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特表2022-551119配列最適化により増加された安定性を伴う生物学的治療薬を産生するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】配列最適化により増加された安定性を伴う生物学的治療薬を産生するための方法
(51)【国際特許分類】
   C40B 10/00 20060101AFI20221130BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221130BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221130BHJP
   G16B 20/50 20190101ALI20221130BHJP
   G16B 35/10 20190101ALI20221130BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221130BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
C40B10/00
C07K16/00 ZNA
C12N15/13
G16B20/50
G16B35/10
C12P21/08
C40B40/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520801
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 IB2020059265
(87)【国際公開番号】W WO2021064671
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/909,841
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ベンカトラマニ,サティヤデヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン,ラージクマール
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジャヤ
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064DA01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、安定性が向上した抗体を最適化する方法であって、方法が、体細胞超変異を生殖細胞系列アミノ酸残基で変異させること、したがって、抗原に対する親和性を維持しながら、増強された熱安定性、改善された生物物理学的特性及び貯蔵寿命を提供することを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)を含む抗体を最適化するための方法であって、前記方法が、
a)最適化のための抗体を特定することと、
b)前記抗体VH及び/又はVLにおいて1つ若しくは2つ以上の異常又は低頻度残基を特定することと、
c)前記抗体VH及び/又はVL配列を、最も近いヒト又は非ヒト生殖細胞系列配列と整列させることと、
d)前記抗体VH、VL、又はそれらの両方における1つ又は2つ以上の体細胞超変異部位を特定することと、
e)前記体細胞超変異部位のうちの部位で典型的に観察された1つ又は2つ以上の生殖細胞系列残基を特定することと、
f)前記体細胞超変異部位のうちの前記部位で前記生殖細胞系列残基を含有する変異体又は変異体のライブラリを設計及び操作することと、
g)前記変異体又は変異体のライブラリの特性を評価することと、
h)1つ又は2つ以上の最適化された変異体を選択することと、を含み、
前記1つ又は2つ以上の最適化された変異体が、改善された生物物理学的特性、減少された免疫原性のリスク、又はそれらの両方を有する、方法。
【請求項2】
前記異常又は低頻度残基の特定が、コンピュータベースのソフトウェアによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータベースのソフトウェアが、abYsisである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記異常又は低頻度残基が、前記抗体VHにある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記異常又は低頻度残基が、前記抗体VLにある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記異常又は低頻度残基が、前記抗体VH及びVLにある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リード抗体が、フレームワーク領域(FR)及び/又は相補性決定領域(CDR)のうちの1つ又は2つ以上で体細胞超変異を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記操作された変異体が、前記抗体のヒトフレームワーク領域、CDR1、CDR2又はCDR3で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体VH及び/又はVL配列を整列させることが、最も近いヒト生殖細胞系列配列とである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記変異体又は変異体のライブラリをクローニング及び産生することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記変異体又は変異体のライブラリの前記評価が、生物物理学的評価である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記生物物理学的評価が、分析的超遠心分離、熱安定性、アンフォールディングの自由エネルギー、分析的サイズ排除、貯蔵安定性、及び/又は非特異的結合である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分析的超遠心分離評価が、前記操作された変異体の分析的超遠心分離沈降速度(AUC-SV)を前記リード抗体のAUC-SVと比較することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱安定性評価が、各前記操作された変異体の熱アンフォールディング曲線のTmを、前記リード抗体の熱アンフォールディング曲線のTmと比較することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
熱安定性評価が、各前記操作された変異体のTaggを、前記リード抗体のTaggと比較することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記アンフォールディングの自由エネルギーが、各前記操作された変異体のΔGu1、ΔGu2、又はC50を、前記リード抗体のΔGu1、ΔGu2、又はC50と比較することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記操作された変異体の前記貯蔵安定性が、2週間及び4週間に4℃又は40℃で測定され、前記リード抗体の貯蔵安定性と比較される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記最適な変異体が、増加されたモノマー含有量、増加されたTm、増加されたTagg、増加されたΔGu1、増加されたΔGu2、増加されたC50値又は低減された凝集を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記最適な変異体が、前記リード抗体と比較される場合、2%以上のモノマー含有量の増加を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記最適な変異体が、前記リード抗体と比較される場合、1℃以上のTm増加を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記最適な変異体が、前記リード抗体と比較される場合、1℃以上のTagg増加を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記最適な変異体が、前記リード抗体と比較される場合、4kJ/mol以上のアンフォールディングの自由エネルギーΔGu1又はΔGu2増加を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記最適な変異体が、前記リード抗体と比較される場合、0.1M以上のC50増加を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記最適な変異体が、前記リード抗体と比較される場合、1%以上の減少された凝集含有量を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記変異体又は変異体のライブラリの前記評価が、免疫原性リスク評価である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫原性リスク評価が、インシリコで測定される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
インシリコにおける前記免疫原性リスク評価が、Epivaxスコアで測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記最適な変異体が、前記リード分子と比較される場合、同等以下のEpivaxスコアを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、抗体、又は抗体の抗原結合フラグメントである、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
請求項1~29のいずれかに記載の方法によって産生される産物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された製造、インビボ挙動、及びより長い貯蔵寿命の熱力学的安定性を含む、その生物物理学的特性を高めるためにモノクローナル抗体の配列を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は、抗原への曝露後に一般に誘発された免疫系による保護応答として生成される。抗原の曝露後の一次応答で作製された抗体は、より低い親和性であるが、親和性は、体細胞免疫グロブリン(Ig)超変異(Neuberger,M.S.& Milstein,C.Somatic hypermutation.Current opinion in immunology 7,248-254(1995)と称されるプロセスによって改善されることが知られている。このプロセスは、抗原に対する非常に強い親和性及び高い選択性を有する抗体をもたらす抗体の相補性決定領域(CDR’s)における変異のセットの蓄積と共に、免疫グロブリン遺伝子セグメントの組換えのいくつかのラウンド、可変性(V)、多様性(D)、及び合性(J)を含む(Sun,S.B.et al.Mutational analysis of 48G7 reveals that somatic hypermutation affects both antibody stability and binding affinity,Journal of the American Chemical Society 135,9980-9983(2013);重複データに基づいて著者により撤回)。これらの累積変異のほとんどがCDRに存在し、抗原との高親和性相互作用に重要であるが、いくつかの他のものは可変領域全体に広がり、直接抗原結合に関与しないため、抗体親和性に寄与しない(Wang,F.et al.Somatic hypermutation maintains antibody thermodynamic stability during affinity maturation.