(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】塩素、一酸化炭素および任意に水素を製造するための方法および電気分解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 1/26 20060101AFI20221130BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20221130BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20221130BHJP
C25B 9/19 20210101ALI20221130BHJP
C25B 11/032 20210101ALI20221130BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20221130BHJP
C25B 11/061 20210101ALN20221130BHJP
C25B 11/081 20210101ALN20221130BHJP
C25B 11/085 20210101ALN20221130BHJP
【FI】
C25B1/26 A
C25B1/23
C25B1/02
C25B9/19
C25B11/032
C25B9/00 E
C25B11/061
C25B11/081
C25B11/085
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521002
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020078057
(87)【国際公開番号】W WO2021069470
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブラン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】キントラップ,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ルーケン,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA10
4K011AA21
4K011AA68
4K011AA69
4K011DA02
4K021AA01
4K021AA03
4K021AA09
4K021BC04
4K021CA11
4K021DB16
4K021DB31
4K021DC11
(57)【要約】
本発明は、二酸化炭素およびアルカリ塩化物溶液の電気化学的変換を介して塩素、一酸化炭素および任意に水素を製造するための方法および電気分解装置に関し、ここで、二酸化炭素ガス源(55)からの二酸化炭素は、陰極(11)として示されるガス拡散電極において、陰極液(17)としての水性アルカリ塩化物含有溶液中で電気化学的に還元され、塩素は、陽極液(15a)としての水性アルカリ塩化物含有溶液から同時に陽極で生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素およびアルカリ金属塩化物溶液の電気化学反応によって、一酸化炭素、任意に水素および塩素を調製する方法であって、陰極液(17)としての水性アルカリ金属塩化物含有溶液中で、陰極(11)としてのガス拡散電極で、二酸化炭素が電気化学的に還元され、同時に、陽極液(15a)としての水性アルカリ金属塩化物含有溶液から陽極で塩素が製造され、陰極液(17)において形成された炭酸のアルカリ金属塩(アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはそれらの混合物から選択される)を、次に、塩化水素(62)と反応させて、二酸化炭素(38a)およびアルカリ金属塩化物(38b)を得、放出された二酸化炭素(38a)をガス拡散電極(11)のための陰極空間(16)に戻し、生成されたアルカリ金属塩化物(38b)を陽極空間(15)および/または陰極空間(16)のいずれかに戻すことを特徴とする、方法。
【請求項2】
塩化水素(62)が、中間体としてのホスゲンを介してイソシアネートを調製するための連結された方法(60)から取り出され、電気化学反応において形成された塩素(25a)が、イソシアネート製造(60)のための前駆体としてホスゲン製造(61)に再循環されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気化学反応からの任意の副生成物としてCOと共に形成される水素(70b)が、水素、COおよびCO
2の混合物(68a)から分離され、利用されることを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
水素(70b)が、イソシアネート製造方法(60)のための前駆体としてジアミンを調製するために利用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
陽極液および陰極液に使用されるアルカリ金属塩化物が塩化カリウムであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
陽極液(15a)および/または陰極液(17)のアルカリ金属塩化物溶液の濃度が、独立して25重量%まで、好ましくは15~25重量%であることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
電気化学反応への供給部における陰極液(17)の温度が、少なくとも60℃、特に好ましくは少なくとも70℃であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
CO
2の電気化学的変換が、陰極としてのガス拡散電極において、膜電気分解法により工業規模で行われることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
CO
2が、ガス拡散電極(11)によって電解質空間(12)から分割されたガス空間(4)を介してガス拡散電極(11)に供給されることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ガス拡散電極(11)の逆側に近いガス空間(4)におけるガス速度が、0.001~15m/s、好ましくは0.01~10m/sであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
イオン交換膜(3)とガス拡散電極(11)との間の空間(12)における陰極液(17)のドリフト速度が、0.8~10cm/sであることを特徴とする、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
二酸化炭素およびアルカリ金属塩化物溶液の電気化学的変換のための電気分解装置であって、特に請求項1請求項11のいずれかに記載の方法によるものであって、少なくとも以下の
(i)少なくとも1つの二酸化炭素ガス源(55)および
(ii)少なくとも1つの電気分解セル(Z)〔少なくとも
