IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドルフィテック、アクティーゼルスカブの特許一覧

特表2022-550818バッキングブロックを備える超音波走査装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】バッキングブロックを備える超音波走査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20221128BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520240
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020077228
(87)【国際公開番号】W WO2021063946
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】1914166.2
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521181596
【氏名又は名称】ドルフィテック、アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】DOLPHITECH AS
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】エスキル、スコグルンド
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク、リングバル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヒジェルムスタッド
(72)【発明者】
【氏名】トーレ、マグネ、スカール
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA03
2G047CA01
2G047GB23
2G047GB27
2G047GB32
(57)【要約】
物体を撮像するための走査装置であって、物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える超音波振動子と、第1の方向とは反対の第2の方向に沿って振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックとを備え、バッキングブロックが、振動子に面する内面を備え、内面が、バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備える、走査装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像するための走査装置であって、
物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える、超音波振動子と、
前記第1の方向とは反対の第2の方向に沿って前記振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックと、
を備え、
前記バッキングブロックが、前記振動子に面する内面を備え、前記内面が、前記バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備える、走査装置。
【請求項2】
前記非平面特徴は、前記内面の全体にわたって設けられる、請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記非平面特徴は、1つ又は複数の表面突起及び/又は表面くぼみを含む、請求項1又は2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記非平面特徴は、
滑らかに湾曲する突起及び/又はくぼみ、並びに
角度の付いた突起及び/又はくぼみの1つ又は複数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項5】
前記非平面特徴は、
部分球面突起及び/又はくぼみ、並びに
ピラミッド状突起及び/又はくぼみの1つ又は複数を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項6】
前記バッキングブロックの前記内面が、前記振動子に平行な後面を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項7】
前記内面は、前記後面に対してある角度で設けられた1つ又は複数の追加の表面を含む、請求項6に記載の走査装置。
【請求項8】
前記非平面特徴の少なくとも一部は、前記第2の方向に対して45度より大きい角度である、請求項1から7のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項9】
前記非平面特徴の少なくとも一部は、前記第2の方向に対して45度未満の角度である、請求項1から8のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項10】
前記内面は、前記バッキングブロック内に空洞を少なくとも部分的に画定し、前記空洞は、吸音材料で充填される、請求項1から9のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項11】
前記吸音材料は、エポキシ、シリコーン、及びゴムのうちの1つ又は複数を含む、請求項10に記載の走査装置。
【請求項12】
前記吸音材料は複数の粒子を含む、請求項10又は11に記載の走査装置。
【請求項13】
前記複数の粒子が、ある範囲のサイズ及び/又は形状の粒子を含む、請求項12に記載の走査装置。
【請求項14】
前記複数の粒子は、0.1μm~500μmの範囲で最大寸法のサイズを有する、請求項12又は13に記載の走査装置。
【請求項15】
前記複数の粒子が異なる材料の粒子を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項16】
前記複数の粒子は、1つ又は複数の金属を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項17】
前記複数の粒子は、タングステン、ニッケル、チタン、二酸化チタン、鋼及び酸化鉄のうちの1つ又は複数を含む、請求項12から16のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項18】
前記吸音材料は、前記振動子にインピーダンス整合される、請求項10から17のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項19】
