(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】フルオロポリマーハイブリッド複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 27/12 20060101AFI20221129BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20221129BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20221129BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08L27/12
H01B13/00 501Z
C08K3/00
C08K5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520586
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020078056
(87)【国際公開番号】W WO2021069469
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(71)【出願人】
【識別番号】506075182
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ トリノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バッテガッツォーレ, ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】フラッチェ, アルベールト
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ アー.
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD141
4J002DD087
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE197
4J002DJ016
4J002DK007
4J002DM007
4J002EU028
4J002EU038
4J002EV237
4J002EV267
4J002EY018
4J002GQ02
(57)【要約】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造方法、それから得られる高分子電解質、並びに様々な用途での、特に電気化学用途及び光電気化学用途での高分子電解質及びそれから得られる膜の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造方法であって、前記方法が、電解質溶液(ES)を含有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質膜を得るために以下の工程を含む、製造方法:
(i)
- 下記式(I)の金属化合物:
X
4-mAY
m (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む炭化水素基である)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液[溶液(ES)]と、
- 任意選択的に少なくとも1種の酸触媒と、
- 任意選択的に水性液体媒体[媒体(A)]と、
を含有する混合物を供給する工程;
(ii)≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(A及びYは上で定義した通りである)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[金属化合物(M)]を含有する固体混合物(SM)が得られるまで、工程(i)で得られた混合物を撹拌することにより、式(I)の金属化合物を部分的に加水分解及び/又は重縮合させる工程;
(iii)固体組成物(SC)を供給するために、工程(ii)で得られた前記固体混合物(SM)を、少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と混合する工程;
並びに
(iv)ポリマー(F)のモノマー(OH)のヒドロキシル基の少なくとも一部が前記化合物(M)の残りの加水分解性基Yの少なくとも一部と反応するように、工程(iii)で供給された前記固体組成物(SC)を溶融状態で加工する工程。
【請求項2】
工程(ii)において、工程(i)において供給される前記混合物が、24~48時間の範囲に含まれる時間、少なくとも30℃の温度で激しく撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)が、工程(ii)で得られた前記固体混合物(SM)を少なくとも60℃の温度で乾燥させる工程(ii
bis)をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(ii)が、工程(ii)又は工程(ii
bis)で得られた前記固体混合物を粉砕して微粉末形態の前記固体混合物(SM)を供給する工程(ii
ter)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質の製造方法であって、前記方法が、電解質溶液(ES)を含有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質膜を得るために以下の工程を含む、製造方法:
(a)
- 下記式(I)の金属化合物:
X
4-mAY
m (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む炭化水素基である)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液[溶液(ES)]と、
- 任意選択的に少なくとも1種の酸触媒と、
- 任意選択的に水性液体媒体[媒体(A)]と、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
を含有する混合物を供給する工程;
(b)≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(A及びYは上で定義した通りである)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[金属化合物(M)]と、上で定義した少なくとも1種のポリマー(F)とを含有する固体組成物(SCP)が得られるまで、工程(a)で供給された前記混合物を撹拌することにより、前記式(I)の金属化合物を部分的に加水分解及び/又は重縮合させる工程;
並びに
(c)ポリマー(F)の前記モノマー(OH)のヒドロキシル基の少なくとも一部が前記化合物(M)の残りの加水分解性基Yの少なくとも一部と反応するように、工程(b)で供給された固体組成物(SCP)を溶融状態で加工する工程。
【請求項6】
工程(b)が、工程(b)で得られた前記組成物を少なくとも60℃の温度で乾燥させる追加の工程(b
bis)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が、工程(b)又は工程(b
bis)で得られた前記固体混合物を粉砕して微粉末形態の前記固体混合物を供給する工程(b
ter)をさらに含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記式(I)の金属化合物が、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートからなる群から選択される非官能性化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属塩(S)が、LiI、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2(「LiTFSI」)、LiN(C
2F
5SO
2)
2、R
FがC
2F
5、C
4F
9、CF
3OCF
2CF
2であるM[N(CF
3SO
2)(R
FSO
2)]
n、LiAsF
6、LiC(CF
3SO
2)
3、Li
2S
n及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質溶液(ES)が、少なくとも1種のイオン液体(IL)とLiTFSIとからなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸触媒が、有機酸であり、好ましくはクエン酸又はギ酸である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記媒体(A)が水とエタノールとからなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマー(OH)が、式(V)の(メタ)アクリルモノマー又は式(VI)のビニルエーテルモノマー:
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3のそれぞれは互いに等しいか又は異なり、独立して水素原子又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、水素原子、又は少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)
からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー(F)が、
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
(b)任意選択的な、0.1~15モル%、好ましくは0.1~12モル%、より好ましくは0.1~10モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、及びこれらの混合物から選択されるフッ素化コモノマー、
(c)0.05~10モル%、好ましくは0.1~7.5モル%、より好ましくは0.2~3.0モル%の下記式(V)のモノマー(OH)
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3のそれぞれは互いに等しいか又は異なり、独立して水素原子又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法の工程(iii)に従って得られる固体組成物(SC)。
【請求項16】
