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特表2022-550894書き込み面上の器具によって描かれた軌跡を記録するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】書き込み面上の器具によって描かれた軌跡を記録するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221128BHJP
   G06F 3/04883 20220101ALI20221128BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20221128BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20221128BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G06F3/041 595
G06F3/04883
G06F3/041 600
G06F3/046 E
G06F3/041 510
G01B7/00 102M
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520720
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020077402
(87)【国際公開番号】W WO2021064041
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】1911036
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518119308
【氏名又は名称】アドヴァンスト マグネティック インターアクション, エーエムアイ
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アルイ ゼフェディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアル フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブルレ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ペリ イ サボリト ローラ
(72)【発明者】
【氏名】デュプレ ラ トゥル ジャン-マリー
(72)【発明者】
【氏名】オトソン トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】ジャイエット-カシヤス マーナ
(72)【発明者】
【氏名】トマ シモン
【テーマコード(参考)】
2F063
5E555
【Fターム(参考)】
2F063AA03
2F063AA25
2F063BA28
2F063BB03
2F063BC03
2F063BD01
2F063CA09
2F063CA15
2F063DA02
2F063DA05
2F063DB05
2F063DC08
2F063DD08
2F063EC04
2F063GA52
5E555AA67
5E555AA77
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC01
5E555BC19
5E555CA14
5E555CB11
5E555DB41
5E555DD06
5E555EA09
5E555FA00
(57)【要約】
書き込み面上の器具によって描かれた軌跡を記録するためのシステム。本発明は、先端(4)を備え、磁性物体(6)を備えた器具(3)を備える軌跡記録システムに関する。書き込み面(2)上の推定基準位置C’p|cを決定するように構成された磁性物体(6)の位置決め装置(10)と、推定基準位置C’p|cを少なくとも部分的に囲むN個の画素のうちM個の画素の集合Spxを画定し、前記M個の画素の集合Spxによって生成される電気信号に基づいて、先端(4)の書き込み面(2)上での接触を検出するように構成されたマトリクスアレイタッチセンサ(20)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み面(2)上に描かれた軌跡を記録するためのシステム(1)であって、
ユーザが操作することを意図し、磁性物体(6)を備え、前記書き込み面(2)に接触して記録すべき軌跡を形成することを意図する先端(4)を備える、器具(3)と、
前記書き込み面(2)に固定され、種々の連続測定時間tnで前記磁性物体(6)によって放出される磁場を測定するように構成された磁力計i)のアレイと、
前記測定された磁場に基づいて、少なくとも前記磁性物体(6)の位置を表す状態ベクトルXを決定し、前記状態ベクトルXに基づいて、前記書き込み面(2)上の推定基準位置C’p|cを決定する電子演算ユニット(11)と、を備える位置決め装置(10)と、
前記書き込み面(2)に固定され、それぞれが前記書き込み面(2)上の前記先端(4)の接触を表す電気応答信号を送るように構成されたN個の別個の画素Pxi)のマトリクスアレイと、
前記電子演算ユニット(11)に接続され、Nよりも小さいMであるM個の画素の集合Spxを決定するように構成され、前記推定基準位置C’p|cを少なくとも部分的に取り囲み、前記集合SpxのM個の画素に電気指令信号を送信し、それらの電気応答信号を受信し、M画素の集合Spxが生成する電気応答信号に基づいて、前記書き込み面(2)における前記先端(4)の接触を検出し、接触が検出された場合に、少なくとも連続する前記推定基準位置C’p|cに依存して、先端(4)の連続位置を記憶して軌跡の記録を形成する電子処理ユニット(24)と、を備えるマトリクスアレイタッチセンサ(20)と、
を備えるシステム(1)。
【請求項2】
