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特表2022-551074ドローンの艦隊を備える潜水艦探査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】ドローンの艦隊を備える潜水艦探査システム
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20221130BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B63C11/00 B
B63C11/48 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520250
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020077407
(87)【国際公開番号】W WO2021064044
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】1910850
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1910851
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1910852
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522127128
【氏名又は名称】アビッサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィリー,モルガン,エリアーヌ,アリーネ
(72)【発明者】
【氏名】コリネ,ミシェル,フィリップ
(57)【要約】
本発明は、所定の運航計画(E)に従って自律的に移動するように設計され、通信信号を送信するための通信モジュール(C)を備える、マスタ潜水艦ドローン(2)と、各々が少なくとも1つの磁場検出システム(D)を備え、各フォロワドローンが、マスタドローンから通信信号を受信するための通信モジュール(C)をさらに備える、複数のフォロワ潜水艦ドローン(31、32、33、34、35、36)と、を備え、マスタドローンが、ナビゲーション命令(I)をフォロワドローンに送信するように設計されており、各フォロワドローンが、その移動がマスタドローンの移動にスレーブ化されるように、移動命令に応じて自律的に移動するように設計されている、潜水艦探査システム(1)に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜水艦探査システム(1)であって、
a.所定の運航計画(E)に従って自律的に移動するように構成され、通信信号を送信するための通信モジュール(C)を備えるマスタ潜水艦ドローン(2)と、
b.各々が少なくとも1つの磁場検出システム(D)を備え、各フォロワドローンが、前記マスタドローンから通信信号を受信するための通信モジュール(C)をさらに備える、複数のフォロワ潜水艦ドローン(31、32、33、34、35、36)と、を備え、
c.前記マスタドローンが、前記フォロワドローンにナビゲーション命令(I)を送信するように構成され、各フォロワドローンが、その移動が前記マスタドローンの前記移動にスレーブ化されるように、前記移動命令に応じて自律的に移動するように構成されている、潜水艦探査システム(1)。
【請求項2】
前記マスタ(2)およびフォロワ(31、32、33、34、35、36)のドローンの前記通信モジュール(C)が、音響通信モジュールである、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記マスタドローン(2)が、すべての前記フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)にナビゲーション命令(I)を周期的に送信するように構成され、各フォロワドローンが、続く命令が受信されるまで、最後に受信した命令に従って移動するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記マスタドローン(2)が、運航計画(E)から、前記フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)の操舵する方位(Cm)およびフォーメーションジオメトリ(GF)を周期的に決定するように構成され、前記マスタドローンによってすべての前記フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)に送信される各ナビゲーション命令(I)が、前記操舵する方位および前記フォーメーションジオメトリを含み、前記各フォロワドローンが、各ナビゲーション命令を受信すると、前記操舵する方位に従った方向に移動し、前記フォーメーションジオメトリに従って、続くナビゲーション命令が受信されるまで、前記マスタドローンに対する相対位置(d1)を決定し、採用するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
各フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)が、所与の瞬間に前記フォロワドローンの位置(P1、P2、P3、P4、P5、P6)を決定し、前記マスタドローン(2)から受信した前記ナビゲーション命令(I)に応じて前記決定された位置から移動するように構成されたナビゲーションシステム(N)を備える、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
各フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)の前記ナビゲーションシステム(N)が、所与の瞬間に海底に対して前記フォロワドローンの高度を決定するように構成され、各フォロワドローンが、前記海底に対して一定の高度を維持しながら移動するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
各フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)の前記通信モジュール(C)が、前記マスタドローン(2)に、前記フォロワドローンの前記決定された位置(P1、P2、P3、P4、P5、P6)を含む信号(S1、S2、S3、S4、S5、S6)を送信するように構成されている、請求項5または請求項6に記載のシステム(1)。
【請求項8】
各フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)の前記通信モジュール(C)が、前記マスタドローン(2)に、前記フォロワドローンの前記決定された位置(P1、P2、P3、P4、P5、P6)と、前記フォロワドローンの動作状態(E1、E2、E3、E4、E5、E6)とを含む信号(S1、S2、S3、S4、S5、S6)を送信するように構成され、前記マスタドローンが、前記フォロワドローンの前記動作状態から、前記操舵する方位(Cm)および前記フォーメーションジオメトリ(GF)を決定するように構成されている、請求項4と組み合わせた先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項9】
各フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)の前記通信モジュール(C)が、前記フォロワドローンの前記通信モジュール(C)によって前記マスタドローン(2)に送信され、かつ前記マスタドローンによって反射される前記信号(S1)のエコー(S1’)を受信し、前記エコーから、前記フォロワドローンを前記マスタドローンから隔てる相対距離(d1)を決定するように構成され、前記フォロワドローンの前記ナビゲーションシステム(N)が、前記決定された相対距離によって、前記所与の瞬間に前記フォロワドローンの前記位置(P1、P2、P3、P4、P5、P6)を決定するように構成されている、請求項7または請求項8に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記マスタドローン(2)が、前記海底を特徴付けるための異なるタイプの複数のシステム(MBS、LSS)を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項11】
各フォロワドローン(31、32、33、34、35、36)の前記磁場検出システム(D)が、前記フォロワドローンの近傍の磁場を測定することができる磁場センサを備え、前記システム(1)が、前記測定された磁場から、周囲磁場および前記フォロワドローン自身の磁場の値とは独立した値を抽出し、前記値に基づいて、磁気異常(A)を検出するように構成されたデータ処理モジュールを備える、先行請求項のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潜水艦探査システム(1)によって実施される潜水艦探査の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜水艦探査の分野に関する。より正確には、本発明は、潜水艦ドローンの艦隊を使用した深海底の探査に関する。
【0002】
深海底は、重要な採掘の可能性のあるサイトを含む。実際、海嶺の領域における熱水活動は、例えば、金属、特に亜鉛、シリカ、銅、および鉛が豊富であり、一般に金および銀が濃縮された多金属硫化物塊などの熱水サイトを生み出すのに寄与している。
【0003】
潜在的な可能性があるにもかかわらず、これらのサイトはまだ利用されていない。一方で、これらのサイトが位置する深さが、800mを超え、実際には4000mを超えることは、従来の潜水艦探査の技法が不適切であることを意味する。他方で、それらが見つかり得る極めて広範囲の海面に対して、半径10~500メートルのこれらのサイトの小さな寸法は、それらを識別するための該表面の探査を複雑にしている。最後に、これらすべてのサイトを利用することができるわけではない。実際、いくつかのサイトは、非アクティブと呼ばれ、すなわち、寒冷で生物多様性が低いと推定され、他のサイトは、アクティブ、すなわち、高温で生命のオアシスを有する、と呼ばれる。海洋生態環境を保全するために、アクティブサイトは、いかなる利己的利用からも除外されなければならないことは言うまでもない。しかしながら、サイト発見のための現在の技法は、本質的に水の柱で存在する熱水プルームの検出に基づいており、これらはアクティブサイトにのみ関連付けられており、したがって、非アクティブサイトを突き止めるのに効果的ではない。
【0004】
したがって、鉱物の可能性を有するサイトを特定するために、有効で迅速であり、アクティブサイトおよび非アクティブサイトを検出することを可能にする、深海底の探査のための解決策が必要である。
【0005】
潜水艦探査の分野では、既知の解決策は、AUV(自律型無人潜水機)とも呼ばれる複数の自律型潜水艦ドローンを使用することであり、これには鉱物の可能性のあるサイトを検出することを可能にするセンサが備わっており、ドローンは海底を覆う艦隊を形成している。所与の運航計画に従って自律的に移動することが可能であるこれらのドローンは、特に、一方では、それらが使用するナビゲーションシステムの精度のために、他方では、搭載センサの数が多いために、非常にコストがかかるという欠点を有する。しかしながら、海底の効果的な探査を可能にするためには、探査時間を短縮するために、各々が探査する表面の一部分を覆う多数のドローンを使用することが必要である。したがって、これらの制限により、深海底の効果的で、迅速かつ低コストの探査が不可能になる。さらに、該ドローンの搭載センサは、非アクティブサイトを検出することを可能にしない。
【0006】
本発明は、この文脈の範囲内にあり、合理的な探査コストを維持しながら、速度、有効性、ならびにアクティブおよび非アクティブサイトの検出の要件を満たす、深海底の探査のための解決策を提案することによって、特定された問題を克服することを目的としている。
【0007】
この目的のために、本発明は、
a.所定の運航計画に従って自律的に移動するように構成され、通信信号を送信するための通信モジュールを備えるマスタ潜水艦ドローンと、
b.各々が少なくとも1つの磁場検出システムを備え、各フォロワドローンが、マスタドローンから通信信号を受信するための通信モジュールをさらに備える、複数のフォロワ潜水艦ドローンと、を備える、潜水艦探査システムに関する。
【0008】
本発明によれば、マスタドローンは、フォロワドローンにナビゲーション命令を送信するように構成され、各フォロワドローンは、その移動がマスタドローンの移動にスレーブ化されるように、該移動命令に応じて自律的に移動するように構成される。
【0009】
