(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】深紫外線顕微鏡を用いた無標識の血液学的および組織病理学的分析
(51)【国際特許分類】
G02B 21/16 20060101AFI20221128BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20221128BHJP
G01N 15/00 20060101ALI20221128BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20221128BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
G02B21/16
G01N33/49 G
G01N15/00 B
G01N15/00 A
G01N33/49 H
G01N33/483 C
G01N21/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521445
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2020055431
(87)【国際公開番号】W WO2021072408
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】ロブレス、フランシスコ イー.
(72)【発明者】
【氏名】オジャギ、アシュカン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BA14
2G045BB21
2G045BB24
2G045CA02
2G045CA11
2G045CA24
2G045CA25
2G045CB01
2G045CB30
2G045FA16
2G045FA19
2G045FA27
2G059AA05
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF03
2G059HH03
2G059JJ02
2G059KK04
2H052AC12
2H052AC27
2H052AD33
2H052AD34
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】
深紫外線顕微鏡システムは生体サンプルを照らすための光線を出力する光源であって、前記光線が紫外線波長を含む、光源と、前記光線によって照らす前記生体サンプルを受容する受容空間と、前記生体サンプルと相互作用する光を収集し、撮像装置に中継する紫外線顕微鏡対物レンズと、前記生体サンプルの画像を撮像するための紫外線感応撮像装置とを備え、前記顕微鏡システムは、前記生体サンプルの複数の画像を1つまたは複数の紫外線波長で撮像するように構成されている。生体サンプルの紫外線画像を処理する方法は、生体サンプルの複数のマルチスペクトル紫外線画像を受信することと、前記画像を正規化しスケーリングすることと、波長に基づいて、各画像をRGB色空間のチャネルに割り当てることとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルを照らすための光線を出力する光源であって、前記光源から出力される前記光線が紫外線波長を含む、光源と、
前記光源から出力された前記光線によって照らす前記生体サンプルを受容する受容空間と、
前記生体サンプルと相互作用した光を収集し、その収集した光を撮像装置に中継する紫外線顕微鏡対物レンズと、
前記紫外線顕微鏡対物レンズから中継された前記光の画像を撮像するための紫外線感応撮像装置と、を備え、
前記生体サンプルの複数の画像を1つまたは複数の紫外線波長で撮像するように構成されている、深紫外線顕微鏡システム。
【請求項2】
前記光源は、紫外線波長と非紫外線波長とを含む光線を出力するように構成された広帯域光源であり、
前記システムは、前記光源の下流に配置され、前記光源から出力された前記光線をフィルタリングして非紫外線波長を除去し、紫外線波長を中継する、1つまたは複数のバンドパスフィルタをさらに備える、請求項1に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項3】
前記システムは2つ以上のバンドパスフィルタを備える、請求項2に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項4】
前記2つ以上のバンドパスフィルタは、前記2つ以上のバンドパスフィルタを切り替えるように構成されたフィルタステージに支持されている、請求項3に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項5】
前記システムは、それぞれが200~450nmの範囲の波長を中心とした狭帯域の紫外線波長の光を通過させる1つまたは複数のバンドパスフィルタを備え、狭帯域は50nm以下の帯域幅を含む、請求項2に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項6】
前記光源から出力される前記光線から非紫外線波長をフィルタで除去するためのショートパスダイクロイックミラーであって、前記光源と前記1つまたは複数のバンドパスフィルタの間に配置されるショートパスダイクロイックミラーをさらに備える、請求項2に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項7】
色収差を除去し、前記光源から出力される前記光線を収束させるための放物面鏡であって、前記光源と前記1つまたは複数のバンドパスフィルタの間に配置される放物面鏡をさらに備える、請求項2に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項8】
前記光源は1つまたは複数のLEDであり、各LEDは、狭帯域の紫外線波長からなる光線を出力するように構成されており、狭帯域は50nm以下の帯域幅を含む、請求項1に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項9】
前記光源は2つ以上のLEDであり、各LEDは、狭帯域の紫外線波長からなる光線を出力するように構成されており、各LEDは、他のLEDの紫外線波長とは異なる紫外線波長を出力するように構成されている、請求項8に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項10】
前記光源は、それぞれが200~450nmの範囲の波長を中心とした狭帯域の紫外線波長の光を出射する1つまたは複数のLEDを備える、請求項8に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項11】
前記紫外線顕微鏡対物レンズは、前記生体サンプルと相互作用した光を収集するように適合されており、これには透過および後方反射における吸収と散乱を含み得る、請求項1に記載の深紫外線顕微鏡システム。
【請求項12】
生体サンプルをイメージングする方法であって、
請求項1に記載の深紫外線顕微鏡システムによって前記生体サンプルをイメージングすることを含む、方法。
【請求項13】
前記生体サンプルは、血液サンプル、骨髄サンプル、および組織サンプルのうちから選択された1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生体サンプルは生きたサンプルまたは固定されたサンプルであり得る、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記生体サンプルは、2つ以上の異なる生体成分を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記生体サンプルは、赤血球、白血球、および血小板の形態の異なる生体成分を含む血液サンプルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記システムで作成した生体サンプルの画像は、血液学または組織病理学で使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
