IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニーの特許一覧

特表2022-551056固定排出源の排気ガス中のCO及びNOxの両方を処理するための多機能触媒物品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】固定排出源の排気ガス中のCO及びNOxの両方を処理するための多機能触媒物品
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/48 20060101AFI20221130BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20221130BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221130BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20221130BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221130BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20221130BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20221130BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20221130BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20221130BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B01J29/48 A
B01J37/02 101C
B01J37/02 301C
B01J37/00 D ZAB
B01J35/04 301N
B01J35/04 301P
B01D53/86 222
B01D53/86 245
B01D53/94 222
B01D53/94 245
F01K23/10 U
F02C7/00 B
F02C6/18 A
F02G5/02 A
F23J15/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517171
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2020076437
(87)【国際公開番号】W WO2021058484
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/907,076
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504109285
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アンダーセン、ポール ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベア、フェルディナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブランドマイヤー、マリア テレジア
(72)【発明者】
【氏名】ドーラ、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】デュラン マーティン、デジレ
(72)【発明者】
【氏名】クロイダー、ハイケ
【テーマコード(参考)】
3G081
3K070
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G081BC07
3K070DA02
3K070DA06
3K070DA13
3K070DA26
3K070DA81
3K070DA83
4D148AA06
4D148AA08
4D148AA13
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB08
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA01Y
4D148BA03Y
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08X
4D148BA16Y
4D148BA18Y
4D148BA19X
4D148BA23X
4D148BA26Y
4D148BA27X
4D148BA28X
4D148BA31X
4D148BA35X
4D148BA37Y
4D148BA38Y
4D148BA41X
4D148BA42X
4D148BB02
4D148BB17
4D148DA03
4D148DA11
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BA13A
4G169BA14A
4G169BA17
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC50B
4G169BC51B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA02
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA13
4G169CA14
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EA08
4G169EA19
4G169EA20
4G169EB01
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EC28
4G169EE09
4G169FA01
4G169FB14
4G169FB18
4G169FB23
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB67
4G169FC02
4G169FC08
4G169ZA01A
4G169ZA11B
4G169ZD01
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF09A
4G169ZF09B
(57)【要約】
固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品は、両端部で開放され、その軸方向長さに沿って延在し、かつ使用中に、燃焼排気ガスが通って流れる1つ以上のチャネルを含むハニカムモノリス基材を含み、その触媒物品は第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分との組み合わせを含む、触媒組成物を含む。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品であって、前記物品は、両端部で開放され、その軸方向長さに沿って延在し、かつ使用中に、燃焼排気ガスが通って流れる1つ以上のチャネルを含むハニカムモノリス基材を含み、前記触媒物品は、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、の組み合わせを含む、触媒組成物を含む、多機能触媒物品。
【請求項2】
貴金属を全く含まない、請求項1に記載の多機能触媒物品。
【請求項3】
前記触媒組成物は、前記多機能触媒物品中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムで含浸されている、請求項1に記載の多機能触媒物品。
【請求項4】
前記触媒組成物が、耐火金属酸化物担体材料上に予め固定された、前記多機能触媒物品中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含む、請求項1に記載の多機能触媒物品。
【請求項5】
前記多機能触媒物品の全体としての前記パラジウムの担持量が、0.5~350gft-3、任意選択的に3~20gft-3である、請求項3又は4に記載の多機能触媒物品。
【請求項6】
前記第2の成分が、銅、マンガン、コバルト、セリウム、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項7】
前記第2の成分が、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、及びランタンを含む混合酸化物(MnMgAlLaOx)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項8】
前記第1のバナジウム含有SCR触媒成分が、金属酸化物担体上に担持された酸化バナジウムであり、前記金属酸化物担体が、チタニア、シリカ安定化チタニア、又はチタニアとシリカ安定化チタニアとの混合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項9】
