(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】修飾オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221129BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221129BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20221129BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61K31/7125
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520896
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 US2020055301
(87)【国際公開番号】W WO2021072395
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506336728
【氏名又は名称】アルニラム ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】マノハラン,ムシア
(72)【発明者】
【氏名】クマール,パワン
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ,ドルバジョーティ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明の一態様は、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA(dsRNA)剤に関する。本発明の他の態様は、治療用途に適したこれらのdsRNA分子を含む医薬組成物と、例えば様々な病状を治療するために、標的遺伝子の発現を、これらのdsRNA分子を投与することによって阻害する方法とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、前記アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な前記標的配列との相補性を有し、前記dsRNA分子は、ヘキソピラノースヌクレオシドを含み、前記dsRNAは、リガンドを含む、二本鎖RNA(dsRNA)分子。
【請求項2】
センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA分子であって、前記アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な前記標的配列との相補性を有し、前記アンチセンス鎖は、前記アンチセンス鎖のシード領域に少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオシドを含むか、又は前記センス鎖は、前記センス鎖の中央領域に少なくとも1つのアルトリトールヌクレオチドを含む、二本鎖RNA分子。
【請求項3】
センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA分子であって、前記アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な前記標的配列との相補性を有し、前記dsRNAは、少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオシドと、少なくとも1つの2’-フルオロヌクレオチドと、少なくとも1つの2’-OMeヌクレオチドとを含む、二本鎖RNA分子。
【請求項4】
センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA分子であって、前記アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な前記標的配列との相補性を有し、前記dsRNAは、少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオシドを含み、及び前記dsRNAは、少なくとも4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、二本鎖RNA分子。
【請求項5】
前記アンチセンス鎖は、前記アンチセンス鎖の前記シード領域にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項6】
前記アンチセンス鎖は、前記アンチセンス鎖の5’末端から数えて3~8位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項5に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項7】
前記アンチセンス鎖は、前記アンチセンス鎖の5’末端から数えて6、7、9、12、16、21及び22位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項6に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項8】
前記アンチセンス鎖は、6、7及び16位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項7に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項9】
前記アンチセンス鎖は、6及び7位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項8に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項10】
前記アンチセンス鎖は、7位にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項9に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項11】
前記センス鎖は、少なくとも2つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項12】
前記センス鎖は、少なくとも3つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項11に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項13】
前記センス鎖は、前記センス鎖の前記中央領域にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項14】
前記センス鎖は、3及び12位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項15】
前記アンチセンス鎖は、少なくとも2つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項16】
前記アンチセンス鎖は、少なくとも3つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項15に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項17】
前記センス鎖は、前記センス鎖の5’末端にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項18】
前記センス鎖は、前記センス鎖の5’末端にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項19】
センス鎖は、5’-ビニルホスホネート(VP)基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項20】
前記ヘキソピラノースヌクレオチドは、アロピラノースヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、グルコピラノースヌクレオチド、マンノピラノースヌクレオチド、グロピラノースヌクレオチド、イドピラノースヌクレオチド、ガラクトピラノースヌクレオチド、タロピラノースヌクレオチド、フコピラノースヌクレオチド、ラムノピラノースヌクレオチド、キノボピラノースヌクレオチド、ニューモピラノースヌクレオチド及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項21】
前記ヘキソピラノースヌクレオチドは、アルトリトールヌクレオチド、グルコピラノースヌクレオチド、マンノピラノースヌクレオチド、ガラクトピラノースヌクレオチド、フコピラノースヌクレオチド及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項22】
リガンドを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項23】
前記リガンドは、ASGPRリガンドである、請求項1又は22に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項24】
前記ASGPRリガンドは、
【化1】
である、請求項23に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項25】
前記センス鎖は、1、2、3又は4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項26】
前記センス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間並びに2位及び3位間(5’末端から数えて)にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項27】
前記アンチセンス鎖は、1、2、3又は4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項28】
前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間(5’末端から数えて)にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項29】
前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間、ヌクレオチド位置2位及び3位間、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間(5’末端から数えて)にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項30】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖は、独立に、19~25ヌクレオチド長である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項31】
前記センス鎖は、21ヌクレオチド長である、請求項30に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項32】
前記アンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である、請求項31に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項33】
前記センス鎖は、21ヌクレオチド長であり、及び前記アンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項34】
前記アンチセンス鎖の3’末端に一本鎖オーバーハングを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項35】
前記アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項36】
前記ヘキソピラノースヌクレオチドと相補的な位置に2’-フルオロ又は2’-OMeヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項37】
ヘキソピラノース、2’-フルオロ及び2-OMeヌクレオチド以外のヌクレオチドを含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項38】
非環状ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル(2’-O-DMAEOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-ara-F及び2’-デオキシからなる群から選択されるヌクレオチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項39】
前記センス鎖は、5’末端に5’-モルホリノ修飾、5’-ジメチルアミノ修飾、5’-デオキシ修飾、逆位脱塩基修飾又は逆位脱塩基ロックド核酸修飾を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項40】
約40℃~約80℃の範囲の融解温度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA分子。
【請求項41】
単独で又は薬学的に許容できる担体若しくは賦形剤と組み合わせて、請求項1~40のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含む医薬組成物。
【請求項42】
請求項1~40のいずれか一項に記載のdsRNA分子を含む遺伝子サイレンシングキット。
【請求項43】
細胞における標的遺伝子をサイレンシングするための方法であって、請求項1~40のいずれか一項に記載のdsRNA分子を前記細胞に導入するステップを含む方法。
【請求項44】
前記dsRNA剤は、皮下又は静脈内投与を通して投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
細胞における標的遺伝子をサイレンシングするための方法であって、請求項1~40のいずれか一項に記載のdsRNA分子を前記細胞に発現させるステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で2019年10月11日に出願された米国仮特許出願第62/914,010号明細書の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、標的遺伝子発現の阻害にとって有利である修飾オリゴヌクレオチド及び治療用途に適した組成物に関する。加えて、本発明は、例えば、様々な疾患の治療のために、これらの修飾オリゴヌクレオチドを投与することによって標的遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
RNA干渉又は「RNAi」は、二本鎖RNAi(dsRNA)が遺伝子発現を遮断し得るという観察を記述するため、Fire及び同僚らによって最初に造られた用語である(非特許文献1;非特許文献2)。短いdsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物において遺伝子特異的な転写後サイレンシングを誘導し、遺伝子機能を試験するための新しいツールを提供している。RNAiは、そのサイレンシングトリガーに相同なメッセンジャーRNAを破壊する配列特異的な多成分ヌクレアーゼのRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって媒介される。RISCは、その二本鎖RNAトリガーに由来する短いRNA(約22ヌクレオチド)を有することが知られるが、この活性のタンパク質成分は、未知のままであった。
【0004】
1998年のRNA媒介性転写後遺伝子サイレンシングの発見は、生物学研究上、極めて重要であった。RNA干渉(RNAi)として知られるこの過程により、いかなる遺伝子も特異的にノックダウンすることが可能になったため、これは、あらゆる生物学研究に広く用いられる技法となった。治療の観点から、RNAiには、その多くが小分子によって「創薬不能」と考えられている疾患関連RNAベースの因子をいずれも標的化できるという利点がある。さらに、標的認識が配列特異的であるため、オフターゲット毒性の懸念が低下する。RNAiベースの戦略には、効率的なノックダウンのために異なるクラスのRNAを使用するものが幾つかある。低分子干渉RNA(siRNA)は、その一種であり、これは、転写物上の標的配列と完全に相補的であり、二重鎖として標的細胞に導入される。細胞に入った後、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に負荷される。この負荷過程では、パッセンジャー鎖(センス鎖)が取り除かれ、ガイド鎖(アンチセンス鎖)がRISC内に残り、そこで、ガイド鎖は、標的mRNA上のその相補部位に結合する。結合を受けたmRNAは、次に、RISCのヌクレアーゼ活性によって切断され、次に細胞ヌクレアーゼによってさらに分解され得る。
【0005】
アルトリトール修飾核酸(ANA)は、二本鎖核酸構造に含まれるとRNA様A型構造を支持し、ヌクレアーゼ安定性を向上させる。ANA修飾をsiRNAのセンス鎖の3’末端に置くと、有効性が向上し得る一方、ANA修飾をアンチセンス鎖の5’末端に置くと、活性が完全に失われることになる。(非特許文献3);(非特許文献4);(非特許文献5);及び(非特許文献6)を参照されたい。しかしながら、siRNA遺伝子治療薬の遺伝子サイレンシングの有効性を損なうことなく、化学修飾を合理的に適用することにより、siRNA設計を調節しようとする試みが続けられている。本発明は、この試みに関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fire et al.(1998)Nature 391,806-811
【非特許文献2】Elbashir et al.(2001)Genes Dev.15,188-200
【非特許文献3】Chem.Eur.J.1999,5,2424-2431
【非特許文献4】Nucleic Acids Res.2007,35,1064-1074
【非特許文献5】Eur.J.Pharm.2009,606,38-44
【非特許文献6】Nucleic Acids Res.2012,40,7573-7583
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、標的遺伝子発現の阻害に有利である、dsRNA分子の有効なヌクレオチド又は化学的モチーフ及び治療用途に好適なRNAi組成物を提供する。
【0008】
本発明者らは、とりわけ、特定の位置、例えばアンチセンス鎖及び/又はセンス鎖のシード領域に1つ以上のアルトリトールヌクレオチドを含むdsRNA分子が、意外にも、RNA干渉の媒介において有効性が高く、且つ/又は有害でないことを発見した。したがって、一態様では、本明細書では、標的遺伝子の発現を阻害する能力のあるdsRNA分子が提供される。概して、このdsRNA分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、ここで、アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な標的配列との相補性を有し、及びこのdsRNA分子は、少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。
【0009】
本明細書に開示される様々な態様の一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオシドは、以下の構造:
【化1】
(式中、
Bは、修飾又は非修飾核酸塩基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H、ハロゲン、OH、保護されたOH、NH
2、NHMe、NMe
2、OR
9、C
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)、分岐脂質又はアミノアルキルであり;
R
7及びR
8は、独立に、H、C
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)又はOR
9であり;及び
R
9は、C
1~C
20アルキル、C
2~C
20アルケニル、C
2~C
20アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖である)
のものである。
【0010】
例示的なヘキソピラノースヌクレオチドとしては、限定されないが、アロピラノースヌクレオチド、アルトロピラノースヌクレオチド(アルトリトールヌクレオチド)、グルコピラノースヌクレオチド、マンノピラノースヌクレオチド、グロピラノースヌクレオチド、イドピラノースヌクレオチド、ガラクトピラノースヌクレオチド及びタロピラノースヌクレオチドが挙げられる。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、デオキシヘキソピラノースヌクレオチド、例えば6-デオキシヘキソピラノースヌクレオチドである。例示的なデオキシヘキソピラノースヌクレオチドとしては、限定されないが、フコピラノースヌクレオチド、ラムノピラノースヌクレオチド、キノボピラノースヌクレオチド及びニューモピラノースヌクレオチドが挙げられる。
【0011】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオシドは、
図12及び
図13に示されるものから選択される。
【0012】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、アルトリトールヌクレオチドである。
【0013】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、anである。
【0014】
一部の実施形態では、アルトリトールヌクレオチドは、アンチセンス鎖に存在する。概して、アルトリトールヌクレオチドは、アンチセンス鎖内のいずれの箇所にも存在し得る。例えば、アルトリトールヌクレオチドは、シード領域の範囲内(すなわちアンチセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて3~8位)に存在し得る。
【0015】
一部の実施形態では、アルトリトールヌクレオチドは、センス鎖に存在する。アンチセンス鎖と同様に、アルトリトールヌクレオチドは、センス鎖内のいずれの箇所にも存在し得る。例えば、アルトリトールヌクレオチドは、5’領域の範囲内(すなわちセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて2~8位)に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、センス鎖の中央領域にアルトリトールヌクレオチドを含む。
【0016】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、少なくとも1つの2’-フルオロヌクレオチド及び/又は少なくとも1つの2’-OMeヌクレオチドを含む。
【0017】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、少なくとも1、2、3、4つ又はそれを超えるホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0018】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖又はアンチセンス鎖にコンジュゲートされたリガンドをさらに含む。例えば、dsRNA分子は、センス鎖又はアンチセンス鎖にコンジュゲートされたASGPRリガンドをさらに含む。好ましくは、リガンドは、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされる。
【0019】
別の態様では、本開示は、標的遺伝子配列の発現を阻害する方法を提供する。概して、この方法は、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の、本明細書に記載されるdsRNA分子を細胞に投与することを含む。細胞は、インビトロ又はインビボであり得る。
【0020】
なおも別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるdsRNA分子を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるdsRNA分子を使用して対象を治療する方法を提供する。概して、この治療する方法は、治療有効量の、本明細書に記載されるdsRNA分子を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】例示的なdsRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖配列を示す。
【
図1B】2’-OMe RNA、2’-F RNA及びアルトリトール核酸(ANA)ヌクレオチドの構造を示す。
【
図2】アンチセンス鎖にANAを有する二重鎖のインビトロRNAi活性を示す棒グラフである。ガイド鎖とも称される、アンチセンス鎖の指示される位置にあるヌクレオチドを、対応するANAヌクレオチドに置換した。
【
図3】センス鎖にANAを有する二重鎖のインビトロRNAi活性を示す棒グラフである。パッセンジャー鎖とも称される、センス鎖の指示される位置にあるヌクレオチドを、対応するANAヌクレオチドに置換した。
【
図4】ANA修飾を含む選択の例示的siRNAのIC
50値を示す折れ線グラフである。アンチセンス鎖又はセンス鎖の指示される位置は、対応するANAヌクレオチドを担持している。
【
図5】ルシフェラーゼレポーターアッセイにおける例示的なsiRNAのオンターゲット(
図5A)及びオフターゲット(
図5B)阻害効果を示す折れ線グラフである。ルシフェラーゼレポータープラスミドを、指示されるsiRNAと共にCOS-7細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で細胞を回収し、デュアルルシフェラーゼアッセイにかけた。%標的残留率は、各siRNA濃度におけるウミシイタケ/ホタル比をsiRNA非存在下の比で除すことによって計算した。
【
図6】C57BL/6マウスにおける皮下投与したANA含有siRNAのインビボ活性を示す。
図6Aは、ELISAで決定した循環中Ttrタンパク質レベルを示す棒グラフである(平均値±SD)。
図6Bは、試験終了時の肝臓におけるTtrの転写物レベルを示す棒グラフである(14日目;平均値±SD)。
【
図7】Ago2に結合したS7位にANA-Gを有するsiRNAガイド鎖のモデル概略図である。ANA残基を青緑色の炭素原子で強調し、選択したストランド内P-P距離をÅ単位で提供する。
【
図8】ANA修飾を担持するオリゴヌクレオチドが分解に対抗する安定性を示す折れ線グラフである。
図8Aは、ポリdTの3’末端に単一の又は2個のANAヌクレオチドを担持するオリゴヌクレオチドがヘビ毒ホスホジエステラーゼ(SVPD)による分解に対抗するヌクレアーゼ安定性を示す。
図8Bは、ポリdTの5’末端に単一の又は2個のANAヌクレオチドを担持するオリゴヌクレオチドがホスホジエステラーゼII(PDEII)による分解に対抗する安定性を示す。「s」は、ホスホロチオエート結合を指示している。Uは、ウリジンであり、Uanは、核酸塩基としてウラシルを有するANAヌクレオチドである。直接比較するため、末端にウリジンを有する同一の配列を調製した。
【
図9】複合体の結晶構造で観察したときの、5’P-dTdTdT-3’が結合したXrn1 5’-エキソリボヌクレアーゼの活性部位の図である(リン及び炭素原子をそれぞれオレンジ色及び黄色で色付けしている)[参照Jinek et al.Mol.Cell 2011]。5’P-aUaU-3’P ANA二量体(リン及び炭素原子をそれぞれ黒色及び青緑色で色付けしている)を重ね合わせて、ANA及びDNA(それぞれ黒色及びオレンジ色の矢印)間の偏位しているP-P間隔並びにMg
2+イオン(緑色の球)に対するリン酸塩の向きを明らかにしている。
【
図10A】ANA 3’-エキソヌクレアーゼ安定性を示す折れ線グラフである(
図10A)。t
1/2計算値は、UU-3’:<<1時間、(Uan)(Uan)-3’:4.7時間、UsU-3’:10.2、Us(Uan)-3’:8.0時間及び(Uans)(Uan)-3’:16.3時間である。概して、Uanは、リン酸ジエステル(PO)の親と比較して3’-エキソヌクレアーゼ安定性が増加し、二重に取り込むと、単一の取り込みよりも安定性が高くなる。
【
図10B】ANA 5’-エキソヌクレアーゼ安定性を示す折れ線グラフである。t
1/2計算値は、5’-UU:<<1.5時間、5’-(Uan)U:11.5、5’-UsU:26.9、5’-(Uans)U:113時間及び5’-(Uans(Uan):458.5である。概して、Uanは、それぞれリン酸ジエステル(PO)及びホスホロチオエート(PS)の親と比較して5’-エキソヌクレアーゼ安定性が増加し、二重に取り込むと、単一の取り込みよりも安定性が高くなる。
【
図11】ANA:RNA二重鎖の結晶構造;PDB ID 3ok2を示す概略図である。ANAのリン酸塩間隔(5.5Å)は、RNA(6Å)よりも小さい。出典Ovaere et al.Nucleic Acid Res.,40:7573-7583(2012)。
【
図12】一部の例示的なヘキソピラノースヌクレオシドホスホラミダイトを示す。
【
図13】一部の例示的なヘキソピラノースヌクレオシドホスホラミダイトを示す。
【
図14】一部の例示的なヘキソピラノースヌクレオシド及びヌクレオチドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一態様では、本発明は、二本鎖RNA(dsRNA)分子を提供し、このdsRNAは、標的遺伝子の発現を阻害する能力があり、このdsRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、ここで、アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な標的配列との相補性を有し、及びこのdsRNA分子は、少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオチド、シクロヘキセンヌクレオチド、例えばアルトリトールヌクレオチドを含む。
【0024】
ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、dsRNA内のいずれの箇所にも存在し得る。例えば、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、siRNA分子のセンス鎖に存在し得る。ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドがセンス鎖に存在し得ることが注目される。例えば、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端及び/又はセンス鎖の内部位置にあり得る。
【0025】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖の5’末端に存在する。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖の3’末端に存在する。
【0026】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖の内部位置に存在し得る。例えば、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25位に存在し得る。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、5’領域の範囲内(すなわちセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて2~8位)に存在し得る。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖の中央領域に存在し得る。
【0027】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、センス鎖のセンス領域においてアンチセンス鎖のシード領域に対向する位置(すなわちアンチセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて3~8位)に存在し得る。
