(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-06
(54)【発明の名称】3D物品を構築するための熱可塑性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221129BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221129BHJP
C08L 91/06 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L91/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521120
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 FR2020051776
(87)【国際公開番号】W WO2021069843
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルファン,アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】デュラン,ジャン-シャルル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002AE032
4J002BB032
4J002BB122
4J002BD141
4J002BD152
4J002CH011
4J002CH021
4J002CK021
4J002CL001
4J002CL011
4J002CL031
4J002DE137
4J002DE147
4J002DH047
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002EG026
4J002EG036
4J002FD017
4J002FD162
4J002FD166
4J002FD172
4J002FD176
4J002GC00
4J002GG00
4J002GM00
(57)【要約】
本発明は、電磁放射によってもたらされる組成物の焼結による三次元物品の一層ずつの構築に関する組成物であって、半結晶性熱可塑性ポリマー粉末及び該半結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化温度よりも高い滴点を有する少なくとも1種のワックスを含み、さらに任意に流動剤を含む組成物に関する。
本発明はまた、前記組成物の調製方法、及びまた三次元物品の一層ずつの構築のためのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射によってもたらされる組成物の焼結による3次元(3D)物品の一層ずつの構築のための組成物であって、
- 半結晶性熱可塑性ポリマー粉末、
- 該半結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化温度(Ct)よりも高い滴点を有するワックス、
- 及び、任意選択の流動剤
を含む組成物。
【請求項2】
前記ワックスが、ポリオレフィンワックス、植物起源又は動物起源のワックス、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ワックスが、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ケトンワックス、酸ワックス、部分エステル化酸ワックス、酸無水物ワックス、エステルワックス、アルデヒドワックス、アミドワックス、それらの誘導体及びそれらの混合物から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記半結晶性熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、フッ化ビニリデン(PVDF)のホモポリマー又はコポリマー、ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー(PEBA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエーテルブロックを含み、かつポリエーテルブロックを含むコポリマー(COPE)、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記半結晶性熱可塑性ポリマーが、PEBA、TPU、COPE、及びそれらの混合物から選択されるエラストマーである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアミドが、ポリアミド(PA)11、PA12又はPA6から選択される、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記PEBAのポリアミドブロックが、PA6、PA11、PA12、PA610、PA1010又はPA1012ブロックであり、及び/又は、前記PEBAのポリエーテルブロックが、PEG(ポリエチレングリコール)、PPG(プロピレングリコール)、PO3G(ポリトリメチレングリコール)又はPTMG(ポリテトラヒドロフラン)から生じるブロックである、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ワックスが、全組成物の0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~5重量%の含有量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ワックスの滴点が、前記半結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化温度よりも少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃高い、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ワックスの滴点が、前記半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりも、最大30℃、好ましくは最大20℃高い、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記流動剤が、全組成物の5重量%以下の含有量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記流動剤が、シリカ、特に沈降シリカ、水和シリカ、ガラス質シリカ、フュームドシリカ又は焼成シリカ、ガラス状酸化物、特にガラス状リン酸塩又はガラス状ホウ酸塩、アルミナ、例えば、非晶質アルミナ、TiO
2、カルシウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、例えば、タルク、マイカ、カオリン、アタパルジャイト及びそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
電磁放射、好ましくはレーザー放射によってもたらされる組成物の焼結による3D物品の一層ずつの構築のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
前記組成物をいくつかの連続した構築で再利用する、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
電磁放射、好ましくはレーザー放射によってもたらされる焼結による一層ずつの構築により、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物から製造された3D物品。
【請求項16】
電磁放射、好ましくはレーザー放射による焼結のプロセスにおける半結晶性熱可塑性ポリマー粉末の層の凝集性を高めるためのワックスの使用。
【請求項17】
焼結による3D物品の構築物中の粉末のリサイクル性を向上させるための、半結晶性熱可塑性ポリマーをベースとする粉末組成物におけるワックスの使用。
【請求項18】
前記ワックス及び/又は前記半結晶性熱可塑性ポリマーが、請求項1~12のいずれか一項に規定されているとおりである、請求項16又は17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射によってもたらされる、焼結による層別三次元(3D)物品の製造のための組成物に関する。より詳細には、本発明は、半結晶性熱可塑性ポリマー粉末及びワックスを含む組成物、並びにその調製方法に関する。本発明はまた、この組成物の使用、及びそれから製造される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
3D物品の構築は、例えば、自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(義肢、聴覚系、細胞組織など)、繊維、衣服、ファッション、装飾、電子機器のためのハウジング、電話通信、ホームオートメーション、コンピュータ、照明、スポーツ及び工業用ツールなどの分野で、しばしば試作品、部品のモデルの製造(「ラピッドプロトタイピング」)、又は最終部品を小さなシリーズで製造(「迅速生産」)するために用いられる。
【0003】
3D物品の製造技術の中で、焼結による製造方法は特に有利である。この方法によれば、ポリマー粉末の層は、電磁放射(例えば、レーザービーム、赤外線放射、紫外線放射)によりチャンバー内で選択的かつ短時間照射され、その結果、放射線によって影響を受けた粉末粒子が溶融する。溶融した粒子は融合して凝固し、固体の塊が形成される。この方法は、新たに適用した粉末層を繰り返し照射することにより、単純な方法で3D物品を生成することができる。
【0004】
製造された部品の品質及びその機械的特性は、ポリマー粉末の特性に依存する。熱可塑性ポリマーは、温度及び/又は機械的に、実際には化学的な条件においてさえ制限されている用途に使用されることが評価されている。熱可塑性エラストマーポリマーは、1種の同じポリマーにおいて、機械的特性と、熱老化又はUV老化に対して非常に良好な耐性及び低密度とを組み合わせることで、軽くて可撓性の部品の製造が可能であることから、特に有利であることが証明されている。
【0005】
しかし、これらの熱可塑性ポリマー粉末は、焼結装置に採用されるのに適していなければならない。
【0006】
例えば、粉末は、凝集したり、塊又は亀裂を形成したりすることなく運ばれ、均一な層を形成することができなければならない。
【0007】
流動剤のような添加剤を加えることにより、流動特性をある程度改善することができる。
【0008】
焼結を行うためには、製造中に物体の層間の良好な凝集性を確保し、変形現象を回避するために、粉体層を粉体の結晶化温度(Ct)と融点(Mp)の間の作動ウィンドウ内の温度に維持することが知られている。したがって、作業ウィンドウを広げて、焼結方法に使用しやすくするためには、MpとCtとの間の相違ができるだけ大きいポリマーを用いることが好ましい。
【0009】
「作業ウィンドウ」という用語は、焼結が実際に可能な粉末層の温度範囲を意味すると理解される。
