(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】皮膚に一酸化窒素を送達する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20221129BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20221129BHJP
A61K 31/095 20060101ALI20221129BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20221129BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221129BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20221129BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20221129BHJP
A61L 15/60 20060101ALI20221129BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20221129BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221129BHJP
A61P 9/08 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K38/06
A61K31/095
A61K9/70
A61K47/32
A61L15/24
A61L15/42 300
A61L15/60
A61L15/44
A61P17/02
A61P9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521054
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 GB2020052459
(87)【国際公開番号】W WO2021069876
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183951
【氏名又は名称】インセンス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSENSE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェゼック,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ポール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA82
4C076BB31
4C076CC19
4C076DD43
4C076EE06
4C076EE16
4C081AA02
4C081AA12
4C081BB06
4C081CA051
4C081CA061
4C081CB041
4C081CE02
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4C081DA12
4C081DB03
4C081DC13
4C084AA02
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4C084BA08
4C084BA15
4C084BA23
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4C084NA11
4C084NA15
4C084ZA391
4C084ZA891
4C084ZA892
4C086AA01
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4C086MA02
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4C086MA05
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4C206AA01
4C206AA10
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4C206NA11
4C206NA15
4C206ZA89
(57)【要約】
亜硝酸化合物の供給源及びチオールを含む乾燥状態の第1成分と、水の供給源を含む第2成分と、を含む皮膚適用組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜硝酸化合物の供給源及びチオールを含む乾燥状態の第1成分と、水の供給源を含む第2成分と、を含む皮膚適用組成物。
【請求項2】
皮膚ドレッシングである、請求項1に記載の皮膚適用組成物。
【請求項3】
亜硝酸化合物の前記供給源が、亜硝酸塩である、請求項1又は2に記載の皮膚適用組成物。
【請求項4】
前記亜硝酸化合物及びチオールが互いに密着していない、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項5】
前記第1成分が固体材料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項6】
