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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】仙腸関節のドリルレス融合方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20221130BHJP
   A61B 17/14 20060101ALI20221130BHJP
   A61F 2/44 20060101ALN20221130BHJP
   A61F 2/46 20060101ALN20221130BHJP
【FI】
A61B17/56
A61B17/14
A61F2/44
A61F2/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520907
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020054308
(87)【国際公開番号】W WO2021067962
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】16/851,840
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/910,913
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522135710
【氏名又は名称】ペインテク、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラネブ、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ガーシュ、クリス
(72)【発明者】
【氏名】ガーシュ、チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ポルツァー、ドウェイン
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097AA10
4C097BB01
4C097BB04
4C160LL01
4C160LL03
4C160LL24
4C160LL26
4C160LL30
4C160LL70
(57)【要約】
回転切断器具を使用せずに、仙腸関節(「SI関節」)(3)に融合インプラント(5)を設置するための方法。方法は、対向する側にある研磨面(33)と、切断縁部(36)を含む開先端部(34)とを有するマルチモーダル研磨デバイス(30)を組み込む。方法は、研磨ヘッド(32)を使用して挿入位置でSI関節(3)から骨組織を切断し、同時に研磨面(33)を使用して挿入位置で皮質骨を剥皮する段階を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転切断器具を使用せずに仙腸関節にインプラント隙間を形成する方法であって、前記方法が、
前記仙腸関節に挿入位置を位置決めする段階であって、前記挿入位置が、前記インプラント隙間の意図された位置を画定する、位置決めする段階と、
前記挿入位置に作業チャネルを導入する段階であって、前記作業チャネルが、作業チャネルによって接続された挿入端部および作業端部を有し、前記作業チャネルの前記挿入端部が、第1の腸骨輪郭、第1の仙骨輪郭、および挿入アームをさらに有する、導入する段階と、
前記第1の仙骨輪郭が、仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭が腸骨に対して着座するように、前記挿入アームを前記挿入位置で前記仙腸関節に挿入する段階と、
研磨デバイスを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記研磨デバイスが、
前記研磨デバイスの遠位端部にある研磨ヘッドであって、前記研磨ヘッドが、
対向する側の第1の対のそれぞれの研磨面であって、前記研磨面が、前記仙腸関節の皮質骨を研磨できる1つまたは複数のツース、バーブ、ブレード、リッジ、スロット、ブローチ、または他の部材を有する、研磨面と、
開先端部であって、前記開先端部が、前記開先端部の前縁部に配置された切断縁部を有し、前記切断縁部が、前記仙腸関節の骨組織を切断するように構成される、開先端部とを有する、研磨ヘッドと、
前記研磨デバイスの近位端部のスライドハンマアセンブリであって、前記スライドハンマアセンブリが、前記スライドハンマアセンブリの動作を可能にする解放位置と、前記スライドハンマアセンブリの動作を禁止するロック位置と、前記スライドハンマアセンブリを前記ロック位置と前記解放位置との間で移動させるための解放手段を有する、スライドハンマアセンブリとを有する、導入する段階と、
前記開先端部が、前記仙骨または前記腸骨から骨組織を切り離し、前記研磨面が、前記仙腸関節内の前記皮質骨を剥皮するように、前記研磨デバイスを前記仙腸関節に前進させ、それによって、回転切断器具を使用せずに、前記挿入位置に剥皮されたインプラント隙間を形成する段階と
を備える、方法。
【請求項2】
前記研磨ヘッドが前記仙腸関節の内側に引っ掛かると、前記解放手段を介して前記スライドハンマアセンブリをロック解除し、前記スライドハンマアセンブリを使用して、前記仙腸関節から前記研磨ヘッドを除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作業チャネルを前記挿入位置に導入する段階が、
関節ロケータを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記関節ロケータが、挿入端部に貫通先端部を有し、前記貫通先端部が、第2の腸骨輪郭および第2の仙骨輪郭を有する、導入する段階と、
前記関節ロケータを前記作業チャネルに完全に挿入することによって、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭ならびに前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭を嵌合位置合わせで配置し、それによって、結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを画定する段階とをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記挿入アームを前記仙腸関節に挿入する段階が、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が、前記仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が、前記腸骨に対して着座するように、前記結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを前記挿入位置で前記仙腸関節に挿入する段階をさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が前記腸骨に当接し、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が前記仙骨に当接するまで、前記貫通先端部を介して前記仙腸関節の上方および内側の軟組織を引き剥がす段階をさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記作業チャネルを前記挿入位置に導入する段階が、
