(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】把持ストロークを改善したチャック
(51)【国際特許分類】
B23B 31/12 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B23B31/12 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022510075
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020048176
(87)【国際公開番号】W WO2021041658
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505070380
【氏名又は名称】ハーディング, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ケスターケ, リチャード エム
(72)【発明者】
【氏名】キニー, ブライアン リー
(72)【発明者】
【氏名】デュエル, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】チャン, チュン
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032GG03
3C032HH01
3C032HH11
3C032HH26
(57)【要約】
ワークを把持するためのチャックは、チャック本体と、ジョー経路に沿ってジョー閉動作方向およびジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたジョーと、アクチュエータ経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたアクチュエータ本体と、スライダ本体経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたスライダ本体とを備える。前記スライダ本体は、スライダ本体-ジョー間経路に沿って前記ジョーに対する相対的な拘束された移動が可能に前記ジョーに接続される。前記スライダ本体は、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路に沿って前記アクチュエータ本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記アクチュエータ本体に接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するためのチャックであって、
チャック本体と、
ジョー経路に沿ってジョー閉動作方向およびジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたジョーと、
アクチュエータ経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたアクチュエータ本体と、
スライダ本体経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたスライダ本体と
を備え、
前記スライダ本体は、スライダ本体-ジョー間経路に沿って前記ジョーに対する相対的な拘束された移動が可能に前記ジョーに接続され、
前記スライダ本体は、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路に沿って前記アクチュエータ本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記アクチュエータ本体に接続される、チャック。
【請求項2】
前記アクチュエータ経路と前記スライダ本体-アクチュエータ本体間経路との間に角度Aが形成され、
前記アクチュエータ経路と前記スライダ本体-ジョー間経路との間に角度Jが形成され、
前記角度Aは前記角度Jよりも小さい、請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記スライダ本体経路と前記スライダ本体-ジョー間経路との間に角度Sが形成され、
前記角度Sは90°と135°の間である、請求項2に記載のチャック。
【請求項4】
前記角度Aは5°と40°の間である、請求項2に記載のチャック。
【請求項5】
前記角度Jは30°と60°の間である、請求項2に記載のチャック。
【請求項6】
前記ジョーは、第1ジョー経路に沿って第1ジョー閉動作方向および第1ジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な移動が可能に前記チャック本体に装着された第1のジョーを含み、
前記チャックは、第2ジョー経路に沿って第2ジョー閉動作方向および第2ジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な移動が可能に前記チャック本体に装着された第2のジョーを含み、