陰極(11)、陰極液供給部(13)、陰極液排出部(14)、および第1のガス入口(5)を介して二酸化炭素ガス源(55)に流体接続されたガス空間(4)を有し、ならびにガス状反応生成物含有ガス用の第1のガス出口(6)に接続された陰極ハーフシェル(1)を備え、
さらに陽極ハーフシェル(2)を備え、ここで、その陽極ハーフシェル(2)に、少なくとも、陽極反応生成物、特に塩素および任意の酸素のための第2のガス出口(7)、陽極液(15a)としての水性アルカリ金属塩化物含有溶液の導入のための陽極液供給部(8)および陽極液排出部(9)が設けられ、ならびに陽極(10)も設けられ、および
陽極空間(15)と陰極空間(16)とを分離するための、陽極ハーフシェル(2)と陰極ハーフシェル(1)との間に配置されるセパレータ(3)を備え、
さらに陽極(10)および陰極(11)をDC電圧源に接続するための電力リード(31、32)を備え、
ここで、陰極(11)が、二酸化炭素ガスを変換するためのガス拡散電極として設計され、陰極(11)、陽極(10)およびセパレータ(3)が、その主たる広がりを垂直に配置され、ならびに落下液膜の原理による陰極液(17)の通過のための電解質空間としてのギャップ(12a)がセパレータ(3)と陰極(11)との間に配置されている〕
を備える、電気分解装置。
【請求項13】
セパレータ(3)が、イオン交換膜またはダイヤフラム、好ましくはイオン交換膜であることを特徴とする、請求項12に記載の電気分解装置。
【請求項14】
陰極(11)の垂直の主たる広がりが、少なくとも30cm、好ましくは少なくとも60cm、より好ましくは少なくとも100cmであることを特徴とする、請求項12または請求項13に記載の電気分解装置。
【請求項15】
陰極(11)が、電気触媒として、銀および/または酸化銀、好ましくは銀粒子をベースとし、ならびに金属または非金属、導電性または非導電性支持体上の非導電性バインダーとしての粉末フルオロポリマー、特にPTFE粉末を有する、ガス拡散電極としてコンパクトに設計されていることを特徴とする、請求項12乃至請求項14の少なくとも1項に記載の電気分解装置。
【請求項16】
第1のガス出口(6)が、ガス空間(4)の上端で接続され、第2のガス出口(7)が、陽極空間(15)の上端で接続され、および第1のガス入口(5)がガス空間(4)の下端で接続されていることを特徴とする、請求項12乃至請求項15の少なくとも1項に記載の電気分解装置。
【請求項17】
陽極反応生成物のための第2のガス出口(7)が、陽極ガスからの塩素から酸素を分離するための第2のガス分離ユニット(25)に接続されていることを特徴とする、請求項12乃至請求項16の少なくとも1項に記載の電気分解装置。
【請求項18】
第1のガス出口(6)が、特に収集導管(68)を介して、一酸化炭素、水素および未消費の二酸化炭素ガスを分離するための第1のガス分離ユニット(69)に接続されていることを特徴とする、請求項12乃至請求項17の少なくとも1項に記載の電気分解装置。
【請求項19】
第1のガス分離ユニット(69)が、分離された二酸化炭素ガスのための再循環導管(53)を有し、特に分配管路(44)を介して二酸化炭素ガスのための第1のガス入口(5)に接続されていることを特徴とする、請求項18に記載の電気分解装置。
【請求項20】
ガス分離ユニット(70)が、分離された一酸化炭素のための出口を有し、一酸化炭素および塩素をホスゲン(61)に化学変換するための化学生成プラント(61)に接続されていることを特徴とする、請求項18または請求項19に記載の電気分解装置。
【請求項21】
陰極液流のための流量リターダ(24)が、ギャップ(12a)に設けられ、ここで、流量リターダ(24)が、好ましくは非導電性の化学的に不活性なテキスタイルファブリックの形態をとることを特徴とする、請求項12乃至請求項20の少なくとも1項に記載の電気分解装置。
【請求項22】
陰極液排出部(14)および陽極液排出部(9)が、直接または間接的に、管路を介して電解質コレクタ(67)に接続され、電解質コレクタ(67)が、管路を介して炭酸塩分解ユニット(38)を備え、炭酸塩分解ユニット(38)が、少なくとも解離二酸化炭素のための再循環ライン(38a)、塩化水素のための制御可能な供給部(62)および電解質のための再循環導管(38b)を備え、ならびに再循環導管(38b)が、陰極液供給部(13)および陽極液供給部(8)の両方に接続されることを特徴とする、請求項12乃至請求項21の少なくとも1つに記載の電気分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO2)およびアルカリ金属塩化物溶液の電気化学的変換により塩素、一酸化炭素(CO)および任意に水素を製造するための方法および電気分解装置に関する。
【0002】
より詳細には、イソシアネート製造のための原料の持続可能な調製のための方法、ならびに一酸化炭素および塩素、および任意に水素の同時調製のための電気分解装置およびその稼働、ならびにイソシアネート製造からの副生成物としての塩化水素のリサイクルが記載される。
【背景技術】
【0003】
現在、汎用化学物質である一酸化炭素と合成ガスは、一酸化炭素と水素からなり、一般的に化石原料から製造される。化石原料の不足と一酸化炭素の生成に関連するCO2排出量の増加のために、第一に、天然ガスまたは鉱油のような化石資源を保存するために、第二に、さもなければ前記汎用化学物質から生成された生成物の処分時の焼却の結果として生成されるCO2排出量、および結果として生じる地球温暖化を回避するために、持続可能な合成経路が必要とされている。
【0004】
さらに、合成のための原料として他の供給源からのCO2を使用することが好都合である。これにより、製鉄やごみ焼却など、さまざまな工程からのCO2の排出が回避される。これにより、このようなCO2源からのCO2排出による地球温暖化の上昇が遅くなる可能性があった。
【0005】
再生可能エネルギー、例えば風力エネルギー、水力発電または太陽光発電プラントからの電力を、特に化学原料としてのCO2の利用と組合せて利用することによって、以下に記載する好ましい新規な方法は、イソシアネートを製造するための特に持続可能な方法である。
【0006】
したがって、電気分解プロセスは、COなどの汎用化学物質の持続可能な生産に特に適している。
【0007】
プラスチック製造のための汎用化学物質は、典型的には1000トン規模で製造されるので、汎用化学物質の製造のための電気分解方法もまた、大規模工業規模(1000t/a)で開発されなければならない。電解分解によって工業規模の量の生成物を生成するために、大面積の電気分解セルおよび多数の電気分解セルを有する電解槽が必要とされる。工業生産量は、本明細書および以下では電気分解セル当たり0.1kg/(h*m2)を超える生成物の量を意味すると理解される。この目的のために、塩素アルカリ電気分解から知られているように、典型的には、1つの電気分解セル当たり2m2より大きい電極面積を有する電気分解セルが使用される。電気分解セルは、電気分解フレーム内で100までのグループに組み合わされる。次いで、複数のフレームが電解槽を形成する。工業用電解槽の容量は、現在、30,000t/aまでの塩素およびそれぞれの当量の水酸化ナトリウム溶液または水素である。
