(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止する方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/40 20060101AFI20221128BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221128BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
A01N43/40 101D
A01P3/00
A01P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520487
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020076868
(87)【国際公開番号】W WO2021063818
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】シエロツキ ヘルゲ
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BB09
4H011DA13
4H011DD03
(57)【要約】
本発明は、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止する方法であって、式(I)
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、Y、A、Bは、本願で定義された通りである)に係る化合物をバナナ植物の作物、その場所、又はその繁殖材料に施用することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止する方法であって、バナナ植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(I)
【化1】
(式中、
Yは、O、C=O又はCR12R13であり、
Aは、酸素、窒素及び硫黄からそれぞれ独立して選択される1~3つのヘテロ原子を含有する5員若しくは6員芳香族複素環又はフェニル環であり、前記芳香族複素環又は前記フェニルは、1つ以上のR6によって任意に置換されていてもよく、
R6は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C1~C4-アルコキシ-C1~4-アルキル又はC1~C4-ハロアルコキシ-C1~C4-アルキルであり、
R1、R2、R3、R4、R12及びR13は、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ又はC1~C4-ハロアルキルであり、
R5は、水素、メトキシ又はヒドロキシルであり、
Bは、1つ以上のR8によって置換されるフェニルであり、
R8は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ又は基-L-R9であり、ここで、各Lは、互いに独立して、結合、-O-、-OC(O)-、-NR7-、-NR7CO-、-NR7S(O)n-、-S(O)n-、-S(O)nNR7-、-COO-又はCONR7-であり、
nは、0、1又は2であり、
R7は、水素、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、ベンジル又はフェニルであり、ここで、ベンジル及びフェニルは、非置換であるか、又はハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル若しくはC1~C4-ハロアルキルで置換され、
R9は、互いに独立して、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC1~C6-アルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC3~C6-シクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC6~C14-ビシクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC2~C6-アルケニル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC2~C6-アルキニル、非置換であるか若しくはR10によって置換されるフェニル又は非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるヘテロアリールであり、
R10は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1~C4-アルキルチオ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C3~C6-アルケニルオキシ又はC3~C6-アルキニルオキシである)
による化合物又はその塩若しくはN-オキシドであって、B及びA-CO-NR5は、4員環上で互いに対してシスである、化合物又はその塩若しくはN-オキシド或いは前記化合物の互変異性体又は立体異性体を施用する工程を含む方法。
【請求項2】
前記植物病原性微生物は、シュードセルコスポラ・フジエンシス(Pseudocercospora fujiensis)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yは、O又はCH2であり、