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110,4261-4266(2013);重複データに基づいて著者により撤回)。CDR(しばしば超可変領域とも呼ばれる)は、抗体抗原認識のための部位を形成する重鎖及び軽鎖の両方の可変領域におけるループである。それらの立体配座は、ループの長さ及び組成によって規定される。フレームワーク(FR)領域は、可変ドメインの構造的完全性を維持する役割を果たし、CDRの構造的足場として機能する2つのβシートに配置された逆平行β鎖である。FRは、構造多様性、VL/VH配向にとって重要であり、抗原結合にも直接関与し得る(Sela-Culang,I.,et al.The Structural Basis of Antibody-Antigen Recognition.Frontiers in Immunology 4(2013))。親和性成熟中にCDRに生じる親和性変異は、抗体の安定性に有害な影響を及ぼし得る。最近、可変領域全体に位置する中性体細胞超変異は、多くの場合、親和性変異によって引き起こされる抗体安定性に対する悪影響を補償することが示されている(Sun,S.B.et al.Mutational analysis of 48G7 reveals that somatic hypermutation affects both antibody stability and binding affinity.Journal of the American Chemical Society 135,9980-9983(2013))。抗体足場の親和性と安定性との間のこの強いトレードオフはまた、CDR内か又はフレームワーク領域のいずれかの親和性成熟プロセス中に得られた変異が機能的であると同時に脱安定化であり得る、方向付けられた進化の研究において示されている(Houlihan,G.,Gatti-Lafranconi,P.,Lowe,D.& Hollfelder,F.Directed evolution of anti-HER2 DARPins by SNAP display reveals stability/function trade-offs in the selection process.Protein engineering,design & selection:PEDS 28,269-279(2015)、Julian,M.C.et al.Co-evolution of affinity and stability of grafted amyloid-motif domain antibodies.Protein engineering,design & selection:PEDS 28,339-350(2015))。
【0003】
抗体及び関連産物は、最も速い成長クラスの治療薬である。治療用抗体は、製造及び貯蔵を容易にし、並びに長い血清半減期を促進するために、高い熱安定性及び低い凝集傾向を含む好ましい医薬特性を示す必要がある。機能的に活性な分子は、立体配座及びコロイド安定性を含む好ましい生物物理学的特性を有する場合にのみ薬物になり得る。(Jain,T.et al.Biophysical properties of the clinical-stage antibody landscape.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 114,944-949(2017))。抗体の適合安定性は、例えば、より高い熱安定性及び凝集する傾向がより低いことによって決定される。熱安定性は、抗体発現に始まり、精製、製剤、及び貯蔵寿命において創薬の重要な役割を担う(Goswami,S.,Wang,W.,Arakawa,T.& Ohtake,S.Developments and Challenges for mAb-Based Therapeutics.Antibodies 2,452-500(2013))。高スループット自動スクリーニングアッセイは、立体配座安定性を決定し、発生の早期に数百のヒットを順序付けるために重要である。強化された熱安定性は、最適な薬物動態及び薬力学的特性、並びにより長い貯蔵寿命及び保存のために重要である(Thiagarajan,G.,Semple,A.,James,J.K.,Cheung,J.K.& Shameem,M.A comparison of biophysical characterization techniques in predicting monoclonal antibody stability.MAbs 8,1088-1097(2016))。インビトロ親和性成熟抗体は、それらの親抗体よりも熱安定性が低いことが、一貫して観察されている。安定したフレームワーク、哺乳動物細胞ディスプレイ、及びインビトロ体細胞超変異(SHM)へのCDRグラフト化の組み合わせによる更なる最適化は、多くの場合、抗体の安定性を改善するために必要とされる(McConnell,A.D.et al.A general approach to antibody thermostabilization.MAbs 6,1274-1282(2014))。
【0004】
有害な副作用の予防は、患者の安全性及び生物学的治療薬候補の成功に不可欠である。抗体薬物候補の最も早い発生段階で予想される免疫原性を評価し、潜在的な有害作用を排除することは最も重要である。FDAによって厳密な前臨床的リスク評価が必要であるため、予想される免疫原性を評価及び低減するために異なる方法が開発された。
【0005】
抗体操作技術は、生物学的治療薬の発見及び発達のために極めて重要である。非ヒト種から発見された抗体は、免疫原性のリスクを克服し、低減するためにヒト化される。非ヒト種に由来する抗体のヒト化は、mAbの臨床発達を最適化するために首尾よく適用されている。ヒト化抗体は、89個のFDAに現在承認されている抗体の約43%(すなわち、38mAb)を表す。完全なヒト抗体は、ますます一般的であり、診療所におけるmAbの比率が増加している。それらは、ヒト化体液性免疫系、例えば、XenoMouse(登録商標)、Ablexis(登録商標)及びOmniRat(登録商標)で遺伝子操作されたトランスジェニック動物から供給されている。現在、トランスジェニック動物から得られる21個の完全ヒトmAbが承認されており、これらは全ての市販のmAbの24%に相当する。トランスジェニック動物から得られる抗体配列のいくつかは、フレームワーク及びCDR領域における体細胞超変異を含有する。体細胞超変異は、ヒトフレームワーク領域において異常な又は低頻度の残基をもたらし、生物学的治療薬の安定性及び免疫原性に影響を与える可能性がある。
【0006】
長い貯蔵寿命及び低い免疫原性を有する安定した抗体を生成することは依然として困難であり、多くの場合、長く手間のかかるプロセスである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、最適化された抗体を設計する方法であって、この方法が、
a)最適化のための抗体を特定することと、
b)当該抗体VH及び/又はVLにおいて1つ若しくは2つ以上の異常又は低頻度残基を特定することと、
c)当該抗体VH及び/又はVL配列を、最も近いヒト又は非ヒト生殖細胞系列配列と整列させることと、
d)当該抗体VH、VL、又はそれらの両方における1つ又は2つ以上の体細胞超変異部位を特定することと、
e)当該体細胞超変異部位のうちの部位で典型的に観察された1つ又は2つ以上の生殖細胞系列残基を特定することと、
f)当該体細胞超変異部位のうちの部位で当該生殖細胞系列残基を含有する変異体又は変異体のライブラリを設計及び操作することと、
g)当該変異体又は変異体のライブラリの特性を評価することと、
h)1つ又は2つ以上の最適化された変異体を選択することと、を含み、
当該1つ又は2つ以上の最適化された変異体が、改善された生物物理学的特性、減少された免疫原性のリスク、又はそれらの両方を有する、方法を提供する。
【0008】
他の特定の実施形態では、本発明は、最適化された抗体を設計する方法であって、この方法が、
a)最適化のための抗体を特定することと、
b)当該抗体VH及び/又はVLにおいて1つ若しくは2つ以上の異常又は低頻度残基を特定することと、
c)当該抗体VH及び/又はVL配列を、最も近いヒト又は非ヒト生殖細胞系列配列と整列させることと、
d)当該抗体VH、VL、又はそれらの両方における1つ又は2つ以上の体細胞超変異部位を特定することと、
e)当該体細胞超変異部位のうちの部位で典型的に観察された1つ又は2つ以上の生殖細胞系列残基を特定することと、
f)当該体細胞超変異部位のうちの部位で当該生殖細胞系列残基を含有する変異体又は変異体のライブラリを設計及び操作することと、
g)当該変異体又は変異体のライブラリをクローニング及び産生することと、
h)当該変異体又は変異体のライブラリの生物物理学的特性を評価することと、
i)当該変異体又は変異体のライブラリの免疫原性リスクを評価することと、
j)1つ又は2つ以上の最適化された変異体を選択することと、を含み、
当該1つ又は2つ以上の最適化された変異体が、改善された生物物理学的特性、減少された免疫原性のリスク、又はそれらの両方を有する、方法を提供する。
【0009】
特定の実施形態では、異常又は低頻度残基の特定は、例えば、限定されないが、abYsisなどのコンピュータベースのソフトウェアによって行われる。
【0010】
特定の実施形態では、生物物理学的評価は、例えば、分析的超遠心分離、熱安定性、アンフォールディングの自由エネルギー、又は分析的サイズ排除によって行われる。
【0011】
特定の実施形態では、免疫原性リスク評価は、例えば、Epivax(登録商標)スコアなどによって、インシリコで行われる。
【0012】
特定の実施形態では、アミノ酸置換は、例えば、4つのFRのうちのいずれか1つ又は2つ以上で生じ得る。この点で、アミノ酸置換は、重鎖又は軽鎖のFR1、FR2、FR3、及び/又はFR4で生じ得る。他の特定の実施形態では、アミノ酸置換が最適化抗体の生物物理学的特性を改善する限り、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を生殖細胞系列残基に置換することができる。
【0013】
いくつかの他の実施形態では、アミノ酸置換は、例えば、CDRのうちのいずれか1つ又は2つ以上で生じ得る。この点で、アミノ酸置換は、重鎖又は軽鎖のCDR1、CDR2及び/又はCDR3で生じ得る。他の特定の実施形態では、アミノ酸置換が最適化された抗体の生物物理学的特性を改善する限り、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を生殖細胞系列残基に置換することができる。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、抗体重鎖ポリペプチド又は軽鎖ポリペプチドを含む単離された抗原結合剤に限定されない。実際、体細胞超変異から生じるフレームワークの任意のアミノ酸残基は、抗原結合剤の安定性が生物学的活性の同時喪失を伴わずにアミノ酸置換の結果として増強又は改善される限り、生殖細胞系列アミノ酸残基との任意の組み合わせで置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】TMEB675のVHについてのヒト生殖細胞系列配列との配列アラインメント及び異常又は低頻度残基の特定を示す。VH(R14P、P20L、H81Q)における3つの体細胞超変異(SHM)が、フレームワーク領域内で観察された。
図1B】TMEB675のVkについてのヒト生殖細胞系列配列との配列アラインメント及び異常又は低頻度残基の特定を示す。1つの体細胞超変異(SHM)(A1D)が、フレームワーク領域中に及びCDR3(A91P)中に観察された。
図2A】abYsisポータルを使用したTMEB675 VHの14位でのSHMアルギニン(R)の相対頻度の評価を示す。
図2B】abYsisポータルを使用したTMEB675 VHの20位でのSHMプロリン(P)の相対頻度の評価を示す。
図2C】abYsisポータルを使用したTMEB675 VHの81位でのSHMヒスチジン(H)の相対頻度の評価を示す。
