(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】リガンドのスクリーニング用のマイクロ放射性結合アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20221129BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221129BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 541B
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520054
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 IB2020059171
(87)【国際公開番号】W WO2021064610
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506027491
【氏名又は名称】エーシー イミューン ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラッソ ルイジーノ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QS32
4B063QX07
(57)【要約】
本開示は、マイクロ放射性結合アッセイにおいて特定のタンパク質標的へのリガンドの結合を測定することができる結合アッセイに関する。特に、本開示は、健康なヒトドナーの試料又は罹患したヒトドナーの試料から単離された組換えタンパク質又は組織由来タンパク質等の存在量の少ないタンパク質に有用なマイクロ放射性結合アッセイに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの結合親和性(K
d)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、飽和固定濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
前記アリコートを、複数の濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、前記放射性標識試験リガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからK
dを計算することと、
を含む、方法。
【請求項2】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの結合親和性(K
d)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、複数の濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、前記放射性標識試験リガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
前記アリコートを、飽和固定濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
結合していない放射性標識試験リガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからK
dを計算することと、
を含む、方法。
【請求項3】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの結合親和性(K
d)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、複数の濃度の放射性標識試験リガンド及び飽和固定濃度のコールド試験リガンドと接触させて、前記放射性標識試験リガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからK
dを計算することと、
を含む、方法。
【請求項4】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、前記試験リガンドについてのK
dに近い固定濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、前記放射性標識試験リガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
前記アリコートを、複数の濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
結合していない放射性標識試験リガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKiを計算することと、
を含む、方法。
【請求項5】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、複数の濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
前記アリコートを、前記試験リガンドについてのK
dに近い固定濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、前記放射性標識試験リガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKiを計算することと、
を含む、方法。
【請求項6】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、前記試験リガンドについてのK
dに近い固定濃度の放射性標識試験リガンド及び複数の濃度のコールド試験リガンドと接触させて、前記放射性標識試験リガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKiを計算することと、
を含む、方法。
【請求項7】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、前記ツールリガンドのK
dに近い固定濃度の放射性標識ツールリガンドと接触させて、前記放射性標識ツールリガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
前記アリコートを、単一の濃度又は複数の濃度のコールド試験化合物と接触させることと、
結合していない放射性標識ツールリガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識ツールリガンドからのシグナルを検出することと、
(a)前記コールド試験化合物を単一の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルから前記コールド試験化合物についての競合のパーセントを計算すること、又は(b)前記コールド試験化合物を複数の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルから前記コールド試験化合物についてのKiを計算することと、
を含む、方法。
【請求項8】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、単一の濃度又は複数の濃度のコールド試験化合物と接触させることと、
前記アリコートを、前記ツールリガンドのK
dに近い固定濃度の放射性標識ツールリガンドと接触させて、前記放射性標識ツールリガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識ツールリガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識ツールリガンドからのシグナルを検出することと、
(a)前記コールド試験化合物を単一の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルから前記コールド試験化合物についての競合のパーセントを計算すること、又は(b)前記コールド試験化合物を複数の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルから前記コールド試験化合物についてのKiを計算することと、
を含む、方法。
【請求項9】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価する方法であって、
マイクロアレイ上の前記富化された生体試料の複数のアリコートを、単一の濃度又は複数の濃度のコールド試験化合物及び前記ツールリガンドのK
dに近い固定濃度の放射性標識ツールリガンドと接触させて、前記放射性標識ツールリガンドと各アリコート中の前記病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識ツールリガンドを前記アリコートから除去することと、
各アリコート中の前記放射性標識複合体における前記放射性標識ツールリガンドからのシグナルを検出することと、
(a)前記コールド試験化合物を単一の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルから前記コールド試験化合物についての競合のパーセントを計算すること、又は(b)前記コールド試験化合物を複数の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルから前記コールド試験化合物についてのKiを計算することと、
を含む、方法。
【請求項10】
(a)前記アリコートをそれぞれ単一の濃度の複数のコールド試験化合物と接触させること、又は、
(b)前記アリコートを複数の濃度の複数のコールド試験化合物と接触させること、
を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各試験化合物について計算された競合のパーセント又はKiに従って前記複数の試験化合物を順位付けすることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記富化された生体試料のアリコートをブロッキング剤と接触させることを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