前記スライダ本体は第1のスライダ本体を含み、
前記チャックは第2のスライダ本体を含み、当該第2のスライダ本体は、前記アクチュエータ経路に沿う前記アクチュエータ本体の移動量対前記ジョー経路に沿う前記第2のジョーの移動量の比率で、前記第1の方向における前記アクチュエータ本体の移動を、前記第2ジョー閉動作方向における前記第2のジョーの移動に変換するように、前記第2のジョーと前記アクチュエータ本体とを相互に接続する、請求項1に記載のチャック。
【請求項7】
前記ジョー経路および前記アクチュエータ経路はそれぞれ線形である、請求項1に記載のチャック。
【請求項8】
前記スライダ本体経路、前記スライダ本体-ジョー間経路、および前記スライダ本体-アクチュエータ本体間経路はそれぞれ線形である、請求項1に記載のチャック。
【請求項9】
前記チャックは、軸方向の貫通孔を有する貫通孔チャックからなり、当該貫通孔は、軸方向において前記ジョーが配置される側と反対側から前記チャック内に前記ワークを供給することを可能にするように成形および構成された、請求項1に記載のチャック。
【請求項10】
ワーク加工機と結合された、請求項1に記載のチャック。
【請求項11】
前記ワーク加工機が旋盤である、請求項10に記載の結合。
【請求項12】
前記チャックが回転するときに半径方向内側に向かう力を前記スライダ本体に印加するように、前記チャック本体に移動可能に装着され、前記スライダ本体に対して相対的に配置されたカウンターウェイトをさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月28日に出願された米国特許仮出願第62/892,787号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
種々の実施形態は、概してワークを把持するためのメカニカルチャックに関する。
【背景技術】
【0003】
チャックは旋盤などのワーク加工用機械に用いて加工中のワークを把持するためのものである。チャックは一般に、アクチュエータ(例えば、空気圧または油圧アクチュエータ、ドローバーなど)の軸方向の駆動運動を、チャックのジョーがワークに向かう半径方向の運動に変換することによって、ワークを把持することで機能する。
【0004】
図7に示すように、ある従来型のチャック1000は、アクチュエータ本体とジョーとの間に傾斜した摺動経路接続部を提供する。傾斜面/ウェッジは、アクチュエータ本体の軸方向運動をジョーの半径方向運動に変換する。このデュアルウェッジパスシステムは、別個の高速運動(低把持力)大ウェッジ角経路1010と、別個の低速運動(高把持力)小ウェッジ角経路1020とを提供する。ジョーが閉じるとき、ジョーは、最初に大ウェッジ角経路1010上を摺動して、ジョーを急速に閉じる。次いで、ジョーは、小ウェッジ角経路1020上を摺動して、高い把持力を提供する。大ウェッジ角経路1010を移動している間、ジョーが提供する把持力が不十分である可能性があるので、デュアルウェッジパスシステムは、小ウェッジ角経路に関連する低速、高把持力のジョーの運動に対応する狭いジョーストロークの範囲内でワークを把持するためにのみ使用される。
【0005】
この従来のデュアルウェッジパスチャック1000は、高速移動角度と低速運動移動を1つのトラック(単一の経路)1010,1020に結合したものである。このため、高速移動経路1010から低速移動経路1020への急激な移行部1030でジョーが「角を曲がる」際に摩耗するという問題がある。このため、ジョーの摩耗が激しくなり、チャックの使用状況に応じて一定期間後にジョーを交換する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一つ以上の非限定的な実施形態は、高速移動角経路と低速移動角経路を分離し、摩耗を生じやすい移行部1020を取り除くことによって、従来のチャック1000を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つ以上の非限定的な実施形態は、(1)軸方向にコンパクトであり、及び/又は(2)大きく異なる直径を有するワークに対応するように、ジョーの半径方向ストローク上の任意の点において十分な把持力を提供する、改良されたチャックを提供する。
【0008】
一つ以上の非限定的な実施形態が提供するチャックは、ワークを把持するためのチャックであって、チャック本体と、ジョー経路に沿ってジョー閉動作方向およびジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたジョーと、アクチュエータ経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたアクチュエータ本体と、スライダ本体経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたスライダ本体とを備える。前記スライダ本体は、スライダ本体-ジョー間経路に沿って前記ジョーに対する相対的な拘束された移動が可能に前記ジョーに接続される。前記スライダ本体は、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路に沿って前記アクチュエータ本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記アクチュエータ本体に接続される。
