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特表2022-551030カラーゾーンを有するマイクロ光学セキュリティデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】カラーゾーンを有するマイクロ光学セキュリティデバイス
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/364 20140101AFI20221130BHJP
   B42D 25/45 20140101ALI20221130BHJP
【FI】
B42D25/364
B42D25/45
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511292
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020047038
(87)【国際公開番号】W WO2021034955
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/888,957
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/996,718
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516166085
【氏名又は名称】クレイン アンド カンパニー、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケイプ、サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴズネル、ジョナサン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレイマン、ベンジャミン イー.
(72)【発明者】
【氏名】カウワン、ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン、ニコラス ジー.
(72)【発明者】
【氏名】トゥール、ライアン
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB02
2C005HB10
2C005HB13
2C005JB40
2C005KA02
2C005LA08
(57)【要約】
ゾーン毎の色遷移を有するマイクロ光学セキュリティデバイス(100)は、集光素子(140)の平面アレイと、画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する複数の保持構造(710)を有する画像アイコン層(120)と、を含む。セキュリティデバイスは画像アイコンの第1のゾーン(350)をさらに含み、画像アイコンの第1のゾーンは、第1の色の硬化した着色材料を含む複数の保持構造の第1の所定のサブセットを有する。また、マイクロ光学セキュリティデバイスは、複数の保持構造の第2の所定のサブセットを含む画像アイコンの第2のゾーン(360)を含み、複数の保持構造の第2の所定のサブセットの保持構造の分離された容積は第2の色の硬化した着色材料を含み、第2の色は第1の色と対照をなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾーン毎の色遷移を有するマイクロ光学セキュリティデバイス(100)であって、
集光素子(140)の平面アレイと、
複数の保持構造を含む画像アイコン層(120)であって、前記複数の保持構造(710)は前記画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する、画像アイコン層(120)と、
前記複数の保持構造の第1の所定のサブセットを含む画像アイコンの第1のゾーン(350)であって、前記複数の保持構造の前記第1の所定のサブセットの保持構造の前記分離された容積は第1の色の硬化した着色材料を含む、画像アイコンの第1のゾーン(350)と、
前記複数の保持構造の第2の所定のサブセットを含む画像アイコンの第2のゾーン(360)であって、前記複数の保持構造の前記第2の所定のサブセットの保持構造の前記分離された容積は第2の色の硬化した着色材料を含み、前記第2の色は前記第1の色と対照をなす、画像アイコンの第2のゾーン(360)と、
を備える、マイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項2】
前記画像アイコンの第1のゾーンにおける前記第1の色の前記硬化した着色材料の深さが前記第1の深さ未満であり、
前記画像アイコンの第2のゾーンにおける前記第2の色の前記硬化した着色材料の深さが前記第1の深さ以上である、
請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項3】
前記複数の保持構造の前記第1の所定のサブセットが、前記マイクロ光学セキュリティデバイスによって提供される動的にカスタマイズされたディスプレイに対応する、請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項4】
前記マイクロ光学セキュリティデバイスによって提供される前記動的にカスタマイズされたディスプレイが、前記マイクロ光学セキュリティデバイスの固有の英数字識別子を含む、請求項3に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項5】
前記動的にカスタマイズされたディスプレイが、前記画像アイコンの第1のゾーン及び前記画像アイコンの第2のゾーンからの画像アイコンを含む、請求項3に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項6】
前記第1の色の着色材料が前記画像アイコンの第2のゾーンから除去される、請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項7】
前記第1の深さ以上の深さで配置され、前記複数の保持構造の少なくとも一部と位置合わせされた硬化着色材料の層をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項8】
前記集光素子の平面アレイの集光素子が屈折集光素子であり、
前記画像アイコン層が前記集光素子の平面アレイの焦点面に近接して配置されている、
請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項9】
前記集光素子の平面アレイの集光素子が反射集光素子であり、
前記画像アイコン層が前記集光素子の平面アレイの焦点面に近接して配置されている、
請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項10】
前記集光素子の平面アレイの各集光素子がフットプリントを有し、
前記画像アイコンの第1のゾーンは、前記画像アイコンの第1のゾーンが所定の視野角範囲で可視である集光素子の第1のサブセットのフットプリントの部分に対応する、
請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項11】
前記第1の色の前記硬化した着色材料が、発光ダイオード(LED)ランプの発光スペクトルの光波長に反応して重合する光硬化性インクを含む、請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項12】
前記複数の保持構造の第3の所定のサブセットを含む画像アイコンの第3のゾーンをさらに備え、前記複数の保持構造の第1の所定のサブセットの保持構造の前記分離された容積は第3の色の硬化した着色材料を含み、前記第3の色は前記第1の色及び前記第2の色と対照をなす、請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項13】
集光素子の平面アレイの集光素子を通して見たときに、前記画像アイコンの第2のゾーンの1つ以上の画像アイコンに近接する前記画像アイコンの第1のゾーンの1つ以上の画像アイコンが第3の色の領域として現れるように、前記画像アイコンの第1のゾーンの前記1つ以上の画像アイコンが前記画像アイコンの第2のゾーンの前記1つ以上の画像アイコンに近接して配置され、
前記第3の色が前記第1の色及び前記第2の色の混合物である、
請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項14】
前記画像アイコンの第1のゾーンの画像アイコン及び前記画像アイコンの第2のゾーンの画像アイコンは、前記集光素子の平面アレイの集光素子に対して共通の位相関係に関連付けられた画像アイコン層内の位置を占め、
前記集光素子の平面アレイの集光素子を通して見たときに、前記画像アイコンの第1のゾーンの前記画像アイコン及び前記画像アイコンの第2のゾーンの前記画像アイコンは、視野角の範囲にわたって外観が変化する動的視覚効果を示し、
前記集光素子の平面アレイの集光素子に対する前記画像アイコンの第1のゾーン及び第2のゾーンの前記共通の位相関係は、前記動的視覚効果の前記外観に連続的な変化を生じる、
請求項1に記載のマイクロ光学セキュリティデバイス。
【請求項15】
マイクロ光学セキュリティデバイスを作製する方法であって、
マイクロ光学セキュリティデバイス(100)の画像アイコン層(120)に第1の色の未硬化着色材料の層を塗布することであって、前記画像アイコン層は、前記画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する複数の保持構造(710)を含む、前記第1の色の未硬化着色材料の層の塗布と、
前記第1の色の未硬化着色材料が前記第1の深さ以下の深さで前記画像アイコン層の前記保持構造に残るように前記画像アイコン層を掻き取ることと、