【0028】
一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又はそれを超えるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、3及び12位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。
【0029】
一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも2つ以上のヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。2つ以上のヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドが存在するとき、それらは、互いに隣接し得る。したがって、一部の実施形態では、センス鎖は、互いに隣接している少なくとも2つ、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。換言すれば、センスは、2つ以上の独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドのストレッチを含む。
【0030】
一部の実施形態では、センス鎖は、互いに隣接している3つのヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含み、すなわち、センス鎖は、3つの独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドのストレッチを含む。
【0031】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖に存在する。概して、ヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖内のいずれの箇所にも存在し得る。例えば、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖の5’末端、アンチセンス鎖の3’末端及び/又はアンチセンス鎖の内部位置にあり得る。
【0032】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖の5’末端に存在する。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に存在する。
【0033】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖の内部位置に存在し得る。例えば、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25位に存在し得る。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、シード領域の範囲内(すなわちアンチセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて2~8位)に存在し得る。例えば、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて3~8位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドは、アンチセンス鎖の中央領域に存在し得る。
【0034】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又はそれを超えるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて6、7、9、12、16、21及び22位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて6、7及び16位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて6及び7位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、アンチセンスは、アンチセンス鎖の5’末端から数えて7位にヘキソピラノースヌクレオチド又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。
【0035】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも2つ以上のヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。2つ以上のヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドが存在するとき、それらは、互いに隣接し得る。したがって、一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、互いに隣接している少なくとも2つ、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含む。換言すれば、アンチセンスは、2つ以上の独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドのストレッチを含む。
【0036】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、互いに隣接している3つのヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドを含み、すなわち、アンチセンス鎖は、3つの独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオチド及び/又はシクロヘキセンヌクレオチドのストレッチを含む。
【0037】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、アルトリトールヌクレオチドである。
【0038】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、グルコピラノースヌクレオチドである。
【0039】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、マンノピラノースヌクレオチドである。
【0040】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、ガラクトピラノースヌクレオチドである。
【0041】
一部の実施形態では、ヘキソピラノースヌクレオチドは、フコピラノースヌクレオチドである。
【0042】
一部の実施形態では、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖は、5’-ビニルホスホネート(VP)部分を含有するヌクレオチドを含み得る。例えば、センス鎖は、5’-ビニルホスホネート(VP)部分を含有するヌクレオチドを含む。別の例では、アンチセンス鎖は、5’-ビニルホスホネート(VP)部分を含有するヌクレオチドを含む。
【0043】
一部の実施形態では、dsRNAは、少なくとも1つのアルトリトールヌクレオチドを含む。dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれを超えるアルトリトールヌクレオチドを含み得る。限定なしに、アルトリトールヌクレオチドは、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、dsRNA分子は、1つ又は2つのアルトリトールヌクレオチドを含む。一部の好ましい実施形態では、dsRNA分子は、1つのアルトリトールヌクレオチドを含む。
【0044】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5つ又はそれを超えるアルトリトールヌクレオチドを含む。限定なしに、アンチセンス鎖のアルトリトールヌクレオチドは、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、シード領域の範囲内(すなわちアンチセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて3~8位)に少なくとも1つのアルトリトールヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて6、7、9、12、16、21及び22位の少なくとも1つにアルトリトールヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、6、7及び16位の少なくとも1つにアルトリトールヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて少なくとも6位にアルトリトールヌクレオチドを含む。別の例では、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて少なくとも7位にアルトリトールヌクレオチドを含む。なおも別の例では、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて少なくとも16位にアルトリトールヌクレオチドを含む。
【0045】
本発明者らは、アンチセンス鎖(AS1)の5’末端がアルトリトールヌクレオチドによって修飾されたdsRNAに有効性があることを発見した。したがって、一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて1位及び/又は2位にアルトリトールヌクレオチドを含まない。
【0046】
一部の実施形態では、アルトリトールヌクレオチドは、センス鎖に存在する。アンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5つ又はそれを超えるアルトリトールヌクレオチドを含む。アンチセンス鎖と同様に、アルトリトールヌクレオチドは、センス鎖内のいずれの箇所にも存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、シード領域に対向するか又はそれと相補的な位置(すなわちアンチセンス鎖の5’末端の、5’末端から数えて3~8位に少なくとも1つのアルトリトールヌクレオチドを含み得る。例えば、センス鎖は、センス鎖の5’末端から数えて3及び21位の少なくとも1つにアルトリトールヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から数えて1位にアルトリトールヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、アルトリトールヌクレオチドを含まない。
【0047】
本明細書に開示される様々な態様の一部の実施形態では、アルトリトールヌクレオチドは、構造:
【化2】
(式中、
Bは、修飾又は非修飾核酸塩基であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、独立に、H、ハロゲン、OH、NH
2、NHMe、NMe
2、OR
9又はC
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)であり;
R
7及びR
8は、独立に、H、C
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)又はOR
9であり;及び
R
9は、C
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖である)
を有する修飾されたアルトリトールヌクレオチドである。
【0048】
dsRNA分子
本発明の態様には、二本鎖RNA分子が含まれる。一般に、そのdsRNA分子は、センス鎖(パッセンジャー鎖とも称される)及びアンチセンス鎖(ガイド鎖とも称される)を含む。dsRNA分子の各鎖は、独立に、12~40ヌクレオチド長の範囲であり得る。例えば、各鎖は、独立に、14~40ヌクレオチド長、17~37ヌクレオチド長、25~37ヌクレオチド長、27~30ヌクレオチド長、17~23ヌクレオチド長、17~21ヌクレオチド長、17~19ヌクレオチド長、19~25ヌクレオチド長、19~23ヌクレオチド長、19~21ヌクレオチド長、21~25ヌクレオチド長又は21~23ヌクレオチド長であり得る。限定されないが、センス及びアンチセンス鎖は、等しい長さ又は不等な長さであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、センス鎖と比べて長く、例えば1、2、3、4又は5ヌクレオチドだけ長い。
【0049】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、18~35ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、21~25、19~25、19~21又は21~23ヌクレオチド長である。一部の特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である。
【0050】
アンチセンス鎖と同様、センス鎖は、一部の実施形態では、18~35ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、センス鎖は、21~25、19~25、19~21又は21~23ヌクレオチド長である。一部の特定の実施形態では、アンチセンス鎖は、21ヌクレオチド長である。
【0051】
一部の特定の実施形態では、センス鎖は、21ヌクレオチド長であり、及びアンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である。
【0052】
二本鎖RNA分子は、二本鎖又は二重鎖領域を有する。概して、二重鎖領域(二本鎖領域)は、12~40ヌクレオチド塩基対長である。例えば、dsRNAは、12~25ヌクレオチド対長の二重鎖領域を有する。一部の実施形態では、dsRNAは、18、19、20、21、22、22、23、24又は25ヌクレオチド塩基対長の二重鎖領域を有する。一部の特定の実施形態では、dsRNAは、19、20、21又は22ヌクレオチド塩基対長の二重鎖領域を有する。
【0053】
本明細書に記載されるdsRNA分子は、1つ以上の核酸修飾を含み得る。dsRNAには、1つ又は複数のアルトリトールヌクレオチドに加えて、1つ以上の核酸修飾が存在することが注記される。
【0054】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、2’-フルオロヌクレオチド、すなわち2’-フルオロ修飾を含み得る。例えば、dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれを超える2’-フルオロヌクレオチドを含み得る。限定なしに、2’-フルオロヌクレオチドは、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が少なくとも2つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。2’-フルオロ修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に現れ得る。例えば、2’-フルオロ修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に現れ得るか;各2’-フルオロ修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで現れ得るか;又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、2’-フルオロ修飾を交互パターンで含む。センス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンに対してシフトし得る。
【0055】
dsRNA分子のアンチセンス鎖は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える)の2’-フルオロヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、2、3、4、5又は6つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。限定なしに、アンチセンス鎖の2’-フルオロ修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも3つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、少なくとも4つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンスは、5’末端から少なくとも2、6、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部のさらなる実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも5つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。なおも一部のさらなる実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも6つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0056】
dsRNA分子のセンス鎖は、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える)の2’-フルオロヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、センス鎖は、2、3、4又は5つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、センス鎖は、3又は4つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。限定なしに、センス鎖の2’-フルオロ修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも3つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、センスは、5’末端から少なくとも7、10及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、少なくとも4つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、センスは、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0057】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12及び15位に対して対向的又は相補的な位置に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12、13及び15位に対して対向的又は相補的な位置に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖は、2、3又は4つの2’-フルオロヌクレオチドの遮断を含む。
【0058】
一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。さらに一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0059】
一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。さらに一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に2’-フルオロヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0060】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて3~9位に2’-フルオロヌクレオチドを含まない。
【0061】
dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超える2’-OMeヌクレオチドを含み得る。限定なしに、2’-OMeヌクレオチドは、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が少なくとも1つの2’-OMeヌクレオチドを含む。2’-OMe修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に現れ得る。例えば、2’-OMe修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に現れ得るか;各熱安定化修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで現れ得るか;又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、2’-OMe修飾を交互パターンで含む。センス鎖上の熱安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上の熱安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’-OMe修飾の交互パターンに対してシフトし得る。
【0062】
dsRNA分子のアンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又はそれを超える2’-OMe修飾を含み得る。限定なしに、アンチセンス鎖の熱安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも3つの熱安定化修飾を含む。
【0063】
例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、14及び16位に2’-OMe修飾を含まない。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、5’末端から少なくとも2、6、14及び16位に2’-OMe修飾を含まない。一部のさらなる実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に2’-OMe修飾を含まない。なおも一部のさらなる実施形態では、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に2’-OMe修飾を含まない。
【0064】
dsRNA分子のセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又はそれを超える2’-OMe修飾を含み得る。限定なしに、センス鎖の2’-OMe修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センスは、5’末端から少なくとも7、10及び11位に2’-OMe修飾を含まない。一部の他の実施形態では、センスは、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に2’-OMe修飾を含まない。
【0065】
dsRNA分子は、ロックド核酸(LNA)を含み得る。例えば、dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるLNA修飾を含み得る。限定なしに、LNAヌクレオチドは、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が少なくともLNA修飾を含む。LNA修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に現れ得る。例えば、LNA修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に現れ得るか;各LNA修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで現れ得るか;又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、LNA修飾を交互パターンで含む。センス鎖上のLNA修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上のLNA修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンに対してシフトし得る。
【0066】
dsRNA分子のアンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるLNA修飾を含み得る。限定なしに、アンチセンス鎖のLNA修飾は、任意の位置に存在し得る。
【0067】
dsRNA分子のセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるLNA修飾を含み得る。限定なしに、センス鎖のLNA修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるLNA修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて3~9位に2’-フルオロヌクレオチドを含まない。
【0068】
dsRNA分子は、架橋型核酸(BNA)を含み得る。例えば、dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるBNA修飾を含み得る。限定なしに、BNAヌクレオチドは、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が少なくともBNA修飾を含む。BNA修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に現れ得る。例えば、BNA修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に現れ得るか;各BNA修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで現れ得るか;又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、BNA修飾を交互パターンで含む。センス鎖上のBNA修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上のBNA修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンに対してシフトし得る。
【0069】
dsRNA分子のアンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるBNA修飾を含み得る。限定なしに、アンチセンス鎖のBNA修飾は、任意の位置に存在し得る。
【0070】
dsRNA分子のセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるBNA修飾を含み得る。限定なしに、センス鎖のBNA修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるBNA修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて3~9位に2’-フルオロヌクレオチドを含まない。
【0071】
dsRNA分子は、シクロヘキセン核酸(CeNA)を含み得る。例えば、dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれを超えるCeNA修飾を含み得る。限定なしに、CeNAヌクレオチドは、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が少なくともCeNA修飾を含む。CeNA修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に現れ得る。例えば、CeNA修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に現れ得るか;各CeNA修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで現れ得るか;又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、ceNA修飾を交互パターンで含む。センス鎖上のCeNA修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上のceNA修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の2’-フルオロ修飾の交互パターンに対してシフトし得る。
【0072】
dsRNA分子のアンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるceNA修飾を含み得る。限定なしに、アンチセンス鎖のceNA修飾は、任意の位置に存在し得る。
【0073】
dsRNA分子のセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるceNA修飾を含み得る。限定なしに、センス鎖のceNA修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるceNA修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から数えて3~9位に2’-フルオロヌクレオチドを含まない。
【0074】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、熱安定化修飾を含み得る。例えば、dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれを超える熱安定化修飾を含み得る。
【0075】
限定なしに、熱安定化修飾は、全てが一方の鎖に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が少なくとも1つ、例えば2、3、4つ又はそれを超える熱安定化修飾を含む。熱安定化修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の任意のヌクレオチド上に現れ得る。例えば、熱安定化修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に現れ得るか;各熱安定化修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで現れ得るか;又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、熱安定化修飾を交互パターンで含む。センス鎖上の熱安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上の熱安定化修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上の熱安定化修飾の交互パターンに対してシフトし得る。
【0076】
dsRNA分子のアンチセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える熱安定化修飾を含み得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、2、3、4、5又は6つの熱安定化修飾を含む。限定なしに、アンチセンス鎖の熱安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも3つの熱安定化修飾を含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から2、14及び16位の少なくとも1つ、例えば2又は3つに熱安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、アンチセンスは、少なくとも4つの熱安定化修飾を含む。例えば、アンチセンスは、5’末端から少なくとも2、6、14及び16位に熱安定化修飾を含む。一部のさらなる実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも5つの熱安定化修飾を含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に熱安定化修飾を含む。なおも一部のさらなる実施形態では、アンチセンス鎖は、少なくとも6つの熱安定化修飾を含む。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に熱安定化修飾を含む。
