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特表2022-550868外部刺激によって個人の認知および意識を自動評価するためのシステム
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  • 特表-外部刺激によって個人の認知および意識を自動評価するためのシステム 図1
  • 特表-外部刺激によって個人の認知および意識を自動評価するためのシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】外部刺激によって個人の認知および意識を自動評価するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/377 20210101AFI20221128BHJP
   A61B 5/372 20210101ALI20221128BHJP
   A61B 5/378 20210101ALI20221128BHJP
   A61B 5/38 20210101ALI20221128BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20221128BHJP
【FI】
A61B5/377
A61B5/372
A61B5/378
A61B5/38
A61B5/346
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520531
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020077729
(87)【国際公開番号】W WO2021064214
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19306283.3
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
(71)【出願人】
【識別番号】517219328
【氏名又は名称】アイシーエム(インスティテュート ドゥ セルヴォ エ デ ラ ムワル エピイエレ)
(71)【出願人】
【識別番号】514203362
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】516039480
【氏名又は名称】エーピーエイチピー(アシスタンス パブリック-オピトークス ド パリ)
(71)【出願人】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ライモンド,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】シット,ジャコボ
(72)【発明者】
【氏名】ナカーシュ,リオネル
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127AA06
4C127DD01
4C127DD02
(57)【要約】
本発明は、被験者の認知および意識を自動評価するためのシステム(1)に関し、前記システム(1)は、マイクロコントローラ(11)と、デジタルアナログ変換器(12)と、少なくとも1つの感覚刺激要素(13)とを備え、そのシステムは、刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、刺激パラダイムに従う感覚刺激を出力として生成し、刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号(10)を、生理信号の取得のためのデバイス(2)に送信することにより、刺激のためのシステム(1)を生理信号の取得のためのデバイス(2)と取得中に同期させるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部刺激によって被験者の認知および意識を自動評価するためのシステム(1)であって、前記システム(1)は、マイクロコントローラ(11)と、デジタルアナログ変換器(12)と、少なくとも1つの感覚刺激要素(13)とを備え、前記システムは、刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、前記刺激パラダイムに従う感覚刺激を出力として生成し、前記刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号(10)を、生理信号の取得のためのデバイス(2)に送信することにより、刺激のための前記システム(1)を前記生理信号の取得のためのデバイス(2)と取得中に同期させるように構成される、システム。
【請求項2】
前記マイクロコントローラ(11)は、前記刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、対応する刺激デジタル出力を生成するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロコントローラ(11)は更に、物理的サポートを介して前記生理信号の取得のためのデバイスに送信される同期信号(10)をデジタル出力として生成するように構成される、請求項1または2のどちらか1項に記載のシステム。
【請求項4】