Aは、1~2個の窒素原子を含む6員の芳香族複素環であるか、又はフェニル環であり、前記芳香族複素環又は前記フェニル環は、1個又は複数個のR6で任意に置換されていてもよく、
R6は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、又はC1~C4-ハロアルコキシであり、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ水素であり、
Bは、1個又は複数個のR8で置換されたフェニルであり、
R8は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-ハロアルコキシ、及びC3~C6-シクロアルキルから選択される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Aは、1~2つの窒素原子を含有し、且つR6から選択される1~3つの置換基を有する6員芳香族複素環又はR6から選択される1つ若しくは3つの置換基を有するフェニル環である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Bは、1~3つの置換基R8によって置換されるフェニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Bは、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、シクロプロピル、ジフルオロメトキシ及びトリフルオロメトキシから独立して選択される1~3つの置換基によって置換されるフェニルであり、
Aは、フェニル、ピリジル、又はピラジニルであり、これらの環は、互いに独立して、非置換であるか、又はクロロ、ブロモ、フルオロ、メチル、シアノ及びトリフルオロメチルから独立して選択される1~3つの置換基によって置換され、
Yは、O又はCH2であり、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ水素である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Yは、CH2であり、
Bは、モノ又はジ-ハロゲン置換フェニルであり、
Aは、フェニル、ピラジニル及びピリジルから選択され、これらのそれぞれは、ハロゲン及びC1~C4-ハロアルキルから独立して選択される置換基によって一置換又は二置換され、
R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ水素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物は、式(Ic)
【化2】
(式中、
R11及びR12は、独立して、ハロゲンから選択され、
Aは、ハロゲン及びC
1~C
4-ハロアルキルから独立して選択される1つ又は2つの置換基によって置換されるピリジルである)
の化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
R11及びR12は、独立して、クロロ及びフルオロから選択され、
Aは、1つ又は2つのC
1~C
4-ハロアルキル置換基によって置換されるピリド-2-イル又はピリド-3-イルである、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
Aは、
【化3】
から選択され、
R13は、C
1~C
4-ハロアルキルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は、式(Ic)
【化4】
(式中、R11、R12、及びAは、下記の表:
【表1】
中で定義されている通りである)
の化合物1~7の内のいずれか1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物の潅注施用を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物をバナナ植物若しくはその繁殖材料に施用するか、又は前記化合物で前記バナナ植物若しくはその繁殖材料を処理することを含む、バナナ植物を栽培する方法。
【請求項14】
植物病原性微生物シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止するための請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物の前記使用は、潅注施用である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に、バナナ生産における最も重要な疾患の1つは、シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)により引き起こされる黒シガトカ病(Black Sigatoka disease)である。黒シガトカ病は、深刻な落葉を引き起こし、且つ果実の早熟等の収穫後の果実の間接的な品質問題を引き起こす。黒シガトカ病により葉が傷んでいる植物は、果実の収率が最大50%低下する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止するためのさらに改善された方法を提供する。したがって、本発明は、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特に、黒シガトカ病を引き起こすシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))による被害を防除するか又は防止するための重要な手段をバナナ農家に提供する。