【0009】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記アクチュエータ経路と前記スライダ本体-アクチュエータ本体間経路との間に角度Aが形成され、前記アクチュエータ経路と前記スライダ本体-ジョー間経路との間に角度Jが形成され、前記角度Aは前記角度Jよりも小さい。
【0010】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記スライダ本体経路と前記スライダ本体-ジョー間経路との間に角度Sが形成され、前記角度Sは90°と135°の間である、請求項2に記載のチャック。
【0011】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記角度Aは5°と40°の間である。
【0012】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記角度Jは30°と60°の間である。
【0013】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記ジョーは、第1ジョー経路に沿って第1ジョー閉動作方向および第1ジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な移動が可能に前記チャック本体に装着された第1のジョーを含み、前記チャックは、第2ジョー経路に沿って第2ジョー閉動作方向および第2ジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な移動が可能に前記チャック本体に装着された第2のジョーを含み、前記スライダ本体は第1のスライダ本体を含み、前記チャックは第2のスライダ本体を含み、当該第2のスライダ本体は、前記アクチュエータ経路に沿う前記アクチュエータ本体の移動量対前記ジョー経路に沿う前記第2のジョーの移動量の比率で、前記第1の方向における前記アクチュエータ本体の移動を、前記第2ジョー閉動作方向における前記第2のジョーの移動に変換するように、前記第2のジョーと前記アクチュエータ本体とを相互に接続する。
【0014】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記ジョー経路および前記アクチュエータ経路はそれぞれ線形である。
【0015】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記スライダ本体経路、前記スライダ本体-ジョー間経路、および前記スライダ本体-アクチュエータ本体間経路はそれぞれ線形である。
【0016】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記チャックは、軸方向の貫通孔を有する貫通孔チャックからなり、当該貫通孔は、軸方向において前記ジョーが配置される側と反対側から前記チャック内に前記ワークを供給することを可能にするように成形および構成される。
【0017】
一つ以上の非限定的な実施形態は、これらの実施形態のうちの一つ以上に係るチャックを含むワーク加工機(例えば、旋盤)を提供する。
【0018】
これらの実施形態のうちの一つ以上によれば、前記チャックは、前記チャックが回転するときに半径方向内側に向かう力を前記スライダ本体に印加するように、前記チャック本体に移動可能に装着され、前記スライダ本体に対して相対的に配置されたカウンターウェイトを含む。
【0019】
本発明の様々な実施形態のこれらおよび/または他の態様の1つ以上、並びに関連する構造要素の動作方法および機能、そして製造における各部分の組み合わせと経済性については、添付図面を参照しつつ、以下の説明と添付の特許請求の範囲を検討することによってより明らかになるであろう。これらは何れも本明細書の一部を構成する。本明細書において、同様の参照符号は種々の図における対応部分を表す。一実施形態において、本明細書に例示される構造部品は、正確な縮尺で描かれている。しかしながら、添付図面は例示及び説明のためのものであり、本発明の発明特定事項の定義として用いることは意図されていない。更に、本明細書における任意の一実施形態に示される、または説明される構造的特徴は、他の各実施形態においても用いられ得ることが理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲における用法によれば、単数形の「a」、「an」、および「the」には複数のものへの言及が含まれる。ただし、文脈によって別に解すべきことが明白な場合はこの限りでない。
