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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】周波数偏移の決定
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/26 20060101AFI20221128BHJP
   G01S 11/14 20060101ALI20221128BHJP
   G01S 5/30 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G01S5/26
G01S11/14
G01S5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520395
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 GB2020052432
(87)【国際公開番号】W WO2021064419
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】1914236.3
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522078370
【氏名又は名称】フォークビアード テクノロジーズ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーイ, ウィルフレッド エドウィン
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AC29
5J083AD03
5J083AE08
5J083AF01
5J083BE10
5J083BE41
5J083CA10
(57)【要約】
受信信号の運動誘起周波数偏移を推定することができる受信装置(7)は、処理システム(205)と、送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信するように構成された受信機(204)と、を備える。処理システム(205)は、受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を表すデータを生成するように構成され、複数のテンプレートの各々は、異なるそれぞれの周波数偏移によって周波数が偏移された送信信号を表す。処理システム(205)は、複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価することと、信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別することと、を行うようにさらに構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信するように構成された受信機と、
処理システムと、を備え、
前記処理システムが、
複数のテンプレートの各々で前記受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を表すデータを生成し、
前記複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価し、
前記信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、前記複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別するように構成され、
前記複数のテンプレートのそれぞれが、互いに異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された前記送信信号を表す、受信装置。
【請求項2】
前記受信機が、音響トランスデューサを備え、前記受信信号が、音響信号である、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
各テンプレートが、連続位相周波数偏移キー変調された送信信号を表すデータを含む、請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記処理システムが、前記受信信号を表すサンプルにフーリエ変換を適用して前記受信信号の周波数スペクトルを生成し、前記受信信号の周波数スペクトルを各テンプレートの前記周波数スペクトルで除算することによって、前記複数のテンプレートの各々で前記受信信号をデコンボリューションするように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記周波数偏移のそれぞれが、正および負の周波数偏移の範囲にわたって均一な間隔で離間される、請求項1から4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記送信信号が、複数の送信信号候補のうちの1つであり、前記処理システムが、複数のさらなるテンプレートの各々で前記受信信号をデコンボリューションすることによって、1つ以上のさらなる複数のインパルス応答関数を計算するように構成され、さらなるテンプレートのそれぞれが、異なるそれぞれの周波数偏移によって周波数が偏移された送信信号候補を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記処理システムが、
前記インパルス応答関数の1つ以上の信号構成要素を表す信号値を計算し、
前記インパルス応答関数の1つ以上のノイズ構成要素を表すノイズ値を計算し、
前記信号値を前記ノイズ値で除算することによって、
前記複数のインパルス応答関数の各々の前記信号対ノイズ測定を評価するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項8】
前記処理システムが、
各インパルス応答関数の時間ドメイン表現の一組のピークを識別し、
前記ピークの第1のサブセットを識別して、前記第1のサブセットの前記ピークの大きさの平均を計算することによって、前記信号値を計算し、
前記ピークの第2のサブセットを識別して、前記第2のサブセットの前記ピークの大きさの平均を計算することによって、前記ノイズ値を計算するように構成され、
前記第1のサブセットと前記第2のサブセットとで、すべての前記識別されたピークを包含し、前記第1のサブセットの前記ピークがすべて、前記第2のサブセットの前記ピークよりも高い、請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記処理システムが、さらなるピークのそれぞれが加えられたときに前記第1のサブセット内の前記ピーク値の平方和の平方根のわずかな変化が閾値レベル以下に低下するまで、識別されたピークを、最も高いピークから最も低いピークの順で、前記第1のサブセットに加えることによって、前記ピークの第1のサブセットを決定するように構成されている、請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記処理システムが、前記それぞれの周波数偏移にわたって、前記複数の信号対ノイズ測定に曲線フィッティング演算を行うこと、および前記曲線の最大値を識別することによって、前記信号対ノイズ測定がピーク基準を満たすインパルス応答関数を識別するように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項11】
前記処理システムが、
複数の送信信号候補を表し、各送信信号候補の複数の周波数偏移のそれぞれを表すテンプレートで前記受信信号をデコンボリューションし、
前記送信信号候補ごとに、前記信号対ノイズ測定が前記ピーク基準を満たすそれぞれのインパルス応答関数を識別し、
前記識別されたインパルス応答関数ごとに前記信号対ノイズ測定を比較して、最も高い信号対ノイズ測定を有する、前記識別されたインパルス応答関数のインパルス応答関数を決定し、
前記受信信号を、前記最も高い信号対ノイズ測定を有する前記インパルス応答関数と関連付けられた前記送信信号候補であるものとして、復号化するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項12】
