(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】吸水性の架橋したポリカルボン酸ポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20221128BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20221128BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221128BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CER
C08J3/24 CEZ
B01J20/26 D
B01J20/30
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520691
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020053938
(87)【国際公開番号】W WO2021067693
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522132960
【氏名又は名称】エコヴィア・リニューアブルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャオ・ペン
【テーマコード(参考)】
4F070
4G066
【Fターム(参考)】
4F070AA01
4F070AA02
4F070AA29
4F070AA54
4F070AB13
4F070AB22
4F070AC12
4F070AC17
4F070AC45
4F070AC87
4F070AE28
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC07
4F070DC15
4F070GA06
4F070GA08
4G066AB06A
4G066AB07A
4G066AB07B
4G066AB09A
4G066AC02B
4G066AC17B
4G066AC35B
4G066BA20
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA43
4G066DA07
4G066DA13
4G066FA03
4G066FA07
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA37
(57)【要約】
ポリカルボン酸ポリマーを、ポリエポキシド及びポリヒドラジドを含む架橋剤で架橋することによる、架橋されたポリカルボン酸ポリマーを製造する方法が開示されている。その方法によって作られた架橋されたポリカルボン酸ポリマー、及びその架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含む吸水性ポリマー材料も開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸ポリマーを、ポリエポキシド及びポリヒドラジドを含む架橋剤で架橋する工程を含む、吸水性の架橋したポリカルボン酸ポリマーを製造する方法。
【請求項2】
前記架橋剤が、ポリエポキシド及びその複数の組み合わせからなる群から選択される構成成分及びポリヒドラジド及びその複数の組み合わせからなる群から選択される構成成分からなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、各モノマー単位からぶら下がったカルボン酸基から、平均してほぼそれぞれ10個のモノマー単位ごとにぶら下がったカルボン酸基のあいだでカルボン酸基を有する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、約1kDa~約50,000kDaの重量平均分子量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、水溶性又は水分散性となるために十分な数のカルボン酸基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、ポリカルボン酸ポリマー鎖あたり約2~約700,000のカルボン酸基の平均数を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、エチレン性不飽和カルボン酸及びその塩及び無水物のホモポリマー及びコポリマー;カルボキシメチルセルロース及びその塩;ポリアスパラギン酸及びその塩;ポリグルタミン酸及びその塩;並びに、カルボキシエチルデキストラン及びその塩からなる群から選択される構成成分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ポリカルボン酸ポリマーが、α-ポリ(グルタミン酸)、γ-ポリ(グルタミン酸)、α-ポリ(アスパラギン酸)、β-ポリ(アスパラギン酸)、カルボキシメチルセルロース、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2-カルボキシエチルアクリレート)、ポリ(2-エチルアクリル酸)、ポリ(2-プロピルアクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成成分を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ポリカルボン酸ポリマーがγ-ポリ(グルタミン酸)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ポリカルボン酸ポリマーが水溶性又は水分散性である、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記架橋剤と反応性の複数の基を有する第2のポリマーが、前記ポリカルボン酸ポリマーと架橋される、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