IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェネンセル カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2022-551019ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス治療剤
<>
  • 特表-ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス治療剤 図1
  • 特表-ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス治療剤 図2
  • 特表-ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス治療剤 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20221130BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221130BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221130BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221130BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221130BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221130BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221130BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221130BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P31/14
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547580
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2021000347
(87)【国際公開番号】W WO2022050516
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113730
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年8月31日におけるPAXNet newsとの電話インタビュー。その電話インタビューに基づいて書かれた記事であって、2020年8月31日にPAXNetnewsのウェブサイト(https://paxnetnews.com/)に掲載された記事(https://paxnetnews.com/articles/64791)については別紙資料1参照。
(71)【出願人】
【識別番号】521358279
【氏名又は名称】ジェネンセル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENENCELL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、セ チャン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヘ リン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヤン ミ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD09
4B018MD19
4B018MD31
4B018MD48
4B018ME09
4B018ME14
4B018MF01
4C076AA11
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA44
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC35
4C076DD23
4C076DD27
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD41
4C076DD59
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF01
4C076FF11
4C088AB12
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088CA11
4C088CA17
4C088MA16
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088NA14
4C088ZB33
(57)【要約】
本発明は、ホルトノキ葉抽出物を有効成分として含有する、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物およびコロナウイルス感染の予防または改善用食品組成物に関する。本発明によるホルトノキ葉抽出物は、哺乳動物で呼吸器疾患、消化器疾患、肝疾患、脳疾患等を起こすウイルスであるコロナウイルス、特にコロナ-19ウイルスに対する優れた抗ウイルス活性を示すので、コロナウイルスの感染による疾患の予防、改善または治療のための医薬品および食品等に有用に用いられ得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を有効成分として含む、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記抽出物は、水、炭素数1~5の低級アルコールまたは炭素数1~5の低級アルコール水溶液の抽出物である、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記抽出物は、30%~95%エタノール水溶液で抽出したものである、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記抽出物は、40%~60%エタノール水溶液で抽出したものである、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記ホルトノキ抽出物は、ホルトノキ葉抽出物である、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記コロナウイルスは、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV,transmissble gastroenteritis virus)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV,porcine epidemic diarrhea virus)、犬コロナウイルス(canine coronavirus)、牛コロナウイルス(bovine Coronavirus)、サルスコロナウイルス(SARS-CoV)およびコロナ-19ウイルス(SARS-CoV-2)よりなる群から1つ以上選ばれるものである、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むものである、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤および液体形態よりなる群から選ばれて、経口投与するものである、請求項1に記載のコロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を有効成分として含む、コロナウイルス感染の予防または改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を含むコロナウイルス(Corona virus)感染の予防、改善または治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス(coronavirus)は、哺乳類と鳥類で呼吸器疾患、消化器疾患、肝疾患、脳疾患等を起こすRNAウイルスである(Gallagher TM.et.al.,Virology,279(2):371-374,2001)。