(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】ポリエチレンコポリマー並びにその製品及び方法
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20221128BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20221128BHJP
C08L 31/02 20060101ALI20221128BHJP
C08F 218/04 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C08F210/02
C08L23/08
C08L31/02
C08F218/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520765
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2020020059
(87)【国際公開番号】W WO2021064474
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー・ハンロン
(72)【発明者】
【氏名】ハディ・モハンマディ
(72)【発明者】
【氏名】ネイ・セバスティアン・ドミンゲス・ジュニオル
(72)【発明者】
【氏名】アドリアーネ・ゴメス・シマンケ
(72)【発明者】
【氏名】マノエラ・エルワンガー・カングッス
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ・ヒンテンラング
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB041
4J002BB061
4J002BF011
4J100AA02P
4J100AG02Q
4J100AG04R
4J100AG06Q
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA11
4J100DA19
4J100DA24
4J100DA25
4J100DA42
4J100DA49
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA29
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA28
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
ポリマー組成物は、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーと、任意選択で酢酸ビニルとから製造されるポリマーであって、GPCにより得られる5~10,000kDaの範囲の数平均分子量、及び1~60の範囲の分子量分布を有するポリマーを含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、
1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーと、
任意選択で酢酸ビニルと
から製造されるポリマーであって、
GPCにより得られる5~10,000kDaの範囲の数平均分子量及び1~60の範囲の分子量分布を有するポリマーを含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーが、一般構造(II):
【化1】
(式中、R
4及びR
5は、合計炭素数7を有する)
を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
ポリマーが、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルとからなるコポリマーである、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
ポリマーが、0.01~90wt%の範囲のビニル分岐ビニルエステル含有率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ポリマーが、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルと、酢酸ビニルとからなるターポリマーである、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ポリマーが、0.01~89.99wt%の範囲の分岐ビニルエステル含有率を有する、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ポリマーが、0.01~89.99wt%の範囲の酢酸ビニル含有率を有する、請求項5又は6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
40barを超える反応器圧力及び50℃を超える反応器温度を含む条件下でポリマーが重合される、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
1000barを超える反応器圧力及び50℃を超える反応器温度を含む条件下でポリマーが重合される、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
ポリマーが、10~99.99wt%の範囲のエチレン含有率を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
GPCにより測定される長鎖分岐頻度が、0~10の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
13C NMRにより測定される長鎖分岐含有率が、0~10の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
ASTM D3418に準拠したポリマーの溶融温度が、0~150℃の範囲である、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
ASTM D3418に準拠したポリマーの結晶化温度が、0~150℃の範囲である、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
ASTM D3418に準拠した結晶化熱が、0~280J/gの範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
ポリマーが、10℃刻みの連続自己核形成及びアニーリングによる熱分画により測定される、0~20の極小を有する熱流量対温度曲線を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
極小が、0~150℃の温度範囲内に存在する、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
250℃から400℃の間の第1の質量損失の全コモノマー含有率に対する比が、0~2の範囲である、請求項1から17のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
ポリマーが、0.1MPa~10GPaの範囲の0℃での貯蔵弾性率を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
ポリマーが、-75℃から75℃の間のtanδ対温度のプロットに1つ~2つの緩和極大を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
T
αが、-75℃と75℃の間で変化する、請求項20に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
T
βが、-75℃と50℃の間で変化する、請求項20又は21に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
ASTM D1238に準拠した190℃/2.16kgでのMFRが、0.01g/10分~1000g/10分の範囲である、請求項1から22のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項24】
ASTM D792に準拠した密度が、0.85g/cm
3~1.3g/cm
3の範囲である、請求項1から23のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項25】
ASTM D6866-18に準拠したバイオベース炭素含有率が、1%~100%の範囲である、請求項1から24のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載のポリマー組成物から調製される、物品。
【請求項27】