固有のタイプの細胞を特定し表現型判定を行うための紫外線画像のうち1つまたは複数を用いることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
血液、骨髄、および組織サンプルの表現型判定や診断を行うための紫外線画像のうち1つまたは複数を用いることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
生体サンプルの紫外線画像を処理する方法であって、
生体サンプルの複数の紫外線画像を受信することであって、前記紫外線画像が、1つまたは複数の紫外線波長で撮像された画像を含む、受信することと、
各紫外線画像をカラー化画像に変換することと、を含む、方法。
【請求項21】
前記紫外線画像を受信することは、前記紫外線画像を、撮像装置から送信される電子信号として受信することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
各紫外線画像を変換する前に、対応する波長で撮像された空白の画像を用いて各紫外線画像を正規化することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
複数の紫外線画像を受信することは、2つ以上の紫外線波長で撮像された画像を含む複数のマルチスペクトル紫外線画像を受信することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
各紫外線画像を変換する前に、重み係数とガンマ係数を用いて各紫外線画像をスケーリングし、所与の各紫外線画像の前記重み係数およびガンマ係数は、前記所与の紫外線画像の波長に基づいて選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
各紫外線画像をカラー化画像に変換することは、スケーリングされた各紫外線画像を、前記スケーリングされた紫外線画像の波長に基づいてRGB色空間のチャネルに割り当てることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複数のマルチスペクトル紫外線画像は、3つ以上の紫外線波長で撮像された画像を含み、
スケーリングされた各紫外線画像を、前記スケーリングされた紫外線画像の波長に基づいてRGB色空間のチャネルに割り当てることは、第1の波長の紫外線画像を赤チャンネルに割り当て、第2の波長の紫外線画像を緑チャンネルに割り当て、第3の波長の紫外線画像を青チャンネルに割り当てることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記紫外線画像は、ヘマトキシリンおよびエオシン染色、ギムザ染色、および免疫組織化学染色のような医療用染色剤の色を模してカラー化され、
画像中の分子や構造体を区別するために、前記紫外線画像の任意の色付けが選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
生体サンプルの紫外線画像を処理する方法であって、
生体サンプルの複数のマルチスペクトル紫外線画像を受信することであって、前記紫外線画像が、3つ以上の紫外線波長で撮像された画像を含む、受信することと、
各紫外線画像を、前記所与の紫外線画像に対応する波長で撮像された空白の画像を用いて正規化することと、
重み係数とガンマ係数を用いて各紫外線画像をスケーリングすることであって、所与の各紫外線画像の前記重み係数およびガンマ係数は、前記所与の紫外線画像の波長に基づいて選択される、スケーリングすることと、
スケーリングされた各紫外線画像を、前記スケーリングされた紫外線画像の波長に基づいてRGB色空間のチャネルに割り当てることは、第1の波長の紫外線画像を赤チャンネルに割り当て、第2の波長の紫外線画像を緑チャンネルに割り当て、第3の波長の紫外線画像を青チャンネルに割り当てることと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の支援に対する謝辞)
本発明は、アメリカ国立科学財団によって授与された賞第1752011号の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本明細書に記載された発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、生体サンプルの血液学的および組織病理学的分析のための装置および方法に関する。特に、本発明は、深紫外線顕微鏡を用いて生きた固定された細胞および組織の、無標識の血液学的および組織病理学的評価のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
血球の血液学的分析は、鎌状赤血球貧血、好中球減少症、血小板減少症など、多くの血液疾患に関する日常的な臨床診断およびモニタリングのための標準的な方法である。現在の血液学の慣例では、疾患を診断するのに、血球の形態、集団、および分子または細胞遺伝学的特性の変化を評価することに依存している。こうした慣例では、末梢血を収集し、血液分析装置を用いて分析し、全血算(Complete Blood Count:CBC)を取得する。現代の血液分析装置は、吸収分光法、インピーダンス測定、フローサイトメトリーなどの複数の技術を組み合わせて用い、赤血球(Red Blood Cell:RBC)、血小板数、および白血球(White Blood Cell:WBC)の鑑別1(すなわち、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、および単球数)を計測する。血液分析装置は、複数のサンプル2の、自動化された迅速な染色と分析が可能だが、コストがかかり、複数の試薬と集中的なメンテナンスが必要である。
【0004】
CBCは最も一般的な医療検査の1つであり3、多くの場合、医療センターで訓練を受けた技術者によって実行され、患者は定期検査のために何度か出向く必要があるので、それにより検査のコストと労力がさらに増し、重症患者のモニタリング頻度が制限される。さらに、非定型的な結果をもたらす異常で病的なサンプルの場合、CBCの結果を確定するために手動での顕微鏡検査が必要となることがよくある1。末梢血の顕微鏡分析は、一般に青色染料(例えばメチレンブルー)と酸性染料(例えばエオシン)で構成されるロマノフスキータイプの染色剤を用いて、塗抹サンプルを固定および染色することによって行われ、その結果、赤紫色の顆粒を含む紫色の核と濃い青色の細胞質を有するピンク色の赤血球と白血球が生じる1。末梢血塗抹サンプルの正確な評価には、十分に染色されたサンプルと、訓練を受けた担当者による時間のかかる顕微鏡分析が必要であり、染色のばらつきが生じやすい。
【0005】
蛍光標識などの代替技術も、血球の視覚的評価4,5とフローサイトメトリー6-8の両方に広く用いられているが、この方法に関連する化学的染色手順や遺伝子組み換えは侵襲的であり、光毒性や光退色などの欠点がある9。この問題に対処するために、さまざまな内因性特徴、例えば、共焦点レーザー走査顕微鏡(Confocal Laser Scanning Microscopy:CLSM)10,11、スペクトルエンコード検出12、光熱イメージング13、ラマン顕微鏡14、ハイパースペクトルイメージング15、蛍光寿命イメージング顕微鏡(Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy:FLIM)16、2光子自己蛍光17-19、第3高調波発生20、定量的位相イメージング9,21-23などに基づいて、いくつかの無標識のモダリティが開発された。これらの方法は、細胞の表現型と分化に使用できる構造的および生化学的特徴を明らかにするが、注意深いキャリブレーションが必要であり、光学設定が複雑であり、また機器コストが高いことにより、臨床現場やポイント・オブ・ケアでの使用が阻まれている。近年、毛細血管内の微小循環の光学的イメージングに基づく技術により、ポイント・オブ・ケアでの白血球検出が可能となったが、白血球の種類を完全に識別・可視化することはできず、好中球減少症などの疾患への適用には限界がある。