前記画像アイコン層の第1のゾーンに第1のパターンの光を向けることによって前記第1の色の未硬化着色材料の層を選択的に硬化させ、画像アイコンの第1の配列(350)を形成することと、
前記第1の色の未硬化着色材料を除去することと、
を含む、前記方法。
【請求項16】
前記画像アイコン層をドクターブレードで掻き取るか、
前記未硬化着色材料をスプレー洗浄で除去するか、又は
前記第1のパターンの光を前記画像アイコン層に直接向ける、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
DLP UVプロジェクタ、LEDプロジェクタ、又はUVレーザからのラスタ化投影を用いて前記第1の色の未硬化着色材料を選択的に硬化させることをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記マイクロ光学セキュリティデバイスの前記画像アイコン層に、前記第1の色と対照をなす第2の色の未硬化着色材料の層を塗布することと、
前記画像アイコン層を掻き取ることと、
前記第2の色の未硬化着色材料を硬化させることと、
をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記第2の色の前記未硬化着色材料の層をフラッド硬化させるか、又は
前記画像アイコン層の第2のゾーンに第2のパターンの光を向けることによって前記第2の色の前記未硬化着色材料の層を選択的に硬化させ、画像アイコンの第2の配列を形成することと、
前記第2の色の未硬化着色材料を除去することと、
をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記第1の色及び前記第2の色と対照をなす第3の色の未硬化着色材料の層を前記画像アイコン層に塗布することと、
前記第3の色の前記未硬化着色材料の層を硬化させることと、
をさらに含む、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、紙幣、パスポート及びチケットなどの保護文書及び/又は価値の高い文書の偽造防止に関する。より具体的には、本開示は色のゾーンを有するマイクロ光学セキュリティデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ光学セキュリティデバイス、すなわち、マイクロスケールの集光素子のアレイと、集光素子の焦点面における画像アイコンの配列(例えば、着色材料のサブマイクロスケール領域)とを備え、これらが協働して1つ以上の特徴的な視覚効果(例えば、3次元の外観を有する合成画像)をもたらすデバイスは、貨幣やパスポートのような有価文書の真正性について信頼できる視覚的な指標(indicia)を提供するのに概ね有効であることがこれまでにわかっている。
【0003】
文書の真正性の視覚レベルの(すなわち、紙幣設備関連メーカー(「BEM」)のデバイスや他の特殊な機械ではなく、人間の目で検出可能な)指標としてのマイクロ光学セキュリティデバイスの性能及び有効性は、少なくとも部分的には、視覚的にユーザの注意を引く視覚効果をマイクロ光学セキュリティデバイスがどの程度もたらすか、そしてセキュリティデバイスの外観やセキュリティデバイスによってもたらされる視覚効果がどの程度柔軟で更新及び修正に適しているかに依存しうる。例えば、(画像アイコン層の焦点が合っていないときに生じうる)くすんだ色やぼやけた特徴を有する合成画像はユーザによって見落とされることが多く、気付かれないまま偽造紙幣が流通する可能性を高めてしまう。同様に、セキュリティデバイスに変更を行うことによって製造プロセスの高価な再編成や時間のかかる再編成が必要になった場合、セキュリティ文書(例えば紙幣)に用いられるセキュリティデバイスの更新と修正の間の間隔がより長くなり、悪意のある人物が偽造品の試作及び開発を行う時間と機会が多くなってしまう。
【0004】
従って、マイクロ光学セキュリティデバイスを視覚的により注意を引くようなものにすることと、このようなデバイスを動的な調整や再設計により適応したものにするためのプロセスは、マイクロ光学セキュリティデバイス及びその製造方法の分野において、依然として技術的課題及び改善の機会の源となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、色のゾーンを有するマイクロ光学セキュリティデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の実施形態において、ゾーン毎の(zonal)色遷移を有するマイクロ光学セキュリティデバイスは、集光素子の平面アレイと、複数の保持構造を含む画像アイコン層であって、複数の保持構造は画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する、画像アイコン層と、複数の保持構造の第1の所定のサブセットを含む画像アイコンの第1のゾーンであって、複数の保持構造の第1の所定のサブセットの保持構造の分離された容積は第1の色の硬化した着色材料を含む、画像アイコンの第1のゾーンと、複数の保持構造の第2の所定のサブセットを含む画像アイコンの第2のゾーンであって、複数の保持構造の第2の所定のサブセットの保持構造の分離された容積は第2の色の硬化した着色材料を含み、第2の色は第1の色と対照をなす、画像アイコンの第2のゾーンと、を備える。
【0007】
第2の実施形態において、マイクロ光学セキュリティデバイスを作製する方法は、マイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層に第1の色の未硬化着色材料の層を塗布することであって、画像アイコン層は、画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する複数の保持構造を含む、第1の色の未硬化着色材料の層の塗布と、第1の色の未硬化着色材料が第1の深さ以下の深さで画像アイコン層の保持構造に残るように画像アイコン層を掻き取ることと、を含む。この方法は、画像アイコン層の第1のゾーンに第1のパターンの光を向けることによって第1の色の未硬化着色材料の層を選択的に硬化させ、画像アイコンの第1の配列を形成することと、第1の色の未硬化着色材料を除去することと、をさらに含む。
【0008】
第3の実施形態において、マイクロ光学セキュリティデバイスを製造する方法は、第1の色の未硬化着色材料の第1の量をマイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層の第1の領域に選択的に塗布することを含み、画像アイコン層は、画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する複数の保持構造を含む。この方法は、第2の色の未硬化顔料材料の第2の量をマイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層の第2の領域に選択的に塗布することであって、第2の領域の少なくとも一部は画像アイコン層の表面の湿潤境界に沿って第1の領域の少なくとも一部と接触する、第2の色の未硬化着色材料の第2の量の選択的塗布と、第1の色の未硬化着色材料が画像アイコン層の第1のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められ、第2の色の未硬化着色材料が画像アイコン層の第2のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められるように画像アイコン層を掻き取ることと、をさらに含む。また、この方法は第1の色の未硬化着色材料及び第2の色の未硬化着色材料を硬化させることを含み、画像アイコン層の第1のゾーン及び画像アイコン層の第2のゾーンが、湿潤境界の位置に近接する画像アイコン層の領域に沿って接する。
【0009】
他の技術的特徴は、以下の図面、説明及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかであろう。
【0010】
以下の詳細な説明を始める前に、本特許文書全体を通して使用される特定の単語及びフレーズ(句・言い回し)の定義を記載することが好都合となりうる。「結合する」という用語及びその派生語は、2つ以上の要素が互いに物理的に接触しているか否かにかかわらず、これらの要素間の任意の直接的又は間接的な連絡を指す。「含む」及び「備える」という用語、ならびにこれらの派生語は、制限のない包含を意味する。「又は」という用語は包括的であり、及び/又はを意味する。「~に関連する」というフレーズ、及びその派生語は、~を含む、~内に含まれる、~と相互接続する、~を収容する、~内に収容される、~に接続する、~に結合する、~と連絡可能である、~と協働する、~を挟む、~を並置する、~に近接する、~に結合される、~を有する、~の特性を有する、~と関係を有する、などを意味する。特定のコントローラに関連する機能は、ローカルであるかリモートであるかにかかわらず、集中型でも分散型でもよい。「~のうちの少なくとも1つ」というフレーズは、項目のリストと共に使用される場合、列挙される項目のうちの1つ以上の異なる組合せを使用してもよく、リスト内の1つの項目のみが必要となる場合があることを意味する。例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つ」は、A、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、ならびにA及びB及びCの組み合わせのいずれかを含む。
【0011】
他の特定のフレーズの定義は本特許文書全体を通して提供される。殆どではないにしても多くの場合において、このような定義が、このように定義された単語及びフレーズの従来の使用及び将来の使用に適用されることを当業者は理解するはずである。