前記第1のバナジウム含有SCR触媒成分の前記金属酸化物担体が、酸化タングステンを含む、請求項8に記載の多機能触媒物品。
【請求項10】
前記第1のバナジウム含有SCR触媒成分の前記酸化バナジウムが、バナジン酸鉄を含む、請求項8又は9に記載の多機能触媒物品。
【請求項11】
前記触媒組成物が、全体として前記触媒組成物の総重量に基づいて、Vとして計算されたバナジウムを0.5~5.0重量パーセント、好ましくは、1.0~3.0重量%含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項12】
前記触媒組成物が、前記遷移金属鉄、銅、ニッケル、コバルト、若しくは亜鉛又はこれらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせと任意にイオン交換された、前記第3の結晶性モレキュラーシーブ成分を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項13】
(i)第2の成分中に存在する全ての遷移金属は、前記第3の結晶性モレキュラーシーブ成分中でイオン交換された前記遷移金属とは異なるか、又は
(ii)前記第2の成分中の1つ以上の遷移金属は、前記第3の結晶性モレキュラーシーブ成分中のイオン交換された前記金属と同じであり、前記触媒組成物中に存在する前記金属の量は、前記第3の結晶性モレキュラーシーブ成分の前記イオン交換容量を超える、のいずれかである、請求項12に記載の多機能触媒物品。
【請求項14】
前記触媒組成物中の前記第1のバナジウム含有SCR触媒の前記第3の結晶性モレキュラーシーブ成分に対する重量比は、95:5~60:40である、請求項12又は13に記載の多機能触媒物品。
【請求項15】
前記触媒組成物が、結晶性モレキュラーシーブを含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項16】
前記チャネルは、前記ハニカムモノリス基材チャネル壁の表面によって少なくとも部分的に画定され、前記触媒組成物は、ウォッシュコート又はペーストとして前記ハニカムモノリス基材の前記チャネル壁上に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項17】
前記ハニカムモノリス基材が、有孔金網の層を含む不活性金属プレート型基材である、請求項1~16のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項18】
前記ハニカムモノリス基材として押し出された前記触媒組成物を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の多機能触媒物品。
【請求項19】
粘土、アルミナ、及び/又はガラス繊維である1つ以上の結合剤成分を含む、請求項18に記載の多機能触媒物品。
【請求項20】
第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、1つ以上の充填剤、結合剤、加工助剤、水及びドーパントと、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、の混合物を含む、触媒ウォッシュコート又はペーストである、触媒組成物。
【請求項21】
前記触媒組成物中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含み、前記パラジウムは耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されている、請求項20に記載の触媒組成物。
【請求項22】
固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための、任意選択的に請求項16に記載の多機能触媒物品として使用するための触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、前記方法は、請求項20又は21に記載の触媒ウォッシュコート又はペーストを調製することと、不活性ハニカムモノリス基材上に前記触媒ウォッシュコート又はペーストを被覆することと、得られた被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成することと、を含む、方法。
【請求項23】
前記不活性ハニカムモノリス基材上の被覆触媒組成物にパラジウム化合物の水性塩を含浸させる工程と、得られた含浸被覆ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、を含む、請求項20に従属する場合の請求項22に記載の方法。
【請求項24】
固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品として使用するための触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、前記方法は、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、1つ以上の充填剤、結合剤、加工助剤、水及びドーパントと、の混合物を含む、触媒組成物を含む触媒ウォッシュコート又はペーストを調製することと、不活性ハニカムモノリス基材上に前記触媒ウォッシュコート又はペーストを被覆することと、得られた被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成することと、焼成被覆不活性ハニカムモノリス基材のチャネル壁に、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させることと、含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成することと、を含む、方法。
【請求項25】
前記触媒組成物の混合物が、前記触媒組成物中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含み、前記パラジウムは耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記不活性ハニカムモノリス基材上の被覆触媒組成物にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、前記含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程を含み、前記パラジウム化合物の前記水性塩は、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の前記水性塩との混合物中に存在する、又は、焼成被覆不活性ハニカムモノリス基材のチャネル壁にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、前記含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程は、前記焼成被覆不活性ハニカムモノリス基材のチャネル壁に銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させ、前記含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程の前又は後に実行される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記触媒ウォッシュコートで被覆された前記不活性ハニカムモノリス基材が、軸方向長さLを有し、(i)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩のみ、(ii)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩及びパラジウム化合物の水性塩の混合物、又は(iii)パラジウム化合物の前記水性塩のみ、のうちのいずれか1つ以上をチャネル壁に含浸させる工程は、前記被覆不活性ハニカムモノリス基材の前記軸方向長さLよりも少なく、任意選択で≦0.5Lを含浸させることを含む、請求項24又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記不活性ハニカムモノリス基材が、有孔金網の層を含む金属プレート型基材である、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
水と、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、粘土、アルミナ及び/又はガラス繊維である1つ以上の結合剤成分と、の混合物を含む、押出可能な塊である触媒組成物。
【請求項30】
前記触媒組成物中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含み、前記パラジウムは耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されている、請求項29に記載の触媒組成物。