【0006】
技術的進歩にもかかわらず、ポイント・オブ・ケアに適した無標識の技術で、すべての血球型の高品質な可視化と正確な定量的分化を実現できるものは、まだ存在しない。
【発明の概要】
【0007】
本発明による深紫外線顕微鏡システムは、生体サンプルを照らすための光線を出力する光源であって、当該光源から出力される光線が紫外線波長を含む光源と、前記光源から出力された前記光線によって照らす前記生体サンプルを受容する受容空間と、前記生体サンプルと相互作用した光を収集し、当該収集した光を撮像装置に中継する紫外線顕微鏡対物レンズと、前記紫外線顕微鏡対物レンズから中継された光の画像を撮像するための紫外線感応撮像装置と、を備える。前記紫外線顕微鏡対物レンズは、前記生体サンプルと相互作用した光を収集するように適合されており、これには透過または後方反射における吸収と散乱を含み得て、前記撮像装置は、1つまたは複数の紫外線波長で前記生体サンプルの複数の画像を撮像するように構成されたUV感応カメラである。
【0008】
一例において、前記光源は、紫外線波長と非紫外線波長とを含む光線を出力するように構成された広帯域光源であってもよく、前記システムは、前記光源の下流に配置され、前記光源から出力された前記光線をフィルタリングして非紫外線波長を除去し、紫外線波長を中継する、1つまたは複数のバンドパスフィルタをさらに備えていてもよい。前記システムは、1つまたは複数のバンドパスフィルタを備えていてもよく、前記バンドパスフィルタは、当該2つ以上のバンドパスフィルタを切り替えるように構成された、例えばフィラーホイールなどのフィルタステージに支持されていてもよい。前記バンドパスフィルタは、200~450nmの範囲の波長を中心とした狭帯域紫外線波長の光を通過させる1つまたは複数のバンドパスフィルタを備えていてもよく、狭帯域は50nm以下の帯域幅を含んでいてもよい。
【0009】
前記光源から出力される前記光線から非紫外線波長をフィルタで除去するためのショートパスダイクロイックミラーであって、前記光源と前記1つまたは複数のバンドパスフィルタの間に配置されるショートパスダイクロイックミラーをさらに備えていてもよい。色収差を除去し、前記光源から出力される前記光線を収束させるための放物面鏡であって、前記光源と前記1つまたは複数のバンドパスフィルタの間であって、前記ショートパスダイクロックミラーの上流に配置される放物面鏡をさらに備えていてもよい。
【0010】
別の例において、前記光源は1つまたは複数のLEDであってもよく、各LEDは、狭帯域の紫外線波長からなる光線を出力するように構成されており、狭帯域は50nm以下の帯域幅を含んでいてもよい。前記光源は、2つ以上、または少なくとも3つのLEDであってもよく、各LEDは、他のLEDの紫外線波長とは異なる紫外線波長を出力するように構成されていてもよい。前記LEDのうち1つまたは複数は、200~450nmの範囲の波長を中心とした狭帯域の紫外線波長の光を透過させるよう構成されていてもよい。
【0011】
使用時には、本発明による深紫外線顕微鏡システムは、生体サンプルを画像化するために使用されてもよく、これは、血液サンプル、骨髄サンプル、および組織サンプルのうちから選択された生体サンプルを含んでいてもよい。生体サンプルは生きたサンプルまたは固定されたサンプルであってもよい。単一の生体サンプルは、赤血球、白血球、および血小板の形態の異なる生体成分を含む血液サンプルなど、2つ以上の異なる生体成分を含んでいてもよい。
【0012】
本発明による深紫外線顕微鏡システムで作成された画像は、撮像した生体サンプルについての血液学または組織病理学で使用してもよい。画像は、固有のタイプの細胞の特定と表現型解析、および血液、骨髄、組織サンプルの表現型解析と診断に使用してもよい。
【0013】
本発明はまた、1つ、2つ、または3つ以上の紫外線波長で撮像された画像を含む、生体サンプルの複数の紫外線画像が受信される、カラー化スキームを含む。紫外線画像は、物理的な記憶媒体から受信してもよいし、撮像装置から送信される電子信号として受信してもよい。各紫外線画像を変換する前に、各画像を、対応する波長で撮像された空白の画像を用いて正規化し、次いで、当該所与の紫外線画像の波長に基づいて選択される重み係数とガンマ係数とを用いてスケーリングしてもよい。
【0014】
紫外線画像をカラー化画像に変換することは、スケーリングされた各紫外線画像を、当該スケーリングされた紫外線画像の波長に基づいてRGB色空間のチャネルに割り当てることを含み、スケーリングされた各紫外線画像に対して、スケーリングされた紫外線画像の波長に基づいて、RGB色空間のチャンネルを割り当てる。紫外線画像を割り当てることは、第1の波長の紫外線画像を赤チャンネルに割り当て、第2の波長の紫外線画像を緑チャンネルに割り当て、第3の波長の紫外線画像を青チャンネルに割り当てることを含んでいてもよい。別の例では、1つまたは複数の紫外線波長で取得された画像を、フェーザ分析の主成分分析などの次元削減技術を用いて組み合わせて、紫外線画像をカラー化画像に変換してもよい。紫外線画像は、ヘマトキシリンおよびエオシン染色、ギムザ染色、および免疫組織化学染色のような医療用染色剤の色を模してカラー化し、画像中の分子や構造体を区別するために、前記紫外線画像の任意の色付けを選択してもよい。
【0015】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的かつ説明的なものにすぎず、請求項に記載の本発明のさらなる説明を提供することを意図している。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれるものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、明細書とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下に説明する図面に関連して提供される以下の詳細な説明から確認することができる。
【
図1】
図1は、本発明による紫外線顕微鏡システムを示す。
【
図2】
図2は、
図1のシステムによって生成されたマルチスペクトル画像、および、それに基づき疑似カラー化スキームによってカラー化された画像を、同じ細胞の比較ギムザ染色画像とともに示す。
【
図3】
図3は、
図1のシステムを用いて画像化し疑似カラー化スキームに基づいてカラー化した、異なる血球型のモザイクコレクションを、同じ細胞の比較ギムザ染色画像とともに示す。
【
図4a】
図4aは、健常赤血球および鎌状赤血球におけるヘモグロビン定量化を示し、(a)健常患者2人(n=40)およびSCD患者2人(n=40)のサンプルから得られたMCH値を含む。
【
図4b】
図4bは、健常赤血球および鎌状赤血球におけるヘモグロビン定量化を示し、(b)健常ドナーおよびSCDドナーの細胞面積値を含む。
【
図4c】
図4cは、健常赤血球および鎌状赤血球におけるヘモグロビン定量化を示し、(c)健常赤血球およびSCD赤血球の一平方面積当たりの平均Hb質量を含む。
【
図4d】
図4dは、健常赤血球および鎌状赤血球におけるヘモグロビン定量化を示し、(d)RBC Hb質量マップの例を挿入して示した、健常サンプルおよびSCDサンプルについてのMCH対細胞面積の散布図を含む。
【
図5a】