【0012】
本開示及びその利点をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学システムの一例を示す。
図2A】本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイス内のマイクロ光学セルを上からの分解斜視図で示す。
図2B】本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイス内のマイクロ光学セルを下からの分解斜視図で示す。
図3A】本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図3B】本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図3C】本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図3D】本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図3E】本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図3F】本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図4】本開示の種々の実施形態による、未硬化着色材料の領域をゾーン毎に(zonally)硬化させるための装置の態様を示す。
図5】本開示の種々の実施形態による、ゾーン毎に硬化させたマイクロ光学セキュリティデバイスの製造方法の動作を示す。
図6A】本開示の種々の実施形態による構造化画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図6B】本開示の種々の実施形態による構造化画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図6C】本開示の種々の実施形態による構造化画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図6D】本開示の種々の実施形態による構造化画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図6E】本開示の種々の実施形態による構造化画像アイコン層のセクションの構造及び製造の態様を示す。
図7】本開示の特定の実施形態による、画像アイコン層内のゾーン間の鮮明な色遷移を保存する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する図1図7、及び本特許文書における本開示の原理を説明するために使用される種々の実施形態は単に例示のためにすぎず、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0015】
図1は、本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学システム100の一例を示している。
【0016】
図1の非限定的な例を参照すると、マイクロ光学システム100は、基本的なレベルにおいて、(例えば集光素子107を含む)集光素子の平面アレイ105と、(例えば画像アイコン121を含む)画像アイコンの配列120とを含む。種々の実施形態によると、集光素子の平面アレイ105の各集光素子はフットプリント(実装面積)を有し、そのフットプリントには画像アイコンの配列120の1つ以上の画像アイコンが配置されている。特定の実施形態において、画像アイコンの配列120内の各集光素子の各々のフットプリント内の画像アイコンの位置は、画像アイコン層内の保持構造間のスペースに対応する。いくつかの実施形態によると、集光素子の平面アレイ105の解像度(例えば、1×1mmボックスなど指定された領域に設けられた集光素子の数)の、画像アイコンの配列120の解像度(例えば、指定された領域に設けられた集光素子の数)に対する比は1以上である。非限定的な例として、画像アイコンの配列120内の各画像アイコンは複数の集光素子のフットプリントに属してもよい。さらなる非限定的な例として、指定された領域内の全ての集光素子のフットプリント内に画像アイコンがあるわけではない。さらに、本開示によるいくつかの実施形態では、画像アイコンの配列120の解像度に対する集光素子の平面アレイ105の解像度の比が1未満の値を有してもよい。非限定的な例として、特定の集光素子のフットプリント内に複数の画像アイコンがあってもよい。言い換えると、本開示の実施形態によるゾーン毎に硬化させた着色材料のゾーンをサブ集光素子及びマルチ集光素子の規模にすることができる。本開示において用いられるように、「未硬化着色材料」は、硬化光(例えば紫外線硬化光)の照射により誘導される化学反応を受けて湿潤した未硬化状態からより剛性の高い乾燥状態に遷移するポリマーインク、着色ポリマー及び染料ベースのインクを包含する。
【0017】
特定の実施形態によると、複数の集光素子105はマイクロ光学集光素子の平面アレイを含む。いくつかの実施形態において、集光素子の平面アレイ105の集光素子は、屈折率の異なる領域(例えばポリマーレンズ材料と空気)の間に湾曲した界面を提供するレンズ表面を有するマイクロ光学屈折集光素子(例えば平凸レンズ又はGRINレンズ)を含む。集光素子の平面アレイ105の屈折集光素子は、いくつかの実施形態では1.35~1.7の範囲の屈折率を有する光硬化樹脂から製造され、5μm~200μmの範囲の直径を有する。種々の実施形態において、集光素子の平面アレイ105の集光素子は、直径が5μm~50μmに及ぶ反射集光素子(例えば、非常に小さな凹面鏡)を含む。この説明のための例では、集光素子の平面アレイ105の集光素子は円形の平凸レンズを含むものとして示されているが、他の屈折レンズ形状、例えばレンチキュラーレンズが可能であり、本開示の想定範囲内にある。
【0018】
図1の説明のための例に示すように、画像アイコンの配列120は、集光素子の平面アレイ105の集光素子のフットプリント内の所定の位置に配置された(画像アイコン121を含む)画像アイコンのセットを含む。種々の実施形態によると、画像アイコンの配列120の個々の画像アイコンは、構造化された画像アイコン層の保持構造によって画定されるスペースに、ゾーン毎に光硬化させた材料の領域を含む。本開示で使用されるように、「構造化された画像層」という用語は、画像アイコン材料を配置して保持するための構造(例えば、凹部、柱、溝又はメサ)を含むようにエンボス加工されたか又は他の方法で形成された材料(例えば光硬化性樹脂)の層を包含する。特定の実施形態によると、画像アイコンの配列120は、マイクロ光学セキュリティデバイス100の画像アイコン構造の動的な再設計及び再構成を容易にするように構築されている。例えば、画像アイコンの配列120は、いくつかの実施形態において、保持構造(図1に示すように、正方形のウェル)を1つ以上の色の未硬化着色材料で選択的に充填して硬化させ、色の領域、すなわちゾーンを画像アイコンの配列120内に生成することによって形成される。この非限定的な例では、画像アイコンの配列120内の異なる色は、集光層に最も近い画像アイコンの表面上の異なる充填パターンによって表される。例えば、画像アイコン121はその列の画像アイコンと同じ色を有するものとして示されている。
【0019】
図1の説明のための例に示すように、特定の実施形態において、マイクロ光学システム100は光学スペーサ110を含む。種々の実施態様によると、光学スペーサ110は、集光素子の平面アレイ105の集光素子の焦点面内又はその周囲に画像アイコンの配列120の画像アイコンを配置するよう機能するほぼ透明な材料のフィルムを含む。本開示による特定の実施形態において、光学スペーサ110は製造基板を含み、これに光硬化性材料の1つ以上の層を塗布し、エンボス加工し、フラッド硬化させて保持構造を形成することができ、次にこれを、ゾーン毎に硬化させた着色光硬化性材料で充填することができる。本開示で使用されるように、画像アイコン層の保持構造を充填するという文脈で使用される「充填される」という用語は、保持構造の利用可能な容積の全てを未硬化着色材料で充填することと、また、保持構造の利用可能な容積の大部分(例えば、50~80パーセント)を未硬化材料で充填することの双方を包含する。特定の実施形態において、画像アイコンの配列120を形成するために使用される光硬化性材料は紫外線(UV)硬化性の着色ポリマーである。
【0020】
本開示による特定の実施形態において、マイクロ光学システム100はシール層140を備えている。特定の実施形態によると、シール層140は、下面において集光素子の平面アレイ105の集光素子とつながるほぼ透明な材料の薄い(例えば2μm~50μmの厚さの)層を含み、(例えば、滑らかであるか、局所的な起伏の曲率半径が集光素子よりも大きな表面を有することによって)集光素子の平面アレイ105よりも曲率のばらつきが少ない上面を含む。
【0021】
図1の非限定的な例に示すように、特定の実施形態において、マイクロ光学システム100を例えば接着層130によって基板150に取り付け、セキュリティ文書160を形成することができる。種々の実施形態によると、基板150を紙幣のシート又はポリマー基板とすることができる。いくつかの実施形態によると、基板150は、ポリマーフィルムである二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)の薄い可撓性シートである。種々の実施形態において、基板150はテスリン(登録商標)などの合成紙材の一部である。いくつかの実施形態によると、基板150は、クレジットカード及び運転免許証の作成に適したタイプのポリエチレンテレフタレート(PET)ブランクのようなポリマーカード材料の一部である。
