(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】高アスペクト比の部分を有する金属製の構成部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/38 20210101AFI20221128BHJP
C22C 45/10 20060101ALI20221128BHJP
C22C 45/00 20060101ALI20221128BHJP
B22F 1/08 20220101ALI20221128BHJP
C22C 1/04 20060101ALI20221128BHJP
B22F 10/14 20210101ALI20221128BHJP
B22F 10/16 20210101ALI20221128BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20221128BHJP
B22F 5/10 20060101ALI20221128BHJP
B22F 5/00 20060101ALI20221128BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221128BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221128BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221128BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20221128BHJP
B22F 10/34 20210101ALI20221128BHJP
【FI】
B22F10/38
C22C45/10
C22C45/00
B22F1/08
C22C1/04 C
C22C1/04 E
B22F10/14
B22F10/16
B22F10/20
B22F5/10
B22F5/00 Z
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
B22F10/28
B22F10/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520541
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020078390
(87)【国際公開番号】W WO2021069651
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520131303
【氏名又は名称】ヘレウス アムロイ テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】ストルペ、モリッツ
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA13
4K018AA14
4K018AA24
4K018BA01
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA07
4K018BA08
4K018BA13
4K018BB07
4K018HA03
4K018HA05
4K018HA10
4K018KA01
4K018KA15
4K018KA61
4K018KA70
(57)【要約】
本発明は、金属製の成形体を製造するための方法に関し、成形体は、(i)金属製の基板と、(ii)金属製の基板に存在する、高アスペクト比を有し、且つアモルファス金属合金を含有する部分と、を含み、アモルファス金属合金を含有する高アスペクト比の部分は、付加製造によって、金属製の基板に設けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の成形体を製造するための方法であって、前記成形体は、(i)金属製の基板と、(ii)前記金属製の基板に存在する、高アスペクト比を有し、且つアモルファス金属合金を含有する部分と、を含み、
前記アモルファス金属合金を含有する高アスペクト比の前記部分は、付加製造によって、前記金属製の基板に設けられる、方法。
【請求項2】
