(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20221130BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221130BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20221130BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALN20221130BHJP
C12Q 1/6832 20180101ALN20221130BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
G01N33/53 M
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
C12Q1/6876
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6832 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516680
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2020013352
(87)【国際公開番号】W WO2021066526
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0122191
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520493429
【氏名又は名称】コアステム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CORESTEM CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】520493430
【氏名又は名称】忠北大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】CHUNGBUK NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, キョン スク
(72)【発明者】
【氏名】ハン, サン べ
(72)【発明者】
【氏名】イ, テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒョン スク
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS28
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS35
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物。
【請求項2】
mRNA発現レベルを測定するための薬剤が、mRNAに特異的に結合するプライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドである、請求項1に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物。
【請求項3】
タンパク質発現レベルを測定するための薬剤が、タンパク質又はタンパク質の断片に特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキット。
【請求項5】
キットがRT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)キット、DNAチップキット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)キット、プロテインチップキット、ラピッドキット又はMRM(多重反応モニタリング)キットである、請求項4に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキット。
【請求項6】
試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ;及び
測定された発現レベルを対照群の発現レベルと比較するステップ
を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項7】
mRNA発現レベルの測定が、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(競合RT-PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイム定量的RT-PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT-PCR)、リボヌクレアーゼプロテクション法、ノーザンブロット法又はDNAチップ技術を使用する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項8】
タンパク質発現レベルの測定が、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ又は免疫蛍光法を使用する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項9】
試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して低く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項10】
CCL8の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して高く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている、2019年10月2日に出願した韓国特許出願公開第10-2019-0122191号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ループスとも呼ばれる全身性エリテマトーデス(SLE:Systemic lupus erythematosus)は、典型的な全身性自己免疫疾患である。全身性エリテマトーデスは、DNAに対する抗体、核内抗原に対する抗体及びリボ核タンパク質に対する自己抗体を含む一連の抗体の存在によって特徴づけられる自己免疫疾患である。全身性エリテマトーデスは、一定の症状及び兆候、筋骨格、皮膚、腎臓、消化器、肺、心臓、細網内皮系、血液及び精神神経の所見を含む。皮膚の所見は、全身性エリテマトーデスにおいて最も一般的である。全身性エリテマトーデスの進行は、全般的な臨床症状並びに免疫複合体の沈着によって引き起こされる組織及び器官の喪失と関連している。他の自己免疫症状と同様に、全身性エリテマトーデスの病因は多因子的であり、遺伝因子、環境因子、ホルモン因子及び免疫学的因子を含む。
【0004】
ループス腎炎は、全身性エリテマトーデスと関連する糸球体腎炎であり、抗dsDNA及び補体を含む免疫複合体の堆積が重要な病態生理学的役割を果たす。タンパク尿の量は、末梢糸球体の毛細血管環のサイズを反映し、脈管間の増殖及び膜性腎症とともに増加する傾向がある。増殖性糸球体腎炎(クラス2及び3)は最も深刻な形態のループス腎炎である。