請求項5に記載の方法の工程(b)に従って得られる固体組成物(SCP)。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって得られる高分子電解質膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月9日出願の欧州特許出願第19202147.5号に基づく優先権を主張するものである。この出願の全内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造方法、それから得られた高分子電解質、並びに様々な用途での、特に電気化学用途での及び光電気化学用途での前記高分子電解質及びそれから得られた膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノレベル又は分子レベルで無機固体が有機ポリマー中に分散している、有機-無機ポリマーハイブリッドは、それらの独特の特性のため、多大な科学的、技術的及び工業的関心を集めている。
【0004】
有機-無機ポリマーハイブリッド複合材料を作り出すために、金属アルコキシドを使用するゾルゲル法が、最も有用な且つ重要な手法である。
【0005】
予め形成された有機ポリマーの存在下で、金属アルコキシドの、特にアルコキシシラン(例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS))の加水分解及び重縮合の反応条件を適切に制御することによって、元の化合物と比べて特性が改善されたハイブリッドを得ることが可能である。ポリマーは、さもなければ脆い無機材料の靭性及び加工性を向上させることができ、ここで、無機ネットワークは、前記ハイブリッドの耐引掻性、機械的特性及び表面特性を向上させることができる。
【0006】
フルオロポリマーから、特にフッ化ビニリデンポリマーから出発するゾルゲル手法により製造されるハイブリッドは、当技術分野において公知である。
【0007】
例えば、国際公開第2011/121078号パンフレットには、フルオロポリマーのヒドロキシル基の少なくとも一部が、溶液中で、式X4-mAYm(Xは炭化水素基であり、Yは加水分解性基であり、AはSi、Ti、及びZrから選択される金属であり、mは1~4の整数である)の金属化合物の加水分解性基の少なくとも一部と反応する、フルオロポリマーハイブリッド有機-無機複合材料の製造方法が開示されている。この特許文献は、また、前記ハイブリッド有機/無機複合材料でできた膜が、次いで、溶媒(エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物)と電解質(LiPF6)とを含む電解質溶液で膨潤させられることも述べている。それにもかかわらず、一旦膜がキャストされると、それを再び電解質溶液で膨潤させることは容易な作業ではなく、その結果セパレータ中に実際に浸透している電解質溶液の最終量は比較的低く、その結果として、イオン伝導性も比較的低い。
【0008】
前記欠点に直面して、国際公開第2013/160240号パンフレットは、前記液体媒体を安定に含んで保持し、且つ傑出したイオン伝導性を有する自立型フルオロポリマー膜を提供するための、液体媒体の存在下でのフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料の製造を開示している。ハイブリッド有機/無機複合材料が、電気化学的及び光電気化学的デバイスにおける高分子電解質セパレータとしての使用のためである場合、それは、フルオロポリマー、式X4-mAYmの金属化合物、イオン液体、フルオロポリマーのための溶媒、及び1つの電解質塩を含む混合物を加水分解する及び/又は重縮合することを含む方法によって得られ得る。その後、得られた液体混合物は、溶剤キャスティング手順によって膜へと加工され、乾燥されることで膜が得られる。
【0009】
残念ながら、溶剤キャスティング技術による膜の作製は、工業的生産プロセスにおいて望ましくないNMP、DMA、及び類似のもののような有機溶媒の使用を必要とする。
【0010】
出願人は、今回、驚くべきことに、前記溶剤の使用及びその後の回収及び廃棄を回避するという追加の利点を伴って、ハイブリッド有機/無機複合材料に基づいた優れたイオン伝導性を示す高分子電解質を製造することが可能であり、また、前記高分子電解質が、溶剤を用いたキャスティングを含まないプロセスによって改善された原子均一性を有する膜へと適切に加工できることを見出した。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造方法であって、前記方法が、電解質溶液(ES)を含有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質膜を得るために以下の工程を含む、製造方法である:
(i)
- 下記式(I)の金属化合物:
X4-mAYm (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む炭化水素基である)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液[溶液(ES)]と、
- 任意選択的な少なくとも1種の酸触媒と、
- 任意選択的な水性液体媒体[媒体(A)]と、
を含有する混合物を供給する工程;
(ii)≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(A及びYは上で定義した通りである)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[金属化合物(M)]を含有する固体混合物(SM)が得られるまで、工程(i)で得られた混合物を撹拌することにより、式(I)の金属化合物を部分的に加水分解及び/又は重縮合させる工程;
(iii)固体組成物(SC)を得るために、工程(ii)で得られた固体混合物(SM)を、少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と混合する工程;
並びに
(iv)ポリマー(F)のモノマー(OH)のヒドロキシル基の少なくとも一部が前記化合物(M)の残りの加水分解性基Yの少なくとも一部と反応するように、工程(iii)で得られた固体組成物(SC)を溶融状態で加工する工程。
【0012】
別の目的では、本発明は、金属化合物(M)と少なくとも1種のポリマー(F)とを含有する、上で定義した方法の工程(iii)に従って得られる固体組成物(SC)を提供する。
【0013】
さらに別の目的では、本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の別の製造方法であって、前記方法が、電解質溶液(ES)を含有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質膜を得るために以下の工程を含む、製造方法である:
(a)
- 下記式(I)の金属化合物:
X4-mAYm (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む炭化水素基である)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液[溶液(ES)]と、
- 任意選択的な少なくとも1種の酸触媒と、
- 任意選択的な水性液体媒体[媒体(A)]と、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
を含有する混合物を供給する工程;
(b)≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(A及びYは上で定義した通りである)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[金属化合物(M)]と、上で定義した少なくとも1種のポリマー(F)とを含有する固体組成物(SCP)が得られるまで、工程(a)で得られた混合物を撹拌することにより、式(I)の金属化合物を部分的に加水分解及び/又は重縮合させる工程;
並びに
(c)ポリマー(F)のモノマー(OH)のヒドロキシル基の少なくとも一部が前記化合物(M)の残りの加水分解性基Yの少なくとも一部と反応するように、工程(b)で得られた固体組成物(SCP)を溶融状態で加工する工程。
【0014】
別の目的では、本発明は、金属化合物(M)と少なくとも1種のポリマー(F)とを含む、上で定義した方法の工程(b)に従って得られる固体組成物(SCP)を提供する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、上で定義した方法のいずれかによって得ることができる高分子電解質膜である。
【0016】
本発明の高分子電解質膜は、溶媒中のポリマーの溶液をキャストする工程を含まない方法によって得られるにもかかわらず、高い伝導性及びその構造の全体にわたって原子分布の均質性に恵まれており、こうして表面組成の著しい変動を回避し、予測できる及び効率的なイオン輸送経路を生み出すことが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される「固体混合物」又は「固体組成物」という用語は、固体形態である任意の組成物を指す。「固体混合物」又は「固体組成物」という用語は、固体マトリックスの隙間に閉じ込められた少量の液体を含む、半液体形態又は半固体形態の高粘度混合物である組成物も包含する。例えば、固体組成物は、粉末、顆粒、ペースト、ピューレ、湿潤混合物の形態であってよい。
【0018】
式(I)の金属化合物は、1つ以上の官能基をX基上とY基上のいずれかで、好ましくは少なくとも1つのX基上で含むことができる。
【0019】
式(I)の化合物が少なくとも1つの官能基を含む場合は、これは官能性化合物と呼ばれ、X基及びY基がいずれも官能基を含まない場合は、式(I)の化合物は非官能性化合物(I)と呼ばれる。
【0020】
官能性化合物は、有利には、官能基を有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を提供することができ、その結果ハイブリッド複合材料の化学的性質及び特性は本来のポリマー(F)及び本来の無機相よりもさらに改質される。
【0021】
官能基の非限定的な例としては、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハライドの形態で)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩又はハライドの形態で)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩、又はハライドの形態で)、チオール基、アミン基、4級アンモニウム基、エチレン系不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基を挙げることができる。
【0022】
官能基を有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜を得る目的のためには、式(I)の金属化合物の基Xのいずれか又はより多くの官能基であり、mが1~3の整数であり、その結果有利には各A原子が、本発明の方法の工程(ia)又は工程(ai)のいずれかにおける完全な加水分解及び/又は重縮合の後であっても官能基を含む基に結合していることが通常好ましい。
【0023】