前記金属製の基板は、非付加的な冶金法により製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非付加的な冶金法は、注型、機械加工、熱可塑性成形若しくは粉末冶金法、又は当該方式の内の少なくとも2つの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属製の基板は、結晶金属及び/又はアモルファス金属を含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属製の基板は、プレート、ケーシング、クラウンギヤ、又はフライスヘッドの切削領域である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記付加製造は、粉末床ベースのビーム溶融、クラッディング、液体金属噴射、押出成形、又はバインダジェッティングである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末床ベースのビーム溶融は、粉末床ベースのレーザ溶融又は電子ビーム溶融である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アモルファス金属合金を含有する、高アスペクト比の前記部分は、少なくとも10のアスペクト比を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アモルファス金属合金を含有する、高アスペクト比の前記部分は、0.05mmから50mmの範囲の材料厚さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アモルファス金属合金を含有する、高アスペクト比の前記部分は、中空体、特に管状の中空体、ロッド状の部分又は工具の刃若しくはブレードである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
高アスペクト比の前記部分に存在する前記アモルファス金属合金は、遷移金属ベースの合金、Alベースの合金、又はMgベースの合金である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記成形体は、ハーモニックドライブ伝動装置のフレクスプライン、フライスヘッド又は管状のブッシュが載置された歯車、医療用器具セット、外科用器具又はピンセットである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の基板と、この基板に設けられた高アスペクト比の部分とを含む金属製の成形体を製造するための方法に関する。
【0002】
アモルファス金属は、例えば高い強度及び硬度のような有利な機械的特性を有する。更に、アモルファス金属は、高い耐腐食性を示す。従って、アモルファス金属は、それらの特性が重要となる構成部品の製造にとって魅力的な材料である。
【0003】
つまり例えば、少なくとも部分的に薄壁の領域及び/又は高アスペクト比の領域を有する構成部品にとっては、それらの部分がアモルファス金属を含有する場合には有利であると考えられる。構成部品の用途に応じて、アモルファス金属が存在することによって、薄壁の部分の機械的挙動が、特にそれらの領域が比較的高い機械的負荷に晒されている場合には、場合によっては改善されることも考えられる。
【0004】
WO2012/031022A2には、アモルファス金属を含有する高アスペクト比の成形体の製造が記載されている。この製造は、熱可塑性成形によって行われる。その際、成形されるアモルファス金属未加工部材が、ガラス遷移温度と結晶化温度との間にある温度まで加熱され、プレス加工によって所望の形状にされる。熱可塑性のプレス加工では、雌型の使用が必要とされ、このことによっても、複雑な幾何形状の形成が困難になる。
【0005】
高アスペクト比の薄壁部分を有する構成部品は、例えば、ハーモニックドライブ伝動装置のいわゆるフレクスプラインである。薄壁で高アスペクト比を有する部分を備えた別の例示的な構成部品は、薄い刃又は薄いブレードを有する道具(例えば、メス)である。
【0006】
WO2015/156797A1には、アモルファス金属を含有するフレクスプラインを有するハーモニックドライブ伝動装置が記載されている。アモルファス金属製のフレクスプラインの製造は、熱可塑性成形又は注型によって行われる。
【0007】
US2016/339509A1には、注型による、アモルファス金属合金を含有する成形体の製造が記載されており、この製造では、溶融された金属合金が、相互に可動する2つの基板間に存在する間隙に注がれ、急速に冷却される。
【0008】
高いアスペクト比(即ち、材料厚さに対する高さの比についての高い値)を有するアモルファス構成部品では、注型法による製造が非常に困難である。使用される合金の溶融物が凝固してアモルファス化することを保証するために、十分に高い冷却速度が実現されなければならない。他方では、溶融物が、その溶融物の凝固前に、既に完全に成形型に充填されていることが望ましい。しかしながら実際には、多くの合金はそれら2つの要求(即ち、型を完全に充填しつつ、凝固してアモルファス化すること)を満たせないことが判明している。急速な冷却の過程において、溶融物の粘度が急激に上昇し、それによって、高いアスペクト比の構造体(例えば、薄壁の構造体又は狭い溝)の充填が困難になる。
【0009】
付加製造法によるアモルファス金属成形体の製造が公知である。