【0005】
間葉系幹細胞は、骨、軟骨、脂肪等に分化することができる多分化能を有する高増殖性の接着細胞であり、抗炎症能及び免疫調節能を有することが公知である。間葉系幹細胞は、T細胞及びB細胞の増殖及び分化の阻害、並びに樹状細胞、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞及びマクロファージ等の免疫細胞の機能の阻害等の免疫抑制効果を示す。最近、間葉系幹細胞を造血幹細胞とともに移植することによって造血幹細胞の生着の割合を増加させる研究が報告されている。間葉系幹細胞が、対移植片宿主病(GVHD:graft versus host disease)、コラーゲン関節炎(CIA:collagen-induced arthritis)、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE:experimental autoimmune encephalomyelitis)、敗血症、急性膵炎(AP:acute pancreatitis)、大腸炎、多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)及び関節リウマチ等の疾患において、炎症を減少させ、自己免疫反応亢進を阻害することが報告されている。間葉系幹細胞はまた、全身性エリテマトーデス(SLE)において、炎症を減少させ、治療効果を有することが開示されている。
【0006】
以前、全身性エリテマトーデス疾患動物モデルにおける間葉系幹細胞の治療効果を確認するために、生存率、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿が測定された。しかしながら、治療効果を予測するための既存のバイオマーカーは、その測定が困難であるという点、疾患が相当進行した後で測定され得るという点、正確性が低いという点で限界を有する。従って、新しいバイオマーカーに関する研究の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、既存のバイオマーカー(生存率、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿)を使用して、全身性エリテマトーデス疾患動物モデルにおける間葉系幹細胞の治療効果を測定し、新しいバイオマーカー(ケモカイン、サイトカイン及びCHI3L1)もまた測定し得ることを確認した。以上に基づき、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0008】
より具体的には、全身性エリテマトーデスがMRL/lprマウスにおいて進行した場合、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベルが増大し、最終的にマウスが死亡したことが確認された。間葉系幹細胞がこれらのマウスに投与された場合、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベルが減少したことが確認された。従って、これらの既存のバイオマーカーが全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を確認し得ることが確認された。
【0009】
さらに、本発明者らは、全身性エリテマトーデスがMRL/lprマウスにおいて進行した場合、種々のケモカイン、サイトカイン及びCHI3L1の発現レベルが変化し(増大又は減少)、間葉系幹細胞の投与によって調節し得ることを確認した。典型的には、間葉系幹細胞が腎臓でCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10及びCXCL11の発現を減少させ、CCL8の発現レベルを増大させ、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17及びTGF-αの発現を減少させ、CHI3L1の発現を減少させたことが確認された。
【0010】
これを通して、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためには、CCL2、CCL5、CCL8、IL-1β及びCHI3L1を、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベル等の既存のバイオマーカーとともに利用し得ることが確認された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物を提供し得る。
【0012】
mRNA発現レベルを測定するための薬剤は、mRNAに特異的に結合する、プライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドであってもよい。
【0013】
タンパク質発現レベルを測定するための薬剤は、タンパク質又はタンパク質の断片に特異的に結合する抗体であってもよい。
【0014】
本発明はまた、上述の組成物を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキットを提供する。
【0015】
キットは、RT-PCR(reverse transcription polymerase chain reaction、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)キット、DNAチップキット、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay、酵素結合免疫吸着検定法)キット、プロテインチップキット、ラピッドキット又はMRM(multiple reaction monitoring、多重反応モニタリング)キットであってもよい。
【0016】
本発明はまた、(a)試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ;及び(b)測定された発現レベルを対照群の発現レベルと比較するステップを含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法を提供し得る。
【0017】
試料は、間葉系幹細胞で処置された全身性エリテマトーデスの患者から得てもよい。
【0018】
mRNA発現レベルの測定は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(競合RT-PCR:competitive reverse transcription polymerase chain reaction)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイム定量的RT-PCR:real time reverse transcription polymerase chain reaction)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT-PCR:quantitative polymerase chain reaction)、リボヌクレアーゼプロテクション法、ノーザンブロット法又はDNAチップ技術を使用し得る。