特に、コロナウイルスに属するウイルスのうち、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV,transmissble gastroenteritis virus)とブタ流行性下痢ウイルス(PEDV,porcine epidemic diarrhea virus)は、非常に伝染性が高いウイルス性疾患であって、胃腸管消化器系に侵入して、嘔吐、下痢による脱水と高熱を起こし、致死率も高くて、相当な経済的損失を誘発するウイルスである(Duarte M.et.al.,J Gen Virol.,75(Pt 5):1195-1200,1994)。これらのウイルスは、致死率が非常に高いにも関わらず、他のウイルス感染による疾患と同様に治療剤が開発されていない。したがって、ウイルス感染を防止するためのワクチン開発研究が進行されているが、まだ効率性が低いのが現状である(Alonso S.et.al.,J Gen Virol.,83(Pt 3):567-579,2002)。
【0003】
コロナウイルスによるコロナウイルス感染症-19(coronavirus disease 2019,COVID-19)またはコロナ-19は、2019年12月に中国武漢で初めて発生した後、中国全域と全世界に拡散された、新しい類型のコロナウイルス(SARS-CoV-2;Coronaviridaeに属するRNAウイルス)による呼吸器感染疾患である。初期にはただ原因不明の呼吸器感染症と知られたが、世界保健機関(WHO)が2020年1月9日に当該肺炎の原因が新しい類型のコロナウイルス(SARS-CoV-2、国際ウイルス分類委員会2月11日命名)と明らかにして、病原体が確認された。
【0004】
コロナウイルス感染症-19の病原体は、「サルス-コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)」である。国際ウイルス分類委員会(ICTV)は、2020年2月11日にコロナ-19の病原体にSARS-CoV-2という名前を提案した論文を発表したが、委員会は、このウイルスが2003年に流行したサルス(SARS、重症急性呼吸器症候群)と類似しているという点を強調したことを明らかにした。
【0005】
韓国疾病管理本部は、中国が学界を通じて公開した当該ウイルスの遺伝子塩基配列を入手して分析した結果、コウモリ由来類似コロナウイルスと最も高い相同性(89.1%)があることを確認した。ヒトコロナウイルス4種との相同性は39%~43%と低く、メルスとは50%、サルスとは77.5%の相同性を確認した。
【0006】
現在全世界的に問題になっているコロナウイルス感染症-19(Coronavirus disease 2019,COVID-19)疾患は、新型コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2,SARS-CoV-2)感染による呼吸器症候群と定義されており、疾患分類は、法定感染症第1級感染症新型感染症症候群および疾患コードは、U07.1である。病原体は、SARS-CoV-2であって、Coronaviridaeに属するRNAウイルスであり、伝播経路は、現在まで飛沫(唾液)、接触を通した伝播と知られている。したがって、せきやくしゃみをするときに生じた飛沫を通した伝播またはコロナウイルスに汚染された物を触った後、目、鼻、口を触ることによって伝播していると知られている。
【0007】
コロナウイルス感染による全世界致命率は、平均約3.4%(WHO、3.5基準)と知られているが、現在全世界的に感染者の6%が死亡者と登録されるほど、国家別・年齢別に致命率の水準は非常に異なっており、高齢、免疫機能が低下した患者、基底疾患を持つ患者において主に重症および死を招く。
【0008】
コロナウイルスは、一本鎖プラス鎖(single positive strand)のらせん構造(helical structure)を有するRNAウイルスであって、全体5個の構造タンパクで構成されており、この中で、spike glycoprotein(S protein)により電子顕微鏡上であたかも王冠や後光があるように観察される(Schoeman and Fielding,2019)。コロナウイルスは、27-34 KBで現存するRNAウイルスのうち最も大きいことが知られており、アルファ、ベータ、デルタ、ガンマの4群に細分化されており、この中で、ベータ群が伝染性と病毒性が高いことが知られている。SARS-CoV-2は、表面に存在するS proteinが宿主細胞のangiotensin converting enzyme 2(ACE2)に結合して侵入し、ACE2は、口腔と鼻腔粘膜、鼻咽頭、肺、胃、小腸、大腸等に多く分布していて、ウイルス性肺炎の所見が観察される特徴がある(Hamming et al.,2004)。
【0009】
コロナウイルスの潜伏期は、1~14日(平均4~7日)であり、診断基準としては、診断のための検査基準によって感染症の病原体の感染が確認されたヒトの検体からウイルス分離または検体で特異遺伝子を検出して診断している。コロナウイルス感染症-19の症状としては、発熱、倦怠感、せき、呼吸困難および肺炎など軽症から重症まで多様な呼吸器感染症が現れ、その他、痰、咽喉痛、頭痛、喀血と悪心、下痢等も現れる。現在、輸液補充、解熱剤など保存的治療をすること以外に特異的な抗ウイルス剤がないのが現状であり、世界保健機関(World Health Organization,WHO)は、SARS-CoV-2に対する抗体があっても、再感染とコロナウイルス感染症-19病気の感染から保護され得るという証拠がないと発表して、治療剤開発の重要性が浮かび上がる契機になった。
【0010】
ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)は、ホルトノキ科に属する常緑喬木であって、韓国の済州島、中国および日本の南部を含む亜熱帯地域に棲息しており、含有されている有効成分と知られた効能が殆どない資源であり、素材の差別性と研究開発の希少性が非常に高い素材といえる。
【0011】