【0010】
WO2008/039134A1には、粉末床ベースのビーム溶融法による、金属アモルファス成形体の製造が記載されている。
【0011】
US2018/257141A1には、付加製造法による金属フレクスプラインの製造が記載されている。構成部品全体が、付加製造によって製造される。フレクスプラインの、中実に形成された比較的嵩のある底部プレートも付加製造法により製造されるので、フレクスプラインの製造には時間とコストが掛かる。
【0012】
DE102008012064A1には、マルチパーツの成形体を製造するための方法が記載されている。この方法では、先ず、注型又は機械加工によって基板又は基体が製造される。続いて、付加製造法により、基体の第1の表面に第1の部分が設けられ、基体を回転させ、回転させた基体の第2の表面に、付加製造により、別の部分が設けられる。付加製造される部分にアモルファス金属が使用されることは言及されていない。
【0013】
WO2018/148010A1には、タービンエンジンの構成部品を製造するための方法が記載されており、この方法では、鍛造された基板又は基体に、付加製造法によって、環状又は円錐状に成形された部分が設けられる。付加製造される円錐状の部分にアモルファス金属が使用されることは言及されていない。
【0014】
EP2957367A1には、成形体を製造するための方法が記載されており、この方法では、先ず基板ボディが準備され、この基板ボディに付加製造によって別の部分が付加され、それによって、最終的な成形体が得られる。
【0015】
本発明の課題は、高アスペクト比の部分を有する金属製の成形体を、可能な限り効率的に実施する(例えば、時間を節約してコスト効率よく実施する)ことができ、有利な機械的特性を有する構成部品をもたらす方法によって製造することである。
【0016】
この課題は、金属製の成形体を製造するための方法であって、成形体が、(i)金属製の基板と、(ii)金属製の基板に存在する、高アスペクト比を有し、且つアモルファス金属合金を含有する部分と、を含み、
アモルファス金属合金を含有する高アスペクト比の部分が、付加製造によって、金属製の基板に設けられる、方法によって解決される。
【0017】
好ましくは、金属製の基板は、非付加的な冶金法によって製造される。
【0018】
非付加的な冶金法は、例えば、注型、機械加工、熱可塑性成形又は粉末冶金法である。金属製の基板を製造するための例示的な粉末冶金法は、プレス加工(例えば、熱間プレス又は等方圧プレス、特に熱間等方圧プレス(HIP))、金属粉末射出成形及び/又は焼結である。非付加的な冶金法は、例えば、少なくとも2段階であってもよく、上述の方式の内の2つ以上を含んでもよい。例えば、金属製の基板の製造は、注型と、それに続く熱可塑性成形とを含む。
【0019】
付加製造の代わりに、従来の冶金法(例えば注型)によって金属製の基板を製造することで、時間が節約され、それに伴い方法全体のコスト効率も高まる。他方では、成形体の高アスペクト比を有する部分は、凝固してアモルファス化する金属合金を用いる付加製造によって製造されるので、従来の方法(例えば、注型法)によっては製造できない高アスペクト比のアモルファス構造、例えば薄壁の中空体を実現することができる。高アスペクト比の部分にアモルファス金属合金が存在することによって、この部分は、壁の厚みが少ない場合であっても、良好な機械的特性、特に高い弾性を有する。
【0020】
金属製の基板は、元素金属及び/又は金属合金を含有してもよい。当業者であれば、成形体の予定されている用途を考慮して、その一般的な専門知識に基づいて、適切な元素金属又は金属合金を選択することができる。
【0021】
本発明の枠内において、「金属」という用語には、元素金属も金属合金も含まれる。
【0022】
金属製の基板は、アモルファス金属(特にアモルファス金属合金)及び/又は(元素金属又は金属合金の形態の)結晶金属を含有することができる。また、本発明の枠内においては、金属製の基板が、母材として機能し、且つ結晶金属が分散されているアモルファス金属合金を含有することも可能である。
【0023】
例えば、金属製の基板は、アルミニウム又はアルミニウム合金、鋼、チタン又はチタン合金から製造されている。
【0024】
金属製の基板の具体的な形状は、成形体の予定されている用途に依存する。例えば、成形体の金属製の基板は、プレート(例えば、フレクスプライン又はケーシングの底部プレート)、クラウンギヤ、ケーシング、又はフライスヘッドの切削領域の形態である。基板は、例えば、医療用器具セット、外科用器具(例えばメス)、又はピンセットの一部であってもよい。
【0025】
高アスペクト比の部分を付加製造により設ける前に、金属製の基板に、任意で更に表面処理が施されてもよい。例えば、基板へのアモルファス金属合金の固着を改善する金属によるコーティングを施すことができる。
