(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】カボテグラビルおよびリルピビリンでHIVを治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/505 20060101AFI20221128BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P31/18
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520291
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2020059185
(87)【国際公開番号】W WO2021064618
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521396042
【氏名又は名称】ヴィーブ、ヘルスケア、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VIIV HEALTHCARE COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヘルタ、マリア、ルドビカ、クラウウェルズ
(72)【発明者】
【氏名】スーザン、エル.フォード
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、アンドリュー、マーゴリス
(72)【発明者】
【氏名】ステファーン、ルイ、エフ.ロセーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム、ロバート、スプリーン
(72)【発明者】
【氏名】ロディカ、ミハエラ、ファン、ゾーリンゲン-リステア
(72)【発明者】
【氏名】ピーター、エバン、オーウェン、ウィリアムズ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
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4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB33
4C086ZC55
4C086ZC75
(57)【要約】
必要とするヒトにおいてHIVを治療するための方法であって、治療上有効な量の、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩とリルピビリンまたはその薬学上許容可能な塩の組合せの、そのようなヒトへの投与を含んでなる方法が発明される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV-1を治療する方法であって、
カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、
カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびに
前記の1または複数の中止された筋肉内注射を定期的に投与される経口療法で置き換えること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射が別個に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カボテグラビルまたはその塩が1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カボテグラビルまたはその塩が1回、600mgの筋肉内注射、次いでその後、1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が1回、900mgの筋肉内注射、次いでその後、1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カボテグラビルまたはその塩が2か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記カボテグラビルまたはその塩が1回、800mg、次いで1か月で400mg、次いで2か月後に600mg、次いでその後、2か月に1回600mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が1回900mgの筋肉内注射、次いでその後、2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記定期投与が1か月+/-7日毎に1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記定期投与が2か月+/-7日毎に1回である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の両方の経口導入用量が筋肉内注射を定期的に投与する前に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カボテグラビルまたはその塩の筋肉内投与が中止され、1日1回のカボテグラビルまたはその塩の30mg錠剤1個に置き換えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
リルピビリンまたはその塩の筋肉内投与が中止され、1日1回のリルピビリンまたはその塩の25mg錠剤1個に置き換えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩の定期的筋肉内投与が、前記カボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩の経口療法後に再開される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
HIV-1を治療する方法であって、
カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、
前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびにまず、負荷用量の中止されたカボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩を投与し、その後、筋肉内注射の定期投与を継続することによって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の一方または両方の筋肉内投与を再確立することを含んでなる、方法。
【請求項14】
前記カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射が別個に投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の定期的に投与される注射が、1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与されるカボテグラビルまたはその塩、および1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与されるリルプリビリンまたはその塩を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記負荷用量が、1回、600mgの筋肉内注射として投与されるカボテグラビルもしくはその塩、および/または1回、900mgの筋肉内注射として、次いでその後、1か月に1回600mgの筋肉内注射として投与されるリルプリビリンもしくはその塩を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記カボテグラビルまたはその塩が2か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記カボテグラビルまたはその塩が1回、800mg、次いで1か月で400mg、次いで2か月で600mg、次いでその後、2か月に1回600mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が1回、900mgの筋肉内注射として、次いでその後、2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記定期投与が1か月+/-7日毎に1回である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記定期投与が2か月+/-7日毎に1回である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の両方の経口導入用量が、筋肉内注射を定期的に投与する前に提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
療法において、特に、HIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩であって、前記療法、特に、HIV感染の治療は、その筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびにまず、負荷用量の中止されたカボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩を投与し、その後、筋肉内注射の定期投与を継続することによって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の一方または両方の筋肉内投与を再確立することを含んでなる、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項23】
前記カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射が別個に投与される、請求項22に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項24】
前記の定期的に投与される注射が、1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与されるカボテグラビルまたはその塩、および1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与されるリルプリビリンまたはその塩を含んでなる、請求項22または23に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項25】
前記負荷用量が、1回、600mgの筋肉内注射として、次いでその後、1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与されるカボテグラビルもしくはその塩、および/または1回、900mgの筋肉内注射として、次いでその後、1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与されるリルプリビリンもしくはその塩を含んでなる、請求項22~24のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項26】
前記カボテグラビルまたはその塩が、2か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与され、前記リルピビリンまたはその塩が、2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項22または23に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項27】
前記負荷用量が、1回、600mgの筋肉内注射として、次いでその後、2か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与されるカボテグラビルもしくはその塩、および/または1回、900mgの筋肉内注射として、次いでその後、2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与されるリルプリビリンもしくはその塩を含んでなる、請求項26に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項28】
前記定期投与が1か月+/-7日毎に1回である、請求項22に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項29】
前記定期投与が2か月+/-7日毎に1回である、請求項22に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項30】
前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の両方の経口導入用量が、筋肉内注射を定期的に投与する前に、特に、筋肉内注射を開始する前に提供される、請求項22~29のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項31】
療法において、特に、HIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩であって、前記療法、特に、HIV感染の治療が、前記カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびに1または複数の中止された筋肉内注射を定期的に投与される経口療法で置き換えることを含んでなる、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項32】
前記カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射が別個に投与される、請求項31に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項33】