関節ロケータを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記関節ロケータが、挿入端部に貫通先端部を有し、前記貫通先端部が、第2の腸骨輪郭および第2の仙骨輪郭を有する、導入する段階と、
前記関節ロケータを前記作業チャネルに完全に挿入することによって、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭ならびに前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭を嵌合位置合わせで配置し、それによって、結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを画定する段階とをさらに備える、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記挿入アームを前記仙腸関節に挿入する段階が、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が、前記仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が、前記腸骨に対して着座するように、前記結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを前記挿入位置で前記仙腸関節に挿入する段階をさらに備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が前記腸骨に当接し、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が前記仙骨に当接するまで、前記貫通先端部を介して前記仙腸関節の上方および内側の軟組織を引き剥がす段階をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記挿入位置で前記剥皮されたインプラント隙間を形成する段階が、前記剥皮されたインプラント隙間が、略長方形の断面形状を有する融合インプラントを受け入れるように適合されるように、前記剥皮されたインプラント隙間のために、略長方形の断面形状を形成する段階をさらに有し、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記研磨ヘッドが前記仙腸関節の内側に引っ掛かると、前記解放手段を介して前記スライドハンマアセンブリをロック解除し、前記スライドハンマアセンブリを使用して、前記仙腸関節から前記研磨ヘッドを除去する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記作業チャネルを前記挿入位置に導入する段階が、
関節ロケータを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記関節ロケータが、挿入端部に貫通先端部を有し、前記貫通先端部が、第2の腸骨輪郭および第2の仙骨輪郭を有する、導入する段階と、
前記関節ロケータを前記作業チャネルに完全に挿入することによって、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭および前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭を嵌合位置合わせで配置し、それによって、結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを画定する段階とをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記挿入アームを前記仙腸関節に挿入する段階が、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が、前記仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が、前記腸骨に対して着座するように、前記結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを前記挿入位置で前記仙腸関節に挿入する段階をさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が前記腸骨に当接し、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が前記仙骨に当接するまで、前記貫通先端部を介して前記仙腸関節の上方および内側の軟組織を引き剥がす段階をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記作業チャネルを前記挿入位置に導入する段階が、
関節ロケータを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記関節ロケータが、挿入端部に貫通先端部を有し、前記貫通先端部が、第2の腸骨輪郭および第2の仙骨輪郭を有する、導入する段階と、
前記関節ロケータを前記作業チャネルに完全に挿入することによって、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭ならびに前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭を嵌合位置合わせで配置し、それによって、結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを画定する段階とをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記挿入アームを前記仙腸関節に挿入する段階が、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が、前記仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が、前記腸骨に対して着座するように、前記結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを前記挿入位置で前記仙腸関節に挿入する段階をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が前記腸骨に当接し、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が前記仙骨に当接するまで、前記貫通先端部を介して前記仙腸関節の上方および内側の軟組織を引き剥がす段階をさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
回転切断器具を使用せずに仙腸関節にインプラント隙間を形成する方法であって、前記方法が、
前記仙腸関節に挿入位置を位置決めする段階であって、前記挿入位置が、前記インプラント隙間の意図された位置を画定する、位置決めする段階と、
前記挿入位置に作業チャネルを導入する段階であって、前記作業チャネルが、挿入端部および作業端部を有し、前記作業チャネルの前記挿入端部が、第1の腸骨輪郭、第1の仙骨輪郭、および挿入アームをさらに有する、導入する段階と、