【0022】
図2A及び図2B(まとめて「図2」)は、本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイス(例えば、図1のマイクロ光学セキュリティデバイス100)内のマイクロ光学セル200を上及び下からの分解斜視図で示している。本開示で使用されるように、「マイクロ光学セル」という用語は、集光素子の平面アレイ(例えば、図1の集光素子の平面アレイ105)内の単一の集光素子に対応する、マイクロ光学セキュリティデバイスの3次元のセクションを包含する。便宜上、図2Aに提示された上からの図及び図2Bに提示された下からの図の双方において認識できるマイクロ光学セル200の構造には同様の番号を付している。
【0023】
図2の非限定的な例を参照すると、マイクロ光学セル200は、マイクロ光学セキュリティデバイス(例えば、図1のマイクロ光学セキュリティデバイス100)を形成する複数(いくつかの実施形態では数百万)のマイクロ光学セルのうちの1つである。種々の実施形態によると、マイクロ光学セル200は集光素子207を含む。この説明のための例では、集光素子207は屈折集光素子(この場合は平凸レンズ)であり、これは、光硬化性材料の層を光学スペーサ層210(例えば、製造基板としても機能する透明フィルム材料の層)に塗布し、この層をエンボス加工して集光素子207の形状と、いくつかの実施形態では追加の光学スペーサ201(「グースペーサ」と呼ぶこともある)を画定し、次に材料を光(例えばUV光)で硬化させて1つ以上の化学硬化反応を行い、マイクロ光学セキュリティデバイスでの使用に十分なロバスト性の材料の層を作製することによって形成される。
【0024】
種々の実施形態によると、マイクロ光学セル200は、構造化された画像アイコン層(例えば、図1の画像アイコンの配列120を含む画像アイコン層)のセクション220をさらに備えている。図2の非限定的な例を参照すると、構造化された画像アイコン層のセクション220は複数の保持構造(例えば保持構造230)を含み、各保持構造は第1の深さ(例えば深さ235)を有する分離された容積を画定している。本開示による種々の実施形態では、セクション220を含む画像アイコン層は集光素子207と同様の製造技術を使用して構築され、ここで未硬化の光硬化性材料の層が光学スペーサ210の面に塗布され、エンボス加工されて複数の保持構造(例えば保持構造230)が形成され、次に光源に露光されて材料中の硬化反応が活性化され、硬化した構造化画像アイコン層220が作製される。
【0025】
本開示の他の箇所で述べられるように、マイクロ光学セキュリティデバイスの性能を測定することができる程度(dimensions)には、デバイスとデバイスによって生成される光学効果とが視覚的に注意を引く程度が含まれるが、これに限定されない。マイクロ光学セキュリティデバイスが確実に「見る者の注意を引く」場合、そのようなデバイスがなかったりデバイスの外観におかしな点があったりすると、ユーザに気付かれる可能性がより高くなる。審美性が人の注意を引き、偽造防止の観点から、注意を引くことは非常に好都合となりうる。
【0026】
マイクロ光学システムによって提示される視覚効果(例えば合成画像)において、鮮明さと複数の色の存在がさらなる注意を促しうることが経験からわかっている。多くの場合、画像アイコンが適切な厚さを有し、集光素子の平面アレイの集光素子の焦点面内に配置されていると、マイクロ光学セキュリティデバイスが鮮明な視覚効果をもたらす可能性が高い。いくつかの実施形態によると、適切な画像アイコンの厚さは0.5μm~3.5μmの間の範囲の厚さを包含する。いくつかの実施形態において、適切な画像アイコンの厚さは、例えば0.5~2.5μm又は1.5~1.8μmなど、より狭い範囲の厚さを包含する。ある用途では、適切な画像アイコンは3.5μmを超えるか又は0.5μm未満の厚さを有する。「薄い」アイコン又は焦点の外れたアイコンでは、これらに限定されないが、合成画像の色(単数又は複数)が褪せたように見え、画像の詳細がぼやけて見えてしまう可能性がある。さらに、2つ以上の対照的な色である画像アイコンが画像アイコン層内にあると、マイクロ光学セキュリティデバイスによって視覚的な注意を促すことができる。しかしながら、多色の画像アイコンの実装によって技術的な課題が提起される可能性がある。複数の色を実装する1つの方法は、第1の色の画像アイコンを含む第1の画像アイコン層を、第2の色の画像アイコンを含む第2の画像アイコン層の上に重ねることである。しかしながら、このアプローチでは、第2の画像アイコン層に対する第1の画像アイコン層の位置合わせの制御や、重ねられた画像アイコン層の一方又は双方が集光素子の焦点面から外れる可能性など、多くの技術的課題が提起される。さらに、システムが合成画像を提示するように構成されている場合、集光素子に対する画像アイコン層の位置合わせの誤差によって合成画像の動的外観に「ジャンプ(飛び越し)」、すなわち不連続性を呈することがある。例えば、色の範囲において見たときに回転して色を変えるオブジェクトを含む合成画像では、集光層に対する2つの画像アイコン層間の位置合わせのばらつきにより、急激な、すなわち非連続的な遷移が色と色の間に生じたり回転の外観に生じたりすることがある。説明のための例として、視野角の変化に応じて第1の位置、第2の位置、第3の位置及び第4の位置を通って移動するマルチカラーボールの合成画像を含む動的視覚効果を考える。画像アイコン層の素子の位相が集光素子の位相に対して厳密に制御されていないと、ボールの位置間の「ジャンプ」、すなわち非連続的な遷移が生じる場合がある。ボールの合成画像の例の状況では、視野角の変化を受けてボールが合成画像に現れると、ボールが位相誤差によって第1の位置から第3の位置に「ジャンプ」し、第2の位置を飛ばしてしまうことがある。複数の色を実装するための別のアプローチは、第1の色の未硬化着色材料の領域を構造化された画像アイコン層の特定の位置に機械的に分離し、第1の色の余剰の着色材料をブレードオフ(blade off)し、画像アイコン層をフラッド硬化させ(例えば、画像アイコン層の表面全体を非選択的に露光し)、さらに1つ以上の追加の色に対してこのプロセスを繰り返すことである。1つの色の領域を反復的に適用し、デバイスからの余剰分をブレードでならし、次にデバイスをフラッド硬化させることに関連する技術的な課題は、例えば、第1の色の着色材料の量が第2の色の着色材料用に意図された画像アイコン層内の位置を占め、これを第2の色の材料の導入前にフラッド硬化によって硬化させたことに関連する汚れ及び着色を含む。第2の色の材料用に意図されたスペースに第1の色の材料を硬化させたものが存在すると、色と色の間の遷移が濁ったり、望ましくない色が入ってしまったりすることがある。
【0027】
都合のよいことに、本開示による特定の実施形態は、対照をなす2つ以上の色(例えば、赤及び緑のような2つの異なる原色、又は黒及びグレーのような同一のベースカラーの異なる濃淡)の光硬化性着色材料から形成される画像アイコンを含む。さらに、本開示による特定の実施形態は、都合のよいことに、異なる色の画像アイコン層を重ねることによって複数の色の実現を試みることに関連した技術的課題、又は異なる色のインクの領域の機械的な分離、余剰インクの除去、そしてデバイスのフラッド硬化を反復的に試みることに関連した技術的課題を回避している。代わりに、本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスによって生成される視覚効果(例えば合成画像)は、異なる色のゾーン間の鮮明な遷移と、単一の画像アイコン層内での画像アイコンの位置決めに関連する彩度の向上を示し、画像アイコンが集光素子の平面アレイの集光素子の焦点面内にあることをより確実にしている。さらに、単一の画像アイコン層内の第1の色の画像アイコンのゾーンと第2の画像アイコンのゾーンとの間に鮮明な遷移を実現することにより、集光素子の繰り返しパターン(例えば、グリッド又は六角形格子)に対する画像アイコン層のパターンの繰り返しの位相を厳密に制御することができ、視野角の変化にわたりマイクロ光学セキュリティデバイスによってもたらされる視覚効果の「ジャンプ」又は急激な変化を回避することができる。
【0028】
図2の説明のための例に示すように、画像アイコン層220の保持構造内には、第1の色の硬化着色材料を含む保持構造のサブセットを備えた画像アイコンの第1のゾーン(例えば第1の画像アイコン240)と、第2の色の硬化着色材料を含む保持構造のサブセットを備えた画像アイコンの第2のゾーン(例えば第2の画像アイコン245)とがある。
【0029】
図3A図3Fは、本開示の種々の実施形態による構造化された画像アイコン層のセクション300の構造及び製造の態様を示している。便宜上、図3A図3Fのうち1つ以上の図に共通する構造には同様の番号を付している。
【0030】
図3Aの非限定的な例を参照すると、構造化された画像アイコン層のセクション300が示されている。種々の実施形態によると、セクション300は、分離された容積を画定する複数の保持構造(例えば保持構造301)を備えている。この非限定的な例では、図3Aに示すように、構造化された画像層のセクション300の保持構造の各々は第1の深さdの正方形のウェルを含む。種々の実施形態によると、セクション300内の保持構造の形状及び深さは異なってもよい。さらに、いくつかの実施形態では、アイコン層のセクション300は構造化されていない領域、すなわち画像アイコンが他の方法によって形成されうる領域を含んでもよい。
【0031】
この説明のための例では、画像アイコンの第1のゾーンが第1の色の硬化着色材料の容積を含む保持構造のサブセットを画定する正方形の領域310が示されている。
【0032】