前記同期信号(10)は、前記感覚刺激の少なくとも1つの刺激の始まりを前記関連生理信号でタイムロックするように構成された時間タグである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記生理信号の取得のためのデバイス(2)は、脳波デバイスまたは心電デバイスである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記デジタルアナログ変換器(12)は、前記刺激デジタル出力を受信し、前記感覚刺激要素を用いて前記刺激パラダイムに従う前記感覚刺激を生成するように構成される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記感覚刺激要素(13)は、聴覚刺激、視覚刺激、および/または触覚刺激を提供するように構成される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記マイクロコントローラ(11)は、事前プログラムされ、プログラム可能である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記刺激パラダイムに関する情報は、前記刺激パラダイムの種類に関する情報および少なくとも1つの刺激パラダイムパラメータを備える、請求項2乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
専有不揮発性メモリおよびユーザインタフェース、特にスクリーンタッチを更に備え、これを介して前記ユーザは、生成される刺激パラダイムを選択する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記マイクロコントローラ(11)の刺激デジタル出力は、外部刺激デバイス、特に体性感覚刺激を伝達するように構成された電気刺激デバイスによって受信される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
認知評価のために被験者を刺激するための方法であって、
-前記患者に関する臨床情報を受信するステップ(100)と、
-前記患者に関する臨床情報に基づいて取得された少なくとも1つの刺激パラダイムの選択を受信するステップ(101)と、
-請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシステムが、前記刺激パラダイムおよび前記刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号に従って感覚刺激を生成するように、選択された刺激パラダイムに関する情報を備える入力を前記システムに送信するステップ(102)と、
-前記刺激の生成中に前記患者の生理信号を取得する生理信号の取得のためのデバイスに前記同期信号を送信するステップ(103)と、
-前記選択された刺激パラダイムに関する情報、前記取得された生理信号、および/または前記同期信号を格納のためにデータベースに転送するステップ(104)と、
を備える、方法。
【請求項13】
前記取得された生理信号および前記同期信号を分析するステップ(105)を更に備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記臨床情報は、臨床データベースまたはユーザによって提供され、前記ユーザによって提供された臨床情報は、前記臨床データベースに更に保存される、請求項12または13のどちらか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記分析ステップの結果および前記選択された刺激パラダイムに関する情報を備えるレポートを生成するステップを更に備える、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理信号評価の分野に関する。特に、本発明は、患者の刺激中の少なくとも1つの生理信号の分析による、意思疎通している、または意思疎通していない患者における認知機能の評価の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の集中治療医療における進化により、多数の患者が重病、特に脳損傷を乗り越えて生還している。これらの患者の一部は、短期間の昏睡状態の後に意識を取り戻すが、他の患者は、意識障害(DoC)という名称で総称される特定の状態のままである。意識障害を有する患者は、意識があるという明確な兆候がない状態で覚醒状態が保たれ、周囲の人間との意思疎通が依然として不可能であることを特徴とする。
【0003】
たとえば、植物状態/無反応覚醒症候群(VS/UWS)の患者は、目を開けていても、感覚刺激に対する意識反応を示さない。患者が、たとえば目の追跡のように、不安定ではあるが再現可能な非反射性挙動の名残の兆候を示す場合、彼らは最小意識状態(MCS)にあると考えられる。意識障害を有する患者の診断判断は、主に、ベッドサイドでの運動活動および動眼挙動の観測に基づく。しかし、非反射性挙動の評価は、患者が注意力の点で安定しておらず、意識および/または感覚機能障害、小さく消耗し易い運動活動および痛覚に苛まれ得ることにより、明快ではなく、意識レベルの過小評価が招かれ得る。この議論において、意識および意識回復の可能性を正確に判断することは、実用的かつ道徳的に大きな価値を持つ。予後の問題に加えて、意識の誤診断は、たとえば不十分な疼痛管理または無意識と思われる患者との不十分/不適切な意思疎通など、他の劇的な結果を招き得る。
【0004】
臨床検査は、任意の神経学的な判断の根拠であることが認識されているが、これは多くの場合、不十分であることも知られている。誤診断は、たとえば不十分な疼痛管理、予後の過小評価、および不適切な終末期判断などの重大な結果を招き得る。また、挙動のみに基づく診断は、正しく行われた場合でも、完全に正確ではなく、ひそかに意識を有し得る一部の患者を誤って分類することがある。
【0005】
また、たとえば全ての型の末梢または中心閉込め症候群、精神医学的および神経学的な型の緊張症、または主な型の無気力症(たとえば深刻な憂鬱)など、意識(意識状態および意識疎通)および認知能力の評価を必要とする他の病理も存在する。
【0006】
過去の研究によると、神経画像処理および神経生理学ツールは、比較的正確な患者診断および臨床成果の予測を提示することが示された。
【0007】