前記処理システムが、前記信号対ノイズ測定が前記ピーク基準を満たすように、前記複数のインパルス応答関数の中から前記インパルス応答関数を識別することにより、前記受信信号の周波数偏移推定を決定するように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項13】
前記処理システムが、前記受信信号からの1回以上の到着を決定し、前記到着時間を使用して、環境内の前記受信装置の位置を推定するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項14】
前記受信機が、前記送信信号のためにクリティカルにサンプリングされる、前記受信信号のベースバンド複素サンプルを生成するように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項15】
受信信号の運動誘起周波数偏移を決定するための方法であって、
送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信することと、
複数のテンプレートの各々で前記受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を計算することと、
前記複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価することと、
前記信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、前記複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別することと、を含み、
前記複数のテンプレートのそれぞれが、互いに異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された前記送信信号を表す、方法。
【請求項16】
前記信号が、連続位相周波数偏移キー変調を使用して変調されたデータを符号化する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記送信信号の前記インスタンスのうちの少なくとも1つが、受信される前に運動誘起ドップラー偏移を受ける、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
時間的に重複している前記送信信号の複数のインスタンスを受信することを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記識別されたインパルス応答関数を使用して、前記送信信号を復号化することを含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
命令を含むソフトウェアであって、送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信するように構成された受信装置の処理システムで実行されたときに、前記処理システムに、
複数のテンプレートの各々で前記受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を表すデータを生成することと、
前記複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価することと、
前記信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、前記複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別することと、を行わせ、
前記複数のテンプレートのそれぞれが、互いに異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された前記送信信号を表す、ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の周波数偏移を決定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波信号などの信号を使用して、建築物の壁または天井に固定され得る複数の送信機ユニットから信号を送信することによって、モバイルユニットまたはタグの位置を二次元または三次元で追跡することが知られている。信号は、それぞれの送信機ユニットの識別子を符合化する。これらの信号は、人または機器などの物体に取り付けられ得るモバイル受信機ユニットによって受信される。静的送信機ユニットの位置が既知である場合、モバイルユニットの送信機ユニットからの信号の到着時間を使用して、円または球の交点などの幾何学的原理に基づいて、環境内のモバイルユニットの位置を推定することができる。
【0003】
本出願人は、WO2019/038542において、複数の静的送信機ユニットが、それぞれの相補コードキーイング(CCK)コードを含むそれぞれの直交位相偏移キー(QPSK)符合化された超音波シグネチャを送信する、リアルタイム位置特定システム(RTLS)を開示した。各シグネチャは、それぞれの送信機ユニットに固有である。シグネチャは、モバイル装置によって受信され、それらの到着時間を使用して、モバイル装置の三次元位置情報を決定する。受信したシグネチャを復号化して、その到達時間を正確に決定するために、受信信号を時間領域内の一組のCCKコードテンプレート各々に対して相関させる、相互相関が行われる。モバイル装置は、信号を受信するときに運動中であり得るので、受信信号の周波数および位相は、ドップラー偏移により歪み得る。したがって、より良好な精度を提供するために、相互相関の前に、運動誘起ドップラー偏移を受信信号から推定して、受信信号およびテンプレートの一方または他方は、相互相関演算が行われる前に、任意の位相偏移が補償される。
【0004】
本出願人は、WO2019/130242において、多重経路反射が、時間的に重複して受信される多数のシグネチャのインスタンスを生じさせる場合であっても、QPSK CCK送信機シグネチャの正確な復号化をサポートする開発を開示した。そのような状況では、相互相関ベースの復号化を十分に行うことができない。代わりに、異なる候補シグネチャテンプレートを使用して受信信号をデコンボリューションして、それぞれの応答関数推定を計算する。また、異なる候補シグネチャテンプレートを使用して受信信号をデコンボリューションして、それぞれの応答関数推定を計算する。ここでも、任意の相対移動による歪みを可能にするために、受信信号およびテンプレートのうちの一方または他方は、デコンボリューションが行われる前に、任意の運動誘起ドップラー偏移が補償される。これは、周波数ドメインにおいて、受信信号をそれぞれのシグネチャテンプレートと相互相関することによって受信信号の周波数偏移を推定することと、最も高い相関ピークが生じる相互相関トレースの周波数オフセットを決定することと、を含む。
【0005】
このデコンボリューションベースの手法は、低周波超音波を使用するときに比較的長い送信時間が必要とされる、一般に屋内環境において生じ得るエコーの重複が存在する場合であっても、QPSK変調したCCKコードを受信するときに信頼性の高い復号化を提供することが見出されている。CCKコードの周波数ドメイン表現のピーク型の性質は、デコンボリューション演算が行われる前に、周波数ドメインにおける相互相関からのドップラー周波数偏移の正確な推定を生成することに、それ自体が十分に役立つことが見出されている。
【0006】
しかしながら、連続位相周波数偏移キーイング(CP-FSK)によって変調された信号は、QPSK変調されたCCK信号よりもはるかに広帯域の周波数スペクトルを有し、かつ周波数ドメインにおいて相互相関しようとしたときに、はるかに信頼性の低い周波数偏移の推定を生じさせる。したがって、本出願人は、信号がそのような高ピーク型の周波数特性を有しない場合であっても、運動誘起周波数偏移の信頼性の高い推定を潜在的に提供することができる、受信信号の運動誘起周波数偏移を推定するためのより一般的な手法に対する要求を認識した。
【0007】