したがって、マスタドローンのみが、その運航計画に従って移動するために正確なナビゲーション機器を必要とし、フォロワドローンは、その移動においてマスタドローンに従うことに限定されていることが理解される。したがって、フォロワドローンの機器を簡略化することができ、そのコストを低減する。加えて、硫化された塊などの鉱物の可能性を有する熱水サイトは、海底磁気異常を有する著しい磁気的特徴を有し、そのピークツーピーク振幅は、数百~数千ナノテスラを超えることが分かっている。さらに、該磁気的特徴は、非アクティブサイトの場合のように、熱水活動が停止した後でも持続する。この持続性のために、フォロワドローンでの磁場検出システムの使用は、したがって、非アクティブサイトと同様にアクティブサイトであり得る磁気異常を検出することを可能にする。マスタドローンは、さらに、磁気異常の検出に続いて、磁気異常の源を特徴付けることを可能にし、特に、それがアクティブサイトであるか非アクティブサイトであるかを区別することを可能にする、他のタイプのセンサを搭載することができる。
【0010】
「潜水艦ドローン」とは、水中で自律的に移動することができるあらゆるタイプの乗り物を意味する。
【0011】
有利には、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、音響通信モジュールである。換言すれば、マスタおよびフォロワドローンの各々の通信モジュールによって送信されるデータは、例えば、該通信モジュールによって送信される音響信号の周波数変調によって符号化されている。該当する場合、マスタドローンは、ナビゲーション命令をすべてのフォロワドローンに周期的に送信するように構成され得、各フォロワドローンは、続く命令が受信されるまで、最後に受信した命令に従って移動するように構成されている。マスタドローンによるナビゲーション命令の送信の短い期間、例えば、6秒、にわたる周期性は、フォロワドローンの移動が、短い距離にわたって、例えば、15メートル未満の距離にわたって、マスタドローンの移動にスレーブ化されることを確実にするのを可能にし、それにより、過度の駆動を防止し、したがって、システムの堅牢性を向上させる。
【0012】
有利には、マスタドローンは、運航計画から、操舵する方位およびフォロワドローンのフォーメーションジオメトリを周期的に決定するように構成され、各ナビゲーション命令は、マスタドローンによって、該操舵する方位および上記フォーメーションジオメトリを含むすべてのフォロワドローンに送信される。該当する場合、各フォロワドローンは、各ナビゲーション命令を受信すると、続くナビゲーション命令が受信されるまで、該操舵する方位に従った方向に移動し、該フォーメーションジオメトリに従って、マスタドローンに対して相対的な位置を決定および採用するように構成される。例えば、所定の運航計画は、マスタおよびフォロワドローンに関連する条件下で所与のゾーンの探査に適した、ナビゲーションラインの計画ならびにフォーメーションジオメトリを定義してもよく、マスタドローンは、ナビゲーションラインの計画から、およびナビゲーションラインの該計画上のそれ自身の位置によって、該操縦する方位を決定するように構成されている。「フォーメーションジオメトリ」は、マスタおよびフォロワドローンの相対的な位置のセットを意味し、例えば、各フォロワドローンについて、マスタドローンに対するその空間的位置、すなわち、左または右、前または後、ならびに該フォロワドローンをマスタドローンから隔てる横方向距離を含み得る。
【0013】
例によれば、フォーメーションジオメトリは、マスタドローンを中心とした、櫛形のマスタおよびスレーブドローンのフォーメーションからなり得、フォロワドローンは、マスタドローンの両側に分布し、100mだけ規則正しく離間されている。このフォーメーションでは、マスタおよびフォロワドローンは、マスタドローンによって定義されたフォーメーションジオメトリに準拠しながら、運航計画のナビゲーションライン計画で定義されるような平行線に従って、ナビゲーション命令の送信および受信に従って、漸進的かつ同時に移動することが理解される。移動は、例えば、海底の上100mの運航高度で、3~4ノットのナビゲーション速度で行われる。この認識戦略は、検出の目的と有効性および速度の必要性との間の良好な妥協を表している。
【0014】
例によれば、マスタドローンおよび各フォロワドローンは、メモリを備え、複数のフォーメーションジオメトリがメモリの各々にロードされており、各フォーメーションジオメトリが、該ジオメトリを識別するフォーメーションコードに関連付けられている。該当する場合、マスタドローンによって送信されたナビゲーション命令は、マスタドローンによって決定されたフォーメーションジオメトリを識別するフォーメーションコードを含み、各フォロワドローンは、そのメモリにロードされ、かつ該送信されたフォーメーションコードに関連付けられたフォーメーションジオメトリを選択することによって、マスタドローンに対してその相対位置を決定するように構成される。
【0015】
本発明の実施形態では、各フォロワドローンは、所与の瞬間におけるフォロワドローンの位置を決定し、かつマスタドローンから受信したナビゲーション命令に応じて該決定された位置から移動するように構成されたナビゲーションシステムを備える。フォロワドローンは、特に、該決定された位置から、操舵する方位に従って、かつ、マスタドローンによって送信されるナビゲーション命令のフォーメーションジオメトリで定義されているように、マスタドローンに対するその相対位置を維持する様態で移動するように構成され得る。例えば、ナビゲーションシステムは、特に、フォロワドローンのローリングおよびピッチングに関する情報を得ることを可能にする、所与の瞬間におけるフォロワドローンの姿勢を測定するための器具、特に、MEMS(微小電気機械システム)タイプの姿勢ユニット、およびフォロワドローンの磁気方位を得ることを可能にする磁力計を備え得る。所与の瞬間におけるフォロワドローンの位置は、したがって、該測定器具によって測定されたその姿勢、受信されたナビゲーション命令に応じてナビゲーションシステムによって、および推定された最後の位置から、推定することができる。「推測航法」ナビゲーションを実行するこのタイプのシステムは、フォロワドローンの位置の推定精度とナビゲーションシステムのコストとの間で満足のいく妥協点を提供する。
【0016】
有利には、各フォロワドローンのナビゲーションシステムは、所与の瞬間に海底に対してフォロワドローンの高度を決定するように構成され、各フォロワドローンは、海底に対して一定の高度を維持しながら移動するように構成されている。したがって、フォロワドローンは、その高度に関して自律的であることが理解される。逆の場合、その高度に関しても含めて、フォロワドローンの移動の完全なスレーブ化は、マスタドローンの領域における運航計画によって考慮されない海底の局所的変化との衝突につながる可能性がある。したがって、高度に関するフォロワドローンの自律性は、これらの局所的な変化を考慮に入れることを可能にする。