物品が、シール、ホース、履物インソール、履物ミッドソール、履物アウトソール、自動車用バンパー、シーリングシステム、ホットメルト接着剤、フィルム、コンベヤベルト、スポーツ用品、回転成形品、プライマー、ライニング、工業床、及び音響遮音体である、請求項26に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリエチレンコポリマー並びにその製品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン材料、例えばポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)の製造は、これまでに発明された合成ポリマーの中で最大の生産量である。これらの材料の成功は、生産コストの低さ、エネルギー効率、温室効果ガスの排出量の少なさ、特性の異なる広範なポリマーを生成する汎用性、及びポリマー加工性の高さにより大いに達成されたものであった。ポリオレフィン材料を用いて製造される広範な物品としては、フィルム、成形品、発泡体、パイプ、織物等が挙げられる。これらの製品は、熱分解してガスやオイルに、又は焼却してエネルギーにリサイクルできることも魅力である。ポリオレフィン組成物の物理的及び化学的特性は、幾つかの要因、例えば分子量、分子量の分布、コモノマー(又は複数のコモノマー)の含有率、性質及び分布、短鎖及び/又は長鎖分岐の存在及びその分布、熱及びせん断履歴等に応じて様々な反応を呈する場合があり、これらがある特定の用途におけるその適用可能性を規定する。ポリオレフィンの利用を増やすため、ポリオレフィンは、多数の可能なコモノマーとのランダム及びブロックコポリマーとして、並びに多数の有望な添加剤との混合物として配合することもできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この要約は、詳細な説明において以下に更に記載する概念の一部を紹介するためにて記載する。この要約は、特許請求の範囲に記載された主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものでも、特許請求の範囲に記載した主題を制限する際の補助として使用されることを意図するものでもない。
【0004】
1又は複数の態様において、本明細書に開示される実施形態は、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーと、任意選択で酢酸ビニルとから製造されるポリマー組成物であって、GPCにより得られる5~10,000kDaの範囲の数平均分子量、及び1~60の範囲の分子量分布を有するポリマーを含むポリマー組成物に関する。
【0005】
別の態様において、本明細書に開示される実施形態は、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーと、任意選択で酢酸ビニルとから製造されるポリマーであって、GPCにより得られる5~10,000kDaの範囲の数平均分子量、及び1~60の範囲の分子量分布を有するポリマーを含むポリマー組成物から調製される物品に関する。
特許請求の範囲に記載された主題の他の態様及び利点は、下記の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施形態による幾つかの試料の
13C NMRスペクトルを示す図である。
【
図2】本開示の実施形態による幾つかの試料の
1H NMRスペクトルを示す図である。
【
図3】本開示の実施形態による幾つかの試料について得られた粘度計ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラフを示すグラフである。
【
図4A】本開示の実施形態による幾つかの試料の二次元液体クロマトグラフィー(2D-LC)のクロマトグラフを示すグラフである。
【
図4B】本開示の実施形態による幾つかの試料の二次元液体クロマトグラフィー(2D-LC)のクロマトグラフを示すグラフである。
【
図4C】本開示の実施形態による幾つかの試料の二次元液体クロマトグラフィー(2D-LC)のクロマトグラフを示すグラフである。
【
図5A】本開示の実施形態による幾つかの試料の示差走査熱量計(DSC)の結果を示すグラフである。
【
図5B】本開示の実施形態による幾つかの試料の示差走査熱量計(DSC)の結果を示すグラフである。
【
図5C】本開示の実施形態による幾つかの試料の示差走査熱量計(DSC)の結果を示すグラフである。
【
図6A】本開示の実施形態による幾つかの試料の動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【
図6B】本開示の実施形態による幾つかの試料の動的機械分析(DMA)の結果を示すグラフである。
【
図7A】本開示の実施形態による幾つかの試料の熱重量分析(TGA)のサーモグラムを示すグラフである。
【
図7B】本開示の実施形態による幾つかの試料の熱重量分析(TGA)のサーモグラムを示すグラフである。
【
図8A】本開示の実施形態による幾つかの試料の連続自己核形成及びアニーリング(SSA)の結果を示すグラフである。
【
図8B】本開示の実施形態による幾つかの試料の連続自己核形成及びアニーリング(SSA)の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様において、本明細書に開示される実施形態は、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーとから調製されるコポリマー、及びエチレンと、分岐ビニルエステルと、酢酸ビニルとから調製されるターポリマーを含有するポリマー組成物に関する。1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、エチレンと、とりわけ結晶化度、硬度、溶融温度、ガラス転移温度を含む、形成されるコポリマーの様々な特性を修正する1又は複数種の分岐ビニルエステル及び任意選択で酢酸ビニルとの反応によって調製することができる。
【0008】
本開示によるポリマー組成物は、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルを様々な比率で組み込んだコポリマーを含んでいてよい。幾つかの実施形態において、ポリマー組成物は、追加のコモノマーと1又は複数種のラジカル開始剤との存在下でエチレンと分岐ビニルエステルとを反応させてコポリマーを形成することにより調製することができる。他の実施形態において、エチレンを第1のコモノマーと反応させてポリマー樹脂又はプレポリマーを形成し、次いでそれを第2のコモノマーと反応させて最終的なポリマー組成物を調製することによりターポリマーを調製してもよく、第1及び第2のコモノマーは、同じ反応器又は異なる反応器において添加することができる。1つ又は複数の実施形態において、コポリマーは、エチレンと1又は複数種のコモノマーとを1つ又は複数の重合反応段階で反応させて様々な反復単位微細構造を得ることにより調製してもよい。1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、石油及び/又は再生可能資源に由来するモノマーから生成されたポリマーを含んでいてよい。
【0009】
分岐ビニルエステルモノマー
1つ又は複数の実施形態において、分岐ビニルエステルは、分岐アルキル酸の異性体混合物から製造される分岐ビニルエステルを含んでいてよい。本開示による分岐ビニルエステルは、一般化学式(I):
【0010】
【0011】
(式中、R1、R2、及びR3は、C3~C20の範囲の合計炭素数を有する)
を有してもよい。幾つかの実施形態において、R1、R2、及びR3はいずれも、幾つかの実施形態において様々な分岐度を有するアルキル鎖であってもよく、或いは、R1、R2、及びR3の一部は、幾つかの実施形態において、水素、アルキル、又はアリールからなる群から独立して選択されてもよい。
【0012】
1つ又は複数の実施形態において、ビニルカルボニルモノマーは、一般化学式(II):
【0013】
【0014】
(式中、R4及びR5は、6又は7の合計炭素数を有する)
を有する分岐ビニルエステルを含んでもよく、ポリマー組成物は、GPCによって得られる5kDa~10000kDaの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。1つ又は複数の実施形態において、R4及びR5は、6未満又は7を超える合計炭素数を有してもよく、ポリマー組成物は、10000kDa以下のMnを有してもよい。即ち、Mnが5kDa未満である場合、R4及びR5は、6未満又は7を超える合計炭素数を有してもよいが、Mnが5kDaを超える場合、例えば5~10000kDaの範囲である場合、R4及びR5は6又は7の結合炭素数を含んでもよい。特定の実施形態において、R4及びR5は、結合炭素数7を有し、Mnは、5~10000kDaの範囲であってもよい。更に、1又は複数の特定の実施形態において、式(II)によるビニルカルボニルを酢酸ビニルと組み合わせて使用してもよい。
【0015】
分岐ビニルエステルの例としては、以下の化学構造:
【0016】
【0017】
を有するモノマーを挙げることができ、その誘導体も含まれる。1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、石油及び/又は再生可能資源に由来するモノマーから生成されたポリマーを含んでいてもよい。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、分岐ビニルエステルは、ネオノナン酸、ネオデカン酸等のビニルエステルを含有するモノマーとコモノマーの混合物を含んでもよい。幾つかの実施形態において、分岐ビニルエステルは、コッホ合成により調製され、Hexion(商標)chemicals社から市販されているVersatic(商標) acid EH、Versatic(商標) acid 9及びVersatic(商標) acid 10を含むVersatic(商標) acidシリーズの第三級カルボン酸を含んでもよい。1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、石油及び/又は再生可能資源に由来するモノマーから生成されたポリマーを含んでもよい。
【0019】
本開示によるポリマー組成物は、プロトン核磁気共鳴(1H NMR)及び炭素13核磁気共鳴(13C NMR)により測定される、10wt%、20wt%、又は30wt%のうちの1つから選択される下限から60wt%、70wt%、80wt%、90wt%、95wt%、99.9wt%、及び99.99wt%のうちの1つから選択される上限までの範囲の質量パーセントのエチレンを含んでもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0020】