【0004】
シクロブチルカルボキサミド化合物及びそれらの調製方法は、国際公開第2013/143811号及び国際公開第2015/003951号に開示されている。ここで、驚くべきことに、国際公開第2013/143811号及び/又は国際公開第2015/003951号で開示されている特定のシクロブチルカルボキサミド化合物は、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))によるバナナ植物の被害の防除又は防止で非常に有効であることが分かっている。そのため、この非常に有効な化合物は、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止し、このようにして深刻なバナナ疾患である黒シガトカに対処するための、農家にとって重要な新規の解決策となる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
したがって、実施形態1として、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物、特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止するための方法であって、バナナ植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(I)
【化1】
(式中、
Yは、O、C=O又はCR12R13であり、
Aは、酸素、窒素及び硫黄からそれぞれ独立して選択される1~3つのヘテロ原子を含有する5員若しくは6員芳香族複素環又はフェニル環であり、芳香族複素環又はフェニルは、1つ以上のR6によって任意に置換されていてもよく、
R6は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C1~C4-アルコキシ-C1~4-アルキル又はC1~C4-ハロアルコキシ-C1~C4-アルキルであり、
R1、R2、R3、R4、R12及びR13は、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-アルコキシ又はC1~C4-ハロアルキルであり、
R5は、水素、メトキシ又はヒドロキシルであり、
Bは、1つ以上のR8によって置換されるフェニルであり、
R8は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ又は基-L-R9であり、ここで、各Lは、互いに独立して、結合、-O-、-OC(O)-、-NR7-、-NR7CO-、-NR7S(O)n-、-S(O)n-、-S(O)nNR7-、-COO-又はCONR7-であり、
nは、0、1又は2であり、
R7は、水素、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、ベンジル又はフェニルであり、ここで、ベンジル及びフェニルは、非置換であるか、又はハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル若しくはC1~C4-ハロアルキルで置換され、
R9は、互いに独立して、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC1~C6-アルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC3~C6-シクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC6~C14-ビシクロアルキル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC2~C6-アルケニル、非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるC2~C6-アルキニル、非置換であるか若しくはR10によって置換されるフェニル又は非置換であるか若しくは1つ以上のR10によって置換されるヘテロアリールであり、
R10は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-ハロアルコキシ、C1~C4-アルキルチオ、C1~C4-ハロアルキルチオ、C3~C6-アルケニルオキシ又はC3~C6-アルキニルオキシである)
による化合物又はその塩若しくはN-オキシドであり、
B及びA-CO-NR5は、4員環上で互いに対してシスである、化合物又はその塩若しくはN-オキシド、或いはこれらの化合物の互変異性体又は立体異性体を施用する工程を含む方法が提供される。
【0006】
実施形態1に記載のより好ましい方法が以下の実施形態に示される。
【0007】
実施形態2として、
Yは、O又はCH2であり、
Aは、1~2つの窒素原子を含有する6員芳香族複素環又はフェニル環であり、芳香族複素環又はフェニルは、1つ以上のR6によって任意に置換されていてもよく、
R6は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル又はC1~C4-ハロアルコキシであり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ水素であり、
Bは、1つ以上のR8によって置換されるフェニルであり、
R8は、互いに独立して、ハロゲン、シアノ、C1~C4-アルキル、C1~C4-ハロアルキル、C1~C4-ハロアルコキシ及びC3~C6-シクロアルキルから選択される、実施形態1に記載の方法が提供される。
【0008】