【請求項31】
固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための、任意選択的に請求項18又は19に記載の多機能触媒物品として使用するための押出触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、前記方法は、請求項29又は30に記載の押出可能な塊を調製することと、前記押出可能な塊を好適なダイを通して押し出して、長手方向に延在するチャネルのアレイを含む湿潤ハニカム形状物体を形成することと、得られた押出湿潤ハニカム形状物体を乾燥及び焼成することと、を含む、方法。
【請求項32】
前記焼成押出ハニカムモノリス基材のチャネル壁にパラジウム化合物の水性塩を含浸させる工程と、前記含浸押出ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、を含む、請求項29に従属する場合の請求項31に記載の方法。
【請求項33】
固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品として使用するための押出触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、前記方法は、水と、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、粘土、アルミナ及び/若しくはガラス繊維である1つ以上の結合剤成分と、の混合物を含む、触媒組成物を含む押出可能な塊を調製することと、前記押出可能な塊を好適なダイを通して押し出して、長手方向に延在するチャネルのアレイを含む湿潤ハニカム形状物体を形成することと、得られた押出湿潤ハニカム形状物体を乾燥及び焼成することと、前記焼成ハニカムモノリス基材のチャネル壁に、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させることと、前記含浸押出ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成することと、を含む、方法。
【請求項34】
前記押出可能な塊が、前記触媒組成物中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含み、前記パラジウムは耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記押出触媒組成物を含む前記ハニカムモノリス基材にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、含浸ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程を含み、前記パラジウム化合物の前記水性塩は、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の前記水性塩との混合物中に存在する、又は、前記焼成ハニカムモノリス基材のチャネル壁にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、前記含浸焼成ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程は、前記焼成ハニカムモノリス基材のチャネル壁に銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させ、前記含浸ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程の前又は後に実行される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記押出触媒組成物を含む前記ハニカムモノリス基材が、軸方向長さLを有し、(i)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩のみ、(ii)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩及びパラジウム化合物の水性塩の混合物、又は(iii)パラジウム化合物の前記水性塩のみ、のうちのいずれか1つ以上をチャネル壁に含浸させる工程は、前記ハニカムモノリス基材の前記軸方向長さLよりも少なく、任意選択で≦0.5Lを含浸させることを含む、請求項33又は35に記載の方法。
【請求項37】
複合したNO及びCOの排出物の固定発生源の排気ガス中の一酸化窒素及び一酸化炭素を含む窒素酸化物(NO)の還元を選択的に触媒するための排気システムであって、前記システムは、酸化触媒の下流に位置する前記排気ガスに窒素還元剤を導入するための注入器と、前記注入器の下流に位置する請求項1~19のいずれか一項に記載の触媒物品と、を含む、排気システム。
【請求項38】
熱回収蒸気発生器(HRSG)を含む、請求項37に記載の排気システム。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の排気システムを備える、発電所、工業用ヒーター、コージェネレーション発電プラント、複合サイクル発電プラント、木材燃焼ボイラ、固定ディーゼルエンジン、固定天然ガス燃焼エンジン、船舶推進エンジン、ディーゼル機関車エンジン、産業廃棄物焼却炉、都市廃棄物焼却炉、化学プラント、ガラス製造プラント、鋼製造プラント、又はセメント製造プラントである、NO及び一酸化炭素の排出物の固定発生源。
【請求項40】
前記排気システムが、熱回収蒸気発生器(HRSG)を含む、請求項39に記載のコージェネレーションプラント、好ましくは固定天然ガス燃焼エンジン。
【請求項41】
NOを含む排気ガスを処理するための方法であって、前記排気ガスは、任意選択的に、約4:1~約1:3の体積比のNO対NO、及び一酸化炭素を含み、前記方法は、
(i)NO及びNHを含有する排気ガス流を、請求項1~19のいずれか一項に記載の触媒物品と接触させる工程と、
(ii)NOの少なくとも一部をNに変換し、かつ/又はCOの少なくとも一部をCOに変換する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の両方の排出物を処理するための多機能触媒物品に関する。本発明はまた、そのような多機能触媒物品を作製するための触媒組成物、そのような多機能触媒物品を作製する方法、多機能触媒物品を含む排気システム、本発明による排気システムを含む発電所などの固定源、並びに多機能触媒物品を使用してNO及び一酸化炭素を含む排気ガスを処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス、軽質留分、又は(例えば石炭由来の)合成ガスによって燃料供給される現代の電気発電機は、ガスタービン内でガスが燃焼して第1のサイクルで発電し、ガスの燃焼から発生する熱が第2のサイクルの蒸気作動式熱エンジン内で回収される複合サイクルガスタービンを動作させる。これらの2つのサイクルの組み合わせは、システムの正味の全体的な効率を高める。第2のサイクルは、典型的には、熱回収蒸気発生器(Heat Recovery Steam Generator、HRSG)システムとして知られているもので行われ、典型的には、第1のサイクルにおけるガスの燃焼から生じる排気ガス中の窒素酸化物(oxides of nitrogen、NO)、一酸化炭素(carbon monoxide、CO)、及び未燃炭化水素(unburned hydrocarbons、HC)を含む成分を処理するための触媒成分も含む。これらの触媒成分の触媒活性は、触媒成分自体に処理される排気ガスの熱の移動によって促進される。HRSGシステム内の触媒成分の場所は、温度最適化触媒活性のために選択することができる。
【0003】
固定発生源、主に発電所、工業用ヒーター、コージェネレーションプラント(木材燃焼ボイラ、固定ディーゼル及びガスエンジン、船舶推進エンジン、ディーゼル機関車エンジン、産業及び都市廃棄物焼却炉を含む)、化学プラント、並びにガラス、鋼及びセメント製造プラントからのNOxの排出は、主要な環境問題を表す。NOxは、対流圏中のオゾンの形成、酸性雨の生成及びヒトにおける呼吸困難をもたらす。NOxは、燃焼プロセスにおいて、空気中に存在するN及びOの組み合わせによって熱的に形成される。約1,500℃を超える温度では、この反応は、Zeldovich機構と呼ばれる十分に特徴付けられた機構を介して、かなりの速度で進行する。
【0004】
様々な規制機関によって指定されたNOx排出基準を満たすために、排気(煙道)ガスの処理後の方法が必要である。そのような後処理方法の中でも、選択式触媒還元(selective catalytic reduction、SCR)法は、固定発生源からのNO排出の制御について、その効率、(N製品に対する)選択性及び経済性のために最良に開発され、世界的に広く使用されている。SCR反応は一般に、水及び窒素を形成するためのアンモニア(NH)によるNOの還元からなる。