【0008】
酸素の陰極還元のためのガス拡散電極(GDE)の利用は、塩素アルカリ電気分解の性能について既に知られている。
【0009】
しかしながら、CO2の電気化学的還元のための工業的規模の方法は、現在知られておらず、CO2のCOへの電気化学的還元と塩素の同時調製との組合せも同様である。
【0010】
典型的には、イソシアネートの製造は塩化水素を与え、これは酸素による気相酸化によって塩素に戻すことができるか、または水中での吸収後に塩化水素に変換することができ、電気分解によって塩素および水素に変換するか、または塩素および水に変換することができる。
【0011】
典型的には、一酸化炭素が現在、天然ガスまたは石炭のような化石原料から製造されている。
【0012】
原料としてCO2を使用する電気分解方法は原則として知られており、その電気化学的還元はCOをもたらす。ここでの欠点は電気分解方法が炭酸水素塩含有電解質を使用すること、高超化学量論量のCO2が供給されること、したがって、生成された気体混合物から、または電解質から二酸化炭素を分離するために、高い分離強度が必要であることが見出されている。さらに、公知の方法では、陽極において酸素または酸素-CO2気体混合物が生成され、これは複雑な方法で分離されなければならない。このCO2はO2と逃げ出し、そして置き換える必要があり、これは、このような既知の方法の経済的な実行可能性に悪影響を与える。
【0013】
さらに、炭酸塩含有電解質の導電率は比較的低く、その結果、CO2電気分解のための高い電解電圧となる。また、高い電気エネルギー消費は、このような方法の経済的な実行可能性を著しく損なう。
【0014】
さらに、多くの場合、公知のCO2電気分解からのさらなる酸素生成物のための実行可能な工業的利用を見出すことは不可能であり、このことは、電気分解のために導入されたエネルギを効率的に利用することができないことを意味する。
【0015】
さらに、酸素の陽極生成が高い過電圧で進行することが知られており、これも既知の方法の効率に悪影響を及ぼす。また、酸素の発生時に陽極に形成されるのは陽子であり、これは炭酸塩含有電解質からCO2を追い出すことができる。このCO2は第1に、CO2気泡が電解質の導電性を悪化させ、陽極の面に集まり、電解質の接近を妨げるという点で、電気分解を中断する。両方とも、より高いセル電圧をもたらす。更に、形成されたCO2は、もし酸素がそれ以上使用されるならば、O2から分離されなければならない。しかし、このような手順を持続可能にするためには、排出されたCO2を再度リサイクルしなければならない。CO2は原料であり、場合によっては複雑な方法で提供しなければならないため、CO2の損失は一般に避けなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
対処された問題は、公知の方法の上記の欠点を有さない方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、二酸化炭素およびアルカリ金属塩化物溶液の電気化学反応によって塩素、一酸化炭素および任意に水素を調製する方法であって、二酸化炭素が陰極液としての水性アルカリ金属塩化物含有溶液中の陰極としてのガス拡散電極において電気化学的に還元され、同時に、陽極液としての水性アルカリ金属塩化物含有溶液から陽極的に生成され、ここで、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはそれらの混合物から選択される、陰極液中で形成される炭酸のアルカリ金属塩が次に、塩化水素と反応して、二酸化炭素およびアルカリ金属塩化物を与え、放出された二酸化炭素がガス拡散電極のための陰極空間に戻され、生成されたアルカリ金属塩化物が陽極空間および/または陰極空間のいずれかに戻されることを特徴とする方法を提供する。
【0018】
本発明の方法では、アルカリ金属塩化物含有電解質が陽極空間および陰極空間の両方で使用される。アルカリ金属塩化物は特に、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および場合によっては塩化セシウムも意味すると理解される。塩化カリウムを使用することが特に好ましい。陽極では、アルカリ金属塩化物含有電解質から塩素ガスが生成されると同時に、CO2が一酸化炭素に還元され、水素が生成され得る。
【0019】
この新規な方法の有利な点、陽極では酸素または酸素-CO2混合物は形成されず、塩素アルカリ電気分解から基本的に知られているように、むしろ高純度の塩素が形成されることである。
【0020】
CO2還元は、同様にアルカリ金属塩化物含有電解質から行われる。炭酸塩または炭酸水素塩を含有する電解質系に勝る大きな長所は第1に、電解質の導電率が高く、陽極でCO2ガスが放出されないことであり、これは、電気分解工程を妨害し、すなわち、より高い電解電圧をもたらし、陽極ガスから再度分離されなければならない。
【0021】
しかしながら、CO2還元において陰極で得られる水酸化物イオンは、陰極に供給される二酸化炭素と反応して、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはそれらの混合物から選択される炭酸のアルカリ金属塩を与える。形成された炭酸のアルカリ金属塩は、陰極液中に溶解した形態で存在する。方法パラメータは、例えば高温でのCO2電気分解の稼働によって、本質的にアルカリ金属塩が形成されるように特別に設計される。これは、より高い溶解性という利点を有し、ガス拡散電極の細孔中でのアルカリ金属炭酸水素塩またはアルカリ金属炭酸塩の結晶化を回避する。
【0022】
したがって、好ましい方法にとって特に重要なことは、電解質温度、特に好ましくは陰極液の温度の制御である。温度制御は、好ましくは、電気分解装置の少なくとも1つの電気分解セルへの供給物中の陰極液温度が少なくとも60℃、特に好ましくは少なくとも70℃であるように選択される。これはさらに、電解質の導電率を増加させ、電解電圧を低下させ、このことはこの方法がより経済的に実行可能な様式で実施され得ることを意味する。
【0023】
したがって、本発明の好ましい実施において、電気化学反応への供給物中の陰極液の温度は、少なくとも60℃、特に好ましくは少なくとも70℃である。
【0024】
陰極における二酸化炭素および陰極液、特にアルカリ金属塩化物溶液の電気化学的変換は、特に陰極液の存在下で陰極としてのガス拡散電極において二酸化炭素ガスが電気化学的に還元されるように行われ、前記陰極液が、落下液膜の原理によってガス拡散電極の表面に沿って案内される。
【0025】
落下液膜(通常、落下膜とも呼ばれる)の原理は、液体、例えばここでは陰極液が本質的に移動する膜の重力の作用によって構成されると言う。ここで、液体は、好ましくは電解質空間として機能する平行配置の2つの表面間のギャップ内の膜として案内される。本発明のこの好ましい実施形態の文脈において、これらの表面のうちの1つは、落下液膜が伝導されるギャップに面する二次元電極側に沿って、ガス拡散電極を形成し、他の表面は、二次元セパレータ、特に膜(好ましくはイオン交換膜またはダイヤフラム)を形成する。
