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特表2022-551046細胞由来ベシクルを利用した唾液腺疾患予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】細胞由来ベシクルを利用した唾液腺疾患予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20221130BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20221130BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20221130BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20221130BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20221130BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221130BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20221130BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221130BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20221130BHJP
【FI】
A61K35/28
C12N5/0775
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/071
A23L33/10
C12P1/00 Z
A61P1/02
A61K35/19 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515500
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-05
(86)【国際出願番号】 KR2020011957
(87)【国際公開番号】W WO2021045567
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110816
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522088818
【氏名又は名称】エムディーイミュネ インコーポレート
(71)【出願人】
【識別番号】509160317
【氏名又は名称】インハ-インダストリー パートナーシップ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペ、シンギュ
(72)【発明者】
【氏名】オ、スンウック
(72)【発明者】
【氏名】キム、セヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、チョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョンミ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD69
4B018ME14
4B018MF14
4B064AH19
4B064CA10
4B064CC30
4B064CE06
4B064DA03
4B064DA10
4B065AA93X
4B065BD01
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB38
4C087BB63
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA67
(57)【要約】
本発明は、細胞由来ベシクルの唾液腺細胞に対する増殖能増進効果、アミラーゼ活性促進効果及び上皮透過抵抗性増進効果を利用した唾液腺治療剤に関する。本発明に係る細胞由来ベシクルを含む薬学的組成物は、放射線により損傷した唾液腺組織細胞の増殖能を増進させ、アミラーゼの活性を促進させ、上皮透過抵抗性(transepithelial resistance)を高める効果があり、アクアポリン5(Aquaporin 5)の発現を増進させ、唾液分泌量を増加させる効果がある。従って、本発明の細胞由来ベシクルを含む薬学的組成物を利用すれば、唾液腺疾患の予防及び治療用途に使用でき、医薬業界及び健康機能食品の分野で広く使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルを含む、唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記微細空隙に押出するステップは、微細空隙の大きさが大きいものから微細空隙の大きさが小さいものに順次に押出するステップである、請求項1に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記微細空隙は、直径が0.1~20μmである、請求項1に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記細胞は、中間葉幹細胞、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞、唾液腺幹細胞、腺房細胞、筋上皮細胞及び血小板からなる群から選択されたいずれか一つ以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記唾液腺疾患は、放射線照射及び放射性同位元素による唾液腺損傷、口腔乾燥症、感染性急性唾液腺炎(infectious acute sialadenitis)、感染性慢性唾液腺炎(infectious chronic sialadenitis)、唾液腺結核(tuberculosis)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、唾石症(sialolithiasis)、唾液腺症(sialadenosis)、唾液腺腫瘍及び老化による唾液腺機能低下からなる群から選択されたいずれか一つである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記細胞由来ベシクルは、唾液腺組織に処理されたとき、唾液腺細胞増殖能、唾液腺で分泌されるアミラーゼ活性または唾液腺細胞の上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)を自然分泌エクソソームに対比して増進させ、唾液分泌量を増加させるものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記唾液腺は、顎下腺、舌下腺及び耳下腺からなる群から選択されたいずれか一つである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクル(cell derived vesicle)を含む、唾液腺疾患予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項9】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルを個体に処理するステップを含む、唾液腺疾患予防または治療方法。
【請求項10】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの唾液腺疾患予防または治療用医薬としての使用。
【請求項11】
唾液腺疾患予防または治療用医薬製剤を生産するための、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞由来ベシクルの唾液腺細胞に対する増殖能増進効果、アミラーゼ活性促進効果、上皮透過抵抗性増進効果、アクアポリン5(Aquaporin 5)の発現増進及び唾液分泌量を増加させる効果を利用した唾液腺治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロベシクル(microvesicles)は、一般に、0.03~1μmの大きさを有する細胞小器官の一種であり、ほとんど全ての種類の細胞で細胞膜から自然に遊離して、細胞膜の構造である二重リン脂質(phospholipid)膜形態を有していることを特徴とする。このようなベシクルは、物質代謝、代謝物質の運送、酵素貯蔵、化学反応等のための細胞の基本道具であって、細胞間にmRNA、miRNA及びタンパク質等を伝達することで細胞間信号伝達の媒介の役割を果たすものと知られている。
一方、唾液腺は、爬虫類以上の高等脊椎動物の口腔に開口する外分泌腺の総称であり、ほとんどは粘液を分泌するが、あるものは消化液としての唾液を分泌する。哺乳類では、顎下腺、舌下腺、耳下腺があり、顎下腺と舌下腺は、哺乳類以下でもあるが、耳下腺は、哺乳類で発達したものである。三つは全て分岐複合胞状腺に属し、大きな腺塊を形成する。耳下腺は、漿液性腺細胞だけからなるが、顎下腺と舌下腺は、それと粘液性細胞からなる。両排出管の上皮は、円柱状の細胞からなる。腺体からアミラーゼ、α-D-グルコース加水分解酵素を分泌し、排出管ではNaClを分泌してアミラーゼを活性化する。唾液腺のうち主に耳下腺、ある程度は顎下腺でも腺内に分泌した物質が特定の細胞を通して血液に移行してホルモン活性を誘導すると知られている。また、このような唾液腺を大唾液腺といい、別に口腔内の数箇所にある小規模であるが唾液分泌に参加するものを小唾液腺といって区別する。
唾液腺は、消化作用を助けるアミラーゼのような酵素を分泌する重要な身体組織であるが、唾液腺組織が損傷したとき、副作用が少なく、かつ効果的な治療剤がない実情である。従って、生体由来の副作用が少ない唾液腺治療剤に対する研究開発の必要性が浮上している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明者らは、唾液腺治療に効果的な物質を探索、研究していた中で、細胞由来ベシクル(cell derived vesicle)が損傷した唾液腺の治療に効果的であることを確認し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、細胞由来ベシクルを含有する唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は、細胞由来ベシクルを含む唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、細胞由来ベシクルを含む唾液腺疾患予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
また、本発明は、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルを個体に処理するステップを含む、唾液腺疾患予防または治療方法を提供する。
また、本発明は、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの唾液腺疾患予防または治療用医薬としての使用を提供する。
また、本発明は、唾液腺疾患予防または治療用医薬製剤を生産するための、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの使用を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る細胞由来ベシクルを含む薬学的組成物は、放射線により損傷した唾液腺組織細胞の増殖能を増進させ、アミラーゼの活性を促進させ、上皮透過抵抗性(transepithelial resistance)を高める効果があり、アクアポリン5(Aquaporin 5)の発現を増進させ、唾液分泌量を増加させる効果がある。従って、本発明の細胞由来ベシクルを含む薬学的組成物を利用すれば、唾液腺疾患の予防及び治療用途に使用でき、医薬業界及び健康機能食品の分野で広く使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】放射線照射による耳下腺細胞の増殖能変化を測定した図である。
図2】放射線照射により損傷した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、増殖能の変化を測定した図である。
図3】放射線照射9日後、放射線により損傷した耳下腺細胞に対するAdMSC-CDVの増殖能増進効果を確認した図である。
図4】放射線照射により損傷した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、アミラーゼ活性変化を測定した図である。
図5】放射線照射により損傷した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、上皮透過抵抗性(Transepithelial resistance)の変化を測定した図である。
図6】放射線照射による顎下腺細胞の増殖能変化を測定した図である。
図7】放射線照射により損傷した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、増殖能の変化を測定した図である。
図8】放射線照射9日後、放射線により損傷した顎下腺細胞に対するAdMSC-CDVの増殖能増進効果を確認した図である。
図9】放射線照射により損傷した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、アミラーゼ活性変化を測定した図である。
図10】放射線照射により損傷した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、上皮透過抵抗性(Transepithelial resistance)の変化を測定した図である。
図11】放射線照射による舌下腺細胞の増殖能変化を測定した図である。
図12】放射線照射により損傷した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、増殖能の変化を測定した図である。
図13】放射線照射9日後、放射線により損傷した舌下腺細胞に対するAdMSC-CDVの増殖能増進効果を確認した図である。
図14】放射線照射により損傷した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、アミラーゼ活性変化を測定した図である。
図15】放射線照射により損傷した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを処理したとき、上皮透過抵抗性(Transepithelial resistance)の変化を測定した図である。
図16】自然分泌エクソソームに対比した中間葉幹細胞由来ベシクルの放射線により損傷した唾液腺細胞に対する増殖能を比較した図である。
図17】自然分泌エクソソームに対比した脂肪細胞由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性を比較した図である。
図18】自然分泌エクソソームに対比した臍帯由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性を比較した図である。
図19】自然分泌エクソソームに対比した中間葉幹細胞由来ベシクルの唾液腺組織が損傷したマウスモデルに対するアミラーゼ活性促進効果を比較した図である。
図20】中間葉幹細胞由来ベシクルをマウスモデルに適用した場合、唾液分泌量の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクル(cell derived vesicle)を含む唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物を提供する。
本発明の用語「細胞由来ベシクル」は、細胞から発生したベシクルをいい、一般に、細胞小器官の一種であり、ほとんど全ての種類の細胞で細胞膜から遊離して、細胞膜の構造である二重リン脂質(phospholipid)膜形態を有しているものをいう。
【0008】
本発明の細胞由来ベシクルは、マイクロメートル大きさ、例えば0.03~1μmを有し得る。本発明のベシクルは、由来した細胞の細胞膜成分からなる脂質二重膜により内部と外部が区分され、細胞の細胞膜脂質と細胞膜タンパク質、核酸及び細胞成分等を有しており、元来、細胞より大きさが小さいものを意味するが、それに制限されるものではない。
【0009】
本発明において、前記細胞は、細胞由来ベシクルの分離が可能な細胞であれば制限なく使用され得、自然界生物個体から分離された細胞であってよい。また、前記細胞は、ヒト及び非ヒト哺乳類を含む任意の類型の動物、植物由来であってよく、多様な種類の免疫細胞、腫瘍細胞、幹細胞、腺房細胞、筋上皮細胞または血小板であってよく、好ましく前記幹細胞は、中間葉幹細胞、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞及び唾液腺幹細胞からなる群から選択されたいずれか一つ以上であってよく、好ましくは、脂肪細胞由来の中間葉幹細胞または臍帯由来の中間葉幹細胞であるものであってよいが、それに制限されるものではない。
【0010】
本発明の細胞由来ベシクルは、唾液腺組織細胞の増殖能を増進させ、アミラーゼの活性を促進させ、上皮透過抵抗性(transepithelial resistance)を高める効果があり、アクアポリン5(Aquaporin 5)の発現を増進させ得るものであってよく、唾液分泌量を増加させ得るものであってよい。
【0011】
本発明のベシクルは、有核細胞を含む懸濁液を押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、化学物質処理、機械的分解及び外部的に細胞に力を加えた物理的刺激の処理からなる群から選択された方法を使用して製造できるが、それに制限されるものではない。本願発明においては、例示的に有核細胞を含む懸濁液を押出機を使用して押出する方法でベシクルを製造した。本発明の有核細胞由来ベシクルを製造するために加える押出機の押出力は、5~200psiであってよく、10~150psiであってよく、50~100psiであってよい。
【0012】
本発明の前記ベシクルは、幹細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造されるものであってよく、好ましくは、微細空隙の大きさが大きいものから微細空隙の大きさが小さいものに順次に押出するステップにより製造されるものであってよい。
本発明の前記細胞由来ベシクルは、自然状態で分泌されるエクソソームと発現するマーカー等が異なるものであってよい。
本発明の前記微細空隙の直径は、0.01~100μmのものであってよく、好ましくは、0.1~20μmのものであってよく、より好ましくは、0.4~10μmのものであってよい。
【0013】
本発明において、「唾液腺疾患」は、唾液腺組織が損傷したか炎症が発生して正常な機能が作動し難い状態であってよく、好ましくは、放射線照射及び放射性同位元素による唾液腺損傷、口腔乾燥症、感染性急性唾液腺炎(infectious acute sialadenitis)、感染性慢性唾液腺炎(infectious chronic sialadenitis)、唾液腺結核(tuberculosis)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、唾石症(sialolithiasis)、唾液腺症(sialadenosis)、唾液腺腫瘍及び老化による唾液腺機能低下からなる群から選択されたいずれか一つであってよく、より好ましくは、放射線照射及び放射性同位元素による唾液腺損傷または口腔乾燥症であってよく、前記放射性同位元素は、例えば、放射性ヨウ素であってよい。特に、顎下腺と耳下腺のような主唾液腺は、それぞれ平常唾液の分泌と刺激による唾液の分泌を担当するが、放射線及び放射性同位元素治療等の理由で放射線に唾液腺が露出すると唾液腺分泌上皮細胞に不可逆的な損傷を与えるようになり、それによって細胞間の緻密結合(tight junction)が緩くなって唾液腺細胞の上皮透過性が増加する。唾液腺細胞上皮透過性が増加するようになると、吸収されてはならない巨大分子や細菌が吸収されるか、唾液酵素であるアミラーゼの分泌、水とイオン輸送等が非正常に作用して、唾液分泌量及び唾液成分が変わり得る。本発明の細胞由来ベシクルは、細胞唾液腺細胞増殖能増進、アミラーゼ活性促進、上皮透過抵抗性増進効果及び唾液分泌量増加効果に基づいて、前記唾液腺疾患による症状を改善、治療する効果があるものであってよい。
【0014】
本発明において、前記唾液腺は、耳下腺、顎下腺または舌下腺であってよい。
本発明において、前記細胞由来ベシクルは、唾液腺疾患の予防または治療効果を奏することができる限り、剤形、配合目的等によって任意の量(有効量)で含まれ得、ここで「有効量」とは、その適用対象である哺乳動物、好ましくは、ヒトに医療専門家等の提言による投与期間の間に本発明の組成物が投与されるとき、唾液腺細胞増殖能増進効果等、意図した機能的・薬理学的効果を奏することのできる、本発明の組成物に含まれる有効成分の量をいう。このような有効量は、当業者の通常の能力範囲内で実験的に決定され得、好ましくは、1×10~1×1013particles/mlの濃度で含むことができ、より好ましくは、5×10~1×1013particles/mlの濃度で含むものであってよく、さらに好ましくは、5×10~1×1013particles/mlの濃度で含むものであってよく、より一層好ましくは、1×10~1×1013particles/mlの濃度で含むものであってよい。
【0015】
本発明の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物は、有効成分以外に、唾液腺疾患予防または治療効果の上昇・補強のために既に安全性が検証され、唾液腺疾患予防または治療効果を有するものと公知になった任意の化合物や天然抽出物をさらに含むことができる。
本発明の薬学的組成物は、それぞれ常法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾル等の経口型剤形、外用剤、坐剤及び滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用され得る。前記薬学組成物に含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、本発明の薬学的組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチン等を混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用され得る。
本発明の薬学的組成物の投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重と、治療する特定疾患または病理状態、疾患または病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって変わるだろう。このような因子に基づいた投与量の決定は、当業者の水準内にあり、一般に、投与量は、0.01mg/kg/日~略2000mg/kg/日の範囲である。さらに好ましい投与量は、1mg/kg/日~500mg/kg/日である。投与は、一日に一度投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の薬学的組成物は、マウス、家畜、ヒト等の哺乳動物に多様な経路で投与され得る。投与の全ての方式は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、ガーグリング(gargling)、口腔内の唾液腺に注射、子宮内硬膜または脳血管内注射により投与され得る。本発明の化合物は、毒性及び副作用がほとんどないので、予防の目的で長期間服用時にも安心して使用できる薬剤である。
【0016】
また、本発明は、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクル(cell derived vesicle)を含む唾液腺疾患予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
本発明の健康機能食品は、食品の製造時に通常添加される成分を含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素及び調味剤を含む。例えば、ドリンク剤に製造される場合は、有効成分として細胞由来ベシクル以外に香味剤または天然炭水化物を追加成分として含めることができる。例えば、天然炭水化物は、モノサッカライド(例えば、グルコース、フルクトース等)、ジサッカライド(例えば、マルトース、スクロース等)、オリゴ糖、ポリサッカライド(例えば、デキストリン、シクロデキストリン等)、及び糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等)を含む。香味剤として、天然香味剤(例えば、タウマリン、ステビア抽出物等)及び合成香味剤(例えば、サッカリン、アスパルテーム等)を利用できる。
本発明の健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、丸剤または液剤等の形態を含み、本発明の細胞由来ベシクルを添加できる食品としては、例えば、各種のドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、キャンディ類、スナック類、麺類、アイスクリーム、乳製品、スープ、イオン飲料、飲料水、アルコール飲料、ガム、茶及びビタミン複合剤等がある。
本発明の唾液腺疾患予防または改善用健康機能食品は、前記唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物の有効成分及び効果が同一であるため、この二つの間に共通した内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
また、本発明は、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルを個体に処理するステップを含む、唾液腺疾患予防または治療方法を提供する。
また、本発明は、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの唾液腺疾患予防または治療用医薬としての使用を提供する。
また、本発明は、唾液腺疾患予防または治療用医薬製剤を生産するための、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの使用を提供する。
本発明を以下の実施例を通して詳細に説明する。これらの実施例は、ひたすら発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
実施例1.ヒト唾液腺細胞の培養
耳下腺切除術を受ける患者の唾液腺正常組織である耳下腺(parotid gland)、顎下腺(submandibular gland)及び舌下腺(sublingual gland)を得て顕微鏡を観察下に周辺組織を除去した後、直ちに1% antibiotics含有HBSSに入れて一次培養実験する前まで4℃に保管した。本研究に使用されたヒト由来唾液腺組織は、仁荷大学病院機関生命倫理委員会で承認を受けて実験に使用された(IRB承認番号:NON2017-002)。新鮮な組織は、手術ハサミを使用して細かく切断した後、0.25% collagenase Type B(Sigma Aldrich、USA)添加して37℃で30分間処理した。得られた細胞懸濁液を70um strainerにろ過した後、1500rpmで5分間遠心分離して得られた細胞を10% FBS(ATCC、USA)と1% antibiotics(Invitrogen、USA)含有されたDMEM/F12(Invitrogen、USA)に懸濁した後、細胞培養ディッシュに細胞を移して37℃、5% COインキュベーターで培養した。
【0018】
実施例2.放射線(IR)により損傷した唾液腺組織の準備
実施例1で準備したpassage3~6で継代培養した耳下上皮細胞(parotid epithelial cells、hPECs、以下、耳下腺細胞)、舌下上皮細胞(sublingual epithelial cells、hLECs、以下、舌下腺細胞)、そして顎下上皮細胞(submandibular epithelial cells、hMECs、以下、顎下腺細胞)にlinear accelerator 4 MV X-ray(Mevatron MD、Siemens Medical Laboratory、USA)を使用して放射線を照射した。細胞によって放射線に対する感受性が異なるため、耳下上皮細胞と舌下上皮細胞は、それぞれ0、2、5Gyを照射し、顎下上皮細胞は、0、7、15Gyの放射線を照射し、37℃、5% COインキュベーターで細胞培養した。
【0019】
実施例3.脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクル(Adipose derived mesenchymal stemcell derived vesicle、AdMSC CDV)の製造
脂肪由来中間葉幹細胞から押出法を通してベシクルを製造した。幹細胞complete growth mediumで培養された中間葉幹細胞をリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline;PBS)で洗滌し、洗滌した幹細胞を0.25~1×10cells/mlの濃度としてPBSに再浮遊(resuspension)させた。押出機(extruder)で前記懸濁溶液を微細空隙の大きさが10μmであるメンブレンフィルタ(membrane filter)に通過させた後、微細空隙の大きさが5μmであるメンブレンフィルタに通過させ、次いで微細空隙の大きさが1または0.4μmであるメンブレンフィルタに通過させた。これを通して得た懸濁液にDNA除去のためにbenzonase nucleaseを入れて、37℃で90分間反応させた。DNAが除去された懸濁液の精製のためにTFF(Tangential Flow Filtration)でメンブレンカラム(membrane column)を通過させた。仮に濃縮が必要である場合、収得した懸濁液を超遠心分離(ultracentrifuge)を進行し、これを通して沈殿した層をリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline;PBS)で再浮遊した。これを0.2umメンブレンフィルタでろ過して、中間葉幹細胞由来ベシクルを収得した。
【0020】
実施例4.放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの効果確認
4.1 耳下腺細胞に放射線露出時の増殖能変化
耳下腺細胞に放射線露出時、耳下腺細胞の増殖能にどのような変化が発生するかを確認する実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した耳下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射して細胞を損傷させた。その後、放射線照射後の時間経過による増殖度の変化をCCK8 uptake assay(Dojindo、Japan)を使用して測定した。CCK8 uptake assayは、次のとおりである。前記放射線により損傷した耳下腺細胞を1×10cells/wellとして96wellにそれぞれ接種した。その後、37℃、5% COインキュベーターで1、3、6、9、12日間それぞれ培養し、10uL CCK8 reagentを添加し、37℃、5% COインキュベーターで3時間の間培養後、96 well plate reader(Dynex Revelation、Dynex Ltd、UK)を使用して490nmでの吸光度を測定して増殖能を測定した。測定された増殖能を図1に示した。
図1に示したように、0Gy、2Gy、5Gyの放射線照射後の耳下腺細胞の増殖程度を1、3、6、9、12日間観察した結果、放射線を照射していないグループ(0Gy)は、時間が経つにつれて細胞増殖がよく生じているのに対し、2Gyまたは5Gyの放射線を照射したグループでは、放射線を照射していないグループに比して3日目から細胞増殖が顕著に減少することを確認した。