図3Bは、本開示の特定の実施形態による、ゾーン毎に硬化させた画像アイコン層を形成する際の動作を示している。図3の非限定的な例に示すように、第1の色の未硬化着色材料(例えばUV反応性インク)の層315が、領域310を含む構造化された画像層のセクション300の一部に塗布されている。いくつかの実施形態によると、層315は、(例えば、シャブロン又は平版印刷技術を使用することによって)領域310外の保持構造へのインクの塗布を制限しようとする方法で塗布されてもよい。図3Bの説明のための例に示されるように、いくつかの実施形態では、領域310外の保持構造からインクを機械的に取り除く努力にもかかわらず、着色材料の一部(例えば余剰インク317)が、画像アイコンの第1のゾーンを含む領域外の保持構造を占めている場合がある。本開示の他の箇所で述べられるように、本開示のいくつかの実施形態による未硬化着色材料をゾーン毎に硬化させることにより、このオーバーフロー、すなわち余剰の未硬化顔料はマイクロ光学デバイスの全体的な性能を低下させることはない。したがって、本開示のいくつかの実施態様では、第1の色の着色材料がセクション300の全体にわたって塗布される。
【0033】
図3Cは、本開示の種々の実施形態による、ゾーン毎に硬化させた画像アイコン層を形成する際の動作を示している。図3Cの非限定的な例を参照すると、第1の色の未硬化着色材料が第1の深さd以下の深さで画像アイコン層の保持構造に主に又は独占的に残るように、セクション300を含む構造化された画像アイコン層が(例えば表面にドクターブレードをかけることによって)掻き取られる。本開示に示されるように、いくつかの実施形態において、領域310外の一定の保持構造は第1の領域310の着色材料(例えば317)を有することになる。しかしながら、指定された領域の外側に未硬化の着色材料が硬化前に存在しても、色の領域間、又は明瞭で分かりやすい色の領域間に鮮明な遷移を含んだ、ユーザの注意を引く視覚効果を提供するマイクロ光学セキュリティデバイスを製造する能力は低下しないという事実が、本開示による特定の実施形態の利点として含まれることがわかっている。
【0034】
図3Dは、本開示の種々の実施形態による、ゾーン毎に硬化させた画像アイコン層を形成する際の動作を示している。本開示による特定の実施形態において、第1の領域310の範囲(area)は、構造化された画像アイコン層の保持構造における第1の色の着色材料の硬化に適した周波数又は波長のパターン化された光320を用いて選択的に、すなわちゾーン毎に硬化され、画像アイコンの第1のゾーンの画像アイコンが領域310内に生成される。特定の実施形態によると、セクション300の領域310外の範囲はゾーン毎に硬化させず、第1の色の着色材料は完全に硬化させていないとしても実質的に残る。種々の実施形態によると、領域310上に投影されるパターン化された光320は、デジタル画像(例えばマスクファイル)のUV光ピクセルを用いたUVプロジェクタのレンダリングによって提供される。いくつかの実施形態では、パターン化された光320はラスタリングUVレーザによって投影される。本開示によるいくつかの実施形態では、パターン化された光320は、セクション320を含む構造化された画像アイコン層の表面に直接投影される。特定の実施形態では、パターン化された光320は、セクション300を含むマイクロ光学セキュリティデバイスの集光素子(例えば、図1の集光素子107の平面アレイ)を通して投影される。種々の実施形態によると、集光素子を通して着色材料をゾーン毎に硬化させることにより、マイクロ光学デバイスによって提供される視覚効果の方向性(例えば、視覚効果が認識できる視野角)を制御することができる。さらに、特定の実施形態において、パターン化された光320は、集光素子を通してと、構造化された画像アイコン層上に直接の双方で投影され、ストリップによって提供される視覚効果の変化をセキュリティデバイス内で生成することができる。特定の実施形態において、パターン化された光320の基礎となるパターンを製造プロセス中に動的に、すなわち繰り返し変更することができる。例えば、いくつかの実施形態では、パターン化された光320の基礎となるパターンは紙幣のシリアル番号又はバッチ番号に対応し、これにより、各マイクロ光学セキュリティデバイスを特定の文書に特有のものとすることによって耐偽造性を高めることができる。
【0035】
図3Eは、本開示の種々の実施形態による、ゾーン毎に硬化させた画像アイコン層を形成する際の動作を示している。特定の実施形態によると、第1の色の未硬化材料の全て又はほぼ全てが領域310外の領域で除去され、第1の色の画像アイコンの第1のゾーンの画像アイコンのみが残される。特定の実施形態では、材料の未硬化顔料が穏やかな溶剤のスプレー洗浄を用いて除去され、領域310外の保持構造における第1の色の着色材料(硬化又は未硬化)が完全に又は実質的に除去される。いくつかの実施形態において、第1の色の着色材料を選択的に、すなわちゾーン毎に硬化させることによって、画像アイコン層の保持構造における画像アイコンの色の汚れ、すなわち混色の発生が実質的に低減される。都合のよいことに、このことは、異なる色の領域とクリーンな色の領域との間の鮮明な遷移によって特徴づけられる視覚効果をサポートするマイクロ光学セキュリティデバイスの製造に役立つ。
【0036】
図3Fは、本開示の種々の実施形態による、ゾーン毎に硬化させた画像アイコン層を形成する際の動作を示している。特定の実施形態では、第2、第3、第4及びさらなる色を含む1つ以上の追加の色の着色材料を用いて、図3A図3Fを参照して説明した動作を再度実行することができる。図3Fの非限定的な例を参照すると、図3A図3Fを参照して説明した動作が再度実行され、画像アイコンの第1のゾーン350及び画像アイコンの第2のゾーン360の画像アイコンが作製されている。いくつかの実施形態、例えば、画像アイコン層の全ての保持構造を硬化着色材料で充填することをセキュリティデバイスの設計で指定されている実施形態では、最終硬化ステップを、ゾーン毎の硬化ではなくフラッド硬化を用いて実行することができる。
【0037】
図4は、本開示の種々の実施形態による、未硬化着色材料の領域をゾーン毎に硬化させるデバイスの態様を示している。
【0038】
多くの場合、マイクロ光学セキュリティデバイス及びこれを組み込んだセキュリティ文書はロールツーロール製造プロセスを用いて構築され、このプロセスでは、材料のウェブが第1のロールから繰り出され、1つ以上の機械を通過する際に機械的及び物理的に処理されて第2のロールに巻き取られる。都合のよいことに、セキュリティストリップを製造するためのロールツーロール製造プロセスの一部として画像アイコン層(例えば、図3Aのセクション300を含む画像アイコン層)をゾーン毎に着色し、硬化させることができる。
【0039】
図4の非限定的な例を参照すると、マイクロ光学の画像アイコン層をゾーン毎に硬化させる装置400の要素が示されている。特定の実施形態によると、装置400はプロジェクタ401と、位置決めローラ410と、位置センサ420とを備えている。
【0040】
いくつかの実施形態では、プロジェクタ401は、移動するウェブ430が位置決めローラ410から洗浄ステーション、又は未硬化着色材料を除去するように構成された他の処理へと通過する際に光のパターン415を投影するように構成されている。特定の実施形態によると、プロジェクタ401は、UVラスタレーザ、動画プロジェクタ、又は、移動ウェブ430上の未硬化着色材料の層の部分を硬化させるのに適した波長の光の動的(例えば、移動ウェブ430と同期して移動する)パターンを投影することのできる他のデバイスを備える。図4の説明のための例に示されるように、第1の色の未硬化着色材料の層でコーティングされた移動ウェブ430は位置決めローラ410上を通過し、プロジェクタ401の投影ゾーンに入る。種々の実施形態によると、位置決めローラ410は、移動ウェブ430がプロジェクタ401の投影ゾーンに入る際に、移動ウェブ430において所定レベルの張力及び平坦度を維持するように動作する。
【0041】
図4の非限定的な例を参照すると、位置センサ420は、プロジェクタ401に対する移動ウェブ430内の基準点(例えばスコアマーク又は他の位置指標)の速度及び現在の位置を追跡し、プロジェクタ401のためのコンピュータ又は他の制御デバイスに位置データを提供する。
【0042】
種々の実施形態によると、プロジェクタ401は、移動ウェブ430がプロジェクタ401の投影ゾーンを通過する際に、第1の色の画像アイコンのゾーンに対応する硬化光のパターンを移動ウェブ430に投影するよう構成されている。特定の実施形態では、移動ウェブ430は常に移動しているため、ゾーン毎の硬化の利点を実現するために、移動ウェブ430がプロジェクタ401の投影ゾーンを通過する際に未硬化着色材料の層の同じ又はほぼ同じ領域が露光されるように、プロジェクタによって投影される光のパターン415は移動ウェブ430と同期して移動する。同様に、移動ウェブ430がプロジェクタ401の投影ゾーンを通過する際に未硬化着色材料の層の同じ又はほぼ同じ領域が露光されないように、光のパターン415が移動ウェブ430に投影される。本開示の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスのためのロールツーロール製造システムの一部として、装置400の複数の例を組み込むことができる。特定の実施形態によると、第1の色の未硬化着色材料の層が塗布されてゾーン毎に硬化され、第2の色の未硬化着色材料の層を用いるプロセスの繰り返しに備えて未硬化材料が洗い流される。
【0043】
図5は、本開示の種々の実施形態による、ゾーン毎に硬化させたマイクロ光学セキュリティデバイスを製造する方法500の動作を示している。
【0044】