【0026】
陰極液はさらに、ガス拡散電極の電極表面に沿って落下液膜として導かれることが好ましく、ここで、落下液膜の流速は、流量リターダによって制御することができる。
【0027】
反応物として塩素が必要であり、副生成物として塩化水素が得られる他の工業化学的製造方法と新規方法を組み合わせることによって、特定の利点が得られる。このような化学的方法の例は、イソシアネートまたはポリ塩化ビニルの製造である。
【0028】
新規方法の好ましい実行は結果的に、塩化水素が中間体としてホスゲンを介してイソシアネートを調製するための連結された方法から取り込まれ、電気化学反応で形成された塩素がイソシアネート生産のための前駆体としてホスゲン生産に再循環されることを特徴とする。
【0029】
新規な方法において、新規な方法の好ましい実施において、電気化学的変換の任意の副生成物としてCOと一緒に形成された水素は、水素、COおよびCO2の混合物から分離され、利用される。
【0030】
水素は、イソシアネート製造方法のための前駆体として、対応するジニトロ化合物からジアミンを製造するために最も好ましく利用される。
【0031】
新規な方法のさらに好ましい実行は、陽極液および/または陰極液のアルカリ金属塩化物溶液の濃度が独立して、25重量%まで、好ましくは15重量%~25重量%であることを特徴とする。
【0032】
この新規な方法では、工業規模での稼働(すなわち、少なくとも0.1CO2kg/(h*m2)の変換で(すなわち、1時間当たりおよび電極面積1平方メートル当たり少なくとも0.1kgのCO2))の際に、CO2の電気化学的変換は陰極としてのガス拡散電極で膜電気分解法によって行われる。
【0033】
新規な方法のこの好ましい変型では、CO2は、ガス拡散電極によって電解質空間から分割されたガス空間を介してガス拡散電極に供給される。
【0034】
上記手順の特に好ましい実施において、ガス拡散電極の裏側に近いガス空間におけるガス速度は、0.001~15m/s、好ましくは0.01~10m/sである。
【0035】
ガス拡散電極を用いる好ましい方法はまた、独立して、イオン交換膜とガス拡散電極との間の空間における陰極液のドリフト速度が0.8~10cm/sであることを特徴とする。
【0036】
電気分解装置におけるCO2の電気化学的変換は、上述したように、陰極として接続されたガス拡散電極において、以下に例示するように行われる:
【0037】
【0038】
副反応では、上記の式に従って形成された一酸化炭素と同様に、水素を生成することもできる。
【0039】
陽極では、塩素が、塩素アルカリ電気分解から公知の市販の陽極で、好ましくはルテニウム、チタンまたはイリジウム酸化物コーティング(例えば、ドイツのデノラ(Denora)からのDSAコーティング)を有するチタンからなる陽極で、水性アルカリ金属塩化物溶液から放出される。
【0040】
製造規模でのCO2の電気化学的変換のためには特に大面積のガス拡散電極が使用され、ガス拡散電極の稼働のためには工業的な大きさのセル構造が使用され、工業的な電気分解装置での稼働のためにはある状況下で特別な措置を講じなければならない。
【0041】
例えば、ガス拡散電極(GDE)の工業的利用の場合、ガス拡散電極は開孔構造を有し、電解質空間とガス空間の間に設置されることに留意すべきである。GDEの構造は、反応ガス(ここではCO2)の反応を、電解質、触媒およびガスの間の三相界面で、電解質にできるだけ近接してできるようにしなければならない。この境界層は、GDE材料の疎水性によって安定化される。しかしながら、電解質の表面張力のみに起因するこの安定化は、GDEの気体側と液体側との間の有限の圧力勾配のみを可能にすることが見出されている。ガス側の圧力が高すぎると、ガスは最終的にGDEを突破し、この領域のGDEの機能が途絶え、これは、ここでは電気分解の稼働が局所的に中断されることを意味する。他方、液体圧力が高すぎる場合、三相境界はGDEが電解質で満たされる程度までGDEの触媒領域から外にシフトされ、圧力がさらに増加する場合、これはガス空間への電解質液体の漏出をもたらす。これは、同様に、GDEの機能を妨害する。
【0042】
工業的に実施される電気分解の場合に顕著に使用される垂直電極配置の場合、これは、過度に高い気体圧力または液体圧力での既知の気体拡散電極の稼働の不能性のために、セル要素の構造高さの制限につながる。垂直GDE配置の場合の工業的構築物の高さは、特に30cmを超え、典型的には100~150cmである。電解槽の上部領域において10cmを超える構築物の高さの場合でさえ、ガス空間からのガスは、GDEと膜との間の陰極電解質ギャップに浸透する。したがって、工業的に達成可能な構築物の高さは約20~30cmに制限され、これは今日市場で慣用されている電解槽構造の工業的に経済的な利用を可能にしない。
【0043】
現在のところ、CO2の工業用電気化学的還元には、利用可能なセルの概念はない。現在、実験は小さな実験室セル規模でのみ行われており、構築物の高さは10cm未満であり、このため、構築物の高さやガス空間と電解質空間の間の圧力差の問題はまだ顕在化していない。
【0044】
したがって、CO2が工業規模でGDEで変換されるガス拡散電極を用いて新規な電気分解法を稼働することも本発明によって対処される特定の問題であった。工業的規模とは、0.1CO2kg/(h*m2)を超えて電気化学的に変換されるような製造量を意味すると理解される。
【0045】
すでに述べたように、COまたはCO/H2混合物への電気化学的CO2還元は、電気化学的O2還元とは根本的に異なっている。O2還元では、酸素ガスから水酸化物イオンが形成され;したがって、前記反応において体積の減少が起こる。GDEは酸素を消費し、その結果、分圧が低下する。しかしながら、COへのCO2還元は、CO2ガスおよび陰極液から生成物(COまたはCO/H2)の等モルガス体積を形成し、分圧の低下は起こらない。ある状況下では、これは特に電気分解セルの陰極側において、特殊な動作モードを必要とする。これらの具体的な動作モードは、未公開の特許出願PCT/EP2019/073789号のCO2電解槽に記載されている。これらは、陰極ハーフシェルの下のガス入口(5)と陰極ハーフシェルの上のガス出口(6)を備え、陰極のガス空間(4)を給排水する。これは、CO2よりも密度の低い水素またはCO副生成物の蓄積を回避する。さらに、良好な性能を達成するために、高いガス速度と規定された電解質速度を確立すべきである。
【0046】
また、塩素の生成と組み合わされたCO2から工業規模の体積のCOを生成することができる、今日まで知られている工業用電気分解方法および電気分解装置も知られていない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、方法全体の概略、および実行に使用可能な電気分解装置のエレメントの概略を示す。
【
図2】