前記第1の仙骨輪郭が仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭が腸骨に対して着座するように、前記挿入位置で前記仙腸関節に前記挿入アームを挿入する段階と、
研磨デバイスを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記研磨デバイスが、
前記研磨デバイスの遠位端部にある研磨ヘッドであって、前記研磨ヘッドが、
対向する側の第1の対のそれぞれの研磨面であって、前記研磨面が、前記仙腸関節の皮質骨を研磨できる、研磨面と、
開先端部であって、前記開先端部が、前記開先端部の前縁部に配置された切断縁部を有し、前記切断縁部が、前記仙腸関節の骨組織を切断するように構成される、開先端部とを有する、研磨ヘッドを有する、導入する段階と、
前記開先端部が、前記仙骨または前記腸骨から骨組織を切り離し、前記研磨面が、前記仙腸関節内の前記皮質骨を剥皮するように、前記研磨デバイスを前記仙腸関節に前進させ、それによって、回転式切断器具を使用せずに、前記挿入位置に剥皮されたインプラント隙間を形成する段階と
を備える回転切断器具を使用せずに仙腸関節にインプラント隙間を形成する方法。
【請求項18】
前記作業チャネルを前記挿入位置に導入する段階が、
関節ロケータを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記関節ロケータが、挿入端部に貫通先端部を有し、前記貫通先端部が、第2の腸骨輪郭および第2の仙骨輪郭を有する、導入する段階と、
前記関節ロケータを前記作業チャネルに挿入することによって、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭ならびに前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭を嵌合位置合わせで配置し、それによって、結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを画定する段階とをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記挿入アームを前記仙腸関節に挿入する段階が、前記第1の仙骨輪郭および前記第2の仙骨輪郭が、前記仙骨に対して着座し、前記第1の腸骨輪郭および前記第2の腸骨輪郭が、前記腸骨に対して着座するように、前記結合された関節ロケータおよび作業チャネルデバイスを前記挿入位置で前記仙腸関節に挿入する段階をさらに備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
回転切断器具を使用せずに仙腸関節にインプラント隙間を形成する方法であって、前記方法が、
前記仙腸関節に挿入位置を位置決めする段階であって、前記挿入位置が、前記インプラント隙間の意図された位置を画定する、位置決めする段階と、
前記挿入位置に作業チャネルを導入する段階であって、前記作業チャネルが、挿入端部および作業端部を有し、前記挿入端部が、挿入アームをさらに有する、導入する段階と、
前記挿入位置で前記仙腸関節に前記挿入アームを挿入する段階と、
研磨デバイスを前記作業チャネルに導入する段階であって、前記研磨デバイスが、
前記研磨デバイスの遠位端部にある研磨ヘッドであって、前記研磨ヘッドが、
対向する側の第1の対のそれぞれの研磨面であって、前記研磨面が、前記仙腸関節の皮質骨を研磨できる、研磨面と、
開先端部であって、前記開先端部が、前記開先端部の前縁部に配置された切断縁部を有し、前記切断縁部が、前記仙腸関節の骨組織を切断するように構成される、開先端部とを有する、研磨ヘッドを有する、導入する段階と、
前記開先端部が仙骨または腸骨から骨組織を切り離すように、前記研磨デバイスを前記仙腸関節に前進させる段階と、
前記研磨面を使用して前記仙腸関節の内部の前記皮質骨を剥皮する段階と、
それによって、回転切断器具を使用せずに、前記挿入位置に剥皮されたインプラント隙間を形成する段階と
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1)(努力傾注分野)
【0002】
本発明は、一般に、仙腸関節融合手術の分野に関し、より詳細には、回転切断器具を使用せずに仙腸関節を融合するための独特の方法に関する。
【0003】
(2)(関連技術の説明)
【0004】
仙腸関節(「SI関節」)は、人間の骨盤領域の仙骨と腸骨との間の境界面に位置する。SI関節は、仙骨と腸骨との間のわずかな動きのみを可能にする強力な靭帯を含む。仙骨は脊椎の底部につながっており、各腸骨は脚の上部と股関節領域につながっている。したがって、SI関節は人間の上半身と下半身とをつなぐものである。
【0005】
SI関節の機能障害は、腰痛の一般的な問題である。実際、腰痛の25%以上は、SI関節機能障害が原因である。正常に機能しているSI関節であっても、特定の種類の脊椎手術後に痛みを伴うことになる可能性がある。例えば、腰椎融合手術の75%以上で、SI関節痛が起きている。多くの場合、SI関節痛または機能障害は、SI関節を融合することによって対処され、融合するための手術がこれまでに数多く存在している。過去のSI関節融合手術には、骨アンカ、融合デバイス、マルチコンポーネントインプラントなどの複雑なインプラントデバイスの設置が含まれる。これらの手術には、ドリルおよびドリルビットなどの複雑なデバイス、およびマルチコンポーネント拡張器、ブレース、アンカ設置デバイスが含まれる。その結果、これらのデバイスを使用した融合手術は複雑で時間がかかり、最適な結果が得られないことが多い。
【0006】
本明細書の器具のセットは、ドリル、ドリルビット、または他の回転切断器具を使用せずに、SI関節に同種移植片インプラントを設置するための合理化されたシステムおよび手術を提供することによってこれらの問題を克服しようとしている。
【0007】
SI関節融合のもう1つの合併症は、骨融合の促進には、SI関節内の皮質骨の剥皮が含まれることが多いことである。この剥皮術は、ブローチ、ラスプ、または同様の研磨デバイスを使用して行われる。これらの研磨デバイスは、しばしば剥皮工程でSI関節の内側に引っ掛かることがある。研磨デバイスが引っ掛かると、研磨デバイスを除去するのに必要な引き抜き力に対抗するために、患者に逆圧を加えることができなくなる。患者に加えられるそのような逆圧により、患者への傷害または手術部位の周囲の組織への損傷を引き起こす可能性がある。過去の解決策は、別のスラップハンマまたはスライドハンマを研磨デバイスに設置して、患者または他の物体に逆圧を加える必要なしに、引き抜き力を研磨デバイスに加えることができるようにすることである。しかし、過去のスライドハンマアセンブリは、操作が煩雑であり、研磨デバイスへの設置が難しく、操作が難しい。それらにより、SI関節融合手術を実行するために必要な器具も複雑になる。
【0008】