前記固体材料がポリマー材料を含む、請求項5に記載の皮膚適用組成物。
【請求項7】
前記ポリマー材料が、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドン又はその混合物を含む、請求項6に記載の皮膚適用組成物。
【請求項8】
前記固体材料が、シート、層又はスラブの形状をとる、請求項5~7のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項9】
前記第1成分が、それに分散された前記亜硝酸化合物及びチオールを含む非水性液マトリックスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項10】
前記第1成分が、粒状物質の形状で提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項11】
前記亜硝酸化合物が、4.0~8.0、好ましくは5.0~7.5、最も好ましくは6.0~7.5のpHで維持される、請求項4~10のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項12】
前記チオールが、1.0~4.0、好ましくは2.0~3.5のpHで維持される、請求項4~11のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【請求項13】
前記第1成分と前記第2成分を互いに密着させることによって、pHが4.0未満となる、請求項1~12のいずれか一項に記載の皮膚適用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の身体の一部に(治療又は美容上の目的で)適用するための、治療用組成物、例えば皮膚ドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素は、哺乳動物において必須のシグナル伝達分子であり、血流の調節、神経伝達から免疫応答の範囲まで様々な役割を担うことが知られている。前駆物質としてアミノ酸アルギニンを使用した場合に、それが必要とされる時及び場所で、一酸化窒素シンターゼと呼ばれる特殊な酵素のファミリーは、一酸化窒素の制御量の独点的な仕事に関与していることは非常に重要である。
【0003】
しかしながら、一酸化窒素は非常に疎水性の化合物であり、したがって水中での溶解性は限られている。通常の条件下で達成可能な水中での最高溶解度は約1.7mMであり、その溶解度は酸素の溶解度と類似している。
【0004】
一酸化窒素は酸素と急速に反応して、二酸化窒素も形成する。二酸化窒素は、ホメオスタシスの維持又はコントロールにおける既知の役割、或いは生体系における重要な刺激に対して応答する能力を持たない。実際には、二酸化窒素は毒素及び刺激物として知られている。
【0005】
さらに、哺乳動物(及び他の脊椎動物)の生態では、組織内、特に皮膚内にチオール基が大量に存在するために、一酸化窒素のロジスティックを安全に維持することができる。一酸化窒素がチオール基(例えば、タンパク質上の)と自然に反応し、S-ニトロソチオール官能基が形成され、その形態において一酸化窒素は、安全且つ効率的に貯蔵又は輸送される。S-ニトロソチオールは、一酸化窒素を放出することができる化合物である。したがって、一酸化窒素は、S-ニトロソチオールの分解を経て、要求に応じて迅速に放出され得る。
【0006】
したがって、哺乳類の生物学は一酸化窒素のこれらの問題に対処しており、S-ニトロソチオールとして閉じ込められた場合には、それを二酸化窒素へと酸化することができず、水へのその不溶性は問題とはならない。
【0007】
しかしながら、皮膚部位への外因的な自然の一酸化窒素の送達は、二酸化窒素の生成に許容できない損失をもたらし得る。また、皮膚に入り込む一酸化窒素が不適切な場所でケラチンS-ニトロソチオール内に閉じ込められ得るか、又はその一酸化窒素は、ターゲットとされるシステムの利用可能な水に溶解することができない。
【0008】
したがって、皮膚部位への価値ある一酸化窒素の有効な送達が考慮され得る前に、種々のストラテジーを用いることが必要である。
【0009】
米国特許第6,103,275号明細書に、亜硝酸化合物(nitrite)、還元剤及び特定の酸を共に合わせることによって、一酸化窒素を生成する生体適合性システムが開示されている。使用時まで、亜硝酸化合物及び酸は通常、分けて保持される。
【0010】
記述されるように、S-ニトロソチオールは、自然な分解によって遊離一酸化窒素を放出し、したがって、反応性及び不溶性一酸化窒素の非常に簡便な送達手段である。しかしながら、ニトロソチオールは自然に分解し、したがって一酸化窒素の運搬手段としての寿命が限られている。
【0011】
国際公開第2006/095193号パンフレットに、不活性状態であるが、活性にし、且つ皮膚部位へS-ニトロソチオールを到達するようにすることができる、皮膚ドレッシングが開示されている。使用直前にのみニトロソチオールが形成されるように、ニトロソチオールに対する反応物を含有させることによって、或いは必要とされる際に水を添加して活性化されるように、予め形成されたニトロソチオールを乾燥状態で維持することによって、ドレッシングは不活性状態で維持される。
【0012】