前記位置決め装置(10)は、前記状態ベクトルXに基づいて、前記書き込み面(2)に直交する軸に沿った前記先端(4)の位置Pp,zを決定し、前記決定した位置Pp,zを所定の閾値Pp,z,thと比較し、前記位置Pp,zが前記所定の閾値Pp,z,th以下である場合に、前記推定基準位置C’p|cを前記マトリクスアレイタッチセンサ(20)に送信する、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記位置決め装置(10)は、前記状態ベクトルXに基づいて、前記書き込み面(2)に直交する軸に沿った前記先端(4)の位置Pp,zを決定し、前記決定した位置Pp,zを所定の閾値Pp,z,thと比較し、前記位置Pp,zが前記所定の閾値Pp,z,th以下である場合には、前記マトリクスアレイタッチセンサ(20)を起動し、逆の場合には、前記マトリクスアレイタッチセンサ(20)はオフのままである、請求項1または2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記推定基準位置C’p|cは、前記先端(4)の位置Pp,xyを、前記書き込み面(2)と直交する軸に沿って、前記書き込み面(2)と平行な平面上に投影することによって決定される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記位置決め装置(10)は、複数の測定時間で決定された状態ベクトルXに基づいて前記磁性物体(6)の速度を計算し、前記速度を前記処理ユニット(24)に送信するように構成され、前記処理ユニットは、主軸に沿って外形を有するM個の画素の集合Spxを画定するように構成され、前記主軸が前記速度の軸に平行である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記主軸は、前記速度のノルムに依存する長さを有する、請求項5に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記マトリクスアレイタッチセンサ(20)は、前記先端(4)によって前記書き込み面(2)に加えられる押圧力を決定するように構成されたマトリクスアレイ圧力センサである、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記マトリクスアレイタッチセンサ(20)は、前記書き込み面(2)における前記先端(4)の接触点の位置Cp|cを決定するように構成され、前記軌跡を形成するために記憶された前記先端(4)の位置は、前記基準推定位置C’p|cおよび前記先端(4)の接触点の位置Cp|cに応じて決定される、請求項7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記状態ベクトルXは、ベイズ推定アルゴリズムによって、または最適化法を使用して決定される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のシステムによって、書き込み面(2)上に器具(3)の先端(4)の軌跡を記録する方法であって、
器具は、最初、書き込み面(2)と接触していないが、その後、前記書き込み面(2)と接触するようにユーザによる前記器具を操作(3)するステップと、
磁力計(M)のマトリクスアレイによる、種々の連続した測定時間tにおける磁性物体(6)によって放射される磁場を測定するステップと、
測定された磁場の測定に基づいて、電子演算ユニット(11)による前記磁性物体(6)の状態ベクトルX(t)を決定するステップと、
決定された前記状態ベクトルX(t)に基づいて、前記電子演算ユニット(11)による前記書き込み面(2)上の推定基準位置C’p|c(t)を決定するステップと、
電子処理ユニット(24)によるM個の画素Pxi)の集合Spx(t)の少なくとも一部が前記推定基準位置C’p|c(t)の囲みを判定するステップと、
電子処理ユニット(24)による、前記集合Spx(t)の画素への電気指令信号の送信するステップおよび電気応答信号の受信するステップと、
前記M個の画素の前記集合Spxによって生成される電気応答信号に基づいて、前記電子処理ユニット(24)によって、前記書き込み面(2)における前記先端(4)の接触が検出され、接触が検出されたときに、少なくとも連続する前記推定基準位置C’p|c(t)に応じて、前記先端(4)の連続する位置を記憶して軌跡の記録を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項11】
これらの命令が演算ユニットによって実行される場合に、請求項10に記載の軌跡を記録する方法を実行するための命令を含むデータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、ユーザによって操作される器具の先端によって書き込み面上に描かれた軌跡を記録することである。軌跡は、先端が書き込み面に接触しているときの先端の連続するすべての位置に対応する。
【背景技術】
【0002】
器具の先端の軌跡を書き込み面上に記録するための電子システム-例えば、スタイラスの先端、鉛筆の先端は、とりわけ-特に、描かれた図面又は器具を操作するユーザによって書かれた筆記をデジタル化することを可能にする。
【0003】
一般に、ユーザの親指または手のひらの接触のような寄生接触の検出への影響を回避または制限しながら、器具の先端の書き込み面への接触を正確に検出できることが重要である。この点に関して、欧州特許公開第2811383号は、器具に固定された少なくとも1つの磁石の位置を追跡することを可能にする磁力計のアレイによって、書き込み媒体上に器具の追跡を記録するためのシステムの例を記載している。このようなシステムは寄生接触を考慮しないことを可能にする。
【0004】
この軌跡記録システムの器具は、書き込み面上の先端によって加えられる接触および圧力を検出するために、器具の本体に対して引込み可能な先端に固定された第1の磁石と、本体に固定された第2の磁石とを含む。システムは、2つの磁石の位置および/または配向を決定し、そこからそれらの相対的な分離を推定し、この分離が所定の閾値より小さい場合に、書き込み面上の先端の接触を検出する。しかしながら、ここでは、互いに機械的に結合された少なくとも2つの磁石を含む特定の器具を使用する必要がある。従って、いかなる器具も使用することはできない。
【0005】
国際公開第2013/057412号は、ここではマトリクスアレイタッチセンサによって器具の軌跡を記録するためのシステムの別の例を記載しており、これは、例えば、容量型または抵抗型である。このマトリクスアレイタッチセンサは、膜のいずれかの側の行および列に配置された導電性ラインの交差によって形成される別個の画素のマトリクスアレイを備える。画素によって放射される電気信号の振幅の測定に基づいて、器具の先端の接触が検出される。
【0006】
しかしながら、そのようなシステムでは、先端の接触位置の測定に関連する解像度は、特に、画素の寸法および配列のピッチに依存する。さらに、このようなシステムは、マトリクスアレイの画素を読み取るために必要な時間のために、一定の待ち時間を有する。この文献では、電力消費を最適化しながらこの待ち時間を減少させるために、グローバルカラム測定を実行し、活性化された列の少なくとも1つで接触が検出された場合にのみ、行を連続的に測定する準備がなされている。これは、提供されるべき画素の活性化のそのような制御を可能にする適切な電子機器を必要とする。したがって、依然として、必要とされる電子機器および接続リンクを複雑化することなく、画素読み出しに関連する待ち時間を減少させながら、電力消費を制限する必要がある。