好ましくは、式(I)の金属化合物におけるXは、任意選択的に1つ以上の官能基を含むC1~C18炭化水素基から選択される。より好ましくは、式(I)の金属化合物におけるXは、任意選択的に1つ以上の官能基を含むC1~C12炭化水素基である。
【0024】
親水性又はイオン伝導性に関する機能挙動を発揮することができるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質を製造することを目的とする場合、式(I)の金属化合物の官能基は、好ましくは、カルボン酸基(その酸、無水物、塩、又はハライド形態)、スルホン酸基(その酸、塩、又はハライド形態)、リン酸基(その酸、塩、又はハライド形態)、アミン基、及び第四級アンモニウム基から;最も好ましくは、カルボン酸基(その酸、無水物、塩、又はハライド形態)及びスルホン酸基(その酸、塩、又はハライド形態)から選択されるであろう。
【0025】
式(I)の金属化合物の加水分解性基Yの選択は、適切な条件下で-O-A≡結合を形成できるものであれば特に限定されず、前記加水分解性基は、特に、ハロゲン(特に塩素原子)、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基、又はヒドロキシル基であり得る。
【0026】
式(I)の官能性金属化合物の例は、特に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH
2=CHSi(OC
2H
4OCH
3)
3のビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
【化1】
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
【化2】
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
【化3】
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
【化4】
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
【化5】
のアミノエチルアミンプロピルメチルジメトキシシラン、式:
H
2NC
2H
4NHC
3H
6Si(OCH
3)
3
のアミノエチルアミンプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
【化6】
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、式HOSO
2-CH
2CH
2CH
2-Si(OH)
3の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸及びそのナトリウム塩、式:
【化7】
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式H
3C-C(O)NH-CH
2CH
2CH
2-Si(OCH
3)
3のアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)
X(OR)
Y(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCH
2CH
2NH
2であり、Rはアルキル基であり、x及びyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0027】
式(I)の非官能性金属化合物の例は、特に、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0028】
用語「金属塩(S)」は、導電性イオンを含む金属塩を意味することを本明細書では意図する。
【0029】
様々な金属塩が金属塩(S)として用いられ得る。選択される液体媒体(L)中で安定であり、可溶である金属塩が一般に使用される。
【0030】
好適な金属塩(S)の非限定的な例としては、とりわけ、MeI、Me(PF6)n、Me(BF4)n、Me(CIO4)n、Me(ビス(オキサラト)ボレート)n(「Me(BOB)n」)、MeCF3SO3、Me[N(CF3SO2)2]n、Me[N(C2F5SO2)2]n、RFがC2F5、C4F9、CF3OCF2CF2であるMe[N(CF3SO2)(RFSO2)]n、Me(AsF6)n、Me[C(CF3SO2)3]n、Me2Sn(式中、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K、Csであり、nは前記金属の原子価であり、典型的にはnは1又は2である)が挙げられる。
【0031】
好ましい金属塩(S)は、下記:LiI、LiPF6、LiBF4、LiClO4、リチウムビス(オキサラト)ボレート(「LiBOB」)、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2(「LiTFSI」)、LiN(C2F5SO2)2、RFがC2F5、C4F9、CF3OCF2CF2であるM[N(CF3SO2)(RFSO2)]n、LiAsF6、LiC(CF3SO2)3、Li2Sn及びこれらの組み合わせから選択される。
【0032】
「媒体(L)」という用語は、本明細書では、電気化学的に安定であり、金属塩(S)を可溶化して電解質溶液(ES)を得るのに適した任意の液体を意味することが意図されている。
【0033】
本発明の方法における使用に適した媒体(L)の非限定的な例としては、典型的には、イオン性液体(IL)、有機カーボネート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
好適な有機カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
本発明の第2の実施形態によれば、媒体(L)は、少なくとも1つのイオン液体及び任意選択的に少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0036】
本発明の目的のためには、用語「イオン液体」は、大気圧下で100℃よりも下の温度にて液体状態で正に帯電したカチオンと、負に帯電したアニオンとの組み合わせによって形成される化合物を意味することを意図する。
【0037】
イオン液体(IL)は、典型的には、プロトン性イオン液体(ILp)及び非プロトン性イオン液体(ILa)から選択される。
【0038】
「プロトン性イオン液体(ILp)」という用語は、本明細書ではカチオンが1つ以上のH+水素イオンを含むイオン液体を示すことを意図する。
【0039】
1つ以上のH+水素イオンを含むカチオンの非限定的な例としては、特に、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、又はピペリジニウム環が挙げられ、正電荷を有する窒素原子はH+水素イオンに結合している。
【0040】
「非プロトン性イオン液体(ILa)」という用語は、本明細書ではカチオンがH+水素イオンを含まないイオン液体を示すことを意図する。
【0041】
液体媒体は、典型的には、少なくとも1種のイオン液体(IL)と、任意選択的に、少なくとも1種の添加剤(A)とから本質的になり、ここで、前記イオン液体(IL)は、プロトン性イオン液体(ILp)、非プロトン性イオン液体(ILa)及びそれらの混合物から選択される。
【0042】
イオン液体(IL)は、典型的には、カチオンとしてスルホニウムイオン又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジウム環若しくはピペリジウム環(前記環は、特に1~8個の炭素原子を持った1つ以上のアルキル基によって、任意選択的に窒素原子上で置換されており、及び、特に1~30個の炭素原子を持った1つ以上のアルキル基によって、炭素原子上で置換されている)を含むものから選択される。
【0043】
本発明の意図内で、用語「アルキル基」は、飽和炭化水素鎖又は1個以上の二重結合を有する及び1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、さらにより有利には1~8個の炭素原子を含有するものを意味する。例として、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、へプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-へプチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシル基を挙げることができる。
【0044】
本発明の有利な実施形態では、イオン液体(IL)のカチオンは、以下のものから選択される:
- 以下の式(III)のピロリジニウム環:
【化8】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子であるか、又は1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、より有利には1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表す)、及び
- 以下の式(IV)のピペリジニウム環:
【化9】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ互いに独立して1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R
3~R
7は、それぞれ互いに独立して、水素原子であるか、又は1~30個の炭素原子、有利には1~18個の炭素原子、さらに有利には1~8個の炭素原子を有するアルキル基を表す)。
【0045】
本発明の特に有利な実施形態では、イオン液体(IL)のカチオンは以下から選択される:
【化10】
【0046】
イオン液体(IL)は、有利には、アニオンとしてハライドアニオン、パーフルオロアニオン、及びホウ酸塩から選択されるものを含むものから選択される。
【0047】
ハライドアニオンは、特に、以下のアニオン:クロリド、ブロミド、フルオリド、又はヨージドから選択される。
【0048】
本発明の特に有利な実施形態では、イオン液体(IL)のアニオンは以下から選択される:
- 式(SO
2CF
3)
2N
-のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF
6
-のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF
4
-のテトラフルオロボレート、及び
- 式
【化11】
のオキサロボレート。
【0049】
電解質溶液(ES)における媒体(L)は、1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0050】
1種以上の添加剤が液体媒体中に存在する場合、好適な添加剤の非限定的な例としては、とりわけ、液体媒体に可溶であるものが挙げられる。
【0051】
好ましい実施形態において、電解質溶液(ES)は、LiTFSI及び少なくとも1種のイオン液体(IL)からなる。