図2は、電気分解装置の電気分解セルZを通る概略垂直断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
したがって、本発明はさらに、特に上記の本発明の方法による、少なくとも以下の
(i)少なくとも1つの二酸化炭素ガス源および
(ii)少なくとも1つの電気分解セル〔少なくとも
陰極と、陰極液供給部と、陰極液排出部と、第1のガス入口を介して二酸化炭素ガス源に流体接続されたガス空間を有し、ガス状反応生成物含有ガス用の、特に一酸化炭素、未消費二酸化炭素ガス、および任意に水素を含有するガス用の、ガス出口に接続された陰極ハーフシェルを備え、
陽極ハーフシェルをさらに備え、ここで、その陽極ハーフシェルに、少なくとも陽極反応生成物、特に塩素および任意の酸素のための第2のガス出口と、陽極液としての水性アルカリ金属塩化物含有溶液の導入のための陽極液導入部および陽極液排出部が設けられ、および陽極も設けられ、および
陽極ハーフシェルと陰極ハーフシェルとの間に配置されるセパレータであって、陽極空間と陰極空間とを分離するためのセパレータを備え、
陽極および陰極をDC電圧源に接続するための電力リードをさらに備え、
ここで、陰極は炭酸ガスを変換するためのガス拡散電極として設計され、陰極、陽極およびセパレータはその主たる広がりを垂直に配置され、落下液膜の原理による陰極液の通過のための電解質空間としてのギャップがセパレータと陰極との間に配置されている〕
を備える、二酸化炭素およびアルカリ金属塩化物溶液の電気化学的変換のための電気分解装置を提供する。
【0049】
新規な電気分解装置におけるセパレータは、好ましくはイオン交換膜またはダイヤフラムであり、より好ましくはイオン交換膜である。
【0050】
新規な電気分解装置の好ましい実施は、陰極の垂直方向の主たる広がりが少なくとも30cm、好ましくは少なくとも60cm、より好ましくは少なくとも100cmであることを特徴とする。
【0051】
陰極は、二酸化炭素ガスの変換のために設計されたガス拡散電極である。
【0052】
新規な電気分解装置の好ましい実施において、少なくとも1つの電気分解セルに存在する陰極は、銀および/または酸化銀、好ましくは銀粒子をベースとしたガス拡散電極として、電気触媒としておよび粉末フルオロポリマー、特にPTFE粉末を有し、金属または非金属、導電性または非導電性支持体上の非導電性バインダーとしてコンパクトな設計である。CO2からCOへの還元のための特に好ましいガス拡散電極(GDE)は、EP2398101に記載された電極に類似した銀ベースのGDEであり、以下に記載されるバリエーションを有する。
【0053】
使用される原料の材料密度から計算される触媒活性層の多孔率は、特に10%を超えるが80%未満である。
【0054】
GDEは、具体的には一例として、以下のように製造される:
5重量%のPTFE粉末、88重量%の酸化銀(I)および7重量%の銀粉末(例えば、フェロ(Ferro)からの331型)からなる粉末混合物3.5kgを、混合エレメントとしてスター型撹拌機を装備したアイリッヒ(Eirich)R02ミキサー中で、粉末混合物の温度が55℃を超えないように6000rpmの速度で混合した。全体として、混合は、50秒の混合時間について3回、および60秒の混合時間について3回行った。混合後、1.0mmのメッシュサイズを有するふるいで粉末混合物をふるい分けした。次に、ふるい分けされた粉末混合物を導電性支持エレメントに適用した。支持エレメントは、ワイヤ厚さ0.14mmおよびメッシュサイズ0.5mmの銀ワイヤメッシュであった。適用は1.0mmのメッシュサイズを有する篩を用いて粉末を適用しながら、厚さ2mmのテンプレートを用いて行った。鋳型の厚さより上に突出した余分な粉末を、スクレーパの手段により除去した。鋳型を除去した後、粉末を適用した支持体を、ロールプレスの手段により、0.45kN/cmの圧縮力で圧縮する。ガス拡散電極をロールプレスから取り外した。ガス拡散電極の気孔率は約50%であった。
【0055】
電気分解装置は、好ましくは、陰極に通じる二酸化炭素ガスのためのガス入口がガス空間内の二酸化炭素ガスの速度を制御する、流速を制御するための装置、例えば制御弁を備えるように設計される。上記の電気分解装置の特に好ましい実施において、ガス拡散電極の裏側に近いガス空間におけるこの装置の手段によって制御されるガス速度は、0.001~15m/s、好ましくは0.01~10m/sである。
【0056】
電気分解装置は、好ましくは、陰極液の流下液膜のドリフト速度が流量リターダによって調節されるように設計される。ここで、陰極液流のための流量リターダがギャップ内に提供される場合、特に好ましく、流量リターダは、好ましくは電気的に非導電性の化学的に不活性なテキスタイルファブリック(textile fabric)の形態をとる。
【0057】
特に好ましい電気分解装置において、流量リターダによって制御される、セパレータとガス拡散電極との間の空間における陰極液のドリフト速度は、0.8~10cm/sである。
【0058】
最も好ましくは、電気分解装置は、陰極に通じる二酸化炭素ガスのためのガス入口がガス空間内の二酸化炭素ガスの速度を制御する、流速を制御するための装置を備えるように、また、陰極液流のための流量リターダがギャップ内に追加的に設けられるように設計され、流量リターダは、好ましくは電気的に非導電性の、化学的に不活性なテキスタイルファブリックである。それぞれの場合において、それぞれの速度についての前述の好ましい値が特に好ましい。
【0059】
最も好ましくは、電気分解装置の少なくとも1つの電気分解セルに存在する陰極が銀および/または酸化銀、好ましくは銀粒子をベースとするガス拡散電極として、電極触媒としておよび粉末フルオロポリマー、特にPTFE粉末と共に、金属または非金属、導電性または非導電性支持体上の非導電性バインダーとして、コンパクトな形態で設計され、陰極に通じる二酸化炭素ガスのためのガス入口は、ガス空間内の二酸化炭素ガスの速度を制御する、流速を制御するための装置を備え、陰極液流のための流量リターダがギャップ内に追加的に設けられ、流量リターダは、好ましくは、電気的に非導電性の、不活性なテキスタイルファブリックとして設計される。それぞれの場合において、それぞれの速度についての前述の好ましい値が特に好ましい。
【0060】
電解槽が複数の電気分解セルを備える場合、電気分解セルは、好ましくは、それぞれの端部エレメントのみに電力接続が提供されるように、バイポーラ配置で設置される。バイポーラ配置によって意味されるのは、1つの陽極ハーフシェルが1つの陰極ハーフシェルと接触していることである。前記接触は、ハーフシェルの金属製後壁を介している。電解槽内の複数の電気分解セルのモノポーラ配置も同様に考えられる;ここでの各エレメントは別個の電力接続部を有し、陽極ハーフシェルは整流器のプラス極に接続され、陰極ハーフシェルは整流器のマイナス極に接続される。
【0061】
電気分解によって形成された反応生成物はそれぞれ、陽極反応生成物として、および陰極反応生成物として、目的のために提供された電気分解装置の電気分解セルから、上記で定義されたガス出口を通して除去されてもよい。
【0062】
