(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】固体電池のためのセラミック軟質複合物
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20221130BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221130BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20221130BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506486
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 US2020044576
(87)【国際公開番号】W WO2021022196
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーサー,ティモシー・エス
(72)【発明者】
【氏名】シング,ニクヒレンドラ
(72)【発明者】
【氏名】モハタディ,ラナ
(72)【発明者】
【氏名】トゥトゥザウス,オスカー
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA05
5G301CA08
5G301CA16
5G301CA19
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ15
(57)【要約】
本開示は、式(I)“(LPS)a(OIPC)b”の複合材料に関する:式中、aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式(II)“xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiX”の材料からなる群より選択される材料であり、式中、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi2S、P2S5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに、(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(LPS)
a(OIPC)
b (I)
の複合材料であって、
式中、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li
3PS
4、Li
7P
3S
11、Li
10GeP
2S
11、および式(II):
xLi
2S・yP
2S
5・(100-x-y)LiX (II)
の材料からなる群より選択される材料であり、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi
2S、P
2S
5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに
(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩である、複合材料。
【請求項2】
前記カチオンは、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、およびホスホニウムから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
前記(LPS)
a(OIPC)
bは、5トン/cm
2未満の圧力で加圧される、請求項1に記載の複合物。
【請求項4】
前記(LPS)
a(OIPC)
bは、2.5トン/cm
2未満の圧力で加圧される、請求項3に記載の複合物。
【請求項5】
前記(OIPC)の融解温度は100℃であり、前記(LPS)の結晶化温度は225℃である、請求項1に記載の複合物。
【請求項6】
前記複合材料は、前記(OIPC)が前記(LPS)の粒子を取り囲んでいるコアシェル構造を形成している、請求項1に記載の複合物。
【請求項7】
前記複合物は低温加圧される、請求項1に記載の複合物。
【請求項8】
前記複合材料は高温加圧される、請求項1に記載の複合物。
【請求項9】
リチウム金属またはリチウム合金金属アノードと、
式(I)の複合材料の固体電解質と、
カソードとを、記載される順序で備える固体リチウム電池であって;
(LPS)
a(OIPC)
b (I)
式中、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li
3PS
4、Li
7P
3S
11、Li
10GeP
2S
11、および式(II):
xLi
2S・yP
2S
5・(100-x-y)LiX (II)
の材料からなる群より選択される材料であり、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi
2S、P
2S
5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに
(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩である、固体リチウム電池。
【請求項10】
前記カチオンは、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、およびホスホニウムから選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
前記(LPS)
a(OIPC)
bは、5トン/cm
2未満の圧力で加圧される、請求項9に記載の電池。
【請求項12】
前記(LPS)
a(OIPC)
bは、2.5トン/cm
2未満の圧力で加圧される、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
