で増殖させたHepG2細胞の明視野画像である。
【
図4B】重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、2D細胞培養単層上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、生きたHepG2細胞の蛍光画像である。
【
図4C】重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、2D細胞培養単層上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、死んだ対照HepG2細胞の蛍光画像である。
【
図5A】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させた対照HepG2スフェロイドの明視野画像である。
【
図5B】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、生きた対照HepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図5C】消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、死んだ対照HepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図6A】重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドの明視野画像である。
【
図6B】重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、生きたHepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図6C】重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、死んだ対照HepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図7A】落下試験の実行後での、消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させた対照HepG2スフェロイドの明視野画像である。
【
図7B】落下試験の実行後での、消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、生きた対照HepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図7C】落下試験の実行後での、消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、死んだ対照HepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図8A】落下試験の実行後での、重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドの明視野画像である。
【
図8B】落下試験の実行後での、重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、生きたHepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図8C】落下試験の実行後での、重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(1%重量/重量のペクチン酸)を含むライボビッツL-15培地中において、3D細胞培養基材上で増殖させ、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMで同時に染色された、死んだ対照HepG2スフェロイドの蛍光画像である。
【
図9A】波形構成にあるスフェロイド含有細胞培養マイクロウェルのアレイを含む3D細胞培養基材を示す模式図である。
【
図9B】
図9Aの3D細胞培養基材の部分切り取りを示す模式図である。
【
図10】スフェロイド含有細胞培養マイクロウェルのアレイを含む3D細胞培養基材で微細パターン化された底面を有する培養フラスコを示す図である。
【
図11】
図10の培養フラスコの底面上に微細パターン化されたスフェロイド含有細胞培養マイクロウェルのアレイを含む3D細胞培養基材の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する場合、下記用語は、以下で説明される定義を有するものとする。
【0012】
本明細書で使用する場合、「消化性」なる用語は、ペクチン多糖類がその成分であるガラクツロン酸モノマー、ダイマーまたは他のオリゴマーに分解し(break down)かつ/または減成する(degrade)能力を指す。例えば、ペクチン多糖類含有スフェロイド安定化ヒドロゲルは、そのグリコシド結合の開裂を介して、例えば、1,4-α-D-ガラクツロン酸結合の開裂等を介して消化可能である。実施形態において、ペクチン多糖類含有スフェロイド安定化ヒドロゲルのペクチン多糖類を分解しかつ/または減成することにより、対照スフェロイドと比較して、例えば、重ねられたペクチン多糖類含有スフェロイド安定化ヒドロゲルを含まないスフェロイドの生存率および/またはその消化前の重ねられたペクチン多糖類含有スフェロイド安定化ヒドロゲルを含むスフェロイドの生存率と比較して、ペクチン多糖類含有スフェロイド安定化ヒドロゲルが重ねられたスフェロイドは、約90%~約100%の生存率で回収が可能となる。
【0013】
本明細書で使用する場合、「スフェロイド」なる用語は、3D増殖を可能にするように培養された細胞の凝集体、クラスターおよび/またはアセンブリを指す。例えば、単層等において2D増殖を可能にするように培養された細胞とは対照的に、スフェロイドは、3D構造を保持することができかつ/または組織の天然の微小環境をより密接に模倣することができる。
【0014】
本明細書で使用する場合、「安定化する」および「安定化」なる用語は、ペクチン多糖類含有ヒドロゲルが、力を印加された際に、標的位置においてスフェロイドを維持する能力を指す。例えば、3D細胞培養基材の文脈において、ペクチン多糖類含有ヒドロゲルは、力を印加された際に、標的マイクロウェルおよび/またはその標的毛細管構造において、スフェロイドを維持可能なように安定化している。別の例として、3D細胞培養基材の文脈において、ペクチン多糖類含有ヒドロゲルは、力を印加された際に、対照スフェロイドと比較して、例えば、重ねられたペクチン多糖類含有ヒドロゲルを含まない3D細胞培養基材の各標的マイクロウェルおよび/または毛細管構造にスフェロイドを配置する場合(約60%のスフェロイドのみが各マイクロウェルにおいて保持される)等と比較して、各標的マイクロウェルおよび/またはその毛細管構造において、約90%~約100%のスフェロイドを維持可能であるように安定化している。
【0015】
本明細書で使用する場合、「ヒドロゲル」なる用語は、水および/または細胞培養培地で完全にまたは部分的に膨潤された半固体結合および/または架橋ペクチン多糖類マトリクスを指す。ペクチン多糖類マトリクスの結合および/または架橋は、例えば、イオン相互作用、共有結合、ファンデルワールス相互作用、水素結合、鎖絡み合い、および/または自己会合等を介した本質的に物理的かつ/または化学的なものであることができる。ヒドロゲルは、その乾燥重量の約30%~10000%の水および/または水相溶性アルコールを吸収可能である場合がある。
【0016】
本明細書で使用する場合、「向上させる」および「向上した」なる用語は、対照スフェロイドと比較して、3D細胞培養基材中で増殖され、ペクチン多糖類含有ヒドロゲルで覆われたスフェロイドの生存率の向上を指す。例えば、3D細胞培養基材中で増殖され、ペクチン多糖類含有ヒドロゲルで覆われ、4℃で24時間培養されたスフェロイドは、対照スフェロイドと比較して、例えば、重ねられたペクチン多糖類含有スフェロイド安定化ヒドロゲルを含まない3D細胞培養基材中で増殖されたスフェロイドの生存率等と比較して、84%少ない死んだ細胞を含有した。
【0017】
本明細書で使用する場合、「細胞培養培地」なる用語は、細胞の増殖、例えば、細胞の3D増殖等を支持する細胞を培養する文脈において使用される培地を指す。細胞培養培地は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、プリン、ピリミジン、ヌクレオチド、リン脂質前駆体、ビタミン、エネルギー源(例えば、炭水化物)、無機イオン(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩および/または硫酸塩)、塩、緩衝剤(例えば、リン酸塩および/または酢酸塩)、pH変化のインジケータ(例えば、フェノールレッドおよび/またはブロモ-クレゾールパープル)および/または水を含むことができる。細胞培養培地の成分を、in vivo環境を模倣するpHおよび/または塩濃度を含む場合がある緩衝溶液に提供することができる。実施形態において、細胞培養培地は、カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地を含む。特定の細胞培養培地の例は、イーグル基礎培地(以下、「BME」)、イーグル最小必須培地(すなわち、改変イーグル培地、以下、「MEM」)、ダルベッコ改変イーグル培地(以下、「DMEM」)、ライボビッツL-15培地(以下、「L-15」)、Roswell Park Memorial Institute培地(以下、「RPMI」)、ダルベッコ改変イーグル培地:栄養混合物F-12培地(以下、「DMEM/F12」)、イスコフ改変ダルベッコ培地(以下、「IMDM」)、National Collection of Type Cultures培地(以下、「NCTC」)および/または骨形成誘引培地(以下、「OIM」)を含むが、これらに限定されるべきではない。カルシウムを含まない例は、Thermo FisherからのDMEM(カタログ番号21068028)を含む。
【0018】
本明細書で使用する場合、「ゲル化」なる用語は、ペクチン多糖類の結合および/または架橋を介したゲルの形成を指す。ゲル化により、ペクチン多糖類を含む液体から半固体結合および/または架橋ペクチン多糖類マトリックスの形成をもたらすことができる。ゲル化を、物理的結合および/または架橋ならびに/または化学的結合および/または架橋により生じさせることができる。
【0019】
本明細書で使用する場合、「重ねられた配置」なる用語は、3D細胞培養基材中のスフェロイドの集団への適用後にin situで形成されるペクチン多糖類含有ヒドロゲルを指す。例えば、ペクチン多糖類含有ヒドロゲルは、ペクチン多糖類マトリクスがそのゲル化前にかつペクチン多糖類含有ヒドロゲルを形成することに適した条件下で、ペクチン多糖類ヒドロゲルが3D細胞培養基材のマイクロウェルおよび/または毛細管構造中のスフェロイドの集団に適用される、重ねられた配置にある。
【0020】
ここから、
図1C、
図2Aおよび
図9A~
図11を参照して、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルの実施形態を詳細に参照するものとする。その後、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法およびキットの実施形態を詳細に説明するものとする。
【0021】
I.消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが開示される。消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、(a)アルギン酸化合物、または(i)ペクチン酸もしくはその塩または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むPGA化合物を含むゲル化剤と、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体とを含みうる。
【0022】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、(a)PGA化合物を含むゲル化剤を含む。PGA化合物は、国際公開第2016/200888号に記載されているとおりであることができる。同文献は、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。実施形態において、PGA化合物は、α-1,4-結合-D-ガラクツロン酸モノマーから構成されるペクチン多糖類である。PGA化合物は、(i)ガラクツロン酸のポリマーであるペクチン酸、(ii)カルボキシル基がエステル化されているガラクツロン酸のポリマーであるペクチン酸(すなわち、部分的にエステル化されたペクチン酸)および/または(iii)ペクチン酸および/またはペクチニン酸の塩を含むことができる。実施形態において、ペクチニン酸の塩は、ペクチネートである。
【0023】
一部の実施形態では、ゲル化剤は、アルギン酸塩化合物を含むことができる。アルギン酸塩化合物は、アルギン酸を含むことができ、アルギン酸は、(1-4)結合 β-D-マンヌロネート(M)およびそのC-5エピマー α-L-グルロネート(G)残基それぞれのホモポリマーブロック同士が種々の配列またはブロックで共有結合した直鎖コポリマーである。一部の実施形態では、アルギン酸塩は、アルギン酸の塩を含むことができる(例えば、アルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のナトリウム塩であり、アルギン酸カリウムは、アルギン酸のカリウム塩である化合物である)。