実施形態3として、Aは、1~2つの窒素原子を含有し、且つR6から選択される1~3つの置換基を有する6員芳香族複素環又はR6から選択される1つ若しくは3つの置換基を有するフェニル環である、実施形態1又は実施形態2に記載の方法が提供される。
【0009】
実施形態4として、Bは、1~3つの置換基R8によって置換されるフェニルである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0010】
実施形態5として、
Bは、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、シクロプロピル、ジフルオロメトキシ及びトリフルオロメトキシから独立して選択される1~3つの置換基によって置換されるフェニルであり、
Aは、フェニル、ピリジル又はピラジニルであり、それらの環は、互いに独立して、非置換であるか、又はクロロ、ブロモ、フルオロ、メチル、シアノ及びトリフルオロメチルから独立して選択される1~3つの置換基によって置換され、Yは、O又はCH2であり、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ水素である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0011】
実施形態6として、
Yは、CH2であり、
Bは、モノ又はジ-ハロゲン置換フェニルであり、
Aは、フェニル、ピラジニル及びピリジルから選択され、これらのそれぞれは、ハロゲン及びC1~C4-ハロアルキルから独立して選択される置換基によって一置換又は二置換され、
R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ水素である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0012】
実施形態1~6のいずれか1つに開示される式(I)の化合物は、左側のフェニル環及び右側のA-C(=O)-NH基がシクロブチル環上で互いに対してシスである、シスラセミ化合物:
【化2】
を表す。
【0013】
したがって、式(I)のラセミ化合物は、式(Ia)及び(Ib)の化合物の1:1混合物である。式(Ia)及び(Ib)の化合物中に示されるくさび形の結合は、絶対立体化学を表す一方、式(I)の化合物について示されるものなどの太い直線の結合は、ラセミ化合物における相対立体化学を表す。
【0014】
また、式(I)の化合物の1つの鏡像異性体は、植物病原性微生物シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止するのに特に有用であることが意外にも分かった。
【0015】
したがって、実施形態7として、化合物は、式(Ia)
【化3】
のものである、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0016】
当業者は、実施形態2に記載の方法に従い、式(Ia)の化合物が一般に殺有害生物組成物の一部として施用されることを認識している。したがって、実施形態8として、植物病原性微生物シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)によるバナナ植物の被害を防除又は防止する方法であって、バナナ植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物及び1つ以上の製剤助剤を含む殺有害生物組成物を施用する工程を含む方法が提供される。実施形態9として、植物病原性微生物シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)によるバナナ植物の被害を防除又は防止する方法であって、バナナ植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(Ia)の化合物及び1つ以上の製剤助剤を含む殺有害生物組成物を施用する工程を含む方法が提供される。実施形態9に記載の方法において、式(Ia)の化合物及び式(Ib)の化合物の両方を含む殺有害生物組成物では、式(Ia)の化合物対その鏡像異性体(式(Ib)の化合物)の比率は、1:1を超えなければならない。好ましくは、式(Ia)の化合物対式(Ib)の化合物の比率は、1.5:1超、より好ましくは、2.5:1超、特に4:1超、有利には9:1超、望ましくは20:1超、特に35:1超である。
【0017】
50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、特に20%以下、有利には10%以下、望ましくは5%以下、特に3%以下の、式(I)の化合物のトランス立体異性体(すなわち、式中、B及びA-C(=O)-NH基は、互いに対してトランスである)を含有する混合物は、本発明の一部であることも理解される。好ましくは、式(I)の化合物対そのトランス異性体の比率は、1.5:1超、より好ましくは2.5:1超、特に4:1超、有利には9:1超、望ましくは20:1超、特に35:1超である。
【0018】
好ましくは、式(Ia)の化合物、そのトランス異性体(すなわち、式中、B及びA-CO-NR2基は、互いに対してトランスである)及び式(Ib)の化合物を含む組成物において、組成物は、式(Ia)の化合物、そのトランス異性体及び式(Ib)の化合物の総量をそれぞれ基準にして少なくとも50%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは85%、特に90%超、特に好ましくは95%超の濃度の式(Ia)の化合物を含む。
【0019】