しかし、たとえば機能MRIなどの神経画像処理および神経生理学的技術は、一般に、特に植物状態/無反応覚醒症候群や最小意識状態の患者に対する実施が複雑である。神経生理学的技術を用いると、患者に感覚刺激を与えるために患者を動かす必要なく、神経生理信号が現場で取得され得る。しかし、このタスクに必要な精度レベルにより、神経生理信号は、高い空間密度(すなわち高密度EEG)で取得される必要があり、貴重な計算能力を必要とする大量の生データが生成されることにより、多くの場合、現場でデータを分析することはできない。
【0008】
感覚刺激は、刺激される被験者の認知プロセスを誘発するように構成される。人間の脳は、たとえば事象Aの後には常に事象Bが続き、事象Cが続くことはないというような、その環境におけるパターンまたは規則性を抽出する能力を有する。脳は、自動的に、すなわち被験者が注意を向けていない場合、または認識閾値未満の刺激が与えられる場合でも、起こり得る遷移を検出することができる。規則(または規則性)違反に対する自動的な脳の反応は、刺激が密接または局所的な時間的近傍(すなわち数秒以内)で起こる場合にも検出され得る。ミスマッチ反応は、被験者が無意識の場合でも、たとえばメロディやリズムなどの複雑なシーケンスによって生じることがあり、脳波データ上で事象関連電位(ERP)として測定可能である。過去の研究によると、患者に様々な刺激を与えるためにカスタマイズ可能なソフトウェアを実行するマッキントッシュまたはウィンドウズPCが用いられた。そのようなデスクトップコンピュータは、計算能力が高く、高い制御性かつ高精度で様々な刺激を与えることができるが、これらのシステムは、金銭的コストおよび移動コストの両方を伴う。
【0009】
Kuziec氏他は、著作した論説(”Transitioning EEG experiments away from the laboratory using a Raspberry Pi 2“、Journal of neuroscience methods,277(2017)、75~82)において、認知刺激の投与においてデスクトップPCの代わりに小型かつ低コストのRasperry Pi 2コンピュータを用いる刺激の提供を提案する。しかし、そのようなシステムは、刺激トリガ開始タイミング品質の変動が大きく、先行の事象関連電位の振幅および測定値に干渉することが示された。この刺激トリガの変動は、著者によると、Rasperry Pi 2の低速プロセッサおよびそこで実行するオペレーションシステムの種類に関連するものであった。
【0010】
このような状況において、本明細書で説明する本発明は、高い制御性かつ精度で様々な感覚刺激を与えると同時に、安定性の高い刺激トリガ開始タイミングを取り入れることが可能な小型かつ低コストのソリューションを提案する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、被験者の認知および意識を自動評価するためのシステムに関し、上記システムは、マイクロコントローラと、デジタルアナログ変換器と、少なくとも1つの感覚刺激要素とを備え、刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、刺激パラダイムに従う感覚刺激を出力として生成し、刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号を、生理信号の取得のためのデバイスに送信することにより、刺激のためのシステムを生理信号の取得のためのデバイスと取得中に同期させるように構成される。有利な点として、オペレーティングシステムをホストしないマイクロコントローラを使用することにより、高速の計算が可能になり、刺激のためのシステムと、生理信号の取得のためのデバイスとの良好な同期が可能になる。
【0012】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは、刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、対応する刺激デジタル出力を生成するように構成される。
【0013】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは更に、物理的サポートを介して生理信号の取得のためのデバイスに送信される同期信号をデジタル出力として生成するように構成される。
【0014】
1つの実施形態によると、同期信号は、感覚刺激の少なくとも1つの刺激の始まりを関連生理信号でタイムロックするように構成された時間タグである。
【0015】
1つの実施形態によると、生理信号の取得のためのデバイスは、脳波デバイス、心電デバイス、呼吸監視デバイス、瞳孔測定デバイス、または皮膚コンダクタンス測定デバイスである。
【0016】
1つの実施形態によると、デジタルアナログ変換器は、刺激デジタル出力を受信し、感覚刺激要素を用いて刺激パラダイムに従う感覚刺激を生成するように構成される。
【0017】
1つの実施形態によると、感覚刺激要素は、聴覚刺激、視覚刺激、および/または触覚刺激を提供するように構成される。
【0018】
本発明のシステムは、有利な点として、複数の感覚刺激モダリティを用いて患者の反応を試験することを可能にする。これにより二重の利点が示され、第1に、患者が感覚障害を有する場合に適切なモダリティを用いることが可能である。しかし、より重要な点として、それ自体が意識プロセスの顕著な特徴を示す、患者のマルチモーダルな感覚情報の統合性を試験することが可能である。
【0019】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは、事前プログラムされ、プログラム可能である。
【0020】
1つの実施形態によると、刺激パラダイムに関する情報は、刺激パラダイムの種類に関する情報および少なくとも1つの刺激パラダイムパラメータを備える。
【0021】