【0007】
さらに、仏国特許公開第2988872号には、磁力計のアレイによって移動可能な磁性物体を配置するための装置を備えるディスプレイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許公開第2811383号
【特許文献2】国際公開第2013/057412号
【特許文献3】仏国特許公開第2988872号
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に改善することである。この目的のために、本発明の1つの課題は、書き込み面上に描かれた軌跡を記録するためのシステムであって、ユーザが操作することを意図し、磁性物体を備え、記録されるべき軌跡を形成するために書き込み面に接触することを意図した先端を備える器具と、書き込み面に固定され、磁性物体によって放出される磁場を測定するように構成された磁力計のアレイと、前記測定された磁場に基づいて、少なくとも前記磁性物体の位置を表す状態ベクトルXを決定し、前記状態ベクトルXに基づいて、前記書き込み面上の推定基準位置C’p|cを決定するように構成された電子演算ユニットと、を備える位置決め装置と、を備えるシステムである。
【0010】
本発明によれば、システムは、
書き込み面に固定され、それぞれが書き込み面上の先端の接触を表す電気応答信号を送達するように構成される、N個の別個の画素のマトリクスアレイと、
電子演算ユニットに接続され、Nよりも小さいMであるM個の画素の集合Spxを画定するように構成され、前記推定基準位置C’p|cを少なくとも部分的に取り囲み、前記集合SpxのM個の画素に電気指令信号を送信し、それらの電気応答信号を受信し、そして、前記M画素の集合Spxが生成する電気応答信号に基づいて、書き込み面における先端の接触を検出し、接触を検出したときに、少なくとも連続する推定基準位置C’p|cに応じて、先端の連続位置を記憶して軌跡の記録を形成する電子処理ユニットと、
を備えるマトリクスアレイタッチセンサを備える。
【0011】
以下は、器具の軌跡を記録するための本システムの特定の好ましいが非限定的な態様である。
【0012】
位置決め装置は、状態ベクトルXに基づいて、書き込み面に直交する軸に沿った先端の位置Pp,zを決定し、決定された位置Pp,zを所定の閾値Pp,z,thと比較し、位置Pp,zが所定の閾値Pp,z,th以下である場合に、推定基準位置C’p|cをマトリクスアレイタッチセンサに送信するように構成されてもよい。
【0013】
位置決め装置は、位置Pp,zが所定の閾値Pp,z,th以下であるときに、マトリクスアレイタッチセンサを活性化するように構成されてもよく、逆の場合には、マトリクスアレイタッチセンサはオフのままである。
【0014】
なお、推定基準位置C’p|cは、書き込み面に平行な平面内における先端の位置Pp,xyを書き込み面に直交する軸に沿って投影することによって求めてもよい。
【0015】
位置決め装置は、複数の測定時間で決定された状態ベクトルXに基づいて磁性物体の速度を計算し、処理ユニットに速度を送信するように構成することができ、処理ユニットは、主軸に沿って長い外形を有するM個の画素の集合Spxを画定するように構成され、主軸が速度の軸に平行である。主軸の長さは、速度のノルムに依存する。
【0016】
マトリクスアレイタッチセンサは、書き込み面上の先端によって加えられる押圧力を決定するように構成されたマトリクスアレイ圧力センサであってもよい。
【0017】
マトリクスアレイタッチセンサは、書き込み面上の先端の接触点の位置Cp|c、基準推定位置C’p|c及び先端の接触点の位置Cp|cに応じて軌跡を形成するために記憶された先端の位置を決定するように構成されてもよい。
【0018】
状態ベクトルXは、ベイズ推定アルゴリズムによって、または最適化方法を使用して決定され得る。
【0019】
本発明はまた、上記の特徴のいずれか1つに従うシステムによって、書き込み面上の器具の点の軌跡を記録する方法であって、
-器具が書き込み面に接触しないユーザによる器具を操作するステップと、
-磁力計のマトリクスアレイによる、様々な連続した測定時間tでの磁性物体によって放射される磁場を測定するステップと、
- 測定された磁場の測定に基づく磁性物体の状態ベクトルX(t)を決定するステップと、
-決定された状態ベクトルX(t)に基づいて、書き込み面上の推定基準位置C’p|c(t)を決定するステップと、
-少なくとも一部が推定基準位置C’p|c(t)を囲むN個の画素Pxの集合Spx(t)を決定するステップと、
-集合Spx(t)の画素へ電気指令信号を送信するステップ及び電気応答信号を受信するステップと、
-受信した電気応答信号に基づいて、先端が書き込み面に接触したことを検出するステップと、少なくとも連続した推定基準位置C’p|c(t)に応じて、先端の連続した位置を記憶して軌跡の記録を形成するステップと、を備える方法に関する。
【0020】
本発明はまた、これらの命令が、電子計算ユニットによって実行される場合に、上記の特徴に従って軌跡を記録する方法を実行するための命令を備えるデータ記憶媒体に関する。
【0021】
本発明の他の態様、目的、利点および特徴は、その実施形態の好ましい形態に関する以下の詳細な説明を読むとより明確になるであろう。この説明は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による、書き込み面上の器具の先端によって描かれた軌跡を記録するためのシステムの概略部分断面図である。
図2図1に示す軌跡記録システムの概略部分分解図である。
図3】一実施形態による、書き込み面上の器具の先端によって描かれた軌跡を記録する方法のステップを示すフローチャートである。
図4A】2つの異なる測定時間における、一実施形態による軌跡記録システムの概略斜視図および部分斜視図である。
図4B】2つの異なる測定時間における、一実施形態による軌跡記録システムの概略部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図および説明の残りの部分では、同一または類似の要素を指定するために同一の符号が使用されている。さらに、種々の要素は、図を明確にするために拡大縮小されて示されていない。さらに、種々の実施形態および変形例は、相互に排他的ではなく、一緒に組み合わせることができる。特に明記しない限り、「実質的に」、「約」および「程度の」という用語は、10%以内、好ましくは5%以内を意味する。さらに、「...と...の間で構成される」という用語およびそれに相当する用語は、別段の指定がない限り、限定値が含まれることを示す。