【0010】
しかし、半結晶性熱可塑性ポリマーをベースとするいくつかの粉末組成物については、ポリマーのMp-Ctの相違が十分に大きくても、焼結は必ずしも可能ではないことが観察された。作業ウィンドウは狭い(例えば、5℃未満)こともあれば、存在しないこともある。
【0011】
したがって、熱可塑性ポリマー粉末、特に熱可塑性エラストマーポリマーをベースとする組成物であって、特により広い作業ウィンドウでの作業を可能にしながら、良好な機械的特性及び正確ではっきりした寸法及び輪郭を有する、良質の物品を製造することを可能にし、より容易に該方法を実施することを可能にする組成物を提供する必要性がある。
【0012】
さらに、焼結中の粉末層の凝集の問題が観察された。より詳細には、製造される部品は、粉末層の内側に沈み、その縁に浮き上がる可能性があり、これは、それらの製造の完了を妨げる。
【0013】
したがって、焼結中に部品が粉末層に沈み込むのを防ぐために、該粉末層の凝集性を補強することを可能にする粉末組成物を提供することが求められる。
【0014】
また、良好なリサイクル性を有するこのような熱可塑性ポリマー粉末組成物を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、上記の必要性を満たすことを可能にする。
【0016】
第1の態様によると、本発明は、電磁放射によってもたらされる組成物の焼結による3次元(3D)物品の一層ずつの構築のための組成物に関するものであり、組成物は、以下を含む。
- 半結晶性熱可塑性ポリマー粉末、
- 該半結晶性熱可塑性ポリマーの結晶化温度(Ct)よりも高い滴点を有するワックス、
- 及び任意選択の流動剤。
【0017】
特に有利な実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリマー(scTP)はエラストマーである。
【0018】
本発明の組成物は、良好な精細度、及びその物理的、機械的、実際には化学的特性に関して部分全体にわたる均一性を示す3D物品を構築することを可能にする。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、scTPポリマーは以下から選択される。
- ポリアミド、
- フッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマー(PVDF)、
- ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー(PEBA)、
- 熱可塑性ポリウレタン(TPU)、
- ポリエステルブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー(COPE)、及び
- それらの混合物。
【0020】
好ましくは、scTPポリマーは、以下から選択されるエラストマーである。
- PEBA、
- TPU、
- COPE、及び
- それらの混合物。
【0021】
ワックスは、特にポリオレフィンワックス、植物又は動物起源のワックス、及びそれらの混合物から選択することができ、例えば、ワックスは、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ケトンワックス、酸ワックス、部分エステル化酸ワックス、酸無水物ワックス、エステルワックス、アルデヒドワックス、アミドワックス、それらの誘導体、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0022】
本発明はまた、上記の組成物の調製方法であって、
- SCTPポリマーを、好ましくは粉末形態で供給し、及び
- SCTPポリマーをワックス及び任意に流動剤と接触させること
を含む方法に関する。
【0023】
1つの実施形態によれば、scTPポリマーをワックスと接触させる操作は、乾式混合によって行われる。
【0024】
1つの実施形態によれば、scTPポリマーをワックスと接触させる操作は以下により実施される。
- ワックス溶液を形成するために、ワックスを適切な溶媒に溶解し、
- 分散体を形成するために、ワックス溶液をscTPポリマーと混合し、及び
- ワックスで被覆したscTPポリマーを得るために、例えば、蒸発により分散体から溶媒を除去すること。
【0025】
本発明はまた、電磁放射によって、好ましくはレーザー放射によってもたらされる組成物の焼結による3D物品の一層ずつの構築のための上記組成物の使用に関する。
【0026】
本発明はまた、好ましくは、電磁放射によって、好ましくはレーザー放射によってもたらされる焼結による一層ずつの構築による、上記組成物から製造された3D物品にも関する。
【0027】
本発明との関連において、組成物中にワックスを使用すると、ワックスのない同じ組成物と比較して、作業ウィンドウの幅を増大させ、そのためscTPポリマー(狭い作業ウィンドウを有するか、又は作業ウィンドウが存在しないものであっても)をベースとする組成物の広い選択を伴う、焼結による製造を行うことが可能になる。
【0028】
これは、組成物が流動剤をさらに含む場合に特に有利である。
【0029】
さらに、ワックスを使用することにより、焼結時の粉末層の凝集性を高め、このため製造した部品が粉末層内部に沈み込み、変形することを防ぐことができることが観察された。これは、本発明の別の利点を構成する。
【0030】
したがって、別の態様によれば、本発明は、電磁放射、好ましくはレーザー放射による焼結のプロセスにおいて、scTPポリマー粉末層の凝集性を増大させるためのワックスの使用に関する。
【0031】
本発明による組成物は、さらに良好なリサイクル性を示す。
【0032】
特定の理論に委ねるつもりはないが、粉末層の温度でワックスがポリマー粒子に付着し、それにより粉末層の凝集性が増大することが可能になると思われる。すなわち、一旦焼結が行われ、粉末層の温度が低下した場合、ワックスは硬くなり、未焼結のポリマー粒子から分離し、これによりそれらをリサイクルし、再利用することが可能になる。
【0033】
1つの態様によれば、本発明は、焼結による3D物品の構築中の粉末のリサイクル性を改善させるための、scTPポリマーをベースとする粉末組成物中の特定のワックスの使用に関する。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、上記の組成物を用いて焼結することにより物品を製造する方法に関するものであり、この方法は、未焼結の粉末をリサイクルする段階を含む。
【0035】
1つの実施形態によれば、組成物は、連続するいくつかの構築において再利用される。
【0036】
さらに別の態様によると、本発明は、リサイクルされたscTPポリマー粉末を含む組成物から得られる3D物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<半結晶性熱可塑性ポリマー>
本発明による熱可塑性ポリマーは半結晶性である。「半結晶性熱可塑性ポリマー」という用語は、以下を示す熱可塑性ポリマーを意味すると理解される。
- DSC(示差走査熱量測定)において20K/分の速度で冷却する段階で、規格ISO 11357-3:2013に従って決定された結晶化温度(Ct)、
- DSCにおいて20K/分の速度で加熱する段階で、規格ISO 11357-3:2013に従って決定された融点(Mp)、及び
- DSCにおいて20K/分の速度で加熱する段階で、規格ISO 11357-3:2013に従って決定された、5J/gより大きい、好ましくは10J/gより大きい、例えば、20J/gより大きい、一般的に200J/gより小さい、好ましくは150J/gより小さい、例えば100J/gより小さい又は50J/gより小さい融解エンタルピー(ΔHf)。
【0038】
本発明の半結晶性熱可塑性ポリマーは、100~300℃、好ましくは120~200℃のMpを有することができる。このMpは最初の加熱に対応する。scTPポリマーは、40~250℃、好ましくは45~200℃、例えば、45~150℃のCtを有することができる。
【0039】
典型的には、Mp及びCtはscTP粉末から直接測定される。
【0040】
ポリマーの混合物に関する場合、ポリマーの混合物中の最低MpをMpとみなし、ポリマーの混合物中の最高CtをCtとみなす。
【0041】
scTPポリマーのCtとMpの間の差は、好ましくは20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上である。
【0042】
本発明のscTPポリマーは、特にポリアミド、PVDF、PEBA、TPU、COPE及びそれらの混合物から選択することができる。
【0043】
<ポリアミド>
1つの実施形態によると、半結晶性熱可塑性ポリマーは半結晶性ポリアミド(scPA)である。それは、ホモポリアミド又はコポリアミド、又はそれらの混合物であることができる。
【0044】
したがって、本発明によるポリアミドは、以下から選択される1種のモノマー(ホモポリアミド)又は少なくとも2種の異なるモノマー(コポリアミド)の重合によって得ることができる。
- アミノ酸又はアミノカルボン酸型のモノマー、好ましくはα,ω-アミノカルボン酸、
- 主環に3~18個の炭素原子を有し、置換され得るラクタム型のモノマー、
- 4~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンと、4~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を有するジカルボン酸との間の反応から生じる「ジアミン・二酸」型のモノマー、及び
- アミノ酸型のモノマーとラクタム型のモノマーとの間の混合物の場合には、モノマーが異なる炭素数を有する、それらの混合物。
【0045】
本説明では、「モノマー」という用語を「繰り返し単位」という意味でとらえるべきである。これは、ポリアミド(PA)の繰り返し単位がジアミンと二酸の組合せからなる場合が特別であるからである。これはモノマーに対応するのがジアミンと二酸の組み合わせ、すなわちジアミン・二酸の対(等モル量)であると考えられる。これは、個々には、二酸あるいはジアミンは構造単位にすぎず、それだけでは重合するには不十分であるという事実によって説明される。
【0046】
アミノ酸型のモノマーに関しては、α,ω-アミノ酸の例として、4~18個の炭素原子を有するもの、例えば、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、N-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0047】
ラクタム型のモノマーについては、例として、主環上に3~18個の炭素原子を有し、かつ置換され得るものを挙げることができる。例えば、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、ラクタム6としても知られるカプロラクタム、ラクタム8としても知られるカプリラクタム、オエナントラクタム、ラクタム12としても知られるラウリラクタムを挙げることができる。
【0048】