放射性標識ツールリガンド、コールドツールリガンド、及び/又はコールド試験化合物の前に、又はそれらと同時に、前記アリコートを前記ブロッキング剤と接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブロッキング剤は、前記放射性標識ツールリガンド、前記コールドツールリガンド、又は前記コールド試験化合物も含む1種以上のアッセイバッファー中に存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アッセイバッファーは、Tris-HCl又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ブロッキング剤は、BSA、カゼイン、又は鶏卵白由来のアルブミンである、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記病理学的タンパク質は、Aβ、タウ、α-シヌクレイン、及びTDP-43から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記富化された生体試料の各アリコートは、約3.5mg/mL~約6.5mg/mLの総タンパク質を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
各アリコートは、スポットである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マイクロアレイは、少なくとも5個、又は少なくとも10個、又は少なくとも15個、又は少なくとも20個、又は少なくとも25個、又は少なくとも30個、又は少なくとも40個、又は少なくとも45個、又は少なくとも50個、又は少なくとも55個、又は少なくとも60個、又は約64個のチャンバーを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
各チャンバーは、前記富化された生体試料の少なくとも1つのアリコート、又は少なくとも6つのアリコート、又は少なくとも9つのアリコート、又は9つのアリコートを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アリコートを複数の濃度と接触させることは、前記マイクロアレイにおける各チャンバーを様々な濃度と接触させることを含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記検出は、前記マイクロアレイをフィルムに露光した後に前記フィルム上の前記シグナルを検出することを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記フィルムは、ホスホスクリーンフィルムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記マイクロアレイは、スライドガラスである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記スライドガラスは、アミノプロピルシランでコーティングされたスライドガラスである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記富化された生体試料のアリコートを前記スライドガラス上に分注することによって前記マイクロアレイを作製することを含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
放射性標識試験リガンド又はコールド試験リガンド若しくはコールド試験化合物と接触させる前に、前記マイクロアレイ上の前記複数のアリコートを乾燥させることを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
シグナルを検出する前に乾燥させることを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年10月1日付で出願された米国仮出願第62/909,101号及び2020年2月6日付で出願された米国仮出願第62/970,977号の優先権の利益を主張し、それぞれの全体があらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本出願は、コーティングされた表面上に固定化されたタンパク質に対するリガンドの特性評価及びスクリーニング用のマイクロ放射性結合アッセイのための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
放射性結合アッセイは、リガンドと標的との間の相互作用を司る結合パラメーターを決定することを目的としている。このようなアッセイを、飽和結合実験、競合結合実験、及び動力学的結合実験を含む様々な実験パラダイムに使用して、リガンド-標的相互作用の別個のパラメーターを規定することができる。
【0004】
存在量の少ない生物学的標的用の高感度アッセイが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
飽和アッセイは、Kdと呼ばれる標的に対するリガンドの親和性を測定することを目的としている。Kdは平衡状態での解離定数であり、所与の標的の結合部位の50%を占めるのに必要なリガンドの濃度として定義される。Kdを決定するのに、標的タンパク質を放射性標識試験リガンドとともにインキュベートする。ここで、そのタンパク質は一定の(固定)濃度である一方で、放射性標識試験リガンドの濃度を変動させる。平衡状態で、飽和が起こるまで、放射性標識試験リガンドの各濃度について、結合したリガンドの量を定量化する。得られたデータは、標的タンパク質に結合したリガンドのモル濃度での量として表現され得るため、リガンドのKdが計算され得る。放射性結合実験の2つ目の種類は、競合的放射性結合アッセイである。競合的な形式においては、放射性結合アッセイは、非放射性標識(コールド)試験リガンドが放射性標識試験リガンドを置換する能力を測定する。放射性標識試験リガンドをそのKdに近い固定濃度で使用し、非放射性標識試験リガンドを様々な濃度で使用することで、阻害(又は置換)定数(Ki)が決定され得る。この競合的な方式は、スクリーニングアッセイとして使用することもでき、その際、1つ又は複数の非放射性標識試験リガンド/試験化合物を単一の濃度又は複数の濃度で、1つの共通の放射性標識ツールリガンドを置換するそれらの能力について試験する。競合のパーセンテージ(試験リガンドが単一の濃度で使用される場合)又はKi(試験リガンドが複数の濃度で使用される場合)の計算に続いて、試験リガンド/試験化合物を、放射性標識ツールリガンドを置換する強さに従って順位付けすることができる。順位付けを使用して、規定の標的タンパク質に対する強力なリガンドを特定し、こうして発見プログラムを駆動させることができる。
【0006】
放射性結合アッセイにおいては、放射性標識リガンドは放射性同位体で標識されており、これにより、標的に結合したその画分の定量化が可能となる。これは、光電子増倍管デバイスを含む検出器でリガンド固有の電離放射性を測定することによって得られる。平衡状態での標的に結合するリガンドの量を推定するには、標的-リガンド複合体(リガンドの結合した画分)を非結合リガンド(リガンドの遊離の画分)から分離する必要がある。古典的な放射性結合アッセイにおいては、通常、濾過によって物理的分離が行われ、ここで、一般にニトロセルロース又はガラス繊維からできたフィルターは結合したリガンド-標的複合体のみを保持する一方で、遊離のリガンドはフィルターを通過して除去される。次に、リガンドの結合した画分を定量化することができる。古典的なフィルターベースの放射性結合アッセイは、濾過プロセスに必要とされる大容量において所要タンパク質濃度を達成するには大量の標的タンパク質を必要とする。かなりのタンパク質量が必要とされることから、特に標的タンパク質が低いレベルで存在する可能性のあるヒト組織試料から、その標的タンパク質を単離する必要がある場合に、そのアッセイの使用は制限される。
【0007】
本明細書に記載されるマイクロ放射性リガンド結合アッセイは、脳又は他の患者の組織又は体液に由来するタンパク質等の存在量の少ないタンパク質へのリガンドの結合の特性評価を可能にする。これには、限定されるものではないが、神経変性疾患に関連するタンパク質が挙げられる。実際、これらのタンパク質はコンフォメーション変化を受け、それによりタンパク質沈着が引き起こされることが知られており、それらのタンパク質性沈着物の蓄積は、疾患の発現及び進行に直接関連付けられている。これらのタンパク質の例は、アミロイドベータ(Aβ)及びタウ(それらの沈着物はアルツハイマー病(AD)、ダウン症候群、及びその他のタウオパチーの特徴である)、α-シヌクレイン(a-syn)(その沈着物はパーキンソン病(PD)及びレビー小体型認知症の特徴である)、及びTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)(その沈着物は筋萎縮性側索硬化症(ALS)及びTDP前頭側頭葉変性症(TDP-FTLD)の特徴である)である(Serrano-Pozo et al., 2011、Spillantini et al., 1997、Neumann et al., 2006、及びNelson et al., 2019)。これらの病理学的タンパク質の沈着物は、組換えタンパク質から人工的にin vitroで生成され得るが、in vitroで生成される沈着物(例えば、凝集体)は、患者組織から単離されたタンパク質とはコンフォメーションが異なることが広く認識されている。したがって、これらのタンパク質沈着物(例えば、凝集体)を治療剤又は診断剤で標的化することを目的とする発見プログラムは、より高い探索値を有する前臨床データを確実に生成するために、理想的には、脳由来タンパク質試料が薬理学的アッセイの標的として使用されることとなる。
【0008】