前記吸音材料は、前記第2の方向に沿って異なるインピーダンスの層を含む、請求項10から18のいずれか一項に記載の走査装置。
【請求項20】
走査装置内で超音波信号を吸収するためのバッキングブロックであって、前記バッキングブロックは、振動子が撮像される物体に向かって超音波を送信するように構成される第1の方向とは反対の第2の方向に沿って前記振動子に隣接して配置可能に構成され、前記バッキングブロックは、前記振動子に面する内面を備え、前記内面は、前記バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備える、バッキングブロック。
【請求項21】
走査装置のバッキングブロック用の吸音材料であって、前記吸音材料が、前記吸音材料の吸音を増加させるための形状及び/又はサイズの範囲の複数の粒子を含む、吸音材料。
【請求項22】
物体を撮像するための走査装置であって、
物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える超音波振動子と、
前記第1の方向とは反対の第2の方向に沿って前記振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックと、
を備え、
前記バッキングブロックは、前記振動子に面する内面を備え、前記内面は、前記バッキングブロック内の空洞を少なくとも部分的に画定し、前記空洞は、前記吸音材料の吸音を増加させるためある範囲の形状及び/又はサイズの複数の粒子を含む吸音材料で充填される、走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックを備える走査装置、及びバッキングブロックに関する。
【0002】
走査装置は、例えば物体の表面下の構造的特徴を撮像するためなど、物体を撮像するのに適している。走査装置は、層間剥離、剥離、及び剥落などの表面下の材料欠陥を撮像するのに特に有用であり得る。
【背景技術】
【0003】
超音波を使用して、物体の特定の構造的特徴を識別することができる。例えば、超音波は、試料中の欠陥のサイズ及び位置を検出することによって非破壊試験に使用することができる。積層構造内の異なる層、衝撃損傷、ボアホールなどの構造的特徴の異なる材料、試料深度、及び種類をカバーする非破壊試験から利益を得ることができる広範囲の用途がある。
【0004】
超音波は、物体を検出し、距離を測定するために使用することができる振動音圧波である。伝えられた音波は、異なる音響インピーダンス特性を有する材料に遭遇すると反射及び屈折する。これらの反射及び屈折が検出及び分析される場合、結果として得られるデータを使用して、音波が伝わった環境を記述することができる。望ましくない反射を低減して分析の精度を高めることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、物体を撮像するための走査装置が提供され、
物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える超音波振動子と、
第1の方向とは反対の第2の方向に沿って振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックであって、
振動子に面する内面を備え、内面が、バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備えるバッキングブロックと、を備える。
【0006】
非平面特徴は、内面の全体にわたって設けられてもよい。非平面特徴は、1つ又は複数の表面突起及び/又は表面くぼみを含むことができる。非平面特徴は、滑らかに湾曲する突起及び/又はくぼみの1つ又は複数を含むことができ、ある角度の付いた突起及び/又はくぼみを含む。非平面特徴は、部分球面突起及び/又はくぼみの1つ又は複数、並びにピラミッド状の突起及び/又はくぼみの1つ又は複数を含むことができる。
【0007】
バッキングブロックの内面は、振動子に平行な後面を備えてもよい。内面は、後面に対してある角度で設けられた1つ又は複数の追加の面を含むことができる。非平面特徴の少なくとも一部は、第2の方向に対して45度より大きい角度であってもよい。非平面特徴の少なくとも一部は、第2の方向に対して45度未満の角度であってもよい。
【0008】
内面は、バッキングブロック内に空洞を少なくとも部分的に画定することができ、空洞は、吸音材料で充填される。吸音材料は、エポキシ、シリコーン、及びゴムのうちの1つ又は複数を含むことができる。吸音材料は、複数の粒子を含み得る。複数の粒子は、ある範囲のサイズ及び/又は形状の粒子を含み得る。複数の粒子は、最大寸法で0.1μm~500μmの範囲のサイズを有し得る。
【0009】
複数の粒子は、異なる材料の粒子を含んでもよい。複数の粒子は、1つ又は複数の金属を含んでもよい。複数の粒子は、タングステン、ニッケル、チタン、二酸化チタン、鋼及び酸化鉄のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0010】
吸音材料は、振動子とインピーダンス整合されてもよい。吸音材料は、第2の方向に沿って異なるインピーダンスの層を含んでもよい。
【0011】
別の態様によれば、走査装置内の超音波信号を吸収するためのバッキングブロックが提供され、バッキングブロックは、振動子が撮像される物体に向かって超音波を送信するように構成される第1の方向とは反対の第2の方向に沿って振動子に隣接して配置可能に構成され、バッキングブロックは、振動子に面する内面を備え、内面は、バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備える。
【0012】
別の態様によれば、走査装置のバッキングブロック用の吸音材料が提供され、吸音材料は、吸音材料の吸音を増加させるための形状及び/又はサイズの範囲の複数の粒子を含む。
【0013】
別の態様によれば、物体を撮像するための走査装置が提供され、
物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える、超音波振動子と、
第1の方向とは反対の第2の方向に沿って振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックと、を備え、
バッキングブロックは、振動子に面する内面を備え、内面は、バッキングブロック内の空洞を少なくとも部分的に画定し、空洞は、吸音材料の吸音を増加させるための形状及び/又はサイズの範囲の複数の粒子を含む吸音材料で充填される。
【0014】
上記の任意の態様の任意の1つ又は複数の特徴は、任意の他の態様と組み合わせることができる。これらは、単に簡潔にするために、ここでは完全に記載されていない。
【0015】