【0024】
実施形態において、PGA化合物は、ペクチン酸を含む。実施形態において、ペクチン酸は、下記式を有する。
【0025】
【0026】
式I中、nの値は、使用されるペクチン酸に基づいて変化する場合がある。一部の実施形態では、nは、約1~約100または約100以上であることができる。一部の特定の実施形態では、nは、少なくとも約1であり、約50以下、約40以下、約30以下または約20以下であることができる。特定の実施形態では、nは、約8~約16である。
【0027】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、約1%重量/重量~約2%重量/重量または約1%重量/重量~約3%重量/重量または約1%重量/重量~約4%重量/重量または約1%重量/重量~約5%重量/重量または約1%重量/重量~約10%重量/重量または約1%重量/重量のペクチン酸を含む。消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、用途に応じてより高い%重量/重量のペクチン酸を含むことができるが、このペクチン酸の増加により、ヒドロゲルの消化性に影響を与えうることが企図される。ペクチン酸は、一部のペクチンエステルの加水分解により形成されうる。ペクチンは、細胞壁多糖類であり、ペクチンの供給源は、柑橘類の皮およびリンゴの皮を含むが、これらに限定されるべきではない。実施形態において、ペクチンは、1,2-結合 L-ラムノースによりランダムに中断される1,4-結合 α-D-ガラクツロン酸骨格を有する主に直鎖ポリマーである。実施形態において、ペクチンの平均分子量は、約50000ダルトン~約200000ダルトンの範囲であることができる。
【0028】
実施形態において、PGA化合物は、ペクチニン酸(すなわち、部分的にエステル化されたペクチン酸)を含む。実施形態において、ペクチニン酸は、約1~約40モル%または約5~約30モル%または約10~約20モル%のエステル化度を有する。実施形態において、PGA化合物は、約1~約40モル%のエステル化度を有するペクチニン酸を含む。ペクチニン酸または部分的にエステル化されたペクチン酸を、メチル基でエステル化することができる。さらに、ペクチニン酸の遊離カルボキシル基を、一価イオン、例えば、ナトリウム、カリウムおよび/またはアンモニウムイオン等で部分的かつ/または完全に中和することができる。
【0029】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、約0.5%重量/重量~約2%重量/重量または約0.75%重量/重量~約1.75%重量/重量または約1%重量/重量のペクチニン酸を含む。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、約0.5%重量/重量~約2%重量/重量または約0.75%重量/重量~約1.75%重量/重量または約1%重量/重量のメチル基でエステル化されたペクチニン酸を含む。
【0030】
実施形態において、PGA化合物は、ペクチン酸および/またはペクチニン酸の塩を含む。ペクチン酸および/またはペクチニン酸の具体的な塩の例は、一価カチオンの塩、例えば、Na+およびK+の塩を含むことができるが、これらに限定されるべきではない。
【0031】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、約0.5%重量/重量~約2%重量/重量または約0.75%重量/重量~約1.75%重量/重量または約1%重量/重量のペクチン酸および/またはペクチニン酸の塩を含む。
【0032】
実施形態において、PGA化合物は、ペクチン酸、ペクチニン酸ならびに/またはペクチン酸および/もしくはペクチニン酸の塩の混合物を含む。代替的な実施形態では、PGA化合物は、純粋なペクチン酸、ペクチニン酸またはこれらの塩を含む。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、PGA化合物と相溶性ポリマーとのブレンドを含む。PGA化合物とのブレンドに使用することができる特定の相溶性ポリマーの例は、デキストラン、置換セルロース誘導体、アルギン酸、デンプン、グリコーゲン、アラビノキシランおよび/もしくはアガロースから選択される多糖類;ヒアルロン酸および/もしくはコンドロイチン硫酸から選択されるグリコサミノグリカン;エラスチン、フィブロイン、コラーゲンおよび/もしくはこれらの誘導体から選択されるタンパク質ならびに/またはポリアルキレングリコール、ポリ(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリビニルアルコールおよび/もしくはこれらの誘導体から選択される水溶性合成ポリマーを含むが、これらに限定されるべきではない。ポリマーは、PGA化合物とのブレンド中へのそれらの包含が消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルの消化を損なわない場合、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル中で相溶性であると考えることができる。
【0033】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤を含む。実施形態において、架橋剤は、カルシウム塩を含む。実施形態において、カルシウム塩は、炭酸カルシウム(すなわち、CaCO3)、シュウ酸カルシウム(すなわち、CaC2O4)および/またはリン酸カルシウム(すなわち、Ca3(PO4)2)から選択されるが、細胞に対して非毒性である他のカルシウム塩も企図される。実施形態において、カルシウム塩は、炭酸カルシウムである。酸性条件において解離可能で、低い溶解性を有する他の二価塩も企図される。実施形態において、カルシウム塩は、25℃で約0mg/L超~約20mg/Lまたは約3mg/L~約20mg/Lまたは約6mg/L~約20mg/Lの水溶性を有する。実施形態において、架橋剤は、イオン性架橋剤である。理論に拘束されるものではないが、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル中にイオン性架橋剤を包含させると、PGAのポリマー鎖が架橋されて、溶液中でゲルが形成されると考えられる。さらに、塩の低い溶解性により、混合時の早すぎるまたは瞬間的なゲル化が減少しまたは防止されると考えられる。
【0034】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体を含む。実施形態において、プロトン供与体は、溶液内で二価イオンの塩を溶解させかつ/またはゆっくり放出させるための解離剤として作用する。例えば、架橋剤がカルシウム塩である実施形態では、プロトン供与体は、カルシウム塩、例えば、溶液内で炭酸カルシウムを溶解させかつ/またはCa2+イオンをゆっくり放出させる解離剤として作用することができる。適切なプロトン供与体の例は、ラクトン、エステルまたは他のゆっくり溶解する酸、例えば、グルコノラクトン等を含む。実施形態において、プロトン供与体は、グルコノラクトンを含む。グルコノラクトンは、下記式を有する。
【0035】
【0036】
実施形態において、PGA化合物は、架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを形成する。実施形態において、架橋剤は、プロトン供与体に曝露されると、無機カルシウムイオン、すなわち、Ca2+の供給源を提供する。より具体的には、実施形態において、架橋剤は、グルコノラクトンに曝露された場合に、カルシウム塩、例えば、CaCO3等の解離に際して、無機カルシウムイオンの供給源を提供する。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、約0.7:2~約1:2または約1:2~約1:2.3のプロトン供与体に対する架橋剤のモル比を含む。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、約1:2のプロトン供与体に対する架橋剤のモル比を含む。
【0037】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、細胞の増殖を支持する細胞培養培地の成分をさらに含む。実施形態において、細胞培養培地の成分は、細胞の増殖、例えば、細胞の3D増殖等を支持し、in vivo環境を模倣するpHおよび/または塩濃度を含む。例えば、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、プリン、ピリミジン、ヌクレオチド、リン脂質前駆体、ビタミン、エネルギー源(例えば、炭水化物)、無機イオン(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩および/または硫酸塩)、塩、緩衝剤(例えば、リン酸塩および/または酢酸塩)、pH変化のためのインジケータ(例えば、フェノールレッドおよび/またはブロモ-クレゾールパープル)および/または水を含むことができる。
【0038】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、体積に基づいて、約50%の水および50%の細胞の増殖を支持する細胞培養培地~約0%の水および100%の細胞培養培地または約50%のDPBSおよび50%の細胞培養培地~約100%の細胞培養培地を含む。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルは、カルシウムを含まない細胞培養培地またはカルシウムキレート化された細胞培養培地を含む。
【0039】
図1C、
図2A、
図9Aおよび
図9Bを参照すると、実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300は、前述のように、スフェロイド500を含む3D細胞培養基材100と共に提供される。スフェロイドを形成することに適した3D細胞培養基材100は、当業者に公知である。例えば、3D細胞培養基材100は、国際公開第2016/069892号に記載されているようなものであることができる。同文献は、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。更なる3D細胞培養基材100は、米国特許出願公開第2004/0125266号明細書、同第2012/0064627号明細書、同第2014/0227784号明細書、同第2017/0226455号明細書、国際公開第2008/106771号、同第2014/165273号に記載されているようなものであることができる。これらの文献はそれぞれ、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【0040】
実施形態において、3D細胞培養基材100は、少なくとも1つのマイクロウェル130を画定するフレーム110を含む。実施形態において、3D細胞培養基材100は、マイクロウェルのアレイ150を画定するフレーム110を含む。3D細胞培養基材100の各マイクロウェル130は、少なくとも1つの側壁132(例えば、側壁)、ウェル底部134(例えば、最下点)および開口上部136(例えば、上部開口)を含むことができる。実施形態において、各マイクロウェル130は、水溶液、例えば細胞培養培地等を収容するように構成されている。実施形態において、3D細胞培養基材100は、スフェロイド容器を含む。スフェロイド容器の例は、国際公開第2019/014610号に示されている。同文献は、参照により本明細書に援用される。
【0041】
図9A~
図9Bを参照すると、実施形態において、各マイクロウェル130は、スフェロイド誘引幾何形状170および/またはマイクロ毛細管構造170を有する。実施形態において、各マイクロウェル130は、スフェロイド誘引幾何形状170、例えば、丸みを帯びたウェル底部134(例えば、丸みを帯びたウェル底部134上に見られる半球または凹面)等を有する。実施形態において、スフェロイド誘引幾何形状170は、柱、不連続壁、丸みを帯びたウェル底部、窪んだウェル底部、ピットおよび/またはペン先領域から選択される。実施形態において、各マイクロウェル130は、培養中のスフェロイド500の形成に役立つ環境を提供するようなスフェロイド誘引幾何形状170を含むように構造化されかつ/または配置される。
【0042】
図9A~
図9Bをさらに参照すると、実施形態において、各マイクロウェル130は、マイクロ毛細管構造170を有する。適切なマイクロ毛細管構造170の例は、口領域、隆起、裂け目、柱、不連続壁、波形壁、放物線状ウェル形状および/または洞様毛細管ウェル形状を含むが、これらに限定されるべきではない。実施形態において、マイクロ毛細管構造170により、溶液、例えば、液体溶液等をマイクロウェル130に導入する際に、空気の排出が容易になる。
図9A~
図9Bに示されているように、実施形態において、各マイクロウェル130は、波形の側壁132を含む。このため、各マイクロウェル130が波形側壁132を含む実施形態では、3D細胞培養基材のマイクロウェルのアレイ150は、個々のマイクロウェル130の列を含む。実施形態において、波形側壁132は、溶液、例えば、液体溶液の導入の際に、空気が第1の(より狭い)領域からより広い第2の領域へと移動し、空気溜まりを回避するマイクロ毛細管構造170である。
【0043】