【0024】
本発明は、書き込み面上の器具の先端によって描かれた軌跡を記録するためのシステムおよび方法に関する。軌跡記録システムは、一般に、
- 磁性物体を備えた器具と、
- 磁性物体の位置Pおよび任意選択的にその向きを決定し、書き込み面上の推定基準位置C’p|cを決定するように構成された位置決め装置と、
- 書き込み面上の先端の接触を検出するように構成され、有利には、その支持力を測定するように構成されたマトリクスアレイタッチセンサと、から構成される。
【0025】
記録システムは、このように記録された軌跡を表示するためのグラフィカルインターフェースも備えることができる。これは、描画または書き込みのデジタル化、またはグラフィカルインターフェースの制御(例えば、グラフィカルインターフェース等によって表示されたデジタルオブジェクトを選択して移動する)にも適用できる。器具の先端によって描かれた軌跡を記録することによって、器具が書き込み面と接触しているときの器具の先端の連続した位置を決定し、記憶することを意味する。したがって、軌跡記録システムは、軌跡の開始を規定する書き込み面上の先端の最初の接触の初期時間、および接触の破損に対応して軌跡の終了を規定する終了時間を検出することができる。
【0026】
この器具は、例えば、ユーザの手によって操作されることを意図した物体である。これは、好ましくは非磁性材料、例えばプラスチックからなる剛性構造体(本体)を含み、この剛性構造体は、軌跡記録システムの書き込み面と接触するように意図された先端を有する。これは、最も広い意味での鉛筆の問題、すなわち、ペン、スタイラス、フェルト先端、ブラシ、またはその他の筆記用具または描画用具である場合がある。先端は、器具の一端であり、尖っていてもよく、丸みを帯びていてもよく、硬くてもよく、変形可能であってもよい。
【0027】
マトリクスアレイタッチセンサは、書き込み面上の器具の先端の接触を検出するのに適している限り、「タッチ」センサと呼ばれる。さらに、行および列に配置された導電性トラックによって形成された互いに異なる画素のマトリクスアレイを含む限り、それは「マトリクスアレイ」センサであると言われる。各画素は、書き込み面上の器具の先端のいずれかである場合に、接触を表す電気応答信号を送達するように構成される。マトリクスアレイタッチセンサは、容量型または抵抗型であってもよく、例えば、ピエゾ抵抗型であってもよい。より広くは、マトリクスアレイタッチセンサは、書き込み面上の先端の接触に依存して局所的に変化するパラメータを有し、任意選択的に、加えられる支持力に依存して変化するパラメータを有する。このパラメータは、電気容量、電気抵抗、電圧などとすることができる。
【0028】
図1および図2は、一実施形態による、器具3の軌跡を記録するためのシステム1の概略断面図および部分分解図である。この例では、器具3は、先端4が書き込み面2に接触することを意図するスタイラスである。また、マトリクスアレイタッチセンサ20は、抵抗性のマトリクスアレイ圧力センサであり、先端4の書き込み面2への接触を検出するとともに、先端4の支持力(押圧力)を測定するように構成されている。
【0029】
書き込み面2は、後述するマトリクスアレイタッチセンサ20の保護層の表面であってもよい。また、マトリクスアレイタッチセンサ20の支持面に配置された付加要素の表面であってもよく、この要素は、スタイラス3の先端4によって加えられる押圧力をマトリクスアレイタッチセンサ20に伝達するように構成されている。このような要素は、例えば、1枚以上の紙であってもよい。
【0030】
ここでは、X軸及びY軸が書き込み面2に平行な平面を形成し、Z軸が器具3の方向を向いている直交3次元直接座標系OXYZを定義して説明する。この例では、原点Oは、磁性物体6が追跡される軌跡領域Zsの境界に位置しているが、軌跡領域Zs内の他の場所、例えば書き込み面2の境界に位置していてもよい。
【0031】
器具3は、磁性物体6、ここでは永久磁石を備え、ここではスタイラス3の剛性構造5に対して自由度を持たずに固定されている。磁性物体6は、磁気モーメントmが規定された磁化、例えば残留磁化を有する材料からなる。それは、円筒状永久磁石、例えば、国際公開第2014/053526号に例示されているような環状永久磁石、または電磁石であってもよい。それはまた、磁気発生器のアレイによって放射された磁場を再放射するように構成されたトランスポンダであってもよい。しかし、この例では、磁性物体6は永久磁石である。この例では、磁性物体6は先端4から離れており、先端4からの非ゼロ距離Lに配置される。変形例としては、先端4以外であってもよい。
【0032】
磁性材料はフェリ磁性または強磁性であることが好ましい。外部磁場がなくても非ゼロの自発磁気モーメントを持つ。それは100A・m‐または500A・m‐よりも高い保磁力を有することができ、磁気モーメントの大きさは好ましくは0.01A・mよりも大きく、または0.1A・mよりも大きく、例えば約0.2A・mに等しい。なお、磁性物体6を磁気双極子で近似してもよいが、他のモデルを用いてもよいと考えられる。磁性物体6の磁気軸は、磁性物体6の磁気モーメントmと同一直線上にある軸と定義する。好ましくは、磁気軸は、器具の先端に向けられる。
【0033】
図1に示すように、磁石6は、スタイラス3の先端4から非ゼロの距離Lに配置されてもよい。この距離Lは既知であり、経時的に変化しない。これは、使用される器具3を表すデジタルモデルで定義され、このモデルは、位置決め装置10のメモリ13に格納される。このように、座標系OXYZにおける磁石6の位置および向きを知ることにより、スタイラス3の先端4の位置Pを推定することができる。なお、磁石6と先端4とが同一の場合には、磁石6の磁気モーメントmの向きを求める必要はない。
【0034】
スタイラス3は、トラッキング領域Zsにおいてユーザによって操作されることを意図する。最初、スタイラス3は書き込み面2と接触せず、時間とともに変化する非ゼロ値dだけ書き込み面2から離れている。続いて、ユーザは、先端4が書き込み面2に接触するようにスタイラス3を持ち出す。距離dは0であり、マトリクスアレイタッチセンサ20は接触を検出し、有利には先端4によって加えられる押圧力を検出する。次に、ユーザは、スタイラス3の先端4を書き込み面2上に移動する。書き込み面2に接触する先端4の連続した位置は、軌跡記録システム1によって決定される軌跡を形成する。
【0035】