従来のフィルターベースの放射性結合アッセイにおいて必要とされる生物学的標的の量を最小限に抑えることの必要性から、細胞系統から単離されたプロテインGタンパク質共役受容体(GPCR)へのリガンドの結合を調査するマイクロアレイ技術の開発につながった(Posner et al., 2007)。しかしながら、存在量の少ない病理学的タンパク質、例えばヒト脳試料に由来するタンパク質に適合された正確で高感度のアッセイ法が依然として求められている。
【0009】
本出願は、存在量の少ないタンパク質標的用に特に設計されて、患者の脳試料に由来する病理学的タンパク質の沈着物に特に適したものとなる小型化された放射性結合アッセイを記載している。必要とされる患者由来組織の量を最小限に抑えつつ、ヒト由来の病理学的タンパク質の沈着物に対して化合物をスクリーニングする能力は、一般的に使用されるフィルターベースの放射性結合アッセイの主な制限に相当し、本明細書に記載されるマイクロ放射性結合アッセイの主な利点に相当する。マイクロ放射性結合アッセイは非常に少量のタンパク質標的の使用を可能にし、古典的なフィルターベースの放射性結合アッセイよりも少ない最大500分の1の量のタンパク質標的材料が使用される。このアッセイは、Kd及びKi値の生成だけでなく、リガンドライブラリーのスクリーニング用のハイスループットアッセイにも使用され得る。このアッセイは、古典的なフィルターベースの放射性結合アッセイと直接比較することにより好結果に検証された。
【0010】
本明細書に記載される方法は、コーティングされた表面上に病理学的タンパク質の局在化した微量試料を有するマイクロアレイを使用する。幾つかの態様においては、病理学的タンパク質標的の生化学的に富化された試料を、コーティングされた表面(例えば、コーティングされたガラス表面)上にスポッティングして、明確に画定された位置にスポットを有する病理学的タンパク質アレイを形成する。幾つかの態様においては、脳由来タンパク質試料を富化工程に供して、タンパク質沈着物を濃縮し(アッセイからの適切なシグナルを確実にするために)、コーティングされた表面上に適切に分注又はスポッティングするのに適した粘度を有する富化試料を生成する。シグナルの検出は、蛍光イメージングによって、種々のインキュベーション工程の最後に、乾燥したコーティングされた表面を蛍光イメージングフィルム又はスクリーンに露光して得られる。表面をスクリーン又はフィルムに適切な時間にわたって露光した後に、スクリーンを蛍光イメージングスキャナーでスキャニングし、ImageJ-win 64ソフトウェア等の画像解析ソフトウェアを使用してシグナルを定量化する。
【0011】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの結合親和性(Kd)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、飽和固定濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
アリコートを、複数の濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、放射性標識試験リガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKdを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0012】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの結合親和性(Kd)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、複数の濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、放射性標識試験リガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
アリコートを、飽和固定濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
結合していない放射性標識試験リガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKdを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0013】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの結合親和性(Kd)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、複数の濃度の放射性標識試験リガンド及び飽和固定濃度のコールド試験リガンドと接触させて、放射性標識試験リガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKdを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0014】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、試験リガンドについてのKdに近い固定濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、放射性標識試験リガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
アリコートを、複数の濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
結合していない放射性標識試験リガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKiを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0015】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、複数の濃度のコールド試験リガンドと接触させることと、
アリコートを、試験リガンドについてのKdに近い固定濃度の放射性標識試験リガンドと接触させて、放射性標識試験リガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKiを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0016】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、試験リガンドについてのKdに近い固定濃度の放射性標識試験リガンド及び複数の濃度のコールド試験リガンドと接触させて、放射性標識試験リガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識試験リガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識試験リガンドからのシグナルを検出することと、
各アリコート中の検出されたシグナルからKiを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0017】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、ツールリガンドのKdに近い固定濃度の放射性標識ツールリガンドと接触させて、放射性標識ツールリガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
アリコートを、単一の濃度又は複数の濃度のコールド試験化合物と接触させることと、
結合していない放射性標識ツールリガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドからのシグナルを検出することと、
(a)コールド試験化合物を単一の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルからコールド試験化合物についての競合のパーセントを計算すること、又は(b)コールド試験化合物を複数の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルからコールド試験化合物についてのKiを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0018】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、単一の濃度又は複数の濃度のコールド試験化合物と接触させることと、
アリコートを、ツールリガンドのKdに近い固定濃度の放射性標識ツールリガンドと接触させて、放射性標識ツールリガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識ツールリガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドからのシグナルを検出することと、
(a)コールド試験化合物を単一の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルからコールド試験化合物についての競合のパーセントを計算すること、又は(b)コールド試験化合物を複数の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルからコールド試験化合物についてのKiを計算することと、
を含む、方法に関する。
【0019】
幾つかの態様においては、本開示は、富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価する方法であって、
マイクロアレイ上の富化された生体試料の複数のアリコートを、単一の濃度又は複数の濃度のコールド試験化合物及びツールリガンドのKdに近い固定濃度の放射性標識ツールリガンドと接触させて、放射性標識ツールリガンドと各アリコート中の病理学的タンパク質との間で放射性標識複合体を形成することと、