本開示によるポリマー組成物は、1H NMR及び13C NMRにより測定される、0.01wt%、0.1wt%、1wt%、5wt%、10wt%、20wt%、又は30wt%のうちの1つから選択される下限から50wt%、60wt%、70wt%、80wt%、89.99wt%、又は90wt%から選択される上限までの範囲の質量パーセントのビニルエステルモノマー、例えば上記式(I)及び(II)のものを含んでもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態において、本開示によるポリマー組成物は、1H NMR及び13C NMRにより測定される、0.01wt%、0.1wt%、1wt%、5wt%、10wt%、20wt%、又は30wt%のうちの1つから選択される下限から50wt%、60wt%、70wt%、80wt%、又は89.99wt%から選択される上限までの範囲の質量パーセントの酢酸ビニルを任意選択で含んでもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0022】
本開示によるポリマー組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、1kDa、5kDa、10kDa、15kDa、及び20kDaのうちの1つから選択される下限から40kDa、50kDa、100kDa、300kDa、500kDa、1000kDa、5000kDa、及び10000kDaのうちの1つから選択される上限までの範囲のキロダルトン(kDa)単位の数平均分子量(Mn)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0023】
本開示によるポリマー組成物は、GPCにより測定される、1kDa、5kDa、10kDa、15kDa及び20kDaのうちの1つから選択される下限から40kDa、50kDa、100kDa、200kDa、300kDa、500kDa、1000kDa、2000kDa、5000kDa、10000kDa、及び20000kDaうちの1つから選択される上限までの範囲のキロダルトン(kDa)単位の質量平均分子量(Mw)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0024】
本開示によるポリマー組成物は、GPCにより測定される、下限が1、2、5、又は10のいずれかであり、上限が20、30、40、50、又は60のいずれかである分子量分布(MWD、MwのMnに対する比と定義される)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0025】
フリーラジカル重合のための開始剤
本開示によるポリマー組成物は、反応物質混合物中のコモノマーとプレポリマーの連鎖重合を開始するフリーラジカルを生成することができる、ラジカル重合のための1又は複数種の開始剤を含んでもよい。1つ又は複数の実施形態において、ラジカル開始剤は、自発的に又は温度、pH、若しくは他の誘因による刺激下で分解してフリーラジカルを放出する化学種を含んでいてもよい。
【0026】
1つ又は複数の実施形態において、ラジカル開始剤は、過酸化物及び二官能性過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド;tert-ブチルクミルペルオキシド;t-ブチル-ペルオキシ-2-エチル-ヘキサノアート;tert-ブチルペルオキシピバラート;三級ブチルペルオキシネオデカノアート;t-ブチル-ペルオキシ-ベンゾアート;t-ブチル-ペルオキシ-2-エチル-ヘキサノアート;tert-ブチル3,5,5-トリメチルヘキサノアートペルオキシド;tert-ブチルペルオキシベンゾアート;2-エチルヘキシルカルボナートtert-ブチルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキサン;1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシド)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシド)ヘキシン-3;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシド)バレラート;ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド;ペルオキシドジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等を含んでもよい。
【0027】
ラジカル開始剤はまた、ベンゾイルペルオキシド、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノール、4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノン、4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2-t-ブチルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-クミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2-t-アミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン、m/p-アルファ、アルファ-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,3,5-トリス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(t-アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3,5-トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カルボナート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチル]カルボナート、ジ[1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ)ブチル]カルボナート、ジ-t-アミルペルオキシド、t-アミルクミルペルオキシド、t-ブチル-イソプロペニルクミルペルオキシド、2,4,6-トリ(ブチルペルオキシ)-s-トリアジン、1,3,5-トリ[1-(t-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノール、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカルボナート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジミリスチルペルオキシジカルボナート、ジベンジルペルオキシジカルボナート、ジ(イソボルニル)ペルオキシジカルボナート、3-クミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリラート、3-t-ブチルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリラート、3-t-アミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリラート、トリ(1,3-ジメチル-3-t-ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル)1-メチルエチル]カルバマート、1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチルN-[1-{3(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバマート、1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ))ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバマート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)バレラート、エチル3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチラート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-エトキシカルボニルメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレラート、エチル-3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチラート、ベンゾイルペルオキシド、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシ-スクシナート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシ-スクシナート、3,6,9,トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(又はメチルエチルケトンペルオキシド環状三量体)、メチルエチルケトンペルオキシド環状二量体、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルベンゾアート、t-ブチルペルオキシアセタート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノアート、t-アミルペルベンゾアート、t-アミルペルオキシアセタート、t-ブチルペルオキシイソブチラート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノアート、OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシスクシナート、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシスクシナート、ジ-t-ブチルジペルオキシフタラート、t-ブチルペルオキシ(3,3,5-トリメチルヘキサノアート)、1,4-ビス(t-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノアート、t-ブチル-ペルオキシ-(cis-3-カルボキシ)プロピオナート、アリル3-メチル-3-t-ブチルペルオキシブチラート、OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカルボナート、OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカルボナート、1,1,1-トリス[2-(t-ブチルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(t-アミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、1,1,1-トリス[2-(クミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン、OO-t-アミル-O-イソプロピルモノペルオキシカルボナート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(3-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、2,4-ジブロモ-ベンゾイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(2,4-ジクロロ-ベンゾイル)ペルオキシド、及びこれらの組合せを含んでもよい。
【0028】
1つ又は複数の実施形態において、ラジカル開始剤は、アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス(アミジノプロピル)ジヒドロクロリド等、過酸化物とアゾジニトリル化合物、例えば2,2'-アゾビス(2-メチル-ペンタンニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチル-ブタンニトリル)、2,2'-アゾビス(2-エチル-ペンタンニトリル)、2-[(1-シアノ-1-メチルプロピル)アゾ]-2-メチル-ペンタンニトリル、2-[(1-シアノ-1-エチルプロピル)アゾ]-2-メチル-ブタンニトリル、2-[(1-シアノ-1-メチルプロピル)アゾ]-2-エチル等との混合物を含有するアゾ過酸化物開始剤を含んでもよい。
【0029】
1つ又は複数の実施形態において、ラジカル開始剤は、炭素-炭素(「C-C」)フリーラジカル開始剤、例えば2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジベンジル-3,4ジトリルヘキサン、2,7-ジメチル-4,5-ジエチル-4,5-ジフェニルオクタン、3,4-ジベンジル-3,4-ジフェニルヘキサン等を含んでもよい。
【0030】
1つ又は複数の実施形態において、本開示によるポリマーは、0.000001wt%、0.0001wt%、0.01wt%、0.1wt%、0.15wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.75wt%及び1wt%のうちの1つから選択される下限から0.5wt%、1.25wt%、2wt%、4wt%、及び5wt%のうちの1つから選択される上限までの範囲の全重合混合物の質量パーセント(wt%)で存在する1又は複数種のラジカル開始剤から形成されてもよく、いずれの下限もいずれの上限と共に使用することができる。更に、ラジカル開始剤の濃度は、最終材料の用途に応じて上下することが想定され得る。
【0031】
安定剤
本開示によるポリマー組成物は、全重合混合物の一定の質量パーセントで存在し、モノマー及びコモノマーの送給ライン内での重合を防止することができるが、反応器での重合を妨げない、1又は複数種の安定剤から形成することができる。
【0032】
1つ又は複数の実施形態において、安定剤は、ニトロキシル誘導体、例えば2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニルオキシ、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、2,2,6,6-テトラメチル-4-アミノ-ピペリジニルオキシ等を含んでもよい。
【0033】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、0.000001wt%、0.0001wt%、0.01wt%、0.1wt%、0.15wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.75wt%及び1wt%のうちの1つから選択される下限から0.5wt%、1.25wt%、2wt%、4wt%、及び5wt%のうちの1つから選択される上限までの範囲の全重合混合物の質量パーセント(wt%)で存在する1又は複数種の安定剤から形成されてもよく、いずれの下限もいずれの上限と共に使用することができる。更に、安定剤の濃度は、最終材料の用途に応じて上下することが想定される。
【0034】
添加剤
本開示によるポリマー組成物は、ブレンド時にポリマー組成物に添加すると様々な物理的及び化学的特性を修正するフィラー及び添加剤を含んでもよく、1又は複数種のポリマー添加剤、例えば分解開始剤、加工助剤、滑剤、帯電防止剤、清澄剤、成核剤、ベータ成核剤、スリップ剤、酸化防止剤、抗酸剤、光安定剤、例えばHALS、IR吸収剤、増白剤、有機及び/又は無機染料、粘着防止剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、殺生物剤、及び接着促進剤が挙げられる。
【0035】
本開示によるポリマー組成物は、1又は複数種の無機のフィラー、例えばタルク、ガラス繊維、大理石ダスト、セメントダスト、クレイ、カーボンブラック、長石、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、ケイ酸粉末、ガラス微小球、雲母、金属酸化物粒子及びナノ粒子、例えば酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、無機塩粒子及びナノ粒子、例えば硫酸バリウム、珪灰石、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、かご型シルセスキオキサン(POSS)を含んでもよい。
【0036】
1つ又は複数の実施形態において、本開示によるポリマー組成物は、0.01wt%、0.02wt%、0.05wt%、1.0wt%、5.0wt%、10.0wt%、15.0wt%、及び20.0wt%のうちの1つから選択される下限から25wt%、30wt%、40wt%、50wt%、60wt%、及び70wt%のうちの1つから選択される上限までの範囲の全組成物の質量パーセント(wt%)の1又は複数種の添加剤及び/又はフィラーを含有してもよく、いずれの下限もいずれの上限と共に使用することができる。
【0037】
ポリマー組成物の調製方法
1つ又は複数の実施形態において、本開示によるポリマー組成物は、エチレンと、1又は複数種の分岐ビニルエステルモノマーとを反応器において重合することにより調製できる。ラジカル開始剤の存在下でコモノマーを反応させる方法は、液相重合、加圧ラジカル重合、バルク重合、エマルション重合、及び懸濁重合を含む、当技術分野における任意適切な方法を含んでもよい。幾つかの実施形態において、反応器は、低圧重合系として公知の、500bar未満の圧力のバッチ反応器でも連続反応器でもよい。1つ又は複数の実施形態において、反応は低圧重合プロセスで行われ、エチレンと1又は複数種のビニルエステルモノマーとを不活性溶媒及び/又は1若しくは複数種の液体モノマーの液相中で重合させる。一実施形態において、重合は、重合ゾーンの体積1リットル当たりのフリーラジカル重合のための1又は複数種の開始剤の総量として計算した、約0.0001~約0.01ミリモルの量のフリーラジカル重合のための開始剤を含む。重合ゾーン内のエチレンの量は、約20bar~約500barの範囲の反応器の全圧と、約20℃~約300℃の範囲の温度に主に依存する。1つ又は複数の実施形態において、反応器内の圧力は、20、30、40、50、75、又は100barのいずれかの下限と、100、150、200、250、300、350、400、450又は500barのいずれかの上限を有してもよい。本開示による重合プロセスの液相は、エチレン、1又は複数種のビニルエステルモノマー、フリーラジカル重合のための開始剤を含んでもよく、任意選択で1又は複数種の不活性溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、炭酸ジメチル(DMC)、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル(EtOAc)、アセトニトリル、トルエン、キシレン、エーテル、ジオキサン、ジメチル-ホルムアミド(DMF)、ベンゼン、又はアセトンを含んでもよい。低圧条件下で生成されるコポリマー及びターポリマーは、1~300kDaの数平均分子量、1~1000kDaの質量平均分子量、及び1~60のMWDを呈し得る。
【0038】
幾つかの実施形態において、コモノマーと1又は複数種のフリーラジカル重合開始剤とを、高圧重合系として公知の連続又はバッチプロセスにおいて70℃を超える温度及び1000bar超える圧力で重合させる。例えば、1000、1100、1200、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、3000、5000、又は10000barを超える圧力を使用してもよい。高圧条件下で生成されるコポリマー及びターポリマーは、1~10000kDaの数平均分子量(Mn)、1~20000kDaの質量平均分子量(Mw)を有し得る。分子量分布(MWD)は、GPCによって得られる質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比から得られる。高圧条件下で生成されるコポリマー及びターポリマーは、1~60のMWDを有し得る。
