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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】有機電気光学発色団
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20221128BHJP
   C07D 409/08 20060101ALI20221128BHJP
   C07D 307/68 20060101ALI20221128BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20221128BHJP
   C07F 7/12 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D409/08 CSP
C07D307/68
C09K11/06
C07F7/12 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520549
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 US2020054081
(87)【国際公開番号】W WO2021067815
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/911,067
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/934,398
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
【住所又は居所原語表記】4545 Roosevelt Way NE, Suite 400, Seattle, Washington 98105 US
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】エルダー,デルウィン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】シー,フアジュン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C071
4H049
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB05
4C063CC92
4C063DD75
4C063EE10
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC22
4C071DD04
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG01
4C071HH19
4C071JJ01
4C071JJ06
4C071LL05
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ57
4H049VQ61
4H049VQ66
4H049VR24
(57)【要約】
大きな超分極率を有する発色団、その発色団を含む電気光学活性を有するフィルム、及びその発色団を含む電気光学装置が開示されている。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式A:
の化合物であって、
ここで、
Aは、π-電子アクセプター基であり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
nは、1、2又は3であり、
nは、1、2又は3であり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
Qは、
又は
であり、
Jは、各場合に、独立して、S、O、又はNR8であり、
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリール、及び
Qが、
又は
であるとき、Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、及びZ2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、又は
Qが、
であるとき、Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A1:
で表され、
ここで、
Z2、Q、X、A、n、及びmは、請求項1で定義した通りであり、及び
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A2:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n及びmは、請求項1で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
R7は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC1-C10アルキルオキシ、置換されていてもよいC3-C10へテロアルキルオキシ、又はNR3R4であり、及び
R3及びR4は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A3:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n、及びmは、請求項1で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R3及びR4は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A4:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n、及びmは、請求項1で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R'は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物であって、Qが、
である、化合物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物であって、Qが、
であり、
ここで、
Jは、i S、O、又はNR8であり、及び
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである、
化合物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物であって、Qが、
であり、
ここで、
Jは、各場合に、独立して、S、O、又はNR8であり、及び
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである、
化合物。
【請求項9】
JがSである、請求項7又は請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物であって、Aが、
であり、
ここで、R'及びR "は、独立して、置換されていてもよいC1-C12アルキル(例えば、フッ素化アルキル)及び置換されていてもよいC6-C10アリール(例えば、フッ素化アリール)から選ばれ、及びG1、G2、及びG3は独立してF、CN、CF3、SO2CF3から選ばれる、
化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物であって、Aが、
である、化合物。
【請求項12】
mが1である、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
nが1である、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A5:
の化合物であり、
ここで、
Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A6:
の化合物であり、
ここで、
Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Z2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A7:
の化合物であり、
ここで、
Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Z2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである、
化合物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物は、カウンターパートの反応性基と反応したときに共有結合を形成できる1つ以上の反応性基を含む、化合物。
【請求項18】
前記1つ以上の反応性基が、(4+2)付加環化によって架橋可能な基である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物であって、前記Z1及びXの少なくとも1つが、