図2D】abYsisポータルを使用したTMEB675 VLの1位でのSHMアラニン(A)の相対頻度の評価を示す。
図2E】abYsisポータルを使用したTMEB675 VLの91位でのSHMアラニン(A)の相対頻度の評価を示す。
図3】TMEB675の分子相同性モデルを示す。フレームワーク領域に見られるSHM残基は、スティック表現でラベル付けされ、強調表示される。
図4】TMEB675及びTMEB762の両方に対して分析的超遠心分離が正規化されたg(s)沈降速度で実行されることを示す。グローバルフィッティング分析が、SEDANAL v697によって行われ、データは、2つの種の非相互作用モデルに世界的に適合された。
図5】示差走査蛍光定量法(DSF)を使用したTMEB675及びTMEB762の内因性特性の特性評価を示す。350/330nm比の一次導関数強度を温度(℃)に対してプロットする。
図6】示差走査熱量測定(DSC)を使用したTMEB675及びTMEB762の内因性特性の特性評価を示す。熱容量Cp(cal/mol/℃)を温度(℃)に対してプロットする。
図7】蛍光強度比350/330nMの変化によって監視されるGdnClにおける等温化学変性を使用したTMEB675の内因性特性の特性評価を示す。
図8】蛍光強度比350/330nMの変化によって監視されるGdnClにおける等温化学変性を使用したTMEB762の内因性特性の特性評価を示す。
図9】1ヶ月にわたるTMEB762及びTMEB675の貯蔵(4℃)及び加速(40℃)の安定性を示す。時間ゼロ~1ヶ月の間の凝集レベルにおける変化を日数に対してプロットしている。
図10】異なる表面に相対結合応答単位をプロットすることにより表面プラズモン共鳴法によって決定されるTMEB762及びTMEB675についての非特異的結合データを示す。
図11】最適化アルゴリズムワークフローを示す。
図12】PSMW56、ヒト生殖細胞系列IGHV4-3901及びPSMW57の重鎖(VH)の配列アラインメントを示す。68位の希少体細胞超変異(トレオニン対イソロイシン)は太字で強調表示される。PSMW57は、PSMW56の操作された変異体である。Ile68は、トレオニンに生殖細胞系列化された。
図13】68位の異常又は低頻度フレームワーク残基(Ile)を示す。この残基を、Thr残基中に再操作した。Thrの選択は、生殖細胞系列残基(IGHV4-3901)に基づいていた。
図14】示差走査蛍光定量法(DSF)を使用したPSMW56及びPSMW57の内因性特性の特性評価を示す。操作された変異体PSMW57は、親変異体PSMW56と比較して、著しく改善されたTm及びTaggを示す。
図15A】DL3B355重鎖の、ヒト生殖細胞系列(IGHV3-1305)並びに操作された変異体:DL3B355-1、DL3B355-2及びDL3B355-3との配列アラインメントを示す。HCDR1、HCDR2及びHCDR3配列には下線が付されている。85位(ヒスチジン)での希少体細胞超変異を太字で強調表示している。
図15B】DL3B355軽鎖の、ヒト生殖細胞系列(IGKV1-503)並びに操作された変異体:DL3B355-1、DL3B355-2及びDL3B355-3との配列アラインメントを示す。LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列には下線が付されている。84位(Glu)での希少体細胞超変異を太字で強調表示している。
図16A】DL3B355の重鎖位置85での異常又は低頻度フレームワーク残基を示す。この残基を、対応する生殖細胞系列残基(アスパラギン)と適合するように再操作した。
図16B】DL3B355の84位の軽鎖での異常又は低頻度フレームワーク残基を示す。この残基を、対応する生殖細胞系列残基(グリシン)と適合するように再操作した。
図17】示差走査蛍光定量法(DSF)を使用したDL3B355及びDLL3変異体の内因性特性の特性評価を示す。3つの操作されたDL3B355変異体は全て、親クローンと比較して改善された熱安定性(Tm及びTagg)を示した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記の概要、及び本出願の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【0017】
本明細書に含まれる文書、作用、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、先行技術の一部を構成すること又は開示若しくは特許請求されたいずれかの発明を限定することを容認するものではない。
【0018】
本明細書全体を通して、抗体定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、本明細書に別途明示的に記載のない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載のEUインデックスに従う。
【0019】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないと理解すべきである。特に断らない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用することができるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求する上で以下の用語が使用される。
【0020】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ又は3つ以上の細胞の組み合わせ、及びこれに類するものなどが含まれる。
【0021】
移行句「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」は、特許用語において全般的に受け入れられている意味を含意することを意図しており、すなわち、(i)「含む(comprising)」は、「含む」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非制限的なものであり、その他の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではなく、(ii)「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲において特定されていない、あらゆる要素、工程、又は成分を除外し、かつ(iii)「から本質的になる」は、特定される材料又は工程、並びに、特許請求される発明の「基本的かつ新しい特徴に実質的に影響しないもの」に、特許請求の範囲の範囲を制限する。句「含む(comprising)」(又はその同等語)に関して記載される実施形態はまた、実施形態として、「からなる」及び「から本質的になる」に関して独立して記載されるものを提供する。
【0022】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続的な用語は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1の要素及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用するとき、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0023】
発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者に理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0024】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。「約」は、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち、測定システムの制限事項にある程度依存する。特定のアッセイ、結果、又は実施形態の文脈において実施例又は明細書のその他の箇所に別途明示的に記載のない限り、「約」は、当該技術分野の実施に従う1つの標準偏差又は10%までの範囲のいずれかのより大きい範囲内であることを意味する。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0025】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対して多くの均等物を認識するか、又は確認することができよう。かかる均等物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0026】
「抗原」は、免疫応答を媒介することができるいずれかの分子(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖類、糖タンパク質、糖脂質、核酸、それらの部分、又はそれらの組み合わせ)を指す。例示的な免疫応答には、抗体産生、及びT細胞、B細胞又はNK細胞などの免疫細胞の活性化が含まれる。
【0027】
「抗原結合断片」又は「抗原結合ドメイン」は、抗原に結合するタンパク質の部分を指す。抗原結合断片は、合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子操作されたポリペプチドであってもよく、VH、VL、VH及びVLなどの抗原、Fab、F(ab’)、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(dAb)、ラクダ化VHドメイン、VHHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの、抗体のCDRを模倣したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2及び/又はLCDR3に結合した免疫グロブリンの部分、抗原に結合した代替足場、並びに断片に結合した抗原を含む多重特異性タンパク質を含んでもよい。抗原結合断片(VH及びVLなど)は、合成リンカーを介して互いに連結されて、VH/VLドメインが、分子内で、又はVH及びVLドメインが別々の単鎖によって発現される場合には分子間で対形成して、単鎖Fv(scFv)又は抗原などの一価の抗原結合ドメイン又は二重特異性抗体を形成する様々な種類の単鎖抗体の設計を形成することができる。抗原結合断片はまた、二重特異性及び多重特異性タンパク質を遺伝子操作するために、単一特異性又は多重特異性であり得る他の抗体、タンパク質、抗原結合断片、又は代替足場にコンジュゲートされてもよい。
【0028】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多重特異性抗体、二量体、四量体又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、並びに必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された構成を含む免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(HC)及び2本の軽鎖(LC)、並びにこれらの多量体(例えばIgM)から構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)、並びに重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)が散在しており相補性決定領域(CDR)と呼称される超可変領域に更に分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0029】
「生物学的活性」は、例えば、抗原の結合親和性、中和又は阻害を指す。
【0030】