【0039】
幾つかの実施形態において、低圧重合及び高圧重合系での重合中の変換率は、モノマー及びコモノマーの質量又は質量流量で除した生成されるポリマーの質量又は質量流量と定義され、0.01%、0.1%、1%、2%、5%、7%、10%のいずれかの下限と、15%、17%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、99%又は100%のいずれかの上限を有してもよい。
【0040】
物理的特性
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D1238に準拠し190℃/2.16kgで得られる、0.01g/10分、0.5g/10分、1g/10分、及び10g/10分のいずれかから選択される下限から50g/10分、350g/10分、450g/10分、550g/10分、1000g/10分、及び2000g/10分のいずれかから選択される上限までの範囲のメルトフローレート(MFR)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0041】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D3418に準拠して示差走査熱量測定(DSC)又は広角X線回折(WAXD)により測定される、0.1%、1%、10%、及び20%のいずれかから選択される下限から60%、70%、及び80%のいずれかから選択される上限までの範囲の結晶化度を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0042】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、動的機械分析(DMA)により、又はASTM D3418に準拠してDSCにより測定される、100℃、90℃、及び80℃のいずれかから選択される上限から-50℃、-60℃、及び-70℃のいずれかから選択される下限までの範囲のガラス転移温度(Tg)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0043】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D3418に準拠してDSCにより測定される、20℃、30℃、及び40℃のいずれかから選択される下限から100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、及び150℃のいずれかから選択される上限までの範囲の溶融温度(Tm)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。幾つかの実施形態において、ポリマー組成物はTmを示さず、完全に非晶質のポリマー組成物の特性を示すこともある。
【0044】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D3418に準拠してDSCにより測定される、0℃、5℃、10℃、20℃、及び30℃のいずれかから選択される下限から80℃、90℃、100oC、110℃、120℃、130℃、140℃、及び150℃のいずれかから選択される上限までの範囲の結晶化温度(Tc)を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0045】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D3418に準拠してDSCにより測定される、0、10、20、30、40、50、及び60J/gのいずれかの下限と、140、180、200、240、及び280J/gのいずれかの上限とを有する範囲の結晶化熱を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0046】
重合条件により、広範な分子量分布(MWD)を有するポリマーの生成がもたらされる。一実施形態において、この重合方法の範囲内で得られるポリマーのMWDは約1~約60であり、下限は1、1.5、3、5、又は10のいずれかであり、上限は10、20、30、40、50、又は60のいずれかであって、いずれの下限もいずれの上限と組み合わせて使用することができる。しかし、組み込まれるコモノマーの量によっては、高圧条件下で生成される試料が約1~60の広い範囲のMWDを示す。低圧条件下で生成されるコポリマー及びターポリマーは、1~300kDaの数平均分子量、1~1000kDaの質量平均分子量、及び1~60のMWDを呈し得る。他方、高圧条件下で生成されるコポリマー及びターポリマーは、1~10000kDaの数平均分子量、1~20000kDaの質量平均分子量、及び1~60のMWDを示し得る。
【0047】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D2240に準拠して判定される、25、35、及び45ショアAのいずれかから選択される下限から80、90、及び100ショアAのいずれかから選択される上限までの範囲の硬度を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0048】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D2240に準拠して判定される、10、20、及び30ショアDのいずれかから選択される下限から50、60、及び70ショアDのいずれかから選択される上限までの範囲の硬度を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0049】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D368に準拠して判定される、10、50、及び100パーセントの伸びのいずれかから選択される下限から500、1000、及び2000パーセントの伸びのいずれかから選択される上限までの範囲、1、5、及び10MPaの引張強度のいずれかから選択される下限から15、30、70、100、及び500MPaの引張強度のいずれかから選択される上限までの範囲、0.1、1、5、20、及び40MPaの弾性率のいずれかから選択される下限から100、200、300、1000、及び5000MPaの弾性率のいずれかから選択される上限までの範囲の伸び率、引張強度、及び弾性率を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0050】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D792に準拠した、0.75g/cm3、0.85g/cm3、及び0.89g/cm3のいずれかから選択される下限から1.1g/cm3、1.2g/cm3、及び1.3g/cm3のいずれかから選択される上限までの範囲の密度を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0051】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、ASTM D6866-18の方法Bにより判定される、1%、5%、10%、及び20%のいずれかから選択される下限から60%、80%、90%、及び100%のいずれかから選択される上限までの範囲のバイオベース炭素含有率を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0052】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、0~10の範囲、例えば1、0.5、1、又は1.5のいずれかの下限から2、4、6、8、又は10のいずれかの上限までの長鎖分岐頻度を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0053】
1つ又は複数の実施形態において、長鎖分岐頻度LCBfは、どちらもPolymer Char社製のIR5赤外検出器及び4毛細管粘度測定検出器を備えたGPC機器を使用したGPC分析から計算できる。データの収集は、Polymer Char社のソフトウェアを使用して遂行した。IR5検出器によって測定した濃度は、クロマトグラムの全領域が注入された質量の100%の溶出に相当することを考慮して計算した。次いで、平均LCBfを、下記:
【0054】
【0055】
(式中、Rは、反復単位のモル質量であり、モノマー及びコモノマーの寄与に基づき、NMRによって判定されるそれぞれのモルパーセンテージを考慮して計算される)
に従って計算した。Mwは、質量平均分子量であり、ユニバーサル較正によって下記の等式:
【0056】
【0057】
に従って計算される。平均Bn定数は、下記:
【0058】
【0059】
に従って計算される。平均g'及びg定数は、下記:
【0060】
【0061】
に従って計算される。
【0062】
εは、粘度遮蔽率(viscosity shielding ratio)として公知であり、一定で0.7に等しいと仮定される。
【0063】
分岐試料の固有粘度(IV分岐)は、粘度計検出器からの比粘度(ηsp)を使用して次のように計算できる。
【0064】
【0065】
(式中、SAは試料量、KIVは粘度検出器定数であり、体積増分(ΔV)は連続する保持体積間の差によって決定される定数である(ΔV=RV(i+1)-RVi))
【0066】
直鎖状対応物の固有粘度(IV線状)は、Mark-Houwinkの式を使用して計算できる一方、Mark-Houwink定数は、Stacy-Haney法による濃度を考慮して固有粘度から次のように求められる。Stacey-Haney IV(IVSH)は、Stacy-Haney濃度に基づき、