【0019】
タンパク質発現レベルの測定は、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ又は免疫蛍光法を使用し得る。
【0020】
該方法によって、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して低く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定し得る。
【0021】
該方法によって、CCL8の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して高く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定し得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベル等の既存のバイオマーカーとともに、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1を利用して、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、間葉系幹細胞の投与によるMRL/lprマウスの治療効果を確認することによって得られた結果を示す図である。MRL/lprマウスに、12及び15週齢で間葉系幹細胞を投与した。(a)は生存率を測定することによって得られた結果であり、(b)は体重を測定することによって得られた結果であり、(c)は腎臓の重量を測定することによって得られた結果であり、(d)は血清中の抗dsDNAを測定することによって得られた結果であり、(e)は総IgGを測定することによって得られた結果であり、(f)は尿中のタンパク尿を測定することによって得られた結果である。
【
図2】
図2は、間葉系幹細胞の投与によるMRL/lprマウスの腎臓におけるケモカイン変化を確認することによって得られた結果を示す図である。MRL/lprマウスに間葉系幹細胞を2回投与し、16週齢で剖検を行った。(a)は、9週齢の対照群の腎臓組織におけるCCL2の発現レベルに基づいて相対的定量値を計算することによって得られた結果であり、(b)は、9週齢の値と比較した16週齢での値の変化、又は16週齢での、対照群と比較した間葉系幹細胞を投与された群の値の変化を計算することによって得られた結果である。
【
図3】
図3は、間葉系幹細胞の投与によるMRL/lprマウスの血清におけるケモカイン変化を確認することによって得られた結果を示す図である。MRL/lprマウスに間葉系幹細胞を2回投与し、16週齢で剖検を行い、血清を使用して各ケモカインを測定した。
【
図4】
図4は、間葉系幹細胞の投与によるMRL/lprマウスの腎臓におけるケモカイン変化を確認することによって得られた結果を示す図である。MRL/lprマウスに間葉系幹細胞を2回投与し、16週齢で剖検を行った。(a)は、9週齢の対照群の腎臓組織におけるIFN-αの発現レベルに基づいて相対的定量値を計算することによって得られた結果であり、(b)は、9週齢の値と比較した16週齢での値の変化、又は16週齢での、対照群と比較した間葉系幹細胞を投与された群の値の変化を計算することによって得られた結果である。
【
図5】
図5は、間葉系幹細胞の投与によるMRL/lprマウスの腎臓におけるCHI3L1変化を確認することによって得られた結果を示す図である。MRL/lprマウスに間葉系幹細胞を2回投与し、16週齢で剖検を行った。(a)は、9週齢の対照群の腎臓組織におけるCHI3L1の発現レベルに基づいて相対的定量値を計算することによって得られた結果であり、(b)は、血清を使用してCHI3L1を測定することによって得られた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0025】
本発明者らは、既存のバイオマーカー(生存率、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿)を使用して、全身性エリテマトーデス疾患動物モデルにおける間葉系幹細胞の治療効果を測定し、新しいバイオマーカー(ケモカイン、サイトカイン及びCHI3L1)もまた測定し得ることを確認した。以上に基づき、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0026】
本発明は、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物を提供し得る。
【0027】
MRL/lprマウスにおいて全身性エリテマトーデスが進行している場合に、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベルが増大し、最終的にはマウスは死亡したことが確認された。これらのマウスに間葉系幹細胞が投与された場合に、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベルが減少したことが確認された。従って、これらの既存のバイオマーカーは全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を確認し得ることが確認された(
図1)。
【0028】
さらに、本発明者らは、MRL/lprマウスにおいて全身性エリテマトーデスが進行している場合に、種々のケモカイン、サイトカイン及びCHI3L1の発現レベルが変化し(増大又は減少)、間葉系幹細胞の投与によって調節されたことを確認した(
図2~5)。典型的には、間葉系幹細胞によってCCL2及びCCL5の発現が減少し、CCL8の発現レベルが増大し、IL-1βの発現が減少し、CHI3L1の発現が減少したことが確認された。
【0029】
これを通して、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するために、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベル等の既存のバイオマーカーとともに、CCL2、CCL5、CCL8、IL-1β及びCHI3L1を利用し得ることが確認された。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「mRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤」は、全身性エリテマトーデスの患者における間葉系幹細胞での処置の後に増大又は減少するマーカーである、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定することによって、マーカーの検出及び/又は定量化に使用し得る分子をいう。具体的には、遺伝子のmRNA発現レベルを測定するための薬剤は、mRNAに特異的に結合するプライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドであってもよい。この点については、遺伝子の核酸情報がgenebank等で公知であるので、当業者は、配列に基づいてこれらの遺伝子の特定の領域を特異的に増幅するプライマー又はプローブを設計し得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「プライマー対」は、標的遺伝子配列を認識するフォワード及びリバースプライマーからなるプライマー対の全ての組み合わせ、並びに具体的には、解析結果に特異性及び感受性を与えるプライマー対を含む。プライマーの核酸配列は試料中に存在する非標的配列と一致しない配列なので、プライマーが相補的プライマー結合部位を含む標的遺伝子配列のみを増幅する場合に高い特異性を与えることができ、非特異的増幅を引き起こさない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」は、試料中の検出される標的物質に特異的に結合することができる物質をいい、結合を通して試料中の標的物質の存在を特異的に確認することができる物質をいう。プローブ分子のタイプは、当該分野で一般に使用される物質として限定されないが、好ましくはPNA(peptide nucleic acid、ペプチド核酸)、LNA(locked nucleic acid、ロックド核酸)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNA又はDNAであってもよい。より具体的には、プローブは、生物又は生物に類似するものに由来する生体材料であるか、又はex vivoで製造されたものを含む。例えば、プローブは酵素、タンパク質、抗体、微生物、動物及び植物細胞並びに器官、神経細胞、DNA及びRNAであってもよく、DNAとしてはcDNA、ゲノムDNA及びオリゴヌクレオチドが挙げられ、RNAとしてはゲノムRNA、mRNA及びオリゴヌクレオチドが挙げられ、タンパク質の例としては抗体、抗原、酵素、ペプチド等を挙げることができる。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、mRNA中の相補配列に結合してmRNAからタンパク質への翻訳を阻害するよう作用する、特異的なmRNA配列に相補的な核酸配列を含む、DNA若しくはRNA又はそれらの誘導体をいう。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列は、遺伝子のmRNAに相補的でmRNAに結合することができる、DNA又はRNA配列をいう。これは、遺伝子mRNAの、翻訳、細胞質への移行、成熟又は全ての他の全体的な生物学的機能のための必須の活動を阻害し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは6~100塩基対(bp:base pair)であってもよく、好ましくは8~60bpであってもよく、より好ましくは10~40bpであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、従来の方法によってin vitroで合成してin vivoで投与してもよく、アンチセンスオリゴヌクレオチドはin vivoで合成してもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドをin vitroで合成する1つの例は、RNAポリメラーゼIを使用することである。アンチセンスRNAをin vivoで合成する1つの例は、多重クローニングサイト(MCS:multiple cloning site)の起点が反対方向であるベクターを使用することによってアンチセンスRNAを転写することである。好ましくは、アンチセンスRNAは、翻訳終止コドンを配列中に存在させることによって、ペプチド配列に翻訳されない。
【0034】
タンパク質発現レベルを測定するための薬剤は、タンパク質又はタンパク質の断片に特異的に結合する抗体であってもよく、抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってもよい。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、抗原領域に対する特異的タンパク質分子を指し得る。本発明の目的のために、抗体は、マーカータンパク質に特異的に結合する抗体をいい、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及び組換え抗体を含む。抗体は、当該分野で周知の技術を使用して、容易に調製し得る。また、本明細書の抗体としては、2本の全長軽鎖及び2本の全長重鎖を有する完全な形態、並びに抗体分子の機能的断片が挙げられる。抗体分子の機能的断片は、少なくとも抗原結合機能を有する断片をいい、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFv等が含まれる。
【0036】
本発明は、組成物を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキットを提供する。組成物の詳細は上述の通りである。キットは、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのマーカーである、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α若しくはCHI3L1のタンパク質発現レベル、又は前記遺伝子のmRNA若しくはタンパク質の発現レベルを測定することによって、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測し得る。キットは、全身性エリテマトーデスの患者における間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのマーカー遺伝子のmRNA発現レベルを測定するための薬剤、例えば、遺伝子に特異的に結合するプライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドを含み得、タンパク質発現レベルを測定するための薬剤、例えばマーカータンパク質に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合断片を含み得る。
【0037】
キットは、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)キット、DNAチップキット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)キット、プロテインチップキット、ラピッドキット又はMRM(多重反応モニタリング)キットであってもよい。
【0038】