及びOSiR10R11R12
から選択される基で置換されており、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである、
化合物。
【請求項20】
L-YがH、OL1OSiR10R11R12、又はSL1OSiR10R11R12であり、ここで、L1が置換されていてもよいC2-C20アルキレン又は置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキレンであり、及びR10、R11、及びR12が独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである、請求項1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物であって、Xが、
又は
であり、
ここで、G4は、OSiR10R11R12であり、ここで、R10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールでであるか、又はG4は、
又は
であり、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)である、
化合物。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物であって、前記化合物は下記式A8:
の化合物であり、
ここで、
G6は、OR'又はNR'R"であり、ここで、R'及びR"は、独立して、置換されていてもよいC1-C10アルキルであり、
R1は、H又は置換されていてもよいC1-C10アルキルであり、
R2は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
Yは、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
ここで、R2、Y、及びG6のうちの少なくとも1つは、
及びOSiR10R11R12
から選択される基で置換されており、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである、
化合物。
【請求項23】
請求項1~22までのいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物が、下記の化合物I、化合物II、化合物III、又は化合物IV、化合物V、化合物VI、化合物VII、化合物VIII、化合物IX、化合物X、化合物XI、化合物XII、化合物XIII、化合物XIV、又は化合物XV:
であり、
ここで、TBDPSは、
である、化合物。
【請求項24】
請求項1~23に記載の化合物の1種以上を含む、電気光学活性を有するフィルム。
【請求項25】
前記フィルムがポリマーをさらに含む、請求項24に記載のフィルム。
【請求項26】
前記ポリマーがポリメチルメタクリレート(PMMA)である、請求項25に記載のフィルム。
【請求項27】
前記フィルムが約100pm/Vより大きいr33値を有する、請求項24~26のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項28】
前記フィルムが約1000pm/Vより大きいr33値を有する、請求項24~27のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項29】
前記フィルムが約105℃以上のTgを有する、請求項24~28のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項30】
電気光学活性を有するフィルムの成形方法であって、請求項1~23のいずれかに記載の化合物又は化合物を含む混合物を基材上にデポジットさせてフィルムを提供する工程、化合物の少なくとも一部が整列したフィルムを提供するために十分な温度でフィルムに整列力を加える工程、及びフィルムの温度を下げて電気光学活性を有するフィルムを提供する工程、を含む、成形方法。
【請求項31】
請求項1~23のいずれか1項に記載の化合物を含む、電気光学装置。
【請求項32】
請求項24~29のいずれか1項に記載のフィルムを含む、電気光学装置。
【請求項33】
1つ以上の電荷ブロッキング層をさらに含む、請求項31又は請求項32に記載の電気光学装置。
【請求項34】
前記1つ以上の電荷ブロッキング層が、ポリ(ベンゾシクロブテン)(BCB)、TiO2、MoO3、ZrO2、HfO2、SiO2、Al2O3、Si3N4、又はこれらの組み合わせを含む、請求項31に記載の電気光学装置。
【請求項34】
請求項31~34のいずれか1項に記載の電気光学装置であって、前記装置は、電気光学変調器、アンテナ、マッハツェンダー変調器、位相変調器、シリコン-有機ハイブリッド変調器、プラズモン-有機ハイブリッド変調器、電気-光変換器、テラヘルツディテクター、周波数シフター又は周波数コム源である、電気光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月4日に出願された米国仮出願62/911,067、及び2019年11月12日に出願された米国仮出願62/934,398の利益を主張するものであり、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本明細書は、電気光学活性を有するフィルム及び電気光学装置に含まれるのに有用な発色団を提供する。
【0003】
政府のライセンス権に関するステイトメント
本発明は、空軍科学研究局から授与されたグラント金番号FA9550-15-1-0319及び国立科学財団から授与されたグラント番号DMR1303080による政府の支援を受けて行われた発明である。政府は、本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
有機電気光学(OEO)材料は、最近、シリコン-有機ハイブリッド(SOH)及びプラズモン-有機ハイブリッド(POH)装置の開発により関心が復活しており、これは、あるクラスの有機発色団の高い固有の電気光学活性を小さな装置サイズと組み合わせこと及びCMOSエレクトロニクスとのチップスケールインテグレーションを可能にする。電気光学装置のサイズは、電圧-長さ積
に比例する。ここで、Uπは経路長Lにわたってπの位相シフトを引き起こすのに必要な電圧、nは電気光学材料の屈折率、r33は材料の電気光学係数である。OEO材料では、
であり、ここで、ρNは大きな分子超分極率(β)を有し、双極子モーメントが非中心的に並ぶ
ように整列された発色団の数密度(濃度)であり、θは発色団の双極子モーメントと電気光学装置の電極に垂直な軸との間の角度である。
【0005】
高分極率発色団は、一般的にドナー-πブリッジ-アクセプター(D-π-A)構造を持ち、置換アミン基などの電子供与性部位と、シアノ(CN)やニトロ(NO2)などの強い電子吸引性基を含む電子受容性部位が、しばしばエン/ポリエン及び/又はヘテロアロマティック基を含むπコンジュゲートリンカーによって連結されており、例えばJRD1として図1に示すようなD-π-A発色団が知られている。
【0006】
任意の発色団濃度のための装置においてより高いr33及びより小さいUπLを可能にする、より高い発色団超分極率及び好ましい安定性及び加工性を有する発色団に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
概要
この概要は、詳細な説明において以下でさらに説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。この概要は、請求された主題の重要な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求された主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図していない。
【0008】
一態様において、本明細書は、式A:
の化合物であって、
ここで、
Aは、π-電子アクセプター基であり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
nは、1、2又は3であり、
nは、1、2、又は3であり、
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
Qは、
又は
であり、
Jは、各場合に、独立して、S、O、又はNR8であり、
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリール、及び
Qが、
又は
であるとき、Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、及びZ2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリール、又は
Qが、
であるとき、Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである、
