(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドに基づくEX VIVO細胞療法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20221129BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221129BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20221129BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221129BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221129BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20221129BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221129BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20221129BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221129BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20221129BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/10
C12N5/078
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61K35/17 Z
A61K35/545
A61K35/28
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520508
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2020077778
(87)【国際公開番号】W WO2021064235
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519125450
【氏名又は名称】セカルナ・ファーマシューティカルズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ヤシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト・クラール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB61
4C087BB64
4C087BB65
4C087MA56
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA06
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、細胞療法のための調製物における、単離された細胞内のターゲットRNAの発現を減少させるための方法であって、トランスフェクション手段を使用することなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドとターゲットRNAを含む単離された細胞をインキュベートする工程を含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、0日~21日の期間において、少なくとも一回、単離された細胞へと投与され、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ターゲットRNAとハイブリダイズしてターゲットRNAの転写を減少させ、ターゲットRNAまたはその組み合わせによりコードされるタンパク質の発現を、アンチセンスオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの日から8週まで減少させる、方法を参照する。本発明は、さらに、本発明の方法により得ることのできる単離された細胞及び単離された細胞を含む医薬組成物に関する。単離された細胞及び医薬組成物は、疾患を予防及び/又は処置する方法において使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞療法における使用のための調製物における、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、末梢血単核球(PBMC)、幹細胞、例えば造血幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞、B細胞並びにその組み合わせからなる群から選択される、単離された免疫細胞内のターゲットRNAの発現を減少させる方法であって、トランスフェクション手段を使用することなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドと、ターゲットRNAを含む単離された免疫細胞をインキュベートする工程を含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、0日~21日の期間において、少なくとも一回、単離された免疫細胞へと投与され、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ターゲットRNAとハイブリダイズしてターゲットRNAの転写を減少させ、ターゲットRNAの機能を減少させ、ターゲットRNA又はその組み合わせによりコードされるタンパク質の発現を、アンチセンスオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの日から8週まで減少させる方法。
【請求項2】
ターゲットRNAが、mRNA、pre-mRNA、lncRNA及び/又はmiRNAからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単離された免疫細胞が、免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前又は後に遺伝子トランスファー技術により遺伝的に改変される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