「相補性決定領域(CDR)」は、抗原に結合する抗体領域である。VHには3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、VLには3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。CDRは、Kabat(Wu et al.,(1970)J Exp Med 132(2):211-250)、(Kabat et al.(1991,J Immunol 147(5):1709-19)、Chothia(Chothia et al,(1987)J.Mol.Biol.196(4):901-17、IMGT(Lefranc et al.,(2003)Dev Comp Immunol 27(1):55-77)及びAbM(Martin and Thornton(1996)J Mol Biol 263(5):800-815)などの様々な描写を使用して定義され得る。様々な描写と可変領域の付番との間の対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27(1):55-77;Honegger and Pluckthun,J Mol Biol(2001)309(3):657-670;International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブリソース、http://www_imgt_orgを参照のこと)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを描写することができる。本明細書で使用する場合、用語「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」及び「LCDR3」は、明細書で別途明示的に記載のない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。
【0031】
「フレームワーク領域」又は「FR」は、CDR用の足場として機能する抗体領域である。フレームワーク領域は、抗原の抗体への結合を支持する役割を担う。フレームワーク残基は、抗原に接触する残基を含み、抗体の結合部位の一部であり、折り畳まれた三次元構造にあるときに、CDRに対する配列に近接して位置するか、又はCDRに近接して位置する。フレームワーク残基はまた、抗原と接触しないが、CDRの構造的支持を補助することによって間接的に結合に影響を与える残基を含む。FRは、Kabat、Chothia、IMGT、及びAbM(Martin and Thornton(1996)J Mol Biol263:800-815)などの様々な描写を使用して定義され得る。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、FRを描写することができる。「FR1」、「FR2」、「FR3」、「FR4」という用語は、上記の方法のいずれかによって定義されるFRを含む。「HCFR」という用語は、重鎖フレームワーク領域FR1、FR2、FR3又はFR4を表す。「LCFR」という用語は、軽鎖フレームワーク領域FR1、FR2、FR3又はFR4を表す。
【0032】
「免疫グロブリン」は、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0033】
「ヒト抗体」は、ヒト対象に投与されるときに、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、当該定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットを含む。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385-96及び国際公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0034】
「ヒト化抗体」は、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0035】
「単離された」は、組換え細胞などの、分子が産生される系の他の成分から実質的に分離及び/又は精製された分子(本開示のscFv又は本開示のscFvを含む異種タンパク質)の均質な集団、並びに、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離/単離された」とは、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の純度まで単離された分子を包含する。
【0036】
「変異体(variant)」、「変異体(mutant)」”又は「変化(altered)」は、1つ又は2つ以上の改変、例えば、1つ又は2つ以上の置換、挿入、又は欠失によって参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドとは異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。より具体的には、本発明は、生殖細胞系免疫グロブリン配列と整列されるときに、FR1、FR2、FR3、FR4、CDR1、CDR2又はCDR3における任意のアミノ酸に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つの置換を含むアミノ酸配列を有し、置換部位が、リード抗体で特定されたSMH部位である、変異体ポリペプチドに関する。変異体ポリペプチドは、特に安定性に関連する特性に関して、参照ポリペプチドと比較して改善された特性を有し得る。改善された安定性は、改善された熱安定性、増加されたアンフォールディングのエネルギー、より低い凝集、改善された貯蔵安定性又は改善された非特異的結合特性を示す変異体によって実証され得る。改善された特性は、典型的には、製造における変異体抗体の使用に関連する特性である。本発明のいくつかの実施形態では、改変部位は、生殖細胞系列抗体との配列アラインメントによって特定される。特定の実施形態では、配列アラインメントは、ソフトウェアabYsis(Swindells,M.B.et al.abYsis:Integrated Antibody Sequence and Structure-Management,Analysis,and Prediction.J Mol Biol 429,356-364(2017))によって行われる。いくつかの実施形態では、改変置換、挿入又は欠失は、抗体操作技術によって行われる。
【0037】
「Tm」又は「中間点温度」は、熱アンフォールディング曲線の温度中間点である。それは、アミノ酸配列の50%がその天然の立体配座にあり、他方の50%が変性される温度を指す。熱アンフォールディング曲線は、典型的には温度の関数としてプロットされる。Tmは、タンパク質の安定性を測定するために使用される。一般に、より高いTmは、より安定なタンパク質の指標である。Tmは、円形二色性分光法、示差走査熱量測定、示差走査蛍光定量法(内因性及び外因性色素ベースの両方)、UV分光法、FT-IR及び等温熱量測定(ITC)などの当業者に周知の方法を使用して容易に決定され得る。
【0038】
「Tagg」は、タンパク質が二量体化か又はオリゴマー化のいずれかを介して凝集し始める温度を指す。凝集温度は凝集の開始を検出し、その温度でタンパク質は凝集する傾向を示す。Taggは、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光定量法(DSF)又は円二色性(CD)によって決定され得る。これらの技術は、タンパク質の立体配座における小さな変化を検出し、したがって凝集の開始点を検出することができる。Tagg値は、Tmよりも低くても又は高くてもよい。TaggがTmよりも低い場合、タンパク質は、最初に二量体化する及び/又はオリゴマー化する、のいずれかであり、次いで、Taggよりも高い温度で後にアンフォールディングを開始する。TaggがTmよりも高い場合、タンパク質は最初にアンフォールディングを開始し、次いでTmよりも高い温度で凝集する。両方の事象は、一般に観察され、アミノ酸組成及びタンパク質立体配座に依存する。
【0039】
化学変性は、より低い温度(4℃~40℃、保管及び生理学的温度)であっても、タンパク質の内因性安定性を測定するための熱変性に対する完全な相補的な方法であり、より高い温度からの推定安定値の必要性を排除する。タンパク質の温度依存性安定性は、ΔH、アンフォールディングエンタルピー、ΔS、アンフォールディングのエントロピー及びΔCp及びアンフォールディングの熱容量変化などの3つの重要なパラメータの関数であるため、温度外挿は、エラーが非常に発生しやすい。
【0040】
「ΔG」は「アンフォールディングのギブス自由エネルギー」を指し、より低い温度でのタンパク質の内因性安定性を決定する際に重要な役割を果たす。ΔGは、化学変性によって測定される。ΔGの決定は、安定性の最適化及び凝集最小化に使用される。より高いΔGを有するタンパク質は、その天然の立体配座においてより安定である。より低い温度で少量の変性タンパク質であっても存在することで、凝集、化学的劣化、並びにしたがって結合及び機能の損失を引き起こす可能性がある。したがって、治療薬候補のアンフォールディングの自由エネルギーを決定して、それらの天然の立体配座の安定性を理解することは重要である。化学変性は、紫外線、蛍光、及び円形二色性分光法などの技術によるグアニジン塩酸塩及び/又は尿素などの変性剤の存在下で測定され得る。3つのパラメータ(ΔG、C50及びm)は、化学変性から収集されたデータの非線形最小二乗法フィッティングにより決定され、式中、mは、変性剤濃度の関数としてのΔGにおける変化率であり、C50は、タンパク質分子の50%が天然に折り畳まれた状態にありかつ50%がアンフォールディングされた変性状態にある変性剤濃度である。ΔG及びC50の両方における増加は、タンパク質の内因性安定性の増加を示す。2つのアンフォールディング遷移が観察される場合、ΔGu1及びΔGu2は、それぞれ、第1のアンフォールディング遷移及び第2のアンフォールディング遷移を指す。
【0041】
「改善された安定性」は、高温又は低温、免疫グロブリン凝集、及び抗体製造中に試験された他の応力に対する耐性を増加させる抗体変異体を指す。改善された安定性を有する本開示の抗体は、モノマー含有量の増加、上昇した融点(Tm)、上昇したTagg、上昇したアンフォールディングの自由エネルギー(ΔGu1、ΔGu1、C50)、又は1つ若しくは2つ以上の体細胞超変異部位のみにおいて異なる同じ抗体と比較した場合、低減された凝集のレベルを有する抗体である。モノマー含有量の上昇は、2%以上であり得る。上昇したTmは、1℃以上、例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、又は25℃の上昇であり得る。上昇したTaggは、1℃以上、例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、又は25℃の上昇であり得る。上昇したΔGu1(最初のアンフォールディング遷移)又はΔGu2(第2のアンフォールディング遷移)は、4kJ/mol以上の増加であってもよい。C50の増加は、0.1M以上であってもよい。凝集の減少は、1%以上であってもよい。
【0042】
「表面露出」は、タンパク質の表面に少なくとも部分的に露出され、溶媒にアクセス可能である、例えば、重水素化にアクセス可能であるアミノ酸残基を指す。一次配列又はタンパク質に基づく残基の表面アクセス可能性を予測するためのアルゴリズムは、当該技術分野で周知である。代替的に、表面露出残基は、タンパク質の結晶構造から特定され得る。
【0043】
「体細胞超変異」又は「SHM」は、クラス切り替え中に見られるように、免疫系が新しい外来要素に適合する、細胞メカニズムの作用によって開始され得るか、又はそれと関連付けられ得るポリヌクレオチド配列の変異を指す。親和性成熟のプロセスの主要な成分、SHMは、抗原などの外来要素を認識するために使用されるB細胞受容体を多様化し、免疫系が生物の寿命中に新しい脅威に応答を適合させることを可能にする。体細胞超変異は、免疫グロブリン遺伝子の可変領域に影響を与える。本発明は、抗体の安定性を増加させる方法を提供し、この方法は、生殖細胞系列抗体との配列アラインメントを介して抗体のフレームワーク又はCDR領域における体細胞超変異を特定する工程を含む。この方法は、SHM部位に存在するアミノ酸残基の頻度を評価し、それを対応する生殖細胞系列アミノ酸に変異させる工程を更に含む。
【0044】