図5aは、機械学習に基づく5部WBC鑑別を示し、(a)PMNL、リンパ球、および単球間の3部WBC鑑別を行うために細胞直径に対してプロットされた細胞強度分散を含む。
【
図5b】
図5bは、機械学習に基づく5部WBC鑑別を示し、(b)機械学習に基づくPMNL分類に関連する受信機動作特性(ROC)曲線を含む。
【
図5c】
図5cは、機械学習に基づく5部WBC鑑別を示し、(c)トップランクされた3つの特徴に基づくPMNLサブタイプの散布図を含む。
【
図6】
図6は、
図1のシステムからの分類結果を表示する多波長サポートベクターマシン(SVM)モデルの混同行列を示す。
【
図7a】
図7aは、単波長SVMモデルの細胞分類結果を示す図であり、(a)混同行列を含む。
【
図7b】
図7bは、単波長SVMモデルの細胞分類結果を示す図であり、(b)ROC曲線を含む。
【
図8a】
図8aは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(a)鎌状赤血球貧血患者から採取したサンプルの広視野疑似カラー化UV画像を含む。
【
図8b】
図8bは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(b)広視野疑似カラー化UV画像からの第1の拡大差し込み図を含む。
【
図8c】
図8cは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(c)広視野疑似カラー化UV画像からの第2の拡大差し込み図を含む。
【
図8d】
図8dは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(d)広視野擬似カラー化UV画像からの第3の拡大差し込み図を含む。
【
図8e】
図8eは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(e)広視野疑似カラー化UV画像に写っているのと同じサンプルの広視野明視野顕微鏡画像(ただし、固定しギムザ染色を施した後のもの)を含む。
【
図8f】
図8fは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(f)広視野疑似カラー化UV画像からの第1の拡大差し込み図に対応する、広視野明視野顕微鏡画像からの第1の拡大差し込み図を含む。
【
図8g】
図8gは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(g)広視野疑似カラー化UV画像からの第2の拡大差し込み図に対応する、広視野明視野顕微鏡画像からの第2の拡大差し込み図を含む。
【
図8h】
図8hは、血液塗抹サンプルの比較顕微鏡画像を示し、(h)広視野疑似カラー化UV画像からの第3の拡大差し込み図に対応する、広視野明視野顕微鏡画像からの第3の拡大差し込み図を含む。
【
図9a】
図9aは、両凹形状の赤血球(灰色の矢印)と両凹形状でない赤血球(青色の矢印)を有する遷移領域を示し、(a)紫外線カラー化画像を含む。
【
図9b】
図9bは、両凹形状の赤血球(灰色の矢印)と両凹形状でない赤血球(青色の矢印)を有する遷移領域を示し、(b)明視野画像を含む。
【
図10】
図10は、組織のUV画像に基づく2つの異なるカラー化スキームを示し、それぞれ画像化された組織内の異なる構造を強調している。
【
図11】
図11は、本発明によるシステムの他の例を示し、広帯域光源およびフィルタの代わりにLEDを採用した簡略化された形状を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の開示は、添付図面に示された実施例を参照して本発明を論じるが、本発明をこれらの実施例に限定するものではない。
【0018】
本明細書で提供される任意のおよびすべての例、あるいは例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより分かりやすく示すことを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる文言も、文脈上別段の明確な記載がない限り、請求項に記載されていない要素が発明の実施に必須であるか、あるいは非常に重要であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書では、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈上別段の明確な記載がない限り、複数の対象を含むものとする。文脈上別段の記載がない限り、用語「または」は、包含的な「または」として理解されるものとする。複数の装置または要素を説明するのに用いられる「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、別個の装置の相対的な作用、位置、および/または機能を伝えるためにのみ用いられ、そのような装置または要素の特定の順序や、そのような装置または要素の特定の数量または順位を必要とするものではない。
【0020】
本明細書で任意の特性または状況に関して用いられる「実質的に」という言葉は、識別された特性または状況を著しく損なうことがないほど十分に小さい程度の逸脱を指す。ある状況下で許容される正確な逸脱の程度は、当業者であれば理解できるように、特定の状況に依存する。
【0021】
用語「約(about)」または「約(approximately)」の使用は、それぞれの文脈で当業者に理解されるように、明記された値または範囲の上および/または下の値を記述することを意図している。いくつかの例では、これは約±10%の範囲の値を包含してもよく、他の例では約±5%の範囲の値を包含してもよく、さらに他の例では約±2%の範囲の値を包含してもよく、さらに他の例では、これは約±1%の範囲の値を包含してもよい。
【0022】
用語「comprises」および/または「comprising」は、本明細書において用いられる場合、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または成分の存在を特定するが、本明細書に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、成分、および/またはその集合の存在または追加を排除しないことが理解されるであろう。
【0023】
本明細書における値の範囲の記載は、別段の記載がない限り、範囲の端点、範囲内の個の値、および全体の範囲に包含されるすべての中間の範囲を含む、記載された範囲内の個別の値のそれぞれを参照するための略記として役立ち、各記載は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0024】
別段の記載がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、本明細書に記載の方法は、任意の適切な順序で実行することが可能であり、これには開示された正確な順序での実行、中間ステップなし、または開示されたステップの間に介在する1つまたは複数のさらなるステップありでの実行、開示された正確な順序以外の順序で行われる開示されたステップの実行、1つまたは複数のステップの同時実行、および1つまたは複数の開示されたステップの省略などが含まれる。
【0025】
顕微鏡用の深紫外(UV)光(すなわち200~400nm)は、生体サンプルの定量的構造・生化学解析のための有望な新たなツールである24。深紫外線顕微鏡は、紫外線の波長が短いため空間分解能が高く、細胞の構造や機能に重要な役割を果たす多くの内在性生体分子からの情報にアクセスできるなど、従来の方法と比較して多くの潜在的利点を有している25,26。深紫外線波長域で動作する顕微鏡システムを用いて、アポトーシスを誘発することなく、長時間(~6時間)にわたって生細胞の無標識イメージングが達成されている24,27。さらに、細胞の表現型と同定は、重要な細胞内構造24,28ー30および生化学的特徴を抽出できる情報の多いUV画像を用いて実現できる。