前記カボテグラビルまたはその塩が1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与される、請求項31または32に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項34】
前記カボテグラビルまたはその塩が1回、600mgの筋肉内注射、次いでその後、1か月に1回、400mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が1回、900mgの筋肉内注射として、次いでその後、1か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与される、請求項31~33のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項35】
前記カボテグラビルまたはその塩が2か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与され、前記リルプリビリンまたはその塩が2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項31または32に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項36】
前記カボテグラビルまたはその塩が1回、600mg、次いでその後、2か月に1回、600mgの筋肉内注射として投与され,前記リルプリビリンまたはその塩が1回、900mgの筋肉内注射として、次いでその後、2か月に1回、900mgの筋肉内注射として投与される、請求項35に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項37】
前記定期投与が1か月+/-7日に1回である、請求項31に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項38】
前記定期投与が2か月+/-7日毎に1回である、請求項31に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項39】
カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の両方の経口導入用量が、筋肉内注射を定期的に投与する前に提供される、請求項31~38のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項40】
カボテグラビルまたはその塩の筋肉内投与が中止され、1日1回のカボテグラビルまたはその塩の30mg錠剤1個に置き換えられる、請求項31~39のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項41】
リルピビリンまたはその塩の筋肉内投与が中止され、1日1回のリルピビリンまたはその塩の25mg錠剤1個に置き換えられる、請求項31~40のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【請求項42】
前記カボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩の定期的筋肉内投与が、前記のカボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩の経口療法の後に再開される、請求項31~41のいずれか一項に記載の使用のためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩と、リルピビリンまたはその薬学上許容可能な塩の組合せのin vivo投与により、ヒトにおいてHIVを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗レトロウイルス療法(ART)未経験の成人におけるHIV-1感染の第一選択治療の現在の標準治療は、2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)とブーストされたプロテアーゼ阻害剤(PI)、インテグラーゼ鎖転移阻害剤(INSTI)、または非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)種のいずれかからの1つの他の薬剤を含む3種類以上の抗レトロウイルス薬のレジメンである。しかしながら、多様な安全性と忍容性のプロファイルを有する薬剤による生涯療法の必要性については懸念がある。従って、生涯の累積薬物曝露と潜在的な長期毒性を軽減しつつウイルス学的抑制を誘発および/または維持することができる2剤レジメン(2DR)は、HIV-1感染症とともに生きる人々の代替的治療選択肢となるであろう。
【0003】
初期(2000~2014)の2DRを評価した治験では、一部にはおそらくサンプルサイズが小さく、治療期間が短く、利用可能な治療が限られていたために、決定的な結果は得られなかった。AIDS臨床試験グループ研究A5142チームは、ART未経験の参加者における96週間の治療で、エファビレンツとリトナビルをブーストとするロピナビルを含んでなる2DR(n=250)のウイルス学的有効性が、エファビレンツと2NRTI(n=250)のウイルス学的有効性と類似していることを見出した。しかしながら、この2DRは薬剤耐性の発生率の増加を伴っていた。同様に、PROGRESS研究は、リトナビルをブーストとするロピナビルとラルテグラビルの2DR(n=101)は、96週、ART未経験の参加者において、リトナビルをブーストとするロピナビルとフマル酸テノホビルジソプロキシル/エムトリシタビンの3剤レジメン(3DR)(n=105)と類似の抗ウイルス作用を発揮することを実証したが、この研究では、ウイルス量が100,000コピー/mL未満で、CD4+細胞数が200細胞/mm以上の参加者が主に登録されていた。GARDEL研究は、48週間の治療後のART未経験の参加者において、リトナビルをブーストとするロピナビルと2NRTI(n=202)と比較して、非盲検のリトナビルをブーストとするロピナビルとラミブジン(n=214)のウイルス学的有効性は劣っているとはいえないことを実証した。しかしながら、これらの2DRには、リトナビルをブーストとするPI類が含まれ、これらは様々な代謝症候群および心血管関連疾患に関連し、薬物曝露の低下および蓄積毒性の観点で予想される利益を打ち消す可能性がある。これらの研究は、ARTの選択肢としての2DRの可能性と、適切で補完的なウイルス学的および臨床的特性を備えた薬剤を選択することの重要性の両方を示している。
【0004】
カボテグラビル(GSK1265744)は、インテグラーゼ鎖転移阻害剤(INSTI)ドルテグラビルの類似体であり、広範囲のHIV-1株に対してナノモル以下の効力と抗ウイルス活性を示す。カボテグラビルの1日1回の経口投与は、許容可能な安全性と忍容性のプロファイル、長い半減期(40時間)、および薬物間相互作用がほとんどないことを示した。リルピビリン(TMC278)は、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)であり、HIV-1治療のために25mgの1日1回経口薬として承認されている。
【0005】
LATTE-2試験では、患者は最初に経口カボテグラビルとアバカビル/ラミブジンのレジメンを20週間受けた。導入期間の後、抑制された患者は2:2:1に無作為化され、長時間作用型の注射カボテグラビルとリルピビリンを4週間毎もしくは8週間毎に受けるか、または3剤経口レジメンを継続した。長時間作用型レジメンの患者は160週間まで延長され、経口レジメンの患者には、96週目に4週間毎または8週間毎のレジメンに移行する選択肢が与えられた。160週で、それぞれ8週間毎および4週間毎注射レジメンを受けた115人の参加者のうち104人(90%)および115人の参加者のうち95人(83%)が、ウイルス抑制を持続していた。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、必要とするヒトにおいてHIVを治療する方法であって、治療上有効な量の、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩とリルピビリンまたはその薬学上許容可能な塩の組合せの投与を含んでなる方法を含んでなる。あるいは、この実施形態の1つの側面は、HIV感染の治療において使用するための薬剤の製造におけるカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の使用を含む。あるいは、この実施形態の1つの側面は、HIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩を含む。
【0007】
第1の主要な実施形態によれば、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)インテグラーゼ鎖転移阻害剤(INSTI)であるカボテグラビルとHIV-1非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)であるリルピビリンの組合せ、特に、2剤同包装製品(「本組合せ」と総称)は、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人およびカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための、成人におけるHIV-1感染の治療のための完全なレジメンとして適応となる。1つの実施形態によれば、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人およびカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための完全なレジメンとしての、成人におけるHIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩が提供される。1つの実施形態によれば、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人ならびにカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人ならびにNNRTIおよびINSTI種の薬剤で過去にウイルス学的不奏効がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための完全なレジメンとしての、成人におけるHIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩が提供される。1つの実施形態によれば、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人およびカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための完全なレジメンとしての、成人におけるHIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩が提供され、ここで、カボテグラビルまたはその塩は、リルピビリンまたはその塩と組み合わせて使用される。1つの実施形態によれば、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人ならびにカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人ならびにNNRTIおよびINSTI種の薬剤で過去にウイルス学的不奏効がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための完全なレジメンとしての、成人におけるHIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩が提供され、ここで、カボテグラビルまたはその塩は、リルピビリンまたはその塩と組み合わせて使用される。1つの実施形態によれば、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人およびカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための完全なレジメンとしての、成人におけるHIV感染の治療において使用するためのリルピビリンまたはその塩が提供され、ここで、リルピビリンまたはその塩は、カボテグラビルまたはその塩と組み合わせて使用される。1つの実施形態によれば、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人ならびにカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人ならびにNNRTIおよびINSTI種の薬剤で過去にウイルス学的不奏効がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための完全なレジメンとしての、成人におけるHIV感染の治療において使用するためのリルピビリンまたはその塩が提供され、ここで、リルピビリンまたはその塩は、カボテグラビルまたはその塩と組み合わせて使用される。
【0008】
第2の主要な実施形態によれば、HIV-1を治療する方法であって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびに前記の1または複数の中止された筋肉内注射を定期的に投与される経口療法で置き換えることを含んでなる方法が提供される。あるいは、この実施形態の1つの側面によれば、療法において、特に、HIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩が提供され、前記療法、特に、HIV感染の治療は、前記カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびに前記の1または複数の中止された筋肉内注射を定期的に投与される経口療法で置き換えることを含んでなる。
【0009】