「生殖細胞系列抗体」は、特定の抗体の発現のための遺伝的再編成及び変異につながる成熟プロセスを受けていない非リンパ細胞によってコードされる抗体配列である。本発明の様々な実施形態によって提供される利点のうちの1つは、生殖細胞系列抗体遺伝子が成熟抗体遺伝子よりも可能性が高くて、動物種の個体に特徴的な本質的なアミノ酸配列構造を節約し、したがって安定性を高めている可能性が高いという認識に由来する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態では、ヒト抗体遺伝子のライブラリ、特に、ヒト生殖細胞系列抗体遺伝子のライブラリを使用して、免疫化キャンペーンから生じる所与の抗体における体細胞超変異を特定する。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変ドメイン遺伝子に関する生殖細胞系列DNA及びコードタンパク質配列は、IMGT(登録商標)、international ImMunoGeneTics information system(登録商標)、Webリソース//www_imgt_orgに見出され得る。
【0046】
本発明の別の実施形態は、抗体分子のライブラリであり、各抗体分子は、VH相補性決定領域HCDR1、HCDR2及びHCDR3のセット、並びにフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4からなるVHドメインと、VL相補性決定領域LCDR1、LCDR2及びLCDR3、並びにフレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4のセットからなるVLドメインとを含み、SHMを受けたフレームワークの1つ又は2つ以上の残基は生殖細胞系列残基に変異している。
【0047】
場合によっては、抗体のVH及びVLフレームワーク領域は、ヒト遺伝子の生殖細胞系列アミノ酸配列に対する1つ若しくは2つ以上のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を含む。場合によっては、抗体のVH及びVLフレームワーク領域は、生殖細胞系列アミノ酸配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸置換を含む。場合によっては、それらの置換、欠失、及び/又は挿入のうちの1つ若しくは2つ以上は、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域にある。場合によっては、それらの置換、欠失、及び/又は挿入のうちの1つ若しくは2つ以上は、重鎖及び軽鎖のCDRにある。場合によっては、置換は、参照抗体中のアミノ酸に対するそのような位置での保存的又は非保存的アミノ酸置換を表し得る。
【0048】
場合によっては、重鎖の可変ドメインは、生殖細胞系列アミノ酸配列由来の1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換、欠失及び/又は挿入を含む。場合によっては、置換は、生殖細胞系列アミノ酸配列と比較した非保存的置換である。場合によっては、置換、欠失及び/又は挿入は、重鎖フレームワーク領域にある。場合によっては、アミノ酸置換、欠失及び/又は、重鎖のCDR領域にある。
【0049】
場合によっては、軽鎖の可変ドメインは、生殖細胞系列アミノ酸配列由来の1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換、欠失及び/又は挿入を含む。場合によっては、置換は、生殖細胞系列アミノ酸配列と比較した非保存的置換である。場合によっては、置換、欠失及び/又は挿入は、軽鎖のフレームワーク領域にある。場合によっては、アミノ酸置換、欠失及び/又は挿入は、軽鎖のCDR領域にある。
【0050】
別の態様では、フレームワーク領域は、結果として生じるフレームワーク領域が対応する生殖細胞系列遺伝子のアミノ酸配列を有するように変異される。変異は、抗体の熱安定性を増加させ、貯蔵寿命を改善するために、フレームワーク領域又はCDR領域で作製され得る。フレームワーク領域の変異はまた、抗体の免疫原性を変更又は低減するために作製され得、単一抗体は、可変ドメイン又は定常ドメインのCDR又はフレームワーク領域のうちのいずれか1つ若しくは2つ以上に変異を有し得る。
【0051】
「生殖細胞系列化」という用語は、抗体VH又はVL配列に見られる1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を生殖細胞系列配列の対応するアミノ酸に反転させるプロセスである。いくつかの例では、生殖細胞系列化は、最も近い一致する生殖細胞系列配列由来の同等の残基で、異常な又は低頻度の残基を置換することを含む。ヒトVH3ファミリーのメンバーに相同なアミノ酸配列を有するVH又はVLドメインの生殖細胞系列化は、しばしば、その位置に異常又は低頻度の残基又は希少残基であることが見出された残基の置換(replacement)/置換(substitution)を伴う。異常又は低頻度残基は、体細胞超変異の結果であり得る。
【0052】
本明細書に記載の生殖細胞系列化の一般原理は、本発明のこの実施形態では等しく適用される。例として、VH及びVLドメインにおいて異常又は低頻度残基を含有するリード選択されたクローンは、ライブラリアプローチを適用することによってそれらのフレームワーク領域(FR)で生殖細胞系列化され得る。最も近いヒト生殖細胞系列(VH及びVLの場合)及びに他のヒト生殖細胞系列に対する整列後、FRに変更される残基が特定され、ヒト残基が選択される。体細胞超変異残基の最も近い一致するヒト生殖細胞系列由来の同等の残基との置換を伴い得るが、これは必須ではなく、他のヒト生殖細胞系列由来の残基も使用され得る。
【0053】
生殖細胞系列化プロセスの全体的な目的は、親VH及びVLドメインによって形成された抗原結合部位の特異性及び親和性を保持しながら、ヒト対象に導入され、安定性が改善されたときにVH及びVLドメインが最小限の免疫原性を示す分子を産生することである。
【0054】
「異常な残基」は、生殖細胞系列抗体に見られるアミノ酸残基の頻度と比較して、その頻度が1%未満である抗体の可変領域に見られるアミノ酸残基を指す。
【0055】
「低頻度残基」は、生殖細胞系列抗体に見られるアミノ酸残基の頻度と比較して、その頻度が低い抗体の可変領域に見られるアミノ酸残基を指す。頻度は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の頻度であり得る。
【0056】
「K」という用語は、「平衡解離定数」を指し、平衡時の滴定測定で、又は解離速度定数(Koff)を関連速度定数(Kon)で除算することによって得られた値を指す。「K」は、「親和性定数」を指す。会合速度定数、解離速度定数及び平衡解離定数は、抗原に対する抗体の結合親和性を表すために使用される。会合速度定数及び解離速度定数を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。蛍光ベースの技術を使用することにより、高い感度及び平衡状態で生理的緩衝液中のサンプルを検査する能力が提供される。他の実験アプローチ及びBIAcore(登録商標)(生体分子相互作用分析)アッセイなどの機器を使用することができる。
【0057】
本明細書全体を通しての抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、別途明示的に記載のない限り、Kabat et al.(1991,J Immunol 147(5):1709-19に記載されているEUインデックスに従う。
【0058】
従来の1文字及び3文字のアミノ酸コードは、本明細書では、表1に示すとおりに使用される。
【0059】
【表1】
【0060】
抗体安定性を改善する方法
本発明は、抗体を改善する方法を提供し、この方法は、最適化のための抗体を特定する工程のうちの1つ若しくは2つ以上又は全てを含み、抗体VH若しくはVL又はVH及びVL中の1つ若しくは2つ以上の異常又は低頻度残基を特定することと、抗体VH及びVL配列を、最も近いヒト又は非ヒト生殖細胞系列配列と整列させることと、VH及びVLのフレームワークにおける体細胞超変異部位を特定することと、体細胞超変異の部位で典型的に観察された1つ又は2つ以上の生殖細胞系列残基を特定することと、体細胞超変異の部位における1つ又は2つ以上の生殖細胞系列変異を含有する変異体及び変異体のライブラリを設計及び操作することと、操作された変異体をクローニング及び産生することと、操作された変異体の生物物理学的特性を評価することと、操作された変異体の免疫原性リスクを評価することと、1つ又は2つ以上の最適な変異体を選択することと、を含む。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、異常又は低頻度残基の特定は、コンピュータベースのソフトウェアによって行われる。特定の実施形態では、コンピュータベースのソフトウェアは、ソフトウェアabYsisである。異常又は低頻度残基を特定するために使用できるフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開データベース又は刊行されている参照文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変ドメイン遺伝子についての生殖細胞系列DNA及びコードタンパク質配列は、IMGT(登録商標)に見出され得る。
【0062】
生殖細胞系列配列に由来するフレームワーク領域を含有する抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる抗体、例えば、トランスジェニックマウス、ラット、若しくはニワトリ、又はファージディスプレイライブラリなどから得られる抗体を指す。そのような抗体は、例えば、自然発生する体細胞変異又は意図的な置換が原因で、その由来となった配列と比べてアミノ酸の違いを含み得る。特定の実施形態では、リード抗体の異常又は低頻度残基は、フレームワーク領域、CDR1、CDR2又はCDR3における体細胞超変異である。
【0063】
安定性を改善するために置換され得る異常又は低頻度残基は、ソフトウェアabYsis(Swindells,M.B.et al.abYsis:Integrated Antibody Sequence and Structure-Management,Analysis,and Prediction.J Mol Biol 429,356-364(2017))によって計算される最も低い頻度を有する異常又は低頻度残基である。本発明の特定の実施形態では、生殖細胞系列残基によって置換される異常な残基の頻度は、1%未満である。生殖細胞系列残基によって置換される低頻度残基の頻度は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%である。
【0064】
本発明は、VH、VL、又はVH及びVLの両方が、抗体のフレームワーク領域に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のアミノ酸置換を任意選択的に含む、変異体抗体を設計する方法を提供する。任意選択的に、置換は、CDR1、CDR2又はCDR3内にあってもよいが、抗体の結合に影響を与えない。本発明の文脈において、置換は、異常な又は低頻度残基が観察された部位での生殖細胞系列置換である。置換の可能な部位は、抗体のフレームワーク領域内にある。例示的な置換は、生殖細胞系列置換であり得る。
【0065】
この方法はまた、元のリード抗体及び操作された変異体の安定性を評価する工程を含む。本発明の文脈において、抗体の安定性は、例えば、限定されないが、アンフォールディング、熱安定性、モノマーの定量的サイズ分布、及び他のより高次の凝集体、貯蔵、及び非特異的結合の自由エネルギーを測定することなどの、当該技術分野で既知の好適なアッセイのいずれかを使用して測定され得る。タンパク質安定性を測定する方法には、分析的超遠心分離、示差走査熱量測定、分析的サイズ排除、示差走査蛍光定量法が含まれるが、これらに限定されない。安定性を予測する方法は、分子モデリングを含んでもよい。インビボ及びインビトロでタンパク質安定性を測定する他の方法もまた、本発明に照らして使用することができる。抗体の安定性は、遷移中間点値Tm、凝集Taggの温度、ΔGu及びC50の自由エネルギー、凝集状態の変化、又は非特異的表面への結合の観点から測定することができる。本明細書で使用される「安定性」という用語は、抗体製造において試験された高温又は低温、免疫グロブリン凝集、及び他の応力に供されたときに、その構造的立体配座及び/又はその活性及び/又は親和性を保持する抗体の能力を指す。改善された安定性を有する抗体変異体は、抗体製造中に試験された高温又は低温、免疫グロブリン凝集、及び他の応力に対する耐性を増加させる抗体変異体を指す。