「ジアミン・二酸」型のモノマーについては、ジカルボン酸の例として、4~36個の炭素原子を有する酸を挙げることができる。例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム塩又はリチウム塩、二量化脂肪酸(これらの二量体脂肪酸は少なくとも98%の二量体含有率を有し、好ましくは水素化されている)及びドデカン二酸HOOC-(CH2)10-COOH及びテトラデカン二酸が挙げられる。
【0049】
「脂肪酸二量体」又は「二量体化脂肪酸」という用語は、より詳細には、脂肪酸(一般に18個の炭素原子を含み、しばしばオレイン酸及び/又はリノール酸の混合物を含む)の二量体化反応の生成物を意味すると理解される。それは、0%~15%のC18一酸、60%~99%のC36二酸、及び0.2%~35%のC54又はそれ以上の三酸又はポリ酸を含む混合物であることが好ましい。
【0050】
ジアミンの例として、アリリック(arylic)及び/又は飽和環状であり得る、4~36個の原子、好ましくは4~18個の原子を有する脂肪族ジアミンを挙げることができる。例として、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン(「Pip」と略す)、アミノエチレンピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ポリオールジアミン、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(一般に「PACM」と表される)、メタ-キシリレンジアミン及びビス(p-アミノシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
【0051】
ジアミン・二酸の例として、より詳細には、1,6-ヘキサメチレンジアミンと6~36個の炭素原子を有するジカルボン酸との縮合から生じるもの、及び1,10-デカメチレンジアミンと6~36個の炭素原子を有する二酸との縮合から生じるものを挙げることができる。
【0052】
特に、「ジアミン・二酸」型のモノマーの例として、モノマー:66、610、611、612、614及び618を挙げることができる。デカンジアミンとC6~C36二酸の縮合から生じるモノマー、特にモノマー:1010、1012、1014及び1018を挙げることができる。数字表記法XYでは、Xはジアミン残基から生じる炭素原子の数を、Yは二酸残基から生じる炭素原子の数を従来の方法で表している。
【0053】
ホモポリアミドは、典型的には脂肪族ホモポリアミドであり、好ましくは線状脂肪族ホモポリアミドである。
【0054】
コポリアミドは脂肪族、芳香族又は半芳香族であり得る。
【0055】
1つの実施形態によれば、scPAは、EP1505099号に記載されているように、例えば、式X/YAr、特にAがアミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位及び前記(ジアミン・二酸)の式に対応する単位から選択される式A/XTの半芳香族コポリアミドである。
【0056】
(コ)ポリアミドの例として、PA410、PA4T、PA66、PA46、PA610、PA612、PA11、PA12、PA910、PA912、PA913、PA914、PA915、PA916、PA918、PA936、PA1010、PA1012、PA1013、PA1014、PA1210、PA1212、PA1213、PA1214、PA614、PA613、PA615、PA616、PA618、PA MXD6、PA MXD10、PA12T、PA10T、PA9T、PA18T、PA6T/66、PA66/6T/6I及びPA6/6Tを挙げることができる。XTはCxジアミンとテレフタル酸の重縮合から得られる単位で、xはCxジアミンの炭素原子の数を表し、xは6~36の間、有利には9~18の間であり、特にA/6T、A/9T、A/10T又はA/11Tのポリアミドであり、Aは上で定義された通りであり、特にMPMDT/6T、5T/10T、11/BACT、11/6T/10T、MXDT/10T、MPMDT/10T、BACT/10T、BACT/6T、BACT/10T/6T、11/BACT/6T、11/MPMDT/6T、11/MPMDT/10T、11/BACT/10T、11/MXDT/10T及び11/5T/10Tから選択されるポリアミドであり、Tはテレフタル酸に対応し、MXDはm-キシリレンジアミンに対応し、MPMDはメチルペンタメチレンジアミンに対応し、BACはビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。
【0057】
好ましい実施形態によれば、ポリアミドはポリアミド(PA)11、PA12又はPA6から選択される。
【0058】
本発明の関連におけるホモポリアミド又はコポリアミドは、上記のCt、Mp及びΔHfを有するscTPポリマーである。
【0059】
<フッ化ビニリデンポリマー(PVDF)>
1つの実施形態によると、半結晶性熱可塑性ポリマーはPVDFである。
【0060】
PVDFはホモポリマー又はコポリマーであり得る。
【0061】
本明細書において「コポリマー」とは、VDFと少なくとも1種の他のコモノマーとの重合によって得られるポリマー、すなわち、VDFから生じた繰り返し単位及び少なくとも1種の他のコモノマーから生じた繰り返し単位を有するポリマーを総称する。好ましくは、それは厳密な意味でのコポリマー、すなわち、VDFから生じた繰り返し単位及び他のたった1種のコモノマーから生じた繰り返し単位を有するコポリマーである。
【0062】
好ましくは、コモノマー(単数又は複数)はハロゲン化アルケンであり、より好ましくはフッ化アルケンである。特にハロゲン化プロペン又はハロゲン化エチレン、より詳細にはフルオロエチレン(又はフッ化ビニル)、クロロフルオロエチレン(1-クロロ-1-フルオロエチレン及び1-クロロ-2-フルオロエチレン)、トリフルオロエチレン、クロロジフルオロエチレン(特に1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン)、1-ブロモ-2,2-ジフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロプロペン(特に3,3,3-トリフルオロプロペン)、テトラフルオロプロペン(特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)、クロロトリフルオロプロペン(特に2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、ペンタフルオロプロペン(特に1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン)及びヘキサフルオロプロピレンとも呼ばれるヘキアフルオロプロペンが挙げられる。それはまた、一般式Rf-O-CF-CF2のペルフルオロアルキルビニルエーテルでもよく、Rfはアルキル基、好ましくはC1~C4アルキル基である。好ましい例は、PPVE(ペルフルオロプロピルビニルエーテル)及びPMVE(ペルフルオロメチルビニルエーテル)である。
【0063】
PVDFは、溶液重合、乳化重合又は懸濁重合などの既知の重合法によって得ることができる。1つの実施形態によれば、それは、フッ素化界面活性剤の非存在下での乳化重合方法によって調製される。
【0064】
PVDFは、コポリマーである場合、均一でも不均一でもよく、好ましくは均質であり得る。均一コポリマーは均一な鎖構造を示し、コモノマーの統計的分布がポリマー鎖間で変化しない。不均一コポリマーでは、ポリマー鎖はコモノマーの平均含量として多峰性又は拡大型の分布を示し、したがって、1種のコモノマーに富むポリマー鎖と、該コモノマーに乏しいポリマー鎖を含む。不均一PVDFの例は、文献WO2007/080338号に記載されている。
【0065】
均一コポリマーは、コモノマー間の質量比を一定に保ちながらコモノマーを徐々に注入する一段階法で調製できる。
【0066】
好ましい実施形態によれば、ポリマーは、PEBAコポリマー、TPU又はCOPEから選択されるscTPエラストマーポリマーである。
【0067】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、40ショアD以下、より好ましくは35ショアD以下の瞬間硬度を示す。規格ISO 868:2003に従って硬度測定を行うことができる。
【0068】
<ポリアミドブロックを含みポリエーテルブロックを含むコポリマー(PEBA)>
1つの実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリマーは「PEBA」コポリマーであり、好ましくは線状(非架橋)コポリマーであり得る。PEBAは、反応性末端基を含むポリアミドブロックと、反応性末端基を含むポリエーテルブロックとの重縮合、特に以下の重縮合から生じる。
1)ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックと、ジカルボキシル鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロック
2)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、ジアミン鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロック、これらは、例えば、ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族α,ω-ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化及び水素化によって得られる
3)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックとポリエーテルジオール、その生成物は、この特定の場合には、ポリエーテルエステルアミドである。
【0069】
ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば、連鎖制限ジカルボン酸の存在下でのポリアミド前駆体の縮合に由来する。ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば、連鎖制限ジアミンの存在下でのポリアミド前駆体の縮合に由来する。
【0070】
3種類のポリアミドブロックを有利に使用できる。
【0071】
第1の種類によれば、ポリアミドブロックは、ジカルボン酸、特に、4~20個の炭素原子を有するもの、好ましくは6~18個の炭素原子を有するものと、脂肪族又は芳香族ジアミン、特に2~20個の炭素原子を有するもの、好ましくは6~14個の炭素原子を有するものとの縮合に由来する。
【0072】
ジカルボン酸の例として、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸及びテレフタル酸及びイソフタル酸だけでなく、二量体化脂肪酸も挙げることができる。
【0073】
ジアミンの例として、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及びトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。