実施形態において、各マイクロウェル130は、例えばフレーム110、側壁132および/またはウェル底部134等の表面を含み、この表面は、細胞が3D細胞培養基材100とではなく相互に作用して例えばスフェロイドを形成できるように、細胞に対して非接着性である。3D細胞培養基材100のこのような表面を形成しかつ/または適用することができる非接着性材料の例は、ペルフルオロ化ポリマー、オレフィン、アガロースならびに/または非イオン性ヒドロゲル、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリオール、例えば、ポリビニルアルコール等を含むが、これらに限定されるべきではない。
【0044】
実施形態において、各マイクロウェル130は、マイクロウェル130がウェル底部134まで収縮しかつ/または狭くなる、より開口した領域を提供する開口上部136に隣接する口領域を有する。実施形態において、開口上部136の口領域により、その中に導入された溶液がウェル底部134に流れることが可能となり、ウェル底部134での細胞の凝集およびスフェロイドの形成が促進される。加えて、開口上部136の口領域により、口領域間の環状内部表面と側壁132との間に移行部が形成され、これにより、マイクロウェル130内の空気溜まりを防止することができる幾何構造を提供することができる。実施形態において、口領域により、90°の角度ではない、開口上部136と側壁132との間の移行部が提供され、これにより、マイクロウェル130内の気泡の形成を低減することができる。一部の実施形態では、側壁132の高さ(例えば、開口上部136からウェル底部134まで)は、開口上部136の口領域におけるマイクロウェル130の直径の100%以上である。一部の実施形態では、側壁132の高さ(例えば、開口上部136からウェル底部134まで)は、開口上部136の口領域におけるマイクロウェル130の直径の約100%~約400%または約110%~約375%または約120%~約350%または約130%~約325%または約140%~約300%または約150%~約275%または約160%~約250%または約170%~約225%または約180%~約200%または約190%である。
【0045】
図10~
図11を参照すると、実施形態において、3D細胞培養基材100は、細胞培養容器700を含みかつ/または細胞培養容器700にその一部として含まれる。例えば、細胞培養容器700は、その表面として3D細胞培養基材100を含むことができる。細胞培養容器700を、多層プレート、ディッシュ、フラスコ、チューブ、多層フラスコ、軟質側フラスコおよび/またはバッグから選択することができる。
【0046】
図10に示されているように、実施形態において、細胞培養容器700はフラスコである。フラスコは、上面710と、3D細胞培養基材100から上面710まで延在する少なくとも1つの側壁730と、上面710、少なくとも1つの側壁730および/または3D細胞培養基材100により画定される細胞培養チャンバ750とを含むことができる。実施形態において、フラスコはポート770を含む。更なる実施形態では、フラスコは、スクリュートップ790を有するポート770を含む。ポート770は、上面710、少なくとも1つの側壁730および/または3D細胞培養基材100により画定することができる。実施形態において、ポート770は、適切な配管および/または接続部の使用を介して、細胞培養チャンバ750との間で細胞および/または細胞培養培地を除去するように機能する。
【0047】
実施形態において、3D細胞培養基材100を、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、K樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリスチレンブタジエンコポリマー、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、フルオロポリマー、ポリアミド、完全水素化スチレンポリマー、ポリカーボネートポリジメチルシロキサン(すなわち、PDMS)コポリマーおよび/または環状オレフィンコポリマーを含むが、これらに限定されない材料から形成することができる。
【0048】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300は、スフェロイド500を含む3D細胞培養基材100を備える。実施形態において、スフェロイド500は、3D細胞培養基材100のマイクロウェルアレイ150内に配置される。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300は、スフェロイド500が消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300で覆われるように、スフェロイド500を含む3D細胞培養基材100を備える。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300により、3D細胞培養基材100中でのスフェロイド500の生存率が向上しかつ/または3D細胞培養基材100中の標的位置においてスフェロイド500が安定化される。例えば、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300が、スフェロイド500を含む3D細胞培養基材100を備える場合、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300により、スフェロイド500が消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300の適用前に形成されかつ/または配置された同じマイクロウェル130内に残るように、3D細胞培養基材100内の標的マイクロウェル130における個々のスフェロイド500を安定化させることができる。
【0049】
実施形態において、スフェロイド500を、天然の細胞タイプおよび/または遺伝的に改変された細胞タイプから形成することができる。実施形態において、スフェロイド500は、体細胞、幹細胞、前駆細胞、例えば、胚性幹細胞等および/または誘導多能性幹細胞から、任意の所望の分化状態、例えば、多能性、多分化性、決定された運命および/または不死化の状態で形成される。実施形態において、スフェロイド500は、疾患細胞および/または疾患モデル細胞、例えば、ガン性細胞および/または過剰増殖状態に誘引された形質転換細胞等から形成される。
【0050】
実施形態において、スフェロイド500は、副腎;膀胱;血管;骨;骨髄;脳;軟骨;子宮頸管;子宮内膜;食道;胃腸;免疫系、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、白血球、マクロファージおよび/もしくは樹状細胞等;肝臓;肺;リンパ管;筋肉、例えば心筋等;神経;卵巣;膵臓、例えば島細胞等;下垂体;前立腺;腎臓;唾液;皮膚;腱;精巣;ならびに/または甲状腺細胞を含むが、これらに限定されない、任意の所望の組織および/または臓器タイプに由来する細胞から形成される。実施形態において、スフェロイド500は、肝細胞から形成される。実施形態において、スフェロイド500は、ほ乳類細胞、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギおよび/またはウマ等の細胞から形成される。実施形態において、スフェロイド500は、3D細胞増殖を可能にするように培養された1種以上の細胞タイプから形成される。実施形態において、スフェロイド500は、単一の細胞タイプおよび/または細胞タイプの混合物から形成される。
【0051】
消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300の実施形態を詳細に記載してきた。ここから、
図1A~
図2Cを参照して、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法の実施形態を詳細に参照するものとする。その後、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するためのキットの実施形態を詳細に説明するものとする。
【0052】
II.消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法が開示される。この方法は、(a)架橋剤およびプロトン供与体を、(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むPGA化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップを含むことができ、架橋剤が二価イオンの塩を含み、プロトン供与体がラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む。架橋剤およびプロトン供与体は、PGA化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を形成する条件下で、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供される。
【0053】
実施形態において、この方法は、(a)架橋剤およびプロトン供与体を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップを含む。架橋剤、プロトン供与体およびゲル化剤は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300に関して前述したとおりである。より具体的には、架橋剤、プロトン供与体およびゲル化剤に利用される組成および量は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300に関して前述したとおりである。例えば、架橋剤は、カルシウム塩であることができ、プロトン供与体は、グルコノラクトンであることができ、PGA化合物を含むゲル化剤は、ペクチン酸であることができる。更なる例として、約2:1のプロトン供与体に対する架橋剤のモル比および約1%重量/重量のPGA化合物としてのペクチン酸を、水性媒体と共に提供することができる。
【0054】
実施形態において、この方法は、(a)架橋剤およびプロトン供与体を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップを含む。実施形態において、水性媒体は、細胞培養培地を含む。実施形態において、細胞培養培地は、カルシウムを含まない細胞培養培地またはカルシウムキレート化された細胞培養培地を含む。実施形態において、細胞培養培地は、BME、MEM、DMEM、L-15、RPMI、DMEM/F12、IMDM、NCTCおよび/またはOIMから選択される。実施形態において、細胞培養培地は、L-15である。実施形態において、細胞培養培地は、この方法を、適切な細胞培養pHを維持するために、二酸化炭素、すなわち、CO2の添加を必要とせずに実施するように選択される。例えば、理論に拘束されるものではないが、水性媒体としてL-15細胞培養培地を使用することにより、二酸化炭素を添加することなく、この方法を実施することが可能となると考えられる。細胞培養培地を、容器のサイズに応じて、架橋剤、プロトン供与体およびPGA化合物と共に、約300μL~約10mLまたは約300μL~約3mLまたは約1mL~約10mLの体積で提供することができる。実施形態において、PGA化合物は、細胞培養培地とは別個の溶液である。例えば、PGA化合物を、カルシウムを含まない培地および/またはカルシウムキレート化された培地とは別個の溶液として提供することができる。実施形態において、PGA化合物を、カルシウムを含まない培地および/またはカルシウムキレート化された培地とは別個の溶液として提供し、それらと混合することができる。
【0055】
実施形態において、架橋剤およびプロトン供与体は、ステップ(a)において、PGA化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を形成する条件下で、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供される。実施形態において、PGA化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋される条件は、この方法の成分、すなわち、反応物の量および/もしくは濃度、この方法の温度、この方法のpH、利用される混合方法、体積、反応物の純度ならびに/またはこの方法の反応時間を含むが、これらに限定されるべきではない。実施形態において、この方法の成分の量および/または濃度は、前述のとおりである。実施形態において、この方法は、周囲温度および/または室温で実施される。一部の実施形態では、この方法は、約0℃~約35℃または約5℃~32℃の範囲の温度で実施される。実施形態において、この方法を、適切な細胞培養pHを維持するように実施することができる。例えば、この方法を、約6.5~約8または約7~約7.5のpHを維持するように実施することができる。実施形態において、この方法を、ゲル化が起こるための反応時間で実施することができる。例えば、この方法を、容器の種類、重ねられる容器の数、PGAの濃度または封入されるスフェロイドの数に応じて、約30秒~約5分以上の反応時間で実施することができる。理論に拘束されるものではないが、ゲル化が起こるための反応時間は、架橋剤および/またはプロトン供与体の量および/または濃度により決まる場合があると考えられる。例えば、架橋剤および/またはプロトン供与体のより少ない量および/またはより低い濃度により、ゲル化が起こるためのより長い反応時間がもたらされる場合がある。逆に、別の例として、架橋剤および/またはプロトン供与体のより多い量および/またはより高い濃度により、ゲル化が起こるためのより短い反応時間がもたらされる場合がある。さらに、ゲル化は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300の表面での架橋により、拡散制限させることができることが留意される。