単離され遺伝的に改変された免疫細胞が、免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前又は後に増殖される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前及び/又は後に、単離された免疫細胞を精製する工程をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前及び/又は後に、単離された免疫細胞を濃縮する工程をさらに含み、任意に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは濃縮する工程の後に単離された免疫細胞に再度加えられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする時、免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前、免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートした後に、又はその組み合わせで、単離された免疫細胞を凍結保存する工程をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ターゲットRNAが、PD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞の効率及び/若しくは安全性に影響を与えるタンパク質をコードしており、又はターゲットRNAが、BID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞の増殖及び/若しくは生存に影響を与えるタンパク質をコードしている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、0日~20日、0日~19日、0日~18日、0日~17日、0日~16日、0日~15日、0日~14日、0日~13日、0日~12日、0日~11日、0日~10日、0日~9日、0日~8日、0日~7日、0日~6日、0日~5日、0日~4日、0日~3日、0日~2日又は0日~1日の期間において投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと又は10日ごとの期間で投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2以上のターゲットRNAとハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドが、同じ若しくは異なる期間で、同じ時点で、又は同じ若しくは異なる期間で、異なる時点で投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
疾患の予防及び/又は処置方法に使用するための単離された免疫細胞であって、単離された免疫細胞が、疾患に罹患した患者又は健康な対象に由来し、ターゲットRNAの発現を減少させるために請求項1から11のいずれか一項に記載の方法に従って、ターゲットRNAとハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドと共にex vivoインキュベーションでインキュベートされ、アンチセンスオリゴヌクレオチドとの単離された免疫細胞のインキュベーション後、単離された免疫細胞が、患者に再導入又は患者に導入される、単離された免疫細胞。
【請求項13】
請求項12に記載の細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
患者及び/又は健康な対象がヒト又は非ヒト動物である、請求項12に記載の免疫細胞又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
疾患が、ガン、自己免疫疾患、移植片対宿主病及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項12若しくは14に記載の免疫細胞、又は請求項13若しくは14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞療法における使用のための調製物における、単離された細胞内のターゲットRNAを減少させるex vivo法、本方法を介して得ることのできる単離された細胞及び単離された細胞を含む医薬組成物を参照する。単離された細胞及び医薬組成物は、疾患を予防及び/又は処置する方法において使用される。
【背景技術】
【0002】
細胞療法(cellular therapy又はcytotherapyとも呼ばれる)は、細胞物質が患者へ注入、接合又は移植される療法であり、すなわち、それは損傷を受けていない、生きている細胞に注入、接合又は移植される。細胞は、患者(自己細胞)又は臓器提供者(同種異系細胞)に由来し得る。細胞療法において使用される細胞は、異なる細胞型に変化する可能性により分類され得る。多能性(pluripotent)の細胞は体内の任意の細胞型へ変化することができ、多分化性(multipotent)の細胞は他の細胞型に変化することができるが、それらのレパートリーは多能性(pluripotent)の細胞と比較してより限られている。分化した細胞又は初代細胞は、固定型である。投与される細胞型は、処置に依存する。例えば、細胞性免疫を介してガン細胞と戦うことのできるT細胞は、免疫療法の治療単位において注入され得る。細胞療法は、多数の器官において及び細胞送達(cell delivery)のいくつかのモードにより、数多くの臨床的適応で標的とされている。その結果、療法に含まれる作用の特異的機構は多岐にわたる。
【0003】
例えば、幹細胞又は前駆細胞の生着、分化及び破壊された組織の長期交換。この枠組において、多分化性又は単能性の細胞は、実験室で又は傷害部位に到達した後で(局所又は全身の投与を介して)、特異的な細胞型へ分化する。これらの細胞は、その後、傷害部位へと統合され、破壊された組織を交換し、そして器官又は組織の発達した機能を促進する。この一例は、心筋梗塞の後に心筋細胞を交換するための細胞の使用である。
【0004】
可溶性の因子、例えば傍分泌又は内分泌の様式で働くサイトカイン、ケモカイン及び成長因子を放出する能力を持つ細胞。これらの因子は、器官又は部位の自然治癒を促進する。送達された細胞(局所又は全身の投与を介して)は比較的短い期間(数日~数週間)生存することができ、その後、死滅する。これは、関連する治癒因子を自然に分泌する細胞、又は細胞に大量の特定の分子を放出させるエピジェネティックな変化若しくは遺伝子工学に供せられた細胞を含む。この例は、血管新生、抗炎症及び抗アポトーシスを促進する因子を分泌する細胞を含む。
【0005】
細胞、例えば免疫細胞、血液細胞又は皮膚細胞は、適切な条件が与えられた場合に通常ex vivoを再生することができる。これにより、分化した成体の免疫細胞は、細胞療法のために使用されることができる。細胞は、身体から取り去られ、混合した細胞集団から単離され、改変され、その後、身体に戻る前に増殖される。最近開発された細胞療法は、疾患を引き起こす細胞を殺すために免疫能力が増加するように遺伝的に改変された、成体の自己再生Tリンパ球の移植を含む。