4.2 放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果確認
放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果を確認するための実験を実施した。実験群は、次のように設定した。放射線を照射していないグループ、2Gyの放射線を照射したグループ、5Gyの放射線を照射したグループに分けて、それぞれのグループに0、5×10、1×10、5×10または1×10particles/mlと実施例3で製造したAdMSC-CDVの処理濃度を異にする下位グループを設定し、それぞれの下位グループの増殖能を放射線照射後1、3、6、9及び12日に測定した。細胞増殖能は、実施例4.1と同様の方法を使用して測定し、測定結果を図2a乃至図2cに示した。
また、放射線損傷9日後に測定した増殖能をNormal controlグループ(何も処理していないグループ)、IRグループ(2Gyの放射線(IR)だけを処理)、AdMSC-CDVグループ(放射線を処理せず、1×10particles/mlのAdMSC-CDVを処理)、IR+ AdMSC-CDVグループ(2GyのIRと1×10、5×10または1×10particles/mlのAdMSC-CDVを処理)に分類して比較した結果を図3a及び図3bに示した。
図2aに示したように、0Gyの放射線を照射した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6、9、及び12日目に確認した結果、5×10及び1×10/ml濃度を処理したグループで細胞増殖能が増加することを6日目から確認し、このような効果は、12日目まで持続されることを確認した。
図2bに示したように、2Gyの放射線を照射した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6、9、及び12日目に確認した結果、5×10そして1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループがAdMSC-CDVを処理していないグループに比して増殖能が増加する様相を6日目から示し、12日目まで持続された。
図2cに示したように、5Gyの放射線を照射した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6、9、及び12日目に確認した結果、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループがAdMSC-CDVを処理していないグループに比して細胞増殖能が増加することを確認し、このような効果は、放射線照射後6日から12日まで持続された。
図3aに示したように、2Gy放射線を照射した耳下腺細胞にAdMSC-CDVを濃度別に処理し、9日後の細胞増殖能を確認した結果、2Gy放射線だけを照射したグループの細胞増殖能に比して、2Gy放射線を照射し、5×10または1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループの細胞増殖能が濃度依存的に増加することを確認した。
図3bに示したように、何も処理していないグループに比して、放射線を照射せず、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループの細胞増殖能が遥かに高いことを確認し、2Gyの放射線だけを照射したグループは、何も処理していないグループより細胞増殖能が減少したものと示されたが、2Gyの放射線を照射し、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループが2Gyの放射線だけを照射したグループより細胞増殖能が確実に高いことを確認した。
前記データをまとめると、AdMSC-CDVは、耳下腺細胞の増殖能を増進させ、放射線により損傷した耳下腺細胞の増殖能もまたAdMSC-CDVにより増加することを確認した。

