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特表2022-550797リポソームカンナビノイドおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】リポソームカンナビノイドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20221128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20221128BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20221128BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P43/00 111
A61K9/127
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/42
A61K47/40
A61K9/08
A61P43/00 171
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520067
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 IL2020051068
(87)【国際公開番号】W WO2021064730
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/910,097
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504000281
【氏名又は名称】イッサム・リサーチ・ディベロップメント・カンパニー・オブ・ザ・ヘブルー・ユニバーシティ・オブ・エルサレム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーレンホルツ、イェヘッケル
(72)【発明者】
【氏名】セルン、アフヴァ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA19
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC29
4C076DD08E
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD52
4C076EE23
4C076EE23E
4C076EE39
4C076EE41
4C076FF31
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA61
4C206MA86
4C206NA10
4C206ZC41
4C206ZC61
(57)【要約】
本開示は、カンナビノイドの持続放出製剤を提供する。製剤は、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含み、上記リポソームは、捕捉されたカンナビノイドと、上記カンナビノイドの少なくとも1つの分散剤とを含み、上記分散剤は、シクロデキストリン(CD)化合物;または捕捉されたカンナビノイド以外であり、上記カンナビノイドの少なくとも一部は、上記脂質膜に捕捉されており、上記脂質膜は、1~10の範囲の、上記カンナビノイドと上記1つ以上のリポソーム形成脂質とのモル比を有する。カンナビノイドの持続送達のための製剤の調製方法および使用、ならびにそれを使用する治療的処置も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤であって、前記リポソームが、捕捉されたカンナビノイドと、前記カンナビノイドの少なくとも1つの分散剤とを含み、前記分散剤が、シクロデキストリン(CD)化合物以外である持続放出製剤。
【請求項2】
前記リポソームが、捕捉されたカンナビジオールCBDまたはその機能的ホモログを含む、請求項1に記載の持続放出製剤。
【請求項3】
前記カンナビノイドの少なくとも一部が、前記リポソーム内水性コア内に捕捉されている、請求項1または2に記載の持続放出製剤。
【請求項4】
CD以外の前記分散剤が、前記リポソーム内水性コア内に捕捉されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項5】
前記分散剤が、可溶化剤を含むか、または可溶化剤である、請求項1から4のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項6】
前記可溶化剤が、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンおよびプロパン-1,2,3-トリオール:オキシラン(1:1)から選択される、請求項5に記載の持続放出製剤。
【請求項7】
前記分散剤が、共溶媒を含むか、または共溶媒である、請求項1から4のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項8】
前記共溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)300、プロピレングリコール(PG)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)およびエタノールから選択される、請求項7に記載の持続放出製剤。
【請求項9】
前記分散剤が、タンパク質を含むか、またはタンパク質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項10】
前記タンパク質が血清タンパク質である、請求項9に記載の持続放出製剤。
【請求項11】
前記血清タンパク質が、ヒト血清アルブミンおよび免疫グロブリンから選択される、請求項10に記載の持続放出製剤。
【請求項12】
前記分配剤に加えて、シクロデキストリン(CD)化合物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項13】
前記CD化合物が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPγCD)およびソルホブチルエーテル(SBE)シクロデキストリンからなる群から選択される、請求項12に記載の持続放出製剤。
【請求項14】
前記CD化合物がHPβCDである、請求項13に記載の持続放出製剤。
【請求項15】
脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤であって、前記脂質膜が、1つ以上のリポソーム形成脂質を含み、前記リポソームが、捕捉されたカンナビノイドを含み、前記カンナビノイドの少なくとも一部が、前記脂質膜に捕捉されており、前記脂質膜が、1~10の範囲の、前記カンナビノイドと前記1つ以上のリポソーム形成脂質とのモル比を有する持続放出製剤。
【請求項16】
前記カンナビノイドの少なくとも一部が、前記リポソーム内水性コア内に捕捉されている、請求項15に記載の持続放出製剤。
【請求項17】
前記カンナビノイドが、CBDを含むか、またはCBDである、請求項15または16に記載の持続放出製剤。
【請求項18】
シクロデキストリン(CD)化合物以外の少なくとも1つの分散剤を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項19】
前記分散剤が、界面活性剤、共溶媒、タンパク質から選択される、請求項18に記載の持続放出製剤。
【請求項20】
前記分散剤に加えて、シクロデキストリン(CD)化合物を含む、請求項13から19のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項21】
注射可能な製剤として使用するための、請求項1から20のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項22】
注射による哺乳動物対象の治療に使用するための、請求項1から20のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項23】
前記哺乳動物対象がヒト対象である、請求項1から22のいずれか一項に記載の持続放出製剤。
【請求項24】
治療を必要とする対象に、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤を投与することを含む治療方法であって、前記リポソームが、捕捉されたカンナビノイドと、前記カンナビノイドの少なくとも1つの分散剤とを含み、前記分散剤が、シクロデキストリン(CD)化合物以外である治療方法。
【請求項25】
前記リポソームが、捕捉されたカンナビジオール(CBD)またはその機能的ホモログを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記カンナビノイドの少なくとも一部が、前記リポソーム内水性コア内に捕捉されている、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
CD以外の前記分散剤が、前記リポソーム内水性コア内に捕捉されている、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
治療を必要とする対象に、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤を投与することを含む治療方法であって、前記脂質膜が、1つ以上のリポソーム形成脂質を含み、前記リポソームが、捕捉されたカンナビノイドを含み、前記カンナビノイドの少なくとも一部が、前記脂質膜に捕捉されており、前記脂質膜が、1~10の範囲の、前記カンナビノイドと前記1つ以上のリポソーム形成脂質とのモル比を有する治療方法。
【請求項29】
前記カンナビノイドの少なくとも一部が、前記リポソーム内水性コア内に捕捉されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記カンナビノイドが、CBDを含むか、またはCBDである、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
シクロデキストリン(CD)化合物以外の少なくとも1つの分散剤を含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記投与が、前記持続放出製剤の注射を含む、請求項24から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与が筋肉内注射を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が皮下投与を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