【0017】
各フォロワドローンの通信モジュールは、好ましくは、マスタドローンに、フォロワドローンの該決定された位置を含む信号を送信するように構成される。
【0018】
有利には、各フォロワドローンの通信モジュールは、マスタドローンに、フォロワドローンの該決定された位置と、フォロワドローンの動作状態とを含む信号を送信するように構成され、マスタドローンは、フォロワドローンの動作状態から、該操縦する方位および該フォーメーションジオメトリを決定するように構成されている。例えば、各フォロワドローンは、その動作状態、すなわち、実行可能な状態または故障状態を決定するように構成される。該当する場合、故障が発生した場合、各フォロワドローンは、フォーメーションを離れて基地に再び合流するように構成することができる。有利には、フォロワドローンの故障状態を含む信号を受信すると、マスタドローンは、実行可能な状態にあるフォロワドローンに適した新しいフォーメーションジオメトリを決定するように構成され得る。
【0019】
実際には、フォロワドローンの故障が発生した場合、ドローンのフォーメーションによって探査する領域の探査は、故障したフォロワドローンによってまだ探査されていないゾーンに対応する記録ギャップを含む。このギャップを克服するために、マスタドローンは、新しい運航計画、すなわち、ナビゲーションラインの新しい計画および/または新しいフォーメーションジオメトリを決定し得る。例えば、櫛形フォーメーションジオメトリにおいて故障したドローンの故障の場合、マスタドローンは、櫛形の端部に位置する実行可能なフォロワドローンが、故障したフォロワドローンの代わりになる新しいフォーメーションジオメトリ、およびナビゲーションラインが絞り込まれた新しいナビゲーションライン計画を決定することができる。新しい運航計画は、例えば、フォロワドローンの動作状態に応じて、マスタドローンのメモリに格納された複数の運航計画から選択することができ、各運航計画は、例えば、所与の数の実行可能なフォロワドローンに関連付けられている。
【0020】
有利には、各フォロワドローンの通信モジュールは、フォロワドローンの通信モジュールによってマスタドローンに送信され、かつマスタドローンによって反射される信号のエコーを受信し、該エコーから、フォロワドローンをマスタドローンから隔てる相対距離を決定するように構成され得る。該当する場合、フォロワドローンのナビゲーションシステムは、決定された相対距離によって、該所与の瞬間におけるフォロワドローンの該位置を決定するように構成される。したがって、フォロワドローンは、フォロワドローンが送信する信号によるマスタドローンのエコー定位によって、マスタドローンからの相対距離を決定する。
【0021】
したがって、各フォロワドローンのナビゲーションシステムは、その姿勢および受信したナビゲーション命令のみを使用して、最後に推定された位置から、該所与の瞬間におけるその位置を推定することに従う、「推測航法」と呼ばれるナビゲーションモードにおいて、および通信モジュールによる信号の送信ごとに発生し、マスタドローンからの相対距離が該所与の瞬間における位置の決定に統合されることに従う、「収れん」と呼ばれるモードにおいて、交互に機能することができる。この統合により、推測航法ナビゲーションモード中に発生し得、マスタドローンに対するフォロワドローンの相対的な位置決めにおける逸脱をもたらし得る、ドリフトを補正することが可能になる。例えば、エコー定位によって決定されたマスタドローンに対する相対距離は、マスタドローンによって決定されたフォーメーションジオメトリによって固定された相対距離と比較することによって、該所与の瞬間における位置の決定において使用することができる。ドリフトが発生した場合、フォロワドローンは、マスタドローンから受信したナビゲーション命令のフォーメーションジオメトリに定義されているように、マスタドローンに対する相対的な位置を取り戻しながら、操舵する方位に従って移動するようにその移動を補正し得る。
【0022】
本発明の実施形態では、マスタドローンは、所与の瞬間におけるマスタドローンの位置を決定するように構成されたナビゲーションシステムと、運航計画がロードされているメモリとを備え、マスタドローンは、そのメモリにロードされた運航計画に従って、その決定された位置から移動するように構成されている。該当する場合、マスタドローンのナビゲーションシステムの精度は、フォロワドローンのナビゲーションシステムの精度よりも高い。例えば、マスタドローンのナビゲーションシステムは、FOGタイプ(光ファイバジャイロスコープ)の慣性ユニットを備え得、DVL(ドップラ速度ログ)などの音響位置決めシステムから情報を受信し、例えば、カルマンフィルタタイプのアルゴリズムを統合するデータ処理モジュールを備える。
【0023】
有利には、マスタドローンは、海底を特徴付けるための異なるタイプの複数のシステムを備える。該当する場合、各フォロワドローンは、該磁場検出システムによって形成された海底を特徴付けるための単一のシステムを備える。したがって、フォロワドローンは、シングルセンサと呼ばれ、マスタドローンはマルチセンサと呼ばれる。例えば、マスタドローンは、以下の非限定的なシステムのリスト:磁場検出システム、測深マッピングシステム(マルチビーム測深儀など)、音響イメージングシステム(横方向走査ソナーなど)、オブジェクト検出システム(カメラなど)、および物理的または化学的流体力学パラメータを測定するためのシステム、から選択される、海底を特徴付けるための少なくとも2つのシステムを備え得る。このようにして、フォロワドローンの、任意選択でマスタドローンの磁場検出システムによって磁気異常を検出する場合、マスタドローンは、それが含む海底を特徴付けるためのシステムによって、磁気異常の源のタイプ、とりわけ、それが鉱物の可能性を有するアクティブまたは非アクティブ熱水サイトであるかどうかを区別することを可能にし得る。
【0024】
本発明の実施形態では、各フォロワドローンの磁場検出システムは、フォロワドローンの近傍の磁場を測定することができる磁場センサを備える。該当する場合、本発明によるシステムは、測定された磁場から、周囲磁場およびフォロワドローン自身の磁場の値とは独立した値を抽出し、該値に基づいて、磁気異常を検出するように構成されたデータ処理モジュールを備え得る。該当する場合、磁場センサは、互いに対して90°に配置された3つの磁力計を備える、3成分ベクトル磁力計として知られるものであり得る。このタイプの磁力計は、フォロワドローンによって生成された寄生磁場のいくつかの影響から解放されることを可能にする。