【0006】
細胞療法の潜在的な応用は、ガン、自己免疫疾患、泌尿器系の問題及び感染症の処置、関節における破壊された軟骨の再建、脊椎損傷の修復、弱まった免疫システムの発達又は神経疾患を患う患者の介助を含む。
【0007】
欠点は、不満足な活性であり、それ故の、異なる細胞療法の不満足な結果であり、そして、細胞療法が、しばしば熟練した専門家によって管理されなければならない深刻な副作用―それらのいくつかは、生命を脅かす―を引き起こすことである。これらの副作用は、例えば改変された細胞が急速に増殖し、サイトカインと呼ばれる物質を大量に放出するときに生じる。深刻なサイトカイン放出症候群は、生命を脅かす多数の器官の損傷及び脳腫脹をもたらし得る。したがって、細胞療法に使用される改変された細胞は、サイトカイン放出症候群、神経学的毒性、「オン標的/オフ腫瘍(on target/off tumor)」認識、及びアナフィラキシーを含む、予期する及び予期しない毒性を引き出す能力を有する。
【0008】
したがって、低減した副作用を持ち、及び少なくとも既存の細胞療法の効率又は高い効率を有する細胞療法を開発する緊急の必要性がある。本発明は、この必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、細胞療法のための調製物における、単離された細胞内のターゲットRNAの発現を減少させるための方法であって、トランスフェクション手段を使用することなく、アンチセンスオリゴヌクレオチドとターゲットRNAを含む単離された細胞をインキュベートする工程を含み、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、0日~21日の期間において、少なくとも一回、単離された細胞へと投与され、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ターゲットRNAとハイブリダイズしてターゲットRNAの転写を減少させ、ターゲットRNAの転写を減少させ、ターゲットRNAまたはその組み合わせによりコードされるタンパク質の発現を、アンチセンスオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの日から8週まで減少させる、方法を参照する。ターゲットRNAは、例えばmRNA、pre-mRNA、lncRNA、及び/又はmiRNAからなる群から選択される。
【0010】
本発明の細胞は、例えば免疫細胞である。免疫細胞は、例えばT細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、末梢血単核球(PBMC)、幹細胞、例えば造血幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞、B細胞並びにその組み合わせからなる群から選択される。あるいは又はさらに、免疫細胞はT細胞であり、ターゲットRNAは例えばPD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞の効率並びに/若しくは安全性に影響を与えるタンパク質をコードしており、又はターゲットRNAは例えばBID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞の増殖並びに/若しくは生存に影響を与えるタンパク質をコードしている。
【0011】
単離された細胞は、例えば細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前又は後に遺伝子トランスファー技術により遺伝的に改変される。任意に、単離され遺伝的に改変された細胞、例えば免疫細胞は、細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前又は後に増殖される。
【0012】
本発明の細胞療法における使用のための調製物における、単離された細胞内のターゲットRNAの発現を減少させる方法は、さらに任意に、細胞、例えば免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前及び/又は後に、単離された細胞を精製する工程を含む。
【0013】
任意に、方法は、免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前及び/又は後に、単離された細胞、例えば免疫細胞を濃縮する工程をさらに含み、任意に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは単離された免疫細胞に加えられる。
【0014】
任意に、方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする時、免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする前、細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートした後に、又はその組み合わせで、単離された細胞、例えば免疫細胞を凍結保存する工程をさらに含む。
【0015】
細胞療法における使用のための調製物における、単離された細胞内のターゲットRNAの発現を減少させる方法において使用される単離された免疫細胞の場合、細胞は、T細胞、又は樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、末梢血単核球(PBMC)、幹細胞、例えば造血幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞、B細胞並びにその組み合わせを含む群から選択される。
【0016】
ターゲットRNAは、PD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞、例えば樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、末梢血単核球(PBMC)、幹細胞、例えば造血幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞、B細胞並びにその組み合わせの効率並びに/又は安全性に影響を与えるタンパク質をコードしており、又はターゲットRNAは、例えばBID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその組み合わせからなる群から選択される免疫細胞の増殖並びに/若しくは生存に影響を与えるタンパク質をコードしている。
【0017】