全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキットは、解析方法に適した1つ又は複数の他の成分組成物、溶液又は装置をさらに含んでもよい。例えば、診断キットは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行うために必要な必須要素を含む診断キットであり得る。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応キットは、マーカー遺伝子に特異的な各プライマー対を含む。プライマーは、各遺伝子の核酸配列に特異的な配列を有するヌクレオチドであり、約7bp~50bpの長さを有し、より好ましくは約10bp~30bpの長さを有する。また、プライマーは、対照遺伝子の核酸配列に特異的なプライマーを含み得る。また、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応キットは、試験管又は他の適切な容器、反応バッファー(異なるpH及びマグネシウム濃度)、デオキシヌクレオチド(dNTP)、Taqポリメラーゼ及び逆転写酵素等の酵素、DNAse、RNAse阻害剤、DEPC水、滅菌水等を含み得る。また、例えば、DNAチップキットは、遺伝子又はその断片に対応するcDNA又はオリゴヌクレオチドを付着させる基質、並びに蛍光標識されるプローブを調製するための試薬、薬剤及び酵素等を含み得る。また、基質は、対照遺伝子又はその断片に対応するcDNA又はオリゴヌクレオチドを含み得る。また、例えば、キットは、ELISAを行うために必要な必須要素を含む診断キットであってもよい。ELISAキットは、タンパク質に特異的な抗体を含む。抗体は、各マーカータンパク質に高い特異性及び親和性を有し、他のタンパク質との交差反応性がほとんどない抗体であってもよく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又は組換え抗体であってもよい。また、ELISAキットは、対照タンパク質に特異的な抗体を含み得る。また、ELISAキットは、結合している抗体を検出することができる試薬、例えば標的された二次抗体、発色団、(例えば、抗体と結合した)酵素及びそれらの基質又は抗体に結合することができる他の材料等を含み得る。また、例えば、キットは、解析結果を測定し得る迅速アッセイを行うのに必要な必須要素を含むラピッドキットであってもよい。ラピッドキットは、タンパク質に特異的な抗体を含む。抗体は、各マーカータンパク質に高い特異性及び親和性を有し、他のタンパク質との交差反応性がほとんどない抗体であってもよく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又は組換え抗体であってもよい。また、ラピッドキットは、対照タンパク質に特異的な抗体を含み得る。また、ラピッドキットは、結合している抗体を検出することができる試薬、例えば、特異的抗体及び二次抗体が固定化されるニトロセルロース膜、抗体結合ビーズに結合している膜、吸収パッド及び試料パッド等の他の材料を含み得る。また、例えば、キットは、質量分析を行うのに必要な必須要素を含むMS/MSモードのMRM(多重反応モニタリング)キットであってもよい。SIM(selected ion monitoring、選択イオンモニタリング)は、質量分析計の源部分(source part)で一回の衝突によって生じるイオンを使用する方法であり、MRMは、破壊されたイオンの間から特定のイオンをもう一度選択し、別の連続的に連結されたMS源にもう一度通過させ、衝突させてイオンを得て、次いでその中でイオンを使用する、方法である。MRM(多重反応モニタリング)解析方法は、正常な対照群又は同一被験者のタンパク質発現レベルと、間葉系幹細胞で処置された被験体のタンパク質発現レベルを比較してもよく、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのマーカーにおいて遺伝子からタンパク質への発現レベルの有意な増大又は減少があるか否かを判定することによって、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測し得る。
【0039】
本発明はまた、試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ;及び測定された発現レベルを対照群の発現レベルと比較するステップを含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法を提供する。
【0040】
試料は、間葉系幹細胞で処置された全身性エリテマトーデスの患者から得てもよい。
【0041】
情報を提供する方法は、被験体から単離された生体試料中のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップを含む。具体的には、mRNA又はタンパク質の発現レベルは、マーカー遺伝子のmRNA発現レベル又は前記遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルを測定することによって決定し得る。被験体の試料からのmRNA又はタンパク質の単離は、当該分野で公知の方法に従って、当業者によって適切に行われ得る。例えば、被験体の腎臓組織を、タンパク質を抽出するためのバッファー又は核酸を抽出するためのバッファーとともにホモジナイズし、次いで遠心分離した後、得られた上清を被験体の試料として使用し得る。被験体としては、脊椎動物、哺乳動物又はヒト(ホモサピエンス:Homo sapiens)を挙げることができる。試料は、組織、細胞、全血、血清及び血漿からなる群から選択される任意の1つ又は複数であってもよい。例えば、前記方法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(競合RT-PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイム定量的RT-PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT-PCR)、リボヌクレアーゼプロテクション法、ノーザンブロット法又はDNAチップ技術を使用し得る。また、タンパク質発現レベルの測定は、例えば、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ又は免疫蛍光法を使用し得る。
【0042】
前記方法によって、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して低く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定し得る。対照試料は、間葉系幹細胞で処置されていない全身性エリテマトーデスの患者である。
【0043】
前記方法によって、CCL8の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して高く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定し得る。対照試料は、間葉系幹細胞で処置されていない全身性エリテマトーデスの患者である。
【0044】
以下、実施例によって、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、単に本発明の好ましい特定の例であり、本発明の範囲は以下の実施例の範囲に限定されない。
【実施例】
【0045】
〈実施例1〉動物実験の設計
MRL/lprマウスは、12週齢で全身性エリテマトーデスを発症する全身性エリテマトーデス疾患動物モデルであり、マウスの少なくとも50%が20週齢で死亡する。9週齢は発病前と認識され、16週齢以降は中期/晩期発症(mid/late onset)と判定され、試験モデルに適用された。メスのMRL/MpJ-Faslpr/J(以下MRL/lprと呼ばれる)マウスは、The Jackson Laboratoryから購入した。マウスの飼育環境は、21~24℃の温度、40~60%の湿度及び12時間の明/暗サイクル(08時に照明をつけ、20時に照明を消した)の特定病原体除去(SPF:specific pathogen-free)状態を維持した。固形飼料及び飲料水を滅菌し、自由に与え、全ての実験動物を使用前に一週間、動物室で環境順応させた。ヒト間葉系幹細胞はCORESTEM,Inc.から購入した。CSMB-A06培地を使用して正常骨髄由来間葉系幹細胞を培養し、第四継代(p4)細胞を実験に使用した。MRL/lprマウスに、4×10