結合していない放射性標識ツールリガンドをアリコートから除去することと、
各アリコート中の放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドからのシグナルを検出することと、
(a)コールド試験化合物を単一の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルからコールド試験化合物についての競合のパーセントを計算すること、又は(b)コールド試験化合物を複数の濃度で接触させる場合に、各アリコート中の検出されたシグナルからコールド試験化合物についてのKiを計算することと、
を含む、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】マイクロ放射性結合アッセイの構成を示す図である。固体表面(例えば、アミノプロピルシラン(APS)等の疎水性接着表面でコーティングされたスライドガラス)(A)を、タンパク質標的をスポッティングする支持体として使用する。自動スポッティングデバイスを使用して表面にタンパク質をスポッティングした後に、それぞれ9個のスポットの64個のパッドが得られる(B)。幾つかの実施形態においては、表面上に水密チャンバーを備えた表面(C)に、タンパク質標的を手動でスポッティングする(D)。
【
図2】古典的なフィルターベースの放射性結合アッセイ(A)及びマイクロ放射性結合アッセイ(B)を用いた、ADのヒト脳由来タウ沈着物に対するツールリガンドについての結合親和性(K
d)の決定の結果を示す図である。
図2AのY軸は、カウント毎分(cpm)で表される、標的に結合した特定の放射性標識リガンドの量の測定値を示している。
図2BのY軸は、標的に結合した特定の放射性標識リガンドの量により得られるシグナルに比例する、フィルム上に存在するシグナルの強度の定量値を表している。ツールリガンド化合物は、フィルターベースのアッセイ(A)により11.8nMのK
dを示し、マイクロ放射結合アッセイ(B)により7.9nMのK
dを示した。両方のK
dは、良好なフィッティングを有した((A)の場合はR
2=0.97、そして(B)の場合はR
2=0.85)。
【
図3】マイクロ放射性結合アッセイを使用した、PDのヒト脳由来a-syn及び前頭側頭型認知症(FTD)のヒト脳由来TDP-43沈着物に対する試験化合物についての結合定数(K
d)の決定の結果を示す図である(化合物3、a-syn、A;化合物2、a-syn、B;化合物3、TDP-43、C)。各図のY軸は、標的に結合した特定の放射性標識リガンドの量により得られるシグナルに比例する、フィルム上に存在するシグナルの強度の定量値を表している。化合物3は、PDの脳由来a-synに対して10.8nMのK
dを示し、良好なフィッティング(R
2=0.87;A)を有し、FTDの脳由来TDP-43に対して138nMのK
dを示し、良好なフィッティング(R
2=0.79;C)を有した。化合物2は、PDの脳由来a-synに対して7.8nMのK
dを示し、良好なフィッティング(R
2=0.80;B)を有した。
【
図4】マイクロ放射性結合アッセイを使用した、ADのヒト脳由来タウ沈着物(A)に対するトリチウム化されたツールリガンドのKiによって測定された置換能力、及びPDのヒト脳由来a-syn沈着物(B)に対する化合物3のKiによって測定された置換能力の決定の結果を示す図である。各図のY軸は、パーセンテージで表された標識化合物の置換を表しており、ここで、100%は完全な置換に相当する。ツールリガンドは1nMのKiを示し、良好なフィッティング(R
2=0.97)を有した。化合物3は41nMのKiを示し、良好なフィッティング(R
2=0.84)を有した。
【
図5】ツールリガンドとして放射性標識化合物3を使用したマイクロ放射性結合アッセイにおける化合物4、化合物5、及び化合物6(それぞれ、A、B、及びC)のスクリーニングの結果を示す図である。各図のY軸は、パーセンテージで表された標識化合物の置換を表しており、ここで、100%は完全な置換に相当する。化合物4、化合物5、及び化合物6のKiは、13nM、37nM、及び147nMで測定され、全ては良好なフィッティング(それぞれR
2=0.97、0.80、及び0.64)を有した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の追加の態様及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかとなり、ここでは、本開示の例示的な態様が示され、説明される。理解されるように、本開示は、他の様々な態様が可能であり、その幾つかの詳細は、全て本開示から逸脱することなく、様々な態様において変更が可能である。したがって、この詳細な説明は、本来例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものと見なされるべきではない。
【0022】
本明細書に挙げられる全ての出版物、特許、及び特許出願は、各個別の出版物、特許、又は特許出願が引用することにより本明細書の一部をなすと具体的かつ個別に示されているのと同じ程度で、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0023】
病理学的タンパク質は、ヒト組織又は体液における異常な蓄積に際して病理学的作用を生ずるタンパク質である。幾つかの実施形態においては、病理学的タンパク質は、そのような蓄積に際してフィラメント、濃縮体、又は他の凝集体等の沈着物を形成するタンパク質であり、これらの沈着物が機能不全及び疾患の進行を引き起こす。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されるアッセイにおいて使用される病理学的タンパク質は、当業者に知られる方法によって生成される。幾つかの実施形態においては、本明細書において使用される病理学的タンパク質は、ヒト生体試料に由来する。幾つかの実施形態においては、病理学的タンパク質はヒト生体試料中に存在し、これは、本明細書に記載されるアッセイにおいて使用されるより濃縮された生体試料をもたらす当業者に知られる方法によって富化される。幾つかの実施形態においては、富化された生体試料は、約1mg/mL~約6.5mg/mLの総タンパク質(病理学的タンパク質標的+他の試料タンパク質)を含む。幾つかの実施形態においては、富化された生体試料は、約1mg/mL~約2mg/mLの総タンパク質(病理学的タンパク質標的+他の試料タンパク質)を含む。幾つかの実施形態においては、富化された生体試料は、約3.5mg/mL~約6.5mg/mLの総タンパク質(病理学的タンパク質標的+他の試料タンパク質)を含む。幾つかの実施形態においては、富化された生体試料はまた、脂質、RNA、DNA、又は他の細胞成分を含む。
【0024】
幾つかの実施形態においては、ヒト生体試料は、ヒト体液(例えば、鼻分泌物、尿試料、血液試料、血漿試料、血清試料、間質液(ISF)試料、又は脳脊髄液(CSF)試料)又はヒト組織試料(例えば、心臓、筋肉、脳等に由来する組織)である。他の実施形態においては、ヒト生体試料は、血液試料又は脳脊髄液試料である。幾つかの実施形態においては、ヒト生体試料は、大脳皮質試料又は海馬試料等の脳試料である。幾つかの実施形態においては、病理学的タンパク質は、神経変性疾患に関連している。幾つかの実施形態においては、富化された生体試料は、神経変性疾患に罹患している患者又は神経変性疾患に罹患していた死亡した患者からのヒト生体試料に由来する。幾つかの実施形態においては、神経変性疾患は、アルツハイマー病、ダウン症候群、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺(PSP)、多系統萎縮症(MSA)、又は外傷性脳損傷、辺縁系優位型加齢性TDP-43脳症(LATE)、慢性外傷性脳症(CTE)である。幾つかの実施形態においては、病理学的タンパク質は、タウ、Aβ、α-シヌクレイン、インフラマソーム成分(限定されるものではないが、ASCを含む)、C9orf72又はTDP-43に由来するジペプチドリピート(DPR)である。好ましい実施形態においては、病理学的タンパク質は、タウ、Aβ、α-シヌクレイン、又はTDP-43である。
【0025】
幾つかの実施形態においては、マイクロアレイは、富化された生体試料のアリコートを、固体支持体上に繰り返し様式で分注することによって作製される。幾つかの実施形態においては、アリコートを固体支持体上に分注する。幾つかの実施形態においては、アリコートを固体支持体上にスポッティングする。したがって、幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法は、富化された生体試料のアリコートをスライドガラス上に分注することによってマイクロアレイを作製することを更に含む。幾つかの実施形態においては、富化された生体試料のアリコートをマイクロアレイ上で実質的に乾燥させる。幾つかの実施形態においては、マイクロアレイは、少なくとも25個、若しくは少なくとも50個、若しくは少なくとも100個、若しくは少なくとも200個、若しくは少なくとも300個、若しくは少なくとも400個、若しくは少なくとも500個のスポット、又は250個~600個のスポット、若しくは500個~600個のスポットを含む。幾つかの実施形態においては、スポットは、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、若しくは10個のスポット、又は4個~10個のスポット、又は9個のスポットを含むパッドプロファイル(pad profiles)においてグループ化される。幾つかの実施形態においては、マイクロアレイの固体支持体は複数のチャンバーに分割され、ここで、各チャンバーは、チャンバー内のスポットの数として定義されるパッドプロファイルを含む。幾つかの実施形態においては、別個のチャンバーは、様々な流体又は試薬を個々の各チャンバーに加えることができるが、チャンバー間で混ざらないように構成される。幾つかの実施形態においては、マイクロアレイは、少なくとも2個、又は少なくとも5個、又は少なくとも10個、又は少なくとも15個、又は少なくとも20個、又は少なくとも25個、又は少なくとも30個、又は少なくとも40個、又は少なくとも45個、又は少なくとも50個、又は少なくとも55個、又は少なくとも60個、又は約64個のチャンバーを含む。幾つかの実施形態においては、様々な既知の濃度の試験リガンドが、マイクロアレイにおいて様々なアリコート、スポット、パッドプロファイル、又はチャンバーで使用される。幾つかの実施形態においては、アリコートを複数の濃度と接触させることは、マイクロアレイにおける各チャンバーを様々な濃度と接触させることを含む。各チャンバーが複数のアリコート又はスポットを含む場合に、それらのアリコート又はスポットは、そのチャンバーに関する試験条件(例えば、試験化合物又は試験濃度)についての反復実験として機能する。