【0005】
SCR NO還元に関与する主要な反応を反応(1)、(2)及び(3)に示す。
4NO+4NH+O→4N+6HO (1)
6NO+8NH→7N+12HO (2)
NO+NO+2NH→2N+3HO (3)
【0006】
反応(1)~(3)を促進する3種類の触媒:貴金属、金属酸化物、及び金属促進ゼオライトが開発されてきた。貴金属SCR触媒は、約200℃を超える温度で不必要にSO酸化を促進し得るため、主に低温及び天然ガス用途について考慮される。
【0007】
300~400℃の用途のために開発された様々な金属酸化物SCR触媒の中でも、アナターゼ型でチタニア上に担持され、タングスタ又はモリブデナで促進されるバナジアは、硫酸化に抵抗し、SO酸化反応に対して低い活性を有することがわかった。
【0008】
固定発生源のNO排出物の処理のための市販のゼオライトSCR触媒は、モルデナイトを含む(R.H.Heck et al,「Catalytic Air Pollution Control-Commercial Technology」,3rd Edition(2009)John Wiley&Sons,Inc.Hoboken,New Jerseyを参照されたい)。特に第12章を参照されたい。
【0009】
Fe促進ゼオライト触媒は、主に高温、すなわち最大600℃でガス燃焼コージェネレーションプラントで使用するためのSCRについて提案されており、金属酸化物触媒は熱的に不安定であり得る。
【0010】
市販のSCR触媒は、押出ハニカムモノリス、プレートの形態で、又は不活性ハニカムモノリス上のコーティングとして展開される。
【0011】
NO排出の固定発生源へのSCR法適用の背景に関するより完全な説明については、P.Forzatti,App.Cat A:General 222(2001)221-236を参照されたい。
【0012】
反応(3)は、反応(1)又は特に反応(2)と比較して比較的速い反応であることが既知であり、したがって好ましい。この目的のためにSCR触媒の上流に配設された好適な酸化触媒はまた、排気ガス中のCO及びHC成分を処理するのにも関連している。SCR触媒の上流の還元剤注入は、一般に、酸化触媒の下流で行われ、(NOxへの酸化による)アンモニアの非効率的な消費を、その結果生じるシステムの全体的な変換性能の低下と共に回避する。アンモニア注入は、アンモニア注入グリッド(ammonia injection grid、AIG)などの適切な装置を介して行うことができる。
【0013】
上記のSCR触媒のいずれかをHRSGシステム中のNOxを処理するために使用することができるが、ガス燃焼排気ガス温度は一般に、上述の金属酸化物又は金属促進ゼオライトが適切であることを必要とする。
【0014】
ガスタービン排出制御システムは、一般に、別個のCO酸化触媒(CO-Ox)、続いてアンモニア注入グリッド(AIG)及び最終的にSCR触媒床(SCR)を含む。米国特許出願公開第2016/0245139(A1)号は、空気中で燃料を燃焼させて電力を生成するための熱源を備える発電装置の排気システムを開示し、その排気システムは、流動排気ガスを受け取るように適合され、排気ガスを処理するための触媒システムを備え、その触媒システムは、第1の酸化触媒及び第2の触媒を含み、第1の酸化触媒は、流動排気ガスが第2の触媒の前に第1の酸化触媒に接触するように、熱源の下流に配置される。
【0015】
より最近では、単一触媒基材にCO酸化機能とNO還元機能とを組み合わせる提案がある。例えば、出願人の国際公開第2017/055857号は、燃焼タービンからのNOx、炭化水素、CO、SOx、及びアンモニアのうちの1つ以上を含有する排気ガス流を処理するための触媒物品であって、(a)入口端部及び軸方向長さを画定する出口端部を有する基材と、(b)1つ以上の貴金属を含む酸化触媒を含む酸化層であって、酸化層は、基材上に位置付けられ、基材の軸方向長さを覆う、酸化層と、(c)SCR触媒を含むSCR層であって、SCR層は、酸化層上に位置付けられ、酸化層の一部分に重なり合い、その部分は100%未満である、SCR層と、を含む、触媒物品を開示する。
【0016】
米国特許出願公開第2007/0110643(A1)号は、発電所のガスタービンエンジンによって生成されるような排気ガス流中のNOx、HC、及びCOの濃度を低減するための排気ガス処理装置を開示する。処理装置は、上流の還元のみの部分及びアンモニア注入装置の下流に位置する下流の還元プラス酸化部分を有する多機能触媒元素を含む。NOxの選択式触媒還元(SCR)は、化学量論的濃度を超えるアンモニアの注入によって触媒元素の上流部分で促進され、結果として生じるアンモニアスリップは、触媒元素の下流部分で酸化される。アンモニアの酸化によって生成される追加のNOxは、大気に送られる前に下流部分で更に減少する。
【0017】
米国特許第7727499号は、窒素酸化物(NOx)をアンモニアで還元するための選択式触媒還元(SCR)に供された煙道及び排気ガスから生じる過剰のアンモニア(NH)ガス(「アンモニアスリップ」)の酸化による除去の方法を開示している。より具体的には、本方法は、ゼオライト、1つ以上の貴金属、及び卑金属化合物からなるアンモニア酸化触媒を使用して、窒素酸化物(NOx)の形成を最小限に抑えながら、アンモニア及び一酸化炭素(CO)の両方の酸化を触媒する。
【0018】
米国特許出願公開第2015/0375207号は、アンモニアとの反応による煙道又は排気ガス中の一酸化炭素及び揮発性有機化合物の同時酸化並びに窒素酸化物の選択式還元のための触媒を開示しており、触媒は、パラジウム、酸化バナジウム、及び酸化チタンからなる酸化触媒の第1の層、並びに第1の層を完全に支持するタングステン、モリブデン、バナジウム、及びチタンの酸化物を含むNH-SCR触媒の第2の層を含む。
【0019】
出願人の国際公開第2014/027207号は、第1の成分と第2の成分とのブレンドを含む排気ガスを処理するための触媒組成物を開示し、第1の成分は、アルミノケイ酸塩又はフェロケイ酸塩モレキュラーシーブ成分であり、モレキュラーシーブはH形態であるか、又は1つ以上の遷移金属とイオン交換するか、のいずれかであり、第2の成分は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ、及びそれらの組み合わせから選択される金属酸化物担体上に担持された酸化バナジウムである。一実施形態では、SCR触媒及びアンモニアスリップ触媒(ammonia slip catalyst、ASC)は、連続して使用され、両方の触媒は、触媒ブレンドを含み、SCR触媒は、ASC触媒の上流である。ASC触媒を、酸化性の下層の上の上層として配設することができ、下層は、PGM触媒又は非PGM触媒を含む。基材の前部は、SCRコーティングのみで被覆することができ、後部は、アルミナ担体上にPt又はPt/Pdを更に含むことができるSCR及びASC触媒で被覆することができる。
【0020】
2019年3月22日に出願され、英国特許出願第1805312.4号(2018年3月29日出願)に対する優先権を主張する、出願人の国際出願第GB2019/050825号は、触媒活性基材を有する、燃焼排気ガスの流れを処理するための触媒物品を開示し、触媒活性基材は、使用中、燃焼排気ガスが通って流れる、触媒活性基材の軸方向長さに沿って延在する1つ以上のチャネルを含み、1つ以上のチャネルは、燃焼排気ガスの流れと接触するための第1の表面を有し、基材は、押出バナジウム含有SCR触媒材料で形成され、第1の層は、第1の表面の少なくとも一部分上に配置され、第1の層は、粒子状金属酸化物担体材料上に担持された1つ以上の白金族金属を含むアンモニアスリップ触媒組成物のウォッシュコートを含み、SCR触媒組成物のウォッシュコートを含む層は、1つ以上のチャネルの表面上に配置され、第1の層が配置される第1の表面の少なくとも一部は、銅、鉄、セリウム、若しくはジルコニウムの化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物を含む。
【0021】
白金族金属及び他の貴金属のコストは、特にガスタービン発電所などの固定排出制御の分野におけるものについて、一般的な触媒配合物の全体的なコストに対して重要である。更に、固定排出源から排気ガスを処理するための触媒配合物の白金成分は、SOのSOへの酸化を促進することができ、これにより、大気中の水(蒸気)と結合して硫酸を生成し、したがって、いわゆる「酸性雨」を含む環境への影響に寄与する。更に、パラジウムは、硫酸化によって触媒被毒を起こしやすい。したがって、固定排出源からの排気ガスを処理する際に使用するための、特にガスタービン発電所と共に使用するための排気ガス後処理触媒配合物からの白金族金属を含む貴金属を完全に取り除くことができる一方で、同様のレベルのNOx及びアンモニアスリップ制御を達成し、したがって、上記の貴金属使用に付随する問題を低減又は回避することが非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【0022】