ポリエポキシドが、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリエチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ヒマシ油ポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成成分である、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ポリヒドラジドが、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される構成成分である、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記架橋剤が、前記ポリカルボン酸ポリマーの質量に基づいて約0.1~約10質量%のポリエポキシド及び/又は約0.1~約10質量%のポリヒドラジドを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
ポリエポキシドとポリヒドラジドのあいだのモル比が約0.1~約10である、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された、吸水性の架橋されたポリカルボン酸ポリマー。
【請求項17】
請求項16に記載の吸水性の架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含む吸水性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年10月4日に出願された米国仮出願第62/910,648号の利益を主張し、同仮出願を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、全米科学財団によって授与されたIIP 1660217に基づく政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有している。
【0003】
本発明は、架橋したポリカルボン酸ポリマー及び吸水性高分子材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
水又は水性流体を吸収し、それをゲルの形態で保持する吸水性ポリマーは、多くの用途、例えば、使い捨ておむつなどの衛生製品、土壌改良剤などの農業用製品、及び水の吸収、保持、又は分配が有用であるその他の用途に使用されてきている。
【0005】
従来、そのような吸水性材料は、合成した石油系のポリマー、例えば、水を吸収してヒドロゲルを形成することができる水不溶性の網目へと架橋するポリ(アクリル酸)のナトリウム塩及びポリアクリルアミドからできている。比較的安価ではあるが、石油系のポリマーは、とりわけ、再生不可能及び非分解性の性質、及び石油源からその構成モノマーを得るためのプロセスから生じる、規制を受ける排出物によって、環境に悪影響を及ぼす。
【0006】
そのような従来の吸収性ポリマー材料の再生可能な代替物は、バイオベースのポリマー、例えば、ポリ(アミノ酸)及び多糖類を用いた吸収性材料である。例えば、ガンマポリ(グルタミン酸)(γ-PGA)は、微生物発酵プロセスによって商業的に製造することができる水溶性ポリカルボン酸ポリマーである。γ-PGAは親水性のポリアミド骨格を有し、ポリ(アクリル酸)のように、各繰り返し単位中にペンダントカルボン酸官能基を有している。これらの特徴が、吸収剤用途において使用するための材料への架橋に適したものにしている。例えば、γ-PGAは、グリシジルエーテル架橋剤、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルによって架橋されて、吸水性生成物を形成することができる。しかし、グリシジルエーテルで架橋されたγ-PGAの吸収性は、従来の架橋したポリアクリル酸ナトリウムと比較して、自由膨潤倍率(free swell capacity, FSC)及び負荷の下での吸収性(absorbency under load, AUL)が低いので理想的ではなく、それが用途を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、架橋したポリカルボン酸ポリマー及び吸水性高分子材料の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリエポキシド及びポリヒドラジドを含む架橋剤でポリカルボン酸ポリマーを架橋することによって、架橋されたポリカルボン酸ポリマーを調製する方法が開示されている。また、本方法によって作られた架橋したポリカルボン酸ポリマー、本方法によって作られた吸水性の架橋されたポリカルボン酸ポリマー、及び架橋されたポリカルボン酸ポリマーを含む吸水性材料も開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の架橋されたγ-PGAの実施態様の自由膨潤倍率(FSC)及び負荷の下での吸収率(AUL)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<詳細な説明>