【0026】
幾つかの実施形態においては、富化された生体試料からの病理学的タンパク質のアリコートの分注又はスポッティングは、自動スポッティングデバイス(例えば、Nano-Plotter)等のスポッティングデバイスを使用して、又は手動ピペット操作によって行われる。幾つかの実施形態においては、スポッティングは、Nano-Plotter 2.1(商標)(GESIM;ドイツ)を使用して行われる。本発明の幾つかの実施形態においては、アレイ化される病理学的タンパク質を含む富化された生体試料の容量は、少なくとも300ピコリットル、若しくは少なくとも1ナノリットル、若しくは少なくとも10ナノリットル、若しくは少なくとも36ナノリットルであり、又は約200ピコリットル~約36ナノリットル、若しくは約200ピコリットル~約10ナノリットル、若しくは約200ピコリットル~約1ナノリットルの範囲の容量である。
【0027】
マイクロアレイは、コーティングされた固体支持体を含み、固体支持体は、ガラス又はポリマー等のあらゆる適切な固体材料であり得る。幾つかの実施形態においては、固体支持体はスライドガラスである。幾つかの実施形態においては、マイクロアレイの固体支持体は、被着剤でコーティングされている。幾つかの実施形態においては、被着剤は、シラン、チオール、ジスルフィド、エポキシド、及び/又はポリマーである。幾つかの実施形態においては、被着剤はシランである。幾つかの実施形態においては、被着剤はアミノプロピルシランである。幾つかの実施形態においては、マイクロアレイの固体支持体は、アミノプロピルシランでコーティングされたスライドガラスである。
【0028】
リガンド、ツールリガンド、試験化合物、又は試験リガンドは、有機化合物、抗原、抗体、ペプチド、タンパク質、又は抗体によって捕捉されたタンパク質である。幾つかの実施形態においては、リガンド、ツールリガンド、試験化合物、又は試験リガンドは、化学的化合物又は小分子化合物等の有機化合物である。幾つかの実施形態においては、ツールリガンド及び試験リガンドは、両者とも小分子化合物である。幾つかの実施形態においては、ツールリガンド及び試験化合物は、両者とも小分子化合物である。
【0029】
標識リガンド、放射性標識リガンド、標識ツールリガンド、放射性標識ツールリガンド、標識試験リガンド、標識試験化合物、放射性標識試験化合物、又は放射性標識試験リガンドは、リガンド、ツールリガンド、試験化合物、又は試験リガンドの定量化を可能にする標識を含む有機化合物、抗原、抗体、ペプチド、タンパク質、又は抗体によって捕捉されたタンパク質である。幾つかの態様においては、標識は、病理学的タンパク質に結合したリガンド、ツールリガンド、試験化合物、又は試験リガンドの量の定量化を可能にする。標識の種類は特に限定されるものではなく、選択された検出方法によって異なる。検出可能な標識が本発明のリガンドに取り付けられる位置は特に限定されない。
【0030】
幾つかの実施形態においては、放射性標識試験リガンドは、試験リガンドが放射性標識されたものである。幾つかの実施形態においては、放射性標識ツールリガンドは、既知のリガンドが放射性標識されたものである。幾つかの実施形態においては、ツールリガンド又は放射性標識ツールリガンドは、対象となる病理学的タンパク質に対する既知のリガンドである。例示的な放射性標識ツールリガンドとしては、Aβ([11C]PiB(ピッツバーグ化合物B)、[18F]フロルベタピル、[18F]フロルベタベン、又は[18F]フルテメタモール)、タウ([18F]T-807(AV1451としても知られる)、フロルタウシピル[18F]MK-6240、[18F]RO6958948、[18F]PI-2620、[18F]-GTP-1、[18F]JNJ-067、[18F]PM-PBB3、又は[11C]PBB3)、THK-5351、THK-5562、又はα-シヌクレイン([3H]SIL26)が挙げられる。例示的なツールリガンドとしては、これらの例示的な放射性標識ツールリガンドの非標識のものが挙げられる。
【0031】
例示的な標識としては、放射性核種、陽電子放出体、又はガンマ線放出体等の同位体だけでなく、蛍光標識、発光標識、及び/又は発色性標識が挙げられる。本明細書において使用される放射性同位体標識は、放射性同位体の天然存在比と同一ではない存在比で存在する。さらに、使用される量は、選択された検出方法によるその検出を可能にするべきである。幾つかの実施形態においては、標識は放射性核種標識である。放射性核種としての適切な放射性同位体の例としては、2H、3H、18F、123I、124I、125I、131I、11C、13N、15O、及び77Brが挙げられる。幾つかの実施形態においては、放射性核種標識は、2H、3H、11C、13N、15O、又は18Fである。幾つかの実施形態においては、放射性核種標識は、2H、3H、及び18Fである。幾つかの実施形態においては、放射性核種標識は、3Hである。本明細書に記載される放射性標識化合物は一般に、当業者に知られる従来の手順によって、市販されている又は既知の合成技術によって調製される適切な試薬の適切な同位体の変形形態を使用して調製される。
【0032】
ツールリガンド、放射性標識ツールリガンド、試験リガンド、試験化合物、及び放射性標識試験リガンドはまた、1つ以上のブロッキング剤、診断的に許容可能な担体、希釈剤、添加剤、又はバッファーを含む組成物の形態において提供され得る。幾つかの実施形態においては、上記組成物はブロッキング剤を含む。幾つかの実施形態においては、ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、又は鶏卵白由来のアルブミンである。幾つかの実施形態においては、ブロッキング剤はBSAである。ブロッキング剤は、病理学的タンパク質における非特異的結合部位をブロッキングし、バックグラウンドシグナルを低減する。幾つかの実施形態においては、この方法は、アリコートの最初の接触の前に又はそれと同時に、富化された生体試料のアリコートをブロッキング剤で処理することを含む。幾つかの実施形態においては、アリコートをブロッキング剤で処理することは、アリコートをブロッキング剤を含むアッセイバッファーで処理することを含み、ここで、任意に、アッセイバッファーは、トリス-HCl又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。
【0033】
本明細書において使用される場合に、「飽和固定濃度」は、特定のタンパク質に対する特異的結合を飽和する濃度を意味する。
【0034】
本明細書において使用される場合に、マイクロアレイ上のアリコートを「複数の濃度」のリガンド又は化合物と接触させることは、異なるアリコート又はアリコートのセットを異なる濃度のリガンド又は化合物と接触させることを意味する。マイクロアレイ上のアリコートのセットが所与の濃度と接触される場合に、そのセットにおけるアリコートは、試験濃度についての反復実験として機能する。アリコート又はアリコートのセットは、マイクロアレイ上の、例えば個々のチャンバー内の他のアリコート又はアリコートのセットから隔離され得る。結合親和性を決定することを含む方法の場合に、幾つかの実施形態においては、試験濃度の適切な範囲は、飽和固定濃度と比べて低く少なくとも50分の1である。
【0035】
試験リガンドの阻害定数を決定する方法においては、アリコートを、Kdの約2倍以内を指す「試験リガンドについてのKdに近い固定濃度で」放射性標識試験リガンドと接触させる。
【0036】
幾つかの実施形態においては、非結合リガンド(例えば、試験リガンド、試験化合物、又は放射性標識リガンド)の除去は、マイクロアレイを洗浄して、タンパク質標的に結合していないリガンド(非結合リガンド)を除去することを含む。幾つかの実施形態においては、洗浄は、バッファーでの洗浄を含む。幾つかの実施形態においては、バッファーはPBSである。
【0037】
幾つかの実施形態においては、検出は、放射性標識ツールリガンド又は放射性標識試験リガンドを含む複合体を含むマイクロアレイをフィルムに露光した後に、フィルム上のシグナルを検出することを含む。幾つかの実施形態においては、フィルムはホスホスクリーンフィルムである。幾つかの実施形態によるシグナルの定量化は、スキャニングによって、又はPhosphoimager Typhoon IP等のフォトイメージャーソフトウェアによって実現される。画像はImageJ-win 64ソフトウェア等の画像解析ソフトウェアを使用することによって定量化され得る。幾つかの実施形態においては、検出は、放射性標識試験リガンド又は放射性標識ツールリガンドを含むマイクロアレイをホスホスクリーンフィルム等のフィルムに露光し、それによりフィルム上にシグナルを生成し、フィルム上のシグナルを定量化することを含む。幾つかの実施形態においては、検出は、放射性標識ツールリガンド又は放射性標識試験リガンドを含む複合体を含むマイクロアレイを、新世代のガス検出器に基づくリアルタイムオートラジオグラフィーシステム(例えば、BeaQuant機器[ai4R]、BetaIMAGER[Biospace Lab])で露光することによって放射性シグナル(崩壊数)を測定することを含む。幾つかの実施形態によるシグナルの定量化は、デジタルイメージングによって行われる。幾つかの実施形態においては、画像は、画像解析ソフトウェア(Beamage[ai4R]、M3 vision[Biospace Lab])を使用することによって定量化され得る。幾つかの実施形態においては、画像を画像処理ツールにエクスポートすることができ、ImageJ-win 64ソフトウェア等の画像解析ソフトウェアを使用することによって定量化することができる。