【0020】
本明細書において開示されるすべての閉鎖式の値の範囲(例えば、「AとBの間」)及び開放式の値の範囲(例えば、「Cより大きい」)は、その範囲内のすべての範囲を明示的に含む。例えば、1から10までと開示された範囲は、2から10まで、1から9まで、3から9まで、などの範囲をも開示しているものと理解される。同様に、複数のパラメータ(例えば、パラメータC、パラメータD)が範囲を有するものとして別個に開示されている場合、本明細書に開示される実施形態は、一のパラメータ(例えば、パラメータC)の開示された範囲内の任意の値を、他の任意のパラメータ(例えば、パラメータD)の開示された範囲内の任意の値と組み合わせた実施形態を、明示的に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
様々な実施形態並びにそれらの他の目的および更なる特徴をより理解するために、以下の説明を添付図面を参照しつつ記載する。
【0022】
【
図1】一実施形態に係る旋盤の正面の部分模式図である。
【0023】
【
図2】
図1の線A-Aに沿った、
図1の旋盤のチャックの断面斜視図である。
【0024】
【
図3】
図1の線A-Aに沿った、
図1の旋盤のチャックの断面側面図であり、チャックのジョーが開位置にある状態を示す。
【0025】
【
図4】
図1の線A-Aに沿った、
図1の旋盤のチャックの断面側面図であり、チャックのジョーが閉・静止位置にある状態を示す。
【0026】
【
図5】
図1の線A-Aに沿った、
図1の旋盤のチャックの断面側面図であり、チャックのジョーが閉・回転位置にある状態を示す(カウンターウェイトがチャックに作用してチャックを閉じた状態に維持している)。
【0027】
【
図6】
図1の旋盤のチャックのスライダ本体の斜視図である。
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1はワーク20を把持して加工するための機械10を示す。図示の実施形態では、機械10は旋盤で構成されているが、代替的に他の様々なワーク把持及び/又は加工機(例えば、フライス盤など)で構成されてもよい。図示の実施形態では、ワーク20は、管状ストック(stock)からなるが、代替的に、機械10によって把持および加工される任意の他の適切な種類のワークから構成されてもよい。
【0030】
図1及び
図2に示すように、機械10は、加工のためにワーク20を選択的に把持するように成形及び構成されたチャック30を含む。図示された実施形態では、チャック30は、軸40を中心に機械10の残りの部分に対して回転するように機械10に取り付けられている。様々な実施形態によれば、機械10は、例えば、旋盤加工のために、軸40を中心にチャック30及び把持されたワーク20を回転駆動するためのモータを含む。しかしながら、代替の実施形態によれば、チャックは非回転式であってもよく、あるいは自由回転式(すなわち、非駆動式)であってもよい。
【0031】
図1に示すように、チャック30は、チャック30の周囲に周方向に等間隔に配置された複数のジョー50を含む。ジョー50は、同時に軸40に向かって半径方向内側に移動して、ワーク20を把持する。この構成では、チャック30は、外径把持チャック30として動作する。しかしながら、1つ以上の実施形態の範囲から逸脱することなく、内径把持チャックを提供するために、閉動作の相対的方向が逆転され得ることが理解されるべきである。
【0032】
以下、複数のジョー50のうちの1つについて構造及び動作を詳細に説明する。この説明は、同じように動作する残りのジョー50にも等しく適用されることを理解されたい。
【0033】
図2に示すように、ジョー50は、マスタージョー60とトップジョー70とから構成されている。トップジョー70は、マスタージョー60にボルトで固定され、ワーク20を直接把持する把持面を提供する。トップジョー70は、異なるワーク20に対する特定の把持要件に基づいて、異なるトップジョー70に切り替えてもよい。本明細書で使用されるように、マスタージョー60は、単独で、トップジョー70がそれに接続されていない場合であっても、ジョーである。
【0034】
ジョー50(具体的にはマスタージョー60)は、ジョー経路90(
図3参照)に沿って、ジョー閉方向(外径把持チャックでは軸40に向かう方向、内径把持チャックでは軸40から離れる方向)およびジョー開方向(外径把持チャックでは軸40から離れる方向、内径把持チャックでは軸4に向かう方向)のジョーストロークにわたってチャック本体80に対する相対的な拘束された移動が可能にチャック30の本体80に接続されている。図示された実施形態では、ジョー経路90は回転軸40に対して垂直であるが、代替的に異なる方向に延在してもよい。
【0035】
また、
図2、
図3、
図6に示すように、チャック30は、各ジョー50に対応するスライダ本体100を含んで構成されている。