【0026】
金属製の基板は担体として機能し、この担体に、付加製造によって、高アスペクト比を有し、且つアモルファス金属合金を含有する部分が設けられる。金属製の基板は、本発明による方法によって製造される成形体の一部である。
【0027】
金属製のアモルファス構造を製造するための適切な付加製造法は、当業者には公知である。例えば、付加製造法は、粉末床ベースのビーム溶融、クラッディング(例えば、粉末クラッディング又はワイヤクラッディング)、液体金属噴射、押出成形、又はバインダジェッティングである。付加製造法は、例えば、規格EN ISO/ASTM 52921:2017にもまとめられている。好ましい実施形態では、高アスペクト比の部分の付加製造が、粉末床ベースのレーザ溶融又は電子ビーム溶融によって行われる。粉末床ベースのビーム溶融によるアモルファス金属成形体の付加製造は、例えば、L.Loeber等,Materials Today,Vol.16,2013年1月/2月,p.37以降に記載されている。
【0028】
付加製造法では、高アスペクト比の部分が、設定されたCADデータに基づいて、一層ずつ形成される。例えば、粉末床ベースのレーザ溶融又は電子ビーム溶融では、(好ましくは事前に非付加的な冶金法によって製造されている)金属製の基板が、相応の装置の構造空間に導入され、任意で適切な措置によって(例えば、金属製の基板を包囲する粉末床によって)構造空間に固定され、金属合金の粉末層が順に設けられ、その際、第1の粉末層が金属製の基板の表面に設けられ、設けられた各粉末層では、高アスペクト比の部分(例えば、中空体の壁部)を形成する領域における金属合金が、レーザビーム又は電子ビームの作用によって溶融され、続いて少なくとも部分的に凝固してアモルファス化する。
【0029】
付加製造法において凝固してアモルファス化することができる適切な金属合金は、当業者には公知である。
【0030】
例えば、アモルファス金属合金は、遷移金属ベースの合金、Alベースの合金、又はMgベースの合金である。遷移金属ベースの合金は、例えば、Zrベースの合金、Cuベースの合金、Feベースの合金、Tiベースの合金、Niベースの合金、又は貴金属ベースの合金(例えば、Ptベースの合金又はPdベースの合金)である。Zrベースの合金は、(原子%単位で)主成分としてZrを含有する合金である。換言すれば、Zrベースの合金では、Zrが、原子%単位で表すと最も高い濃度で存在する元素である。同じことが、他の上述の合金の他の合金にも当てはまる。つまり、例えば、Cuベースの合金は、(原子%単位で)銅を主成分として有する合金である。
【0031】
アモルファス金属合金についての概要は、例えば、以下の刊行物に記載されている。
-「Bulk Metallic Glasses - An OverView」,M.Miller及びP.Liaw編,Springer,p.2-17,p.210-222
-A.L.Greer,Materials Today,2009年1月-2月,Vol.12,p.14-22
-A.Inoue等,Materials,2010年(3),p.5320-5339
【0032】
凝固してアモルファス化する金属合金における元素の例示的な組み合わせは、以下の通りである。
-後期遷移金属及び非金属、ここでは後期遷移金属がベースになり、例えば、Ni-P、Pd-Si、Au-Si-Ge、Pd-Ni-Cu-P、Fe-Cr-Mo-P-C-Bである。
-前期遷移金属及び後期遷移金属、ここではいずれの金属もベースになることができ、例えば、Zr-Cu、Zr-Ni、Ti-Ni、Zr-Cu-Ni-Al、Zr-Ti-Cu-Ni-Beなどである。
-希土類金属を含むグループBから成る金属、ここでは金属Bがベースになり、例えば、Al-La、Al-Ce、Al-La-Ni-Co、La-(Al/Ga)-Cu-Niなどである。
-後期遷移金属を含むグループAから成る金属、ここでは金属Aがベースになり、例えば、Mg-Cu、Ca-Mg-Zn、Ca-Mg-Cuなどである。
【0033】
遷移金属ベースの合金は、1種以上の金属合金元素の他に、任意で更に1種以上のメタロイド(例えばB、Si、Ge、As、Sb若しくはTe、又はこれらの元素の内の少なくとも2種から成る組み合わせ)及び/又は1種以上の非金属元素(例えばP又はS)を合金元素として含有することができる。
【0034】