【0074】
有利には、ポリアミドブロックPA412、PA414、PA418、PA610、PA612、PA614、PA618、PA912、PA1010、PA1012、PA1014及びPA1018が使用される。
【0075】
PA XY表記では、Xはジアミン残基から生じる炭素原子の数を、Yは二酸残基から生じる炭素原子の数を従来の方法で表す。
【0076】
第2の種類によれば、ポリアミドブロックは、6~12個の炭素原子を有する1種以上のα,ω-アミノカルボン酸及び/又は1種以上のラクタムの縮合から生じる。ラクタムの例としては、カプロラクタム、オエナントラクタム及びラウリラクタムが挙げられる。α,ω-アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0077】
有利には、第2の種類のポリアミドブロックは、PA11(ポリウンデカンアミド)ブロック、PA12(ポリドデカンアミド)ブロック又はPA6(ポリカプロラクタム)ブロックである。
【0078】
PA X表記では、Xはアミノ酸残基から生じる炭素原子の数を表す。
【0079】
この種類による縮合は、連鎖制限剤、例えば、4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸又はジアミンの存在下で行うことができる。
【0080】
第3の種類によれば、ポリアミドブロックは少なくとも1種のα,ω-アミノカルボン酸(又は1種のラクタム)、少なくとも1種のジアミン及び少なくとも1種のジカルボン酸の縮合から生じる。
【0081】
この場合、ポリアミドPAブロックは以下の重縮合によって調製される。
- X個の炭素原子を含む直鎖状脂肪族又は芳香族ジアミン、
- Y個の炭素原子を含むジカルボン酸、及び
- ラクタム及びZ子の炭素原子を含むα,ω-アミノカルボン酸並びにX1個の炭素原子を含む少なくとも1種のジアミン及びY1個の炭素原子を含む少なくとも1種のジカルボン酸の等モル混合物から選択されるコモノマー(複数可)(Z)であって、(X1、Y1)は(X、Y)とは異なり、
- 該コモノマー(複数可){Z}は、ポリアミド前駆体モノマーの総量に対して、有利には50%まで、好ましくは20%まで、さらにより有利には10%までの範囲の重量比で導入され、
- 該重縮合はジカルボン酸から選択される連鎖制限剤の存在下で行われる。
【0082】
Y個の炭素原子を含むジカルボン酸を連鎖制限剤として用いるのが有利であり、これはジアミン(複数可)の化学量論に対して過剰に導入される。
【0083】
この第3の種類の1つの変形例によれば、ポリアミドブロックは、連鎖制限剤の任意の存在下で、少なくとも2種のα,ω-アミノカルボン酸、又は6~12個の炭素原子を含む少なくとも2種のラクタム、又は同じ数の炭素原子を持たない1種のラクタム及び1種のアミノカルボン酸の縮合から生じる。
【0084】
脂肪族α,ω-アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0085】
ラクタムの例としては、カプロラクタム、オエナントラクタム及びラウリラクタムを挙げることができる。
【0086】
脂肪族ジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及びトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。
【0087】
脂肪族二酸の例としては、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸及び二量体化脂肪酸を挙げることができる。これらの二量体化脂肪酸は、好ましくは、少なくとも98%の二量体含有率を有し、好ましくは、それらは水素化されている。それらは、例えば、Croda社によりPripol(R)の商標で販売されている生成物、又はBASF社によりEmpol(R)の商標で販売されている生成物、又はOleon社によりRadiacid(R)の商標で販売されている生成物、及びポリオキシアルキレン-α,ω-二酸である。
【0088】
芳香族二酸の例として、テレフタル酸(T)及びイソフタル酸(I)を挙げることができる。
【0089】
第3の種類のポリアミドブロックの例として、以下を挙げることができる。
- PA66/6、ここで66はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6はカプロラクタムの縮合から生じる単位を表す、
- PA66/610/11/12、ここで66はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し、610はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し、11はアミノウンデカン酸の縮合から生じる単位を表し、12はラウリラクタムの縮合から生じる単位を表す。
【0090】
PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記は、X、Y、Zなどが上記のようにホモポリアミド単位を表すコポリアミドに関する。
【0091】
有利には、本発明で使用されるコポリマーのポリアミドブロックは、ポリアミドPA6、PA11、PA12、PA54、PA59、PA510、PA512、PA513、PA514、PA516、PA518、PA536、PA64、PA69、PA610、PA612、PA613、PA614、PA616、PA618、PA636、PA104、PA109、PA1010、PA1012、PA1013、PA1014、PA1016、PA1018、PA1036、PA10T、PA124、PA129、PA1210、PA1212、PA1213、PA1214、PA1216、PA1218、PA1236、PA12T、又はそれらの混合物又はコポリマーを含み、好ましくはポリアミドPA6、PA11、PA12、PA610、PA1010、PA1012、又はそれらの混合物又はコポリマーを含む。
【0092】
ポリエーテルブロックはアルキレンオキシド単位からなる。
【0093】
ポリエーテルブロックは、特に、PEG(ポリエチレングリコール)から生じるブロック、すなわち、エチレンオキシド単位からなるブロック、及び/又はPPG(プロピレングリコール)から生じるブロック、すなわち、プロピレンオキシド単位からなるブロック、及び/又はPO3G(ポリトリメチレングリコール)から生じるブロック、すなわち、ポリトリメチレングリコールエーテル単位からなるブロック、及び/又はPTMGから生じるブロック、すなわち、ポリテトラヒドロフランとも呼ばれるテトラメチレングリコール単位からなるブロックであり得る。PEBAコポリマーは鎖中に数種のポリエーテルを含むことができ、コポリマーはブロック又はランダムであることが可能である。
【0094】
また、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールA)のオキシエチル化によって得られるブロックを使用してもよい。これらの後者の生成物は、特に文献EP613919号に記載されている。
【0095】
ポリエーテルブロックはまた、エトキシル化された第一級アミンからなることができる。エトキシル化された第一級アミンの例として、以下の式の生成物を挙げることができる。
【化1】
式中、m及びnは1~20の間の整数であり、xは8~18の間の整数である。これらの生成物は、例えば、CECA社からはNoramox(R)の商標で、ClariantからはGenamin(R)の商標で市販されている。
【0096】
ポリエーテルブロックは、NH2鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックを含むことができ、そのようなブロックは、ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族α,ω-ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化によって得ることができる。より詳細には、Jeffamine又はElastamineの市販品を使用することができる(例えば、Jeffamine(R) D400、D2000、ED2003又はXTJ542、これらはHuntsman社の市販品であり、また、文献JP2004346274号、JP2004352794号及びEP1482011号に記載されている)。
【0097】
ポリエーテルジオールブロックは、そのまま使用され、カルボキシル末端基を含むポリアミドブロックと共縮合されるか、又はポリエーテルジアミンに変換され、カルボキシル末端基を含むポリアミドブロックと縮合されるためにアミノ化されるかのいずれかである。
【0098】
PAブロックとPEブロックの間にエステル結合を有するPEBAコポリマーの2段階調製の一般的方法が知られており、例えば、文献FR2846332号に記載されている。PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有するPEBAコポリマーの一般的な調製方法は知られており、例えば、文献EP1482011号に記載されている。また、ポリアミドブロック及びランダムに分配された単位を有するポリエーテルブロックを含むポリマーを調製するために、ポリエーテルブロックをポリアミド前駆体及び二酸連鎖制限剤と混合することができる(1段階方法)。
【0099】
もちろん、本発明の本説明におけるPEBAという名称は、Arkema社が販売しているPEBAX(R)製品、Evonik(R)社が販売しているVestamid(R)製品、EMS社が販売しているGrilamid(R)製品、Sanyo社が販売しているPEBA型Pelestat(R)製品、又は他の供給業者からの任意の他のPEBAにもまさに関連する。
【0100】
上記のブロックコポリマーは、一般に、少なくとも1つのポリアミドブロック及び少なくとも1つのポリエーテルブロックを含むが、本発明は、これらのブロックが少なくともポリアミド及びポリエーテルブロックを含むことを条件として、本説明に記載のものから選択される2つ、3つ、4つ(実際、さらにより多く)の異なるブロックを含む全てのコポリマーも包含する。
【0101】
例えば、本発明によるコポリマーは、上記ブロックのいくつかの縮合から生じる3つの異なる種類のブロックを含むセグメント化ブロックコポリマー(又は「トリブロック」コポリマー)を含み得る。前記トリブロックは、コポリエーテルエステルアミド及びコポリエーテルアミドウレタンから選択することが好ましい。
【0102】
本発明の関連において特に好ましいPEBAコポリマーは、以下の種類のブロックを含むコポリマーである。すなわち、PA11であり、PEGから生じる、PA11であり、PTMGから生じる、PA12であり、PEGから生じる、PA12であり、PTMGから生じる、PA1010であり、PEGから生じる、PA1010であり、PTMGから生じる、PA610であり、PTMGから生じる、PA610であり、PEGから生じる、PA6であり、PEGから生じる、PA6であり、PTMGから生じる。