化合物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、化合物は式A1:
で表され、
ここで、
Z2、Q、X、A、n、及びmは、上で定義した通りであり、及び
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0010】
いくつかの実施形態において、化合物は式A2:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n及びmは、上で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
R7は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC1-C10アルキルオキシ、置換されていてもよいC3-C10へテロアルキルオキシ、又はNR3R4であり、及び
R3及びR4は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0011】
いくつかの実施形態において、化合物は式A3:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n、及びmは、上で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R3及びR4は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0012】
いくつかの実施形態において、化合物は式A4:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n、及びmは、上で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R'は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0013】
いくつかの実施形態において、Qは、
である。
【0014】
いくつかの実施形態において、Qは、
であり、
ここで、
Jは、i S、O、又はNR8であり、及び
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである。
【0015】
いくつかの実施形態において、Qは、
であり、
ここで、
Jは、各場合に、独立して、S、O、又はNR8であり、及び
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである。
【0016】
いくつかの実施形態において、JはSである。
【0017】
いくつかの実施形態において、Aは、
であり、
ここで、R'及びR "は、独立して、置換されていてもよいC1-C12アルキル(例えば、フッ素化アルキル)及び置換されていてもよいC6-C10アリール(例えば、フッ素化アリール)から選ばれ、及びG1、G2、及びG3は独立してF、CN、CF3、SO2CF3から選ばれる。
【0018】
いくつかの実施形態において、Aは、
である。
【0019】
いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、nは1である。
【0020】
いくつかの実施形態では、化合物は式A5:
の化合物であり、
ここで、
Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0021】
いくつかの実施形態では、化合物は式A6:
の化合物であり、
ここで、
Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Z2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0022】
いくつかの実施形態では、化合物は式A7:
の化合物であり、
ここで、
Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Z2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0023】
いくつかの実施形態では、化合物は、カウンターパートの反応性基と反応したときに共有結合を形成できる1つ以上の反応性基を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の反応性基が、(4+2)付加環化によって架橋可能な基である。
【0024】
いくつかの実施形態において、Z1及びXの少なくとも1つは、
及びOSiR10R11R12
から選択される基で置換されており、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである。
【0025】
いくつかの実施形態において、L-YはH、OL1OSiR10R11R12、又はSL1OSiR10R11R12であり、ここで、L1が置換されていてもよいC2-C20アルキレン又は置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキレンであり、及びR10、R11、及びR12が独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである。
【0026】
いくつかの実施形態において、Xは、
又は
であり、
ここで、G4は、OSiR10R11R12であり、ここで、R10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールであるか、又はG4は、
又は
であり、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)である。
【0027】
いくつかの実施形態では、化合物は式A8:
の化合物であり、
ここで、
G6は、OR'又はNR'R"であり、ここで、R'及びR"は、独立して、置換されていてもよいC1-C10アルキルであり、
R1は、H又は置換されていてもよいC1-C10アルキルであり、
R2は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
Yは、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
ここで、R2、Y、及びG6のうちの少なくとも1つは、
及びOSiR10R11R12
から選択される基で置換されており、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである。
【0028】
いくつかの実施形態では、化合物は、下に記載される化合物I、化合物II、化合物III、又は化合物IV、化合物V、化合物VI、化合物VII、化合物VIII、化合物IX、化合物X、化合物XI、化合物XII、化合物XIII、化合物XIV、又は化合物XVである。
【0029】
別の態様において、本明細書は、本明細書に開示の1種以上の化合物を含む電気光学活性を有するフィルムを提供する。いくつかの実施形態では、フィルムはポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である。いくつかの実施形態では、フィルムは、約100pm/Vより大きいr33値を有する。いくつかの実施形態では、フィルムは、約1000pm/Vより大きいr33値を有する。いくつかの実施形態では、フィルムは約105℃以上のTgを有する。
【0030】
別の態様において、本明細書は、電気光学活性を有するフィルムの成形方法であって、本明細書に記載の化合物又は化合物を含む混合物を基材上にデポジットさせてフィルムを提供する工程、化合物の少なくとも一部が整列したフィルムを提供するために十分な温度でフィルムに整列力を加える工程、フィルムの温度を下げて電気光学活性を有するフィルムを提供する工程、を含む、成形方法を提供する。
【0031】
別の態様において、本明細書は、本明細書に開示の化合物を含む電気光学装置を提供する。
【0032】
別の態様において、本明細書は、本明細書に開示のフィルムを含む電気光学装置を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、電気光学装置は1つ以上の電荷ブロッキング層をさらに備える。いくつかの実施形態では、1つ以上の電荷ブロッキング層は、ポリ(ベンゾシクロブテン)(BCB)、TiO2、MoO3、ZrO2、HfO2、SiO2、Al2O3、Si3N4、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、装置は、電気光学変調器、アンテナ、マッハツェンダー変調器、位相変調器、シリコン-有機ハイブリッド変調器、プラズモン-有機ハイブリッド変調器、電気-光変換器、テラヘルツディテクター、周波数シフター又は周波数コム源である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の上述の態様及び付随する多くの利点は、添付の図面と合わせて考慮した場合、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるようになり、より容易に理解されるようになる。