本発明の方法において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば0日~21日、0日~20日、0日~19日、0日~18日、0日~17日、0日~16日、0日~15日、0日~14日、0日~13日、0日~12日、0日~11日、0日~10日、0日~9日、0日~8日、0日~7日、0日~6日、0日~5日、0日~4日、0日~3日、0日~2日又は0日~1日の期間において投与される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと又は10日ごとの期間で投与される。
【0018】
任意に、本発明の方法において、例えば同じ期間で同時に、又は同じ若しくは異なる期間の異なる時点で投与されるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば2以上のターゲットRNAとハイブリダイズする。
【0019】
本発明は、疾患の予防及び/又は処置方法に使用するための、細胞、例えば単離された免疫細胞にさらに関し、単離された免疫細胞は、疾患に罹患した患者又は健康な対象に由来し、ターゲットRNAの発現を減少させるために本発明の方法に従ってターゲットRNAとハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドと共にex vivoでインキュベートされ、アンチセンスオリゴヌクレオチドとの単離された免疫細胞のインキュベーション後、単離された免疫細胞は、患者に再導入又は患者に導入される。従って、免疫細胞は、本発明の方法により入手することができ、疾患を予防及び/又は処置する方法において使用される。
【0020】
加えて、本発明は、疾患を予防及び/又は処置する方法において使用するための、本発明の単離された免疫細胞並びに薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を対象とする。疾患に罹患した患者及び/又は健康な対象は、例えばヒト又は非ヒト動物である。疾患は、例えば、ガン、自己免疫疾患、移植片対宿主病及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
本明細書で引用又は参照される全ての文献(「本明細書引用文献」)及び本明細書引用文献において引用又は参照される全ての文献は、本明細書で言及される任意の製品のための又は本明細書に参照によって導入された任意の文献における任意の製造業者の使用説明書、説明書、製品仕様及び製品シートと共に、参照によって本明細書に導入され、本発明の実施において使用されることができる。より詳細には、全ての参照文献は、それぞれの文献が詳細に及び単独に参照により導入されるよう示されるように、同程度まで参照によって導入される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、単離された細胞の初期の播種密度に非依存的な、強力なターゲットRNAのノックダウンを示す。
【
図2】
図2は、過去のアンチセンスオリゴヌクレオチドインキュベーションに基づいた凍結保存後のターゲットRNAの発現減少を示す。
【
図3】
図3は、樹状細胞における2つの異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたパラレルなインキュベーションを介した異なるターゲットRNAの発現のパラレルな減少を示す。
【
図4】
図4Aは、異なるターゲットRNAの発現のパラレルな減少を示し、
図4Bは、T細胞における2つの異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたパラレルなインキュベーションを介した異なるタンパク質の発現のパラレルな減少を示す。
【
図5】
図5は、ターゲット特異的なsiRNAと比較した際の、T細胞におけるターゲット特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの、優れたターゲットRNAの減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、細胞療法における使用のための調製物における、単離された細胞、例えば免疫細胞内のターゲットRNAの発現を減少させる方法に関する。方法は、トランスフェクション手段、例えばジムノティックトランスフェクション(gymnotic transfection)を使用することなく、ターゲットRNAを含む単離された細胞、例えば免疫細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドとインキュベートする工程を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、0日~21日の期間において、少なくとも一回、単離された細胞、例えば免疫細胞へと投与される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ターゲットRNAとハイブリダイズしてターゲットRNAの転写を減少させ、ターゲットRNA又はその組み合わせによりコードされるタンパク質の発現を、アンチセンスオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの日から8週まで減少させる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、ターゲットRNAの転写、機能及び/又は発現を永続的にブロックするわけではないので、RNAの転写、機能及び/又は発現の永続的なブロックに基づく副作用は、回避される。加えて、トランスフェクション手段を使用しないアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、細胞へのストレスを著しく減少させ、他のトランスフェクション手段により引き起こされる副作用を減少させ又は回避すらさせる。
【0024】
以下では、本発明の要素は、より詳細に記載される。これらの要素は、特定の実施形態により記載され、しかしながら、それらは任意の様式及び任意の数で組み合わされ、さらなる実施形態を生み出すことができると理解されるべきである。多様に記載された実施例及び実施形態は、本発明を明確に記載された実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。本記載は、明確に記載された実施形態をあらゆる公開された要素と組み合わせた実施形態をサポートし、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願における全ての記載された要素の任意の変形及び組み合わせは、文脈上他を意味する場合を除いて、本出願の記載により公開されたと考えられるべきである。
【0025】