【0026】
本発明の態様は、深紫外線顕微鏡法に基づく生血球の無標識評価を含む。これらの評価は、生細胞からの定量的な内因性分子情報を提供し、その分子的および構造的特徴に基づいて血球型の分析と分化を可能にする。本発明によるシステムおよび方法は、血小板、ならびに正常および鎌状RBCの明確な視覚化を伴う、定量的な5部鑑別のWBC分類を達成することに成功したことが証明されている。本発明は、標準的なギムザ染色によって生成される色を正確に模倣する疑似カラー化スキームをさらに包含し、従来の明視野顕微鏡のイメージングの慣例の代替となり得る広視野疑似カラーUV画像の使用を通じて、血液塗抹サンプルを視覚的に検査することを可能にする。
【0027】
このように、従来のシステムの制限を回避し、従来の技術で可能な検査と同等の検査を家庭や臨床で迅速かつ容易に行うことができる、低価格の携帯型血液分析装置が提供される。
【0028】
図1は、本発明による深紫外線多重分光顕微鏡システム100の一例を示す図である。システム100は、光源10(例えば、超広帯域プラズマ源)、放物面鏡11、ショートパスダイクロイックミラー12、第1のミラー13、多数の紫外線バンドパスフィルタ14’を有する紫外線フィルタホイール14、生体サンプル15(例えば、血液塗抹サンプル;病理組織;骨髄など)、紫外線顕微鏡対物レンズ(UV Microscope Objective:UV-MO)16、第2のミラー17、チューブレンズ18、および紫外線感応カメラ19を含む。
【0029】
システム100は、生体サンプル15の細胞における主要な生化学成分の吸収ピークにイメージング波長を調整するために適合された深紫外線バンドパスフィルタ14’により、200~450nmの範囲の異なる波長で、生体サンプル15中の生きた染色されていない細胞から画像を提供するように構成されている。例えば、ヒト細胞の研究において、バンドパスフィルタ14’は、260nmに吸収ピークを有する核酸と、280nmに吸収ピークを有するタンパク質について調整されてもよい24,28。前述の構成により、システム100は、細胞の構造的および生化学的特性に関する多くの情報を含むマルチスペクトル画像を生成するために適合される。
【0030】
深紫外線顕微鏡システム100の1つの非限定的な実例において、プラズマ源10は、インコヒーレント広帯域レーザー駆動プラズマ光源(EQ-99X LDLS、Energetiq Technology社)の形態で提供された。広帯域プラズマ源10からの出力光は、軸外放物面鏡11(Newport Corporation社)を介して収光し、ショートパスダイクロイックミラー12(Thorlabs社、米国ニュージャージー州)を用いてサンプル15の位置に中継した。このシステム100は、フィルタホイール14に取り付けられたUVバンドパスフィルタ14’(Chroma Technology Corp社、米国バーモント州)を用いてマルチスペクトルイメージングを実行した。これにより、260nm、280nm、および300nmを中心とする3つの波長領域で画像を取得するためのバンドパスフィルタ14’を切り替えることができる。システム100は、サンプル平面で、260nmで0.37Mw、280nmで1.75mW、および300nmで0.22mWの光強度を生成するものとして測定された。イメージングには、40倍のUV顕微鏡対物レンズ(NA0.5)(LMU-40X、Thorlabs社)を用いて、約280nmの平均空間分解能を達成した。サンプルの画像を記録するために、積分時間=30~100msの紫外線感応CCDカメラ(pco.ultraviolet、PCO AG社、ケルハイム、ドイツ)を用いた。イメージング中の焦点合わせのためにサンプルを並進および調整するのに、3軸高精度電動ステージ(MLS2031、Thorlabs社)を用いた。
【0031】
イメージング前に、健康なドナーから全血サンプルを採取し、ジョージア工科大学とエモリー大学の倫理委員会で承認されたプロトコルに従って、抗凝固液(クエン酸ナトリウム、Beckton Dickenson)に添加した。次に、10μLの全血を用いて、コーティングされていない石英スライド上に血液塗抹サンプルを作成し、サンプルを空気中で5分間乾燥させた後、細胞の固定や染色を行わずにUVイメージングを行った。次に、焦点合わせのために、3軸高精度電動ステージを介して各サンプルを並進および調整しつつ、画像を記録した。サンプルをラスタースキャンすることにより、1×2mmの領域から一連のUV画像を、各波長において、約3分間で取得した。
【0032】
深部UV顕微鏡装置でイメージングした後、サンプルを固定して染色し、40倍の対物レンズを備えた直立顕微鏡(Axioskop2 Plus、Carl Zeiss社、ドイツ)を用いて、染色したサンプルをイメージングすることにより、比較ギムザ染色明視野画像を取得した。これらのサンプルは、最初にメタノール(Thermo-scientific社)を用いて7分間固定し、May-Grunwald溶液(MG500、Sigma Aldrich Inc.社、米国)で15分間染色した。簡単にすすいだ後、サンプルを1:10に希釈したギムザ染色液(GS500、Sigma Aldrich Inc.社、米国)に20分間入れ、pH6.6のリン酸緩衝液(PBS)で洗浄し、明視野顕微鏡での観察のために空気乾燥した。サンプルをスキャンすることにより、サンプル上の1×2mmの領域から一連の画像を取得した。次に、サンプル上の空白領域から取得した画像を用いてタイルスキャン画像を正規化し、Zeiss Zen Blackエディションソフトウェア(Carl Zeiss社、ドイツ)を用いてステッチして、広視野画像を取得した。
【0033】
全血から分離した、比較的少ない多形核白血球(Polymorphonuclear Leukocytes:PMNL)、すなわち好中球、好塩基球、好酸球を含むサンプルから、追加の画像を取得した。これら追加の画像は、磁気抗体ベースの選択技術によって得た。ここでは、MACSxpress分離キット(Miltenyi Biotec社)を用いて、生きたヒトPMNLを負の磁気抗体ベースの選択により分離し、L-グルタミンとHEPESを含むRPMI培地(Life Technologies社)に再懸濁させた。正常な細胞拡散34と顕微鏡スライド表面への接着を誘導および維持するために、石英スライドをN-ホルミルメチオニン-ロイシル-フェニルアラニン(N-Formylmethionine-Leucyl-Phenylalanine:fMLP、Sigma-Aldrich Inc.社、米国)の1nM溶液で60分間コーティングし、その後、蒸留水とリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffer Saline:PBS)ですすいだ。細胞懸濁液を、コーティングしたスライド上にピペットで移し、さらに30分間インキュベートした。次に、イメージングの前に、スライドを蒸留水で洗浄し乾燥させた。
【0034】
次に、取得したマルチスペクトル画像を処理し、疑似カラー化スキームと機械学習ベースのWBC鑑別において利用した。3つの波長で一連のタイル画像を取得した後、各波長でサンプル上の空白領域から取得した参照背景画像によって各画像を正規化し、照明アーチファクトを除去した。次に、UV画像を正確にカラー化するために、MATLAB(MathWorks)に実装された強度ベースの画像レジストレーションアルゴリズム(imregister関数に基づく)を用いて、3つの波長すべてにわたって対応する画像を同時登録した。
【0035】