軌跡記録システム1はまた、座標系OXYZにおける磁石6の位置を表す状態ベクトルX、および任意選択的にその向きを決定し、次に書き込み面2上の少なくとも1つの推定基準位置C’p|cを決定するように構成された位置決め装置10を備える。このようにして、位置決め装置10は、様々な連続測定時間において、書き込み面2上の接触前または接触中に、書き込み面2上の推定基準位置C’p|cを決定する。この推定基準位置C’p|cは、先端4の位置PのZ軸に沿った書き込み面2のXY平面への投影であることが好ましい。これは、マトリクスアレイタッチセンサ20ではなく、位置決め装置10によって決定される限りにおいて推定されるという。
【0036】
磁石6の位置を決定することは、状態ベクトルXの形で軌跡領域Zs内の磁石6の位置と、任意にその向きを決定することを意味する。ここで、磁石6の位置Pは、磁石6の幾何学的中心の座標、すなわち、磁石6のすべての点の加重されていない重心に対応する。また、磁石6の磁気モーメントmは、その成分(m、m、m)が実座標系OXYZのベクトルである。そのノルムはその大きさまたは振幅とも呼ばれ||m||またはmと表される。
【0037】
磁石6は、軌跡領域Zs内を周回するようになっている。後者は、位置決め装置10の磁力計の少なくとも1つの信号対ノイズ比(SNR)が所定の閾値以上である空間である。一例として、軌跡領域Zsは、信号、すなわち、磁石6によって生成され、対応する磁力計によって測定される、ノルムまたは磁場の少なくとも1つの成分が、例えばノイズの20倍以上である空間であってもよい。各磁力計に関連するノイズは、約0.2μTに等しい。この場合、軌跡領域Zsは、磁石6によって生成され、磁力計Mの少なくとも1つによって測定される磁場が約6μT以上である空間領域に対応し、これは、当該磁力計Mを通過する方向軸に沿って約20cmに等しい距離dmaxに対応する。より簡単には、軌跡領域Zsは、各点が最も近い磁力計Mを通る方向軸に沿った最大距離dmax以下の距離にある空間であると定義されてもよく、当該距離は、例えば、20cm、または10cm、または実際には5cmである。
【0038】
位置決め装置10は、座標系OXYZにおいて、追跡期間Tの様々な測定時間において、磁石6によって生成される磁場が寄与の1つである周囲磁場を測定し、次いで、磁力計Mの測定に基づいて、磁石6の位置および任意選択的にその向きを推定することができる。
【0039】
これを行うために、ここではマトリクスアレイタッチセンサ20の背面に自由度なしで固定された磁力計Mのアレイを備える。磁力計Mの数は、特に三軸磁力計の問題である場合には、例えば、2以上、好ましくは16以上、例えば約25とすることができる。しかしながら、磁力計Mのアレイは、互いに離れており、対になって平行でない少なくとも3つの測定軸を備える。磁力計Mは、行および列で整列されてもよく、または実質的にランダムに相互に配置されてもよい。磁力計Mの位置は既知である。例えば、当該位置は、1cmから10cmの間、例えば5cmに等しいものとすることができる。
【0040】
磁力計Mは、それぞれ少なくとも1つの測定軸を有し、例えば、x、y、zと示される3つの測定軸を有する。したがって、各磁力計は、磁石6によって生成される1つの寄与である周囲磁場Bの振幅および方向を測定する。より正確には、各磁力計Mは、磁力計の軸x、y、zに沿った周囲磁場Bの直交投影のノルムを測定する。磁力計Mの較正パラメータは、磁力計に関連するノイズであってもよく、ここでは0.2μTのオーダである。周囲磁場Bとは、どのような磁気要素によっても乱されず、特に50μTのオーダの地球寄与Bterrから形成される磁場を意味し、その上に磁石6によって生成される磁場Bが重ねられる。センサのノイズに関連した寄与やオフセット誤差に関連した寄与など、ここでは無視される他の磁気的寄与も重ね合わせることができる。
【0041】
位置決め装置10は、磁力計Mの測定値に基づいて、座標系OXYZにおける磁石6の位置、および任意選択的にその向き、位置、および必要に応じて状態ベクトルXを規定する向きを決定することができる演算ユニット11をさらに備える。また、演算ユニット11は、座標系OXYZにおいて、スタイラス3の先端4の位置Pを求めることができる。また、演算ユニット11は、書き込み面2上の推定基準位置C’p|cを決定するように構成されており、この推定位置C’p|cをマトリクスアレイタッチセンサ20に送信する目的で、マトリクスアレイタッチセンサ20の処理ユニット24に接続されている。演算ユニット11は、書き込み面2の座標を座標系OXYZで有する。これにより、座標系OXYZにおける先端の位置Pと書き込み面2の座標を知ることができるので、当該ユニットは、書き込み面2における推定基準位置C’p|cを求めることができる。
【0042】
この目的のために、各磁力計Mは、データバス(図示せず)によって演算ユニット11に電気的に接続される。演算ユニット11は、データ記憶媒体に記憶された命令を実行することができるプログラマブルプロセッサ12を備える。さらに、磁石6を位置を特定するために必要な命令を含むメモリ13と、使用される器具3のデジタルモデルとを備え、状態ベクトルXに基づいて座標系OXYZにおけるスタイラス3の先端4の位置Pを求めることができる。メモリ13はまた、各測定時間で計算された情報を記憶するように構成される。
【0043】
演算ユニット11は、座標系OXYZにおける磁石6の位置、およびこの例ではその磁気モーメントmの向きおよび大きさを磁力計Mの測定値に関連付ける数学モデルを実行する。この数学モデルは、電磁気学、特に静磁気学の方程式に基づいて構築され、座標系OXYZにおける磁力計の位置および方向によって特にパラメータ化される。ここで、このモデルは非線形である。演算ユニット11は、例えばベイジアンフィルタ(例えば、拡張カルマンフィルタ)または最適化、または同じタイプの他の任意のアルゴリズムなど、その解を推定するアルゴリズムを実装する。
【0044】
好ましくは、磁石6を磁気双極子として近似させることができるようにするために、磁石6と各磁力計Mとの間の距離は、磁石6の最大寸法の2倍、または3倍よりも大きい。この寸法は、20cm未満、または10cm未満、または実際には5cm未満であってもよい。磁石6は、特に磁石6とアレイの各磁力計Mとの間の距離に依存するとりわけ双極子モデルを用いてモデル化されてもよい。
【0045】
軌跡記録システム1は、マトリクスアレイタッチセンサ20、ここではマトリクスアレイ圧力センサを備える。ここで、スタイラス3の先端4が書き込み面2に当接したことを、この書き込み面2に作用する押圧力の大きさの測定に基づいて検出するように構成されている。
【0046】
マトリクスアレイ圧力センサは、その表面に加えられる圧力に敏感な複数の画素Pxから形成される圧力検出マトリクスアレイを備える。圧力検出マトリクスアレイは、この例では抵抗型である。このようなセンサは、力感知抵抗器とも呼ばれる。
【0047】