ここで、添付図面を参照して、本発明を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】物体を撮像するためのデバイスを示す。
図2】走査装置及び物体の一例を示す。
図3】走査装置の機能ブロックの一例を示す。
図4】振動子モジュールの概略図を示す。
図5】バッキングブロック内で信号が取り得る異なる路程を示す。
図6】バッキングブロック内の非平面特徴の一例を示す。
図7】バッキングブロック内の非平面特徴の別の例を示す。
図8A】別のバッキングブロックの断面側面図を示す。
図8B】別のバッキングブロックの断面側面図を示す。
図9A図8Aのバッキングブロックの平面図を示す。
図9B図8Aのバッキングブロックの斜視図を示す。
図10A】別のバッキングブロックの断面側面図を示す。
図10B】別のバッキングブロックの断面側面図を示す。
図11A図10Aのバッキングブロックの平面図を示す。
図11B図10Aのバッキングブロックの斜視図を示す。
図12A】別のバッキングブロックの断面側面図を示す。
図12B】別のバッキングブロックの断面側面図を示す。
図13A図12Aのバッキングブロックの平面図を示す。
図13B図12Aのバッキングブロックの斜視図を示す。
図14】吸音材料を含むバッキングブロックの一例を示す。
図15】吸音材料を含むバッキングブロックの別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
走査装置は、物体を撮像するために使用することができる。走査装置は、物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを有する超音波振動子を備えることができる。物体から受信した反射された超音波の分析を使用して、物体を分析することができる。反射の検出は、物体の表面下構造の分析を可能にする。送信機は、第1の方向以外の方向に超音波信号を送信する。そのような信号は、振動子の適切な合焦によって最小化することができる。いくつかの信号は、第1の方向とは反対であってもよい第2の方向に送信される。これらの信号は、振動子の背後の表面/界面、すなわち試験対象の物体に関連しない表面/界面から反射され得る。そのような反射は、振動子に向けて戻されてもよく、受信機によって検出することができる。検出された信号の適切なタイムゲーティングは、分析におけるこれらの望ましくない反射の影響を低減することができる。しかしながら、いくつかの望ましくない反射は、物体からの反射と同時に受信されるため、タイムゲートを使用して除去することはできない。
【0018】
そのような望ましくない反射が振動子で検出されるのを低減又は回避することが望ましい。これは、振動子の背後にバッキングブロックを設けることによって達成することができる(例えば、第2の方向に振動子のそばに、又は振動子に隣接して)。バッキングブロックは、超音波信号を吸収するように適切に構成される。そのような吸収は、望ましくない反射のエネルギーを減少させる。エネルギーが低い望ましくない反射は、結果として生じる物体の分析にあまり影響を与えず、分析の精度が向上する。理想的な場合、バッキングブロックは、それを通過するすべての信号を吸収する。実際には、バッキングブロックが、バッキングブロックを通過する信号の強度を閾値強度未満に低減するのに十分であると考えられ得る。閾値強度は、バッキングブロックに送信される信号の強度の割合であってもよい。例えば、閾値強度は、20%、10%、5%、2%、又は1%であってもよい。
【0019】
バッキングブロックは、それを通過する超音波信号を減衰させる減衰材料を含むことによって超音波信号を吸収するように構成することができる。例えば、バッキングブロックは、エポキシ又は他の適切な吸音材料を含むことができる。適切には、エポキシは、振動子にインピーダンス整合されて、超音波信号が振動子によって送信されるときに振動子-エポキシ境界での大きな反射を低減又は回避する。
【0020】
バッキングブロックは、
バッキングブロックの内面(例えば、振動子に面する表面)上の少なくとも1つの非平面特徴、及び、
吸音材料中の複数の粒子のうちの1つ又は複数を含むことによって超音波信号の吸収を増加させるように構成することができる。
【0021】
非平面特徴は、超音波信号が振動子で再び検出される前に、超音波信号の追加の反射を引き起こす可能性がある。非平面特徴は、反射が振動子で再び検出される前に反射の路程を変更することができる。非平面特徴は、反射信号が振動子で受信される前に反射信号の路程長を適切に増加させる。路程長が長くなると、反射信号は検出前に追加のエネルギーを失うようになる。信号の各反射は、エネルギーのさらなる損失を引き起こす。したがって、反射の回数が増えると、信号のエネルギーが減少する可能性がある。路程長を長くもする追加の反射は、信号エネルギーのさらなる減少を引き起こす。したがって、非平面特徴は、バッキングブロックにおける信号減衰を増加させる可能性がある。
【0022】
吸音材料は、複数の粒子を備えることができる。粒子は、適切には、吸音材料自体に対して異なる音響インピーダンスである。したがって、粒子は、超音波信号のさらなる反射を引き起こす可能性があるインピーダンス不整合境界を吸音材料内に提示する。これらの追加の反射は、信号の吸音材料を通る路程長を増加させる場合があり、したがってそれらの強度を減少させることができる。
【0023】
バッキングブロックによる信号の吸収を増加させるためのこれらの手法については、以下でより詳細に説明する。
【0024】
走査装置は、物体の表面下の異なる深さに位置する構造的特徴に関する情報を収集することができる。この情報を取得する1つの方法は、物体に音波パルスを送信し、任意の反射を検出することである。人間のオペレータが物体の表面下の構造的欠陥のサイズ、形状、及び深さを認識及び評価できるように、収集された情報を描写する画像を生成することが有用である。これは、表面下の構造的欠陥が危険であり得る多くの産業用途にとって不可欠な活動である。一例が、航空機の整備である。
【0025】
通常、オペレータは、オペレータが見たい構造が物体の表面下にあるため、装置によって生成された画像に完全に依存することになる。したがって、オペレータが物体の構造を効果的に評価できるように情報が撮像されることが重要である。
【0026】
超音波振動子は、電気信号によって駆動されて圧電材料を振動させ、超音波信号を生成する圧電材料を利用する。逆に、音響信号が受信されると、それは圧電材料を振動させ、検出可能な電気信号を生成する。
【0027】