図5の非限定的な例を参照すると、動作505において、第1の色の未硬化着色材料の層(例えば図3の層315)を、マイクロ光学セキュリティデバイス(例えば図1のマイクロ光学セキュリティデバイス100)の画像アイコン層(例えば図2の画像アイコン層220)に塗布する。本開示の他の箇所で述べたように、画像アイコン層を、屈折性(例えばマイクロレンズのアレイ)又は反射性(例えば湾曲マイクロミラーのアレイ)の集光素子を用いたマイクロ光学セキュリティデバイスの一部とすることができる。
【0045】
特定の実施形態によると、動作505において未硬化着色材料の層が塗布される画像アイコン層は、第1の深さを有する分離された容積を画定する複数の保持構造(例えば図2の保持構造230)を含む。いくつかの実施形態において、未硬化着色材料の層は第1の深さまで(例えば保持構造の「上部まで」)充填される。いくつかの実施形態において、塗布された層は画像アイコン層の全ての保持構造を充填する。特定の実施形態において、第1の色の未硬化着色材料の層は、例えば、シャブロン又は1つ以上の印刷技術(例えば、インクジェット、オフセット、フレキソ、スプリットファウンテン又はスクリーン印刷技術)を用いて選択的に塗布され、未硬化着色材料が画像アイコン層のいくつかの領域に塗布されるが、他の領域には塗布されない。
【0046】
図5の説明のための例に示されるように、動作510では、第1の色の未硬化着色材料が第1の深さ以下の深さで保持構造内に残るように画像アイコン層を掻き取る。例えば、本開示の図3Cに示すように、画像アイコン層の上部にある余剰の着色材料は除去され、インクは保持構造内に残る。種々の実施形態によると、動作510における画像アイコン層の掻き取りはドクターブレードを用いて行われる。本開示によるいくつかの実施形態では、1つ以上の溶液(例えば酸素抑制剤溶液)を平坦部、すなわち保持構造間の間隙領域に塗布してこれらの領域内の着色材料の硬化を防ぎ、これを洗い流すことができるようにする。
【0047】
図5の非限定的な例を参照すると、動作515では、第1のゾーン(例えば図3Aの領域310)に第1のパターンの光を向けることによって第1の色の未硬化着色材料を選択的に硬化させ、画像アイコンの第1の配列の画像アイコンを形成する。特定の実施形態によると、動作510で形成される画像アイコンは、画像アイコン層の保持構造によって画定される位置に第1の色の硬化着色材料の容積を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、動作510で行われる選択的硬化はロールツーロール製造プロセスの一部として行われ、プロジェクタ(例えば図4のプロジェクタ401)は、画像アイコン層を含む移動ウェブの動きと同期した光のパターンを投影するように構成されている。特定の実施形態では、移動ウェブの動きと同期した移動物理マスクを用いて、画像アイコン層内のゾーンを硬化光に選択的に露光する。種々の実施形態によると、動作510で行われる選択的、すなわちゾーン毎の硬化は、硬化光を画像アイコン層上に直接投影することによって行われる。特定の実施形態では、動作510において、硬化光は(例えば、マイクロ光学セキュリティデバイスの集光素子の平面アレイを通して)画像アイコン層上に間接的に投影される。
【0049】
図5の説明のための例に示されるように、動作520では、第1の色の未硬化着色材料を画像アイコン層から除去する。1つの例示的な実施形態では、動作520は画像アイコン層をスプレーステーションに通過させることによって行われ、スプレーステーションでは、構造化された画像アイコン層の保持構造から未硬化着色材料を洗い流すために穏やかな溶剤が用いられる。
【0050】
図6A図6Eは、本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスのセクション600の構造及び製造の態様を示している。便宜上、そして参照を容易にするために、図6A図6Eの2つ以上の図において認識できるセクション600の要素には同様の番号を付している。
【0051】
図6Aの非限定的な例を参照すると、本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイス(例えば図1のデバイス100)のセクションの上面図が示されている。この説明のための例では、集光素子のアレイ(例えば、図1の集光素子の平面アレイ105)の集光素子601。種々の実施形態によると、集光素子601の平面アレイの集光素子は、中心が平面六角格子の点とほぼ一直線に並ぶレンズを含む。本開示によるいくつかの実施形態では、集光素子601は反射集光素子を含み、異なるパターン(例えば正方形又は長方形の格子)に従って配列される。さらに、集光素子601が屈折集光素子である実施形態では、マイクロ光学セキュリティデバイスの構造に応じて、集光素子601は凹状又は凸状のレンズ面を様々に有することができる。
【0052】
図6Bの非限定的な例を参照すると、マイクロ光学セキュリティデバイスのセクション600の底面図が示されている。この説明のための例では、複数の保持構造(例えば保持構造607)を含む画像アイコン層605がこの底面図において認識できる。この説明のための例に示されるように、画像アイコン層605の保持構造は、集光素子601の平面アレイの集光素子と同様に平面六角格子に配列されている。さらに、図6Bの非限定的な例では、集光素子601の平面アレイの解像度は画像アイコン層605の解像度と同じか又はほぼ同じであり、1つの保持構造が各集光素子のフットプリント内に配置されている。保持構造の異なる幾何学形状、ならびに集光素子及び保持構造の異なる相対解像度を有する他の実施形態が可能であり、本開示の意図される範囲内である。
【0053】
図6Cの非限定的な例を参照すると、第1の色の未硬化着色材料609が、色の第1のゾーンを画定するように画像アイコン層605の一部に選択的に塗布されている。種々の実施形態によると、未硬化着色材料609は、最終基体(例えば紙又はポリマー基体)にインクを正確に塗布する1つ以上の技術を適用することによって選択的に塗布される。未硬化着色材料609を塗布する好適な方法の例としては、インクジェット印刷、オフセット平版印刷、直描型平版印刷、フレキソ印刷、そして未硬化着色材料609の組成を様々に変化させて画像アイコン層605を濡らす能力に関連するパラメータ(例えば親水性)を調整することが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態によると、未硬化着色材料609は保持構造から溢れ出るように塗布され、これにより、格子間(interstitial)スペース(例えば格子間領域611)が濡れ、エッジ(例えばエッジ613)を有する液体の1つ以上の凝集塊がアイコン層の表面に形成される。また、本開示による特定の実施形態では、未硬化着色材料609の1つ以上の容積(例えば容積615)が画像アイコン層605内の1つ以上の保持構造を部分的に充填してもよいことにも留意されたい。
【0054】
図6Dの非限定的な例を参照すると、特定の実施形態によれば、第1の色の未硬化着色材料609が画像アイコン層605に選択的に塗布された後、第2の色の未硬化着色材料621が、画像アイコン層605の、色の第2のゾーンに対応する領域に塗布される。種々の実施形態によると、未硬化着色材料621も同様に、保持構造を充填するだけでなく、保持構造間の格子間スペース(例えば格子間スペース623)を覆う流体の1つ以上の凝集体を生成し、また、1つ以上の境界(例えば境界625)に沿って異なる色の未硬化着色材料(例えば未硬化着色材料609)の1つ以上の凝集体と接する(meet)のに十分な量で選択的に提供される。種々の実施形態によると、第1のゾーンの保持構造は適切な深さまで未硬化着色材料609で充填されている(例えば、1μm~3μmの範囲の深さの保持構造を充填している又は実質的に充填している)ため、第2の色の未硬化着色材料621は第1のゾーンの保持構造に引き込まれることはない。したがって、本開示による特定の実施形態では、境界625は画像アイコン層上でエッジ613とほぼ同じ位置を占める。
【0055】
図6Eの非限定的な例を参照すると、本開示による特定の実施形態では、未硬化着色材料609及び未硬化着色材料621のバルク、すなわち余剰分が画像アイコン層605の格子間スペースから除去され、第1の色の未硬化着色材料609が実質的に第1のゾーン630に残り、第2の色の未硬化着色材料621が実質的に第2のゾーン635に残る。第1のゾーン630と第2のゾーン635との間の境界の周りの1つ以上の保持構造は複数色の未硬化顔料材料を含みうるが、このことは、少なくとも以下の理由により、画像アイコン層605を組み込んだマイクロ光学セキュリティデバイスによって実現される色遷移の鮮明さに大きな影響を及ぼすことはない。第1に、本開示の他の箇所で述べられるように、1つの色の無着色材料で充填された、又は大部分が充填された保持構造は、画像アイコン層の近くの領域に塗布された別の色の無着色材料を引き寄せないことが観察されている。第2に、そして本開示の図7を参照して説明されるように、いくつかの実施形態では、「ゾーン外の」無着色材料の影響を、「ゾーン外の」材料のゾーン毎の硬化又は希釈によって軽減することができる。種々の実施形態によると、未硬化着色材料609及び未硬化着色材料621は、保持構造内の材料に構造的安定性を付与する化学反応に触媒作用を起こすために硬化される。
【0056】
都合のよいことに、特定の実施形態において、複数色の未硬化着色材料を選択的に塗布して画像アイコン層の保持構造のほぼ全てを充填し、余剰分を全て除去し、そして色の複数のゾーンを一緒に硬化させることにより、未硬化着色材料の1色毎の塗布、ブレード処理及び硬化を繰り返し行うことによって得られる遷移に比べてはるかに鮮明な色の遷移が実現される。
【0057】
図7は、本開示による特定の実施形態が鮮明な色遷移を実現可能にする態様の非限定的な一組の例を示している。
【0058】