さらに、実施形態10として、植物病原性微生物シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止する方法であって、バナナ植物の作物、その場所又はその繁殖材料に、式(Ic)
【化4】
(式中、
R11及びR12は、独立して、ハロゲンから選択され、
Aは、ハロゲン及びC
1~C
4-ハロアルキルから独立して選択される1つ又は2つの置換基によって置換されるピリジルである)
による化合物を施用する工程を含む方法が提供される。
【0020】
実施形態11として、
R11及びR12は、独立して、クロロ及びフルオロから選択され、
Aは、1つ又は2つのC1~C4-ハロアルキル置換基によって置換されるピリダ-2-イル又はピリダ-3-イルである、実施形態10に記載の方法が提供される。
【0021】
実施形態12として、
Aは、
【化5】
から選択され、
R13は、C
1~C
4-ハロアルキル、好ましくはトリフルオロメチルである、実施形態10又は11に記載の方法が提供される。
【0022】
実施形態13として、化合物は、式(Ic)
【化6】
の化合物1~12のいずれか1つから選択され、式中、R11、R12及びAは、以下の表において定義されるとおりである、実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0023】
【0024】
実施形態14として、
- 実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物を含む組成物を提供する工程と、
- 繁殖材料に組成物を施用する工程と、
- 繁殖材料を植え付ける工程と
を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0025】
実施形態15として、
- 実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物を含む組成物を提供する工程と、
- バナナ植物の作物又はその場所に組成物を施用する工程と
を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法が提供される。
【0026】
実施形態16として、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止するための実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供される。
【0027】
実施形態17として、シュードセルコスポラ(Pseudocercospora)属の植物病原性微生物(特にシュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis))によるバナナ植物の被害を防除するか又は防止するための実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物の使用が提供される。
【0028】
実施形態18として、バナナ植物を栽培するための方法であって、バナナ植物又はその繁殖材料を、請求項1~13のいずれか1つに記載の化合物で施用又は処理する工程を含む方法が提供される。
【0029】
好ましくは、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法及び使用を、潅注施用(drench application)により実行する。
【0030】
実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法において定義される化合物の調製は、参照により本明細書に援用される国際公開第2013/143811号及び国際公開第2015/003951号に開示されている。
【0031】
定義:
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、特にフルオロ、クロロ又はブロモを表す。
【0032】
本明細書において使用される際の「アルキル」又は「alk」という用語は、単独で又はより大きい基(アルコキシ、アルキルチオ、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルなど)の一部として、直鎖状又は分枝鎖状であり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-ペンチル又はn-ヘキシルである。アルキル基は、好適には、C1~C4-アルキル基である。
【0033】
本明細書において使用される際の「ハロアルキル」は、同じであるか又は異なるハロゲン原子の1つ以上で置換される、上に定義されるアルキル基であり、例えばCF3、CF2Cl、CF2H、CCl2H、FCH2、ClCH2、BrCH2、CH3CHF、(CH3)2CF、CF3CH2又はCHF2CH2である。
【0034】
実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法及び使用は、好ましくは、他の殺真菌剤に耐性がある植物病原性微生物による作物の被害を防除又は防止するためのものである。特定の殺真菌剤に「耐性がある」サーコスポラ(cercospora)真菌は、例えば、サーコスポラ(cercospora)真菌の同一の種の予測される感受性と比較して、その殺真菌剤に対する感受性が低いサーコスポラ(cercospora真菌の菌株を指す。予測される感受性は、例えば、殺真菌剤に以前に曝されたことのない菌株を用いて測定され得る。
【0035】