本明細書及び請求項を通して、文脈上他が要求される場合を除いて、単語「含む(comprise)」、並びに派生型、例えば「comprises」及び「comprising」は、述べられた要素、整数若しくは工程又は要素、整数若しくは工程の群を含有するが、任意の他の要素、整数若しくは工程又は要素、整数若しくは工程の群を除外するわけではないことを意味すると理解される。本発明を記載する文脈において(特に請求項の文脈において)使用される用語「a」及び「an」及び「the」及び類似した言及は、本明細書で他を意味する場合又は文脈上明確に矛盾する場合を除いて、単数及び複数の両方を含めると理解されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、範囲に含まれるそれぞれの個別の値を個々に言及する簡単な方法としての役目を果たすことを単に意図される。本明細書で他を示している場合を除いて、それぞれの個別の値は、それが個別に本明細書において列挙されるかのように明細書に導入される。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で他を意味する場合又は文脈上明確に矛盾する場合を除いて、任意の適した順序で行われることができる。本明細書において提供される任意の及び全ての例、すなわち例示的な言語(例えば、「such as」、「for example」)の使用は、本発明をより良く描写することを意図され、他で主張される発明の範囲を制限することは意図されていない。本明細書における言語は、本発明の実施に必要な、請求項に示されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0026】
本発明の細胞は、例えば免疫細胞、幹細胞、多能性幹細胞、例えば人工多能性幹細胞、胚幹細胞、皮膚の幹細胞、臍帯血幹細胞、間葉幹細胞、神経幹細胞又はその組み合わせである。免疫細胞は、例えばT細胞又は樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、末梢血単核球(PBMC)、幹細胞、例えば造血幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞、B細胞並びにその組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
T細胞が選択される場合、T細胞は、例えばPD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体、BID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその任意の組み合わせからなる群から選択される、一つ又はそれ以上の因子を発現する。T細胞が選択される場合、ターゲットRNAは、例えば、PD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体及びその組み合わせからなる群から選択される、T細胞の効率並びに/若しくは安全性に影響を与えるタンパク質をコードしており、又はBID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその組み合わせからなる群から選択される、T細胞の増殖並びに/若しくは生存に影響を与えるタンパク質をコードしている。
【0028】
免疫細胞、例えばT細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、末梢血単核球、幹細胞、例えば造血幹細胞及び/又は人工多能性幹細胞、B細胞は、抗原特異的な受容体、例えばキメラ抗原受容体又は免疫細胞受容体、例えばT細胞受容体を発現するために例えば遺伝的に改変される。それらの細胞は、抗原特異的な受容体を介して腫瘍細胞の表面の抗原を認識することによりそれらの抗腫瘍機能を引き出すことができ、免疫細胞、例えばT細胞の活性化につながる。活性化された免疫細胞、例えばT細胞は、腫瘍細胞の破壊をもたらすサイトカイン及び毒性分子を例えば放出する。
【0029】
本発明に従ってターゲットRNAの発現を減少させることは、完全な阻害までの様々な量で、ターゲットRNAの転写、機能及び/又は発現を減少させることを意味する。細胞における転写、機能及び/又は発現レベルは、例えば、処置、すなわちオリゴヌクレオチドの投与前、及び処置後に、ターゲットRNAの転写、機能及び/又は発現レベルを測定すること及び比較することにより決定される。
【0030】
ターゲットRNAは、例えばmRNA、pre-mRNA、lncRNA及び/又はmiRNAである。オリゴヌクレオチドは、ターゲットRNAの特定の配列とハイブリダイズし、この配列を構成する又は含むターゲットRNAの転写、機能及び/又は発現を減少させる。ターゲットRNAは、例えば疾患の原因及び/又は維持に直接的又は間接的に関与する。ターゲットRNAは、例えば直接的又は間接的に、増殖の増加、疲弊の減少、より速い細胞成長、代謝活性の増加、機能性の改善、免疫調節性効果の改善及び効率の増加及び/又はセクレトームの効能の増加に影響を与える。本発明の方法は、細胞、例えば免疫細胞におけるターゲットRNA量の減少をもたらす。
【0031】
lncRNAは、例えばシグナル、デコイ、スキャフォールド、ガイド、エンハンサーRNA及び短いペプチドとしても機能することができる。シグナルlncRNAの主要な機能は、例えば多様な刺激に対する反応における転写を調節する分子シグナルとして働くことである。デコイlncRNAは、例えば「デコイ」結合部位を提示することにより調節因子の能力を制限する。lncRNAは、転写因子、触媒タンパク質、より大きなクロマチンを改変する複合体のサブユニット及びmiRNAを含む調節因子を隔離することにより転写を調節し、それによってそれらの効能を減少させる。lncRNAのスキャフォールドクラスの転写産物は、複合成分複合体、例えばリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の集合のプラットフォームを提供することにより、例えば構造的な役割を果たす。ガイドlncRNAは、RNPと相互作用し、それらを例えば特定のターゲット遺伝子に移動させる。これらのガイドlncRNAは、例えばRNPの適切な局在に必要である。エンハンサーRNA(eRNAs)は、エンハンサー領域から産生され、例えば、「クロマチン相互作用」として知られているDNAの3次元(3D)の組織に影響を与える。加えて、lncRNAは、例えば短い調節ペプチドをコードする。
【0032】
ターゲットRNAは、PD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞の効率並びに/若しくは安全性に影響を与えるタンパク質を例えばコードしており、又はBID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその組み合わせからなる群から選択される、免疫細胞の増殖並びに/若しくは生存に影響を与えるタンパク質をコードしている。
【0033】