【0025】
有利には、データ処理モジュールは、該値を抽出するように、測定された全磁場を補正するように構成され、補正は、フォロワドローンの移動姿勢、すなわち、そのローリング、そのピッチング、およびその方位に基づいて、ならびに周囲の局所的地球磁場に基づいて行われる。実際、磁場センサによって測定された磁場は、海底の領域に局所的に存在する磁気異常、周囲の地球磁場、およびフォロワドローンに関連付けられた寄生磁場、すなわち誘導および永久磁場の合計であることが観察されている。しかしながら、フォロワドローンによって生成される誘導および永久磁場は、フォロワドローンの移動姿勢に依存する。フォロワドローンにはナビゲーションシステムが装備されているため、磁場検出システムのデータ処理モジュールは、したがって、各瞬間におけるフォロワドローンの移動姿勢に関連するデータを復元することができ、例えば、磁気感受性テンソルの係数およびフォロワドローンの残留磁化ベクトルを決定することによって、該データから、誘導および永久磁場を決定することができる。例えば、値は、以下の補正動作により抽出することができる。
【0026】
[数式1]
A=Hmes-(H+H)-F、ここでAは抽出された値を表し、Hmesは磁場センサによって測定された磁場、Hはフォロワドローンの誘導磁場、Hはフォロワドローンの永久磁場、Fは局所的な周囲地球磁場である。
【0027】
該当する場合、磁場検出システムのデータ処理モジュールは、抽出された値が所定の閾値よりも大きい場合、磁気異常を検出するように構成され得る。
【0028】
必要に応じて、データ処理モジュールは、フォロワドローンの1つ、いくつか、または実際に各々に搭載され得る。変形例では、データ処理モジュールは、本発明によるシステムのドローンの外部にあってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、マスタおよびフォロワドローンの音響通信モジュールは、同じ通信チャネルを介して通信信号を送信するように構成される。該当する場合、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、該通信チャネル上でマスタおよびフォロワドローンによって送信される通信信号が多重化されるように構成される。必要に応じて、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、該通信チャネル上でマスタおよびフォロワドローンによって送信される通信信号が一時的に多重化されるように構成することができる。該当する場合、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、同じキャリア周波数または同じ周波数帯で変調された音響信号を送信するように構成され得る。
【0030】
好ましくは、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、データフレームを一緒に周期的に送信するように構成され、該通信モジュールの各々は、それに起因する該データフレームの少なくとも1つの期間で通信信号を送信するように構成される。言い換えると、通信モジュールは、時分割多重アクセス(TDMA)技法に従って、順番に通信チャネルにアクセスする。
【0031】
有利には、マスタドローンの通信モジュールは、データフレームの第1の期間に、すべてのフォロワドローンにナビゲーション命令を送信するように構成される。したがって、マスタドローンの運航計画に基づいて確立された、1つの単一の命令、すなわち、操舵する方位およびフォーメーションジオメトリに関連するコードが、すべてのフォロワドローンに送信されることが理解される。必要に応じて、マスタドローンの通信モジュールは、複数のナビゲーション命令をデータフレームの複数の別個の期間ですべてのフォロワドローンに送信するように構成され、フォロワドローンのうちのほんのいくつかの通信モジュールが、マスタドローンに起因するデータフレームの第1および第2の連続した期間の間に位置するデータフレームの期間でマスタドローンに信号を送信するように構成されている。該当する場合、フォロワドローンの他の通信モジュールは、マスタドローンに起因するデータフレームの第2および第3の連続した期間の間に位置するデータフレームの期間でマスタドローンに信号を送信するように構成される。この機能により、フォロワドローンへのナビゲーション命令の送信を加速し、それにより移動中のドリフトを低減することが可能になる。
【0032】
有利には、フォロワドローンの各々の通信モジュールは、それに起因するデータフレームの期間に、その位置に関する情報の項目を含む信号をマスタドローンに送信するように構成される。好ましくは、フォロワドローンの各々の通信モジュールは、それに起因する該期間に、その位置に関する情報の項目と、その動作状態に関する情報の項目とを含む信号をマスタドローンに送信するように構成される。
【0033】
好ましくは、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、ガード期間が、通信モジュールに起因する2つの連続した期間を分離するように構成される。
【0034】
再び有利には、マスタドローンの通信モジュールは、データフレームの最後の期間に、潜水艦探査システムの状態情報の項目を遠隔制御ユニットに送信するように構成される。
【0035】
本発明の実施形態によれば、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールは、マスタドローンによるナビゲーション命令の送信の期間が、所定の閾値距離未満であるフォロワドローンの各々の移動に対応するように、該通信モジュールに起因する期間の持続時間が、すべての通信モジュールについて同一であるように構成される。例えば、ナビゲーション命令を送信するための期間の持続時間は固定されており、それにより、フォロワドローンは、マスタドローンによって与えられた方位に従って、最大15メートルの距離にわたって、3.5ノットの速度で移動することができる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、各フォロワドローンは、本体の残りの部分から隔離された前部コンパートメントを備える本体を備え、各フォロワドローンは、推進システム、バッテリを備え、磁場検出システムは、前部コンパートメント内に配置され、推進システムおよびバッテリは、前部コンパートメントの外側の本体内に配置される。したがって、磁場検出システムへの推進システムおよびバッテリの誘導および永久磁場の影響は限定される。
【0037】