しかしながら、現在まで発表されたいかなる文献においても、ホルトノキ抽出物がコロナウイルス、特にコロナ-19ウイルス感染の予防、改善または治療に有効であることが開示されたところがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国特許登録第10-1834872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含有する、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供するためのものである。
【0014】
本発明の他の目的は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含有する、コロナウイルス感染の予防または改善用食品組成物を提供するためのものである。
【0015】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明によりさらに明確になり、特許請求の範囲に記載された手段およびその組合せで実現されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、下記の解決手段を提供する。
【0017】
本発明の一態様は、ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を有効成分として含む、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0018】
本発明の一態様において、前記抽出物は、水、炭素数1~5の低級アルコールまたは炭素数1~5の低級アルコール水溶液の抽出物である、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0019】
本発明の一態様において、前記抽出物は、30%~95%エタノール水溶液で抽出したものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0020】
本発明の一態様において、前記抽出物は、40%~60%エタノール水溶液で抽出したものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0021】
本発明の一態様において、前記ホルトノキ抽出物は、ホルトノキ葉抽出物である、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0022】
本発明の一態様において、前記コロナウイルスは、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV,transmissble gastroenteritis virus)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV,porcine epidemic diarrhea virus)、犬コロナウイルス(canine coronavirus)、牛コロナウイルス(bovine Coronavirus)、サルスコロナウイルス(SARS-CoV)およびコロナ-19ウイルス(SARS-CoV-2)よりなる群から1つ以上選ばれるものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0023】
本発明の一態様において、前記薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0024】
本発明の一態様において、前記薬学的組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤および液体形態よりなる群から選ばれて、経口投与するものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0025】
本発明の他の態様は、ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を有効成分として含む、コロナウイルス感染の予防または改善用食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のホルトノキ抽出物は、哺乳動物で呼吸器疾患、消化器疾患、肝疾患、脳疾患等を起こすウイルスであるコロナウイルス、特にコロナ-19ウイルスに対する優れた抗ウイルス活性を示すので、コロナウイルスの感染による疾患の予防、改善または治療のための医薬品および食品等に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のホルトノキ抽出物を用いてVero-E6宿主細胞に対するコロナウイルス感染抑制効果を示す図である。
図2】本発明のホルトノキ抽出物を用いてコロナウイルスに感染したVero-E6宿主細胞に対するウイルス複製抑制効果を示す図である。
図3】本発明のホルトノキ抽出物を用いてSARS-CoV-2に感染したハムスターでSARS-CoV-2スパイクタンパク質結合活性抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[発明を実施するための最良の形態]
別途明示されない限り、本明細書で使用された成分、反応条件、成分の含量を表現するすべての数字、値および/または表現は、このような数字が本質的に異なるものうちでこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるから、すべての場合、「約」という用語により修飾されるものと理解されなければならない。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は、連続的であり、別途言及されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までのすべての値を含む。ひいては、このような範囲が整数を指す場合、別途言及されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含むすべての整数が含まれる。
【0029】
本明細書において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む記載された範囲内のすべての値を含むものと理解される。例えば、「5~10」の範囲は、5、6、7、8、9、および10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9等の任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5および6.5~9等のような記載された範囲の範疇に妥当な整数間の任意の値も含むものと理解される。また、例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%等の値と30%までを含むすべての整数だけでなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%等の任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%等のように記載された範囲の範疇内の妥当な整数間の任意の値も含むものと理解される。
【0030】
また、本明細書で使用された用語と略語は、別途定義されない限り、本発明の属する技術分野における当業者に通常理解される意味として解釈され得る。