【0103】
PEBAコポリマー中のポリアミドブロックの数平均モル質量は、好ましくは100~20000g/mol、より優先的には200~10000g/mol、さらにより優先的には200~2000g/molの範囲である。実施形態において、PEBAコポリマー中のポリアミドブロックの数平均モル質量は、100~200g/mol、又は200~500g/mol、又は500~1000g/mol、又は1000~1500g/mol、又は1500~2000g/mol、又は2000~2500g/mol、又は2500~3000g/mol、又は3000~3500g/mol、又は3500~4000g/mol、又は4000~5000g/mol、又は5000~6000g/mol、又は6000~7000g/mol、又は7000~8000g/mol、又は8000~9000g/mol、又は9000~10000g/mol、又は10000~11000g/mol、又は11000~12000g/mol、又は12000~13000g/mol、又は13000~14000g/mol、又は14000~15000g/mol、又は15000~16000g/mol、又は16000~17000g/mol、又は17000~18000g/mol、又は18000~19000g/mol、又は19000~20000g/molの値を有する。
【0104】
ポリエーテルブロックの数平均モル質量は、好ましくは100~6000g/mol、より優先的には200~3000g/mol、さらにより優先的には800~2500g/molの値を有する。実施形態において、ポリエーテルブロックの数平均モル質量は、100~200g/mol、又は200~500g/mol、又は500~800g/mol、又は800~1000g/mol、又は1000~1500g/mol、又は1500~2000g/mol、又は2000~2500g/mol、又は2500~3000g/mol、又は3000~3500g/mol、又は3500~4000g/mol、又は4000~4500g/mol、又は4500~5000g/mol、又は5000~5500g/mol、又は5500~6000g/molの値を有する。
【0105】
数平均モル質量は、連鎖制限剤の含有量によって決定される。数平均モル質量は、以下の関係に従って算出することができる。
【数1】
【0106】
この式では、
【数2】
はモノマーのモル数を表し、
【数3】
は、過剰の制限剤(例えば、二酸)のモル数を表し、
【数4】
は繰り返し単位のモル質量を表し、
【数5】
は過剰の制限剤(例えば、二酸)のモル質量を表す。
【0107】
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックの数平均モル質量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、ブロックの共重合前に測定することができる。
【0108】
PEBAコポリマーのポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は、特に0.1~20の値を有することができる。この重量比は、ポリアミドブロックの数-平均モル質量をポリエーテルブロックの数-平均モル質量で割ることによって計算することができる。したがって、PEBAコポリマーのポリエーテルブロックに関するポリアミドブロックの重量比は、0.1~0.2、又は0.2~0.3、又は0.3~0.4、又は0.4~0.5、又は0.5~1、又は1~2、又は2~3、又は3~4、又は4~5、又は5~7、又は7~10、又は10~13、又は13~16、又は16~19、又は19~20とすることができる。
【0109】
2~19の範囲、より具体的には4~10の範囲が特に好ましい。
【0110】
<ポリエステルブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー(COPE)>
1つの実施形態によると、scTPポリマーは、コポリエーテルエステルとも呼ばれるCOPEである。
【0111】
したがって、本発明によるCOPEは、少なくとも1つのポリエーテル(PE)ブロック及び少なくとも1つのポリエステルPESブロック(ホモポリマー又はコポリエステル)を含む任意の熱可塑性エラストマーポリマーを含む。
【0112】
COPEは、ポリエーテルジオールから生じる可撓性PEブロック、及び少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種の鎖を延長する短いジオール単位との反応から生じる硬質ポリエステルブロックを含む。PESブロック及びPEブロックは、ジカルボン酸の酸官能基とポリエーテルジオールのOH官能基との反応から生じるエステル結合を介して結合する。鎖を延長する短いジオールは、ネオペンチルグリコール、及びnが2~10の値をもつ整数である式HO(CH2)nOHの脂肪族グリコールからなる群から選択することができる。ポリエーテル及び二酸の結合は可撓性ブロックを形成し、グリコール又はブタンジオール及び二酸の結合はコポリエーテルエステルの硬質ブロックを形成する。有利には、二酸は、8~14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸の50モル%までは、8~14個の炭素原子を有する少なくとも1種の他の芳香族ジカルボン酸で置き換えることができ、及び/又は20モル%までは、2~14個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸で置き換えることができる。芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、二安息香酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン酸、エチレンビス(p-安息香酸)、1,4-テトラメチレンビス(p-オキシ安息香酸)、エチレンビス(p-オキシ安息香酸)又は1,3-トリメチレンビス(p-オキシ安息香酸)を挙げることができる。グリコールの例としては、エチレングリコール、1,3-トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレングリコール、1,6-ヘキサメチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,8-オクタメチレングリコール又は1,10-デカメチレングリコールを挙げることができる。
【0113】
COPEは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリトリメチレングリコール(PO3G)又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルジオールに由来するPE単位、及びテレフタル酸のようなジカルボン酸と、グリコール、エタンジオール又は1,4-ブタンジオールとの反応から生じるPES単位を有するコポリマーである。そのようなコポリエーテルエステルは特許EP402883号及びEP405227号に記載されている。
【0114】
<熱可塑性ポリウレタン(TPU)>
1つの実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリマーはTPU、すなわちポリエーテルウレタンとも呼ばれる、ポリウレタン(PU)ブロック及びポリエーテル(PE)ブロックを含むコポリマーである。
【0115】
TPUはポリエーテルジオールである可撓性PEブロックと硬質PUブロックとの縮合から生じる。PUブロック及びPEブロックは、ポリウレタンのイソシアネート官能基とポリエーテルジオールの-OH官能基との反応から生じる結合を介して結合する。
【0116】
本発明の意味における「PU」という用語は、芳香族ジイソシアネート(例えば、MDI、TDI)及び/又は脂肪族ジイソシアネート(例えば、HDI又はヘキサメチレンジイソシアネート)から選択され得る少なくとも1種のジイソシアネートと、少なくとも1種の短いジオールとの反応から生じる生成物を意味すると理解される。この鎖を延長する短いジオールは、コポリエーテルエステルの説明において上記したグリコールから選択することができる。本発明によるコポリマーの組成に関与するPUは、全ての種類のポリオール、特に再生可能な起源のもの、例えば、デンプンから生じるポリオール(エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール)、スクロースなどの糖から生じるポリオール(イソマルト、キシリトール)、又はトウモロコシ、大豆、綿、菜種、ヒマワリ若しくは落花生から生じるポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、バイオディーゼル製造の反応併産物)などを含むことができる。また、これらのポリウレタンの組成に関与し得るポリオールの他の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(1,2-プロピレングリコール)(PPG)、ポリ(1,3-プロピレングリコール)(PO3G)又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)を挙げることができる。
【0117】
1つの実施形態によれば、半結晶性熱可塑性エラストマーポリマーは、スチレンブロック(TPS)、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)又は熱可塑性加硫物(TPV)を含むコポリマーからも選択することができる。市販の熱可塑性エラストマーポリマーから生じる市販材料の例は、例えば、Cawiton(R)、Thermolast K(R)、Thermolast M(R)、Sofprene(R)、Dryflex(R)及びLaprene(R)(TPS)、Desmopan(R)又はElastollan(R)(TPU)、Santoprene(R)、Termoton(R)、Solprene(R)、Thermolast V(R)、Vegaprene(R)、又はForprene(R)(TPV)、及びFor-Tec E(R)又はEngage、Ninjaflex(R)(TPO)の製品である。
【0118】
1つの実施形態によれば、半結晶性熱可塑性ポリマーは、ポリオキシメチレン(POM)ホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフタルアミド(PPA)及びポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)から選択されるポリマーである。
【0119】
<ワックス>
本発明のワックスは、一般に、周囲温度において固体の化合物である。ワックスは20℃で可鍛性がある。
【0120】
ワックスは粗い結晶構造から微細な結晶構造を呈し、半透明から不透明であるが、ガラス状ではない外観を呈することができる。ワックスは分解せずに40℃超で溶け始めることができる。ワックスは、その滴点より10℃上で溶融粘度(10000mPa.s未満)を示すことができる。
【0121】
ワックスは疎水性化合物であり得る。
【0122】