本明細書の器具のセットは、SI関節の骨に回転切断器具を使用してインプラントのパイロット穴を形成する必要がなくなる、単一の工具で研磨デバイスに統合されたスライドハンマを提供することによって、これらの問題を克服しようとしている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび器具は、作業チャネル、関節ロケータ、研磨デバイス、およびインプラント挿入器を備える。作業チャネルは、挿入端部および作業端部、ならびにそれらの間に延在するチャネルを有する。作業チャネルは、システムの他の器具を挿入するため、およびインプラントをSI関節に送達するための作業通路を提供する。挿入端部は、SI関節の係合および挿入端部の周囲の組織の牽引を提供するための一対のアームを有する。挿入端部はさらに、第1の腸骨輪郭および第1の仙骨輪郭を有し、これらは両方とも、挿入アームと作業チャネルの本体との間の輪郭によって画定される。作業チャネルの内面は、位置合わせ手段に合わせられた嵌合器具上のリッジ、リブ、戻り止め、または他の突起を受け入れて係合するための溝、凹部、チャネル、くぼみなどを含む位置合わせ手段を有する。一実施形態では、作業チャネルは、当接して係合する関節ロケータ、研磨デバイス、またはインプラント挿入器の嵌合コンポーネントを受け入れるためのチャネルカラーをさらに有する。
【0010】
関節ロケータは挿入端部およびハンドルを有する。挿入端部は、SI関節の近くの軟組織を貫通するための貫通先端部を有する。貫通先端部の前縁部は、この貫通を促進するために、全体的または部分的に、ブレードまたはチゼルコンポーネントを有し得る。あるいは、挿入中に関節ロケータがずれた場合に、仙骨または腸骨を不注意に貫通しないように、貫通先端部を丸くまたは鈍くし得る。関節ロケータの挿入端部は、第2の腸骨輪郭および第2の仙骨輪郭を有する。関節ロケータの外面は、作業チャネルの位置合わせ手段と係合するためのキーイング手段を有し、キーイング手段は、位置合わせ手段と係合できる関節ロケータの外面上のリッジ、リブ、戻り止め、または他の突起を有する。
【0011】
研磨デバイスは、近位端部のハンマスリーブ、遠位端部の研磨ヘッド、および関節ロケータの関節ロケータキーイング手段と同様のキーイング手段を有する。好ましい実施形態では、研磨デバイスは、スラップハンマアセンブリ、またはスライドハンマアセンブリをさらに有する。一実施形態では、スライドハンマアセンブリは、シャフトに接続された底部、およびハンマスリーブを底部に解放可能に接続する解放手段とを有する。解放されたハンマスリーブは、シャフトに沿って摺動係合するように構成される。スライドハンマアセンブリを操作するには、ハンマスリーブを底部から係合解除し、スライドハンマアセンブリを解放位置に配置する。この解放位置により、ハンマスリーブをシャフトに沿って自由に摺動させることができる。ハンマスリーブの内側のダイヤフラムがシャフトの停止端部に係合するまでハンマスリーブが引っ張られ、それによって、スライドハンマの力を送達する衝撃を発生させる。
【0012】
インプラント挿入器は、ハンドルおよびインプラント挿入端部を有する。インプラント挿入端部は、インプラントをSI関節に挿入するプロセス中にインプラントを保持するための一対のタインを有する。インプラント挿入器は、関節ロケータのキーイング手段と同様の挿入器キーイング手段をさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】典型的な人間の骨盤の背面図を示す。
【0014】
図2】SI関節に挿入するための同種移植片インプラントの実施形態の斜視図である。
【0015】
図3】同種移植片インプラントの一実施形態の代替図を示す。
【0016】
図4】関節融合装置における器具の実施形態を示す。
【0017】
図5】作業チャネルの実施形態および関節ロケータの実施形態を示す。
【0018】
図6】作業チャネルの一実施形態の拡大した挿入端部を示す。
【0019】
図7図6に示す実施形態の代替図を示す。
【0020】
図8図4の作業チャネルに完全に挿入された関節ロケータの実施形態の挿入端部の拡大図である。
【0021】
図9図8のデバイスの向きを反転して示す拡大図である。
【0022】
図10】作業チャネルの一実施形態の拡大した作業端部を示す。
【0023】
図11】作業チャネルに部分的に挿入された図4の関節ロケータを示す。
【0024】
図12】作業チャネルに完全に挿入された図4の関節ロケータを示す。
【0025】
図13図4の作業チャネルおよび研磨デバイスの実施形態を示す。
【0026】
図14】研磨ヘッドの実施形態の拡大図である。
【0027】
図15】研磨ヘッドの一実施形態の拡大図を示す。
【0028】
図16】分解されたスライドハンマの実施形態を有する図13の研磨デバイスを示す。
【0029】
図17】スライドハンマの接続インターフェースの実施形態の拡大図である。
【0030】
図18】スライドハンマアセンブリのダイヤフラムおよびねじ山付きコネクタの一実施形態の拡大図を示す。
【0031】
図19図4の作業チャネルに部分的に挿入された図13の研磨デバイスを示す。
【0032】
図20】スライドハンマをロック位置にして、図4の作業チャネルに完全に挿入された図13の研磨デバイスを示す。
【0033】
図21】スライドハンマを延在位置にして、図4の作業チャネルに完全に挿入された図13の研磨デバイスを示す。
【0034】
図22図4の作業チャネルおよび挿入デバイスの一実施形態を示す図である。
【0035】
図23図22の挿入デバイスの挿入端部の拡大図である。
【0036】
図24】挿入端部のタインにロードされた同種移植片インプラントの実施形態を有する図22の挿入デバイスを示す。
【0037】
図25図22の挿入デバイスおよび図4の作業チャネルに部分的に挿入された同種移植片インプラントを示す。
【0038】
図26図22の挿入デバイスおよび図4の作業チャネルに完全に挿入された同種移植片インプラントを示す。
【0039】
図27】切開ガイドの一実施形態の正面図である。
【0040】
図28】切開ガイドの一実施形態の上面図である。
【0041】
図29】切開ガイドの一実施形態の右側面図である。
【0042】
図30図29の切開ガイドの断面図A-Aである。
【0043】
図31】切開ガイドの一実施形態の等角図である。
【0044】
図32】同種移植片インプラントの一実施形態の側面図である。
【0045】
図33図32の同種移植片インプラントの断面図B-Bである。
【0046】
図34】同種移植片インプラントの一実施形態の上面図である。
【0047】
図35】同種移植片インプラントの一実施形態の背面図である。
【0048】
図36】同種移植片インプラントの一実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図面を参照して、仙腸関節(「SI関節」)を融合するための方法を、次に、ベストモードおよび好ましい実施形態に関して説明する。本明細書に開示される実施形態は、本発明の例示のためのものであり、本発明を限定するものではない。通常の実務者であれば、過度の実験を行うことなく、以下の実施形態の多くの変形を作成することが可能であることを理解するであろう。
【0050】
本明細書に記載の方法および対応するシステムおよび器具は、主に、人間の骨盤内でSI関節3を融合するために使用される。図1図3を参照すると、同種移植片インプラント5は、骨盤の仙骨1と腸骨2の間のSI関節3の軟組織に配置される。参照の目的のために、本明細書で使用されるSI関節面は、概して、仙骨1および腸骨2の当接する表面によって画定されるSI関節3の平面を意味する。インプラント5は、SI関節全体の骨治癒のための基質を提供し、それによって、仙骨1と腸骨2とを融合させる。一実施形態では、インプラント5は、一般に、ノーズ6および少なくとも1対の対向する側面7を含み、それぞれが、そのような各側面7の長さに少なくとも部分的に沿って配置される溝8を有する。
