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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】防虫組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/02 20060101AFI20221128BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20221128BHJP
   A01N 35/02 20060101ALI20221128BHJP
   A01N 37/10 20060101ALI20221128BHJP
   A01N 65/22 20090101ALI20221128BHJP
   A01N 65/36 20090101ALI20221128BHJP
【FI】
A01N31/02
A01P17/00
A01N35/02
A01N37/10
A01N65/22
A01N65/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520819
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020054042
(87)【国際公開番号】W WO2021067780
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】16/593,693
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518407593
【氏名又は名称】グローバル バイオライフ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL BIOLIFE INC.
【住所又は居所原語表記】4800 Montgomery Lane, Suite 210, Bethesda, MD 20814, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ダリル エル.
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BB03
4H011BB05
4H011BB06
4H011BB22
4H011DA13
(57)【要約】
昆虫を忌避するための組成物及び方法を提供する。一態様の組成物は、重量%基準で、10~20%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;0.1~5%の2,6-オクタジエナル、3,7-ジメチル-;1~10%の安息香酸ベンジル;0.01~2%のシトラール;1~10%のヘキサメチルインダノピラン;10~40%のラベンダーオイル;20~50%のアルゼンチン産レモンオイル;5~15%のメキシコ産蒸留ライムオイル;0.01~3%のリモネン;5~15%のローズマリーオイル;及び任意に0.1~10%のN,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分を0.1~10%有する。この組成物は防虫効果を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%基準で:
10~20%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~5%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
1~10%の安息香酸ベンジル;
0.01~2%のシトラール;
1~10%のヘキサメチルインダノピラン;
10~40%のラベンダーオイル;
20~50%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~15%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~3%のリモネン;及び
5~15%のローズマリーオイル
を含んでなる組成物。
【請求項2】
0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
重量基準で0.1~10%の、イソプロピル、エチル及びメチルからなる群より選択されるアルコールを更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
下記:
12~18%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~1%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
2~5%の安息香酸ベンジル;
0.01~1%のシトラール;
2~5%のヘキサメチルインダノピラン;
25~30%のラベンダーオイル;
30~40%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~10%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~0.1%のリモネン;及び