図3に示すように、スライダ本体100は、スライダ本体経路110に沿ってチャック本体80に対する相対的な拘束された移動が可能にチャック本体80に接続する。スライダ本体100は、スライダ本体-ジョー間経路120に沿ってジョー50に対する相対的な拘束された移動が可能にジョー50に接続する。
【0036】
図2および
図3に示すように、チャック30はまた、アクチュエータストロークにわたってアクチュエータ経路140に沿ってチャック本体80に対する相対的な拘束された移動が可能にチャック本体80に接続するアクチュエータ本体130を備える。図示された実施形態では、アクチュエータ経路140は、軸40に平行であり、ジョー経路90に垂直である。アクチュエータ本体130は、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路150に沿ってスライダ本体100に対する相対的な拘束された移動が可能にスライダ本体100に接続する。
【0037】
図2および
図3に示すように、チャックは、アクチュエータストロークにわたってアクチュエータ経路140に沿ってアクチュエータ本体130を選択的に駆動するように、アクチュエータ本体130に接続するアクチュエータ160を含む。図示された実施形態では、アクチュエータ160は、フェイルセーフの閉/把持位置を提供するばね閉式・空気圧開式アクチュエータ130からなる。ただし、代替の実施形態によれば、任意の他の適切なアクチュエータを使用することができる(空気圧閉式・ばね開式アクチュエータ、油圧式アクチュエータ、手動ドローバーに基づくアクチュエータなど)。
【0038】
図3に示すように、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路150は、アクチュエータ経路140と角度Aを成す。様々な実施形態によれば、角度Aは、(1)5、10、15、及び/又は20°より大きく、(2)45、40、35、30、及び/又は20°より小さく、及び/又は(3)任意の2つのかかる値の間(例えば、5°と45°の間、10°と40°の間、15°と25°の間)である。
【0039】
図3に示されるように、ジョー経路120は、アクチュエータ経路140と角度Jを成す。様々な実施形態によれば、角度Jは、(1)20、25、30、35、及び/又は40°より大きく、(2)75、70、65、60、55、及び/又は50°より小さく、及び/又は(3)任意の2つのかかる値の間(例えば、20°と75°の間、30°と55°の間、40°と50°の間)である。
【0040】
図3に示すように、スライダ本体経路110は、アクチュエータ経路140と角度Sを成す。様々な実施形態によれば、角度Sは、(1)110、115、120、及び/又は125°より大きく、(2)165、160、155、150、145、及び/又は140°より小さく、及び/又は(3)任意の2つのかかる値の間(例えば、20°と75°の間、30°と55°の間、40°と50°の間)である。様々な実施形態によれば、経路110、120は、互いに垂直である(角度J-角度S=90°となる)か、又は、様々な実施形態によれば、互いに垂直である状態から20、15、10、及び/又は5°以内である。
【0041】
様々な実施形態によれば、スライダ本体経路110は、ジョー50に向かうにつれて、軸40から離れるように傾斜している。逆に、スライダ本体-ジョー間経路120およびスライダ本体-アクチュエータ本体間経路150は、いずれもジョー50に向かうにつれて軸40側に傾斜している。
【0042】
経路90、110、120、140、150は、それぞれの構成要素50/60、80、100、130において接合する摺動面によって規定されている。図示された実施形態では、経路90、110、120、150は、一方の構成要素における2面トラック(または複数の2面トラック)と、他方の構成要素における接合する突起(または複数の突起)とによって形成され、この突起がトラックの2面内で摺動する。例えば、チャック本体80のトラック80a(
図4参照)は、スライダ本体100の突起100b(
図6参照)と接合し、経路110を規定する。マスタージョー60の突起60a(
図3参照)は、スライダ本体100のトラック100a(
図3、
図6参照)と接合し、経路120を規定する。スライダ本体100の突起100c(
図3、6参照)は、アクチュエータ本体130のトラック130a(
図3参照)と接合し、経路150を規定する。
【0043】
トラック80a、100a、130a及び突起60a、100b、100cの相対位置は、1つ又は複数の実施形態の範囲から逸脱することなく、逆にしてもよい。さらに、代替の実施形態によれば、経路90、110、120、150を規定するために、構成要素間の構造接続部を代替の種類のものとしてもよい(例えば、2つの相互接続された構成要素の間に曲線または直線並進自由度1を提供する任意の構造接続部、線形軸受など)。