【0066】
いくつかの実施形態では、分析的超遠心分離評価は、操作された変異体の分析的超遠心分離速度(AUC-SV)を、当該リード抗体のAUC-SVと比較することを更に含む。好ましくは、抗体のフレームワーク領域において異常又は低頻度残基を特定し、異常又は低頻度残基を生殖細胞系列残基と置換する本発明の方法は、改善されたAUC-SV値を有する抗体バリアントを提供する。例えば、変異体抗体は、>95%のモノマー(例えば、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のモノマー)を示す。改善されたAUC-SV値を有する抗体は、2%以上のモノマー含有量の増加を示す。
【0067】
いくつかの実施形態では、熱安定性評価は、各当該操作された変異体の熱アンフォールディング曲線のTmを、当該リード抗体の熱アンフォールディング曲線のTmに比較することを更に含む。好ましくは、抗体のフレームワーク領域において異常又は低頻度残基を特定し、異常又は低頻度残基を生殖細胞系列残基と置換する本発明の方法は、増加されたTm値を有する抗体変異体を提供する。本発明に記載される変異体抗体の熱安定性に対する1つ又は2つ以上の変異の効果は、熱アンフォールディング曲線から外挿されたTm値の変化を測定することによって決定される。変異体抗体の安定性を増加させる好ましい変異は、Tmを増加させることが予想される。例えば、変異体抗体は、元のリード抗体Tmと比較した場合、1℃以上のΔTm増加(1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、又は25℃のΔTmなど)を示す。
【0068】
いくつかの実施形態では、熱安定性評価は、各当該操作された変異体のTagg値を、当該リード抗体のTagg値と比較することを更に含む。好ましくは、抗体のフレームワーク領域において異常又は低頻度残基を特定し、異常又は低頻度残基を生殖細胞系列残基と置換する本発明の方法は、増加されたTagg値を有する抗体変異体を提供する。変異体抗体の安定性を増加させる好ましい変異は、Taggを増加させることが予想される。例えば、変異体抗体は、1~25℃のΔTaggを示す。元のリード抗体Taggと比較した場合(例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、又は25℃のΔTagg)。
【0069】
一実施形態では、アンフォールディングの自由エネルギーは、各操作された変異体のΔGu1、ΔGu2、C50を、リード抗体のΔGu1、ΔGu2、C50と比較することを更に含む。好ましくは、抗体のフレームワーク領域において異常又は低頻度残基を特定し、生殖細胞系列残基と異常又は低頻度残基を置換する本発明の方法は、増加したΔGu1、ΔGu2、C50値を有する抗体変異体を提供する。変異体抗体の安定性を増加させる好ましい変異は、変異体抗体のΔGu1、ΔGu2、又はC50値を増加させ得る。例えば、変異体抗体は、元のリード抗体ΔGu1又はΔGu2と比較した場合、4kJ/mol以上のΔGu1又はΔGU2の増加を示す。変異体抗体はまた、リード抗体と比較した場合、0.1M以上のC50の増加を示し得る。
【0070】
一実施形態では、当該操作された変異体の貯蔵安定性は、4℃、又は40℃で2週間及び4週間測定され、当該リード抗体の貯蔵安定性と比較される。特定の実施形態では、貯蔵安定性は、時間ゼロ~1ヶ月の凝集レベルの変化を見ることによって測定される。好ましくは、抗体のフレームワーク領域において異常又は低頻度残基を特定し、生殖細胞系列残基と異常又は低頻度残基を置換する本発明の方法は、凝集が低減された抗体変異体を提供する。例えば、変異体抗体は、元のリード抗体凝集レベルと比較した場合、1~5%のΔ%凝集(例えば、1、2、3、4又は5%のΔ%凝集)の減少を示す。
【0071】
別の実施形態では、安定した抗体を産生する方法は、操作された変異体の免疫原性リスクを評価することを含む。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、免疫原性リスク評価は、インシリコで測定される。特定の実施形態では、インシリコでの免疫原性リスク評価は、Epivaxスコアで測定される。特定の実施形態では、変異体抗体の免疫原性リスクは、元のリード抗体の免疫原性リスクと同等か、又はそれより低い。
【0073】
特定の実施形態では、操作された変異体は、抗体のヒトフレームワーク領域、CDR1、CDR2又はCDR3で作製される。アミノ酸置換は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって生じ得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、特許請求される発明の方法は、リード抗体及び抗体変異体の親和性を測定し、抗体変異体の親和性をリード抗体の親和性と比較することを含む。リード抗体及び抗体変異体の親和性は、任意の好適な方法を使用して実験的に決定され得る。例示的な方法は、ProteOn XPR36、BIAcore3000、Octet、KinExA機器、ELISA、又は当業者に既知の競合的結合アッセイを利用する。抗体の測定された親和性は、異なる条件(例えば、オスモル濃度、pH)下で測定した場合に異なり得る。したがって、親和性及び他の結合パラメータ(例えば、K、Kon、及びKoff)の測定は、典型的には、標準的な条件及び例えば本明細書に記載の緩衝液などの標準化緩衝液を用いて行われる。例えば、BIAcore3000又はProteOnを使用した親和性測定での内部エラー(標準偏差(SD)として測定される)は典型的に、典型的な検出限界内での測定の場合、5~33%の範囲内であり得ることが当業者には分かるであろう。したがって、「約」という用語は、K値に言及する場合、アッセイにおける典型的な標準偏差を反映する。
【0075】
本発明の方法はまた、増強された安定性を示すが、リード分子と同様の親和性が保持される変異体抗体を選択することを含む。いくつかの実施形態では、変異体抗体の親和性は、当業者によって理解されるように、機能的に同じ又は同様である。他の実施形態では、変異体抗体の親和性は、元のリード抗体の親和性よりも緊密であり得る。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【実施例1】
【0076】
以下の実施例では、抗体のフレームワークで特定されたSHM部位の生殖細胞系列化による、抗前立腺標的抗体、TMEB675の最適化について記載されている。抗体は、高親和性抗体に特有の機能的基準を満たしたが、不十分な内因性の特性を示した。TMEB675の再操作は、その機能及び好ましい生物物理学的特性の両方に基づいて、TMEB762が選択された変異体のパネルを生成した。
【0077】
発見、操作及び生殖細胞系列の最適化
モノクローナル抗体(TMEB675)は、OmniRat(登録商標)トランスジェニックプラットフォームにおいて、組換えヒトTMEFF2でOmniRatを免疫することによって発見された。OmniRat(登録商標)は、高度に多様化された完全ヒト抗体レパートリーを産生する治療用ヒト抗体プラットフォームである。OmniRat(登録商標)は、キメラヒト/ラットIgH遺伝子座(22個のヒトV、ラットC遺伝子座に連結された自然構成の全てのヒトD及びJセグメントを含む)を、完全ヒトIgL遺伝子座(Jκ-Cκに連結された12個のVκ及びJλ-Cλに連結された16個のVλ)(Osborn,M.J.et al.High-affinity IgG antibodies develop naturally in Ig-knockout rats carrying germline human IgH/Igkappa/Iglambda loci bearing the rat CH region.J Immunol 190,1481-1490(2013))と共に含有する。したがって、このラットは、ラット免疫グロブリンの発現減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子がクラススイッチ及び体細胞変異を受けて、完全にヒトの可変領域を有する高親和性キメラヒト/ラットIgGモノクローナル抗体が生成される。OmniRat(登録商標)の調製及び使用、並びにこのようなラットが有しているゲノム改変は、国際公開第14/093908号に記載されている。89日間の免疫化レジメンに続いて、ラット由来のリンパ節を摘出し、ハイブリドーマを生成するために使用した。ハイブリドーマ上清を、ELISAによって組換えヒトTMEFF2への結合に対してスクリーニングした。
【0078】
スクリーニング結果に基づいて、いくつかのハイブリドーマクローンを配列決定し、発現させ、機能性について特性評価した。TMEB675は、望ましい組換えタンパク質親和性及び細胞結合属性を示し(表2)、更なる研究のために選択された。
【0079】
【表2】
【0080】
abYsisツールは、抗体重鎖及び軽鎖配列内の「異常な残基」を検索することを可能にする(Swindells,M.B.et al.abYsis:Integrated Antibody Sequence and Structure-Management,Analysis,and Prediction.J Mol Biol 429,356-364(2017))。抗体配列のデータベースにおいて1%未満の閾値によって規定される異常な残基は、特定の位置の重要な機能についてのヒントを提供する。抗体配列のデータベースにおける1~10%の閾値によって規定される低頻度の異常な残基は、特定の位置の重要な機能についてのヒントを提供する。
【0081】
abYsisポータルを使用したVH及びVLについてのヒト生殖細胞系列配列を有するTMEB675の可変重鎖及び軽鎖領域の配列アラインメントは、フレームワーク領域内のいくつかの体細胞超変異(SHM)を示した。VH(R14P、P20L、H81Q)及び2つのSHM(A1D、A91P)において得られた3つの体細胞超変異が、Vkで観察された(図1A図1B図2A図2D)。重鎖ヒトフレームワーク(HCFR)の14、20及び81位のそれぞれに見られるアルギニン、プロリン、及びヒスチジンアミノ酸残基、並びに軽鎖ヒトフレームワークの1位に見られるアラニン残基は、abYsis分析で低い頻度をスコア化し、これらが異常であるか、又は低頻度残基であることを示した(図2A図2E)。TMEB675のHCFRの14位のアルギニン及び20位のプロリンは、低頻度残基である(<1%、表3、表4及び表5)。
【0082】
14位に見られるSHMアルギニンは、この位置で最も頻繁に見られるプロリン残基(プロリン残基頻度95.029%)と比較して、希少(頻度0.151%)である。(表3及び表4、図2A)。重鎖の20位に見られるSHM、プロリンの頻度もまた、最も頻繁に見られるロイシン残基(頻度73.024%)と比較して低い(頻度0.088%)。(表3及び表5、図2B)。第3のSHM、81位のヒスチジンを見る頻度は、その位置(頻度57.576%)に典型的に見られる最も頻繁に見られるグルタミン残基と比較して、比較的まれである(頻度1.604%)(表3及び表6、図2C)。表3は、ヒト重鎖生殖細胞系列配列、並びに14位、20位及び81位での典型的な組成を示す。表4、表5及び表6は、それぞれ、abYsisデータベース重鎖配列、並びに14位、20位及び81位での残基の組成を示す。表7及び表8は、abYsisデータベース軽鎖配列、並びに1位及び91位での残基の組成をそれぞれ示す。
【0083】
【表3-1】
【0084】
【表3-2】