5~10%のローズマリーオイル
を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分を更に含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
重量基準で0.1~1%の、イソプロパノール、エタノール及びメタノールからなる群より選択されるアルコールを更に含む請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
組み合わせることにより局所ローションを形成する不活性キャリアを更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
スプレー又はミストとして適用する溶液として製剤化された請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
重量%基準で:
10~20%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~5%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
1~10%の安息香酸ベンジル;
0.01~2%のシトラール;
1~10%のヘキサメチルインダノピラン;
10~40%のラベンダーオイル;
20~50%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~15%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~3%のリモネン;及び
5~15%のローズマリーオイル
を含んでなる組成物を配備することを含む昆虫方法。
【請求項10】
組成物が、0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物の配備が、前記組成物を個体に適用することにより、該個体から昆虫を遠ざけることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物の配備が、前記組成物を、昆虫を遠ざけたい領域にスプレーすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物の配備が、前記組成物を、昆虫を遠ざけたい領域に置くことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物の配備が、前記組成物を燃焼させることにより、その構成成分が周囲環境に放出されて、該周囲環境から昆虫を遠ざけることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物の配備が、液体として適用する溶液として製剤化された前記組成物をスプレーするか又はミストとすることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が下記:
12~18%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~1%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
2~5%の安息香酸ベンジル;
0.01~1%のシトラール;
2~5%のヘキサメチルインダノピラン;
25~30%のラベンダーオイル;
30~40%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~10%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~0.1%のリモネン;及び
5~10%のローズマリーオイル
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
重量基準で0.1~10%の、イソプロピル、メタノール及びエタノールからなる群より選択されるアルコールを更に含む請求項5に記載の組成物。
【請求項19】
組み合わせることにより局所ローションを形成する不活性キャリアを更に含む請求項2に記載の組成物。
【請求項20】
スプレー又はミストとして適用する溶液として製剤化された請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物の配備が、前記組成物を個体に適用することにより、該個体から昆虫を遠ざけることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物の配備が、前記組成物を、昆虫を遠ざけたい領域にスプレーすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物の配備が、前記組成物を、昆虫を遠ざけたい領域に置くことを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、防虫組成物に関し、具体的には、種々の構成成分を、防虫特性を有する配合で含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