実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法又は使用に係る施用は、好ましくは、バナナ植物の作物、その場所又はその繁殖材料に対するものである。好ましくは、施用は、バナナ植物の作物又はその繁殖材料、より好ましくは繁殖材料に対するものである。本発明の化合物の施用は、通常の施用形態、例えば葉面施用、潅注、土壌施用、畝間施用などのいずれかに従って行われ得る。
【0036】
実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物は、50~300g 有効成分(AI)/ha、好ましくは150~300g AI/haで有害生物防除のために好ましくは使用される。
【0037】
実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物は、除草剤などの有効成分に耐性があるように遺伝子組み換えされたものを含む任意のピーナッツ植物に対して使用するか、又は植物有害生物による被害を防除する生物学的に活性な化合物を生成するのに好適である。
【0038】
一般に、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物は、担体を含有する組成物(例えば、製剤)の形態で使用される。実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物及びその組成物は、エアゾールディスペンサ、カプセル懸濁液、冷煙霧濃縮物、粉剤、乳化性濃縮物、水中油乳剤、油中水乳剤、カプセル化した粒剤、細粒剤、種子処理のためのフロアブル剤、(加圧)ガス、ガス生成剤、粒剤、温煙霧濃縮物、大型粒剤、微粒剤、油分散性粉剤、油混和性フロアブル剤、油混和性液体、ペースト、植物用棒状剤、乾燥種子処理のための粉剤、農薬で被覆された種子、可溶性濃縮物、可溶性粉剤、種子処理のための液剤、懸濁液濃縮物(フロアブル剤)、微量散布用(ulv)液剤、微量散布用(ulv)懸濁剤、顆粒水和剤又は水分散性錠剤、スラリー処理のための水和剤、水溶性粒剤又は水溶性錠剤、種子処理のための水溶性粉剤及び水和剤などの様々な形態で使用され得る。
【0039】
製剤は、典型的に、液体又は固体担体及び任意に固体又は液体助剤であり得る1つ以上の通常の製剤助剤、例えば非エポキシ化又はエポキシ化植物油(例えば、エポキシ化ヤシ油、ナタネ油又はダイズ油)、消泡剤、例えばシリコーン油、防腐剤、粘土、無機化合物、粘性調節剤、界面活性剤、結合剤及び/又は粘着付与剤を含む。この組成物は、本発明の化合物と、殺菌剤、殺真菌剤、抗線虫剤、植物活性化剤、殺ダニ剤及び殺虫剤などの1つ以上の他の生物学的に活性な物質との組合せを含むだけでなく、肥料、微量栄養素供与体又はバナナ植物の成長に影響を与える他の調製物もさらに含み得る。
【0040】
この組成物は、例えば、本発明の固体化合物を粉砕し、篩にかけ、且つ/又は圧縮することにより、助剤の非存在下において、及び例えば本発明の化合物を1つ又は複数の助剤と均質混合し、且つ/又は粉砕することにより、少なくとも1つの助剤の存在下においてそれ自体公知の方法で調製される。本発明の固体化合物の場合、化合物の粉砕/ミリングは、特定の粒径を確保するために行われる。
【0041】
農業に使用するための組成物の例は、乳化性濃縮物、懸濁液濃縮物、マイクロエマルション、油分散性の直接噴霧可能又は希釈可能な液剤、延展可能なペースト、希釈乳剤、可溶性粉剤、分散性粉剤、水和剤、ダスト剤、粒剤又はポリマー物質中への封入物であり、これは、- 少なくとも - 実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物を含み、組成物のタイプは、意図される目的及びそのときの状況に合わせて選択されるべきである。
【0042】
通常、組成物は、0.1~99%、特に0.1~95%の、実施形態1~13のいずれか1つに記載の化合物及び1~99.9%、特に5~99.9%の少なくとも1つの固体又は液体担体を含み、通常、組成物の0~25%、特に0.1~20%が界面活性剤であることが可能である(%は、いずれの場合にも重量パーセントを意味する)。濃縮された組成物が商品に好ましい傾向があるが、最終消費者は、通常、かなり低い濃度の有効成分を有する希釈組成物を使用する。
【0043】
プレミックス組成物のための茎葉製剤タイプの例は、以下のとおりである:
GR:粒剤
WP:水和剤
WG:水和性顆粒(粉剤)
SG:水溶性粒剤
SL:可溶濃縮剤
EC:乳化性濃縮物
EW:水中油乳剤
ME:マイクロエマルション
SC:水性懸濁液濃縮物
CS:水性カプセル懸濁剤
OD:油系懸濁液濃縮物、及び
SE:水性サスポエマルション(suspo-emulsion)。
【0044】
一方、プレミックス組成物のための種子処理製剤タイプの例は、以下のとおりである:
WS:種子処理スラリーのための水和剤
LS:種子処理のための液剤
ES:種子処理のための乳剤
FS:種子処理のための懸濁液濃縮物
WG:水和性顆粒、及び
CS:水性カプセル懸濁剤。
【0045】
タンクミックス組成物に好適な製剤タイプの例は、液剤、希釈乳剤、懸濁剤又はそれらの混合物及びダスト剤である。
【0046】
製剤の性質と同様に、葉面施用、潅注、噴霧、霧化、散布、拡散、塗布又は注ぎかけなどの施用方法は、意図される目的及びそのときの状況に応じて選択される。
【0047】
タンクミックス組成物は、一般に、異なる有害生物防除剤及び任意にさらなる助剤を含有する1つ以上のプレミックス組成物を溶媒(例えば、水)で希釈することによって調製される。
【0048】