物体の表面下を撮像するための、本明細書に記載の走査装置などの手持ち式デバイスの例を図1に示す。デバイス101は、一体型ディスプレイを有してもよいが、この例では、タブレットコンピュータ102に画像を出力する。タブレットとの接続は、図示のように有線であってもよく、又は無線であってもよい。デバイスは、超音波信号を送受信するためのマトリックス配列103を有する。適切には、配列は、振動素子の配列を形成するように交差パターンで配置された複数の電極を含む超音波振動子によって実装される。振動素子は、送信と受信との間で切り替えられ得る。図示の手持ち式装置は、超音波信号を物体に結合するための乾式結合層104などの結合層を備える。結合層はまた、振動子が送信から受信に切り替わる時間を可能にするために超音波信号を遅延させる。乾式結合層は、超音波信号を結合するために液体を使用する傾向がある他の撮像システムにまさる複数の利点を提供する。これは、産業環境では非実用的であり得る。時に使用されるように、液体カプラがブラダに収容されている場合、これは、非破壊試験用途には理想的ではない正確な深さ測定値を得ることを困難にする。すべての例において、結合層が設けられる必要はない。
【0028】
マトリックス配列103は二次元であるため、画像を取得するために物体を横切ってマトリックス配列を移動させる必要はない。典型的なマトリックス配列は、約30mm×30mmであり得るが、マトリックス配列のサイズ及び形状は、用途に合わせて変えることができる。デバイスは、オペレータによって物体に直に保持されてもよい。一般に、オペレータは、例えば、構成要素は、衝撃を受けた可能性があるか、又は応力集中を引き起こす可能性がある1つ又は複数のドリル又はリベット穴を含む可能性があるなど、物体が表面下の傷又は材料欠陥を有する可能性がある場所について、すでに良好な考えを持っている。デバイスは反射パルスをリアルタイムで適切に処理するので、オペレータは装置を任意の関心領域に単純に置くことができる。
【0029】
手持ち式デバイスはまた、パルス形状及び対応するフィルタを変更するためにオペレータが使用することができるダイヤル105又は他のユーザ入力デバイスを備える。最も適切なパルス形状は、撮像されている構造的特徴の種類及びそれが物体内のどこに位置するかに依存し得る。オペレータは、ディスプレイを介してタイムゲーティングを調整することによって、異なる深さで物体を見ることができる。装置をタブレット102などの手持ち式ディスプレイ又は一体型ディスプレイに出力させることは、オペレータがディスプレイ上で見られるものに応じて物体上で振動子を容易に移動させ、又は装置の設定を変更して瞬間的な結果を得ることができるので有利である。他の構成では、オペレータは、非手持ち式ディスプレイ(PCなど)と物体との間を歩いて、物体上の新しい設定又は位置がテストされるたびに再走査し続ける必要があり得る。
【0030】
物体の表面の下の構造的特徴を撮像するための走査装置が図2に示されている。全体として201で示される装置は、送信機202と、受信機203と、信号プロセッサ204と、画像生成器205とを備える。いくつかの例では、送信機及び受信機は、超音波振動子によって実装され得る。送信機及び受信機は、例示を容易にするためにのみ図2において互いに隣接して示されている。送信機202は、撮像対象の物体206において特定の形状を有する音波パルスを送信するように適切に構成される。受信機203は、物体から送信された音波パルスの反射を受信するように適切に構成される。物体の表面下特徴は、207に示されている。
【0031】
装置の一実施形態に含まれる機能ブロックの一例を図3に示す。
【0032】
この例では、送信機及び受信機は、振動素子312のマトリックス配列を含む超音波振動子301によって実装される。振動素子は、超音波を送信及び/又は受信する。マトリックス配列は、交差パターンで配置された複数の平行な細長い電極を含むことができ、交差部は、振動素子を形成する。送信機電極は、特定の形状を有するパルスパターンを特定の電極に供給する送信機モジュール302に接続される。送信機制御部304は、作動される送信機電極を選択する。所与の瞬間に作動される送信機電極の数は変動し得る。送信機電極は、個別に又はグループ単位で順に作動され得る。適切には、送信機制御部は、送信機電極に一連の音波パルスを物体に送信させ、生成された画像を連続的に更新されることを可能にする。送信機電極はまた、特定の周波数を使用してパルスを送信するように制御され得る。周波数は、100kHz~30MHzであってもよく、好ましくは0.5MHz~15MHzであり、最も好ましくは0.5MHz~10MHzである。
【0033】
受信機電極は、物体から放射される音波を感知する。これらの音波は、物体に送信された音波パルスの反射である。受信機モジュールは、これらの信号を受信及び増幅する。信号は、アナログ・デジタル変換器によってサンプリングされる。受信機制御部は、送信機電極が送信した後に受信するように受信機電極を適切に制御する。装置は、送信及び受信を交互に行い得る。一実施形態では、電極は送信及び受信の両方が可能であり得、その場合、受信機制御部及び送信機制御部は、電極をそれらの送信状態と受信状態との間で切り替える。好ましくは、送信される音波パルスと、装置で受信されるそれらの反射との間に多少の遅延がある。装置は、電極が送信から受信に切り替わるのに必要な遅延を提供するための結合層を含み得る。遅延は、相対深度が計算されるときに補償され得る。結合層は、好ましくは、送信された音波の低減衰を提供する。
【0034】
各振動素子は、画像内の画素に対応し得る。言い換えれば、各画素は、振動素子の1つで受信された信号を表し得る。これは、1対1対応である必要はない。単一の振動素子は、2つ以上の画素に対応することができ、その逆も可能である。各画像は、1つのパルスから受信された信号を表し得る。「1つの」パルスは、通常、多くの異なる振動素子によって送信されることを理解されたい。「1つの」パルスのこれらのバージョンはまた、異なる時間に送信されてもよく、例えば、マトリックス配列は、配列の各行を順に作動させることによって振動素子の「波」を作動させるように構成することができる。しかしながら、試料の単一の画像を生成するために使用されるのはそのパルスの反射であるため、この送信パルスの集合は依然として「1つの」パルスを表すと考えることができる。試料の画像のビデオストリームを生成するために使用される一連のパルス内のすべてのパルスについても同じことが当てはまる。
【0035】
パルス選択モジュール303は、送信されるべき特定のパルス形状を選択する。これは、振動子によって超音波パルスに変換される電子パルスパターンを送信機モジュールに供給するパルス発生器を備え得る。パルス選択モジュールは、メモリ314に格納された複数の所定のパルス形状にアクセスすることができる。パルス選択モジュールは、自動的に又はユーザ入力に基づいて送信されるパルス形状を選択し得る。パルスの形状は、撮像されている構造的特徴の種類、その深さ、材料の種類などに応じて選択され得る。一般に、パルス形状は、オペレータに物体の高品質画像を提供するために、信号プロセッサ305によって収集され得る、及び/又は画像エンハンスメントモジュール310によって改善され得る情報を最適化するように選択されるべきである。