昆虫は役立つ機能(植物の受粉、食糧源その他の有益な役割を含むがこれらに限定されない)を提供する。しかし、望ましくない影響(疾患を運搬し伝播させること及び邪魔者であることを含むがこれらに限定されない)を有する昆虫(例えば、刺咬昆虫)もいる。例えば、ダニ及び蚊は、動物及びヒトが罹患する疾患を運搬する。
蚊は、ほとんどのヒト病気を担っており、年間で平均500百万症例が3百万人の死亡をもたらしている。これら症例の90パーセントがアフリカのみで発生し、世界中で25億人がリスクにさらされている。女性は、皮膚のアルカリ度が高いため捕食性蚊を引付け易いので特に危険である。
更に、蚊媒介疾患は、ヒト集団にとって最も致命的な脅威の1つである。地球温暖化に起因して蚊の天然生息地が拡大するにつれて、蚊媒介疾患のリスクが増加するので、これら疾患の予防戦略を見出さなければならない。現在、世界中に約10百万種の昆虫が存在する。このうち、10,000種が血液を積極的に餌とするものであり、更にそのうちヒト血液を餌とするものは約100種であるとされている。ヒトを狙う昆虫は、特異的な配位で捕食対象の位置決定に働く高感度なケモレセプターネットワークアレイを備えている必要がある。
【0003】
ヒトを蚊から保護する、現に存在する最良の戦略は、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル(商品名IR3535)及びピカリジンである。これら化学物質は有効であるが、下記の発明が解決しようとする重要な限定を欠いている。DEET、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンは、蚊の化学感覚アレイの重要なレセプターを刺激して忌避応答を誘発する点で有効である。この主要レセプターはOr47a及びOr83b DEET様レセプターと呼ばれる。DEET、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル又はピカリジンの使用が前記レセプターに影響することは、該レセプターのみに影響するというこの薬物自体の制限であることを証明している。この戦略は、蚊又は捕食性昆虫を遠ざける1つの方法の作出に役立つにすぎない。蚊は、依然として、他の化学感覚レセプターにより、DEETレセプターを無効にした捕食対象の位置を特定することができる。
【0004】
蚊を遠ざけるための植物抽出物の使用は、或るレベルで含まれる一部の化学物質の毒性効果により制限されることが広く認識されている。ほとんどの蚊忌避性香料又はオイルの毒性効果は、それらに存在する他の毒性化学物質により有効性が制限される。下記は、ポピュラーな蚊忌避性香料/オイル及びそれらの毒性効果の例のリストである:アニス(Pimpinella anisum) メチルオイゲノールに起因する発癌性、バジル(Ocimum sp) メチルオイゲノールに起因する発癌性、ベルガモット(Citrus bergamia) d-リモネンに起因する光毒性皮膚刺激性、カユプテ(Melaleuca alternifolia) メチルオイゲノールに起因する光毒性皮膚刺激性、シトロネラ(Cymbopogon nardus) メチルオイゲノール及びシトラールに起因する皮膚刺激性、シトラスオイル(Citrus sp) ベルガプテン及びd-リモネンに起因する光毒性皮膚刺激性、クローブ(Syzygium aromaticum) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、レモンブッシュ(Lippia javanica) シトラールに起因する皮膚刺激性、ゼラニウム(Pelargonium graveolens) シトラールに起因する皮膚刺激性、ジンジャー(Zinziber sp) シトラールに起因する皮膚刺激性、フオン(Langarostrobus franklini) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、レモングラス(Cympogon cintratus) シトラールに起因する皮膚刺激性、ライム(Citrus aurantifolia) d-リモネンに起因する光毒性皮膚刺激性、ハマビワ属(litsea)(Litsea cubebia) シトラールに起因する皮膚刺激性、マリーゴールド(Tagates minuta) 光毒性、ワームシード(Chenopodium ambrosiodes) 肝臓毒性、ミント(Mentha piperata) トランス-2-ヘキサノールに起因する皮膚刺激性、ナツメグ(Myristica fragrans) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、パルマロサ(Cymbopogon martini) メチルファルネソールに起因する発癌性、ペニーロイヤル(Menthyl pulegium) 毒性、マツ(Pinus sylvestris) 光毒性、ローズマリー(Rosemarinus officinalis) メチルオイゲノールに起因する皮膚刺激性、ルー(Ruta chalepensis) ソラレンに起因する光毒性、タイム(Thymus vulgaris) トランス-2-ヘキサノールに起因する皮膚刺激性、バイオレット(viola odorata) トランス-2-ヘキサノールに起因する皮膚刺激性。