ヒト治療のための、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
獣医学的治療のための、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リポソームカンナビノイドに関する。
【0002】
本開示の主題の背景として関連すると考えられる参考文献を以下に列挙する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許出願公開国際公開第2017203529号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開国際公開第2001003668号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第20170044092号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開国際公開第2018145213号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第20180193399号明細書
【特許文献6】米国特許第9,095,555号明細書
【特許文献7】米国特許第1,011,7883号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20170281701号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20180318237号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第20180271924号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第20170107280号明細書
【特許文献12】国際特許出願公開国際公開第2017191630号パンフレット
【特許文献13】米国特許出願公開第20180303791号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第20180042845号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第20180185324号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第20180289665号明細書
【特許文献17】米国特許第9655910号明細書
【特許文献18】米国特許第8242178号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第20180221304号明細書
【0004】
本明細書における上記の参考文献の承認は、これらが本開示の主題の特許性に何らかの形で関連することを意味すると推測されるべきではない。
【背景技術】
【0005】
様々なリポソームと会合したCBDの使用を記載した刊行物はほとんどなく、例えば、国際公開第2017203529号パンフレットには、カンナビジオール(CBD)またはその誘導体とヒアルロン酸またはその塩との組合せ、リン脂質、および場合により生理学的に許容される担体を含む組成物が記載されている。CBDは、リン脂質によって形成されたリポソームに組み込まれ得る。組成物は、炎症性関節疾患、またはそのような疾患に関連する疼痛もしくは炎症の治療に使用するために記載されている。組成物は、局所注射用に製剤化される。
【0006】
リポソームCBDを記載する他の刊行物には、リポソーム封入カンナビノイドの肺送達を記載している国際公開第2001003668号パンフレット、場合によりリポソーム内のカンナビノイドの局所投与を記載する米国特許第20180318237号明細書、ステロイド用量を減少させ、炎症性疾患および自己免疫疾患を治療するための、場合によりリポソーム内のカンナビジオールの使用を記載している国際公開第2017191630号パンフレット、多発性骨髄腫を治療するためのカンナビノイドの使用を記載しており、カンナビノイドはリポソーム内にあり得る米国特許第20180303791号明細書、米国特許第20180042845号明細書および米国特許第20180185324号明細書、中毒を治療するための、場合によりリポソーム内のカンナビノイドの使用を記載している米国特許第9655910号明細書、自己免疫性肝炎を治療するための、場合によりリポソーム内のカンナビジオールの使用を記載している米国特許第8242178号明細書、ならびに肥満細胞関連炎症性障害または好塩基球媒介性炎症性障害を治療するためのカンナビノイド含有複合体混合物を記載しており、リポソームは局所送達のための手段として示唆されている米国特許第20180221304号明細書が含まれる。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤であって、リポソームは、1つ以上のリポソーム形成脂質、捕捉されたカンナビノイド(例えばカンナビジオール(CBD))またはその機能的ホモログと、シクロデキストリン(CD)化合物ではない、カンナビノイドの少なくとも1つの分散剤(例えば、PG、HSA、IVIg)とを含む持続放出製剤を提供する。リポソーム内コアは、CDも含み得る。
【0008】
脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤であって、脂質膜は、1つ以上のリポソーム形成脂質を含み、上記リポソームは、捕捉されたカンナビノイドを含み、上記カンナビノイドの少なくとも一部は、上記脂質膜に捕捉されており、上記脂質膜は、1~10の範囲の、上記カンナビノイドと上記1つ以上のリポソーム形成脂質とのモル比を有する持続放出製剤も本開示によって提供される。
【0009】
必要とする対象に、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤の治療有効量を投与することを含む治療方法であって、リポソームは、1つ以上のリポソーム形成脂質と、捕捉されたカンナビノイド化合物と、CD化合物ではない、カンナビノイドの少なくとも1つの分散剤とを含む治療方法も本開示によって提供される。
【0010】
さらに、治療を必要とする対象に、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤を投与することを含む治療方法であって、脂質膜は、1つ以上のリポソーム形成脂質を含み、上記リポソームは、捕捉されたカンナビノイドを含み、上記カンナビノイドの少なくとも一部は、上記脂質膜に捕捉されており、上記脂質膜は、1~10の範囲の、上記カンナビノイドと上記1つ以上のリポソーム形成脂質とのモル比を有する治療方法が本開示によって提供される。
【0011】
いくつかの例では、製剤は、捕捉されたCD化合物も含む。
【0012】
本明細書に開示される主題をさらによく理解し、それを実際にどのように実行することができるかを例示するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】リポソームCBD(F1、図1A)、リポソームCBD-HSA 50mg/ml(図1B)、リポソームCBD-HSA 100mg/ml(図1C)を含む様々なCBD製剤の顕微鏡画像(Zeiss SN 221209、倍率200倍)である。
図1B】リポソームCBD(F1、図1A)、リポソームCBD-HSA 50mg/ml(図1B)、リポソームCBD-HSA 100mg/ml(図1C)を含む様々なCBD製剤の顕微鏡画像(Zeiss SN 221209、倍率200倍)である。
図1C】リポソームCBD(F1、図1A)、リポソームCBD-HSA 50mg/ml(図1B)、リポソームCBD-HSA 100mg/ml(図1C)を含む様々なCBD製剤の顕微鏡画像(Zeiss SN 221209、倍率200倍)である。
図2A】2つの別個のインビボ試験で異なるIM製剤(n=3、平均±SD、外れ値なし)と対比した、12mg/kg用量のIV投与後の血漿CBD濃度(ng/ml)を示すグラフである。
図2B】2つの別個のインビボ試験で異なるIM製剤(n=3、平均±SD、外れ値なしと対比した、12mg/kg用量のIV投与後の血漿CBD濃度(ng/ml)を示すグラフである。
図3A】異なる製剤(n=3、平均±SD、外れ値なし)のIM投与後に筋肉から放出された絶対CBD(mg)(図3A)、および異なる製剤(n=3、平均±SD、外れ値なし)のIM投与後に筋肉から放出されたCBD(パーセント)(図3B)を示すグラフである。
図3B】異なる製剤(n=3、平均±SD、外れ値なし)のIM投与後に筋肉から放出された絶対CBD(mg)(図3A)、および異なる製剤(n=3、平均±SD、外れ値なし)のIM投与後に筋肉から放出されたCBD(パーセント)(図3B)を示すグラフである。
図4】DMPC:DPPC-CBDリポソームの顕微鏡画像(Zeiss SN 221209、倍率200倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、リポソーム二重層に捕捉されたCBDの存在が、リポソームからのCBDの放出速度に影響を及ぼし(低下させ/減速し)、リポソーム製剤からのCBDの持続送達を可能にするという予想外の知見に基づく。本開示はまた、(リポソーム内水性環境内のCBDの有無にかかわらず)リポソーム内水性環境内の分散剤(CBDを均一に分配することができる)の存在が、リポソームからのCBDの放出速度を低下させることもできるという知見に根拠を見出す。
【0015】
したがって、その第1の態様によれば、本開示は、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤であって、リポソームは、1つ以上のリポソーム形成脂質と、捕捉されたカンナビノイド化合物と、シクロデキストリン(CD)化合物以外の(すなわち、シクロデキストリン(CD)化合物ではない)少なくとも1つのカンナビノイド分散剤とを含む持続放出製剤を提供する。
【0016】
第2の態様によれば、本開示は、脂質膜と、リポソーム内水性コアとを有するリポソームを含む持続放出製剤であって、脂質膜は、1つ以上のリポソーム形成脂質を含み、上記リポソームは、捕捉されたカンナビノイドまたはその機能的ホモログを含み、上記カンナビノイドの少なくとも一部は、脂質膜に捕捉されており、上記脂質膜は、1~10の範囲の、上記カンナビノイドと上記1つ以上のリポソーム形成脂質とのモル比を有する持続放出製剤を提供する。
【0017】
カンナビノイド化合物の持続送達を必要とする状態を治療するために上述の持続リポソーム製剤を使用する方法であって、したがって、上記対象への持続放出製剤の投与を含む方法も本開示によって提供される。