第3の主要な実施形態によれば、HIVを治療する方法が提供され、その方法は、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびにまず、負荷用量の中止されたカボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩を投与し、その後、筋肉内注射の定期投与を継続することによって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の一方または両方の筋肉内投与を再確立することを含んでなる。あるいは、この実施形態の1つの側面によれば、療法において、特に、HIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩が提供され、前記療法、特に、HIV感染の治療は、その筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびにまず、負荷用量の中止されたカボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩を投与し、その後、筋肉内注射の定期投与を継続することによって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の一方または両方の筋肉内投与を再確立することを含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明の具体的説明】
【0011】
第1の主要な実施形態
第1の主要な実施形態によれば、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)インテグラーゼ鎖転移阻害剤(INSTI)であるカボテグラビルとHIV-1非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)であるリルピビリンの組合せ、特に、2剤同包装製品(「本組合せ」と総称)は、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人およびカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための、成人におけるHIV-1感染の治療のための完全なレジメンとして適応となる。1つの実施形態において、この組合せは、カボテグラビル長時間作用型製剤およびリルピビリン長時間作用型製剤からなる。1つの実施形態において、この組合せは、カボテグラビル長時間作用型筋肉内注射およびリルピビリン長時間作用型筋肉内注射からなる。
【0012】
この組合せは、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人およびカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための、成人におけるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染の治療のための完全なレジメンとして適応となる。1つの実施形態において、この組合せは、ウイルス学的に抑制された(1mL当たり50コピー未満のHIV-1 RNA)成人ならびにカボテグラビルまたはリルピビリンのいずれかに知られているもしくは疑われている耐性がない成人ならびにNNRTIおよびINSTI種の薬剤で過去にウイルス学的不奏効がない成人において現行の抗レトロウイルスレジメンに取って代わるための、成人におけるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染の治療のための完全なレジメンとして適応となる。
【0013】
主要な実施形態の1つの側面によれば、この組合せの忍容性を評価するための経口導入投与、ここで、経口導入(1日1回、カボテグラビルの30mg錠剤1個とリルピビリンの25mg錠剤1個、例えば、31.62mgのカボテグラビルナトリウムを含んでなる錠剤1個と27.5mgの塩酸リルピビリンを含んでなる錠剤1個)は、カボテグラビルおよびリルピビリンの忍容性を評価するために組合せの開始前におよそ1か月(少なくとも28日)間使用される。
【0014】
主要な実施形態の別の側面によれば、この組合せは、筋肉内注射によって投与される。具体的には、
開始注射(3mL投与キット)
経口導入の最終日に注射を開始する。成人におけるこの組合せの推奨開始注射用量は、カボテグラビルの単回の3mL(600mg)筋肉内注射およびリルピビリンの単回の3mL(900mg)筋肉内注射である。カボテグラビルおよびリルピビリンは、同じ来訪時に別の臀部注射部位に投与されるべきである。
継続注射(2mL投与キット)
開始注射の後、成人におけるこの組合せの推奨継続注射用量は、毎月のカボテグラビルの単回の2mL(400mg)筋肉内注射およびリルピビリンの単回の2mL(600mg)筋肉内注射である。カボテグラビルおよびリルピビリンは、同じ来訪時に別の臀部注射部位に投与されるべきである。毎月2mL注射の投与スケジュール日の前後7日までにこの組合せを患者に投与すればよい。
【0015】
【0016】
主要な実施形態の別の側面によれば、毎月の注射投与スケジュールの順守が強く推奨される。予定された注射来訪を逃した患者は、治療の再開が適切であり続けることを保証するために臨床的に再評価されるべきである。注射を逃した後の推奨用量については、表2を参照のこと。
【0017】
【0018】
主要な実施形態の別の側面によれば、注射は医療専門家によって投与されなければならない。完全用量は2回の注射を必要とする:カボテグラビルの1回注射およびリルピビリンの1回注射。この組合せの注射は、筋肉内使用のみを意図とする。針の長さが臀筋に到達するのに十分であることを保証するために、患者の体格指数(BMI)を考慮する。各注射は同じ来訪時に別の臀部注射部位に投与する。腹側腔部位が推奨される。
【0019】
主要な実施形態の別の側面によれば、カボテグラビルおよびリルピビリンは、さらなる希釈または再構成を必要としない筋肉内注射用の懸濁液である。カボテグラビルおよびリルピビリン注射の投与順序は重要ではない。注射の準備をする前に、本組合せを冷蔵庫から取り出し、少なくとも15分待って薬剤を室温とする。注射前に懸濁液が均一に見えるように、本組合せの各バイアルをよく振る。小さな気泡が予想されるが、許容される。非経口医薬品は、溶液と容器が許す限り、投与前に粒子状物質と変色について視覚的に検査するべきである。カボテグラビルバイアルはガラスが茶色に色づけしてあり、目視検査が制限される場合がある。いずれかの薬剤が粒子状物質または変色を示す場合は、その組合せを廃棄する。
【0020】
1つの側面によれば、経口導入は、カボテグラビルナトリウム、特に、30mg塩基当量によって提供される。1つの側面によれば、経口導入は、塩酸リルピビリン、特に、25mg塩基当量によって提供される。1つの側面によれば、カボテグラビル注射、特に、筋肉内注射は、カボテグラビル塩基によって提供される。1つの側面において、リルピビリン注射、特に、筋肉内注射は、リルピビリン塩基によって提供される。
【0021】
主要な実施形態の別の側面によれば、この組合せは、白~淡桃色の自由流動性徐放性注射懸濁液としてのカボテグラビル200mg/mLと、白~灰白色の徐放性注射懸濁液としてのリルピビリン300mg/mLを含有し、次のように同包装される:
2mL投与キット
・400mgのカボテグラビルの単回用量バイアル
・600mgのリルピビリンの単回用量バイアル
3mL投与キット
・600mgのカボテグラビルの単回用量バイアル
・900mgのリルピビリンの単回用量バイアル
【0022】
1つの実施形態において、カボテグラビルおよびリルピビリンの上述のバイアルは同包装されず、別個に包装される。
【0023】
主要な実施形態の別の側面によれば、この組合せは、以下の患者には禁忌である:
カボテグラビルまたはリルピビリンに対する過去の過敏反応を伴う。ウイルス学的応答の喪失を生じ得るウリジン二リン酸(UDP)-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)1Alおよび/またはチトクロームP450(CYP)3A酵素の誘導により、カボテグラビルおよび/またはリルピビリン血漿濃度に顕著な低下を生じる可能性のある以下の併用薬を受けている。
・抗痙攣薬:カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン
・抗マイコバクテリア薬:リファブチン、リファンピン、リファペンチン
・グルココルチコイド(全身):デキサメタゾン(単回投与を超える治療)
・ハーブ製品:セントジョンズワート(Hypericum perforatum)
【0024】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せによる治療の前および治療中に予防措置が取られる。重度の皮膚および過敏反応は、好酸球増加と全身症状を伴う薬物反応(Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms)(DRESS)の症例を含み、経口リルピビリン含有レジメンの市販後経験中に報告されている。一部の皮膚反応は発熱などの全身症状を伴っていたが、他の皮膚反応は、肝血清生化学の上昇を含む臓器機能障害に関連していた。経口リルピビリンの第3相臨床試験中に、少なくともグレード2の重症度の治療関連発疹が被験者の3%に報告されたが、グレード4の発疹は報告されなかった。
【0025】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せは、筋肉内注射のみによって投与される。具体的には、筋肉内注射は、経口導入に従わずに投与される。1つの実施形態において、経口導入を行わずに筋肉内注射に進むことは、筋肉内注射前に経口導入を含む治療と同様の有効性を示す。無作為化および投与(1:1)により、20週間の誘導期に毎日の経口ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジンでウイルス学的抑制(HIV-1 RNA<50c/mL)を達成したART未経験の参加者は、毎日の経口ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジンを継続するか、またはLAに切り替える。毎月の併用療法で無作為化された参加者は、毎月の注射用組合せを受ける前に、4週間以上1日1回の本組合せの経口導入を受けた。100週(W)目に維持段階を完了した後、ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジン群の参加者は、直接(直接注射[DTI]群)または4週間の経口負荷量のいずれかの併用療法(伸展スイッチ集団)に切り替えた。拡張切り替え集団についてW124で評価された評価項目には、ウイルス量(HIV-1 RNA≧50c/mLおよび<50c/mL)、確認されたウイルス学的不奏効(CVF;2回連続でHIV-1 RNA≧200c/mL)、安全性および忍容性の側面が含まれた。経口負荷を行わない併用療法への切り替えは、W124での経口負荷を含む治療と同様の有効性を示した。安全性と忍容性は、処置群間で同等であった。これは、選択肢の経口負荷を伴う本組合せが、HIV-1とともに生きるウイルス学的に抑制された患者のための、十分に忍容される有効な維持療法であることを示唆する。
【0026】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せは、C型肝炎を治療するために使用される。1つの実施形態において、本組合せは、C型肝炎HIV同時感染を治療するために使用される。非盲検の国際第3相試験では、HIV-1 RNA<50c/mLを有する成人参加者における、CAB(CAB LA)+RPV(RPV LA)の併用製剤の毎月の筋肉内注射への切り替えと継続的な経口標準治療ARTの比較が評価された。組合せ群では、参加者は最初に経口CAB30mg+RPV25mgを1日1回4週間投与され、安全性と忍容性を評価した後に、毎月の注射療法を開始した。HCV治療を必要としない肝硬変を伴わない慢性HCV感染を有する参加者を、血漿HIV-1 RNA> 50c/mLおよび<50c/mLを有する割合(スナップショットアルゴリズム)、CD4+細胞数のベースラインからの変化、全身および肝臓の安全性、ならびにPKパラメーターに関して分析した。この組合せは、HIVとHCVに同時感染した参加者において、経口標準治療と同様の有効性と安全性を示した。
【0027】
過敏反応は、他のインテグラーゼ阻害剤と関連して報告されている。これらの反応は、発疹、全身所見、および場合によって肝障害を含む臓器機能障害によって特徴付けられた。カボテグラビルに関連する第2相および第3相臨床試験ではそのような反応は観察されていないが、過敏反応が疑われる場合は注意を続け、本組合せを中止する。
【0028】
重度の皮膚または過敏反応の兆候または症状(限定するものではないが、重度の発疹または発熱を伴う発疹、全身の倦怠感、倦怠感、筋肉または関節痛、水疱、粘膜の病変[口腔水疱または病変]、結膜炎、顔面浮腫、肝炎、好酸球増加、血管性浮腫を含む)が現れた場合は、直ちに本組合せを中止する。肝トランスアミナーゼを含む臨床状態を監視し、適切な治療を開始する必要がある。過敏反応のリスクがある可能性のある患者を特定する助けとするために、本組合せの投与前に経口導入投与を行う。
【0029】
肝毒性は、既存の肝疾患が知られている場合も知られていない場合にも、カボテグラビルを投与されている限られた数の患者で報告されている。リルピビリンを含む錠剤レジメンを受けている患者で、肝臓の有害事象が報告されている。基礎にあるB型またはC型肝炎ウイルス感染または治療前のトランスアミナーゼの著しい上昇を伴う患者は、トランスアミナーゼ上昇の悪化または発生のリスクが高い可能性がある。少数の肝毒性症例が、既存の肝疾患または他の識別可能なリスク因子を持たないリルピビリン含有レジメンを受けている成人患者で報告されている。肝化学の監視が推奨され、肝毒性が疑われる場合は、本組合せによる治療を中止する必要がある。
【0030】