分解の速度は、チオールの側鎖に応じてかなり異なる。例えば、通常の条件下にて数分内でニトロソシステインが完全に分解し得る一方で、ニトロソグルタチオンの100%分解に達するには数時間/数日かかる。分解は一般に、Cu2+及びHg2+の存在下にて促進される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、二酸化窒素を形成することなく、且つ水溶性状態で、標的位置へと一酸化窒素を安全にエスコートし得るS-ニトロソチオールを直接合成することによって、天然の生物学的プロセスを模倣する。その化学的性質によって、S-ニトロソチオールは、その一酸化窒素を身体のチオールと容易に交換することができ、それによって、送達された一酸化窒素が身体内へと効率的に介在され、身体の一酸化窒素ロジスティックと調和される。
【0014】
したがって、本発明は、亜硝酸化合物の供給源及びチオールを含む乾燥状態の第1成分と、水の供給源を含む第2成分と、を含む皮膚適用組成物を提供する。
【0015】
亜硝酸化合物及びチオールが乾燥状態にある場合には、処置組成物は不活性状態である。しかしながら、第1成分と第2成分を互いに接触させ、亜硝酸化合物及びチオールを反応させて、使用直前にS-ニトロソチオールを形成し、処置される皮膚部位へのS-ニトロソチオールの活性な送達を可能にすることによって、処置組成物を活性化することができる。
【0016】
乾燥状態とは、第1成分が水を含まず、その結果、温度、圧力及び湿度の通常の周囲条件下にて蒸発による有意な若しくは測定可能な水の損失が起こらないことを意味する。乾燥状態は、特別に完全に乾燥された状態である乾燥状態を含む。乾燥状態とは、水分不透過性バリアによって囲まれた環境で貯蔵することによって維持される状態を意味し、その物質は、添加された乾燥剤によって水を含まない状態で綿密に維持される。
【0017】
高い一酸化窒素は、近くの毛細血管を広げて血液循環を向上させる血管拡張作用によって、不適切な血液かん流を患う組織に有益な効果を有し得る。血管拡張作用は、物質の送達及び取込みを促進することによって、薬剤的に活性な薬、例えばホルモン、鎮痛薬等の物質の経皮送達も高めることができる。このように、一般に、複合ドレッシング又はパッチ、ギプス、包帯、ガーゼ等に送達用の物質も含ませることによって、組成物を経皮送達のための補助剤としても使用することができる。
【0018】
好ましくは、皮膚処置組成物は皮膚ドレッシングである。「皮膚ドレッシング」という用語は、パッチ、ギプス、包帯、吸収性発泡体及びガーゼ等のドレッシングを包含する。その用語は、非晶質又は液体状態の材料も含む。その用語は、内部及び外部組織、特に頭皮を含む皮膚など、一般に体表面に適用されるドレッシングを包含する。
【0019】
適切なS-ニトロソチオールとしては、S-ニトロソグルタチオン(これは生理的に重要なタイプであるため、好ましくはS-ニトロソ-L-グルタチオン)、S-ニトロソシステイン、S-ニトロソチオグリセロール、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、S-ニトロソカプトプリル、S-ニトロソメルカプトエチルアミン、S-ニトロソ-3-メルカプトプロパン酸、Sニトロソ-D-チオグルコース及びS-ニトロソ-N-アセチル-D,L-ペニシラミンが挙げられる。分解して一酸化窒素を生成する速度が比較的遅いため、S-ニトロソグルタチオンが現在は好ましく、ドレッシングにおけるS-ニトロソチオールの十分な安定性が得られ、結果として、皮膚の利益に対して適切な速度で一酸化窒素がゆっくりと放出される。
【0020】
亜硝酸化合物の供給源は、好ましくは亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩であり、チオールは、好ましくはチオグリセロール、チオグルコース又はグルタチオンである。
【0021】
亜硝酸化合物及びチオールの両方が第1成分に存在するが、亜硝酸化合物及びチオールは好ましくは、互いに密着しない。これは、所望の状態であることに加えて、密着させないことによって、使用が望まれるまで、処置組成物を不活性状態に維持することを確実にするためである。
【0022】
好ましい実施形態において、第1成分は、乾燥亜硝酸化合物及びチオールがその中に提供される固体材料として提供され得る。固体材料は好ましくは、ポリマー材料を含む。
【0023】
好ましいポリマーとしては、水溶性ポリマー、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース又は修飾セルロース(カルボキシメチルセルロースなど)が挙げられる。1つの好ましいポリマー材料はPVAを含む。PVAは、皮膚治療の使用に簡便且つ許容可能な特性、例えば非毒性である特性を有する。PVAは、取り扱い及び使用も容易であり、水中でのPVA溶液の乾燥で容易にフィルムが形成され、得られるフィルムは取り扱いが容易である。PVAはまた、容易に入手可能であり、且つ安価である。架橋は任意に用いてもよいが、例えばフィルム上で固体材料を形成するために必要なわけではない。PVAは、材料の物理的性質に影響する、分子量及び加水分解度に基づいて広範囲のグレードで入手可能である。PVAの適切なグレードは、特定の意図する用途に所望の特性を有するポリマー生成物を生成するために容易に選択することができる。例えば、皮膚ドレッシングでの使用に関して、実質的に完全に加水分解された(98~99%加水分解された)範囲100,000~200,000の分子量を有するPVAであって、例えばAldrichからコード36,316-2の形態でのPVA、及びSigma(363138)から入手される、98~99%加水分解されており、Mw31,000~50,000、非架橋形態でのPVAの使用によって良好な結果が得られている。