したがって、本発明は、受信信号の運動誘起周波数偏移を決定することに適した、代替的な手法を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様から、本発明は、受信装置を提供し、受信装置は、
送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信するように構成された受信機と、
処理システムと、を備え、
処理システムは、
複数のテンプレートの各々で受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を表すデータを生成し、
複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価し、
信号対ノイズ測定がピーク基準を満たすように、複数のインパルス応答関数の中からインパルス応答関数を識別するように構成され、
複数のテンプレートのそれぞれが、互いに異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された送信信号を表す。
【0009】
第2の態様から、本発明は、送信装置と、受信装置と、を備える、通信システムを提供し、受信装置は、
送信装置によって送信された信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信するように構成された受信機と、
処理システムと、を備え、
処理システムは、
複数のテンプレートの各々で受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を表すデータを生成することであって、各テンプレートが、異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された送信信号を表す、生成することと、
複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価することと、
信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別することと、を行うように構成されている。
【0010】
第3の態様から、本発明は、受信信号の運動誘起周波数偏移を決定するための方法を提供し、方法は、
送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信することと、
複数のテンプレートの各々で受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を計算することと、
複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価することと、
信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別することと、を含み、
複数のテンプレートのそれぞれが、互いに異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された送信信号を表す。
【0011】
さらなる態様から、本発明は、ソフトウェアと、それを有する一時的媒体または非一時的媒体と、を提供し、ソフトウェアは、送信信号の1つ以上のインスタンスを含む信号を受信するように構成された受信装置の処理システムで実行されたときに、処理システムに、
複数のテンプレートの各々で受信信号をデコンボリューションすることによって、複数のインパルス応答関数を表すデータを生成することと、
複数のインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定を評価することと、
信号対ノイズ測定がピーク基準を満たす、複数のインパルス応答関数のインパルス応答関数を識別することと、を行わせ、
複数のテンプレートのそれぞれが、互いに異なるそれぞれの周波数偏移だけ周波数が偏移された送信信号を表す。
【0012】
したがって、本発明によれば、受信信号は、いくつかの異なる周波数偏移の仮定の下で送信信号のテンプレートを使用してデコンボリューションされ、インパルス応答関数のピーク信号対ノイズ測定の結果として周波数偏移が識別されることが分かるであろう。識別された周波数偏移は、信号が受けた運動誘起ドップラー偏移の最良の推定を提供し得る。周波数偏移を決定するために信号対ノイズ測定を使用するというこの概念は、受信信号と周波数とが一致していないテンプレートで受信信号をデコンボリューションすることによって生成されるインパルス応答関数の時間ドメイン表現が、典型的には、受信した送信信号の反射からは生じない(周期的であり得る)大きいノイズピークを含む、という洞察に基づいている。対照的に、周波数が一致したテンプレートは、典型的には、真の信号経路に対してだけ高いピークをもたらし、ノイズ指数からは、非常に低いレベルのピークだけが生じる。したがって、このようなデコンボリューション演算で、信号対ノイズ測定は、周波数が一致したテンプレートと、周波数が一致していないテンプレートとを効果的に区別することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、通信システムは、環境内の送信装置および/または受信装置の位置を決定するための測位システムを備える。
【0014】
送信信号は、音響信号であり得る。送信信号は、超音波信号であり得る。超音波信号は、通常の人間の聴覚範囲よりも高い周波数を有する音響信号であり、典型的には、20kHzを超える、例えば20~100kHzのベース周波数または搬送周波数を有する信号を意味する。音響信号は、電波および光波よりもはるかに遅く進行するので、測位システム、特に屋内測位システムでの使用に特によく適している。したがって、モバイル送信機ユニットまたはモバイル受信機ユニットの位置を決定するために音響信号を使用する実施形態は、光速信号を使用するものと比較して、所望の空間分解能を達成するために精度の高いタイミングを必要としなくなり得る。
【0015】
しかしながら、これらの方法は、音響リアルタイム位置システムに有効であることが見出されているが、より幅広い用途も有することができる。したがって、いくつかの実施形態では、信号は、光(例えば、赤外線)信号または無線信号などの電磁信号であり得る。
【0016】
送信信号は、符号化データを搬送し得る。送信信号は、受信装置に既知であり得る。送信信号は、すべてが受信装置に既知であり得る有限の一組の送信信号から選択され得る。送信信号は、周波数偏移キー(FSK)変調されたデータを含み得る。送信信号は、連続相FSK(CP-FSK)変調データを含み得る。データは、送信装置に固有(例えば、送信機に固有の識別子またはコード)であり得る識別データを含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、受信信号は、送信信号の複数のインスタンスを含む。各インスタンスは、異なる経路に沿って受信され得る。各インスタンスは、異なる時間に受信され得る。複数のインスタンスのうちの少なくとも2つは、時間的に重複し得る(例えば、各インスタンスのエネルギーの少なくとも10%または20%以上が、時間的に重複して到着する)。
【0018】
受信装置の受信機は、送信装置の送信機に対して動作し得る。インスタンスの1つ以上は、送信信号に対して周波数が偏移され得、例えば、所定の搬送周波数から離れて偏移され得る。
【0019】
受信信号は、ダウンミックスされ得る。受信信号は、例えば一連の複素サンプルを生成するために、サンプリングされ得る。受信信号は、アナログドメインおよび/またはデジタルドメインでダウンミックスされ得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、受信信号は、ベースバンドで(すなわち送信信号の帯域幅の2倍のサンプルで)クリティカルにサンプリングされ得る。これは、(例えば、インパルス応答関数におけるピークが、単一の時間パルスの範囲を有する理想的なDiracパルスにより近づく可能性をより高めることによって)受信信号の効率的な表現をもたらすだけでなく、信号対ノイズ測定がピーク基準を満たすインパルス応答関数の識別情報の簡略化または改善も行い得る。
【0021】