図7の非限定的な例を参照すると、本開示の特定の実施形態によるマイクロ光学デバイス700が示されている。種々の実施形態によると、マイクロ光学デバイス700は集光素子701のアレイ(例えば図6Aの集光素子601のアレイ)を含む。いくつかの実施形態において、マイクロ光学セキュリティデバイス700は光学スペーサ703(例えば図1の光学スペーサ110)をさらに含む。さらに、いくつかの実施形態において、マイクロ光学デバイス700は構造化された画像アイコン層705(例えば、図3A図3Fのセクション300を含む構造化された画像アイコン層)を備えており、これは、例えば保持構造710を含む複数の保持構造を含んでいる。
【0059】
本開示の他の箇所で述べられるように、異なる色の硬化材料を含む画像アイコンの発生が低減されるか、より好ましくは実質的になくなると、マイクロ光学デバイスによって生じる視覚効果(例えば合成画像)における、第1の色の画像アイコンの第1の領域と第2の色の画像アイコンの第2の領域との間に観察される遷移の鮮明さが向上する。
【0060】
図7の非限定的な例を参照すると、図7に示す画像アイコン層705の部分は、第1の色の第1のゾーン(図には“A”と記載)と第2の色の第2のゾーン(図には“B”と記載)との間の意図された境界711の周りの領域を含む。
【0061】
種々の実施形態によると、第1の色の未硬化着色材料715(斜線網かけで示される)は画像アイコン層に選択的に塗布される。この説明のための例に示されるように、未硬化着色材料715は第1のゾーン“A”の保持構造を主に充填するように選択的に塗布されるが、いくつかの実施形態では、未硬化着色材料715の一部(本明細書では「ゾーン外」の色とも呼ぶ)が第2のゾーン“B”の保持構造(例えば保持構造720)に存在する。
【0062】
ゾーン毎の硬化を用いる実施形態において、未硬化着色材料715からのゾーン外の色による、マイクロ光学システムの性能への影響は、ゾーン“A”の保持構造のみを硬化し、第2の色の未硬化着色材料725(クロスハッチングで図に示される)を塗布する前にゾーン“B”にあるゾーン外の未硬化着色材料715を洗い流すことができるように、画像アイコン層705をゾーン毎に硬化させることによって最小限に抑えることが可能である。
【0063】
同様に、画像アイコン層の保持構造のほぼ全てが2つ以上の色の未硬化着色材料で充填されている特定の実施形態(例えば、図6A図6Eを参照して説明した実施形態)では、ゾーン“B”にあるゾーン外の未硬化着色材料715が、マイクロ光学セキュリティデバイスによって作成される画像の外観に及ぼす影響が同様に軽減される。特定の実施形態によると、第1の色のゾーン外未硬化着色材料715を含む保持構造(例えば保持構造720)に第2の色の未硬化着色材料725が導入される際に、これらの未硬化着色材料が硬化前に混合し、「底部」(すなわち、マイクロ光学デバイスの集光素子に最も近い保持構造の部分)に2つ以上の異なる色の硬化材料のポケット又は容積を有することに関連する性能上の問題を回避することができる。
【0064】
特定の実施形態によると、第2の色の未硬化着色材料725は画像アイコン層705に選択的に塗布され、画像アイコン層705の第2のゾーン“B”の保持構造が塗布の対象とされる。特定の実施形態において、ある量の未硬化着色材料725がゾーンの外に出てゾーン“A”の保持構造(例えば保持構造710)に入る。都合のよいことに、本開示による特定の実施形態では、ゾーン外の未硬化着色材料725は、マイクロ光学システム700によって生じる視覚効果において鮮明な色遷移を実現する能力に影響を及ぼさないことがわかっている。
【0065】
例えば、未硬化着色材料725を塗布する前に第1の色の未硬化着色材料715をゾーン毎に硬化させるいくつかの実施形態では、第1の色の材料が保持構造の「底部」を占め、集光素子に最も近い画像アイコン層の部分に硬化着色材料が存在する可能性が回避される。同様に、いくつかの実施形態では、第2の色の未硬化着色材料725をゾーン毎に硬化させ、全てではないにしても多くの量のゾーン外未硬化着色材料725を洗い流すことができる。種々の実施形態において、第2の色の未硬化着色材料725をフラッド硬化させる。しかしながら、第1の色の硬化材料の存在は第2の色のゾーン外未硬化材料725を集光素子から最も遠い保持構造の部分に閉じ込め、その部分においてその存在は、マイクロ光学セキュリティデバイス700によって生じる視覚効果においてほぼ目立たないものである。
【0066】
さらなる例として、第1の色の未硬化着色材料715が最初にゾーン“A”の対象保持構造に選択的に塗布される、本開示による特定の実施形態では、未硬化着色材料715で充填されているか又はほぼ充填されている保持構造は一般に、静水圧効果のために第2の色の未硬化着色材料725を引き寄せないことが観察されている。さらに、異なる色の未硬化着色材料が保持構造に存在する場合、未硬化着色材料が混合し、保持構造の「底部」に異なる色の硬化着色材料を有することに関連する問題を回避することができる。
【0067】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、集光素子の平面アレイと、複数の保持構造を含む画像アイコン層であって、複数の保持構造は画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する、画像アイコン層と、複数の保持構造の第1の所定のサブセットを含む画像アイコンの第1のゾーンであって、複数の保持構造の第1の所定のサブセットの保持構造の分離された容積は第1の色の硬化した着色材料を含む、画像アイコンの第1のゾーンと、複数の保持構造の第2の所定のサブセットを含む画像アイコンの第2のゾーンであって、複数の保持構造の第2の所定のサブセットの保持構造の分離された容積は第2の色の硬化した着色材料を含み、第2の色は第1の色と対照をなす、画像アイコンの第2のゾーンと、を備えるマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0068】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、画像アイコンの第1のゾーンにおける第1の色の硬化着色材料の深さが第1の深さ未満であり、画像アイコンの第2のゾーンにおける第2の色の硬化着色材料の深さが第1の深さ以上である、マイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0069】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、複数の保持構造の第1の所定のサブセットが、マイクロ光学セキュリティデバイスによって提供される動的にカスタマイズされたディスプレイに対応するマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0070】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、マイクロ光学セキュリティデバイスによって提供される動的にカスタマイズされたディスプレイが、マイクロ光学セキュリティデバイスの固有の英数字識別子を含むマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0071】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、動的にカスタマイズされたディスプレイが、画像アイコンの第1のゾーン及び画像アイコンの第2のゾーンからの画像アイコンを含むマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0072】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、画像アイコンの第1のゾーンの画像アイコン及び画像アイコンの第2のゾーンの画像アイコンは、集光素子の平面アレイの集光素子に対して共通の位相関係に関連付けられた画像アイコン層内の位置を占め、集光素子の平面アレイの集光素子を通して見たときに、画像アイコンの第1のゾーンの画像アイコン及び画像アイコンの第2のゾーンの画像アイコンは、視野角の範囲にわたって外観が変化する動的視覚効果を示し、集光素子の平面アレイの集光素子に対する画像アイコンの第1のゾーン及び第2のゾーンの共通の位相関係は、動的視覚効果の外観に連続的な変化を生じるマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0073】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、第1の色の着色材料が画像アイコンの第2のゾーンから除去されるマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0074】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、第1の深さ以上の深さで配置され、複数の保持構造の少なくとも一部と位置合わせされた硬化着色材料の層をさらに備えるマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0075】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、集光素子の平面アレイの集光素子が屈折集光素子であり、画像アイコン層が集光素子の平面アレイの焦点面に近接して配置されているマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0076】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、集光素子の平面アレイの集光素子が反射集光素子であり、画像アイコン層が集光素子の平面アレイの焦点面に近接して配置されているマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0077】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、集光素子の平面アレイの各集光素子がフットプリントを有し、画像アイコンの第1のゾーンは、画像アイコンの第1のゾーンが所定の視野角範囲で可視である集光素子の第1のサブセットのフットプリントの部分に対応するマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0078】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、第1の色の硬化着色材料が、発光ダイオード(LED)ランプの発光スペクトルの光波長に反応して重合する光硬化性インクを含むマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0079】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、複数の保持構造の第3の所定のサブセットを含む画像アイコンの第3のゾーンをさらに備え、複数の保持構造の第1の所定のサブセットの保持構造の分離された容積は第3の色の硬化した着色材料を含み、第3の色は第1の色及び第2の色と対照をなすマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0080】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの例として、集光素子の平面アレイの集光素子を通して見たときに、画像アイコンの第2のゾーンの1つ以上の画像アイコンに近接する画像アイコンの第1のゾーンの1つ以上の画像アイコンが第3の色の領域として現れるように、画像アイコンの第1のゾーンの1つ以上の画像アイコンが画像アイコンの第2のゾーンの1つ以上の画像アイコンに近接して配置され、第3の色が第1の色及び第2の色の混合物であるマイクロ光学セキュリティデバイスが挙げられる。
【0081】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスを作製する方法の例として、マイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層に第1の色の未硬化着色材料の層を塗布することであって、画像アイコン層は、画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する複数の保持構造を含む、第1の色の未硬化着色材料の層の塗布と、第1の色の未硬化着色材料が第1の深さ以下の深さで画像アイコン層の保持構造に残るように画像アイコン層を掻き取ることと、画像アイコン層の第1のゾーンに第1のパターンの光を向けることによって第1の色の未硬化着色材料の層を選択的に硬化させ、画像アイコンの第1の配列を形成することと、第1の色の未硬化着色材料を除去することと、を含む方法が挙げられる。
【0082】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、画像アイコン層をドクターブレードで掻き取る方法が挙げられる。
【0083】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例としては、未硬化着色材料をスプレー洗浄で除去する方法が挙げられる。
【0084】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、DLP UVプロジェクタ、LEDプロジェクタ、又はUVレーザからのラスタ化投影を用いて第1の色の未硬化着色材料を選択的に硬化させることをさらに含む方法が挙げられる。
【0085】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、マイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層に、第1の色と対照をなす第2の色の未硬化着色材料の層を塗布することと、画像アイコン層を掻き取ることと、第2の色の未硬化着色材料を硬化させることと、をさらに含む方法が挙げられる。
【0086】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、第2の色の前記未硬化着色材料の層をフラッド硬化させることをさらに含む方法が挙げられる。
【0087】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、画像アイコン層の第2のゾーンに第2のパターンの光を向けることによって第2の色の未硬化着色材料の層を選択的に硬化させ、画像アイコンの第2の配列を形成することと、第2の色の未硬化着色材料を除去することと、をさらに含む方法が挙げられる。
【0088】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、第1の色及び第2の色と対照をなす第3の色の未硬化着色材料の層を画像アイコン層に塗布することと、第3の色の未硬化着色材料の層を硬化させることと、をさらに含む方法が挙げられる。
【0089】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、第1のパターンの光を画像アイコン層に直接向ける方法が挙げられる。
【0090】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、第1の色の未硬化着色材料の第1の量をマイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層の第1の領域に選択的に塗布することであって、画像アイコン層は、画像アイコン層内で第1の深さの分離された容積を画定する複数の保持構造を含む、第1の色の未硬化着色材料の第1の量の選択的塗布と、第2の色の未硬化顔料材料の第2の量をマイクロ光学セキュリティデバイスの画像アイコン層の第2の領域に選択的に塗布することであって、第2の領域の少なくとも一部は画像アイコン層の表面の湿潤境界に沿って第1の領域の少なくとも一部と接触する、第2の色の未硬化着色材料の第2の量の選択的塗布と、第1の色の未硬化着色材料が画像アイコン層の第1のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められ、第2の色の未硬化着色材料が画像アイコン層の第2のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められるように画像アイコン層を掻き取ることと、第1の色の未硬化着色材料及び第2の色の未硬化着色材料を硬化させることであって、画像アイコン層の第1のゾーン及び画像アイコン層の第2のゾーンが、湿潤境界の位置に近接する画像アイコン層の領域に沿って接する、第1の色の未硬化着色材料及び第2の色の未硬化着色材料の硬化と、を含む方法が挙げられる。
【0091】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、画像アイコン層をドクターブレードで掻き取る方法が挙げられる。
【0092】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、画像アイコン層をフラッド硬化させる方法が挙げられる。
【0093】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、画像アイコン層の第1のゾーン又は画像アイコン層の第2のゾーンのうちの1つ以上をゾーン毎に硬化させる方法が挙げられる。
【0094】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、インクジェット印刷、凹版印刷、シャブロン、オフセット平版印刷、直描型平版印刷、又はフレキソ印刷のうちの1つ以上を用いて第1の色の未硬化着色材料を選択的に塗布する方法が挙げられる。
【0095】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、未硬化着色材料の第3の量を画像アイコン層の第3の領域に選択的に塗布することであって、第3の色が第1の色及び第2の色と対照をなす、未硬化着色材料の第3の量の選択的な塗布と、第1の色の未硬化着色材料が画像アイコン層の第1のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められ、第2の色の未硬化着色材料が画像アイコン層の第2のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められ、第3の色の未硬化材料が画像アイコン層の第3のゾーンの保持構造に実質的に閉じ込められるように画像アイコン層を掻き取ることと、第1の色の未硬化着色材料、第2の色の未硬化着色材料及び第3の色の未硬化着色材料を硬化させることと、を含む方法が挙げられる。
【0096】
本開示の種々の実施形態によるマイクロ光学セキュリティデバイスの作製方法の例として、集光素子の平面アレイの1つ以上のレンズ面を介して第1のパターンの光を画像アイコン層に間接的に向ける方法が挙げられる。
【0097】
本願におけるいずれの説明も、特定の要素、ステップ又は機能が特許請求の範囲に含まれなければならない必須の要素であることを暗示するものと解釈されるべきではない。特許の対象は特許請求の範囲によってのみ定義される。さらに、いずれの請求項も、「~ための手段(means for)」というフレーズの後に分詞が続かない限り米国特許法第112条(f)の適用を意図するものではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
【国際調査報告】