好ましくは、新規な電気分解装置内の第1のガス出口がガス空間の上端で接続され、第2のガス出口は陽極空間の上端で接続され、第1のガス入口はガス空間の下端で接続される。
【0063】
新規な電気分解装置のさらに好ましい実施は、陽極反応生成物のための第2のガス出口が収集管路と、任意にCl2ガス乾燥とを介して、陽極ガスからの塩素からの酸素の分離のための第2のガス分離ユニットに接続されていることを特徴とする。
【0064】
新規な電気分解装置のさらなる好ましい実施形態では、第1のガス出口が特に収集導管を介して、一酸化炭素、水素、および未消費の二酸化炭素ガスを分離するための第1のガス分離ユニットに接続される。
【0065】
新規な電気分解装置のさらに好ましい実施形態では、第1のガス分離ユニットが分離された二酸化炭素ガスのための再循環導管を有し、この再循環導管は特に、分配管路を介して、二酸化炭素ガスのための第1のガス入口に接続される。
【0066】
上記の新規な電気分解装置の特に好ましい実施形態では、ガス分離ユニットが分離された一酸化炭素の出口を有し、これは一酸化炭素および塩素をホスゲンに化学変換するための化学製造プラントに接続されている。
【0067】
新規な電気分解装置の特に好ましい実施は、陰極液排出部および陽極液排出部が管路を介して電解質コレクタに直接または間接的に接続され、前記電解質コレクタが管路を介して炭酸塩分解ユニットを備え、前記炭酸塩分解ユニットが少なくとも解離した二酸化炭素のための再循環ライン、塩化水素のための制御可能な供給部、および電解質のための再循環導管を備え、前記再循環導管が陰極液供給部および陽極液供給部の両方に接続されることを特徴とする。
【0068】
本発明の方法は、CO2をCOに電気化学的に還元し、同時に塩化水素を再循環させて塩素を得ることにより、イソシアネートを持続的に製造するための好ましい方法を可能にする。持続可能に生成された電力からの電気エネルギの任意の使用はより具体的に、および例として、以下のように記載される。
【0069】
この目的のために、電解槽(
図1、電解槽100を参照)は、電解槽フレームごとに80~100個の電気分解セル(
図1、電気分解セル(Z)を参照)を備えている。電気分解セルは、少なくとも1つの陽極ハーフシェルおよび1つの陰極ハーフシェル、陽極および陰極、ならびに反応物および生成物導管および電源接続部を有する(
図2において概略的な断面において好ましくは示されているように)。ここで、電気分解セルは、それぞれの端部エレメントのみに電力接続が提供されるように、バイポーラ配置で設置される。バイポーラ配置によって意味されるのは、1つの陽極ハーフシェルが1つの陰極ハーフシェルと接触していることである。前記接触は、ハーフシェルの金属製後壁を介している。モノポーラ配置も同様に考えられ、ここでは、各エレメントは個別の電力接続を有し、陽極ハーフシェルは整流器のプラス極に接続され、陰極ハーフシェルは整流器のマイナス極に接続される。
【0070】
好ましい実施形態の文脈では、電気分解装置が陰極液温度を制御することができ、特に、陰極液温度を少なくとも60℃、好ましくは少なくとも70℃に制御することができる。したがって、陰極液供給部が、少なくとも1つの電気分解セルに供給される陰極液の温度を制御するための少なくとも1つの熱交換器を含む電気分解装置が好ましい。
【0071】
陽極ハーフシェルには、電解質(陽極液)として水性アルカリ金属塩化物含有溶液が供給される。陽極ハーフシェルでは、塩素が水性アルカリ金属塩化物溶液から生成される。副反応として、少量の酸素が、陽極において塩素と同様に形成され得る。
【0072】
陽極ハーフシェルに供給されるアルカリ金属塩化物溶液のpHは、pH1.5を超える。
【0073】
陽極液中に存在するアルカリ金属塩化物は、好ましくは以下の群:塩化セシウム、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムから選択される少なくとも1種のアルカリ金属塩化物であり、より好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムから選択される。最も好ましくは、塩化カリウムが陽極液中に存在する。
【0074】
新規な方法のさらに好ましい実施は、陽極液の水性アルカリ金属塩化物溶液の濃度が25重量%まで、好ましくは15~25重量%であることを特徴とする。最も好ましくは、陽極液の水性アルカリ金属塩化物溶液の塩化カリウム濃度が25重量%まで、好ましくは15~25重量%である。酸素および水蒸気をまだ含有する塩素ガスは、例えば硫酸乾燥によって乾燥操作に送られ、次いで、塩素中の酸素含有量に応じて塩素ガス分離に送られる。これは、例えば、塩素気体の液化の手段によって、とりわけ回復手段によって行うことができる。したがって、塩素ガスは、圧縮されて液化されるか、または化学合成に送られることができる。塩素の一部は、イソシアネート製造に使用されるホスゲンの合成に送られる。
【0075】
陽極液は、電気分解を離れた後、活性塩素、すなわち、ゼロより大きい酸化状態の塩素が除去される。これは、真空脱塩素化および/または化学的脱塩素化、例えばアルカリ金属含有亜硫酸水素塩溶液または過酸化水素の添加によって行うことができる。脱塩素化後、陽極液の活性塩素含有量は、特に20ppm未満であるべきである。このようにして処理された陽極液は、COおよびH2を含まない陰極液と合わせることができる。これは、アルカリ金属炭酸塩の分解の前または後のいずれかであり得る。
【0076】
亜硫酸水素塩が脱塩素化に使用される場合、硫酸カリウムが電解質中に蓄積する。電解質回路全体からの電解質の部分放出によって、好ましい方法では、電解質中の硫酸カリウム含有量を一定に保つことができる。電解質中の硫酸カリウムの最大濃度が10g/Lを超えないことが好ましい。
【0077】
陽極ハーフシェルおよび陰極ハーフシェルは、セパレータ、好ましくはイオン交換膜によって互いに分離される。ここでは、市販の過フッ素化イオン交換膜(旭(Asahi)からのAsahi Glass F8080型またはケマーズ(Chemours)からのChemours N2050の膜など)を使用することが可能である。これにより、陰極で生成された塩素が再び還元され、陰極で生成された一酸化炭素が陽極で酸化されることが防止される。ここでも、塩素と水素または一酸化炭素との混合を避けることが好ましく、これは安全上の理由から必要である。
【0078】
陰極ハーフシェルでは、一酸化炭素または一酸化炭素と水素との混合物がCO2からガス拡散電極で生成され、さらに水酸化物イオンが生成される。水酸化物イオンはここで過剰のCO2と反応して炭酸イオンを生じ、アルカリ金属イオンの存在下でアルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属炭酸水素塩を生じる。
【0079】
陰極液は、収集管路を介して、CO2の変換からの溶解または分散されたCOまたはCO/H2ガス混合物が分離除去されるガス除去部に案内される。この分離は例えば、不活性気体を用いたストリッピング塔の手段によって行うことができる。ストリッピングされたガス混合物は焼却炉に送られる。清浄化された陰極液は、電解質収集装置に送られるか、またはアルカリ金属炭酸塩分解ユニットに直接送られる。