送信信号の1つ以上のインスタンスを含む時間窓が決定され得る。これは、サンプルの大きさを解析することによって、(例えば、閾値の大きさを超える値またはピークを検出することによって)達成され得る。
【0022】
デコンボリューションは、時間窓内のサンプルに適用され得る。デコンボリューションは、周波数ドメインで行われ得る。フーリエ変換は、時間窓内のサンプルに適用され得る。デコンボリューションは、受信信号の周波数スペクトルを各テンプレートの周波数スペクトルで除算することを含み得る。除算は、未知のノイズ項を含み得、デコンボリューションは、ノイズを最小にするために指定され得るTikhonov正則化を使用し得る。
【0023】
各テンプレートは、一連の複素サンプル値を表すデータを含み得る。各テンプレートは、CP-FSK変調信号などの周波数偏移キー変調信号を表し得る。テンプレートデータは、時間ドメイン表現として、または周波数ドメイン表現として記憶され得る。テンプレートの各々は、異なる周波数偏移を表し得る。テンプレートは、正および負の偏移を含み得る、ある範囲の周波数偏移をカバーし得る。テンプレートは、100Hzまたは200Hz以上、例えば送信信号に対して-100Hz~+100Hzをカバーし得る。偏移は、通常の使用において起こると思われるすべての相対速度をカバーし得る。偏移は、(例えば、8Hzまたは10Hzなどの1Hz~20Hzの間隔で、)一様に離間され得る。
【0024】
送信信号が受信装置に明白に既知ではないが、複数の可能な送信信号候補(例えば、シグネチャ)のうちの1つであり得る場合、複数のさらなるテンプレートで受信信号をデコンボリューションすることによって、さらなる複数のインパルス応答関数が計算され得、この場合、各さらなるテンプレートは、異なるそれぞれの周波数偏移によって周波数が偏移された送信信号候補を表す。3つ以上の送信信号候補が存在する場合、対応するさらなる組数のインパルス応答関数が、送信信号候補ごとに一組が同じように計算され得る。同じ組の周波数偏移は、送信信号候補ごとに提供され得るが、これは必須ではない。したがって、送信信号候補の数に周波数偏移の数を乗算したものに等しい(ゼロ偏移を含む)、いくつかのデコンボリューションが行われ得る。送信信号候補は、システムによって送信することができるすべての可能な信号を含み得るか、または周波数ドメイン内の受信信号との閾値を超える相互相関を有する可能な信号をショートリスト化することなどによって、すべての可能な信号のショートリスト-例えば、受信信号の解析によって決定されるショートリスト-だけを含み得る。
【0025】
テンプレートは、必要に応じて生成され得るか、または予め計算されて、処理システムのメモリに記憶され得る。
【0026】
信号対ノイズ測定は、信号経路に対応するインパルス応答関数の一部分と、信号経路に対応しないインパルス応答関数の一部分とを区別することができる、任意の測定であり得る。信号対ノイズ測定を評価することは、インパルス応答関数の1つ以上の信号構成要素を表し得る信号値を計算すること、および、インパルス応答関数の1つ以上のノイズ構成要素を表し得るノイズ値を計算することを含み得る。これは、信号値をノイズ値で除算することを含み得る。信号対ノイズ測定は、信号対ノイズ比であり得るが、これは必須ではない。
【0027】
信号対ノイズ測定は、インパルス応答関数の時間ドメイン表現を入力として利用する関数として評価され得る。したがって、逆フーリエ変換が、複数のインパルス応答関数を表すデータに適用され得る。
【0028】
時間ドメインインパルス応答関数における一組のピークが、(例えば、ピークファインダアルゴリズムを使用して)識別され得る。
【0029】
信号値は、ピークの第1のサブセットを識別することによって決定され得る。信号値は、この第1のサブセットのピークの大きさの平均から計算され得る(例えば、ピーク振幅の二乗平均平方根(RMS)に等しくする)。
【0030】
ノイズ値は、ピークの第2のサブセットを識別することによって決定され得る。信号値は、この第2のサブセットのピークの大きさの平均から計算され得る-例えば、ピーク振幅の平均二乗に等しくする。
【0031】
第1および第2のサブセットはともに、インパルス応答関数から識別されたすべてのピークを含み得る。第1のサブセットのピークはすべて、第2のサブセットのピークよりも高くなり得る。第1のサブセットは、第1のサブセットのピークが停止基準を満たすまで、識別されたピークを、最も高いピークから最も低いピークの順で、第1のサブセットに加えることによって決定され得る。停止基準は、変化率が閾値よりも低くなったとき(例えば、さらなる各ピークが加えられたときに、第1のサブセットのピーク値の平方和の平方根のわずかな変化が3%などの閾値レベル以下に低下したとき)を決定し得る。
【0032】
信号対ノイズ測定は、信号対ノイズ測定がピークの基準を満たすインパルス応答関数を識別するために使用される。ピークの基準は、各インパルス応答関数を個々に考慮し得、かつ最も高い信号対ノイズ測定を有するインパルス応答関数を簡単に識別し得る。しかしながら、ピークの基準は、信号対ノイズを周波数偏移の関数としての測定とみなし得る。ピークの基準は、ピークの周囲の周波数偏移の信号対ノイズ測定の値に基づいて、ピークの信号対ノイズ測定を識別し得る。ピークのインパルス応答関数を識別することは、それぞれの周波数偏移にわたって、複数の信号対ノイズ測定に曲線フィッティング演算を行うことを含み得る。識別することは、フィッティングした曲線を区別することによって、曲線の最大値を識別することを含み得る。これは、例えば、1つの周波数偏移だけにおいて明瞭であり、したがってスプリアスになる可能性が高いピークを除外するために、周波数偏移ベースのフィルタリングを選択プロセスに効果的に適用することができる。
【0033】
識別されたインパルス応答関数の周波数偏移は、例えば時間窓にわたる平均ドップラー偏移の推定として、さらなる処理のために出力または記憶され得る。
【0034】
複数の送信信号候補のテンプレートが評価される実施形態では、信号対ノイズ測定がピーク基準を満たすそれぞれのインパルス応答関数が、送信信号候補の各々(すなわち、それぞれのドップラー補償されたインパルス応答関数)について識別され得る。ドップラー補償されたインパルス応答関数の各々の信号対ノイズ測定が比較され得る。最も高い信号対ノイズ測定を有するドップラー補償されたインパルス応答関数が識別され得る。識別されたドップラー補償されたインパルス応答関数と関連付けられた送信信号候補またはシグネチャは、復号化信号としての出力であり得る。このようにして、データは、送信装置から受信装置へと通信され得る。識別されたドップラー補償されたインパルス応答関数の周波数偏移は、例えば時間窓にわたる平均ドップラー偏移の推定として、さらなる処理のために出力または記憶され得る。
【0035】
決定された周波数偏移は、(例えば、後続の通信の復号化を改善するために、または送信装置と受信装置との間の相対運動をモデル化するために)1つ以上のさらなる演算で使用され得る。しかしながら、これは必須ではなく、受信信号自体を復号化するプロセス内のステップとして簡単に決定され得る。
【0036】
受信信号から1つ以上の到着時間が決定され得る。到着時間は、送信装置または受信装置の位置を推定するために、RTLSまたは測位システムで使用され得る。いくつかの実施形態では、受信装置は、モバイルであり得る。受信装置の位置は、ショッピングモール、病院、倉庫、オフィスビル、家庭用住居などの屋内であり得る、環境内で決定され得る。
【0037】
通信システムは、複数の送信装置および/または複数の受信装置を備え得る。各送信装置は、それぞれの送信機固有の識別信号を送信し得る。各送信装置は、識別信号を周期的に繰り返し送信し得る。識別信号は、様々なデータペイロードとともにパケットに含まれ得るか、またはいかなるメッセージデータも伴わない送信機シグネチャとして送信され得る。特定の送信機ユニットの識別信号は、経時的に変化し得るが、経時的に一定であり得、これにより、復号化を簡略化することができる。すべての識別情報信号は、すべての送信装置にわたって同じ長さであり得、これにより、検出および復号化を簡略化することができる。各送信装置は、その識別信号を一定間隔で(例えば1秒ごとに)、送信し得る。処理システムは、受信した識別信号を復号化することによって送信装置を識別し得る。