【0024】
他の適切なポリマー材料はポリビニルピロリドン(PVP)を含む。PVPの特性はPVAの特性と非常に類似しており、PVPは、皮膚治療の使用にも許容可能である。PVPは、異なる分子量の範囲で容易に入手可能である。PVPの適切なグレードは容易に選択することができる。例えば、例えばSigmaから市販のコードPVP360の形態での、非架橋形態の、分子量平均360,000を有するPVPを使用して、良好な結果が得られている。
【0025】
ポリマー材料の混合物も使用され得る。
固体材料は便利なことには、シート、層又はフィルム状であり、通常0.01~1.0mmの範囲、好ましくは0.05~0.5mmの範囲の厚さを有する。好ましくは、亜硝酸化合物は、一方のシート、層又はフィルムで提供され、チオールは、もう一方のシート、層又はフィルムで提供される。次いで、2枚のシートを合わせて位置付け、第1成分を形成することができる。
【0026】
固体材料は任意に、湿潤した場合に剛性を付与する支持材を含み得る。
本発明の固体材料は便利なことには、ポリマーの溶液(例えば、PVA及び/又はPVPの水溶液)と試薬とを混合し、その混合物を乾燥させて、固体材料を生成すること、例えば、キャスティング手順によるフィルムの形成によって製造される。適切な技術は当業者によく知られている。
【0027】
1種又は複数種のポリマー材料は、フィルムが形成される適切な量で、適切に使用され、濃度の上限は通常、溶解度(一般に水中で)の限度によって指示され、濃度の下限は、フィルムが形成しないポイントである。AldrichからのPVAコード36,316-2に関しては、水中での溶解度の限度は約6%(w/w)であり、乾燥前のフィルムのPVA濃度が約5%となる。
【0028】
かかる固体ポリマー材料は一般に、乾燥状態であり、したがって水の供給源を提供し得る、滲出創傷に使用することができる。しかしながら、好ましくはかかる固体ポリマー材料は、以下に記述されるように、水の供給源を含む第2成分を提供し、したがって、乾燥創傷でも使用することができる。固体ポリマー材料はまた、熱傷及び同様な皮膚状態に特に適している。
【0029】
代わりとして、第1成分は、メッシュ又は発泡体などの多孔質吸水性材料の形状で提供され得て、その上に、亜硝酸化合物又はチオールが乾燥状態で提供される。かかるメッシュ又は発泡体は好ましくは、固体吸水性ポリマー、例えばシリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレンポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート及びポリアミドから製造される。好ましくは、亜硝酸化合物は、一方のメッシュ上に提供され、チオールは、もう1つのメッシュ上に提供される。次いで、2つのメッシュを合わせて位置付け、第1成分が形成される。例としては、Allevyn(商標)の範囲(Smith & Nephew)、Biatain(商標)の範囲(Coloplast)、Lyofoam(商標)の範囲(Molnlycke)、Tielle(商標)の範囲(Systagenix)及びTegaderm(商標)の範囲(3M)が挙げられる。
【0030】
代替方法としては、メッシュ又は発泡体が、アルジネートなどの材料から製造され得る。かかる多孔質材料は滲出創傷に適用可能である。例としては、AlgisiteM(商標)の範囲(Smith & Nephew)、Biatain(商標)の範囲(Coloplast)、Kaltostat(商標)の範囲(ConvaTec)、Tegaderm(商標)の範囲(3M)及びUrgosorb(商標)の範囲(Urgo)が挙げられる。
【0031】
メッシュ又は発泡体の多孔質構造内に吸収されることを可能にする、浸し塗り、吹付け等により亜硝酸化合物又はチオールの水溶液を適用することによって、かかるメッシュ又は発泡体が製造され得る。次いで、これに続いて乾燥工程が行われ、メッシュ又は発泡体の構造に付着された乾燥状態の亜硝酸化合物又はチオールが残される。
【0032】
滲出創傷に適用する場合、メッシュ又は発泡体は創傷滲出液を吸収し始め、メッシュ又は発泡体から創傷部位への液体フロー経路が形成される。次いで、亜硝酸化合物及びチオールが創傷滲出液内に溶解し、S-ニトロソチオールが生じ、次に生じた濃度勾配の下に創傷部位に向かって拡散する。
【0033】
代わりとして、第1成分は、その中に分散される亜硝酸化合物及びチオールを含有する非水性液マトリックスを含み得る。1つの配置において、亜硝酸化合物及びチオールは、粒状物質としてマトリックス中に別々に分散され得て、つまり、非水性液マトリックスは、チオールの分散粒子及び亜硝酸化合物の分散粒子を含む。他の配置において、2つの非水性液マトリックスが存在し得て、チオールに対するマトリックスと、亜硝酸化合物に対するマトリックスである。この場合には、亜硝酸化合物及びチオールは、細かい粒状物質としてそのそれぞれのマトリックスに別々に分散され得るか、又はマトリックス自体に溶解され得る。適切な非水性液としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG300、PEG400、PEG3350)が挙げられ、且つ非水性クリーム、軟膏又はローションが挙げられる。