【0031】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として、コロナウイルス感染を予防、改善または治療できる組成物に関し、ホルトノキ抽出物を使用してVero-E6細胞でSARS-CoV-2ウイルスに対する感染抑制および複製抑制実験を進めた結果、濃度依存的に有意な結果を確認した、また、コロナウイルス感染ハムスターモデルでSARS-CoV-2のspike protein binding activity(スパイクタンパク質結合活性)を確認した結果、非常に優秀に活性度が減少することを確認し、実験動物の体温増加の抑制と体重減少の抑制を確認した。したがって、ホルトノキ抽出物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質結合活性の抑制を通じて細胞のコロナウイルスの感染を抑制することが示された。このような発明を通じて、高濃度で毒性がなく、治療効果に優れたコロナウイルス感染の予防または改善用組成物の開発が可能であり、これを活用した追加研究を通じて健康機能食品または医薬品として開発が可能である。
【0032】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス感染の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0033】
本発明の一実施例において、前記「コロナウイルス」は、「ベータコロナウイルス」でありうるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の一実施例において、前記「コロナウイルス」は、「SARS-CoV-2(COVID-19)」でありうるが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス感染の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0036】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス感染の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0037】
2002年に流行したサルス(SARS)、2012年に流行したメルス(MERS)、2019年末から2020年にかけて流行しているSARS-CoV-2(COVID-19)まで多様なコロナウイルスにより全世界的に多くの感染者および死亡者が発生した。コロナウイルスは、RNAウイルスであって、その特性上、突然変異が容易に発生するので、ウイルスの変形された形態が発生する確率が高い特性を有している。本発明のホルトノキ抽出物は、Vero-E6細胞にSARS-CoV-2ウイルスを感染させたとき、濃度依存的にウイルス感染および複製を抑制する結果を得、SARS-CoV-2に感染したハムスターの体温増加と体重減少を阻害した。また、ホルトノキ抽出物は、SARS-CoV-2に感染したハムスターでSARS-CoV-2スパイクタンパク質結合活性を有意的に抑制する結果を得た。したがって、ホルトノキ抽出物は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質結合活性を抑制することによって、コロナウイルスの複製および感染を抑制する効果を確認して、本発明を完成した。
【0038】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0039】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス感染の予防または治療用組成物においてホルトノキ抽出物の抽出方法を提供することを目的とする。
【0040】
本発明において、抽出物は、当業界における公知の抽出および分離方法を使用して天然から抽出および分離して収得したものを使用し、本発明で定義された「抽出物」は、適切な溶媒を用いてホルトノキから抽出したものである。「抽出物」には、粗抽出物、極性溶媒可溶性抽出物または非極性溶媒可溶性抽出物等がすべて含まれる。ホルトノキから抽出物を抽出するための適切な溶媒として、薬学的に許容される有機溶媒であれば、いずれのものを使用してもよい。溶媒として、精製水、エタノール(ethanol)、メタノール(methanol)、イソプロパノール(isopropanol)、ブタノール(butanol)等を含む炭素数1~4のアルコールおよびアセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、エチルアセテート(ethylacetate)、メチレンクロリド(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)等の各種溶媒を単独または混合して使用することができる。抽出方法としては、加熱抽出法、冷浸抽出法、還流冷却抽出法、水蒸気蒸留法、超音波抽出法、溶出法、圧搾法等の方法のうち選択して使用することができる。また、目的によって、抽出物は、追加的に通常の分画工程を行うことができ、通常の精製方法によって精製され得る。
【0041】
本発明の抽出物の製造方法には制限がなく、本明細書に作成されているいかなる方法も利用が可能である。例えば、本発明の組成物に含まれる抽出物は、前記熱水抽出または溶媒抽出法で抽出された1次抽出物を減圧蒸留および凍結乾燥または噴霧乾燥等のような追加過程を通じて粉末化して製造することができる。また、前記1次抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(silica gel column chromatography)、高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography)、薄層クロマトグラフィー(thin layer chromatography)等の多様なクロマトグラフィーを通じて追加的に精製分画を得ることができる。したがって、本発明において抽出物は、抽出、分画または精製の各段階で得られるすべての抽出液、分離化合物、分画および精製物、これらの希釈、濃縮、乾燥物を全部含む概念として理解することができる。
【0042】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス感染の予防または治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0043】
本明細書において使用される「治療」というのは、本発明の組成物の投与によりコロナウイルス感染の症状を好転させたり正常な状態に変化するすべての行為を意味する。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、大韓医学協会等で提示された資料を参照して治療効果に対する正確な基準を知っていると判断し、彼らは、本発明の組成物が有するコロナウイルス感染症状の好転、向上および治療程度を判断することができるはずである。
【0044】
前記薬学組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含むものであり、これらの剤形の中から選択される1つ以上の剤形であり得、滅菌注射剤形がさらに好ましい。
【0045】
本明細書において使用される「予防」というのは、本発明による薬学的組成物の投与によりコロナウイルス感染の発生、拡散および再発を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0046】