【0018】
本明細書に開示される製剤は、少なくとも1つのカンナビノイドを含む。本開示の文脈では、カンナビノイドに言及する場合、単一の化合物、またはカンナビノイド化合物の組合せを包含すると理解されるべきである(すなわち、本明細書で使用される該用語は、単一または複数のそのような化合物を包含する)。いくつかの例では、カンナビノイドの組合せは、植物抽出物の成分、すなわち、複数のカンナビノイドならびに場合により植物フラボノイドおよびテルペノイドを含む。
【0019】
いくつかの例では、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)であるか、またはそれを含む。
【0020】
いくつかの他の例では、カンナビノイドは、テトラヒドロカンナビノール(THC)(Delta9-THCおよび/またはDelta8-THC)であるか、またはそれを含む。
【0021】
本開示の範囲内に入る他のカンナビノイドには、それぞれ本開示の別個の実施形態を構成する、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロマノン(CBCN)、カンナビクロメン酸(CBCA)、カンナビバリクロメン(CBCV)、カンナビクロメバリン酸(CBCVA)、イソテトラヒドロカンナビノール(iso-THC)、カンナビノール(CBN)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビノールメチルエーテル(CBNM)、カンナビノールC(CBN-C)、カンナビノールC(CBN-C)、カンナビノールC(CBN-C)、カンナビノジオール(CBND)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビエルソン酸A(CBEA-A)、カンナビエルソン酸B(CBEA-B)、カンナビシクロル(cannabicyclol)(CBL)、カンナビシクロ酸(cannabicycloic acid)(CBLA)、カンナビシクロバリン(CBLV)、カンナビトリオール(CBT)、カンナビトリオールバリン(CBTV)、エトキシ-カンナビトリオールバリン(CBTVE)、カンナビバリン(CBV)、カンナビノジバリン(CBVD)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビゲロバリン酸(CBGVA)、カンナビフラン(CBF)、デヒドロカンナビフラン(DCBF)、カンナビリスポール(cannabirispol)(CBR)からなる群から選択される1つのカンナビノイド、または2つ以上のカンナビノイドの任意の組合せが含まれる。
【0022】
いくつかの例では、カンナビノイドは、CBDと上記のカンナビノイドのうちのいずれか1つ以上との組合せであるか、またはそれを含む。
【0023】
いくつかの好ましい例では、製剤内のカンナビノイドはCBDである。
【0024】
CBD化合物という用語は、本開示の文脈では、CBDおよびその機能的ホモログを包含する。CBD機能的ホモログに言及する場合、それは、CBDと同様の物理化学的特性を有する化合物として理解されるべきである。
【0025】
いくつかの例では、CBD機能的ホモログは、少なくとも1つのベンゼン環と、4を超えるlogPとを含む、CBDの化学的類似体である。
【0026】
いくつかの例では、CBD機能的ホモログには、CBDと同様にテトラヒドロカンナビノール(THC)の精神作用を欠く、CBDの構造ホモログ(異性体を含む)が含まれる。
【0027】
いくつかの例では、CBD化合物は、天然のフィトカンナビノイドである。
【0028】
いくつかの例では、CBD化合物は合成CBDホモログである。
【0029】
CBD化合物の非限定的な例には、名称2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオール(CBD)、合成カンナビジオール-ジメチルヘプチル(CBD-DNH)、フィトカンナビノイドカンナビジバリン(CBDV)、カンナビジバリノール酸(Cannabidivarinolic acid)(CBDVA)、カンナビジオールモノメチルエーテル(CBDM)[Paula Morales,Patricia H.Reggio,and Nadine Jagerovic ’’An Overview on Medicinal Chemistry of Synthetic and Natural Derivatives of Cannabidiol’’ Front Pharmacol.’’8:422,(2017)]が挙げられる。
【0030】
いくつかの例では、活性成分は、その化学名2-[(1R,6R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘキサ-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1,3-ジオールによって知られるCBDである。
【0031】
カンナビノイド、好ましくはCBD化合物は、リポソームに捕捉/会合される。本開示の文脈では、リポソームへの化合物の捕捉に言及する場合、それは、カンナビノイドとリポソーム自体との間の任意の形態の物理的会合または化学的会合を定義するものとして理解されるべきである。ただし、リン脂質がリポソームの形態であることのみによる物理的会合、およびカンナビノイドとリン脂質自体との間の化学的会合はないことは明らかであるはずである。会合は、カンナビノイドをリポソーム内水性コア/媒体内に封入することによる、および/またはカンナビノイドを少なくとも部分的に脂質膜内に包埋することによる(例えば、カンナビノイドの疎水性に起因して)、および/またはカンナビノイドをリポソームの外面と会合させることによる(例えば、物理的な力によって)ものであり得る。
【0032】
リポソームに捕捉されたカンナビノイドの量は、市販のクロマトグラフィー技術を使用して決定することができる。いくつかの例では、カンナビノイドの濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/UV法を使用して決定される。
【0033】
いくつかの例では、脂質膜に捕捉されたカンナビノイドは、当技術分野で公知の方法によって決定される。例えば、限定するものではないが、脂質膜内の1つ以上のリポソーム形成脂質とCBDとの比は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。
【0034】
カンナビノイドのリポソーム内濃度を計算するためには、以前に記載されたように計算され得る水性リポソーム内捕捉体積も必要である[Bangham AD,et.al.(1965)J MoI Biol.13(l):238-52]。
【0035】
いくつかの例では、リポソームによって捕捉されるカンナビノイド、好ましくはCBD化合物の量は、少なくとも30mg/ml、時に少なくとも40mg/ml、時に少なくとも50mg/ml、時に少なくとも60mg/ml、時に少なくとも70mg/ml、時に少なくとも80mg/ml、時に少なくとも90mg/ml、時に少なくとも100mg/ml、時に少なくとも110mg/ml、時に少なくとも120mg/ml、時に少なくとも130mg/ml、時に少なくとも140mg/ml、時に少なくとも150mg/ml、時に少なくとも160mg/ml、時に少なくとも170mg/ml、時に少なくとも180mg/ml、時に少なくとも190mg/ml、さらには少なくとも20mg/mlである。
【0036】
いくつかの例では、リポソームによって捕捉されるカンナビノイド、好ましくはCBD化合物の量は、最大400mg/ml、時に最大350mg/ml、時に最大330mg/ml、時に最大310mg/ml、時に最大300mg/ml、時に最大280mg/ml、時に最大260mg/ml、時に最大240mg/ml、時に最大220mg/ml、時に最大200mg/ml、時に最大190mg/ml、時に最大180mg/ml、時に最大170mg/ml、時に最大160mg/ml、時に最大150mg/ml、時に最大140mg/ml、時に最大130mg/ml、時に最大120mg/mlである。
【0037】
いくつかの例では、リポソームによって捕捉されるカンナビノイド、好ましくはCBD化合物の量は、30~400mg/mlの範囲、時に30~350mg/mlの範囲、時に30~350mg/mlの範囲、時に30~350mg/mlの範囲、時に30~350mg/mlの範囲、時に30~200mg/mlの範囲、時に50~250mg/mlの範囲、時に40~180mg/mlの範囲、時に40~250mg/mlの範囲、時に30~120mg/mlの範囲、時に40~150mg/mlの範囲、時に50~300mg/mlの範囲、または上記で特定された下限濃度および上限濃度内の任意の範囲である。
【0038】
いくつかの例では、カンナビノイド対脂質のモル比が決定される。
【0039】
いくつかの例では、カンナビノイド化合物/脂質モル比は、1~10、時に1~9、時に1~8、時に1~7、時に1~6、時に1~5である。
【0040】
本開示の独特の特徴は、リポソーム内区画の、シクロデキストリン(CD)ではない少なくとも1つのカンナビノイド分散剤と組み合わせたカンナビノイド、好ましくはCBD化合物の存在下にある。これは、様々な分散剤を使用して達成される、水溶液中のCBD(7.03の予測logPを有するCBD)などのカンナビノイドの非常に低い溶解度に起因して独特である。理論によって束縛されるものではないが、分散剤(CD化合物ではないが、CD化合物と組み合わされ得る)は、リポソーム内水性コア内のリポソーム内に存在する場合、溶解した、または均一に分散した形態のカンナビノイドの量を維持し、それによって、リポソーム内のカンナビノイドの持続可能性を改善すると考えられる。
【0041】
本開示の文脈では、用語「カンナビノイド分散剤」は、リポソームへのカンナビノイドのローディング(好ましくは、排他的ではないが、受動的ローディングによって)に使用される液体媒体中のカンナビノイド(1つのカンナビノイド、またはカンナビノイドの組合せ)の分散性を促進または増強する任意の化学的実体を包含すると理解されるべきである。理論によって束縛されるものではないが、カンナビノイド分散剤は、カンナビノイドと物理的に会合し、それによって、非共有結合性複合体の形態でリポソーム内に捕捉されるようになる。
【0042】
いくつかの例では、分散剤は可溶化剤(可溶化促進剤という用語によっても認識される)である。可溶化剤に言及する場合、CDではない少なくとも1つの化合物を包含すると理解されるべきである。したがって、本開示の文脈では、用語「CD以外の可溶化剤」は、CDではない任意の可溶化増強化合物として理解されるべきであるが、追加の可溶化増強化合物としてCDと組み合わされ得る。