【0038】
モバイル受信機ユニットは、送信信号を受信するときに運動中であり得るが、これは必須でない。
【0039】
システムは、同期され得る。処理システムは、信号の各々の送信時間を表す情報へのアクセスを有し得る。範囲データは、送信時間を使用して、例えば対応する推定または既知の送信時間から各到着時間を減算することによって決定され得る。次いで、飛行時間から距離値を計算するために、信号の(例えば、想定または測定された)速度が使用され得る。いくつかの実施形態では、システムは、有線または無線(例えば、無線または超音波)チャネルを通じて搬送された信号を使用して同期され得る。
【0040】
位置推定は、一次元、二次元、または三次元で決定され得る。位置推定は、記憶され得るか、出力され得るか、またはさらに処理され得る。位置推定は、カルマンフィルタに入力され得る。
【0041】
処理システムは、処理回路および/または1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行するためのソフトウェアを記憶しているメモリと、を備え得る。処理回路および/またはソフトウェアは、本明細書に開示される特徴のうちのいずれかを実装し得る。
【0042】
受信装置は、モバイル受信機ユニットを備え得る。
【0043】
モバイル受信機ユニットは、受信装置の処理システムのいくつかまたはすべてを備え得る。これは、モバイル受信機ユニットがディスプレイスクリーンおよび強力なプロセッサを備える場合に、例えば、受信機ユニットがスマートフォンである場合に特に適切であり得る。そのような実施形態では、モバイル受信機ユニットは、それ自体の位置推定を計算および記憶するように配置され得る。これにより、モバイル受信機ユニットから、処理するべき他の場所に-例えばリモートサーバに-データを通信する必要性を回避し得る。
【0044】
しかしながら、いくつかの実施形態では、処理システムのいくつかまたはすべては、受信機から離れている(例えば、1つ以上のサーバに位置する)場合がある。これは、(例えば、無線で)モバイル受信機ユニットからデータを送信する必要性を補償した後であっても、モバイル受信機ユニット上の処理している要件を低減させる際に有利であり得、そのコストおよび電力消費量を低下させ得る。処理システムは、複数のプロセッサまたは複数の位置、あるいは両方にわたって分割され得る。モバイル受信機ユニットは、受信信号を、またはそこに由来する情報を遠隔処理ユニットに送信するように構成され得る。モバイル受信機ユニットは、受信信号に関する情報を送信するための、無線送信機などの有線または無線送信機を備え得る。
【0045】
他の実施形態では、モバイル受信機ユニットは、処理システムのいくつかの部品だけを備え得る(例えば、受信信号をサンプリングするためのサンプラを備える)か、またはいかなる部品も備え得ず、一方で、処理システムの他の部品-例えば、モバイル受信機ユニットの位置を決定するために到着時間および復号化送信装置識別子を使用するように構成された要素-は、例えばリモートコンピュータまたはサーバなどの1つ以上の他のユニットに存在し得る。モバイル受信機ユニットは、無線、光、または他の送信機(例えば、Bluetooth、WiFi、またはセルラーネットワーク送信機)を備え得る。モバイル受信機ユニットは、送信機を使用して、遠隔処理ユニットに受信信号に関するデータを送信し得、データは、アナログ音声ファイル、またはデジタルサンプル、または処理データであり得る。
【0046】
この、または各送信装置は、当該信号を送信するための送信機を備え得る。これは、無線アンテナ、発光素子、音響トランスデューサ、または信号を送信する他の適切な手段を備え得る。これは、DAC、増幅器などの、送信を駆動または制御するための適切な回路を備え得る。いくつかの実施形態では、各送信装置は、超音波信号を生成するための少なくとも1つの超音波トランスデューサを備える。
【0047】
受信機は、無線アンテナ、受光素子、音響マイクロホン、または識別信号を受信する他の適切な手段を備え得る。これは、増幅器、ADCなどの受信を制御するための適切な回路を備え得る。いくつかの実施形態では、受信機は、超音波信号を受信するための少なくとも1つの超音波トランスデューサを備える。
【0048】
処理システムおよび/または送信装置および/または受信装置は、プロセッサ、DSP、ASIC、FPGAのうちのいずれか1つ以上を備え得る。これは、データを記憶するための、および/またはプロセッサ、DSPまたはFPGAによって実行されるソフトウェア命令を記憶するためのメモリを備え得る。これは、電力供給源、発振器、ADC、DAC、RAM、フラッシュメモリ、ネットワークインターフェース、ユーザインターフェースなどを含む、任意の他の適切なアナログまたはデジタル構成要素を備え得る。これは、1つ以上の有線または無線リンクによって通信するように配置され得る、単一のユニットであり得るか、または複数の処理ユニットを備え得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、受信装置は、プロセッサと、ディスプレイと、を備える。これは、モバイル電話(携帯電話)またはスマートフォンまたはタブレットまたは他のポータブルコンピューティング装置であり得る。代替的に、受信装置は、いかなる複合グラフィカルユーザインターフェースも伴わないアセットタグであり得る。
【0050】
本明細書で説明される任意の態様または実施形態の特徴は、適切な場合には、本明細書で説明される任意の他の態様または実施形態に適用され得る。異なる実施形態または実施形態の組を参照する場合、これらは必ずしも明確ではないが、重複し得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
ここで、特定の本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照しながら、ほんの一例として説明する。
図1】測位システムを具現化する本発明の斜視図である。
図2】測位システムで使用するための静的送信機ユニットおよびモバイル受信機ユニットの概略図である。
図3】モバイル受信機ユニットの位置を推定するために、モバイル受信機ユニットおよび/またはサーバによって実行される演算のフローチャートである。
図4】信号対ノイズ比(SNR)測定を推定するための演算のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、ショッピングモール内の買い物客の位置を決定するために、例えばショッピングモール内で使用され得る測位システムの一部を示す。当然ながら、これは単なる1つの例示的な環境であり、測位システムはまた、倉庫、病院、家庭用住居、車両などでも使用され得る。
【0053】
図1は、4つの静的送信機ユニット2、3、4、5が壁に固定されている部屋1を示す。部屋内の人6は、モバイル受信機ユニット7を携持している。ネットワークケーブル8は、典型的には別の部屋内または建築物内に位置付けられる各送信機ユニット2、3、4、5をサーバ9に接続する。これらの構成要素は、協働して、部屋1内のモバイル受信機ユニット7の三次元位置を推定することが可能な測位システムを提供する。実際には、システムは、建築物または一連の部屋にわたって設置されたさらなる同様の送信機ユニットと、人、動物、車両、ロボット、在庫、機器などに取り付けられた、または組み込まれた複数の同様のモバイル受信機ユニットと、を有し得る。
【0054】
図2は、送信機ユニット2、3、4、5のうちの代表の1つである2、およびモバイル受信機ユニット7を示す。送信機ユニット2は、超音波音響器201と、超音波トランスデューサ201に超音波信号を送信させるためのコントローラ202と、送信機ユニットに電力を供給するための電池203と、を有する。他の送信機ユニット3、4、5は、同様に構成されている。モバイル受信機ユニット7は、送信機ユニット2、3、4、5から超音波信号を受信することが可能なマイクロホン204と、受信信号をサンプリングおよび処理するためのマイクロコントローラユニット(MCU)205と、モバイル受信機ユニット7に給電するための電池207と、を有する。送信機ユニット2、3、4、5およびモバイル受信機ユニット7は、無線送受信機、有線ネットワークインターフェース、ディスプレイスクリーン、ボタンなどのさらなる標準的な電子構成要素を有し得る。いくつかの実施形態では、モバイル受信機ユニット7は、Apple(商標)またはAndroid(商標)スマートフォンなどのタブレットまたはモバイル電話(携帯電話)である。