前記(OIPC)の融解温度は100℃であり、前記(LPS)の結晶化温度は225℃である、請求項9に記載の電池。
【請求項14】
前記複合材料は、前記(OIPC)が前記(LPS)の粒子を取り囲んでいるコアシェル構造を形成している、請求項9に記載の電池。
【請求項15】
前記複合物は低温加圧される、請求項9に記載の電池。
【請求項16】
式(LPS)
a(OIPC)
bの複合材料を形成する方法であって:
前記(LPS)とxモル%の前記(OIPC)との混合物を提供する工程であって、x=1~50である、工程と、
前記混合物を、前記(OIPC)の融解温度と前記(LPS)の結晶化温度との間の温度において、あらかじめ定められる長さの時間にわたって加熱する工程と、
前記混合物を、あらかじめ定められる圧力で加圧する工程とを備え、式中、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li
3PS
4、Li
7P
3S
11、Li
10GeP
2S
11、および式xLi
2S・yP
2S
5・(100-x-y)LiXの材料からなる群より選択される材料であり、
XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi
2S、P
2S
5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;
(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩であり;ならびに
前記カチオンは、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、およびホスホニウムから選択される少なくとも1種である、方法。
【請求項17】
前記あらかじめ定められる圧力は、5トン/cm
2未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記あらかじめ定められる圧力は、3トン/cm
2以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記(OIPC)の融解温度は100℃であり、前記(LPS)の結晶化温度は225℃である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記複合材料は、前記(OIPC)が前記(LPS)の粒子を取り囲んでいるコアシェル構造を形成している、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、リチウム金属またはリチウム合金アノードと、カソードと、セラミック有機イオン性液晶複合物から構成される固体電解質とを有する固体リチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
固体電池は、液体電解質を固体電解質で置き換えた電気化学的蓄電デバイスである、というのは、液体電解質は引火性であることから安全性および環境上の懸念を呈するためである。固体電解質は、電池サイクル中に電池のアノードとカソードとの間でリチウム(Li+)イオンを伝導するものであり、Li+イオンは、放電中はアノード側からカソードへ運ばれ、電池充電中はカソードからアノードへ運ばれる。固体電解質は、電池内における電極間での電子の直接伝導を妨げる。固体電解質の利点には、向上した安全性と、改善されたエネルギー密度と、リチウム金属アノードを使用できることとが含まれる。
【0003】
リチウムイオンロッキングチェア機構に基づく電池は、電気化学的還元の間はLi+イオンを活物質中に挿入し、次いで電気化学的酸化の間はLi+イオンを引き抜くことを可能とする。Li+イオンの挿入と引抜とが繰り返されることによって、材料中において固有の体積の変化が誘発される。液体電解質電池においては、活物質の体積変化は、電解質のLi+イオン輸送継続能力にほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、固体電池の場合には、固体電解質がより大きな力学的ストレスおよび物理的劣化を受ける(たとえば、固体電解質層の亀裂)。固体電解質の亀裂は、内部短絡による電池障害、または固体電解質の伝導性喪失につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高いリチウムイオン伝導性を呈しながらも改善された力学的ストレス安定性を有する固体電解質を提供することが望ましいと考えられる。さらに、こうした固体電解質を含有する固体電池、ならびにこうした固体電解質およびこうした固体電池の両方を調製するための方法を提供することが有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
これらのおよびその他の目的は本開示の実施形態によって提供され、その第1の実施形態は、式(I):
(LPS)a(OIPC)b (I)
の複合材料であって、
式中、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式(II):
xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiX (II)
の材料からなる群より選択される材料であり、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi2S、P2S5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに
(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩である、複合材料を含む。
【0006】