有利には、本体は、後部コンパートメント、中央コンパートメント、および前部コンパートメントから形成され、各コンパートメントは、他のコンパートメントから隔離され、推進システムは、後部コンパートメント内に配置され、バッテリは、中央コンパートメント内に配置されている。
【0038】
該当する場合、フォロワドローンの音響通信モジュールおよび/またはナビゲーションシステムは、前部コンパートメント内に配置されている。
【0039】
本発明はまた、本発明による潜水艦探査システムによって実施される潜水艦探査の方法に関する。本方法は、有利には、以下のステップを含む:
a.マスタドローンによる少なくとも1つの所定の運航計画の選択、
b.選択された運航計画に応じたマスタドローンの自律移動、
c.マスタドローンによる、選択された運航計画に基づいて決定されたナビゲーション命令のフォロワドローンへの放出、
d.受信したナビゲーション命令に従うフォロワドローンの各々の自律移動。
【0040】
必要に応じて、本方法は、フォロワドローンの各々によって、マスタドローンに、その動作状態に関する情報の少なくとも1つの項目を含む信号を送信するステップと、マスタドローンが、フォロワドローンから該フォロワドローンの故障を示す情報の項目を含む信号を受信する場合、マスタドローンが、残りの実行可能なドローンに応じて新しい運航計画を選択する再構成のステップと、を含み得る。
【0041】
有利には、本方法は、その動作状態に関連する情報の少なくとも1つの項目を含む送信信号を使用して、フォロワドローンの各々によって実行される、マスタドローンのエコー定位のステップと、エコー定位ステップ中に得られたマスタドローンに対する相対距離によって、フォロワドローンの移動を補正するステップと、を含み得る。
【0042】
必要に応じて、本方法は、フォロワドローンの各々によって実施される局所磁場を測定するステップと、各測定された磁場から、周囲の磁場および該磁場を測定したフォロワドローンの自身の磁場に依存しない値を抽出するステップと、該抽出された値から磁気異常を検出するステップと、を含み得る。
【0043】
本発明はまた、マスタ潜水艦ドローンと、その移動がマスタドローンの移動にスレーブ化されている複数のフォロワ潜水艦ドローンとを備え、マスタおよびフォロワドローンの各々が、同じ通信チャネル上で通信信号を送信するための音響通信モジュールを備え、マスタおよびフォロワドローンの通信モジュールが、該通信チャネル上でマスタおよびフォロワドローンによって送信される通信信号が多重化されるように構成されていることを特徴とする、潜水艦探査システムに関する。
【0044】
実際、電磁波は、特に予期される探査深度では、水中での伝播が困難であることが分かっている。したがって、ドローン間の音響通信手段を予期することが好ましい。しかしながら、マスタドローンとフォロワドローンの各々との間にアップリンクおよびダウンリンクを確立する必要がある限り、他と干渉することなく、単純かつ信頼できる様態で、該リンクの各々が確立されることを可能にする解決策を提供することが重要である。したがって、本発明によるシステムのドローンの通信モジュールによって送信される音響通信信号の多重化は、同じチャネル上でドローン間の通信を確立し、したがって、すべてのフォロワドローンの移動をマスタドローンの移動に準同時スレーブ化することを容易かつ確実に確立することを可能にすることが理解される。
【0045】
本発明はまた、本発明による潜水艦探査システムの、マスタドローンと複数のフォロワドローンとの間の通信のための方法に関する。
【0046】
本発明はまた、マスタ潜水艦ドローンと、その移動がマスタドローンの移動にスレーブ化されている複数のフォロワ潜水艦ドローンとを備え、各フォロワドローンが、推進システム、バッテリ、および磁場検出システムを備え、磁場検出システムが、前部コンパートメント内に配置され、推進システムおよびバッテリが、前部コンパートメントの外側の本体内に配置されている、潜水艦探査システムに関する。
【0047】
本発明のおかげで、フォロワドローンの様々な要素を磁気的に隔離されたコンパートメントに分離することにより、各フォロワドローンの検出システムによる磁気異常の検出に対する様々な磁場源の影響、特にバッテリおよびモータ要素の影響を最小限に抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
ここで、本発明は、単に例として与えられ、本発明の範囲を限定するものではなく、添付の図面に基づいて、実施例を参照して説明される。
【0049】
図1】本発明の実施形態による、潜水艦探査システムの部分概略図である。
図2】[図1]の潜水艦探査システムによって実施される潜水艦探査の方法を示す。
図3】[図1]の潜水艦探査システムのマスタおよびフォロワドローン間の通信の方法を示す。
図4】[図1]の潜水艦探査システムのマスタドローンおよびフォロワドローンのうちの1つの移動を示す。
図5】[図1]の潜水艦探査システムによって実施された、磁気異常を検出するための方法の様々なステップを示す。
図6】[図1]の潜水艦探査システムのフォロワドローンの断面図である。
【0050】
以下の説明において、構造または機能の点で同一の要素は、別段の指定がない限り、異なる図において同じ参照符号が提供されている。
【0051】
図1]は、本発明の実施形態による、潜水艦探査システム1の視図である。
【0052】
システム1は、マスタ潜水艦ドローン2と、複数のフォロワ潜水艦ドローン31~36とを備える。ドローン2および31~36は、自律的に移動することができる潜水艦ドローンである。マスタ2およびフォロワ31~36のドローンの各々には、磁場を測定することができる磁場検出システムDからの、および所与の瞬間におけるドローンの位置を決定するように構成されたナビゲーションシステムNからの信号を送受信するための通信モジュールCが装備されている。さらに、かつフォロワドローン31~36とは対照的に、マスタドローン2は、マルチビーム測深儀MBSの形態の測深マッピングシステムと、横方向走査ソナーLSSの形態の音響イメージングシステムとを含む、海底を特徴付けるための複数のシステムを備える。したがって、マスタドローン2はマルチセンサであり、フォロワドローン31~36はシングルセンサである。
【0053】