【0080】
ここで使用される陰極液は、同様に水性アルカリ金属塩化物溶液である。陽極ハーフシェルおよび陰極ハーフシェルに送られるアルカリ金属塩化物は、好ましくは同一である。塩化ナトリウム、塩化カリウムもしくは塩化セシウム、またはそれらの混合物を使用することが可能である。塩化ナトリウムまたは塩化カリウムが好ましく、塩化カリウムが特に好ましい。
【0081】
より好ましくは、陽極液および/または陰極液のアルカリ金属塩化物溶液の濃度が独立して25重量%まで、好ましくは15重量%~25重量%である。
【0082】
陰極ハーフシェルから採取された一酸化炭素/任意に水素/二酸化炭素のガス混合物の分離の後、一酸化炭素および陽極で生成された塩素は、好ましくはホスゲン合成に送られる。ここで製造されたホスゲンは、それを適当なアミンと反応させることによってイソシアネートを製造するために使用される。アミンがニトロ化合物から調製される場合、それは、電気分解において生成され、分離されたいずれかの水素を使用して還元され得る。
【0083】
イソシアネート製造において得られるHClガスは、以下の例示的な式変換
【化2】
に従って形成される、特にアルカリ金属炭酸塩分解装置に送られる。アルカリ金属炭酸塩および場合によっては水酸化物イオンおよび陰極ハーフシェルにおけるCO
2から形成されるアルカリ金属炭酸水素塩を塩酸と反応させて、アルカリ金属塩化物、水およびCO
2を得る。その後、CO
2はCO
2用の分配管路に送られる。残りの溶液は電解質収集装置に送られ、そこで、それは脱塩素化陽極液と組み合わされる。
【0084】
合わせた溶液の濃度は、水またはアルカリ金属塩化物塩を添加することによって、またはアルカリ金属塩化物の希薄溶液または濃厚溶液を手段することによって調節することができ、次いで、電気分解セルへの陽極液および陰極液供給部に再循環させることができる。
【0085】
陽極ハーフシェルおよび陰極ハーフシェルは、陽極液および陰極液用の分配管路を介してそれぞれ適切に充填される。
【0086】
陽極液は陽極ハーフシェルから1つ以上の収集管路内に案内され、生成された塩素は収集管路内に導入することもできる。気体および電解質は、収集管路内で分離される。
【0087】
本発明の方法について上述した方法において利用される電気分解装置の特徴の好ましい実施形態は、本発明の電気分解装置の好ましい実施形態にとって好ましい特徴であると、個別にまたは任意の組み合わせで考慮される。
【0088】
好ましいものとして上述された本発明の電気分解装置の特徴の実施形態は同様に、個別に、または任意の組み合わせで、本発明の上述された方法において好ましくは使用可能な実施形態であると考えられる。
【0089】
以下、図面を参照して本発明を例示的に詳細に説明する。
【実施例】
【0090】
方法および電気分解装置のより一般的な例示的説明
電解槽100は、電解槽フレーム当たり、30~100個の電気分解セル(Z)(以下、単に電気分解セルとも呼ぶ)を備えている。電気分解セルZ(
図2)は陽極ハーフシェル2と陰極ハーフシェル1とからなり、これらはそれぞれイオン交換膜3によって互いに分離されている。陽極ハーフシェル2は、塩素製造のためのルテニウムとインジウムとの混合酸化物に基づく市販のコーティング(DSAコーティング、デノラ ドイツ(Denora Deutschland))を有する陽極10を備える。陰極11は、コベストロ ドイツ(Covestro Deutschland)AGからの銀/PTFEベースのガス拡散電極として構成される。ガス拡散電極11は、ガス空間4を電解質空間12から分離する。電解質空間12は、ガス拡散電極11とイオン交換膜3とによって区画され、ギャップ12aを形成している。ギャップ12aは陰極液17の流れ抵抗として作用するPTFEベースのファブリック24で満たされ、これはファブリック24で満たされたギャップ12aを通って頂部から下方に流れる。陰極液17は、陰極ハーフシェル1の基部に集められ、好ましくは可撓性のパイプ接続部を介して放出され、収集管路(陰極液)65に導かれる。ガスがパイプ接続部を介して陰極ハーフシェルから出るのを防止するために、パイプ接続は、浸漬された状態で収集管路(陰極液)65に導かれるように実行される。
【0091】
陽極ハーフシェル2および陰極ハーフシェル1は、セパレータ3、イオン交換膜3によって互いに分離されている。ここで、旭硝子F8080タイプ(製造者:旭硝子)またはChemours N2050(製造者:ケマーズ(Chemours))の市販の過フッ素化イオン交換膜を使用することが可能である。これにより、陰極11で生成された塩素が再び還元され、陰極で生成された一酸化炭素が陽極10で酸化されることが防止される。同様に、ここでは、塩素と水素またはCOとの混合が防止され、これは安全上の理由(塩化水素ガス爆発の危険性)のために必要である。
【0092】
電気分解エレメントのDC電圧源(図示せず)への単極接続の場合の電気接触は、陽極10から導電性接続部90を介して陽極ハーフシェル2へ、そして陽極電力リード線32を介して陽極ハーフシェル2からである。陰極11から、電気接触は弾性導電性マット36を介して、さらに導電性頂部構造35を介して、さらに導電性接続部91を介して、陰極ハーフシェル1に、そしてそのDC電圧源に、接続される。陰極ハーフシェル1のガス空間4には分配管路44を介してCO
2が供給され(
図1参照)、次いで、陰極ハーフシェル1からの未変換CO
2および反応生成物は好ましくは可撓性の連結部を介して、出口6に連結されて、CO/CO
2ガス混合物のための収集管路68に供給される。
【0093】
収集管路(陰極液)65からの陰極液14aは、CO2、CO、および任意のH2のような依然として溶解しまたは分散されたガスを陰極液14aから分離するために、CO2/CO/H2ガス分離ユニット66に送られる。この分離は例えば、不活性気体を用いたストリッピング塔の手段によって行うことができる。ストリッピングされたガス混合物66a(テールガス)は例えば、焼却に送られる。清浄化された陰極液66bは、電解質収集装置67に送られるか、または炭酸塩分解ユニット38に直接送られる。
【0094】
陰極ハーフシェル1のガス空間4から取り出されたガス混合物は、CO2/CO/H2ガス混合物68のための収集管路に送られる。その後、超過したまたは未変換のCO2がガス混合物から分離される(CO2分離69)。これは、例えばアミンスクラブによって行うことができる。分離されたCO2ガスは再循環導管53を介して陰極ハーフシェル1のガス空間4に供給され、再度CO2分配管路44を介して供給される。変換されたCO2は、ここで、CO2ガス源55からの適切な量の新鮮なCO2によって補充される。
【0095】