本発明で使用されるワックスは、特に、ポリオレフィンワックスなどの合成ワックス、鉱物起源(例えば、モンタンワックス)、石油起源、植物起源(例えば、カルナウバワックス又はキャンデリラワックス)又は動物起源などのワックス、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0123】
上記のワックスは、一般に、10~100個の炭素原子、好ましくは15~60個の炭素原子を含む炭化水素化合物からなる。特に有利な実施形態によれば、ワックスは、エステル、エーテル、酸、酸無水物、カルボン酸塩、アミド、アミン又はアルコール、好ましくはエステル、酸、酸無水物又はアミドから選択される少なくとも1つの極性基を含むことができる上記種類の官能化ワックスである。酸基は典型的にはカルボン酸である。
【0124】
官能化ワックスは、既存のワックスの官能化、特に酸化反応又はグラフト化反応によって得ることができる。あるいは、官能化ワックスは、重合反応中に官能基を有するモノマーを導入することによって得ることができる。
【0125】
特定の理論に委ねるつもりはないが、これらの極性基はscTPポリマーと相互作用しやすく、scTPポリマー粉末の表面に弱い結合、例えば、水素又はファンデルワールス型の弱い結合を作り出すようであり、これにより粉末の凝集性を改善し、特に構築温度で粉末層の硬さを増大させることが可能になる。
【0126】
好ましくは、本発明の関連において使用されるワックスは、2~100、好ましくは3~90mg KOH/g、例えば、2~10、又は10~20、又は20~50、又は50~90mg KOH/gの範囲の酸価を有する。ポリアミド又はPEBA型のscTPポリマーを本発明の関連において使用した場合、ワックスの酸価が高いほど、同様の滴点を有するワックスに対し粉末層の凝集性が大きくなることが観察された。
【0127】
本発明の関連において、酸価は、滴定溶媒として50:50v/vキシレン/エタノール混合物を用いて、規格DIN EN ISO 2114-2000年11月に従って測定した。
【0128】
1gのワックス試料を250mlの三角フラスコに秤量し、マグネチックスターラー上で100mlの熱いキシレン/エタノール混合物(約90℃)に溶解した。続いて、試料を滴定計のマグネチックスターラー20上に置き、電極を完全に浸し、混合物を0.1Mの濃度のエタノール性KOH溶液で滴定した。
【0129】
1つの実施形態によれば、ワックスは、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ケトンワックス、酸ワックス、部分エステル化酸ワックス、酸無水物ワックス、エステルワックス、アルデヒドワックス、アミドワックス、それらの誘導体及びそれらの混合物、好ましくはポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス、酸ワックス、部分エステル化酸ワックス、酸無水物ワックス、エステルワックス、アミドワックス、それらの誘導体及び/又はそれらの混合物から選択することができる。
【0130】
ワックスは、典型的には、乾燥状態又は溶融状態で混合することができる。
【0131】
ポリオレフィンワックスは、エチレンホモポリマー及び/又はプロピレンホモポリマー及び/又は1-ブテンホモポリマーであり得る。ポリオレフィンワックスは、少なくとも2種のオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン及び/又は1-ブテンの混合物のポリマー)のコポリマーであり得る。それらはエチレンとプロピレンのコポリマーでもある。1つの実施形態によれば、ポリオレフィンは、20~200個の炭素原子、好ましくは40~100個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のポリオレフィンであることができる。それらは脂肪族基及び/又は芳香族基で置換することもできる。このようなポリオレフィンの例としては、1-ヘキセン、1-オクテン又は1-オクタデセン、スチレンが挙げられる。例えば、本発明との関連で使用されるポリオレフィンワックスは、Arkema社が販売するワックス「Crayvallac WN1495(R)」である。
【0132】
本発明の関連で使用できるポリテトラフルオロエチレンワックスは、Clariant社が販売するワックス「Ceridust 9202F(R)」又はArkema社が販売するワックス「Crayvallac WF-1000(R)」である。
【0133】
本発明の関連で使用することができる酸ワックスは、Clariant社が販売するワックス「Licowax S(R)」である。
【0134】
本発明の関連で使用することができるエステルワックスは、ポリヒドロキシアルカン酸ワックスであり、例えば、Byk社が販売するワックス「Ceraflour 1000(R)」及びClariant社が販売するワックス「Licowax OP(R)」である。
【0135】
1つの実施形態によれば、ワックスは、パラフィンなどの原油に由来するワックスであることができる。パラフィンワックスは、本質的に直鎖の炭化水素を含有し、イソパラフィン及び他の分枝物質などの分枝状炭化水素、並びにシクロパラフィン及び他の環状物質などのシクロアルカンを含有することもできる。
【0136】
1つの実施形態によれば、ポリオレフィンワックスは、無水マレイン酸などの酸無水物で官能化することができる。例えば、そのようなワックスはClariant社が販売するワックス「Ceridust 8020(R)」である。
【0137】
アミドワックスは、長鎖カルボン酸(典型的には脂肪酸)とアミン、ジアミン又はアンモニアとの反応によって調製することができる。
【0138】
具体的な実施形態によれば、アミドワックスは、C2~C24脂肪族ジアミン、C6~C18脂環式ジアミン、C6~C24芳香族ジアミン又はそれらの混合物から選択されるジアミンから得られるジアミドを含む。
【0139】
脂肪族ジアミンは直鎖状又は分枝状であり、好ましくは直鎖状である。適切な直鎖状脂肪族ジアミンの例は、1,2-エチレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン及びそれらの混合物、好ましくは1,2-エチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン及び1,6-ヘキサメチレンジアミンである。適切な分枝状脂肪族ジアミンの例は、1,2-プロピレンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン及びそれらの混合物である。
【0140】
脂環式ジアミンは、環、特に6個の炭素原子を有する環を含む非芳香族ジアミンである。C6~C18脂環式ジアミンは、6~18個の炭素原子を含む脂環式ジアミンである。適切な脂環式ジアミンの例は、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、イソホロンジアミン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノデカヒドロナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン及びそれらの混合物、好ましくは、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン及び4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0141】
芳香族ジアミンは芳香環を含むジアミンである。C6~C24芳香族ジアミンは6~24個の炭素原子を含む芳香族ジアミンである。適切な芳香族ジアミンの例は、メタ-及びパラ-フェニレンジアミン、メタ-及びパラ-キシリレンジアミン、メタ-及びパラ-トルイレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びそれらの混合物、好ましくは、メタ-及びパラ-キシリレンジアミンである。
【0142】
好ましくは、アミドワックスは、C2~C24脂肪族ジアミン、特に直鎖状C2~C18脂肪族ジアミン、より詳細には直鎖状C2~C12脂肪族ジアミン、さらにより詳細には1,2-エチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン又は1,6-ヘキサメチレンジアミンから選択される少なくとも1つのジアミンで得られるジアミドを含む。特定の実施形態によれば、アミドワックスは、少なくとも1種のC2~C36カルボン酸で得られるジアミドを含む。ジアミドはC2~C36カルボン酸の混合物で得ることができる。
【0143】
カルボン酸は直鎖状又は分枝状であり得、好ましくは直鎖状であり得る。カルボン酸は飽和又は不飽和であり得、好ましくは飽和であり得る。カルボン酸は、非置換又は置換であり得、特にヒドロキシル化され得る。ヒドロキシル化されたカルボン酸は、1つ又は2つの水酸基、好ましくは1つの水酸基により置換されたカルボン酸である。
【0144】
特定の実施形態によれば、カルボン酸は、任意に非置換カルボン酸との混合物としてのヒドロキシル化カルボン酸であることができる。ヒドロキシル化カルボン酸の適切な例は、12-ヒドロキシステアリン酸(12-HSA)、9-ヒドロキシステアリン酸(9-HSA)、10-ヒドロキシステアリン酸(10-HSA)、14-ヒドロキシイコサン酸(14-HEA)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、ヒドロキシ酢酸(又はグリコール酸)、2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2-ヒドロキシ-3-(3-ピリジル)プロピオン酸、3-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-2-ヒドロキシ酪酸、2-エチル-2-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸及びそれらの混合物、好ましくは12-ヒドロキシステアリン酸又は12-ヒドロキシステアリン酸と他の上記ヒドロキシル化酸との二元又は三元混合物である。
【0145】
非置換カルボン酸の適切な例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、11-エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸及びそれらの混合物、好ましくはデカン酸である。
【0146】
好ましくは、アミドワックスは、C2~C22カルボン酸、特にヒドロキシル化C2~C22カルボン酸、及び任意に非置換C2~C22カルボン酸、より詳細にはヒドロキシル化C12~C20カルボン酸、及び任意に非置換C2~C14カルボン酸から選択される少なくとも1種のカルボン酸で得られるジアミドを含む。
【0147】
好ましい実施形態によれば、アミドワックスは、1,2-エチレンジアミン又は1,6-ヘキサメチレンジアミンと12-ヒドロキシステアリン酸又は任意にデカン酸との反応によって得られるジアミドを含む。
【0148】