本明細書において使用される「治療学的に有効な量」というのは、コロナウイルス感染による疾患を予防または治療するのに有効な組成物の量であって、薬学的に許容する塩の量を意味する。本発明において提供する組成物の治療学的に有効な量は、投与方法、目的部位、患者の状態等を含む様々な要素によって変わることができる。したがって、人体に本組成物を適用するときには、安全性および効率性を考慮して適正量で投与しなければならないし、動物実験を通じて決定した有効量からヒトに使用される量を推定することができる。
【0047】
本明細書において使用される「薬学的に有効な量」というのは、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさないほどの量を意味する。有効用量水準は、患者の健康状態、疾患の種類および重症度、薬物活性、患者の薬物に対する敏感度、投与方法・時間・経路および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素とその他医学分野によく知られた要素によって決定される。本発明の組成物は、個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与することができる。また、他の治療剤と順次に、または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記の要素を全部考慮して副作用のない最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、このような投与量の決定は、当業者により行われる。
【0048】
本発明の薬学組成物は、薬剤学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができる。薬剤学的に許容可能な添加剤としては、微結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ゼラチン化デンプン、予備糊化デンプン、とうもろこしデンプン、白糖、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、飴、乳糖、コロイダルシリコンジオキシド、ポビドン、オパドライ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が使用され得る。本発明の組成物に対する薬剤学的に許容可能な添加剤の量は、前記組成物に対して0.1重量部~90重量部が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明の薬学組成物は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤を含むことができ、これらの組合せを含むことができる。薬剤学的に許容可能な担体は、組成物の生体内伝達に適したものであれば、特に制限しない。その例としては、Merck Index、13rd ed.,Merck & Co.Inc.に記載された食塩水、滅菌水、緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、化合物等がある。また、これらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、静菌剤、緩衝剤など他の通常の添加剤を適用することができる。また、希釈剤、界面活性剤、分散剤、結合剤、潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液等のような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤として製剤化することができる。当該分野の適正な方法としてRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990)に提示されている方法を用いて成分および患者の疾患・重症度によって好適に製剤化することができる。
【0050】
本発明の薬学組成物は、非経口投与(静脈、皮下、腹腔内または局所注射剤形)したり、経口投与することができる。投与量は、患者の年齢、性別、健康状態、体重、食事、投与時間・方法、排泄率および疾患の重症度によって範囲が変化することができる。本発明の組成物の1日投与量は、0.0001~10mg/mLであり、好ましくは、0.0001~5mg/mLであり、1日に1回~数回に分けて投与する。
【0051】
本発明の薬学組成物に対する経口投与用液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当する。通常使用される単純希釈剤である滅菌水、食塩水、液体パラフィン以外にも、甘味剤、芳香剤、保存剤、湿潤剤など多様な賦形剤が共に含まれ得る。非経口投与のための製剤には、凍結乾燥製剤、滅菌水溶液、非水性溶剤、乳剤、懸濁剤、坐剤等が含まれる。
【0052】
本発明の薬学組成物は、従来のコロナウイルス感染治療用組成物と共に投与することによって、コロナウイルス感染の治療効果を増加させることができ、併用投与は、従来の治療用組成物と同時または順次に行われ得る。
【0053】
本発明は、ホルトノキ抽出物を有効成分として含むコロナウイルス感染の予防または改善用健康機能食品組成物を提供することを目的とする。
【0054】
本発明のホルトノキ抽出物を健康機能食品組成物として使用する場合、他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。
【0055】
前記組成物は、有効成分以外に食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができ、有効成分の混合量は、使用目的(予防、補助的処置)によって適切に決定される。
【0056】
本明細書において使用される「食品補助添加剤」とは、食品に補助的に添加され得る構成要素を意味する。これは、各剤形の健康機能食品を製造するのに添加される要素であって、当業者が適切に選択して使用することができる。食品補助添加剤の例としては、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、合成および天然風味剤、着色剤、充填剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸化剤等が含まれ、前記例に制限するものではない。
【0057】
また、本発明の組成物は、健康機能食品に適用され得る。本明細書において使用される「健康機能食品」というのは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して錠剤、カプセル、顆粒、液状、丸剤、粉末等の形態で製造および加工した食品をいう。「機能性」というのは、人体に対して栄養素を調節したり、生理学的作用を調節するなど保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0058】
本発明の組成物は、食品用組成物として多様な形態で製造され得、健康機能食品と認定される剤形であれば、制限がない。食品用組成物として摂取時に、医薬品の長期服用時に発生しうる副作用がないという長所がある。
【0059】
本発明の組成物は、通常の技術分野において通常使用される方法により健康機能食品として製造可能であり、製造時に通常使用される原料および成分を添加して製造することができる。また、組成物を用いて製造される健康機能食品は、健康機能食品として使用可能な剤形の場合であれば、いかなる制限なしに適用可能である。