4.3 放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果確認
放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果を確認するための実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した耳下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射し、耳下腺細胞に何も処理していないグループ及び5Gy放射線だけを照射したグループを対照群に設定し、耳下腺細胞に5Gy放射線を照射し、実施例3で製造したAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した群を実験群に設定した。具体的に、次のような方法で実験を実施した。実験群と対照群の耳下腺細胞を96ウェルプレートに1×10cells/wellで接種し、放射線照射直後AdMSC-CDVをそれぞれ設定されたように処理した。放射線照射後6日及び9日目に細胞培養液に分泌されるアミラーゼの活性を測定するためにa-amylase assay kit(Abcam、USA)をプロトコルによって実施し、96 well plate readerを使用して405nmでの吸光度値を測定した。測定された結果を図4に示した。
図4に示したように、何も処理していないグループに比して5Gy放射線だけを照射したグループでアミラーゼの活性が減少したことを確認し、5Gy放射線を照射し、AdMSC-CDVを濃度別に処理したグループを6日及び9日培養した結果、6日及び9日の全てで、5Gy放射線を照射し、1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループのアミラーゼの活性が何も処理していないグループのアミラーゼ活性と類似した水準に回復することを確認した。即ち、AdMSC-CDVは、耳下腺細胞のアミラーゼ活性を促進し、放射線により損傷した耳下腺細胞のアミラーゼ活性もまたAdMSC-CDVにより促進されることを確認した。