【0043】
可溶化剤は、特に不溶性薬物、または溶解度が低い薬物を使用する場合、薬物溶解度を改善するために使用されることが知られている。本開示のいくつかの例では、カンナビノイドは脂質相および水相の両方に加えられるため、カンナビノイド化合物は、脂質相(脂質膜)と水性リポソーム内相との間に分布し、したがって、活性成分(すなわち、CBD化合物などのカンナビノイド)の2つの異なるプールを提供すると考えられる。
【0044】
換言すれば、理論によって束縛されるものではないが、分散剤は、リポソーム内水性媒体中にカンナビノイドを維持し、リポソームからの活性成分、例えばCBD化合物の制御された(具体的には、例えば最大3週間まで持続する)放出を促進すると考えられる。
【0045】
様々な種類の可溶化剤が存在する。可溶化剤は、共溶媒、すなわち、難溶性化合物の溶解度を増大/改善するために一次溶媒(有機溶媒または水であるかにかかわらず)に少量で加えられる物質、例えば、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG300、PEG400、プロピレングリコール(PG)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、エタノールであり得るか、または界面活性剤、例えば、限定するものではないが、Tween80(モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン)、Cremophor(プロパン-1,2,3-トリオール:オキシラン(1:1))として認識されてもよいか、または錯化剤、例えば、シクロデキストリンファミリーの化合物のメンバーとして認識されてもよい。
【0046】
いくつかの例では、可溶化剤は共溶媒である。好ましい共溶媒はPEGである。別の好ましい共溶媒はPGである。
【0047】
分散剤は、可溶化剤以外であってよい。いくつかの例では、分散剤は、カンナビノイド、好ましくはCBDを、それが溶解している水性媒体に分散させる能力によって選択されるタンパク質である。
【0048】
いくつかの例では、分散タンパク質は血清タンパク質である。
【0049】
いくつかの例では、血清タンパク質はアルブミンである。
【0050】
いくつかの例では、血清タンパク質はヒト血清アルブミン(HSA)である。
【0051】
いくつかの例では、血清タンパク質はグロブリンである。
【0052】
いくつかの例では、血清タンパク質は免疫グロブリンである。
【0053】
分散剤とカンナビノイドとは、非共有結合によって会合する。いくつかの例では、分散剤とカンナビノイドとは、好適な条件下で分散剤からのカンナビノイドの放出を可能にするように、物理的複合体を形成する。したがって、分散剤とカンナビノイドとは、いくつかの例では、互いに非共有結合している。
【0054】
いくつかの例では、製剤は、2つ以上の分散剤の組合せを含む。
【0055】
いくつかの例では、2つ以上の分散剤の組合せは、少なくともシクロデキストリン(CD)化合物を含む。
【0056】
いくつかの例では、分散剤の組合せは、そのいずれもCD化合物ではない2つ以上のそのような化合物を含む。
【0057】
上記のように、リポソームは、CD化合物も含み得る。CD化合物は、(α-1,4)結合α-D-グルコピラノース単位からなる環状オリゴ糖として認識されており、親油性の中心空洞と、親水性の外面とを含む。本開示の文脈では、CDは、天然に存在するCD、および天然に存在するCDの誘導体であり得る。天然のCDには、それぞれ6、7および8個のグルコピラノース単位からなるα-、β-またはγ-シクロデキストリン(αCD、βCDまたはγCD)が含まれる。天然CDの誘導体(一般用語「CD化合物」の下にも包含される)に言及する場合、それは、親油性の中心空洞と、親水性の外面とを有する(α-1,4)結合α-D-グルコピラノース単位からなる任意の環状オリゴ糖として理解されるべきである。
【0058】
いくつかの例では、CD化合物は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)である。
【0059】
いくつかの例では、CD化合物は2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPγCD)である。
【0060】
いくつかの例では、CD化合物はソルホブチルエーテル(Solfobutyl ether)(SBE)シクロデキストリンである。
【0061】
好ましい一例では、CDは、HPβCDまたは略してHPCDである。
【0062】
製剤は、リポソームも含む。
【0063】
リポソームは、少なくとも1つのリポソーム形成脂質を用いて事前に調製される。本発明の文脈では、用語「リポソーム形成脂質」は、以下でさらに説明されるように、水中で、限定するものではないが、リポソームなどの小胞になるグリセロリン脂質またはスフィンゴミエリンを主に示す。
【0064】
グリセロリン脂質に言及する場合、それは、頭部基のヒドロキシル基のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つが、アシル鎖、アルキル鎖もしくはアルケニル鎖、ホスファート基、または上記のいずれかの組合せ、および/またはこれらの誘導体のうちの1つまたは2つによって置換されており、頭部基に化学反応性基(アミン、酸、エステル、アルデヒドまたはアルコールなど)を含み、それによって、極性頭部基を有する脂質を提供し得る、グリセロール骨格を有する脂質として理解されるべきである。スフィンゴミエリンは、1位に結合したホスホリルコリン部分を有するセラミド単位からなり、したがって、実際にはN-アシルスフィンゴシンである。スフィンゴミエリン内のホスホコリン部分は、スフィンゴミエリンの極性頭部基に寄与する。
【0065】
リポソーム形成脂質では、アシル鎖、アルキル鎖またはアルケニル鎖は、典型的には12~約24個の炭素原子の長さであり、完全に、部分的にまたは非水素化の天然に存在する脂質、半合成脂質または完全合成脂質である様々な飽和度を有し、飽和度のレベルは、このように形成されたリポソームの剛性に影響を及ぼし得る(典型的には、飽和鎖を有する脂質は、特にシス二重結合を有する不飽和鎖が存在する、同じ鎖長の脂質よりも剛性が高い)。
【0066】
いくつかの例では、リポソームは、単一タイプのリポソーム形成脂質を含む。
【0067】
いくつかの他の例では、リポソームは、リポソーム形成脂質の組合せを含む。
【0068】
いくつかの例では、リポソーム形成脂質はリン脂質である。リポソーム形成脂質がリン脂質である場合、リポソーム内のその量は、改変Bartlett法[Shmeeda H,Even-Chen S,Honen R,Cohen R,Weintraub C,Barenholz Y.2003.Enzymatic assays for quality control and pharmacokinetics of liposome formulations:comparison with nonenzymatic conventional methodologies.Methods Enzymol 367:272-92]によって、有機リンとして決定され得る。脂質は、本開示の不可欠な部分を形成する非限定的な例では、本明細書に記載のELSD/HPLC法を使用して試験することもできる。
【0069】
いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、コリン型リン脂質、例えば、ジアシルグリセロ-ホスホコリンである(アシル鎖、アルキル鎖またはアルケニル鎖は、上で定義した通りである)。
【0070】
いくつかの他の例では、リポソーム形成脂質は、ジ-ラウロイル-sn-グリセロ-2ホスホコリン(DLPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジヘプタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジノナデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジヘナラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジベヘノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン1,2-ジトリコサノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジリグノセロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1-ミリストイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1-パルミトイル-2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(PSPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1-ステアロイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(SPPC)である。いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、1,2-ジ-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)またはジ-ラウロイル-sn-グリセロ-2ホスホコリン(DLPC)である。
【0071】
いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、少なくとも水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)を含む。
【0072】
好ましい一例では、リポソーム形成脂質は、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)を含むか、またはそれからなる。
【0073】
いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、少なくとも1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)を含む。
【0074】
いくつかの例では、リポソーム形成脂質は、少なくとも1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)を含む。
【0075】