フォロワドローン31~36の各々のナビゲーションシステムNは、フォロワドローンのローリングおよびピッチングを決定することができるMEMSタイプの姿勢ユニットを備える。さらに、各フォロワドローンの磁場検出システムDは、ナビゲーションシステムNに磁気方位を提供する。変形例では、各フォロワドローンに、該磁気方位を提供するための第2の磁場検出システムを設けることが可能であり、この場合、磁場検出システムDは、磁場の測定専用である。マスタドローン2のナビゲーションシステムNは、FOGタイプの慣性ユニットを備え、DVL(ドップラー速度ログ)などの音響位置決めシステムによって提供される情報を受信し、カルマンフィルタタイプのアルゴリズムを統合する、位置データのためのデータ処理モジュールを備える。したがって、マスタドローン2のナビゲーションシステムの精度は、フォロワドローン31~36の各々のナビゲーションシステムの精度よりもはるかに高い。
【0054】
マスタ2およびフォロワ31~36のドローンの通信モジュールCは、音響通信モジュールであり、それにより、ドローンは、同じ通信チャネル上、すなわち同じ波長上で、該通信モジュールによって送信される変調された音響信号の形態でデータを交換することができる。さらに、該通信チャネル上でマスタ2およびフォロワ31~36のドローンによって送信された音響信号は、一時的に多重化され、それにより、通信モジュールCは、時分割多重アクセス技法に従って、通信チャネルに順番にアクセスし、こうしてドローンの各々は、それに起因する周期的なデータフレームの少なくとも1つの期間で音響信号を送信する。
【0055】
図2]は、探査システム1によって実施された探査ゾーンZの潜水艦探査のための方法の平面図であり、[図3]は、探査中のマスタドローン2とフォロワドローン31~36との間の通信の方法、ならびに、かくしてドローン間に形成された通信チャネル内で移動するデータフレームFを示し、[図4]は、マスタドローン2の移動に対するフォロワドローン31の1つの移動のスレーブ化の例を示す。
【0056】
探査に先立ち、複数のフォーメーションジオメトリが、マスタ2およびフォロワ31~36のドローンの各々のメモリにロードされる。各フォーメーションジオメトリは、所与の数のフォロワドローンについて、および該フォロワドローンの各々について、マスタドローン2に対するその空間的位置、すなわち、それがマスタドローン2の左、右、前、または後ろに位置決めされるべきかどうか、および該フォロワドローンをマスタドローン2から隔てる横方向の距離、を説明する。再び探査の前に、マスタドローンは、運航計画E、すなわち所与のフォーメーションジオメトリGF、および該フォーメーションジオメトリGFと関連付けられ、意図された探査ゾーンZに適したナビゲーションラインの計画PLを選択する。したがって、ラインの計画PLの各ラインは、探査ゾーンZ内のドローンの移動を定義する([図2]におけるマスタドローン2の実線およびフォロワドローン31~36の点線)。[図2]に描写されているように、選択された運航計画Eで定義されているフォーメーションジオメトリGFは、マスタドローン2を中心とした櫛形フォーメーションに対応し、フォロワドローンは、マスタドローン2の両側に分布し、100m間隔で規則的に離間されている。
【0057】
マスタドローン2は、ナビゲーションシステムNの助けを用いて、運航計画Eおよびナビゲーションラインの計画PLにおける自らのラインに従って自律的に移動するように構成されている。運航計画Eに沿ったその移動中、マスタドローン2は、例えば6秒ごとに、その通信モジュールCを介して、運航計画Eから決定された操舵する方位Cm、ならびに選択された運航計画Eにおいて定義されたフォーメーションジオメトリGFを識別するコードを含むナビゲーション命令Iを、すべてのフォロワドローン31~36に周期的に送信する。こうして、複数のナビゲーション命令Iは、データフレームFの複数の期間においてすべてのフォロワドローンに送信される。
【0058】
通信モジュールCによってナビゲーション命令Iを受信すると、各フォロワドローン31~36は、そのメモリにロードされ、ナビゲーション命令Iに含まれる該コードに関連付けられたフォーメーションジオメトリを選択することによって、マスタドローン2に対するその相対位置を決定する。こうして、各フォロワドローン31~36は、受信したナビゲーション命令Iに従って、続くナビゲーション命令が受信されるまで、マスタドローン2に対する相対位置を維持しながら、操舵する方位およびそのナビゲーションシステムNによって推定されるフォロワドローンの位置に応じて自律的な様態で移動する。より具体的には、各フォロワドローン31~36は、最後の推定された位置に基づいて、磁場検出システムによって測定された磁気方位および姿勢ユニットによって測定されたその姿勢によって決定された、その移動に応じてその位置P1~P6を推定する、「推測航法」と呼ばれるナビゲーションモードを採用している。こうして、フォロワドローンは、その推定位置によっておよびナビゲーション命令Iに含まれる操舵する方位Cmによって決定された新しい位置に向かって、かつ、フォーメーションジオメトリGFで定義されたマスタドローン2に対するその相対位置を維持する様態で、移動する。
【0059】
図4]に示すように、推測航法ナビゲーションモードは、位置P1~P6の推定によって導入された位置決め不確実性により、各フォロワドローンの移動にドリフトを導入する(フォロワドローン31によって例示されている)。言い換えれば、位置決め不確実性([図4]において円IPで表されている)は、時間の経過とともに増加し、一方では、ラインの計画PLにおいてそのナビゲーションのラインに対するフォロワドローン31の逸脱を、他方では、マスタドローン2とフォロワドローン31との間の実際の横方向の距離d1と、フォーメーションジオメトリGFに固定された距離との間に差異をもたらす可能性がある。
【0060】
各フォロワドローン31~36は、それに起因するデータフレームFにおける期間において、その推定位置P1~P6、ならびに動作状態E1~E6、すなわち、実行可能状態または故障状態を含む信号S1~S6をマスタドローン2に送信する。上述したフォロワドローンの移動のドリフトを克服するために、各フォロワドローンの通信モジュールCは、マスタドローン2によって反射された信号S1のエコーS1’を受信し、該エコーから、フォロワドローンをマスタドローンから隔てる実際の相対距離d1を決定する。このようにして、フォロワドローン31は、推測航法ナビゲーションモードから「収れん」と呼ばれるナビゲーションモードに移行し、「収れん」では、エコー定位によって決定された該相対距離d1が、ナビゲーションシステムNによるフォロワドローンの位置の決定、およびフォロワドローンの移動に統合される。一方で、この決定された相対距離d1は、位置決め不確実性を低減することを可能にする。他方で、実際の相対距離d1とフォーメーションジオメトリGFに固定されている距離との間比較は、フォロワドローン31がそのナビゲーションラインを取り戻し、したがって、該フォーメーションジオメトリGFに準拠することを可能にする。