本発明者らは、非常に驚くべきことに、特定の卑金属成分を既知のバナジウム含有SCR触媒材料の配合物に添加することによって、得られた触媒配合物が、費用のかかる貴金属又は白金族金属を必要とせずに一酸化炭素酸化活性及びNH-SCR NO還元活性の二重機能性を有することを発見した。しかしながら、触媒配合物と、配合物中の唯一の貴金属としてパラジウム成分を組み合わせることによって、他の貴金属、特に白金の使用と比較して一酸化炭素酸化を改善することができ、NO変換を維持することができる。得られた触媒(貴金属が含まれないか、パラジウムを含有するかにかかわらず)は、NH-SCR及びアンモニアスリップ活性の各々を促進するために別個の基材を必要とする従来技術のシステムよりもコンパクトであり得、そのためより低いコスト(より低い触媒体積及び低減された包装コスト)であり得る。更に、アンモニアスリップ触媒機能性を促進するために、基材上に白金族金属含有ウォッシュコートを含む貴金属の追加の層を被覆する必要がなく、かつ/又は排気処理システム内のより少ない基材は、より低い背圧を有し得るため、基材は、使用中により低い背圧を有し得る。貴金属/白金族金属の除去に加えてこれらの利点のうちの1つ以上は、非常に望ましい。
【0023】
第1の態様によれば、本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品であって、物品は、両端部で開放され、その軸方向長さに沿って延在し、かつ使用中に、燃焼排気ガスが通って流れる1つ以上のチャネルを含むハニカムモノリス基材を含み、その触媒物品は第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分との組み合わせを含む、触媒組成物を含む、多機能触媒物品を提供する。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、1つ以上の充填剤、結合剤、加工助剤、水及びドーパントと、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、の混合物を含む触媒ウォッシュコート又はペーストである触媒組成物を提供する。
【0025】
第3の態様によれば、本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品として使用するための触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、その方法は、第2の態様による触媒ウォッシュコート又はペーストを調製する工程と、不活性ハニカムモノリス基材上に触媒ウォッシュコート又はペーストを被覆する工程と、得られた被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0026】
第4の態様によれば、本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品として使用するための触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、その方法は、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と1つ以上の充填剤、結合剤、加工助剤、水及びドーパントとの混合物を含む触媒組成物を含む触媒ウォッシュコート又はペーストを調製する工程と、不活性ハニカムモノリス基材上に触媒ウォッシュコート又はペーストを被覆する工程と、得られた被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、焼成被覆不活性ハニカムモノリス基材のチャネル壁に、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させる工程と、含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0027】
第5の態様によれば、本発明は、水と、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、粘土、アルミナ及び/又はガラス繊維である1つ以上の結合剤成分との混合物を含む、押出可能な塊である触媒組成物を提供する。
【0028】
第6の態様によれば、本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品として使用するための押出触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、その方法は、本発明の第6の態様による押出可能な塊を調製する工程と、押出可能な塊を好適なダイを通して押し出して、長手方向に延在するチャネルのアレイを含む湿潤ハニカム形状物体を形成する工程と、得られた押出湿潤ハニカム形状物体を乾燥及び焼成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0029】
第7の態様によれば、本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品として使用するための押出触媒組成物を含むハニカムモノリス基材を作製する方法であって、その方法は、水と、第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分と、粘土、アルミナ及び/若しくはガラス繊維である1つ以上の結合剤成分との混合物を含む、触媒組成物を含む押出可能な塊を調製する工程と、押出可能な塊を好適なダイを通して押し出して、長手方向に延在するチャネルのアレイを含む湿潤ハニカム形状物体を形成する工程と、得られた押出湿潤ハニカム形状物体を乾燥及び焼成する工程と、焼成ハニカムモノリス基材のチャネル壁に、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させる工程と、含浸押出ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0030】
第8の態様によれば、本発明は、複合したNO及びCOの排出物の固定発生源の排気ガス中の一酸化窒素及び一酸化炭素を含む窒素酸化物(NO)の還元を選択的に触媒するための排気システムであって、そのシステムは、酸化触媒の下流に位置する排気ガスに窒素還元剤を導入するための注入器と、注入器の下流に位置する本発明の第1の態様による触媒物品と、を含む、排気システムを提供する。
【0031】
第9の態様によれば、本発明は、本発明の第8の態様による排気システムを備える、発電所、工業用ヒーター、コージェネレーション発電プラント、複合サイクル発電プラント、木材燃焼ボイラ、固定ディーゼルエンジン、固定天然ガス燃焼エンジン、船舶推進エンジン、ディーゼル機関車エンジン、産業廃棄物焼却炉、都市廃棄物焼却炉、化学プラント、ガラス製造プラント、鋼製造プラント、又はセメント製造プラントである、NO及び一酸化炭素の排出物の固定発生源を提供する。
【0032】
第10の態様によれば、本発明は、NOを含む排気ガスを処理するための方法であって、排気ガスは任意選択的に、約4:1~約1:3の体積比のNO対NO、及び一酸化炭素を含み、その方法は、
(i)NO及びNHを含む排気ガス流を、本発明の第1の態様による触媒物品と接触させる工程と、
(ii)NOの少なくとも一部をNに変換し、かつ/又はCOの少なくとも一部をCOに変換する工程と、を含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これから、本開示を更に説明する。以下の節において、本開示の異なる態様/実施形態は、より詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。製品に関して開示された特徴は、方法に関連して開示された特徴と組み合わされてもよく、逆もまた同様であることが意図される。
【0034】
更に、本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は、定義「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」と交換することができる。用語「含む(comprising)」は、指定された要素が必須であることを意味することを意図するものであるが、他の要素が追加されてもよく、それでもなお、請求項の範囲内に構成を形成してもよい。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された材料又は工程、並びに、特許請求される発明の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しないものに請求項の範囲を限定する。用語「からなる(consisting of)」は、通常それに関連する不純物を除いて、列挙されたもの以外の材料を含めることに対して請求項を閉鎖する。
【0035】