さらに、本開示は、式(LPS)a(OIPC)bの複合材料を形成する方法であって、(LPS)とxモル%の(OIPC)との混合物を提供する工程であって、x=1~50である、工程と、混合物を、(OIPC)の融解温度と(LPS)の結晶化温度との間の温度において、あらかじめ定められる長さの時間にわたって加熱する工程と、混合物を、あらかじめ定められる圧力で加圧する工程とを含み、式中、aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiXの材料からなる群より選択される材料である、方法に関する。
【0007】
また、本開示は、
リチウム金属またはリチウム合金金属アノードと、
式(I)の固体電解質と、
カソードとを、記載される順序で備える固体リチウム電池であって、
(LPS)a(OIPC)b (I)
式中、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式(II):
xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiX (II)
の材料からなる群より選択される材料であり、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi2S、P2S5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに
(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩である、固体リチウム電池に関する。
【0008】
さらに、本開示は、リチウム金属またはリチウム合金金属アノードを提供する工程と、カソードを提供する工程と、電解質を提供する工程とを含む、固体電解質リチウム電池を製造する方法であって、電解質を提供する工程は、(LPS)とxモル%の(OIPC)との混合物を提供する工程であって、x=1~50である、工程と、混合物を、(OIPC)の融解温度と(LPS)の結晶化温度との間の温度において、あらかじめ定められる長さの時間にわたって加熱する工程と、混合物を、あらかじめ定められる圧力で加圧する工程とを含み、式中、aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiXの材料からなる群より選択される材料である、方法に関する。
【0009】
上述される実施形態の態様において、OIPCのカチオンは、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、およびホスホニウムから選択される少なくとも1種である。
【0010】
上述される段落は一般的な導入のために提供されるものであり、以下の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。記載されている態様と、さらなる利点とは、以下の詳細な説明と添付の図面とを参照することによって、最もよく理解される。
【0011】
図面の簡単な説明
この特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を伴う本特許または特許出願公報のコピーは、請求および必要な料金の支払に応じて庁から提供される。
【0012】
本開示およびこれに付随する利点の多くは、以下の詳細な説明と添付の図面とを結びつけて参照することによってよく理解でき、よってさらなる完全な理解が容易となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る、乳鉢および乳棒で混合される複合物のためのセ氏温度を維持するのに必要なエネルギー入力に関する示差走査熱量測定(DSC)曲線の一例を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示の一実施形態に係る、あらかじめ定められる温度範囲T
xにおいて1~10時間加熱した後の(LPS)-(OIPC)複合物のDSC曲線の一例を示す。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る(LPS)ペレット、(OIPC)粉末、および融解拡散(LPS)-(OIPC)複合物(グレイスケール画像)の、走査電子顕微鏡(SEM)画像およびエネルギー分散型x線分析(EDX)マップを示す。
【
図3A】
図3Aは、本開示の一実施形態に係る固体電解質(LPS)-(OIPC)複合物ペレットを形成する方法を記載する。
【
図3B】
図3Bは、本開示の一実施形態に係る、熱の存在下においてペレットを形成する方法を示す。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る(LPS)と(LPS)-(OIPC)複合物との相対的伝導性の比較を示す。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る(LPS)と(LPS)-(OIPC)複合物との相対密度の比較を示す。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一実施形態に係る(LPS)粉末のSEM画像およびエネルギー分散型x線分析(EDX)マップを示す。
【
図6B】
図6Bは、本開示の一実施形態に係る(LPS)-(OIPC)複合物のSEM画像およびエネルギー分散型x線分析(EDX)マップを示す。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係る(LPS)-(OIPC)複合物を製造するための方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
添付の図面と結び付けて以下に記載される説明は、開示される主題の様々な態様について説明することを意図するものであり、必ずしも唯一の態様を表すことを意図するものではない。いくつかの場合においては、説明内容が、開示される主題の理解を促す目的で具体的な詳細を含むことがある。しかしながら、そのような具体的詳細なしでも態様を実施可能であることが、当業者には明らかであろう。いくつかの場合においては、開示される主題の概念が不明瞭とならないように、周知の構造および構成要素がブロック図で示されている場合がある。