【0085】
【表3-3】
【0086】
【表3-4】
【0087】
【表3-5】
【0088】
【表3-6】
【0089】
【表3-7】
【0090】
【表3-8】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
軽鎖には2つのSHMが見られた。SHMは、LCFRの1位に見られ、その位置にアラニンをもたらした(図1B、表7)。アスパラギン酸は、この位置で最も頻繁に見出される残基(頻度37.355%)であり、この位置でのAlaは、比較的希少である(頻度6.099%)(表7、図2D)。SHMは、LCCDRの91位にも見られ、その位置にアラニン残基をもたらした。91位のプロリンは、この位置で見られる最も頻度の高い残基(50.996%)であるが、Alaは比較的希少である(頻度2.332%)(表8、図2E)。
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
標的タンパク質への結合に対するSHMの潜在的な影響を評価するために、結合エピトープをHXMSによって決定した。4つの領域が、HDX-MSによるパラトープ規定領域として特定された。これらの領域は、体細胞超変異が観察されたフレームワークの外側の抗体の重鎖の3つの場所及び軽鎖の1つの領域に分布される(データは示さず)。したがって、これらの部位の生殖細胞系列化は、結合親和性及び機能に影響を与えると予想されない。
【0098】
重鎖SHM部位か、又は軽鎖SHM部位か、又は重鎖及び軽鎖の組み合わされたSHM部位のいずれかに変異を有する生殖細胞系列変異体を発現させ、機能的活性及び内因性特性の両方について試験した。図11に概説されているワークフローは、改善された分子属性を有するSHM及び操作抗体を特定するために採用された。構築されたバイナリー変異体のライブラリは、表9に記載されている。各変異体の機能的及び生物物理学的特性を、以下に記載されるように試験した。
【0099】
【表9】
【0100】
生物物理学的評価
生物物理学的特性を評価するために使用される方法
示差走査熱量測定(DSF)
抗体変異体の熱安定性は、自動Prometheus機器を使用してNanoDSFによって決定された。サンプルを384ウェルサンプルプレートから24ウェルキャピラリーにロードすることによって、測定を行った。各サンプルについて、2回測定を行った。典型的なIgGサンプルの熱走査は、1.0℃/分の速度で20℃~95℃に及んだ。330nm及び350nmの発光波長での内因性トリプトファン及びチロシン蛍光、並びに比F350nm/F330nm比を温度に対してプロットして、アンフォールディング曲線を生成した。
【0101】
nanoDSF機器の後方反射光学系は、タンパク質によって吸収されない波長で近UV光を発する。凝集したタンパク質は光を散乱させ、非散乱光は検出器に到達する。後方反射光の低減は、凝集の直接測定値であり、温度に対するmAU(減衰単位)としてプロットされる。
【0102】
抗体変異体の熱アンフォールディングパラメータ(Tm及びTagg)を、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4中0.5mg/mLで測定した。
【0103】
化学変性実験は、精製されたmAbを、0M~6Mの異なる濃度のGdnClで室温で一晩インキュベートすることによって実施した。内因性蛍光を、25℃でNanoDSFを使用して次の日に測定した。F350nm/F330nm比を、アンフォールディングの自由エネルギー(ΔGu)を得るために2状態又は3状態アンフォールディングの式のいずれかによってフィットされたアンフォールディング曲線を生成するためにGdnClの各濃度で、及び分子の50%が(C1/2aka C50)として存在する変性剤の濃度でプロットした。
【0104】
示差走査熱量測定(DSC)
熱安定性は、キャピラリーVP-DSCマイクロ熱量計(Microcal Inc.Northampton、MA)によって特徴付けられた。温度スキャンを25~120℃で1.0mg/mLのタンパク質濃度及び1℃/分のスキャン速度で行った。緩衝液参照スキャンをタンパク質スキャンから減算し、タンパク質の濃度を熱力学分析の前に正規化した。DSC曲線を非2状態モデルを使用してフィットさせて、エンタルピー及び見かけの遷移温度(T)値を得た。
【0105】
非特異的結合
リード分子の無関係な表面への非特異的結合を、バイオセンサー技術(BIAcore 8K)によって決定した。1μMの濃度での抗体変異体を、無関係なタンパク質でコーティングされたSPR表面上に通過させた。無関係な表面に対して有意な結合を示す抗体は、インビボ特性が乏しく、製造上の問題を有すると予測される。無関係な表面には、負及び正に帯電したタンパク質、疎水性タンパク質、並びにヒトIgGが含まれる。
【0106】
分析的超遠心分離
Beckman Optima AUC機器を使用して、分析的超遠心分離による溶液中のモノマー及びタンパク質の他のより高次の凝集体の定量的サイズ分布を測定した。サンプルを、1.2cmのBeckmanセンターピース(50Krpmの速度に設定)及び石英窓を備える遠心セルにロードした。細胞を集合させて、130lbまでトルクを与えた。遠心セルを、An-50(8穴)又はAn-60(4穴)ローターに入れ、AUCチャンバ内に配置した。AUC機器の温度を、実行を開始する前に少なくとも1時間20.5℃に設定した。実行は、40Krpm250スキャンカウント(250スキャン)、スキャン収集の90秒頻度、10μMデータ分解能、及び波長280nmで行った。直接境界フィッティングソフトウェアSEDANALを使用してデータを分析した。
【0107】
短期安定性(4℃、40℃)
濃縮されたmAbを分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって試験して、モノマーのパーセンテージを測定した。次いで、MAbを4℃及び40℃で4週間インキュベートした。アリコートを一定の間隔で採取し、完全性をSEC-HPLCによって確認した。
【0108】
分子モデリング
MOEモデリングソフトウェア(CCG、Montreal)の標準的な抗体モデリングプロトコルを使用するMOEモデリングソフトウェアを使用して、分子相同性モデルを生成した。生殖細胞系列化変異を特定し、スティック表現で強調表示した。分子図は、コンピュータグラフィックスプログラムPyMolで生成された。
【0109】
生物物理学的評価の結果
SHM残基の再操作は、より良好な生物物理学的属性を有する最適化された変異体の発見につながった。試験された11個の変異体のうち、3つの重鎖再操作生殖細胞系列変異、R14P、P20L及びH81Q、並びに2つの軽鎖生殖細胞系列変異、A1D及びA91Pを含有するTMEB762は、最も最適な生物物理学的特性を有していた。残基の付番はKabatに従う。熱安定化のためのSHM及び構造基準の効果をよりよく理解するために、5つの生殖細胞系列変異は、Fv’s、(MOE、CCG、Montreal)の両方の分子モデルにマッピングされた(図3)。5つの生殖細胞系列変異のうち、A1D及びH82Hが表面を露出され、したがってドメイン安定性に対する寄与がほとんどない可能性がある。VH R14Pは、その構造に影響を及ぼし得、したがってドメイン安定性にわずかな影響を及ぼし得る。分子モデリングによれば、VH P20L及びVL A95P変異は、2つの主要な構造決定基である可能性が高い。β鎖の中央に位置するP20Lは、その側鎖がVHコアに埋め込まれている。プロリンは、典型的なβ鎖構造においては好ましい残基ではない。この位置のLeuは、好ましい残基を回復させ、ロイシン側鎖はコア内に十分に詰まっている。このクラスのVLの95位でのアミノ酸残基は、典型的には、安定性を最大化するシス立体配座である。この位置での非Pro変異の安定性及び構造への影響については以前に報告されている(Luo,J.et al.Coevolution of antibody stability and Vkappa CDR-L3 canonical structure.J Mol Biol 402,708-719(2010))。この位置でのAlaは、局所的なカノニカル構造を歪ませるか、又はエネルギー的に不利な非Proシスペプチド結合に強制される可能性が高い。両方とも安定性に悪影響を与えるであろう。全体として、生殖細胞系列変異の理論的根拠は、十分に支持されている。
【0110】
生物物理学的特徴
分析的超遠心分離(AUC)
微量のプロセス及び産物関連不純物の存在は、安全性及び免疫原性関連リスクの上昇に重大な脅威をもたらす。高品質分子に対して生物物理学的特徴付けを行うことは、その内因性特性を真に決定するために不可欠である。AUCは、モノマーの定量的サイズ分布及び溶液中のタンパク質の他のより高次の凝集体を測定する強力な技術である(Berkowitz,S.A.Role of analytical ultracentrifugation in assessing the aggregation of protein biopharmaceuticals.AAPS J 8,E590-605(2006))。特に、沈降速度(SV)ベースの分析は、偏りのない様式で任意の緩衝液中のタンパク質の流体力学的サイズ及び形状を一意に測定する。TMEB762(黒線)及びTMEB675(灰色線)の両方の分析的超遠心分離速度(AUC-SV)実行を、図4に示す。SV-AUC分析に基づいて、TMEB675及びTMEB762の両方は、精製後に>95%のモノマーを示し、したがって、更なる生物物理学的特徴付けのための良好な出発材料である。
【0111】
熱安定性
立体配座及びコロイド安定性の両方は、安定性、貯蔵寿命及び薬剤開発成功を予測する製造可能性パラメータを十分に示している。両方のパラメータの同時評価は、長期安定性決定のための非常に強力なアプローチである。温度は、分子の構造的安定性を詳細に吟味するために広く使用されている変性方法のうちの1つである。トリプトファン系蛍光発光を、プロメウスNT.48機器を使用してPBS中の両方のmAbの熱アンフォールディングを監視するために使用した。高蛍光感度検出によって、異なるサブドメインのアンフォールディングによるmAb立体配座の変化の監視が可能になる。同時に、蛍光検出は、後方反射光強度技術を使用して温度誘起凝集を監視することによって、コロイド安定性における変化を検出することができる。同様に、示差走査熱量測定は、より高い温度でドメインベースの安定性を決定するための業界最高標準の熱溶融ツールである。図5は、Nano DSFによって決定されるTMEB675及びTMEB762の熱アンフォールディングプロファイルを提供する。データは、TMEB762がより安定であることを示している。TMEB762のアンフォールディングは、75℃に近いFabアンフォールディング発生を有する約59℃での、TMEB675の場合より高い温度で開始する(表10)。抗体は非常に安定であり、その温度より低い凝集(Tagg)の兆候を示さない。図6は、DSCによって決定されるTMEB675及びTMEB762の熱アンフォールディングプロファイルを示す。
【0112】
【表10】
【0113】
アンフォールディングの自由エネルギー