これは、ピエゾ抵抗材料、すなわち、例えば導電性ポリマの、加えられた機械的応力に応じて局所電気抵抗が変化する材料からなる膜23から形成される。膜の感知材料は、XY平面内で連続していてもよく、または画素化されていてもよい。導電性トラック21、22は、膜23の一方の側の行に形成され、反対側の列に形成される。画素Pxは、上から見て、導電性トラック21、22の行および列の間の交差によって形成される。画素Pxは、互いに隣接してもよく、または互いに離れてもよい(図2に示すように)。
【0048】
マトリクスアレイ圧力センサ20は、例えば約2500に等しいN個の画素Pxを備える。導電性トラック21、22は、例えば、数mm、2.5mmの幅を有することができ、したがって、ここでの1つの画素は、2.5×2.5mmの面積を有する。画素Pxは、XY平面内で互いに、例えば約1mmの距離だけ離れて別個である。書き込み面2に接触するスタイラス3の先端4の直径は、ここでは1mm程度であり、例えば、1mm~3mm程度である。
【0049】
マトリクスアレイ圧力センサ20は、圧力検出マトリクスアレイの種々の画素を指令して読み出すマイクロコントローラ25を備える処理ユニット24と、先端4の接触を検出し、画素によって生成される電気応答信号に基づいて、加えられた押圧力の大きさを決定するように構成された演算ユニット26とを備える。このように、マイクロコントローラ25は、各画素に電気指令信号を送信し、電気応答信号を受信するように構成されており、電気応答信号は、スタイラス3の先端4の書き込み面2への接触を表し、さらに、ここでは、スタイラス3によって加えられる押圧力の大きさを表す。処理ユニット21は、座標系OXYZにおけるN個の画素Pxの座標を有する。このように、書き込み面2上の推定基準位置C’p|cと、座標系OXYZ内のN個の画素Pxの座標と、を知ることができるので、推定基準位置C’p|cを少なくとも部分的に囲むNより小さいMのM個の画素の集合Spxを、決定することができる。Mは2以上であることが好ましい。
【0050】
演算ユニット26は、受信した電気応答信号に基づいて、書き込み面2における先端4の接触の有無を検出する。この目的のために、各画素によって生成される電気信号は、所定の閾値よりも高い場合には、書き込み面2上の先端4の接触に対応する大きさを有する。1つまたはそれ以上の画素によって生成される電気信号の振幅は、先端4によって加えられる押圧力の大きさに依存する。
【0051】
そして、処理ユニット24は、接触が検出されたときに、位置決め装置10によって決定された書き込み面2上の連続する推定基準位置C’p|c(t)を記憶することによって、書き込み面2上に器具3の軌跡を形成するか、または形成に関与する。加えられる押圧力の大きさは、器具3の軌跡の付加的な特性を定量化することを可能にし、例えば器具3の軌跡の幅を変化させるために使用することができる。処理ユニット24は、例えばシステムによって記録された軌跡を表示する目的で、グラフィカルインターフェース7に接続されてもよい。
【0052】
従って、処理ユニット24は、アナログ-デジタル変換器ADCに関連する画素への電力の供給を制御するためのマイクロコントローラ25を備えることができ、その演算ユニット26は、少なくとも1つのプロセッサと、先端4の接触の検出および押圧力の測定を実施し、各測定時間で計算された情報を記憶するために必要な命令を含む少なくとも1つのメモリと、ここでは変換器とを備える。もちろん、演算ユニット26のプロセッサおよびメモリは、マイクロコントローラ25のものと共通であっても、そうでなくてもよい。
【0053】
本発明によれば、マトリクスアレイタッチセンサ20の処理ユニット24は、位置決め装置10の演算ユニット11に接続され、その演算ユニット11から、書き込み面2上の先端4の接触の有無にかかわらず、書き込み面2上の連続する推定基準位置C’p|c(t)を受信する。
【0054】
好ましくは、先端4のZ軸に沿った位置Pp,zが所定の閾値Pp,z,th以下の場合にのみ、これらのデータを受信する。そうでない場合には、マトリクスアレイタッチセンサ20は、軌跡記録システム1の電力消費を制限するように、非活性化、すなわち、完全にまたは部分的にオフにされ得る。
【0055】
位置Pp,zが閾値Pp,z,th以下の場合には、処理ユニット24が起動され(オンされ)、書き込み面2上の推定基準位置C’p|cの値を受信し、推定基準位置C’p|cの少なくとも一部を取り囲むMがNよりも小さいM画素の集合Spxを決定する。一例として、画素の総数Nは約2500に等しくてよく、前記集合Spxの画素の数Mは約25、例えば5×5画素の正方形に等しくてよい。
【0056】
次に、処理ユニット24は、当該集合Spxの画素についてのみ測定を行い、マトリクスアレイのすべての画素について測定を行うのではない。したがって、電気指令信号は、M個の画素にのみ送信され、残りの画素はオフにされたままである。次に、電気応答信号が処理ユニット24によって受信される。したがって、画素指令/読み出し待ち時間は、ここでは、各測定時間で2500画素ではなく25画素を読み取る問題である限り、大幅に減少する。その結果、消費電力も大幅に低減される。
【0057】
最後に、処理ユニット24は、書き込み面2上の連続する推定基準位置C’p|cに基づいてスタイラス3がトレースした軌跡を判別し、ここでは、与えられた押圧力の値に基づいて、判別した軌跡をグラフィカルインターフェース7に表示させる。以下に詳述するように、軌跡は、全ての連続する推定位置C’p|cによって形成されてもよいが、マトリクスアレイタッチセンサ20によって決定される接触の連続する位置Cp|cを考慮してもよい。そのため、接触の測定精度を改善することができる。
【0058】
このように、軌跡記録システム1は、磁性物体6を位置決めするための装置10とマトリクスアレイタッチセンサ20との組み合わせにより、多くの利点を有する。したがって、磁石などの磁性物体6を固定することができる器具であれば、多数の市販器具を使用することができる。また、器具3は、単一の磁石6のみを備えて配置されていてもよい。したがって、器具に固定された複数の磁石を設けることは可能であるが、複数の磁石を備える必要はない。従って、欧州特許公開第2811383号のように、専用の複雑な器具3を使用する必要性は回避される。加えて、圧力センサを器具に一体化する必要はもはやない。
【0059】
また、先端4の接触は、マトリクスアレイタッチセンサ20によって正確に検出され、位置決め装置10によって、書き込み面2上の先端4の位置が高分解能で決定される。したがって、先端4の位置の検出は、寸法および導電性トラック21、22の配置に依存する従来のマトリクスアレイタッチセンサの潜在的に低解像度によって影響されない。また、書き込み面2上の推定基準位置C’p|cの決定が、書き込み面2上のユーザの指や手のひらの接触などの寄生接触によって妨げられることもない。