【0052】
電解質溶液(ES)における媒体(L)中のLiTFSIの濃度は、有利には少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0053】
電解質溶液(ES)における媒体(L)中のLiTFSIの濃度は、有利には最大でも3M、好ましくは最大でも2M、より好ましくは最大でも1Mである。
【0054】
電解質溶液(ES)は、典型的には、塩の濃度が有利には少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05M、且つ最大で1M、好ましくは0.75M、より好ましくは0.5Mである電解質溶液が得られるように、液体媒体(L)中に金属塩(S)を溶解することによって調製される。
【0055】
「少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]」という用語は、ポリマー(F)が、上で定義した1種以上のモノマー(FM)に由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「モノマー(FM)」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義された通りの1種以上のモノマー(FM)の両方を意味すると理解される。
【0056】
「少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]という用語は、ポリマー(F)が、上で定義した1種以上のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「モノマー(OH)」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義された通りの1種及び1種より多いモノマー(OH)の両方を意味すると理解される。
【0057】
モノマー(OH)は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むフッ素化モノマー及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む含水素モノマーからなる群から選択され得る。
【0058】
用語「フッ素化モノマー」は、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0059】
用語「含水素モノマー」は、少なくとも1個の水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することを本明細書では意図する。
【0060】
ポリマー(F)は、好ましくは少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の、上に定義されたような少なくとも1つのモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含む。
【0061】
ポリマー(F)は、好ましくは最大でも20モル%、より好ましくは最大でも15モル%、さらにより好ましくは最大でも10モル%、最も好ましくは最大でも3モル%の、上に定義されたような少なくとも1つのモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含む。
【0062】
ポリマー(F)中のモノマー(OH)繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけNMR法を挙げることができる。
【0063】
モノマー(OH)は、典型的には、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーからなる群から選択される。
【0064】
モノマー(OH)は、好ましくは、式(V)の(メタ)アクリルモノマー又は式(VI)のビニルエーテルモノマーからなる群から選択される:
【化12】
(式中、R
1、R
2及びR
3のそれぞれは互いに等しいか又は異なり、独立して水素原子又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、水素原子、又は少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)。
【0065】
モノマー(OH)は、さらに好ましくは、式(V-A)に従う:
【化13】
(式中、R’
1、R’
2及びR’
3は、水素原子であり、R’
OHは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)。
【0066】
好適なモノマー(OH)の非限定的な例としては、とりわけ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
モノマー(OH)は、より好ましくは:
- 式:
【化14】
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、
- 式:
【化15】
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、
及びそれらの混合物の中で選択される。
【0067】
モノマー(OH)は、さらに好ましくはHPA及び/又はHEAである。
【0068】
ポリマー(F)は、アモルファスであっても又は半結晶性であってもよい。
【0069】
用語「アモルファス」は、ASTM D-3418-08に従って測定される、5J/g未満の、好ましくは3J/g未満の、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0070】
用語「半結晶性」は、ASTM D3418-08に従って測定される、10~90J/gの、好ましくは30~60J/gの、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することを本明細書では意図する。
【0071】
ポリマー(F)は、好ましくは半結晶性である。
【0072】
ポリマー(F)は、とりわけ、N,N-ジメチルホルムアミド中で25℃で測定される、0.03~0.20l/gに含まれる、好ましくは0.05~0.18l/gに含まれる、より好ましくは0.08~0.15l/gに含まれる固有粘度を有する。
【0073】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ:
- テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロペンなどのC3~C8のパーフルオロオレフィン、
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレンなどのC2~C8の水素化フルオロオレフィン、
- 式CH2=CH-Rf0(式中、Rf0はC1~C6のパーフルオロアルキルである)を満たすパーフルオロアルキルエチレン、
- クロロトリフルオロエチレンなどの、クロロ-及び/又はブロモ及び/又はヨード-のC2~C6のフルオロオレフィン、
- 式CF2=CFORf1(式中、Rf1は例えばCF3、C2F5、C3F7などの、C1~C6のフルオロ-又はパーフルオロアルキルである)を満たす(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
- CF2=CFOX0の(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、X0はC1~C12のアルキルか、又はC1~C12のオキシアルキルか、又はパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピルなどの1つ以上のエーテル基を有するC1~C12の(パー)フルオロオキシアルキルである)、
- 式CF2=CFOCF2ORf2(式中、Rf2はC1~C6のフルオロ-若しくは例えばCF3やC2F5やC3F7であるパーフルオロアルキル、又は、-C2F5-O-CF3などの1つ以上のエーテル基を有するC1~C6の(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たす(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
- 式CF2=CFOY0(式中、Y0はC1~C12のアルキル若しくは(パー)フルオロアルキル、又は、C1~C12のオキシアルキル、又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C12の(パー)フルオロオキシアルキルであり、Y0は酸、酸ハライド、又は塩の形態でカルボン酸基又はスルホン酸基を含む)を満たす官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル、
- フルオロジオキソール、特にはパーフルオロジオキソール、が挙げられる。
【0074】
好適な含水素モノマーの非限定的な例には、特に、エチレンやプロピレンなどの非フッ素化モノマー、酢酸ビニルなどのビニルモノマー、メタクリル酸メチルやアクリル酸ブチルなどのアクリルモノマー、並びにスチレンやp-メチルスチレンなどのスチレンモノマーが含まれる。
【0075】
ポリマー(F)は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する、好ましくは25モル%超、好ましくは30モル%超、より好ましくは40モル%超の繰り返し単位を含む。
【0076】
ポリマー(F)は、好ましくは1モル%超、好ましくは5モル%超、より好ましくは10モル%超の、モノマー(OH)とは異なる少なくとも1種の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0077】
フッ素化モノマー(FM)は、1つ以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含むことができる。フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それはパー(ハロ)フルオロモノマーと称される。フッ素化モノマー(FM)が少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0078】
フッ素化モノマー(FM)が、水素含有フッ素化モノマー、例えばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどである場合、本発明の水素含有フルオロポリマーは、上で定義した少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位に加えて、前記水素含有フッ素化モノマーのみに由来する繰り返し単位を含むポリマーであってよく、又は上で定義した少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位、前記水素含有フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位、及び少なくとも1種の他のモノマーに由来する繰り返し単位を含むコポリマーのいずれであってもよい。