【0044】
図示された実施形態では、経路90、110、120、150は、線形である。ただし、代替の実施形態によれば、経路90、110、120、150の1つ以上は、他の形状(例えば、単純曲線、複合曲線、曲線と直線の組み合わせで形成された経路など)を有していてもよい。
【0045】
チャック30がワーク20を把持する動作は、
図3~
図4に示されている。チャック30が開いているとき(
図3に示す)、アクチュエータ本体130をジョー50から離れる経路130に沿って(すなわち、
図3~
図4に図示するように左方向に)駆動するようにアクチュエータ160を作動させることによって、チャック30を閉じることができる。この動作により、アクチュエータ本体130が経路150に沿って(
図3に示すように左方向かつやや上方に向かって)スライダ本体100に対して相対的に摺動し、これによりスライダ本体100が経路110に沿って(
図3に示すように左下に向かって)チャック本体80に対して相対的に摺動し、これによりジョー50が経路120に沿って(
図3に示すように右下に向かって)スライダ本体100に対して相対的に摺動し、これによりジョー50が経路90に沿って閉方向(
図3に示すように下方向)にチャック本体80に対して相対的に摺動し、最終的に、
図4に示すように、ジョー50が(チャック30の周囲に間隔をおいて配置される他のジョー50(
図3~
図4に図示せず)とともに)ワーク20に接触してこれを把持する。
【0046】
スライダ本体100の使用並びに相互接続された構成要素および経路90、110、120、150の組み合わせによって提供されるジョー50の閉動作システムは、1つ以上の非限定的な実施形態によれば、(1)軸方向に(軸40に沿って)コンパクトであり、(2)様々な直径を有するワーク20に対応するようにジョーストローク上の任意の点でワーク20を確実に把持するために、アクチュエータ本体130の運動とジョー50の閉動作との間に十分なメカニカルアドバンテージを提供し、および/または(3)ジョー50の閉動作速度を向上させる。アクチュエータ本体130が高角度J経路120に沿ってジョー50に直接接続されていた場合、その高角度Jはジョー50の良好な閉動作速度を提供するかもしれないが、把持力の低下という犠牲を払うことになる。アクチュエータ本体130が低角度A経路150に沿ってジョー50に直接接続されていた場合、その低角度Aは、良好な把持力を提供するかもしれないが、ジョー50の閉動作速度が犠牲になる。アクチュエータ本体130が中間角度(例えば、角度Aと角度Jの間のどこか)に沿ってジョー50に直接接続されていた場合、必要な経路長は、チャック30を軸方向に長くすることになる。
【0047】
様々な実施形態によれば、角度A、J、およびSは、(1)速いジョー閉動作速度、(2)高いジョー把持力、および/または(3)各経路に沿った軸方向ストロークが最小化される軸方向にコンパクトなチャックを提供するという競合する利益を最適化するように選択されてもよい。
【0048】
図2~
図5に示すように、チャック30はまた、チャック30が回転し、遠心力がジョー50およびスライダーブロック100を軸40から半径方向外側に押し出そうとする場合に生じるであろうジョー50の外径把持力の損失を部分的に補償するように設計されたカウンターウェイトシステムを含んでいてもよい。
図2~
図4に示すように、ジョー50とスライダ本体100の組み合わせ毎にカウンターウェイト170を設けてもよい。カウンターウェイト170は、カウンターウェイト軸180を中心として相対的に揺動可能にチャック本体80に接続されている。
図3に示すように、チャック30が開いているとき、カウンターウェイトのアーム80aは、スライダ本体100に対して寄りかかっている。
図4に示すように、ジョー50が閉じてチャック30が静止している(すなわち、その軸40を中心に回転していない)とき、カウンターウェイト170はスライダ本体100から離れている。
図5に示すように、チャック30が回転してジョー50が閉じると(例えば、ワーク20を把持すると)、遠心力によってカウンターウェイト170が半径方向外側(
図3~5に示す時計回り)に揺動し、カウンターウェイトのアーム170aがスライダ本体100に接触して半径方向内側に押すことになる。その半径方向内側への力は、ジョー50によって加えられている把持力を増加させようとする。これは、スライダ本体100及びジョー50を半径方向外側に押そうとする遠心力によって引き起こされる把持力の損失を少なくとも部分的に打ち消すものである。
【0049】
図示されたチャック30及びジョー50の閉動作機構は、外径把持のために構成されているが、当業者であれば、チャック30の相対的な方向、角度、または他の態様を調整して、追加的および/または代替的に内径把持を提供できることを理解するであろう。
【0050】
チャック30は、軸40に沿って延在する軸方向貫通孔190を含む貫通孔チャックである。この貫通孔190により、ワーク20であるストックは、孔190を通って(すなわち、