【0067】
【0068】
によって計算され、式中、CSHは、
【0069】
【0070】
から求められる一方、ηrelは、相対粘度(ηrel=ηsp+1)であり、(hv)iは、ユニバーサル較正曲線からの各溶出体積スライスでの流体力学的体積であり、Mark-Houwink指数aは、直鎖状ポリエチレンホモポリマーの参考値0.725と定義され、定数Kは、以下:
【0071】
【0072】
に従って計算される。
【0073】
【0074】
から、各溶出体積スライスでの分子量(MSH)も、
【0075】
【0076】
に従って求められる。
【0077】
【0078】
対
【0079】
【0080】
をどちらも対数スケールでプロットすると、線状ポリマーのMark-Houwink定数kとaが導かれる。最後に、IV線状を、下記:
【0081】
【0082】
[式中、Mvは、ユニバーサル較正と、IR5赤外検出器による濃度による粘度平均分子量であり、下記:
【0083】
【0084】
(式中、Niは、分子量がMiのi番目の分子の番号である)
に従って計算される]
のように計算することができる。Miは、IR5赤外検出器による濃度と、ユニバーサル較正からの流体力学的体積(
【0085】
【0086】
)を考慮して求められる。Miは、保持体積に対してプロットされ、曲線のノイズの多い極値が除去され、次いで、3次適合多項式を使用して外挿される。この3次適合多項式から導出される等式を使用して、保持体積の関数としてMiを計算する。1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、GPC分析により計算される、0~10の範囲、例えば、1、0.5、1、又は1.5のいずれかの下限から2、4、6、8、又は10のいずれかの上限までの長鎖分岐頻度を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0087】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、13C NMRにより測定される、0~10の範囲、例えば0、0.2、0.4、0.6、0.8、又は1のいずれかの下限から2、4、6、8、又は10のいずれかの上限までの範囲の長鎖分岐含有率を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0088】
13C NMR分析において、長鎖分岐(LCB)は、6個以上の炭素を持つ任意の分岐と定義される。13C NMRスペクトルに基づき、分岐ポリマー中のLCB含有率(B6+)は、下記式:
B6+ = S3,ポリマー - S3,ビニルエステルモノマー
(式中、S3ピークは、13C NMRスペクトル上で32.2ppmに位置する)
から計算される。この方法は、主鎖の分岐(B6+)と鎖末端の両方を考慮するもので、ビニルエステルモノマー中の長分岐の影響は、その13C NMRスペクトルを使用して補正され、鎖末端の影響も、GPCデータを用いて補正することができる。
【0089】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、連続自己核形成及びアニーリング(SSA)による熱分画後に、0~20の極小、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の極小のいずれかの下限と、12、14、16、18、又は20の極小のいずれかの上限を有する熱流量対温度曲線を有してもよく、いずれの下限をいずれの上限と組み合わせてもよく、極は、140~150℃、130~140℃、120~130℃、110~120℃、100~110℃、90~100℃、80~90℃、70~80℃、60~70℃、50~60℃、40~50℃、30~40℃、20~30℃、10~20℃、及び/又は0~10℃の温度範囲に割り当てられてもよい。こうした熱分画は、温度プロトコル(一連の加熱及び冷却サイクル)を使用して、コポリマー及びターポリマー中のメチル配列長の分布を反映するサイズの層状結晶の分布を生成することができる。熱分画は、TA Instruments社Discovery DSC 2500において、窒素下で行うことができる。冷却サイクルは全て5℃/分で行ってもよく、加熱サイクルは20℃/分で行ってもよい。試料を25℃から150℃まで加熱し、150℃で5分間保持し、25℃まで冷却し、この温度に3分間保持することができる。続いて、試料を第1のアニーリング温度(140℃)に加熱し、この温度に5分間保持し、25℃まで冷却することができる。次いで、試料を次のアニーリング温度(130℃)まで再度加熱し、この温度に5分間保持し、25℃まで冷却することができる。この手順を、最後のアニーリング温度(例えば0℃であるが、これに限定されない)に到達するまで10℃刻みで繰り返してもよい。次いで、溶融プロファイルを得るため、試料を150℃まで20℃/分で加熱することができる。
【0090】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、250℃から400℃の間での質量損失の全コモノマー含有率に対する比が0~2、例えば0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び1のいずれかの下限から1.2、1.4、1.6、1.8、又は2のいずれかの上限までの範囲である、熱重量分析(TGA)により測定される熱安定性を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0091】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、1~10Gpaの0℃での貯蔵弾性率、例えば、0.1、1、2、5、10、20、40、60、80、又は100MPaのいずれかの下限と、200MPa、300MPa、400MPa、500MPa、700MPa、1GPa、5GPa、又は10GPaのいずれかの上限を有してもよく、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0092】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマーは、-75℃から75℃の間のtanδ対温度のプロットにおいて、1~2つの緩和極大を有してもよく、より高温でのピークがαと呼ばれ、より低温でのピークがβと呼ばれる。1つ又は複数の実施形態において、Tα(αピークに対応する温度)は、-75℃から75℃の間、例えば、-75、-60、-50、-40、-30、-20、-10、又は0℃のいずれかの下限と、10、20、30、40、50、60、又は75℃のいずれかの上限の間で変化する可能性があり、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。1つ又は複数の実施形態において、Tβ(βピークに対応する温度)は、-75℃から50℃の間、例えば-75、-60、-50、-40、-30、-20、-10、又は0℃のいずれかの下限と、10、20、30、40、又は50℃のいずれかの上限の間で変化する可能性があり、いずれの下限がいずれの上限と組み合わされてもよい。
【0093】
用途
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、押出成形、射出成形、熱成形、キャストフィルム押出、インフレーションフィルム押出、発泡、押出ブロー成形、ISBM(射出延伸ブロー成形)、3D印刷、回転成形、引抜成型等を含む製品を製造するための様々な成形プロセスで使用できる。
【0094】
本開示によるポリマー組成物はまた、シール、ホース、履物インソール、履物ミッドソール、履物アウトソール、自動車部品及びバンパー、シーリングシステム、ホットメルト接着剤、フィルム、コンベヤベルト、スポーツ用品、回転成形品、ライニングとしての土木におけるプライマー、工業床、音響遮音体等の製造を含む多数のポリマー物品用に配合することができる。
【0095】
1つ又は複数の実施形態において、ポリマー組成物は、1又は複数種のポリマー樹脂とのポリマーブレンドに含まれてもよい。幾つかの実施形態において、ポリマー組成物は、1wt%~99wt%の質量パーセントでポリマー樹脂に添加されるマスターバッチとして配合できる。
【0096】
下記の実施例は単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0097】
エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーは、エチレンコポリマー市場の大部分を占めており、酢酸ビニル含有率に応じて様々な特性を有している。酢酸ビニルの組込みを増加させると、結晶化度、ガラス転移温度、溶融温度、及び薬品耐性が低下する一方、光学的透明度、耐衝撃性及び耐応力亀裂性、柔軟性、並びに接着性が向上する。この実施例では、様々な量の酢酸ビニルとHEXION(商標)社製ビニルエステルモノマーVeoVa(商標)10(炭素数10のバーサチック酸のビニルエステルの異性体の混合物)を組み込んだエチレン系ポリマーを生成して、得られた組成物について幾つかのポリマー特性を分析した。
【0098】
エチレン(99.95%、Air Liquide社、1200psi)、VeoVa(商標)10(Hexion社)、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、98%、Sigma Aldrich社)は、そのまま使用した。炭酸ジメチル(DMC、無水99%、Sigma Aldrich社)、及び酢酸ビニル(99%、Sigma Aldrich社)は、使用前に蒸留し、窒素下で保存した。
【0099】
エチレン、酢酸ビニル及びVeoVa(商標)10を用いたターポリマーの合成(試料A1~A5)