【0034】
かかる非水性液は、滲出創傷に適用可能である。メッシュ及び発泡体に対して同様な手法において、亜硝酸化合物とチオールとの反応、それに続く生成されたS-ニトロソチオールの放出を可能にする水が創傷滲出液によって提供され得る。
【0035】
代わりとして、第1成分は、粉末などの粒状物質の形状で、又は顆粒状で提供され得る。かかる配置において、第1粒状物質は亜硝酸化合物を含み、且つ第2粒状物質はチオールを含む。次いで、2つの粒状成分を組み合わせ、共に均一にブレンドして第1成分を形成することができる。
【0036】
第1成分は、Cu2+、Zn2+及び/又はFe2+などの二価金属イオンをキレート化することができるキレート剤も含み得る。適切なキレート剤としては、EDTA、EGTA、ヒスチジン及び/又はクエン酸塩が挙げられる。
【0037】
亜硝酸化合物は中性に近いpH、例えば4.0~8.0、好ましくは5.0~7.5、最も好ましくは6.0~7.5で維持されることが非常に好ましい。しかしながら、チオールは、酸性に維持すべきであり、pHは1.0~4.0、好ましくは2.0~3.5である。したがって、バッファーなど、これらのpHを維持するのに適した物質が好ましくは含まれる。
【0038】
組成物は、第1成分を第2成分と接触させ、亜硝酸化合物及びチオールの反応が生じ、1種若しくは複数種のS-ニトロソチオールが形成することによって、活性化される。ドレッシングの活性化では、亜硝酸化合物及びチオールが密着する。酸性溶液中での亜硝酸化合物とチオールとの混合によって、S-ニトロソチオールがゆっくりと生成される。チオールがL-グルタチオンである場合、次いで反応生成物はS-ニトロソ-L-グルタチオンである。生成されると、S-ニトロソチオールはドレッシングから、周囲環境内に、例えば創傷床内へと放出され、そこで分解して、結果として有益な作用を有する一酸化窒素が生成される。
【0039】
したがって、亜硝酸化合物及びチオールを共に合わせた後に、第1成分と第2成分の混合物が、S-ニトロソチオールの急速な生成を促進するために、好ましくは4.0未満の酸性pHを有することが望ましい。したがって、処置組成物は任意に、プロトンの供給源を含み、且つ/又は活性化で生成し得る。
【0040】
活性化ドレッシングにより生成される好ましい一酸化窒素ドナーは、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)である。グルタチオン及び亜硝酸化合物を含有する水性環境におけるGSNO生成の速度はpH依存性である。グルタチオンはそれ自体が、プロトンを供与して活性化ドレッシングでのGSNOの生成させることができる酸性化合物であり、そのため、プロトンの更なる供給源は常に必須ではない。
【0041】
プロトンの更なる供給源は通常、緩衝液、例えば乳酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、コハク酸緩衝液又はクエン酸-リン酸緩衝液の形態をとる。緩衝液は、第1及び第2成分の一方又は両方に含まれ得る。
【0042】
プロトンの更なる供給源の組み込みによって、処置組成物内部のS-ニトロソチオール生成速度に関して、ある程度のコントロールが可能となる。生成速度は、組み込まれる緩衝液によって調節されるドレッシングの酸性度に伴って増加する。したがって、例えば、S-ニトロソチオール生成の速度は、リン酸緩衝液(pH5.5)がプロトン供給源として組み込まれた場合には、クエン酸緩衝液(pH3)の組み込みと比較して遅くなるだろう。
【0043】
第2成分は水和ヒドロゲルであり得る。水和ヒドロゲルとは、水和状態での1つ又は複数の水ベース又は水性ゲルを意味する。したがって、水和ヒドロゲルは、処置組成物の活性化のための、水の供給源を含む。水和ヒドロゲルは、水及び創傷部位から滲出した他の物質を吸収するように作用し、創傷部位からかかる材料を除去することによって、処置組成物が、貴重及び有用な機能を果たすことが可能となる。水和ヒドロゲルは、創傷を湿潤状態で維持するために使用時に作用し得る、水分の供給源も提供し、治癒を助ける。
【0044】
適切な水和ヒドロゲルが国際公開第03/090800号パンフレットに開示されている。水和ヒドロゲルは好都合なことには、親水性ポリマー材料を含む。適切な親水性ポリマー材料としては、例えばFirst Water Ltdによって供給される、商標(proprietary)ヒドロゲルの形態でのポリアクリレート及びメタクリレート、例えばポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ポリ-AMPS)及び/又はその塩(例えば、国際公開第01/96422号パンフレットに記載の)、多糖、例えば多糖ガム、特にキサンタンガム(例えば、商標Keltrolで市販)、種々の糖、ポリカルボン酸(例えば、ISP Europeから商標Gantrez AN-169BFで入手可能)、ポリ(メチルビニルエーテルco-無水マレイン酸)(例えば、20,000~40,000の範囲の分子量を有する商標Gantrez