例えば、アモルファス金属合金は、Zr-Cu-Al-Nb合金であってもよい。好ましくは、このZr-Cu-Al-Nb合金は、ジルコンの他に、更に23.5~24.5重量%の銅、3.5~4.0重量%のアルミニウム並びに1.5~2.0重量%のニオブを有し、重量比が100重量%に補完される。後者の合金は、Heraeus Deutschland GmbHからAMZ4(登録商標)の名称で市販されている。別の例示的な実施形態では、アモルファス金属合金が、元素としてジルコン、チタン、銅、ニッケル及びアルミニウムを含有してもよい。好適な合金組成は、例えば、Zr52.5Ti5Cu17.9Ni14.6Al10及びZr59.3Cu28.8Al10.4Nb1.5であり、添字は、合金におけるそれぞれの元素の原子%を表す。合金の別のグループは、例えば、元素Zr、Al、Ni、Cu及びPdを含有してもよく、特にZr60Al10Ni10Cu15Pd5を含有してもよい。合金の別の適切なグループは、例えば、少なくとも85重量%のPt、並びにCu及び蛍光体を含有し、この場合、合金は更に、Co及び/又はニッケルを含有することができ、例えばPt57.5Cu14.5Ni5P23(添字は原子%単位)を含有してもよい。合金の他の適切なグループは、合金元素として硫黄を含有する遷移金属ベースの合金である。その種の硫黄含有遷移金属ベースの合金は、例えばEP3447158A1に記載されている。
【0035】
高アスペクト比の部分を形成する材料は、例えば、1種以上のアモルファス金属合金から形成されてよい。もっとも、本発明の枠内では、前述の部分がアモルファス金属合金の他に、更に結晶金属(例えば、1種以上の結晶金属合金)を含有することも可能である。例えば、アモルファス金属合金は、1種以上の結晶金属合金が分散されている母材として機能してもよい。この複合構造によっても、アモルファス金属の有利な特性がもたらされる。
【0036】
当業者に公知であるように、アモルファス金属合金は、動的な示差走査熱量測定(DSC)においてガラス転移を示し、また結晶状態に転移する際に発熱性の実熱量(結晶化エンタルピ)を示すが、その一方で、X線回折では明確な回折反射(ブラッグピーク)を認識することはできない。
【0037】
好ましくは、アモルファス金属合金を含有する高アスペクト比の部分は、50%未満、より好ましくは25%未満、更に好ましくは10%未満の結晶度を有するか、又は完全にアモルファスである。結晶化率は、DSCによって、前述の部分を形成する材料の結晶化エンタルピと、完全にアモルファスな(即ちX線ディフラクトグラムにおける回折反射(ブラッグピーク)を示さない)参照試料の結晶化エンタルピとの比として決定される。
【0038】
アモルファス金属合金を含有し、且つ高アスペクト比を有する、成形体の部分は、例えば中空体である。しかしながら本発明の枠内では、他の任意の幾何学形状も同様に可能である(例えば、ロッド状、ブレード状又は工具の刃)。
【0039】
金属製の基板に存在する高アスペクト比の部分の正確な形状は、成形体の予定されている用途に依存する。前述の部分は、付加製造法により製造されるので、必要に応じて、複雑な幾何形状を実現することもできる。
【0040】
例えば、中空体は、管状の中空体である。管は、円形の横断面を有してもよいし、角形又は多角形の横断面を有していてもよい。しかしながら本発明の枠内では、中空体の他の形状も考えられる。中空体は、閉じられた中空体であってもよいし、開かれた中空体であってもよい。中空体の壁部は、例えば、中実であってもよいし、格子構造の形態で形成されていてもよい。
【0041】
中空体の場合、その壁部は、アモルファス金属合金を含有する。
【0042】
好ましくは、アモルファス金属合金を含有する部分は、少なくとも10、好ましくは少なくとも20のアスペクト比を有する。例えば、アスペクト比は10~1000、好ましくは20~500の範囲にある。
【0043】
基板に存在する、成形体の部分のアスペクト比は、その部分の高さHと、その部分の最小材料厚さDminとの比から得られる。
【0044】
前述の部分が、例えば中空体(例えば、円筒状の中空体)である場合、最小材料厚さは、中空体の最小壁厚から得られる。即ち、成形体の金属製の基板に設けられた中空体は、好ましくは、高さH及び最小壁厚Dminを有し、ここでH/Dmin≧10、好ましくは≧20であり、例えば1000≧H/Dmin≧10又は500≧H/Dmin≧20である。
【0045】
本発明による方法は、金属製の基板に設けられた、高アスペクト比の部分が比較的薄い材料厚さを有する場合には特に有利である。
【0046】
例えば、アモルファス金属合金を含有する、高アスペクト比の部分の材料厚さは、0.05mm~50mm、好ましくは0.05mm~5mm、さらに好ましくは0.05mm~2mmの範囲である。即ち、前述の部分が中空体である場合、その壁厚は、例えば0.05mm~50mm、好ましくは0.05mm~5mm、さらに好ましくは0.05mm~2mmである。
【0047】
本発明による方法によって製造される成形体は、例えば、ハーモニックドライブ伝動装置のフレクスプライン、フライスヘッド又は管状のブッシュ(付加製造された中空体)が載置された歯車(非付加的に製造された金属製の基板)、医療用器具セット、外科用器具(例えばメス)又はピンセットである。
【国際調査報告】