【0055】
この説明は、超音波信号に関するものであるが、同じ原理が可調音響信号に、または赤外線信号または無線信号などの電磁信号に適用され得る。
【0056】
マイクロコントローラユニット202、205は、1つ以上のプロセッサ、DSP、ASIC、および/またはFPGAを含むことができる。これらは、データを記憶するための、および/またはプロセッサもしくはDSPによって実行されるソフトウェア命令を記憶するためのメモリを含むことができる。これらは、増幅器、発振器、フィルタ、ADC、DAC、RAM、フラッシュメモリなどを含む、任意の他の適切なアナログまたはデジタル構成要素を含むことができる。
【0057】
ここでは、送信機ユニット2、3、4、5は、環境1に対して固定的なものとして示されているが、他の実施形態では、それらはモバイルであり得る(例えば、送信機ユニットの1つ以上は、それぞれのユーザが所有しているモバイル電話または装置であり得る)。
【0058】
使用に際して、サーバ9は、各送信機ユニット2、3、4、5に、定期的に(例えば、1秒ごとに)、その送信機ユニットに一意のシグネチャを送信させる。大規模な展開では、シグネチャは、ある場所内でだけ一意であり得、シグネチャがシステムにわたって再使用される場合は、好ましくはさらなるデータを使用して、同一のシグネチャを区別する。各シグネチャは、超音波キャリア(例えば20kHzまたは40kHzのキャリア)に符合化される。シグネチャは、プリアンブルおよび/またはデータコンテンツなどの1つ以上のさらなる要素も有し、好ましくは、さらに同じ超音波キャリアーバンドに符合化される、より長い送信に含まれ得る。
【0059】
特に、多数の送信機ユニットを有する実施形態では、モバイル受信機ユニット7が異なる送信機ユニット2、3、4、5から同一のシグネチャを区別することを可能にする、追加情報を送信することが望ましくなり得る。例えば、近距離RF信号、または送信機ユニット2、3、4、5のうちの1つ以上によって送信された超音波信号において符合化されたさらなるデータは、シグネチャを、曖昧性を伴うことなく、サイトにわたる異なる位置で再使用することを可能にする。
【0060】
シグネチャは、任意の適切な周波数偏移または位相シフト符号化を使用して符合化され得るが、一組の実施形態では、各送信機ユニット2~5のシグネチャは、連続位相周波数シフトキーイング(CP-FSK)変調を使用して符合化されたバイナリ識別子を含む。
【0061】
モバイル受信機ユニット7は、超音波信号を受信し、復調して、受信機ユニット7の可聴範囲内で送信機ユニット2、3、4、5によって送信されたシグネチャを識別して、シグネチャごとに1つ以上の到着時間を決定する。
【0062】
受信機ユニット7は、受信したシグネチャをタイムスタンプするために、内部時計を使用する。受信機ユニット7は、送信機ユニット2、3、4、5の各々と(および随意にサーバ9と)同期され得、したがって、それが受信する各シグネチャの飛行時間(TOF)も計算することができる。既知の送信機位置からの3つ以上のTOF測定値を組み合わせることによって、三辺測量(多辺測量とも称される)の幾何学的原理を使用してモバイル受信機ユニット7の位置を決定することができる。この同期は、Bluetooth Low Energy(商標)接続などの無線チャネルを使用して、または任意の他の好適な方法で実行され得る。
【0063】
受信機ユニット7が送信機2~5と同期していない場合、飛行時間差(TDOF)方法をさらに使用して、受信機ユニット7の位置を決定することができるが、この場合、正確な位置推定を得るために、より多くの送信機ユニットが範囲内にあることが必要になり得る。
【0064】
受信機ユニット7の位置は、三次元で(例えば、部屋1または建築物の基準フレームに対するx、y、zのデカルト座標として)、または二次元で(例えば、水平面だけで)、または一次元で(例えば通路に沿った距離として)推定され得る。位置決定計算は、モバイル受信機ユニット7で行われ得、または受信機ユニット7が、タイミングまたは距離情報を含む受信信号に関する情報を、計算の一部またはすべてを行い得るサーバ9に送信し得る。
【0065】
受信機ユニット7は、典型的には、環境内の1つ以上の反射後に、直接経路に沿って(送信機ユニット間に明瞭な見通し線が存在する場合)、さらには1つ以上の間接経路沿って、送信機ユニット2~5から同じ音響信号を受信する。信号は、時間的に重複して到着し得、これは、シグネチャを正確に復号化することを困難にし得る。これは、特に、帯域幅が制限された低周波超音波-例えば約20kHz-を使用する場合に起こり得るので、各送信機ユニット識別子を送信するのに相当な時間がかかる。間接(反射)信号に沿って受信したインスタンスの強度は、典型的には、直接経路信号の強度よりも低いが、必ずしも常にそうであるとは限らない(例えば、受信機ユニット7のマイクロホンが、ガラス窓ペインなどの高反射性表面に向かって角度付けされている場合)。
【0066】
任意の直接経路信号の飛行時間は、多辺測量位置付けアルゴリズムに入力することができる。任意の反射(エコー)の飛行時間は、いくつかの実施形態では、(反射信号は、受信した直接経路シグネチャの復号化を潜在的に支援するが)幾何学的嵌合プロセスでは無視され得る。しかしながら、他の実施形態では、受信機ユニット7の位置に関する幾何学的情報を決定するときに、反射の到着時間も使用され得る。そのような実施形態は、環境内の主反射表面の既知の位置を利用し得る。そのような実施形態で採用され得る実際のおよび仮想の送信機位置に関係する技術は、2018年3月5日に出願されたWO2018/162885で開示されており、本出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
受信機ユニット7の位置は、各インスタンスが異なるそれぞれの時間に到着する、一組の経路に沿った複数のインスタンスとして受信されるシグネチャから、および環境を表す音響モデルから、少なくとも部分的に推定することができる。音響モデルは、受信信号から推定されるインパルス応答関数を含み得る。
【0068】
ドップラー偏移は、モバイル受信機ユニット7がユニット2、3、4、5のうちの1つ以上に向かって、またはそこから離れて移動しているときに常に生じる。
【0069】
ドップラー偏移による周波数の変化は、次式によって与えられる。
【0070】
【数1】
【0071】
式中、vは、送信機ユニット2、3、4、5に向かう、またはそこから離れる方向におけるモバイル受信機ユニット7の速度の構成要素であり、cは、空気中の波の速度であり、fは、送信機ユニットから放射された信号の周波数である。正のvは、送信機ユニット2、3、4、5に向かうモバイル受信機ユニット7の移動を表す。
【0072】
比較的低い値の空気中の音速(約340m/s)は、低速移動であっても、送信信号に比較的大きい周波数偏移を生じさせる。一例として、モバイル受信機ユニット7を携持している人6が、送信機ユニット2、3、4、5のうちの1つに向かって毎秒1.5メートルの速度で歩く場合、20kHzの音響信号は、約90Hzの周波数の上昇を受ける。
【0073】
ドップラー偏移は、受信信号の位相および周波数に大幅に影響を及ぼし得るので、モバイル受信機ユニット7は、コヒーレント検出方法を容易に使用することができない。代わりに、非同期検出方法が使用される。
【0074】
システムは、以下により詳細に記載されるように、送信シグネチャの正確な復号化を可能にするために、ドップラー偏移補償機構を含む。
【0075】