【0079】
フッ素化モノマー(FM)が、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどの、パー(ハロ)フルオロモノマーである場合、本発明の水素含有フルオロポリマーは、上で定義されたような少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位、前記パー(ハロ)フルオロモノマーに由来する繰り返し単位、及び前記モノマー(OH)とは異なる少なくとも1種の他の含水素モノマー、例えば、エチレン、プロピレン、ビニルエーテル、アクリルモノマーなどに由来する繰り返し単位を含むポリマーである。
【0080】
好ましいポリマー(F)は、フッ素化モノマー(FM)がフッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択されるものである。
【0081】
ポリマー(F)は、好ましくは:
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF);
(b)任意選択的な、0.1~15モル%、好ましくは0.1~12モル%、より好ましくは0.1~10モル%の、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、及びこれらの混合物から選択されるフッ素化コモノマー;
(c)0.05~10モル%、好ましくは0.1~7.5モル%、より好ましくは0.2~3.0モル%の、上で定義した式(V)のモノマー(OH);
を含む。
【0082】
酸触媒の選択は、特に限定されない。酸触媒は、典型的には、有機酸及び無機酸からなる群から選択される。
【0083】
酸触媒は、好ましくは、有機酸からなる群から選択される。
【0084】
非常に良好な結果は、クエン酸で及びギ酸で得られている。
【0085】
当業者は、本発明の方法で使用される酸触媒の量が、酸触媒自体の性質に大きく依存することを認識するであろう。
【0086】
したがって、本発明の方法で使用される酸触媒の量は、式(I)の金属化合物の総重量を基準として有利には少なくとも0.1重量%とすることができる。
【0087】
本発明の一実施形態では、本発明の方法の工程(i)で得られる混合物は少なくとも1種の酸触媒を含む。
【0088】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法の工程(i)で得られる混合物は酸触媒を含まない。
【0089】
本発明の方法において任意選択的に使用される酸触媒の量は、有利には、式(I)の金属化合物の総重量を基準として最大40重量%、好ましくは最大30重量%である。
【0090】
本発明の方法では、式(I)の金属化合物は、任意選択的に、水性媒体[媒体(A)]の存在下で部分的に加水分解及び/又は重縮合され得る。
【0091】
用語「水性媒体」は、本明細書では、大気圧下で20℃で液体状態にある、水を含む液体媒体を意味することが意図されている。
【0092】
水性媒体(A)は、より好ましくは水及び1種以上のアルコールからなる。媒体(A)に含まれるアルコールは、好ましくはエタノールである。
【0093】
本発明の方法の工程(i)において、混合物は、好ましくは以下に示される順序で、上で定義した以下の成分を反応容器に添加することによって便利に調製される:
- 電解質溶液[溶液(ES)]、
- 式(I)の金属化合物、
- 任意選択的な少なくとも1種の酸触媒、及び、
- 任意選択的な水性媒体[媒体(A)]。
【0094】
本発明の方法で使用される式(I)の金属化合物の量は、工程(i)の反応混合物が、前記混合物中の式(I)の金属化合物と電解質溶液(ES)との総重量を基準として有利には少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%の前記式(I)の金属化合物を含むような量である。
【0095】
本発明の一実施形態では、本発明の方法の工程(i)で提供される混合物は、水及び1種以上のアルコールを含む、好ましくはそれからなる媒体(A)を含む。
【0096】
工程(i)において提供される組成物中における媒体(A)の量は、特に決定的に重要であるわけではない。
【0097】
好ましい実施形態では、媒体(A)の量は、本発明の方法の工程(i)で提供される組成物の1~60重量%、好ましくは5~20重量%を占めるような量である。
【0098】
本発明の一実施形態では、本発明の方法の工程(i)で提供される混合物は、媒体(A)を全く含まない。
【0099】
本発明の方法のこの工程(ii)では、上で定義した式(I)の金属化合物の加水分解性基Yが部分的に加水分解及び/又は重縮合されて、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインと、1つ以上の残留加水分解性基Yとを含む金属化合物(M)が生成することが理解される。
【0100】
当業者によって認識されるように、一般に、加水分解及び/又は重縮合反応によって低分子量の副生成物が生成する(上で定義した式(I)の金属化合物の性質に応じて、特には水又はアルコールとなる可能性がある)。
【0101】
本発明の方法の工程(ii)では、工程(i)で提供される混合物は、中程度から激しい撹拌まで、好ましくは200~400rpmの範囲で、金属化合物(M)中の加水分解性基Yの少なくとも残留部分を維持しながらも固体混合物(SM)を得ることを可能にする程度の式(I)の金属化合物の加水分解及び/又は重縮合を得るのに十分な温度及び時間で、撹拌される。
【0102】
上で定義した式(I)の金属化合物の部分加水分解及び/又は重縮合は、室温で、又は100℃より低い温度で加熱すると適切に行われる。20℃~90℃、好ましくは20℃~70℃の温度が好ましいであろう。
【0103】
工程(ii)において、撹拌時間は特に限定されないが、通常は10分~50時間の範囲に含まれる時間である。
【0104】
本発明による好ましい実施形態では、工程(ii)は、工程(i)で得られた混合物を、24~48時間の範囲に含まれる時間、少なくとも30℃の温度で200~400rpmの範囲で激しく撹拌することによって行われる。
【0105】
本発明の好ましい実施形態では、工程(ii)における激しい撹拌は、30℃~70℃の範囲の温度で行われる。
【0106】
加水分解及び/若しくは重縮合反応中に形成された残留水及び/若しくはアルコール副生成物、並びに/又は残留水性液体媒体(A)は、工程(ii)の終わりに固体混合物(SM)中に依然として存在し得る。したがって、これらの残留液体を除去するために、追加の乾燥工程を含めることができる。
【0107】
したがって、本発明の一実施形態では、上で定義した方法の工程(ii)は、工程(ii)で得られた固体混合物(SM)を少なくとも60℃の温度で乾燥させる追加の工程(iibis)を含む。
【0108】
工程(iibis)が行われる雰囲気は、特に限定されない。例えば、工程(iibis)は、空気雰囲気又は窒素雰囲気中で行うことができる。
【0109】
乾燥工程(iibis)は、換気オーブン、流動床、回転炉、固定床などの中で適切に行うことができる。
【0110】
乾燥工程(iibis)は、60℃~90℃の範囲の温度で、2~50時間の範囲に含まれる時間で、適切に行われる。
【0111】
本発明による好ましい実施形態では、本発明の方法は、工程(ii)又は工程(iibis)で得られた固体混合物を粉砕して微粉末形態の固体混合物(SM)を得る追加の工程(iiter)を含む。
【0112】
固体混合物(SM)に関して、「微粉末」という用語は、本明細書では、平均粒子サイズ直径が100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、より好ましくは20ミクロン未満の粉末を意味することが意図されている。
【0113】
この追加の粉砕工程(iiter)では、当業者に公知の任意の粉砕方法及び装置を使用することができる。
【0114】
微粉末形態の固体混合物(SM)は、方法の以下の工程で使用される装置の取り扱い及び供給に関して利点を有する。
【0115】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、以下の工程を含む、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造方法を提供する:
(i)
- 下記式(I)の金属化合物:
X4-mAYm (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む炭化水素基である)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液[溶液(ES)]と、
- 任意選択的に少なくとも1種の酸触媒と、
- 任意選択的に水性液体媒体[媒体(A)]と、
を含有する混合物を供給する工程;
(ii)≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(A及びYは上で定義した通りである)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[金属化合物(M)]を含有する固体混合物(SM)が得られるまで、工程(i)で得られた混合物を撹拌することにより、式(I)の金属化合物を部分的に加水分解及び/又は重縮合させる工程;
(iibis)工程(ii)で得られた固体混合物(SM)を少なくとも60℃の温度で乾燥させる工程;
(iiter)工程(iibis)で得られた固体混合物(SM)を粉砕して、微粉末形態の固体混合物(SM)を得る工程。
【0116】
本発明の方法の工程(iii)では、工程(ii)に従って得られた固体混合物(SM)が、固体組成物(SC)を得るために、少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と混合される。
【0117】
本発明の方法の工程(iii)で得られる固体組成物(SC)は、好ましくは、固体組成物(SC)の総重量を基準として5重量%~99.99重量%、好ましくは10重量%~50重量%に含まれる量のポリマー(F)を含む。
【0118】
本発明の方法の工程(iii)では、粉末の混合を実現するために、任意の適切な装置を使用することができる。
【0119】
固体組成物(SC)は、将来の使用のために適切に貯蔵及び保管することができ、プロセス最適化の点で利点がある。
【0120】
本発明の方法の工程(iv)では、固体組成物(SC)は、ポリマーの融点(F)の融点と電解質溶液(ES)の性質に応じて、典型的には100℃~300℃、好ましくは120℃~250℃の温度での処理によって溶融される。
【0121】
前記工程(iv)では、ポリマー(F)及び金属化合物(M)は、典型的には溶融加工技術を使用して、溶融状態で反応される。
【0122】