4.4 放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)増進効果確認
放射線により損傷した耳下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性増進効果を確認するための実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した耳下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射し、耳下腺細胞に何も処理していないグループ及び5Gy放射線だけを照射したグループを対照群に設定し、耳下腺細胞に5Gy放射線を照射し、実施例3で製造したAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した群を実験群に設定した。具体的に、次のような方法で実験を実施した。実験群と対照群の耳下腺細胞をトランスウェル(12mm diameter、0.4um pore size Corning、USA)に1×10cells/wellで接種し、放射線照射直後AdMSC-CDVをそれぞれ設定されたように処理した。処理した細胞を37℃、5% COインキュベーターで培養した後、6日及び9日目にMillicell ERS-2(EMD Millipore Corp.USA)を使用して上皮透過抵抗性(TEER)を測定し、放射線照射6日後の測定結果を図5aに示し、放射線照射9日後の測定結果を図5bに示した。
図5aに示したように、耳下腺細胞に5Gy放射線を照射して6日後に上皮透過抵抗性(TEER)を測定した結果、何も処理していないグループに比して放射線だけを照射したグループで上皮透過抵抗性(TEER)が顕著に減少し、5Gy放射線照射後AdMSC-CDVを処理した全てのグループは、放射線だけを照射したグループに比して上皮透過抵抗性(TEER)が顕著に高いことを確認した。
図5bに示したように、5Gy放射線を照射して9日後に上皮透過抵抗性(TEER)を測定した結果、何も処理していないグループに比して放射線だけを照射したグループで上皮透過抵抗性(TEER)が減少し、減少した上皮透過抵抗性(TEER)は、5×10、1×10及び1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループでまた増加することを確認した。
即ち、AdMSC-CDVは、耳下腺細胞の上皮透過抵抗性(TEER)を増加させ、放射線により損傷した耳下腺細胞の上皮透過抵抗性(TEER)もまたAdMSC-CDVにより回復することを確認した。
【0021】
実施例5.放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの効果確認
5.1 顎下腺細胞に放射線照射時の増殖能変化
顎下腺細胞に放射線照射時、顎下腺細胞の増殖能にどのような変化が発生するかを確認する実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した顎下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射して細胞を損傷させた。その後、実施例4.1と同様の方法で顎下腺細胞の増殖能を放射線照射後1、3、6、9日目に測定した。測定された増殖能を図6に示した。
図6に示したように、0Gy、5Gy、15Gyの放射線照射後、顎下腺細胞の増殖程度を1、3、6、9日間観察した結果、放射線を照射していないグループ(0Gy)は、時間が経つにつれて細胞増殖がよく生じているのに対し、5Gyまたは15Gyの放射線を照射したグループでは、放射線を照射していないグループに比して6日目から細胞増殖が顕著に減少することを確認した。