【0051】
図4を参照すると、一実施形態では、システムは、作業チャネル10、関節ロケータ20、研磨デバイス30、およびインプラント挿入器60を備える。これらの器具のそれぞれは、その長さの中心線に沿った長手方向軸を有する。図5を参照すると、作業チャネル10は、システムの他の器具を挿入するための、およびインプラント5をSI関節3に送達するための作業通路を提供する管状の部材である。作業チャネル10は、以下に説明するように、SI関節3への他の器具の作業アクセスを提供するのに適したカニューレ、管腔、スリーブ、または別のデバイスである。作業チャネル10は、挿入端部11および作業端部12、ならびにそれらの間に延在するチャネル13を有する。チャネル13は、直線状または曲線状の断面を有する管または穴である。挿入端部11は、SI関節3の係合および挿入端部11の周囲の組織の牽引を提供するための一対のアーム14を有する。アーム14は、作業チャネル10の挿入端部11から突出したプローブ、プロング、または他の部材である。アーム14をSI関節3に挿入すると、以下に説明するように、作業チャネル10がSI関節3に対してその長手方向軸を中心にした回転に抵抗する、または回転を防止する。長手方向軸は、一般に、チャネル13の中心線に近接して、作業チャネル10の長さに沿って延在する。
【0052】
作業チャネル10の挿入端部11は、SI関節3内およびそれに対して、特に仙骨1および腸骨2に対して着座するように構成される。挿入端部11は、第1の腸骨輪郭15および第1の仙骨輪郭16を有し、これらは両方とも、挿入アーム14と作業チャネル10の本体との間の輪郭によって画定される。例えば、図6図9を参照すると、以下に説明するように、挿入端部11の片側は、第1の腸骨輪郭15を介して作業チャネル10に接続されたアーム14を有し、アーム14は、アーム14がSI関節3に挿入され、その中に着座したときに腸骨2に当接するように構成される。挿入端部11の対向側は、第1の仙骨輪郭16を介して作業チャネル10に接続されたアーム14を有し、アーム14は、アーム14がSI関節3に挿入され、その中に着座したときに仙骨1に当接するように構成される。
【0053】
図5および図10を参照すると、作業チャネル10の内面は、器具を位置合わせするための手段を有し、位置合わせ手段17は、位置合わせ手段17に合わせられた嵌合器具上のリッジ、リブ、戻り止め、または他の突起を受け入れて係合するための溝、凹部、チャネル、くぼみなどを有する。一実施形態では、作業チャネル10はさらに、以下に説明するように、当接して係合する関節ロケータ20、研磨デバイス30、またはインプラント挿入器60の嵌合コンポーネントを受け入れるためのチャネルカラー18をさらに有する。チャネルカラー18の実施形態では、カラーは、位置合わせ手段17をさらに有する。
【0054】
図5を参照すると、関節ロケータ20は、挿入端部21およびハンドル22、または作業端部を有する。挿入端部21は、SI関節3の近くの軟組織を貫通するための貫通先端部23を有する。この軟組織は、患者の皮膚の表面とSI関節3との間の、筋肉組織などの軟組織、ならびに軟骨および靭帯などのSI関節3の内側の軟組織である。貫通先端部23は、これらのタイプの軟組織を貫通するように構成される。例えば、貫通先端部23の一実施形態は、軟組織を切断するためのブレードまたはチゼルコンポーネントを有する。貫通先端部23の前縁部は、全体的または部分的に、そのようなブレードまたはチゼルコンポーネントを有し得る。貫通先端部23の別の実施形態では、挿入および貫通中に関節ロケータ20がずれた場合に、仙骨1、腸骨2、または骨盤領域の他の骨構造を不注意に貫通しないように、貫通先端部23を丸くまたは鈍くする。本実施形態では、貫通先端部23は、軟組織を薄く切るまたは切断するのではなく、軟組織を引き剥がす、または引き裂く傾向がある。
【0055】
再び図8および図9を参照すると、関節ロケータ20の挿入端部21は、第2の腸骨輪郭24および第2の仙骨輪郭25を有する。例えば、関節ロケータ20の挿入端部21の片側は、以下に説明するように、貫通先端部23がSI関節3に挿入されるときに、腸骨2に対して当接するように構成される第2の腸骨輪郭24を有する。関節ロケータ20の挿入端部21の他方の側は、貫通先端部23がSI関節3に挿入されるときに、仙骨1に対して当接するように構成される第2の仙骨輪郭25を有する。
【0056】
関節ロケータ20の外面は、作業チャネル10の位置合わせ手段17とキーイングするための手段を有し、キーイング手段27は、関節ロケータ20と作業チャネル10との間の相対回転に抵抗する、または相対回転を防止するために位置合わせ手段17と係合できる、関節ロケータ20の外面上のリッジ、リブ、戻り止め、または他の突起を有する。
【0057】
一実施形態では、図5図11、および図12を参照すると、関節ロケータ20は、Kワイヤ4を受け入れるためのチャネル26を有する。このチャネル26は、好ましくは関節ロケータ20の長手方向軸または中心線に沿って、パススルー方式でKワイヤ4を受け入れることができるカニューレ、管腔、または他の穴状の特徴部である。関節ロケータ20の一実施形態では、ハンドル22は、作業チャネル10のチャネルカラー18に当接するための止め具28をさらに有する。
【0058】
図13を参照すると、研磨デバイス30は、近位端部にハンマスリーブ31を有し、遠位端部に研磨ヘッド32を有する。研磨ヘッド32は、SI関節3内の皮質骨をすり減らす、研磨する、または他の方法で剥皮するために使用される、ラスプ、ブローチ、または他の研磨工具である。図14および図15に示す一実施形態では、研磨ヘッド32は、ヘッド32の対向する側の第1の対にある研磨面33と、SI関節3に挿入するための開先端部34と、研磨面33の間の対向する側35の第2の対と、1つまたは複数の側面開口部を有する対向する側面35の第2の対とを有する、略長方形の部材である。各研磨面33は、1つまたは複数のツース、バーブ、ブレード、リッジ、スロット、ブローチ、またはSI関節3の皮質骨を研磨できる他の部材もしくは特徴部を有する。開先端部34は、開先端部34の前縁部の全部または一部の周りの切断縁部36を有し、切断縁部36は、仙骨1または腸骨2などのSI関節3の内側の骨組織を切断するように構成される。研磨面33および側面35は、その中に隙間を有する箱状の研磨ヘッド32を形成する。側面35内の開口部は、隙間への横方向の出入りを可能にする。例えば、切断縁部36がSI関節3の内部の骨組織を切断するとき、除去された骨組織は隙間に落ち、側面35内の開口部を介して研磨ヘッド32から出る場合がある。
【0059】
一実施形態では、対向する側の第1の対の各側は、開先端部34で終端する遠位縁部を有する実質的に平面の部材であり、開先端部34と遠位縁部との間のインターフェースは、実質的に直線状の切断縁部36を有する。対向する側の第2の対の各側は、開先端部34で終端する湾曲した遠位部分を含み得、開先端部34と湾曲した遠位部分との間のインターフェースは、湾曲した切断縁部36を有する。対向する側35の第2の対の各側の湾曲した遠位部分は、対向する側35の第2の対のその対向側に向かうテーパをさらに有し得る。