【0015】
当該説明の全体を通して、「電気化学セル」および「電池」という用語は、当該説明の文脈が電気化学セルと電池とを明瞭に区別している場合を除き、区別なく使用され得る。さらに、「固体電解質」、「固体-電解質」、および「固体イオン伝導体」という用語は、これらが明白に区別されている場合を除き、区別なく使用され得る。「約」という用語は、数値と関連している場合、基本値の-10%から基本値の+10%の範囲を伝達する。
【0016】
本明細書全体にわたって、「1つの態様」または「一態様」に言及する箇所は、ある態様と結び付けて記載される具体的な特色、構造、特徴、作用、または機能が、開示される主題の少なくとも1つの態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書中で「1つの態様において」または「一態様において」という言葉が記載される場合、これらは必ずしも同一の態様を指しているわけではない。さらに、こうした具体的な特色、構造、特徴、作用、または機能は、1つ以上の態様において、任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。さらに、開示される主題の態様が、記載される当該態様の改変および変更を包含できること、および包含することが意図される。
【0017】
なお、本明細書および特許請求の範囲において用いられる単数形「a、」「an、」、および「the」は、文脈上明らかな矛盾がない限り複数の意味も含むことに留意されたい。すなわち、そうでないことが明記されていない限り、本明細書中において用いられる「a」および「an」などの言葉は、「1つ以上の」という意味を有する。さらに、本明細書中において用いられる可能性がある「上部」、「底部」、「前方」、「後方」、「側面」、「内側」、および「外側」などの用語は、単に基準点を記載しているのみであって、必ずしも、開示される主題の態様を任意の特定の向きまたは構成に限定しているわけではないことが理解される。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、単に、本明細書中において記載される複数の部分、構成要素、基準点、作用、および/または機能のうちの1つを特定しているのみであって、上記と同様に、必ずしも、開示される主題の態様を任意の特定の構成または向きに限定しているわけではないことが理解される。
【0018】
有機イオン性柔粘性結晶(OIPC)は、可鍛性セラミック複合物にとって望ましい電気化学的および力学的特性を有する好適な成分を与える。第1の実施形態において、本開示は、式(I):
(LPS)a(OIPC)b (I)
の複合材料であって、式中、aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値である、複合材料を提供する。本開示によれば、(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式(II):
xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiX (II)
の材料からなる群より選択される材料であり、式中、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi2S、P2S5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに
(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩であり、カチオンは、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、およびホスホニウムから選択される少なくとも1種である。軟質柔粘性OIPC固体電解質は、同時係属中の出願第16425096号中に記載され、その開示内容を引用により本明細書に援用する。
【0019】
カチオンは、以下を含む群より選択され得る:1-メチル-1-プロピルピロリジニウム(以下で「Pyr13」と称される);N-メチル-N,N-ジエチル-N-プロピルアンモニウム(N1223);N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)-アンモニウム(DEME);N-メチル-N-プロピルピペリジニウム(以下で「Pip13」と称される);N-メチル-N-(2-メトキシエチル)-ピロリジニウム(Pyr12O1);トリメチルイソプロピルホスホニウム(P111i4);メチルトリエチルホスホニウム(P1222);メチルトリブチルホスホニウム(P1444);N-メチル-N-エチルピロリジニウム(Pyr12);N-メチル-N-ブチルピロリジニウム(Pyr14);N,N,N-トリエチル-N-ヘキシルアンモニウム(N2226);トリエチルヘキシルホスホニウム(P2226);およびN-エチル-N,N-ジメチル-N-ブチルアンモニウム(N4211)。いくつかの実装形態においては、Gが、上述されるカチオンを1つを超えて含み得ることが理解される。pが2に等しい場合には、固体マトリックス中の化学量論組成単位に含有される2つの有機カチオンが、同じカチオンであり得るまたは2つの異なるカチオンであり得ることが理解される。
【0020】