好適な担体及び補助剤は、固体又は液体であり得、製剤化技術に通常用いられる物質、例えば天然又は再生鉱物物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤又は肥料である。
【0049】
一般に、葉面施用又は土壌施用のためのタンクミックス製剤は、0.1~20%、特に0.1~15%の所望の成分及び99.9~80%、特に99.9~85%の固体又は液体助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、タンクミックス製剤を基準にして0~20%、特に0.1~15%の量の界面活性剤であり得る。
【0050】
典型的に、葉面施用のためのプレミックス製剤は、0.1~99.9%、特に1~95%の所望の成分及び99.9~0.1%、特に99~5%の固体又は液体補助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、プレミックス製剤を基準にして0~50%、特に0.5~40%の量の界面活性剤であり得る。
【0051】
通常、種子処理施用のためのタンクミックス製剤は、0.25~80%、特に1~75%の所望の成分及び99.75~20%、特に99~25%の固体又は液体助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、タンクミックス製剤を基準にして0~40%、特に0.5~30%の量の界面活性剤であり得る。
【0052】
典型的に、種子処理施用のためのプレミックス製剤は、0.5~99.9%、特に1~95%の所望の成分及び99.5~0.1%、特に99~5%の固体又は液体補助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含み、助剤は、プレミックス製剤を基準にして0~50%、特に0.5~40%の量の界面活性剤であり得る。
【0053】
市販の製品は、好ましくは、濃縮物(例えば、プレミックス組成物(製剤))として製剤化されるであろうが、最終使用者は、通常、希釈製剤(例えば、タンクミックス組成物)を用いるであろう。
【0054】
好ましい種子処理プレミックス製剤は、水性懸濁液濃縮物である。この製剤は、流動床技術、ローラーミル法、ロトスタティック種子処理機及びドラムコータなど、従来の処理技術及び機械を用いて種子に施用され得る。噴流床などの他の方法も有用であり得る。種子は、塗布前に予め分級され得る。塗布後、種子は、典型的に、乾燥され、次に分級のために分級機に移される。このような手順は、当技術分野において公知である。本発明の化合物は、土壌及び種子処理用途に使用するのに特に適している。
【0055】
一般に、本発明のプレミックス組成物は、0.5~99.9、特に1~95、有利には1~50質量%の所望の成分及び99.5~0.1、特に99~5質量%の固体又は液体補助剤(例えば、水などの溶媒を含む)を含有し、助剤(又は補助剤)は、プレミックス製剤の質量を基準にして0~50、特に0.5~40質量%の量の界面活性剤であり得る。
【0056】
ここで、本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。全ての引用文献は、参照により援用される。
【実施例】
【0057】
生物学的実施例
真菌シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)により引き起こされる黒シガトカに対するバナナ植物の様々な潅注処理の効果
オランダのヴァーヘニンゲン(Wageningen)でバナナ温室試験を実行して、バナナでの黒シガトカに対する様々な化合物の有効性を評価した。バナナの組織培養小植物を、到着時に、標準土壌が入った小鉢(5×5cm)に移し、28±2℃及び約100%相対湿度(RH)で2週間にわたり維持して順化させた。その後、相対湿度を約90%まで低下させた。シュードセルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)の株を採取し、PDA培地で培養した。3週間後、菌糸コロニーを断片化し、断片をPDA上に蒔いて約4~6週間生育させた。その後、P.フィジエンシス(P.fijiensis)株からの菌糸コロニー片を、蒸留水と混和した。この菌糸断片をミラクロス(miracloth)でろ過し、懸濁液を、約5×105個の菌糸断片/mlの最終濃度まで希釈した。この溶液を27℃で一晩インキュベートして、混和から回復させた。翌日、この接種混合物を、個々の「Cavendish」バナナ植物(品種Grand Naine)の最後の十分に広がった葉の両側に、植物用スプレーを使用して、流れ落ちるまで「噴霧」した。この葉に3日にわたりビニール袋をかぶせて、最大湿度を確保した。その後、この袋を取り除き、この植物を温室で維持した。
【0058】
化合物を、200g AI/ha(1ha当たり1500本の植物の植物密度で算出)の最終濃度でそれぞれ施用した。施用を、1本の植物当たり水200mlを潅注することにより行った。植物を小さいトレイに入れ、施用された化合物が植物間で移動しないようにした。植物の症状を、最後の接種後12週間にわたり進行させた。疾患の重症度を、乾燥しているか又は生存しているか、黒シガトカの斑点及びそのサイズに基づいて、視覚的に評価した。これを、最小1(感染が観察されない)及び最大9(乾燥しており、高度に感染しており、大きい斑点)を有する数字に変換した。
【0059】
【0060】
評価:
【0061】
【0062】
結論:
この結果から、潅注による化合物1の施用により、黒シガトカの発症の重症度が有意に抑制され、この施用は、バナナ植物において黒シガトカと戦うための有望な代替物である可能性があることが示された。
【国際調査報告】