鬱病性障害(抑鬱気分、鬱病、異栄養症、大鬱病、気分変調、否定的な考え、自殺企図および自殺念慮または企図を含む)がリルピビリンで報告されている。重度の抑鬱症状がある患者を迅速に評価して、症状が本組合せに関連しているかどうかを評価し、継続的な治療のリスクが利益を上回っているかどうかを判断する。
【0031】
本組合せと他の薬物の併用は、既知のまたは潜在的に重要な薬物相互作用をもたらす可能性があり、そのいくつかは、本組合せの治療効果の喪失およびウイルス耐性の発生の可能性につながり得る。
【0032】
1日1回の推奨用量25mgのリルピビリンは、QTcに対する臨床的に関連する効果とは関連していない。リルピビリン注射後のリルピビリン血漿濃度は、QTc間隔を延長しない治療中の濃度に匹敵する。健常被験者では、1日1回75mgおよび1日1回300mgの経口リルピビリンが心電図のQTc間隔を延長することが示された。本組合せは、トルサード・ド・ポアントのリスクがあることが知られている薬物と組み合わせる場合には注意して使用する必要がある。
【0033】
投与推奨を含む、これらの潜在的および既知の重要な薬物相互作用を防止または管理するための手順については表5を参照のこと。本組合せによる療法の前および療法中の薬物相互作用の可能性を考慮し、本組合せによる療法中の併用薬を確認する。
【0034】
カボテグラビルとリルピビリンの残留濃度は、長期間(最大12か月以上)患者の体循環にとどまる可能性がある。本組合せを中止する場合は、カボテグラビルとリルピビリンの長時間作用型の特性を考慮する。
【0035】
ウイルス耐性を生じるリスクを最小限にするために、本組合せの最終注射投与後1か月以内に、代替の完全に抑制的な抗レトロウイルスレジメンを採用することが不可欠である。ウイルス学的不奏効が疑われる場合は、できるだけ速やかに代替レジメンを処方する。
【0036】
主要な実施形態の別の側面によれば、臨床試験は広く異なる条件下で実施されるため、ある薬物の臨床試験で見られる副作用率は、別の薬物の臨床試験での割合と直接比較することができず、実際に見られる比率を反映しない。
【0037】
本組合せの安全性評価は、2つの国際的、多施設、非盲検の主試験、FLAIRおよびATLASにおけるHIV-1感染のウイルス学的に抑制された1,182人の被験者からプールされた48週間のデータの分析に基づく。本組合せの全体的な安全性プロファイルを評価する際には、カボテグラビルおよびリルピビリンプログラムの初期の臨床試験から得られた追加の安全性情報を考慮した。
【0038】
本組合せの徐放性注射懸濁液(曝露時間中央値:54週)への曝露および経口導入療法として併用投与されたカボテグラビル錠とリルピビリン錠(曝露時間中央値:5.3週)のデータの後に、有害反応が報告された。有害反応には、組合せレジメンとして投与されたカボテグラビルとリルピビリンの経口製剤と注射製剤の両方に起因するものが含まれる。
【0039】
FLAIRおよびATLASからプールされた分析で成人被験者の2%以上で報告された重症度に関わらず最も一般的な有害反応を表3に示す。カボテグラビルとリルピビリンで処置した被験者では、グレード5の有害反応は発生しなかった。選択された検査所見異常が表4に含まれる。
【0040】
中止に至り、複数の被験者に発生した注射部位に関連しない有害事象は、A型肝炎、急性B型肝炎、頭痛、および下痢であり、これらは1%以下の発生率で発生した。
【0041】
【0042】
以下の有害反応(グレード2~4)は、カボテグラビルとリルピビリンを投与された被験者の1%以下で発生した:胃腸障害:腹痛(上腹部痛を含む)、下痢、鼓腸、悪心、嘔吐、全身障害および投与部位の状態:無力感、倦怠感、不快感、肝胆道系障害:肝毒性。
主要第3相試験では、肝毒性の症例は見られなかった。第1相および第2相試験の調査:体重増加においてカボテグラビルで確認された。48週目に、カボテグラビルとリルピビリンを投与されたFLAIRおよびATLASの被験者の体重増加の中央値は1.5kgであり、現在の抗レトロウイルスレジメン群の被験者の体重増加の中央値は1.0kgであった(プール分析)。個々のFLAIRおよびATLAS試験では、現行の抗レトロウイルス療法を投与された被験者の1.5kgと0.3kgに対し、カボテグラビルとリルピビリンを投与された被験者の体重増加の中央値は、それぞれ1.3kgと1.8kgであった、筋骨格および結合組織障害:筋痛、神経系障害:目眩、頭痛、精神障害:不安、鬱病、不眠症、皮膚および皮下組織障害:発疹(紅斑性発疹、全身性発疹、斑状発疹、斑状丘疹性発疹、麻疹様発疹、丘疹性発疹、掻痒性発疹を含む)。次のグレード1の有害反応が、カボテグラビルとリルピビリンを投与された被験者で生じた。神経系障害:傾眠(<1%)、精神障害:異常な夢(1%)。
【0043】
局所ISR(注射部位反応)は、本組合せの筋肉内投与に関連する最も高頻度の有害事象であった。14,682回の注射後、3,663回のISRが報告された。ISRを報告している被験者の割合は時間の経時的に減少した(4週目では70%、48週目では16%)。FLAIRおよびATLASの被験者の合計の1%が、ISRのために本組合せによる処置を中止した。48週目の分析でのFLAIRとATLASでは、被験者の84%が、分析期間中のいくつかの時点で少なくとも1回の局所ISRを示し、関連性を考慮せずに総てのグレードに基づいて、主として局所疼痛/不快感(79%)で構成されていた。分析期間中に1%を超える被験者で報告されたISRの他の症状には、結節(14%)、硬結(12%)、腫れ(8%)、紅斑(4%)、掻痒(4%)、あざ(3%)、ほてり(2%)、および血腫(2%)を含んでいた。注射部位の膿瘍と蜂巣炎は、それぞれ1%未満の被験者で報告されました。ISRの重症度は、一般に軽度(グレード1、75%)または中等度(グレード2、36%)であった。被験者の4%が重度(グレード3)のISRを経験し、グレード4のISRを経験した被験者はいなかった。ISR事象の期間の中央値は3日であった。ISRを報告した被験者の割合は、経時的に減少した(4週目で70%、48週目で16%)。
【0044】
ベースラインからグレードが悪化し、最悪のグレードの毒性を表す、選択された検査所見異常を表4に示す。
【0045】
【0046】
トランスアミナーゼの変化:数人の患者が、第1相および第2相試験で、経口カボテグラビル曝露に関連して肝毒性が疑われることに起因するトランスアミナーゼの上昇を示した。
トランスアミナーゼ肝の上昇(AST/ALT)は、主要第3相試験中にカボテグラビルとリルピビリンを投与された被験者で見られたが、これらの上昇の主な理由は、急性ウイルス性肝炎(A型、B型、またはC型肝炎)の発生であった。
【0047】
総ビリルビンの変化:総ビリルビンのわずかな非進行性の増加(臨床的黄疸なし)が、カボテグラビルとリルピビリンで見られた。これらの変化は、共通のクリアランス経路(UGT1A1)に対するカボテグラビルと非抱合型ビリルビンの競合を反映している可能性があるため、臨床的に関連があるとは見なされない。
【0048】
クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の変化:主に運動に関連する無症候性のCPKの上昇が、カボテグラビルとリルピビリンでも報告されている。
【0049】
以下の有害反応は、経口リルピビリン含有レジメンを受けている患者の市販後経験中に確認された。これらの反応は不確定のサイズの集団から自発的に報告されるため、それらの頻度を確実に推定すること、または薬物曝露との因果関係を確立することが常に可能であるわけではない:DRESSを含む重度皮膚および過敏反応。
【0050】
主要な実施形態の別の側面によれば、他の薬剤との併用は監視または回避すべできある。
【0051】
本組合せは完全なレジメンであるため、HIV-1感染の治療のために他の抗レトロウイルス薬との併用投与は推奨されない。本組合せを中止した後は、他の抗レトロウイルス薬の使用に制限はない。
【0052】
カボテグラビルは主にUGT1A1によって代謝され、UGT1A9からの寄与もいくらかある。UGT1A1または1A9の強力な誘導物質である薬物は、カボテグラビルの血漿濃度を低下させると予想され、ウイルス学的応答の喪失をもたらす可能性があり、従って、これらの薬物との併用投与は禁忌である。生理学に基づく薬物動態(PBPK)モデリングを使用したシミュレーションは、カボテグラビルとこれらの酵素を阻害する薬物の併用投与中に、臨床的に有意な相互作用は予想されないことを示す。
【0053】
カボテグラビルは、in vitroでの乳癌耐性タンパク質(BCRP)およびP糖タンパク質(P-gp)の基質であるが、その高い透過性のために、BCRPまたはP-gp阻害剤と併用投与した場合、カボテグラビル吸収に変化はないと思われる。
【0054】
リルピビリンは主にCYP3Aによって代謝され、CYP3Aを誘導または阻害する薬剤がリルピビリンのクリアランスに影響を与え得る。本組合せとCYP3Aを誘導する薬物の併用投与は、リルピビリンの血漿濃度の低下とウイルス学的応答の喪失、およびリルピビリンまたは非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)種に対する潜在的耐性をもたらす可能性がある。本組合せとCYP3Aを阻害する薬物の併用投与は、リルピビリンの血漿中濃度の上昇をもたらす可能性がある。
【0055】
QT延長薬:1日1回の推奨用量25mgの経口リルピビリンは、QTcに対する臨床的に関連する効果とは関連していない。リルピビリン注射後の血漿リルピビリン濃度は、リルピビリン療法中の濃度に匹敵する。健常な被験者では、リルピビリンの75mgおよび300mgの1日1回経口投与により、心電図のQTc間隔が延長されることが示された。本組合せは、トルサード・ド・ポアントのリスクが知られている薬物と組み合わせて注意して使用する必要がある。
【0056】
カボテグラビルおよびリルピビリンとの潜在的な薬物相互作用に関する情報を表5に示す。これらの推奨事項は、個々の成分の経口投与後の薬物相互作用試験、または相互作用の予想される大きさと有効性の喪失の可能性による予測される相互作用のいずれかに基づく。
【0057】
【0058】
薬物相互作用試験結果に基づけば、以下の薬物が、用量調整なくカボテグラビルと併用投与可能である:エトラビリン、ミダゾラム、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含有する経口避妊薬、ならびにリルピビリン。
【0059】
薬物相互作用試験結果に基づけば、以下の薬物がリルピビリンと併用投与可能である:アセトアミノフェン、アトルバスタチン、カボテグラビル、クロルゾキサゾン、ドルテグラビル、エチニルエストラジオール、ノルエチンドロン、ラルテグラビル、リトナビルをブーストとするアタザナビル、リトナビルをブーストとするダルナビル、シルデナフィル、テノホビルアナフェナミド、およびフマル酸テノホビルジソプロキシル。リルピビリンは、ジゴキシンまたはメトホルミンの薬物動態に対して臨床上有意な影響を及ぼさなかった。リルピビリンがマラビロック、リバビリン、またはアバカビル、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、およびジドブジンなどのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)と併用投与される場合、臨床上関連のある薬物間相互作用が予想される。
【0060】
主要な実施形態の別の側面によれば、特定の患者集団に対しては本組合せの投与に注意を払うべきである。
【0061】
妊娠中に本組合せに曝露された女性の妊娠転帰を監視する妊娠曝露レジストリがある。先天性欠損症や流産の薬物関連リスクを適切に評価するには、妊娠中の本組合せの使用に関するヒトデータが不十分である。妊娠中の女性におけるカボテグラビルの使用は評価されていないが、妊娠中のリルピビリンの使用は、APR(Antiretroviral Pregnancy Register)に報告された200を超える妊娠初期の曝露で評価されている。APRから入手可能なデータは、妊娠初期にリルピビリンに曝露した場合の全主要先天性欠損症のリスクが、メトロポリタンアトランタ先天性欠損症プログラム(Metropolitan Atlanta Congenital Defects Program)(MACDP)の米国参照集団において2.7%の主要先天性欠損症のバックグラウンド率と比較して増加がないことを示している。
【0062】
流産の割合はAPRでは過少報告されている。示された集団の主要先天性欠損症および流産のバックグラウンドリスクは不明である。米国の一般集団で臨床的に認められている妊娠における流産の推定バックグラウンド率は15%~20%である。APRは、一般集団の先天性欠損症の米国参照集団としてMACDPを用いている。MACDPは、限られた地理的地域の女性と乳児を評価し、妊娠20週未満で発生した出生の転帰果は含まれていない。
【0063】
カボテグラビルとリルピビリンは、本組合せの注射を中止した後、最大12か月以上体循環で検出されており、従って、妊娠中の胎児暴露の可能性を考慮する必要がある。
【0064】
動物の生殖研究では、ラットでの経口カボテグラビルで有害な発達転帰の証拠は見られなかった(経口カボテグラビルの最大推奨ヒト用量[MRHD]30mg/日もしくは400mgの筋肉内注射用量での曝露の30倍を超える)またはウサギ(経口カボテグラビルのMRHD30mg/日の0.66倍の曝露または400mgの筋肉内注射用量の約1倍の曝露)。同様に、経口リルピビリンでは、MRHDでの経口リルピビリンの1日1回25mgおよびリルピビリンの筋肉内注射量600mgの曝露の12倍以上(ラット)および57倍以上(ウサギ)の曝露で有害転帰は無かった。
【0065】
妊娠中、経口リルピビリンによる曝露の低下が見られた。妊娠中に患者が本組合せを継続している場合は、ウイルス量を密に監視する必要がある。
【0066】
ヒトデータ:リルピビリン:出生に至った妊娠中の経口リルピビリンへの524回の曝露に関するAPRへの前向き報告に基づくと、リルピビリンの先天性欠損症の全リスクと、米国のMACDPの参照集団における2.7%というバックグラウンド先天性欠損症率を比較した場合に差は無かった。出生時の先天性欠損症の有病率は、リルピビリン含有レジメンへの初期および中/後期曝露後に、それぞれ0.9%(95%Cl:0.2%~2.5%)および1.24%(95%Cl:0.1%~4.1%)であった。臨床試験では、総経口リルピビリン曝露は、一般的に妊娠中は産後期間と比較して低かった。