【0035】
図1図1は、ドナー、πブリッジ、及びアクセプター標識を有する既知のJRD1発色団を示している。JRD1は、置換アニリンドナー、リング-ロックポリエンブリッジ、及びCF3-フェニル置換トリシアノフラン(TCF)アクセプターを含む。
図2図2は、例示的な発色団である化合物IVの合成を示す。
図3A-3B】図3A及び3Bは、例示的な発色団である化合物I、化合物II、化合物III、又は化合物IVの屈折率の実数(n、図3A)及び虚数(k、図3B)成分を示す。
図4A-4B】図4A及び4Bは、PMMA中の25wt%のJRD1と比較した、10wt%及び25wt%濃度の例示的化合物II及び25wt%濃度の例示的な化合物IVの屈折率の実数(n、図4A)及び虚数(k、図4B)成分である。
図5A-5B】図5A~5Bは、Teng-manエリプソメトリー法を用いて1310nmで得られたPMMA中の例示的な化合物II及び例示的な化合物IVの薄フィルムの電気光学測定値を示す。
図6A-6B】図6A及び6Bは、様々な条件下での例示的な化合物VIのポーリング効率(ポーリング場の関数としての電気光学係数)(図6A)及び例示的な化合物VIの屈折率の実数(n)及び虚数(k)成分(図6B)を示す図である。
図7図7は、例示的な発色団である化合物VIの合成を示す。
【発明の詳細な説明】
【0036】
詳細な説明
本明細書は、大きな超分極率を有する発色団、その発色団を含む電気光学活性を有するフィルム、及びその発色団を含む電気光学装置を提供する。本明細書に開示の発色団は、大きな分子超分極率を有するため、この発色団を含むフィルムにおいて大きな電気光学係数(r33)を実現できる。
【0037】
本明細書に開示の分極性発色団化合物又は分極性発色団は、2次非線形光学発色団化合物である。本明細書で使用される用語「発色団(chromophore)」は、可視スペクトル範囲の光を吸収することができ、着色される化合物を指す。用語「分極性発色団化合物」、「分極性発色団」、及び「発色団」は、特に示されない限り、本明細書の開示を通じて交換可能に使用される。本明細書の文脈において、用語「非線形」は、一般構造D-π-Aを有する分極性発色団化合物(即ち、「プッシュ-プル」発色団化合物)の性質から生じる2次効果を指し、Dは電子ドナーであり、Aは電子アクセプターであり、及びπはドナーをアクセプターにコンジュゲートするπ-ブリッジである。
【0038】
「ドナー」(「D」で表される)は、アクセプター(下に定義)に対して低い電子親和力を有する原子又は原子群であり、ドナーがπブリッジを介してアクセプターにコンジュゲートするとき、電子密度がドナーからアクセプターに移動するような原子又は原子団である。
【0039】
アクセプター」(「A」で表される)は、ドナーに対して高い電子親和性を有する原子又は原子団であり、アクセプターがπ-ブリッジを介してドナーにコンジュゲートするとき、電子密度がアクセプターからドナーに移動するような原子又は原子団である。
【0040】
「π-ブリッジ」又は「コンジュゲートブリッジ」(化学構造式では"π"または"πn"で表され、nは整数)は、ブリッジ内の原子の軌道を通じて電子が電子ドナー(上で定義)から電子アクセプター(上で定義)に非局在化できる原子又は原子群を含む。好ましくは、軌道は、アルケン、アルキン、中性又は荷電した芳香環、及び中性又は荷電したヘテロ芳香環系に見られるような多重結合した炭素原子上のp軌道になり得る。さらに、軌道は、ホウ素や窒素などの多重結合原子上のp軌道、又は有機金属軌道であってもよい。電子が非局在化される軌道を含むブリッジの原子を、ここでは「臨界原子」と呼ぶ。ブリッジの臨界原子の数は、1~約30の数であることができる。また、臨界原子は、下に定義する「アルキル」、下に定義する「アリール」、又は下に定義する「ヘテロアルキル」でさらに置換できる。ブリッジの臨界原子のアルキル、アリール、又はヘテロアルキル置換基上の、水素を除く1つ以上の原子は、他のアルキル、アリール、又はヘテロアルキル置換基の原子に結合して、1つ以上の環を形成してもよい。
【0041】
一態様において、本明細書は式A:
の分極性発色団化合物であって、
ここで、
Aは、π-電子アクセプター基であり、
Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Qは、
又は
であり、
Jは、各場合に、独立して、S、O、又はNR8であり、
R8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
nは、1、2、又は3であり、
nは、1、2、又は3であり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、R6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10ヘテロアルキルであり、
但し、
Qが、
又は
であるとき、Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、及びZ2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、及び
Qが、
であるとき、Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである、
分極性発色団化合物を提供する。
【0042】
本明細書で使用される用語「アルキル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」は、直鎖、分枝鎖、及び環状の一価ヒドロカルビルラジカル、並びにこれらの組み合わせを含み、それらは非置換である場合にC及びHのみを含む。例えば、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニル等を挙げることができる。本明細書では、このような各基における炭素原子の総数を記載することもあり、例えば、基が10個までの炭素原子を含むことができる場合には、1-10Cとして、C1-C10、C-C10、又はC1-10として表すことができる。
【0043】
本明細書で使用される用語「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、及び「ヘテロアルキニル」は、1つ以上の鎖状炭素原子がヘテロ原子で置換されている対応する炭化水素を意味する。例示的なヘテロ原子には、N、O、S、及びPを含む。ヘテロアルキル基のように炭素原子をヘテロ原子に置き換えることができる場合、C3-C10などのように書かれていても、その基を表す数字は、サイクル又は鎖の炭素原子の数と、記述されているサイクル又は鎖の炭素原子の代わりとして含まれているヘテロ原子の数の総数を表す。
【0044】
典型的には、アルキル、アルケニル、及びアルキニル置換基は、1~20個の炭素原子(アルキル)又は2~10個の炭素原子(アルケニル又はアルキニル)を含有する。好ましくは、それらは、1~10個の炭素原子(アルキル)又は2~10個の炭素原子(アルケニル又はアルキニル)を含有する。1つの基は、1種類以上の多重結合を含むことができ、又は2種類以上の多重結合を含み得る。このような基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む場合、用語「アルケニル」の定義内に含まれ、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む場合、用語「アルキニル」内に含まれる。本明細書で使用される用語「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、及び「シクロアルキニル」は、それぞれ、環状アルキル、アルケニル、及びアルキニルを具体的に示す。
【0045】
本明細書で使用される用語「アルキレン」、「アルケニレン」、及び「アルキニレン」は、直鎖、分枝鎖、及び環状二価ヒドロカルビルラジカル、並びにそれらの組合せを含み得る。本明細書で使用される用語「シクロアルキレン」、「シクロアルケニレン」、及び「シクロアルキニレン」は、特に、環状2価ヒドロカルビルラジカルを指す。
【0046】
アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基は、化学的に意味をなす範囲で任意に置換できる。典型的な置換基としては、これらに限定されないが、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、=O、=N-CN、=N-OR、=NR、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRC(O)OR、NRC(O)R、CN、C(O)OR、C(O)NR2、OC(O)R、C(O)R、及びNO2を含み、ここで、各Rは、独立して、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C6-C10アリール、又はC5-C10ヘテロアリールであり、及び各Rは任意に、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、=O、=N-CN、=N-OR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'C(O)OR'、NR'C(O)R'、CN、C(O)OR'、C(O)NR'2、OC(O)R'、C(O)R'、及びNO2で置換され、ここで、各R'は、独立して、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール、又はC5-C10ヘテロアリールである。アルキル、アルケニル及びアルキニル基はまた、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール又はC5-C10ヘテロアリールによって置換することができ、これらはそれぞれ特定の基にとって適切な置換基によって置換することが可能である。
【0047】
本明細書で使用する「アルキル」は、シクロアルキル及びシクロアルキルアルキル基を含むが、本明細書では、「シクロアルキル」という用語は、環炭素原子を介して連結した炭素環式非芳香族基を表すために使用し、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを介して分子内に連結した炭素環式非芳香族基を表すために使用する。同様に、「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つのヘテロ原子を環員として含み、C又はNであってもよい環原子を介して分子と結合している非芳香族環状基を説明するために使用され、及び「ヘテロシクリルアルキル」は、アルキレンリンカーを介して別の分子に連結している基を説明するために使用されてもよい。本明細書で使用する場合、これらの用語はまた、環が芳香族でない限り、二重結合又は2つを含む環を含む。
【0048】
「芳香族」又は「アリール」置換基又は部位は、芳香族のよく知られた特徴を有する単環式又は縮合二環式部位を指し、例としては、フェニル及びナフチルを含む。同様に、用語「ヘテロ芳香族」及び「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子を環員として含む、そのような単環式又は縮合二環式環系を指す。適切なヘテロ原子には、N、O、及びSが含まれ、これらのヘテロ原子を含むと、6員環だけでなく5員環の芳香族性も許容される。典型的なヘテロ芳香族系としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、及びイミダゾリルなどの単環C5-C6芳香族基、及びこれらの単環基の1つとフェニル環又はヘテロ芳香族単環基のいずれかとを融合して、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリル、キノキサリン、シノリニルなどのC8~C10二環基を形成した融合二環部位を提供する。単環式又は縮合環の二環系で、環系全体の電子分布の観点から芳香族性の特徴を有するものは、この定義に含まれる。また、少なくとも分子の残部に直接結合している環が芳香族性の特徴を有する二環式基も含まれる。典型的には、環系は5~12個の環構成員原子を含む。好ましくは、単環式ヘテロアリールは5~6個の環員を含み、二環式ヘテロアリールは8~10個の環員を含む。
【0049】
アリール及びヘテロアリール部分は、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C5-C12アリール、C1-C8アシル、及びこれらのヘテロ体を含む種々の置換基で置換でき、各々はそれ自体さらに置換することができ、アリール及びヘテロアリール部分のための他の置換基は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRC(O)OR、NRC(O)R、CN、C(O)OR、C(O)NR2、OC(O)R、C(O)R、及びNO2を含み、ここで、各Rは、独立して、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル又はC6-C12ヘテロアリールアルキルで、それぞれのRはアルキル基について上に述べたように任意に置換される。アリール基又はヘテロアリール基上の置換基は、もちろん、かかる置換基の種類ごと又は置換基の構成要素ごとに適した本明細書に記載の基でさらに置換されていてもよい。従って、例えば、アリールアルキル置換基は、アリール部分において、アリール基について典型的なものとして本明細書に記載された置換基で置換されていてもよく、アルキル部分において、アルキル基について典型的又は適切なものとして本明細書に記載された置換基でさらに置換されていてもよい。
【0050】
本明細書で使用される「置換されていてもよい」は、記載される特定の基が、非水素置換基で置き換えられた1つ以上の水素置換基を有していてもよいことを示す。いくつかの置換されていてもよい基又は部分では、全ての水素置換基は、非水素置換基、例えば、以下の通りである。C1-C6アルキル、C2-C6ヘテロアルキル、アルキニル、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N3、OR、NR2、SiR3、OSiR3、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRC(O)OR、NRC(O)R、CN、C(O)OR、C(O)NR2、OC(O)R、C(O)R、oxo、及びNO2によって置換され、ここで、各Rは、独立して、H、C1-C6アルキル、C6-C10アリール、又はC2-C6ヘテロアルキルである。任意の置換基が、カルボニル酸素又はオキソ(=O)などの二重結合を介して結合している場合、その基は2つの利用可能な原子価を占めるため、含まれ得る置換基の総数は、利用可能な原子価の数に応じて減少される。いくつかの実施形態において、任意の非水素置換基は、OSiRR'R"であり、ここで、R、R'、及びR'は、独立して、H、C1~C10アルキル、又はC6~C10アリールである。
【0051】
いくつかの実施形態において、任意の置換基は、例えば、(4+2)付加環化によって架橋可能な基のような反応性基、例えば、
及び
を含む。
【0052】
式Aのいくつかの実施形態において、Z1、Z2、Q、X、及びAのうちの1つ以上は、上記の(4+2)付加環化によって架橋可能な基などの1つ以上の反応性基で任意に置換され得る。
【0053】
式Aのいくつかの実施形態において、化合物は式A1:
で表され、
ここで、
Z2、Q、X、A、n、及びmは、式Aの化合物において上記で定義した通りであり、及び
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0054】
いくつかの実施形態において、化合物は式A2:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n及びmは、上で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
R7は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC1-C10アルキルオキシ、置換されていてもよいC3-C10へテロアルキルオキシ、又はNR3R4であり、及び
R3及びR4は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0055】
いくつかの実施形態において、化合物は式A3:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n、及びmは、上で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R3及びR4は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0056】
いくつかの実施形態において、化合物は式A4:
で表され、
ここで、
Q、X、A、n、及びmは、化合物Aにおいて上で定義した通りであり、
R1及びR2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R'は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0057】
式A1~A4のいくつかの実施形態において、Qは、
である。
【0058】
式A1~A4のいくつかの実施形態において、Qは、
であり、
ここで、Jは、i S、O、又はNR8でああり、
及びR8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである。
【0059】
式A1~A4のいくつかの実施形態において、Qは、
であり、
ここで、
Jは、各場合に、独立して、S、O、又はNR8であり、
及びR8は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールである。