AN139で入手可能)、ポリビニルピロリドン(例えば、PVP K-30及びPVP K-90として知られる市販のグレードの形態で)、ポリエチレンオキシド(例えば、商標Polyox WSR-301で入手可能)、ポリビニルアルコール(例えば、商標Elvanolで入手可能)、架橋ポリアクリルポリマー(例えば、商標Carbopol EZ-1で入手可能)、セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどの修飾セルロース(例えば、商標Klucel EEFで入手可能)、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(例えば、商標Cellulose Gum 7LFで入手可能)及びヒドロキシエチルセルロース(例えば、商標Natrosol 250LRで入手可能)が挙げられる。
【0045】
親水性ポリマー材料の混合物はゲルで使用され得る。
親水性ポリマー材料の水和ヒドロゲルにおいて、親水性ポリマー材料は、ゲルの全重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、またより好ましくは少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%、望ましくは少なくとも25重量%、またより望ましくは少なくとも30重量%の濃度で望ましくは存在する。ゲルの全重量に対して40重量%までの、より多い量でさえ、使用され得る。
【0046】
ゲルの全重量に対して約30重量%の量で、poly-AMPS及び/又はその塩の水和ヒドロゲルを使用して、良い結果が得られた。
【0047】
比較的高濃度(少なくとも2重量%)の親水性ポリマー材料を含むゲルを使用することによって、そのゲルは、例えば創傷と接触すると同時に血清滲出液から、処置組成物の使用時に水を吸収するように特に効果的に機能し得る。ゲルが水性システムであるために、処置組成物の使用は、望ましくないと考えられる創傷の全体的な乾燥を誘導する作用を持たない。これは、水蒸気圧力が、処置組成物の使用時に皮膚周囲の閉じ込められた環境に維持されるためである。したがって、ゲルは水分、例えば創傷滲出液の除去のための吸収性の実体として機能し、有用な基礎環境レベルの余分な水分も提供する。
【0048】
高濃度ゲルを含む水和ヒドロゲルの水取込み能力は、かなりの量の滲出液を除去し、そうする際に膨張することによって、処置組成物が創傷治癒を助けることを可能にする。注意深く配合された、水和する準備が整ったゲルを使用することによって、創傷が無用な乾燥状態に達することが防がれる。水和する準備が整っていることは、処置組成物と創傷との間の水性液界面の迅速な形成も確保し、したがって、それを交換しなければならない時に、そうでなければ、処置組成物を容易に持ち上げることを妨げるであろう付着が防止される。利用可能な表面のすべてを通して、ゲル中に保持される有益な生成物が創傷に入ることを可能にする点から、創傷と処置組成物との間の良好な水性液界面もまた重要である。
【0049】
水和ヒドロゲル材料は一般に、通常架橋され、且つ機械的強化構造を組み込み得る、材料の固体層、シート又はフィルム状である。層、シート又はフィルムのサイズ及び形状は、処置組成物の使用目的に合わせて選択することができる。0.05~5mm、好ましくは0.5~3mmの範囲の厚さが特に適している。かかるゲルの例としては、ActiFormCool(商標)範囲(L&R)及びIntrasite(商標)範囲(Smith & Nephew)が挙げられる。
【0050】
代わりとして、水和ヒドロゲルは、ノズルを通して絞られるなど、三次元に変形及び形成することができる固定形又は形状を有しない非晶質ゲル状をとり得る。非晶質ゲルは通常、架橋されていない、又は低レベルの架橋を有する。ずれ揺変非晶質ゲルが使用され得る。かかるゲルは、せん断応力にかけられる場合(例えば、ノズルを通して注がれる、又は絞られる場合)液体であるが、静止している場合には硬化する。したがって、例えば、直径約3mmのノズルを通常有する、ピストン及びシリンダーを備えた圧縮性チューブ又はシリンジ様ディスペンサーから分配され得る、注ぎ可能な又は絞り可能な成分の形状をそのゲルはとり得る。かかるゲルは、利用可能な空間を充填し、且つ創傷面に接触する完全に適合可能なゲルとして、表面層の形状で、或いは創傷空隙内に適用され得る。かかるゲルの例としては、Purilon(商標)範囲(Coloplast)、Nu-Gel(商標)範囲(Systagenix)、Granugel(商標)範囲(ConvaTec)及びIntrasite(商標)範囲(Smith & Nephew)が挙げられる。
【0051】
非晶質ゲル配合物の一般的な例は:15%(w/w)AMPS(ナトリウム塩)、0.19%ポリエチレングリコールジアクリレート及び0.01%ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであり、その容積は、分析等級脱イオン水で100%まで構成される。試薬を完全に混合及び溶解し、次いで約100mW/cm2を送達するUV-Aランプを使用して30~60秒間重合して、必要とされるヒドロゲルが形成された。これはプラスチック製シリンジ内に収容され、次いで、そこから非晶質ゲルが、表面層としてか又は空隙を充填するために、標的部位へとシリンジから分配され得る。