好ましい一例では、リポソーム形成脂質は、DMPCとDPPCとの組合せを含むか、またはそれからなる。いくつかの例では、2つのリポソーム形成脂質は、約45:55のDMPC:DPPCモル比である。限定するものではないが、DMPC:DPPC含有製剤は、非ヒト(獣医学的)用途に好適である。
【0076】
いくつかの例では、リポソームは、ステロール、例えばコレステロールを含む。
【0077】
いくつかの例では、コレステロールがリポソーム内に存在する場合、それは4%モル以下の量である。
【0078】
いくつかの追加の例または他の例では、リポソームは、リポポリマー、例えば、ポリエチレングリコール由来脂質(PEG化脂質)を含む。
【0079】
リポソームは、任意の形態またはサイズであり得る。
【0080】
いくつかの例では、リポソームは、多層小胞またはオリゴラメラ小胞である。
【0081】
いくつかの例では、リポソームは多胞状小胞である。
【0082】
いくつかの他の例では、リポソームは、単層小胞、好ましくは大型の単層小胞である。
【0083】
リポソームは、小型、中型、大型またはさらには巨大であり得る。小型のリポソームに言及する場合、それは、約20nm~100nmの範囲の平均サイズを有すると理解されるべきである。中型サイズのリポソームに言及する場合、それは、約100nm~200nmの範囲内の平均サイズを有すると理解されるべきである。大型のリポソームに言及する場合、それは、約200nmを超える平均サイズを有すると理解されるべきである。巨大なリポソーム(典型的には、巨大な単層小胞または多胞状小胞)に言及する場合、それは、1μmよりも大きいものを指すと理解されるべきである。
【0084】
いくつかの例では、リポソームは多層小胞(MLV)である。いくつかの例では、MLVは、100nm以上の最小値を有するサイズ分布を有する。
【0085】
いくつかの例では、リポソームを含む製剤は、乾燥形態である。具体的には、排他的ではないが、リポソームは凍結乾燥される。
【0086】
いくつかの他の例では、製剤は、本明細書で用語「外部媒体」と呼ばれる媒体内に保持されているリポソームを含む。外部媒体は、リポソームをその中に保持するのに適した任意の組成のものであり得る。いくつかの例では、外部媒体は、リポソームの保存に適したものであり、いくつかの他の例では、外部媒体は、リポソームの投与に適したもの、例えば、生理学的に許容される担体である。
【0087】
いくつかの例では、典型的には、外部媒体が投与に適したものである場合、外部媒体は、カンナビノイドを含み得る。カンナビノイドは、リポソームによって捕捉されたカンナビノイドと同じであっても異なっていてもよい。
【0088】
カンナビノイドと分散剤との組合せは、好ましくは制御された方法で、持続放出製剤の形成を可能にする。本開示の文脈では、「制御放出」または「持続放出」に言及する場合、それは、一定期間にわたる制御放出を意味すると理解されるべきである。一定期間には、少なくとも数日間、時に少なくとも3日間、時に少なくとも4日間、時に少なくとも5日間、時に少なくとも6日間、時に少なくとも7日間、時に少なくとも8日間、時に少なくとも9日間、時に少なくとも10日間、時に少なくとも11日間、時に少なくとも12日間、時に少なくとも13日間、時に少なくとも14日間、時に少なくとも15日間、時に少なくとも16日間、時に少なくとも17日間、時に少なくとも18日間、時に少なくとも19日間、時に少なくとも20日間、時に少なくとも21日間、またはさらには30日間超が含まれる。用語「持続放出」は、即時放出(例えば、最初の24時間以内に50%超が放出される場合)以外の任意の形態の制御放出を包含し、長期/持続放出および/または遅延放出を含む。持続放出は、例3に記載のインビトロ放出アッセイによって決定することができる。2時間のインキュベーション後の50%血清中の≦70%、時に≦60%、時に≦50%の放出は、持続放出と見なされ得る。
【0089】
本開示はまた、製剤内に、注射または注入による投与に適した生理学的に許容される担体を提供する。
【0090】
本発明の文脈では、生理学的に許容される担体とは、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない医薬製剤を調製するのに有用な任意の担体を意味する。いくつかの例では、生理学的に許容される担体は、注射による投与に適した水性溶液である。いくつかの例では、全身投与に適した生理学的に許容される担体には、抗酸化剤と、緩衝液と、静菌剤と、製剤を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質とを含有することができる水性および非水性の等張性滅菌注射/注入溶液が含まれる。いくつかの例では、担体は、生理食塩水、緩衝液、糖水溶液(デキストロース、スクロースなど)などのいずれか1つまたは組合せである。いくつかの例では、担体は、増粘剤、安定剤および保存剤も含み得る。
【0091】
いくつかの例では、投与は、筋肉内(i.m.)注射、腹腔内(i.p.)注射、静脈内(i.v.)注射および皮下(s.c.)注射のいずれか1つによるものである。
【0092】
好ましい一例では、リポソーム製剤はIM注射用である。IM注射は、非リポソームカンナビノイド製剤のIV注射を超える利点を提供する持続/長期放出プロファイルを示した。
【0093】
いくつかの例では、投与は、哺乳動物対象に対するものである。
【0094】
いくつかの例では、投与は、ヒト対象に対するものである。
【0095】
いくつかの他の例では、投与は、非ヒト(すなわち、獣医学的)対象に対するものである。
【0096】
リポソーム内のカンナビノイド化合物の量は、対象への製剤の投与時に治療効果を提供するのに十分であるように設計される。
【0097】
投与時に治療効果を達成するのに十分または有効な量は、カンナビノイド化合物、特にCBDによって達成されるかまたはそれに関連することが知られている少なくとも1つの治療効果を含むと理解されるべきである。
【0098】
限定するものではないが、治療効果は、疼痛および/または炎症を治療/改善/低減すること、ならびに特定のカンナビノイド化合物、特にCBDの投与に関連することが知られている任意の他の治療効果のいずれか1つまたは組合せにあり得る。
【0099】
開示されたリポソーム製剤によって送達されるカンナビノイドの量は、当業者に公知の様々なパラメーターに依存し、適切に設計された臨床試験(用量範囲試験)に基づいて決定され得、当業者であれば、有効量を決定するためにそのような試験を適切に行う方法を知っているであろう。その量は、とりわけ、治療される疾患のタイプおよび重症度、ならびに治療レジメン(投与様式)、治療される対象の性別および/または年齢および/または体重などに依存する。
【0100】
製剤内のリポソーム、および製剤自体は、リポソーム製剤の分野で公知の任意の技術または任意のパラメーターによって特徴付けられ得る。これには、限定するものではないが、リポソームサイズおよび/またはサイズ分布(例えば、動的光散乱(DLS)を使用する)、多分散指数(PDI)、ゼータ電位、pHメーターを使用した分散液pHの測定などが含まれる。
【0101】
本開示はまた、カンナビノイドを用いて対象を治療する投与方法を提供し、該方法は、本明細書に開示されるリポソーム製剤のそのような治療を必要とする対象への投与を含む。
【0102】
上記を考慮して、本開示の文脈では、本明細書に開示される製剤またはリポソームによる治療に言及する場合、それは、疾患に関連する望ましくない症状を改善すること、そのような症状の発現をそれらが起こる前に予防すること、疾患の進行を遅らせること、症状の悪化を遅らせること、疾患の寛解期間の開始を増強すること、疾患の進行性慢性段階で引き起こされる不可逆的な損傷を遅らせること、進行性段階の開始を遅らせること、疾患の重症度を低下させるか、もしくは疾患を治癒させること、生存率、もしくは疾患からのさらに迅速な回復を改善すること、疾患の発生を予防すること、または上記のうちの2つ以上の組合せを包含すると理解されるべきである。
【0103】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」および「the」という形態は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数および複数の言及を含む。例えば、用語「カンナビノイド」は、1つ以上のカンナビノイドを含む。
【0104】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「含む」は、リポソームが、カンナビノイドおよび分配剤を含むが、生理学的に許容される担体および賦形剤ならびに他の薬剤などの他の要素を除外しないことを意味することを意図している。用語「から本質的になる」は、例えば、列挙された要素を含むが、カンナビノイドの送達に本質的な意義を有し得る他の要素を除外するリポソームを定義するために使用される。したがって、「からなる」は、そのような他の要素の微量を超える要素を除外することを意味するものとする。これらの移行用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0105】
さらに、例えば、リポソームを構成する要素、およびリポソームを含む製剤の量または範囲に言及する場合、すべての数値は、記載された値から(+)または(-)最大20%、時に最大10%変化する近似値である。常に明示的に述べられているとは限らないが、すべての数値指定の前に用語「約」があることを理解されたい。
【0106】
ここで、本発明に従って実施された非限定的な例によって本発明を説明する。これらの例は、限定ではなく例示の性質であることを意図していることを理解されたい。上記の教示に照らして、これらの例の多くの修正および変更が明らかに可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書で以下に具体的に説明される以外に、無数の可能な方法で実施され得ることを理解されたい。
【0107】
実施形態の説明
例1-CBDリポソーム製剤
リポソームの調製および特性評価
材料
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPCD)をroquetteから入手した
水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)をLipoid GmbH(Ludwigshafen,Germany)から入手した
カンナビジオール(CBD)をTHC Pharm(バッチ:CBDAPI1802)から入手した
無水エタノールをメルクから購入した
可溶化促進剤:ポリエチレングリコール(PEG)300、プロピレングリコール(PG)、Tween 80およびジメチルアセトアミド(DMA)をMerckから購入し、CremophorをSigmaから入手した。