1つの実施形態によると、システムは、ユーザインタフェース、特にスクリーンタッチを備え、これを介してユーザは、生成される刺激パラダイムを選択する。
【0022】
1つの実施形態によると、システムは、専有不揮発性メモリを更に備える。
【0023】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラの刺激デジタル出力は、外部刺激デバイス、特に体性感覚刺激を伝達するように構成された電気刺激デバイスによって受信される。
【0024】
本発明の他の態様は、
-患者に関する臨床情報を受信するステップと、
-患者に関する臨床情報に基づいて取得された少なくとも1つの刺激パラダイムの選択を受信するステップと、
-上述した実施形態のいずれか1つに記載のシステムが、上記刺激パラダイムおよび刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号に従って感覚刺激を生成するように、選択された刺激パラダイムに関する情報を備える入力をシステムに送信するステップと、
-刺激の生成中に患者の生理信号を取得する生理信号の取得のためのデバイスに同期信号を送信するステップと、
-選択された刺激パラダイムに関する情報、取得された生理信号、および/または同期信号を格納のためにデータベースに転送するステップと、
を備える、認知評価のために被験者を刺激するための方法に関する。
【0025】
1つの実施形態によると、本発明の方法は、コンピュータ実装方法である。
【0026】
1つの実施形態によると、方法は、取得された生理信号および同期信号を分析するステップを更に備える。
【0027】
1つの実施形態によると、生理信号は、心電信号、脳波信号、呼吸速度、皮膚電気活動信号、および/または瞳孔径測定値である。
【0028】
1つの実施形態によると、臨床情報は、臨床データベースまたはユーザによって提供され、ユーザによって提供された臨床情報は、臨床データベースに更に保存される。
【0029】
1つの実施形態によると、方法は、分析ステップの結果および選択された刺激パラダイムに関する情報を備えるレポートを生成するステップを更に備える。
【0030】
本発明は更に、コンピュータによってプログラムが実行されると、コンピュータに、上述した実施形態のいずれか1つに記載の方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータプログラムに関する。
【0031】
本発明は更に、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、上述した実施形態のいずれか1つに記載の方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0032】
本発明の主な利点は、たとえばMRIなどの他の神経画像処理技術と比べて、時間分解能、能動パラダイム、重症のICU患者に対するベッドサイドでの容易な使用を考慮する、意思疎通のできない患者の認知プロセスを解明する能力、および、患者の室内に設置するように構成されたシステムにより、繰返しの判断を伴う長期的な経過観察を行うことが可能な点である。
【0033】
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0034】
-「電極」とは、回路の非金属部分、好適には被験体との電気的接続を確立するために用いられる導体を指す。たとえば、EEG電極は、多くの場合、塩化銀コーティングで覆われたステンレス鋼、錫、金、銀で作られた小さな金属円盤であり、特定の位置で頭皮に設置される。
【0035】
-「心電信号」とは、心臓の電気伝導を記録する信号を指す。上記心信号は、たとえば、心電図(EKGまたはECG)またはエンドカルディオグラムであってよい。そのような信号は、リードと呼ばれる1または複数のチャネルを有し得る。信号は、短期間(標準的なEKGにおいて10秒間)または長期間(ホルタにおいて数日間)であってよい。
【0036】
-「脳波図」または「EEG」とは、頭皮から脳の電気活動を記録することによる脳波のトレースを指し、脳波計によってなされる。
【0037】
-「脳波計」とは、脳波を増幅させ記録するための装置を指す。
【0038】
-「ミスマッチ陰性電位(MMN)」とは、(一般に聴覚領域における)感覚刺激シーケンスによって確立される規則違反に対する脳反応を指す。ミスマッチ陰性電位は、連続的な刺激の自動的な比較を行う脳の能力を反映し、知覚学習および知覚精度の電気生理学的指標を提供する。
【0039】
-「マイクロコントローラ」とは、埋込型システムにおける特定の動作を統治するように設計された小型集積回路を指す。典型的なマイクロコントローラは、プロセッサ、メモリ、および入力/出力周辺機器を単一チップ上に含む。
【0040】
-「P300波」とは、意思決定のプロセスにおいて引き出される事象関連電位(ERP)成分を指す。具体的には、P300は、刺激の評価または分類に伴うプロセスを反映すると考えられる。
【0041】
-「被験者」とは、哺乳類、好適には人間を指す。本発明の意味では、被験者は患者、すなわち治療を受けている、医療処置を受けている、または受けていた、あるいは病気の進行を監視されている人間であってよい。
【0042】
本発明の特徴および利点は、本発明に係る被験者を刺激するためのシステムおよび方法の実施形態に関する以下の説明から明らかになることになり、この説明は、単に一例として、かつ添付図面を参照して与えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】1つの実施形態に係る、被験者の認知および意識を自動評価するためのシステムの概略図である。