各FOVの登録済み強度画像スタック(260、280、および300nmの波長画像)を用いて、擬似RGBカラー化画像を取得した。疑似カラー化画像を形成するために、次の方程式に基づいて各血球の色表現を染色された対応物と比較することにより、各カラーチャネル(すなわち、赤(R)、緑(G)、および青(B)のチャネル)を、最適化した重み(w)およびガンマ(γ)値に従って形成した。
【0036】
【0037】
次に、カラー化された画像がHSV色空間に変換され、+0.05の一定の色相オフセットが適用され、再びRGB色空間に変換される。この擬似カラー化スキームは、グレースケールのマルチスペクトル画像(すなわちRGBチャンネル画像)を、血球が従来のギムザ染色画像を正確に模した色で見える1枚の擬似カラー化画像に変換するものである。
【0038】
擬似カラー化画像のステッチングは、各タイル間のオーバーラップを計算し単一の広視野画像に線形的に融合させるFiji36ソフトウェアのGrid/Collectionステッチングプラグイン35を用いて行った。次いで、得られた広視野疑似カラー化画像を、標準のWebブラウザを用いて大きな画像を表示することのできるZoomify形式(Zoomify Inc.社、2018)にエクスポートし、カスタム設計のWebサイトにアップロードして、臨床レビューパネルで簡単にアクセスし表示できるようにした。
【0039】
図2は、システム100を用いて、生きた無標識血球から生成されたマルチスペクトル画像の例を、それぞれ前述の設定に従って生成されたカラー化UV画像および対応するギムザ染色明視野画像とともに示す。
図2のスケールバーは5μmに相当する。この例では、赤チャンネル画像は0.85の最適化された重みと1.4のガンマ値で生成され、緑チャンネル画像は0.90の最適化された重みと1.9のガンマ値で生成され、青チャンネル画像は0.83の最適化された重みと1.2のガンマ値で生成されている。260nmの赤チャンネル画像は、核酸が密に存在する細胞核から、固有の構造の詳細を明らかにし
24,30、280nmの緑チャンネル画像は、細胞核周辺および細胞質に存在するタンパク質の分布を明らかにする
30。300nmの青チャンネル画像は、核と細胞質の吸収が一様に低く、疑似カラー化スキームの対比染料として用いた。次に、グレースケールマルチスペクトル画像(すなわちRGBチャネル画像)を、比較ギムザ染色画像の色を模倣した単一の疑似カラー化画像に変換した。
【0040】
図3は、システム100を用いて画像化した異なる血球型のモザイクコレクションを示し、それらの画像は、疑似カラー化スキームに基づいてさらにカラー化され、同じ細胞の比較ギムザ染色画像と並べて示されている。
図3のスケールバーは7μmに相当する。図示された例から分かるように、本発明は、血球の表現型決定および鑑別に重要な特性を示す疑似カラー化画像の作成を可能にし、各血球型の固有の色は、様々な細胞の生化学的成分のスペクトル吸収の違いに由来するものである。例えば、白血球の核に核酸が吸収されると、よく知られている独特の紫色が生じ、これは、ギムザ染色画像でも観察できる。核のコントラストに加えて、本発明による無標識UV画像は、主に核周辺に存在する異なるレベルのタンパク質吸収に起因する、重要な細胞質の色の違いを強調している
30。そのような色のコントラストの注目すべき例は、好酸球において実現され得る。ここでは、これらの細胞の細胞質に豊富に存在する好酸球顆粒におけるタンパク質吸収が、
図3に示されるような固有のオレンジ色をもたらす。色の違いとは別に、本発明による疑似カラー化UV顕微鏡画像はまた、血液疾患の診断およびモニタリングにしばしば重要な、詳細な細胞構造を明らかにする。鎌状赤血球貧血は、変形した三日月形の赤血球が血液中に多くなる顕著な例である。このような変形は、
図3の鎌状赤血球の無標識UV画像で明確に特定することができる。
【0041】
したがって、本発明による擬似カラー化スキームは、ギムザ染色サンプルの、広く用いられている従来の明視野顕微鏡画像と同等のマルチスペクトル無標識UV画像を表示する簡単かつ迅速な方法を提供するが、標準的な固定および染色プロトコルの複雑さを必要としない。
【0042】
本発明はまた、個々の赤血球に含まれる赤血球ヘモグロビン(Hb)の算出および定量化を提供する。従来、臨床血液学的分析では、赤血球のHb量の定量化は、常に、血球計数装置を用いて平均赤血球血色素量(MCH)を測定することにより行われている。MCHは、赤血球の総数を平均したHbの総量であり、サラセミアだけでなく貧血など多くの疾患のモニタリングや診断に用いられている。MCH値の正常範囲(すなわち29.5±2.5pg)1からの逸脱は、臨床医が診断の意思決定をする際に役立つ指標となるものである。
【0043】
本発明は、細胞の生化学的質量を定量的に分析する深紫外線顕微鏡技術の特有の機能により、鎌状赤血球症(SCD)患者のみならず、健常者ドナーから採取した血液サンプル中の個々の赤血球に存在する主要な生化学物質(乾燥質量分率97%)31としてのHb総質量を算出することが可能である。健康なドナーおよびSCD患者のサンプル(各グループに2人の患者サンプル、n=20)から抽出した40個の細胞についてMCHを求め、質量定量化に300nmの波長画像を用いた。
【0044】
核酸とタンパク質の質量は、各紫外線画像(
【数2】
)を各波長でサンプル上の空白領域から取った参照バックグラウンド画像で正規化することによって得られる光学密度(
【数3】
)の計算に基づいて定量化した。次に、波長260nmと280nmで得られたODマップを用いて、以下の式により、各波長における種の線形寄与を仮定して質量マップを算出する。
【0045】
【0046】
ここで、εは減衰係数、lは光路長、cは種濃度である6。2つの波長のOD値に基づいて、一組の方程式が生成され、各画素における濃度-光路長積(lc項)について解く。これらの計算では、核酸の260nmと280nmにおける平均減衰係数は(ε260=7,000M-1cm-1,ε280=3,500M-1cm-1)、タンパク質の場合は(ε260=36,057M-1cm-1,ε280=54,129M-1cm-1)37、平均OD値はUVフィルタの帯域幅に渡る。各画素の質量値を得るために、タンパク質の平均モル質量を52,728Da、核酸の平均モル質量を330Daと仮定した。
【0047】
赤血球中のHb質量の算出には、波長300nmのODと酸素化Hbのモル減衰係数(ε300=65,972M-1cm-1)26,38を用いて、各画素における濃度-光路積(lc項)を算出し、この値を細胞領域全体で積分して各細胞の総質量を算出した。赤血球中のHb量の定量分析では、集団の比較にStudentのt検定を用いた。JMP Proソフトウェア(バージョン14.0;SAS Institute Inc.社、ノースカロライナ州ケアリー)およびMATLAB(MathWorks社)をすべての統計分析に用いた。
【0048】
図4aは、実例について取得したMCH値を示す。この例では、健常者ドナー赤血球のMCHは平均28.6±5.1pg、SCDドナー赤血球のMCH値は平均35.4±6.9pgであることが分かった。これらの値は、鎌状赤血球の質量値がわずかに高いことを示唆しており、健常赤血球と比較して統計的に有意な差を示している(p<0.01)。SCD患者におけるこの平均MCHのわずかな増加は、
図4bに示すように、健常者とSCDドナーの細胞面積値に基づいて、より大きな赤血球が生成されると報告した先行研究と一致しており、ここでヒドロキシウレア治療中の患者において同じHb濃度である
31,32。
図4cは、健常者赤血球とSCD赤血球の平方面積あたりの平均Hb質量を示す図である。SCDサンプルにおけるより大きな赤血球の存在は
図4dから明らかである。この図は、健常者とSCDサンプルのMCH対細胞面積の散布図を示し、差し込み図は、赤血球Hb質量(フェムトグラム)マップの例を示す。差し込み図のスケールバーは5μmである。散布図のデータから分かるように、SCD赤血球のすべての異なる形態において、鎌状赤血球は、細胞面積より大きく直径がより大きい方向に逸脱している。