【0036】
図4は、振動子モジュールを概略的に示す。振動子モジュール(TRM)は、全体として400で示されている。ケーブル401などの電気的接続は、TRMを遠隔システムに結合する。遠隔システムは、駆動信号を提供することができ、検出信号を受信することができる。振動子モジュールは、試験対象の物体402に対して配置されているものとして示されている。TRMは振動子404を備える。振動子404は送信機を備える。振動子は受信機を備える。送信機及び受信機は別々に設けられてもよい。振動子構造及びその電気的接続の詳細は、明確にするためにこの図では省略されている。振動子は、撮像される物体に向かって超音波信号を送信するように構成される。振動子は、406で示される方向に超音波信号を送信するように適切に構成される。これを第1方向と呼ぶことができる。
【0037】
バッキングブロックが振動子の「後ろ」に設けられる。バッキングブロックは、振動子が試験対象の物体に面するその前面からは振動子の他方の側である。例えば、バッキングブロックは、振動子から第1の方向とは異なる第2の方向に沿ってTRM内に設けられ得る。適切には、図4に示すように、第2の方向は第1の方向と反対である。第2の方向は410で示されている。
【0038】
バッキングブロックは、任意の適切な形状をとり得る。図示のように、バッキングブロックは、上部に向かって(図4の向きで)テーパ部412と、平坦上部414とを備える。バッキングブロックは、内面416を備える。内面の少なくとも一部は、振動子404に向かって面する。図示の例では、上部及びテーパ部の内面の一部は、振動子に向かって面している。内面は、振動子に直接面する必要はないが、ある角度で振動子に面することができる。
【0039】
内面416は、バッキングブロック内に空洞418を画定する。空洞は、図示のように、振動子によって適切に境界付けられる。空洞は、吸音材料で充填され得る。使用される吸音材料は、振動子に応じて選択され得る。例えば、吸音材料の吸音能力は、振動子によって送信された超音波の周波数スペクトルに応じて選択され得る。適切には、吸音材料は、振動子によって送信された周波数範囲の音を吸収する。吸音材料は、振動子によって送信された周波数範囲の1つ又は複数の部分範囲内の音を吸収し得る。例えば、振動子が特定の周波数又は周波数の範囲を使用して物体を走査するために使用される場合、吸音材料は、その周波数又はその周波数範囲の音を優先的に吸収するように構成され得る。この手法は、関心のある周波数又は周波数範囲における望ましくない反射を低減することによって走査の精度を高めることができる。
【0040】
図5は、振動子502によってバッキングブロック504に向かって送信された超音波信号の2つの可能な路程の図を示す。左側に示されている第1の路程は、第2の方向に伝送された信号506が取る。この信号は、バッキングブロックの上部内面508で反射される。反射信号510は、振動子に向かって(第1の方向に)戻される。右側に示される第2の路程は、別の信号512が取る。信号512は、第2の方向には送信されず、第2方向に対して90度未満のある角度で送信される。信号512は、側内面514で反射される。反射信号516は、上部内面508へ第2の方向に対してある角度で継続する。ここで、信号は再び反射され、反射信号518は振動子に向けて戻される。両方の反射信号が振動子で検出される。第1の路程は第2の路程よりも短い。したがって、第1の路程に沿って通過する信号は、第2の路程に沿って通過する信号よりも減衰が少ない。
【0041】
路程長、したがって減衰を有利にさらに増加させることができる特徴を、ここで図面を参照して説明する。最初に図6を参照すると、バッキングブロック604の内面603には、非平面特徴、表面凹凸及び/又は不均一性などの特徴が設けられていてもよい。一般に、特徴は、振動子602によって検出される前の信号の路程長が増加されるように、振動子によって送信された信号を反射又は屈折させるように構成される。図6では、特徴はピラミッド状特徴606(ピラミッド状を通る三角形スライスを表す図)として示されている。ピラミッド状特徴606に向かって第2の方向に振動子によって送信された超音波信号は、振動子に向けて直接反射して戻されない。代わりに、反射信号は、608で示される路程に沿って伝播する。路程608は、ピラミッド状特徴が存在しなかった場合の路程よりも長い。したがって、ピラミッド状特徴は、路程長の増加をもたらす。
【0042】
図7は、代替例を示す。この例では、ピラミッド状特徴706の側面は、図6に示すピラミッド状特徴606の側面よりも第2の方向に対して浅い角度にある。有利には、この特徴の側面の角度がより浅いことにより、振動子702によって検出される前により多くの信号の反射を引き起こすことによって、路程長のさらなる増加をもたらすことができる。そのような反射信号がたどる経路の一部の例が708に示されている。
【0043】
図6及び図7に示された特徴は対称的であるが、これはすべての例に当てはまる必要はない。
【0044】
図6及び図7は、バッキングブロックの内面に設けられた単一のピラミッド状特徴を示す。図示のように、特徴は、内面の全体よりも小さい内面の一部にわたって設けられる。特徴は、内面の全体にわたって設けられてもよい。適切には、特徴は、振動子に面する内面の一部にわたって設けられる。特徴は、振動子に直接面する内面の一部にわたって設けられてもよい。
【0045】
複数のこのような特徴が、適宜設けられる。複数の特徴は、すべて同じ形状及びサイズであってもよい。複数の特徴のうちの少なくとも1つが、複数の特徴のうちの別の1つとサイズが異なっていてもよい。複数の特徴のうちの少なくとも1つが、複数の特徴のうちの別の1つと形状が異なっていてもよい。異なるサイズ及び/又は形状の特徴は、バッキングブロック内の信号の不規則な散乱を引き起こすのに役立ち得る。バッキングブロック内の信号の不規則な散乱により、信号の少なくとも一部はより長い経路に沿って伝播するようになり得る。
【0046】
図8A及び図8Bは、別のバッキングブロック804の側断面図を示す。図8Bは、図8Aの円形部分の拡大図である。バッキングブロック804は、バッキングブロックの内面に設けられた非平面特徴を備える。特徴は、複数のピラミッド状特徴806を含む。隣接するピラミッド状特徴の平坦な側面間の角度は、810で示されるように90度である。ピラミッド状特徴の平坦な側面と第2の方向との間の角度は45度である。バッキングブロックは、テーパ部812を備える。このテーパ部における内面の一部は、第2の方向に対して45度の角度をなしている。テーパ部812における内面の一部は、ピラミッド状特徴を含まない。代替的な実装形態では、追加的又は代替的に、テーパ部812の内面にピラミッド状特徴が設けられ得る。