図2】1つの実施形態に係る、認知評価のために被験者を刺激するための方法によって実施されるステップのブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、被験者の認知および意識を自動評価するためのシステムに関する。システムは、少なくとも1つのマイクロコントローラ、デジタルアナログ変換器、および少なくとも1つの感覚刺激要素を備える。システムは、刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、刺激パラダイムに従う感覚刺激を出力として生成するように構成される。1つの実施形態において、刺激パラダイムは、刺激される被験者の認知プロセスを誘発するように構成された少なくとも1つのパターンの感覚刺激を備える。
【0045】
一般に、マイクロコントローラ(MCU)は、オペレーティングシステムなしでプログラムを格納および実行するオンチップ埋込型フラッシュメモリを用いる。このようにプログラムを格納することは、MCUが短い起動期間を有し、迅速にコードを実行することを意味する。オペレーティングシステムがない場合、マイクロコントローラは、一度に1つの制御ループのみを実行し得る。ソフトウェアの観点から見ると、これは、マイクロコントローラのプロセッサまたは中央処理ユニット(CPU)において単一スレッドが実行していることを意味する。MCUの目的は、多くの場合、非常に単純な制御ループを永遠に、または故障あるいは停止するまで実行する電子デバイスを制御することである。マイクロコントローラは、たとえばマイクロプロセッサが一般にオペレーティングシステムを実行するという点で、マイクロプロセッサとは事実上異なる。オペレーティングシステムは、複数のプロセスが複数のスレッドを介して同時に実行することを可能にするが、マイクロプロセッサの性能は、オペレーティングシステムに直接的に依存する。
【0046】
また、MCUは、必要な構成要素の全てを単一チップ上に有し、タスクを行うために外部回路を必要としないので、マイクロコントローラは、埋込型システムにおける使用頻度が高い。対照的に、マイクロプロセッサは、1または複数の集積回路においてCPUのみを内部に有する。マイクロコントローラと同様、マイクロプロセッサはRAM、ROM、および他の周辺機器を有さない。マイクロプロセッサは、動作のために外部の周辺機器回路に依存する。
【0047】
本発明において、標準的なコンピュータの主要構成要素であるマイクロプロセッサと異なる複数の態様により、マイクロコントローラを用いることが選択される。
【0048】
1つの実施形態において、システムは、刺激のためのシステムと生理信号の取得のためのデバイスとを取得中に時間同期させるために、生理信号の取得のためのデバイスに、刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号を送信するように更に構成される。時間同期により、生理信号の分析中、監視されている生理活動に対する、感覚刺激によって誘発される認知プロセスの影響を識別することが可能である。
【0049】
時間同期は、認知プロセスの推定のために実に重要である。外部刺激によってトリガされる脳活動のロバストな定量化を得るために、外部刺激と同期信号との間のレイテンシは、ミリ秒単位でなくてはならず、時間的に極めて安定している必要がある。マイクロコントローラを有利に用いることにより、視覚刺激に関してミリ秒、聴覚刺激に関してマイクロ秒の精密性の安定したタイミング精度を保証することが可能である。対照的に、コンピュータ(すなわちマイクロプロセッサ)は、コンピュータの実行を絶え間なく制御するためにオペレーティングシステムおよび外部デバイスと連携する必要があり、オペレーティングシステムまたは他のデバイスが、常時、制御を引き継ぐことができる。これにより、オペレーティングシステムのタスクが完了する間、刺激シーケンスが遅延または中断される。また、遅延の性質および量は、マイクロプロセッサの種類およびオペレーティングシステムの種類に依存する。したがって、コンピュータが、
-刺激パラダイムを受信し、上記刺激パラダイムに従う感覚刺激および刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号を生成すること、
-刺激の生成中、患者の生理信号を取得する生理信号の取得のためのデバイスに同期信号を送信すること、および
-選択された刺激パラダイムに関する情報、取得された生理信号、および/または同期信号を格納のためにデータベースに転送すること
で構成される方法を実際に実装し得る場合でも、各コンピュータが各々のタイミングで実行することにより、様々なコンピュータから収集されたデータの乱れを招く変動が生じる。実際、表1(2020年7月7日にウェブサイトhttps://support.pstnet.com/hc/en-us/articles/360008833253から取得したデータ)に示すように、コンピュータは、均一な遅延を提示しない。
【0050】
実際、コンピュータは、この問題を修正し、取得したデータのタイムスタンプと、刺激パラダイムの実際のタイミングとを再同期するために、(補足同期信号を提供する写真またはオーディオセンサを含む)追加のエクストラループに結合される必要がある。
【0051】
同じマイクロコントローラを用いることにより、有利な点として、コンピュータ間の変動性の問題を解消し、より高い精度を得ることが可能である。
【0052】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは、刺激パラダイムに関する情報を入力として受信し、対応する刺激デジタル出力を生成するように構成される。
【0053】