オリゴヌクレオチドは、直接的及び/又は間接的な効果を持つ:それは、対象とする因子、例えばPD-1、TIGIT、TIM-3、LAG-3、TGFBR、CD39、CD73、2B4、BTLA、VISTA、CD304、PQR-prot、Chop、XBP1、PERK、FOXP3、GMCSF、IFNg、TNFa、TGFb、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、IL-17、IL-9、STAT3、IL-6受容体、BID、BIM、BAD、NOXA、PUMA、BAX、BAK、BOK、BCL-rambo、BCL-Xs、Hrk、Blk、BMf、p53及びその組み合わせを発現するターゲットRNAとハイブリダイズし(直接的な効果)、並びに/又はそれは、対象とする因子に影響を与えている、例えば阻害若しくは活性化している他の因子のターゲットRNAとハイブリダイズする(間接的な効果)。
【0034】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA又はアプタマーである。オリゴヌクレオチドは、例えば一つ又はそれ以上の修飾、例えば架橋されたヌクレオチド、例えばロックされた核酸(LNA、例えば2',4'-LNA)、cET、ENA、2'フルオロ修飾ヌクレオチド、2'Oメチル修飾ヌクレオチド、モルフォリノ又はその組み合わせを含む。
【0035】
単離された細胞におけるターゲットRNAの低減は、例えば、単離された細胞の、及び細胞における、より高い増殖、より少ない疲弊、より速い成長、より効能のあるセクレトーム、より高い代謝活性、より良い機能性、改善した免疫調節性効果、より小さい副作用、好ましいサイトカインプロファイル及び/又はより高い効率それぞれの原因となる。
【0036】
本発明の方法において使用される細胞は、例えばヒト又は非ヒト動物から単離される。ヒト動物は、例えば任意の遺伝的背景を持つヒトである;非ヒト動物は、任意の遺伝的背景を持つ、哺乳類、例えばウマ、ウシ、ブタ、ラム、ネコ、イヌ、モルモット、ハムスターなど;魚、例えばトラウト、サーモン、ザンダー;鳥、例えばグース、ダック、オーストリッチなどである。
【0037】
単離された細胞は、1)(生)化学的方法によるトランスフェクション、2)物理的方法によるトランスフェクション及び3)ウイルス媒介のトランスダクションを含む遺伝子トランスファー技術により任意に遺伝的に改変される。(生)化学的方法は、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランを用いたトランスフェクション又はリポフェクションである;物理的方法は、例えばエレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、パーティクルボンバードメントによるトランスフェクション又は超音波によるトランスフェクションである;ウイルス媒介のトランスダクションは、例えば高レベルの一過性発現を伴う短期間の感染のためのアデノウイルス、長期間の発現のためのヘルペスウイルス、宿主細胞ゲノムへのDNAの安定的な融合のためのレトロウイルスを使用する。遺伝的改変に続き、細胞は増殖される。
【0038】
単離された細胞は、例えば、遺伝的改変の前若しくは後及び/又は遺伝的に改変された細胞の増殖の前若しくは後に、オリゴヌクレオチドとインキュベートされる。任意に、単離された細胞は、例えば一つ又はそれ以上の洗浄工程により、オリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前及び/又は後に精製される。
【0039】
本発明の方法は、任意に濃縮工程を含み、単離された細胞は、オリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前及び/又は後に当該技術分野の任意の濃縮方法によって濃縮される。オリゴヌクレオチドは、例えば、濃縮工程の後に、単離された細胞に再度投与される。
【0040】
さらに、単離された細胞は、例えば、オリゴヌクレオチドとインキュベートされる時、オリゴヌクレオチドとのインキュベーション前及び/若しくはオリゴヌクレオチドとのインキュベーション後、任意の精製工程の後、任意の濃縮工程又はその組み合わせの後に、凍結保存される。凍結保存された単離された細胞、例えば免疫細胞は、驚くべきことに、ターゲットRNAのアンチセンスオリゴヌクレオチド媒介ノックダウン効能を維持する。ターゲットRNAの転写及び/若しくは翻訳の減少又は増加において、並びに/又はターゲットRNAの低減において、凍結保存した単離された細胞の効能と凍結保存していない単離された細胞の効能とは、非常に同等であった。
【0041】
本発明に従った単離は、ソース、例えば血液由来の免疫細胞、骨髄若しくは臍の緒の血液由来の幹細胞等から細胞を得ること、及び/又は過去に単離された細胞若しくは細胞集団由来の細胞の亜集団を得ることを意味する。
【0042】
本発明に従った精製は、例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)等によって、望ましくない物質、例えば細胞外の物質から単離された細胞を除くことを意味する。
【0043】
本発明の方法は、任意に活性化工程を含み、単離された細胞は、当該技術分野の任意の活性化方法、例えばT細胞の表面のCD3若しくはCD23に特異的なモノクローナル抗体を使用して細胞を刺激すること、又はオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前及び/若しくは後にCD40リガンド(CD40L)を使用してB細胞を刺激することにより、活性化される。オリゴヌクレオチドは、例えば、単離された細胞へ活性化工程の後に再度投与される。
【0044】
本発明の方法は、任意に増殖工程を含み、単離された細胞は、当該技術分野の任意の増殖方法、例えばオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前及び/若しくは後に間充織幹細胞へ塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)を加えること、又はオリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前及び/若しくは後にNK細胞へインターロイキン-2(IL-2)及び/若しくはインターロイキン-15(IL-15)を加えることにより、増殖される。
【0045】
本発明の方法は、任意に分化工程を含み、単離された細胞は、例えば、オリゴヌクレオチドとのインキュベーションの前及び/又は後に、細胞へインターロイキン-4(IL-4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を加えることにより、未熟DCへと分化される単球である。
【0046】