80gの炭酸ジメチル(DMC)、9.97又は14.98gの酢酸ビニル、13.5又は11.48gのVeoVa(商標)10、及び0.1gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をParr反応器に組み合わせることにより、溶液中のコモノマー混合物のフリーラジカル重合を使用してポリマー組成物を調製した。反応器を密閉し、撹拌しながら1000psiの圧力のエチレンで3回フラッシュした。次いで系を70℃、エチレン圧力1200psiで加熱し、2時間撹拌した。反応混合物を回収し、反応器を60℃のTHFで洗浄した。反応混合物及び洗浄液中の溶媒を回転蒸発により除去した。得られたポリマーをTHFに溶解し、冷メタノール中に沈殿させ、次いで真空ろ過した。
【実施例2】
【0100】
様々な量のピバル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及び4-tert-ブチル安息香酸ビニルを組み込んだエチレン系ポリマーを生成し、得られた組成物について幾つかのポリマー特性を分析した。
【0101】
エチレン(99.95%、Air Liquide社、1200psi)、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、98%、Sigma Aldrich社)は、そのまま使用した。炭酸ジメチル(DMC、無水99%、Sigma Aldrich社)、酢酸ビニル(99%、Sigma Aldrich社)、ピバル酸ビニル(99%、Sigma Aldrich社)、ラウリン酸ビニル(99%、Sigma Aldrich社)、及び4-tert-ブチル安息香酸ビニル(99%、Sigma Aldrich社)は、使用前に蒸留し、窒素下で保存した。
【0102】
エチレン、酢酸ビニル、並びにピバル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及び4-tert-ブチル安息香酸ビニルを用いたターポリマーの合成(試料B1~B3)
80gの炭酸ジメチル(DMC)、9.3gの酢酸ビニル、及び13.9gのピバル酸ビニル又は24.4gのラウリン酸ビニル又は22gの4-tert-ブチル安息香酸ビニル、並びに0.1gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をParr反応器に組み合わせることにより、溶液中のコモノマー混合物のフリーラジカル重合を使用してポリマー組成物を調製した。反応器を密閉し、撹拌しながら1000psiの圧力のエチレンで3回フラッシュした。次いで系を70℃、エチレン圧力1200psiで加熱し、2時間撹拌した。反応混合物を回収し、反応器を60℃のTHFで洗浄した。反応混合物及び洗浄液中の溶媒を回転蒸発により除去した。得られたポリマーをTHFに溶解し、冷メタノール中に沈殿させ、次いで真空ろ過した。
【実施例3】
【0103】
様々な量の酢酸ビニル、及び炭素数10のバーサチック酸のビニルエステルの異性体の混合物であるHEXION(商標)社製ビニルエステルモノマーVeoVa(商標)10を組み込んだエチレン系ポリマーを高圧条件下で生成し、得られた組成物について幾つかのポリマー特性を分析した。
【0104】
エチレン、VeoVa(商標)10 (Hexion社)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノアート、ヘプタン(99%、Sigma Aldrich社)、及び酢酸ビニル(99%、Sigma Aldrich社)は、そのまま使用した。
【0105】
エチレン、酢酸ビニル及びVeoVa(商標)10を用いたターポリマーの合成を、高圧条件下で遂行した(試料D1~D15)。
異なる流量のエチレン、酢酸ビニル、VeoVa(商標)10、ヘプタン及びtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノアートを高圧反応器に組み合わせることにより、コモノマー混合物の連続フリーラジカル重合を使用してポリマー組成物を調製した。毎回の重合の前に、反応器を2200~2300barのエチレンで5回パージした。各反応は、反応器を200℃に加熱し、1900~2000barの圧力までエチレンを送給することにより開始させた。次いで、2000g/時の割合でエチレンの連続流を反応器に送給した。目標圧力と安定したエチレン流が達成された後、コモノマーを反応器に添加した。開始剤とヘプタンの混合物を2mL/時の流量で系に導入した。反応混合物を回収し、反応器を145℃のキシレンで洗浄した。得られたポリマーをキシレンに溶解し、冷メタノール中に沈殿させ、次いで真空ろ過した。
【0106】
ポリマーの特性評価
A1~A5、B1~B3、及びD1~D15で示されるエチレン系ポリマーの20種の試料を精製し、特性評価を行った。エチレン系ポリマーは、酢酸ビニルとビニルカルボニルモノマーの両方を様々な量で含有していた。
【0107】
【0108】
Table 1(表1)は、合成した全ポリマー及び2種の比較用市販EVA試料M1及びM2についてのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び核磁気共鳴(NMR)データの概要を記載する。
【0109】
ビニルカルボニルモノマーを含有するポリマー試料の場合、1H NMRは正確な積分のためにカルボニル及びアルキル領域の両方においてかなりの重複を含んでいたため、定量的13C NMRを使用して組込みを判定した。純粋なEVAの13C NMRで観察されなかったカルボニルピークは、分岐ビニルカルボニルモノマー単位に由来するものとして識別し、コモノマーの質量パーセントを計算するために使用した。
【0110】
特に
図1に関しては、VeoVa(商標) acid 10モノマーと代表的試料A2及びM1についての完全な
13C NMRスペクトル(TCE-D
2、393.1K、125MHz)が示されている。カルボニル領域(170~180ppm)及びアルキル領域(0~50ppm)の両方に分岐ビニルエステルの組込みの証拠が見られる。スペクトルは、分岐ビニルエステル内のカルボニル炭素と長アルキル鎖とを示すピークの有意な増加を示している。一般的なピーク同定も
図1に示されている。VeoVa(商標) acid 10モノマーとポリマーA2のスペクトルを比較すると、ポリマースペクトルは、ビニルピークの消滅と調査した3種のコモノマー(エチレン、酢酸ビニル、及びVeoVa(商標) acid 10)全てに対応するピークの出現を示している。両方の領域にある豊富な数のピークは、VeoVa(商標) acid 10 モノマー中の異性体の混合物に起因する可能性があり、ポリマー試料におけるこれらのピークの出現は、それぞれのターポリマーの形成を実証するものである。
【0111】
VeoVa(商標) acid 10モノマーの組込みの更なる証拠が、ポリマー試料A2及びM1の
1H NMRスペクトル(TCE-D
2、393.2K、500MHz)を示す
図2に示されている。スペクトルは、酢酸ビニル及びエチレンのピークと、分岐ビニルエステルモノマー上の長アルキル鎖を示すアルキル領域(0.5~1.5ppm)における追加のピークを示している。
【0112】
A2及びM1の
1H NMRスペクトル(TCE-D
2、393.2K、500MHz)を、幾つかの関連するピーク同定と共に示す。
図2は、5ppmからやや上方のピーク周辺に酢酸ビニルと分岐ビニルエステルモノマー単位との重複が存在することを示している。これらのピークが純粋に酢酸エチルのメチンであれば、5ppmのピークと2ppm付近のピーク(酢酸ビニルからのメチル)との積分比は1:3となる。しかし、積分比は1:1であり、酢酸ビニルと分岐ビニルエステルの両方のメチンが重複し、5ppm付近の広いピークを生成していることを示している。
1H NMR及び
13C NMRスペクトルに見られるピークの相対強度を使用して、ビニルエステル及びVeoVa(商標)10のコ/ターポリマーへのモノマー組込みを計算する。
【0113】
特にTable 1(表1)に関しては、各ポリマーについて広範囲の変換率が得られている。重合時の変換の程度は、鎖の分岐の程度とトポロジーに影響を与え、ポリマーの特性を変化させる。
【0114】
特に
図3に関しては、試料についてゲル浸透クロマトグラフが示され、そこから分子量と分布が導き出された。どちらもPolymerChar社製の赤外検出器IR5及び4ブリッジ毛細管粘度計と、Wyatt社製8角光散乱検出器とを備えた、三重検出を併用したゲル浸透クロマトグラフィーでGPC実験を行った。Tosoh社製4カラムのセット、混床、13μmを、温度140℃で使用した。実験条件は、濃度1mg/mL、流量1mL/分、溶解温度及び時間160℃及び90分、並びに注入量200μLであった。使用した溶媒は、100ppmのBHTで安定化させたTCB(トリクロロベンゼン)であった。
【0115】
VeoVa(商標)10を含有するポリマーA1~A5は、10~30kDaの範囲の分子量と、2前後のMWDを呈する。ポリマーB1~B3についても同様のMWDが観察される。ターポリマーの痕跡は比較用市販試料(M1及びM2)と同様であるが、分子量分布が異なっており、市販のグレードは、より広い範囲の分子量を示し、MWDは4~6の範囲である。しかし、組み込まれたコモノマーの量に応じ、高圧条件下で生成された試料(ポリマーD1~D15)は、約2~18の広い範囲のMWDを示している。低圧条件下で生成されたコポリマー及びターポリマーは通常、1~300kDaの数平均分子量、1~1000kDaの質量平均分子量、及び1~60のMWDを呈する。他方、高圧条件下で生成されたコポリマー及びターポリマーは、典型的には1~10000kDaの数平均分子量、1~20000kDaの質量平均分子量、及び1~60のMWDを示す。これらのポリマーには高分子量の鎖が存在するため、低MWDの対応物と比較して独自の特性(例えばより高い溶融強度、ESCR、衝撃強度等)を示すことができる。
【0116】
特に