本明細書中において用いられる「ボロンクラスターアニオン」という言葉は、一般的に、以下のうち任意のもののアニオン形態を指す:6~12個のホウ素原子を有し正味電荷が-2であるボラン;クラスター構造中に1個の炭素原子および5~11個のホウ素原子を有し正味電荷が-1であるカルボラン;クラスター構造中に2個の炭素原子および4~10個のホウ素原子を有し正味電荷が-1または-2であるカルボラン。いくつかの変形形態において、ボロンクラスターアニオンは、上述されるものに加えて水素原子のみを有する非置換体であってもよい。いくつかの変形形態において、ボロンクラスターアニオンは、1つ以上の水素原子を1つ以上のハロゲンが置き換えているような、または1つ以上の水素原子を1つ以上の有機置換基が置き換えているような、またはこれらの組み合わせであるような、置換体であってもよい。
【0021】
式(I)の材料を形成するための方法は、
(LPS)とxモル%の(OIPC)との混合物を提供する工程であって、x=1~50である、工程と、
混合物を、(OIPC)の融解温度と(LPS)の結晶化温度との間の温度において、あらかじめ定められる長さの時間にわたって加熱する工程と、
混合物を、あらかじめ定められる圧力で加圧する工程とを含む。
【0022】
実施例中に記載されるとおり、本発明者らは、驚くべきことに、(LPS)に係る材料を(OIPC)に係る材料と混合して(LPS)-(OIPC)複合物を生成すると、別個の複合材料を得ることができることを見い出した。したがって、実施例1中に記載されるとおり、硫化リチウム、五硫化リン、LiX(X=Cl、I、およびBr)を、乳鉢中で、上述される重量%範囲に従って組み合わせることができる。これらの成分を10分間~1時間という時間にわたって乳鉢中で混合することができ、次いで、得られる粉末を1~7日間という時間にわたってボール粉砕して(LPS)電解質成分を得ることができる。必須ではないが、この電解質成分を180℃において上限3時間まで焼鈍してもよい。
【0023】
実施例2中に記載されるとおり、クロソボランクラスター塩と有機カチオン塩とを組み合わせて塩メタセシスを行ない、これを、次いでLi塩(たとえば、LiCB11H12、LiCB9H10など)でドープすることによって、(OIPC)電解質成分を調製した。水混和性溶媒中の塩の組み合わせに、過剰量の水を添加して、クロソボランクラスターを固体として析出させる。固体のクロソボランクラスターを、次いで、たとえばろ過、遠心分離などの当技術分野において周知される方法によって、単離することができる。
【0024】
実施例3中に記載されるとおり、融解拡散プロセスを使用して、(LPS)および(OIPC)電解質の複合物を調製した。(LPS)粉末とxモル%の(OIPC)粉末(ここで、x=1~50)とを組み合わせて、乳鉢中で混合し、(OIPC)の融解温度から(LPS)の結晶化温度にわたるあらかじめ定められる温度範囲Txに加熱する。あらかじめ定められる長さの時間の経過後に混合物から熱を除去し、混合物をTx未満に冷却して、(LPS)-(OIPC)複合物を形成する。
【0025】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る、混合物のためのセ氏温度を維持するのに必要なエネルギー入力に関する示差走査熱量測定(DSC)曲線の一例を示す。とりわけ、温度範囲T
xが記載される。
【0026】
図1Bは、本開示の一実施形態に係る、T
xにおいて1~10時間加熱した後の(LPS)-(OIPC)複合物のDSC曲線の一例を示す。このDSCは
図2aと同一であり、(OIPC)および(LPS)の分解は生じていない。Txの範囲は、たとえば100℃~225℃であってよい。
【0027】
一実施形態において、融解拡散プロセスにより、(OIPC)が(LPS)の粒子を取り囲んでいる(LPS)-(OIPC)複合物のためのコアシェル構造が生成される。(LPS)-(OIPC)複合物の形態は、均一な混合物および以下に記載されるような均一な加圧ペレットを生成するために、非常に重要である。上述される融解拡散プロセスにおいては、混合物をまず、あらかじめ定められる温度範囲Txに加熱する。混合物を(OIPC)の融解温度よりも高い温度に加熱することによって、(OIPC)が液相に移行する。Txを(LPS)の結晶化温度よりも低く維持することによって、(LPS)が非結晶相のままで維持される。よって、(OIPC)は、「より軟質な」材料であると考えてよい。この加熱の結果、液状の(OIPC)が流動して(LPS)粒子を取り囲み、(LPS)粒子中のすべての空隙と、(OIPC)が固体であった時に存在していたすべての空隙とを充填する。熱を除去して混合物をTx未満に冷却した後、(OIPC)は(LPS)粒子を取り囲んだまま、固体形態に戻り得る。
【0028】
図2は、本開示の一実施形態に係る(LPS)ペレット、(OIPC)粉末、および融解拡散(LPS)-(OIPC)複合物(グレイスケール画像)の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。元素同定のために、エネルギー分散型x線分析(EDS)を用いる分析を使用してもよい。硫黄元素(茶色)のEDSマッピングは(LPS)中における硫黄の位置を示し、ホウ素元素(赤色)のEDSマッピングは(OIPC)中におけるホウ素の位置を示す。これらの組み合わせはコアシェル形態の形成の証拠であり、EDSは、(OIPC)中にのみ見られるホウ素(赤色)が(LPS)中にのみ見られるチオリン酸塩硫黄(マゼンタ色)を被覆していることを示している。
【0029】
実施例4および