【0047】
図9A及び図9Bは、図8A及び図8Bのバッキングブロックのそれぞれ平面図及び斜視図を示す。バッキングブロック904は、テーパ部912を備える。テーパ部は、複数のピラミッド状特徴906を含む内面の一部に周囲を形成する。4つの穴920は、ネジを取り付けるために設けられている。すべての例において4つのそのような穴が設けられる必要はない。例えば、より多くの又はより少ない穴があってもよい。バッキングブロックには、このような穴は設けられなくてもよい。
【0048】
図10A及び図10Bは、別のバッキングブロック1004の側断面図を示す。図10Bは、図10Aの円形部分の拡大図である。バッキングブロック1004は、バッキングブロックの内面に設けられた非平面特徴を備える。特徴は、複数のピラミッド状特徴1006を含む。隣接するピラミッド状特徴の平坦な側面間の角度は、1010で示されるように50度である。ピラミッド状特徴の平坦な側面と第2の方向との間の角度は25度である。バッキングブロックは、テーパ部1012を備える。このテーパ部における内面の一部は、第2の方向に対して45度の角度をなしている。テーパ部1012における内面の一部は、角度の付いた特徴を含む。
【0049】
図11A及び図11Bは、図10A及び図10Bのバッキングブロックのそれぞれ平面図及び斜視図である。バッキングブロック1104は、テーパ部1112を備える。テーパ部は、複数のピラミッド状特徴1106を含む内面の一部に周囲を形成する。テーパ部は、複数の角度特徴1120を含む。
【0050】
上記の説明は、ピラミッド状又は角度の付いた特徴を含む非平面特徴に焦点を合わせている。別の実装形態では、非平面特徴は、湾曲した特徴を含み得る。図12A及び図12Bは、別のバッキングブロック1204の側断面図を示す。図12Bは、図12Aの円形部分の拡大図である。バッキングブロック1204は、バッキングブロックの内面に設けられた非平面特徴を備える。特徴は、複数の湾曲した特徴1206を含む。バッキングブロック1204は、テーパ部1212を備える。このテーパ部における内面の一部は、第2の方向に対して45度の角度をなしている。テーパ部1012における内面の一部はまた、湾曲した特徴を含む。
【0051】
図13A及び図13Bは、図12A及び図12Bのバッキングブロックのそれぞれ平面図及び斜視図を示す。バッキングブロック1304は、テーパ部1312を備える。バッキングブロック1304の内面には、湾曲した特徴1306が設けられている。湾曲した特徴1306は、テーパ部1312の内面に沿って延在する。
【0052】
いくつかの実装形態では、非平面特徴は、ピラミッド状特徴及び少なくとも1つの湾曲した特徴などの少なくとも1つの角度の付いた特徴を含み得る。特徴の他の形状は、追加的又は代替的に任意の組み合わせで提供され得る。本明細書に記載の角度の付いた及び湾曲した特徴は、反射信号の路程長を増加させるためにバッキングブロックに信号を反射させることができる広範囲の特徴形状の単なる例である。
【0053】
上記の例では、非平面特徴は表面突起として示されている。他の例では、非平面特徴は、表面くぼみ又は凹部であってもよい。さらに他の例では、非平面特徴は、1つ又は複数の突起及び1つ又は複数の凹部を含み得る。突起及び凹部は、任意の所望の組み合わせで設けられ得る。
【0054】
バッキングブロックは、それを通過する超音波信号の吸収を増加させるように構成された吸音材料を含み得る。吸音材料は、エポキシ又は同様の材料を含み得る。エポキシは、エポキシ樹脂と多官能性硬化剤(A+Bエポキシと呼ばれることもある)などの硬化剤とから形成され得る。例えば、吸音材料は、NM625(NILS MALMGREN ABから入手可能)を含み得る。吸音材料は、シリコーン系封止材などの封止材を含み得る。例えば、吸音材料は、企業のCHTグループから市販されているQSil553を含み得る。吸音材料は、ポリウレタンゴムなどのゴム、例えばPrecision Acoustics Ltd.から市販されているAptflex F36を含んでもよい。吸音材料は、複数の粒子を含み得る。粒子は、吸音材料全体に分散され得る。適切には、粒子は、粒子の表面が、吸音材料を通過する超音波信号を反射する境界を提供するように、吸音材料に対して異なる音響インピーダンスを有する。したがって、粒子の存在により、超音波信号がバッキングブロックを通過するときに反射及び/又は拡散される回数が増加し、反射損失及び路程長の増加による減衰の増加の両方により、信号がより多くのエネルギーを失うようになる。
【0055】
適切には、粒子は様々なサイズを有し得る。したがって、粒子は、バッキングブロック内の吸音材料を通って伝播する信号に対する不規則な一連の界面を提示することができる。適切には、粒子のサイズは、最大寸法がXμmの粒子から最大寸法がYμmの粒子に及ぶ。好ましくは、X=0.1μmである。好ましくは、Y=500μmである。Xは、0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、5μm又は10μm以上などであり得る。Yは、500μm、450μm、400μm又は300μm以下などであり得る。好ましくは、粒子の最大寸法のサイズ、及び/又は粒子の最大寸法のサイズの範囲は、バッキングブロックによる吸収及び/又は散乱のための超音波の周波数又は周波数範囲に依存する。
【0056】
複数の粒子は、球状粒子を含み得る。複数の粒子は、球状粒子以外の粒子を含み得る。複数の粒子は、異なる形状の粒子を含み得る。異なる形状の粒子を提供することは、バッキングブロック内で超音波信号の不規則な反射を引き起こすのに役立ち得る。不規則な反射は、反射数及び/又は路程長を増加させることができる。
【0057】
複数の粒子は、複数の材料の粒子を含むことができる。適切には、異なる材料は異なる音響インピーダンスを有する。したがって、異なる材料の粒子は、超音波信号を異なるように反射する。これは、バッキングブロック内の不規則な反射を支援することができ、これは、反射数及び/又は路程長を増加させることができる。粒子の少なくとも一部は、粉末形態であり得る。
【0058】
適切には、粒子は金属を含む。粒子は、複数の金属を含み得る。複数の粒子は、タングステン、ニッケル、チタン、二酸化チタン、鋼及び酸化鉄のうちの1つ又は複数の粒子を含み得る。必要に応じて他の材料が提供され得る。適切には、バッキングブロック内に提供される粒子の材料は、吸音材料の所望の音響インピーダンスに応じて選択される。例えば、エポキシに鋼粒子を含めると、エポキシの音響インピーダンスが鋼の音響インピーダンスにより近づけることができる。したがって、このような鋼粒子を含むエポキシは、鋼材料に対するインピーダンス整合のために使用することができる。