本発明の方法は、任意に成熟工程を含み、単離された細胞は、例えば未熟DCであり、それは例えば天然の未熟DC、又は、例えば上記の単球の分化工程に由来する、人工的な未熟DCであり、このような未熟DCは、Toll様受容体リガンド、例えばR848若しくはLPSを加えることにより、又はサイトカイン、例えばインターフェロンガンマ(IFN-γ)を加えることにより成熟DCへと成熟する。
【0047】
単離された細胞は、例えば0日~21日、0日~20日、0日~19日、0日~18日、0日~17日、0日~16日、0日~15日、0日~14日、0日~13日、0日~12日、0日~11日、0日~10日、0日~9日、0日~8日、0日~7日、0日~6日、0日~5日、0日~4日、0日~3日、0日~2日又は0日~1日の期間(インキュベーション期間)でオリゴヌクレオチドとインキュベーションされる。0日は、最初のオリゴヌクレオチドが単離された細胞に初めて加えられる時である。オリゴヌクレオチドは、例えば単離された細胞に一回のみ、又は期間中毎日、又は期間の2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと若しくは10日ごと、又は期間の最初及び最後の日のみに加えられ、投与パターンを示す。インキュベーション期間中、任意の投与パターンは組み合わせられることができ、例えば、インキュベーション期間は0日~9日であり、そこでは、オリゴヌクレオチドは、5日間毎日及び4日間2日ごとに投与される。前記期間後、オリゴヌクレオチドは、例えば単離された細胞から取り除かれる。オリゴヌクレオチドは、ナノモル又はマイクロモルの範囲、例えば0,1 nmolから1000 μmol、0,5 nmolから900 μmol、1 nmolから800 μmol、50 nmolから700 μmol、100 nmolから600 μmol、200 nmolから500 μmol、300 nmolから400 μmol、500 nmolから300 μmol、600 nmolから200 μmol、700 nmolから100 μmol又は800 nmolから50 μmolの範囲で単離された細胞へ加えられる。
【0048】
オリゴヌクレオチドは、インキュベーション期間の0日目から例えば少なくとも10週間、少なくとも8週間、少なくとも6週間又は少なくとも4週間、ターゲットRNAの発現を減少させる。ターゲットRNAの発現減少は、例えばオリゴヌクレオチドとのインキュベーション期間から独立している。ターゲットRNAの発現のこれらの減少期間は、上記のインキュベーション期間のそれぞれで到達する。
【0049】
単離された細胞は、例えば、一つ又はそれ以上、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10の異なるオリゴヌクレオチドとインキュベートされる。異なるオリゴヌクレオチドは、同期間で同時に、異なる期間で同時に、同期間で異なる時点に、又は異なる期間で異なる時点に、単離された細胞へと投与される。
【0050】
あるいは又はさらに、ターゲットRNAは、一つ又はそれ以上のターゲットRNAであり、すなわち同一のオリゴヌクレオチドは、例えば一つ以上のターゲットRNAの発現を減少させ、異なるオリゴヌクレオチドは、異なるターゲットRNAの発現を減少させ、例えば、パラレルに又は続いて、対象とする因子に直接的及び/又は間接的な影響を持つ。
【0051】
本発明は、本発明の方法により得ることのできる単離された細胞、例えば単離された免疫細胞をさらに対象とする。単離された、例えば免疫細胞は、例えば疾患を予防及び/又は処置する方法において使用される。細胞は、例えば疾患に罹患した患者又は健康な対象から単離され、単離された細胞は、本発明の方法に従って、ターゲットRNAとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとex vivoでインキュベートされる。単離された細胞、例えば単離された免疫細胞をオリゴヌクレオチドとインキュベートした後で、単離された細胞は、それが単離された患者へ再導入される。あるいは、健康な対象から単離され、本発明の方法に従ってターゲットRNAとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとex vivoでインキュベートされる細胞は、患者へ導入される。疾患に罹患した患者は、オリゴヌクレオチド、例えば、増殖の増加、疲弊の減少、より速い細胞成長、代謝活性の増加、機能性の改善、免疫調節性効果の改善及び効率の増加及び/又はセクレトームの効能の増加に、例えば直接的又は間接的に影響を与えるRNAをターゲットとする、アンチセンスオリゴヌクレオチドにより処置された細胞により、処置することができる。従って、本発明は、アロジェニックな細胞療法を含む。オリゴヌクレオチドは、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内及び/又は皮下で患者に再導入又は導入される。
【0052】
疾患を予防及び/又は処置する方法において使用される細胞、例えば免疫細胞は、患者、健康な対象又はその組み合わせから単離された細胞、例えば単離された免疫細胞を含み、前記細胞は、本発明に従ってターゲットRNAとハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドとex vivoでインキュベートされたものである。
【0053】
本発明は、さらに、本発明の単離された細胞及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、例えば疾患を予防及び/又は処置する方法において使用され、医薬組成物は、例えば静脈内、腹腔内、筋肉内又は皮下で投与される。単離された細胞又は医薬組成物の投与は、例えば注入又は注射に基づいている。
【0054】
疾患は、例えばガン、自己免疫疾患、移植片対宿主病、発作、脊椎損傷、骨疾患、加齢黄斑変性、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、糖尿病及びその組み合わせである。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本発明の異なる実施形態を例示するが、本発明は、これらの実施例に制限されない。以下の実験において、トランスフェクティング剤は全く使用されず、すなわち、ジムノティックな送達が行われる。
【0056】
[実施例1]:トランスフェクション試薬を使用しない、ヒトT細胞におけるノックダウン効率は、細胞播種密度から独立している。
【0057】
CD3+ヒトT細胞は、異なる密度、すなわち1ウェル当たり20,000、50,000、75,000及び100,000で、0日目に96ウェルのuボトムプレートにまかれ、5μMターゲット特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド又はコントロールオリゴヌクレオチドで、0日及び3日目に処置された。ターゲットタンパク質の発現は、フローサイトメトリーにより6日目に調べられた。強力なターゲットノックダウンは、最初の播種密度から独立して達成されることができた。結果は、