本方法の工程(iv)において用いられる好ましい溶融加工技法は、一般に100℃~300℃、好ましくは120℃~250℃に含まれる温度での押出である。
【0123】
本発明の方法の工程(iv)における反応は、通常、二軸スクリュー押出機において行われる。過剰の反応熱は、一般にバレル壁を通って放熱される。
【0124】
本発明の方法のこの工程(iv)において、ポリマー(F)のヒドロキシル基の少なくとも一部と、金属化合物(M)]の残留加水分解性基Yの少なくとも一部とは、ポリマー(F)の鎖からなる有機ドメインと、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインとからなるフルオロポリマーハイブリッド複合材料を生成するように反応し、その結果電解質溶液(ES)を既に含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質が提供されることが理解される。
【0125】
本発明の方法から得られる高分子電解質中に含まれるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、有利には0.01~60重量%、好ましくは0.1~40重量%の、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインを含む。
【0126】
本発明の方法の工程(iv)では、電解質溶液(ES)を含有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質が押出機内で直接膜の形態で加工されて、高分子電解質膜が得られる。
【0127】
第2の目的では、本発明は、金属化合物(M)と少なくとも1種のポリマー(F)とを含む固体組成物(SC)を提供し、前記組成物は、上で定義した方法の工程(iii)に従って得られる。
【0128】
別の目的では、本発明は、上で定義したフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造のための代替の方法を提供する。
【0129】
本発明の方法の工程(a)において、混合物は、上で定義した以下の成分を、好ましくは本明細書で以下に示される順に反応容器に添加することによって便利に調製される:
- 電解質溶液[溶液(ES)]、
- 式(I)の金属化合物、
- 少なくとも1種のポリマー(F)、
- 任意選択的な少なくとも1種の酸触媒、及び
- 任意選択的な水性媒体[媒体(A)]。
【0130】
本発明の方法において使用される式(I)の金属化合物の量は、工程(a)の混合物が、前記混合物中の式(I)の金属化合物と電解質溶液(ES)との総重量を基準として有利には少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%の前記式(I)の金属化合物を含むような量である。
【0131】
本発明の一実施形態では、本発明の方法の工程(a)で提供される混合物は、水及び1種以上のアルコールを含む、好ましくはそれからなる媒体(A)を含む。
【0132】
工程(a)において提供される組成物中における媒体(A)の量は、特に決定的に重要であるわけではない。
【0133】
好ましい実施形態では、媒体(A)の量は、本発明の方法の工程(a)で提供される組成物の1~60重量%、好ましくは5~20重量%を占めるような量である。
【0134】
本発明の方法のこの工程(b)では、上で定義した式(I)の金属化合物の加水分解性基Yが部分的に加水分解及び/又は重縮合されて、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインと、1つ以上の残留加水分解性基Yとを含む金属化合物(M)が生成することが理解される。
【0135】
本発明の方法の工程(b)では、工程(a)で提供される混合物は、中程度から激しい撹拌まで、好ましくは200~400rpmの範囲で、金属化合物(M)中の加水分解性基Yの少なくとも残留部分を維持しながらも固体組成物(SCP)を得ることを可能にする程度の式(I)の金属化合物の加水分解及び/又は重縮合を得るのに十分な温度及び時間で、撹拌される。
【0136】
上で定義した式(I)の金属化合物の部分加水分解及び/又は重縮合は、室温で、又は100℃より低い温度で加熱すると適切に行われる。20℃~90℃、好ましくは20℃~70℃の温度が好ましいであろう。
【0137】
工程(b)において、撹拌時間は特に限定されないが、通常は10分~50時間の範囲に含まれる時間である。
【0138】
本発明による好ましい実施形態では、工程(b)は、有利には、工程(a)で得られた混合物を、24~48時間の範囲に含まれる時間、少なくとも30℃の温度で200~400rpmの範囲で激しく撹拌することによって行われる。
【0139】
本発明の好ましい実施形態では、工程(b)における激しい撹拌は、30℃~70℃の範囲の温度で行われる。
【0140】
加水分解及び/若しくは重縮合反応中に形成された残留水及び/若しくはアルコール副生成物、並びに/又は残留水性液体媒体(A)は、工程(b)の終わりに固体組成物(SCP)中に依然として存在し得る。したがって、これらの残留液体を除去するために、追加の乾燥工程を含めることができる。
【0141】
したがって、本発明の一実施形態では、上で定義した方法の工程(b)は、工程(b)で得られた固体組成物を少なくとも60℃の温度で乾燥させる追加の工程(bbis)を含む。
【0142】
工程(bbis)が行われる雰囲気は、特に限定されない。例えば、工程(bbis)は、空気雰囲気又は窒素雰囲気中で行うことができる。
【0143】
乾燥工程(bbis)は、換気オーブン、流動床、回転炉、固定床、又は市場で入手可能な任意の乾燥機(熱風、デシカント、圧縮空気、真空)などで適切の中で適切に行うことができる。
【0144】
乾燥工程(bbis)は、60℃~90℃の範囲の温度で、2~50時間の範囲に含まれる時間、適切に行われる。
【0145】
当業者は、工程(a)で提供される混合物から出発して固体組成物(SCP)を得るための工程(b)の合計時間が、前記混合物中に存在する液体の量に大きく依存することを認識するであろう。
【0146】
本発明による好ましい実施形態では、本発明の方法は、工程(b)又は工程(bbis)で得られた固体混合物を粉砕して微粉末形態の固体混合物を得る追加の工程(bter)を含む。
【0147】
固体混合物(SCP)に関して、「微粉末」という用語は、本明細書では、平均粒子サイズ直径が100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、より好ましくは20ミクロン未満の粉末を意味することが意図されている。
【0148】
この追加の粉砕工程(bter)では、当業者に公知の任意の粉砕方法及び装置を使用することができる。
【0149】
前記好ましい実施形態によれば、本発明は、以下の工程を含む、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料に基づく高分子電解質膜の製造方法を提供する:
(a)
- 下記式(I)の金属化合物:
X4-mAYm (I)
(式中、mは、1~4の整数であり、Aは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、Yは、アルコキシ基、アシルオキシ基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される加水分解性基であり、Xは、任意選択的に1つ以上の官能基を含む炭化水素基である)と、
- 少なくとも1種の金属塩[金属塩(S)]と液体媒体[媒体(L)]とを含む電解質溶液[溶液(ES)]と、
- 任意選択的に少なくとも1種の酸触媒と、
- 任意選択的に水性液体媒体[媒体(A)]と、
- 少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、
を含有する混合物を供給する工程;
(b)≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(A及びYは上で定義した通りである)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[金属化合物(M)]を含有する固体組成物(SCP)が得られるまで、工程(a)で得られた混合物を撹拌することにより、式(I)の金属化合物を部分的に加水分解及び/又は重縮合させる工程;
(bbis)工程(b)で得られた固体組成物を少なくとも60℃の温度で乾燥させる工程;
(bter)工程(bbis)で得られた固体混合物を粉砕して、微粉末形態の固体混合物(SCP)を得る工程。
【0150】
固体組成物(SCP)は、好ましくは、固体組成物(SCP)の総重量を基準として5重量%~99.99重量%、好ましくは10重量%~50重量%に含まれる量のポリマー(F)を含む。
【0151】
固体組成物(SCP)は、将来の使用のために適切に貯蔵及び保管することができ、プロセス最適化の点で利点を有する。
【0152】
出願人は、驚くべきことに、固体組成物(SCP)が特に流動性が高く、そのため保管が容易であり、取り扱いの点で特に有利であり、これによって溶融状態で次の工程を行う装置への供給が特に容易且つ効率的に行われることを見出した。
【0153】
本発明の方法の工程(c)では、固体組成物(SCP)は、ポリマー(F)の融点と電解質溶液(ES)の性質に応じて、典型的には100℃~300℃、好ましくは120℃~250℃の温度での処理によって溶融される。
【0154】
前記工程(c)において、ポリマー(F)と金属化合物(M)は、典型的には溶融加工技術を使用して、溶融状態で反応される。
【0155】
本方法の工程(c)において用いられる好ましい溶融加工技法は、一般に100℃~300℃、好ましくは120℃~250℃に含まれる温度での押出である。
【0156】
本発明の方法の工程(c)における反応は、通常、二軸スクリュー押出機において行われる。過剰の反応熱は、一般にバレル壁を通って放熱される。
【0157】
本発明の方法のこの工程(c)において、ポリマー(F)のヒドロキシル基の少なくとも一部と、金属化合物(M)]の残留加水分解性基Yの少なくとも一部とは、ポリマー(F)の鎖からなる有機ドメインと、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインとからなるフルオロポリマーハイブリッド複合材料を生成するように反応し、その結果電解質溶液(ES)を既に含むフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質が提供されることが理解される。
【0158】
本発明の方法から得られる高分子電解質中に含まれるフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料は、有利には0.01~60重量%、好ましくは0.1~40重量%の、≡A-O-A≡結合からなる無機ドメインを含む。
【0159】
本発明の方法の工程(c)では、電解質溶液(ES)を含有するフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質が押出機内で直接膜の形態で加工されて、高分子電解質膜が得られる。