【0005】
シトロネラ、ローズマリー及びユーカリなどの香油は、何千年もの間、昆虫を遠ざけるために使用されてきた。これら香油は、花及び果物が産生するVOC(揮発性有機化合物)に含まれる。これらオイルは、それぞれの供給源から抽出物として集められ、技術的にはアコード(調和香;accord)として説明される。アコードは、特定の香りをつくるために一纏めにされた一組の化学物質である。これらアコードは、調香師が特定の香料をつくるために複製し得、トップノート、ミドルノート及びベースノートで構成される。これら成分の揮発性はトップノートで最も高く、ミドルノートで幾らか揮発性であり、ベースノートで最も低い。
シトロネラの場合、多くの植物源に見出され、その防虫活性が知られるオイルは、幾つかのオイル混合物で構成されると決定された。香料を構成するアコードは、忌避因子を有するサブオイルと、忌避因子でない他のサブオイルで構成されていることが見出された。
【0006】
例えば、シトロネラは、18~20%のゲラニオール、リモネン9~11%、メチルイソオイゲノール7~11%、シトロネロール6~8%、シトロネラール5~15%から構成される。興味深いことに、ゲラニオール、リモネン及びシトロネラオイルのみが蚊忌避特性を有する一方、アコード中の残るオイルは防御又は誘引剤などの他の目的のためであると指摘できる。
このことは、60~80%のシネオールオイルを含み、残る40~20%が微量オイルであるユーカリオイルについても同じである。残りの微量オイルは、α-ピネン9%、β-ピネン1.5%、α-フェランドレン1.5%、δ-リモネン12%、1,8-シネオール70%、カンファー0.1%及びサビネン0.3%である。
行われた研究により、ほとんどの昆虫(例えば、蚊)忌避オイルに調合された香料は一部のみが昆虫忌避を担い、香油の残りは、受粉のための昆虫誘引剤として利用されるか又は近傍の類似種植物に健康特性(例えば防御フェロモン)を伝達するように作用することが示されている。
【0007】
例えば、通常のトマト植物の芳香は好例である。葉の細胞構造は、球状部分に結晶及びオイルを含む腺毛状突起で構成される。この構造は、植物防御を含む幾つかの生物学的機能を担うオイルを含有する。トマト葉の化学成分は、トマチン、(Z)-3-ヘキセナール、(E)-2-ヘキセナール、オイゲノール、1,8-シネオール、カリオフィレン、b-フェランドレン、フムレン、リナロールである。トマトの各化学物質は、特定の機能又は相乗機能のいずれかを有する。トマト香料の場合と同様、研究により、トマチンは、攻撃してくるカタツムリ、細菌又は真菌のバイオフィルムの形成防止に用いられる抗膜防御化学物質であるとされた。(Z)-ヘキセナールは、侵入してくる細菌及び真菌のJAシグナル伝達の阻害による抗菌能力を有するので、創傷治癒に関与する。(E)-2-ヘキセナールは、(Z)-3-ヘキセナールと類似するが、有益な捕食性昆虫の誘引物質として作用する。化学物質b-フェランドレンは、青虫捕食性ダニを創傷部位に誘引することが知られる化学誘引物質である。このことから、化学物質オイゲノール、1,8-シネオール、カリオフィレン、フムレン及びリナロールが、トマト香料アコード中で昆虫忌避を担う化学物質として残る。
【0008】
既知の蚊忌避特性を有する植物性天然抽出物の使用に伴う別の重要な欠点は、アコードを構成する化学構成成分の一部が実際には蚊の化学誘引物質であることである。このことは、周知の蚊忌避性抽出物である、セドロール、イソロンギホレン及びデヒドロネオリンギホレンを含むセダーオイルの化学アコードにおいて明確に理解できる。蚊媒介性疾患の複製サイクルが人類に対する最大の生物学的脅威の1つであることはよく認識されている。ヒトに感染する全てのウイルスは、独特であるが類似するサイクルを共有する。好例は、マラリア感染サイクルである。このサイクルは、マラリアに感染した蚊が刺咬してヒト宿主を感染させることから始まる。その後、ヒト宿主中でマラリア原虫が増殖し、次の蚊が当該宿主を刺咬するのを待つ。次いで、原虫は当該宿主から蚊に移動し、同様に蚊が感染する。このサイクルは、マラリア原虫が2つの宿主、ヒト宿主と蚊宿主との間を移動することで繰り返される。マラリア原虫が、蚊に、自身のところに来て取り込むように「伝える」化学信号を発するように進化してきたことの議論は重要である。ヒト宿主内で成熟に近づくにつれ、原虫は、蚊を感染ヒト宿主に引き付ける化学シグネチャを発し始める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、幾つかの構成成分を含む製剤である種々の組成物に関する。これら成分は、一緒になって、及びDEET、ピカリジン、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル(商品名IR3535)などの従来の既存の忌避剤と組み合わされた場合、当該成分を別々に用いた場合と比較して、昆虫忌避(防虫)特性に関して増強された相乗効果を有する組成物を提供する。既存の蚊忌避剤は、昆虫の味覚レセプターのみを対象とする。本発明の製剤は、昆虫のイオノトロピックレセプター、味覚レセプター及び嗅覚レセプターを標的とすることにより複数レセプターアプローチを利用して、昆虫を遠ざけ、餌を検知し探す昆虫の能力を阻害する相乗効果を提供する。