疑いのない熱変性実験は、初期に分子を等級序列化するための高スループットとして利用可能な一般的な安定性決定ツールのうちの1つである。しかしながら、既存の課題は、より高い温度データに基づいて、より低い温度で内因性安定性を正確に計算することである。この計算は、熱溶融が多くの場合により低い温度での信頼性の高い安定性パラメータの外挿を妨げる凝集に起因して不可逆的であるために、エラーが発生しやすい(Freire,E.,Schon,A.,Hutchins,B.M.& Brown,R.K.Chemical denaturation as a tool in the formulation optimization of biologics.Drug Discov Today 18,1007-1013(2013))。更に、リード候補の安定性は、多くの場合、25℃又は37℃でのみ測定される。単一温度での等温化学変性(ICD)は、任意の溶媒中のタンパク質の内因性安定性を提供するための証明された高信頼性熱力学解析である(Svilenov,H.,Markoja,U.& Winter,G.Isothermal chemical denaturation as a complementary tool to overcome limitations of thermal differential scanning fluorimetry in predicting physical stability of protein formulations.Eur J Pharm Biopharm 125,106-113(2018))。ICD実験では、mAbは、立体配座変化を測定する前に、最小限12~16時間の変性化学物質の濃度を増加させる所与の濃度でインキュベートされる。F350/F330蛍光比の変化を使用して、変性化学物質の各測定濃度でのアンフォールディングタンパク質の画分を決定する。フィッティング曲線から計算されたアンフォールディングのギブス自由エネルギー(ΔGu)は、特定の温度でのmAbの内因性立体配座安定性の指標である。このフィッティングからの別の重要なパラメータはc50であり、これは、抗体の50%がアンフォールディングされる変性剤の濃度を表す。図7及び図8は、25℃で測定したTMEB675及びTMEB762のICDアンフォールディング曲線を提供する。TMEB675は、24.3kJ/molのΔGuでの単一の遷移を示し、TMEB762は、63.5kJ/molの第1の遷移ΔGu及び37.3kJ/molの第2の遷移ΔGuで正常に挙動するmAbの典型的な3つのアンフォールディング状態を示す。TMEB762の第1の遷移のアンフォールディングの自由エネルギーのおよそ3倍の増加は、その生殖細胞系列最適化FABドメインのためにTMEB762がTMEB675よりも内因的に安定である可能性が高いことを明確に実証している(表11)。
【0114】
【表11】
【0115】
貯蔵安定性評価
加速熱応力は、十分な分解産物を生成し、短縮されたタイムラインにおける抗体の分解メカニズムを理解するための業界で広く使用されている強制分解アッセイである。これは、長期貯蔵安定性のための直接予測として使用される。長期貯蔵(4℃)及び加速貯蔵(40℃)の両方を、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)によるそれらの分解を監視することによって、PBSにおいて1ヶ月間TMEB675及びTMEB762について研究した。aSECクロマトグラム(データは示さず)は、抗体が、凝集を介するが断片化を介せずに、経時的に劣化したことを示した。0週間、2週間及び4週間の間の凝集レベルの変化を、両方のmAbについてプロットした(図9)。TMEB762は、4℃で<0.3%の凝集体、及び40℃での加速貯蔵時に<1%の凝集体を1ヶ月間有していた。しかしながら、TMEB675は、4℃及び40℃でそれぞれ、1ヶ月後に0.5%及び3%凝集増加を示した。様々な文献と一致するように、高い熱安定性が高ければ高いほど、より低い凝集の傾向と相関する(Brader,M.L.et al.Examination of thermal unfolding and aggregation profiles of a series of developable therapeutic monoclonal antibodies.Mol Pharm 12,1005-1017(2015)、He,F.et al.Detection of IgG aggregation by a high throughput method based on extrinsic fluorescence.J Pharm Sci 99,2598-2608(2010))。
【0116】
非特異的結合
リード候補の配列最適化は、疎水性、電荷不均一性、折り畳み、溶解度、及び溶媒アクセシビリティなどのそれらの物理的特性の予期せぬ改変につながる場合がある。これらの内因性特性の改変は、開発可能性及び薬物動態学的挙動に大きな影響を及ぼすであろう。mAbのより速いクリアランスは、インビボでの他の無関係なタンパク質との非特異的相互作用に起因し得る。これらの単純な物理的特性は、非特異的結合アッセイによって測定され得る(Dostalek,M.,Prueksaritanont,T.& Kelley,R.F.Pharmacokinetic de-risking tools for selection of monoclonal antibody lead candidates.MAbs 9,756-766(2017))。ここで、表面プラズモン共鳴(SPR)ベースの非特異的結合アッセイを使用して、TMEB675及びTMEB762の両方の非特異的結合特性を疎水性、荷電、及びIgG表面に対して決定した。市販の抗体を含む多くの早期及び後期の段階の候補について収集された実験データに基づいて、非特異的結合について試験される候補に対する相対的結合応答の基準(ここでは明らかにされていない)が得られた。適切な対照抗体(陽性及び陰性)は、検証のために単一の実験ごとに実行される。TMEB675及びTMEB762の相対応答単位を、異なる表面への結合に対してプロットした。対照デキストラン表面フローセルに対する結合応答を、各データセットから減算した。TMEB762及びTMEB675は、1μMの濃度であっても試験される荷電表面のいずれにも非特異的結合を示さない(図10)。任意の無関係な表面への非特異的結合は、インビボ挙動に関する潜在的な懸念を伴うこれらのmAbを開発するための重大な課題であったことがある。
【0117】
生物物理学的評価は、フレームワーク残基の生殖細胞系列化が、TMEB762の熱安定性を安全にかつ良好に増強し、抗体の立体配座を著しく変化させることなく凝集傾向を低下させることを示した。
【0118】
免疫原性リスク評価
TMEB762は、ヒト生殖細胞系列配列の同一性%の改善によって示されるように、TMEB675と比較して免疫原性のリスクが低下したことを示した。更に、インシリコ免疫原性リスク評価スコアも同様に大幅に改善された(表12)。免疫原性のためのEpiVaxスクリーニングは、ペプチド及びタンパク質の免疫原性を予測するために免疫インフォマティクスツールのセットに依存する。
【0119】
【表12】
【0120】
結合親和性
TMEB762の結合親和性を測定し、TMEB675と比較し、表13にまとめた。
【0121】
【表13】
【0122】
結論
試験された11個の変異体のうち、TMEB762は、最も望ましい機能的及び生物物理学的特性を有していた。TMEB675の生殖細胞系列化は、凝集する傾向が非常に低い(<1%)、より立体配置的に安定したTMEB762につながり、承認されたFDA/EMA及び臨床ステージmAb候補の品質属性と整合する。
【実施例2】
【0123】
実施例1に記載のワークフローを適用して、異なる構造及び機能の他の抗体を最適化した。実施例2には、抗体のフレームワークで特定されたSHM部位の生殖細胞系列化による、抗前立腺標的抗体PSMW56の最適化が記載されている。
【0124】
発見、操作及び生殖細胞系列の最適化
モノクローナル抗体(PSMW56)が、OmniRat(登録商標)トランスジェニックプラットフォームにおいて、OmniRatを組換えヒトPSMAタンパク質で免疫化することによって発見された。89日間の免疫化レジメンに続いて、ラット由来のリンパ節を摘出し、ハイブリドーマを生成するために使用した。ハイブリドーマ上清を、ELISAによる組換え抗原への結合のためにスクリーニングした。スクリーニング結果に基づいて、いくつかのハイブリドーマクローンを配列決定し、発現させ、機能性について特性評価した。変異体PSMW56は、望ましい組換えタンパク質親和性を示し(表14)、更なる研究のために選択された。抗体は、高親和性抗体の機能的基準特性を満たしたが、熱安定性が低いことを示した。
【0125】
【表14】
【0126】
抗PSMA抗体の操作
abYsisポータルを使用したVHに対するヒト生殖細胞系列配列とのPSMW56の可変重鎖領域の配列アラインメントは、フレームワーク領域内のいくつかの体細胞超変異(SHM)を示した。1つの体細胞超変異が、VH(Ile68)において観察された(図12及び図13)。トレオニンは、68位に見られる高頻度のアミノ酸残基である。68位に見られるIleのSHMは、この位で最も頻繁に見られるThr残基(Thr残基頻度85%)と比較して、低頻度(3%)である。表15は、abYsisデータベース重鎖配列及び68位での残基の組成を示す。操作された変異体PSMW57は、Ile68を親クローンPSMW56上のThrに置換されることによって生成された。
【0127】
【表15】
【0128】
抗PSMA抗体変異体-熱安定性の生物物理学的評価
重鎖I68T変異を伴う生殖細胞系列変異体(PSMW57)を発現させ、熱安定性について試験した。操作された抗PSMA変異体(PSMW57)は、図11に示すワークフローが他の抗体に適用可能であることを示す図14に示すPSMW56と比較して、熱安定性(Tm及びTaggの両方)の有意な増加を示した。
【実施例3】
【0129】
図11のワークフローは他の抗体に広く適用して適用可能であることを更に示すために、このワークフローを、抗前立腺癌抗体DL3B355を最適化するために適用した。以下の実施例では、抗体のフレームワークで特定されたSHM部位の生殖細胞系列化による、DL3B355の最適化について記載されている。
【0130】
発見、操作及び生殖細胞系列の最適化
抗DLL3モノクローナル抗体は、組換えヒトDLL3を有するヒトイディオタイプを有する抗体の多様なレパートリーを産生するAlivamAbマウス、トランスジェニック完全ヒト抗体プラットフォームを免疫化することによって発見された。ハイブリドーマ上清を、ELISAによる組換え抗原への結合のためにスクリーニングした。
【0131】
スクリーニング結果に基づいて、いくつかのハイブリドーマクローンを配列決定し、発現させ、機能性について特性評価した。DL3B355は、望ましい組換えタンパク質親和性を示し(表16)、更なる研究のために選択された。
【0132】
【表16】
【0133】
実施例1に記載されるように、AbYsisツールを使用して、抗体重鎖及び軽鎖配列内の「異常な残基」を探索した。抗体配列のデータベースにおける1%閾値によって規定される異常な残基は、特定の位置の重要な機能についてのヒントを提供する。
【0134】
抗DLL3抗体の操作
abYsisポータルを使用したVH及びVLのヒト生殖細胞系列配列とのDL3B355の可変重鎖及び軽鎖領域の配列アラインメントは、フレームワーク領域内のいくつかの体細胞超変異(SHM)を示した。1つの体細胞超変異が、VH(His85)において観察された(図15A及び図16B)。重鎖において、アスパラギンは、85位に見られる高頻度のアミノ酸残基である。85位に見られるHisのSHMは、この位置で最も頻繁に見られるAsn残基(Asn残基頻度52%、表17)と比較して、希少な頻度(<1%)である。1つの体細胞超変異が、VL(Glu84)で観察された(図15B及び図16B)。重鎖において、グリシンは、84位に見られる高頻度アミノ酸残基である。84位に見られるGluのSHMは、この位置で最も頻繁に見られるGly残基(Gly残基頻度93%、表18)と比較して、希少な頻度(<1%)である。DL3B355の3つの操作された変異体を、表19に示すように生成した。
【0135】
【表17】
【0136】
【表18】
【0137】
【表19】
【0138】
DLL3抗体変異体-熱安定性の生物物理学的評価
各操作された抗DLL3変異体について熱安定性パラメータを測定して、生殖細胞系列変異が生物物理学的属性にプラスの効果を有するかどうかを判定した。アンフォールディング及びFabドメインアンフォールディングTmの開始を、DSF及びDSCによって測定した。操作された抗DLL3変異体は、図17に示す熱安定性(Tm及びTaggの両方)において有意な増加を示した。
【0139】
本明細書に引用されている特許及び特許出願を含む(但しそれらに限定されない)全ての刊行物は、完全に記載されているかのように、参照により本明細書に援用される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
【国際調査報告】