【0060】
図19を参照すると、研磨デバイス30は、上述の関節ロケータ20のキーイング手段27と同様のキーイング手段37をさらに有する。キーイング手段37は、各部材のそれぞれの長手方向軸の周りの研磨デバイス30と作業チャネル10との間の相対回転に抵抗する、または相対回転を防止するために、作業チャネル10内の位置合わせ手段17と嵌合する。研磨デバイス30は、作業チャネル10のチャネルカラー18に当接するための研磨止め具38をさらに有する。一実施形態では、研磨デバイス30は、Kワイヤ4を受け入れるためのKワイヤチャネルをさらに有する。このKワイヤチャネルは、好ましくは研磨デバイス30の長手方向軸に沿って、パススルー方式でKワイヤ4を受け入れることができるカニューレ、管腔、または他の穴状の特徴部がある。
【0061】
図16図17、および図18を参照すると、研磨デバイス30は、スラップハンマアセンブリ、またはスライドハンマアセンブリ40をさらに有する。一実施形態では、スライドハンマアセンブリ40は、シャフト44に接続された底部51、およびハンマスリーブ31を底部51に解放可能に接続する解放手段とを有する。解放されたハンマスリーブ31は、シャフト44に沿って摺動係合するように構成される。解放手段は、ハンマスリーブ31を底部51に解放可能に接続し、それによって、スライドハンマアセンブリが解放位置とロック位置との間で移動するための任意の手段である。解放手段は、嵌合ねじ接続、クイックディスコネクトアタッチメント、押し下げ可能なタブ、ラッチ、クラスプ、クリップ、クランプ、または他の同等の接続構造であり得る。
【0062】
図16図17、および図18に示す一実施形態では、解放手段は、嵌合ねじ接続である。本実施形態は、研磨デバイス30上のカラー41、スライドハンマシャフト44、およびハンマスリーブ31を含む。カラー41は、雌ねじ42および雄ねじ43を有する。シャフト44は、ねじ山端部45および停止端部46を有する。ハンマスリーブ31は、ねじ山付きコネクタ48、およびダイヤフラム開口部49を有する内部ダイヤフラム47を有する中空の円筒形穴を有する(図18を参照)。ダイヤフラム開口部49は、停止端部46を除くシャフト44のすべての部分の摺動経路を可能にするサイズである。停止端部46は、ダイヤフラム開口部49を通して嵌合させるには大きすぎるサイズである。
【0063】
本実施形態のスライドハンマアセンブリ40を組み立てるために、シャフト44のねじ山端部45は、ハンマスリーブ31の内側のダイヤフラム47を通してハンマスリーブ31の穴に挿入され、ねじ山端部45は、カラー41の雌ねじ42にねじ込まれ、嵌合される。次いで、ハンマスリーブ31のねじ山付きコネクタ48は、安全な接続を促進するために、カラー41の雄ねじ43に嵌合される。停止端部46は、ねじ山付きコネクタ48の位置とは反対のダイヤフラム47の側でハンマスリーブ31の穴の内側に配置される。図20に示す本構成では、スライドハンマアセンブリ40はそのロック位置にある。
【0064】
スライドハンマアセンブリ40を操作するために、ねじ山付きコネクタ48をカラー41の雄ねじ43から係合解除し、スライドハンマアセンブリ40を図21に示すその解放位置に配置する。この解放位置により、ハンマスリーブ31をシャフト44に沿って自由に摺動させることができる。ハンマスリーブ31の内側のダイヤフラム47がシャフト44の停止端部46に係合するまでハンマスリーブ31が引っ張られ、それによって、スライドハンマの力を送達する衝撃を発生させる。したがって、スライドハンマアセンブリは、スライドハンマアセンブリの動作を可能にする解放位置、およびスライドハンマアセンブリの動作を禁止するロック位置を有する。
【0065】
図22図26を参照すると、インプラント挿入器60は、ハンドル61およびインプラント挿入端部62を有する。インプラント挿入端部62は、インプラント5をSI関節3に挿入するプロセス中にインプラント5を保持するための一対のタイン63を有する。各タイン63は、ショルダ67で終端するタインシャフト66によって支持されている。タインシャフト66は、インプラント5がタイン63の間に除去可能に保持され、ショルダ67がインプラント5に当接するように柔軟性を提供する(図24を参照)。例えば、一実施形態では、対向する溝8の間のインプラント5の幅は、インプラント5がインプラント挿入端部62に着座したとき、それぞれのタイン63が溝8によってわずかに押し広げられるように、それぞれのタイン63の間の空間よりもわずかに大きい。これにより、タイン63と溝8との間にわずかな量の摩擦が生じ、それによって、インプラント5をインプラント挿入端部62に解放可能に保持する。
【0066】
インプラント挿入器60は、関節ロケータ20のキーイング手段27と同様の挿入器キーイング手段65をさらに有する。挿入器キーイング手段65は、各部材の長手方向軸の周りのインプラント挿入器60と作業チャネル10との間の相対回転に抵抗する、または相対回転を防止するために、作業チャネル10内の位置合わせ手段17と嵌合する。一実施形態では、インプラント挿入器60は、Kワイヤ4を受け入れるためのチャネル64をさらに有する(図23を参照)。このチャネル64は、パススルー方式でKワイヤ4を受け入れることができるカニューレ、管腔、または他の穴状の特徴部を有する。インプラント挿入器60の一実施形態では、ハンドル61は、作業チャネル10のチャネルカラー18に当接するための挿入止め具68をさらに有する。
【0067】
インプラント5を設置する方法の一実施形態では、SI関節3にインプラント5を設置する手術は、インプラント5が設置される位置である、挿入位置をSI関節3に位置決めすることによって開始される。例えば、Kワイヤ4の自由端部は、インプラント5が設置される挿入位置でSI関節3に挿入され、それによって、インプラント隙間の意図された位置を画定する。インプラント隙間は、以下に説明するように、インプラント5を着座させるための仙骨1と腸骨2との間の場所または溝である。Kワイヤ4は、好ましくは、後方アプローチから挿入される。インプラント5は、SI関節3に突出した上後腸骨棘の部分の下に設置することが好ましいが、必須ではない。1つまたは複数の代替位置もSI関節3の融合に適している。Kワイヤ4は、インプラント5が挿入される各位置で、SI関節3に挿入される。
【0068】
一実施形態では、図27図31を参照して、最初の切開は、Kワイヤ4を除去可能に受け入れるためのチャネル71を有する切開ガイド70を使用して行われる。切開ガイド10は、ブレード、外科用メス、または同様の切断器具(図示せず)を受け入れるためのガイドスロット72をさらに有する。ガイドスロット72は、外科用メスがガイドスロット72を通って延在するとき、外科用メスの先端部が、患者に最初の切開を行うための適切な位置で患者の皮膚の上に配置されるように、チャネル71に対してある角度で配置される。この場所は、SI関節3の上にあり、同種移植片インプラント5がSI関節3の上の軟組織に導入され、最終的にはSI関節3自体に導入される場所である。一実施形態では、ガイドスロット72は、水平Hに対して約70°~約75°の角度Aに配向される(図30を参照)。この配向では、チャネル71は水平に対して垂直である。
【0069】