【0010】
構成成分の一部は植物に見出される。更に、構成要素又は構成成分の一部は、植物が産生する香料であり、この植物は、昆虫を遠ざける特性を有していても有しなくてもよい性質を有する他の多数の化学物質を有していてもよい。これらには、防御、誘引、創傷治癒などのための化学感覚シグナル伝達が含まれる。向上した蚊忌避剤は、蚊忌避性香料の膨大な数の組合せから昆虫を遠ざける活性化学物質のみが組み込まれた忌避剤処方により増強され得る。このような製剤は、Or47a及びOr83b DEETレセプター、AgOr65タンパク質レセプター、cpA二酸化炭素レセプター及びAeegOr4又はAaegOr103スルカトンヒト特異的レセプターを阻害する主要な化学感覚阻害剤を含む点で優れている。この製剤は、蚊又は昆虫を遠ざける特性を有することが知られている全ての植物性香料を、これら具体的なケモレセプター特異的化合物について批判的に分析して外挿することによって実現され得る。
【0011】
本発明の組成物の製剤は、優れた防虫特性に加え、ヒト及び動物に対して安全である。
本発明の幾つかの製剤は、より有用な戦略を指向し、蚊の化学感覚パッケージの全てを阻害することができる複合製剤である。これには、AgOr65タンパク質レセプター、cpA二酸化炭素レセプター、及びヒト宿主が独特に発するスルカトンを感知するAaegOr4又はAaeg103レセプターが含まれる。
本発明は、一態様において、重量%基準で、下記の通りの組成物に関する:
10~20%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~5%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
1~10%の安息香酸ベンジル;
0.01~2%のシトラール;
1~10%のヘキサメチルインダノピラン;
10~40%のラベンダーオイル;
20~50%のアルゼンチン産レモンオイル(Lemon Oil Argentina);
5~15%のメキシコ産蒸留ライムオイル(Lime Oil Distilled Mexican);
0.01~3%のリモネン;及び
5~15%のローズマリーオイル。
任意に、本組成物は、0.1~10%の、エタノール、イソプロパノール及びメタノールなどのアルコールを含むことができる。
【0012】
本発明は、別の一態様において、重量%基準で、下記の通りの組成物に関する:
10~20%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~5%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
1~10%の安息香酸ベンジル;
0.01~2%のシトラール;
1~10%のヘキサメチルインダノピラン;
10~40%のラベンダーオイル;
20~50%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~15%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~3%のリモネン;
5~15%のローズマリーオイル;及び
0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分。
任意に、本組成物は、0.1~10%の、エタノール、イソプロパノール及びメタノールなどのアルコールを含むことができる。
【0013】
本発明は、別の一態様において、重量%基準で、下記の通りの組成物に関する:
12~18%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~1%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
2~5%の安息香酸ベンジル;
0.01~1%のシトラール;
2~5%のヘキサメチルインダノピラン;
25~30%のラベンダーオイル;
30~40%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~10%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~0.1%のリモネン;
5~10%のローズマリーオイル、及び
任意に、0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分。
任意に、本組成物は、0.1~10%の、エタノール、イソプロパノール及びメタノールなどのアルコールを含むことができる。
【0014】
本発明は、別の一態様として、重量%基準で、下記の通りの組成物を用いる防虫方法に関する:
10~20%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~5%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
1~10%の安息香酸ベンジル;
0.01~2%のシトラール;
1~10%のヘキサメチルインダノピラン;
10~40%のラベンダーオイル;