【0077】
dsRNA分子のセンス鎖は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える熱安定化修飾を含み得る。一部の実施形態では、センス鎖は、2、3、4又は5つの熱安定化修飾を含む。例えば、センス鎖は、3又は4つの熱安定化修飾を含む。限定なしに、センス鎖の熱安定化修飾は、任意の位置に存在し得る。一部の実施形態では、センス鎖は、少なくとも3つの熱安定化修飾を含む。例えば、センスは、5’末端から少なくとも7、10及び11位に熱安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、少なくとも4つの熱安定化修飾を含む。例えば、センスは、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に熱安定化修飾を含む。
【0078】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12及び15位に対向するか又はそれと相補的な位置に熱安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の11、12、13及び15位に対向するか又はそれと相補的な位置に熱安定化修飾を含む。一部の実施形態では、センス鎖は、2、3又は4つの熱安定化修飾のブロックを含む。
【0079】
一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9及び11位に熱安定化修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、14及び16位に熱安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9及び11位に熱安定化修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に熱安定化修飾を含む。さらに一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9及び11位に熱安定化修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に熱安定化修飾を含む。
【0080】
一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に熱安定化修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、14及び16位に熱安定化修飾を含む。一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に熱安定化修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、9、14及び16位に熱安定化修飾を含む。さらに一部の他の実施形態では、センス鎖は、5’末端から少なくとも7、9、10及び11位に熱安定化修飾を含み、アンチセンス鎖は、5’末端から少なくとも2、6、8、9、14及び16位に熱安定化修飾を含む。
【0081】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖にある二重鎖の熱不安定化修飾に対向するか又はそれと相補的な位置に熱安定化修飾を含まない。
【0082】
例示的な熱安定化修飾としては、限定されないが、2’-フルオロ修飾、ロックド核酸(LNA)、脱塩基修飾;逆鎖における対向するヌクレオチドとのミスマッチ;及び2’-デオキシ修飾などの糖修飾又は非環状ヌクレオチド、例えばアンロックド核酸(UNA)若しくはグリコール核酸(GNA)が挙げられる。一部の実施形態では、不安定化修飾は、GNA-isoC、GNA-isoG、5’-mUNA、4’-mUNA、3’-mUNA及び2’-mUNAからなる群から選択される。
【0083】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、鎖の3’末端又は5’末端又は両方の末端にdsRNA分子の1つ以上のオーバーハング領域(すなわち一本鎖領域)及び/又はキャッピング基を含む。限定なしに、オーバーハングは、1~10ヌクレオチド長、1~6ヌクレオチド長、1~5ヌクレオチド長、1~4ヌクレオチド長、1~3ヌクレオチド長、2~6ヌクレオチド長、2~5ヌクレオチド長2~4ヌクレオチド長、2~3ヌクレオチド長又は1~2ヌクレオチド長であり得る。オーバーハングは、一方の鎖が他方よりも長い結果又は同じ長さの2本の鎖がずれている結果であり得る。オーバーハングは、標的となる配列とミスマッチを形成し得るか、又はそれは、標的となる配列に相補的であるか若しくは他の配列であり得る。第1及び第2の鎖は、例えば、追加の塩基でヘアピンを形成することによるか、又は他の非塩基リンカーによって連結され得る。限定なしに、オーバーハングは、センス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖の3’末端に存在し得る。
【0084】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、単一のオーバーハングを含む。例えば、dsRNA分子は、単一のオーバーハングを有し、このオーバーハングは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、オーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端に存在する。一部の特定の実施形態では、dsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【0085】
dsRNAは、平滑末端も有し得る。例えば、dsRNAの一方の末端が平滑末端であり、他方の末端がオーバーハングを有する。限定なしに、平滑末端は、アンチセンス鎖の5’末端(又はセンス鎖の3’末端)に位置するか又はその逆であり得る。概して、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’末端にヌクレオチドオーバーハングを有し、5’末端が平滑型である。理論によって拘束されないが、非対称にアンチセンス鎖の5’末端に平滑末端があり、アンチセンス鎖の3’末端オーバーハングがあると、ガイド鎖をRISCに負荷するプロセスに有利に作用する。一部の実施形態では、dsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハング及びアンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を有する。
【0086】
一部の他の実施形態では、dsRNA分子は、平滑末端を2つ有し、すなわちdsRNAの両方の末端に有する。
【0087】
dsRNA分子のオーバーハング領域におけるヌクレオチドは、それぞれ独立に、2’-フルオロ、2’-O-メチル、チミジン(T)、2’-O-メトキシエチル-5-メチルウリジン、2’-O-メトキシエチルアデノシン、2’-O-メトキシエチル-5-メチルシチジン、GNA、SNA、hGNA、hhGNA、mGNA、TNA、h’GNA及びこれらの任意の組み合わせなど、2’-糖修飾されたものを含むが、それに限定されない修飾された又は修飾されていないヌクレオチドであり得る。例えば、TT(又はUU)は、いずれか一方の鎖のいずれか一方の末端についてのオーバーハング配列であり得る。dsRNA分子のセンス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖の5’-又は3’-オーバーハングは、リン酸化され得る。一部の実施形態では、オーバーハング領域は、その間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含有し、ここで、オーバーハング領域の2つのヌクレオチドは、同じであるか又は異なり得る。
【0088】
dsRNA分子は、少なくとも1つ、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超えるホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を含み得る。ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖若しくはアンチセンス鎖又は両方の、鎖の任意の位置における任意のヌクレオチド上に生じ得る。例えば、ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上の全てのヌクレオチド上に生じ得るか;各ヌクレオチド間結合修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖上に交互パターンで生じ得るか;又はセンス鎖若しくはアンチセンス鎖は、両方のヌクレオチド間結合修飾を交互パターンで含む。センス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖と同じであるか又は異なり得、センス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンは、アンチセンス鎖上のヌクレオチド間結合修飾の交互パターンに対して変化を有し得る。
【0089】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、オーバーハング領域内にホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。例えば、オーバーハング領域は、2つのヌクレオチド間にホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を有する2つのヌクレオチドを含む。ヌクレオチド間結合修飾は、オーバーハングヌクレオチドを二本鎖領域内部の末端の対合ヌクレオチドと連結するためにも設けられ得る。例えば、少なくとも2、3、4若しくは全てのオーバーハングヌクレオチドは、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を通して連結され得、任意選択で、オーバーハングヌクレオチドをオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドと連結する、追加的なホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合が存在し得る。例えば、末端の3つのヌクレオチド間に少なくとも2つのホスホロチオエートのヌクレオチド間結合が存在し得、ここで、3つのうちの2つのヌクレオチドはオーバーハングヌクレオチドであり、且つ3つ目はオーバーハングヌクレオチドに隣接する対合ヌクレオチドである。好ましくは、これら末端の3つのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に存在し得る。
【0090】
一部の実施形態では、dsRNA分子のセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される、2~10のホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の1~10のブロックを含み、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記センス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むアンチセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0091】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される2つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0092】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される3つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0093】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される4つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0094】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される5つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0095】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ又は10のリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される6つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0096】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7又は8つのリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される7つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0097】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3、4、5又は6つのリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される8つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0098】
一部の実施形態では、dsRNA分子のアンチセンス鎖は、1、2、3又は4つのリン酸ヌクレオチド間結合によって分離される9つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の2つのブロックを含み、ここで、ホスホロチオエート又はメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合の一方は、オリゴヌクレオチド配列内の任意の位置に配置され、前記アンチセンス鎖は、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸及びリン酸のヌクレオチド間結合の任意の組み合わせを含むセンス鎖又はホスホロチオエート若しくはメチルホスホン酸若しくはリン酸の結合のいずれかを含むアンチセンス鎖と対合する。
【0099】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス及び/又はアンチセンス鎖の末端位置の1~10以内に1つ以上のホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ又は10のヌクレオチドは、センス及び/又はアンチセンス鎖の一端又は両端でホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合を通して連結され得る。
【0100】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス及び/又はアンチセンス鎖各々の二本鎖の内部領域の1~10以内に1つ以上のホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9つ又は10のヌクレオチドは、二本鎖領域のセンス鎖の5’末端から数えて8~16位でホスホロチオエートメチルホスホン酸ヌクレオチド間結合を通して連結され得;dsRNA分子は、任意選択で、1つ以上のホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を末端1~10位以内にさらに含み得る。
【0101】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に1~5つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1~5つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1~5つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1~5つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0102】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエート又はメチルホスホン酸のヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0103】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0104】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0105】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0106】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0107】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0108】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0109】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0110】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0111】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0112】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1~5位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と18~23位以内に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0113】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と20及び21位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0114】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と20及び21位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0115】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21及び22位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0116】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21及び22位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0117】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と22及び23位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾及び21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0118】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖の(5’末端から数えて)1位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と21位に1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾並びにアンチセンス鎖の(5’末端から数えて)1及び2位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾と23及び23位に2つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合修飾を含む。
【0119】
一部の例示的なdsRNA分子では、センス鎖は、0、1、2、3又は4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。例えば、センス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間並びにヌクレオチド位置2位及び3位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0120】
一部の例示的なdsRNA分子では、アンチセンス鎖は、1、2、3又は4つのホスホロチオネートヌクレオチド間結合を含み得る。例えば、センス鎖は、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。さらなる例では、アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間、ヌクレオチド位置2位及び3位間、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0121】
一部の実施形態では、センス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間並びにヌクレオチド位置2位及び3位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。例えば、センス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間並びにヌクレオチド位置2位及び3位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間、ヌクレオチド位置2位及び3位間、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0122】
5’-修飾
一部の実施形態では、dsRNA分子は、5’リン酸化され得るか、又は5’末端にホスホリル類似体を含み得る。例示的な5’-リン酸修飾は、RISC媒介遺伝子サイレンシングに適合するものを含む。好適な修飾は、5’-一リン酸((HO)2(O)P-O-5’);5’-二リン酸((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-三リン酸((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-グアノシンキャップ(7-メチル化又は非メチル化)(7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-アデノシンキャップ(Appp)及び任意の修飾又は非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’);5’-モノチオリン酸(ホスホロチオエート;(HO)2(S)P-O-5’);5’-モノジチオリン酸(ジチオリン酸;(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオラート((HO)2(O)P-S-5’);酸素/硫黄が置換された一リン酸、二リン酸及び三リン酸の任意のさらなる組み合わせ(例えば、5’-α-チオ三リン酸、5’-γ-チオ三リン酸など)、5’-ホスホロアミド酸((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えばRP(OH)(O)-O-5’-、5’-アルケニルホスホネート(すなわちビニル、置換ビニル)、(OH)2(O)P-5’-CH2-)、5’-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2-)、エトキシメチルなど、例えばRP(OH)(O)-O-5’-)を含む。修飾は、dsRNA分子のアンチセンス鎖内に配置され得る。例えば、アンチセンス鎖は、5’末端に5’-ビニルホスホネートヌクレオチドを含み得る。
【0123】
一部の実施形態では、アンチセンスは、5’-E-ビニルホスホネートを含む。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、5’-E-ビニルホスホネートと、アンチセンス鎖配列が同じであるが、非修飾のN-1位置を有するsiRNAと比べてsiRNAの活性を低下させるか又は阻害するN-1位のヌクレオシド及びアンチセンス鎖配列が同じであるが、非修飾のN-1位置を有するsiRNAと比べてsiRNAの活性を低下させるか又は阻害するN-1位のヌクレオシドとを含む。
【0124】
一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端に5’-モルホリノ修飾、5’-ジメチルアミノ修飾、5’-デオキシ修飾、逆位脱塩基修飾又は逆位脱塩基ロックド核酸修飾を含む。
【0125】
概して、dsRNAは、約40℃~約80℃の範囲の融解温度を有する。例えば、dsRNAは、範囲の下端が約40℃、45℃、50℃、55℃、60℃又は65℃からであり、範囲の上端が約70℃、75℃又は80℃からである融解温度を有する。一部の実施形態では、dsRNAは、約55℃~約70℃の範囲又は約60℃~約75℃の範囲の融解温度を有する。一部の実施形態では、dsRNAは、約57℃~約67℃の範囲の融解温度を有する。一部の特定の実施形態では、dsRNAは、約60℃~約67℃の範囲の融解温度を有する。一部のさらなる実施形態では、dsRNAは、約62℃~約66℃の範囲の融解温度を有する。
【0126】
理論によって拘束されることを望むものではないが、少なくとも60℃の融解温度を有するdsRNA分子は、インビボ及びインビトロで有効性が高くなる。したがって、一部の実施形態では、dsRNAは、少なくとも60℃の融解温度を有する。
【0127】
理論によって拘束されることを望むものではないが、dsRNA分子がインビボで一層有効となるために、アンチセンス鎖が一定の代謝安定性を有しなければならない。換言すれば、dsRNA分子がインビボで一層有効となるために、投与後、ある期間が経った後に生体内に一定量のアンチセンス鎖が存在する必要があり得る。したがって、一部の実施形態では、生体内投与後5日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後6日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後7日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後8日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後9日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後10日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後11日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後12日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後13日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後14日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。一部の実施形態では、生体内投与後15日目にdsRNAのアンチセンス鎖の少なくとも40%、例えば少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%が生体内、例えばマウス肝臓に存在する。
【0128】
理論によって拘束されることを望むものではないが、アンチセンス鎖の5’領域における(すなわちアンチセンス鎖の5’末端から2~9位にある)熱不安定化修飾は、オフターゲット遺伝子サイレンシングを低減又は阻害することができる。したがって、一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’領域の最初の9ヌクレオチド位置の範囲内に二重鎖の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5つ又はそれを超える)の熱不安定化修飾を含む。用語「1つ又は複数の熱不安定化修飾」には、かかる1つ又は複数の修飾を有しないdsRNAのTmよりも全体的に低い融解温度(Tm)(好ましくは1、2、3又は4度低いTmのdsRNAをもたらすであろう1つ又は複数の修飾が含まれる。
【0129】
一部の実施形態では、熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から2、3、4、5、6、7、8若しくは9位又は好ましくは4、5、6、7若しくは8位に位置する。一部の実施形態では、熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から2、3、4、5又は9位に位置する。一部の他の実施形態では、熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から6、7又は8位に位置する。一部の特定の実施形態では、熱不安定化修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から7位に位置する。
【0130】
熱不安定化修飾としては、限定されないが、脱塩基修飾;逆鎖における対向するヌクレオチドとのミスマッチ;及び2’-デオキシ修飾などの糖修飾又は非環状ヌクレオチド、例えばアンロックド核酸(UNA)又はグリコール核酸(GNA)を挙げることができる。
【0131】
例示的な脱塩基修飾としては、限定されないが、以下が挙げられる:
【化3】
(式中、Rは、H、Me、Et又はOMeであり;R’は、H、Me、Et又はOMeであり;R’’は、H、Me、Et又はOMeであり;及び
*は、R、Sのいずれか又はラセミ体を表す)。
【0132】
例示的な不安定化糖修飾としては、限定されないが、以下が挙げられる:
【化4】
(式中、Bは、修飾又は非修飾核酸塩基である)。
【0133】
さらなる糖修飾としては、限定されないが、以下が挙げられる:
【化5】
(式中、Bは、修飾又は非修飾核酸塩基である)。
【0134】
一部の実施形態において、熱不安定化修飾は、
【化6】
(式中、Bは、修飾又は非修飾核酸塩基であり、各構造上のアスタリスクは、R、Sのいずれか又はラセミ体を表す)
からなる群から選択される。
【0135】
用語「非環状ヌクレオチド」は、非環状リボース糖を有する任意のヌクレオチドを指し、例えば、ここで、リボース炭素間(例えば、C1’-C2’、C2’-C3’、C3’-C4’、C4’-O4’又はC1’-O4’)の結合のいずれかが存在せず、及び/又はリボース炭素又は酸素(例えば、C1’、C2’、C3’、C4’又はO4’)の少なくとも1つが独立に又は組み合わせでヌクレオチドに存在しない。一部の実施形態では、非環状ヌクレオチドは、
【化7】
(式中、Bは、修飾又は非修飾核酸塩基であり、R
1及びR
2は、独立に、H、ハロゲン、OR
3又はアルキルであり;及びR
3は、H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖である)
である。用語「UNA」は、アンロックド非環状核酸を指し、ここで、糖の結合のいずれかが除去されており、アンロックド「糖」残基を形成している。一例では、UNAには、C1’~C4’間の結合(すなわちC1’炭素とC4’炭素との間の共有結合性の炭素-酸素-炭素結合)が除去されている単量体も包含される。別の例では、糖のC2’~C3’結合(すなわちC2’炭素とC3’炭素との間の共有結合性の炭素-炭素結合)が除去される(Mikhailov et.al.,Tetrahedron Letters,26(17):2059(1985);及びFluiter et al.,Mol.Biosyst.,10:1039(2009)(これらは、本明細書によって全体として参照により援用される)を参照されたい)。非環状誘導体は、ワトソン・クリック対合への影響なしに骨格の柔軟性をもたらす。非環状ヌクレオチドは、2’-5’又は3’-5’結合で連結することができる。