【0060】
さらに、軌跡記録システム1は、マイクロコントローラ25によって集合SpxのM個の選択された画素のみが活性化され、マトリクスアレイのN個の画素が活性化されない限り、画素のマトリクスアレイの指令/読み出しに関する待ち時間が特に低い。従って、指令/読出し周波数は特に高くてもよい。このため、軌跡記録システム1の消費電力が低減される。さらに、磁性物体6が位置決め装置10によって追跡されている間、特に、Z軸に沿った先端4の位置Pp,zが閾値Pp,z,thよりも大きいとき、マトリクスアレイタッチセンサ20は少なくとも部分的に非活性のままであることが有利である。
【0061】
さらに、マイクロコントローラ25および電気的接続が単純かつ従来のマトリクスアレイタッチセンサ20を使用することができる。国際公開第2013/057412号に記載されているように、行および/または列を個別にかつ連続的に、またはすべてまとめて活性化する必要性に結び付けられた特定のマイクロコントローラ25および特定の接続を使用する必要性は、したがって回避される。
【0062】
図3は、一実施形態による器具3の軌跡を記録する方法を示すフローチャートである。この例では、軌跡記録システム1は、図1および図2を参照して説明したものと同一である。したがって記録された軌跡をグラフィカルインターフェース7に表示させる。
【0063】
最初のステップ11では、スタイラス3のデジタルモデルが、位置決め装置10の演算ユニット11のメモリ13に格納される。このデジタルモデルにより、上述したように、磁石6の状態ベクトルXに基づいて、座標系OXYZにおける先端4の位置Pを推定することができる。このステップ11は、書き込み面2の座標系OXYZに座標を記憶するフェーズと、マトリクスアレイタッチセンサ20のN個の画素Pxの座標系OXYZに座標を記憶するフェーズとを備えてもよい。
【0064】
ステップ21において、ユーザは、軌跡領域Zs内でスタイラス3を操作する、すなわち、スタイラス3の位置を修正し、任意選択的に座標系OXYZ内のスタイラス3の向きを修正する。まず、スタイラス3の先端4は、書き込み面2に接触しておらず、Z軸に沿った位置Pp,zが閾値Pp,z,thよりも大きい。その後、先端4は、閾値Pp,z,th以下の位置Pp,zを有するが、依然として書き込み面2に接触していない。最後に、書き込み面2に接触し、書き込み面2上の先端4の位置を記憶して記録表示軌跡を形成する。
【0065】
ステップ22からステップ33までは、測定時間tで反復的に実行され、時間は、決定されたサンプリング周波数、例えば140Hzで離散化される。ランクnの各反復には、現在時刻とも呼ばれる1つの測定時間tが関連付けられる。
【0066】
ステップ22において、磁力計は、現在の時間における周囲磁場、特にスタイラス3に固定された磁石6によって生成された周囲磁場に対する寄与を測定する。
【0067】
ステップ23において、演算ユニット11は、周囲磁場の測定値を受信し、そこから磁石6によって生成された磁場寄与を導出し、座標系OXYZにおける現在時間tにおける磁石6に関連する状態ベクトルX(t)を決定する。状態ベクトルX(t)は、座標系OXYZにおける磁石6の位置と、この例ではその向きとを備える。この状態ベクトルの推定は、ベイズ型の磁石6の位置および向きを推定するためのアルゴリズム、例えば、拡張カルマンフィルタを用いて、または最適化方法(勾配降下法等)を用いて、または同じ型のその他のアルゴリズムを用いて行うことができる。磁石6に関連する状態ベクトルの推定の例は、特に、特許文献、国際公開第2018/219891号に記載されている。
【0068】
ステップ24において、演算ユニット11は、状態ベクトルX(t)とスタイラス3のデジタルモデルとに基づいて、スタイラス3の先端4の位置P(t)を求める。先端4の位置P(t)は、Z軸に沿った成分Pp,z(t)と、書き込み面2に平行なXY平面の成分Pp,xy(t)とを備える。磁性物体6が先端4以外でない場合には、先端4の位置P(t)は、位置P(t)と同一である。
【0069】
ステップ25において、演算ユニット11は、状態ベクトルX(t)と、座標系OXYZにおける書き込み面2の座標とに基づいて、書き込み面2上の推定基準位置C’p|c(t)を決定する。この推定基準位置C’p|cは、XY平面における先端4の位置Pp,xy(t)のZ軸に沿った投影に等しくてもよく、この場合、C’p|c(t)とPp,xy(t)とは等しい。
【0070】
ステップ26では、先端4のZ軸に沿った位置Pp,z(t)の値を所定の閾値Pp,z,thと比較する。位置Pp,z(t)が閾値Pp,z,thより大きい場合、位置決め装置10は、磁場の測定を継続する(ステップ22以降)。マトリクスアレイタッチセンサ20は、軌跡記録システム1の電力消費を制限するように、非活性のまま、すなわち電気的にオンにされないことが有利である。位置決め装置10がグラフィカルインターフェース7に直接接続されている場合、先端4は、軌跡の表示なしにグラフィカルインターフェース7上に表示される。位置Pp,z(t)が閾値Pp,z,th以下である場合、方法はステップ27に続く。
【0071】
ステップ27では、マトリクスアレイタッチセンサ20を起動して(適宜)、書き込み装置2上の推定基準位置C’p|c(t)の値をマトリクスアレイタッチセンサ20の処理ユニット24に送信する。そして、推定基準位置C’p|c(t)を少なくとも部分的に囲む圧力検出マトリクスアレイの画素の集合Spx(t)を決定する。このため、座標系OXYZにおける各画素Pxの座標は、処理ユニット24のメモリに格納される。処理ユニット24は、推定基準位置C’p|c(t)を中心とする所定の外形を有する画素選択領域Zpx(t)を決定し、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形等の形状を有する。この点に関して、図4A及び図4Bは、2つの異なる測定時間における軌跡記録システム1を示し、推定基準位置C’p|c(t)を中心とする領域Zpx(t)を示す。この例では、集合Spx(t)は、その領域の少なくとも一部がこの画素選択領域Zpx(t)内に位置する画素を含む。この集合Spx(t)は、測定時間tごとに再定義される。
【0072】
さらに、マトリクスアレイタッチセンサ20は、書き込み面2上に接触(スタイラスの先端、指、手のひらなど。)がない状態で、画素のマトリクスアレイに関連する「バックグラウンドノイズ」を測定することによって初期化されてもよい。次いで、この初期測定値は、集合Spx(t)の画素の電気応答信号の測定値から系統的に減算され、これにより、時間および/またはオフセット誤差の関数としてのドリフトを除去することができる。