【0060】
本発明の組成物が使用され得る健康機能食品の種類には制限がないので、本発明のホルトノキ抽出物を有効成分として含む組成物は、当業者の選択によって健康機能食品に含有され得る適切な補助成分と添加剤を混合して製造することができる。ホルトノキ抽出物を添加できる食品としては、肉類およびソーセージ、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、パン類、ラーメン、およびその他麺類、ガム類、アイスクリームを含む酪農製品、各種の茶、飲料、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤等がある。また、本発明によるホルトノキ抽出物を主成分として製造した汁、茶、ジュース等に添加して製造することができる。
【0061】
以下、本発明の多様な態様について説明する。
【0062】
本発明の一態様は、ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を有効成分として含む、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0063】
一具現例において、本発明は、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療が必要な対象にホルトノキ抽出物を有効量投与する段階を含むコロナウイルス感染の予防、軽減または治療方法を提供する。
【0064】
一具現例において、本発明は、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療に使用されるためのホルトノキ抽出物を提供する。
【0065】
一具現例において、本発明は、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療のための薬物の製造に使用されるホルトノキ抽出物の用途を提供する。
【0066】
本発明の一態様において、前記抽出物は、水、炭素数1~5の低級アルコールまたは炭素数1~5の低級アルコール水溶液の抽出物である、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0067】
本発明の一態様において、前記抽出物は、30%~95%エタノール水溶液で抽出したものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0068】
本発明の一態様において、前記抽出物は、40%~60%エタノール水溶液で抽出したものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0069】
本発明の一態様において、前記ホルトノキ抽出物は、ホルトノキ葉抽出物である、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0070】
本発明の一態様において、ホルトノキ葉は、栽培したものまたは市販されるもの等制限なく使用することができる。また、ホルトノキ葉以外に幹、枝、根元を全部含む植物全体を抽出するものでありうる。
【0071】
本発明の一態様において、抽出溶媒は、水、アルコールまたはこれらの混合物を使用することが好ましい。前記アルコールとしては、C~C低級アルコールを利用することが好ましく、低級アルコールとしては、エタノールを利用することが好ましい。前記エタノールは、これに制限されないが、好ましくは、30%~95%エタノール水溶液であり得、より好ましくは、45%~55%エタノール水溶液でありうる。抽出方法としては、振とう抽出、ソックスレー(Soxhlet)抽出または還流抽出を利用することが好ましいが、これに限定されない。前記抽出溶媒を乾燥したホルトノキ葉の量に対して1~30倍、1~20倍、または1~10倍添加して抽出することが好ましい。抽出温度は、20℃~100℃であることが好ましく、20℃~80℃であることがさらに好ましく、室温であることが最も好ましいが、これに限定しない。また、前記抽出時間は、1~10日であることが好ましいが、これに限定しない。しかも、抽出回数は、1回以上実施することができるが、抽出が続くほど、活性成分の収得量が顕著に減少するので、5回以上反復実施することは経済的でないことがある。これより、抽出回数は、1~5回であることが好ましく、2~5回反復抽出することがさらに好ましいが、これに限定されるものではない。
【0072】
前記抽出方法は、当業界において通常的に知られた方法で、例えば超臨界抽出、亜臨界抽出、高温抽出、高圧抽出または超音波抽出法等の抽出装置を用いた方法またはXADおよびHP-20を含む吸着樹脂を用いた方法等を利用することができる。
【0073】
前記方法において、減圧濃縮は、真空減圧濃縮器または真空回転蒸発器を利用することが好ましいが、これに限定しない。また、乾燥は、減圧乾燥、真空乾燥、沸騰乾燥、噴霧乾燥または凍結乾燥することが好ましいが、これに限定しない。
【0074】
本発明の一態様において、前記コロナウイルスは、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV,transmissble gastroenteritis virus)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV,porcine epidemic diarrhea virus)、犬コロナウイルス(canine coronavirus)、牛コロナウイルス(bovine Coronavirus)、サルスコロナウイルス(SARS-CoV)およびコロナ-19ウイルス(SARS-CoV-2)よりなる群から1つ以上選ばれるものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0075】
本発明の一態様において、前記コロナウイルスは、ベータコロナウイルスである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0076】
本発明の一態様において、前記薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0077】
本発明の一態様において、前記薬学的組成物は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤および液体形態よりなる群から選ばれて経口投与するものである、コロナウイルス感染の予防、軽減または治療用薬学的組成物を提供する。
【0078】
本発明による薬学的組成物は、ホルトノキ葉抽出物を有効成分として含み、組成物の総重量に対して前記有効成分は0.1~50重量%で含まれ得、本発明がこれに限定されない。
【0079】
一方、本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明の用語「投与」とは、適切な方法で個体に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、いかなる一般的な経路を通じて投与され得る。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与され得るが、これに制限されない。
【0080】