【0136】
用語「GNA」は、グリコール核酸を指し、これは、DNA又はRNAに類似しているが、リン酸ジエステル結合によって連結されたグリセロールの繰り返し単位で構成されている点でその「骨格」の組成が異なるポリマーである。
【化8】
【0137】
二重鎖の熱不安定化修飾は、dsRNA二重鎖内にある熱不安定化ヌクレオチドと、逆鎖の対向するヌクレオチドとの間のミスマッチ(すなわち非相補性塩基対)であり得る。例示的なミスマッチ塩基対としては、G:G、G:A、G:U、G:T、A:A、A:C、C:C、C:U、C:T、U:U、T:T、U:T又はこれらの組み合わせが挙げられる。当技術分野で公知の他のミスマッチ塩基対合も本発明に適している。ミスマッチは、天然に存在するヌクレオチド又は修飾されたヌクレオチドのいずれのヌクレオチド間にも現れ得、すなわち、ミスマッチ塩基対合は、ヌクレオチドのリボース糖上の修飾とは無関係に、それぞれのヌクレオチドからの核酸塩基間に現れ得る。特定の実施形態では、dsRNA分子は、2’-デオキシ核酸塩基であり;例えば、2’-デオキシ核酸塩基がセンス鎖にあるミスマッチ対合の少なくとも1つの核酸塩基を含む。
【0138】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖のシード領域における熱不安定化修飾には、標的mRNA上の相補的塩基とのW-C H結合の障害を示すヌクレオチドが含まれる。標的mRNA上の相補的塩基とのW-C H結合が障害されている例示的なヌクレオチドとしては、限定されないが、以下から独立に選択される核酸塩基を含むヌクレオチドが挙げられる。
【化9】
【0139】
脱塩基ヌクレオチド、非環状ヌクレオチド修飾(UNA及びGNAを含む)及びミスマッチ修飾のさらなる例は、国際公開第2011/133876号パンフレット(その全体が参照により本明細書中に援用される)に詳細に記載されている。
【0140】
熱不安定化修飾には、対向する塩基と水素結合を形成する能力が低下又は消失したユニバーサル核酸塩基及びリン酸修飾も含まれ得る。
【0141】
一部の実施形態では、熱不安定化修飾には、限定されないが、逆鎖の塩基と水素結合を形成する能力が障害された又は完全に消失した核酸塩基修飾など、非標準塩基を有するヌクレオチドが含まれる。これらの核酸塩基修飾は、国際公開第2010/0011895号パンフレット(全体として参照により本明細書中に援用される)に記載されるとおり、dsRNA二重鎖の中央領域の不安定化に関して評価されている。例示的なかかる核酸塩基修飾は、以下である。
【化10】
【0142】
一部の実施形態では、熱不安定化修飾には、
【化11】
(式中、Rは、H、OH、OCH
3、F、NH
2、NHMe、NMe
2又はO-アルキルである)
など、標的mRNA上の塩基に相補的な1つ以上の□-ヌクレオチドが含まれる。
【0143】
天然リン酸ジエステル結合と比較してdsRNA二重鎖の熱安定性を減少させることが公知の例示的なリン酸修飾としては、限定されないが、以下が挙げられる。
【化12】
【0144】
R基のアルキルは、C1~C6アルキルであり得る。R基の具体的なアルキルとしては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられる。
【0145】
一部の実施形態では、不安定化修飾は、以下から選択される。
【化13】
【0146】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾に隣接した少なくとも1つの安定化修飾を含む。例えば、安定化修飾は、不安定化修飾の5’末端又は3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から-1位又は+1位にあるヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の5’末端及び3’末端の各々、すなわち不安定化修飾の位置から-1位及び+1位に安定化修飾を含む。
【0147】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から+1位及び+2位に少なくとも2つの安定化修飾を含む。
【0148】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖にある二重鎖の熱不安定化修飾に対向するか又はそれと相補的な位置に熱安定化修飾を含まない。
【0149】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾に隣接した少なくとも1つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。例えば、2’-フルオロヌクレオチドは、不安定化修飾の5’末端又は3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から-1位又は+1位にあるヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の5’末端及び3’末端の各々、すなわち不安定化修飾の位置から-1位及び+1位に2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0150】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、不安定化修飾の3’末端、すなわち不安定化修飾の位置から+1位及び+2位に少なくとも2つの2’-フルオロヌクレオチドを含む。
【0151】
一部の実施形態では、センス鎖は、アンチセンス鎖にある二重鎖の熱不安定化修飾に対向するか又はそれと相補的な位置に2’-フルオロヌクレオチドを含まない。
【0152】
一部の実施形態では、dsRNA分子のセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドが修飾され得る。各ヌクレオチドは、非連結リン酸酸素及び/又は連結リン酸酸素の1つ以上の一方又は両方の1つ以上の変化;リボース糖の構成要素、例えばリボース糖上の2’ヒドロキシルの変化;リン酸部分を「デホスホ」リンカーにする大規模置換;天然に存在する塩基の修飾又は置換;及びリボース-リン酸骨格の置換又は修飾を含み得る同じ又は異なる修飾で修飾され得る。
【0153】
核酸は、単量体のポリマーであるため、多くの修飾は、核酸内で繰り返される位置に現れ、例えば塩基又はリン酸部分若しくはリン酸部分の非連結Oの修飾である。ある場合には、修飾は、核酸内の対象位置の全てに現れることになるが、多くの場合、そうはならないであろう。例として、修飾は、3’又は5’末端位置にのみ現れ得、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上又は鎖の最後の2、3、4、5又は10ヌクレオチドにある位置にのみ現れ得る。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域又は両方に現れ得る。修飾は、RNAの二本鎖領域にのみ現れ得るか又はRNAの一本鎖領域にのみ現れ得る。例えば、非連結O位置にあるホスホロチオエート修飾は、一方又は両方の末端にのみ現れ得、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上又は鎖の最後の2、3、4、5又は10ヌクレオチドにある位置にのみ現れ得るか、又は二本鎖及び一本鎖領域において、特に末端に現れ得る。1つ又は複数の5’末端がリン酸化され得る。
【0154】
例えば、安定性を高めること、オーバーハングに特定の塩基を含めること或いは一本鎖オーバーハング、例えば5’若しくは3’オーバーハング又は両方に修飾ヌクレオチド又はヌクレオチド代替物を含めることが可能であり得る。例えば、オーバーハングにプリンヌクレオチドを含めることが望ましいこともある。一部の実施形態において、3’又は5’オーバーハング中の塩基の全て又は一部は、例えば、本明細書に記載される修飾で修飾され得る。修飾は、例えば、リボース糖の2’位における当技術分野で公知の修飾による修飾の使用、例えばデオキシリボヌクレオチド、核酸塩基のリボ糖の代わりに修飾された2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’-F)又は2’-O-メチル及びリン酸基における修飾、例えばホスホロチオエート修飾の使用を含み得る。オーバーハングは、標的配列と相同である必要はない。
【0155】
一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の各残基は、独立に、LNA、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-メチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-デオキシ又は2’-フルオロで修飾される。鎖は、2つ以上の修飾を含み得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の各残基は、独立に、2’-O-メチル又は2’-フルオロで修飾される。dsRNAには、1つ又は複数のアルトリトールヌクレオチドに加えて、これらの修飾が存在することが理解されるべきである。
【0156】
一部の実施形態では、1つ又は複数のアルトリトールヌクレオシドに加えて、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖上に少なくとも2つの異なる修飾が存在し得る。これらの2つの修飾は、2’-デオキシ、2’-O-メチル、2’-フルオロ修飾、非環状ヌクレオチドなどであり得る。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ2’-O-メチル、2’-フルオロ及び/又は2’-デオキシから選択される2つの異なる修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の各残基は、独立に、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチド、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)ヌクレオチド、2’--ジメチルアミノエトキシエチル(2’-O-DMAEOE)ヌクレオチド、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)ヌクレオチド又は2’-ara-Fヌクレオチドで修飾される。この場合にもやはり、dsRNAには、1つ又は複数のアルトリトールヌクレオチドに加えて、これらの修飾が存在することが理解されるべきである。
【0157】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、特に、B1、B2、B3、B1’、B2’、B3’、B4’領域に交互パターンの修飾を含む。用語「交互モチーフ」又は「交互パターン」は、本明細書で用いられるとき、1つ以上の修飾を有し、各修飾が一方の鎖の交互のヌクレオチドに現れるモチーフを指す。交互のヌクレオチドとは、1つおきのヌクレオチド若しくは3つおきのヌクレオチド又は同様のパターンを指し得る。例えば、A、B及びCがそれぞれヌクレオチドに対する1つの種類の修飾を表す場合、交互モチーフは、「ABABABABABAB...」、「AABBAABBAABB...」、「AABAABAABAAB...」、「AAABAAABAAAB...」、「AAABBBAAABBB...」又は「ABCABCABCABC...」等であり得る。
【0158】
交互モチーフに含まれる修飾の種類は、同じであるか又は異なり得る。例えば、A、B、C、Dがそれぞれヌクレオチド上の1つの種類の修飾を表す場合、交互パターン、すなわち1つおきのヌクレオチドの修飾は、同じであり得るが、センス鎖又はアンチセンス鎖の各々は、「ABABAB...」、「ACACAC...」「BDBDBD...」又は「CDCDCD...」などの交互モチーフの範囲内にある修飾の幾つかの可能性から選択され得る。
【0159】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、センス鎖上の交互モチーフ修飾パターンがアンチセンス鎖上の交互モチーフ修飾パターンに対してシフトしたもの含む。このシフトは、センス鎖の修飾された一群のヌクレオチドが、アンチセンス鎖の別様に修飾された一群のヌクレオチドに対応するようなもの及びその逆であり得る。例えば、dsRNA二重鎖においてセンス鎖がアンチセンス鎖と対を成すとき、二重鎖領域の範囲内でセンス鎖の交互モチーフが鎖の5’-3’に「ABABAB」で始まり得、アンチセンス鎖の交互モチーフが鎖の3’-5’に「BABABA」で始まり得る。別の例として、二重鎖領域の範囲内でセンス鎖の交互モチーフが鎖の5’-3’に「AABBAABB」で始まり得、アンチセンス鎖の交互モチーフが鎖の3’-5’に「BBAABBAA」で始まり得、したがってセンス鎖とアンチセンス鎖との間に修飾パターンの完全な又は部分的なシフトがある。
【0160】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、標的との、二重鎖の範囲内にあるか又はこれらの組み合わせの1つ又は複数のミスマッチを含む。ミスマッチは、オーバーハング領域又は二重鎖領域に現れ得る。塩基対は、解離又は融解を促進するその傾向を基準として順位を付けることができる(例えば、特定の対合の会合又は解離の自由エネルギーに関して、最も単純な手法は、個々の対塩基上の対を調べることであるが、隣接塩基分析又は同様の分析を用いることもできる)。解離を促進する点では、G:CよりもA:Uが好ましく;G:CよりもG:Uが好ましく;及びG:CよりもI:Cが好ましい(I=イノシン)。ミスマッチ、例えば非標準的な又は標準以外の対合(本明細書の他の部分に記載されるとおり)は、標準的な(A:T、A:U、G:C)対合よりも好ましく;及びユニバーサル塩基を含む対合は、標準的な対合よりも好ましい。
【0161】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、アンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内にある最初の1、2、3、4又は5塩基対の少なくとも1つ(これは、A:U、G:U、I:Cの群から独立に選択され得る)及びミスマッチ対、例えば非標準的な若しくは標準以外の対合又はユニバーサル塩基を含む対合を含み、二重鎖の5’末端におけるアンチセンス鎖の解離を促進する。
【0162】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内の1つの位置にあるヌクレオチドは、A、dA、dU、U及びdTからなる群から選択される。代わりに、アンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内にある最初の1、2又は3塩基対の少なくとも1つは、AU塩基対である。例えば、アンチセンス鎖の5’末端からの二重鎖領域内にある最初の塩基対は、AU塩基対である。
【0163】
理論によって拘束されることを望むものではないが、一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチドの任意の位置にあるジヌクレオチドのリン酸ジエステル(PO)、ホスホロチオエート(PS)及び/又はホスホロジチオエート(PS2)結合の3’末端に4’-修飾及び/又は5’-修飾ヌクレオチドを導入すると、ヌクレオチド間結合に立体効果が及ぼされ、したがってそれがヌクレアーゼから保護されるか又は安定化し得る。
【0164】
一部の実施形態では、5’-修飾ヌクレオシドは、dsRNA分子の任意の位置にあるジヌクレオチドの3’末端に導入される。例えば、dsRNAの任意の位置にあるジヌクレオチドの3’末端に5’-アルキル化ヌクレオシドが導入され得る。リボース糖の5’位置にあるアルキル基は、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体であり得る。例示的な5’-アルキル化ヌクレオシドは、5’-メチルヌクレオシドである。5’-メチルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。
【0165】
一部の実施形態では、dsRNAの任意の位置にあるジヌクレオチドの3’末端に4’-修飾ヌクレオシドが導入される。例えば、dsRNAの任意の位置にあるジヌクレオチドの3’末端に4’-アルキル化ヌクレオシドが導入され得る。リボース糖の4’位置にあるアルキル基は、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体であり得る。例示的な4’-アルキル化ヌクレオシドは、4’-メチルヌクレオシドである。4’-メチルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。代わりに、一本鎖又は二本鎖siRNAの任意の位置にあるジヌクレオチドの3’末端に4’-O-アルキル化ヌクレオシドが導入され得る。リボース糖の4’-O-アルキルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体であり得る。例示的な4’-O-アルキル化ヌクレオシドは、4’-O-メチルヌクレオシドである。4’-O-メチルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。
【0166】
一部の実施形態では、dsRNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖上の任意の位置に5’-アルキル化ヌクレオシドが導入され、かかる修飾は、dsRNAの効力を維持又は改善する。5’-アルキルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な5’-アルキル化ヌクレオシドは、5’-メチルヌクレオシドである。5’-メチルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。
【0167】
一部の実施形態では、dsRNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖上の任意の位置に4’-アルキル化ヌクレオシドが導入され、かかる修飾は、dsRNAの効力を維持又は改善する。4’-アルキルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な4’-アルキル化ヌクレオシドは、4’-メチルヌクレオシドである。4’-メチルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。
【0168】
一部の実施形態では、dsRNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖上の任意の位置に4’-O-アルキル化ヌクレオシドが導入され、かかる修飾は、dsRNAの効力を維持又は改善する。5’-アルキルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。例示的な4’-O-アルキル化ヌクレオシドは、4’-O-メチルヌクレオシドである。4’-O-メチルは、ラセミ体又はキラル的に純粋なR若しくはS異性体のいずれかであり得る。
【0169】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、2’-5’結合(2’-H、2’-OH及び2’-OMe含有及びP=O又はP=S含有)を含み得る。例えば、2’-5’結合修飾を使用してヌクレアーゼ耐性を促進するか、若しくはセンス鎖がアンチセンス鎖に結合するのを阻害することができるか、又はセンス鎖の5’末端に使用して、RISCによるセンス鎖の活性化を回避することができる。一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端から数えてN-1位とN-2位との間に2’-5’結合を含む。
【0170】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、L糖(例えば、2’-H、2’-OH及び2’-OMe含有のLリボース、L-アラビノース)を含み得る。例えば、こうしたL糖修飾を使用してヌクレアーゼ耐性を促進するか、若しくはセンス鎖がアンチセンス鎖に結合するのを阻害することができるか、又はセンス鎖の5’末端に使用して、RISCによるセンス鎖の活性化を回避することができる。一部の実施形態では、センス鎖は、5’末端にL糖ヌクレオチドを含む。
【0171】
したがって、センス鎖及びアンチセンスの少なくとも一方は、センス鎖又はアンチセンス鎖の5’末端から数えて5~17位、例えば6~16位、6~15位、6~14位、6~13位、6~12位、7~15位、7~14位、7~13位、7~12位、8~16位、8~15位、8~14位、8~13位、8~12位、9~16位、9~15位、9~14位、9~13位、9~12位、10~16位、10~15位、10~14位、10~13位又は10~12位に少なくとも1つ、例えば少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7つ又はそれを超える2’-デオキシ修飾を含み得る。
【0172】
一部の実施形態では、dsRNAは、少なくとも3つの2’-デオキシ修飾を含み、ここで、2’-デオキシ修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の2及び14位にあり、及びセンス鎖の5’末端から数えてセンス鎖の11位にある。
【0173】
一部の実施形態では、dsRNAは、少なくとも5つの2’-デオキシ修飾を含み、ここで、2’-デオキシ修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の2、12及び14位にあり、及びセンス鎖の5’末端から数えてセンス鎖の9及び11位にある。
【0174】
一部の実施形態では、dsRNAは、少なくとも7つの2’-デオキシ修飾を含み、ここで、2’-デオキシ修飾は、アンチセンス鎖の5’末端から数えてアンチセンス鎖の2、5、7、12及び14位にあり、及びセンス鎖の5’末端から数えてセンス鎖の9及び11位にある。
【0175】
一部の実施形態では、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて2、5、7、12及び14位に少なくとも5つの2’-デオキシ修飾を含む。これの一部のさらなる実施形態において、アンチセンス鎖は、長さが18~25ヌクレオチド、好ましくは長さが18~23ヌクレオチドである。
【0176】
一部の実施形態では、dsRNA剤は、1つ以上の非天然ヌクレオチドを含み得る。例えば、dsRNA剤は、非天然ヌクレオチドを20%未満、例えば15%未満、10%未満又は5%未満だけ含み得るか、又はdsRNAは、非天然ヌクレオチドを含まない。例えば、dsRNA剤は、全て天然ヌクレオチドを含む。一部の例示的な非天然ヌクレオチドとしては、限定されないが、非環状ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル(2’-O-DMAEOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)及び2’-ara-Fが挙げられる。
【0177】
リガンド
多様な実体が本発明のオリゴヌクレオチドにカップリングされ得る。好ましい部分は、好ましくは共有結合的に、直接的に又は介在テザーを介して間接的にカップリングされたリガンドである。
【0178】
好ましい実施形態では、リガンドは、それが中に組み込まれる分子の分布、ターゲティング又は寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、選択される標的、例えば分子、細胞若しくは細胞型、区画、受容体、例えば細胞若しくは臓器区画、組織、臓器又は身体領域に対して、例えばかかるリガンドを有しない種と比べて、増強された親和性をもたらす。選択された標的に対して増強された親和性をもたらすリガンドは、標的化リガンドとも称される。
【0179】
一部のリガンドは、エンドソーム溶解特性を有し得る。エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームの溶解及び/又は本発明の組成物若しくはその成分の細胞のエンドソームから細胞質への輸送を促進する。エンドソーム溶解リガンドは、pH依存性の膜活性及び膜融合性を示す、ポリアニオンペプチド又はペプチドミメティックであり得る。一部の実施形態では、エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームpHでその活性型立体構造を取る。「活性型」立体構造は、エンドソーム溶解リガンドがエンドソームの溶解及び/又は本発明の組成物若しくはその成分の細胞のエンドソームから細胞質への輸送を促進するような立体構造である。例示的なエンドソーム溶解リガンドとして、GALAペプチド(Subbarao et al.,Biochemistry,1987,26:2964-2972、その全体が参照により援用される)、EALAペプチド(Vogel et al.,J.Am.Chem.Soc.,1996,118:1581-1586、その全体が参照により援用される)及びそれらの誘導体(Turk et al.,Biochem.Biophys.Acta,2002,1559:56-68、その全体が参照により援用される)が挙げられる。一部の実施形態では、エンドソーム溶解成分は、pHの変化に応答して、電荷又はプロトン化にて変化を経ることになる化学基(例えば、アミノ酸)を含有し得る。エンドソーム溶解成分は、線状又は分岐状であり得る。
【0180】
リガンドは、輸送、ハイブリダイゼーション及び特異性特性を改善し得、また得られる天然又は修飾オリゴリボヌクレオチド或いは本明細書に記載の単量体及び/又は天然若しくは修飾リボヌクレオチドの任意の組み合わせを含むポリマー分子のヌクレアーゼ耐性を改善し得る。
【0181】
リガンドは、一般に、例えば取り込みを増強するための治療修飾因子;例えば分布を監視するための診断化合物又はレポーター基;架橋剤;及びヌクレアーゼ耐性を与える部分を含み得る。一般例として、脂質、ステロイド、ビタミン、糖、タンパク質、ペプチド、ポリアミン及びペプチド模倣物が挙げられる。
【0182】
リガンドは、天然に存在する物質、例えばタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)又はグロブリン);炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン又はヒアルロン酸);又は脂質を含み得る。リガンドは、組換え又は合成分子、例えば合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)でもあり得る。ポリアミノ酸の例として、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水物共重合体、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)共重合体、ジビニルエーテル-マレイン無水物共重合体、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド共重合体(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-アクリル酸エチル)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー又はポリホスファジンであるポリアミノ酸が挙げられる。ポリアミンの例として、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬ペプチド-ポリアミン、ペプチドミメティックポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩又はαヘリカルペプチドが挙げられる。
【0183】
リガンドは、標的基、例えば細胞又は組織標的化剤、例えばレクチン、糖タンパク質、脂質又はタンパク質、例えば腎細胞などの特定細胞型に結合する抗体も含み得る。標的基は、サイロトロピン、メラノトロトピン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤タンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸塩、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチドミメティック又はアプタマーであり得る。表2は、ターゲティングリガンドの幾つかの例及びその関連する受容体を示す。
【0184】
リガンドの他の例としては、染料、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ又はキレート剤(例えば、EDTA)、例えばコレステロールなどの親油性分子、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル又はフェノキサジン)及びペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスフェート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進薬(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾール複合体、テトラアザ大環状化合物のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP又はAPが挙げられる。
【0185】
リガンドは、例えば、糖タンパク質などのタンパク質;又は例えば共リガンドに特異的親和性を有する分子などのペプチド;又は例えば癌細胞、内皮細胞又は骨細胞などの指定された細胞型に結合する抗体などの抗体であり得る。リガンドは、ホルモン及びホルモン受容体も含み得る。それらは、脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補助因子、多価乳糖、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース又はアプタマーなどの非ペプチド化学種も含み得る。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38 MAPキナーゼ活性化因子又はNF-κB活性化因子であり得る。
【0186】
リガンドは、例えば、細胞の微小管、微小繊維及び/又は中間径フィラメントを破壊することで、例えば細胞の細胞骨格を破壊することにより、細胞へのiRNA剤の取り込みを増大させ得る薬剤などの物質であり得る。薬剤は、例えば、タキソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン又はミオセルビンであり得る。
【0187】
リガンドは、オリゴヌクレオチドの細胞への取り込みを、例えば炎症性応答を活性化することにより増強し得る。かかる効果を有することになる例示的リガンドは、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-1β又はγインターフェロンを含む。
【0188】
一態様では、リガンドは、脂質又は脂質に基づく分子である。このような脂質又は脂質ベースの分子は、好ましくは、例えばヒト血清アルブミン(HSA)などの血清タンパク質と結合する。HSA結合リガンドは、例えば、身体の非腎臓標的組織などの標的組織への複合体の分布を可能にする。例えば、標的組織は、肝臓の実質細胞をはじめとする肝臓であり得る。HSAに結合し得る他の分子もリガンドとして使用され得る。例えば、ナプロキセン又はアスピリンを使用し得る。脂質又は脂質ベースのリガンドは、(a)複合体の分解耐性を増大させ得、(b)標的細胞又は細胞膜の標的化又はそれへの輸送を増大させ得、及び/又は(c)例えばHSAなどの血清タンパク質の結合を調節するために使用され得る。
【0189】
例えば、複合体の標的組織への結合を調節するなど、阻害のために、脂質ベースのリガンドを使用し得る。例えば、より強力にHSAに結合する脂質又は脂質ベースのリガンドは、腎臓に標的化される可能性がより低く、したがって身体から除去される可能性がより低い。より弱くHSAに結合する脂質又は脂質ベースのリガンドは、複合体を腎臓に標的化するために使用され得る。