【0073】
ステップ28において、処理ユニット24のマイクロコントローラ25は、集合Spx(t)のM個の画素のみを活性にし、選択されていない(すなわち電気的にオンになっていない)他の画素を非活性のままにする。したがって、集合Spx(t)の画素に電気指令信号を送信し、その電気応答信号を受信する。
【0074】
ステップ29において、処理ユニット24は、書き込み面2上の先端4の接触を表すパラメータK(t)の値を決定する。このパラメータは、集合Spx(t)の画素のうちの少なくとも1つの電気応答信号の振幅であってもよく、または任意選択的に重み付けされた集合Spx(t)の画素の電気応答信号の振幅の平均であってもよい。それは、集合Spx(t)の画素の少なくとも1つの電気抵抗またはその他の同等のパラメータの問題であってもよい。
【0075】
ステップ30において、処理ユニット24は、パラメータK(t)の値と所定の閾値Kthとを比較し、パラメータK(t)の値が閾値Kth以上である場合に、先端4が実際に書き込み面2に接触していることを検出する。閾値Kthにより、測定ノイズに関連する変動をフィルタリングすることができる。そうでない場合には、軌跡記録方法は磁場の測定を続行し(ステップ22以降)、接触が検出された場合には、方法はステップ31に進む。
【0076】
ステップ31において、処理ユニット24は、マトリクスアレイタッチセンサ20によって先端4の書き込み面2への接触が検出された場合に、位置決め装置10から送られてきた推定基準位置C’p|c(t)を記憶する。処理ユニット24によって記憶された連続する推定基準位置C’p|c(t)は、スタイラス3によって描かれた軌跡の記録を形成または形成に関与する。
【0077】
変形例として、処理ユニット24によって記憶されるような、書き込み面2に接触する先端4の位置は、位置決め装置10によって送られる推定基準位置C’p|c(t)と、マトリクスアレイタッチセンサ20によって送られる位置Cp|c(t)の両方に依存してもよい。したがって、位置Cp|c(t)は、先端4によって書き込み面2に加えられ、集合Spx(t)の画素によって測定される押圧力の重心(加重重心)の位置に対応し得る。なお、処理ユニット24が記憶する先端4の位置は、C’p|c(t)とCp|c(t)との位置の平均値であってもよい。
【0078】
ステップ32において、マトリクスアレイタッチセンサ20が押圧力を測定するように構成されている場合、すなわち、圧力検出マトリクスアレイを備えている場合、処理ユニット24は、先端4によって書き込み面2に加えられる押圧力を測定する。押圧力は、既知の方法で、集合Spx(t)の画素によって生成される電気応答信号の振幅に基づいて決定される。この押圧力により、例えば、現在時刻tにおける軌跡の特性、例えば、グラフィカルインターフェース7に表示される軌跡の幅を変更することができる。
【0079】
ステップ33において、処理ユニット24は、先端4の連続した記憶位置に基づいて、ここでは先端4によって書き込み面2に加えられる押圧力を考慮して軌跡を構築する。そして、グラフィカルインターフェース7に記録された軌跡の表示を指示する。
【0080】
ステップ22から33は、定義されたサンプリング周波数で繰り返され、このサンプリング周波数は、時間にわたって一定であってもなくてもよく、磁石6または先端4の速度に特に依存してもよく、この速度は、位置決め装置10によって状態ベクトルX(t)に基づいて計算される。特に、磁石6の位置に関連するサンプリング周波数(例えば140Hz)は、集合Spx(t)の画素が命令/読出される周波数と同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
図4Aおよび図4Bは、マトリクスアレイタッチセンサ20の書き込み面2の上で2つの異なる時間にユーザによって操作される器具3の斜視図である。
【0082】
この2つの例では、先端4は、閾値Pp,z,th未満で先端4のZ軸に沿った位置Pp,z(t)を有するため、マトリクスアレイタッチセンサ20が活性化され、書き込み面2上の推定基準位置C’p|c(t)が伝達される。そして、値C’p|c(t)を中心とする円形状の選択領域Zpx(t)を決定する。
【0083】
図4Aの例では、スタイラス3は、書き込み面2の境界上に配置される。そして、選択領域Zpx(t)は、書き込み面2上及び書き込み面2外に跨っている。1つの画素は、全体として選択領域Zpx(t)に位置し、一部が選択領域Zpx(t)に位置する5つの隣接画素によって囲まれている。したがって、集合は、少なくとも部分的に選択領域Zpx(t)内に位置する6つの画素を含む。このように、選択された画素は、書き込み面2上の推定基準位置C’p|c(t)を少なくとも部分的に取り囲む。
【0084】
図4Bの例では、スタイラス3は、書き込み面2の中心に配置される。そして、選択領域Zpx(t)は、全て書き込み面2上に存在する。この例では、単一の画素は、選択領域Zpx(t)内に全て配置され、選択領域内に部分的に配置される8つの隣接する画素によって囲まれている。したがって、集合Spxは、少なくとも部分的に選択領域Zpx(t)に配置される9個の画素を含む。このように、選択された画素は、書き込み面2上の推定基準位置C’p|cを少なくとも部分的に取り囲む。
【0085】
もちろん、選択領域Zpx(t)は、他の形状であってもよい。例として、それは細長い形状を有してもよく、次いで、主軸は、状態ベクトルX(t)に基づいて位置決め装置10によって決定される先端4の移動方向に配向される。主軸の寸法は、先端または磁石の速度に依存してもよく、この速度は、複数の測定時間で推定された状態ベクトルXに基づいて演算ユニット11によって決定され、処理ユニット24に送信される。さらに、選択領域Zpx(t)の形状および/または大きさは、使用される器具3の種類に依存してもよく、任意に、先端4の特性に依存してもよい。
【0086】
特定の実施形態について説明した。種々の変形および修正は、当業者には明らかであろう。
【0087】
このように、軌跡記録システム1は、少なくとも1つの磁性物体6を備え、同一の書き込み面2に接触することを意図する複数の器具3を備えることができる。このように、位置決め装置10は、磁性物体6のそれぞれについて状態ベクトルを決定することができ、マトリクスアレイタッチセンサ20は、各器具3の先端4の接触を決定することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】