【0067】
動物データ:カボテグラビル:ラットの出生前および出生後発育試験では、カボテグラビルは器官形成中および分娩および授乳期に0.5、5、または1,000mg/kg/日で経口投与された。1,000mg/kg/日(30mg/日のMRHD経口投与または400mgの筋肉内注射用量の全身曝露の30倍より多い)で、カボテグラビルは分娩の開始を遅らせ、一部のラットでは、この遅延は死産および出生直後の新生児死亡数の増加と関連していた。1,000mg/kg/日までの用量で生存している子孫の成長および発育に変化はなかった。カボテグラビルで処置された母親に生まれたラットの子を出生時に里親保育し、対照の母親によって育てられた場合、同様の新生児死亡率が見られ、カボテグラビルで処置された母親によって出生から育てられた対照の子の新生児生存に影響はなかった。5mg/kg/日という低用量のカボテグラビル(暴露[AUC]は、30mg/日経口投与または400mg筋肉内注射用量のMRHDの10倍を超える)は、ラットの分娩遅延または新生児死亡率とは関連していなかった。カボテグラビルを、器官形成中の妊娠ラットおよびウサギに経口投与した場合(それぞれ1,000または2,000mg/kg/日)、帝王切開で胎児を出産した場合の生存率に影響は見られなかった。ウサギ胎児では、2,000mg/kg/日(暴露[AUC]30mg/日経口投与のMRHDの0.66倍、または400mg筋肉内注射用量の約1倍)まで胚-胎児の発育への悪影響は観察されず、ラットでは、母体毒性(体重増加の減少、食物消費の一時的な減少)の存在下での胎児の成長の変化(体重の減少)が1,000mg/kg/日(30mg/日経口投与または400mg筋肉内注射用量のMRHDでの全身暴露の30倍を超える)で見られたが、どの用量でも、試験品に関連する胎児の奇形または変動は無かった。妊娠ラットでの研究では、カボテグラビルが胎盤を通過し、胎児組織で検出され得ることが示された。
【0068】
リルピビリン:リルピビリンは、妊娠ラット(40、120、または400mg/kg/日)およびウサギ(5、10、または20mg/kg/日)に器官形成(それぞれ妊娠6日目~17日目、および6日目~196日目)を通じで経口投与した。ラットおよびウサギにおいてリルピビリンを用いて実施された胚-胎児毒性試験では、HIV-1感染患者におけるMRHD 25mg 1日1回または600mgの筋肉内注射用量のリルピビリンでのヒト暴露の12倍以上(ラット)および57倍以上(ウサギ)の曝露で有意な毒性学的影響は見られなかった。リルピビリンを用いた出生前および出生後の発育試験では、ラットに授乳期を通じて400mg/kg/日まで投与されたが、子孫に薬物に直接関連する重大な有害作用は認められなかった。
【0069】
米国疾病管理予防センターは、HIV-1感染の出生後感染のリスクを回避するために、米国のHIV-1感染の母親が乳児に授乳しないことを推奨している。本組合せの成分がヒト母乳に存在するのか、またはヒト母乳の生産に影響を与えるのか、母乳保育乳児に影響を与えるのかは不明である。授乳中のラットに投与した場合、カボテグラビルおよびリルピビリンが乳汁中に存在していた。カボテグラビルおよびリルピビリンは、最後の注射が行われた後、12か月以上、ヒト母乳中に存在する可能性がある。
【0070】
(1)HIV-1感染(HIV陰性乳児)、(2)ウイルス耐性の発生(HIV陽性乳児)、および(3)母乳保育乳児の成人と同様の有害反応の可能性があるため、本組合せを投与された場合は母乳保育をしないように母親に指示する。
【0071】
動物データ:カボテグラビル:動物では、乳汁へのカボテグラビルの分泌を直接評価するための研究は行われていないが、カボテグラビルは授乳中のラットの乳汁を介して暴露されたラットの子の血漿中に存在し(最大1,000mg/kg/日投与)、子の平均血漿濃度は妊娠中の雌ラットで妊娠20日目に生じた血漿濃度の約70%であった。
【0072】
リルピビリン:動物では、乳汁へのリルピビリンの分泌を直接評価するための研究は行われていないが、リルピビリンは、授乳中のラットの乳汁を介して暴露されたラットの子の血漿中に存在していた(最大400mg/kg/日を投与)。
【0073】
本組合せの成分の安全性および有効性は、小児患者では確立されていない。
【0074】
本組合せの臨床試験には、若い被験者と異なる反応を示すかどうかを判断するのに十分な数の65歳以上の被験者が含まれていなかった。一般に、肝機能、腎機能、または心臓機能の低下、および付随する疾患または他の薬物療法の頻度が高いことを反映して、高齢患者への本組合せの投与には注意が必要である。
【0075】
本組合せは、腎機能障害のある患者では研究されていない。経口カボテグラビルおよび経口リルピビリンの集団薬物動態分析による研究に基づいて、軽度または中等度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス≧30mL/分)を有し、透析を受けていない患者には、本組合せの用量調整は必要でない。しかしながら、重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス<30mL/分)または末期腎疾患の患者では、本組合せは注意を払って使用する必要があり、有害作用の監視を強化することが推奨される。
【0076】
本組合せは、肝機能障害のある患者では研究されていない。経口カボテグラビルおよび経口リルピビリンの独立した研究に基づいて、軽度または中等度の肝機能障害(チャイルドピュースコアAまたはB)の患者には、本組合せの用量調整は必要でない。カボテグラビルまたはリルピビリンの薬物動態に対する重度の肝機能障害(チャイルドピュースコアC)の影響は不明である。
【0077】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せの一方または両方の成分の過量摂取のための治療が提供される。カボテグラビルまたはリルピビリンの過量摂取に対する特定の治療法は知られていない。過量摂取が発生した場合、患者を監視し、必要に応じて、バイタルサインおよびECG(QT間隔)の監視、ならびに患者の臨床状態の観察を含む標準的な支持療法を適用する必要がある。カボテグラビルおよびリルピビリンはどちらも血漿タンパク質に強く結合しているため、どちらも透析によって著しく除去される可能性は低い。処置の必要性および回復を評価する際は、注射後のカボテグラビルおよびリルピビリン(本組合せの成分)への長期暴露を考慮する。
【0078】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せは、HIV INSTIであるカボテグラビル徐放性注射懸濁液およびHIV NNRTIであるリルピビリン徐放性注射懸濁液を含有し、特に、本組合せは、HIV NNRTIであるリルピビリン徐放性注射懸濁液と同包装された、HIV INSTIであるカボテグラビル徐放性注射懸濁液を含有する。1つの実施形態では、本組合せは、HIV NNRTIであるリルピビリン徐放性注射懸濁液とは別に包装されたHIV INSTIであるカボテグラビル徐放性注射懸濁液を含有する。
【0079】
カボテグラビル:カボテグラビルの化学名は、(3S,11aR)-N-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-6-ヒドロキシ-3-メチル-5,7-ジオキソ-2,3,5,7,11,11a-ヘキサヒドロ[1,3]オキサゾロ[3,2-a]ピリド[1,2-d]ピラジン-8-カルボキサミドである、実験式はC
19H
17F
2N
3O
5であり、分子量は405.35g/molである。カボテグラビルは以下の構造式を有する。
【化1】
【0080】
カボテグラビル徐放性注射懸濁液は、筋肉内注射用の白~淡桃色の自由流動性懸濁液である。各無菌単回用量バイアルは、以下のものを含有する:
2mLバイアル
カボテグラビル400mgおよび以下の不活性成分:マンニトール(70mg)、ポリソルベート20(40mg)、ポリエチレングリコール(PEG)3350(40mg)、および注射水。
3mLバイアル
カボテグラビル600mgおよび以下の不活性成分:マンニトール(105mg)、ポリソルベート20(60mg)、ポリエチレングリコール(PEG)3350(60mg)、および注射水。
【0081】
カボテグラビル錠剤は、カボテグラビルをカボテグラビルナトリウムとして含有する。カボテグラビルナトリウムは、水にわずかに溶ける白~ほぼ白色の固体である。経口投与用のカボテグラビルの即放出型フィルムコーティング錠はそれぞれ、30mgのカボテグラビル(31.62mgカボテグラビルナトリウム当量)および不活性成分:ヒプロメロース、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微晶質セルロース、およびグリコール酸ナトリウムデンプンを含有する。この錠剤フィルムコーティングは、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、および二酸化チタンを含有する。
【0082】
リルピビリン:リルピビリンの化学名は、4-[[4-[[4-[(E)-2-シアノエテニル]-2,6-ジメチルフェニル]アミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリルである。その分子式はC
22H
18N
6であり、その分子量は366.42である。リルピビリンは以下の構造式を有する。
【化2】
【0083】
リルピビリン徐放性注射懸濁液は、筋肉内注射用の白~灰白色の懸濁液である。各無菌単回用量バイアルは以下のものを含有する:
2mLバイアル
リルピビリン600mgおよび以下の不活性成分:ポロキサマー338(100mg)、クエン酸一水和物(2mg);グルコース一水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、pH調整および等張性確保のための水酸化ナトリウム、および注射水。
3mLバイアル
リルピビリン900mgおよび以下の不活性成分:ポロキサマー338(150mg)、クエン酸一水和物(3mg);グルコース一水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、pH調整および等張性確保のための水酸化ナトリウム、および注射水。
バイアルの栓は天然ゴムラテックス製ではない。
【0084】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せは、特定の臨床薬理学を示す。
【0085】
本組合せのQT間隔の及ぼす影響は研究されていない。
カボテグラビル:無作為化プラセボ対照3期間クロスオーバー試験では、42人の健常な被験者が6つの無作為順序に無作為化され、12時間ごとにプラセボ、カボテグラビル150mg(Cmaxは30mg1日1回投与の約3倍)、およびモキシフロキサシン400 mgの単回投与(活性剤対照)の3回の経口投与を受けた。ベースラインおよびプラセボ調整の後、カボテグラビルのフリデリシアの補正方法(QTcF)に基づく最大時間一致平均QTc変化は2.62ミリ秒(片側95%上限Cl:5.26ミリ秒)であった。カボテグラビルは、投与後24時間にわたってQTc間隔を延長することはなかった。
【0086】
リルピビリン:QTcF間隔に対する1日1回の推奨経口用量25mgのリルピビリンの影響を、60人の健常な成人における無作為化プラセボおよび活性剤(モキシフロキサシン400mg 1日1回)対照クロスオーバー試験で、定常状態で24時間にわたって13回測定して評価した。ベースライン補正後のプラセボとのQTcF間隔の最大平均時間一致(95%上限信頼区間)の差は2.0(5.0)ミリ秒であった(すなわち、臨床的懸念の閾値を下回る)。リルピビリンの75mgおよび300mgの1日1回経口投与(推奨経口用量のそれぞれ3倍および12倍)が健常な成人で試験された場合、ベースライン補正後のプラセボからのQTcF間隔の最大平均時間一致(95%上限信頼区間)の差は、それぞれ10.7(15.3)および23.3(28.4)ミリ秒であった。定常状態でリルピビリン75mg 1日1回および300 1日1回を投与すると、平均定常状態Cmaxはそれぞれ約4.4倍および11.6倍となり、推奨される月間600mgの用量のリルピビリン徐放性注射懸濁液で見られた平均定常状態Cmaxよりも高くなった。
【0087】
本組合せの成分の薬物動態学的特性を表6に示す。複数回投与薬物動態パラメーターを表7に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
脳脊髄液(CSF):カボテグラビルはCSF中に存在する。カボテグラビル徐放性注射懸濁液およびリルピビリン徐放性注射懸濁液の両方を投与されたHIV-1感染被験者では、カボテグラビルのCSF/血漿濃度比の中央値(n=16)は0.304~0.344(範囲:0.218~0.449)であり、毎月または2か月毎に投与される定常状態のカボテグラビルおよびリルピビリン徐放性注射懸濁液の1週間後の非結合カボテグラビル濃度の中央値に相当するものよりも高かった。リルピビリンはCSF中に存在する。同じ16人の被験者において、リルピビリンCSF/血漿比の中央値は1.07~1.32%(半に:定量不能~1.69%)であった。CSF中の治療的カボテグラビルおよびリルピビリン濃度と一致して、CSF HIV-1 RNA濃度(n=16)は、100%の被験者で50コピー/mLより少なく、15/16(94%)の被験者で2コピー/mLより少なかった。同じ時点で、血漿HIV-1 RNA濃度(n=18)は、100%の被験者で50コピー/mLより少なく、12/18(66.7%)の被験者で<2コピー/mLより少なかった。
【0091】
主要な実施形態の別の側面によれば、薬物動態学は特定の患者集団によって異なる。
【0092】