【0190】
好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。好ましくは、それは、複合体が好ましくは非腎臓組織に分布するように、十分な親和性でHSAと結合する。しかし、親和性は、HSAリガンド結合が逆転され得ない程度にまで、強力ではないことが好ましい。
【0191】
他の好ましい実施形態では、複合体が好ましくは腎臓に分布するように、脂質ベースのリガンドはHSAと弱く結合するか又は全く結合しない。腎細胞を標的とする他の部分も脂質ベースのリガンドに代えて又はそれに加えて使用され得る。
【0192】
別の態様では、リガンドは、例えば、増殖細胞などの標的細胞に取り込まれる、ビタミンなどの部分である。これらは、例えば、癌細胞などの悪性又は非悪性型などの望まれない細胞増殖によって特徴付けられる障害を治療するために特に有用である。例示的なビタミンとしては、ビタミンA、E及びKが挙げられる。他の例示的なビタミンとしては、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールなどのBビタミン又は癌細胞に取り込まれる他のビタミン又は栄養素が挙げられる。またHAS及び低密度リポタンパク質(LDL)及び高比重リポタンパク質(HDL)も挙げられる。
【0193】
別の態様では、リガンドは細胞透過剤であり、好ましくはらせん細胞透過剤である。好ましくは、細胞透過剤は両親媒性である。例示的な細胞透過剤は、tat又はアンテノペディアなどのペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、それはペプチジル模倣薬、逆転異性体、非ペプチド又は偽ペプチド結合及びD-アミノ酸使用をはじめとする、修飾を受け得る。らせん剤は、好ましくは親油性及び疎油性相を有するα-らせん剤である。
【0194】
リガンドは、ペプチド又はペプチド模倣体であり得る。ペプチド模倣薬(本明細書においてオリゴペプチド模倣薬とも称される)は、天然ペプチドに類似する定義された三次元構造に折り畳み可能な分子である。ペプチド又はペプチド模倣薬部分は、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50アミノ酸長など、約5~50アミノ酸長であり得る。ペプチド又はペプチド模倣薬は、例えば、細胞透過性ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド又は疎水性ペプチド(例えば、主にTyr、Trp又はPheからなる)であり得る。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、束縛ペプチド又は架橋ペプチドであり得る。別の代案では、ペプチド部分は、疎水性膜移行配列(MTS)を含み得る。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAPを有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP)も標的部分であり得る。ペプチド部分は、細胞膜を越えて、ペプチド、オリゴヌクレオチド及びタンパク質をはじめとする、多数の極性分子を輸送し得る「送達」ペプチドであり得る。例えば、HIV Tatタンパク質(GRKKRRQRRRPPQ)及びショウジョウバエ(Drosophila)アンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK)からの配列は、送達ペプチドとして機能できることが分かっている。ペプチド又はペプチドミメティック、例えばファージディスプレイライブラリー又は1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリー(Lam et al.,Nature,354:82-94,1991、その全体が参照により援用される)から同定されるペプチドは、DNAのランダム配列によりコードされ得る。好ましくは、組み込まれた単量体単位を介してiRNA剤に繋ぎ止められたペプチド又はペプチドミメティックは、細胞を標的とするペプチド、例えばアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)-ペプチド又はRGDミミックである。ペプチド部分は、約5アミノ酸長~約40アミノ酸長の範囲であり得る。ペプチド部分は、例えば、安定性を増強するか又は立体構造的特性を導くために構造的修飾を有し得る。下記の構造的修飾のいずれかを用いることができる。腫瘍細胞、例えば内皮腫瘍細胞又は乳癌腫瘍細胞を標的とするため、RGDペプチド部分を用いることができる(Zitzmann et al.,Cancer Res.,62:5139-43,2002、その全体が参照により援用される)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓又は肝臓を含む種々の他の組織の腫瘍へのiRNA剤の標的化を促進し得る(Aoki et al.,Cancer Gene Therapy 8:783-787,2001、その全体が参照により援用される)。好ましくは、RGDペプチドは、腎臓へのiRNA剤の標的化を促進することになる。RGDペプチドは、線状又は環状であり得、また特定組織への標的化を促進するため、修飾、例えばグリコシル化又はメチル化がなされ得る。例えば、グリコシル化されたRGDペプチドは、iRNA剤を、αVβ3を発現する腫瘍細胞に送達し得る(Haubner et al.,Jour.Nucl.Med.,42:326-336,2001、その全体が参照により援用される)。増殖性細胞内に豊富に存在するマーカーを標的にするペプチドを用いることができる。例えば、RGD含有ペプチド及びペプチドミメティックは、癌細胞、特にインテグリンを提示する細胞を標的にし得る。したがって、RGDペプチド、RGDを有する環状ペプチド、D-アミノ酸を含むRGDペプチド並びに合成RGDミミックを用いることができる。RGDに加えて、インテグリンリガンドを標的にする他の部分を用いることができる。一般に、増殖性細胞及び血管新生を制御するため、かかるリガンドを用いることができる。このタイプのリガンドの好ましいコンジュゲートは、PECAM-1、VEGF又は他の癌遺伝子、例えば本明細書に記載の癌遺伝子を標的にする。
【0195】
「細胞透過性ペプチド」は、例えば、細菌又は真菌細胞などの微生物細胞又はヒト細胞などの哺乳類細胞などの細胞に浸透できる。微生物細胞透過性ペプチドは、例えば、α-らせん直鎖ペプチド(例えば、LL-37又はセクロピンP1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α-デフェンシン、β-デフェンシン又はバクテネシン)又は1つ又は2つの主要アミノ酸(例えば、PR-39又はインドリシジン)のみを含有するペプチドであり得る。細胞透過性ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)も含み得る。例えば、細胞浸透ペプチドは、二連の両親媒性ペプチド、例えばMPGであり得、それはHIV-1 gp41及びSV40ラージT抗原のNLSの融合ペプチドドメインから誘導される(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717-2724,2003、その全体が参照により援用される)。
【0196】
一部の実施形態では、標的化ペプチドは、両親媒性α-ヘリカルペプチドであり得る。例示的な両親媒性α-ヘリカルペプチドとして、限定されないが、セクロピン、リコトキシン、パラダキシン、ブフォリン、CPF、ボンビニン様ペプチド(BLP)、カテリシジン、セラトトキシン、S.クラバ(S.Clava)ペプチド、メクラウナギ腸管抗菌ペプチド(HFIAP)、マガイニン、ブレビニン-2、ダーマセプチン、メリチン、プレウロシディン、H2Aペプチド、アフリカツメガエルのペプチド、エスカレンチン-1及びカエリンが挙げられる。らせん安定性の完全性を維持するため、好ましくは幾つかの要素が考慮されることになる。例えば、最大数のらせん安定化残基が用いられることになり(例えば、leu、ala又はlys)、最小数のらせん不安定化残基が用いられることになる(例えば、プロリン又は環状単量体単位。キャッピング残基が検討されることになり(例えば、Glyは例示的なN-キャッピング残基であり、且つ/又はさらなるH結合を提供し、らせんを安定化するため、C末端アミド化を用いることができる。i±3又はi±4位によって分離された、反対の電荷を有する残基間での塩架橋の形成は、安定性をもたらし得る。例えば、リジン、アルギニン、ホモアルギニン、オルニチン又はヒスチジンなどのカチオン性残基は、アニオン性残基のグルタミン酸又はアスパラギン酸と塩架橋を形成し得る。
【0197】
ペプチド及びペプチドミメティックリガンドは、天然又は修飾ペプチド、例えばD又はLペプチド;α、β又はγペプチド;N-メチルペプチド;アザペプチド;1つ以上のアミドを有するペプチド、すなわち結合が1つ以上の尿素、チオ尿素、カルバメート又はスルホニル尿素結合と置換されたペプチド;又は環状ペプチドを有するものを含む。
【0198】
標的リガンドは、特定の受容体を標的とする能力がある任意のリガンドであり得る。例として、葉酸塩、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、糖のクラスター、例えばGalNAcクラスター、マンノースクラスター、ガラクトースクラスター又はアプタマーが挙げられる。クラスターは、2つ以上の糖単位の組み合わせである。標的化リガンドは、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDL及びHDLリガンドも含む。リガンドは、核酸、例えばアプタマーにも基づき得る。アプタマーは、修飾されないか、又は本明細書に開示される修飾の任意の組み合わせを有し得る。
【0199】
エンドソーム放出剤は、イミダゾール、ポリ又はオリゴイミダゾール、PEI、ペプチド、膜融合ペプチド、ポリカルボキシレート、ポリカチオン、マスク化オリゴ若しくはポリカチオン又はアニオン、アセタール、ポリアセタール、ケタール/ポリケタール、オルトエステル、マスク化若しくは非マスク化カチオン又はアニオン電荷を有するポリマー、マスク化若しくは非マスク化カチオン又はアニオン電荷を有するデンドリマーを含む。
【0200】
PK修飾因子は、薬物動態修飾因子を表す。PK修飾因子は、脂溶性剤、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどを含む。例示的なPK修飾因子として、限定されないが、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられる。幾つかのホスホロチオエート結合を含むオリゴヌクレオチドは、血清タンパク質、すなわち短いオリゴヌクレオチド、例えば約5塩基、10塩基、15塩基又は20塩基のオリゴヌクレオチドに結合することも知られており、骨格において複数のホスホロチオエート結合を含むことで、さらにリガンドとして(例えば、PK調節性リガンドとして)本発明に適する。
【0201】
さらに、血清成分(例えば、血清タンパク質)に結合するアプタマーもPK調節性リガンドとして本発明に適する。
【0202】
本発明に適した他のリガンドコンジュゲートは、米国特許出願の、2004年8月10日に出願された米国特許出願公開第10/916,185号明細書;2004年9月21日に出願された米国特許出願公開第10/946,873号明細書;2007年8月3日に出願された米国特許出願公開第10/833,934号明細書;2005年4月27日に出願された米国特許出願公開第11/115,989号明細書及び2007年11月21日に出願された米国特許出願公開第11/944,227号明細書(あらゆる目的でそれら全体が参照により援用される)に記載されている。
【0203】
2つ以上のリガンドが存在するとき、リガンドは、全部が同じ特性を有する、全部が異なる特性を有するか、又は一部のリガンドが同じ特性を有する一方、その他は異なる特性を有する可能性がある。例えば、リガンドは、標的化特性を有する、エンドソーム溶解活性を有するか、又はPK調節特性を有する可能性がある。好ましい実施形態では、全てのリガンドは、異なる特性を有する。
【0204】
リガンドは、様々な場所、例えば3’末端、5’末端及び/又は内部位置で、オリゴヌクレオチドにカップリングされ得る。好ましい実施形態では、リガンドは、介在テザー、例えば本明細書に記載の担体を介してオリゴヌクレオチドに結合される。リガンド又はテザーリガンドは、単量体上に、前記単量体が伸長鎖に組み込まれるときに存在し得る。一部の実施形態では、リガンドは、前記「前駆体」単量体が伸長鎖に組み込まれた後、「前駆体」単量体へのカップリングを介して組み込まれ得る。例えば、例えばTAP-(CH2)nNH2などのアミノ終端テザー(すなわち会合されるリガンドを有しない)を有する単量体は、伸長するオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれ得る。その後の操作において、すなわち前駆体単量体の鎖への組み込み後、求電子基、例えばペンタフルオロフェニルエステル又はアルデヒド基を有するリガンドは、次いでリガンドの求電子基を前駆体単量体のテザーの末端求核基とカップリングすることにより、前駆体単量体に結合され得る。
【0205】
別の例では、クリックケミストリー反応への関与に適した化学基、例えばアジド又はアルキン終端テザー/リンカーを有する単量体が組み込まれ得る。その後の操作において、すなわち前駆体単量体の鎖への組み込み後、相補的化学基、例えばアルキン又はアジドを有するリガンドは、アルキン及びアジドを一緒にカップリングすることにより、前駆体単量体に結合され得る。
【0206】
二重鎖オリゴヌクレオチドでは、リガンドは、片鎖又は両鎖に結合され得る。一部の実施形態では、二本鎖iRNA剤は、センス鎖にコンジュゲートされたリガンドを有する。他の実施形態では、二本鎖iRNA剤は、アンチセンス鎖にコンジュゲートされたリガンドを有する。
【0207】
一部の実施形態では、リガンドは、核酸塩基、糖部分又は核酸分子のヌクレオシド間結合にコンジュゲートされ得る。プリン核酸塩基又はその誘導体へのコンジュゲーションは、環内及び環外原子を含む、任意の位置で生じ得る。一部の実施形態では、プリン核酸塩基の2位、6位、7位又は8位は、コンジュゲート部分に結合される。ピリミジン核酸塩基又はその誘導体へのコンジュゲーションも任意の位置で生じ得る。一部の実施形態では、ピリミジン核酸塩基の2位、5位及び6位は、コンジュゲート部分と置換され得る。ヌクレオシドの糖部分へのコンジュゲーションは、任意の炭素原子で生じ得る。コンジュゲート部分に結合され得る糖部分の炭素原子の例として、2’、3’及び5’炭素原子が挙げられる。1’位も例えば脱塩基残基においてコンジュゲート部分に結合され得る。ヌクレオシド間結合もコンジュゲート部分を有し得る。リン含有結合(例えば、リン酸ジエステル、ホスホロチオエート、ジチオリン酸、ホスホロアミド酸など)では、コンジュゲート部分は、リン原子に直接的に、又はリン原子に結合されたO、N若しくはS原子に結合され得る。アミン又はアミド含有ヌクレオシド間結合(例えば、PNA)では、コンジュゲート部分は、アミン若しくはアミドの窒素原子又は隣接する炭素原子に結合され得る。
【0208】
一部の実施形態では、リガンドは、センス鎖にコンジュゲートされる。本明細書に記載のとおり、リガンドは、センス鎖の3’末端、5’末端又は内部位置にコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされる。さらに、リガンドは、センス鎖の核酸塩基、糖部分又はヌクレオチド間結合にコンジュゲートされ得る。
【0209】
RNA干渉の分野における任意の好適なリガンドが用いられ得るが、リガンドは、典型的には、炭水化物、例えば単糖(GalNAcなど)、二糖、三糖、四糖、多糖である。
【0210】
リガンドを核酸にコンジュゲートするリンカーは、上で検討されたものを含む。例えば、リガンドは、一価、二価又は三価分岐リンカーを通して結合された1つ以上のGalNAc(N-アセチルガラクトサミン)誘導体であり得る。
【0211】
一部の実施形態では、本発明のdsRNAは、二価及び三価分岐リンカーにコンジュゲートされ、式(IV)~(VII):
【化14】
(式中、q
2A、q
2B、q
3A、q
3B、q
4A、q
4B、q
5A、q
5B及びq
5Cは、独立に、0~20の各存在を表し、ここで、反復単位は、同じ又は異なる可能性があり;
P
2A、P
2B、P
3A、P
3B、P
4A、P
4B、P
5A、P
5B、P
5C、T
2A、T
2B、T
3A、T
3B、T
4A、T
4B、T
5A、T
5B、T
5Cは、それぞれ独立に、不在、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH又はCH
2Oの各存在を表し;
Q
2A、Q
2B、Q
3A、Q
3B、Q
4A、Q
4B、Q
5A、Q
5B、Q
5Cは、独立に、不在、アルキレン、置換アルキレンの各存在を表し、ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
N)、C(R’)=C(R’’)、C≡C又はC(O)の1つ以上により中断又は終結され得;
R
2A、R
2B、R
3A、R
3B、R
4A、R
4B、R
5A、R
5B、R
5Cは、それぞれ独立に、不在、NH、O、S、CH
2、C(O)O、C(O)NH、NHCH(R
a)C(O)、-C(O)-CH(R
a)-NH-、CO、CH=N-O、
【化15】
又はヘテロシクリルの各存在を表し;
L
2A、L
2B、L
3A、L
3B、L
4A、L
4B、L
5A、L
5B及びL
5Cは、リガンドを表す;すなわちそれぞれ独立に、単糖(GalNAcなど)、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖又は多糖の各存在を表し;且つ
R
aは、H又はアミノ酸側鎖である)
のいずれかに示される構造を含む。
【0212】
三価コンジュゲートGalNAc誘導体は、標的遺伝子、例えば式(VII):
【化16】
(式中、L
5A、L
5B及びL
5Cは、単糖、例えばGalNAc誘導体を表す)
のものの発現を阻害するための、RNAi剤との併用において特に有用である。
【0213】
GalNAc誘導体にコンジュゲートする好適な二価及び三価分岐リンカー基の例として、限定されないが、以下の化合物:
【化17-1】
【化17-2】
【化17-3】
が挙げられる。
【0214】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるdsRNAは、リガンド1、すなわち以下の構造を有するリガンドを含む。
【化18】
【0215】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるdsRNAは、米国特許第5,994,517号明細書又は米国特許第6,906,182号明細書(これらの各々の内容は、本明細書において全体として参照により援用される)に記載されるリガンドを含む。
【0216】
一部の実施形態では、リガンドは、米国特許第6,906,182号明細書の
図3に記載されるトリアンテナ型リガンドであり得る。例えば、本明細書に記載されるdsRNAは、以下のトリアンテナ型リガンドから選択されるリガンドを含み得る。
【化19】
【0217】
一部の実施形態では、リガンドは、多価リガンド、例えば式(VII)のリガンドである。一部のさらなる実施形態では、リガンドは、GalNAc誘導体、例えば本明細書に開示されるリガンド1~8から選択されるリガンドである。
【0218】
リガンドは、担体を介してdsRNAに付着し得る。担体は、(i)少なくとも1つの「骨格付着点」、好ましくは2つの「骨格付着点」、及び(ii)少なくとも1つの「テザー係留用付着点」を含む。「骨格付着点」は、本明細書で用いられるとき、官能基、例えばヒドロキシル基を指すか、又は一般にリボ核酸の骨格、例えばリン酸塩骨格又は修飾されたリン酸塩骨格、例えば含硫骨格への担体の取り込みに利用可能であり且つそれに好適な結合を指す。「テザー係留用付着点」(TAP)は、一部の実施形態では、選択された部分を結び付ける環状担体の構成環原子、例えば炭素原子又はヘテロ原子(骨格付着点を提供する原子と異なる)を指す。この部分は、例えば、炭水化物、例えば単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖及び多糖であり得る。任意選択で、選択された部分は、介在テザーによって環状担体に結び付けられる。したがって、環状担体は、多くの場合、官能基、例えばアミノ基を含むか、又は一般に構成環への別の化学的実体、例えばリガンドの取り込み又はテザー係留に好適な結合を提供することになる。
【0219】
1つの実施形態では、本発明のdsRNA分子は、担体によってリガンドにコンジュゲートされ、ここで、担体は、環式基又は非環式基であり得;好ましくは、環式基は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、[1,3]ジオキソラン、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニル、テトラヒドロフリル及びデカリンから選択され;好ましくは、非環式基は、セリノール骨格又はジエタノールアミン骨格から選択される。
【0220】
リガンドは、3’末端、5’末端又は両方の末端でセンス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖に付着し得る。例えば、リガンドは、センス鎖、詳細には、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされ得る。
【0221】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、少なくとも1つのASGPRリガンドを含む。例えば、ASGPRリガンドは、
【化20】
など、二価又は三価分岐リンカーを介して付着した1つ以上のGalNAc誘導体である。
【0222】
一例では、ASGPRリガンドは、センス鎖の3’末端に付着する。
【0223】
リンカー
本明細書に開示されるコンジュゲートの態様は、1つ以上のリンカー成分を含み得るリンカーを含む。用語「リンカー」は、化合物の2つのパート、例えばDVD免疫グロブリンをdsRNAに結び付ける有機部分を意味する。リンカーは、典型的には、直接的な結合又は酸素若しくは硫黄などの原子、NR1、C(O)、C(O)O、C(O)NR1、SO、SO2、SO2NHなどの単位又は一連の原子、例えば置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール(ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO2、N(R1)2、C(O)、切断可能な連結基、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換ヘテロ環式基が割り込み得るか、又はそれが末端にあり得;式中、R1は、水素、アシル、脂肪族又は置換脂肪族である)などを含む。
【0224】
限定なしに、主題のdsRNAには、限定されないが、切断可能リンカー及び非切断可能リンカー並びに可逆的リンカー及び不可逆的リンカーを含め、各種のリンカー官能基が含まれ得る。
【0225】
一部の実施形態では、リンカーは、切断可能リンカーである。切断可能リンカーは、リンカーが一体に保持している2つのパートを遊離させるために、細胞質における還元、リソソーム若しくはエンドソームにおける酸性条件への曝露又は細胞内での特異的酵素(例えばプロテアーゼ)による切断など、標的細胞内部の過程に依存するものである。したがって、切断可能リンカーによれば、標的細胞内部でのインターナリゼーション及びプロセシング後に2つのパートがその元の形態で放出されることが可能となる。切断可能リンカーとしては、限定されないが、酵素(例えば、ペプチドリンカー);還元条件(例えば、ジスルフィドリンカー);又は酸性条件(例えば、ヒドラゾン及び炭酸塩)によってその結合を切断できるものが挙げられる。
【0226】
概して、切断可能リンカーは、少なくとも1つの切断可能な連結基を含む。切断可能な連結基は、細胞外部で十分に安定であるが、標的細胞への侵入時、切断され、リンカーが一緒に保持している2つの部分を放出するものである。好ましい実施形態では、切断可能な連結基は、標的細胞において、又は第1の参照状態(例えば、細胞内状態を模倣するか又は表すように選択され得る)下において、又は第2の参照状態(例えば、血液又は血清中に見出される状態を模倣するか又は表すように選択され得る)下において、対象の血液又は血清中よりも少なくとも10倍以上、好ましくは少なくとも100倍速く切断される。
【0227】
切断可能な連結基は、切断剤、例えばpH、酸化還元電位又は分解性分子の存在の影響を受けやすい。一般に、切断剤は、血清又は血液中よりも細胞内部により広く存在しているか、又はより高いレベル若しくは活性で見出される。かかる分解剤の例として、特定の基質のために選択されるか、又は基質特異性を有しないレドックス剤、例えば細胞内に存在する、酸化若しくは還元酵素又は還元によりレドックス切断可能な連結基を分解し得る還元剤、例えばメルカプタン;エステラーゼ;エンドソーム又は酸性環境を創出し得る薬剤、例えば5以下のpHをもたらすもの;一般酸として作用することにより酸切断可能な連結基を加水分解又は分解し得る酵素、ペプチダーゼ(基質特異的であり得る)及びホスファターゼが挙げられる。
【0228】
ジスルフィド結合などの切断可能連結基は、pHに対する感受性が高くあり得る。ヒト血清のpHが7.4であるのに対して、細胞内平均pHは、わずかにより低く、約7.1~7.3の範囲にわたる。エンドソームは、5.5~6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、約5.0のさらにより酸性のpHを有する。幾つかのリンカーは、好ましいpHで切断される切断可能連結基を有し、それによって細胞中のリガンドから又は細胞の所望の区画にカチオン性脂質が放出される。
【0229】
リンカーは、特定の酵素によって切断可能な切断可能連結基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能連結基のタイプは、標的とされる細胞に左右され得る。例えば、肝臓を標的化するリガンドは、エステル基を含むリンカーを通してカチオン性脂質に連結し得る。肝細胞はエステラーゼに富み、したがってリンカーは、エステラーゼが豊富でない細胞型よりも、肝細胞中でより効率的に切断される。エステラーゼに富む他の細胞型としては、肺、腎皮質及び精巣の細胞が挙げられる。ペプチド結合を含有するリンカーは、肝細胞及び滑膜細胞などのペプチダーゼに富んだ細胞型を標的化する際に使用し得る。
【0230】
一般に、切断可能連結基の候補の適合性は、候補連結基を切断する分解性作用物質(条件)の能力を検査することで評価し得る。切断可能連結基の候補は、血中において又は他の非標的組織との接触時、切断に抵抗する能力についても検査することが望ましい。したがって第1の条件が標的細胞中での切断を示すように選択され、第2の条件が他の組織又は例えば血液又は血清などの生体液中での切断を示すように選択される、第1及び第2の条件間の切断の相対的感受性を判定し得る。評価は、無細胞系中、細胞中、細胞培養中、臓器又は組織培養中又は全身の動物中で実施し得る。無細胞又は培養条件で最初の評価を行い、全身の動物中でのさらなる評価によって確認することが有用なこともあり得る。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液又は血清(又は細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(又は細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも2、4、10又は100倍より迅速に切断される。
【0231】
切断可能な連結基の1つのクラスは、レドックス切断可能な連結基であり、それは、本発明に従うdsRNA分子において用いられ得、還元又は酸化時に切断される。還元的切断可能連結基の一例は、ジスルフィド連結基(-S-S-)である。切断可能連結基候補が、適切な「還元的切断可能連結基」であるか、又は例えば特定のiRNA部分及び特定の標的作用物質と共に使用するのに適するかどうかを判定するために、本明細書に記載される方法に依拠することができる。例えば、候補は、例えば、標的細胞などの細胞中で観察される切断速度を模倣する、当技術分野で公知の試薬を使用して、ジチオスレイトール(DTT)又は他の還元剤とのインキュベーションによって評価し得る。候補は、血液又は血清条件を模倣するように選択される条件下でも評価され得る。好ましい実施形態では、1つの候補化合物は、血中で最大で10%切断される。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液(又は細胞外条件を模倣するように選択された生体外条件下)と比較して、細胞中(又は細胞内条件を模倣するように選択された生体外条件下)で、少なくとも2、4、10又は約100倍より迅速に分解される。候補化合物の切断速度は、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で標準酵素動態アッセイを使用して、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較して判定し得る。
【0232】
リン酸に基づく切断可能な連結基は、本発明に従うdsRNA分子において用いられ得、リン酸基を分解又は加水分解する薬剤により切断される。細胞中でリン酸基を切断する作用物質の一例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの連結基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-S-P(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O-、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、-O-P(S)(H)-S-である。好ましい実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
【0233】
酸切断可能な連結基は、本発明に従うdsRNA分子において用いられ得、酸性条件下で切断される連結基である。好ましい実施形態では、酸切断可能連結基は、pH約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0以下)の酸性環境内において又は一般酸として作用し得る酵素などの作用物質によって切断される。細胞内では、エンドソーム及びリソソームなどの特定の低pH細胞小器官が、酸切断可能連結基の切断環境を提供し得る。酸切断可能連結基の例としては、ヒドラゾン、エステル及びアミノ酸エステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。酸切断可能基は、一般式-C=NN-、C(O)O又は-OC(O)を有し得る。好ましい実施形態は、炭素がエステルの酸素に付着する場合(アルコキシ基)は、アリール基、置換アルキル基又はジメチルペンチル又はt-ブチルなどの三級アルキル基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
【0234】
エステルに基づく切断可能な連結基は、本発明に従うdsRNA分子において用いられ得、細胞内でエステラーゼ及びアミダーゼなどの酵素により切断される。エステルベースの切断可能連結基の例としては、アルキレン、アルケニレン及びアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。エステル切断可能連結基は、一般式-C(O)O-又は-OC(O)-を有する。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
【0235】