【0059】
粒子は、吸音材料中に任意の所望の濃度で提供することができる。適切には、吸音材料中の粒子の濃度は、バッキングブロックが吸収及び/又は散乱するように構成されている超音波の1つ又は複数の周波数に応じて選択される。粒子は、吸音材料の少なくとも10%(重量で)を形成し得る。粒子は、吸音材料の少なくとも20%(重量で)を形成し得る。粒子は、吸音材料の少なくとも30%(重量で)を形成し得る。粒子は、吸音材料の少なくとも50%(重量で)を形成し得る。粒子は、吸音材料の少なくとも80%(重量で)を形成し得る。
【0060】
好ましくは、振動子に隣接して設けられる吸音材料の表面は、振動子にインピーダンス整合される。これは、振動子-バッキングブロック境界での反射を低減するのに役立ち得る。したがって、第2の方向に送信された超音波のより大きな割合は、バッキングブロック内に伝播することができ、したがってバッキングブロック内で吸収され得る。
【0061】
吸音材料は、バッキングブロック全体にわたって同じ組成である必要はない。好適には、組成物は、少なくとも第2の方向に沿って変化する。例えば、吸音材料は、バッキングブロックに層状に設けられ得る。この例を図14に示す。振動子1402に隣接してバッキングブロック1404が設けられている。バッキングブロックは、内部に吸音材料が設けられた空洞418を備える。吸音材料は、第1の層1430及び第2の層1432を備える。第1の層は、振動子1402に隣接するように配置され、第2の層1432は、例えば第2の方向に沿って、第1の層の背後にある。第1の層は、粒子を添加しないエポキシを含むことができる。したがって、エポキシを振動子に容易にインピーダンス整合させて、バッキングブロックへの超音波エネルギーの効率的な結合を可能にすることができる。第2の層は、エポキシ及び粒子混合物を含んでもよい。したがって、超音波をバッキングブロックに結合した後、吸音材料を介した超音波信号のさらなる伝播は、反射数の増加をもたらし、バッキングブロックによるエネルギー吸収の増加をもたらす。
【0062】
図15に示す別の例では、吸音材料は追加の材料層を含み得る。これらの層のうちの少なくとも2つは、異なる材料から成ることができる。図15の例は、吸音材料内に4つの層を含むが、より多い又はより少ない層が設けられてもよい。一般に、第1の層1530は、w%(重量で)の粒子を含有する吸音材料を含み得る。(第2の方向に沿った)第2の層1532は、(重量で)x%の粒子を含有する吸音材料を含み得る。第3の層1534は(さらに第2の方向に沿って)、y%(重量で)の粒子を含有する吸音材料を含み得る。第4の層1536は(さらに第2の方向に沿って)、z%(重量基準)の粒子を含有する吸音材料を含み得る。
【0063】
適切には、wはx以下、y以下及びz以下である。例えば、wは、x未満、y未満及びz未満であり得る。x、y及びzのうちの2つ以上は互いに等しくてもよい。xはyより大きくても小さくてもよい。xはzより大きくても小さくてもよい。yはzより大きくても小さくてもよい。
【0064】
いくつかの実装形態では、吸音材料のインピーダンスは、第2の方向に徐々に変化する。そのような実装形態では、wはx未満であってもよく、xはy未満であってもよく、yはz未満であってもよい。
【0065】
いくつかの実装形態では、吸音材料のインピーダンスは、第2の方向に沿って増減する。例えば、wはx未満であってもよく、xはyより大きくてもよく、yはz未満であってもよい。そのような配置は、振動子から離れて信号のさらなる反射を引き起こす可能性がある。これは、信号が振動子で検出される前に反射数及び/又は路程長のさらなる増加をもたらし得る。
【0066】
バッキングブロックは、例えば、3D印刷(付加製造としても知られる)、金型射出、機械加工などによって、任意の便利な方法で製造され得る。バッキングブロックは、任意の適切な材料から形成され得る。いくつかの例では、バッキングブロックは、バッキングブロックの空洞内に収容された吸音材料と同様の音響インピーダンスを有する材料から形成される。これは、吸音材料とバッキングブロックの内面との間の境界における大きな反射を低減するに役立ち得る。適切には、バッキングブロックは、ポリアミドから形成することができ、又はポリアミドを含むことができる。
【0067】
吸音材料は、エポキシ等の材料に粒子を添加して結果として得られる混合物を一緒に攪拌することにより形成され得る。次いで、混合物をバッキングブロックの空洞に注ぎ、硬化させることができる。
【0068】
走査装置は、結合された複数の振動子を備えることができる。そのような配置は、単一の振動子によって提供される走査解像度を維持しながら、比較的大きな領域を走査することを可能にする。
【0069】
本明細書に記載の装置及び方法は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)などの複合材料の剥離及び層間剥離を検出するのに特に適している。これは航空機の整備にとって重要である。また、応力集中装置として機能することができるリベット穴の周りの剥落を検出するために使用することもできる。この装置は、はるかに大きな構成要素の小さな領域を撮像することが望まれる用途に特に適している。装置は、軽量で携帯可能であり、使いやすい。これは、物体上の必要な場所に配置されるように、オペレータによって手で容易に持ち運ぶことができる。
【0070】
一実装形態では、振動子は、例えば、閾値より大きいか否かにかかわらず、単純な厚さ試験を実行するためにユーザがペンを表面上に走らせることを可能にするために、ペン先に形成され得る。ペン上のLEDは、結果を示し得る。
【0071】
本明細書の図に示す構造は、装置内のいくつかの機能ブロックに対応することを意図している。これは例示のみを目的としている。図に示されている機能ブロックは、装置が実行するように構成されている異なる機能を表し、それらは、装置内の物理的構成要素間の厳密な区分を定義することを意図していない。いくつかの機能の性能は、いくつかの異なる物理的構成要素にわたって分割され得る。1つの特定の構成要素は、いくつかの異なる機能を実行し得る。図は、チップ上のハードウェアの異なる部分間、又はソフトウェア内の異なるプログラム、手順若しくは機能間の厳密な区分を定義することを意図していない。機能は、ハードウェア又はソフトウェア、若しくはこれら2つの組み合わせで実行され得る。任意のそのようなソフトウェアは、好ましくは、メモリ(RAM、キャッシュ、FLASH、ROM、ハードディスク等)又は他の記憶手段(USBスティック、FLASH、ROM、CD、ディスク等)などの非一時的コンピュータ可読媒体に格納される。装置は、1つの物理デバイスのみを備え得るか、又はいくつかの別個のデバイスを備え得る。例えば、信号処理及び画像生成の一部は、携帯型の手持ち式デバイスで実行され得、一部は、PC、PDA、又はタブレットなどの別個のデバイスで実行され得る。いくつかの例では、画像生成の全体が別個のデバイスで実行され得る。本明細書に記載された機能ユニットのいずれも、クラウドの一部として実装され得る。