20~50%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~15%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~3%のリモネン;
5~15%のローズマリーオイル;及び
任意に、0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分。
任意に、本組成物は、0.1~10%の、エタノール、イソプロパノール及びメタノールなどのアルコールを含むことができる。
【0015】
更に別の一態様において、防虫方法は、重量%基準で、下記のものを含む組成物を配備することを含む:
12~18%の2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;
0.1~1%の2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル-;
2~5%の安息香酸ベンジル;
0.01~1%のシトラール;
2~5%のヘキサメチルインダノピラン;
25~30%のラベンダーオイル;
30~40%のアルゼンチン産レモンオイル;
5~10%のメキシコ産蒸留ライムオイル;
0.01~0.1%のリモネン;
5~10%のローズマリーオイル、及び
任意に、0.1~10%の、N,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル及びピカリジンからなる群より選択される防虫活性成分。
更に、任意に、本組成物は、0.1~10%の、エタノール、イソプロパノール及びメタノールなどのアルコールを含むことができる。
【0016】
本組成物は、固体としても、オイル又はローションのような液体としても製剤化することができる。本組成物は、個体(ヒト又は動物)に該組成物を局所的に塗布するか、個体又は虫を遠ざけたい環境に該組成物をスプレーするか、該組成物を燃焼させるかなどにより配備することができる。
本発明の組成物及び方法の利点は、従来の組成物より有効な(蚊を含む)昆虫の忌避剤を含むが、これらに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明の組成物は、蚊を含む昆虫の忌避剤(防虫剤)として機能する。本発明が作用する機序は、当該組成物中の具体的構成成分に応じて変化する。本組成物は、昆虫の嗅覚ニューロンに作用する香料のような構成成分を含む。本発明の組成物中の他の構成成分は、昆虫の他の感覚に影響する。
1つの好ましい製剤において、本発明の組成物は、忌避因子に焦点を当てて、昆虫を遠ざけたいヒト、動物又は他の生物(植物を含む)に対する毒性に起因する制限を回避する優れた昆虫忌避剤(防虫剤)を達成する。
【0018】
本発明の組成物の種々の製剤が昆虫、特に蚊にどのように影響するかに具体的に言及すると、蚊の各嗅覚ニューロンは、臭気物質分子中の特定の構造的特徴又はエピトープを認識する1つの嗅覚レセプターを発現する。同じレセプターを発現するニューロンの軸索は、1つの糸球体に収束する。したがって、所与の臭気物質は、対応する糸球体を活性化する嗅覚レセプターOr83b、Or47a、Or4、Or103及びcpAが認識する構造的特徴を有し得る。別の臭気物質は異なるエピトープを有し得、別のレセプターを活性化し得る。第3のタイプの臭気物質は、完全に異なるエピトープを有し、同時に幾つかのレセプターを活性化し得る。したがって、嗅覚レセプター及び対応する糸球体は、幾つかの異なる臭気物質によって活性化され得るが、各臭気物質は糸球体活性化の独自パターンを誘発する可能性が高い。このパターンは、蚊が捕食対象(獲物)を見つけ出すために利用する臭気物質特異的神経パターンを構成する。
本発明の組成物の1つの観点は、これら嗅覚レセプターを特異的又は普遍的に阻害して、昆虫(例えば、蚊)をヒト獲物に対して効果的に「盲目化」する特定の成分又は構成要素に焦点を当てる。この戦略により、単一レセプターのみに影響するDEET、IR3535又はピカリジンのものと比較してより優れた相乗性の昆虫忌避特性を有する昆虫忌避剤を製造するに十分な本発明の組成物の製剤に含ませるための特定の構成成分及びそれぞれの濃度を選択することが可能になる。
【0019】
本発明の組成物の別の観点によれば、本組成物は、ヒト又は動物の体臭を検出するタンパク質レセプターを阻害することにより、該組成物が適用された個体を昆虫(蚊その他の刺咬昆虫などであるがこれらに限定されない)に「見えなくする」ように製剤化することができる。これら特殊なレセプターは、ヒトが発する体臭の特定タンパク質を検出する。これら臭気物質はスルカトン及び乳酸である。蚊のアンテナは、ヒト獲物の位置決定に特異的なヒト体臭スクラトン及び乳酸を検出する特殊なレセプター(AaegOr4、AaegOr65及びAaegOr103)を有する。これらレセプターは全て、これらヒト特有臭気物質を検出するために、P450アイソザイムの機能を必要とする。鍵となる化学物質を、AaegOr4、AaegOr65及びAaegOr103レセプターの機能を十分に阻害する忌避剤に組み込むことは独特な戦略である。P450アイソザイム阻害を介してこれら重要なレセプターの不活化に成功すれば、蚊はヒト宿主の存在が見えなくなる。したがって、本発明の組成物の幾つかの製剤は、天然レセプターP450アイソザイムの不活化による蚊のスクラトン及び乳酸レセプターを盲目化させるための構成成分を含む。