小児患者:本組合せの成分の薬物動態は、小児患者では研究されていない。
【0093】
老人患者:集団の薬物動態分析は、年齢がカボテグラビルまたはリルピビリンの薬物動態に臨床的に関連する影響を及ぼさなかったことを示した。65歳以上の被験者の薬物動態データは限られている。
【0094】
腎機能障害のある患者:重度の腎機能障害のある被験者(CrCL<30mL/分、透析を受けていない)と一致する健常被験者の間に臨床的に重要な薬物動態の違いは経口カボテグラビルでは見られなかった。軽度~重度の腎機能障害(透析を受けていない)の患者には、用量調整の必要はない。カボテグラビルは、透析を必要とする患者では研究されていない。
【0095】
集団の薬物動態分析は、軽度の腎機能障害が経口リルピビリンの曝露に臨床的に関連する影響を及ぼさなかったことを示した。中等度または重度の腎機能障害、末期腎疾患の患者、または透析を必要とする患者におけるリルピビリンの薬物動態に関する情報は限られているか、全くない。
【0096】
肝機能障害のある患者:中等度の肝機能障害のある被験者と一致する健常被験者との間に臨床的に重要な薬物動態の違いは、経口カボテグラビルでは見られなかった。軽度~中等度の肝機能障害(チャイルドピュースコアAまたはB)の患者には、用量調整の必要はない。カボテグラビルの薬物動態に対する重度の肝機能障害(チャイルドピュースコアC)の影響は研究されていない。
【0097】
リルピビリン曝露は、一致する対照と比較して、軽度の肝機能障害(チャイルドピュースコアスコアA)の被験者(n=8)では47%高く、中等度の肝機能障害(チャイルドピュースコアスコアB)の被験者(n=8)では5%高かった。リルピビリンの薬物動態に対する重度の肝機能障害(チャイルドピュースコアC)の影響は研究されていない。
【0098】
HBV/HCVの重複感染のある患者:B型肝炎の同時感染の患者では、カボテグラビルおよびリルピビリンは研究されていない。カボテグラビルおよびリルピビリンを投与されたC型肝炎の重複感染患者の経験は限られている。
【0099】
性別と人種:集団の薬物動態分析により、性別と人種はカボテグラビルまたはリルピビリンの薬物動態に臨床的に関連する影響を及ぼさないことが明らかとなった。
【0100】
薬物代謝酵素の多型:健常被験者およびHIV-1感染被験者試験のメタ分析では、低いカボテグラビル代謝を与えるUGT1A1遺伝子型を有するHIV感染被験者では、UGT1A1を介した正常な代謝に関連する遺伝子型を有する被験者に比べて、平均定常状態カボテグラビルAUC、カボテグラビル長時間作用型注射後のCmax、およびのCtauは12倍の増加を示した。UGT1A1多型を有する被験者では用量調整の必要はない。
【0101】
体格指数(BMI):集団の薬物動態分析では、カボテグラビルおよびリルピビリンの曝露に対するBMIの臨床的に関連する影響は明らかにならなかったので、BMIに基づいて用量を調整する必要はない。針の長さが臀筋に到達するのに十分であることを保証するために、患者のBMIを考慮する。
【0102】
主要な実施形態の別の側面によれば、薬物相互作用研究は、個々の成分として経口カボテグラビルまたは経口リルピビリン、および薬物動態学的相互作用のプローブとして併用投与または一般使用できる可能性のある他の薬物を用いて実施した。
【0103】
カボテグラビルは、以下の酵素およびトランスポーターの臨床的に関連する阻害剤ではない:CYP1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、および3A4;UGT1A1、1A3、1A4、1A6、1A9、2B4、2B7、2B15、および2B17;P-gp;BCRP;胆汁酸塩輸出ポンプ(BSEP);有機陽イオン輸送体(OCT)1、OCT2;有機陰イオン輸送体ポリペプチド(OATP)1B1、OATP1B3;多剤毒素排出輸送体(multidrug and toxin extrusion transporter)(MATE)1、MATE 2-K;多剤耐性タンパク質(MRP)2またはMRP4。
【0104】
in vitroでは、カボテグラビルは腎有機陰イオン輸送体(OAT)1(IC50=0.81μM)およびOAT3(IC50=0.41μM)を阻害した。しかしながら、PBPKモデリングに基づくと、臨床的に関連のある濃度ではOAT基質との相互作用は予想されない。
【0105】
in vitroでは、カボテグラビルはCYP1A2、CYP2B6、またはCYP3A4を誘発しなかった。これらのデータおよび薬物相互作用試験の結果に基づくと、カボテグラビルはこれらの酵素の基質である薬物の薬物動態に影響を与えるとは予想されない。
【0106】
リルピビリンは主にCYP3Aによって代謝される。リルピビリン注射は、CYP酵素によって代謝される薬物の曝露に臨床的に関連する影響を与える可能性は低い。
【0107】
それらのin vitroおよび臨床薬物相互作用プロファイルに基づいて、カボテグラビルおよびリルピビリンは、プロテアーゼ阻害剤、NRTI、NNRTI、インテグラーゼ阻害剤、侵入阻害剤、およびイバリズマブを含む他の抗レトロウイルス薬の濃度を変えるとは予想されない。
【0108】
カボテグラビルは主にUGT1A1によって代謝され、UGT1A9からの寄与もいくらかある。UGT1A1または1A9の強力な誘導物質である薬物は、カボテグラビル血漿濃度を低下させ、有効性の欠如につながると予想されるため、これらの薬物との併用投与は禁忌である。
【0109】
in vitroで、カボテグラビルはOATP1B1、OATP1B3、またはOCT1の基質ではなかった。カボテグラビルは、in vitroにおいてP-gpおよびBCRPの基質であるが、その高い透過性のために、P-gpまたはBCRP阻害剤と併用投与する場合にカボテグラビル吸収の変化は予想されない。
【0110】
同時投与された薬物の曝露に対するカボテグラビルまたはリルピビリンの影響は表8および10にまとめられ、カボテグラビルまたはリルピビリンの曝露に対する同時投与された薬物の影響はそれぞれ表9および11にまとめられている。注射用のカボテグラビルまたはリルピビリン徐放性懸濁液を用いた薬物相互作用の研究は行われていない。提供される薬物相互作用データは、経口カボテグラビルまたは経口リルピビリンを用いた研究から得られたものである。カボテグラビルおよびリルピビリンとの確立された、および他の潜在的に重要な薬物間相互作用の結果としての推奨用量を表5に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
カボテグラビルは、インテグラーゼ活性部位に結合し、HIV複製サイクルに不可欠なレトロウイルスデオキシリボ核酸(DNA)統合の鎖転移ステップをブロックすることによって、HIVインテグラーゼを阻害する。精製された組換えHIV-1インテグラーゼを使用した鎖転移アッセイにおけるカボテグラビルの平均50%阻害濃度(IC50)値は3.0nMであった。
【0116】
リルピビリンは、HIV-1のジアリールピリミジンNNRTIであり、HIV-1逆転写酵素(RT)の非競合的阻害によりHIV-1複製を阻害する。リルピビリンは、ヒト細胞のDNAポリメラーゼα、β、およびγを阻害しない。
【0117】
カボテグラビルは、HIV-1の実験室株(サブタイプB、n=4)に対して抗ウイルス活性を示し、末梢血単核細胞(PBMC)および293細胞で平均50%有効濃度(EC50)値は0.22nM~1.7nMであった。カボテグラビルは、24のHIV-1臨床分離株(グループMサブタイプA、B、C、D、E、F、およびGのそれぞれに3つ、グループOに3つ)のパネルに対してPBMCで抗ウイルス活性を示し、EC50値の中央値は0.19nMであった(範囲:0.02nM~1.06nM)。サブタイプB臨床分離株に対するEC50値の中央値は0.05nMであった(範囲:0.02~0.50nM、n=3)。臨床的なHIV-2分離株に対して、EC50値の中央値は0.12nMであった(範囲:0.10nM~0.14nM、n=4)。
【0118】
リルピビリンは、急性感染したT細胞株において野生型HIV-1の実験室株に対して活性を示し、HIV-1IIIBのEC50値の中央値は0.73nM(0.27ng/mL)であった。リルピビリンは、HIV-1グループM(サブタイプA、B、C、D、F、G、およびH)の初代分離株の広範なパネルに対して抗ウイルス活性を示し、EC50値は0.07nM~1.01nM(0.03~0.37ng/mL)の範囲であり、グループOの初代分離株に対しては活性が低く、EC50値は2.88~8.45nM(1.06~3.10ng/mL)の範囲であった。
【0119】
細胞培養において、カボテグラビルは、NNRTIリルピビリン、またはNRTIエムトリシタビン(FTC)、ラミブジン(3TC)、またはフマル酸テノホビルジソプロキシル(TDF)と組み合わせた場合に拮抗性ではなかった。
【0120】
リルピビリンの抗ウイルス活性は、NNRTIであるエファビレンツ、エトラビリン、もしくはネビラピン;NRTIであるアバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、テノホビル、もしくはジドブジン;プロテアーゼ阻害剤であるアンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、もしくはチプラナビル;融合阻害剤であるエンフビルチド;CCR5共受容体拮抗剤であるマラビロク、またはINSTIであるラルテグラビルと組み合わせた場合に拮抗性ではなかった。
【0121】
細胞培養:カボテグラビル耐性ウイルスは、カボテグラビルの存在下でMT-2細胞のHIV-1株IIIBの継代培養中に選択された。出現し、カボテグラビルに対する感受性の低下をもたらしたインテグラーゼのアミノ酸置換には、Q146L(変化倍率:1.3~4.6)、S153Y(変化倍率:2.8~8.4)、S153Y(変化倍率:6.3~6.4)、およびI162M(変化倍率:2.8)が含まれていた。インテグラーゼ(IN)置換T124Aも、S153Y(カボテグラビル感受性における変化倍率:3.6~6.6)またはI162M(カボテグラビル感受性における変化倍率:2.8倍)と組み合わせた場合に単独で出現した(カボテグラビル感受性における変化倍率:1.1~7.4)。インテグラーゼ置換Q148H、Q148K、またはQ148Rを含むウイルスの細胞培養継代がさらなる置換(C56S、V72I、L74M、V75A、T122N、E138K、G140S、G149A、およびM154I)のために選択され、置換ウイルスは2.0~410倍の変化という低いカボテグラビル感受性を有していた。E138K+Q148KとV72I+E138K+Q148Kの組合せにより、それぞれ53倍~260倍および410倍の変化という最大減少を与えた。
【0122】
リルピビリン耐性株は、異なる起源およびサブタイプの野生型HIV-1、ならびにNNRTI耐性HIV-1から出発する細胞培養で選択された。出現し、リルピビリンに対する表現型感受性の低下をもたらした頻繁に見られるアミノ酸置換には、L100I;K101E;V106IおよびA;V108I;E138KおよびG、Q、R;V179FおよびI;Y181CおよびI;V189I;G190E;H221Y;F227C;ならびにM230IおよびLが含まれていた。
【0123】
臨床試験:プールされた第3相FLAIRおよびATLAS試験では、カボテグラビルとリルピビリンで7件の確認されたウイルス学的不奏効(2回連続でHIV-1 RNA>200コピー/mL)があり(7/591、1.2%)、現行の抗ウイルスレジメン(CAR)で7件の確認されたウイルス学的不奏効があった(7/591、1.2%)。
カボテグラビルとリルピビリン群における7件のウイルス学的不奏効のうち、6件にはベースライン後の耐性データがあった。6件総てが逆転写酵素において治療下リルピビリン耐性関連置換K101E、E138A、またはE138Kを有し、それらのうち5件はリルピビリンに対する表現型感受性の低下を示した(範囲:2.4~7.1倍)。
【0124】
さらに、ベースライン後の耐性データを伴うカボテグラビルとリルピビリンのウイルス学的不奏効6件のうち4件(67%)は、治療下INSTI耐性関連置換があり、カボテグラビルに対する表現型感受性が低下していた(Q148R[n=2;カボテグラビルに対する感受性が5分の1および9分の1に減少]、G140R[n=1;カボテグラビルに対する感受性が7分の1に減少]、またはN155H[n=1;カボテグラビルに対する感受性が3分の1に減少])。
【0125】
比較すると、ベースライン後の耐性データを有していたCAR群のウイルス学的不奏効7件のうち2件(29%)は、治療中の耐性置換および抗レトロウイルス薬に対する表現型耐性を有し、両方とも治療中のNRTI置換、M184VまたはIがあり、レジメンでエムトリシタビンまたはラミブジンに対する耐性を付与し、そのうちの1つは治療中のNNRTI耐性置換G190Sも有し、レジメンでエファビレンツに対する耐性を付与されていた。
【0126】
第2相臨床試験LATTE-2では、カボテグラビルとリルピビリンのウイルス学的不奏効は、遺伝子型および表現型的カボテグラビルおよびリルピビリン耐性の出現を示した(INSTI耐性関連置換Q148RおよびNNRTI耐性関連置換K103N、E138G、およびK238Tの出現を伴った)。
【0127】
第2相臨床試験LATTEでは、経口カボテグラビルとリルピビリンのウイルス学的不奏効は、遺伝子型および表現型的カボテグラビルとNNRTI耐性の出現を示した(INSTI耐性関連置換Q148R、E138K+Q148R、E138K+G140A+Q148R、およびG140S+Q148R、およびリルピビリン耐性関連置換E138Q、K101K/E+E138E/A、K101K/E+E138E/K、K101E+M230L、およびK101Eの出現を伴った)。
【0128】
FLAIRおよびATLASにおけるカボテグラビルとリルピビリンのウイルス学的不奏効7件のうち5件は、HIV-1サブタイプA1を有し、ベースラインおよび不奏効の時点でインテグラーゼL74I置換(IN L74I)が検出された。ベースラインでウイルスにINL74IがなかったサブタイプA1感染被験者は、ウイルス学的不奏効を経験しなかった(FLAIR結果を表12に示す)。さらに、ベースラインでのIN L74Iの存在によって付与された、カボテグラビルに対する検出可能な表現型耐性はなかった。