1つの実施形態によると、刺激パラダイムに関する情報は、刺激パラダイムの種類および少なくとも1つの刺激パラダイムパラメータに関する情報を備える。刺激パラダイムの種類は、たとえばオッドボールパラダイムなどの「ローカル-グローバル」パラダイムであってよい。聴覚オッドボールパラダイムは、各刺激試行において刺激シーケンスが提示されるパラダイムである。シーケンスは、特定の回数繰り返される標準的な刺激と、後続する逸脱した刺激とで構成される。シーケンスの全ての刺激が標準的である条件と比較すると、一般に、ミスマッチ陰性電位の発生が明らかになる。重要な点として、ブロック内で逸脱したシーケンスの頻度が非常に高い場合、被験者は、最後の刺激を逸脱した刺激と予想する。したがって、シーケンスは、グローバルレベルで(すなわち実験ブロック全体で)標準的であり、ローカルレベルで(すなわち単一の試行内で)逸脱である。ローカル標準シーケンスは、グローバルな逸脱となり、P300成分の発生をトリガする。典型的な聴覚オッドボールパラダイムは、様々な神経反応を生成するために修正することができるので、臨床試料における感覚および認知プロセスの機能障害を調査するために用いられ得る。用いられ得る刺激パラダイムパラメータは、各刺激試行を区切る時間、または1回の試行における刺激間の期間である。刺激パラダイムに関する情報は、ユーザ、特に医療従事者によって選択され得る。
【0054】
1つの実施形態によると、システムは、遠隔から、少なくとも1つの新たな刺激パラダイムに関する情報で更新されるように構成される。この有利な特徴により、本発明は、利用可能なプロトコル(すなわち刺激パラダイム)の数が固定されず、たとえば新たなプロトコルをダウンロードする簡単なステップによって時間内に追加され得るという柔軟なシステムである。
【0055】
1つの実施形態によると、システムは、ユーザインタフェース、特にスクリーンタッチを更に備え、これを介してユーザは、生成される刺激パラダイムを選択する。一例において、ディスプレイは、Gameduino3(FT810 GPU)である。
【0056】
1つの実施形態において、ユーザインタフェースは、刺激パラダイムの種類および刺激パラダイムパラメータに関する様々な選択肢を選択するためのメニューを表示するように構成される。一例において、ユーザインタフェースは、デバイスの状態およびたとえばバッテリ充電情報などの任意の関連情報を提供するようにも構成される。
【0057】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは更に、物理的サポートを介して生理信号の取得のためのデバイスに送信される同期信号をデジタル出力として生成するように構成される。
【0058】
1つの実施形態によると、同期信号は、感覚刺激の少なくとも1つの刺激の始まりを関連生理信号でタイムロックするように構成された時間タグである。
【0059】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは、被験者の認知および意識を自動評価するためのシステムにおける埋込型システムとして用いられる。
【0060】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは、メモリおよびプログラムの長さに関して最小限の要件しか有さず、オペレーティングシステムを伴わず、ソフトウェア複雑性が低い。
【0061】
1つの実施形態において、マイクロコントローラは、コンピュータプロセッサのための縮小命令セットコンピューティング(RISC)アーキテクチャ群であるアドバンスドRISCマシン(ARM)である。RISCアーキテクチャを用いるプロセッサは、一般に、複雑命令セットコンピューティング(CISC)アーキテクチャを用いるプロセッサ(たとえば多くのパーソナルコンピュータに用いられるx86プロセッサなど)よりも少ないトランジスタしか必要とせず、コスト、電力消費、および熱放散が改善される。ARMマイクロコントローラの使用は、軽量で持運び式のバッテリ充電型システムを得るために有利である。
【0062】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラは、事前プログラムされ、プログラム可能である。具体的には、マイクロコントローラは、マイクロコントローラプログラムに適合するように構成された利用可能なオンチップメモリを有し、このメモリは、製造所でのみプログラム可能な永久読取専用メモリであってよく、または現場で変更可能なフラッシュまたは消去可能読取専用メモリであってよい。
【0063】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラはArduino Dueであり、これは、32ビットのARMマイクロコントローラであるAtmel SAM3X8Eをベースにしたマイクロコントローラボードである。これは、入力または出力の両方の機能を果たし得る54のデジタルピンを含む。これらのデジタルピンのうちの12は、パルス幅変調(PWM)出力を生成するために用いられ得る。Arduino Dueモジュールは、12のアナログ出力を含む自動プロジェクトのために必要な全てのものを一括で含む。Arduinoモジュールは、組込み型の周辺機器、および単一チップ上で複数の機能を実行する能力を備えるという利点を有する。また、Arduinoモジュールには組込み型バーナが付いているため、外部バーナは必要ではない。さらに、有利な点として、Arduino Dueは約3.3Vの低電圧で動作する。選択されたマイクロコントローラの低い電力消費量により、システムは、再充電可能なバッテリで動くことが可能であり、有利な点として、生理信号の取得のためのデバイスとの電気的干渉を低減することが可能である。
【0064】
1つの実施形態によると、デジタルアナログ変換器は、刺激デジタル出力、すなわちマイクロコントローラによる出力として生成されたデジタルデータを受信し、感覚刺激要素を用いて刺激パラダイムに従う感覚刺激を生成するために感覚刺激要素に送信されるアナログ信号に変換するように構成される。
【0065】