【0056】
ゲル化を、物理的および/または化学的結合および/または架橋を介して起こすことができる。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300のゲル化は、PGA化合物のイオン結合および/または架橋を介して起こる。PGA化合物のイオン結合および/または架橋を、イオン性架橋剤、例えば、カルシウム塩等の使用を介して達成することができる。消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300に関して前述されたように、架橋剤は、プロトン供与体への曝露時に、カルシウムイオン源を提供することができる。実施形態において、プロトン供与体、例えば、グルコノラクトンは、前述のように、架橋剤への暴露時に、pHおよび温度速度依存的様式でグルコン酸に加水分解して、カルシウムイオン源を提供する。実施形態において、架橋剤およびプロトン供与体は、約2:1のモル比で提供される。
【0057】
実施形態において、(a)架橋剤およびプロトン供与体を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップは、(1)架橋剤を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と混合して、水溶液を形成するステップおよび/または(2)グルコノラクトンに水溶液を提供することにより、PGA化合物の架橋を開始するステップを含む。(1)に関して、実施形態において、架橋剤を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体、例えば、細胞培養培地等と混合して、水溶液を形成するステップは、実質的に均質な水溶液を提供するためにボルテックスするステップを含む。また、(1)に関して、実施形態において、PGA化合物を含むゲル化剤は、それに架橋剤を提供する前に、水性媒体、例えば、細胞培養培地等と共に提供されかつ/またはそれに添加される。さらに(1)に関して、実施形態において、架橋剤は、水性媒体およびPGA化合物を含むゲル化剤を提供する前に混合される。
【0058】
(2)に関して、実施形態において、PGA化合物の架橋は、グルコノラクトンを(1)で形成された水溶液に提供することにより開始される。実施形態において、グルコノラクトンを(1)で形成された水溶液に提供するステップは、グルコノラクトンをこの水溶液と混合するステップを含む。
【0059】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法は、(b)消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300のゲル化の前に、架橋剤、プロトン供与体、および(a)のPGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と、スフェロイド500を含む3D細胞培養基材100とを提供するステップをさらに含む。3D細胞培養基材100およびスフェロイド500は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300に関して前述したとおりであることができる。実施形態において、スフェロイド500は、3D細胞培養基材100のマイクロウェルアレイ150内に配置される。(b)に関して、実施形態において、架橋剤、プロトン供与体、および(a)のPGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と3D細胞培養基材100とを提供するステップは、架橋剤、プロトン供与体、および(a)のPGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体を、スフェロイド500を含む少なくとも1つのマイクロウェル130および/またはマイクロウェルのアレイ150に適用するステップを含む。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300は、スフェロイド500を含む少なくとも1つのマイクロウェル130および/またはマイクロウェルのアレイ150に適用されると、in situで形成される。このようにして、(a)の水溶液のゲル化は、3D細胞培養基材100への適用前には起こらない。また、このようにして、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を、3D細胞培養基材100の少なくとも1つのマイクロウェル130および/またはマイクロウェルのアレイ150上および/または中に、重ねられた配置で形成することができる。
【0060】
図1Cおよび
図2Aを参照すると、前述の方法に従って調製された消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300が示される。具体的には、記載された方法に従って調製された消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300が重ねられた配置で示される。
【0061】
図1A~
図1Bを参照すると、前述のように消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または重ねる前に、スフェロイド500を、3D細胞培養基材100中で培養することができる。具体的には、
図1Aに示されているように、スフェロイド500を、前述の3D細胞培養基材100中で、これも前述の細胞培養培地900中において培養することができる。ついで、
図1Bを参照すると、前述のように消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または重ねる前に、細胞培養培地900を3D細胞培養基材100から除去することができる。ついで、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または重ねるための方法を、前述のようにかつ
図1Cおよび
図2Aに示されているように実施することができる。
【0062】
図2B~
図2Cを参照すると、前述のように消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または重ねた後、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を消化することができる。例えば、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を、消化剤1100、例えば、消化溶液1100等を提供しかつ/または添加することにより消化することができる。実施形態において、消化剤1100および/または消化溶液1100は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を分解するための作用剤を含む。例えば、消化剤1100および/または消化溶液1100は、少なくとも1種のペクチナーゼ、少なくとも1種のアルギン酸リアーゼ(またはアルギナーゼ)および/または少なくとも1種のキレート剤を含むことができる。更なる例として、消化剤1100および/または消化溶液1100は、少なくとも1種のペクチナーゼおよび/または少なくとも1種のキレート剤を含むことができる。更なる例として、消化剤1100および/または消化溶液1100は、少なくとも1種のアルギナーゼおよび/または少なくとも1種のキレート剤を含むことができる。
【0063】
実施形態において、ペクチナーゼおよび/またはアルギナーゼを、ヒドロラーゼ、リアーゼおよび/またはエステラーゼから選択することができる。ペクチナーゼおよび/またはアルギナーゼは、その触媒作用を介して、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を消化しかつ/または分解するように機能することができる。例えば、ペクチナーゼおよび/またはアルギナーゼは、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を解離させ、そこからスフェロイドを放出させるように機能することができる。実施形態において、ペクチナーゼは、アスペルギルス ニガー(Aspergillus Niger)から産生される。実施形態によれば、アルギナーゼは、海藻、海洋軟体動物(タマキビガイ属(Littorina spp)、ミミガイ属(Haliotis spp)、サザエ(Turbo cornutus))ならびに広範囲の海洋細菌および陸生細菌を含む種々の供給源から単離することができる。本開示の実施形態の実施例では、Sigma-Aldrichから市販されているアルギン酸リアーゼ(製品番号:A1603、CAS番号:9024-15-1)を使用した。実施形態において、ペクチナーゼおよび/またはアルギナーゼは、約10U/ml~約1000U/mlまたは約20U/ml~約500U/mlまたは約50U/ml~約200U/mlまたは約100U/mlの濃度で、前述の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300と共に提供されかつ/またはこれに添加される。
【0064】
実施形態において、キレート剤を、エチエレンジアミンテトラ酢酸(すなわち、EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(すなわち、CDTA)、エチレングリコール四酢酸(すなわち、EGTA)、クエン酸および/または酒石酸から選択することができる。実施形態において、キレート剤はEDTAである。一部の実施形態では、キレート剤はBAPTAである。実施形態において、ペクチナーゼは、消化溶液1100を消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300と共に提供する前に、キレート剤と混合される。実施形態において、キレート剤と混合されたペクチナーゼ、すなわち、消化溶液は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300の約2倍の体積で、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300と共に提供されかつ/またはこれに添加される。例えば、2mLの消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を含むマイクロウェル130に、4mLの消化溶液を、それと共に提供しかつ/またはそれに添加することができる。
【0065】
実施形態において、消化溶液1100は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300と共に、消化反応時間提供される。例えば、消化溶液1100を、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300と共に、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を成分であるガラクツロン酸モノマーに分解しかつ/または減成することを可能するために十分な反応時間提供することができる。理論に拘束されるものではないが、消化が起こるための反応時間は、PGA化合物を含むゲル化剤の量および/または濃度により決めることができると考えられる。例えば、PGA化合物のより少ない量および/またはより低い濃度により、消化が起こるためのより短い反応時間がもたらされる場合がある。逆に、別の例として、PGA化合物のより多い量および/またはより高い濃度により、消化が起こるためのより短い反応時間がもたらされる場合がある。消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を、スフェロイド500を含む3D細胞培養基材100中で消化することにより、スフェロイド500を回収することができる。実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を分解しかつ/または減成することにより、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300で覆われている生きたスフェロイド500の回収が可能となる。
【0066】
図2B~
図2Cを参照すると、スフェロイド500の消化および/または回収後、消化溶液1100を、細胞培養培地900で置き換えることができる。具体的には、消化溶液1100を除去することができ、細胞培養培地900を、3D細胞培養基材100内に配置されたスフェロイド500と共に提供しかつ/またはこれに添加することができる。
【0067】
消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法の実施形態を、詳細に記載してきた。ここから、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するためのキットの実施形態を詳細に参照するものとする。
【0068】
III.スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキット
実施形態において、カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地中でスフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または製造するためのキットが開示される。このキットは、(a)アルギン酸、または(i)ペクチン酸もしくはその塩または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むPGA化合物を含むゲル化剤と、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含むプロトン供与体とを含むことができる。実施形態において、このキットは、(d)3D細胞培養基材100も含む。
【0069】
3D細胞培養基材100、ゲル化剤、架橋剤およびプロトン供与体は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300および/または消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法に関して前述したとおりである。例えば、PGA化合物を含むゲル化剤は、ペクチン酸であることができ、架橋剤は、カルシウム塩であることができ、プロトン供与体は、グルコノラクトンであることができる。別の例として、3D細胞培養基材100は、スフェロイド容器であることができる。
【0070】
実施形態において、3D細胞培養基材100は、少なくとも1つの毛細管構造170および/またはスフェロイド誘引幾何形状170を含むマイクロウェルのアレイ150を含む。実施形態において、少なくとも1つの毛細管構造170は、口領域、隆起、裂け目、柱、不連続壁、波形壁、放物線状ウェル形状および/または洞様毛細管ウェル形状から選択される。実施形態において、スフェロイド誘引幾何形状170は、柱、不連続壁、丸みを帯びたウェル底部、窪んだウェル底部、ピットおよび/またはペン先領域から選択される。実施形態において、3D細胞培養基材100は、細胞培養容器700を含みかつ/または細胞培養容器700にその一部として含まれる。細胞培養容器700を、多層プレート、ディッシュ、フラスコ、チューブ、多層フラスコ、軟質側フラスコおよび/またはバッグから選択することができる。
【0071】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または製造するためのキットは、細胞培養培地をさらに含む。実施形態において、細胞培養培地は、カルシウムを含まない細胞培養培地またはカルシウムキレート化された細胞培養培地である。細胞培養培地は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルならびに/または消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/もしくは製造するための方法に関して前述したとおりである。実施形態において、PGA化合物は、細胞培養培地とは別個の溶液である。例えば、PGA化合物を、カルシウムを含まない培地および/またはカルシウムキレート化された培地とは別個の溶液として提供することができる。実施形態において、PGA化合物を、カルシウムを含まない培地および/またはカルシウムキレート化された培地とは別個の溶液として提供することができ、それらと混合することができる。
【0072】
実施形態において、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を調製しかつ/または製造するためのキットは、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を分解するための消化剤をさらに含む。実施形態において、消化剤は、ペクチナーゼおよび/またはキレート剤を含む。ペクチナーゼおよびキレート剤は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300および/または消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法に関して前述したとおりである。実施形態において、キレート剤は、EDTA、CDTA、ETGA、クエン酸および/または酒石酸から選択される。実施形態において、キレート剤は、EDTAである。
【0073】
実施形態において、このキットは、3D細胞培養基材100、PGA化合物を含むゲル化剤、架橋剤、プロトン供与体、細胞培養培地および/または消化剤の使用に関するガイダンスを提供するための説明書をさらに含む。例えば、このキットは、前述の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法および/または消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を消化するための方法に関する説明書を含むことができる。実施形態において、このキットは、(a)消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を製造するための方法に関して前述されたように、架橋剤およびプロトン供与体を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップおよび関連する反応条件ならびに/または消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル300を消化剤1100で消化するステップおよび関連する反応条件についての説明書を含む。説明書により、前述の3D細胞培養基材100、PGA化合物を含むゲル化剤、架橋剤、プロトン供与体、細胞培養培地および/または消化剤の使用が伝えられると理解される。
【0074】
消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法ならびに消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットの種々の態様が本明細書中に記載され、このような態様を、種々の他の態様と組み合わせて利用することができることを、ここで理解されたい。
【0075】
第1の態様では、本開示は、(a)アルギン酸、または(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むゲル化剤と、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して、10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含むプロトン供与体とを含み、PGA化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを形成する、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0076】
第2の態様では、本開示は、PGA化合物がペクチン酸を含む、第1の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0077】
第3の態様では、本開示は、二価イオンの塩がカルシウム塩を含む、第1または第2の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0078】
第4の態様では、本開示は、二価イオンの塩が炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはこれらの組み合わせから選択されるカルシウム塩を含む、第1から第3までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0079】
第5の態様では、本開示は、二価イオンの塩が炭酸カルシウムを含む、第1から第4までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0080】
第6の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが約1%重量/重量のPGA化合物と、約2:1のプロトン供与体に対する架橋剤のモル比とを含む、第1から第5までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0081】
第7の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが二価イオンの塩として炭酸カルシウムと、約1%重量/重量のペクチン酸と、プロトン供与体としてグルコノラクトンと、約2:1のグルコノラクトンに対する炭酸カルシウムのモル比とを含む、第1から第6までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0082】
第8の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが細胞の増殖を支持する細胞培養培地の成分をさらに含む、第1から第7までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0083】
第9の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがカルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地をさらに含む、第1から第8までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0084】
第10の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがスフェロイドを含む三次元(3D)細胞培養基材と共に提供される、第1から第9までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0085】
第11の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがスフェロイドを含む三次元(3D)細胞培養基材と共に提供され、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルにより、3D細胞培養基材中でのスフェロイドの生存率が向上しかつ/または3D細胞培養基材中の標的位置においてスフェロイドが安定化される、第1から第10までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0086】
第12の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがスフェロイド容器と共に提供される、第1から第11までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0087】
第13の態様では、本開示は、二価イオンの塩が25℃で0mg/L超~約20mg/Lの水溶性を有するカルシウム塩を含む、第1から第12までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0088】
第14の態様では、本開示は、プロトン供与体がグルコノラクトンを含む、第1から第13までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを提供する。
【0089】
第15の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法であって、PGA化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを形成する条件下で、(a)架橋剤およびプロトン供与体を、(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物またはアルギン酸を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップを含み、架橋剤が二価イオンの塩を含み、プロトン供与体がラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、方法を提供する。
【0090】
第16の態様では、本開示は、二価イオンの塩がカルシウム塩を含む、第15の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0091】
第17の態様では、本開示は、PGA化合物がペクチン酸を含み、二価イオンの塩が炭酸カルシウムを含む、第15または第16の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0092】
第18の態様では、本開示は、水性媒体が細胞培養培地を含む、第15から第17までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0093】
第19の態様では、本開示は、水性媒体がカルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地を含む、第15から第18までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0094】
第20の態様では、本開示は、架橋剤およびプロトン供与体を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップ(a)が(1)架橋剤を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と混合して、水溶液を形成するステップと、(2)プロトン供与体に水溶液を提供することにより、PGA化合物の架橋を開始するステップとを含む、第15から第19までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0095】