【0052】
第2成分は代わりに、たらい型の又は絞り可能なパウチ又はチューブなどの、適切な容器内に保持される、ヒドロクリームを含み得る。
【0053】
したがって好ましい一実施形態において、本発明は、亜硝酸化合物及びチオールをそれぞれ含有する、乾燥ポリマーマトリックス、好ましくは乾燥PVAの2層を含む第1成分と、水和ヒドロゲルの層を含む第2成分と、を含む。水和ヒドロゲルが、上述のように皮膚接触に有益な特性を有するため、第2成分は皮膚と接触して使用され得て、第1成分は、第2成分の上に位置付けられる。成分が使用前に別々に維持されるという条件で、処置組成物は非活性化状態を維持する。しかしながら、2つの成分が接触した場合に、これは、処置組成物を活性化する効果を有する。
【0054】
他の好ましい実施形態において、処置組成物は、非晶質である成分を含む。これは特に、S-ニトロソチオールが非水性液マトリックスに分散される、好ましい実施形態に対する場合である。非晶質成分は、例えばゲル、半固体、ペースト、クリーム、ローション又は液体状態であり得る。かかる非晶質成分は、それ自体で提供され、創傷滲出液自体から必要な水を引き出し得る。代わりとして、上述の水和ヒドロゲル又は他の非晶質材料によって水が提供され得る。
【0055】
処置組成物が体表面へ適用されることが望まれるまで、2つの非晶質成分は別々に保たれる。好都合なことには、ノズルを有する容器内にパッケージされ、そのノズルを通して、非晶質成分が送達され得る。好ましくは、2つの成分は、両方の成分を同時に送達するように好ましくは操作可能である、2つの区画ディスペンサー内にパッケージされる。
【0056】
処置組成物は任意に、既知の手法でヒト又は動物の皮膚にドレッシングを付着させるための被覆又は外部層を含むか、或いは被覆又は外部層と共に使用される。
【0057】
本発明による処置組成物は、皮膚の領域を、例えば異なるサイズ及び形状の創傷を治療するために、異なるサイズ及び形状の範囲で製造することができる。特定のドレッシング用の試薬の適切な量は、実験によって容易に決定することができる。
【0058】
処置組成物成分は、滅菌、密封、防水性パッケージ、例えばはり合わせアルミニウム箔パッケージ内で使用前に適切に保管される。乾燥条件を確実に維持するために、乾燥剤物質が、望ましくは第1成分用のパッケージに含まれる。
【0059】
使用時に、1つ又は複数の処置組成物成分をパッケージから取り出し、例えばヒト若しくは動物の皮膚上に、例えば、創傷、又は美容若しくは治療目的で処置される皮膚の他の領域上に、適切な順序で位置付けることによって接触させる。処置組成物は、上記のように経皮送達のための補助剤としても使用され得る。
【実施例】
【0060】
多くのモデルシステムを作製して、S-ニトロソチオールの産生及び生成速度を決定した。以下の各結果セクションの始めの表に、システムを詳述する。各システムに関して、水性成分からの試料アリコートを、システム「活性化」(つまり、すべての成分を互いに接触させた)後に3つの時点で採取し、Sニトロソチオールの生成及び放出の存在を確認した。第1時点は常にt=ゼロ(つまり、乾燥/非水性成分で「活性化」する前に、水性成分中のS-ニトロソチオールを測定し、開始時にS-ニトロソチオールが存在しないことを実証し、すべてのシステムでそうであった)、次いで活性化後のt=2時間、最後に活性化後のt=6時間であった。
【0061】
亜硝酸化合物とチオールとの反応によってS-ニトロソチオールが生成されることを実証するために、(1)使用前に亜硝酸化合物及びチオールが別々に保たれるシステム、及び(2)亜硝酸化合物とチオールが、合わせて製造する間に互いに混合され、使用前にS-ニトロソチオールが予め生成されるシステムが製造された。
材料
・脱イオン水中の亜硝酸ナトリウム(300mM)
・脱イオン水中のグルタチオン(300mM)
・脱イオン水中のチオグリセロール(300mM)
・脱イオン水中の乳酸(100mM)-(0.2M NaOHでpH4.0に調整された)
・脱イオン水中のソルビトール(1M)
・脱イオン水中のポリビニルアルコール(7.5%(w/w))-Mw31,000-50,000、98~99%加水分解-Sigmaから入手(363138)脱イオン水中のEDTA(二ナトリウム)(5mM)
・脱イオン水中の亜硝酸銅(2+)(5mM)
PVAストック溶液製造手順
脱イオン水462.5mlを計量し、80~85℃の一定温度にホットプレート上で加熱し、デジタル温度計を使用してコントロールした。PVA粉末37.5gを計量し、5×7.5gアリコートに分けた。PVA粉末の1つのアリコートを加熱水に添加し、それを攪拌した(PVA凝集を防ぐ)。添加全体を通して、水/PVA温度を80~85℃に維持した。PVAが溶解するまで、水/PVA混合物の温度を維持しながら、添加を繰り返した。ホットプレートから取り出し、冷却した後に、最終体積を脱イオン水で500mlにした。
PVAフィルムの製造
PVAストック溶液を活性成分と混合し、その混合物を40℃のペトリ皿において乾燥させて、PVAフィルムを製造した。活性成分を含む、予め調製された各PVA溶液20mlを10×10cmペトリ皿に注ぎ、40℃のインキュベータ内で静置して、一晩乾燥させた。活性成分を有するPVAフィルムを2つの別々のフィルムで製造し、互いに接触させ、各フィルムが、亜硝酸化合物又はチオールを含むか(PVA1、PVA2及びPVA3)、或いは単一フィルムに共に含有される亜硝酸化合物及びチオールを含む(PVA4及びPVA5)。どちらの場合にも、形成されたフィルムを、水性システムで互いに接触させて、S-ニトロソチオールの放出が活性化される。乾燥前のPVA混合物の組成を表1に示す。