【0108】
方法:
リポソーム調製
アシル鎖組成が異なる様々なタイプのホスファチジルコリンを使用し、試験した。これらには、コレステロールを含まないまたはコレステロールを含む(5または10%)HSPC(大部分がステアロイル、C18)、DPPCジパルミトイル、C16 DMPC(ジミリストイル、C14)およびDOPC(ジオレオイル、C18:1)が含まれる。
【0109】
DOPCを含む製剤はあまり好ましくないリポソームを生成したため、これらをその後の調査から除外した。
【0110】
調製した様々なリポソームを表1に詳述する。
【0111】
製剤F1を以下のように調製した:HSPC(S PC-3、Lipoid、バッチ:525600-2180662-01/042)およびCBD(バッチ:CBDAPI1802)を秤量してバイアルに入れた。無水エタノール(Merck)をバイアルに加え、溶液が透明になるまで65℃の水浴に入れた。次いで、1mlの等張水溶液(例えばデキストロース5%)を水浴に入れた。脂質相が透明になったらすぐに、これを65℃で30分間撹拌しながら、加温した水に加えた。
【0112】
F1について調製したものと同様の脂質相を用いて、水相中にCBDを含有する製剤を調製した。特定の水相の全成分を混合し、続いて、濃縮CBDのエタノール溶液(700mg/ml)を加えることによって、水相を調製した。エタノール溶液を撹拌しながら、続いて場合によっては短時間加熱することによって、ゆっくりと加える。水相が透明になるか、または均一に分散するとすぐに、脂質相を65℃でゆっくりと加え、撹拌を65℃で30分間継続する。
【0113】
放出アッセイ
25%スクロース中25%ウシ血清の存在下、37℃でのインキュベーションの0、1時間(場合によっては)および24時間後の時点で、リポソームからのCBDの放出を決定した。各時点で、総CBDおよび遊離CBDを以下に記載されるように決定した。
【0114】
総CBDアッセイ
リポソームCBDを25%血清および25%スクロースで20倍希釈し、これをメタノールでさらに希釈し、HPLCによるCBDの検出のために当技術分野で公知の条件下でHPLCによって分析した。
【0115】
遊離CBDアッセイ
リポソームCBDを25%血清および25%スクロースで20倍希釈した。この希釈物を遠心分離し、リポソームを透明相の上に浮遊させた。低透明相(遊離CBD)をメタノールで希釈し、HPLCによって分析した。
【0116】
脂質濃度
改変Bartlett法によって、場合によっては蒸発光散乱(ELSD)検出器を有するHPLC法によって、脂質濃度を決定した。
【0117】
結果
脂質相にコレステロールを含有する製剤。
脂質相にコレステロールを含有するCBD製剤を調製した。CBDを脂質相に可溶化した。試験した全製剤の脂質相は125mg/ml(CBDを含む)であり、CBDは脂質相含有量の70%モルであった。製剤には、コレステロールを含まない、ならびに5および10%モルのコレステロールを含むHSPCおよびDMPCを含有させた。これらの製剤は、脂質相にのみCBDを含有した(水相には含有せず)。これらの製剤を表1に記載する。
【0118】
結果は、HSPCが、DMPCリポソームと比較してわずかに遅い放出プロファイルを示すことを示している。コレステロールはリポソームからのCBDの放出を増加させ、この効果は、DMPCの方が顕著であった。
【0119】
このため、脂質相(125mg/mlの脂質相、70%モルのCBD)中のHSPC、および水相中のCBDの可溶化または分散を可能にする異なる組成の水相を用いて、追加の製剤を調製した。
【0120】
表2は、HPCDのみを含有する水相中にCBDを有する2つのCBD製剤を示す。製剤は、F1製剤(表1に記載)と同様のローディング(D/L比に関して)および放出プロファイルをもたらした。これはおそらく、HPCD(8mg/ml)のみを含有する水相にロードすることができた低CBD濃度の結果である。
【0121】
表3は、21mg/mlのCBDの分散を可能にする、水相中にHPCDおよび界面活性剤(cremphor ELおよびTween 80)を有するCBD製剤を記載する。これらの製剤は、D/L比を高めず、本発明者らの放出方法によって分離されなかったかなりの量の小型のリポソームをもたらしたため、それらの放出プロファイルを定義することができなかった。
【0122】
表4は、14mg/mlのCBD分散を可能にする、水相中にHPCDおよび25%PEG 300を有する製剤を示す。HPCD含有量が異なる2つの製剤(A39およびA42)は、D/L比を実質的に高め、放出プロファイルを遅くした。これらの製剤と、水相中にCBDを含まない同じ水性組成を有するリポソームとを比較すると、D/L比がはるかに低くなり、放出プロファイルが速くなった。水性リザーバー内に実質的なCBD画分を有することが放出を減速させたことを実証する。
【0123】
表5は、21mg/mlのCBD分散を可能にする、水相中にHPCDおよび10~15%PGを有するCBD製剤を記載する。各製剤について、CBDを含まない同じ水相組成を有する対照製剤も調製した。結果は、いずれの場合も、水相中にCBDを有する製剤の方が放出が遅く、D/L比が対照よりも実質的に高い場合の方が放出が顕著であることを示した。
【0124】
束縛されるものではないが、本明細書に示されるデータから、共溶媒(分散剤)または界面活性剤を加えることによって可能にされる水相へのCBDの添加が、リポソームからのCBDの放出の遅延を助けることが明らかである。
【0125】
さらに、束縛されるものではないが、本明細書に示されるデータから、4%モルを超える量、例えば、5~10%モルの量のコレステロールの存在下で脂質相にCBDを加えると、リポソームからCBDが迅速に放出されることが明らかである(表1を参照、水相はDDWである)。
【0126】
さらに、束縛されるものではないが、本明細書に示されるデータから、CBDリポソームが水相のみのCBDを用いて調製され、脂質相が脂質のみ、例えばHSPC(CBDなし)のみから構成された場合も、リポソームからのCBDの放出は迅速であった(24時間後に78%遊離)ことが明らかである。理論によって束縛されるものではないが、これは、脂質膜がCBDまたはいくらかの量のコレステロールを含有しない場合、膜安定化の欠如の結果であり得る。
【0127】
脂質膜内のCBDが膜を安定化し、それによって、リポソームからのCBDの制御放出(持続)を可能にするという本明細書に開示される知見から生じ得る1つの結論。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】
【0128】
例2-CBD-HSAを含有するリポソーム
水相としてCBD-HSAを含有するリポソーム製剤を開発した(リポソーム-CBD-HSA)。この製剤では、CBDをバイアルに秤量し5%HSA溶液を加えて5%でCBD分散させることによって水相を調製した。バイアルの壁に粒子が観察されない均質な懸濁液が得られるまで、分散液を4Cで少なくとも2日間撹拌した。この分散液を加温したHSPC粉末に加え、65℃で15分間撹拌した。リポソーム結合CBDとHSA結合CBDとを区別することができる分析方法を開発した。懸濁液中のリポソームの体積は余分なリポソーム体積よりも低いが、CBDの大部分はリポソームに結合していることが見出された。以下の表6は、様々なリポソーム-CBD-HSA製剤内のリポソームCBD(%)を示す。したがって、リポソームおよびHSAに対するCBDの親和性を以下に詳述するように試験した。
【0129】
2つの製剤を調製した:
・空のMLV(5%デキストロース中40mg/ml HSPC)を含む、1:1の体積比のCBD-HSA調製物
・HSA溶液を含む、1:1の体積比のF1製剤(CBDは膜脂質内にのみ存在する)。
【0130】
混合物を50rpmで振盪しながら37℃のインキュベーターに2時間入れた。結果を表7に示す。HSAとインキュベートしたF1製剤は、リポソームからHSAに移された1%のみの総CBDを示した。空のMLVとインキュベートしたCBD-HSAの場合、35%のCBDがリポソームに移され、脂質に対するCBDのはるかに高い親和性が示された。これらの結果は、CBDが主にリポソーム性であることを示す、リポソーム-CBD-HSA製剤について得られた結果(表6)と一致していた。
【0131】
リポソームにHSAを加えると、リポソーム内で高いD/Lモル比に達することが可能になった。
【表6】

【表7】
【0132】
50%成体ウシ血清において、様々な製剤からのCBDの放出を試験した。50mgの製剤を秤量してHPLCバイアルに入れ、950ulの50:50の血清:デキストロース5%溶液を加えた。混合物をボルテックスし、37Cおよび50rpmで振盪するインキュベーターに2時間入れた。メタノールで25倍希釈した後、混合物を総CBD含有量について試験した。混合物の残りをエッペンドルフに移し、遠心分離し(30分、14,000rpm、4℃)、上相をメタノールで10倍希釈し、HPLC分析した。脂質およびCBD含有量が異なるいくつかのリポソーム-CBD-HSA製剤のインビトロ放出を試験し、表8に記載した。インビトロ放出試験では、製剤内のCBD濃度が増加すると、放出が遅くなることが示された。
【表8】
【0133】
例3-CBD製剤のインビボPK試験
2つのインビボ試験を行って、様々なCBD製剤のIM注射後の筋肉内の血漿プロファイルおよび残留CBDを試験した:第1の試験では4つの製剤を最大3日間試験し、第2の試験では4つの製剤を最大3週間試験した。各試験の詳細な説明は以下に見出される。
【0134】
第1の試験
製剤の調製および特性評価
製剤の調製に使用した材料に関する詳細を表9に要約する。製剤はいずれも、無菌調製を確実にするためにオートクレーブ装置を使用して生物学的フード内の無菌条件下で調製した。
a.PG中の遊離CBD:CBDをPG 1g当たり50mgの濃度で調製し、透明な溶液が得られるまでボルテックスした。
b.F1:CBDがリポソームの膜リン脂質内でのみ可溶化される、CBDのリポソーム製剤:透明な溶液が得られるまで、CBDおよびHSPCを65℃でエタノール中で一緒に可溶化した(脂質相)。脂質相を撹拌しながら65℃の5%デキストロース溶液に加え、30分間(65℃で)撹拌したままにした。次いで、調製物の重量オスモル濃度が等張になるまで、得られた多層リポソーム(MLV)製剤を5%デキストロース溶液を用いて洗浄した。
c.F-HPCD-PEG:CBDがリポソーム膜リン脂質内で可溶化され、可溶化剤、HPCDおよびPEG 300を使用するリポソーム内水相にも分散された、CBDのリポソーム製剤。透明な溶液が得られるまで、CBDおよびHSPCを65℃でエタノール中で可溶化した(脂質相)。27%(w/w)HPCDおよび10%(w/w)PEG 300を含有する溶液にCBDのエタノール溶液を65℃で加えることによって、水相を調製した。水相はほぼ透明であった。脂質相を撹拌しながら65℃の水相に加え、30分間(65℃で)撹拌したままにした。次いで、調製物の重量オスモル濃度が等張になるまで、得られた製剤を5%デキストロース溶液を用いて洗浄した。