アミドワックスは、アンモニア又はエチレンジアミンと、ステアリン酸、獣脂脂肪酸、パルミチン酸又はエルカ酸などの飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸との反応によって調製される化合物であり得る。アミドワックスには、N,N’-エチレンジステアラミドなどのアミド化合物も含むことができる。例えば、そのようなワックスはArkema社が販売するワックス「Crayvallac WN1265(R)」である。
【0149】
1つの実施形態によれば、ポリオレフィンワックスをアミドワックスと混合することができる。例えば、そのようなワックスは、Arkema社が販売するワックス「Crayvallac WN1135(R)」又はClariant社が販売するワックス「Ceridust 9615A(R)」(ポリエチレンワックスとアミドワックスの混合物)である。
【0150】
1つの実施形態によると、ワックスは、部分的又は完全にエステル化された脂肪酸などの脂肪酸誘導体から選択することができる。好ましくは、それらは少なくとも10個の炭素原子、好ましくは16~60個の炭素原子、より好ましくは24~36個の炭素原子を含む脂肪酸である。好ましくは、それらは、モンタン酸のような好ましくは直鎖状である飽和アルカンモノカルボン酸である。この種のワックスの例として、Clariant社が販売するワックス「Ceridust 5551(R)」を挙げることができる。
【0151】
本発明の意味の中で、ワックスは、少なくとも10個の炭素原子、好ましくは16~60個の炭素原子、より好ましくは24~36個の炭素原子を含む脂肪酸の塩(「金属石けん」とも呼ばれる)を含まない。
【0152】
典型的には、それらは、好ましくは直鎖状である飽和アルカンモノカルボン酸、例えば、モンタン酸及びステアリン酸の塩である。典型的には、それらはカルシウム及び/又はナトリウム及び/又はマグネシウムの塩である。例えば、そのようなワックスは、Clariant社が販売するワックス「Licomont NAV101(R)」、ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸マグネシウムである。そのような塩を、ワックスとして、半結晶性熱可塑性ポリマー粉末、特にエラストマーポリマー粉末、例えば、PEBAコポリマー粉末と組み合わせて使用しても、作業ウィンドウを増大させたり、層の良好な凝集性を保証したりすることができないことが観察された。
【0153】
しかし、例えば、US2006/0189784号に記載されているように、流れを改善するため、又はUS2008/0300353号に記載されているように、焼結中の熱応力を低減するために、焼結に使用されるscTPポリマー粉末中に添加剤としてそのような塩を使用することは可能である。
【0154】
1つの実施形態によれば、本発明の組成物中のワックスは非イオン性である。
【0155】
ワックスは官能化エステルワックスとアルコールとの混合物であり得る。Clariant社が販売しているワックス「Licolub WE40(R)」が挙げられる。
【0156】
植物性ワックスは、例えば、官能化ヒマシ油又は非官能化ヒマシ油の誘導体を含み得る。ヒマシ油由来ワックスとしては、Arkema社が販売するワックス「Crayvallac PC(R)」、Jayant Agro-Organics社が販売するワックス「Jagrowax 100(R)」を挙げることができる。
【0157】
本発明によれば、ワックスはscTPポリマーの結晶化温度(Ct)よりも高い滴点を有する。
【0158】
「滴点」という用語は、特定の試験条件下でワックスが半固体状態から液体状態に変化する温度を意味すると理解される。滴点は、規格ASTM D3954-1994(2004)に従って測定される。
【0159】
好ましくは、本発明によるワックスは、scTPポリマーのMpより最大30℃、好ましくは最大20℃高い滴点を有することができる。例えば、この差は1~5℃、又は5~10℃、又は10~15℃、又は15~20℃、又は20~25℃、又は25~30℃であり得る。
【0160】
特に、ワックスは、60~180℃、好ましくは80~175℃の滴点を有することができる。例えば、この滴点は、60~65℃、又は65~70℃、又は70~75℃、又は75~80℃、又は80~85℃、又は85~90℃、又は90~95℃、又は95~100℃、又は100~105℃、又は105~110℃、又は110~115℃、又は115~120℃、又は120~125℃、又は125~130℃、又は130~135℃、又は135~140℃、又は140~145℃、又は145~150℃、又は150~155℃、又は155~160℃、又は160~165℃、又は165~170℃、又は170~175℃、又は175~180℃であることができる。
【0161】
本発明は、特定のワックスを使用することを提案し、その滴点はscTPポリマーのCtよりも高い。このように、ワックスは粉末層の温度で溶融状態又は少なくとも部分的に溶融状態にあり、一種の粘着によりscTPポリマー粉末の凝集性を高めることができ、このことは粉末層の剛性を増加させる結果を有し、部品が層に沈み込むのを防止することを可能にする。
【0162】
典型的には、ワックスの滴点は、scTPポリマーのCtよりも少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃高い。例えば、この温度差は、5~10℃、又は10~15℃、又は15~20℃、又は20~25℃、又は25~30℃、又は30~35℃、又は35~40℃、又は40~45℃、又は45~50℃であることができる。
【0163】
<粉末の組成物>
本発明によれば、粉末の組成物は半結晶性である、すなわち、scTPポリマーの粉末への変換及び粉末としての組成物の調製は、上記のようにscTPポリマーの半結晶性の性質に影響を及ぼさない。
【0164】
本発明に係る組成物は、好ましくは80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上、99.91%以上、99.92%以上、99.93%以上、99.94%以上、99.95%以上、99.96%以上、99.97%以上、99.98%以上、99.99%以上の重量比でscTPポリマー(複数可)を含むことができる。
【0165】
典型的には、scTPポリマーの粒子は、40~150μm、好ましくは50~100μmのサイズDv50を有することができる。例えば、scTPポリマー粒子のサイズDv50は、40~45μm、又は45~50μm、又は50~55μm、又は55~60μm、又は60~65μm、又は65~70μm、又は70~75μm、又は75~80μm、又は80~85μm、又は85~90μm、又は90~95μm、又は95~100μm、又は100~105μm、又は105~110μm、又は110~115μm、又は115~120μm、又は120~125μm、又は125~130μm、又は130~135μm、又は135~140μm、又は140~145μm、又は145~150μmであることができる。
【0166】
典型的には、組成物は、全組成物の0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、及びより好ましくは0.5重量%~5重量%の含有量でワックスを含む。したがって、この含有率は、0.1%~0.2%、又は0.2%~0.3%、又は0.3%~0.4%、又は0.4%~0.5%、又は0.5%~1%、又は1%~2%、又は2%~4%、又は4%~6%、又は6%~8%、又は8%~10%、又は10%~12%、又は12%~14%、又は14%~16%、又は16%~18%、又は18%~20%であることができる。
【0167】
ワックスは、ワックス粒子の形成で組成物中に存在することができる。典型的には、ワックス粒子は、1~30μm、好ましくは1~20μm、より好ましくは5~15μmの平均サイズ(Dv50)を有する。
【0168】
好ましくは、その平均サイズ(Dv50)が組成物中のscTPポリマーの平均サイズよりも小さいワックスが選択される。
【0169】
ワックスはまた、50μm未満、好ましくは20μm未満のサイズDv90を有することができる。例えば、ワックス粒子のサイズDv90は5~20μm、又は5~15μmであることができる。
【0170】
本特許出願の関連において、
- Dv50は粒径の閾値であって、粒子の50%(体積当たり)がこの閾値未満のサイズをもち、粒子の50%(体積当たり)がこの閾値より大きいサイズを持つ粒径の閾値に相当し、
- Dv90は粒径の閾値であって、90%の粒子(体積)がこの閾値未満のサイズを有し、10%の粒子(体積)がこの閾値より大きいサイズを有する粒径の閾値に相当する。
【0171】
Dv50及びDv90は、規格ISO 9276-第1部~第6部「Representation of results of particle size analysis」に従って測定する。例えば、レーザー粒子選別機(Sympatec Helos)及びソフトウェア(Fraunhofer)を使用して、粉末の体積分布を得て、そこからDv50及びDv90を推定することができる。
【0172】
1つの実施形態によれば、ワックスは、scTPポリマー粉末の粒子を少なくとも部分的に覆う皮膜の形態で組成物中に存在する。
【0173】
<流動剤>
1つの実施形態によれば、本発明による組成物は1種以上の流動剤を含む。
【0174】
「流動剤」という用語は、焼結過程の間に半結晶性熱可塑性ポリマーの粉末のレベリングと同様に流動性を改善することを可能にする薬剤を意味すると理解される。
【0175】
scTPポリマーをベースとする組成物中の流動剤の存在は作業ウィンドウを減少させる可能性があり、構築をより困難にすることが観察された。さらに、流動剤を使用した場合、層の凝集性の問題に遭遇することがより多い。
【0176】
本発明の組成物におけるワックスの使用は、これらの場合に特に有利であることが証明される。すなわち、ワックスの使用は、作業ウィンドウを広げることを可能にし、また層の凝集の問題を回避することを可能にし、したがって、構築をより容易に行うことを可能にする。
【0177】
流動剤は、scTPポリマーの粉末の焼結の分野で一般的に使用されるものから選択することができる。例えば、それは、シリカ、特に沈降シリカ、水和シリカ、ガラス質シリカ、フュームドシリカ又は焼成シリカ、ガラス状酸化物、特にガラス状リン酸塩又はガラス状ホウ酸塩、アルミナ、例えば、非晶質アルミナ、TiO2、カルシウムケイ酸塩、マグネシウムケイ酸塩、例えば、タルク、マイカ、カオリン、アタパルジャイト及びそれらの混合物から選択される。
【0178】
流動剤は一般に組成物中に全組成物の5重量%以下、好ましくは3%以下の含有量で存在する。典型的には、この含有率は、0.1%~2.5%、例えば、0.1%~2%、好ましくは0.5%~2%、又は0.5%~1.5%であり得る。
【0179】
流動剤は一般に粉末の形態であり、好ましくは実質的に球形である。
【0180】