1つの実施形態によると、本発明のデジタルアナログ変換器は、2チャネル低電力DAC(デジタルアナログ変換器)である。低い電力消費量により、システムは、再充電可能なバッテリで動くことが可能であり、有利な点として、生理信号の取得のためのデバイスとの電気的干渉を低減することが可能である。
【0066】
1つの実施形態によると、感覚刺激要素は、聴覚刺激、視覚刺激、および/または触覚刺激を提供するように構成される。一例において、患者は、聴覚刺激などの1種類の感覚刺激のみを用いて刺激されてよく、あるいは、患者は、様々な種類の感覚刺激で同時にまたは連続的に刺激されてよい。複数の感覚モダリティ(聴覚、視覚、触覚、クロスモーダル)の使用により、意識的な知覚プロセスを検出する高感度を実現することが可能である。これにより、有利な点として、フルマルチモーダルな神経生理学的予後判断手順を実施することが可能である。
【0067】
1つの実施形態において、視覚刺激のための感覚刺激要素は、各視野に個別にカスタム視覚刺激を表示することを可能にする少なくとも2つのLEDマトリックスを備える。一例において、LEDマトリックスは、8×8のマトリックスに配列された3色LEDを備える。
【0068】
1つの実施形態において、触覚刺激のための感覚刺激要素は、100以上の異なる効果をもたらすことが可能な2つの触覚運動コントローラを備え、カスタマイズ効果をもたらすことが可能である。
【0069】
1つの実施形態によると、マイクロコントローラの感覚デジタル出力は、外部刺激デバイス、特に体性感覚刺激を伝達するように構成された電気刺激デバイスによって受信される。一例において、独立したCEマーク付き電気刺激器が用いられ得る。
【0070】
一例において、感覚刺激要素は、聴覚刺激を生成するように構成され、特に、WAVファイルを再生するように構成されたステレオである。デジタルアナログ変換器は、たとえばUDA1334ATSなどの2チャネル低電力オーディオDACである。この例において、システムは更に、カスタムセットアップにおけるオーディオ増幅器(チャネルごとに105mWの伝達が可能なLM4808Mデュアルオーディオ電力増幅器)を備える。
【0071】
1つの実施形態によると、システムは更に、有線または無線TCP/IPネットワーク(インターネット/イントラネット)を介して中央サーバへのアクセスが可能であるように構成されたネットワーク通信を備える。この実施形態において、ネットワーク通信は、開始時間、プロトコル(すなわち刺激パラダイムの種類および少なくとも1つの刺激パラダイムパラメータ)、および他の関連情報を示す、新たな刺激が行われることを中央サーバに示すために用いられる。あるいは、ネットワーク通信は、サーバから更新情報をダウンロードすることによってシステム上で利用可能な刺激パラダイムを更新するためにも用いられ得る。
【0072】
1つの実施形態によると、生理信号の取得のためのデバイスは、脳波デバイスである。
【0073】
1つの実施形態によると、脳波デバイスは、マルチチャネル脳波信号を取得するために被験者の頭皮の所定のエリアに配置された複数の電極を備える。1つの実施形態によると、脳波デバイスは、少なくとも4、8、10、15、16、17、18、19、20、21、32、64、128、または256の電極からの脳波信号を取得するように構成される。1つの実施形態によると、電極は、10-10または10-20系の濃密配列配置、または当業者によって知られる他の任意の電極配置に従って頭皮に配置される。電極モンタージュは、単極性または双極性であってよい。好適な実施形態において、電極は、双極性モンタージュにおける10-20系に従って配置される。1つの実施形態において、複数の電極は、乾電極または半乾電極である。電極材料は、たとえばステンレス鋼または銅などの金属、たとえば、金、銀(銀/塩化銀)、錫などの不活性金属であってよい。電極は、可撓性、事前成形、または剛性であってよく、たとえばシート状、長方形状、円形状、または装着者の皮膚との接触を促す他の形状など、任意の形状であってよい。好適な実施形態において、電極は、テキスタイル電極である。上記実施形態において、様々な種類の適切なヘッドセットまたは電極システムが、そのような神経信号を取得するために利用可能である。異なる様々な臨床用EEG記録デバイスにシステムを接続することが可能であれば、本システムを取り入れる範囲を、様々な病院および医院に存在する様々な技術構成に拡大することができる。
【0074】
1つの実施形態によると、生理信号の取得のためのデバイスは、心電デバイスである。1つの実施形態によると、心電デバイスは、標準的な12リードデバイスである。
【0075】
1つの実施形態によると、生理信号の取得のためのデバイスは、たとえば呼吸速度などの呼吸信号を測定するように構成される。呼吸速度は、患者の監視において一般的に実施される光ファイバ呼吸速度センサ、インピーダンスニューモグラフィ、またはカプノグラフィを用いて測定され得る。呼吸速度は、心電信号、光電式指尖容積脈波信号、および加速度測定信号によって行われる測定から間接的に推定されてもよい。
【0076】
1つの実施形態によると、生理信号の取得のためのデバイスは、瞳孔径および反応度を測定するように構成される(すなわち瞳孔測定デバイス)。
【0077】
1つの実施形態によると、生理信号の取得のためのデバイスは、皮膚の電気特性の連続的な変化をもたらす人体の特性である、皮膚コンダクタンスとしても知られている皮膚電位(EDA)を測定するように構成される。皮膚コンダクタンスは、意識的制御下になく、無意識レベルで人間の挙動、認知、および情緒状態を動かす交感神経作用によって自律的に変調される。皮膚コンダクタンスは、有利な点として、自律的な情緒の調整について直接的な識見を提供する。
【0078】
1つの実施形態によると、システムは、専有不揮発性メモリコントローラおよびメモリ、特に、たとえば一般的なマイクロSDカードを有するAdafruitマイクロSDカードブレークアウトボードなどのマイクロSDコントローラを更に備える。