【0072】
本出願人は、本明細書に記載される個々の特徴及び2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを、そのような特徴又は特徴の組み合わせが本明細書に開示された問題を解決するかどうかにかかわらず、特許請求の範囲に限定されずに、そのような特徴又は組み合わせが当業者の共通の一般知識に照らして全体として本明細書に基づいて実行することができる範囲で、単独で開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のそのような個々の特徴又は特徴の組み合わせからなり得ることを示す。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な変更を行うことができることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像するための走査装置であって、
物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える、超音波振動子と、
前記第1の方向とは反対の第2の方向に沿って前記振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックと、
を備え、
前記バッキングブロックが、前記振動子に面する内面を備え、前記内面は、前記バッキングブロック内に前記振動子によって境界づけられ、吸音材料で充填される空洞を少なくとも部分的に画定し、前記内面が、前記バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備える、走査装置。
【請求項2】
前記非平面特徴は、前記内面の全体にわたって設けられる、請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記非平面特徴は、1つ又は複数の表面突起及び/又は表面くぼみを含む、請求項1又は請求項2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記非平面特徴は、
滑らかに湾曲する突起及び/又はくぼみ、並びに
角度の付いた突起及び/又はくぼみの1つ又は複数を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査装置。
【請求項5】
前記非平面特徴は、
部分球面突起及び/又はくぼみ、並びに
ピラミッド状突起及び/又はくぼみの1つ又は複数を含む、請求項1から請求項4のいずれかに記載の走査装置。
【請求項6】
前記バッキングブロックの前記内面が、前記振動子に平行な後面を備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の走査装置。
【請求項7】
前記内面は、前記後面に対してある角度で設けられた1つ又は複数の追加の表面を含む、請求項6に記載の走査装置。
【請求項8】
前記非平面特徴の少なくとも一部は、前記第2の方向に対して45度より大きい角度である、請求項1から請求項7のいずれかに記載の走査装置。
【請求項9】
前記非平面特徴の少なくとも一部は、前記第2の方向に対して45度未満の角度である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の走査装置。
【請求項10】
前記吸音材料は、エポキシ、シリコーン、及びゴムのうちの1つ又は複数を含む、請求項1から請求項9のいずれかに記載の走査装置。
【請求項11】
前記吸音材料は複数の粒子を含む、請求項1から請求項10のいずれかに記載の走査装置。
【請求項12】
前記複数の粒子が、ある範囲のサイズ及び/又は形状の粒子を含む、請求項11に記載の走査装置。
【請求項13】
前記複数の粒子は、0.1μm~500μmの範囲で最大寸法のサイズを有する、請求項11又は請求項12に記載の走査装置。
【請求項14】
前記複数の粒子が異なる材料の粒子を含む、請求項11から請求項13のいずれかに記載の走査装置。
【請求項15】
前記複数の粒子は、1つ又は複数の金属を含む、請求項11から請求項14のいずれかに記載の走査装置。
【請求項16】
前記複数の粒子は、タングステン、ニッケル、チタン、二酸化チタン、鋼及び酸化鉄のうちの1つ又は複数を含む、請求項11から請求項15のいずれかに記載の走査装置。
【請求項17】
前記吸音材料は、前記振動子にインピーダンス整合される、請求項1から請求項16のいずれかに記載の走査装置。
【請求項18】
前記吸音材料は、前記第2の方向に沿って異なるインピーダンスの層を含む、請求項1から請求項17のいずれかに記載の走査装置。
【請求項19】
走査装置内で超音波信号を吸収するためのバッキングブロックであって、前記バッキングブロックは、振動子が撮像される物体に向かって超音波を送信するように構成される第1の方向とは反対の第2の方向に沿って前記振動子に隣接して配置可能に構成され、前記バッキングブロックは、前記振動子に面する内面を備え、前記内面は、前記バッキングブロック内に前記振動子によって境界づけられ、吸音材料で充填される空洞を少なくとも部分的に画定し、前記内面は、前記バッキングブロックによる超音波信号の吸収を増加させるように構成された非平面特徴を備える、バッキングブロック。
【請求項20】
走査装置のバッキングブロック用の吸音材料であって、前記吸音材料が、前記吸音材料の吸音を増加させるための形状及び/又はサイズの範囲の複数の粒子を含む、吸音材料。
【請求項21】
物体を撮像するための走査装置であって、
物体に向かって第1の方向に超音波信号を送信するように構成された送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成された受信機とを備える超音波振動子と、
前記第1の方向とは反対の第2の方向に沿って前記振動子に隣接して配置された、超音波信号を吸収するためのバッキングブロックと、
を備え、
前記バッキングブロックは、前記振動子に面する内面を備え、前記内面は、前記バッキングブロック内の空洞を少なくとも部分的に画定し、前記空洞は、吸音材料で充填され、前記吸音材料は、前記吸音材料の吸音を増加させるためある範囲の形状及び/又はサイズの複数の粒子を含む、走査装置。
【国際調査報告】