本発明は、固定排出源からの燃焼排気ガスの流れにおけるNO及び一酸化炭素の排出物の両方を処理するための多機能触媒物品であって、物品は、両端部で開放され、その軸方向長さに沿って延在し、かつ使用中に、燃焼排気ガスが通って流れる1つ以上のチャネルを含むハニカムモノリス基材を含み、その触媒物品は第1のバナジウム含有SCR触媒成分と、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分と、任意選択的に第3の結晶性モレキュラーシーブ成分との組み合わせを含む、触媒組成物を含む、多機能触媒物品を提供する。
【0036】
すなわち、本発明の基本的及び新規の特徴は、(触媒活性に実質的に寄与しない充填剤、結合剤などは別として)2つの触媒成分、つまり第1のバナジウム含有SCR触媒成分、及び銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である第2の成分、の組み合わせである触媒組成物を含む触媒物品から本質的になる。
【0037】
第2の成分を第1の成分と組み合わせることができるいくつかの方法がある。1つの方法では、第1の成分は、第2の成分を含む粒子と物理的に混合又はブレンドすることができる。この物理的混合物は、不活性基材モノリス上に被覆するためのウォッシュコートの形態、金属プレート型ハニカムモノリス基材で使用するための有孔金網に押圧するためのペースト、又はハニカムモノリス基材の形態に押し出すための押出可能な塊であり得る。
【0038】
第2の方法では、第1の成分は、不活性基材モノリス上にウォッシュコートされるか、又は第1の成分を含むペーストが、金属プレート型ハニカムモノリス基材で使用するために有孔金網にプレスされるか、又は第1の成分を含む組成物が、ハニカムモノリス基材形態に押し出され、次いで、第2の成分は、第1の成分を含むウォッシュコート、ペースト又は押出物を第2の成分の化合物の水溶液で含浸させることによって、第1の成分と組み合わされる。
【0039】
そのような方法は、本発明の第3、第4、第6、及び第7の態様に従って定義される。
【0040】
本発明の第3の態様に関連して使用するための触媒組成物は、本発明の第2の態様に従って定義され、本発明の第5の態様に関連して使用するための触媒組成物は、本発明の第4の態様に従って定義される。
【0041】
更に、多機能触媒物品は、貴金属を含まなくてもよい(すなわち、貴金属を含まない)か、又は、パラジウムは、唯一の貴金属として、ウォッシュコート、ペースト若しくは押出物にパラジウムを含浸させることによって、若しくはウォッシュコート、ペースト、若しくは押出可能な塊の混合物自体中の耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されたパラジウムを含むことによって、少なくとも第1の成分と組み合わせることができる。
【0042】
上記の特徴は、以下のように、本発明による方法の様々な特定のモードで定義される。
【0043】
第3の態様による方法は、不活性ハニカムモノリス基材上の被覆触媒組成物にパラジウム化合物の水性塩を含浸させる工程と、得られた含浸被覆ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程と、を含むものとして更に指定することができる。
【0044】
第4の態様による方法は、触媒組成物中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含む工程を含むものとして更に指定することができ、パラジウムは耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されていたか、又は不活性ハニカムモノリス基材上の被覆触媒組成物にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程によるものであり、パラジウム化合物の水性塩は、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩との混合物中に存在する、又は焼成被覆不活性ハニカムモノリス基材のチャネル壁にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程は、焼成被覆不活性ハニカムモノリス基材のチャネル壁に銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させ、含浸被覆不活性ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程の前又は後に実行される。
【0045】
含浸工程を含む第4の態様による方法では、触媒ウォッシュコートで被覆された不活性ハニカムモノリス基材は、軸方向長さLを有し、(i)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩のみ、(ii)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩及びパラジウム化合物の水性塩の混合物、又は(iii)パラジウム化合物の水性塩のみ、のうちのいずれか1つ以上をチャネル壁に含浸させる工程は、被覆不活性ハニカムモノリス基材の軸方向長さLよりも少なく、任意選択で≦0.5Lを含浸させる工程を含み得る。
【0046】
不活性ハニカムモノリス基材がペーストで被覆されている方法では、不活性ハニカムモノリス基材は、好ましくは、有孔金網の層を含む金属プレート型基材である。
【0047】
本発明の第6の態様の方法は、焼成押出ハニカムモノリス基材のチャネル壁にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、含浸押出ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程によって更に指定することができる。
【0048】
第7の態様による方法は、触媒組成物中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含む工程を含むものとして更に指定することができ、パラジウムは耐火金属酸化物担体材料上に予め固定されていたか、押出触媒組成物を含むハニカムモノリス基材にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、含浸ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程を含むことによるものであり、パラジウム化合物の水性塩は、銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩との混合物中に存在する、又は焼成ハニカムモノリス基材のチャネル壁にパラジウム化合物の水性塩を含浸させ、含浸焼成ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程は、焼成ハニカムモノリス基材のチャネル壁に銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル、若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩を含浸させ、含浸ハニカムモノリス基材を乾燥及び焼成する工程の前又は後に実行される。
【0049】
含浸工程を含む第7の態様による方法では、押出触媒組成物を含むハニカムモノリス基材は、軸方向長さLを有し、(i)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩のみ、(ii)銅、マンガン、コバルト、モリブデン、ニッケル若しくはセリウムを含む遷移金属からなる群から選択される遷移金属の化合物、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物の水性塩及びパラジウム化合物の水性塩の混合物、又は(iii)パラジウム化合物の水性塩のみ、のうちのいずれか1つ以上をチャネル壁に含浸させる工程は、ハニカムモノリス基材の軸方向長さLよりも少なく、任意選択で≦0.5Lを含浸させる工程を含み得る。
【0050】
一部の用途では、ハニカムフロースルーモノリスは、好ましくは、高いセル密度、例えば、1平方インチ当たり約600~800個のセル、及び/又は約0.18~0.35mm、好ましくは約0.20~0.25mmの平均内壁厚を有する。特定の他の用途では、ハニカムフロースルーモノリスは、好ましくは、1平方インチ当たり約150~600個、より好ましくは1平方インチ当たり約200~400個の低いセル密度を有する。好ましくは、ハニカムモノリスは多孔質である。
【0051】
本発明の第1の態様による多機能触媒物品の態様は、以下のように定義することができる。
【0052】
一実施形態では、多機能触媒は、貴金属を含まない。
【0053】
好ましい実施形態では、触媒組成物は、多機能触媒物品中に存在する唯一の貴金属としてパラジウムを含む。一構成では、触媒組成物にパラジウムが含浸される。別の構成では、パラジウムは、耐火金属酸化物担体材料上に事前固定され、少なくとも第1の成分と組み合わされる。