【0079】
図1は、マイクロコントローラ11、デジタルアナログ変換器12、および少なくとも1つの感覚刺激要素13を備えるシステム1の1つの実施形態の概略図を提供する。この例解されている実施形態において、刺激パラダイムによって決定された同期信号10は、生理信号2の取得のためのデバイスである脳波デバイスに送信される。
【0080】
本発明は更に、複数のステップを備える、認知評価のために被験者を刺激するための方法に関する。
【0081】
図2中のブロック線図に例解されているように、1つの実施形態によると、方法の第1のステップは、患者に関する臨床情報の受信100に存する。
【0082】
1つの実施形態によると、臨床情報は、医療データベースまたはユーザによって提供され、ユーザによって提供された臨床情報は、臨床データベースに更に保存される。臨床情報は、ユーザ、特に医療従事者によって、ディスプレイ上で視覚化され得る。
【0083】
1つの実施形態によると、方法は更に、患者に関する臨床情報に基づいて取得された少なくとも1つの刺激パラダイムを選択するステップ101を備える。一例において、刺激パラダイムは、先に視覚化された臨床情報に基づいてユーザによって選択される。
【0084】
1つの実施形態において、方法は更に、上述した実施形態のいずれか1つに従って、選択された刺激パラダイムに関する情報を備える入力をシステムに送信するステップ102を備え、それによってシステムは、上記刺激パラダイムおよび刺激パラダイムによって決定された少なくとも1つの同期信号に従って感覚刺激を生成する。情報は、ユーザが臨床情報を視覚化したコンピュータにおいて選択され、無線で、または物理ケーブルを介してシステムに送信され得る。あるいは、情報は、システムのスクリーンタッチ上で所望の刺激パラダイムを直接選択することによって、ユーザによってシステムへ直接送信され得る。
【0085】
1つの実施形態において、方法は更に、刺激の生成中に患者の生理信号を取得する生理信号の取得のためのデバイスに同期信号を送信するステップ103を備える。1つの実施形態において、同期信号は、たとえばケーブルなどの物理的サポートを介して送信される。
【0086】
1つの実施形態において、方法は更に、選択された刺激パラダイムに関する情報、取得された生理信号、および/または同期信号を格納のためにデータベースに転送するステップ104を備える。
【0087】
1つの実施形態によると、方法は、取得された生理信号および同期信号を分析するステップ105を備える。1つの実施形態によると、分析ステップ105は、現在利用可能な生理信号の取得のためのデバイス(たとえば様々な製造元のEEGデバイス)によって生成された任意の種類の信号の分析が可能であるように構成される。
【0088】
1つの実施形態において、生理信号の分析は、昏睡状態および関連障害から患者が回復する意識レベルを推定するように構成される。本方法は、有利な点として、患者の現在および未来の意識状態に関する詳細情報を臨床医および介護者に提供する。1つの実施形態によると、生理信号は、心電信号、脳波信号、呼吸速度および/または瞳孔径測定値である。
【0089】
本発明の方法に係る生理信号の分析による意識および認知能力の評価は、(たとえば心停止後の)無酸素脳症、脳外傷、虚血性または出血性脳卒中、代謝性脳症、脳炎または髄膜脳炎、(アルツハイマー病および関連障害を含む)神経変性疾患、および(ADHD、統合運動障害、発語障害、および関連症候群を含む)神経発達障害などの脳障害の診断に用いられ得る。
【0090】
1つの実施形態によると、方法は、分析ステップの結果および選択された刺激パラダイムに関する情報を備えるレポートを生成するステップを備える。特に、レポートは、レビューのためにユーザ(すなわち臨床医および介護者)に送信される。レポートは、有利な点として、EEG分析の結果からのフィードバックを提供し、ユーザがより適切な刺激プロトコルに着手することを可能にする。これは、刺激のパラメータを適合させ、またはより明確な認知刺激を与え、患者の適正な意識状態を更に良好に評価することを意味する。
【0091】
また、分析ステップ105は、本発明のシステムによって直接行われてよく、あるいは取得された生理信号および同期信号が遠隔サーバに転送されてよく、臨床医は、それらのデータを単純な方法でアップロードし、数分以内に、分析ステップの結果および選択された刺激パラダイムに関する情報を備えるレポートを受信することができる。1つの実施形態において、サーバはウェブサーバである。1つの実施形態によると、ウェブサーバは、手軽にユーザに送信され、ユーザが自身のブラウザでレビューすることが可能な単一ファイル内に、分析ステップ105によって取得された値、統計、画像、およびインタラクティブ要素の全てを含むHTMLレポートを提供する。
【0092】
様々な実施形態が説明および例解されてきたが、この詳細な説明は、これに限定されるものと解釈されてはならない。特許請求の範囲によって定義される本開示の適正な主旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって実施形態への様々な修正がなされ得る。
【符号の説明】
【0093】
1-システム
2-生理信号の取得のためのデバイス
10-同期信号
11-マイクロコントローラ
12-デジタルアナログ変換器
13-感覚刺激要素
100-患者に関する臨床情報を受信するステップ
101-患者に関する臨床情報に基づいて取得された少なくとも1つの刺激パラダイムの選択を受信するステップ
102-選択された刺激パラダイムに関する情報を備える入力をシステムに送信するステップ
103-生理信号の取得のためのデバイスに同期信号を送信するステップ
104-格納のためにデータベースに情報を転送するステップ
105-取得された生理信号および同期信号を分析するステップ
図1
図2
【国際調査報告】