図1に示される。
【0058】
[実施例2]:ノックダウンは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの除去及び細胞の凍結保存後に、数日間に渡り持続する
【0059】
CD3+ヒトT細胞は、T25フラスコにまかれ、活性化され、モック(mock)、コントロールオリゴ又はターゲット特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドと共に6日間処置された。細胞の一部は、その後培養状態を維持し(「培養(Culture)」)、他の一部は、6日目に凍結保存された。凍結保存された細胞は、7日目に解凍され(「凍結/解凍(Cryo/Thaw)」)、条件「培養(Culture)」及び「凍結/解凍(Cryo/Thaw)」は、コントロールオリゴ又はターゲット特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加なしに再刺激された。ターゲットの発現は、再刺激の後8日目まで、タンパク質レベルについて経時的に測定された。強力なターゲットノックダウンは、全てのテストされた時点で測定されることができ、条件「培養(Culture)」及び「凍結/解凍(Cryo/Thaw)」の間には差異がなかった。それゆえに、アンチセンスオリゴヌクレオチド媒介のノックダウンは、
図2に示すように、低温凍結/解凍(cryopreservation/thawing)過程を通して持続する。
【0060】
[実施例3]:樹状細胞における2つのターゲットの同時ノックダウン
【0061】
CD14+単球は、成熟樹状細胞(DC)へと分化され、コントロールオリゴ、ターゲット1特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、ターゲット2特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド又はターゲット1及びターゲット2特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせのいずれかと処置された。ターゲットタンパク質の発現は、3日目に解析された。ターゲット1及び2の強力なターゲットノックダウンは、それぞれのモノセラピー環境において観察されることができた。際だって、両方のターゲットの強力なノックダウンは、細胞がターゲット1及びターゲット2特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドの組み合わせと処置された時に、達成されることができた。結果は、
図3に示される。
【0062】
[実施例4]:T細胞における2つのターゲットの同時ノックダウン
【0063】
T細胞は、0日目に、ターゲット3及びターゲット4の発現を誘導するために単離され、活性化された。コントロールオリゴヌクレオチド(neg1、最終濃度:5μM)、ターゲット3特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(最終濃度:5μM)、ターゲット4特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(最終濃度:5μM)、ターゲット3及びターゲット4特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(それぞれ最終濃度5μM)又はコントロールオリゴヌクレオチド(neg1、最終濃度:10μM)が0日目に細胞に添加された。ターゲットmRNA及びHPRT1 mRNA(ハウスキーパー)の発現は、製造業者の指示に従いQuantigene SinglePlex assay (ThermoFisher)により3日目に解析された。ターゲットの発現量は、HPRT1の発現値によりノーマライズされ、モック(mock)処理された細胞と比較した相対的な発現が計算された。
【0064】
ターゲットタンパク質を発現する細胞の割合は、フローサイトメトリーにより5日目に調べられた。モック(mock)処理された細胞と比較した際の、ターゲットタンパク質を発現する細胞の相対的な割合が示される。ターゲット3特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するターゲット3の強力なノックダウン及びターゲット4特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用するターゲット4の強力なノックダウンが観察された。際だって、ターゲット3及びターゲット4のアンチセンスオリゴヌクレオチドが組み合わせで細胞へ加えられたとき、両方のターゲットのノックダウンは、細胞がそれぞれのアンチセンスオリゴヌクレオチド単独で処理された条件に匹敵する効率で観察された。結果は、
図4A(mRNA)及び
図4B(タンパク質)に示される。
【0065】
[実施例5]:ターゲット3特異的なsiRNA及びターゲット3特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドの比較
【0066】
T細胞は、0日目に、ターゲット3の発現を誘導するために単離され、活性化された。コントロールオリゴヌクレオチド(neg1、最終濃度:5μM)又はターゲット3特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド(最終濃度:5μM)が、トランスフェクション試薬を使用することなく0日目に細胞へ加えられた。比較として、非ターゲットsiRNA(Ambion、最終濃度:30nM及び60nM)又はターゲット3特異的siRNA(Ambion、最終濃度:30nM及び60nM)のいずれかが、Lipofectamine 2000 (ThermoFisher)の標準的なトランスフェクションプロトコールを使用して、0日目にT細胞へトランスフェクトされた。ターゲット3タンパク質を発現する細胞の割合は、フローサイトメトリーにより5日目に調べられた。モック(mock)処理された細胞と比較した際の、ターゲット3タンパク質を発現する細胞の相対的な割合が示される。細胞がターゲット3特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理されたとき、強力なターゲット3のノックダウンが観察された。反対に、細胞が、両方の試験した濃度(30nM及び60nM)でターゲット3特異的なsiRNAとトランスフェクトされたとき、ターゲット3を発現する細胞の低減は無かった。結果は、
図5に示される。
【国際調査報告】