【0060】
いくつかの実施形態において、JはSである。いくつかの実施形態において、JはOである。いくつかの実施形態において、JはNR8である。
【0061】
式A1~A4のいくつかの実施形態において、Aは、
であり、
ここで、R'及びR "は、独立して、置換されていてもよいC1-C12アルキル(例えば、フッ素化アルキル)及び置換されていてもよいC6-C10アリール(例えば、フッ素化アリール)から選ばれ、及びG1、G2、及びG3は独立してF、CN、CF3、SO2CF3を含む電気陰性基から選ばれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、R'はCF3である。他の実施形態では、R "はフェニルである。特定の実施形態では、G1、G2、及びG3はCNである。
【0063】
いくつかの実施形態において、Aは、
である。
【0064】
いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、nは1である。
【0065】
いくつかの実施形態では、化合物は式A5:
の化合物であり、
ここで、
Z1及びZ2は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール、又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、
及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0066】
いくつかの実施形態では、化合物は式A6:
の化合物であり、
ここで、
Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Z2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0067】
いくつかの実施形態では、化合物は式A7:
の化合物であり、
ここで、
Z1は、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Z2は、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキル、置換されていてもよいC6-C10アリール又は置換されていてもよいC5-C10ヘテロアリールであり、
Xは、
又は
であり、
Lは存在しないか、又はLはS又はOであり、
Yは、H、置換されていてもよいC1-C20アルキル、置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルである。
【0068】
本明細書に開示の分極性発色団は、(例えば、高温に曝されたときに)カウンターパートの基と反応したときに共有結合(即ち、架橋)を形成できる1つ以上の反応性基を含み得る。任意の適切な反応性基及びカウンターパートの基を使用して、本明細書の開示の発色団を含むフィルムを成形できる。いくつかの実施形態では、反応性基及びカウンターパートの基は、(4+2)付加環化によって架橋可能な基である。そのような基の数は、当技術分野で知られている。
【0069】
いくつかの実施形態では、Y、X、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のうちの1つ以上は、反応性基を含む。いくつかの実施形態では、Y、X、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のうちの1つ以上は、1つ以上の反応性基(例えば、アントラセニル基又はアクリレート基などの(4+2)付加環化によって架橋可能な基)で任意に置換される。いくつかの実施形態において、(4+2)付加環化によって架橋可能な基は、構造:
又は
によって表され、
ここで、kは0、1、2、3、4、又は5であり、及び各Qは独立してNH、N(C1-C10-アルキル)、O、又はSである。
【0070】
いくつかの実施形態では、Y、X、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6の1つ以上は、1つ以上の官能基又は保護官能基で任意に置換され、これらは、上記の1つ以上の反応基に加えて存在することが可能である。本明細書で使用する場合、「官能基」は、そのような官能基を含む分子の特徴的な化学反応を担う基、置換基、又は部位である。例えば、ヒドロキシル官能基は、エステル化反応を起こし得る基であり、ヒドロキシル官能基は、トリメチルシリル又はtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)のようなシリル保護基で保護されることができる。
【0071】
本明細書に開示の式のいくつかの実施形態において、L-Yは、H、OL1OSiR10R11R12、又はSL1OSiR10R11R12であり、ここで、L1は、置換されていてもよいC2~C20アルキレン又は置換されていてもよいC3~C50ヘテロアルキレンであり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、C1-C10アルキル、又はC6-C10アリールである。いくつかの実施形態では、L-YはHである。いくつかの実施形態では、L-Yは、-SCH2CH2OH又はSCH2CH2OTBDPSである。
【0072】
いくつかの実施形態では、R1は、メチル又は置換されていてもよいエチルである。いくつかの実施形態では、R2は、メチル又は置換されていてもよいエチルである。いくつかの実施形態では、R3は、メチル又は置換されていてもよいエチルである。いくつかの実施形態では、R4は、メチル又は置換されていてもよいエチルである。
【0073】
いくつかの実施形態では、R5はCH3であり、R6はCH3である。
【0074】
本明細書に開示の化合物のいくつかの実施形態において、Z1及びXの少なくとも1つは、
及びOSiR10R11R12
から選択される基で置換されており、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである。
【0075】
本明細書に開示の化合物のいくつかの実施形態において、L-YはH、OL1OSiR10R11R12、又はSL1OSiR10R11R12であり、ここで、L1は置換されていてもよいC2-C20アルキレン又は置換されていてもよいC3-C50ヘテロアルキレンであり、及びR10、R11、及びR12は独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである。
【0076】
本明細書に開示の化合物のいくつかの実施形態において、Xは、
又は
であり、
ここで、G4は、OSiR10R11R12であり、ここで、R10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールでであるか、又はG4は、
又は
であり、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)である。
【0077】
いくつかの実施形態において、Xは、
であり、
ここで、kは1~20の整数であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、C1-C10アルキル、又はC6-C10アリールである。
【0078】
いくつかの実施形態において、Xは、
又は
であり、
ここで、TBDPSは、
である。
【0079】
いくつかの実施形態において、本化合物は式A8:
の化合物であり、
ここで、
G6は、OR'又はNR'R"であり、ここで、R'及びR"は、独立して、置換されていてもよいC1-C10アルキルであり、
R1は、H又は置換されていてもよいC1-C10アルキルであり、
R2は、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
Yは、置換されていてもよいC1-C10アルキル、置換されていてもよいC3-C10ヘテロアルキル、置換されていてもよいC3-C10シクロアルキル、又は置換されていてもよいC3-C10シクロヘテロアルキルであり、及び
ここで、R2、Y、及びG6のうちの少なくとも1つは、
及びOSiR10R11R12
から選択される基で置換されており、
ここで、G5はNH、O、S、又はN(C1-C10-アルキル)であり、及びR10、R11、及びR12は、独立して、H、置換されていてもよいC1-C10アルキル、又は置換されていてもよいC6-C10アリールである。
【0080】
いくつかの実施形態では、化合物は下記の化合物I、化合物II、化合物III、又は化合物IV、化合物V、化合物VI、化合物VII、化合物VIII、化合物IX、化合物X、化合物XI、化合物XII、化合物XIII、化合物XIV、又は化合物XV:
であり、
ここで、TBDPSは、
である。
【0081】