d.リポソーム-CBD-HSA:CBDを5%HSA溶液に最初に分散させた。この分散液を加温したHSPCに加え、65℃で15分間撹拌した。
【表9】
【0135】
製剤の特性評価
CBDに関するアッセイ
HPLC法によって、総CBDおよび遊離CBDの含有量を決定した。使用したクロマトグラフィー条件は、ドロナビノールに関するUSP法に基づいており、表10に要約した。
【0136】
分析のための試料調製は製剤ごとに異なり、以下に記載される。
・総CBD濃度は、いずれの製剤についても同様であった。具体的には、10~20mgの製剤を秤量して10mlメスフラスコに入れた。メタノールをラインまで加えた。ボルテックス後、試料を遠心分離し、上相を分析した。
・F1およびリポソームCBD-HSAでは、遊離CBD含有量を試験した:200μlの製剤をエッペンドルフに入れ、40℃、14,000rpmで30分間遠心分離した。次いで、透明な上相をメタノールで10倍希釈し、続いてボルテックスおよび遠心分離(14,000rpm、10分、40C)を行った。上相をHPLC分析した。
・リポソームCBD-HSA製剤では、アルブミン結合CBDを定量した:この方法は、リポソーム結合CBDとアルブミン結合CBDとの間の分離を可能にするために開発された。この目的のために、密度に基づく分離を可能にする等張性媒体を使用した。50mlのDDW(メスフラスコ)中で可溶化した1.5gのデキストロース(Sigma、D9434、バッチ119K0042)および10gのFicoll 400(Sigma、F-4375、ロット29C-0095)を用いて媒体を調製した。媒体の重量オスモル濃度は290mOsm/kgであった。50mgの製剤をエッペンドルフチューブに入れ、1.5mlの媒体を加えた。チューブをボルテックスし、次いで遠心分離した(4℃、30分、14,000rpm)。チューブの上相を切り取り、沈殿物を含有する下部に残っている液体をいずれも除去した。沈殿物を別のエッペンドルフに移し、1mlのメタノールを加えた。ボルテックスおよび遠心分離後、上相をメタノールで10倍希釈した。
・Cremophore:エタノール中のIV製剤を、総CBD濃度について上記のように総含有量について試験した。生理食塩水で希釈した後の外観を調査して、注射のための製剤挙動を追跡し、沈殿がないことを確実にした。製剤を生理食塩水で10倍希釈し、1時間後(製剤が調製後に注射されるのに許容される時間)、外観を記録した。
【表10】
【0137】
放出アッセイ
50%成体ウシ血清において、様々な製剤からのCBDの放出を試験した。50mgの製剤を秤量してHPLCバイアルに入れ、950ulの50:50の血清:デキストロース5%溶液を加えた。混合物をボルテックスし、37Cおよび50rpmで振盪するインキュベーターに2時間入れた。メタノールで25倍希釈した後、混合物を総CBD含有量について試験した。混合物の残りをエッペンドルフに移し、遠心分離し(30分、14,000rpm、4℃)、上相をメタノールで10倍希釈し、HPLC分析した。
【0138】
粒径測定
Coulter LS 130を使用して粒径を決定した。
【0139】
重量オスモル濃度
Advanced instrument、Model 3320浸透圧計を使用して、凝固点法によって、重量オスモル濃度を測定した。
【0140】
脂質濃度
HPLC/ELSD法によって脂質濃度を決定した。
【0141】
顕微鏡観察
光学顕微鏡(Zeiss SN 221209)下で製剤を観察した。ほとんど視野が観察されず、各製剤について代表的な写真を撮影した。
【0142】
注入性
1mlシリンジに0.3~0.5mlの製剤を充填した。25G針をシリンジに接続し、固着していない製剤の注入量を決定した。このプロセスを3回繰り返した。
【0143】
無菌性
Hadassahの微生物学ユニットによって、各製剤から1つのバイアルを試験した。各バイアルからのアリコートを血液寒天およびチョコレート寒天上に播種し、室温および37℃のインキュベーターに置いた。
【0144】
インビボ試験プロトコル
12週齢の雌BALB/Cマウス合計36匹に、全製剤について約50μl(1注射部位で約2.5ml/kg)の注射体積で各製剤の単回用量をIM注射した(マウス9匹/群)。CBD濃度が低いF1を、約100μlの総注射体積で2つの注射部位に注射した。投与される正確な用量を確実にするために、注射の前後にシリンジを秤量し、実際の注射量を記録した。
【0145】
以下に詳述する時点で、各群のマウス3匹をCOを用いて安楽死させ、標識した0.5ml K3EDTA採血管(Mini Collect、Greiner-bio-one,Austria)内に後眼窩洞から末梢血を直ちに採取した。血液を2000gで10分間遠心分離した後、血漿を抽出し、標識したチューブに採取し、採取直後に-20℃で凍結した。次いで、試料を分析まで-80℃で保存した。
【0146】
採血後、予め秤量した15mlチューブに大腿四頭筋を採取した。
【0147】
血液および筋肉の採取の時点は、注射後2時間、24時間および72時間であった。
【0148】
生物分析アッセイ
血漿中のCBDに関するアッセイ
内部標準(IS)として使用したカンナビゲロール(CBG、メタノール中1mg/ml、Sigma、カタログC-141-1)をスパイクし、続いて血漿をアセトニトリルで5倍希釈した血漿試料からCBDを抽出した。激しくボルテックスした後、遠心分離し、上相を分析した。試料中の最終IS濃度は100ng/mlであった。
【0149】
LCMS法によって血漿抽出物を分析した。具体的には、Shimadzu(Kyoto,Japan)UHPLCシステムと組み合わせたSciex(Framingham,MA,USA)Triple Quad(商標)5500質量分析計を用いてLC-MS/MS分析を行った。100ng/mlのISを有する1~1,000ng/mlの範囲での血漿中のCBDの検量線に基づいて濃度を計算した。
【0150】
血漿中の検量線を作成するためのCBDスパイク溶液をアセトニトリル中で調製した。CBGをメタノール中で調製した。
【0151】
筋肉(注射部位)内のCBDに関するアッセイ
筋肉を外科的に除去し、その重量を記録した。その後、2mlの15%コラゲナーゼ溶液(Sigma、C7657)を加え、チューブを37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、8mlのアセトニトリルを加え、ボルテックスし、遠心分離した。上相をHPLC分析した。クロマトグラフィー条件を表10に記載した。
【0152】
アセトニトリル中のCBDの検量線に基づいて、各筋肉内のCBDの濃度を計算した。
【0153】
CBD製剤を筋肉にスパイクした後、各製剤について、アセトニトリルにスパイクした場合と比較して、筋肉からのCBDの回収を決定した。
【0154】
結果
総CBDおよびHSPC含有量ならびにそれらのモル比、粒径、および顕微鏡における外観について、製剤を特性評価した。30mg/g CBD含有量を有するF1を除いて、いずれの製剤でもCBD濃度は50~60mg/gの範囲であった。これらの結果を表11に要約する。
【0155】
調製した製剤をマウスにIM注射した。注射の前後にシリンジ重量を記録して、注射用量の量を正確に計算した。
【0156】
表12は、得られた血漿濃度および筋肉濃度を要約している。この試験では、CBDが、72時間超にわたって注射部位(筋肉)で保持されることが明らかに示された。また、この間ずっと、筋肉内のデポーは、使用される製剤に依存する速度でCBDを血漿に放出している。
【表11】

【表12-1】

【表12-2】
【0157】
第2の試験
製剤の調製および特性評価
材料および方法
材料
製剤の調製に使用した材料に関する詳細を表13に要約する。
【表13】
【0158】
方法
製剤の調製
製剤はいずれも、無菌調製を確実にするためにオートクレーブ装置を使用して生物学的フード内の無菌条件下で調製した。3つの製剤型を筋肉内(IM)薬物動態(PK)試験に使用した。
【0159】
CTRL-PG:プロピレングリコール(PG)中で可溶化したCBDの対照製剤。CBDを50mg/g PGの濃度で調製し、透明な溶液が得られるまでボルテックスした。
【0160】
F1:CBDがリポソームの膜リン脂質内でのみ可溶化される、CBDのリポソーム製剤。透明な溶液が得られるまで、CBDおよびHSPCを65℃でエタノール中で一緒に可溶化した(脂質相)。脂質相を撹拌しながら65℃の5%デキストロース溶液に加え、30分間(65℃で)撹拌したままにした。次いで、調製物の重量オスモル濃度が等張になるまで、得られた多層リポソーム(MLV)製剤を5%デキストロース溶液を用いて洗浄した。
【0161】
リポソーム-CBD-HSA:CBDを最初にHSAに分散させ、続いてCBD-HSAをリポソームに受動的に封入した、CBDのリポソーム製剤。CBDを5%HSA溶液に最初に分散させた。この分散液を加温したHSPCに加え、65℃で15分間撹拌した。
【0162】
IV製剤:IV投与に使用した製剤は、Cremophor:エタノール50:50溶液中で可溶化した10mg/g CBD製剤であった。この製剤を注射前に生理食塩水で10倍希釈して、1mg/mlの希釈後濃度を得た。希釈製剤を調製後1時間以内に使用した。
【0163】
以下では、製剤は、常に50mgのタンパク質を含有する溶液1ml当たりのCBD量によって定義される。したがって、例えば、「リポソームCBD/HSA 50mg/ml」は、50mgのCBDと50mgのHSAとを含むリポソーム製剤を示す。
【0164】
製剤の特性評価-第1の試験について記載の通り
インビボ試験プロトコル
IV投与
12週齢の雌BALB/Cマウス合計18匹に、cremophor:エタノール中10mg/kg CBD製剤の単回用量をIV注射した。
【0165】
以下に詳述する時点で、マウス3匹をCOを用いて安楽死させ、標識した0.5ml K EDTA採血管(Mini Collect、Greiner-bio-one,Austria)内に後眼窩洞から末梢血を直ちに採取した。血液を2000xgで10分間遠心分離した後、血漿を抽出し、標識したチューブに採取し、採取直後に-20℃で凍結した。次いで、試料を分析まで-80℃で保存した。
【0166】
採血の時点:2分、1時間、4時間、8時間、24時間および48時間。
【0167】
IM投与