【0049】
鑑別細胞計数は、血液疾患のモニタリングや診断に有用な検査血液学的分析の一部である。疾患による血球集団の変化は、細胞の大きさや粒状性などの形態的特性や細胞特異的な色素の蛍光強度に基づいて細胞を分類することができる自動細胞計数装置(例えば、フローサイトメーター)を用いて調査されることが多い。フローサイトメーターは、レーザー光源が細胞と相互作用する際の前方散乱と側方散乱を測定し、前者は細胞の大きさを決定し、後者は粒度の指標を与える33。自動血球計数装置は、複数の検体を迅速に分析することができるが、手間がかかり、コストが高く、多くの試薬を必要とする。
【0050】
本発明によるシステム100は、ポイント・オブ・ケア用途だけでなく、臨床設定における従来のシステムの限界を回避するような、無標識で正確かつ一貫した血球差計数を提供するようにさらに構成することができる。これは、鑑別細胞計数用の教師なし細胞分類器を提供することで達成可能であり、細胞分類器は、5部WBC鑑別を実行するための機械学習によって開発される。
【0051】
非限定的な一実例として、100個の白血球(リンパ球20個、単球20個、各PMNLサブタイプ20個)から得られた紫外線マルチスペクトル画像(すなわち260、280、および300nm)、および全細胞、細胞核、細胞質からの生化学質量から58種類の特徴を抽出し、教師なし細胞分類器をトレーニングした。抽出された特徴は以下の表の通りである。
【0052】
【0053】
これらの特徴は、有資格の血液専門医によって検討され、分類された。波長260nmで得られた強度画像を処理し、濃淡共起行列(Gray-Level Co-Occurrence Matrix:GLCM)に基づいて形態的、統計的、およびテクスチャ的な特徴を抽出した。また、260nmと280nmの画像を用いて、前述の生化学的質量の定量化方法に従って、細胞からの平均生化学的質量を求めた。
【0054】
最初に、大きさと粒度だけに基づいてリンパ球と単球とPMNLとを分類する3部鑑別を適用した。
図5aに示すように、細胞全体の強度値の分散に対する細胞直径のプロットとして、これら3つの細胞タイプの間で明確なクラス分離が観察される。このように、粒度の高いPMNLは、リンパ球や単球に比べて強度のばらつきが大きく、画素値のばらつきが大きくなっていることが分かる。また、より大きな単球は、それらの分離に用いられるリンパ球よりも大きな直径に対応する領域内に存在する。この単純な分析は、フローサイトメトリーを介して得られたWBCの前方散乱プロットと側方散乱プロットに似ており、これらの細胞タイプのよく知られた形態学的およびテクスチャ的な特性に合致する
33。
【0055】
5部鑑別を完成させるために、PMNLから抽出された特徴を用いてトレーニングしたガウスサポートベクターマシン(SVM)に基づいて機械学習アルゴリズムを構築した。トレーニングしたSVMモデルは、データセットをランダムに5つの等しいサイズのサブサンプルに分割する5重交差検証スキームによって評価した。サブサンプルは、モデルの検証およびテストに使用し、残りのサブサンプルはトレーニングデータとして使用した。この作業を5回繰り返し、5つのパーティションのそれぞれを1回だけ検証用データとして使用した。これにより、データセット全体が確実にトレーニングと検証の両方に使用されるようにした。
【0056】
細胞分類モデルのパフォーマンスを評価するために、以下を含むいくつかのパフォーマンス指標を取得した:入力データセットの総数に対する正しい予測の数の比率である精度;真の陽性分類事象の割合を決定する感度;およびモデルによって決定された真の陰性の割合を測定する特異性。また、モデルの性能をグラフ化するために、受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic:ROC)曲線を使用した。これらの指標により、PMNLサブタイプ(好中球、好酸球、好塩基球)の分類において、検証スキームは98.3%の精度、95%の感度、100%の特異性をもたらすことが分かった。
図5bおよび
図6に示す機械学習によるPMNL分類と関連するROC曲線と混同行列は、PMNLを識別する際のモデルの精度をさらに示しており、1つの細胞しか誤分類していないことが分かる。
【0057】
次いで、特徴の組にROC曲線の面積に基づく特徴ランキングアルゴリズムを適用し、上位にランクされた3つの特徴に基づいて機械学習を実施した。抽出された特徴を、ROC曲線とランダム分類器の傾きの間の面積を計算するランキングアルゴリズム(rankfeatures関数、MATLAB)を用いてランク付けし、最も高いROC面積をもたらした3つの特徴を単一波長分類器のトレーニング用に選択した。
【0058】
この実例では、アルゴリズムは、細胞質エネルギー、核相関、および核二次モーメントの3つを特徴の組として選択し、3つの細胞タイプ間で最高のクラス分離をもたらした。
図5cは、これら3つの上位の特徴に基づくPMNLサブタイプの散布図である。注目すべきことに、モデルのトレーニングに必要な上位の特徴はすべて、単一の波長(すなわち260nmの画像)からのみ抽出できることが分かった。したがって、コンパクトな血液分析装置は、単一の波長で取得された画像のみを使用して、高精度で5部鑑別が可能なものとすることできる。トレーニング済み分類器の性能は,精度96.7%,感度95%,特異度97.5%と完全なモデルより若干低いものであった。この単波長SVMモデルの混同行列とROC曲線をそれぞれ
図7a~7bに示す。
【0059】
疑似カラー化UV画像は、各血球タイプに固有の形態学的特徴および色の特徴を明らかにし、ギムザ染色塗抹サンプルに基づく既存の目視検査方法の代わりに、代替の疾患診断ツールとして用いるのに適している。これは、さまざまなレベルの血小板減少症(5サンプル)および鎌状赤血球貧血(4サンプル)と診断された患者から収集されたサンプルから調製された血液塗抹サンプルに対する健康なドナーサンプル(4サンプル)から調製された血液塗抹サンプルの比較画像テストによって確立された。採血現場で実施されたCBCの結果に基づいて、血液障害の事前の特定が行われた。
【0060】
このテストでは、血液塗抹サンプルの1×2mmの領域から広視野のカラーUV画像を作成し、信頼できる診断に十分な細胞が含まれていることを確認した。そして、明視野顕微鏡画像も、固定および染色後に同じ領域から取得した。これは、前述の方法に従って行った。広視野疑似カラー化UV画像および対応するギムザ染色広視野明視野顕微鏡画像を
図8aおよび8eに示す。これらの画像のスケールバーは100μmに相当する。広視野擬似カラー化UV画像の第1、第2および第3の選択拡大断面を
図8b~
図8dに示す。
図8bは、好中球のインスタンスを特定し、
図8cは、好中球および鎌状赤血球のインスタンスを特定し、
図8dは、好中球およびリンパ球のインスタンスを特定している。
図8f~
図8hは、ギムザ染色された広視野明視野顕微鏡画像の拡大断面を示し、それぞれ
図8b~
図8dの第1、第2、および第3の選択拡大断面に対応し、共通の細胞特徴を特定している。
図8b~
図8dおよび
図8f~
図8hの画像に対するスケールバーは、30μmに相当する。
【0061】
拡大画像を注意深く観察すると、
図8a~
図8dのUV疑似カラー化画像は、
図8e~
図8hの従来の染色画像と比較して、主要な細胞の特徴を際立たせる鮮明さとコントラストを有しており、血液塗抹サンプルの検査に基づく臨床診断においてUV疑似カラー化画像を使用できる可能性を証明している。
【0062】