前記用語「個体」とは、ヒトを含むマウス、ラット、家畜等のすべての動物を意味する。好ましくは、ヒトを含む哺乳動物でありうる。
【0081】
前記用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさないほどの量を意味し、有効用量水準は、患者の性別、年齢、体重、健康状態、病気の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路、および排出比率、治療期間、配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって当業者により容易に決定され得る。しかしながら、好ましい効果のために、成人の場合、本発明の組成物は、1回投与量で0.0001~1000mg/kg、好ましくは、10~300mg/kg(体重)含むことができる。投与は、前記推奨投与量を1日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面においても、本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
本発明の他の態様は、ホルトノキ(Elaeocarpus sylvestris)抽出物を有効成分として含む、コロナウイルス感染の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0083】
前記ホルトノキ抽出物によるコロナウイルスの感染に対する予防、改善、治療効果は、前述した通りであり、本発明の組成物を食品添加物として使用する場合、前記ホルトノキ抽出物をそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適切に決定され得、食品学的に許容可能な食品補助添加剤を追加で含むことができる。本発明の組成物は、天然物に由来した抽出物およびこれの分画物を有効成分とするので、安定性の面から問題がないため、混合量に大きい制限はない。
【0084】
本発明の食品組成物は、通常の意味の食品を全部含むことができ、機能性食品、健康機能食品など当業界に知られた用語と混用可能である。
【0085】
本発明の用語「機能性食品」は、健康機能食品に関する韓国の法律第6727号による人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して製造および加工した食品を意味し、「機能性」というのは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節したり、生理学的作用等のような保健用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0086】
また、本発明の用語「健康機能食品」は、健康補助の目的で特定成分を原料としたり、食品原料に入っている特定成分を抽出、濃縮、精製、混合等の方法で製造、加工した食品をいい、前記成分により生体防御、生体リズムの調節、病気の防止と回復など生体調節機能を生体に対して十分に発揮できるように設計され、加工された食品をいうものであって、前記健康食品用組成物は、病気の予防および病気の回復等に関連した機能を行うことができる。
【0087】
本発明の組成物が使用され得る食品の種類には制限がない。また、本発明のホルトノキ抽出物を活性成分として含む組成物は、当業者の選択によって食品に含有され得る適切なその他補助成分と公知の添加剤を混合して製造することができる。添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤等があり、本発明による抽出物およびその分画物を主成分として製造した汁、茶、ジェリーおよびジュース等に添加して製造することができる。
【0088】
また、本発明に適用され得る食品には、例えば、特殊栄養食品(例:調製乳類、 嬰・乳児食等)、食肉加工品、魚肉製品、豆腐類、ムク類、麺類(例:ラーメン類、ソバ類等)、健康補助食品、調味食品(例:醤油、味噌、コチュジャン、混合醤等)、ソース類、菓子類(例:スナック類)、乳加工品(例:醗酵乳、チーズ等)、その他加工食品、キムチ、漬物食品(各種キムチ類、塩漬け等)、飲料(例:果実、野菜類飲料、豆乳類、発酵飲料類等)、天然調味料(例、ラーメンスープ等)等すべての食品を含むことができる。
【0089】
本発明の健康機能食品組成物が飲料の形態で使用される場合には、通常の飲料のように様々な甘味剤、香味剤または天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。前記の他に本発明の健康機能食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等を含有することができる。その他に天然果物ジュース、果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。
【0090】
[発明を実施するための形態]
以下、実施例、実験例および製造例を通じて本発明の構成および効果をさらに詳細に説明することとする。これらの実施例、実験例および製造例は、ただ本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されるものではない。
【0091】
実施例1.ホルトノキ抽出物の製造
済州島一帯の韓国産ホルトノキの葉を入手して乾燥した後、細切した後、ホルトノキ葉100kgを50%エタノール2,000Lで60℃で16時間抽出し、濾過および濃縮後、乾燥して、ホルトノキ抽出物28kg(収率28%)を得た。
【0092】
実験例1.ホルトノキ抽出物のウイルス感染抑制効果
Vero-E6細胞は、DMEM(-/-)で培養され、ウイルス感染実験時に、12well-plateに5×10cells/wellの濃度で接種した。37℃、COインキュベーターで24時間培養し、細胞培地を除去した後、1×PBSで2回水洗した。ホルトノキ抽出物を濃度別に(25、50、100 μg/mL)前処理した後、37℃、COインキュベーターで2時間培養し、以後、ウイルス感染のために細胞培地を除去した後、SARS-CoV-2ウイルスを50pfu/wellの濃度で1時間処理した。以後、細胞培地を除去した後、培地1.5mLを各wellに追加し、72時間反応させた後、結果を確認した。この際、SARS-CoV-2ウイルスに対して治療効果があると知られたレムデシビル(Remdesivir,Rem)5μMとマラリア治療剤クロロキノンホスフェート(Chloroquinone phosphate,C.P)10μMを比較群に設定して実験を進めた。
【0093】
図1に示された結果のように、ホルトノキ抽出物は、優れたウイルス感染抑制効果を示し、その結果は、濃度依存的に発生した。比較群であるレムデシビルやクロロキノンホスフェートに比べてさらに優れた結果を示した。
【0094】
実験例2.ホルトノキ抽出物のウイルス複製抑制効果
Vero-E6細胞は、DMEM(-/-)で培養され、12well-plateに5×10cells/wellの濃度で接種した。37℃、COインキュベーターで24時間培養し、細胞培地を除去した後、1×PBSで2回水洗した。ウイルス感染のためにSARS-CoV-2ウイルスを50pfu/wellの濃度で1時間処理し、以後、ホルトノキ抽出物が濃度別に(25、50、100 μg/mL)含有された培地1.5mLを各wellに追加し、72時間反応させた後、結果を確認した。この際、SARS-CoV-2ウイルスに対して治療効果があると知らされたレムデシビル(Remdesivir,Rem)5μMとマラリア治療剤クロロキノンホスフェート(Chloroquinone phosphate,C.P)10μMを比較群に設定して実験を進めた。