【0061】
説明された例では、マスタドローン2によって送信されたナビゲーション命令Iは、従うべき高度に関する命令を欠いている。さらに、各フォロワドローン31~36のナビゲーションシステムNは、所与の瞬間に海底に対してフォロワドローンの高度を決定するように構成された高度計を含み、各フォロワドローンは、海底に対して一定の高度を維持しながら移動するように構成されている。
【0062】
図1]の例において、ドローン32は損傷を受け、したがって、その期間中に、その位置P2および故障を示す動作状態E2を含む信号S2を送信する。信号S2の送信に続いて、ドローン32は、もはや探査を継続するための状態ではなくなり、例えば、基地に再び合流するために、探査ゾーンZを離れる。フォロワドローン32の故障状態E2を示す信号S2を受信すると、マスタドローンは、残りのフォロワドローン31および33~36に適した新しいフォーメーションジオメトリGFを定義する新しい運航計画Eを選択する。説明の例では、フォロワドローン36が、フォロワドローン32に置き換わり、こうしてその位置を占めている。探査ゾーンZの均質な探査を維持するために、マスタドローン2はさらに、ナビゲーションラインの新しい計画PLを決定する。したがって、マスタドローン2は、ドローンの艦隊の再構成を行う。
【0063】
図4]で説明されているように、ガード期間Gは、データフレームFにおいて、マスタ2およびフォロワ31~36のドローンによる信号の連続送信を分離する。さらに、フォロワドローン31~36に起因する期間は、マスタドローン2に起因する様々な期間の中に分配されていることに留意されたい。
【0064】
最後に、マスタドローン2は、データフレームFの最後の期間において、例えば、探査ゾーンZの表面上のボート上に位置する遠隔制御ユニットに、潜水艦探査システムの状態情報Eの項目を送信する。
【0065】
マスタ2およびフォロワ31~36のドローンの通信モジュールCに起因する期間の持続時間は、すべてのこれら通信モジュールについて同一である。さらに、マスタドローンによるナビゲーション命令Iの送信期間は、2つの継続的なナビゲーション命令の間のフォロワドローン31~36の各々の移動が、3.5ノットの速度に従って実質的に15メートルに等しいようなものである。したがって、フォロワドローン31~36は、運航計画Eに従って15メートルの基本的な移動に従って移動することが見出され、これにより、フォロワドローン31~36の軌道のマスタドローン2の軌道への正確なスレーブ化を達成することが可能になり、一方で、ドリフトまたはフォロワドローンのうちの1つの故障の場合に、探査システム1の堅牢性を保証する。
【0066】
マスタ2およびフォロワ31~36のドローンの各磁場検出システムDは、3成分ベクトル磁力計として知られる形態の磁場センサを備え、互いに対して90°に配置された3つの指向性磁力計を備え、各々がドローンの近傍の磁場を測定することができる。したがって[図4]は、第1のグラフG1に、ゾーンZの探査中にフォロワドローン31~36のうちの1つの指向性磁力計の各々によって得られた、磁場の3つの成分の測定値の例を示す。
【0067】
探査システム1は、データ処理モジュール(図示せず)を備え、それは、ドローン2および31~36の外部にあり、グラフG1に示される磁場の3つの成分の測定値から総磁場を計算するように構成されている。該総磁場は、第2のグラフG2に示されている。
【0068】
データ処理モジュールは、探査中のナビゲーションシステムNから、ゾーンZの探査中のフォロワドローンの移動に関するデータ、特に、第3のグラフG3に示されているその方位、および第4のグラフG4に示されているそのローリングおよびピッチングに関するデータを回復する。さらに、データ処理モジュールは、例えば、キャリブレーションデータセットと称される磁気データセットによって、フォロワドローンの磁化率テンソル、ならびに残留磁化ベクトルを決定する。データ処理モジュールは、そこから誘導および永久磁場ならびに周囲磁場を除去するために、そこからグラフG5に示される値を抽出するために、このデータのセットから、グラフG2の総磁場を補正する。該グラフG5上で、抽出された値は、探査ゾーンにおける磁気異常Aに対応する変動を表わすことに留意されたい。さらに、マスタドローンの、海底を特徴付けるためのシステム(MBSおよびLSS)によって収集されたデータは、磁気異常Aの源を特徴付けること、特に、それが鉱物の可能性を有する非アクティブ熱水サイトであるかどうかを判定することを可能にする。
【0069】
最後に、[図5]は、フォロワドローンのうちの1つ31の断面図であり、すべてのフォロワドローン31~36の構造が同一であることが理解されている。ドローン31は、後部コンパートメント41、中央コンパートメント42、および前部コンパートメント43から形成された本体4を備える。各コンパートメントは、他から隔離されている。
【0070】
フォロワドローン31は、後部コンパートメント41内に配置された推進システム5と、中央コンパートメント42内に配置されたバッテリ6とを備える。磁場検出システムD、音響通信モジュールC、およびナビゲーションシステムNは、前部コンパートメント43内に配置されており、それにより、推進システムおよびバッテリの誘導および永久磁場の磁場検出システムDへの影響を制限する。
【0071】
上記の説明は、本発明が、自ら設定した目的を、特に、自律型のマスタドローンおよびその移動がマスタドローンの移動にスレーブ化されているフォロワドローンを備える潜水艦ドローンの艦隊で構成された潜水艦探査システムを提案することによって、達成することを可能にする方法を明確に説明している。こうして、記載されたシステムは、深海底の迅速かつ効果的な探査を可能にし、アクティブサイトを非アクティブサイトから検出および区別することを可能にし、そのために探査コストが管理される。
【0072】
いずれにしても、本発明は、本文書に具体的に記載された実施形態に限定されず、特に、すべての同等の手段、および任意の技術的に可能な該手段の組み合わせにまで及ぶ。特に、マスタおよびフォロワドローンの他のタイプのフォーメーションを想定することが可能である。また、TDMA以外のマスタおよびフォロワドローン間の通信のための別のタイプの方法の使用、または実際には説明されているものとは異なるフォロワドローンの内部構造の使用を想定することも可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】