【0054】
パラジウムを含む実施形態では、パラジウム担持量は、約0.5~約350gft-3であり得る。約3~約20gft-3のパラジウム担持量は、発電所である固定発生源、例えばガスタービンを含むコージェネレーションプラントと共に使用するのが好ましい。約20<約350gft-3のパラジウム担持量は、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas、CNG)エンジン用途に有用である。
【0055】
好ましくは、第2の成分は、銅、マンガン、コバルト、セリウム、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の混合物を含む。これに関して、出願人は、ウォッシュコート、ペースト、又は押出可能な塊の混合物中にセリア-ジルコニア混合酸化物(CeZrOx)を含み、次いで得られた組成物に銅及びマンガンを含浸させることが、有益な結果を提供することを見出した。特定の実施形態では、第2の成分は、ウォッシュコート、ペースト、又は押出可能な塊の混合物に含まれるマンガン、マグネシウム、アルミニウム、及びランタンを含む混合酸化物(MnMgAlLaOx)である。
【0056】
第1のバナジウム含有SCR触媒成分を作製する方法は既知である。好ましくは、第1のバナジウム含有SCR触媒成分は、金属酸化物担体上に担持された酸化バナジウム(多くの場合Vとして引用される)を含み、金属酸化物担はチタニア、シリカ安定化チタニア、又はチタニアとシリカ安定化チタニアとの混合物である。存在する場合、チタニアは、より高い表面積を有するため、アナターゼであることが好ましい。シリカ-チタニア混合酸化物は、存在する場合、シリカとチタニアとのバランスによって特徴付けられてもよい。好ましくは、シリカ-チタニア混合酸化物は、50重量%未満のシリカ、好ましくは5~25重量%、より好ましくは7~15重量%のシリカを含有する。
【0057】
最も好ましくは、第1のバナジウム含有SCR触媒成分の金属酸化物担体は、酸化タングステンを含み、これは、酸化バナジウムの安定性を改善し、全体的な触媒活性を改善する。
【0058】
第1のバナジウム含有SCR触媒成分の酸化バナジウムは、バナジン酸鉄の形態で提供することができる。
【0059】
最終生成物の触媒組成物中に存在するバナジウムは、全体として触媒組成物の総重量に基づいて、Vとして計算されたバナジウムを0.5~5.0重量パーセント、好ましくは、1.0~3.0重量%を含み得る。
【0060】
本発明による多機能触媒は、第1及び第2の成分のみを含む実施形態、すなわち、触媒組成物が結晶性モレキュラーシーブを含まない実施形態に拡大適用する。押出バナジウム含有基材の例は、国際公開第2011/092521号、同第2009/093071号、及び同第2013/017873号に提供されている。しかしながら、代替成分において、触媒組成物は、遷移金属鉄、銅、ニッケル、コバルト、若しくは亜鉛又はこれらのうちのいずれか2つ以上の組み合わせと任意にイオン交換された第3の結晶性モレキュラーシーブ成分を含む。第1及び第3の成分を含む触媒組成物の詳細は、出願人の国際公開第2014/027207号に見出すことができる。
【0061】
第3の結晶性モレキュラーシーブは、フェロケイ酸塩モレキュラーシーブ(非晶質鉄モレキュラーシーブとしても知られる)、又は非ゼオライトモレキュラーシーブ(シリコアルミノリン酸塩(silicoaluminophophate))であり得る。結晶性モレキュラーシーブは、遷移金属で促進することができるか、又はH形態として存在することができる。結晶性モレキュラーシーブはまた、MFI、BEA、又はFER骨格型を有するか、又はそれらの任意のアイソタイプであり得る。しかしながら、出願人の国際公開第2014/027207号を更に区別するために、この段落における特徴のうちのいずれか1つ以上は、本発明による第1~第10の態様のうちのいずれか1つ以上の定義から放棄され得る。
【0062】
好ましくは、存在する場合、本発明で使用するための第3の結晶性モレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩ゼオライトである。ゼオライトは、国際ゼオライト協会(LZA:International Zeolite Association)によって公開されたゼオライト構造のデータベースに列挙された骨格構造のうちのいずれか1つを有する微孔性アルミノケイ酸塩である。本発明で使用するための好ましい骨格構造としては、CHA、FAU、BEA、MFI、MOR型のものが挙げられるが、これらに限定されない。これらの構造を有するゼオライトの非限定的な例としては、チャバザイト、フォージャサイトタイト、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、βゼオライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、及びZSM-5が挙げられる。ゼオライトは、細孔径、例えばゼオライトの骨格中に存在する四面体原子の最大数によって分類することができる。本明細書に定義されるように、CHAなどの小細孔ゼオライトは、最大環サイズの8個の四面体原子を含有し、一方、中細孔ゼオライト、例えばMFIは、最大環サイズの10個の四面体原子を含有し、BEAなどの大細孔ゼオライトは、最大環サイズの12個の四面体原子を含有する。メソ細孔ゼオライトも知られているが、これらは、最大環サイズの12個を超える四面体原子を有する。本発明の層で使用するSCR触媒組成物の最も好ましいゼオライト骨格は、小細孔ゼオライトであり、特に、骨格型AEI、AFX、CHA、DDR、ERI、ITE、LEV、LTA、STI若しくはSFWを有するもの、又はCHA若しくはAEIが特に好ましい。
【0063】
アルミノケイ酸塩ゼオライトは、少なくとも約5から、好ましくは少なくとも約20から、有用な範囲が約10~200のSiO/Alとして定義されるシリカ/アルミナモル比(SAR)を有することができる。最も好ましくは、アルミノケイ酸塩のSAR範囲は10~30であり、これにより、活性、すなわちアルミナによって提供されるアニオン性部位へのイオン交換能と、シリカ含有量によって提供される熱耐久性との間の平衡がもたらされる。
【0064】
第2の成分の遷移金属は、国際公開第2014/027207号に開示された組成物のゼオライト中でイオン交換するために開示された遷移金属と重複することが理解されるであろう。したがって、国際公開第2014/027207号に開示された組成物を区別するために、(i)第2の成分中に存在する全ての遷移金属は、第3の結晶性モレキュラーシーブ成分中でイオン交換された遷移金属とは異なり得るか、又は(ii)第2の成分中の1つ以上の遷移金属は、第3の結晶性モレキュラーシーブ成分中でイオン交換された金属と同じであり、触媒組成物中に存在する金属の量は、第3の結晶性モレキュラーシーブ成分のイオン交換容量を超える。これに関して、本発明の第1の態様による触媒組成物中に存在する金属の量は、第3の結晶性モレキュラーシーブ成分のイオン交換容量を超えることができ、第3の結晶性モレキュラーシーブ成分のイオン交換容量の少なくとも3倍(x3)、少なくともx4、少なくともx5、少なくともx6、少なくともx7、少なくともx8、少なくともx9、又は少なくともx10など、第3の結晶性モレキュラーシーブ成分のイオン交換容量の少なくとも2倍であり得る。
【0065】
存在する場合、触媒組成物中の第1のバナジウム含有SCR触媒成分の第3の結晶性モレキュラーシーブ成分に対する重量比は、95:5~60:40であり得る。
【0066】
本発明による多機能触媒は、多くの形態をとることができる。1つの構成では、ハニカムモノリス基材は不活性であり、例えば、コーディエライトなどのセラミックで作製され、チャネルは、ハニカムモノリス基材チャネル壁の表面によって少なくとも部分的に画定され、触媒組成物は、ウォッシュコートとしてハニカムモノリス基材のチャネル壁上に配置される。あるいは、ハニカムモノリス基材は、有孔金網の層を含む不活性金属プレート型基材であり、触媒組成物は、ペースト稠度として金網にプレスされる。
【0067】
あるいは、触媒組成物は、ハニカムモノリス基材として押し出される。この場合、触媒組成物は、典型的には、粘土、アルミナ、及び/又はガラス繊維である1つ以上の結合剤成分を含む。
【0068】
本発明の第8の態様による排気システムでは、排気システムは、熱回収蒸気発生器(HRSG)を含むことができる。
【0069】
本発明の第8の態様による排気システムで使用するための窒素系還元剤は、アンモニアそのもの、ヒドラジン、又は尿素((NHCO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びギ酸アンモニウムからなる群から選択されるアンモニア前駆体であってもよい。アンモニアは最も好ましい。
【0070】