図3Aは、本開示の一実施形態に係る固体電解質(LPS)-(OIPC)複合物ペレット105(本明細書中において「ペレット105」と称される)の形成方法を記載する。一実施形態において、(LPS)-(OIPC)複合物を低温加圧する。重量がたとえば80~300mgである(LPS)-(OIPC)複合物に対し、ダイ中で、穿孔具を使用して、あらかじめ定められる長さの時間にわたってこの(LPS)-(OIPC)複合物に圧力を印加して、低温加圧してよい。たとえば、印加圧力は、10トン未満、または7トン未満、または0.5~6トン、または1~3トンであってよい。とりわけ、この方法の名称が示すように、ペレット105を周囲温度で加圧してもよい。すなわち、(LPS)-(OIPC)混合物は、加圧前に、周囲温度まで冷却してもよい。得られるペレット105の断面形状は、円形(図示されるとおり)、または2つよりも多い側面を有する多角形であってよい。図示されるような円盤様のペレット105の直径は、0.5~2cm、1.1cm、または好ましくは1.13cmであってよい。電極110を、ペレット105の両側面と電気的に結合してもよい。たとえば、第1の電極110が上部表面と接していてよく、第2の電極110が底部表面と接していてよく(図示されるとおり)、電流は上部表面および底部表面を直交して伝導される。別の一例においては、電極110がペレット105の両端部と接していてよく、電流は上部表面および底部表面と平行に伝導される。これ以外の電極110の接続構成が、当業者によって企図され得る。たとえば電極110がブロッキング電極であるような、電極110を使用して、電気化学インピーダンス分光法(EIS)により伝導性測定を行なった。
【0030】
図3Bは、本開示の一実施形態に係る、熱の存在下においてペレット105を形成する方法を示す。一実施形態においては、(LPS)-(OIPC)複合物を高温加圧し、このダイは、加圧中に(LPS)-(OIPC)複合物を加熱する加熱機構を含む。加熱は、たとえば抵抗加熱コイル(図示されるとおり)、誘導炉、電場印加など、またはこれらの任意の組み合わせなどの、一般的な加熱デバイスによって提供してよい。上述されるとおり、混合物を、あらかじめ定められる温度範囲T
xに加熱してもよい。混合物を(OIPC)の融解温度よりも高い温度に加熱することによって、混合物が液相に移行する。T
xを(LPS)の結晶化温度よりも低く維持することによって、(LPS)が非結晶相のままで維持される。有利にも、加熱加圧および印加圧力によって、特に混合物が高温で長時間保たれた場合に、(OIPC)の流動が促進され得て、(LPS)粒子を取り囲み、空隙を充填し得る。さらに、加熱と加圧とを組み合わせることによって、(OIPC)を冷却前に別の相に移行させることができ、これによって、その構造と、そして最終的にはその伝導性とを変化させることができる。さらに別の一実施形態においては、所望の相を得るために、または(OIPC)のための所望の結晶構造を保持するために、(OIPC)をあらかじめ定められる長さの時間にわたって加熱および加圧し、続いて急冷してもよい。たとえば、(OIPC)は様々なカチオン回転自由度を含んでもよく、加圧の温度および圧力を調整することによって、(OIPC)中において、改善された相対密度および伝導性を有する新たな格子構造の核形成および成長を誘発できる。
【0031】
図4は、本開示の一実施形態に係る(LPS)と(LPS)-(OIPC)複合物との相対的伝導性の比較を示す。百分率で示される相対的伝導性は、トン/cm
2として測定される成型圧力に対して与えられている。(LPS)-(OIPC)複合物は、(LPS)と比較して、より低い圧力において、最も顕著には2~4トン/cm
2という低い印加圧力からでも、より高い相対的伝導性に達することができる。たとえば、(LPS)-(OIPC)複合物を3トン/cm
2で加圧する場合と類似する相対的伝導性を達成するために、(LPS)に対して4トン/cm
2を超える圧力が使用され得る。
【0032】
図5は、本開示の一実施形態に係る(LPS)と(LPS)-(OIPC)複合物との相対密度の比較を示す。実施例5中に記載されるとおり、様々な成型圧力で加圧した(LPS)およびLSP-OIPC複合物ペレット105について幾何学的測定値をとる。顕著なことには、(LPS)-(OIPC)複合物は、(LPS)と比較した場合に、より低い圧力においてより高い相対密度に達することができる。
図5は、成型圧力が低く0.5トン/cm
2またはそれ以上である場合に、(LPS)-(OIPC)複合物の相対密度が比較的高いことを実証する。たとえば、(LPS)-(OIPC)複合物を1.5トン/cm
2で加圧する場合と類似する相対密度を達成するために、6トン/cm
2を超える圧力、または(LPS)-(OIPC)の場合の4倍を超える圧力が、(LPS)に対して使用され得る。要約すると、印加圧力下においてペレット105を加圧して所望の相対密度を達成することによって、固体電解質の力学的特性および伝導性を改善することができる。
【0033】
図6Aおよび
図6Bは、本開示の一実施形態に係るペレット105の相対密度をSEM画像によって示す。実施例6中に記載されるとおり、(OIPC)および(LPS)の改善された伝導性および密度は、粉末を十分に混合してペレット105全体にわたって混合物を均一としたことに起因する。これによって、SEM画像中において証拠が示されているコアシェル構造形態が形成され、ここでは、リチウムイオンが伝導できない空隙が減少している。
図6Aは、2トン/cm
2で加圧した(LPS)粉末のSEM画像を示し、硫黄元素(紫色)のEDSは(LPS)の位置を示しており、これは空隙の存在を視覚的に実証する。
図6Bは、同じ圧力2トン/cm
2で加圧した(LPS)-(OIPC)複合粉体のSEM画像を示し、硫黄元素(緑色)のEDSは(LPS)の位置を示し、ホウ素元素(青色)のEDSは(OIPC)の位置を示す。
図6Bは、(OIPC)が(LPS)中の空隙に浸入でき、したがって材料の相対密度を改善でき、本質的に(LPS)粒子間の橋架けを形成できることを実証する。この、比較的高い相対密度を有するコアシェル構造形態によれば、(LPS)の場合よりも低い成型圧力において、(LPS)-(OIPC)複合物の改善された伝導性が導かれる。
【0034】