処理ステップは、簡単にするために、受信機ユニット7によって実行されるものとして本明細書で説明されるが、いくつかの実施形態では、代わりに、これらのステップは、適切な場合に、サーバ9によって全体的にまたは部分的に実行され得ることを理解されたい。中間結果は、無線リンクを介するなどの任意の適切な手段によって、受信機ユニット7とサーバ9との間で通信され得る。
【0076】
図3は、モバイル受信機ユニット7によって実行される主な演算のうちのいくつかを示すフローチャートである。他の実施形態では、これらの演算のうちのいくつかまたはすべてがサーバ9で行われ得る。
【0077】
最初に、300で、マイクロホン204で受信された入来音声がサンプリングされる。これは、複素IQベースバンドサンプルのストリームを生成するために、アナログおよび/またはデジタル混合技術を使用する、ダウンミックスプロセスを含むことができる。受信信号は、クリティカルに(すなわち、送信シグネチャのナイキスト周波数に近いサンプルレートで)サンプリングされ得る。
【0078】
時間窓選択ステップ302は、試料ストリームを監視して、入来シグネチャインスタンスのクラスタを識別する。このステップは、1つ以上の重複シグネチャインスタンス(いずれかの端部にマージンを含む)のクラスタにわたる一連のサンプルを選択する。個々の非重複シグネチャインスタンスは、比較的直接的に復号化およびタイムスタンプすることができる。しかしながら、重複シグネチャインスタンスは、復号化がより困難である。送信機ユニット2~5によって使用される時間的に疎な送信スケジュールのため、重複シグネチャインスタンスは、複数の経路に沿ってマイクロホン204に到達した単一のシグネチャ送信から生じる可能性が最も高くなる。しかしながら、時折、2つの異なるシグネチャ送信から重複が存在する場合があり、これは、適切な到着時間の閾値化および本明細書に開示されるデコンボリューション過程によって、高い信頼性でさらに処理することができる。
【0079】
時間窓の選択302は、2017年12月29日に出願されたUS2019/0204408に開示されるピーク識別プロセスと同様の技術を使用し得、本出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。一組のピーク(例えば、一組の2つのピーク)が、受信音響信号から選択され得る。そのようなピークは、受信信号の大きさの時間ドメイン表現から選択され得る。ピークは、各ピークの振幅およびピークの発生順序の少なくとも一部に基づいて選択することができる。例えば、選択されたピークは、閾値よりも大きい振幅を有する最初の2つの受信ピークを含み得る。一組の選択されたピークの各ピークは、音響モデルの少なくとも一部に基づいて送信機位置に割り当てることができる。割り当ては、送信機位置に対するモバイル通信デバイスの方向、および受信機ユニット7の1つ以上の音響トランスデューサ(例えば、マイクロホン)の角度感度、および/または送信機2~5のトランスデューサの角度感度の少なくとも一部に基づいて決定することができる。モバイル受信機ユニット7の方向は、例えば、ジャイロスコープ、コンパス、または加速度計などの1つ以上のオンボードセンサを使用して決定することができる。配向は、音響モデルにおいて定義された送信機2~5の既知の位置の少なくとも一部に基づいて、送信機位置に対して決定することができる。
【0080】
より高い反射次数と関連付けられた音響信号が、概して、より低い反射次数と関連付けられた音響信号よりも長い距離を進むという事実のため、選択されたピークは、ピークの到着順序が反射数に対応するという仮定の少なくとも一部に基づいて、直接経路インスタンスおよび1つ以上の単一反射経路と関連付けられた信号に対応するように選択することができる。このように、ピークは、0次の送信機位置(すなわち、実際の送信機位置および対応する直接経路信号)からの信号(例えば、ピーク)が、2次の送信機位置からの信号よりも先に(すなわち、2つの異なる表面からの反射の後に)到着する1次の送信機位置(すなわち、1つの反射に基づく仮想送信機位置)からの信号よりも先に到着するという仮定の少なくとも一部に基づいて選択することができる。
【0081】
同様に、以降の幾何形状位置の演算320において、それぞれの実際のまたは仮想の送信機位置に対するピークの割り当ては、ピークの到着順序に基づいて行われ得る。例えば、第1のピークを0次の送信機位置に割り当てることができ、第2のピークを1次の送信機位置に割り当てることができる。
【0082】
次いで、別個の有限フーリエ変換(FFT)ステップ304で、選択シグネチャ窓内のサンプルが周波数ドメインに変換される。
【0083】
次いで、306で、一組のn個の候補シグネチャテンプレートが選択される。各テンプレートは、CP-FSK変調を使用して送信機ユニット2~5のうちの1つによって周期的に送信されたときの、それぞれの識別情報コード(送信機に固有の識別データ)の複素デジタルベースバンド表現である。選択された組は、システム内の送信機ユニット2~5によって送信されるすべての可能なシグネチャを含み得、またはそれらのサブセットであり得る。ショートリストは、シグネチャ窓内の受信信号の周波数スペクトルおよび各シグネチャテンプレートの周波数スペクトルの大きさを利用すること、およびそれらの間の正規化された相互相関を計算することによって確立され得る。閾値を超える(例えば0.3よりも大きい)正規化された相互相関を有するシグネチャはショートリストされ得るが、他のものは無視される。候補テンプレートのショートリストは、タイミングなどの他の特性に基づいて、さらに精緻化され得る。
【0084】
次に、複数のデコンボリューション演算308が行われる。各デコンボリューションは、時間窓化受信信号の周波数ドメイン表現の、それぞれのテンプレートの周波数ドメイン表現によるサンプルごとの複素除算(すなわち、ある大きさおよび位相を、別の大きさおよび位相で除算する)を使用して実装される。標準コンボリューション定理によれば、周波数ドメインの除算は、時間領域内のデコンボリューションと同等である。したがって、各デコンボリューション演算は、環境の推定インパルス応答関数を表す(すなわち、モバイル受信機ユニット7で受信される信号を生成するために、その音響反射表面を含む環境がどのように送信信号のタイミング、位相、および振幅を変化させたのかを表す)周波数領域データを出力する。いくつかの実施形態では、デコンボリューションは、ノイズ項が、ランダムノイズ(例えば、ホワイトノイズ)を表すことを可能にする。ノイズ項が含まれている場合、デコンボリューション演算は、(例えば、ノイズを最小にする値を有する実定数として選択される制約の、ラグランジュ乗数λを伴う、Tikhonovの正則化を使用することによって)問題を安定させるために、可能なソリューションにいくつかの制約を課し得る。
【0085】
窓化されたサンプルは、n個のショートリストに入れられたテンプレートの各々を使用してデコンボリューションされる。さらに、各ショートリストされたテンプレートはまた、k個の可能な周波数偏移のうちの1つにも制約され、それによって、n×k個の別個のデコンボリューションの計算の合計を必要とする。これらの偏移は、所望の周波数偏移だけ周波数ビンに沿って値を偏移させることによって、テンプレートの周波数ドメイン表現に容易に適用される。各テンプレートは、例えば、一様な8Hzの間隔で-100Hz~100Hzの間隔にわたって、25個の異なる周波数偏移されたテンプレート(k=25)を生成するために使用され得る。これは、モバイル受信機ユニット7の1.5m/sの半径方向速度に対応するので、速度分解能と計算量との間の合理的なトレードオフを表す。当然ながら、代わりに、1~10Hzごとなどの他の遷移が使用され得る。いくつかの実施形態では、間隔は、不均一であり得る。
【0086】
次いで、インパルス応答推定が、逆FFT演算によって時間領域に逆変換され、308のデコンボリューションプロセスによって生成されたn×k個のチャネルインパルス応答推定ごとに、310で、信号対ノイズ比(SNR)測定が評価される。このプロセスは、図4を参照して下でより詳細に説明される。
【0087】