6細胞/マウスの濃度で、マウスの12及び15週齢で尾静脈にヒト間葉系幹細胞を2回投与した。従って、生存率及び体重を毎週測定した。生存率及び重量の変化に差はなかった(
図1A及び1B)。剖検の後の重量と比較した腎臓重量は、対照群と比較して、間葉系幹細胞を投与された群において減少した(
図1C)。16又は18週齢で剖検を行い、尿、血清及び腎臓を分離して、解析アッセイに使用した。
【0046】
〈実施例2〉抗dsDNAの測定
実施例1の動物モデルから単離された血清を使用して、抗dsDNAを測定し、測定は抗dsDNA Ab ELISA(Alpha Diagnostic International)によって提供された試験方法に従って行われた。マウス血清をワーキング試料希釈剤(WSD:Working Sample Diluent)で希釈し、次いで100μlの希釈試料を抗dsDNAコートされたウェル内で処理し、室温で60分間反応させた。その後、ウェルを200μlの洗浄液で4回洗浄し、100μlの抗マウスIgG HRPを各ウェルに加え、室温で反応させた。30分後、ウェルを200μlの洗浄液で4回洗浄した。100μlのTMB溶液を各ウェルに加え、次いで色を観察し、次いで10分後に100μlの停止液を加えて反応を停止させた。最後に、450nmでOD値を測定した。MRL/lprマウスの血液中の抗dsDNA Abの濃度は12週齢の後に増大し、間葉系幹細胞を投与した時に減少した(
図1D)。
【0047】
〈実施例3〉総IgGの測定
実施例1の動物モデルから単離した血清を使用して総IgGを測定し、測定はTotal IgG ELISA(Thermo Fisher Scientific)によって提供された試験方法に従って行った。ELISAの96ウェルにおいて、捕捉抗体及びコーティングバッファーを1:250の比で希釈し、4~18時間コートした。ウェルを200μlの洗浄液で2回洗浄し、250μlのブロッキングバッファーをウェルに加え、次いで室温で2時間反応させた。その後、ウェルを200μlの洗浄液で2回洗浄し、マウス血清をアッセイバッファーA(1x)で希釈して、試料を調製した。90μlのアッセイバッファーA(1x)、50μlの検出抗体及び10μlの標準又は試料を各ウェルに加え、室温で3時間反応させた。反応が完了した後、ウェルを洗浄液で洗浄した。100μlの基質溶液を各ウェルに加え、次いで5分間反応させ、100μlの停止液を加えて反応を停止させた。最後に、450nm~570nmで値を測定した。MRL/lprマウスの血液中の総IgGの濃度もまた、12週齢から増大し、間葉系幹細胞を投与された場合に減少した(
図1E)。
【0048】
〈実施例4〉タンパク尿の測定
単離された尿を使用してタンパク尿を測定し、測定はPierce 660nm Protein Assay(Thermo Fisher Scientific)によって提供された試験方法に従って行った。マウス尿をPBSで希釈し、次いで10μlの希釈試料を150μlのタンパク質アッセイ試薬と室温で反応させ、10分後、660nmでOD値を測定した。尿を使用したタンパク尿はまた、対照群と比較して、間葉系幹細胞を投与された群で減少した(
図1F)。MRL/lprマウスにおいて、間葉系幹細胞が全身性エリテマトーデスの発症を緩和する効果を有したことが確認された。
【0049】
〈実施例5〉定量的リアルタイムPCR(qPCR)
ケモカインネットワークを確認するために、MRL/lprマウスの腎臓を使用してケモカインの遺伝子発現を測定した。TRIZOL試薬(Invitrogen)を使用して、全RNAを腎臓組織から単離した。1μgの全RNAの濃度でcDNAを合成した。50ngの濃度でSYBRグリーンプローブを使用して、合成cDNAでqPCRを行った。測定されたケモカインはCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CCL20、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL16及びCX3CL1であり、そのほとんどは炎症と関連するケモカインとして公知である。試験の結果、MRL/lprマウスは、9週齢と比較して、16週齢でケモカインの増大した発現を示し、これは全身性エリテマトーデスの発症によって引き起こされた現象であると判定された。間葉系幹細胞を投与された群は減少したケモカインの発現を示したことが確認された(
図2A)。炎症と関連するCCL2、3、4、5及びCXCL9、10は間葉系幹細胞が投与された場合に減少するが、特にCCL8はマウスの月齢に従って増大し、間葉系幹細胞が投与された場合にさらに増大することが確認された。9週齢及び16週齢の値の変化においても、CX3CL1を除く全てのケモカインは、9週齢と比較して、16週齢で増大した。16週齢で、対照群及び間葉系幹細胞を投与された群の値の変化を解析した結果、ほとんどのケモカインが減少したが、CCL8及びCXCL16のケモカインだけが、間葉系幹細胞を投与された場合に増大した(
図2B)。
【0050】
〈実施例6〉ケモカインの測定
腎臓における遺伝子発現の解析に基づいて全身性免疫応答を確認するために、血清中のケモカインの変化を測定した。間葉系幹細胞の投与に特異的に反応した炎症性ケモカインCCL2及びCCL5及びCCL8を測定した。測定は、CCL2、CCL5及びCCL8の測定キット(R&D SYSTEMS)によって提供された試験方法に従って行った。ELISA用の96ウェルのキットにおける濃度に従って捕捉抗体をPBSで希釈し、室温で18時間コートした。ウェルを200μlの洗浄液で2回洗浄し、300μlの試薬希釈液をウェルに加え、次いで室温で1時間反応させた。その後、ウェルを200μlの洗浄液で2回洗浄し、マウス血清を試薬希釈液(1x)で希釈して、試料を調製した。100μlの標準又は試料を各ウェルに添加し、室温で2時間反応させた。反応が完了した後、ウェルを洗浄液で洗浄した。キットにおける濃度に従って検出抗体を試薬希釈液で希釈し、2時間反応させた。反応が完了した後、ウェルを洗浄液で洗浄した。ストレプトアビジン-HRPを試薬希釈液で40倍に希釈し、20分間反応させた。反応が完了した後、ウェルを洗浄液で洗浄した。100μlの基質溶液を各ウェルに加え、次いで20分間反応させ、50μlの停止液を加えて反応を停止させた。最後に、450nm~540nmで値を測定した。
【0051】
遺伝子発現におけるように、全身性エリテマトーデスの発症とともに血清中のCCL2、CCL5及びCCL8が増大した(
図3)。CCL2及びCCL5は減少したが、CCL8は間葉系幹細胞を投与された血清中であってもさらに増大したことが確認された。全身性エリテマトーデスにおいてCCL2、CCL5及びCCL8を測定した場合に、全身性エリテマトーデスの発症及び間葉系幹細胞の効果を予測するためのバイオマーカーとして利用し得ることが確認された。