図4A~4Cに関しては、ポリマーD13~D15の二次元液体クロマトグラフィー(2D-LC)のクロマトグラフがそれぞれ示されている。2D-LCシステムは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)及びGPC機器を使用してこれらのコポリマー及びターポリマーを分析した。2D-LC測定は、PolymerChar社の2D-LC高温クロマトグラフ(スペインバレンシア)を使用して遂行した。機器は、Hypercarb(商標)HPLCカラム(100×4.5mmL×I.D.、粒径5μm)と、PLgel Olexis GPCカラム(300×7.5mmL×I.D.、粒径13μm)を備えていた。2D-LCの試料ループは、200μLの容量がある。実験は全て160℃で遂行した。検出は、全ポリマー濃度、CH2、CH3及びC=Oの検出能力(バンドパスフィルター)を持つ固定波長赤外(IR)検出器(IR6、PolymerChar社)を用いて実現された。GPC溶出時間は、ポリスチレン(EasiCal PS-1、Agilent社、ドイツヴァルトブロン)で較正した。較正はGPCモードで遂行し、2D-LCの結果にも適用した。HPLC移動相は1-デカノール(Merck社、ドイツダルムシュタット)/1,2-ジクロロベンゼン(ODCB、AcrosOrganics社、ドイツシュヴェールテ)であり、流量は0.01mL/分とした。勾配条件:0~200分:純粋な1-デカノール、200~700分:1-デカノールからODCBへの線形勾配、700~1100分:純粋なODCB。その後、カラムを0.8mL/分の1-デカノールで40分間フラッシュして、吸着平衡を回復させた。GPC移動相は1,2-ジクロロベンゼン(ODCB、AcrosOrganics社、ドイツシュヴェールテ)であり、流量は1.5mL/分とした。分画バルブ試料ループからのHPLC溶離液(100μL)を、10分毎にGPCに注入した。試料濃度は約8mg/mLであり、6mLの移動相をオートサンプラーにより試料バイアル(計量したポリマーを含有)に自動的に添加し、同時に窒素でフラッシュした。試料は、注入前に振とう下で1時間溶解した。EVAのHPLC溶出時間の較正には、平均酢酸ビニル含有率が70、50、30、14及び5wt%のEVA試料を使用した。全ての試料を混合し(同程度の濃度、約2mg)、1回の2D-LCで分析した。VeoVAのHPLC溶出時間の較正には、試料D1~D6を用いた同様のアプローチを使用した。低分子量画分を除き、ポリマーは全て、モル質量分布にわたって酢酸ビニルとVeoVa(商標)10の均一な分布を示す。ポリマー鎖中の酢酸ビニルとVeoVa(商標)10の濃度は、これらのポリマーにおいて10から65wt%の間で変化する。
【0117】
長鎖分岐頻度(LCBf)を分析するため、IR5赤外検出器と4毛細管粘度測定検出器を備えたGPC機器を使用して試料を分析した。その結果をTable 2(表2)に示す。
【0118】
【0119】
幾つかのポリマー試料の長鎖分岐含有率を13C NMR及び本明細書に記載の方法で測定し、その結果を以下のTable 3(表3)に要約した。
【0120】
【0121】
ポリマーの熱特性分析を、示差走査熱量測定(DSC)、及び動的機械分析(DMA)を使用して行った。特に
図5A~5Cに関しては、EVA及びターポリマー試料のDSC分析が
図5Aに示され、
図5B~5Cは、
図5Aのピークの拡大図を示している。DSC分析の間、これらの試料は140℃で5分間平衡化され、測定は10℃/分の冷却速度で進行し、その後-50.0℃で平衡化され、140℃まで10℃/分の加熱速度で進行した。
【0122】
Table 4(表4)は、DSC及びDMA実験を要約したものである。分岐ビニルエステルコモノマーを含有するポリマーを比較用試料と比較すると、結晶化温度が分岐ビニルエステルコモノマーの組込みによって最も影響を受けているように見える。この傾向は、ビニルエステルコモノマーの導入によりポリマー中に生じる分岐基によって引き起こされる結晶化の中断から予想される。エチレンと酢酸ビニルとのコポリマーにビニルカルボニルコモノマーを導入すると、EVAコポリマーとは形態の異なるターポリマーを生じる場合がある。このモノマーは、構造的規則性と、結晶質の状態へと凝縮するポリマーの能力を破壊する可能性がある。その結果、非晶質領域が増加することにより、得られるポリマーのTg、Tm及びTcが低下する可能性がある。
【0123】
実施例1~3で作製したポリマー及び市販のEVA試料の結晶化熱(ΔH)、結晶化温度、溶融温度をTable 4(表4)に示す。分析は、TA Q2000機器において窒素下で行った。試料を10℃/分で160℃に加熱し、この温度に1分間保持し、10℃/分で-20℃まで冷却し、この温度に1分間保持した。次いで、試料を10℃/分で160℃まで加熱した。冷却曲線と第2の加熱曲線を記録し、ベースラインの終点を設定することにより分析して、結晶化ピーク温度、溶融ピーク温度及びΔHを求めた。
【0124】
【0125】
試料のガラス転移温度(Tg)を、TA 800 DMA機器を用いて引張モードでDMAを測定した際の試料のTanδピーク最大値の測定から判定した。各試料で作製した薄膜を-150℃に冷却し、周波数1Hz及び振幅30μmで予負荷力0.01Nを加えながら3℃/分の速度で温度掃引してそれらの粘弾性応答を評価した。貯蔵弾性率、損失弾性率、及びtanδ(貯蔵弾性率の損失弾性率に対する比)を温度の関数として記録した。試料の貯蔵弾性率を比較するため、参照温度0℃を選択した。-75℃~75℃の範囲では、試料は、tanδ対温度のプロットにおいて1つから2つの極大を示した。-75℃~75℃の範囲に1つのピークが存在する場合、それをαピークと呼ぶ。-75℃~75℃の範囲に2つのピークが存在する場合、高温側の極大をα緩和と呼び、低温側の極大をβ緩和と表記する。DMAの結果においても、様々なポリマー形態が識別できる。特に
図6A~6Bに関しては、D2~D7、D9、及びD11のDMAが示されている。D2~D6は、-50から75℃まで広い緩和を示している。分岐ビニルエステルコモノマーの量を増加させることにより、α緩和ピークの強度は低下し、β緩和ピークの強度は上昇する。D4は、この領域における最も広い緩和を示している。市販のEVA試料と同様に、試料D7、D9、及びD11は、この範囲に単一の緩和を示している。
【0126】
特にTable 4(表4)に関しては、実施例で生成したコポリマー及びターポリマーが、広い範囲のMFR及び密度も示している。Table 5(表5)は、実施例3の0℃での貯蔵弾性率の結果をまとめたものであり、異なる形態に応じて広い範囲の値をカバーしている。
【0127】
【0128】
ポリマーの熱分解を、窒素雰囲気下での熱重量分析(TGA)により調べた。試料をTA Q500 TGA機器に入れ、20℃/分の加熱速度で25から700℃まで加熱する。温度の関数としての質量損失が記録される。特に
図7A~7Bに関しては、D7~D10のTGAが示されている。これらのポリマーは全て、約30wt%のコモノマーを含有する。これらのポリマーのサーモグラムにおける第1の質量損失(低温での)は、ポリマーからの酸性基(酢酸又はバーサチック酸)の分離に関連している。より高温での第2の質量損失は、ポリマー骨格の分解に対応する。高圧重合中に酢酸ビニルをVeoVa(商標)10で置きかえると、より安定で低温での質量損失が少ないポリマーとなる。
図7Bは、コポリマー(〇)及びターポリマー(△)中のVeoVa(商標)10の量が増加すると、第1の質量損失の強度(全コモノマー含有率で除した第1の質量損失の量の比)が低下し、コポリマー及びターポリマーが熱的により安定となることを示している。第2の劣化は400℃以降に起こり、ポリマー骨格内の炭素-炭素結合が分解し始める。
【0129】
試料は、熱分画にも供した。熱分画は、温度プロトコル(一連の加熱及び冷却サイクル)を採用して、コポリマー及びターポリマー中のメチル配列長の分布を反映するサイズの層状結晶の分布を生成する。熱分画は、TA Instruments社Discovery DSC 2500において、窒素下で行った。冷却サイクルは全て5℃/分で行い、加熱サイクルは20℃/分で行った。試料を25℃から150℃まで加熱し、150℃で5分間保持し、25℃まで冷却し、この温度に3分間保持した。続いて、試料を第1のアニーリング温度(140℃)に加熱し、この温度に5分間保持し、25℃まで冷却した。試料を次のアニーリング温度(130℃)まで再度加熱し、この温度に5分間保持し、25℃まで冷却した。この手順を最後のアニーリング温度(70℃)まで10℃刻みで繰り返した。次いで、溶融プロファイルを得るため、試料を150℃まで20℃/分で加熱した。アニーリング温度は、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、100℃、90℃、80℃及び70℃を含む。SSAによる熱分画の結果は
図8A~8Bとなる。
【0130】
少数の例示的な実施形態のみを上記において詳細に説明したが、当業者は、例示的な実施形態において本発明から実質的に逸脱することなく多くの変更形態が可能であることを容易に理解する。したがって、そのような変更形態は全て、下記の特許請求の範囲に定義されるように、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲において、ミーンズ-プラス-ファンクションクローズは、引用された機能を遂行するものとして本明細書に記載の構造、及び構造的均等物だけでなく均等構造も対象とすることを意図している。したがって、釘とネジは、釘が円筒形の表面を利用して木製部品を固定するのに対し、ネジはらせん状の表面を利用するという点で構造的均等物ではないかもしれないが、木製部品を固定する環境においては、釘とネジは均等構造であるともいえる。請求項が関連する機能と共に「~する手段」という語を明示的に使用しているものを除き、本明細書のあらゆる請求項のいかなる限定に対しても35U.S.C.§112(f)を行使しないことは、出願人の明確な意図である。
【国際調査報告】