5.2 放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果確認
放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果を確認するための実験を実施した。実験群は、次のように設定した。放射線を照射していないグループ、5Gyの放射線を照射したグループ、15Gyの放射線を照射したグループに分けて、それぞれのグループに0、5×10、1×10、5×10または1×10particles/mlと実施例3で製造したAdMSC-CDVの処理濃度を異にする下位グループを設定し、それぞれの下位グループの増殖能を放射線照射後1、3、6及び9日目に測定した。細胞増殖能は、実施例4.1と同様の方法を使用して測定し、測定結果を図7a乃至図7cに示した。
また、放射線損傷9日後に測定した増殖能をNormal controlグループ(放射線及びAdMSC-CDVを処理していないグループ)、IRグループ(AdMSC-CDVを処理せず、5Gyの放射線(IR)だけを処理する)、AdMSC-CDVグループ(放射線を処理せず、1×10particles/mlのAdMSC-CDVを処理する)、IR+ AdMSC-CDVグループ(5GyのIRと1×10、5×10または1×10particles/mlのAdMSC-CDVを処理する)に分類して比較した結果を図8a及び図8bに示した。
図7aに示したように、0Gyの放射線を照射した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6及び9日目に確認した結果、AdMSC-CDV処理による増殖能増加効果は現れないことを確認した。
図7bに示したように、5Gyの放射線を照射した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6及び9日目に確認した結果、1×10、5×10及び1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループがAdMSC-CDVを処理していないグループに比して増殖能が増加する様相が9日目から現れることを確認した。
図7cに示したように、15Gyの放射線を照射した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6及び9日目に確認した結果、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループがAdMSC-CDVを処理していないグループに比して9日目から細胞増殖能が増加することを確認した。
図8aに示したように、5Gy放射線を照射した顎下腺細胞にAdMSC-CDVを濃度別に処理し、9日後の細胞増殖能を確認した結果、5Gy放射線だけを照射したグループの細胞増殖能に比して、5Gy放射線を照射し、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループの細胞増殖能が高いことを確認した。
図8bに示したように、何も処理していないグループに比して、放射線を照射せず、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループの細胞増殖能が差がないことを確認し、5Gyの放射線だけを照射したグループは、何も処理していないグループより細胞増殖能が減少したものと示されたが、5Gyの放射線を照射し、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループが5Gyの放射線だけを照射したグループより細胞増殖能が確実に高いことを確認した。
前記データをまとめると、AdMSC-CDVは、顎下腺細胞の増殖能を増進させ、放射線により損傷した顎下腺細胞の増殖能もまたAdMSC-CDVにより増加することを確認した。

5.3 放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果確認
放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果を確認するための実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した顎下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射し、顎下腺細胞に何も処理していないグループ及び5Gy放射線だけを照射したグループを対照群に設定し、顎下腺細胞に5Gy放射線を照射し、実施例3で製造したAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した群を実験群に設定した。具体的に、実施例4.3と同様の方法でアミラーゼ活性を測定し、測定された結果を図9に示した。
図9に示したように、何も処理していないグループに比して5Gy放射線だけを照射したグループでアミラーゼの活性が減少したことを確認し、5Gy放射線を照射し、AdMSC-CDVを濃度別に処理したグループを6日及び9日培養した結果、6日及び9日の全てで、5Gy放射線を照射し、1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループのアミラーゼの活性が何も処理していないグループのアミラーゼ活性と類似した水準に回復することを確認した。即ち、AdMSC-CDVは、顎下腺細胞のアミラーゼ活性を促進し、放射線により損傷した顎下腺細胞のアミラーゼ活性もまたAdMSC-CDVにより回復することを確認した。