第21の態様では、本開示は、架橋剤およびプロトン供与体を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップ(a)が(1)架橋剤を、PGA化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と混合して、水溶液を形成するステップと、(2)プロトン供与体を水溶液と混合することにより、PGA化合物の架橋を開始するステップとを含む、第15から第20までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0096】
第22の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが、約1%重量/重量のペクチン酸であるPGA化合物と、約2:1のプロトン供与体に対する架橋剤のモル比とを含む、第15から第21までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0097】
第23の態様では、本開示は、(b)消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがin situで形成されるように、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルのゲル化前に、架橋剤、プロトン供与体、および(a)のポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と、スフェロイドを含む三次元(3D)細胞培養基材とを提供するステップをさらに含む、第15から第22までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0098】
第24の態様では、本開示は、3D細胞培養基材が少なくとも1つの毛細管構造およびスフェロイド誘引幾何形状を含むマイクロウェルのアレイを含み、スフェロイドがマイクロウェルのアレイに配置され、ステップ(b)が、架橋剤、プロトン供与体、および(a)のポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体を、マイクロウェルのうちの少なくとも1つに適用するステップを含む、第23の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0099】
第25の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが重ねられた配置で形成される、第23または第24の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0100】
第26の態様では、本開示は、ペクチナーゼまたはアルギナーゼを提供するステップをさらに含む、第15から第25までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0101】
第27の態様では、本開示は、ペクチナーゼまたはアルギナーゼを添加して、ヒドロゲルを解離させ、そこからスフェロイドを放出させる、第26の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0102】
第28の態様では、本開示は、プロトン供与体がグルコノラクトンを含む、第15から第27までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法を提供する。
【0103】
第29の態様では、本開示は、(a)アルギン酸、または(i)ペクチン酸もしくはその塩、または(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むゲル化剤と、(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含むプロトン供与体とを含む、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0104】
第30の態様では、本開示は、(d)3D細胞培養基材をさらに含む、第29の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0105】
第31の態様では、本開示は、3D細胞培養基材が少なくとも1つの毛細管構造およびスフェロイド誘引幾何形状を含むマイクロウェルのアレイを有する、第30の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0106】
第32の態様では、本開示は、3D細胞培養基材が細胞培養容器の少なくとも一部を含む、第30または第31の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0107】
第33の態様では、本開示は、細胞培養容器が多層プレート、ディッシュ、フラスコ、チューブ、多層フラスコ、軟質側フラスコまたはバッグから選択される、第32の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0108】
第34の態様では、本開示は、3D細胞培養基材の少なくとも1つの毛細管構造が隆起、裂け目、柱、不連続壁、波形壁、口、放物線状ウェル形状、洞様毛細管ウェル形状またはこれらの組み合わせから選択される、第31から第33までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0109】
第35の態様では、本開示は、スフェロイド誘引幾何形状が柱、不連続壁、波形壁、丸みを帯びたウェル底部、窪んだウェル底部、ピット、ペン先領域またはこれらの組み合わせを含む、第31から第34までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0110】
第36の態様では、本開示は、3D細胞培養基材がスフェロイド容器である、第30から第35までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0111】
第37の態様では、本開示は、PGA化合物を含むゲル化剤がペクチン酸を含む、第29から第36までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0112】
第38の態様では、本開示は、二価イオンの塩がカルシウム塩を含む、第29から第37までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0113】
第39の態様では、本開示は、二価イオンの塩が炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはこれらの組み合わせから選択されるカルシウム塩を含む、第29から第38までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0114】
第40の態様では、本開示は、二価イオンの塩が炭酸カルシウムである、第29から第39までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0115】
第41の態様では、本開示は、二価イオンの塩が25℃で約0mg/L~約20mg/Lの水溶性を有するカルシウム塩である、第29から第40までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0116】
第42の態様では、本開示は、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを分解するための消化剤をさらに含み、消化剤がペクチナーゼまたはアルギナーゼと、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレングリコール四酢酸(ETGA)、クエン酸、酒石酸またはこれらの組み合わせから選択されるキレート剤とを含む、第29から第41までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0117】
第43の態様では、本開示は、キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、第42の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0118】
第44の態様では、本開示は、細胞培養培地をさらに含む、第29から第43までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0119】
第45の態様では、本開示は、細胞培養培地がカルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地を含む、第44の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0120】
第46の態様では、本開示は、PGA化合物が細胞培養培地と混合されている、第44または第45の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0121】
第47の態様では、本開示は、PGA化合物が細胞培養培地とは別個の溶液である、第44または第45の態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【0122】
第48の態様では、本開示は、プロトン供与体がグルコノラクトンを含む、第29から第47までのいずれか1つの態様記載の消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを調製しかつ/または製造するためのキットを提供する。
【実施例】
【0123】
本明細書に記載された実施形態は、下記実施例によりさらに明確にされるであろう。
【0124】
実施例1
重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルの細胞生存率への影響
実験プロトコル。HepG2細胞の生存率に対する、重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルの影響を研究した。より具体的には、2D細胞培養単層上で増殖させたHepG2細胞および3D細胞培養基材上でスフェロイドに増殖させたHepG2細胞の生存率に対する、重ねられた消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲルの影響を研究した。
【0125】
2D細胞培養単層。Corning T-75フラスコ(フラスコ当たり約3×106個の細胞)中で細胞培養培地中においてHepG2細胞を増殖させることにより、HepG2細胞(ATCC;HB-8065)を、2D細胞培養基材上に播種するために調製した。細胞培養培地は、GlutaMAXを含む最小必須培地ならびにThermoFisherからの1×ペニシリン-ストレプトマイシンおよびThermoFisherからの10%ウシ胎仔血清を含むThermoFisherからのイーグル塩とした。HepG2細胞を、T-75フラスコ中で約90%コンフルエントまで増殖させた。ついで、細胞培養培地をT-75フラスコから除去し、2.5mLの0.25%のトリプシン-エチレンジアミン四酢酸(すなわち、EDTA)溶液(ThermoFisher)をT-75フラスコに添加した。T-75フラスコを、37℃、5%のCO2および約95%の相対湿度のCO2インキュベータを使用して、標準的な組織培養により、37℃で5分間インキュベートした。10%のウシ胎仔血清(すなわち、FBS;カタログ番号35-010-CV、Corning, Incorporated, Corning, NY)を含む、12.5mLの最小必須培地(すなわち、MEM;カタログ番号11095080、Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を、T-75フラスコに添加して、混合物を形成した。ついで、この混合物を、数回ピペットで上下させて、HepG2細胞のあらゆるクラスターを破壊した。ついで、20μLの混合物をセロメーター(Cellometer Auto T4、Nexcelom, Lawrence, MA)に入れ、HepG2細胞を混合物1mL当たりでカウントした。ついで、HepG2細胞を、35mLのMEM+10%のFBS中で、1mL当たり約4×105個の細胞の最終濃度に希釈した。
【0126】
2D細胞培養基材中に播種するためのHepG2細胞を調製すると、ついで、HepG2を、ウェル当たり5mLの、MEM+10%のFBS中で希釈したHepG2細胞をアリコートすることにより、2D細胞培養基材(Corning Inc.からのカタログ番号430641U細胞培養フラスコ)上に播種した。HepG2細胞を、室温で30分間放置し、その後インキュベートした。ついで、2D細胞培養基材中のHepG2細胞を、5%のCO2および95%の相対湿度を有するインキュベータ(Fisher ScientificからのNAPCOシリーズ8000 DH CO2インキュベータ)中において、37℃で一晩(約16時間)インキュベートした。
【0127】