12週齢の雌BALB/Cマウス合計36匹に、IM製剤の単回用量をIM注射した。1製剤当たりマウス9匹。注射の前後にシリンジを秤量して、正確な体積、したがって各マウスが投与された用量の正確な記録を可能にした。各群の注射体積および推定用量に関する詳細を表14に要約する。
【0168】
マウス2匹に製剤を注射せず、経時的な体重(BW)変化のための対照として使用した。
【0169】
以下に詳述する時点で、各群のマウス3匹をCOを用いて安楽死させ、標識した0.5ml KEDTA採血管(Mini Collect、Greiner-bio-one,Austria)内に後眼窩洞から末梢血を直ちに採取した。血液を2000xgで10分間遠心分離した後、血漿を抽出し、標識したチューブに採取し、採取直後に-20℃で凍結した。次いで、試料を分析まで-80℃で保存した。
【0170】
採血後、予め秤量した15mlチューブに大腿四頭筋を採取した。
【0171】
採血の時点:注射後72時間、1週間および3週間。
【0172】
投与前および安楽死前にマウスの体重を記録した。3週間の時点で殺処分したマウスも、投与の2週間後に計量した。
【表14】
【0173】
結果
本例は、IM投与またはIV投与(文献に基づいて、いくつかの動物モデル1~3で有効であった12mg/kgの投与用量)後の3つの粒子ベースのCBD製剤対CBDのプロピレングリコール(PG)溶液の薬物動態プロファイルを定義した。
【0174】
製剤
65℃でCBD-HSA分散液を用いてHSPCを水和させることによって、リポソームCBD-HSA製剤を調製した。得られたリポソームは、顕微鏡画像によって観察することができるように球状で均一であった(図1B図1C)。
【0175】
リポソームの平均直径は、50mg/ml製剤については8.1μmであり、100mg/ml製剤については6.7μmであった。
【0176】
製剤内のCBD濃度は、(計算に基づく)予測濃度であった。100mg/ml製剤は、3.05という高いモル薬物対脂質(D/L)比を示した。これらの製剤内のCBDは、リポソームCBD(膜および内部水相の両方)と、リポソーム外のアルブミン(CBD-HSA)との間に分布しているように思われた。
【0177】
製剤の特性評価を表15に示し、粒径を表16に要約する。
【表15】
【0178】
全製剤が無菌であることも見出されたこと、すなわち、試験した製剤のいずれにも微生物増殖が検出されなかったことに留意されたい。
【0179】
IV投与用のCremophor:エタノール中のCBD製剤も特性評価した。濃縮物中のCBDの濃度は、11.7(mg/ml)であった。生理食塩水で希釈した後、溶液は少なくとも1時間透明であった。
【表16】
【0180】
これらの製剤内のリポソーム(膜およびリポソーム内コアの両方)とCBD-HSAとの間のCBDの分布を決定し、表17に要約する。
【表17】
【0181】
表17は、リポソーム体積はリポソーム外体積よりも低かったが、CBDの大部分がリポソーム性であり(86~91%)、比較的小さな画分がリポソーム外のHSAに結合した(9~14%)ことを示す。したがって、HSAに結合したCBDの大部分がリポソーム形成脂質に移されたと考えられた。この観察結果は、例2の表6に記載されるHSAと脂質との間のCBDの分配に合致した。
【0182】
50%血清の存在下で2時間インキュベートした後、遊離CBD濃度は、50mg/ml調製物および100mg/ml調製物では33および53mg/mlであり、70および57%の放出(100-結合(%)=放出(%))を占めた。この放出速度は、F1リポソームについて得られた速度に近かった。F1は、CBDが膜脂質によって可溶化され、おそらくリポソーム膜にのみ位置するリポソーム製剤であった。この製剤内のCBD濃度は、製剤からのエタノールの除去に必要な洗浄工程に起因して、他の製剤よりも低い21.3mg/mlであった。顕微鏡下でのF1の外観は、互いに比較的離れた小さな丸い粒子を示した(図1A)。平均直径は9.2μmであった(表16)。血清中の放出は49%であり、リポソーム-HSA製剤の放出と同様であった(表15)。
【0183】
使用した参照IM製剤は、CBDのプロピレングリコール溶液であった。追加の参照には、12mg/g用量(注射前に生理食塩水で希釈したCremophore:エタノール製剤)でIV投与したマウスの群を含めた。
【0184】
PKプロファイル
12mg/kg CBD用量のIV投与後に得られたPKプロファイルを表18に要約する。
【表18】
【0185】
表18は、CBD濃度が、投与の5分後の8,856ng/mlから8時間後の9.5ng/mlまで急速に低下したことを示す。後期時点(24時間および48時間)では、CBD濃度は検出限界未満(BLOD)であった。
【0186】
IM投与後に得られた血漿濃度を表19A~表19Bおよび図2に要約する。
【表19】

【表20】
【0187】
表19A~表19Bおよび図2Aは、全IM製剤の投与後、および投与後3週間までの血漿濃度が、投与後1~8時間に得られたIVプロファイルの範囲内であったことを示す。これは、製剤のIM注射による持続送達を意味する。図2Bはまた、第2の試験で試験した同じ製剤に関して第1の試験(図中で「以前の試験」と呼ばれる)からのPKデータを含むが、T=2時間および24時間の時点からのPKデータを含むため、IV投与またはIM投与後のCBD血漿プロファイルの完全な概要を提供する。
【0188】
興味深いことに、IV治療用量のCBDのIV投与後、投与直後に高レベルのCBD血漿が得られるが、血漿レベルは数時間以内に低下する。しかし、高CBD用量のIM投与では、血漿CBDの初期レベルはIV用量のものと同様であり(例えば2時間後)、次いで、レベルは、全IM製剤について、少なくとも3週間の期間内に本質的に高く維持される。
【0189】
さらに、血漿レベルの低下は非常に遅く、全製剤について、3週間にわたって得られた低下は1桁未満であった。IV製剤の急速な低下と比較して、この緩やかな低下は、IMプロファイルの最終勾配が排出依存性ではなく、むしろ吸収依存性であることを実証しており、製剤が、この長期間にわたって筋肉からCBDを連続的に放出していることを示している。
【0190】
表20は、各マウスに投与した最初のCBDと比較した筋肉内のCBDの残留含有量を要約し、図3A図3Bは、最初に投与したCBDと比較した1群当たりの筋肉から放出された平均CBDを示す。
【表21-1】

【表21-2】
【0191】
1週間の時点で、高用量群では、比較的多くの放出を示す群間に差が見られた。これらの差は3週間の時点では見られなかった。筋肉から放出されたCBDの量を投与からの日数に対して正規化して、1日当たりの放出されたCBDの量、したがって1日当たりの循環に到達したCBDの用量を推定した(マウス20gと仮定)。血漿レベルをこの推定1日用量に対して正規化した場合、平均正規化値は群間で同様であり、1.7~4.5ng/ml/mg/kgの範囲であった。これらの値は、投与後4~8時間後に得られたIV値と同様であり(表18)、血漿濃度が、筋肉から放出されるCBDに依存し、したがって、製剤によって制御され得ることを実証する。%CBD放出データから、各製剤について、筋肉内のCBDリザーバーを計算してもよい。遊離CBDおよびリポソーム製剤は、3週間の時点でCBDの大部分を放出した(リポソームCBD-HSA 100mg/ml、3週間について、解明できない低い値を含まず)。
【表22】
【0192】
IV投与およびIM投与の両方について薬物動態分析を行った。表21は、得られたIV PKパラメーターを示す。CBDの半減期は1.68時間と急速であり、用量に対して正規化されたAUCでの曝露は417時間*ng/ml/mg/kgであった。第1の試験中にも注射された3つの製剤について、IM投与後の薬物動態分析を行い、各製剤について5つの時点を可能にした(以前の試験からの2、24および72時間ならびに現試験からの1および3週間)。組み合わせたデータセットのPK分析は表22に見出される。F1、およびPG中の遊離CBDは、最も高いAUCをもたらした。これは、これらの2つの群について、筋肉内のCBDの大部分が3週間の期間までに放出され(それぞれ70および84%、図3B)、IV注射について得られた用量値と同様の用量値に正規化されたAUCが得られた(それぞれ388および293時間*ng/ml/mg/kg)という知見に合致している。リポソーム-CBD-HSA 50mg/ml製剤の正規化されたAUC値はさらに低く(167時間*ng/ml/mg/kg)、この製剤について得られた筋肉からの比較的低い放出(%)に対応した(それぞれ68%、図3B)。
【表23】
【0193】
考察
12mg/kg用量のIV投与後のPKプロファイルと、IM経路によって投与されたCBDの長時間作用型製剤の4つの製剤とを比較した。IM注射製剤の血漿プロファイルは、注射後少なくとも3週間はIV血漿プロファイルの範囲内の血漿レベルを示した。リポソーム-CBD-HSA製剤およびF1製剤は、遊離CBD群の筋肉内に残った14%と比較して、注射用量の≧30%を含有した。IM製剤のCBD血漿レベルがIV有効用量について観察されたものと同様の血漿濃度を維持したという事実は、これらの製剤がインビボで持続したCBD効果を可能にし得ることを示唆している。PKプロファイルの差は、特定の所望の放出プロファイルのための好ましい製剤を選択的に設計することを可能にする。
【0194】
例4-DMPC/DPPC-CBDリポソームの調製
45:55のモル比のDMPC:DPPC中のCBDのリポソーム製剤を調製した。
【0195】
材料:
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC):Lipoid、カタログ番号556200(ロット:556200-2190329-01)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC):Lipoid カタログ番号556300(ロット:556300-2170149-01)
CBD:THC Pharma
【0196】
結果:
形成されたリポソームは、45:55のモル比のDMPC:DPPCの組合せを含んでいた。脂質相組成を表23に詳述する。
【表24】
【0197】
具体的には、この調製物の水相として、pH6.5のヒスチジン(0.155%w/v)-マンニトール(4%w/v)緩衝液(HMB)を使用した。脂質相および水相を55℃で予熱した。次いで、脂質相を水相に加え、55℃で15分間撹拌した。4℃での遠心分離によるヒスチジンマンニトール緩衝液を用いた4サイクルの洗浄後にエタノールを製剤から除去した。
【0198】
図4は、顕微鏡(倍率200倍)による製剤の外観を示す。リポソームの平均サイズは5.55μmであり、総CBD濃度は25.3mg/mlであった。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】