【0095】
図2に示された結果のように、ホルトノキ抽出物は、効果的なSARS-CoV-2ウイルスの複製抑制効果を示し、その結果は、濃度依存的に発生し、高濃度でも細胞毒性なしに抗ウイルス効果を示した。ウイルス複製抑制効果に対してクロロキノンホスフェートの結果に比べてホルトノキ抽出物の結果は優れており、50μg/mL以上の濃度からクロロキノンホスフェートの結果と比較優位にあった。しかしながら、すべての濃度のホルトノキ抽出物は、レムデシビルよりは少し低い水準の複製抑制能力を示した。
【0096】
実験例3.ホルトノキ抽出物の抗ウイルス効果
6週齢のハムスターを入手し、無作為でグループを設定した後、1週間安定化させた。ハムスターにSARS-CoV-2を感染させ、24時間後、4日間ホルトノキ抽出物を25、50、100 mg/kg の濃度で経口投与した。ウイルス投与前と投与後4日間、体重は毎日、体温は感染前後に1回ずつ測定した。
【0097】
ウイルス投与後4日目にハムスターの唾液を回収し、前処理過程を経た後、SARS-CoV-2 Spike RBD Nanobody kitを用いてスパイクタンパク質(spike protein)の結合活性を確認することによって、抗ウイルス効果を測定した。
【0098】
その結果、図3に示されたように、ホルトノキ抽出物は、ウイルスの結合活性抑制効果を示し、濃度依存的であり、高濃度では統計学的に有意な結果(P<0.05)を示した。
【0099】
実験例4.ホルトノキ抽出物の解熱効果
コロナウイルス感染症-19は、ウイルス感染による発熱を伴い、したがって、実験例3の実験で感染0日目と4日目となる日にハムスターの体温を測定することによって、コロナウイルス感染症-19の症状緩和効果を測定した。
【0100】
その結果、表1に示されたように、コロナウイルス感染により体温が増加したが、ホルトノキ抽出物の投与により体温増加が抑制されることを確認し、濃度依存的に減少効果を示した。
【0101】
【表1】
【0102】
実験例5.ホルトノキ抽出物の体重減少抑制効果
コロナウイルス感染症-19は、ウイルス感染による体重減少を誘発し、したがって、実験例3の実験で感染0日目から4日目となる日まで全体5回ハムスター体重を測定することによって、体重減少抑制効果を測定した。
【0103】
その結果、表2に示されたように、コロナウイルス感染により体重が減少したが、ホルトノキ抽出物(ESE)の投与により体重減少が抑制されることを確認し、濃度依存的な傾向を示した。
【0104】
【表2】
【0105】
前記実験例を通じて本発明のホルトノキ抽出物は、SARS-CoV-2ウイルスに対して有意な感染および複製抑制効果を示した。また、ハムスターにウイルスを感染させた後、体重、体温、SARS-CoV-2スパイクタンパク質結合能力を確認することによって、優れた抗ウイルス効能があることを確認した。前記実験例を総合したとき、ホルトノキ抽出物は、SARS-CoV-2のRNA複製抑制とタンパク質結合能力阻害を通じてコロナウイルスを抑制することが予測される。本発明のホルトノキ抽出物を用いて高濃度でも毒性がなく、治療効果に優れたコロナウイルス感染の予防、改善および治療用組成物として開発が可能であり、食品補助剤および添加剤、健康機能食品または医薬品として開発可能性が大きいといえる。
【0106】
[製剤例]
下記製剤例では、本発明の実施例1の抽出物を有効成分として含む薬学的組成物または食品組成物の製造例を説明した。下記製剤例は、本発明を具体的に説明するためのものであり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0107】
製剤例1:薬学的組成物の製造
製剤例1-1:錠剤の製造
エタノール50gにポビドン10gを溶かして結合液を調製した後、有効成分150gを結合液に入れて均質に撹拌した。ケイ化微結晶セルロース130g、クロスカルメロースナトリウム15g、コロイドシリコンジオキシド20gを混合した後、有効成分と均質に撹拌させた結合液を投入して、顆粒工程を進行後、顆粒物を乾燥および整粒した。製造された顆粒物にクロスポビドン15gを入れて混合し、コロイドシリコンジオキシド3.5gとステアリン酸マグネシウム6.5gを入れ、滑沢工程を進行後、錠剤を製造した。
【0108】
製剤例1-2:錠剤の製造
エタノール50gにポビドン19gを溶かして結合液を調製した後、有効成分150gを結合液に入れて均質に撹拌した。ケイ化微結晶セルロース143g、クロスカルメロースナトリウム15g、ノイシリン20gを混合した後、有効成分と均質に撹拌させた結合液を投入して、顆粒工程を進行後、顆粒物を乾燥および整粒した。製造された顆粒物にクロスポビドン15gを入れて混合し、コロイドシリコンジオキシド5gとステアリン酸マグネシウム8gを入れ、滑沢工程を進行後、錠剤を製造した。
【0109】
製剤例1-3:錠剤の製造
エタノール50gにポビドン12.5gを溶かして結合液を調製した後、有効成分150gを結合液に入れて均質に撹拌した。ケイ化微結晶セルロース62.5g、乳糖水和物65g、クロスカルメロースナトリウム15g、コロイドシリコンジオキシド20gを混合した後、有効成分と均質に撹拌させた結合液を投入して、顆粒工程を進行後、顆粒物を乾燥および整粒した。製造された顆粒物にクロスポビドン15gを入れて混合し、コロイドシリコンジオキシド3.5gとステアリン酸マグネシウム6.5gを入れ、滑沢工程を進行後、錠剤を製造した。
【0110】
製剤例1-4:錠剤の製造
エタノール33.5gにポビドン19gを溶かして結合液を調製した後、有効成分150gを結合液に入れて均質に撹拌した。ケイ化微結晶セルロース105g(主成分が含有しているエタノールの量分だけ、ケイ化微結晶セルロースの量を追加する)、クロスカルメロースナトリウム17.5g、ノイシリン20gを混合した後、有効成分と均質に撹拌させた結合液を投入して、顆粒工程を進行後、顆粒物を乾燥および整粒した。製造された顆粒物にクロスポビドン17.5gとケイ化微結晶セルロース33gを入れて混合し、コロイドシリコンジオキシド7.5gとステアリン酸マグネシウム8gを入れ、滑沢工程を進行後、錠剤を製造した。
【0111】
製剤例1-5:コーティング錠の製造
前記製剤例1-1~1-4で製造した錠剤755mg(有効成分300mgを含む)を通常のパンコーティングシステム(Opadry(登録商標)、Opadry200(登録商標)またはOpaglos(登録商標))を用いてコーティング錠を製造した。
【0112】
製剤例1-6:注射液剤の製造
有効成分1g、塩化ナトリウム0.6gおよびアスコルビン酸0.1gを蒸留水に溶解させて100mlを製造した。この溶液を瓶に入れ、20℃で30分間加熱して滅菌させた。
【0113】
製剤例2:健康食品の製造
有効成分1000mg、クエン酸1000mg、オリゴ糖100g、タウリン1gを混合して、これに精製水を加えて、全体体積が900mlになるようにした。約1時間85℃で撹拌加熱した後、製造された溶液を濾過して、滅菌された2リットル容器に入れて、密封滅菌して、飲料を製造した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】