ペプチドに基づく切断可能な連結基は、本発明に従うdsRNA分子において用いられ得、細胞内でペプチダーゼ及びプロテアーゼなどの酵素により切断される。ペプチドベースの切断可能連結基は、アミノ酸間に形成されて、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)及びポリペプチドを生じる、ペプチド結合である。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(-C(O)NH-)は含まれない。アミド基は、あらゆるアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン間に形成され得る。ペプチド結合は、アミノ酸間に形成されて、ペプチド及びタンパク質を生じる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断基は、一般にアミノ酸間に形成されて、ペプチド及びタンパク質を生じるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定され、アミド官能基全体は含まない。ペプチドベースの切断可能連結基は、一般式-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-を有し、式中、RA及びRBは2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上述したものと類似の方法を使用して評価し得る。
【0236】
dsRNAの使用
本明細書に記載されるdsRNAは、標的遺伝子の発現を阻害するために使用することができる。したがって、別の態様では、本明細書には、標的遺伝子の発現を阻害する方法が提供される。この方法は、標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な量の本明細書に記載されるdsRNAを細胞に投与するステップを含む。好ましい実施形態では、本発明は、インビトロで標的細胞における標的遺伝子の発現を阻害するための、本明細書に記載されるdsRNAの使用にさらに関する。
【0237】
例示的な標的遺伝子としては、限定されないが、β-カテニン(CTNNB1)、IRF4、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、ヘプシジン、活性化プロテインC、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-1遺伝子、β-カテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子の突然変異、p27(KIP1)遺伝子の突然変異、PPM1D遺伝子の突然変異、RAS遺伝子の突然変異、カベオリンI遺伝子の突然変異、MIB I遺伝子の突然変異、MTAI遺伝子の突然変異、M68遺伝子の突然変異、腫瘍抑制遺伝子の突然変異及びp53腫瘍抑制遺伝子の突然変異が挙げられる。
【0238】
一部の態様では、本明細書に記載されるdsRNAは、対象又は哺乳類の治療に使用することができる。
【0239】
医薬組成物
治療に使用するため、本明細書に記載されるdsNRAは、医薬組成物に製剤化することができる。したがって、別の態様では、本発明は、本明細書に定義するとおりのdsRNAを含む医薬組成物を提供する。薬学的に許容できる組成物は、単独で摂取されるか、又は1つ以上の薬学的に許容できる担体(添加剤)、賦形剤及び/又は希釈剤と一緒に配合される、本明細書に記載のdsRNAの1つ以上を治療有効量で含む。
【0240】
医薬組成物は、固体又は液体形態、例えば(1)経口投与、例えば水薬(水溶液又は非水溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば頬側、舌下及び全身吸収を標的とするもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への塗布のためのペースト剤;(2)例えば、例えば無菌溶液若しくは懸濁液又は徐放性製剤としての皮下、筋肉内、静脈内又は硬膜外注射による非経口投与;(3)例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏剤又は徐放性パッチ若しくはスプレーとしての局所適用;(4)例えば、ペッサリー、クリーム又はフォームとして腟内又は直腸内;(5)舌下;(6)眼内;(7)経皮;又は(8)経鼻に適応するものでの投与に特化して配合され得る。皮下又は静脈内方法を用いる送達は、特に有利であり得る。
【0241】
語句「治療有効量」は、本明細書で用いられるとき、任意の医学的処置に適用可能な合理的なリスク・ベネフィット比で、少なくとも動物における細胞の亜集団において幾らかの所望される治療効果をもたらすのに有効である、本明細書に記載のコンジュゲートを含む化合物、材料又は組成物の量を意味する。
【0242】
語句「薬学的に許容できる」は、合理的なリスク・ベネフィット比に適う、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応又は他の課題若しくは合併症と伴わない、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に適した、健全な医学的判断の範囲内に含まれる、化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指すように本明細書中で用いられる。
【0243】
語句「薬学的に許容できる担体」は、本明細書で用いられるとき、対象化合物を1つの臓器又は身体の一部から別の臓器又は身体の一部へ運搬又は輸送することに関与する、薬学的に許容できる材料、組成物又は媒体、例えば液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑沢剤、タルク、マグネシウム、カルシウム又はステアリン酸亜鉛又はステアリン酸)又は溶媒封入材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合しており、且つ患者に対して有害でないという意味で「許容できる」必要がある。薬学的に許容できる担体として役立ち得る材料の幾つかの例として、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)平滑剤、例えばマグネシウムステート、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク;(8)賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ワックス;(9)油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチド及びアミノ酸(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDL;並びに(22)医薬製剤中に用いられる他の無毒性親和性物質が挙げられる。
【0244】
本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる担体」には、薬学的投与と適合性のあるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれることが意図される。薬学的に活性な物質へのかかる媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。いずれかの従来の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合でない限り、組成物中へのその使用が企図される。補足的な活性化合物も組成物に配合することができる。医薬担体には、滅菌水溶液又は水分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質へのかかる媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において公知である。
【0245】
製剤は、便宜上、単位剤形で提示され得、また薬学の技術分野で周知の任意の方法により調製され得る。単一剤形を作製するために担体材料と組み合わせ可能な活性成分の量は、治療を受けているホスト、特定の投与様式に応じて変動することになる。単一剤形を作製するために担体材料と組み合わせ可能な活性成分の量は、一般に治療効果をもたらすような化合物の量となる。一般に、100%中でのこの量は、活性成分が約0.1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲となる。
【0246】
特定の実施形態では、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば胆汁酸及び高分子担体、例えばポリエステル及びポリ無水物からなる群から選択される賦形剤;及び本明細書に記載のコンジュゲートを含む。特定の実施形態では、上記製剤は、本明細書に記載のコンジュゲートを経口生体利用可能にする。
【0247】
dsRNA製剤は、別の薬剤、例えば別の治療薬又はdsRNAを安定化する薬剤と組み合わせて配合され得る。さらに他の薬剤として、キレート剤、例えばEDTA(例えば、Mg2+などの二価カチオンを除去するため)、塩、リボヌクレアーゼ阻害剤(例えば、RNAsinなどの広範特異性リボヌクレアーゼ阻害剤)などが挙げられる。
【0248】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明のdsRNAを担体、任意選択で1つ以上の付属成分と会合させるステップを含む。一般に、その製剤は、本発明のdsRNAを液体担体若しくは微粉化された固体担体又は両方と均一且つ緊密に会合させ、次いで必要な場合、生成物を形成させることにより調製される。
【0249】
場合により、薬剤の効果を延長させるため、皮下又は筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水難溶性を有する結晶質又は非晶質材料の懸濁液の使用により行われ得る。ここで、薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次いで結晶サイズ及び結晶性形態に依存し得る。代わりに、非経口的に投与される薬剤形態の遅延吸収は、薬剤を油媒体に溶解又は懸濁することによって行われる。
【0250】
本発明によるdsRNAは、他の医薬品に類似して、ヒト又は動物薬において用いられる任意の便宜的方法での投与のために配合され得る。
【0251】
組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び/又は分散剤などの補助剤も含有し得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順と、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることとの両方によって確実にすることができる。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることが望ましい場合もあり得る。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅延させる薬剤を含めることにより、注射用医薬品形態の持続的吸収をもたらすことができる。
【0252】
組成物は、無菌であり、且つシリンジによる組成物の送達が可能な程度に流動性がなければならない。水に加えて、担体は、好ましくは、等張性緩衝生理食塩溶液である。
【0253】
投与経路
本明細書に記載されるdsRNA又はそれを含む医薬組成物は、当技術分野で公知の種々の方法によって投与することができる。当業者が理解するであろうとおり、投与の経路及び/又は様式は、標的とする疾患又は病態及び所望の結果に応じて変わることになる。本明細書に記載されるdsRNAを特定の投与経路によって投与するために、その不活性化を防ぐ材料でdsRNAをコートするか、又はそれとdsRNAとを共投与する必要があり得る。例えば、dsRNAは、適切な担体、例えばリポソーム又は希釈剤で対象に投与することができる。薬学的に許容できる希釈剤としては、生理食塩水及び緩衝水溶液が挙げられる。
【0254】
例示的な投与経路としては、限定されないが、静脈内、皮下、腫瘍内、局所、直腸、肛門、膣、鼻腔、肺及び眼が挙げられる。
【0255】
本発明の組成物は、局所又は全身治療が所望されるか否かに応じて、また治療されるべき領域に対して、多くの方法で投与され得る。投与は、局所(眼、膣、直腸、鼻腔内、経皮を含む)、経口又は非経口であり得る。非経口投与は、静脈内点滴、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又はくも膜下腔内若しくは脳室内投与を含む。
【0256】
投与の経路及び部位は、標的化を増強するように選択され得る。例えば、筋細胞を標的にするため、目的の筋肉への筋肉内注射であれば、論理的な選択となる。肺細胞であれば、dsRNAをエアロゾル形態で投与することにより標的にされ得る。血管内皮細胞であれば、バルーンカテーテルをdsRNAでコーティングし、dsRNAを機械的に導入することにより標的にされ得る。
【0257】
用量
本発明の医薬組成物中における活性成分、例えば本明細書に記載されるdsRNAの実際の用量レベルは、患者にとって毒性のない、特定の患者、組成物及び投与様式に望ましい治療反応を実現するのに有効な活性成分の量が達成されるように変更することができる。選択される用量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排泄速度、治療継続期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療下の患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び過去の病歴並びに医学分野で周知の同様の要因を含め、種々の薬物動態学的要因に依存することになる。
【0258】
一部の実施形態では、単位用量は、dsRNA分子の10mg/kg体重未満又は10未満、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0001、0.00005若しくは0.00001mg/kg体重及び200nモル未満(例えば、約4.4×1016コピー)/kg体重又はdsRNA分子の1500未満、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nモル/kg体重である。
【0259】
規定量は、疾患又は障害、例えば標的遺伝子に関連した疾患又は障害を治療又は予防するのに有効な量であり得る。例えば、単位用量は、注射(例えば、静脈内、皮下又は筋肉内)、吸入投与又は局所適用により投与され得る。一部の実施形態では、用量は、10未満、5、2、1又は0.1mg/kg体重であり得る。
【0260】
一部の実施形態では、単位用量は、1日1回よりも少ない、例えば2、4、8又は30日ごとよりも少ない頻度で投与される。別の実施形態では、単位用量は、ある頻度(例えば、定期的頻度)で投与されない。例えば、単位用量は、単回投与され得る。
【0261】
一部の実施形態では、有効用量は、他の従来の治療様式で投与される。
【0262】
一部の実施形態では、対象は、初期用量及び1回以上の維持用量を投与される。1回又は複数回の維持用量は、初期用量と同じであるか又は初期用量よりも低い、例えば初期用量よりも半分少ない可能性がある。維持投与計画は、対象を、0.01μg~15mg/kg体重/日の範囲、例えば10、1、0.1、0.01、0.001又は0.00001mg/kg体重/日の1回又は複数回用量で治療することを含み得る。維持用量は、例えば、2、5、10又は30日ごとに1回以下、投与される。さらに、治療計画は、一時期続き得、その期間は、患者の特定疾患の性質、その重症度及び全身状態に応じて変動することになる。特定の実施形態では、その用量は、1日1回以下、例えば24、36、48又はより長時間ごとに1回以下、例えば5又は8日ごとに1回以下送達され得る。治療後、患者は、その状態における変化について、また病態の症状の軽減について監視され得る。その化合物の用量は、患者が現在の用量レベルに対して有意に応答しない場合に増加され得るか、又はその用量は、病態の症状の軽減が認められる場合、病態が消失している場合若しくは望まれない副作用が認められる場合に低減され得る。
【0263】
有効用量は、所望されるとき又は特定の環境下で適切と考えられるとき、単回用量又は2回以上の用量で投与され得る。反復又は頻回注入を容易にすることが望まれる場合、送達デバイス、例えばポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、大槽内又は関節内)又はリザーバーの移植が得策である場合がある。
【0264】
一部の実施形態では、その組成物は、複数のdsRNA分子種を含む。別の実施形態では、dsRNA分子種は、天然に存在する標的配列に対して別種と重複せず、またそれらに隣接しない配列を有する。別の実施形態では、複数のdsRNA分子種は、異なる天然に存在する標的遺伝子に特異的である。別の実施形態では、dsRNA分子は、対立遺伝子特異的である。
【0265】
本明細書に記載のdsRNAは、幾つかの方法で哺乳類、特に非ヒト霊長類又はヒトなどの大型哺乳類に投与され得る。
【0266】
一部の実施形態では、dsRNAの投与は、非経口、例えば静脈内(例えば、ボーラス又は拡散注入として)、皮内、腹腔内、筋肉内、髄腔内、脳室内、頭蓋内、皮下、経粘膜、頬側、舌下、内視鏡、直腸、経口、膣、局所、肺、鼻腔内、尿道又は眼内投与である。投与は、対象又は別の人物、例えばヘルスケア提供者によって提供され得る。投薬は、測定用量において又は定量用量を送達する計量分配装置で提供され得る。
【0267】
リポソーム及び脂質製剤
本明細書に記載されるdsRNAは、膜状分子集合体、例えばリポソーム又はミセルで送達するように製剤化することができる。本明細書で用いられるとき、用語「リポソーム」は、少なくとも1つの二重層、例えば1つの二重層又は複数の二重層状に配置された両親媒性脂質で構成されている小胞を指す。リポソームには、親油性材料で形成された膜と内部水溶液とを有する単層及び多層小胞が含まれる。水溶液部分がsiRNA組成物を含有する。親油性材料が内部水溶液を外部水溶液と隔離し、外部水溶液は、典型的にはdsRNA組成物を含まないが、一部の例では含むこともある。リポソームは、活性成分を作用部位に運び、送達するのに有用である。リポソーム膜は、生体膜と構造的に類似しているため、リポソームが組織に適用されると、リポソーム二重層が細胞膜の二重層と融合する。リポソームと細胞との合体が進むにつれ、本明細書に記載されるdsRNAを含む内部水溶液内容物が細胞中に送達され、そこで、dsRNAは、標的RNAに特異的に結合することができ、RNAiを媒介することができる。ある場合には、リポソームは、例えば、特定の細胞型とのコンジュゲートを導くため、特異的に標的化もされる。
【0268】
本明細書に記載されるdsRNAを含有するリポソームは、種々の方法によって調製することができる。一例では、リポソームの脂質成分がデタージェントに溶解され、そのようにして脂質成分とのミセルが形成される。例えば、脂質成分は、両親媒性カチオン性脂質又は脂質コンジュゲートであり得る。デタージェントは、臨界ミセル濃度が高く、非イオン性であり得る。例示的なデタージェントとしては、コール酸塩、CHAPS、オクチルグルコシド、デオキシコール酸塩及びラウロイルサルコシンが挙げられる。次に、脂質成分を含むミセルにdsRNA製剤が加えられる。脂質上のカチオン基がdsRNAと相互作用し、dsRNAの周りに凝縮してリポソームを形成する。凝縮後、デタージェントが例えば透析によって除去されると、dsRNAのリポソーム製剤が生じる。
【0269】
凝縮反応時、必要に応じて、凝縮を促進する担体化合物を例えば制御添加法によって加えることができる。例えば、この担体化合物は、核酸以外のポリマー(例えば、スペルミン又はスペルミジン)であり得る。pHも、凝縮に有利に作用するように調整することができる。
【0270】
送達媒体の構造成分としてポリヌクレオチド/カチオン性脂質複合体を取り込む安定ポリヌクレオチド送達媒体の作製方法についてのさらなる説明は、例えば、国際公開第96/37194号パンフレットに記載されている。リポソーム形成には、Felgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413-7417,1987;米国特許第4,897,355号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;Bangham,et al.M.Mol.Biol.23:238,1965;Olson,et al.Biochim.Biophys.Acta 557:9,1979;Szoka,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.75:4194,1978;Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984;Kim,et al.Biochim.Biophys.Acta 728:339,1983;及びFukunaga,et al.Endocrinol.115:757,1984(これらは、全体として参照により援用される)に記載される例示的方法の1つ以上の態様も含まれ得る。送達媒体としての使用に適切なサイズの脂質凝集体の調製によく用いられる技法としては、音波処理及び凍結融解+押出が挙げられる(例えば、Mayer,et al.Biochim.Biophys.Acta 858:161,1986(これは、全体として参照により援用される)を参照されたい)。一貫して小型の(50~200nm)且つ比較的均一な凝集体が所望される場合、マイクロ流体技術を用いることができる(Mayhew,et al.Biochim.Biophys.Acta 775:169,1984、これは、全体として参照により援用される)。これらの方法は、リポソームへのsiRNA製剤の封入に容易に応用される。
【0271】
pH感受性のある又は負電荷のリポソームは、核酸分子と複合体化するというよりむしろそれを捕捉する。核酸分子及び脂質は、両方とも電荷が同様であるため、複合体形成よりむしろ斥力が起こる。それにも関わらず、一部の核酸分子は、こうしたリポソームの内部水溶液内に捕捉される。pH感受性のリポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを培養下の細胞単層に送達するために用いられている。標的細胞でこの外因性遺伝子の発現が検出された(Zhou et al.,Journal of Controlled Release,19,(1992)269-274、これは、全体として参照により援用される)。
【0272】
主要な種類のリポソーム組成物の1つには、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)又はジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から中性リポソーム組成物を形成することができる。一般には、アニオン性リポソーム組成物がジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成される一方、アニオン性膜融合性リポソームは、主にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別の種類のリポソーム組成物は、例えば、ダイズPC及び卵PCなど、ホスファチジルコリン(PC)から形成される。リン脂質及び/又はホスファチジルコリン及び/又はコレステロールの混合物から別の種類が形成される。
【0273】
インビトロでリポソームを細胞に導入する他の方法の例としては、米国特許第5,283,185号明細書;米国特許第5,171,678号明細書;国際公開第94/00569号パンフレット;国際公開第93/24640号パンフレット;国際公開第91/16024号パンフレット;Felgner,J.Biol.Chem.269:2550,1994;Nabel,Proc.Natl.Acad.Sci.90:11307,1993;Nabel,Human Gene Ther.3:649,1992;Gershon,Biochem.32:7143,1993;及びStrauss EMBO J.11:417,1992が挙げられる。
【0274】
一部の実施形態では、カチオン性リポソームが使用される。カチオン性リポソームには、細胞膜と融合することができるという利点がある。非カチオン性リポソームは、形質膜と効率的に融合することができないが、インビボでマクロファージによって取り込まれ、マクロファージへのsiRNAの送達に使用することができる。
【0275】
リポソームのさらなる利点として、天然リン脂質から得られたリポソームが生体適合性且つ生分解性であること;リポソームが広範囲の水及び脂溶性薬物を取り込むことができること;リポソームが、その内部区画において、封入されたsiRNAを代謝及び分解から保護できることが挙げられる(Rosoff,“Pharmaceutical Dosage Forms,”Lieberman,Rieger and Banker(Eds.),1988,volume 1,p.245)。リポソーム製剤の調製において考慮すべき重要な点は、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズ及び水溶液容積である。
【0276】
正電荷合成カチオン性脂質、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)を使用すると、核酸と自発的に相互作用して脂質-核酸複合体を形成する小型リポソームを形成することができ、この複合体は、組織培養細胞の細胞膜の負電荷脂質と融合する能力があるため、siRNAの送達がもたらされる(DOTMA及びDNAとのその使用の説明については、例えば、Felgner,P.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 8:7413-7417,1987及び米国特許第4,897,355号明細書(これは、全体として参照により援用される)を参照されたい)。
【0277】
DOTMA類似体、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニア)プロパン(DOTAP)をリン脂質と組み合わせて使用すると、DNA複合体化小胞を形成することができる。Lipofectin(商標)Bethesda Research Laboratories、Gaithersburg、Md.)は、負電荷ポリヌクレオチドと自発的に相互作用して複合体を形成する正電荷DOTMAリポソームを含む組織培養生細胞に、高度にアニオン性の核酸を送達するのに有効な薬剤である。十分な正電荷のリポソームが使用されるとき、得られる複合体の正味電荷も正である。このようにして調製された正電荷複合体は、負電荷の細胞表面に自発的に付着し、形質膜と融合して、例えば組織培養細胞に機能性核酸を効率的に送達する。別の市販のカチオン性脂質、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3,3-(トリメチルアンモニア)プロパン(「DOTAP」)(Boehringer Mannheim、Indianapolis、Indiana)は、DOTMAと異なり、オレオイル部分がエーテル結合でなく、むしろエステル結合によって連結されている。
【0278】
他の報告されているカチオン性脂質化合物としては、例えば、2種類の脂質の一方にコンジュゲートされている、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタオレオイルアミド(「DOGS」)(Transfectam(商標)、Promega、Madison、Wisconsin)及びジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン5-カルボキシスペルミル-アミド(「DPPES」)(例えば、米国特許第5,171,678号明細書を参照されたい)などの化合物を含むカルボキシスペルミンを含め、種々の部分にコンジュゲートされているものが挙げられる。
【0279】
別のカチオン性脂質コンジュゲートとしては、コレステロールによる脂質の誘導体化(「DC-Chol」)が挙げられ、これは、DOPEと組み合わせてリポソームに製剤化されている(Gao,X.and Huang,L.,Biochim.Biophys.Res.Commun.179:280,1991を参照されたい)。ポリリジンをDOPEにコンジュゲートすることによって作られるリポポリリジンは、血清の存在下でのトランスフェクションに有効であることが報告されている(Zhou,X.et al.,Biochim.Biophys.Acta 1065:8,1991、これは、全体として参照により援用される)。特定の細胞株について、コンジュゲート型カチオン性脂質を含有するこうしたリポソームの方がDOTMA含有組成物よりも低い毒性を呈し、高いトランスフェクション効率をもたらすと言われている。他の市販のカチオン性脂質製品としては、DMRIE及びDMRIE-HP(Vical、La Jolla、California)及びリポフェクタミン(Lipofectamine)(DOSPA)(Life Technology,Inc.、Gaithersburg、Maryland)が挙げられる。オリゴヌクレオチドの送達に好適な他のカチオン性脂質が国際公開第98/39359号パンフレット及び国際公開第96/37194号パンフレットに記載されている。
【0280】
リポソーム製剤は、特に局所投与に適している。リポソームは、他の製剤を上回る幾つかの利点を呈する。かかる利点としては、投与薬物の高い全身性吸収に関連する副作用の低下、所望の標的における投与薬物の蓄積の増加及びsiRNAを皮膚に投与可能であることが挙げられる。一部の実装形態では、リポソームを使用することにより、siRNAを表皮細胞に送達し、また皮膚組織、例えば皮膚へのsiRNAの浸透を増強する。例えば、リポソームは局所適用することができる。リポソームとして製剤化された薬物の皮膚への局所送達は、実証されている(例えば、Weiner et al.,Journal of Drug Targeting,1992,vol.2,405-410及びdu Plessis et al.,Antiviral Research,18,1992,259-265;Mannino,R.J.and Fould-Fogerite,S.,Biotechniques 6:682-690,1988;Itani,T.et al.Gene 56:267-276.1987;Nicolau,C.et al.Meth.Enz.149:157-176,1987;Straubinger,R.M.and Papahadjopoulos,D.Meth.Enz.101:512-527,1983;Wang,C.Y.and Huang,L.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7851-7855,1987(これらは、全体として参照により援用される)を参照されたい)。
【0281】
非イオン性リポソームシステム、詳細には非イオン性界面活性剤とコレステロールとを含むシステムも、皮膚への薬物の送達におけるその有用性を判定しようと調査されている。Novasome I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)及びNovasome II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を使用して、マウス皮膚の真皮に薬物が送達されている。siRNAを含むかかる製剤は、皮膚科学的障害の治療に有用である。
【0282】
本明細書に記載されるコンジュゲートを含むリポソームは、高度に変形し易くすることができる。かかる変形能は、リポソームの平均半径よりも小さい細孔を通したリポソームの透過を可能にし得る。例えば、トランスファーソームは、変形能のあるリポソームの一種である。トランスファーソームは、表面エッジ活性化剤、通常、界面活性剤を標準的なリポソーム組成物に加えることによって作成され得る。siRNAを皮膚のケラチノサイトに送達するために、siRNAを含むトランスファーソームを例えば感染によって皮下に送達することができる。哺乳類のインタクトな皮膚を越えるために、脂質小胞は、好適な経皮勾配の影響下でそれぞれ直径50nm未満の一連の微細孔を通り抜けなければならない。加えて、脂質特性に起因して、こうしたトランスファーソームは、自己最適化性であり(例えば皮膚にある細孔の形状に適応できる)、自己修復性であり、断片化することなくその標的に高頻度で到達することができ、且つ多くの場合に自己負荷性であり得る。
【0283】
本発明に適している他の製剤については、2008年1月2日に出願された米国仮特許出願第61/018,616号明細書;2008年1月2日に出願された同第61/018,611号明細書;2008年3月26日に出願された同第61/039,748号明細書;2008年4月22日に出願された同第61/047,087号明細書及び2008年5月8日に出願された同第61/051,528号明細書に記載されている。2007年10月3日に出願されたPCT出願PCT/米国特許出願公開第2007/080331号明細書も、本発明に適した製剤について記載している。