5.4 放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)増進効果確認
放射線により損傷した顎下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性増進効果を確認するための実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した顎下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射し、顎下腺細胞に何も処理していないグループ及び15Gy放射線だけを照射したグループを対照群に設定し、顎下腺細胞に15Gy放射線を照射し、実施例3で製造したAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した群を実験群に設定した。実施例4.4と同様の方法で上皮透過抵抗性を測定し、測定結果を図10a及び図10bに示した。
図10aに示したように、顎下腺細胞に放射線を照射して6日後に上皮透過抵抗性(TEER)を測定した結果、何も処理していないグループに比して放射線を照射した全てのグループの上皮透過抵抗性(TEER)が顕著に低いことを確認し、15Gy放射線照射後、1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループは、15Gy放射線照射後、5×10~5×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループに比して上皮透過抵抗性(TEER)が高いことを確認した。
図10bに示したように、放射線を照射して9日後に上皮透過抵抗性(TEER)を測定した結果、何も処理していないグループに比して放射線を照射した全てのグループの上皮透過抵抗性(TEER)が低いことを確認し、低くなった上皮透過抵抗性(TEER)が5×10及び1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループでまた増加することを確認した。
即ち、AdMSC-CDVは、顎下腺細胞の上皮透過抵抗性(TEER)を増加させ、放射線により損傷した顎下腺細胞の上皮透過抵抗性(TEER)もまたAdMSC-CDVにより回復することを確認した。
【0022】
実施例6.放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの効果確認
6.1 舌下腺細胞に放射線照射時の増殖能変化
舌下腺細胞に放射線照射時、舌下腺細胞の増殖能にどのような変化が発生するかを確認する実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した舌下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射して細胞を損傷させた。その後、実施例4.1と同様の方法で舌下腺細胞の増殖能を放射線照射後1、3、6、9及び13日目に測定した。測定された増殖能を図11に示した。
図11に示したように、0Gy、2Gy、5Gyの放射線照射後の舌下腺細胞の増殖程度を1、3、6、9、13日間観察した結果、放射線を照射していないグループ(0Gy)は、時間が経つにつれて細胞増殖がよく生じているのに対し、2Gyまたは5Gyの放射線を照射したグループでは、放射線を照射していないグループに比して6日目から細胞増殖が顕著に減少することを確認した。

6.2 放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果確認
放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果を確認するための実験を実施した。実験群は、次のように設定した。放射線を照射していないグループ、2Gyの放射線を照射したグループ、5Gyの放射線を照射したグループに分けて、それぞれのグループに0、5×10、1×10、5×10または1×10particles/mlと実施例3で製造したAdMSC-CDVの処理濃度を異にする下位グループを設定し、それぞれの下位グループの増殖能を放射線照射後1、3、6、9及び12日目に測定した。細胞増殖能は、実施例4.1と同様の方法を使用して測定し、測定結果を図12a乃至図12cに示した。
また、放射線損傷9日後に測定した増殖能をNormal controlグループ(放射線及びAdMSC-CDVを処理していないグループ)、IRグループ(AdMSC-CDVを処理せず、2Gyの放射線(IR)だけを処理する)、AdMSC-CDVグループ(放射線を処理せず、1×10particles/mlのAdMSC-CDVを処理する)、IR+ AdMSC-CDVグループ(2GyのIRと1×10、5×10または1×10particles/mlのAdMSC-CDVを処理する)に分類して比較した結果を図13a及び図13bに示した。
図12aに示したように、0Gyの放射線を照射した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6、9及び12日目に確認した結果、1×10/ml濃度を処理したグループで細胞増殖能が増加することを6日目から確認し、このような効果は、12日目まで持続されることを確認した。
図12bに示したように、2Gyの放射線を照射した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6、9及び12日目に確認した結果、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループがAdMSC-CDVを処理していないグループに比して増殖能が増加する様相を9日目から確認し、このような効果は、12日目まで持続されることを確認した。
図12cに示したように、5Gyの放射線を照射した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した後、細胞増殖能を1、3、6、9及び12日目に確認した結果、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループがAdMSC-CDVを処理していないグループに比して細胞増殖能が増加することを9日目から確認し、このような効果は、12日目まで持続されることを確認した。
図13aに示したように、2Gy放射線を照射した舌下腺細胞にAdMSC-CDVを濃度別に処理し、9日後の細胞増殖能を確認した結果、2Gy放射線だけを照射したグループの細胞増殖能に比して、2Gy放射線を照射し、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループの細胞増殖能が高いことを確認した。
図13bに示したように、何も処理していないグループに比して、放射線を照射せず、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループの細胞増殖能が遥かに高いことを確認し、2Gyの放射線だけを照射したグループは、何も処理していないグループより細胞増殖能が減少したものと示されたが、2Gyの放射線を照射し、1×10/ml濃度のAdMSC-CDVを処理したグループが2Gyの放射線だけを照射したグループより細胞増殖能が確実に高いことを確認した。
前記データをまとめると、AdMSC-CDVは、舌下腺細胞の増殖能を増進させ、放射線により損傷した舌下腺細胞の増殖能もまたAdMSC-CDVにより増加することを確認した。

6.3 放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果確認
放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果を確認するための実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した舌下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射し、舌下腺細胞に何も処理していないグループ及び5Gy放射線だけを照射したグループを対照群に設定し、舌下腺細胞に5Gy放射線を照射し、実施例3で製造したAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した群を実験群に設定した。具体的に、実施例4.3と同様の方法でアミラーゼ活性を測定し、放射線照射6日後に測定された結果を図14aに示し、放射線照射9日後に測定された結果を図14bに示した。
図14aに示したように、何も処理していないグループに比して5Gy放射線だけを照射したグループでアミラーゼの活性が減少したことを確認し、5Gy放射線を照射し、1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループのアミラーゼの活性が何も処理していないグループのアミラーゼ活性より高い水準であることを確認した。
図14bに示したように、何も処理していないグループに比して5Gy放射線だけを照射したグループでアミラーゼの活性が減少したことを確認し、5Gy放射線を照射し、5×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループのアミラーゼ活性が、5Gy放射線だけを照射したグループ、5Gy放射線を照射し、5×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループ、及び5Gy放射線を照射し、1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループのアミラーゼ活性より増加したことを確認し、5Gy放射線を照射し、1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループのアミラーゼの活性が何も処理していないグループのアミラーゼ活性より高い水準であることを確認した。
即ち、AdMSC-CDVは、舌下腺細胞のアミラーゼ活性を促進し、放射線により損傷した舌下腺細胞のアミラーゼ活性もまたAdMSC-CDVにより回復することを確認した。