次いで、312で、各インパルス応答関数のSNR測定を使用して、n個のショートリストされたシグネチャごとに、最も可能性の高いドップラー偏移を推定する。これは、SNR測定がピーク基準を満たすドップラーインデックスを選択することによって行われる。ピーク基準は、最大SNR値を簡単に識別する(すなわち、最大のSNRを有するドップラー偏移を選び出す)ことができるが、ピーク基準は、より複雑であり得る。適格最大ピークを見出すために、区別に続いて、多項式曲線フィッティング(例えば、4~12点のフィット)演算が使用され得る。これは、(例えば、8Hzのステップサイズよりも緻密である)サブインデックス解像度を可能にすることができ、および/または非常に幅の狭い最大値を選択するのを阻止することができる。多項式は、適格となる最大の周波数幅を制御するように選択され得る。これは、最大値が、スプリアスではなく物理的な(例えば、少なくとも30Hzの)最小周波数範囲を有するべきであるという概念に基づいている。
【0088】
次に、これらのピークSNR値は、それぞれの推定ドップラーシフトで各シグネチャテンプレートのSNR値を比較することにより、n個のシグネチャ間で比較される(314)。これは、ドップラー補償されたシグネチャテンプレートのデコンボリューション結果の比較に有効である。最も高いSNR値は、受信機が何であったかに基づいて、送信機ユニットによって送信された最も可能性の高いシグネチャを識別することができる(すなわち、受信信号を復号化することが可能である。いくつかの実施形態では、コードエラー確率論を使用して最良のシグネチャと次善のシグネチャとの間の一組の復号確率を決定するために、単に復号化シグネチャを識別するのではなく、SNR値を使用することができる)。
【0089】
この段階で、(ステップ312でのドップラー偏移推定において、ドップラー偏移が、復号化シグネチャテンプレートを推定したとき)現在シグネチャは復号化されており、ドップラー偏移は推定されている。
【0090】
これは、シグネチャインスタンスの受信クラスタを、特定のソース送信機ユニット2~5に割り当てることを可能にする。また、識別された送信機ユニットに対する、モバイル受信機ユニット7の速度の半径方向構成要素の推定ももたらす。速度の推定は、例えばカルマンフィルタを使用して、モバイル受信機ユニット7のより正確な追尾のために、運動ベースのモデルに入力することができる。
【0091】
受信信号を復号化するためのこのSNR値の使用は、逆FFTが、周波数ドメインにおいて、受信信号およびドップラー偏移が信号に正しく適合していないテンプレートの除算の結果を利用したときに、結果として生じるインパルス応答関数(すなわち、経路トレース)の大きさが、典型的には、大きく、しばしば周期的となるノイズピークを含む、という洞察に基づいている。本明細書に開示するように、環境内の反射音響信号の経路トレースは、デルタピークの和として確実にモデル化することができるので、信号対ノイズメトリックを使用して経路トレースを記録することによって、実際のドップラー偏移および送信シグネチャを確実に決定することができることが見出された。
【0092】
また、受信機ユニット7の位置を推定するために、318で、受信信号から1つ以上の到着時間も決定される。いくつかの実施形態では、これは、推定ドップラー偏移で、復号化されたシグネチャテンプレートの時間ドメインインパルス応答関数における最大のピークの一時的な位置を識別することによって行うことができる。最大ピークは、典型的には、直接経路信号に対応する。必要であれば、1次以上の反射経路に対応する他のピークの時間も決定され得る。他の実施形態では、到着時間は、受信信号のエネルギーの相関に閾値を適用することによって決定することができ、これは、潜在的に、より信頼性の高い測定値を与え得る。閾値が生じるタイムインスタンスは、エネルギー相関窓の長さおよび形状によって生じる任意の遅延を補正し得る。この遅延は、受信信号処理チェーンを通して制御されるタイムインスタンスで生じる理想的なシミュレーションされた信号を走らせて、その到着時間を測定することによって推定され得る。
【0093】
同期されたシステムでは、到着時間を直接的に使用して、送信機ユニット2~5とモバイル受信機ユニット7との間の飛行時間距離を決定することができる。
【0094】
次いで、320で、新しい到着時間のそれぞれを位置推定アルゴリズムに入力することができる。これは、異なる送信機ユニット2~5の到着時間を経時的に収集し、それらを使用して、モバイル受信機ユニット7の更新された位置推定を経時的に決定する。これは、球の交点に関し得る、線形最適化問題(例えば、加重最小二乗回帰)を解決することができる。位置推定アルゴリズムは、推定したドップラー速度をさらなる入力として使用し得る。これは、上で説明したように、特定の送信機ユニット2~5までの距離の割り当ての信頼レベルに基づいて、復号エラー情報を使用して、シグネチャ窓のそれぞれのタイミング情報の寄与を加重し得る。
【0095】
情報または他の動作の表示などのモバイル受信機ユニット7の挙動を制御するために、位置推定または推定の時系列が使用され得る。受信機ユニット7の位置は、例えば、地図上に、受信機ユニット7の、または遠隔デバイスの-例えばサーバ9に接続されたクライアントコンピュータの-スクリーンに表示され得る。
【0096】
図4は、SNR測定を評価するステップ310をより詳細に示すフローチャートである。
【0097】
インパルス応答関数を表すデータは、時間領域内にあるように処理される。
【0098】
最初に、410で、インパルス応答の時間表現の大きさのピークが識別される。これは、(例えば、受信信号がクリティカルにサンプリングされる場合に合理的な仮定であり得る、各ピークが単一のサンプル幅だけである、という仮定の下で)絶対値または極大値を識別することによって簡単に行われ得るか、または任意の好適な適格基準によって任意の適切なピークファインダアルゴリズムが使用され得る。いくつかの実施形態では、3次の多項式ピークファインダアルゴリズムを使用して行われ得る。ピークは、高さの高い順にソートされ得る。
【0099】
次に、402で、2つの組のSおよびNが初期化される。最初に、すべてのピークが「ノイズ」組Nに追加されるが、「信号」組(S)は空である。いくつかの実施形態では、各ピークは、その大きさの値によって簡単に組で表され得る。
【0100】
次いで、404で、組N内で最大値を有するピークを組Nから取り出して組Sに含める、ループプロセスが起動される。
【0101】
次いで、406で、直前のピークをSに含める前に、組S内のピークの値の平方和の平方根が計算され、Sの平方和の平方根と比較される。変化が3%を超える場合は、404で、プロセスループおよびN内の次の最大値がSに移動される、などが行われる。変化が3%未満である場合は、ループを出る。これは、組Sで収集されたすべての高いピークを示し、(低い値のピークは、NからSへと移動させた場合に、Sの平方和に大きな影響を及ぼさないので)低い値のピークだけが組N内に残る。当然ながら、適切な場合には、3%以外の閾値が使用され得る。
【0102】
次いで、408で、組S内のピーク値の二乗平均平方根RMS(S)が計算されて、マイクロコントローラユニット205のメモリに記憶される。
【0103】
次に、410で、組N内のピーク値の二乗平均平方根RMS(N)が計算されて、マイクロコントローラユニット205のメモリに記憶される。
【0104】
次いで、410で、RMS(S)をRMS(N)の平方根で除算して、SNR測定が計算される。次いで、このSNR値は、ステップ312を参照して上で説明したように使用されて、先へ進む。
【0105】
いくつかの実施形態では、改善された位置データを生成するために、結果として生じる位置推定(および随意に、任意の位置誤差値および/または速度ベクトル)がカルマンフィルタモジュールに入力され得る。これはまた、音響ベースの位置推定を、加速度計などの他のセンサからのデータと組み合わせて、精度をさらに向上させ得る。
【0106】
当業者には、本発明が、その1つ以上の特定の実施形態を説明することによって示されているが、これらの実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で多数の変形および修正が可能であることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】