【0284】
界面活性剤。界面活性剤は、エマルション(マイクロエマルションを含む)及びリポソーム(上記を参照されたい)など、製剤に広い応用性を見出す。コンジュゲート製剤は、界面活性剤を含むことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるコンジュゲートは、界面活性剤を含むエマルションとして製剤化される。天然及び合成の両方の多くの異なる種類の界面活性剤の特性を分類し及び等級分けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)を用いることによるものである。親水基の性質は、製剤中に使用される種々の界面活性剤を区分する最も有用な手段となる(Rieger,“Pharmaceutical Dosage Forms,”Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0285】
界面活性剤分子がイオン化しない場合、それは、非イオン性界面活性剤に分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬製品に広い応用性があり、広範囲のpH値にわたって使用可能である。一般に、そのHLB値は、その構造に応じて2~約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル類、プロピレングリコールエステル類、グリセリルエステル類、ポリグリセリルエステル類、ソルビタンエステル類、スクロースエステル類及びエトキシ化エステル類などの非イオン性エステル類が挙げられる。脂肪アルコールエトキシレート類、プロポキシ化アルコール類及びエトキシ化/プロポキシ化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミド類及びエーテル類もこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの中で最もよく知られているメンバーである。
【0286】
界面活性剤分子が水への溶解又は分散時に負電荷を有する場合、その界面活性剤は、アニオン性として分類される。アニオン性界面活性剤としては、石鹸などのカルボン酸塩、アシル乳酸塩、アミノ酸のアシルアミド類、アルキル硫酸塩及びエトキシ化アルキル硫酸塩などの硫酸のエステル類、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、アシルイセチオン酸塩、アシルタウリン酸塩及びスルホコハク酸塩及びリン酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤クラスの中で最も重要なメンバーは、アルキル硫酸塩及び石鹸である。
【0287】
界面活性剤分子が水への溶解又は分散時に正電荷を有する場合、その界面活性剤は、カチオン性として分類される。カチオン性界面活性としては、第4級アンモニウム塩及びエトキシ化アミン類が挙げられる。第4級アンモニウム塩は、このクラスの中で最もよく使用されているメンバーである。
【0288】
界面活性剤分子が正電荷又は負電荷のいずれも有する能力を有する場合、その界面活性剤は、両性として分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド類、N-アルキルベタイン類及びホスファチド類が挙げられる。
【0289】
薬物製品、製剤及びエマルションにおける界面活性剤の使用については、レビューされている(Rieger,“Pharmaceutical Dosage Forms,”Marcel Dekker,Inc.,New York,NY,1988,p.285)。
【0290】
ミセル及び他の膜状製剤。本明細書に記載されるコンジュゲートを含む製剤は、ミセル製剤として提供することができる。「ミセル」は、本明細書では、分子の疎水性部分が全て内側に向き、親水性部分が周囲の水相と接触した状態に置かれているような球状構造状に両親媒性分子が配置されている特定の種類の分子集合体として定義される。環境が疎水性の場合、逆の配置が存在する。
【0291】
経皮膜を通した送達に好適な混合ミセル製剤は、siRNA組成物の水溶液、アルカリ金属C8~C22アルキル硫酸塩及びミセル形成化合物を混合することにより調製され得る。例示的なミセル形成化合物としては、レシチン、ヒアルロン酸、薬学的に許容できるヒアルロン酸塩、グリコール酸、乳酸、カモミール抽出物、キュウリ抽出物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノオレイン、モノオレエート類、モノラウレート類、ルリヂサ油、月見草油、メントール、トリヒドロキシオキソコラニルグリシン及びその薬学的に許容できる塩、グリセリン、ポリグリセリン、リジン、ポリリジン、トリオレイン、ポリオキシエチレンエーテル類及びその類似体、ポリドカノールアルキルエーテル類及びその類似体、ケノデオキシコール酸塩、デオキシコール酸塩及びこれらの混合物が挙げられる。ミセル形成化合物は、アルカリ金属アルキル硫酸塩の添加と同時に又はその添加後に加えられ得る。混合ミセルは、これらの成分の実質的にあらゆる種類の混合で、但し小型のミセルをもたらすために激しく混合することで形成されることになる。
【0292】
1つの方法では、本明細書に記載されるコンジュゲートと、少なくともアルカリ金属アルキル硫酸塩とを含有する第1のミセル組成物が調製される。次に、この第1のミセル組成物を少なくとも3つのミセル形成化合物と混合すると、混合ミセル組成物が形成される。別の方法では、本明細書に記載されるコンジュゲートと、アルカリ金属アルキル硫酸塩と、ミセル形成化合物の少なくとも1つとを混合し、続いて残りのミセル形成化合物を激しく混合しながら加えることにより、ミセル組成物が調製される。
【0293】
製剤を安定化させ、細菌増殖を防ぐため、混合ミセル組成物にフェノール及び/又はm-クレゾールを加え得る。代わりに、フェノール及び/又はm-クレゾールは、ミセル形成成分と共に加えられ得る。グリセリンなどの等張剤も混合ミセル組成物の形成後に加えられ得る。
【0294】
ミセル製剤を噴霧剤として送達するため、製剤をエアロゾルディスペンサーに入れることができ、このディスペンサーに噴射剤が装填される。圧力下にある噴射剤は、ディスペンサー内では液体形態である。これらの成分の比率は、水相及び噴射剤相が一体となるように、すなわち相が1つであるように調整される。2つの相がある場合、内容物の一部を例えば定量弁から分注する前に、ディスペンサーを振盪する必要がある。分注用量の医薬品は、定量弁から微細噴霧として噴射される。
【0295】
噴射剤としては、水素含有クロロフルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、ジメチルエーテル及びジエチルエーテルを挙げることができる。特定の実施形態では、HFA 134a(1,1,1,2テトラフルオロエタン)が使用され得る。
【0296】
必須成分の具体的な濃度は、比較的単純な実験により決定することができる。経口吸収には、多くの場合、注射又は経胃腸管的投与による際の用量を増量する、例えば少なくとも2倍又は3倍にすることが望ましい。
【0297】
粒子。一部の実施形態では、本明細書に記載されるコンジュゲートは、粒子、例えばマイクロパーティクルに取り込むことができる。マイクロパーティクルは噴霧乾燥によって作製し得るが、また凍結乾燥、蒸発、流動床乾燥、真空乾燥又はこれらの技法の組み合わせを含めた他の方法によって作製され得る。
【0298】
キット
本発明は、本明細書に記載されるdsRNAを含むキットも提供する。
【0299】
本態様のいずれか1つの例示的な実施形態は、以下のとおり記載することができる。
【0300】
実施形態1:センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA(dsRNA)分子であって、アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な標的配列との相補性を有し、dsRNA分子は、ヘキソピラノースヌクレオシドを含み、及びdsRNAは、リガンドを含む、二本鎖RNA(dsRNA)分子。
【0301】
実施形態2:センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA分子であって、アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な標的配列との相補性を有し、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域に少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオシドを含むか、又はセンス鎖は、センス鎖の中央領域に少なくとも1つのアルトリトールヌクレオチドを含む、二本鎖RNA分子。
【0302】
実施形態3:センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA分子であって、アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な標的配列との相補性を有し、dsRNAは、少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオシドと、少なくとも1つの2’-フルオロヌクレオチドと、少なくとも1つの2’-OMeヌクレオチドとを含む、二本鎖RNA分子。
【0303】
実施形態4:センス鎖及びアンチセンス鎖であって、各鎖は、14~40ヌクレオチドを有する、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む、標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖RNA分子であって、アンチセンス鎖は、RNA干渉を媒介するのに十分な標的配列との相補性を有し、dsRNAは、少なくとも1つのヘキソピラノースヌクレオシドを含み、及びdsRNAは、少なくとも4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、二本鎖RNA分子。
【0304】
実施形態5:アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖のシード領域にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0305】
実施形態6:アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて3~8位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0306】
実施形態7:アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて6、7、9、12、16、21及び22位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0307】
実施形態8:アンチセンス鎖は、6、7及び16位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態7の二本鎖RNA分子。
【0308】
実施形態9:アンチセンス鎖は、6及び7位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態8の二本鎖RNA分子。
【0309】
実施形態10:アンチセンス鎖は、7位にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態9の二本鎖RNA分子。
【0310】
実施形態11:センス鎖は、少なくとも2つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0311】
実施形態12:センス鎖は、少なくとも3つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0312】
実施形態13:センス鎖は、センス鎖の中央領域にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0313】
実施形態14:センス鎖は、3及び12位の少なくとも1つにヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0314】
実施形態15:アンチセンス鎖は、少なくとも2つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0315】
実施形態16:アンチセンス鎖は、少なくとも3つ以上の連続する独立に選択されるヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0316】
実施形態17:センス鎖は、センス鎖の5’末端にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0317】
実施形態18:センス鎖は、センス鎖の5’末端にヘキソピラノースヌクレオシドを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0318】
実施形態19:センス鎖は、5’-ビニルホスホネート(VP)基を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0319】
実施形態20:ヘキソピラノースヌクレオチドは、アロピラノースヌクレオチド、アルトリトールヌクレオチド、グルコピラノースヌクレオチド、マンノピラノースヌクレオチド、グロピラノースヌクレオチド、イドピラノースヌクレオチド、ガラクトピラノースヌクレオチド、タロピラノースヌクレオチド、フコピラノースヌクレオチド、ラムノピラノースヌクレオチド、キノボピラノースヌクレオチド、ニューモピラノースヌクレオチド及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~19のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0320】
実施形態21:ヘキソピラノースヌクレオチドは、アルトリトールヌクレオチド、グルコピラノースヌクレオチド、マンノピラノースヌクレオチド、ガラクトピラノースヌクレオチド、フコピラノースヌクレオチド及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~20のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0321】
実施形態22:リガンドを含む、実施形態2~21のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0322】
実施形態23:リガンドは、ASGPRリガンドである、実施形態1又は22に記載の二本鎖RNA分子。
【0323】
実施形態24:ASGPRリガンドは、
【化21】
である、実施形態23に記載の二本鎖RNA分子。
【0324】
実施形態25:センス鎖は、1、2、3又は4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0325】
実施形態26:センス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間並びに2位及び3位間(5’末端から数えて)にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0326】
実施形態27:アンチセンス鎖は、1、2、3又は4つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0327】
実施形態28:アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間(5’末端から数えて)にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0328】
実施形態29:アンチセンス鎖は、ヌクレオチド位置1位及び2位間、ヌクレオチド位置2位及び3位間、ヌクレオチド位置21位及び22位間並びにヌクレオチド位置22位及び23位間(5’末端から数えて)にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0329】
実施形態30:センス鎖及びアンチセンス鎖は、独立に、19~25ヌクレオチド長である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0330】
実施形態31:センス鎖は、21ヌクレオチド長である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0331】
実施形態32:アンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0332】
実施形態33:センス鎖は、21ヌクレオチド長であり、及びアンチセンス鎖は、23ヌクレオチド長である、実施形態1~32のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0333】
実施形態34:アンチセンス鎖の3’末端に一本鎖オーバーハングを含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0334】
実施形態35:アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0335】
実施形態36:ヘキソピラノースヌクレオチドと相補的な位置に2’-フルオロ又は2’-OMeヌクレオチドを含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0336】
実施形態37:ヘキソピラノース、2’-フルオロ及び2-OMeヌクレオチド以外のヌクレオチドを含まない、実施形態1~36のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0337】
実施形態38:非環状ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、HNA、CeNA、2’-メトキシエチル、2’-O-アリル、2’-C-アリル、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル(2’-O-DMAEOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-ara-F及び2’-デオキシからなる群から選択されるヌクレオチドを含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0338】
実施形態39:センス鎖は、5’末端に5’-モルホリノ修飾、5’-ジメチルアミノ修飾、5’-デオキシ修飾、逆位脱塩基修飾又は逆位脱塩基ロックド核酸修飾を含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0339】
実施形態40:約40℃~約80℃の範囲の融解温度を有する、実施形態1~39のいずれか1つに記載の二本鎖RNA分子。
【0340】
実施形態41:単独で又は薬学的に許容できる担体若しくは賦形剤と組み合わせて、実施形態1~40のいずれか1つに記載のdsRNA剤を含む医薬組成物。
【0341】
実施形態42:実施形態1~40のいずれか1つに記載のdsRNA分子を含む遺伝子サイレンシングキット。
【0342】
実施形態43:細胞における標的遺伝子をサイレンシングする方法であって、実施形態1~40のいずれか1つに記載のdsRNA分子を細胞に導入するステップを含む方法。
【0343】
実施形態44:dsRNA剤は、皮下投与又は静脈内投与を通して投与される、実施形態43に記載の方法。
【0344】
実施形態45:細胞における標的遺伝子をサイレンシングする方法であって、実施形態1~40のいずれか1つに記載のdsRNA分子を細胞に発現させるステップを含む方法。
【0345】
幾つかの選択された定義
便宜上、ここで、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語をここにまとめる。特に定めがない限り又は文脈上黙示的でない限り、以下の用語及び語句は、下記に提供する意味を含む。特に明示的な定めがない限り又は文脈上明らかでない限り、下記の用語及び語句は、その用語又は語句が関連する技術分野において既に獲得している意味を除外しない。これらの定義は、特定の実施形態の説明を補助するために提供され、特許請求される本発明を限定することを意図されず、なぜなら、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるためである。さらに、文脈上特に必要がない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数を含むものとする。
【0346】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関連する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験において任意の公知の方法、装置及び材料を使用し得るが、ここで、この関連で方法、装置及び材料が記載される。
【0347】
さらに、本発明の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の技能の範囲内にある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を利用し得る。かかる技法は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook et al.,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait,ed.,1984);“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney,ed.,1987);“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.);“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987及び定期的更新版);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis et al.,ed.,1994);“A Practical Guide to Molecular Cloning”(Perbal Bernard V.,1988);“Phage Display:A Laboratory Manual”(Barbas et al.,2001)などの文献に十分に説明されている。
【0348】
値の範囲が提供される場合、文脈上特に明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1に至るまでの、その範囲の上限と下限との間にある各中間値及びその指定範囲にある任意の他の指定される値又は中間値が本発明の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、そのより小さい範囲に含まれ得ると共に、それらも、指定範囲における任意の具体的に除外される限界値を条件として本発明の範囲内に包含される。指定範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0349】
特定の範囲は、本明細書では、数値の前に用語「約」を付けて提供される。用語「約」は、本明細書では、それが前に付く数字そのもの並びにこの用語が前に付く数字に近い又は近似的にその数字である数字に文字による裏付けを与えるために使用される。ある数字が、具体的に記載されている数字に近いか又は近似的にその数字であるかどうかを決める際、その記載されていない近い又は近似の数字は、それが提示される文脈上、具体的に記載されている数字の実質的に均等物を提供する数字であり得る。
【0350】
本明細書で用いられるとき、用語「含んでいる」又は「含む」は、必須であるか否かに関わらず、本発明にとって必須の、しかし特定されていない要素が含まれる余地がある組成物、方法及びそのそれぞれの1つ又は複数の構成要素に関連して使用される。
【0351】
単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、単語「又は」は、文脈上特に明確に指示されない限り、「及び」を含むことが意図される。さらに、特許請求の範囲は、いずれの任意選択の要素も除外するように作成され得ることが注記される。そのため、この規定は、特許請求の範囲の要素の記載に関連した、「もっぱら」、「のみ」などのような排他的用語法の使用又は「否定的な」限定の使用の際の先行詞としての役割を果たすことが意図される。
【0352】
本明細書で用いられるとき、用語「dsRNA」、「siRNA」及び「iRNA剤」は、標的RNA、例えばmRNA、例えばタンパク質をコードする遺伝子の転写物のサイレンシングを媒介することができる薬剤を指して同義的に使用される。便宜上、かかるmRNAは、本明細書では、サイレンシングしようとするmRNAとも称される。かかる遺伝子は、標的遺伝子とも称される。一般に、サイレンシングしようとするRNAは、内因性遺伝子、外因性遺伝子又は病原体遺伝子である。加えて、mRNA以外のRNA、例えばtRNA及びウイルスRNAも標的化され得る。
【0353】
本明細書で用いられるとき、表現「RNAiを媒介する」は、標的遺伝子、例えばmRNAを配列特異的にサイレンシングする能力を指す。理論によって拘束されることを望むものではないが、サイレンシングとは、RNAi機構又は過程と、ガイドRNA、例えばdsRNAのアンチセンス鎖であって、21~23ヌクレオチド長のアンチセンス鎖とを用いるものであると考えられる。
【0354】
本明細書で用いられるとき、「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」は、本発明の化合物と標的RNA分子との間に安定した特異的な結合が起こるような十分な程度の相補性があることを指し示すために使用される用語である。特異的結合には、特異的結合が所望される条件下、すなわちアッセイ若しくは治療的処置の場合には生理的条件下又はインビトロアッセイの場合にはアッセイが実施される条件下において、非標的配列とのオリゴマー化合物の非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が必要である。非標的配列は、典型的には、少なくとも5ヌクレオチドが異なる。
【0355】
一部の実施形態では、dsRNA分子は、標的RNA、例えば標的mRNAに対して、その標的mRNAによってコードされるタンパク質の産生をdsRNA分子がサイレンシングするように「十分に相補的」である。別の実施形態では、dsRNA分子は、標的RNAと「正確に相補的」であり、例えば標的RNAとdsRNA二重鎖剤とがアニールして、例えば正確な相補性の領域においてワトソン・クリック塩基対のみで作られるハイブリッドを形成する。「十分に相補的」な標的RNAは、標的RNAと正確に相補的な(例えば、少なくとも10ヌクレオチドの)内部領域を含み得る。さらに、一部の実施形態では、dsRNA分子は、単一ヌクレオチドの違いを特異的に見分ける。この場合、dsRNA分子は、単一ヌクレオチドの違い(例えば、それから7ヌクレオチド以内の)領域に正確な相補性が見出される場合に限り、RNAiを媒介する。
【0356】
本明細書で用いられるとき、用語「オリゴヌクレオチド」は、例えば、長さ100、200、300又は400ヌクレオチド未満の核酸分子(RNA又はDNA)を指す。
【0357】
用語「BNA」は、架橋核酸を指し、多くの場合、拘束されたRNA又は接触不可能なRNAと称される。BNAは、「固定された」C
3’-endo糖のパッカリングを有する5員、6員又はさらに7員架橋構造を含み得る。この架橋は、典型的には、リボースの2’位、4’位に取り込まれ、2’,4’-BNAヌクレオチド(例えば、LNA又はENA)をもたらす。BNAヌクレオチドの例としては、以下のヌクレオシドが挙げられる。
【化22】
【0358】
用語「LNA」は、ロックド核酸を指し、多くの場合、拘束されたRNA又は接触不可能なRNAと称される。LNAは、修飾RNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、同じリボース糖の2’ヒドロキシルを4’炭素に結び付ける追加の架橋(例えば、メチレン架橋又はエチレン架橋)で修飾されている。例えば、この架橋は、リボースを3’-endo North)配座に「ロック」することができる。
【化23】
【0359】
用語「ENA」は、エチレン架橋型核酸を指し、多くの場合、拘束されたRNA又は接触不可能なRNAと称される。
【0360】
「切断部位」は、本明細書では、iRNA剤を利用することによりRISC機構によって切断される標的遺伝子中又はセンス鎖中の主鎖連結基を意味する。また、標的切断部位領域は、切断部位の両側に少なくとも1つ又は少なくとも2つのヌクレオチドを含む。センス鎖について、切断部位は、センス鎖自体がRNAi機構によって切断しようとする標的であった場合に切断を受けたであろうセンス鎖中の主鎖連結基である。切断部位は、当技術分野で公知の方法、例えばSoutschek et al.,Nature(2004)432,173-178(これは、全体として参照により援用される)に詳述されるとおりの5’-RACEアッセイを用いて決定することができる。当技術分野においてよく理解されているとおり、2つの21ヌクレオチド長鎖(ここで、これらの鎖は、3’末端に2ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する19連続塩基対の二本鎖領域を形成する)を含む標準的な二本鎖RNAi剤の切断部位領域、切断部位領域は、センス鎖の5’末端からの9~12位に対応する。
【0361】
用語「減少した」、「低下した」、「低下」又は「阻害」の全ては、本明細書では、統計的に有意な量の減少を意味して使用される。一部の実施形態では、「低下する」、「低下」又は「減少する」又は「阻害する」は、典型的には、参照レベル(例えば所与の治療がない場合)と比較したときの少なくとも10%の減少を意味し、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又はそれを超える減少を含み得る。本明細書で用いられるとき、「低下」又は「阻害」は、参照レベルと比較したときの完全な阻害又は低下を包含しない。「完全な阻害」は、参照レベルと比較したときの100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害がない個体についての正常範囲内として一般に認められているレベルにまで下がり得る。
【0362】
本明細書で用いられるとき、鎖の「中央領域」は、鎖の5’末端から数えて8~16位、例えば8~15位、8~14位、8~13位、8~12位、9~16位、9~15位、9~14位、9~13位、9~12位、10~16位、10~15位、10~14位、10~13位又は10~12位を指す。例えば、鎖の中央領域は、鎖の8、9、10、11、12、13、14、15及び16位を意味する。センス鎖の好ましい中央領域は、センス鎖の5’末端から数えて8、9、10、11、12、13及び14位である。センス鎖のより好ましい中央領域は、センス鎖の5’末端から数えて10、11、12及び13位である。アンチセンス鎖の好ましい中央領域は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて9、10、11、12、13、14、15及び16位である。アンチセンス鎖のより好ましい中央領域は、アンチセンス鎖の5’末端から数えて10、11、12、13、14及び15位である。
【0363】