消化性PGAスフェロイド安定化ヒドロゲル(以下、「PGAヒドロゲル」)を調製し、L-15培地(ATCC(登録商標)30-2008(商標)、カタログ番号21083027、Thermo Fisher Scientific)に重ねた。重ねられるPGAヒドロゲルについての調製において、残存する何らかの液体を2D細胞培養基材のウェルから除去し、L-15培地中の1mLのポリガラクツロン酸(すなわち、PGAまたはペクチン酸;Sigma Aldrich #P3850)を2D細胞培養基材の各ウェルに添加し、室温で5分間インキュベートした。PGAを、1%重量/重量のPGA濃度でライボビッツ培地に添加した。ついで、L-15培地中のPGAをウェルから除去した。
【0128】
PGAヒドロゲルを、L-15培地中のPGAを15mLのコニカルチューブ(Corning, Inc.)に添加することにより調製した。PGAを、濃度がL-15培地中で1%重量/重量となるように添加した。ついで、炭酸カルシウム(すなわち、CaCO3;Sigma Aldrich製品番号:795445G)を、1mg/mLの濃度まで添加した。15mLのコニカルチューブの底部に沈殿することを避けるために、CaCO3を十分に混合し、その後、L-15培地中のPGAを添加した。ついで、15mLのコニカルチューブを、短時間(約2秒)ボルテックスして、CaCO3がL-15培地中のPGA中に均一に分配されることを確実にした。ついで、グルコノデルタ-ラクトン(すなわち、GDL;Sigma Aldrich)を、L-15培地中のPGA中に均一に分配されたCaCO3に添加した。GDLを、約3.56mg/mLの最終濃度まで添加した。ついで、15mLのコニカルチューブを数回反転させて、L-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの適切な混合を確実にした。反転後、1~2mLのL-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの混合物を、2D細胞培養基材の各ウェルに添加した。L-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの混合物のゲル化を室温で約30分間起こさせ、重ねられたPGAヒドロゲルを形成した。対照ウェルを提供するために、L-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの混合物を添加する代わりに、1~2mL(約220μL/cm2)のL-15培地を対照ウェルに添加した。
【0129】
ついで、2D細胞培養基材を、約2℃~約8℃の温度での冷蔵庫中で一晩保存した。
【0130】
ついで、生細胞/死細胞染色を下記プロトコルに従って行った。2D細胞培養基材を、5℃での保存から取り出し、室温まで約15分間温めた。ついで、等量(ウェルに添加されたPGA/CaCO3およびGDL混合物の容量に応じて、1~2mL)のカルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸緩衝食塩水(すなわち、DPBS;ThermoFisher)を、2D細胞培養基材の各ウェルに添加し、5分間インキュベートした。ついで、重ねられたPGAヒドロゲルのいずれも除去しないように注意して、DPBSを各ウェルから除去した。
【0131】
生細胞/死細胞染色溶液を、15μLの赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび7.5mLの緑色蛍光カルセインAMを15mLのDPBSに添加し、ほ乳類細胞用のLIVE/DEAD(商標)Viability/Cytotoxicityキット(カタログ番号L3224、Thermo Fisher Scientific)を使用して十分混合することにより調製した。赤色蛍光エチジウムホモダイマーは、原形質膜の完全性の喪失を示し、インタクトな原形質膜は、生きた細胞の区別できる特徴であり、対照的に、緑色蛍光カルセインAMは、細胞内エステラーゼ活性を示し、遍在する細胞内エステラーゼ活性は、生きた細胞の区別できる特徴である。このようにして、生きた細胞を、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMによる同時染色により、死んだ細胞と識別することができる。
【0132】
ついで、等量の調製された生細胞/死細胞染色溶液を、各ウェル中の重ねられたPGAヒドロゲルに添加した(すなわち、1mLのPGAヒドロゲルに、1mLの調製された、生細胞/死細胞染色溶液を添加した)。ついで、添加された生細胞/死細胞染色溶液を、5℃で2時間インキュベートした。インキュベート後、細胞を、Nikon ECLIPSE Ti明視野顕微鏡およびNikon ECLIPSE Ti蛍光顕微鏡下で検査して、生きた細胞(すなわち、緑色蛍光を示す細胞)および死んだ細胞(すなわち、赤色蛍光を示す細胞)を可視化した。
【0133】
3D細胞培養。T-75フラスコ(フラスコ当たり約3×106個の細胞)中で細胞培養培地中においてHepG2細胞を増殖させることにより、HepG2細胞を、3D細胞培養基材上に播種するために調製した。HepG2細胞を、T-75フラスコ中で約90%コンフルエントまで増殖させた。ついで、細胞培養培地をT-75フラスコから除去し、2.5mLの0.25%のトリプシン-EDTA溶液をT-75フラスコに添加した。T-75フラスコを、5%のCO2および95%の相対湿度のCO2インキュベータ中において、37℃で5分間インキュベートした。10%のFBS(カタログ番号35-010-CV、Corning, Incorporated)を含む、12.5mLのMEM(カタログ番号11095080、Thermo Fisher Scientific)を、T-75フラスコに添加して、混合物を形成した。ついで、この混合物を、数回ピペットで上下させて、HepG2細胞のあらゆるクラスターを破壊した。ついで、20μLの混合物を、セロメーター(Nexcelom, Lawrence, MA)に入れ、HepG2細胞を、混合物1mL当たりでカウントした。ついで、HepG2細胞を、35mLのMEM+10%のFBS中で、1mL当たり約3.2×105個の細胞の最終濃度に希釈した。
【0134】
3D細胞培養基材中に播種するためのHepG2細胞を調製すると、HepG2を、ウェル当たり5mLの、MEM+10%のFBS中で希釈したHepG2細胞をアリコートすることにより、3D細胞培養基材上に播種した。3D細胞培養基材の各ウェルは、約1300個のマイクロキャビティを含む。約1200個のHepG2細胞を、各マイクロキャビティに播種した。HepG2細胞を、室温で30分間放置し、その後、インキュベートした。ついで、3D細胞培養基材中のHepG2細胞を、5%のCO2および95%のRHを有するインキュベータ中において、37℃で3日間インキュベートして、スフェロイドを形成した(約1500個の細胞/スフェロイド)。
【0135】
PGAヒドロゲルを調製し、L-15培地(カタログ番号21083027、Thermo Fisher Scientific)に重ねた。重ねられるPGAヒドロゲルについての調製において、残存する何らかの液体を、スフェロイドのいずれも吸引しないように注意して、3D細胞培養基材のウェルから除去した。ついで、L-15培地中の1mLのPGAを、3D細胞培養基材の各ウェルに添加し、室温で5分間インキュベートした。ついで、L-15培地中のPGAを、再度、スフェロイドのいずれも吸引しないように注意して、ウェルから除去した。
【0136】
PGAヒドロゲルを、L-15培地中のPGAを15mLのコニカルチューブに添加することにより調製した。PGAを、濃度がL-15培地中で1%重量/重量となるように添加した。ついで、CaCO3を、1mg/mLの濃度まで添加した。15mLのコニカルチューブの底部に沈殿することを避けるために、CaCO3を十分に混合し、その後、L-15培地中のPGAを添加した。ついで、15mLのコニカルチューブを、短時間(約2秒)ボルテックスして、CaCO3がL-15培地中のPGA中に均一に分配されることを確実にした。GDLを、L-15培地中のPGA中に均一に分配されたCaCO3に添加した。GDLを、約3.56mg/mLの最終濃度まで添加した。ついで、15mLのコニカルチューブを数回反転させて、L-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの適切な混合を確実にした。反転後、2~3mLのL-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの混合物を、3D細胞培養基材の各ウェルに添加した。L-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの混合物のゲル化を室温で約30分間起こさせ、PGAヒドロゲルを形成した。対照ウェルを提供するために、L-15培地中のPGA、CaCO3およびGDLの混合物を添加する代わりに、1mLのL-15培地を対照ウェルに添加し、5分間インキュベートし、除去し、ついで、2~3mLのL-15培地を対照ウェルに添加した。
【0137】
ついで、3D細胞培養基材を、約2℃~約8℃の温度の冷蔵庫中で一晩保存した。
【0138】
ついで、生細胞染色/死細胞染色を、下記プロトコルに従って行った。3D細胞培養基材を5℃での保存から取り出し、室温まで約15分間温めた。ついで、等量(ウェルに添加されたPGA/CaCO3およびGDL混合物の容量に応じて、1~2mL)のDPBSを、3D細胞培養基材の各ウェルに添加し、5分間インキュベートした。ついで、PGAヒドロゲルのいずれも除去しないように注意して、DPBSを各ウェルから除去した。
【0139】
生細胞/死細胞染色溶液を、15μLの赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび7.5mLの緑色蛍光カルセインAMを15mLのDPBSに添加し、ほ乳類細胞用のLIVE/DEAD(商標)Viability/Cytotoxicityキット(カタログ番号L3224、Thermo Fisher Scientific)を使用して十分混合することにより調製した。赤色蛍光エチジウムホモダイマーは、原形質膜の完全性の喪失を示し、インタクトな原形質膜は、生きた細胞の区別できる特徴であり、対照的に、緑色蛍光カルセインAMは、細胞内エステラーゼ活性を示し、遍在する細胞内エステラーゼ活性は、生きた細胞の区別できる特徴である。このようにして、生きた細胞を、赤色蛍光エチジウムホモダイマーおよび緑色蛍光カルセインAMによる同時染色により、死んだ細胞と識別することができる。
【0140】
ついで、等量の調製された生細胞/死細胞染色溶液を、各ウェル中のPGAヒドロゲルに添加した(すなわち、1mLのPGAヒドロゲルに、1mLの調製された、生細胞/死細胞染色溶液を添加した)。ついで、添加された生細胞/死細胞染色溶液を、5℃で2時間インキュベートした。ついで、細胞を、明視野顕微鏡および蛍光顕微鏡下で検査して、生きた細胞(緑色蛍光)および死んだ細胞(赤色蛍光)を可視化した。
【0141】
結果。
図3A~
図3Cおよび
図4A~
図4Cを参照すると、重ねられたPGAヒドロゲルを含む2D細胞培養単層上で増殖させたHepG2細胞は、PGAヒドロゲルを有さない2D細胞培養基材上で増殖させた対照HepG2細胞(例えば、
図3B~
図3Cを参照のこと)よりも高い生存率を示した(例えば、
図4B~
図4Cを参照のこと)。
図5A~
図5Cおよび
図6A~
図6Cを参照すると、重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドは、PGAヒドロゲルを有さない3D細胞培養基材上で増殖させた対照HepG2スフェロイド(例えば、
図5B~
図5Cを参照のこと)よりも高い生存率を示した(例えば、
図6B~
図6Cを参照のこと)。このような向上した生存率を考慮して、理論に拘束されることなく、重ねられたPGAヒドロゲルにより、インキュベートの間にHepG2細胞に細胞保存特性が提供されたと考えられる。
【0142】
実施例2
重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたスフェロイドの落下試験
実験プロトコル。スフェロイドの輸送を模倣するために、落下試験を、重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドについて行った。重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドを、実施例1の実験プロトコルに記載されたように調製した。また、生細胞染色/死細胞染色も、実施例1の実験プロトコルに記載されたように行った。落下試験の前に、3Dマイクロキャビティプレート中の細胞の生/死染色により、対照プレート上の細胞の全体的な健康を観察した。試験プレートを、PGAヒドロゲル上に重ねられた生/死溶液と共に、5℃で2時間インキュベートして、この溶液をヒドロゲル層および細胞に浸透させ、その後、可視化した。さらに、PGAヒドロゲルを有さない3D細胞培養基材上で増殖させた対照HepG2スフェロイドを、実施例1の実験プロトコルに記載されたように調製した。また、生細胞染色/死細胞染色も、実施例1の実験プロトコルに記載されかつ上記されたように行った。HepG2スフェロイドおよび重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材を、バブルラップ(厚さ約2インチ(約5.08cm))の層で包み、厚紙輸送箱に梱包した。また、PGAヒドロゲルを含まない対照HepG2スフェロイドを含む3D細胞培養基材も、バブルラップ(厚さ約2インチ(約5.08cm))の層で包み、厚紙輸送箱に梱包した。
【0143】
ついで、落下試験を、厚紙輸送箱を約1.5mの高さから5~10回落下させることにより行った。厚紙輸送箱内に梱包された3D細胞培養基材を、落下試験の実行後に回収し、3D細胞培養基材を裸眼でならびに明視野顕微鏡および蛍光顕微鏡下で視覚的に検査して、重ねられたPGAヒドロゲルおよび/またはスフェロイドの変位を決定した。