【0052】
〈実施例7〉IFNの発現レベルの測定
発症の前の9週齢及び中期発症段階(mid-onset stage)の間の16週齢のMRL/lprマウスの腎臓を使用して、サイトカインの遺伝子発現を測定した。TRIZOL試薬(Invitrogen)を使用して、全RNAを腎臓組織から単離した。1μgの全RNAの濃度でcDNAを合成した。50ngの濃度でSYBRグリーンプローブを使用して、合成cDNAでqPCRを行った。MRL/lprマウスにおいて、マウスの月齢が増大すると、全てのサイトカインが増大し、間葉系幹細胞が投与された場合に減少したことが確認された(
図4A)9週齢及び16週齢で値の変化の解析においても、IFNファミリーの遺伝子発現率は、他のサイトカインと比較して最も高く、9週齢と比較して、16週齢で3倍以上増大した(
図4B)。従って、全身性エリテマトーデスの病態形成においてIFNが主要な役割を果たすことが再び確認された。
【0053】
〈実施例8〉CHI3L1のELISA測定
炎症及び細胞増殖の誘導と関連するCHI3L1もまた全身性エリテマトーデスに応答するか否かを確認することによって、本発明者らは、CHI3L1を、全身性エリテマトーデスの発症及び間葉系幹細胞による治療効果を予測するためのバイオマーカーとして適用し得るか否かを調べた。単離された血清を使用してCHI3L1を測定し、測定はマウスチキナーゼ3様1(R&D SYSTEMS)によって提供された試験方法に従って行った。使用前に、アッセイ希釈液で血清を500倍に希釈した。MRL/lprマウスにおいて、腎臓におけるCHI3L1の遺伝子発現(
図5A)及び血清中のCHI3L1の生成(
図5B)は、9週齢と比較して、16週齢で増大した。従って、間葉系幹細胞が投与された場合に、腎臓におけるCHI3L1の遺伝子発現及び血清中のCHI3L1の生成が統計的に有意に減少したことが確認された。従って、CHI3L1を、全身性エリテマトーデスの発症及び間葉系幹細胞による治療効果を予測するための潜在的なバイオマーカーとして利用することができた。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-
β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物。
【請求項2】
mRNA発現レベルを測定するための薬剤が、mRNAに特異的に結合するプライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドである、請求項1に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物。
【請求項3】
タンパク質発現レベルを測定するための薬剤が、タンパク質又はタンパク質の断片に特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキット。
【請求項5】
キットがRT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)キット、DNAチップキット、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)キット、プロテインチップキット、ラピッドキット又はMRM(多重反応モニタリング)キットである、請求項4に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキット。
【請求項6】
試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-
β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ;及び
測定された発現レベルを対照群の発現レベルと比較するステップ
を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項7】
mRNA発現レベルの測定が、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(競合RT-PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイム定量的RT-PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT-PCR)、リボヌクレアーゼプロテクション法、ノーザンブロット法又はDNAチップ技術を使用する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項8】
タンパク質発現レベルの測定が、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ又は免疫蛍光法を使用する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項9】
試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-
β又はCHI3L1の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して低く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【請求項10】
CCL8の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して高く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定する、請求項6に記載の、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
さらに、本発明者らは、全身性エリテマトーデスがMRL/lprマウスにおいて進行した場合、種々のケモカイン、サイトカイン及びCHI3L1の発現レベルが変化し(増大又は減少)、間葉系幹細胞の投与によって調節し得ることを確認した。典型的には、間葉系幹細胞が腎臓でCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10及びCXCL11の発現を減少させ、CCL8の発現レベルを増大させ、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17及びTGF-βの発現を減少させ、CHI3L1の発現を減少させたことが確認された。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明は、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物を提供し得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明はまた、(a)試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ;及び(b)測定された発現レベルを対照群の発現レベルと比較するステップを含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法を提供し得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