粉末の組成物中の流動剤は、20μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下の平均サイズ(Dv50)を有する粒子の形態であることができる。例えば、流動剤の粒子のサイズDv50は、10nm~100nm、100nm~1μm、1μm~20μmであり得る。
【0181】
<その他の添加剤>
本発明による組成物は、焼結に使用されるscTPポリマーの粉末に適した任意の種類の添加剤、特に集塊化技術に使用するための粉末の特性の改善に寄与する添加剤(粉末形態である又は粉末形態でない)、及び/又は製造された三次元部品の特性、例えば、機械的特性(例えば、弾性率、破断点伸び、衝撃強度)又は審美的特性(色)を改善することを可能にする添加剤を含むことができる。
【0182】
有利な実施形態によれば、本発明による組成物は、無機添加剤、例えば、炭酸塩をベースとする無機物質、特に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト又はカルサイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ドロマイト、アルミナ水和物、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、パーライト、ナノフィラー(ナノメートル程度のフィラー)、例えば、ナノクレイ、又はカーボンナノチューブ、カーボンブラック、ガラスファイバー、炭素繊維、有機添加物、例えば、層別構築過程において組成物が経験する最高温度よりも高い融点を有するポリマー粉末、特に1000MPaを超える弾性率を有するものを含むことができる。1つの実施形態によれば、組成物は無機添加剤及び有機添加剤を含まない。
【0183】
上記種類の添加剤は、粉末の組成物(適宜、scTPポリマー粉末中に存在するものを含む)中に、60重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは1重量%以下、例えば、0.05重量%~60重量%、又は1重量%~30重量%、又は1重量%~20重量%、又は1重量%~10重量%の含有率で存在することができる。
【0184】
本発明の組成物はまた、染料、着色用色素、赤外吸収用色素、耐火性添加剤、安定剤、抗酸化剤、光安定剤、衝撃改質剤、帯電防止剤、難燃剤及びそれらの混合物を含むことができる。これらの添加剤は、Dv50が20μm未満の粉末の形態が好ましい。これらの添加剤は0.05~5%の含有率で組成物中に存在することができる。
【0185】
添加剤は、上記の粉砕段階の前及び/又は後にscTPポリマーと混合することができる。
【0186】
<組成物の調製方法>
本発明による組成物は、半結晶性熱可塑性ポリマー及び少なくとも1種のワックス粉末を含む。
【0187】
本発明の組成物の調製方法は、scTPポリマーをワックス及び任意に流動剤と接触させる段階を含む。
【0188】
本発明との関連で使用することができるscTPポリマーは、大部分が市販されており、特に顆粒、フレーク又は粗い粉末の形態であり、既知の方法によって容易に粉末に変換することができる。
【0189】
一般に、scTPポリマー粉末は、粉砕方法によって得ることができる。
【0190】
好ましくは、ワックスと接触するscTPポリマーは粉末の形態であり、あるいは、例えば、250μmを超えるサイズのDv50を有する顆粒、フレーク又は粗い粉末の形態である(この場合、粉砕及び/又はふるい分け段階を行うことができる)。
【0191】
1つの実施形態によれば、scTPポリマーをワックスと接触させる操作は、乾式混合、すなわち、溶媒の非存在下での混合によって行われる。
【0192】
1つの実施形態によれば、scTPポリマーをワックスと接触させる操作は、以下の段階に従って行われる。
- ワックスを適切な溶媒に溶解してワックス溶液を形成しワックス溶液を形成することによる、
- 該ワックス溶液をscTPポリマーと混合して分散体を形成することによる、及び
- 例えば、蒸発により該分散体から溶媒を除去して、ワックスで被覆したscTPポリマーを得ることによる。
【0193】
適切な溶媒は、ワックスを溶解することができることが当業者に知られている溶媒、例えば、アセトン、エタノール、及び/又は水と界面活性剤とを含む溶媒であり得る。
【0194】
調製方法は、所望の粒径を有するscTPポリマー粉末を得るために粉砕段階を含むことができる。
【0195】
粉砕段階は、scTPポリマーをワックスと接触させる前及び/又は後に行うことができる。
【0196】
好ましくは、粉砕は当業者に知られた低温粉砕である。したがって、第1の工程では、scTPポリマー(又はscTPポリマーとワックスの混合物)を、scTPポリマーのガラス転移温度未満の温度まで冷却する。この温度はscTPポリマーのガラス転移温度よりも10~50℃低くすることができる。したがって、混合物を-10℃以下、好ましくは-50℃以下、より好ましくは-80℃以下の温度まで冷却することができる。
【0197】
scTPポリマー(又はscTPポリマーとワックスの混合物)の冷却は、例えば、液体窒素、液体二酸化炭素又はドライアイス、又は液体ヘリウムを用いて行うことができる。
【0198】
粉砕段階は、ピンミル、ハンマーミル、又はワール(whirl)ミルで行うことができる。
【0199】
本発明による組成物の調製方法は、続いて、ふるい分け段階を含むことができる。ふるい分けはふるい上で行うことができる。
【0200】
あるいは、粉砕後、調製方法は、所望の粒径プロファイルを得るための選択段階を含むことができる。典型的には、粉末は選択ホイールによって分散され、分級空気によって輸送される。空気中に混入した塵埃は、支持ホイールを介して搬送され、第1の排出口を介して排出される。粗生成物は分級ホイールではねられ、第2の排出口に運ばれる。選別機は、並列に動作する複数の連続したホイールを備えることができる。
【0201】
上記添加剤(流動剤を含む)が組成物中に存在する場合、scTPポリマー(又はscTPポリマーとワックスの混合物)を粉砕段階及び/又はふるい分け段階の前又は後に粉末形態(すなわち、単純な混合物の形態)の添加剤と接触させる。
【0202】
特定の形態によれば、無機添加剤のようなある種の特定の添加剤は、特に粉砕を意図するscTPポリマー顆粒の製造の段階において、配合によりscTPポリマー粉末中に取り込むことができる。
【0203】
さらに、ある種の特定のscTPポリマー、例えば、ポリアミドについては、溶解-沈殿方法を粉末調製のために想定することができる。この特別な場合、ワックスは溶解-沈殿方法の間に導入することができる。
【0204】
<組成物の焼結方法>
上記の組成物は、電磁放射、例えば、赤外線放射若しくは紫外線放射、又は好ましくはレーザーによってもたらされる焼結により3D物品の一層ずつの構築方法に使用される。
【0205】
この方法によれば、構築温度と呼ばれる温度まで加熱されたチャンバー内に維持された水平板上に粉体の薄層が堆積される。「構築温度」(「層の温度」とも呼ばれる)とは、構築中の三次元物体の構成層の粉末の層が、粉末の一層ずつの焼結過程中に加熱される温度を表す。この温度はscTPポリマーの融点よりも50℃未満、好ましくは40℃未満、より好ましくは20℃程度低いことができる。電磁放射は、続いて、物体に対応する幾何形状に従って(例えば、メモリーに物体の形状を有するコンピュータを使用し、物体の形状をスライスの形態で再現する)粉末層の異なる点で粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーに寄与する。
【0206】
続いて水平板を粉末層の厚さに対応する値だけ下げ、新たな層を堆積させる。電磁放射は、物体のこの新しいスライスに対応する幾何学的形状などに従って粉末粒子を焼結するために必要なエネルギーに寄与する。物体が製造されるまでこの手順を繰り返す。
【0207】
好ましくは、水平板上に堆積させた粉末層(焼結前)は、20~200μm、好ましくは50~150μmの厚さを有することができる。凝集した材料の層は、焼結後、10~150μm、好ましくは30~100μmの厚さを有することができる。
【0208】
好ましくは、本発明の組成物は、選択的レーザー焼結(SLS)方法に使用される。この組成物は、MJF(マルチジェットフュージョン)及びHSS(高速焼結)型の焼結方法でも使用できる。
【0209】
このように、本発明による粉末組成物により、良好な機械的特性を有し、正確ではっきりした寸法及び輪郭を有する、良質の三次元物品を製造することが可能になる。
【0210】
上記の粉末組成は、連続した数回の構築でリサイクルされ、再利用することができる。それは、例えば、そのまま、又は他の粉末(再利用されるか、又は再利用されない)との混合物として使用することができる。
【0211】
以下の実施例は、本発明を限定することなく例示する。
【実施例】
【0212】
[実施例1]
PEBAコポリマーの種々の粉末を、(ポリマーAに対し)1重量%又は(ポリマーBに対し)0重量%の含有率で流動剤(シリカ)と任意に混合し、1重量%の含有率でワックスと任意に混合する。
【0213】
以下の表は、この実施例との関連で使用された異なるPEBAを含む。
【0214】
【0215】
したがって、ポリマーA及びBを、組成物1~11を形成するように、流動剤及びワックスと混合した。これらの組成物を三次元物品の製造に用いた。
【0216】
【0217】
ポリマーのCtよりも高い滴点を有するワックスの存在は、3D物品を得るために、組成物が焼結機を通過することを可能にすることが観察された(組成物2~6及び8)。ワックスがないと、組成物は焼結機を通過することができない(組成物1及び7)。組成物9の場合、ワックスの滴点がポリマーのCtより低い場合、3D物品の製造ができないことが分かった。
【0218】
ワックスを含まない組成物10及び11の場合、塩の使用により作業ウィンドウを増大させたり、層の凝集性を確保したりすることができず、3D物品の製造ができないことが分かった。
【0219】
[実施例2]
PA12粉末を0.15%の含有率のシリカと混合する。この粉末は180℃に等しいMp、及び147℃に等しいCtを有し、これらは規格ISO 11357に従って測定する。
【0220】
組成物1及び2を形成するために、この粉末をワックスと乾式混合する。これらの組成物を三次元物品の製造に用いた。
【0221】
使用したワックスはポリヒドロキシアルカン酸塩(PHA)で、製品名はBYK社がCeraflour 1000(R)の商標で販売している。
【0222】
【0223】
組成物1及び2について作業ウィンドウを決定する。
【0224】
【0225】
組成物1については、160℃未満で部品の沈下が観測される。組成物2は、より広い温度範囲にわたって三次元物体の構築を可能にする。したがって、この配合物はより大きな作業ウィンドウを有する。さらに、ワックスの添加により、ポリマーの結晶化が促進され、すなわち、結晶化温度がより高くなることが観察された。この効果はポリマーを220℃で融解させ、次にDSCでの等温結晶化を160℃で観察することにより見ることができる。組成物2の結晶化速度はワックスを含まない組成物1よりも高いことが分かる。驚くべきことに、結晶化温度が高くても、ワックスの存在により、160℃未満での印刷が可能になる。
【国際調査報告】