図7は、本開示の一実施形態に係る(LPS)-(OIPC)複合物を製造するためのフロー図を示す。工程S701において、(LPS)-(OIPC)の混合物を提供する。たとえば、(LPS)とxモル%の(OIPC)との混合物(ここで、x=1~50)を提供する。工程S703において、(LPS)-(OIPC)混合物を加熱して、(LPS)-(OIPC)複合物を形成する。たとえば、(LPS)-(OIPC)混合物を100℃~225℃の温度に加熱する。工程S705において、(LPS)-(OIPC)混合物を加圧下において加圧する。たとえば、圧力は5トン/cm
2未満である。たとえば、圧力は3トン/cm
2未満である。たとえば、圧力は、好ましくは2トン/cm
2である。上述される工程を、上記および
図7中に記載および番号表記されるとおりに進める必要はなく、代わりに別の順序で行ってもよいことが理解され得る。たとえば、さらに別の形態の加熱加圧によって、混合物を加圧下において加圧し、続いて加熱して、(LPS)-(OIPC)複合物を形成してもよい。(LPS)-(OIPC)複合物の形成後、(LPS)-(OIPC)複合物を電極に電気的に接続して、電池内において電解質として使用してもよい。顕著なことには、(LPS)-(OIPC)複合物は、高いリチウムイオン伝導性を呈しながらも改善された力学的ストレス安定性を有して含む。
【0035】
一実施形態において、本開示は、
リチウム金属またはリチウム合金金属アノードと、
式(I)の固体電解質と、
カソードとを含有する固体リチウム電池であって、
(LPS)a(OIPC)b (I)
式中、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式(II):
xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiX (II)
の材料からなる群より選択される材料であり、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi2S、P2S5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値であり;ならびに(OIPC)は、カチオンとクロソボランクラスターアニオンとの塩である、固体リチウム電池を提供する。OIPCカチオンおよびクロソボランクラスターアニオンの組成は、上述されるとおりである。
【0036】
アノードは、集電体と、集電体上に電極活性層とを備えてもよく、ここで、電極活性層はリチウム金属またはリチウム金属合金を備える。集電体は、集電体構成要素として従来から使用されている任意の伝導性金属または伝導性ポリマーであってよい。
【0037】
カソードは、たとえば、酸化リチウムコバルト(LiCoO2)、酸化リチウムマンガン(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、およびリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物などの複合リチウム金属酸化物を含むがこれらに限定されない、リチウムイオン電池中において従来から使用されている任意のものであってよい。また、その他の活性カソード材料は、硫黄元素、セレンおよびテルルなどのその他のカルコゲナイド、ならびに金属硫化物複合物を含んでもよい。カソードは、当技術分野において従来から周知されている方法に従って構築してもよく、導電性炭素およびバインダを含んでもよい。また、カソードは、銅、アルミニウム、およびステンレス鋼などの集電体を含んでもよい。
【0038】
特殊な一態様においては、活性カソード材料は、基本的な活性成分として硫黄元素を備えてもよい。バインダおよび導電性炭素材料などの、従来から周知されている添加剤が含まれてもよい。
【0039】
よって、別の一実施形態において、本開示は、固体電解質リチウム電池を製造する方法であって、
リチウム金属またはリチウム合金金属アノードを提供する工程と、
カソードを提供する工程と、
電解質を提供する工程とを含み、電解質を提供する工程は、
(LPS)とxモル%の(OIPC)との混合物を提供する工程であって、x=1~50である、工程と、
混合物を、(OIPC)の融解温度と(LPS)の結晶化温度との間の温度において、あらかじめ定められる長さの時間にわたって加熱する工程と、
混合物を、あらかじめ定められる圧力で加圧する工程とを含み、
aおよびbの各々は、a+bが100%となるような1%~99%の質量%値であり;
(LPS)は、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiXの材料からなる群より選択される材料である、方法を提供する。
【0040】
アノードは、集電体と、集電体上に電極活性層とを備え、ここで、電極活性層は、リチウム金属またはリチウム金属合金を備える。集電体は、集電体構成要素として従来から使用されている任意の伝導性金属または伝導性ポリマーであってよい。
【0041】
カソードは、たとえば、酸化リチウムコバルト(LiCoO2)、酸化リチウムマンガン(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、およびリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物などの複合リチウム金属酸化物を含むがこれらに限定されない、リチウムイオン電池中において従来から使用されている任意のものであってよい。また、その他の活性カソード材料は、硫黄元素、セレンおよびテルルなどのその他のカルコゲナイド、ならびに金属硫化物複合物を含んでもよい。カソードは、当技術分野において従来から周知されている方法に従って構築してもよく、導電性炭素およびバインダを含んでもよい。また、カソードは、銅、アルミニウム、およびステンレス鋼などの集電体を含んでもよい。
【0042】
特殊な一態様において、活性カソード材料は、基本的な活性成分として硫黄元素を備えてもよい。バインダおよび導電性炭素材料などの、従来から周知されている添加剤が含まれてもよい。
【実施例】
【0043】
実施例1_(LPS)の合成:
LPSは、Li3PS4、Li7P3S11、Li10GeP2S11、および式(II):xLi2S・yP2S5・(100-x-y)LiXの材料からなる群より選択される材料であり、式中、XはI、Cl、またはBrであり、xおよびyの各々は、x+yが75%~100%となりLi2S、P2S5、およびLiXの総質量%が100%となるような33.3%~50%の質量%値である。出発原料であるLi2S、P2S5、およびGeS2を、1~7日間ボール粉砕する。
【0044】
実施例2_(OIPC)の合成:
可撓性および/または非対称の置換基を有する有機カチオンに基づく塩を、CB11H12
-、CB9H10
-、またはB12H12
2-などのクロソボランアニオンと組み合わせる。カチオンは、アンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、およびホスホニウムに基づくものであってよい。得られる材料を、LiCB11H12またはLiCB9H10などのLi塩でドープする。異なる種類のクロソボロンクラスター塩と有機カチオンとの対を、ボロンクラスター塩(制限的ではなく典型的には、アルカリカチオンまたは土類アルカリカチオンとの対で)の溶液と、有機カチオン塩(制限的ではなく典型的には、ハロゲン化物アニオンとの対で)の溶液との塩メタセシスによって合成する。水混和性溶媒中におけるこれら2種の塩の組み合わせに、過剰量の水を添加すると、クロソボロンクラスターの有機塩が固体析出物として分離して、ろ過または遠心分離などの周知される方法によって単離できる。
【0045】
実施例3_(LPS)-(OIPC)複合物の合成:
(LPS)-(OIPC)の複合物を、融解拡散プロセスによって合成する。まず、(LPS)粉末およびxモル%の(OIPC)粉末(ここで、x=1~50)を、乳鉢中で組み合わせる。次いで、得られる混合物を、(OIPC)の融解温度(100℃)と(LPS)の結晶化(225℃)との間で加熱する。この範囲をT
xとよぶ。
図1Aは、乳鉢で混合した試料のDSCを示す。複合物についての加熱範囲T
xの例が示される。
図2Bは、T
xにおいて1~10時間加熱した後の複合物のDSCを示す。このDSCは
図1Aと同一であり、(OIPC)および(LPS)の分解は観察されない。
【0046】
複合物の形態は、均一な混合物および均一な加圧ペレットの生成に関連する。融解拡散複合物の形態は、(OIPC)材料が(LPS)粒子を取り囲んでいるコアシェル構造である。
図2は、(LPS)、(OIPC)、および融解拡散複合物のSEM画像を示す。硫黄元素のEDSマッピングは(LPS)中における硫黄の位置を示し、ホウ素元素のEDSマッピングは(OIPC)中におけるホウ素の位置を示す。これらの組み合わせは、コアシェル形態の形成の証拠である。
【0047】
実施例4_(LPS)-(OIPC)複合物の伝導性
(LPS)-(OIPC)複合物を形成することによって、比較的低い成型圧力における伝導性が改善される。よって、この特性を測定するために、(LPS)および(LPS)-(OIPC)複合物に対して伝導性測定を行なう。まず、80~300mgの(LPS)または(LPS)-(OIPC)複合物を、1~6トンの圧力で低温加圧して、直径1.128cmのペレットとした。EISおよびブロッキング電極を使用して伝導性測定を行なった。概略図が
図3A中に示される。
図4は、(LPS)および(LPS)-(OIPC)複合物の相対的伝導性(百分率)および成型圧力(トン/cm
2)の比較を示す。顕著なことには、複合混合物は、比較的低い圧力で比較的高い相対的伝導性に達することができる。
【0048】
実施例5_(LPS)-(OIPC)複合物の相対密度
(LPS)-(OIPC)を形成する目的は、比較的低い成型圧力での加圧ペレットの相対密度の改善である。よって、この特性を測定するために、幾何学的測定を行なって、異なる成型圧力で加圧した(LPS)および(LPS)-(OIPC)複合物の相対密度を計算する。
図5は、(LPS)および(LPS)-(OIPC)複合物の相対密度(百分率)および成型圧力(トン/cm
2)の比較を示す。顕著なことには、複合物は、比較的低い圧力で比較的高い相対密度に達することができる。
【0049】
実施例6_改善された伝導性および相対密度のメカニズム
改善された伝導性および密度のために、粉末化した材料を加圧した後でペレット全体が均一となるように、(OIPC)および(LPS)をよく混合する。コアシェル形態は、均一なペレットを形成するために重要である。
図6Aは、2トン/cm
2で加圧した(LPS)粉末を示すSEM画像である。硫黄のEDSは(LPS)の位置を示す。これらSEM画像およびEDSは、ペレットが多くの空隙を含有することを示す証拠である。
図6Bは、2トン/cm
2で加圧した(LPS)-(OIPC)複合粉体を示すSEM画像である。硫黄のEDSは(LPS)の位置を示し、ホウ素のEDSは(OIPC)の位置を示す。これらSEM画像およびEDSは、(OIPC)が(LPS)粒子間の空隙を充填でき、したがって伝導性および相対密度を改善できることを示す。
【0050】
以上の記載は、当業者による本発明の実施および使用を可能とするために提示されるものであり、特定の用途およびその要件の文脈において提供される。好ましい実施形態に対する様々な変更が当業者には明らかであり、本明細書中に定義される一般的原理は、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用し得る。よって、本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、本明細書中に開示された原理および特徴と一致するような最も広い範囲が与えられるものである。この点において、本発明の範囲内における特定の実施形態は、広く考えた場合の本発明のすべての利益を示していない可能性がある。
【国際調査報告】