図3に示すように左側から)機械10に供給され、チャック30の軸方向他方側(
図3に示すようにチャック30の右側)で加工(例えば、旋削加工、旋盤加工、フライス加工)することができる。
【0051】
上記の例示的な各実施形態は、様々な実施形態の構造的および機能的な原理を示すために提示されたものであって、限定することを意図したものではない。むしろ、本発明の原理は、その任意および全ての変更、改変、および/または代替(例えば、以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある任意の改変)を含むことを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するためのチャックであって、
チャック本体と、
ジョー経路に沿ってジョー閉動作方向およびジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたジョーと、
アクチュエータ経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたアクチュエータ本体と、
スライダ本体経路に沿って前記チャック本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記チャック本体に接続されたスライダ本体と
を備え、
前記スライダ本体は、スライダ本体-ジョー間経路に沿って前記ジョーに対する相対的な拘束された移動が可能に前記ジョーに接続され、
前記スライダ本体は、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路に沿って前記アクチュエータ本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記アクチュエータ本体に接続され
、
前記アクチュエータ経路と前記スライダ本体-アクチュエータ本体間経路との間に角度Aが形成され、
前記角度Aは5°より大きい、チャック。
【請求項2】
前記アクチュエータ経路と前記スライダ本体-ジョー間経路との間に角度Jが形成され、
前記角度Aは前記角度Jよりも小さい、請求項1に記載のチャック。
【請求項3】
前記スライダ本体経路と前記スライダ本体-ジョー間経路との間に角度Sが形成され、
前記角度Sは90°と135°の間である、請求項2に記載のチャック。
【請求項4】
前記角度Aは5°と40°の間である、請求項2に記載のチャック。
【請求項5】
前記角度Jは30°と60°の間である、請求項2に記載のチャック。
【請求項6】
前記ジョーは、第1ジョー経路に沿って第1ジョー閉動作方向および第1ジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な移動が可能に前記チャック本体に装着された第1のジョーを含み、
前記チャックは、第2ジョー経路に沿って第2ジョー閉動作方向および第2ジョー開動作方向に前記チャック本体に対する相対的な移動が可能に前記チャック本体に装着された第2のジョーを含み、
前記スライダ本体は第1のスライダ本体を含み、
前記チャックは第2のスライダ本体を含み、当該第2のスライダ本体は、前記アクチュエータ経路に沿う前記アクチュエータ本体の移動量対前記ジョー経路に沿う前記第2のジョーの移動量の比率で、前記第1の方向における前記アクチュエータ本体の移動を、前記第2ジョー閉動作方向における前記第2のジョーの移動に変換するように、前記第2のジョーと前記アクチュエータ本体とを相互に接続する、請求項1に記載のチャック。
【請求項7】
前記ジョー経路および前記アクチュエータ経路はそれぞれ線形である、請求項1に記載のチャック。
【請求項8】
前記スライダ本体経路、前記スライダ本体-ジョー間経路、および前記スライダ本体-アクチュエータ本体間経路はそれぞれ線形である、請求項1に記載のチャック。
【請求項9】
前記チャックは、軸方向の貫通孔を有する貫通孔チャックからなり、当該貫通孔は、軸方向において前記ジョーが配置される側と反対側から前記チャック内に前記ワークを供給することを可能にするように成形および構成された、請求項1に記載のチャック。
【請求項10】
ワーク加工機と結合された、請求項1に記載のチャック。
【請求項11】
前記ワーク加工機が旋盤である、請求項10に記載の結合。
【請求項12】
前記チャックが回転するときに半径方向内側に向かう力を前記スライダ本体に印加するように、前記チャック本体に移動可能に装着され、前記スライダ本体に対して相対的に配置されたカウンターウェイトをさらに備える、請求項1に記載のチャック。
【請求項13】
前記スライダ本体は、ジョー開動作方向およびジョー閉動作方向における前記ジョーの移動中に、スライダ本体-アクチュエータ本体間経路に沿って前記アクチュエータ本体に対する相対的な拘束された移動が可能に前記アクチュエータ本体に接続される、請求項1に記載のチャック。
【国際調査報告】