【0129】
他の2件のウイルス学的不奏効には、サブタイプAGがあり、INL74I置換はかたった。サブタイプA1およびAGのウイルス学的不奏効のうち6件は、サブタイプA、Al、およびAGの有病率が高いロシア由来のものであった。サブタイプA、Al、およびAGは、米国では一般的ではない。
【0130】
米国で一般的に見られるサブタイプBなどの他のサブタイプでのINL74I置換の存在は、ウイルス学的不奏効とは関連していなかった(表12)。総てのウイルス学的不奏効がサブタイプAlまたはAGであった第3相試験とは対照的に、第2相臨床試験では、カボテグラビルとリルピビリンのウイルス学的不奏効のサブタイプは、Al、A、B、およびCを含んでいた。
【0131】
【0132】
カボテグラビル:INSTI間で交差耐性が見られている。カボテグラビルは、以下のインテグラーゼアミノ酸置換を有する組換えHIV-1 NL432株のウイルスには感受性が低い(変化倍率>5):G118R、Q148K、Q148R、T66K+L74M、E92Q+N155H、E138A+Q148R、E138K+Q148K/R、G140C+Q148R、G140S+Q148H/K/R、およびQ148R+N155H(範囲:5.1~81倍)。置換E138K+Q148KおよびQ148R+N155Hは、それぞれ81倍および61倍という最大の感受性低下を付与した。
【0133】
カボテグラビルは、NNRTI置換K103NもしくはY188L、またはNRTI置換M184V、D67N/K70R/T215Y、もしくはV75I/F77L/F116Y/Q151Mを有するウイルスに対して活性がある。
【0134】
リルピビリン:NNRTI間で交差耐性が見られている。単一NNRTI置換K101P、Y181I、およびY181Vは、それぞれリルピビリンに対して52倍、15倍、および12倍の変化倍率をもたらした。K103N置換は、それ自体ではリルピビリンに対する感受性の低下を示さなかった。2つまたは3つのNNRTI耐性関連置換の組合せが、置換のそれぞれ38%および66%でリルピビリンに3.7~554倍の変化をもたらした。利用可能な総ての細胞培養および臨床データを考慮すると、ベースラインに存在する場合、以下のアミノ酸置換のいずれかがリルピビリンの抗ウイルス活性を低下させる可能性がある:K101EおよびP;E138A、G、K、R、およびQ;V179L;Y181C、I、およびV;Y188L;H221Y;F227C;M230IおよびL、ならびにL100I/K103Nの組合せ。
【0135】
主要な実施形態の別の側面によれば、発癌、突然変異誘発、生殖障害が検討された。
【0136】
カボテグラビルは、マウスおよびラットにおける長期研究では発現性はなかった。
リルピビリンはラットで発癌性はなかった。マウスでは、リルピビリンは雄と雌の両方で肝細胞腫瘍が陽性であった。マウスで観察された肝細胞所見は、齧歯類に特異的である可能性がある。マウスで試験された最低用量で、リルピビリンへの全身曝露(AUCに基づく)は、HIV-1感染患者で1日1回25mgのMRHDまたはリルピビリン徐放性注射懸濁液の600mgIM注射用量でのヒトにおける曝露の17倍を超えるものであった。
【0137】
カボテグラビルは、細菌逆突然変異アッセイ、マウスリンパ腫アッセイ、またはin vivo齧歯類小核アッセイで遺伝子毒性はなかった。
【0138】
リルピビリンは、細菌逆突然変異アッセイ、マウスリンパ腫アッセイ、またはin vivo齧歯類小核アッセイで遺伝子毒性はなかった。
【0139】
カボテグラビルの生殖能力への影響に関するヒトデータは得られていない。カボテグラビルを雄および雌のラットに1,000mg/kg/日(暴露[AUC]は30mg/日経口投与または400mg筋肉内注射用量のMRHDの30倍を超える)で最大26週間経口投与した場合、雄または雌の生殖器官または精子形成に対して有害作用を生じなかった。1,000mg/kg/日までの用量でカボテグラビルを投与した場合、雄または雌のラットで交配または生殖能力に対する機能的影響は見られなかった。
【0140】
生殖能力に及ぼすリルピビリの影響に関するヒトのデータはない。ラットで実施された研究では、母体毒性を示したリルピビリンの用量である400mg/kg/日までのリルピビリンとの交配または生殖能力への影響はない。この用量は、1日1回25mgのMRHDまたは600mgの筋肉内注射用量のリルピビリン徐放性注射懸濁液でのヒトの曝露の28倍を超える曝露に関連している。
【0141】
本組合せの有効性は、2つの第3相無作為化、多施設、活性剤対照、パラレルアーム、非盲検、非劣性試験で評価されている。
試験201584(FLAIR、[NCT02938520])、(n=629):HIV-1感染、抗レトロウイルス治療(ART)未経験の被験者は、ドルテグラビルINSTIを含むレジメンを20週間受けた(ドルテグラビル/アバカビル/ラミブジンまたはドルテグラビルプラス被験者がHLA-B*5701陽性の場合には他の2つのNRTI)。ウイルス学的に抑制された被験者(HIV-1 RNA<50コピー/mL、n=566)は、カボテグラビルとリルピビリンレジメンを受けるか、または現行の抗レトロウイルスレジメンを継続するように無作為化された(1:1)。カボテグラビルとリルピビリンを受けるように無作為化された被験者は、30mgのカボテグラビル錠剤1個と25mgのリルピビリン錠剤1個による少なくとも4週間の毎日の経口導入投与で処置を開始し、その後、カボテグラビル徐放性射懸濁液とリルピビリン徐放性射懸濁液でさらに44週間処置した。
【0142】
試験201585(ATLAS、[NCT02951052])、(n=616):HIV-1感染、ART経験、ウイルス学的抑制(少なくとも6か月間、前治療期間の中央値は4.3年)被験者(HIV-1 RNA<50コピー/mL)が無作為化され、カボテグラビルとリルピビリンレジメンを受けるか、または現行の抗レトロウイルスレジメンを継続した。カボテグラビルとリルピビリンを受けるように無作為化された被験者は、30mgのカボテグラビル錠剤1個と25mgのリルピビリン錠剤1個による少なくとも4週間の毎日の経口導入投与で処置を開始し、その後、カボテグラビル徐放性注射懸濁液とリルピビリン徐放性注射懸濁液でさらに44週間処置した。
【0143】
一次分析は、総ての被験者が48週目の訪問を完了するか、または試験を時期尚早に中止した後に実施した。
【0144】
プール分析のベースラインで、本組合せ法を受けるように無作為化された被験者では、年齢の中央値は38歳、27%が女性、27%が非白人、7%がCD4+細胞数<350細胞/mm3であり、これらの特徴は処置群間で同様であった。ATLASでは、被験者は、無作為化の前に、ベースラインの第3薬剤種としてNNRTI(50%)、インテグラーゼ阻害剤(33%)、またはプロテアーゼ阻害剤(17%)を投与され、これは処置群間で同様であった。
【0145】
FLAIRおよびATLASの主要評価項目は、48週目で血漿HIV-1 RNA≧50コピー/mLの被験者の割合であった(Intent-to-Treat-Efficacy[ITT-E]集団のスナップショットアルゴリズム)。
【0146】
FLAIRおよびATLASのプール分析では、48週目に血漿HIV-1 RNA≧50コピー/mL(それぞれ1.9%および1.7%)の被験者の割合に関して、本組合せは現行の抗レトロウイルスレジメンに劣っていなかった。プール分析のための本組合せ法と現行の抗レトロウイルスレジメンの間の補正された処置の差(0.2;95%CI:-1.4、1.7)は、非劣性基準(95%CIの上限:4%未満)を満たしていた。さらに、プール分析では、本組合せは、48週目に血漿HIV-1 RNA<50コピー/mL(それぞれ93.1%および94.4%)の被験者の割合に関して、現行の抗レトロウイルスレジメンに劣っていなかった。プール分析のためのカボテグラビルおよびリルピビリンと現行の抗レトロウイルスレジメンの間の調整された処置の差(-1.4;95%CI:-4.1、1.4)は、非劣性基準(95%CIの下限:-10%を超える)を満たしていた。
【0147】
FLAIRおよびATLASで確立された非劣性の結果は、本組合せの開始前のHIV-1 RNAのウイルス学的抑制の長さ(すなわち、6か月未満または6か月以上)が全体的な奏効率に影響を与えなかったことを示した。
【0148】
FLAIRおよびATLASの主要評価項目およびその他の第48週転帰(主要なベースライン因子による転帰を含む)を表13および14に示す。
【0149】
【0150】
【0151】
FLAIRおよびATLAS試験の両方で、ベースライン特性(CD4+数、性別、年齢、人種、BMI、およびベースラインの第3薬剤種)による処置の差は同等であった。
FLAIRおよびATLAS試験の両方の被験者は、それぞれ1日目前または試験開始時にウイルス学的に抑制されており、CD4+細胞数のベースラインからの臨床的に関連する変化は見られなかった。
【0152】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せは、カボテグラビル徐放性注射懸濁液200mg/mLおよびリルピビリン徐放性注射懸濁液300mg/mLを含有する2つの投与キットで、以下のように同包装されて供給される。
2mL(NDC 49702-253-15)は以下を含有する:
・400mgのカボテグラビルを含有するカボテグラビル徐放性注射懸濁液の2mL単回用量バイアル1本
・600mgのリルピビリンを含有するリルピビリン徐放性注射懸濁液の2mL単回用量バイアル1本
3mL(NDC 49702-240-15)は以下を含有する:
・600mgのカボテグラビルを含有するカボテグラビル徐放性注射懸濁液の3mL単回用量バイアル1本
・900mgのリルピビリンを含有するリルピビリン徐放性注射懸濁液の3mL単回用量バイアル1本
【0153】
各2mLおよび3mL投与キットはまた、2本のシリンジ、2個のバイアルアダプター、および2本の筋肉内注射用針(23ゲージ、1 1/2インチ)を含む。バイアルの栓は天然ゴムラテックス製ではない。
【0154】
1つの実施形態において、400mgのカボテグラビルを含有するカボテグラビル徐放性注射懸濁液の2mL単回用量バイアル、600mgのリルピビリンを含有するリルピビリン徐放性注射懸濁液の2mL単回用量バイアル、600mgのカボテグラビルを含有するカボテグラビル徐放性注射懸濁液の3mL単回用量バイアル、および900mgのリルピビリンを含有するリルピビリン徐放性注射懸濁液の3mL単回用量バイアルは別個に包装される。1つの実施形態において、2mLおよび3mL包装品のそれぞれはまた、シリンジ、バイアルアダプターおよび筋肉内注射用針(23ゲージ、1 1/2インチ)も含む。バイアルの栓は天然ゴムラテックス製ではない。
【0155】
主要な実施形態の別の側面によれば、本組合せは、使用する準備ができるまで、元のカートン内で2~8℃(36~46°F)の冷蔵庫に保存される。好ましくは、本組合せも、本組合せのいずれの成分も凍結されない。好ましくは、本組合せも、本組合せのいずれの成分も、他の製品または希釈剤と混合されない。
【0156】
投与前に、バイアルを室温に戻す必要がある(25℃[77°F]を超えないように)。バイアルは、室温で最大6時間カートン内に置いておくことができる。6時間後に使用しない場合は、廃棄しなければならない。
【0157】
懸濁液を各注射器に抜き取れば、注射はできるだけ早く行うべきであるが、最大2時間注射器に置いておくことができる。2時間を超える場合は、薬剤、シリンジ、針を廃棄しなければならない。
【0158】
全体を通して使用されるように、当業者は、「毎月」または同様の用語が「4週間毎」または「Q4W」と互換的であることを認識する。同様に、2か月毎を指す用語は、投与目的では8週間毎または「Q8W」と同等である。本明細書の目的のために、任意の月対4週間の期間(またはその倍数)が代替の実施形態として取られるものとする。
【0159】
第2の主要な実施形態
第2の主要な実施形態によれば、HIV-1を治療する方法であって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、 前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびに前記の1または複数の中止された筋肉内注射を定期的に投与される経口療法で置き換えることを含んでなる方法が提供される。
【0160】
前記のHIVを治療する方法は、少なくとも1回のカボテグラビルおよび/またはリルピビリン注射の後に投与されるカボテグラビルおよび/またはリルピビリン経口療法の使用を含んでなる。1つの実施形態によれば、カボテグラビル経口療法は、少なくとも1回のカボテグラビル注射の後に投与される。あるいは、リルピビリン経口療法は、少なくとも1回のリルピビリン注射の後に投与される。
【0161】
この実施形態によれば、患者が予定された注射来訪を逃す予定の場合、注射スケジュールの開始後、1回または複数回の注射の代わりに経口療法が使用される。注射投与は、経口投与後に予定通りに再開することができ、その場合、経口投与は、注射間のブリッジング投与の機能を果たす。1つの実施形態では、2かを超える期間をカバーする必要がある場合、すなわち、2か月を超えて注射を逃す場合、代替の経口レジメンは、最後の筋肉内注射の1か月または2か月(±7日)後に開始されるべきである。1つの実施形態において、2か月を超える期間をカバーする必要がある場合、すなわち、2か月の注射毎に1か月を超えて注射を逃す場合、代替の経口レジメンは、最後の筋肉内注射の2か月(±7日)後に開始されるべきである。
【0162】