【0160】
本発明の方法で使用される式(I)の金属化合物の量は、工程(b)で提供される固体組成物(SCP)が、有利には、前記固体組成物(SCP)中のポリマー(F)と化合物(M)の総重量を基準として少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の化合物(M)を含むような量である。
【0161】
本発明の方法で使用される式(I)の金属化合物の量は、工程(b)で提供される固体組成物(SCP)が、有利には、前記固体組成物(SCP)中のポリマー(F)と化合物(M)の総重量を基準として最大95重量%、好ましくは最大75重量%、より好ましくは最大55重量%の前記化合物(M)を含むような量である。
【0162】
本発明の方法の工程(b)で得られる固体組成物(SCP)は、好ましくは、固体組成物(SCP)の総重量を基準として5重量%~99.99重量%、好ましくは10重量%~50重量%に含まれる量のポリマー(F)を含む。
【0163】
別の目的では、本発明は、≡A-O-A≡結合と1つ以上の残留加水分解性基Y(AはSi、Ti、及びZrから選択される金属であり、Yはアルコキシ基とアシルオキシ基からなる群から選択される加水分解性基である)とからなる1つ以上の無機ドメインを含む金属化合物[化合物(M)]と、少なくとも1種のフッ素化モノマー[モノマー(FM)]に由来する繰り返し単位と少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種のモノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位とを含む少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]と、を含有する固体組成物(SCP)を提供し、前記固体組成物(SCP)は、上で定義した方法の工程(b)に従って得られる。
【0164】
本発明の目的のために、「膜」という用語は、これに接触する化学種の浸透を緩和する、別個の、一般に薄い界面を示すことを意図する。この界面は、均質であっても、即ち、構造が完全に一様であってもよく(稠密な膜)、又はそれは、例えば、有限の寸法の空隙、細孔又は穴(多孔質膜)を含み、化学的に又は物理的に不均一であってもよい。
【0165】
本発明の膜は、典型的には5μm~500μm、好ましくは10μm~250μm、より好ましくは15μm~50μmに含まれる厚さを有する。
【0166】
本発明のさらなる目的は、上で定義した方法のいずれかによって得ることができる高分子電解質膜である。
【0167】
本発明の高分子電解質膜は、その機械的特性をさらに改善するために、好都合には熱による後処理を受けることができる。熱による後処理は、膜を100~150℃の範囲に含まれる温度に20分~3時間の範囲の時間さらすことによって適切に行うことができる。
【0168】
本発明の高分子電解質膜は、電気化学及び光電気化学デバイスにおける高分子電解質セパレータとして有利に使用することができる。
【0169】
適切な電気化学デバイスの非限定的な例としては、特に、二次電池、特にリチウムイオン電池及びリチウム硫黄電池、並びにキャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタが挙げられる。
【0170】
本発明は、さらに、高分子電解質セパレータとして、上で定義した本発明の高分子電解質膜を含む金属イオン二次電池に関する。
【0171】
金属イオン二次電池は、通常、負極と、上で定義した本発明の高分子電解質膜と、正極とを組み立てることによって形成される。
【0172】
金属イオン二次電池は、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類二次電池であり、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0173】
好適な光電気化学デバイスの非限定的な例としては、とりわけ、色素増感太陽電池、フォトクロミックデバイス及びエレクトロクロミックデバイスが挙げられる。
【0174】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0175】
本発明は以下の実施例に関連してこれから説明されるが、その目的は、単に例示的であり、本発明を限定するものではない。
【0176】
原材料
ポリマーFA:25℃のDMF中で0.11l/gの固有粘度を有するVDF/HEA(0.4モル%)/HFP(2.5モル%)コポリマー。
ポリマーFB:25℃のDMF中で0.08l/gの固有粘度を有する、0.7モル%のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を含有するVDF-HEAコポリマー。
SOLEF(登録商標)11615VDFコポリマーは、約3.3g/10分のメルトフローレート(230℃/21.6kg、ASTM D1238)と、約2.0dl/g(0.1MのLiBrを含む25℃のN,N-ジメチルホルムアミド中で4.0g/l)の固有粘度と、158~162℃の融点(ASTM D3418)とを有する、Solvay Specialty Polymers製の高粘度VDF/HFP不均一コポリマーである。
Aldrich Chemistryから液体として市販されているテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、純度>99%。
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)。
イオン液体(IL):下記式のN-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pyr13TFSI):
【化16】
クエン酸:Sigma Aldrichから結晶として市販、純度99%。
ES:Pyr13TFSI中の0.5MのLiTFSI。
【0177】
イオン伝導率(σ)の測定
高分子電解質膜を、1/2インチのステンレス鋼Swagelok-セルのプロトタイプの中に配置する。高分子電解質膜の抵抗を25℃で測定し、そしてイオン伝導率(σ)を以下の式を使用して得た:
【数1】
(式中、dは膜厚であり、R
bはバルク抵抗であり、Sはステンレス鋼電極の面積である)。
【0178】
ポリマー(F)の固有粘度の測定(25℃のDMF)
固有粘度(η)(dl/g)は、Ubbelhode粘度計を用い、ポリマー(F)を約0.2g/dlの濃度でジメチルホルムアミド中に溶解させることによって得られた溶液の、25℃での落下時間に基づいて、以下の式:
【数2】
(式中、cは、ポリマー濃度[g/dl]であり、ηrは、相対粘度、すなわちサンプル溶液の落下時間と溶媒の落下時間との間の比であり、η
spは、比粘度、すなわちη
r-1であり、Γは、ポリマー(F)について3に対応する実験因子である)を用いて決定した。
【0179】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料中のSiO2含量の決定
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合物中のSiO2の量は、走査電子顕微鏡(SEM)から得られた顕微鏡写真上のケイ素(Si)及びフッ素(F)要素のエネルギー分散型分光法(EDS)分析により測定した。
SiO2含量は以下の式(1)を用いて決定した。
SiO2[%]=[[SiO2]/([SiO2]+[F])]×100(1)
式(1)の[SiO2]及び[F]は、それぞれ以下の式(2)及び式(3)を用いて計算される;
[SiO2]=([SiEDS]×60)/28 (2)
[F]=([FEDS]×64)/38 (3)
(式中、
- SiEDS及びFEDSはEDSによって得られたSiとFの重量%であり、
- 60はSiO2の分子量であり、
- 28はSiの原子量であり、
- 64はCH2=CF2、の分子量であり、
- 38は2つのF元素の原子量である)。
【0180】
ポリマーFAの調製
250rpmの速度で作動するインペラを備えた80リットルの反応器に、50.2kgの脱塩水、いくつかの懸濁剤としての3.80gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR及び15.21gのAlkox(登録商標)E45を連続して入れた。反応器を、真空(30mmHg)及び20℃での窒素パージの複数回の手順でパージした。次いで、イソドデカン中のt-アミルペルピバレート開始剤の75重量%溶液187.3gを導入した。撹拌の速度を300rpmに上げた。最後に、16.3gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び2555gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマーを反応器に導入し、引き続き22.8kgのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を55℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中188gのHEAを含有する16.96kgの水溶液を供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後に、それ以上の水溶液を導入せず、圧力が低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱ガスすることによって重合を止めた。コモノマーのおよそ81%転化率が得られた。そのようにして得られたポリマーを、次いで回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0181】
ポリマーFBの調製
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、48204gの脱塩水及び20.2gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順次導入した。反応器をガス抜きし、窒素で1バールまで加圧し、次いで、10.8gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)モノマー及び127.7gのジエチルカーボネート(DEC)、続いて204gの、イソドデカン中のt-アミルパーピバレート開始剤の75重量%溶液、及び25187gのフッ化ビニリデン(VDF)モノマーを反応器に導入した。反応器を、次いで110バールの最終圧力まで52℃に徐々に加熱した。温度を全試行の全体にわたって52℃で一定に維持した。圧力を、合計16.5kgまでHEAモノマーの19.9g/l水溶液を供給することによって全試行の全体にわたって110バールで一定に維持し、次いで圧力が低下し始めた。大気圧に達するまで懸濁液を脱ガスすることによって、重合実験を止めた。そのようにして得られたポリマーを、次いで回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。コモノマーのおよそ75%の転化率が得られた。