本明細書に開示の発色団、例えば、式A、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、XI、XII、XIII、XIV、及びXVの化合物は、置換チオエーテル-置換イソフォロン及びCF3-フェニル置換トリシアノフラン(TCF)受容体を含む多数の既知のOEO発色団に共通の中間体を用いて当業者に公知の標準的有機合成法により生産することが可能である(例えば、Dalton, L. R.; Sullivan, P. A.; Bale, D. H., Electric Field Poled Organic Electro-optic Materials: State of the Art and Future Prospects. Chemical Reviews 2010, 110 (1), 25-55に記載され、この開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。例示的な発色団の合成は、図2及び図7に示されている。
【0082】
一実施形態では、本明細書に開示の発色団は、大きな静的超分極率を有する。特定の実施形態では、本明細書に開示される発色団は、参照発色団JRD1(図1)の約1.5倍~約3倍の間の静的超分極率を有する。それは、例えば、クロロホルム溶液中1300nmでハイパーレイリー散乱によって測定され、減衰2レベルモデルを用いてゼロ周波数に外挿される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の発色団は、参照発色団JRD1の約1.5倍~約3倍を超える静的超分極率を有する。
【0083】
別の態様において、本明細書は、本明細書に開示の発色団を含むポリマー組成物を提供する。特定の実施形態では、発色団はポリマーとブレンドされ、電界ポーリング(強い直流電界をフィルムに印加し、フィルムをそのガラス転移温度(Tg)付近まで加熱して発色団の双極子モーメントが電界と純整列するように再配向させ、その後、電界がある状態で冷却してポーリングによる秩序を保持するプロセス)によって誘導される電気光学活性を有し得る加工可能かつ耐久性のあるフィルムが成形される。電気光学活性は、当業者に公知のTeng-Manエリプソメトリー、減衰全反射(ATR)法によって測定できる。
【0084】
特定の実施形態では、ポリメチルメチルアクリレート(PMMA)とブレンドされた本明細書に開示の発色団を含むフィルムは、Teng-Manエリプソメトリーによって計測された約70 pm/V~約300 pm/V、約40 pm/V~約140 pm/V、約30 pm/V~約250 pm/V、約75 pm/V~約300 pm/V、約80 pm/V~約250 pm/V、約50 pm/V~200 pm/V、約15~約105 pm/V、約105~約405 pm/V、約125~約1100 pm/V、約125~約1200 pm/V、約125~約1300 pm/V、約125~約1500 pm/V、約350 pm/V超、約500 pm/V超、750 pm/V超、又は約1000 pm/V超のr33値を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の発色団を含むフィルムは、(例えば、フィルムのポーリング中の導電率を最小にするために)電荷ブロッキング層として誘電体材料又はワイドバンドギャップ半導体のフィルムと組み合わせることができる。そのようなフィルムは、ポリ(ベンゾシクロブテン)(BCB、CycloteneTM)などの有機材料又は限定されないがTiO2、MoO3、ZrO2、HfO2、SiO2、Al2O3、Si3N4、又はそれらの組み合わせを含む無機材料を含み得る。いくつかの実施形態では、フィルムは、ポリ(ベンゾシクロブテン)を含む。いくつかの実施形態では、BCB層は、約40nm~約150nm、又は約60nm~約100nmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、電荷ブロッキング層は、例えば、"Benzocyclobutene barrier layer for suppressing conductance in nonlinear optical devices during electric field poling" Applied Physics Letters 104, 243304 (2014)に記載された層である。
【0086】
さらに別の態様において、本明細書は、本明細書に開示のフィルム又は本明細書に開示の方法によって成形されるフィルムを含む電気光学装置を提供する。本明細書の開示のフィルムを組み込んだ例示的な装置は、電気光学変調器、アンテナ、マッハツェンダー変調器、位相変調器、シリコン-有機ハイブリッド変調器、プラズモン-有機ハイブリッド変調器、電気-光変換器、テラヘルツディテクター、周波数シフター又は周波数コム源を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のフィルムを含む電気光学装置は、上記のような1つ以上の電荷ブロッキング層をさらに含む。
【0087】
光通信システムの特定のコンポーネントは、その全部又は一部を、本明細書の開示のフィルムで作製できる。例示的なコンポーネントには、限定されないが、直線導波路、ベンド、シングルモードスプリッタ、カプラー(方向性カプラー、MMIカプラー、スターカプラーを含む)、ルータ、フィルタ(波長フィルタを含む)、スイッチ、変調器(光及び電気光学、例えば、複屈折変調器、マッハツェンダー干渉計、及び方向性及びエバネッセントカプラー)、アレイ(長尺高密度導波路アレイを含む)、光相互接続、オプトチップ、シングルモードDWDMコンポーネント、フォトニック結晶装置、共鳴装置(例えば、フォトニック結晶、リング又はディスク共鳴器、及び回折格子を含む。本明細書に記載されたフィルムは、例えば、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)及びCMOS技術において適用される、例えば、ウェハレベル処理で使用されてもよい。
【0088】
多くの用途において、本明細書に記載のフィルムは、ニオブ酸リチウム、ヒ化ガリウム、及び現在光通信システムにおいて光透過性材料として使用が見出される他の無機材料の代わりに使用することが可能である。
【0089】
本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本発明の技術分野における当業者にとって同じ意味を持つ。
【0090】
本明細書で使用される用語「約」は、主題の値がプラス又はマイナス5%修正されても、開示された実施形態内に入ることができることを示す。
【0091】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、又は代替物が相互に排他的である場合を除き、「及び/又は」を意味するものとして用いられ、本明細書は代替物のみと「及び/又は」に言及する定義をサポートする。請求項又は明細書において、単語「a」及び「an」は、単語「含む」と共に使用される場合、特に断らない限り、1つ又は複数を示す。
【0092】
文脈上明らかに他に要求されない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」等は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で解釈されるものであり、即ち、「含むがこれに限定されない」という意味で解釈される。また、単数又は複数を用いる語は、それぞれ複数及び単数を含む。本明細書において、「A/B」の形式又は「A及び/又はB」の形式の用語は、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。本明細書において、「A、B、及びCの少なくとも1つ」という形式の用語は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B及びC)を意味する。本明細書において、「(A)B」という形式の用語は、(B)又は(AB)、即ち、Aは任意要素であることを意味する。さらに、「本明細書」、「上」及び「下」の語、及び類似の取り込むための語は、本願で使用される場合、本願を全体として指し、本願の特定の部分には言及しないものとする。
【0093】
本明細書で引用した全ての刊行物及びそれらが引用された主題は、それらの全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0094】
以下の実施例は、本明細書の開示の特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。実施例は、本明細書に開示された内容を記載された特定の特徴又は実施形態に限定するように解釈されるべきではない。
【実施例
【0095】
実施例