【0062】
PVA4及びPVA5の場合には、PVAフィルムの製造中及びPVAフィルムの形成前に、亜硝酸化合物及びチオールが共に反応して、S-ニトロソチオールを形成すると想定され、比較例として含まれる。
【0063】
【0064】
粉末の製造
亜硝酸化合物又はチオーをバルキング剤(ソルビトール)と混合し、続いて混合物を乾燥させることによって、亜硝酸化合物又はチオールを含む粉末を製造した。それぞれの粉末に関して、予め調製された各溶液20mlを10×10cmペトリ皿に注ぎ、40℃のインキュベータ内で24時間放置して脱水し、続いて完全に乾燥させた。粉末状になった後、配合物をそのままのプロピレングリコール中に分散させた(プロピレングリコール1mlに粉末0.1g)。
【0065】
乾燥前の粉末調製物の水性混合物の組成を表2に示す。
水性システム(ヒドロゲルなど)と接触させると、Sニトロソチオール放出に関して粉末が活性化された。互いに合わせられるべき2種類の別々の粉末で、活性成分を用いて粉末を製造し、それぞれが亜硝酸化合物又はチオールを含むか(P1及びP2)、或いは亜硝酸化合物及びチオールが、単一の粉末に共に含有される(P3及びP4)。
【0066】
P3及びP4の場合において、粉末の製造中及び形成前に、亜硝酸化合物及びチオールが共に反応してS-ニトロソチオールが形成されると想定され、比較例として含まれる。
【0067】
【0068】
水性成分
予め作製されたPVAフィルム及び粉末は、S-ニトロソチオール生成及び放出を活性化するために、水性成分と接触させる必要がある。様々な水性要素を以下の表3に示す。
【0069】
【0070】
シートヒドロゲル及び非晶質ヒドロゲル材料の詳細を表4に示す。
【0071】
【0072】
S-ニトロソチオールの測定
生成されたS-ニトロソチオールの存在が、以下に記載のグリース試薬法を用いて、490nmでの吸光度読み取り値によって測定された。S-ニトロソチオール濃度は、吸光係数約10,000M-1cm-1を使用して、吸光度測定値から計算することができる。吸光度測定は、Fisherbrand(商標)Digital Colorimeter Model45を使用して行った。
【0073】
ヒドロゲル(AQ1~AQ4)又は溶液(AQ5及びAQ6)が水性成分として用いられるか否かに応じて、生成されたS-ニトロソチオール濃度の算出に2通りの異なる方法が必要とされる。
S-ニトロソチオール測定のための試薬
試薬1:リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4,0.1M)。
【0074】
試薬2:グリース試薬:DMSO 2mLに溶解された、N-(1-ナフチル)エチレンジアミンジヒドロクロリド(NADD)20mg+スルファニルアミド500mg。
【0075】
試薬3:DMSO中の塩化第二水銀(10mM)(DMSO5mL中のHgCl213.58mg)。
【0076】
ゲル中のS-ニトロソチオール濃度を測定する手段
1.250mlポット内に試薬1 25mL及び試薬2 825μLを分配する。
【0077】
2.ヒドロゲル300mgを正確に計量し、試薬ミックスにそれを浸す。穏やかに30分間攪拌しながらインキュベートする。
【0078】
3.ポットからプラスチック製キュベット内に試薬ミックス2.6mlを移す。
4.試薬3 25μlを加える。
【0079】
5.得られた混合物の吸光度を490nmにて10分で読み取る。
溶液中のS-ニトロソチオール濃度を測定する手順
1.プラスチック製キュベット内に試薬1 1.5mLを分配する。
【0080】
2.試料200μLを添加する。
3.脱イオン水1.17μLを添加する。
【0081】
4.試薬2 100μLを添加する。
5.試薬3 30μLを添加し、完全に混合する。
【0082】
6.得られた混合物の吸光度を490nmにて10分で読み取る。
結果
PVAフィルムシステムにおけるS-ニトロソチオールの測定
水性システムとの接触による活性化に続く、亜硝酸化合物及びチオールの別々の供給源を含むPVAフィルムシステムからのS-ニトロソチオールの生成及び放出を表5に示す。各場合において測定を繰り返したが、その結果をmAUで示す。
【0083】
【0084】
予め混合された亜硝酸化合物及びチオールを含む以下の組み合わせを、表6に示すように比較例として試験した。
【0085】
【0086】
非水性液成分をベースとするシステムにおけるS-ニトロソチオールの測定
水性システムとの接触による活性化に続く、亜硝酸化合物及びチオールの別々の供給源を含む、非水性システムをベースとする粉末からのS-ニトロソチオールの生成及び放出を表7に示す。各場合において、測定を繰り返し、その結果をmAUで示す。
【0087】
【0088】
予め混合された亜硝酸化合物及びチオールを含む以下の組み合わせを、表8に示すように比較例として試験した。
【0089】
【0090】
結論
PVAフィルム及び粉末ベースのシステムに基づく、非水性成分からのS-ニトロソチオールの生成及び放出が、水性成分と接触させて実証された。
【国際調査報告】