【0182】
実施例1:異なる温度での固体混合物(SM)の調製。
固体混合物(SM)は、50mlの容量のビーカー内で、異なる温度のクエン酸の存在下、以下に報告される混合物から出発して調製した。
液体混合物は、
- ES:12.5g
- TEOS:10.0g
- 水:3.47g(モル比TEOS:H2O=1:4)
- エタノール:2.5g(重量比TEOS:EtOH=4:1)
- クエン酸:0.134g(1重量%のTEOS+H2O)
を混合することによって調製した。
このようにして得た液体混合物を、異なる温度で400rpmで磁気撹拌下で反応させた。固体混合物を得るための温度及び時間は、以下の表1に報告されている。
【0183】
【0184】
結果は、温度が上昇すると、固体混合物(SM)をより短い時間で形成できることを示している。
【0185】
実施例2:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
1)固体混合物(SM)の調製
200~400rpmの範囲の速度で作動するマグネチックスターラーを備えた500mlビーカーの中に、以下の成分を順に入れた:
- ES:99.75g
- TEOS:48.29g
- 水:16.77g(モル比TEOS:H2O=1:4)
- エタノール:12.07g(重量比TEOS:EtOH=4:1)
- クエン酸:0.65g(1重量%のTEOS+H2O)
各バッチで生成されたSiO2の理論量は、1.89g(出発TEOS、水、エタノール成分の17.91%)であった。組成物を、室温で48時間、激しい撹拌下(400rpm)に維持した。その後、これを70℃のオーブンに48時間入れ、100ミクロン未満の微粒子へと粉砕した。
【0186】
2)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質膜の作製:
1)で得た固体混合物(SM)を、60gのポリマーFAと、最終的に以下の組成が得られるような比率で混合した:35/8/57(ポリマーFA/SiO2/ES)。この組成物を、重量測定フィーダーを使用して、二軸スクリュー共回転噛み合い押出機(スクリュー直径D18mm、スクリュー長720mm(40D)のLeistritz 18ZSE 18HP)の供給ホッパーに導入した。バレルは、所望の温度プロファイルに設定することを可能にする、8つの温度制御ゾーン及び1つの冷却ゾーンから構成された。溶融ポリマーは、1mm厚さ及び40mm長さの扁平形状からなるダイから外へ出た。押出物膜を、100~500umのギャップで、直径100mm及び幅100mmの2つのシリンダーの間で引き伸ばした。押し出された膜を空気中で冷却した。これは100~150ミクロンの厚さを有していた。
【0187】
使用された温度プロファイルを、以下の表2に報告する。押出機の回転速度は180rpmであった。スループットは約0.5Kg/hであった。
【0188】
【0189】
得られた膜のイオン伝導率を表4に示す。
【0190】
高分子電解質の組成:57%のES、8%のSiO2、35%のポリマーFA。
【0191】
実施例3:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
ポリマーFAを1)で他の成分と一緒に充填し、同じ押出条件で実施例2のように押出機に供給される固体組成物(SCP)を供給したことを除いて、実施例2と同じ手順に従った。
【0192】
得られた膜のイオン伝導率は表4に示されている。
【0193】
高分子電解質の組成:57%のES、8%のSiO2、35%のポリマーFA。
【0194】
実施例4:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
1)で以下の成分がビーカーに入れられたことを除いて、実施例2と同じ手順に従った。
- ES:99.75g
- TEOS:48.29g
- ギ酸:26.8g
【0195】
得られた膜のイオン伝導率は表4に示されている。
【0196】
高分子電解質の組成:57%のES、8%のSiO2、35%のポリマーFA。
【0197】
実施例5:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
ポリマーFAを1)で他の成分と一緒に充填し、同じ押出条件で実施例2のように押出機に供給される固体組成物(SCP)を供給したことを除いて、実施例4と同じ手順に従った。
【0198】
得られた膜のイオン伝導率は表4に示されている。
【0199】
実施例6:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
1)で以下の成分がビーカーに入れられたことを除いて、実施例2と同じ手順に従った。
- ES:99.75g
- TEOS:48.29g
- 水:16.77g(モル比TEOS:H2O=1:4)
- エタノール:12.07g(重量比TEOS:EtOH=4:1)
組成物を、60℃で23時間、激しい撹拌下(400rpm)に維持した。その後、これを70℃のオーブンに48時間入れ、次いで100ミクロン未満の微粒子へと粉砕した。
【0200】
得られた膜のイオン伝導率は表4に示されている。
【0201】
実施例7:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
1)固体混合物(SM)の調製
200~400rpmの範囲の速度で作動するマグネチックスターラーを備えた500mlビーカーの中に、以下の成分を順に入れた:
- ES:127.75g
- TEOS:48.29g
- 水:16.77g(モル比TEOS:H2O=1:4)
- エタノール:12.07g(重量比TEOS:EtOH=4:1)
- クエン酸:0.65g(1重量%のTEOS+H2O)
各バッチで生成したSiO2の理論量は、1.89g(出発TEOS、水、エタノール成分の17.91%)であった。組成物を、室温で48時間、激しい撹拌下(400rpm)に維持した。その後、これを70℃のオーブンに48時間入れ、100ミクロン未満の微粒子へと粉砕した。
【0202】
2)フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む高分子電解質の作製:
1)で得た固体混合物(SM)を、33.25gのポリマーFAと、最終的に以下の組成が得られるような比率で混合した:19/8/73(ポリマーFA/SiO2/ES)。この組成物を、二軸スクリュー共回転噛み合い押出機(スクリュー直径D18mm、スクリュー長720mm(40D)のLeistritz 18ZSE 18HP)の供給ホッパーに手作業で入れた。バレルは、所望の温度プロファイルに設定することを可能にする、8つの温度制御ゾーン及び1つの冷却ゾーンから構成された。溶融ポリマーは、1mm厚さ及び40mm長さの扁平形状からなるダイから外へ出た。押出物膜を、100~500ミクロンのギャップで、直径100mm及び幅100mmの2つのシリンダーの間で引き伸ばした。押し出された膜を空気中で冷却した。これは300~350ミクロンの厚さを有する。
【0203】
使用された温度プロファイルを、本明細書で下の表3に報告する。押出機の回転速度は180rpmであった。
【0204】
【0205】
得られた膜のイオン伝導率を表4に示す。
【0206】
高分子電解質の組成:57%のES、8%のSiO2、35%のポリマーFA。
【0207】
実施例7bis:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
実施例7で得られた膜を、その機械的特性を改善するための後処理プロセスとして、130℃で120分間維持した。
【0208】
実施例8-ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
ポリマーFAを1)で他の成分と一緒に充填し、同じ押出条件で実施例2のように押出機に供給される流動し易い粉末形態の固体組成物(SCP)を供給したことを除いて、実施例2と同じ手順に従った。
【0209】
得られた膜のイオン伝導率は表4に示されている。
【0210】
高分子電解質の組成:57%のES、8%のSiO2、35%のポリマーFA。
【0211】
実施例8bis:ポリマーFAを用いた高分子電解質膜の製造
実施例8で得られた膜を、その機械的特性を改善するための後処理プロセスとして、130℃で120分間維持した。
【0212】
実施例9-比較-:ポリマーFBを用いたフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合膜の製造
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を、国際公開第2014/067816号パンフレットに開示された方法であって、ポリマーFBが押し出され、電解質溶液の不在下に金属化合物と反応し、ポリマーFB/SiO2複合材料75/25重量%をもたらす方法に従って調製した。複合材料をペレットの形態で得た。10.08gの前記ペレットを、13.92gのESと共にミニ押出機の供給ホッパーへ装入し、180℃に保った。2分後に、生成物を排出させた。押出から生じた生成物は、いくらかの透明部分と、いくらかの不透明部分とを有した。押出物は、溶融物の甚だしい稠度を示さなかった。
【0213】
実施例10-比較-:ポリマーSOLEF(登録商標)11615を用いたフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合膜の製造
ポリマーSOLEF(登録商標)11615を使用したことを除いて、実施例8と同じ手順に従った。
【0214】
押出では、均一に押し出された膜が得られなかった。異なるテクスチャーと外観を有するゾーンが存在し、そのため、連続的な無機-有機ネットワークを形成することができる官能化されたフルオロポリマー(ポリマー(F))を有する必要性が明らかになった。
【0215】
実施例11-実施例2~8において得られたサンプルのイオン伝導率
表4に、実施例2~8において得られた膜のイオン伝導率が報告されている:
【0216】
【0217】
本発明による高分子電解質膜は、Liイオン電池におけるセパレータなどの、電池用途における使用に適したイオン伝導率を示す。
【0218】
実施例12:室温(23℃)における実施例7、7bis、8、及び8bisで得られた膜の機械的特性。
機械的特性は、Dynamometerモデル5966Instronで測定した。サンプル寸法は22×80mmであり、グリップ間のギャップは32mmであり、試験粘度:5mm/分であった。
【0219】
表5に、実施例7、7bis、8、及び8bisで得られた膜の機械的特性が報告されている:
【0220】
【0221】
データは、後処理によって、イオン伝導性を悪化させることなく押し出された膜の機械的特性が改善されることを実証している。
【国際調査報告】