疑似カラー化UV画像が診断ツールとして用いるのに十分かどうかをウェブ調査で検証した。この調査では、患者の状態や臨床歴について盲検化された14名の有資格の血液専門医に、健常者、血小板減少症患者、および鎌状赤血球症患者の広視野画像26枚(UV画像13枚、および明視野画像13枚)をランダムに配布して非識別化した上で提示した。各画像には、血液専門医が各血球の集団と形態について評価し全体的な診断、診断の信頼性、および画像の診断品質に関する質問に回答したオンラインアンケートが添付されている。診断の質は、血液専門医がその画質によって適切な診断ができたと感じるかどうかとして定義した。診断の自信は、レビューアが自分の評価についてどの程度確信しているかとして定義した。その後、アンケートの回答は自動的に記録され、統計分析に用いた。臨床パネルレビュープロトコルは、ジョージア工科大学の倫理委員会によって承認された(プロトコル番号H19389)。
【0063】
血液専門医パネルの診断能力は、コーエンのカッパ係数39を用いて、データがカテゴリ別であり、UV画像と明視野画像が同じデータ上で撮影されたという事実に基づいていると仮定して、UV画像と明視野画像に基づく診断(健常者vs血小板減少症vs鎌状赤血球貧血)の一致度を算出することで評価した。コーエンのカッパ係数の値は、UVおよび明視野対グラウンドトゥルース(収集サイトであるエモリー病院で実行されたCBCに基づく)からの診断についても計算し、各パネルメンバーの診断がCBCとどの程度相関しているかを評価した。また、2人の血液専門医ごとに一致度を計算して、評価の信頼性を判断した。コーエンのカッパ係数の値と精度を用いたパネルレビューの結果を次の表に示す。
【0064】
【0065】
これから分かるように、患者の状態を判断するための2つの検査方法の間にはほぼ完全な一致があった。また、血液専門医は、それぞれUV画像と明視野画像に基づいて妥当な精度で診断を行うことができた。
【0066】
2つのモダリティに基づいて行われた診断間のほぼ完全な一致は、血液専門医パネルが、標準的な目視検査方法に基づいて行わる診断との一致度が高い妥当な精度で広視野疑似カラー化UV画像から診断を導き出すことができたことを示唆している。これは、擬似カラー化UV画像が、従来の明視野顕微鏡の代替として、臨床診断やスクリーニングに非常に適していることを示している。
【0067】
疑似カラー化UV画像でも明視野画像でも高精度な診断が可能であったが、患者の状態判断には若干のズレが生じた。このような不一致は、一般に、塗抹サンプルの単層領域の端部に向かって典型的な両凹形状を失う可能性のある赤血球の外観の違いから生じる。その一例を
図9a~
図9bに示す。ここでは、遷移領域のUVカラー化画像および明視野画像が、両凹形状を持つ赤血球(灰色の矢印)と持たない赤血球(青の矢印)を示している。これらの図におけるスケールバーは30μmである。これは、血液塗抹サンプルでよくある問題であり、染色されたサンプルを明視野顕微鏡で検査した場合でも、球状赤血球症として知られる別の状態、すなわち赤血球が両凹を失って球形の細胞に変わる状態と誤診され混同されることになる。この問題は、赤血球が自然な形を保っている単層領域の中心領域でイメージングを行うことで軽減することができる。
【0068】
図10は、病理組織学および組織表現型分類におけるUV顕微鏡の使用を示している。
図10に示すように、220nm、255nm、280nm、および300nmで取得したUV画像を主成分分析で合成し、生化学組成に基づいて、それぞれ異なる構造を強調する2種類のカラー画像を生成した。この図では、左上と左下は同じ構造だが、カラーコードが異なる。同様に右上と右下は同じ構造だが、カラー化モードが異なる。この例では、上の画像では緑色のハイライトで細胞核を特定し、下の画像では黄色のハイライトで間質を、赤色のハイライトで腺組織を特定している。赤色の色相の違いは、腺の表現型の違いを示している。
【0069】
このように、本発明は、標準的な固定および染色方法を必要とすることなくマルチスペクトル深紫外線顕微鏡画像を用いて血球の定量的および定性的評価を行うシステムおよび方法を提供する。さらに、本発明による擬似カラー化技術により、従来のギムザ染色を模した色が正確な画像を作成することができ、臨床やポイント・オブ・ケアでの使用に適した、簡単、迅速、かつ信頼性の高い目視検査が可能になる。また、本発明による教師あり機械学習アルゴリズムの使用により、フローサイトメトリーなどの高価で手間のかかる方法を用いて一般的に行われているWBCの定量分析および5部鑑別を行うことができる。情報量の多いマルチスペクトルUV画像から抽出した細胞の形態的・生化学的特性を表す特徴の組み合わせに基づいて分類アルゴリズムをトレーニングすることにより、白血球のサブタイプの正確な分類を実現することが可能である。また、本発明では、単一の波長画像(例えば、260nm)から抽出できる限られた数(例えば、3つ)の上位ランクの特徴に基づいてモデルをトレーニングすることにより、分類スキームを簡略化することもできる。その結果、本発明によるシステムおよび方法は、臨床またはポイント・オブ・ケア血液学分析のために実施することができ、簡単、低コスト、かつ迅速な方法で鑑別血球百分率を提供することが可能である。
【0070】
単一波長ベースの分類器は、完全なモデルと比較して若干精度が落ちる可能性があるが、正確に較正されたZ軸ステージとイメージング波長を調整するためのUVフィルタホイールから成るより複雑で高価なシステムを必要とするマルチスペクトル画像スタックの必要性を排除することが可能である。その結果、本発明によるシステムは、深紫外線発光ダイオード(LED)および紫外線感応センサを用いることにより、臨床およびポイント・オブ・ケアの用途に適した低コストかつコンパクトな血液学的分析装置を実現することが可能となる。
【0071】
また、本発明によるシステムおよび方法は、既存の検査血液学的分析ワークフローへの統合にも適しており、遠隔医療技術と組み合わせて使用することで、臨床医の臨床的意思決定プロセスを支援するのに十分な情報を提供することができる。さらに、本発明によるシステムおよび方法は、自動化された細胞のセグメンテーションおよび分類技術と組み合わせて、携帯可能で使いやすい家庭内装置への実装を可能にし、血液疾患を持つ患者の生活の質を改善する大きな可能性を持ち、信頼性が高く正確なポイント・オブ・ケアのモニタリングおよび診断を可能にする。
【0072】
図11は、本発明によるシステム200の他の例を示す。この例では、当該システムは、広帯域光源およびフィルタの代わりにLED20を採用した簡略化された形状を有する。この例では、LED210からの出力光が試料24に向けられる。イメージングには紫外線顕微鏡対物レンズ23が用いられ、光はチューブレンズ21を通過した後、紫外線感応カメラ29で撮像される。他の例では、異なるスペクトル領域の複数のLEDを実装することも可能である。
【0073】
本発明は特定の実施形態を参照して説明されているが、前述の開示は例示的な実施形態のみを扱っており、本発明の範囲は開示された実施形態に限定されず、本発明の範囲は、本明細書に開示した例に対する種々の変更および修正を包含する追加の実施形態を添付の請求項およびその均等物に定義される本発明の範囲から逸脱することなく包含し得ることは、当業者に理解されるであろう。
【0074】
本発明の開示を理解または完成させるために必要な範囲において、本明細書に記載されたすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれが個別に本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0075】
本発明は、ここに示された例示的な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって特徴付けられ、これらは決して本開示の範囲を限定するものではない。
【0076】
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