単数形の名詞、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、そのものの少なくとも1つが存在することを示すために交換可能に使用される。文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数のそのようなものが存在してもよい。「約」は、記載された数値が若干の不正確さを許容することを示す(値の正確さへのいくつかの言及「およそ」、あるいは合理的にその値に近い「ほぼ」)。「約」によって示される不正確さがその通常の意味で当技術分野において別段の理解がされない場合、本明細書で使用される「約」は、そのようなパラメータを測定及び使用する通常の方法から生じる可能性のある変動を少なくとも示す。加えて、範囲についての開示には、全ての値の開示、及びその全体の範囲内でさらに分割された範囲が含まれる。「含む」、「含んでいる」、「含有する」、及び「有する」という用語は包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、又はコンポーネントの存在を規定するが、 1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、又はそれらのグループの存在又は付加を排除しない。本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、それと関連して挙げられたものの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。「水溶性」ポリマーは、共溶媒及び/又は中和剤の存在の有無にかかわらず、水と組み合わせて、透明な溶液を形成することができるポリマーである。「水分散性」ポリマーは、共溶媒及び/又は中和剤の存在の有無にかかわらず、水と組み合わせて安定な分散液を形成することができるポリマーである。25℃において24時間貯蔵した後、目に見える沈降した沈殿物がない分散液が、安定していると考えることができる。
【0011】
架橋されたポリカルボン酸ポリマーは、ポリカルボン酸ポリマーをポリエポキシド化合物及びポリヒドラジド化合物で架橋することによって調製される。ポリカルボン酸ポリマーは、ポリマー主鎖に沿ってぶら下がったカルボン酸基(ペンダントカルボン酸基)を有するポリマーである。ポリカルボン酸ポリマーは、任意選択により、ポリマー鎖の一端又は両端にカルボン酸基を有していてもよい。様々な実施態様において、ポリカルボン酸ポリマーは、全てのモノマー単位から、平均して、約10番目ごとのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基;又は、全てのモノマー単位から、平均して、約6番目ごとのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基;又は、全てのモノマー単位から、平均して、約5番目ごとのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基;又は、全てのモノマー単位から、平均して、約4番目ごとのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基;又は、全てのモノマー単位から、平均して、約3番目ごとのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基;又は、全てのモノマー単位から、平均して、ほぼ1つおきのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基;又は、全てのモノマー単位からのペンダントカルボン酸基を有することができる。
【0012】
ポリカルボン酸ポリマーの重量平均分子量は、光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、約1kDa~約50,000kDa、好ましくは約5kDa~約50,000kDa、より好ましくは約100kDa~約5,000kDa、さらにより好ましくは約200kDa~約600kDaであることができる。様々な実施態様において、ポリカルボン酸ポリマーの重量平均分子量は、約1kDaから、又は約5kDaから、又は約10kDaから、又は約20kDa、又は約30kDa、又は約50kDaから、又は約100kDaから、又は約150kDaから、又は約200kDaから、又は約250kDaから、又は約300kDaから、約500kDaまで、又は約550kDaまで、又は約600kDaまで、又は約700kDaまで、又は約800kDaまで、又は約900kDaまで、又は約1000kDaまで、又は約2000kDaまで、又は約5000kDaまで、又は約7500kDaまで、又は約10,000kDaまで、又は約15,000kDaまで、又は約20,000kDaまで、又は約25,000kDaまで、又は約30,000kDaまで、又は約40,000kDaまで、又は約50,000kDaまでであることができる。ポリカルボン酸ポリマーは、好ましくは、水溶性又は水分散性であるために十分な数のカルボン酸基を含む。特定の実施態様において、ポリカルボン酸ポリマー鎖あたりのカルボン酸基の平均数は、約2~約700,000、好ましくは約50~約50,000、より好ましくは約1,500~約8,000であってよい。
【0013】
架橋のために適したポリカルボン酸ポリマーの非限定的な例には、エチレン性不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エタクリル酸、2-プロピルアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸など、ならびにこれらの塩及び無水物のホモポリマー及びコポリマー;カルボキシメチルセルロース及びその塩;ポリアスパラギン酸及びその塩;ポリグルタミン酸及びその塩;並びに、カルボキシエチルデキストラン及びその塩が含まれる。特定の実施態様において、ポリカルボン酸ポリマーは、α-ポリ(グルタミン酸)、γ-ポリ(グルタミン酸)、α-ポリ(アスパラギン酸)、β-ポリ(アスパラギン酸)、カルボキシメチルセルロース、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2-カルボキシエチルアクリレート)、ポリ(2-エチルアクリル酸)、ポリ(2-プロピルアクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されうる。特定の実施形態において、ポリカルボン酸ポリマーは、ポリ(アミノ酸)、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸のホモポリマー、例えば、リボソーム翻訳法(ribosomal translation method)によって製造されたL-α-ポリ(アスパラギン酸)又はL-α-ポリ(グルタミン酸)あるいはそれらの組み合わせであるか又はそれを含む。有用なポリ(アミノ酸)のその他の非限定的な例には、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸モノマーから縮重合によって製造された、D,L-(α,β)-ポリ(アスパラギン酸)もしくはD,L-(α,γ)-ポリ(グルタミン酸)又はそれらの組み合わせ、あるいは微生物培養もしくはインビトロ生化学法において非リボソーム合成によって製造された、D-γ-ポリ(グルタミン酸)、L-γ-ポリ(グルタミン酸)、D,L-γ-ポリ(グルタミン酸)、又はそれらの組み合わせが含まれる。ポリカルボン酸ポリマーは、架橋工程において任意の組み合わせで用いてもよい。