【0038】
幾つかの実施形態においては、
病理学的タンパク質を、パッドプロファイルにおけるガラス支持体、例えば、アミノプロピルシラン(APS)でコーティングされたスライドガラス上にスポッティングすることと、
スポッティングされたタンパク質を、非標識(コールド)リガンドと接触させて、リガンドとタンパク質との間で複合体を形成することと、
複合体を標識リガンドと接触させて、標識リガンドとタンパク質との間で標識複合体を形成することと、
標識複合体をバッファー、例えばPBSバッファーで洗浄することと、
ガラス支持体を、例えば室温又はアルゴン流下で乾燥させることと、
ガラス支持体をフィルム、例えばホスホスクリーンフィルムに露光することと、
タンパク質に結合した標識リガンドの露光後にフィルム上のシグナルを定量化することと、
を含む方法である。幾つかの実施形態においては、スポッティングされたタンパク質をブロッキング剤と接触させる。幾つかのそのような実施形態においては、ブロッキング剤は、コールドリガンドを含むアッセイバッファー及び/又は標識リガンドを含むアッセイバッファー中に存在する。
【0039】
幾つかの実施形態においては、上記方法は、タンパク質に結合した標識リガンドの露光後にフィルム上のシグナルを定量化することと、例えば、定量化された値をグラフ上にプロットすることによって、例えば、画像ソフトウェア解析を使用することによりグラフ上に値をプロットすることによって、結合親和性(Kd)の値を決定することとを含む。
【0040】
幾つかの実施形態においては、パッドプロファイルにおいて組織化されたガラス支持体上、特にアミノプロピルシラン(APS)でコーティングされたスライドガラス上に病理学的タンパク質をスポッティングすることと、標識リガンドを含む組成物を、スポッティングされたタンパク質と接触させることと、標識リガンドをタンパク質と複合体形成させることと、非標識(コールド)リガンドを含む組成物を、タンパク質及び標識リガンドを含む複合体と接触させることと、PBSバッファー等のバッファーで洗浄することと、APSでコーティングされたスライドガラス等のガラス支持体を、任意に室温又はアルゴン流下で乾燥させることと、APSでコーティングされたスライドガラス等のガラス支持体をホスホスクリーンフィルム等のフィルムに露光することと、タンパク質に結合した標識リガンドの露光後にフィルム上のシグナルを定量化することと、阻害定数(Ki)を、好ましくは定量化されたシグナルをグラフ上にプロットすることによって、より好ましくは定量化された値を、画像ソフトウェア解析を使用することによりグラフ上にプロットすることによって決定することとを含む方法である。
【0041】
幾つかの実施形態においては、アミノプロピルシラン(APS)でコーティングされたスライドガラス等のパッドプロファイルにおいて組織化されたガラス支持体上に病理学的タンパク質をスポッティングすることと、標識リガンドを含む組成物をスポッティングされた病理学的タンパク質と接触させて、標識リガンドをタンパク質と複合体形成させることと、非標識リガンドを含む組成物を、タンパク質及び標識リガンドを含む複合体と接触させることと、PBS等のバッファーで洗浄することと、ガラス支持体を、任意に室温又はアルゴン流下で乾燥させることと、ガラス支持体をホスホスクリーンフィルム等のフィルムに露光することと、タンパク質に結合した標識リガンドの露光後にフィルム上のシグナルを定量化することと、阻害能力(阻害定数、Ki)を、例えば定量化されたシグナルをグラフ上にプロットすることによって、又は定量化された値を、画像ソフトウェア解析を使用することによりグラフ上にプロットすることによって決定することとを含む方法である。幾つかの実施形態においては、乾燥の前に含まれる工程を、少なくとも6回、又は少なくとも8回、又は少なくとも12回繰り返す。幾つかの実施形態においては、リガンドの量は、これらの工程が繰り返されるたびに増加/減少する。幾つかの実施形態においては、Ki値を使用して、化合物がタンパク質への標識リガンドの結合と競合する能力を有するかどうかを評価する。幾つかの実施形態においては、Ki値を使用して、試験された化合物をそれらのKi値に従って順位付けする。
【0042】
また、標的に結合するそれらの能力について又は標的への標識リガンドの結合と競合するそれらの能力について試験リガンド/試験化合物をスクリーニング又は評価する際に使用されるキットも本明細書に開示される。そのようなキットは、例えば、バッファー、検出可能な色素、ラボ用機器、反応容器、使用説明書等のような本明細書に記載される方法を実施するための構成要素を含む。
【0043】
幾つかの実施形態においては、本開示は、病理学的タンパク質標的に対する試験リガンド/試験化合物の結合親和性(Kd)を決定するアッセイを提供する。他の実施形態においては、本開示は、病理学的タンパク質標的に対する試験リガンド/試験化合物についての阻害定数(Ki)を決定するアッセイを提供する。幾つかの態様においては、本開示は、試験リガンド/試験化合物又は一連の試験リガンド/試験化合物の評価、選択、及び/又はスクリーニング用のアッセイであって、アッセイ結果に従って、試験リガンド/試験化合物を選択する又は試験リガンド/試験化合物を順位付けする、アッセイを提供する。
【0044】
富化された生体試料中の病理学的タンパク質との放射性標識複合体における放射性標識ツールリガンドを置換する能力について試験化合物を評価又はスクリーニングする幾つかの方法において、該方法は、
(a)アリコートをそれぞれ単一の濃度の複数のコールド試験化合物と接触させること、又は、
(b)アリコートを複数の濃度の複数のコールド試験化合物と接触させること、
を含む。幾つかの実施形態においては、上記方法は、各試験化合物についての計算された競合のパーセント又はKiに従って複数の試験化合物を順位付けすることを含む。幾つかの実施形態においては、複数のコールド試験化合物は、少なくとも2種、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも25種、少なくとも50種、若しくは少なくとも100種のコールド試験化合物、又は2種~100種、若しくは5種~100種、若しくは10種~100種、若しくは25種~100種、若しくは50種~100種のコールド試験化合物である。
【0045】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、富化された生体試料の複数のアリコートがスポッティングされたコーティング表面を非放射性標識リガンドと接触させることは、コーティング表面を放射性標識リガンドと接触させる前に、それと同時に、又はその後に行われ得る。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本開示の幾つかの実施形態を更に説明するために含まれており、本開示の範囲を限定するのに使用されるべきではない。これらの実施例は、以下の実験が、実施される全ての又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して精度を保証するのに努力が払われているが、幾らかの実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又は近大気圧である。
【0047】
本開示の態様が本明細書において示され、説明されているが、そのような態様が単なる例として示されているにすぎないことは当業者には明らかであろう。ここで、当業者であれば、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変化、及び置き換えに想到するであろう。本明細書に記載される開示の態様に対する様々な代替物が、本開示の実施において使用され得ることを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、本開示の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造物、並びにそれらの同等物は、それによって対象に含められることが意図される。
【0048】
実施例1:マイクロアレイ製造用のタンパク質の調製
a)ADの脳由来の病理学的タウタンパク質
ADの脳由来のタウの対になった螺旋状のフィラメント(PHF)は、外部供給元(Tissue Solutions、英国)から入手した1人のアルツハイマー病(AD)患者の死後の脳から富化された。富化手順は、Jicha et al., 1997及びRostagno and Ghiso, 2009から改変され、当初はアルツハイマー病の脳から散在性の対になった螺旋状のフィラメント及びくびれのないフィラメントを抽出するのに開発された手順(Greenberg, S. G. et al., 1990、Goedert, et al., 1992)を適用するPD症例の脳からの散在性のa-synフィラメントの抽出を記載したSpillantini et al., 1998から抜粋された。手短に言えば、ガラス製のダウンス型ホモジナイザーにおいて、組織を1:4の比率の組織対均質化バッファー容量[プロテアーゼ阻害剤(Complete;Roche 11697498001)を補充したRABバッファー(100mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、1mMのEGTA、0.5mMのMgSO4、2mMのDTT、pH6.8)中0.75MのNaCl]の重量対容量比で均質化した。次に、均質化物を4℃で20分間インキュベートして、全ての残留微小管を脱重合させた後に、ポリカーボネート製の遠心分離ボトル(16mm×76mm;Beckman 355603)中に移し、超遠心分離機(Beckman、XL100K)において予冷した70.1ローター(Beckman、342184)を使用して11000g(12700RPM)にて4℃で20分間遠心分離した。