6.4 放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)増進効果確認
放射線により損傷した舌下腺組織に対する脂肪由来中間葉幹細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性増進効果を確認するための実験を実施した。具体的に、実施例1で準備した舌下腺細胞を実施例2と同様の方法で放射線を照射し、舌下腺細胞に何も処理していないグループ及び5Gy放射線だけを照射したグループを対照群に設定し、舌下腺細胞に5Gy放射線を照射し、実施例3で製造したAdMSC-CDVを5×10~1×10/mlの濃度で処理した群を実験群に設定した。実施例4.4と同様の方法で上皮透過抵抗性を測定し、測定結果を図15a及び図15bに示した。
図15aに示したように、舌下腺細胞に放射線を照射して6日後に上皮透過抵抗性(TEER)を測定した結果、何も処理していないグループに比して放射線を照射した全てのグループの上皮透過抵抗性(TEER)が顕著に低いことを確認し、5Gy放射線を照射し、5×10/ml及び5×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループは、5Gy放射線だけを照射したグループに比して上皮透過抵抗性(TEER)が高いことを確認した。
図15bに示したように、放射線を照射して9日後に上皮透過抵抗性(TEER)を測定した結果、何も処理していないグループに比して5Gy放射線を照射した全てのグループの上皮透過抵抗性(TEER)が低いことを確認し、5Gy放射線を照射し、5×10~1×10/mlのAdMSC-CDVを処理したグループの上皮透過抵抗性(TEER)が5Gy放射線だけを照射したグループより高いことを確認した。
即ち、AdMSC-CDVは、舌下腺細胞の上皮透過抵抗性(TEER)を増加させ、放射線により損傷した舌下腺細胞の上皮透過抵抗性(TEER)もまたAdMSC-CDVにより回復することを確認した。
【0023】
実施例7.自然分泌エクソソームに対比した細胞由来ベシクルの増殖能増進効果確認
7.1 脂肪細胞由来中間葉幹細胞(ADMSC)由来自然分泌エクソソームの製造
脂肪細胞由来中間葉幹細胞培養液から超遠心分離(ultracentrifuge)またはTFF(Tangential Flow Filtration)を通して自然分泌エクソソームを収得した。具体的に、細胞complete成長培地で培養された中間葉幹細胞の既存の培養液を除去した後、120,000gの条件で16時間の間の超遠心分離を利用して得たエクソソームが除去された(Exosome-Depleted)培養液を入れた後、24時間の間培養した。その後、培養液から次の順次的な超遠心分離を通して自然分泌エクソソームを分離した。まず、300gの条件で10分、2000gの条件で10分、10000gの条件で30分ずつ順次に遠心分離を進行して上清液を得るか、実施例3と同様の方法でTFFを通してメンブレンカラムを通過させた後、ろ液を収得した。以後、120,000gの条件で2時間の間超遠心分離をし、沈殿した層を得て、これをリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline;PBS)で再浮遊した後、洗滌のためにもう一度120,000gの条件で2時間または3時間の間超遠心分離を進行した。この後、沈殿した層をリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline;PBS)で再浮遊して懸濁液を収得した。前記懸濁液を0.2um Steritop Threaded Bottle Top Filter(Millipore、USA)を通過させてろ過し、中間葉幹細胞由来自然分泌エクソソームを収得した。

7.2 自然分泌エクソソームに対比した中間葉幹細胞由来ベシクルの増殖能増進効果確認
放射線により損傷した耳下腺組織に対する自然分泌エクソソームと細胞由来ベシクルの増殖能増進効果を比較するための実験を実施した。具体的に、実施例2で準備した5Gy放射線により損傷した耳下腺細胞を対象に、何も処理していない無処理実験群(IR)、実施例7.1で製造した1×10個の自然分泌エクソソーム(AdMSC NE)を処理した実験群(IR+AdMSC NE)、実施例3で製造した1×10個のAdMSC CDVを処理した実験群(IR+AdMSC CDV)を設定した。放射線露出9日目にそれぞれの実験群の増殖能を実施例4.1と同様の方法で測定し、測定結果を図16及び表1に示した。
[表1]
図16及び表1に示したように、自然分泌エクソソーム(AdMSC NE)を処理した実験群(IR+AdMSC NE)の場合、無処理実験群(IR)と比較して放射線により損傷した耳下腺の増殖能を回復させることができなかった。しかし、AdMSC CDVを処理した実験群(IR+AdMSC CDV)の場合、無処理実験群(IR)に比して耳下腺増殖能が有意な程度に回復したことを確認した。
【0024】
実施例8.自然分泌エクソソームに対比した細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)増進効果確認
8.1 自然分泌エクソソームに対比した脂肪細胞由来中間葉幹細胞由来ベシクル(AdMSC CDV)の上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)増進効果確認
放射線により損傷した耳下腺組織に対する自然分泌エクソソームと細胞由来ベシクルの上皮透過抵抗性増進効果を比較するための実験を実施した。具体的に、放射線を照射していない耳下腺細胞である対照群(con)、実施例2で準備した5Gy放射線により損傷した耳下腺細胞を対象に、何も処理していない無処理実験群(IR)、実施例7.1で製造した1×10、1×10、1×1010個の自然分泌エクソソーム(AdMSC NE)を処理した実験群、実施例3で製造した1×10、1×10、1×1010個のAdMSC CDVを処理した実験群(AdMSC CDV)を設定した。放射線露出9日目にそれぞれの実験群の上皮透過抵抗性を実施例4.4と同様の方法で測定し、測定結果を図17に示した。
図17に示したように、自然分泌エクソソーム(AdMSC NE)を処理した実験群では、エクソソームの個数と関係なく、無処理実験群(IR)と有意味な差が現れなかったが、AdMSC CDVを処理した実験群では、全て無処理実験群(IR)に対比して上皮透過抵抗性が増加したことを確認した。