【0014】
ポリカルボン酸ポリマー又はポリカルボン酸ポリマー(複数)の組み合わせに加えて、上記の反応は、架橋剤と反応性の複数の基、例えば、カルボン酸基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される複数の反応性基を有する第2のポリマーをさらに含みうる。様々な実施態様において、第2のポリマーは、水溶性又は水分散性である。第2のポリマーとして適切なポリマーの非限定的な例には、デンプン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、イヌリン、セルロース、β-グルカン、デキストリン、ガラクトマンナン、アルギン酸、キトサン、エチレン性不飽和カルボン酸、アミン、及びアルコール、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エタクリル酸、2-プロピルアクリル酸、アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、マレイン酸、及び2-アミノエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、並びにそのようなポリマーの組み合わせが含まれる。
【0015】
ポリカルボン酸ポリマー又は複数のポリカルボン酸ポリマーの組み合わせは、ポリエポキシド及びポリヒドラジドを含む架橋剤との反応によって架橋される。この架橋剤は、水溶性又は水分散性のポリカルボン酸ポリマーが架橋された場合、生成物の吸水性を高めることが判明している。特に、ポリエポキシド架橋剤を単独で使用する場合と比較して、ポリエポキシド及びポリヒドラジドを含む架橋剤を使用すると、自由膨潤倍率(free swell capacity)及び負荷の下での吸収性(absorbency under load)の両方が大きくなる。自由膨潤倍率を決定するためには、0.1gの架橋したポリカルボン酸ポリマーを含むティーバッグを100mLの0.9%NaCl溶液に室温(23±2℃)において5分間浸す。次に、ティーバッグを食塩水から取り出し、5分間吊るして表面の水分を取り除く。次に、膨潤した架橋生成物を秤量する。自由膨潤倍率は、乾燥重量に対する、吸収された水の質量(湿重量と乾燥重量の差)の比率として定義される。負荷の下での吸収性を決定するためには、0.1gの架橋されたポリカルボン酸ポリマーを底部にスクリーン布を有するプラスチックシリンダーに入れ、プラスチックピストンを生成物上に置いた(0.3psi)。フィルタースポンジをガラス容器に入れ、フィルタースポンジの端まで0.9%NaCl溶液で容器を満たす。次に、上記の生成物を含む組み立て品(アセンブリ)を、室温(23±2℃)において90分間、フィルタースポンジの上に置く。負荷の下での吸収性は、乾燥質量に対する、吸収された水の質量(湿重量と乾燥重量の差)の比率によって計算される。
【0016】
適切なポリエポキシド架橋分子は、2つ以上の反応性エポキシド基を含む。これらの非限定的な例には、アルカンポリオール及びポリ(アルキレングリコール)のポリグリシジルエーテルが含まれるが、これらに限定されず、それにはさらなる例として以下のものが含まれる:エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル及びトリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、並びにエリスリトール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、及びトリメチルプロパンのポリグリシジルエーテル;ジエポキシアルカン及びジエポキシアラルカン(これには、1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,2,4,5-ジエポキシペンタン、1,2,5,6-ジエポキシヘキサン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,4-及び1,3-ジビニルベンゼンジエポキシドが含まれる);ポリフェノールポリグリシジルエーテル(これには、さらなる例として、4,4’-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)及びヒドロキノンジグリシジルエーテルが含まれる);及び、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えば、シュウ酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、グルタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、並びにポリ不飽和脂肪酸及びそれらのオリゴマーのエポキシドエステル、例えば、ポリエポキシ化二量体リノレン酸、ポリエポキシ化リノール酸、ポリエポキシ化リノレン酸が含まれ、それには、亜麻仁油、大豆油、これらのアルキルエステル、及びこれらのオリゴマーのポリエポキシ化誘導体も含まれる。
【0017】