ペレットを氷上で保持した。上清をポリカーボネート製のボトル中にプールし、70.1 Tiローターにおいて100000g(38000RPM)にて4℃で1時間再度遠心分離して、PHFに富むペレットを分離したが、可溶性のタウは上清中に残留した。1回目及び2回目の遠心分離からのペレットを120mLの抽出バッファー[10mMのTris-HCl(pH7.4)、10%のスクロース、0.85MのNaCl、1%のプロテアーゼ阻害剤(Calbiochem 539131)、1mMのEGTA、1%のホスファターゼ阻害剤(Sigma P5726及びP0044)]中に再懸濁した。次に、溶液をポリカーボネート製の遠心分離ボトル(16mm×76mm;Beckman 355603)中に移し、超遠心分離機(Beckman、XL100K)において70.1 Tiローターを使用して15000g(14800RPM)にて4℃で20分間遠心分離した。10%のスクロースの存在下で低速遠心分離では、ほとんどのPHFが上清に残留したが、インタクトな又は断片化されたNFT及びより大きなPHF沈着物/凝集体はペレット化された。ペレットを廃棄した。20%のサルコシル(Sigma L7414-10ML)を上清に1%の最終濃度になるまで加え、室温で1時間撹拌した。次に、この溶液をポリカーボネート製のボトル中で100000g(38000RPM)にて70.1 Tiローターにおいて4℃で1時間遠心分離し、PHFに富む材料を含むペレットをPBS中に1:0.1の組織対PBSの重量対容量比で再懸濁し、アリコートに分けて、-80℃で貯蔵した。試料をウエスタンブロットによりタウについて分析した。
【0049】
b)PDの脳由来のa-synタンパク質
手順は、Spillantini et al., 1998に記載されるプロトコルから抜粋された。側頭皮質又は扁桃体脳領域のいずれかからの凍結組織ブロックを氷上で解凍し、メスを使用して白質を除去した。ガラス製のダウンス型ホモジナイザーを使用して、組織を、1:4の組織対均質化バッファー容量の重量対体積比で均質化した。均質化のために、0.75mMのNaCl及び1×プロテアーゼ阻害剤(Complete;Roche 11697498001)を含有するRABバッファー(100mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、1mMのEGTA、0.5mMのMgSO4、2mMのDTT、pH6.8)を使用した。次に、均質化物を4℃で20分間インキュベートして、全ての残留微小管を脱重合させた後に、ポリカーボネート製の遠心分離ボトル(16mm×76mm;Beckman 355603)中に移し、超遠心分離機(Beckman、XL100K)において予冷した70.1ローター(Beckman、342184)を使用して11000g(12700RPM)にて4℃で20分間遠心分離した。ペレットは氷上で保持したのに対して、上清をポリカーボネート製のボトル中にプールし、70.1 Tiローターにおいて100000g(38000RPM)にて4℃で1時間再度遠心分離して、a-syn沈着物/凝集体を可溶性a-synから分離した。1回目及び2回目の遠心分離からのペレットを抽出バッファー[10mMのTris-HCl(pH7.4)、10%のスクロース、0.85mMのNaCl、1%のプロテアーゼ阻害剤(Calbiochem 539131)、1mMのEGTA、1%のホスファターゼ阻害剤(Sigma P5726及びP0044)]中に1:10(重量対容量、重量/容量)比で再懸濁した。次に、溶液をポリカーボネート製の遠心分離ボトル(16mm×76mm;Beckman 355603)中に移し、15000×g(14800RPM、70.1 Tiローター)にて4℃で20分間遠心分離した。ペレットを破棄し、サルコシル(20%のストック溶液、Sigma L7414)を上清に1%の最終濃度になるまで加え、室温で1時間撹拌した。次に、この溶液をポリカーボネート製のボトルに移し、100000g(38000RPM、70.1 Tiローター)にて4℃で1時間遠心分離した。富化されたa-syn沈着物/凝集体を含むペレットをPBS中で1:0.1の組織対PBSの重量対体積比において再懸濁し、アリコートに分け、使用するまで-80℃で貯蔵した。この手順によって得られた最終的な画分を、a-synに対する抗体を用いて生化学的(例えば、AlphaLISA、ウエスタンブロット、及びドットブロット)に分析して、a-syn沈着物/凝集体の富化を確認した。
【0050】
c)前頭側頭型認知症(FTD)の脳由来のTDP-43タンパク質
TDP-43の病状のヒトの脳からの脳組織(皮質)の切片をP2実験室においてメスで切除し、組織をペトリ皿上で秤量した。組織をピンセットで2mlの均質化チューブ(CKmix)に移した。プロテアーゼ阻害剤を含む均質化バッファーを1:4(重量/容量)の比率で解剖した組織に加え、20%の脳均質物を得た。懸濁液をprecellysを用いて、5000rpmで30秒を3回、各サイクルの間に15秒一時停止というプログラムを使用して4℃で均質化した。均質化した組織を5mlのエッペンドルフチューブ中にプールし、再懸濁した。均質化された脳の600μlのアリコートを調製し、ドライアイス上で凍結し、-80℃で貯蔵した。1.5mLのタンパク質低結合チューブ(Eppendorf)中で可溶化を行った。
【0051】
脳均質物を氷上で解凍し、HSバッファー中で再懸濁して、2%のサルコシル、1ユニット/μLのベンゾナーゼ、及び1mMのMgCl2の最終濃度にし、サーモミキサーにおいて600rpmでの一定の振盪下で37℃にて45分間インキュベートした。上清を新しいチューブに収集した。ペレットを1000μlのミエリン浮遊バッファー中に再懸濁し、ベンチトップ型遠心分離機において20000gで4℃にて60分間遠心分離した。1000μlのチップで上清を注意深く除去して、浮遊脂質を全て除去した。脂質を単回の遠心分離工程で除去することができなければ、再懸濁、遠心分離、及び上清の除去を繰り返す。得られたペレットをPBSで洗浄し、ベンチトップ型遠心分離機において4℃で30分間遠心分離した。次に、ペレットを200μlのPBS中で再懸濁した。富化された材料を全てプールし、-80℃で凍結した。
【0052】
試料をウエスタンブロットによって分析した(リン酸化TDP-43、TDP-43、ヒストンH3、Aβ)。
【0053】
実施例2:病理学的タンパク質用のマイクロアレイの作製
a)方法1-自動スポッティング
タンパク質試料をPBS又はアッセイバッファー(0.9%のNaCl、0.1%BSA中の50mMのTris-HCl(pH7.5))中で1:3(容量/容量)に希釈し、1.5mlのエッペンドルフチューブにおいてP200(Eppendorf)を用いてピペッティングすることにより均質化した。こうして、試料は、自動スポッティングデバイスである非接触圧電式プリンターのNano-Plotter 2.1(GeSiM;ドイツ)を使用して、アミノプロピルシラン(APS)でコーティングされた64パッドのマイクロアレイスライドガラス(Lucerna-Chem、番号63475)上に自動スポッティングする準備が整った。自動スポッティングデバイスは、電気パルスで少量(ピコリットルからナノリットル)の液体を分注することができる汎用性のある非接触式アレイプリンターである。
【0054】
APSスライドガラス(
図1A)を手動で自動トレイル(automatic trail)に配置し、適切に固定されていることを確認して、スライド間のスポッティングの高い再現性と、各スライドガラスがチャンバーを備えている場合の液滴の適切な位置調節とを保証した。圧電チップを使用して、ローディングプレート(loading plate)から適切な容量をピペットで移した。システムは、1スポット当たり12×3nLの液滴を分注することができるように最適化されており、1パッド当たり9スポットで、各スライドに合計64パッドを有する(
図1B)。試料のスポッティングは、65%の相対湿度の湿度制御された雰囲気中で行われた。スポッティングの前に、分注された液滴の均質化品質を評価して、試料の容量及び密度が分注全体を通して一定であることを保証した。そのために、各液滴をそれがチップから分注されたときに測定し、液滴の分散を特定の電圧下で測定した。スライドにスポッティングしたら、Proplateマルチウェルチャンバー64ウェル(25mm×75mmのガラス製の顕微鏡ガラス)でチャンバーを組み立て、スライドガラスの両側にステンレス鋼製の2つのProPlate(商標)クリップを使用して区画の水密性を確保した。この系は64個の独立したウェルを有した。試料を加湿したチャンバー内で15分間乾燥させた後に、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0055】
b)方法2-手動スポッティング
マイクロピペットp2(Eppendorf)を用いてチャンバーを備えたスライドガラス上に1μLをピペットで移すことにより、タンパク質試料を手動でスポッティングした(
図1C及び
図1D)。各位置に1滴だけをピペットで移し、1滴はスライドガラス上のスポットに対応した。得られたスライドガラスを、古典的なラボ用フード内で室温にて少なくとも2時間乾燥させた。
【0056】
実施例3:コールド試料の調製
コールド化合物(試験リガンド又は試験化合物)を、100%のDMSO中の2.5mM又は10mMのストック溶液として再懸濁した。2倍~3倍の希釈倍率で12点の段階希釈系列を行うことによって、コールド化合物の希釈物を得た。希釈を100%のDMSO中で行い、結合アッセイ反応容量において1%~2.5%の一定濃度の最終DMSO濃度を確保した。使用されたコールド化合物の最大濃度は、標的に応じて2μM又は3μMであり、その条件をシグナルの最大の置換を決定するのにも使用した。
【0057】
実施例4:標識試料の調製
標識化合物(放射性標識試験リガンド又は放射性標識ツールリガンド;1mCi/mL)を合成し、100%のエタノール中に溶解した。Kdを決定する実験においては一連の濃度の適切な濃度に、又は置換の強さを評価するのに使用される実験においては一定の固定濃度で、標識化合物をアッセイバッファー中に希釈した。