十分に検証された方法を用いて実施された密度汎関数理論(DFT)計算を用いて、本発明者らは、化合物I及びIIなどの本明細書の開示の発色団が大きな超分極率を有し得ることを見出した。計算はM062X/6-31+G(d)レベルの理論で、クロロホルム陰溶媒環境(PCM)で行い、超分極率は解析的微分法(CPHF)で計算した。また、JRD1の切断モデルを標準として、同様の計算を行った。JRD1のドナー上のOTBDPS基は、計算効率のために水素に置き換え、ドナーはジエチルアニリンとしてモデル化した。このモデルに基づき、超分極率の計算結果を報告した。例示的な化合物I~XVは、当業者によく知られる標準的な有機合成法を用いて合成し、プロトン(1H)NMR及びエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)により組成を確認した。UV/可視吸光スペクトルは、当業者によく知られる方法を用いて、クロロホルムと薄フィルムの両方で測定した。
【0096】
クロロホルム溶液中の例示的な化合物I、II、III、IV、V、VI、及びVIIの超分極率は、以前に記述されたように(Campo, J.; Desmet, F.; Wenseleers, W.; Goovaerts, E., Highly sensitive setup for tunable wavelength hyper-Rayleigh scattering with parallel detection and calibration data for various solvents. Optics Express 2009, 17 (6)、その開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる)、1300nmに調整した高繰り返し周波数(80MHz)広帯域(680-1300nm)フェムト秒パルスレーザー(InsightDS+, Spectra-Physics)によって生成した光でハイパーレイリー散乱(HRS)により測定した。測定は純粋なクロロホルム標準と比較して行い、データは減衰2レベルモデル及び0.1 eVの線幅を使用してゼロ周波数に外挿した。クロロホルムの基準値への依存性を排除し、技術水準との比較を明確にするため、最先端の発色団JRD1も同じ実験セットで測定し、データもJRD1との比較で報告している。DFT、UV/Vis、及びHRS測定のデータを表1にまとめている。
【0097】
【0098】
例示的な化合物I、II、III、IV、VI、及びVIIを含む例示的な薄フィルムを、スライドの半分が酸化インジウムスズ(ITO)の導電層で被覆されたスライドガラス及び/又はスライドガラス上に成形した。ITOスライドはThin Film Devices(Anaheim、 CA)によって生産された。発色団は、発色団を含むトリクロロエタン(TCE)溶液からスピンコートによってデポジットした(ニート又はPMMAと混合)。フィルムは、使用前に65℃の真空オーブン中で乾燥させた。
【0099】
ガラス基材上の例示化合物I、II、III、及びIVを含む薄フィルムの複素屈折率(n及びk)は、Woollam MC2000分光エリプソメーターを用いてUW Molecular Analysis FacilityのJA Variable Angle Spectroscopic Ellipsometry(VASE)、及び以前に記述された方法(Benight, S. J.; Johnson, L. E.; Barnes, R.; Olbricht, B. C.; Bale, D. H.; Reid, P. J.; Eichinger, B. E.; Dalton, L. R.; Sullivan, P. A.; Robinson, B. H., Reduced Dimensionality in Organic Electro-Optic Materials: Theory and Defined Order. The Journal of Physical Chemistry B 2010, 114 (37), 11949-11956、この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)。ニートフィルムとしての例示的な化合物I、II、III、及びIVのデータを、図3に示す。PMMA中の化合物IIのフィルムに関するデータ、及びニートJRD1と比較したデータを、図4に示す。図4のデータは、希薄ポリマーフィルムに配合された場合の本明細書に開示の化合物の挙動を代表するものである。
【0100】
電気光学測定用のフィルムは、例示的な化合物I、II、III、IV、VI、及びVIIの薄フィルム上に金電極をスパッタコートし、市販の銀ペーストを用いてワイヤーを取り付け、15V/μm~110V/μmの範囲の強度のEPのポーリング場を用いて材料のTgに適した温度でポーリングし、< 35℃まで冷却して、以前報告された方法及び装置(Dalton, L. R.; Sullivan, P. A.; Bale, D. H., Electric Field Poled Organic Electro-optic Materials: State of the Art and Future Prospects. Chemical Reviews 2010, 110 (1), 25-55、この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)を用いて1310nmの電気光学活性を測定して作製した。例示的な化合物II及びIIIの代表的なポーリング結果を図5に示す。ポーリング効率r33/Epは、電気光学活性(pm/V)対Epの線形フィッティングによって決定した。
【0101】
図5に示されたデータに加えて、PMMA中の10質量%濃度の例示的な化合物Iは、1.77nm2/V2のポーリング効率を実証し、PMMA中の25質量%濃度の化合物IIIは、2.87nm2/V2のポーリング効率を実証した。このポーリング効率は、PMMA中の25%JRD1(~1nm2/V2)と非常に良好に比較される。低濃度における例示的な化合物II及びIVのポーリング効率は、その数密度に対して特に並外れたものである。PMMA中10%濃度の例示的な化合物II(2.82 nm2/V2)とPMMA中10%濃度の例示化合物IV (2.86 nm2/V2) はニートJRD1と競合した(Jin, W.; Johnston, P. V.; Elder, D. L.; Tillack, A. F.; Olbricht, B. C.; Song, J.; Reid, P. J.; Xu, R.; Robinson, B. H.; Dalton, L. R., Benzocyclobutene barrier layer for suppressing conductance in nonlinear optical devices during electric field poling. Applied Physics Letters 2014, 104 (24), 243304(この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているようにITOとOEO材料間のBCB電荷ブロッキング層がある場合のポーリング効率が3.43 ± 0.2 nm2/V2、電荷ブロッキング層なしの場合が3.1 ± 0.1を有する)。ポリマーホスト中の所定濃度におけるEO活性の2.5倍以上の向上は、例示的な化合物I、II、III、及びIVなどの新規チエノチオフェン由来ドナーを含む例示的な発色団の電気光学装置への有用性を示し、発色団とのブレンドに実質的に柔軟性を与えながら高い装置性能を可能にする。
【0102】
例示的な化合物V、VI、及びVIIは、表1に示すように、最先端化合物JRD1よりも超分極率の向上を示しながら、所望の置換と光学特性の調整を可能にする、分子の電子供与領域における異なる芳香族基と側鎖置換を利用した本発明の構造変種の範囲を示した。例示的な化合物VIは、PMMA中10%濃度(0.90 nm2/V2)からPMMA中25% JRD1まで競争力のあるポーリング効率を示し、ポーリング中の電流を減らすために電荷ブロッキング層と組み合わせた場合、ニート材料(100%濃度、ポリマーなし)として格別のポーリング効率を示す。電荷ブロッキング層としてMoO3(20 nm厚、蒸着)を組み合わせた場合、7.98のポーリング効率が得られた。ゾル-ゲルTiO2電荷ブロッキング層の場合は15.98のポーリング効率が得られた。後者は、600pm/Vを超えるr33値をもたらし、JRD1の記録値を大幅に上回り、JRD1のポーリング効率を5倍近く上回った。また、例示的な化合物VIの屈折率の実数成分は、1310nmで2.02、1550nmで1.90と向上しており、格別のn3r33値を可能にしている。化合物VIの屈折率及びポーリングデータを図6に示す。例示的な化合物VIIは、PMMA中の10%濃度で0.94nm2/V2のポーリング効率を示し、PMMA中の10%の例示的な化合物VIのそれをわずかに上回った。
【0103】
例示的な実施形態を図示し説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そこに様々な変更を加えることができることは理解されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
【国際調査報告】