例として、患者が予定された注射訪問を、7日を超えて逃す予定の場合、経口療法(例えば、1日1回カボテグラビルの30mg錠1個とリルピビリンの25mg錠1個)を使用して注射を置き換えることができる。好ましくは、経口療法は、2回以下の注射に取って代わる。経口療法の最初の用量は、逃した注射が投与されたであろうおよその時、例えば、毎月の投与スケジュールの場合、最後の注射投与の1か月後に服用するべきである。注射投与は、経口投与が完了した日に再開するべきである(上記の表2を参照のこと)。経口療法の最初の用量は、逃した注射が投与されたであろうおよその時、例えば、2か月の投与スケジュールの場合、最後の注射投与から2か月(±7日)後に服用するべきである。注射投与は、経口投与が完了した日に再開するべきである。
【0163】
例として、リルピビリン長時間作用型の毎月の注射投与を受けている患者が、注射もしくは経口療法を逃した場合、または2か月までに経口ブリッジ療法を受けている場合、患者はできるだけ速やかに毎月600mg(2mL)の注射投与スケジュールを継続する必要がある。例として、長時間作用型リルピビリンの毎月の注射投与を受けている患者が、注射もしくは経口療法を逃した場合、または2か月以上経口架橋療法を受けている場合、患者は900mg(3mL)用量で患者に再開し、その後、毎月600mg(2mL)の注射投与スケジュールに従い続ける必要がある。(表15)
【0164】
例として、長時間作用型のリルピビリンの2か月の注射投与を受けている患者が、予定された注射来訪もしくは経口療法を逃した場合、または2か月以内に経口ブリッジング療法を受けている場合、できるだけ速やかにリルピビリン長時間作用型製剤の3mL(900mg)注射で患者に再開し、2か月毎の注射投与スケジュールを継続する必要がある。1つの実施形態において、患者は注射2(3か月目)を逃した。例として、長時間作用型リルピビリンの2か月の注射投与を受けている患者が、予定された注射来訪もしくは経口療法を逃した場合、または2か月を超えて経口ブリッジング療法を受けている場合、患者にリルピビリン長時間作用型製剤の3mL(900mg)注射で処置を再開し、その後、1か月後にリルピビリン長時間作用型製剤の2回目の3mL(900mg)開始注射を行う必要がある。その後、2か月ごとの注射投与スケジュールに従う。1つの実施形態において、患者は注射2(3か月目)を逃した。(表16)
【0165】
例として、長時間作用型のリルピビリンの2か月の注射投与を受けている患者が、予定された注射来訪もしくは経口療法を逃した場合、または3か月以内に経口ブリッジング療法を受けている患者は、できるだけ速やかにリルピビリン長時間作用型製剤の3mL(900mg)注射で患者に再開し、2か月毎の注射投与スケジュールを継続する必要がある。1つの実施形態では、患者は3日以降(5か月目以降)に注射を逃した。例として、長時間作用型リルピビリンの2か月の注射投与を受けている患者が、予定された注射来訪もしくは経口療法を逃した場合、または3か月を超えて経口ブリッジング療法を受けている場合、リルピビリン長時間作用型製剤の3mL(900mg)注射で患者に処置を再開し、その後、1か月後にリルピビリン長時間作用型製剤の2回目の3mL(900mg)注射を開始する必要がある。次に、2か月毎の注射投与スケジュールに従う。1つの実施形態において、患者は注射3以降(5か月目以降)を逃した。(表16)
【0166】
【0167】
【0168】
第3の主要な実施形態
第3の主要な実施形態によれば、HIVを治療する方法であって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与すること、前記のカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩のそれぞれの少なくとも1回の筋肉内注射の後に、前記の定期的に投与される筋肉内注射の一方または両方を中止すること、ならびにまず、負荷用量の中止されたカボテグラビルもしくはその塩および/またはリルピビリンもしくはその塩を投与し、その後、筋肉内注射の定期投与を継続することによって、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の一方または両方の筋肉内投与を再確立することを含んでなる方法が提供される。
【0169】
この実施形態によれば、本組合の再開注射は、少なくとも1回の事前注射の後、および許容可能な治療ウインドウの外でその後に予定された注射の遅延後に与えられ、ここで、再開注射は、予定された注射よりも高い用量である。
【0170】
1つの実施形態によれば、再開は、カボテグラビルの3mL用量を使用し、その後、カボテグラビルの毎月の2mL注射投与スケジュールに従い続ける。1つの実施形態によれば、再開は、リルピビリンの3mL用量を使用し、その後、リルピビリンの毎月の2mL注射投与スケジュールに従い続ける。1つの実施形態によれば、再開は、本組合せの3mL用量を使用し、その後、本組合せのための毎月の2mL注射投与スケジュールに従い続ける。
【0171】
第5の主要な実施形態
第5の主要な実施形態によれば、HIVを治療する方法は、ビクテグラビル含有レジメンによるウイルス抑制の後にカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与することを含んでなる方法が提供される。あるいは、この実施形態の1つの側面によれば、ビクテグラビル含有レジメンによるウイルス抑制の後にカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与することを含んでなる療法において、特に、HIV感染の治療において使用するためのカボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩が提供される。
【0172】
この実施形態によれば、ビクテグラビル含有レジメンは、ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビルアナフェナミド単一錠剤レジメンである。さらに、この実施形態によれば、ビクテグラビルは、50mg/日で投与される。
【0173】
この実施形態によれば、定期的に投与される筋肉注射は、およそ4週間毎に投与され、あるいはまた、毎月投与される。別の実施形態によれば、定期的に投与される筋肉内注射は、およそ8週間毎に投与されるか、あるいはまた、2か月毎に投与される。
【0174】
この実施形態によれば、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与する方法は、ビクテグラビル含有レジメンによる治療に臨床的に劣っていない。さらなる実施形態によれば、カボテグラビルまたはその塩およびリルピビリンまたはその塩の筋肉内注射を定期的に投与する方法は、少なくとも12か月の期間にわたって臨床的に劣っていない。
【実施例】
【0175】
実施例1
ATLAS(NCT02951052)およびFLAIR(NCT02938520)は、CAB LA+RPV LAの毎月の筋肉内(IM)注射と現行の抗レトロウイルス療法(CAR)の切り替えの非劣性を示した、2つの無作為化非盲検国際第3相試験である。注射CAB+RPV LAレジメンは、事前に指定された時間ウインドウ内で毎月の注射来訪を必要とし、毎日の経口投与からの患者のパラダイムシフトを表す。
【0176】
注射はQ4週に予定され、投与予定日の±7日間の投与ウインドウがあった。LA療法の順守は、投与ウインドウ内に見られた時間通りの注射来訪の数を、48週までに予想される投与来訪の数で割ったものとして計算した。経口ブリッジング(計画された注射の不履行をカバーするための経口投与の使用)は、両方の試験プロトコールで許容され、臨床現場からの計画された欠席(例えば、休暇または旅行のため)に対する投与の柔軟性を可能にする一方で、被験者は長期間LA投与を続けることができる。事前に指定されたウインドウ外の注射来訪および経口投与の使用がある場合/ない場合の注射来訪の不履行を定量した。
【0177】
ATLASおよびFLAIRの臨床試験の中から、48週間の試験期間中に15人の被験者に注射間の経口投与(CAB 30mg+RPV 25mg)が使用された。
【0178】
6人の被験者は、経口ブリッジングを使用しまたが、計画された注射来訪を逃さなかった。
【0179】
2名の被験者は、LA療法を継続することができなかった。
【0180】
両方の試験で9回の注射の不履行があり、そのうち8回は経口ブリッジングでカバーされた(7人の被験者)。
1人の被験者は、32週目に計画された経口ブリッジングによるカバーなく注来訪を逃した(急性A型肝炎のために停止基準を満たした)が、LA療法は36週目も継続され、ウイルス抑制は維持された。
【0181】
【0182】
注射来訪を逃す予定の被験者にとって、経口ブリッジングはウイルス学的抑制を維持するための効果的な戦略であることが判明し、経口ブリッジングの期間中またはIM投与の再開後に確認されたウイルス学的不奏効の症例はなかった。
【0183】
実施例2
一次経口および筋肉内(IM)吸収と一次排除を伴う2コンパートメントモデルは、経口およびLA投与後の1647人の被験者の23,926件の濃度記録からのデータを適切に記述している(Han K, Patel P, Baker M, et al. Population pharmacokinetics of cabotegravir in adult healthy subjects and HIV-1 infected patients following administration of oral tablet and long acting intramuscular injection. Abstract WEPDB0205. 22nd International AIDS Conference 23-27 July 2018, Amsterdam, the Netherlands)。
【0184】
モデルに保持された共変量には、性別、BMI、針の長さ、およびLA投与後の吸収率定数の分割注射(KA LA)、およびその時点の喫煙状態およびCLと容積に対する体重が含まれていた。評価された共変量には、CABの用量調整の必要はない。
【0185】
最終モデル出力(0.65μg/mL)からの第3相試験での負荷投与後のトラフの個々の予測濃度(IPRED)の5パーセンタイルを、標準レジメンに対する投与の異常の影響を評価するためのベンチマークとして使用しました(Orkin C, Arasteh K, Hernandez-Mora MG, et al. Long-acting cabotegravir + rilpivirine for HIV maintenance: FLAIR week 48 results. Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections (CROI). Abstract Number: 140. March 4-7, 2019, Seattle, WA.; Swindells S, Andrade-Villanueva JF, Richmond GJ, et al. Long-acting cabotegravir + rilpivirine as maintenance therapy: ATLAS week 48 results. Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections (CROI). Abstract Number: 139. March 4-7, 2019, Seattle, WA.)。投与遅延の許容性を評価する際には、タンパク質補正IC90(PA-IC90、0.166μg/ mL)も考慮した。
【0186】
長期安全性閾値は13.1μg/mLに割り当てられ、これは、LAI116482試験(LATTE)で96週間投与されたCAB 60mgQDの最高経口投与後の定常状態Cmaxの中央値である(Margolis DA, Brinson CC, Smith GHR, et al. LAI116482 Study Team. Cabotegravir plus rilpivirine, once a day, after induction with cabotegravir plus nucleoside reverse transcriptase inhibitors in antiretroviral-naive adults with HIV-1 infection (LATTE): a randomised, phase 2b, dose-ranging trial. Lancet Infect Dis. 2015 Oct;15(10):1145-1155)。
【0187】
2回目、3回目、および4回目の注射の投与における1~12週間の遅延がシミュレートされた(表1)。Q4W投与は、各遅延後に再開されました。
【0188】
男性(80%)と女性(20%)の混合集団は、予想される集団を表すと推定される。各シナリオには、1000人の女性の仮想被験者を確保するために5000人の仮想被験者が含まれていた。個々のPKパラメーターは、集団パラメーターの推定値、被験者間変動の推定分散-共変量行列および被験者固有の共変量によって決定される分布からサンプリングされた被験者固有のNONMEM個人間誤差(ETA)によって計算した。
【0189】
CAB月間治療レジメンの遅延投与のシナリオ(CAB LA 600mg(3mL)初回注射とそれに続くRPV LA Q4Wによる400mg(2mL))(表18)。
【0190】
【0191】
CAB LA投与が再開された際、1~2か月間、注射を逃した場合に経口ブリッジングが再開された(表18)。4回目のIM投与は見逃されたと想定された。投与はQ4Wパターンを再開した。
【0192】
【0193】
上記に従って実行されたシミュレーションの結果を
図1に示す。a)遅延なし(Sim#1)、b)注射2の1週間の遅延(Sim#2)、c)2mLまたは3mLで再開した注射3の4週間の遅延(Sim#15、Sim#16)、d)2mLまたは3mLで再開した4週間遅延した注射4(Sim#25、Sim#26)、e)経口ブリッジがある場合とない場合の注射4での4週間の遅延(Sim#25、Sim#32)およびf)経口ブリッジがある場合とない場合の注射4での8週間の遅延(Sim#29、Sim#35)に関するシミュレートされた濃度対時間プロファイル。
【国際調査報告】