【0058】
実施例5:マイクロ放射性結合アッセイによるタウ結合親和性(K
d)の決定
病理学的タウタンパク質試料がスポッティングされたチャンバーを取り付け、2μMのコールド試験リガンドを含むアッセイバッファー(50mMのTris(pH:7.5)、138mMのNaCl、0.1%のBSA)で満たした。チャンバーを室温で120分間インキュベートした。封止フィルムを使用して蒸発を防いだ。様々な濃度でのアッセイバッファー中の等容量のトリチウム化された試験リガンドを各チャンバーに加え、よく混合し、室温でインキュベートした。最終反応容量は40μLであった。60分間インキュベートした後に、放射性物質を含む反応溶液を適切な入れ物に収集した。チャンバーを氷冷洗浄バッファーで5回洗浄した。ProPlate(商標)チャンバーをスライドガラスから取り外し、スライドガラスを再蒸留H
2Oで洗浄した。スライドガラスを、化学フードの下でアルゴン流下にて乾燥させた。ハイパーカセット(Amersham、RPN 11643)内でfujifilmのBAS-IP TR 2025上にて、フィルムを少なくとも3日間露光させた。フィルムを、Phosphoimager Typhoon IPを用いて、50μmの解像度及び4000の感度でスキャニングした。次に、ImageJ-win 64ソフトウェアを使用して、画像を解析し、定量化した。GraphPad Prism 7.03を使用してグラフを作成した。ツールリガンドとタウ沈着物/凝集体とについて、良好なフィットで7.9nMのK
dが決定された(
図2B)。
【0059】
実施例6:マイクロ放射性結合アッセイとフィルターベースの放射性結合アッセイとの比較
この古典的なフィルターベースのアッセイ及び上記のマイクロ放射性結合アッセイを使用したK
d決定の直接的な比較を行って、これらの方法間の違いを評価した。フィルターベースのアッセイを行うために、ADの脳由来のタウを1/80に希釈し、1nM~50nMの範囲の濃度のトリチウム化された試験リガンド(既知のタウ結合体)とともに2μMの一定の(固定)濃度のコールド試験リガンドを含めて又は含めずに25℃にて120分間インキュベートした。35μLの容量の各試料をGF/Cフィルタープレート(PerkinElmer 6005174)において真空下で濾過して、試験リガンドが結合されたADの脳由来のタウを捕捉し、GF/Cフィルターを50mMのTrisバッファー(pH7-5)で3回洗浄した。次に、GF/Cフィルターを真空乾燥し、50μLのシンチレーション液(Ultimate Gold MB、PerkinElmer)を各ウェルに加え、フィルターをMicrobeta2デバイスにおいて分析した。非特異的シグナルは、過剰なコールド試験リガンド(2μM)を含む試料を用いて決定され、特異的結合は、総シグナルから非特異的シグナルを差し引くことによって計算された。全ての測定は、少なくとも2回の技術的反復実験で行った。Prism V7(GraphPad)を1サイト特異的結合で使用して非線形回帰によってK
d値を計算して、11.8nMのK
dが得られた(
図2A)。同じ試験リガンドを使用して、独立したADの脳由来のタウ沈着物/凝集体についての非常に類似した結合親和性値が2つの方法を使用して得られたことが分かった(11.8nM(
図2A)対7.9nM(
図2B、実施例5に記載される))。この結果は、マイクロ放射性結合アッセイ法が、古典的なフィルターベースの放射性結合アッセイの頑健な代替手段であることを実証している。
【0060】
実施例7:マイクロ放射性結合アッセイによるa-syn及びTDP-43に対するK
dの決定
実施例5に記載される方法をまた使用して、試験リガンド(化合物2(PCT出願の国際公開第2019/234243号を参照)及び化合物3)のタンパク質標的a-syn(化合物2及び化合物3について)及びTDP-43(化合物3について)に対する結合定数(K
d)を決定した。FTDの脳から単離されたTDP-43が富化された画分、又はPDの脳から単離されたa-synが富化された画分を、漸増濃度(それぞれ1nM~300nM又は1nM~30nM)の放射性標識[
3H]化合物3とともに2μMの一定量のコールド化合物3を含めて又は含めずにインキュベートした。同様に、PDの脳から単離されたa-synが富化された画分を、漸増濃度(1nM~30nM)の放射性標識[
3H]化合物2とともに2μMの一定量のコールド化合物2を含めて又は含めずにインキュベートした。一定の過剰濃度のコールド化合物2(2μM)又はコールド化合物3(2μM)を使用して、非特異的結合を決定した。化合物3についてはa-synタンパク質及びTDP-43タンパク質に対してそれぞれ10.8nM(
図3A)及び138nM(
図3C)のK
d値が決定され、化合物2についてはa-synに対して7.8nMのK
dが決定された(
図3B)。これらの結果は、生体組織中に少ない存在量で又は比較的少ない存在量で存在することが知られている幾つかの標的タンパク質に対して、記載されたマイクロ放射性結合アッセイによってK
d値を決定することができることを示している。例えば、病理学的a-syn及び病理学的TDP-43は、罹患したヒトの脳において病理学的タウよりも少ない存在量で存在すると考えられる。
【0061】
実施例8:試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定するためのマイクロ放射性結合アッセイの使用
マイクロ放射性結合アッセイを使用して、ADの脳由来のタウ沈着物/凝集体及びPDの脳由来のa-syn沈着物/凝集体に対する試験リガンドの阻害定数(Ki)を決定した。実施例1(工程a及び工程b)及び実施例2(工程a)に記載されるように、タンパク質を調製し、コーティングされたスライドガラス上にスポッティングした。
【0062】
3nMのトリチウム化された試験リガンド(既知のタウ結合体)を、スポッティングされたタウ堆積物/凝集体及び10pM~3μMの濃度のコールド試験リガンドとともにインキュベートした(
図4A)。最大シグナル(100%の結合)はコールドツールリガンドの不存在下で得られたのに対して、最大の置換は3μMのコールドツールリガンドの存在下で得られた。Ki値は、Prism V7(GraphPad)を使用して1サイト-Fit Kiによって計算された。試験リガンドについてのKi値は1nMで測定され、R
2=0.97の良好なフィッティングを有した。
【0063】
コールド化合物3を、50pM~2μM(又は10nM~3μM)の濃度範囲でスポッティングされたa-syn沈着物/凝集体とともに40nMの[
3H]化合物3と一緒にインキュベートした。最大シグナル(100%の結合)はコールド化合物3の不存在下で得られたのに対して、最大の置換は2μMのコールド化合物3の存在下で得られた。化合物3についてのKi値は41nMで測定され、良好なフィットを有した(
図4B)。
【0064】
これらの結果は、生体組織中に少ない存在量で又は比較的少ない存在量で存在することが知られている幾つかのタンパク質標的において、記載されたマイクロ放射性結合アッセイによって化合物の自己置換能力(計算されたKiによって決定される)を決定することができることを示している。
【0065】
実施例9:ライブラリー化合物の活性を順位付けするマイクロ放射性結合アッセイ
試験化合物を、PD患者の脳由来のa-syn沈着物/凝集体への[3H]化合物3(放射性標識ツールリガンド)の結合と競合するそれらの強さについてスクリーニングした。試験化合物の置換をスクリーニング形式で評価して、放射性標識ツールリガンドを置換するそれらの能力に基づいて試験化合物を順位付け(計算されたKi値に基づく順位付け)することができる。タンパク質試料の調製及びスポッティングは、上記の実施例1の(b)及び実施例2の(a)に記載されるように実施した。
【0066】
試験化合物を2回の独立した実験において2連で試験したところ、
図5A~
図5Cに示される平均値±SEMを有した。放射性標識ツールリガンドとして40nMの[
3H]化合物3を使用して、試験化合物を50pM~2μMの範囲の濃度でスクリーニングした。代表的な競合曲線は以下の化合物について示されている:化合物4(
図5A、Ki 13nM、強い結合体)、化合物5(
図5B、Ki 37nM、中程度の結合体)、及び化合物6(
図5C、Ki 147nM、弱い結合体)。まとめると、これらの結果は、記載されたマイクロ放射性結合アッセイを使用して、スクリーニング形式において試験化合物の置換能力(Ki)を測定することができ、これにより、計算されたKi値に従って、例えば最弱の結合体から最強の結合体までの、スクリーニングされた試験化合物の順位付けが可能となる。より低いKi値を示す試験化合物ほどより強い結合体と見なされ、試験されたタンパク質標的に対する潜在的なヒット化合物を表すこととなる。さらに、放射性標識ツールリガンドを置換する試験化合物の能力は、試験化合物が、放射性標識ツールリガンドのタンパク質結合部位と重複する部位でタンパク質標的に結合することを示している。
【0067】
本開示の態様を本明細書において示し、説明してきたが、そのような態様が単なる例として示されているにすぎないことは当業者には明らかであろう。ここで、当業者であれば、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変化、及び置き換えに想到するであろう。本明細書に記載される開示の態様に対する様々な代替が、本開示の実施において使用され得ることを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、本開示の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造物、並びにそれらの同等物は、それによって対象に含められることが意図される。
【0068】
参考文献
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【国際調査報告】