【実施例
【0020】
実施例
以下は、本発明の組成物の製剤例及び使用例である。
実施例1
製剤1-製剤1の組成は、重量%基準で、次のとおりである:
1.2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール 14.20%
2.2,6-オクタジエナール, 3,7-ジメチル- 0.44%
3.エチルアルコール 0.15%
4.安息香酸ベンジル 3.55%
5.シトラール 0.06%
6.ヘキサメチルインダノピラン 3.55%
7.ラベンダーオイル 28.80%
8.アルゼンチン産レモンオイル 35.00%
9.メキシコ産蒸留ライムオイル 7.10%
10.リモネン 0.06%
11.ローズマリーオイル 7.10%
【0021】
実験
表1(下記)は、蚊のランディング及びプロービング(採餌行動)の両方を阻害する、製剤1の昆虫忌避性を証明する。
【表1】
【0022】
液体被験物質を試験するための皮膚類似物として、コラーゲン膜を使用した。塗布前に、コラーゲン膜を水で湿らせ、表面を乾燥させることで、ヒト皮膚に類似するテクスチャ及びコンシステンシーを提供した。コラーゲン膜への塗布は、被験物質を、十分に振盪した後に膜が湿るまで塗布し、次いで膜に穏やかに擦り込むことにより行った。
膜を、水で湿らせたペーパータオル(軽く湿らせたもの)の上に置き、エージングの間に膜から水分が完全に失われないようにして「皮膚様の」コンシステンシーを維持した。未処理側がペーパータオルに接するように膜を置き、エージングの間に水分が維持されるように必要に応じてペーパータオルに水を加えた。各被験物質を塗布の1時間後及び2時間後に評価した。各評価は、エージングあたり2つの複製からなった。
【0023】
1'×1'ケージ内に25匹の雌蚊を放ち、試験前の少なくとも2時間は餌を与えなかった。ケージは、上部に1'×1'の木製カバーを有し、その中央部に約2.5"×6"の取り外し可能な部分が存在した。この部分は、ケージ上部に開口部が生じるように取り外し可能であった。開口部は試験面であり、この試験面に置かれた被験者の腕から蚊が吸血しようと試みるためのものであった。試験面の上側にメッシュを設置して試験面と被験者の腕との直接接触を防止し、使い捨ての木製スペーサーを上蓋の上に置いて被験者の腕を試験物質より高くして蚊が被験者から吸血できないようにした。
未処理の処理前評価は、処理済みの試験面を試験する前に、5分間に未処理試験面にランディングしてプロービングした蚊を計数することにより行った。処理面を未処理面と同じ様式で評価し、処理前評価の間のランディング及びプロービングの数を、処理後評価の間のランディング及びプロービングの数と比較することにより忌避性を算出した。この試験は、各被験物質及び各エージング後評価について、異なる2人の被験者を用いて行った。
【0024】
【表2】

(*ローション製剤は、0.25%、1%及び5%の製剤1と下記のものとからなる。
不活性成分(重量基準):
81~85.8%の水
5.6%のセテアリルアルコール
2.4%のセテアレス-20
2%のミリスチン酸イソプロピル
2%の大豆油
0.995のグリセリン
0.900%のフェノキシエタノール
0.10%のエチルヘキシルグリセリン
【0025】
液体被験物質を試験するための皮膚類似物としてコラーゲン膜を使用した。塗布前に、コラーゲン膜を水で湿らせ、表面を乾燥させることで、ヒト皮膚に類似するテクスチャ及びコンシステンシーを提供した。コラーゲン膜への塗布は、被験物質を、十分に振盪した後に1グラム/600cm2の塗布量で膜に塗布し、次いで膜に穏やかに擦り込むことにより行った。
未処理コントロールに選んだ膜は、水で湿らせたが、何も塗布しなかった。膜を、水で湿らせたペーパータオル(軽く湿らせたもの)の上に置き、エージングの間に膜から水分が完全に失われないようにして「皮膚様の」コンシステンシーを維持した。未処理側がペーパータオルに接するように膜を置き、エージングの間に水分が維持されるように必要に応じてペーパータオルに水を加えた。被験物質を塗布の6時間後及び8時間後に評価した。各評価は、コントロールについて4つの複製から、エージングあたりの各被験物質については4つの複製からなった。
【0026】
1'×1'ケージ内に25匹の雌蚊を放ち、試験前の少なくとも2時間は餌を与えなかった。ケージは、上部に1'×1'の木製カバーを有し、その中央部に約2.5"×6"の取り外し可能な部分が存在した。この部分は、ケージ上部に開口部が生じるように取り外し可能であった。開口部は試験面であり、この試験面に置かれた被験者の腕から蚊が吸血しようと試みるためのものであった。試験面の上側にメッシュを設置して試験面と被験者の腕との直接接触を防止し、使い捨ての木製スペーサーを上蓋の上に置いて被験者の腕を試験物質より高くし、且つ蚊が被験者から吸血できないようにした。未処理の処理前評価は、処理済みの試験面を試験する前に、5分間に未処理試験面にランディングしてプロービングした蚊を計数することにより行った。処理面を未処理面と同じ様式で評価し、処理前評価の間のランディング及びプロービングの数を、処理後評価の間のランディング及びプロービングの数と比較することにより忌避性を算出した。この試験は、各被験物質及び各エージング後評価について、異なる2人の被験者を用いて行った。