特定の実施態様において、架橋剤は、式(I)で示される構造を有するポリエポキシド及び式(II)で示される構造を有するポリエポキシドからなる群から選択されるポリエポキシドを含む。
【化1】
(式中、nは1~150である。)
【化2】
(式中、R
1は、H、CH
3、CH
2CH
3、OH、CH
2OH、
【化3】
であり;R
2、R
3、及びR
4は、
【化4】
である)。
【0018】
ポリエポキシドは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリエチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ヒマシ油ポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってよい。
【0019】
架橋剤は、少なくとも2つのヒドラジド官能基を有するポリヒドラジドをさらに含む。適切なポリヒドラジドの非限定的な例には、脂肪族及び芳香族ジカルボン酸及びトリカルボン酸のポリヒドラジド、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸ジヒドラジド及びトリヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ヘキサヒドロフタル酸ジヒドラジド、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドが含まれる。
【0020】
特定の実施形態において、架橋剤は、式(III)に示される構造を有するポリヒドラジド及び式(IV)に示される構造を有するポリヒドラジドからなる群から選択されるポリヒドラジドを含む。
【化5】
(式中、nは1~10である。)
【化6】
(式中、Rは、H、OH、又はCH
3である。)
【0021】
ポリヒドラジドは、シュウ酸ジヒドラジド(オキサリルジヒドラジド)、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってよい。
【0022】
架橋剤は、複数のポリエポキシド又は複数のポリヒドラジド、あるいは複数のポリヒドラジド及び複数のポリエポキシドを含みうる。架橋剤は、架橋剤化合物の総モル数に基づいて少量の、例えば最大約10モル%のさらなる反応剤を含みうる。そのようなさらなる反応剤の例には、複数のアジリジン基を有する化合物、カルボジイミド化合物、少なくとも2つの活性水素を有するアミン化合物、及びポリカルボン酸モノマーが含まれる。
【0023】
特定の実施態様において、架橋反応において使用されるポリエポキシドの量及びポリヒドラジドの量は、それぞれ独立に、ポリカルボン酸ポリマーの質量に基づいて、好ましくは約0.1~約10質量%、より好ましくは約0.5~約5質量%、さらにより好ましくは約1~約3質量%である。特定の実施態様において、架橋反応において使用されるポリエポキシドの量及びポリヒドラジドの量は、それぞれ独立に、ポリカルボン酸ポリマーの酸当量質量に基づいて、好ましくは約0.1~約10モル%、より好ましくは約0.5~約5モル%、さらにより好ましくは約1~約3モル%である。特定の実施態様において、ポリエポキシドとポリヒドラジドのあいだのモル比は、好ましくは約0.1~約10、より好ましくは約0.2~約5、さらにより好ましくは約0.5~約2である。
【0024】
例示の実施形態において、架橋反応のための全ての成分は、水性媒体中に溶かされ、その反応溶液はオーブン中で加熱される。反応溶液中のポリカルボン酸ポリマーの濃度は、約10~約300g/L、好ましくは約50~約200g/L、より好ましくは約80~約150g/Lであってよい。反応溶液のpHは、約3~約9、好ましくは約4~約8、より好ましくは約5~約7であってよい。有用な中和剤には、アルカリ金属塩基、アンモニア、及び、又はアミンが含まれる。オーブン温度は、約50~約200℃、好ましくは約80~約180℃、より好ましくは約100~約150℃であってよい。反応混合物は、オーブン内で約1~約12時間、好ましくは約1.2~約6時間、より好ましくは約1.5~約3時間保持してよい。
【0025】
所望する場合は、乾燥は、オーブン、例えば、強制空気オーブン内で、上記のオーブン温度のいずれかで、又は約20~約180℃の温度で赤外線加熱して実施することができる。
【0026】
架橋反応は、水性媒体中で実施することができる。架橋されたポリカルボン酸ポリマー生成物を、次に、乾燥、粉砕、及び分級して、所望の平均粒子サイズ及び/又は粒子サイズ分布の粒子状の架橋されたポリカルボン酸ポリマーを得ることができる。粉砕機の非限定的な例には、垂直粉砕機、粉砕機、ロータリーカッターミル、ディスクミル、及びその他のそのような切断、粉砕、又は破砕装置が含まれる。一例では、架橋されたポリカルボン酸ポリマーは、粗粉砕後にさらに乾燥され、次いで、例えば適切なミルで粉砕又は破砕され、最終的な所望の平均粒子サイズに分級してよい。
【0027】
粉砕された、架橋されたポリカルボン酸ポリマーは、特定の粒子の形又は形状に限定されない。粒子状の架橋されたポリカルボン酸ポリマーは、粉末、フレーク、凝集体、顆粒、不規則な顆粒粒子、球体、楕円体、円筒形粒子(またはウィスカー)、繊維、又はその意図された用途に適した別の形状であってよい。使用例には、乳児用おむつ及び成人用衛生製品、土壌添加剤、油処理及び工業用脱水のため、薬物送達用デバイス及び組織工学用インプラントなどの医療用途のため、個人ケア用及び食品用を含めた水性媒体用の増粘剤として、及び、水又は水性流体の吸収、脱着、又は増粘を必要とするその他の用途が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施態様において、架橋されたポリカルボン酸ポリマーの粒子の組成物は、最終用途における性能又は使用の容易さを増強する賦形剤又は添加剤をさらに含む。賦形剤又は添加剤の種類は特に限定されない。適切な例には、材料特性を変えるためにポリカルボン酸ポリマーと架橋される他の分子種、分散を高めるための界面活性剤又は乳化剤、機械的特性を高めるための無機充填剤、架橋されたポリカルボン酸ポリマー粒子を活性製剤成分でコーティングすること、又は、架橋されたポリカルボン酸ポリマー粒子に活性製剤成分を含浸させることが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