本実施形態では、Kワイヤ4は、上述のように、SI関節3に挿入される。切開ガイド70は、Kワイヤ4がチャネル71に摺動可能に受け入れられるように、Kワイヤ4の上に配置される。一実施形態では、外科用メスはガイドスロット72に挿入され、外科用メスの切断先端部がKワイヤ4の極めて近くに配置されるように、チャネル71に対して固定された関係で保持される。次いで、切開ガイド70をSI関節3に向かって前進させ、切開ガイド70が前進するにつれて、外科用メスの切断先端部が切開を行う。最初の切開が十分に形成されたら、切開ガイド70を持ち上げてKワイヤ4から除去し、インプラント5をSI関節3に挿入するための他の器具を使用して手術を進める。
【0070】
次いで、関節ロケータ20が作業チャネル10に完全に挿入される(図12を参照)。作業チャネル10の内側に関節ロケータ20を嵌合する際に、関節ロケータ20のキーイング手段27は、作業チャネル10の位置合わせ手段17と係合するように配向される。この係合により、作業チャネルの第1の腸骨輪郭15を、関節ロケータ20の第2の腸骨輪郭24と嵌合位置合わせで配置し、作業チャネル10の第1の仙骨輪郭16を、関節ロケータ20の第2の仙骨輪郭25と嵌合位置合わせで配置することが可能になる(図8および図9を参照)。それぞれの第1および第2の腸骨輪郭15、24は、挿入端部11がSI関節3の内側に配置されたときに腸骨2に対して嵌合配置で着座するように構成され、それぞれの第1および第2の仙骨輪郭16、25は、挿入端部11がSI関節3の内側に配置されたときに仙骨1に対して対応する嵌合配置で着座するように構成される。止め具28は、作業チャネル10のチャネルカラー18に当接して、SI関節3への貫通先端部23の過度の侵入を防止し、それによって、SI関節3の前側の軟組織および神経への損傷を回避する。
【0071】
Kワイヤの自由端部は、結合された関節ロケータ20/作業チャネル10のKワイヤチャネル26に挿入され、この結合デバイスは、Kワイヤ4によって誘導されて、SI関節3に向かって前進する。関節ロケータ20/作業チャネル10の結合体が前進するにつれて、貫通先端部23は、SI関節3の上側および内側の軟組織を切断または引き剥がす。必要に応じて、結合された関節ロケータ20/作業チャネル10は、適切な軸方向の力を送達するために、マレットからのハンドル22の近位端部に対する打撃によって前進させる。マレットからの衝撃は、ハンドル22を通って止め具28に伝達される軸方向の力を引き起こし、止め具28で軸方向の力がチャネルカラー18および作業チャネル10に与えられる。したがって、マレットからの衝撃力は、作業チャネル挿入端部11と関節ロケータ挿入端部21との間で共有される。
【0072】
結合された関節ロケータ20/作業チャネル10は、それぞれの第1および第2の腸骨輪郭15、24が腸骨2に当接し、それぞれの第1および第2の仙骨輪郭16、25が仙骨1に当接するまで前進する。この位置では、作業チャネル10のアーム14は、作業チャネル10、およびしたがって位置合わせ手段17の適切な位置合わせを保持するためにSI関節3の内側に配置され、それによって、手術の後半で、研磨デバイス30とインプラント挿入器60との適切な位置合わせを保証する。いくつかの実施形態では、SI関節3へのアーム14の挿入は、関節を牽引し、したがって仙骨1と腸骨2を分離する。この牽引は、他の器具を使用する前に、SI関節3の間隔の均一な幅を確立する。したがって、本明細書に記載の器具は、仙骨1または腸骨2のサイズまたは規模に関係なく、アーム14がSI関節3の幅を一定の距離に設定するので、任意のサイズの患者で機能する。
【0073】
設置方法の代替の実施形態では、Kワイヤ4は手術から省略されている。代わりに、結合された関節ロケータ20/作業チャネル10は、患者の切開を通して前進し、この前進は、挿入端部11、21が上述のようにSI関節3に挿入されるまで、上述のように継続される。
【0074】
結合された関節ロケータ20/作業チャネル10デバイスがSI関節3に適切に着座すると、関節ロケータ20は作業チャネル10から除去される。周囲の軟組織は、作業チャネル10およびそれぞれのアーム14によって牽引または拡張されたままであり、それによって、SI関節3領域への直接アクセスが可能になる。次いで、研磨デバイス30が作業チャネル10に挿入され、キーイング手段37が位置合わせ手段17と係合して、SI関節3に対する研磨ヘッド32の適切な位置合わせを促進する。研磨ヘッド32は、研磨ヘッド32がSI関節3と接触するまで、作業チャネル10を通って前進する。研磨ヘッド32は(必要に応じてマレットを使用して)SI関節3に押し込まれ、切断縁部36は骨組織および靭帯または軟骨などの任意の軟組織を切断する。研磨止め具38は、作業チャネル10のチャネルカラー18に当接して、SI関節3への研磨ヘッド32の過度の侵入を防止し、それによって、SI関節3の前側の軟組織および神経への損傷を回避する。このプロセス中に、切断縁部36は仙骨1および腸骨2の関連する骨部分を切断し、研磨面33は切断縁部36に関連して同時に動作し、SI関節3の内側の皮質骨を剥皮し、それによって、SI関節3の挿入位置に剥皮されたインプラント隙間を形成する。剥皮されたインプラント隙間は、剥皮されたインプラント隙間が、剥皮されたインプラント隙間と嵌合するための略長方形の断面形状を有する融合インプラント5を受け入れるように適合されるように、略長方形の断面形状を有する。したがって、研磨ヘッド32の使用は、インプラント5のためのパイロット穴を形成するためにドリルまたは他の回転切断器具を使用する必要なしに、インプラント5の設置を可能にする。本明細書で使用される場合、回転切断器具は、動力駆動か手動駆動かにかかわらず、デバイスの軸の周りで方向転換、回転、または他の角運動によって材料を切断できる任意のデバイスである。これは、SI関節3融合のための従来技術の方法および器具のセットに対する本発明の器具のセットの大幅な改善である。
【0075】
次いで、研磨デバイス30は、研磨面33がSI関節3の内側の仙骨1および腸骨2のそれぞれの表面を研磨または剥皮するように、作業チャネル10の内外で動作する。この場合も、研磨止め具38は、チャネルカラー18に当接して、研磨ヘッド32の過度の侵入を防止する。このプロセス中に、研磨ヘッド32がSI関節3内に引っ掛かり、除去することが困難になり得る。これらの場合、スライドハンマアセンブリ40が有効であり、したがって、上述のように、スライドハンマアセンブリ40の衝撃力によって研磨ヘッド32を除去し得る。研磨ヘッド32がSI関節3に引っ掛かると、SI関節3から研磨ヘッド32を除去するのに必要な引き抜き力に対抗するために患者に逆圧を加えることができないため、スライドハンマアセンブリ40の動作は、以前のシステムに比べて多くの利点を提供する。スライドハンマアセンブリ40は、患者に逆圧を加えることなく、安全な方法で、引っ掛かった研磨ヘッド32を除去することを可能にする。
【0076】
研磨ヘッド32がSI関節3の内外で動作するとき、研磨面33は、SI関節3の内側の仙骨1および腸骨2の皮質骨を研磨する。皮質骨は出血が始まるまで研磨され、それによって、患者の皮質骨の治癒過程を促進する。この研磨度および対応する治癒は、SI関節3の融合を促進する。
【0077】