本発明の第9の態様による固定発生源は、コージェネレーションプラント、好ましくは固定天然ガス燃焼エンジンであり得、排気システムは、熱回収蒸気発生器(HRSG)を含む。
【0071】
本発明の第10の態様の方法によれば、触媒を含むハニカム基材モノリス又はプレート型基材のkNOは、約300m/hr以下であり得る。
【0072】
好ましくは、触媒を含むハニカム基材モノリス又はプレート型基材のkNOxは、約300~約400℃で約90<kNOx<約300m/hである。
【0073】
酸素もまた含有する排気ガス中のアンモニアを窒素及び水に変換するための触媒は、好ましくは250℃を超える温度で約70%のNHを変換し、より好ましくは約300℃を超える温度で>約80%のNHを変換する。
【0074】
酸素もまた含有する排気ガス中のアンモニアを窒素及び水に変換するための触媒は、好ましくは、好ましくは、約400℃未満で、<約20%の、sNOx=NOx outを(NHin-NHout)で割ったものを有し、より好ましくは約350℃未満で<約10%のsNOxを有し、sNOxは、上記のkNOxを決定するために定義された同じ条件を使用して決定される。
【0075】
排気ガスが、酸素もまた含有する排気ガス中のアンモニアを窒素及び水に変換するための触媒に接触する空間速度は、50,000~500,000h-1、例えば、100,000~400,000h-1又は150,000h-1~350,000h-1などであり得る。
【0076】
定義:
本明細書で定義されるとき、「貴金属」は、白金族金属、すなわち白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウム、並びに金属元素の銀及び金が挙げられる。
【0077】
SCR触媒NOx活性は、触媒のkNOによって定義することができる。「k値」という用語は、SCR触媒活性を表現するために使用される。「k値」を決定するために、触媒試料を実験室規模反応器内で試験し、NO変換率は、ユニットの実際の煙道ガス条件と一致することを意図した、定義された条件下で測定される。
【0078】
触媒失活傾向対時間を説明するために、「k/k」という用語又は相対触媒活性が使用される。値k/kは、サンプリング時間における触媒中に残っている相対活性の尺度を提供する(例えば、0.90のk/k値は、元の触媒活性の90%がサンプリング時に残っていることを意味する)。kは、煙道ガス曝露後の所与の時間における活性値であり、kは、フレッシュ触媒の活性である。
【0079】
試験反応器内のNO活性の決定において、以下の計算を使用する。
【0080】
NO変換式:
【0081】
【数1】
式中、
hNox触媒試料を介したNO変換率-%
(NO)試験反応器の入口でのNO濃度-ppmvd
c(NO)試験反応器の出口でのNO濃度-ppmvd
ppmvd百万分率、体積あたり、乾燥ガス
【0082】
NO活性定数式:
【0083】
【数2】
式中、
k(NO)触媒試料のNO活性定数-m/h
AV触媒試料を通る面積速度-m/h
【0084】
【数3】
【0085】
酸化触媒のライトオフは、酸化触媒対温度によるCO変換の尺度である。ライトオフ性能は、触媒試料を通して合成排気ガスを流すことによって実験室規模の反応器で決定され、ガス温度を低から高まで傾斜させながらCO変換率を測定する。所与の温度でのCO変換率は、以下の式に従って計算される。
【0086】
【数4】
式中、[CO]inは、試料入口でのCO濃度であり、[CO]outは、試料出口でのCO濃度である。
【0087】
ここで、添付の非限定的な実施例を参照して、本開示を更に説明する。
【実施例
【0088】
実施例1:ベース押出ハニカム基材の調製
最初に、イオン交換されたMFIアルミノケイ酸塩ゼオライトを、>1重量%の鉄と、2重量%のV-WO/TiO残部成分と、ガラス繊維を含む無機助剤で混合し、押出成形のためのレオロジーを改善し、押出物の機械的強度を向上させることにより、国際公開第2014/027207(A1)号による押出ハニカム基材触媒を調製した。押出潤滑剤及び可塑剤などの好適な有機助剤を添加して、混合を促進して、均質な押出可能な塊を形成することができる。有機助剤は、セルロース、ポリエチレングリコールなどの水溶性樹脂を含んでもよく、焼成中に最終基材から燃え尽きる。有機助剤の除去後、基材が16重量%のFe/ゼオライト成分、72重量%のV-WO/TiO成分、12重量%の無機助剤を含むように、適切な割合のゼオライト、V-WO/TiO、無機助剤を選択した。押出可能な塊を押し出して、フロースルー構成(すなわち、両端で開放されたセル)に1インチの直径×70mmの長さの円筒形ハニカム本体を形成し、平方インチあたり400個のセルのセル密度を有し、1000分の11インチ(ミル)のハニカムセル壁厚を有した。次いで、そのように形成された押出ハニカム基材を乾燥させ、焼成して、最終製品を形成した。
【0089】
実施例2:基材試料の含浸
実施例1に従って調製された多孔質押出ハニカム基材の吸水率の分析に続いて、実施例1に従って調製された押出ハニカム基材の全体を、吸水工程から計算された濃度で酢酸銅水溶液中に浸漬して、1.2重量%の銅担持量を達成した。この試料を「実施例2A」とラベル付けした。
【0090】
別に、実施例1に従って調製された第2の押出ハニカム基材を、吸水工程から計算された濃度の酢酸銅及び酢酸マンガンの水溶液に浸漬して、4.4重量%の銅担持量及び4.4重量%のマンガン担持量を達成した。この試料を「実施例2B」とラベル付けした。
【0091】
別に、実施例1に従って調製された第3の押出ハニカム基材を、吸水工程から計算された濃度の酢酸銅、酢酸マンガン、及びCeZrOの水溶液に浸漬して、1.2重量%の銅担持量及び0.1重量%のマンガン担持量及び10重量%のCe-Zr担持量を達成した。この試料を、「実施例2C」とラベル付けした。
【0092】
得られた含浸部を乾燥させ、焼成した。得られた生成物は、「フレッシュ」触媒、すなわち新たに調製された古くなっていないものとして定義される。
【0093】
実施例3:試料試験
実施例2に従って調製した試料をそれぞれ合成触媒活性試験(synthetic catalytic activity test、SCAT)実験室装置に装填して、NOxを低減させ、一酸化炭素を酸化する各試料の能力を試験した。使用した試験ガス混合物は、ガス空間速度(Gas Hourly Space Velocity、GHSV)が75,000hr-1であるような流量において、50ppmのCO、24ppmのNO、6ppmのNO、30pmのNH、15%のO、8%の水、3%のCOであり、Nにより均衡化された。CO、NOx、及びNHの変換率を定常状態温度点で保持した反応器で測定した。結果を以下の表に示す。実施例1に従って調製した触媒を対照として試験した。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
実施例4:MnOxを含有する押出ハニカム基材の調製
実施例1のレシピをベースとして使用して、除去され、市販の酸化マンガンに交換されるベースの72重量%のV-WO/TiO成分のそれぞれ割合が異なる3つの更なる試料を調製した。第1の試料(実施例4A)では、10重量%のV-WO/TiO成分を除去し、MnOx成分と交換した。第2の試料(実施例4B)では、15重量%がMnOxで置き換えられ、第3の試料(実施例4C)では、20重量%がMnOxに置き換えられた。V-WO/TiO成分の一部を除去することによって、触媒組成物中の第1のバナジウム含有SCR触媒成分の第3の結晶性モレキュラーシーブ成分に対する重量比が減少したことが理解されるであろう。得られた試料を乾燥させ、焼成した。
【0099】
実施例5:試料試験
実施例4に従って調製した試料を実施例3と同様に試験した。結果を以下の表に示す。対照(実施例1)の結果は、上記の実施例3で報告された表中のものである。
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
実施例6:含浸パラジウムを含有する押出ハニカム基材の調製
実施例1に従って調製された3つの試料に、実施例2に記載した方法と同様に水性硝酸パラジウムを含浸させ、パラジウム担持量5g/ft、10g/ft及び20g/ftを得た。得られた試料を乾燥させ、焼成した。
【0104】
実施例7:試料試験
実施例5に従って調製した試料を、120,000hr-1の空間速度を使用したことを除いて、実施例3と同様に試験した。結果を以下の表に示すが、実施例3及び5で報告された絶対NOx%変換率及び絶対CO%変換率の代わりにkNOx及びkCOとして示す。対照の結果は、実施例1のベース触媒の結果である。
【0105】
実施例8は、ガス空間速度(GHSV)が120,000hr-1であるような流量を用いた。
【0106】
【表8】
【0107】
【表9】
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
疑義を回避するために、本明細書に引用された全ての文書の内容全体が、参照により説明に組み込まれる。
【国際調査報告】