試験は、架橋剤としてポリエポキシドのみを使用したものと比較して、ポリエポキシド及びポリヒドラジドを両方とも架橋反応のために用いた場合、架橋されたポリカルボン酸ポリマーははるかに高い吸水性を示すことを示している。さらに、唯一の架橋剤としてのポリヒドラジドの使用は、架橋された生成物をもたらさなかった。特定の理論に拘束されることを望まないが、改善された特性は、架橋されたポリカルボン酸ポリマー鎖の間に独特の結合を形成する、ポリエポキシド及びポリヒドラジドの間の反応によると考えられる。
【0030】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するのではなく、本発明を説明するために提供されていることに留意されたい。
【実施例】
【0031】
実施例で使用したγ-PGAの重量平均分子量は、光散乱検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、255kDaである。そのγ-PGA(10 g)を、浸漬ブレンダーを用いてDI水(100 mL)に分散させ、その溶液のpHを、4M HCl(100 μL)を添加することによって5.5に調節した。次に、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TTE)(200 μL)及びアジピン酸ジヒドラジド(ADH)(100 mg)を添加した。その混合物をシリコーンマット上に注ぎ、150℃で2時間加熱した。その後、その生成物を、大量のDI水に夜通し浸して精製し、脱水機中で45℃においてで48時間乾燥させ、次に、粒子(20~100メッシュ)へと粉砕した。その架橋された生成物を、次に、自由膨潤倍率(FSC)及び負荷の下での吸収性(AUL)を含めて、その吸水性について試験をした。
【0032】
比較のために、γ-PGAの架橋を、また、同じ条件下でトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルを用いて試みた。線状のγ-PGA(10 g)を、浸漬ブレンダーを使用してDI水(100 mL)中に分散させ、その溶液のpHを、4M HCl(100 μL)を添加することによって5.5に調節した。次に、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TTE)(200 μL)を添加した。その混合物をシリコーンマット上に注ぎ、150℃において2時間加熱した。その後、その生成物を、大量のDI水中に夜通し浸すことによって精製し、脱水機中で、45℃において48時間乾燥させ、次に、粒子(20~100メッシュ)へと粉砕した。
【0033】
比較のために、γ-PGAの架橋を、また、同じ条件下でアジピン酸ジヒドラジドを使用して試みた。線状のγ-PGA(10 g)を、浸漬ブレンダーを使用して、DI水(100 mL)中に分散させ、その溶液のpHを、4M HCl(100 μL)を添加して5.5に調節した。次に、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)(100 mg)を添加した。その混合物をシリコーンマット上に注ぎ、150℃において2時間加熱した。しかし、アジピン酸ジヒドラジドで架橋されたγ-PGAの調製は成功しなかった。得られた生成物は水溶性であり、ゲルを形成しなかった。
【0034】
自由膨潤倍率(FSC)を決定するために、上記生成物0.1gを含むティーバッグを100mLの0.9%NaCl溶液中に室温(23±2℃)において5分間浸した。次に、そのティーバッグを食塩水溶液から取り出し、斜めに5分間吊るして、過剰の食塩水を滴下によって除去した。その後、膨潤した架橋生成物を秤量した。自由膨潤倍率は、乾燥重量に対する、吸収された水の重量(湿重量と乾燥重量の差)の比によって計算される。実施例の自由膨潤倍率を図に示す。
【0035】
負荷の下での吸収率(AUL)を決定するために、0.1gの上記生成物を、底部にスクリーン布を有するプラスチックシリンダー中に入れ、プラスチックピストンを生成物の上に置いた(0.3 psi)。フィルタースポンジをガラス容器に入れ、その容器を、フィルタースポンジの端まで0.9%NaCl溶液で満たした。次に、生成物を含むその組み立て物を、室温(23±2℃)において90分間、フィルタースポンジ上に置いた。負荷の下での吸収率は、乾燥重量に対する、吸収された水の重量(湿重量と乾燥重量の差)の比によって計算される。実施例の負荷の下での吸収率を図に示す。
【0036】
図に示されているように、TTEによって架橋されたγ-PGAと比較して、TTE/ADHによって架橋されたγ-PGAは、はるかに高いFSC(33g/g対25g/g)及びAUL(31g/g対24g/g)を示し、これは、FSCについては32%の向上、かつAULについては29%の向上である。
【0037】
実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提供したものである。網羅的であること、又は本発明を限定することを意図するものではない。特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合、交換可能であり、具体的に示されていない又は説明されていない場合でも、選択された実施形態において使用することができる。それらはまた多くの方法で変えることができる。そのような変形は、本発明からの逸脱と見なされるべきではなく、そのようなすべての変更は、本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
【図】
【国際調査報告】