【0144】
結果。
図7A~
図7Cおよび
図8A~
図8Cを参照すると、重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材のマイクロキャビティは、PGAヒドロゲルを含まない対照3D細胞培養基材のマイクロキャビティ(例えば、
図7A~
図7Cを参照のこと)に比べ、落下試験後にHepG2スフェロイドのより高い保持を示した(例えば、
図8A~
図8Cを参照のこと)。また、
図7A~
図7Cにも示されているように、重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材のウェルは、落下試験の後、HepG2スフェロイドをその中に残存させた状態で、インタクトなままであった。このような保持を考慮して、理論に拘束されるものではないが、重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材中に提供されたHepG2スフェロイドは、その輸送中にそこから変位せずかつ/または制御されない凝集体を形成しないであろうと考えられる。
【0145】
実施例3
2D細胞培養単層上で増殖させたHepG2細胞および重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたスフェロイドの回収
実験プロトコル。重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材からのスフェロイドの回収を行った。重ねられたPGAヒドロゲルを含む2D細胞培養単層上で増殖させたHepG2細胞を、実施例1の実験プロトコルに記載したように調製した。さらに、重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドを、実施例1の実験プロトコルに記載されたように調製した。ついで、PGA消化溶液を調製した。重ねられたPGAヒドロゲルを含む2D細胞培養単層上で増殖させたHepG2細胞の消化のために、ペクチナーゼ(Sigma Aldrich製)を200U/mLの最終濃度でかつEDTAを20mMの最終濃度でDPBSに添加することにより、PGA消化溶液を調製した。重ねられたPGAヒドロゲルを含む3D細胞培養基材上で増殖させたHepG2スフェロイドの消化のために、ペクチナーゼ(Sigma Aldrich)を100U/mLの最終濃度でかつEDTAを10mMの最終濃度でDPBSに添加することにより、PGA消化溶液を調製した。
【0146】
ついで、残存する何らかの液体を2D培養基材および3D細胞培養基材のウェルから除去した。ついで、PGAヒドロゲルの体積と等しい体積の2D細胞培養単層PGA消化溶液を、2D細胞培養基材の各ウェルに添加した。例えば、2mLの重ねられたPGAヒドロゲルを含有するウェルについて、対応する2mLの2D細胞培養単層PGA消化溶液を、このようなウェルに添加した。このようにして、100U/mLのペクチナーゼおよび10mMのEDTAの最終濃度が、2D細胞培養基材の各ウェルにおいて達成された。PGAヒドロゲルの体積の2倍となる体積の3D細胞培養基材PGA消化溶液を、3D細胞培養基材の各ウェルに添加した。例えば、2mLの重ねられたPGAヒドロゲルを含有するウェルについて、4mLの3D細胞培養基材PGA消化溶液を、このようなウェルに添加した。ついで、PGA消化溶液を、ウェル中において、室温で30分間インキュベートした。本開示の実施形態によれば、消化に必要とされる正確な時間は、容易な場合、試薬の特定の濃度により決まるであろうことが企図される。一部の実施形態では、この時間は、約15分~約1時間の範囲であることができる。この期間中、PGA消化溶液は、PGAマトリクスを消化しかつ可溶化して、ポリガラクツロン酸をモノガラクツロン酸に分解するように作用する。
【0147】
ついで、残存する何らかの液体をウェルから除去し、2mLのDPBSを各ウェルに添加した。(例えば、スフェロイド収集を行うために)DPBSを添加する代わりに、スフェロイド細胞培養を継続するために、細胞培養培地を添加することができる。
【0148】
当業者であれば、その広範な発明概念から逸脱することなく、上記された実施形態に変更を行うことができると理解するであろう。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲により定義される本開示の精神および範囲内にある修正をカバーすることが意図されると理解される。
【0149】
引用された全ての文献は、参照により本明細書に援用される。いずれの文献の引用も、それが本開示に関する先行技術であるとの容認として解釈されるべきではない。
【0150】
種々の実施形態の記載により「含む(comprising)」および/または「含んでいる(including)」なる用語が使用される場合、当業者であれば、一部の特定の事例において、実施形態により、「実質的に~からなる」または「~からなる」なる語を使用して代替的に説明できることが理解されるであろうことをさらに理解されたい。
【0151】
本明細書全体を通して与えられる全ての最大数値限定は、より低い数値限定が本明細書に明示的に記載されているのと同様に、全てのより低い数値限定を含むと理解されたい。本明細書全体を通して与えられる全ての最小数値限定は、より高い数値限定が本明細書に明示的に記載されているのと同様に、全てのより高い数値限定を含む。本明細書全体を通して与えられる全ての数値範囲は、このようなより狭い数値範囲が全て本明細書で明示的に記載されているのと同様に、このようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を含むであろう。
【0152】
特に断らない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、特許請求される主題が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における説明で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、限定を意図するものではない。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈から明示的に別段のことが示されない限り、複数形も含むことが意図される。
【0153】
コンポーネントの寸法および/もしくはその範囲ならびに/または組成物中の成分、例えば、消化性スフェロイド安定化ヒドロゲル等の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、粘度および/またはそれらの値および範囲に関する「約」なる用語は、本開示の実施形態を記載する際に利用されるように、例えば、材料、組成物、組成物の成分等を調製するための典型的な測定および/もしくは取り扱い手法、手順における不注意な誤りならびに/または方法を実施するために使用される出発物質および/もしくは成分の製造、供給源および/もしくは純度における差異を介して生じる場合がある数量の変動を指す。また、「約」なる用語は、特定の初期濃度を有する組成物および/もしくは混合物の劣化に起因して異なる量ならびに特定の初期濃度を有する組成物および/もしくは混合物の混合および/もしくは処理に起因して異なる量も包含する。
【0154】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0155】
実施形態1
カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地中でスフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するためのキットであって、
(a)(i)ペクチン酸もしくはその塩、または
(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩
のうちの少なくとも一方を含むポリガラクツロン酸(PGA)化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤と、
(b)二価イオンの塩を含む架橋剤と、
(c)ラクトン、エステル、または水溶液中で加水分解して10分~1時間の期間にわたって酸を形成する他の化合物を含む、プロトン供与体と
を含む、キット。
【0156】
実施形態2
前記PGA化合物が、前記カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地と混合されている、実施形態1記載のキット。
【0157】
実施形態3
前記PGA化合物が、前記カルシウムを含まないまたはカルシウムキレート化された細胞培養培地とは別個の溶液である、実施形態1記載のキット。
【0158】
実施形態4
前記プロトン供与体が、グルコノラクトンである、実施形態1記載のキット。
【0159】
実施形態5
前記架橋剤が、カルシウム塩である、実施形態1記載のキット。
【0160】
実施形態6
前記カルシウム塩が、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはこれらの組み合わせから選択される、実施形態5記載のキット。
【0161】
実施形態7
前記カルシウム塩が、炭酸カルシウムを含む、実施形態5記載のキット。
【0162】
実施形態8
前記カルシウム塩が、25℃で0mg/L超~約20mg/Lの水溶性を有する、実施形態5記載のキット。
【0163】
実施形態9
前記キットが、三次元(3D)細胞培養基材をさらに含む、実施形態1記載のキット。
【0164】
実施形態10
前記3D細胞培養基材が、少なくとも1つの毛細管構造およびスフェロイド誘引幾何形状を含むマイクロウェルのアレイを有する、実施形態9記載のキット。
【0165】
実施形態11
前記3D細胞培養基材が、細胞培養容器の少なくとも一部を含む、実施形態9記載のキット。
【0166】
実施形態12
前記キットが、スフェロイド容器をさらに含む、実施形態1記載のキット。
【0167】
実施形態13
前記キットが、スフェロイド安定化ヒドロゲルを分解するための消化剤をさらに含み、前記消化剤が、ペクチナーゼと、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレングリコール四酢酸(ETGA)、クエン酸、酒石酸、またはこれらの組み合わせから選択されるキレート剤とを含む、実施形態1記載のキット。
【0168】
実施形態14
消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを製造するための方法であって、前記方法が、
ポリガラクツロン酸(PGA)化合物が架橋剤およびプロトン供与体を介して架橋されて、前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルを形成する条件下で、
(a)カルシウム塩を含む架橋剤およびグルコノラクトンを含むプロトン供与体を、
(i)ペクチン酸もしくはその塩、または
(ii)約1~約40モル%のエステル化度を有する部分的にエステル化されたペクチン酸もしくはその塩
のうちの少なくとも一方を含むPGA化合物またはアルギン酸化合物を含むゲル化剤を含む水性媒体と共に提供するステップ
を含む、方法。
【0169】
実施形態15
前記方法が、ペクチナーゼまたはアルギン酸リアーゼを添加して、前記ヒドロゲルを解離させ、前記ヒドロゲルからスフェロイドを放出させるステップをさらに含む、実施形態14記載の方法。
【0170】
実施形態16
前記水性媒体が、細胞培養培地を含む、実施形態14記載の方法。
【0171】
実施形態17
前記架橋剤および前記プロトン供与体を、前記PGA化合物を含む前記ゲル化剤を含む前記水性媒体と共に提供するステップ(a)が、
(1)前記架橋剤を、前記PGA化合物を含む前記水性媒体と混合して、水溶液を形成するステップと、
(2)前記グルコノラクトンに前記水溶液を提供することにより、前記PGA化合物の架橋を開始するステップと
を含む、実施形態14記載の方法。
【0172】
実施形態18
前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルが、
約1%重量/重量の、前記ペクチン酸である前記PGA化合物と、
約2:1の前記プロトン供与体に対する前記架橋剤のモル比と
を含む、実施形態14記載の方法。
【0173】
実施形態19
前記方法が、
(b)前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルがin situで形成されるように、前記消化性スフェロイド安定化ヒドロゲルのゲル化前に、前記架橋剤、前記プロトン供与体、および(a)の前記ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む前記ゲル化剤を含む前記水性媒体と、スフェロイドを含む三次元(3D)細胞培養基材とを提供するステップ
をさらに含む、実施形態14記載の方法。
【0174】
実施形態20
前記3D細胞培養基材が、少なくとも1つの毛細管構造およびスフェロイド誘引幾何形状を含むマイクロウェルのアレイを有し、
前記スフェロイドが、前記マイクロウェルのアレイに配置されており、
前記提供するステップ(b)が、前記架橋剤、前記プロトン供与体、および(a)の前記ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む前記ゲル化剤を含む前記水性媒体を、前記マイクロウェルのうちの少なくとも1つに適用するステップを含む、
実施形態19記載の方法。
【国際調査報告】