該方法によって、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-β、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α又はCHI3L1の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して低く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定し得る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明によれば、血液中の抗dsDNA Ab、血液中の総IgG、及びタンパク尿レベル等の既存のバイオマーカーとともに、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1を利用して、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明は、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのバイオマーカー組成物を提供し得る。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「mRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するための薬剤」は、全身性エリテマトーデスの患者における間葉系幹細胞での処置の後に増大又は減少するマーカーである、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定することによって、マーカーの検出及び/又は定量化に使用し得る分子をいう。具体的には、遺伝子のmRNA発現レベルを測定するための薬剤は、mRNAに特異的に結合するプライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドであってもよい。この点については、遺伝子の核酸情報がgenebank等で公知であるので、当業者は、配列に基づいてこれらの遺伝子の特定の領域を特異的に増幅するプライマー又はプローブを設計し得る。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本発明は、組成物を含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのキットを提供する。組成物の詳細は上述の通りである。キットは、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのマーカーである、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-β、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-α若しくはCHI3L1のタンパク質発現レベル、又は前記遺伝子のmRNA若しくはタンパク質の発現レベルを測定することによって、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測し得る。キットは、全身性エリテマトーデスの患者における間葉系幹細胞の治療効果を予測するためのマーカー遺伝子のmRNA発現レベルを測定するための薬剤、例えば、遺伝子に特異的に結合するプライマー対、プローブ又はアンチセンスヌクレオチドを含み得、タンパク質発現レベルを測定するための薬剤、例えばマーカータンパク質に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合断片を含み得る。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
本発明はまた、試料由来のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップ;及び測定された発現レベルを対照群の発現レベルと比較するステップを含む、全身性エリテマトーデスに対する間葉系幹細胞の治療効果を予測するための情報を提供する方法を提供する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
情報を提供する方法は、被験体から単離された生体試料中のCCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL8、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1のmRNA又はタンパク質の発現レベルを測定するステップを含む。具体的には、mRNA又はタンパク質の発現レベルは、マーカー遺伝子のmRNA発現レベル又は前記遺伝子によってコードされるタンパク質の発現レベルを測定することによって決定し得る。被験体の試料からのmRNA又はタンパク質の単離は、当該分野で公知の方法に従って、当業者によって適切に行われ得る。例えば、被験体の腎臓組織を、タンパク質を抽出するためのバッファー又は核酸を抽出するためのバッファーとともにホモジナイズし、次いで遠心分離した後、得られた上清を被験体の試料として使用し得る。被験体としては、脊椎動物、哺乳動物又はヒト(ホモサピエンス:Homo sapiens)を挙げることができる。試料は、組織、細胞、全血、血清及び血漿からなる群から選択される任意の1つ又は複数であってもよい。例えば、前記方法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、競合逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(競合RT-PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイム定量的RT-PCR)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(定量的RT-PCR)、リボヌクレアーゼプロテクション法、ノーザンブロット法又はDNAチップ技術を使用し得る。また、タンパク質発現レベルの測定は、例えば、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色、免疫沈降アッセイ、補体結合アッセイ又は免疫蛍光法を使用し得る。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
前記方法によって、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL11、CCL17、CCL19、CXCL9、CXCL10、CXCL11、IFN、IL-1β、IL-6、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-10、IL-17、TGF-β又はCHI3L1の遺伝子発現レベルが対照試料のものと比較して低く測定される場合に、間葉系幹細胞が治療効果又は優れた治療効果を有すると判定し得る。対照試料は、間葉系幹細胞で処置されていない全身性エリテマトーデスの患者である。
【国際調査報告】