今や、本発明の組成物が、種々の処方で、従来技術の防虫剤には見られない特徴及び利点を提供することが明らかである。本発明の組成物は、ヒト及び動物に対して安全でありながら、強力な防虫特性を有するように処方することができる。
【0027】
更に、本組成物は、捕食性昆虫(限定されないが、例えば、蚊、シラミ、マダニ(ticks)、ノミ、ハエ、トコジラミ及びダニ(mites)である)の複数の忌避戦略をもたらす活性抽出物の選択により創出される香料を含む構成成分に基づいて、優れた蚊忌避特性を有するように処方することが可能である。
更に、本発明の組成物は、遠ざけたい昆虫及び昆虫(刺咬昆虫を含む)から保護したい哺乳動物(ヒト及び動物を含む)に基づいて、特定の成分を、所望の昆虫忌避特性を達成する量で選択することにより最適化することができる。
本発明の組成物の処方に望ましい構成成分の選択は、鍵となる昆虫レセプター(蚊忌避のための蚊レセプターを含む)の阻害に基づく。これは、二酸化炭素レセプター、体臭レセプター、DEET様レセプター又はドーパミンレセプターの阻害により相乗的に達成され得る。これら重要なレセプターにおけるシナプスの活動電位発火を進行性に阻害することにより、昆虫はヒト標的を望ましくないものと判定して摂食を忌避するようになる。
更に、本組成物は、蚊その他の昆虫によって捕食対象を選択するために利用される鍵のレセプターの超刺激に関係する香料を含む特定の単離物を特別に選択することによって、ヒトに適用したとき、ヒトが昆虫(例えば蚊)に「不可視」であるか又は魅力的でないように改変することができる。
【0028】
本発明の組成物の種々の形態において、構成成分は相乗的に作用して、蚊などの昆虫の既知のDEETレセプターに影響する。例えば、2つの特異的DEETレセプターOr83B及びOr47aが存在する。企図される製剤は、これら特異的レセプターにそれぞれ影響することが知られるリナロールを含む。
加えて、本発明の組成物は、蚊の摂食行動をモジュレートする鍵の化学シグネチャを阻害するように製剤化することができる。そうすることで、蚊が媒介するマラリアの感染率の低減又は抑制がもたらされる。マラリア原虫は、感染個体に、蚊を誘引する化学誘引物質(ピネン及びリモネン)を「ガス放出」させることが知られている。本発明の目的は、これら化学物質を検出する蚊感覚レセプターを過剰刺激することにより、α-ピネン若しくはリモネン又はその両方を化学的「盲目化因子」として利用することである。これら鍵のレセプターの過剰刺激は、捕食性蚊の回避行動を誘発する。
加えて、本組成物は、動物及びヒト宿主から排出される二酸化炭素の感知に関して、昆虫を「盲目」とする特定の化学構成成分と共に製剤化することができる。このレセプターは、特に、cpAレセプター感覚クラスターを含むgr1、gr2及びgr3「味覚」レセプターである。本製剤は、味覚阻害剤として、ピルビン酸エチル、7-a-β-ネパタラクトン、サリチル酸メチルを、単独又は組合せで含有することが企図される。
【0029】
本組成物はまた、昆虫レセプターAaegOr4、AaegOr65及びAaegOr103を、該レセプター中に見出されるP450アイソザイムの不活化又は阻害により「盲目化」する特定の化学単離物を含有するように製剤化することができる。タンパク質特異的レセプターの不活化は、ヒト標的が産生するスルカトン臭及び乳酸臭の存在に対して蚊を盲目とする。これら企図される単離物は、ミルセン、ボルネオール及びピネンであり、これらは、該レセプターの天然ニューロンP450アイソザイムの直接的及び受動的阻害により蚊のスルカトン及び乳酸特異的タンパク質レセプターを能動的に不活化する。
或いは、本発明の組成物は、マラリア(P. falciparum)スポロゾイトに対して毒性である植物抽出物の局所製剤を作製することによりマラリア感染を予防するように製剤化することができる。植物抽出物の特定の化学成分は、マラリアのスポロゾイト及びプラスモジウムに対して毒性であることが企図される。更に、宿主への刺入開始時に蚊口吻がこれら植物抽出物と接触するので、マラリア感染の直接低減が達成され得ると企図される。
【0030】
更に別の代替形態では、本発明の組成物は、蚊がDEETの嫌悪誘発特性を回避するように学習行動を発達させることを阻害する化学物質を含むように製剤化することができる。蚊は、DEETの効力を回避及び低下させる行動を学習できることが証明されている。この学習行動は、DEETの有効性を低下させる重要な要因の1つとして十分に特定されている。本発明の目的は、蚊忌避製剤が、耐性学習によるDEETの効力喪失を阻害する手段としてモノテルペンを含むことである。これにはリモネンが含まれる。
更に、本発明の組成物中の構成成分の改変は、得られる組成物の香料シグネチャ全体を変更する効果を有し、ルーチンの実験及び最適化を通じて、所望の昆虫又は特定の適用若しくは使用のための忌避剤として機能する防虫剤をもたらす。
【国際調査報告】