用語「特異的結合」、又は「~に特異的に結合する」、又は「~に特異的な」は、免疫グロブリンによる特定のポリペプチド、ペプチド又は他の標的(例えば糖タンパク質標的)上の標的抗原、例えばエピトープへの結合など、結合部分による結合標的への結合を指し、非特異的相互作用(例えば、非特異的相互作用は、ウシ血清アルブミン又はカゼインへの結合であり得る)と測定可能な差がある結合を意味する。特異的結合は、例えば、結合部分又は免疫グロブリンによる標的分子への結合を対照分子への結合と比較して決定することにより測定し得る。例えば、特異的結合は、標的と同様の対照分子、例えば過剰量の非標識標的との競合によって決定し得る。この場合、標識した標的によるプローブへの結合が過剰量の非標識標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が指示される。用語「特異的結合」、又は「~に特異的に結合する」、又は「~に特異的な」は、本明細書で用いられるとき、例えば少なくとも約200nM、代わりに少なくとも約150nM、代わりに少なくとも約100nM、代わりに少なくとも約60nM、代わりに少なくとも約50nM、代わりに少なくとも約40nM、代わりに少なくとも約30nM、代わりに少なくとも約20nM、代わりに少なくとも約10nM、代わりに少なくとも約8nM、代わりに少なくとも約6nM、代わりに少なくとも約4nM、代わりに少なくとも約2nM、代わりに少なくとも約1nM又はそれより強いKdを有する分子によって示され得る。特定の例では、用語「特異的結合」は、ある分子が実質的にいかなる他の分子にも結合することなく特定の標的分子に結合する結合を指す。
【0364】
「結合親和性」は、分子(例えば、免疫グロブリン)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。特に指示がない限り、本明細書で用いられるとき、「結合親和性」は、結合対(例えば、免疫グロブリンと抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(Kd)によって表すことができる。例えば、Kdは、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM又はそれより強いことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含め、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、概して抗原への結合が遅く、容易に解離する傾向がある一方、高親和性抗体は、概して抗原への結合が速く、より長く結合し続ける傾向がある。当技術分野では、結合親和性を測定する種々の方法が公知である。
【0365】
本明細書で用いられるとき、「Kd」又は「Kd値」は、免疫グロブリンと標的の対に適切な技法により、例えば表面プラズモン共鳴アッセイを用いて、例えばBiacore X100又はBiacore T200(GE Healthcare、Piscataway、N.J.)を25℃で固定化抗原CM5チップと共に用いて測定される解離定数を指す。
【0366】
「治療すること」又は「治療」は、治療的処置及び予防的又は防御的措置の両方を指し、ここで、目的は、標的とする病的状態又は障害を防ぐこと又は遅らせる(減らす)ことである。例えば、対象又は哺乳類は、治療量の本明細書に記載されるコンジュゲートの投与を受けた後、癌細胞数の低下又は癌細胞の欠如;腫瘍サイズの低下;軟部組織及び骨への癌の広がりを含めた、末梢器官への癌細胞浸潤の阻害(すなわちそれをある程度遅らせる、好ましくは止めること);腫瘍転移の阻害(すなわちそれをある程度遅らせる、好ましくは止めること);腫瘍成長のある程度の阻害;及び/又は特定の癌に関連する症状の1つ以上のある程度の軽減;罹患率及び/又は死亡率の低下及びクオリティオブライフの改善の1つ以上の観察可能及び/又は測定可能な低下又はその欠如が対象に見られる場合、癌が成功裏に「治療される」。一部の実施形態では、「治療すること」又は「治療」は、治療的処置を指す。
【0367】
本明細書で用いられるとき、「対象」は、ヒト又は動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル及びマカク、例えばアカゲザルが含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、雌ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、スイギュウ、ネコ科動物種、例えばイエネコ、イヌ科動物種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ及び魚類、例えばマス、ナマズ及びサケが含まれる。一部の実施形態では、対象は、哺乳類、例えば霊長類、例えばヒトである。用語「個体」、「患者」及び「対象」は、本明細書では同義的に使用される。
【0368】
好ましくは、対象は、哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又は雌ウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、有利には、癌の動物モデルに相当する対象として用いることができる。対象は、雄又は雌であり得る。
【0369】
対象は、治療が必要な病態(例えば癌)又はかかる病態に関連する1つ以上の合併症と以前に診断されているか、又はそれに罹患しているか若しくはそれを有すると同定されている対象であって、任意選択で、癌又は癌に関連する1つ以上の合併症に対する治療を既に受けたことがある対象であり得る。代わりに、対象は、癌又は癌に関連する1つ以上の合併症を有するとの診断をそれまで受けたことがない対象でもあり得る。例えば、対象は、癌又は癌に関連する1つ以上の合併症の1つ以上のリスク因子を呈する対象であるか、又はリスク因子を呈しない対象であり得る。
【0370】
特定の病態に対する治療を「必要としている対象」は、その病態を有する対象、その病態を有すると診断された対象又はその病態を発症するリスクがある対象であり得る。
【0371】
本開示を読むと当業者に明らかであろうとおり、本明細書に記載及び例示される個々の態様の各々は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく他の幾つかの態様のいずれかの特徴と容易に分離するか又は組み合わせることができる個別の構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載されるイベント順又は論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0372】
本発明は、以下の例によってさらに例示され、これらの例は、さらなる限定と解釈されてはならない。本願全体を通して引用される全ての参考文献、係属中の特許出願及び公開特許の内容は、本明細書によって参照により明示的に援用される。
【実施例】
【0373】
実施例1:アルトリトール修飾siRNA:インビトロ及びインビボRNAi活性並びに構造研究
天然RNAヌクレオチドには、C3’-endo配座をとってA型二重鎖を形成するリボース糖が含まれる。興味深いことに、リボース糖を6員環アルトリトール糖に置き換えたとき、得られるオリゴヌクレオチド(アルトリトール核酸又はANAと呼ばれる)の骨格は、A型の幾何学的構造を維持している。したがって、ANAは、RNA類似体と考えられ、RNAの幾何学的構造が保たれる必要がある場合に有用な適用が見出され得る。本研究では、本発明者らは、本来、2’-F RNA及び2’-OMe RNA化学修飾によって完全に修飾されるものである低分子干渉RNA(siRNA)二重鎖の修飾としてのANAを調べた。このsiRNAは、トランスサイレチン(Ttr)遺伝子の発現をサイレンシングするように設計し、ヘパトサイトへの標的化した送達のためN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)にコンジュゲートした。親二重鎖のセンス鎖及びアンチセンス鎖に沿ってANA修飾の単一ヌクレオチド位置ウォークを実施し、得られた修飾二重鎖がインビトロでTtr mRNAを標的化するその潜在的能力をスクリーニングした。この分析により、予想外且つ意外にも、ANAがシード領域、特にアンチセンス鎖の6及び7位に良好に適応することが明らかになった。対応する二重鎖もルシフェラーゼレポーターアッセイで良好なオン及びオフターゲット活性を示した。最後に、シード領域中のアンチセンス鎖の7位にANAを有する二重鎖は、インビボでRNAi活性を維持し、オリゴヌクレオチドの5’末端にANAを取り込むと、5’-エキソヌクレアーゼに対する安定性に起因して代謝安定性が向上することが示された。
【0374】
新規医薬の開発における低分子干渉RNA(siRNA)の多大な可能性は、遺伝性トランスサイレチン媒介性アミロイドーシスの多発ニューロパチーの治療用のファーストインクラス薬物であるOnpattro(登録商標)の成功から明白である
1。多くの他のsiRNAが初期~後期臨床試験で評価されているところである
2。siRNAは、所与の目的遺伝子の発現のサイレンシングのために、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる天然の遺伝子調節機構を利用する
3、4。天然RNAヌクレオチドで構成されるsiRNAは、急速な酵素分解を受け易く、全身投与したときに標的器官への到達が容易でない。したがって、治療適用には、化学的に修飾されたsiRNAを使用する必要がある
5。2’-デオキシ-2’-フルオロ-(2’-F RNA、
図1b)
6、7及び2’-O-メチル-(2’-OMe RNA、
図1b)RNA修飾は、天然のRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と適合性があり、siRNAを安定化させるために広く使用されている。ホスホロチオエート結合を戦略的に配置し、且つN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)リガンドにコンジュゲートした2’-F及び2’-OMe RNAで構成されるsiRNAが臨床で研究中である
8。本発明者らは、効力があり且つ安全なsiRNAを作成するため、2’-F RNA及び2’-OMe RNAと相乗作用的に用いることができる幾つものさらなる化学修飾ヌクレオチドを調査してきた
9~12。例えば、本来、2’-F RNA及び2’-OMe RNAで完全に修飾されているsiRNAのシード領域にグリコール核酸(GNA)を合理的に使用すると、シード媒介性オフターゲット毒性が低下し得る
10、12。同様に、センス鎖に5’-モルホリノ-2’-OMe RNAヌクレオチドを置くと、RNAi活性を向上させることができる
9一方、4’-C-メトキシ-2’-デオキシ-2’-フルオロウリジンは、遺伝子サイレンシングを維持しつつ代謝安定性を向上させることができる
13。このように、2’-F RNA及び2’-OMe RNA修飾と相乗作用的に修飾ヌクレオチドを用いる戦略は、有効性及び特異性が向上したsiRNAを作成するためのバリデートされた手法である。
【0375】
アルトリトール核酸(ANA)は、2’-(S)-位に核酸塩基及び3’-位にヒドロキシル基を有する6員環糖を有する(
図1)
14、15。ANAは、N型フラノース糖を模倣する予め組織化された構造を有する一方、3’-位のヒドロキシル基の存在は、水和による二重鎖の安定化に寄与する。ANAは、RNA様(A型の幾何学的構造であるため、RNA様構造の維持が有利となるsiRNAへの取り込みに好適な候補となる。ANA修飾siRNAは、評価されており、非修飾siRNAと比較してRNAi活性が良好であることが明らかとなっている
16~19。しかしながら、他の修飾ヌクレオチド/リガンドと相乗的に使用したときにANAがどのように振る舞うかは、依然として不明である。これに関連して、本発明者らは、ANA、2’-F RNA及び2’-OMe RNAヌクレオチドで修飾したsiRNA二重鎖のインビトロ及びインビボ遺伝子サイレンシング活性を初めて提示する。ANAがオリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端に存在するときの核酸分解からの保護に与える影響も評価する。ANA-A残基が取り込まれたRNA八量体二重鎖の結晶構造を2Å分解能で決定した。本発明者らは、ANAヌクレオチドが位置特異的に取り込まれたRNAのそれぞれ有利な活性及び代謝安定性を合理的に説明する補助となるように、アルゴノート2(Ago2)に結合したANA修飾を7位に有するsiRNAガイド鎖及びXrn1 RNA 5’-エキソヌクレアーゼに結合した2つの5’末端ANA-U残基を有するRNAのモデルも構築した。
【0376】
材料及び方法
オリゴヌクレオチド合成:既発表のプロトコル12に従い、但し脱トリチル化にはCH2Cl2中3%トリクロロ酢酸を使用して、ANA修飾オリゴヌクレオチドを入手した。簡潔に言えば、オリゴヌクレオチドの全ては、ABI 394又はMerMade 192シンセサイザーにおいて1μmol規模で汎用又はカスタムの支持体を使用して調製した。ABIには、全てのホスホラミダイトを100%アセトニトリル又は9:1アセトニトリル:DMF(2’-OMe-C、2’-OMe-U)中に0.15Mの濃度で溶解させた。Mermade 192には、0.10Mの濃度を用いた。ETTを活性化剤として使用し、ジクロロメタン中3%トリクロロ酢酸を使用して脱トリチル化した。
【0377】
MerMade 192ワークアップ:MerMade 192を使用したトリチル除去合成後、カラムを150μLの40%メチルアミン水溶液と共に室温で30分間インキュベートし、溶液を真空で96ウェルプレートに排出させた。インキュベーション及び排液を新鮮な分量のメチルアミン水溶液で繰り返した後、粗オリゴヌクレオチドが入ったプレートを密封し、室温でさらに60分間振盪して、あらゆる保護基を完全に除去した。各ウェルに1.2mLの9:1アセトニトリル:EtOHを加え、続いて-20℃で一晩インキュベートすることにより、粗オリゴヌクレオチドの沈殿を達成した。次に、プレートを4℃において3000rpmで45分間遠心し、各ウェルから上清を除去し、ペレットを950μLの20mM NaOAc水溶液に再懸濁した。最後に、各粗溶液をGE Hi-Trap脱塩カラム(Sephadex G25 Superfine)で水を用いて脱塩することにより、最終的なオリゴヌクレオチド生成物を溶出させた。全てのオリゴヌクレオチドのアイデンティティ及び純度を、それぞれESI-MS及びIEX HPLCを用いて確認した。
【0378】
ABI 394ワークアップ:切断及び脱保護には、標準プロトコルを用いた。強陰イオン交換及び臭化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液(pH=8.5)を用いて粗オリゴヌクレオチドを精製した。全てのオリゴヌクレオチドのアイデンティティ及び純度を、それぞれESI-LC/MS及びIEX HPLCを用いて確認した。
【0379】
インビトロmRNAノックダウン:384ウェルコラーゲンコートプレートに5μLのsiRNAを入れ、続いて各ウェルに4.90μLのOpti-MEM及び0.1μLのLipofectamine RNAiMax(Invitrogen)を加えた。最終siRNA濃度は、0.1又は10nMであった。プレートを室温で15分間インキュベートした。初代マウスヘパトサイト細胞を培地Invitrogro CPげっ歯類培地(#Z990028 BioIVT)に懸濁し、40μLのこの懸濁液(約5000細胞を含有する)を各ウェルに加えた。各siRNAにつき4回のレプリケートで評価した。細胞を24時間インキュベートした後、DynaBeads(ThermoFisher)を使用してRNAを単離した。次に、RNAを製造者のプロトコル(Applied Biosystems)に従ってcDNAに逆転写した。Ttrに対する遺伝子特異的TaqManアッセイ(ThermoFisher Scientific、#Mm00443267_m1)及び内因性対照としてのマウスGapdh(#4352339E)を用いて、マルチプレックスqPCR反応を実施した。Roche LightCycler 480でLightCycler 480プローブマスターミックス(Roche)を使用して、リアルタイムPCRを実施した。
【0380】
オフターゲットアッセイ:10%ウシ胎仔血清(FBS)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%CO2でCOS-7細胞を培養した。2μg/mL Lipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific)を製造者の指示に従って使用して、細胞を96ウェルプレートにおいて(15,000細胞/ウェル)、10ngルシフェラーゼレポータープラスミド及び5倍希釈の0.64pM~50nM siRNAでコトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で細胞を回収し、製造者の指示に従ってデュアルルシフェラーゼアッセイ(Promega)にかけた。オンターゲットレポータープラスミドは、ウミシイタケルシフェラーゼの3’-非翻訳(3’UTR)に、アンチセンス鎖と完全に相補的な単一の部位を含んでいた。オフターゲットレポータープラスミドは、ウミシイタケルシフェラーゼの3’-UTRに、19ヌクレオチドスペーサー(TAATATTACATAAATAAAA)だけ離れた4つのタンデムなシード相補部位を含んでいた。両方のプラスミドとも、トランスフェクション対照としてホタルルシフェラーゼを共発現した。
【0381】
インビボ遺伝子発現サイレンシング:いずれの研究も、適用可能な場合、地方、州及び連邦政府の規制に従うプロトコルを用いて行い、Alnylam Pharmaceuticalsの動物実験委員会(IACUC)による承認を受けた。6~8週齢の雌C56BL/6マウス(Charles River Laboratories)に、1×PBS中に製剤化した1mg/kg GalNAc-siRNAを皮下投与し、対照コホートは、siRNA投与動物と同じ容積(200uL)の1×PBSの投与を受けた。循環中にプレアルブミン/Ttrが見られることがあるため、治療投与直前、siRNA投与から7及び14日後に血液試料を採取した。採取した血清試料は、さらなる分析時まで-80℃で保存した。化合物投与から2週間後、動物を安楽死させ、肝臓を摘出し、次に凍結保存した。PerkinElmer Chemagicシステム(Waltham、MA)で供給業者のガイドラインに従って肝臓からのRNAの単離を行い、続いてcDNAを調製し、マルチプレックスRT-qPCR解析でTtr転写物レベルを評価した(Taqmanプローブ Mm00443267_m1;ABIからのマウスGapdh 4351309)。マウスプレアルブミン/Ttr ELISAキット(41-PALMS-E01)で、製造者のプロトコル(ALPCO、Salem、NH)に従って血清中のTtrタンパク質レベルの定量化を分光光度法により行った。
【0382】
ヌクレアーゼ安定性アッセイ:3’特異的又は5’特異的エキソヌクレアーゼに対する安定性を評価するため、それぞれ10mM MgCl2を含有する50mMトリス(pH7.2)又は10mM MgCl2を含有する50mM酢酸ナトリウム(pH6.5)のいずれかに修飾オリゴヌクレオチドを0.1mg/mLの最終濃度で調製した。IEX HPLC(dionex DNAPac PA200、4×250mm)による1mL/分の流速で7.5分にわたる37~52%移動相のグラジエント(1M NaBr、20mMリン酸ナトリウム、pH11、15%MeCN;固定相:20mMリン酸ナトリウム、15%MeCN、pH11)を用いた分析の直前にエキソヌクレアーゼ(150mU/mL SVPDE又は500mU/mLホスホジエステラーゼII)を加えた。所与の時点で試料を注入し、最長24時間までモニタした。完全長ONの量をA260における曲線下面積として決定した。t=0における曲線下面積で除して100を乗じることにより、パーセント完全長ONを計算した。末端ホスホロチオエート結合(3’-又は5’-エキソヌクレアーゼ活性について、それぞれ5’-T19・T又は5’-T・T19)を有するオリゴ-2’-デオキシチミジル酸を含めることにより、実験毎に酵素の活性を確認した。酵素の各アリコートは、実験直前に解凍した。一次反応速度式に当てはめることによって半減期を決定した。
【0383】
X線結晶構造解析:2つのANA修飾オリゴヌクレオチドを結晶化実験に供した。十二量体CGCGA(ANA-A)BrUUAGCGの結晶は、単位格子定数a=47.26Å、b=81.71、c=125.62Åの空間群I222であり、4.4Å分解能まで回折した。八量体BrCGA(ANA-A)UUCGの結晶は、単位格子定数a=b=96.14、c=125.99Å、γ=120°の空間群P6522であり、2.1Å分解能まで回折した。後者の臭素エッジ(Br-SAD)における単波長異常分散データをAdvanced Photon Source(APS、Argonne National Laboratory、Argonne、IL)にあるLife Sciences Collaborative Access Team(LS-CAT)の21-ID-Dビームラインで収集した。プログラム...でデータを処理した(構造の位相が決定できる場合には継続する)。
【0384】
分子モデリング:PDB IDコード3OK2のANA:RNAハイブリッド二重鎖a(CCGUAAUGCC-P):r(GGCAUUACGG)[Ovaere et al.NAR 2012を参照されたい]の結晶構造及びPDB iD 4F3Tのヒトアルゴノート2(Ago2)に結合したマイクロRNA miR-20a20の結晶構造の座標をwww.rcsb.orgのタンパク質データバンクから取得した。Ago2複合体におけるRNAの7位のG残基を切り出し、プログラムUCSF Chimeraを用いてANA A鎖とのハイブリッド二重鎖からのANA-G3に置き換えた[Petterson et al.J.Comput.Chem.2004を参照されたい]。得られた融合体モデルの幾何学的構造をAmber14[Case et al.UCSF 2014を参照されたい]で局所的に精密化し、及びANAプリン残基のグリコシドねじれ角を少し調整して、未変性RNAとのAgo2複合体の結晶構造に見られるとおりの隣接残基C8のスタッキングを回復させた。タンパク質データバンクから、PDB ID 2Y35を有するXrn1 5’-エキソリボヌクレアーゼと5’P-dTdTdT-3’との間の複合体21の結晶構造を取得した。ANA:RNAハイブリッド二重鎖の結晶構造の鎖Aから二量体5’P-aC9aC10-3’Pを切り出し、プログラムUCSF Chimeraを用いて塩基をUに変換した。次に、選択された骨格及び塩基原子でUCSF Chimeraのマッチ機能を用いて、この二量体をXrn1複合体中のdT三量体の最初の2ヌクレオチドに重ね合わせた。
【0385】
インビトロmRNAノックダウン:げっ歯類(マウス及びラット)トランスサイレチン(Ttr)mRNAを標的化するように設計された以前に研究されたsiRNAの各ヌクレオチドを系統的に置換することにより、ANA修飾がインビトロRNAi活性に及ぼす位置依存性の影響を評価した(
図1)
12、22~24。この設計には、2’-F RNA及び2’-OMe RNAヌクレオチドで修飾された、アンチセンス鎖に2ヌクレオチドオーバーハングを有する21mer二重鎖が含まれる。GalNac部分にコンジュゲートするセンス鎖の3’末端を除いて、各鎖の端に2つのホスホロチオエート結合を導入することにより、末端を保護した。
【0386】
センス鎖及びアンチセンス鎖のヌクレオチド位置にわたってANAヌクレオチドをウォーキングさせて、得られた修飾siRNAのRNAi活性を初代ヘパトサイトで研究した(
図2)。先行研究と一致して
16、アンチセンス鎖の5’末端(1位;AS1)におけるANAは効力が低下した。この活性損失は、恐らく細胞キナーゼがANAヌクレオチドに5’-一リン酸基を導入できないことに起因する。5’-一リン酸は、RISC負荷においてAgo2 MIDドメインと相互作用することにより重要な役割を果たし、したがって5’-一リン酸がないと、RNAi活性が損なわれることが公知である
25~28。ANA修飾がAS2位に存在することは、RNAi活性に有害であった。
【0387】
予想外にも、シード(ヌクレオチド3~8)におけるANA修飾は、より良好に適応し、AS6又はAS7位にANAヌクレオチドを有する2つの修飾二重鎖は、10nMで親二重鎖と同等のRNAi活性を示した(
図2)。加えて、AS16位のANAもRNAi活性を維持した。しかしながら、これらの修飾二重鎖のいずれも、親siRNAと比較すると、それほど高い活性を示さなかった。0.1nMの低濃度でも同様の結果が得られた(
図S1)。センス鎖に修飾を有するsiRNA二重鎖のインビトロRNAi活性を
図3及び
図S2に示す。一般に、センス鎖にANA修飾が存在すると、活性がやや失われることにつながった。しかしながら、大多数の修飾二重鎖について、有意な変化は認められなかった。
【0388】
この初期インビトロスクリーニング結果に基づき、一部の二重鎖を濃度依存的RNA活性の記録に選択し、それらのIC
50値を決定した(
図4)。この初期結果に従うと、ANA AS7を有するsiRNA二重鎖が0.115nMのIC
50値で傑出していた(親二重鎖は、0.112のIC
50値を示した)。
【0389】
ルシフェラーゼレポーターアッセイにおけるオンターゲット及びオフターゲット活性:シード媒介性オフターゲット活性は、siRNAのラット肝毒性に寄与することが報告されている
10。かかるオフターゲット効果を低減するため、siRNA二重鎖のシード領域にGNAなどの熱不安定化修飾が取り入れられている
10。GNAは、オンターゲット効力を維持しつつ、シード媒介性オフターゲット効果を効率的に軽減することができる。ANAは、シード領域においてアンチセンス鎖の6又は7位で良好に忍容される。このことに触発されて、本発明者らは、ANAがオフターゲット活性に及ぼす効果を、ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて測定し、このアッセイでは、siRNAとの4つのタンデムシードマッチをルシフェラーゼ3’-UTR領域にクローニングした(
図5A及び
図5B)
29~31。AS6及びAS7におけるANAでは、オンターゲット活性が維持され、先のインビトロスクリーニングと一致する観察であった。親二重鎖及び修飾二重鎖(AS6及びAS7)のオフターゲット活性は、同程度であった。したがって、ANAによってオフターゲット活性が増加することはない。
【0390】
インビボ遺伝子発現サイレンシング:選択のsiRNA二重鎖は、マウスにおいてTtr遺伝子の発現をサイレンシングするその能力についてもスクリーニングした。動物に1mg/kgで皮下投与し、対照コホートは、1×PBS媒体の投与を受けた。投与直前並びに投与7及び14日後に血液試料を採取した。マウスプレアルブミン/Ttr ELISAキットを用いて血清中のTtrタンパク質レベルを測定した。結果を
図6Aに示す。7日目、AS6又はAS7位にANAを有する二重鎖は、親二重鎖と同等の効力を示した。これは、これらの二重鎖によるインビトロスクリーニング実験の結果と整合している。しかしながら、14日目には、AS7のみに活性が認められる一方、AS6は、親よりも効力が低かった。現時点では、この挙動の理由は、不明である。興味深いことに、AS16にANA修飾を有する二重鎖は、親二重鎖よりも活性が有意に低かった。対照的に、同じ二重鎖がインビトロスクリーニングで親二重鎖と同等のRNAi活性を示しており、これは、インビトロモデルとインビボモデルとの間に固有の細胞内差異があることを示唆し得る。S12にANA修飾を有する二重鎖は、親よりやや低活性であったが、その活性は、14日目まで維持された。インビトロデータと一致して、アンチセンス鎖の5’末端(AS1)がANAで修飾された二重鎖は有効でなかったが、これは、ANAが内因性細胞内キナーゼによるリン酸化を受けることができないことが理由である可能性が最も高い。14日目に動物を犠牲死させて、肝臓からRNAを抽出し、続いてcDNAを調製し、マルチプレックスRT-qPCR解析によってTtr転写物レベルを評価した(
図6B)。結果は、14日目に血清試料から得られたものと良好に整合していた。
【0391】
AS7をANAヌクレオチドに置き換えたsiRNAに見られた活性に対する有利な効果について洞察を得るため、本発明者らは、Ago2:miR-20a複合体
20の結晶構造に基づき、Ago2に結合した修飾鎖のモデルを構築した。G7の代わりにマイクロRNA鎖に取り込むためのANA-G残基は、ANA:RNA十量体二重鎖
32の結晶構造から取った。このハイブリッド二重鎖(ANA-鎖AがRNA-鎖Eと対を成すもの)では、ANA残基のストランド内P-P距離が平均5.53Åであり、比較してRNA残基は、5.93Åである。miR-20aにおけるシード領域の残基6、7及び8間(P6...P7及びP7...P8)のリン酸間の間隔は、この部分における顕著なねじれの結果として短くなっている。したがって、Ago2に結合したANA-G7によってG7を置き換えたRNAのモデルにより実証されるとおり、本質的に5’-リン酸基と3’-リン酸基との間の距離が短いANAヌクレオチドは、このねじれた骨格配座に極めて良好に適合する(
図7)。
【0392】
ヌクレアーゼ安定性:ポリdTオリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端に単一のANAヌクレオチド又は2つのいずれかを取り込んだ。直接比較するため、末端にウリジンを有する同一の配列を調製した。3’末端に修飾を有するONを、3’-特異的エキソヌクレアーゼであるヘビ毒ホスホジエステラーゼ(SVPD)とインキュベートし、イオン交換HPLCを用いて完全長オリゴヌクレオチドの分解をモニタした。興味深いことに、ウリジン又はANA-Uのいずれを含有するONも、両方ともSVPDに対して同様の安定性、したがって同等の半減期を呈した。重要なことに、2つ目のANAを取り込むと、半減期が2倍に改善した(
図8A及び
図8B)。
【0393】
次に、5’-修飾オリゴヌクレオチドを、5’-特異的エキソヌクレアーゼであるホスホジエステラーゼII(PDEII)とインキュベートした。重要なことに、5’末端にANA修飾を有するオリゴヌクレオチドに有意な改善が観察された。5’末端に2つ目の修飾を加えると、オリゴヌクレオチドは、分解に対して事実上不活性になった(
図8)。5’-エキソリボヌクレアーゼXrna1に結合したオリゴdTの結晶構造に見られるとおり[Jinek et al.Mol.Cell 2011を参照されたい]
21、2つの5’末端dTにANA 5’P-aUaU-3’P二量体を重ね合わせると、P-P間隔(ANAの方が短い)及びリン酸の向きの違い並びに(2’-デオキシ)リボースと比較したヘキソース糖のバルク性の増加が容易に明らかになる(
図9)。
【0394】
結論
本研究は、アルトリトール6員糖環を特徴とするヌクレオチドが、予想外且つ意外にも、インビトロ及びインビボの両方で効率的な遺伝子サイレンシングを誘導することを示している。特に、ANA修飾はAS7位に最も良好に適応した。ANA修飾RNA八量体の結晶構造から、ANA残基の5’-リン酸と3’-リン酸との間の距離がリボヌクレオチドのリン酸間の平均距離と比べてむしろ短くなることが実証された。したがってANA残基は、siRNAガイド鎖のねじれによってリン酸塩間距離が局所的に縮まることになるAS7位におけるリボヌクレオチドを完全に模倣することができる。5’末端にANAを有するONは、ヌクレアーゼ分解に対する耐性が天然RNA対応物よりも高かった。しかしながら、この安定性の上昇は、3’-エキソヌクレアーゼであるSVPDによる分解に対する耐性を試験するアッセイで認められなかった。5’-エキソリボヌクレアーゼに結合した5’末端に2つのANA-ウリジンを有するONのモデルは、立体的バルク性並びにDNA及びRNAと比べたリン酸間の間隔の変化が、ヌクレアーゼ分解からの保護が増加する主な理由であることを示している。
【0395】
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【0396】
本明細書中で参照される米国特許、米国特許出願公開、外国特許、外国特許出願及び非特許論文の全てが、それら全体が参照により本明細書中に援用される。実施形態の態様は、さらなる実施形態をさらに提供するため、様々な特許、出願及び公開の概念を利用する必要がある場合、変更され得る。
【0397】
実施形態に対するこれら及び他の変更形態は、上記の詳細な説明のためになされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲では、用いられる用語は、特許請求の範囲を、明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態に限定するように解釈されるべきではないが、かかる特許請求の範囲に権利が付与されている均等物の全範囲と共に、あらゆる考えられる実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】