SI関節3が適切に研磨されると、研磨デバイス30が作業チャネル10から除去される。したがって、SI関節3を融合する本方法は、回転切断器具を使用せずに、SI関節3に融合インプラント5のための隙間を形成するための段階を有する。手術のこの時点で、Kワイヤ4は、作業チャネル10を通るインプラント5の適切な前進およびSI関節5へのインプラント5の適切な設置を可能にするために、作業チャネル10から除去され得る。あるいは、Kワイヤ4は、上述のように、作業チャネル10がSI関節3に適切に着座した後、いつでも作業チャネル10から除去することができる。
【0078】
同種移植片インプラント5は、各タイン63がインプラント5の側面7の嵌合溝8に着座し、ショルダ67がインプラント5に当接するように、インプラント挿入器60のタイン63に配置される(図24を参照)。次いで、インプラント挿入器60は、キーイング手段65が位置合わせ手段17と係合して、インプラント挿入器60、したがってインプラント5の適切な配向を保証するように、作業チャネル10に挿入される。インプラント挿入器60は、作業チャネル10を通して、インプラント5をSI関節3の研磨領域に送達するために使用される。必要に応じて、インプラント挿入器60をマレットで打撃して、インプラント5をSI関節3の研磨領域に押し込み、ショルダ67が衝撃力をインプラント5に伝達する。これらの場合、挿入止め具68は、作業チャネル10のチャネルカラー18に当接して、SI関節3へのインプラント5の過度の侵入を防止し、それによって、インプラント5がSI関節3の内側に適切に配置されることを保証する。
【0079】
インプラント5がSI関節3に完全に挿入されると、インプラント挿入器60は、SI関節3の研磨領域にインプラント5を設置したまま、作業チャネル10から除去される。ほとんどの場合、インプラント5とSI関節3の内側との間の摩擦力は、それぞれのタイン63と溝8との間の摩擦力よりも大きい。これらの場合、インプラント挿入器60の除去は、タイン63と溝8との間の摩擦力よりも大きい除去力をインプラント挿入器60に加えることによって達成される。タイン63は、インプラント挿入器60が作業チャネル10から引っ込められるときに、溝8から摺動する。他の場合、インプラント5とSI関節3の内側との間の摩擦力は、それぞれのタイン63と溝8との間の摩擦力よりも小さい。これらの場合、インプラント挿入器60の除去は、Kワイヤ4または同様のデバイスをKワイヤチャネル64に挿入し、Kワイヤの遠位端部がタイン63の間でインプラント5に当接するまでKワイヤ4を前進させることによって達成される。Kワイヤ4は、除去力がインプラント挿入器60に加えられるときに、SI関節3の内側の所定の位置にインプラント5を保持するために使用される。それによって、Kワイヤ4がインプラント5をその設置位置に保持するときに、タイン63が溝8から除去される。タイン63が溝8から引き抜かれると、インプラント挿入器60はインプラント5から係合解除され、インプラント挿入器60およびKワイヤ4は作業チャネル10から除去される。次いで、作業チャネル10が手術部位から除去され、SI関節3を収縮させ、それによって、インプラント5に圧縮力を及ぼす。この圧縮力は、関節を圧縮することにより関節を結合させるSI関節3の靭帯によって生じる。次いで、手術部位を滅菌し、治癒のために閉じる。
【0080】
研磨された皮質骨が治癒すると、骨は同種移植片インプラント5と融合し、最終的に仙骨1および腸骨2をインプラント5の位置で一緒に成長させ、それによって、SI関節3を融合させる。
【0081】
前述の実施形態のいずれかにおいて、1つまたは複数の器具は、医療グレードのプラスチック、特定の金属、または他の使い捨て材料などの使い捨て材料を有し得る。
【0082】
図32図36を参照すると、インプラント5は、概して、2つの対向する面81を有する。インプラント5がSI関節3に挿入されると、一方の対向する面81が仙骨2に対して配置され、他方の対向する面81が腸骨3に対して配置される。対向する面81のそれぞれは、SI関節3の内側のインプラントの動きに抵抗する、ツースまたはリッジなどの1つまたは複数の移動防止機能82を有する。
【0083】
一実施形態では、インプラント5は、近位端部86、遠位端部87、およびそれらの間に配置された長さを有する本体83を含み、遠位端部は円形先端部6を有する。本体83はさらに2つの側面7を有し、各側面7は、本体83の近位端部86から始まり、長さの少なくとも一部にわたって2つの側面7のそれぞれに沿って続く溝8を有し、2つの側面7の間の距離は、本体の幅Wを画定する。
【0084】
インプラント5は、SI関節3の融合がインプラント5を通して行われることを可能にする中央移植用開口部85をさらに有する。移植用開口部85は、対向する面81のそれぞれの間に配置され、移植用開口部85は、2つの対向する面81の間の本体83を通る通路を提供する。移植用開口部85と各側面7との間に位置する本体83の部分は、壁84を画定する。
【0085】
断面で見ると(図33を参照)、移植用開口部85の面積は、図33の斜線部で示すようにインプラント5全体の面積である、本体の第1の断面積の約35%~約40%である。開口部85の面積は、仙骨1か腸骨2かにかかわらず、骨と接触する各対向する面81の総面積の約60%である。これらの比率は、SI関節3融合の促進剤としてのインプラント5の性能を最適化する強度と接触面積の関係を提供する。これらの比率では、インプラント5は、SI関節3の内部で押しつぶされないように十分な強度を提供し、インプラント5を横切って通るSI関節3の融合を促進するのに十分な大きさの移植用開口部85を提供する。
【0086】
一実施形態では、移植用開口部85は、溝8に近接して配置された近位部分88および遠位部分89を有し、壁84が本体83の幅Wの約17%~約20%の範囲の最小厚さを維持するように、近位部分88は、遠位部分89の幅W2よりも小さい幅W1を有する。
【0087】
前述の実施形態では、移植用開口部85が内部または中間支持体によって遮られていないことが好ましいが、必須ではない。そのような内部または中間支持体は、インプラントに構造支持体を提供するために同種移植片インプラントで使用されることがある。しかし、これらの内部または中間支持体は、開口部を通じた骨融合の発生を妨げる。したがって、移植用開口部85は、対向する面81との間で本体83を通る開放通路を提供し得る。開放通路は直線状または曲線状であり得る。本体83の近位端部86は、本体83の第2の断面積を削減するテーパ90をさらに有し得る。
【0088】
前述の実施形態は、単にSI関節融合方法の代表的なものであり、本発明を限定することを意味するものではない。例えば、当業者ならば、SI関節融合方法の性質を実質的に変更しない、本明細書に記載の研磨デバイス、スライドハンマデバイス、および他のデバイスおよび器具のいくつかの実施形態および構成が存在することを容易に理解するであろう。方法のいくつかの段階は、上述以外の順序で実行できる。したがって、上記の特定の要素および構成要素の等価物および置換は、本明細書に記載の本発明の一部であり、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されていることが理解される。
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【国際調査報告】