8.2 自然分泌エクソソームに対比した臍帯由来中間葉幹細胞由来ベシクル(UC-MSC CDV)の上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)増進効果確認
細胞由来ベシクルの由来細胞を異にした場合にも、上皮透過抵抗性が増加するかを確認するための実験を実施した。具体的に、臍帯由来中間葉幹細胞から実施例3と同様の方法で細胞由来ベシクル(UC-MSC CDV)を製造し、実施例7.1と同様の方法で自然分泌エクソソーム(UC-MSC NE)を製造した。実施例2で準備した5Gy放射線により損傷した耳下腺細胞を対象に、何も処理していない無処理実験群(IR)、5×10、1×10個の自然分泌エクソソーム(UC-MSC NE)を処理した実験群、1×10、1×1010個のUC-MSC CDVを処理した実験群(UC-MSC CDV)を設定した。実施例9.1と同様の方法でUC-MSC CDVと臍帯由来中間葉幹細胞から分離した自然分泌エクソソームの上皮透過抵抗性を放射線露出3日目、6日目、9日目に測定し、それを図18に示した。
図18に示したように、自然分泌エクソソーム(UC-MSC NE)を処理した実験群では、エクソソームの個数及び放射線露出経過時間と関係なく、無処理実験群(IR)と有意味な差が現れなかったが、UC-MSC CDVを処理した実験群では、全て無処理実験群(IR)に対比して上皮透過抵抗性が増加したことを確認した。このような結果から、本発明の細胞由来ベシクルは、由来細胞を異にしても、自然に分泌されるエクソソームとは異なり細胞に処理されたとき、上皮透過抵抗性を増進させる効果があることを確認した。
【0025】
実施例9.動物モデルでの自然発生エクソソームに対比した中間葉幹細胞由来ベシクルのアミラーゼ活性促進効果確認
本発明の中間葉幹細胞由来ベシクルが実際に唾液腺が損傷した動物モデルに適用されたとき、唾液腺の機能回復に効果があるかを確認するための実験を実施した。実験用マウス(4週齢 female C3H;18-22g)は、オリエントバイオ社の実験動物生産センター(Orient Bio.,城南、大韓民国)で購入し、仁荷大学校実験動物ガイドラインによって飼育した。20匹のマウスは、正常実験群(Cont)、15Gy放射線処理した実験群(IR)、放射線照射後4×10個のUC-MSC-CDV処理した実験群(IR+UC-MSC-CDV)、放射線照射後4×10個のUC-MSC-NE処理した実験群(IR+UC-MSC-NE)に分け、全ての動物実験は、仁荷大学校実験動物倫理委員会の承認を受けた後に進行した(INHA 1612140464)。前記設定された4個の実験群のマウスから得られた唾液を1,500g、4℃で10分間遠心分離した後、上清液だけを得てアミラーゼアッセイプロトコル(Abcam、USA)によってアミラーゼ活性を測定した。唾液(50uL)が入った96wellに、予め作っておいた反応混合物を100uL添加してよく混ぜた後、常温で10分、そして60分反応させた後、405nmでそれぞれの吸光度を測定した。60分反応させた時の吸光度から10分反応させた時の吸光度の差を求めてアミラーゼ活性に換算して確認し、その結果を図19に示した。
図19に示したように、唾液腺組織が放射線損傷により損傷したマウスモデルにUC-MSC NEを処理した場合、アミラーゼ活性に有意な変化が観察されなかったが、UC-MSC CDVを処理した場合、アミラーゼ活性に有意な増加が観察された。このような結果から、本発明の細胞由来ベシクルが唾液腺組織の損傷に対する治療効果があることをin vivoステップで確認した。
【0026】
実施例10.中間葉幹細胞由来ベシクルの唾液分泌量増加効果の確認
本発明の中間葉幹細胞由来ベシクルがマウスモデルに適用されたとき、唾液分泌量を増加させる効果があるかを確認するための実験を実施した。具体的に、実験用マウス(4週齢 female C3H;18-22g)にケタミン(100mg/kg)を腹腔内注射して麻酔させ、インスリン注射器を利用して10個/uLのUC-MSC CDV 40uLを両側顎下腺に局所注射した後、縫合した。以後、7週後にマウスをケタミン(100mg/kg、i.p.)注射して麻酔させ、ムスカリン性、コリン性作用剤であるピロカルピン(pilocarpine、0.2mg/kg、i.p.)を注射した直後から7分間マウスの口で溜められる唾液を集めて重さを測定して、唾液分泌量を測定し、その結果を図20に示した。
図20に示したように、UC-MSC CDVを処理したマウスの場合、それを処理していない対照群マウスと比較して、唾液分泌量が有意に増加したことを確認した。このような結果から、本願発明の細胞由来ベシクルは、唾液分泌量を増加させる効果があるものであることを確認した。

以下、本発明の細胞由来ベシクルを含む唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物の製剤例を説明するが、本発明を限定しようとするものではなく、単にそれを具体的に説明しようとするものである。
【0027】
製剤例1.散剤の製造
本発明の細胞由来ベシクル 100mg
乳糖 1g
前記の成分を混合し、気密包に充填して散剤を製造した。

製剤例2.錠剤の製造
本発明の細胞由来ベシクル 100mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法に従って打錠して錠剤を製造した。

製剤例3.カプセル剤の製造
本発明の細胞由来ベシクル 100mg
トウモロコシデンプン 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法に従ってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。

製剤例4.丸の製造
本発明の細胞由来ベシクル 100mg
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、常法に従って1丸当たり4gとなるように製造した。

製剤例5.顆粒の製造
本発明の細胞由来ベシクル 100mg
大豆抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
デンプン 600mg
前記の成分を混合した後、30%エタノール100mgを添加して摂氏60℃で乾燥して顆粒を形成した後、包に充填した。

製剤例6.注射剤の製造
本発明の細胞由来ベシクル 10mg
マンニトール 180mg
注射用滅菌蒸留水 2974mg
NaHPO2HO 26mg
通常の注射剤の製造方法に従って1アンプル当たり(2ml)前記の成分含量で製造する。

製剤例7.錠剤型健康機能食品
オクタコサノール粉末15重量%、乳糖加水分解物粉末15重量%、分離大豆タンパク粉末15重量%、キトオリゴ糖15重量%、酵母抽出物粉末10重量%、ビタミンミネラル混合剤材10重量%、ステアリン酸マグネシウム4.6重量%、二酸化チタン0.2重量%、及びグリセリン脂肪酸エステル0.2重量%と本発明の細胞由来ベシクル20重量%を配合して常法で錠剤型健康機能食品を製造する。

製剤例8.健康飲料
蜂蜜5重量%、果糖3重量%、塩酸リボフラビンナトリウム0.0001重量%、塩酸ピリドキシン0.0001重量%、水86.9998重量%及び本発明の細胞由来ベシクル5重量%を配合して常法で健康飲料を製造する。
図1
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図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2022-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルを含む、唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記微細空隙に押出するステップは、微細空隙の大きさが大きいものから微細空隙の大きさが小さいものに順次に押出するステップである、請求項1に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記微細空隙は、直径が0.1~20μmである、請求項1に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記細胞は、中間葉幹細胞、誘導万能幹細胞、胚性幹細胞、唾液腺幹細胞、腺房細胞、筋上皮細胞及び血小板からなる群から選択されたいずれか一つ以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記唾液腺疾患は、放射線照射及び放射性同位元素による唾液腺損傷、口腔乾燥症、感染性急性唾液腺炎(infectious acute sialadenitis)、感染性慢性唾液腺炎(infectious chronic sialadenitis)、唾液腺結核(tuberculosis)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)、唾石症(sialolithiasis)、唾液腺症(sialadenosis)、唾液腺腫瘍及び老化による唾液腺機能低下からなる群から選択されたいずれか一つである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記細胞由来ベシクルは、唾液腺組織に処理されたとき、唾液腺細胞増殖能、唾液腺で分泌されるアミラーゼ活性または唾液腺細胞の上皮透過抵抗性(transepithelial resistance、TEER)を自然分泌エクソソームに対比して増進させ、唾液分泌量を増加させるものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記唾液腺は、顎下腺、舌下腺及び耳下腺からなる群から選択されたいずれか一つである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の唾液腺疾患予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクル(cell derived vesicle)を含む、唾液腺疾患予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項9】
細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの唾液腺疾患予防または治療用医薬としての使用。
【請求項10】
唾液腺疾患予防または治療用医薬製剤を生産するための、細胞を含む試料を微細空隙に押出するステップを含む製造方法により製造される細胞由来ベシクルの使用。
【国際調査報告】