陽極ハーフシェル2には、分配管路(陽極液)40を介して陽極液15aが供給される。陽極ハーフシェル2において、塩素は、水性アルカリ金属塩化物溶液から陽極10において生成される。副反応として、少量の酸素が、陽極において塩素と同様に形成され得る。Cl2、任意のO2、および陽極液の混合物は、出口7および9を介して陽極ハーフシェル2から取り出され、陽極液&Cl2ガス混合物20のために収集管路に送られる。酸素および水蒸気をまだ含んでいるCl2は、収集管路20から取り出され、例えば硫酸乾燥による、Cl2乾燥22に送られる。塩素の必要とされる純度に応じて、さらなる任意の精製を下流に接続する。例えば、O2の残留物25bを塩素と分離するために、Cl2をCl2ガス分離ユニット25に送ることができる。これは、例えば、回復性液化の手段によって行うことができる。その後、塩素を圧縮および/または液化し、および/または化学合成(例えば、ホスゲン合成61)に送ることができる。
【0096】
従って、除去されたCl2の一部25aは、イソシアネート製造60のための前駆物質としてホスゲン合成61に送られる。
【0097】
収集管路20からの清浄化された陽極液は、塩素がゼロを超える酸化状態で存在する化合物(活性塩素)を除去するために、脱塩素化ユニット23に送られる。これは、真空脱塩素化および/またはアルカリ金属含有亜硫酸水素塩溶液の添加による、または過酸化水素の添加による化学的脱塩素化のいずれかによって行うことができる。脱塩素化後、陽極液の活性塩素含有量は、好ましくは20ppm未満であるべきである。
【0098】
脱塩素化された陽極液は、電解質収集装置67に送られる。電解質収集装置内に収集された電解質は、アルカリ金属塩化物と同様に、形成されたアルカリ金属炭酸水素塩または炭酸塩を含み、炭酸塩分解ユニット38に送られる。炭酸塩分解ユニット38にはイソシアネート製造60から塩化水素62が供給され、塩化水素62は電解質中に存在するアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩と反応して、アルカリ金属塩化物、水、およびCO2を生じる。任意に、化学量論的に過剰の塩化水素62を添加することが可能である。分離されたCO2は、CO2分離、アミンスクラブ69、およびCO2用分配管路44を介して二酸化炭素ガス源55から補充されるCO2と共に、陰極ハーフシェルのガス空間4に戻される。
【0099】
炭酸塩分解ユニット38からの電解質は、鉱酸/アルカリ46を供給し、熱交換器42で加熱し、分配管路40を介してpHを調整した後、陽極ハーフシェル2に戻される。陽極ハーフシェルに供給される電解質の温度は、熱交換器の下流で50℃を超える。陽極ハーフシェルに供給されるアルカリ金属塩化物溶液のpHは2~8であり、アルカリ金属塩化物の濃度は14重量%~23重量%である。
【0100】
さらに、CO2炭酸塩分解ユニット38からの電解質は、無機酸/アルカリ56の添加によるpH調節および分配チャネル(陰極液)50を介した熱交換器54を介して陰極ハーフシェル1に戻される。陰極ハーフシェル1に供給される電解質のpHは6~14であり、温度は50℃より高い。アルカリ金属塩化物の濃度は、陽極ハーフシェルに供給される電解質の濃度に相当する。
【0101】
ホスゲン合成61から製造されたホスゲンは、適当な、例えば芳香族のアミンと反応させることによる、イソシアネートの製造60に使用される。芳香族ニトロ化合物からアミンを製造する場合には、CO/H2ガス分離70で製造されおよび分離された水素70bを使用してアミンを還元することができる。
【0102】
イソシアネート製造60で得られたHClガスの一部は、炭酸塩分解ユニット38に供給される。アルカリ金属炭酸塩、および場合によってはアルカリ金属炭酸水素塩も、形成された水酸化物イオンと陰極ハーフシェル中のCO2とによって形成され、ここでアルカリ金属塩化物、水およびCO2に変換される。CO2は、ここで、CO2用の分配管路44に送られる。
【0103】
陽極液および陰極液の濃度は、水またはアルカリ金属塩化物塩の添加によって、または希釈されたまたは濃縮された塩溶液18によって調節することができる。陽極液脱塩素化23における亜硫酸水素塩の添加による脱塩素化で形成された不純物または硫酸塩の蓄積を回避するために、電解液の一部を廃棄することが可能である。これは、廃棄導管18aを介して行われる。
【0104】
実施例(発明)
2.5m
2の面積を有する電気分解セルZ(
図2参照)は、陽極ハーフシェル2と陰極ハーフシェル1から形成され、Nafion 982 WX型のイオン交換膜3によって分離されている。
【0105】
陽極10は、Denora(DSAコーティング)からの塩素製造のための塩素の調製のために設定された慣用のコーティング(混合Ru/Ir酸化物を含む)を有するエキスパンドチタン金属からなる。
【0106】
ガス拡散電極(GDE)11である陰極は、落下膜セル技術の原理によってセルZ内に垂直に設置され、ここで、GDE11は弾性的に取り付けられた流動案内エレメント36上に載置され、これは、次に、ガスにアクセスするための開口部を備えた導電性支持構造35上に載置される。GDE11は、クロルアルカリ電気分解のためのコベストロ ドイツ(Covestro Deutschland)AG(EP1728896A2の公開明細書による)からの銀金属メッシュ上の銀-およびPTFE-ベースのGDEである。GDE11と膜3との間では、PTFE-ベースの二次元ファブリック24が流動抵抗として使用され、それを通って陰極液17が自由落下で頂部から下方に流れる。
【0107】
電解操作における電流密度は3kA/m2である。
陽極空間15には、分配管40を介して、2.68kg/hのK2SO4、45.8kg/hのKCl、および180.5kg/hの水からなるpH7および80℃の229.02kg/hの電解質(陽極液15a)が供給される。さらに、下記の化学的脱塩素化は、本方法の定常状態運転において、陽極液15a中に2.68kg/hのK2SO4の比率を確立する。
【0108】
出口9を介して陽極空間15から取り出されるのは、9.92kg/hのCl2および0.58kg/hのO2、ならびに24.9kg/hのKCl、10.4g/hの活性塩素および165.4kg/hのH2Oを含む193.05kg/hの電解質であり、ならびに定常状態運転では、2.68kg/hのK2SO4であり、これらは収集管路20に供給される。
【0109】
陽極空間15から取り出された電解質(使用済み陽極液)は、3.5のpHを有し、および陽極液脱塩素化23に送られ、これは、第1段階において、真空脱塩素化からなり、これは、形成された10.3gのCl2を除去する。このように処理された使用済み陽極液は、第2段階の陽極液脱塩素化23に送られ、ここでは18重量%の水酸化カリウム溶液19gを加えることによってpH9にされ、次いで、化学的脱塩素化に送られ、38重量%のKHSO3溶液0.5gが陽極液に加えられる。
【0110】
陽極液の化学的脱塩素化において形成されるK2SO4の蓄積を避けるために、74.5g/hの処理された陽極液が排出され(管路18a)、廃棄される。
【0111】
化学的脱塩素後、13.4gの18重量%塩酸を添加することによって、処理された陽極液のpHを3.5に低下させる。
【0112】
このように処理された陽極液は、貯蔵容器、電解質収集装置67に送られるか、または炭酸塩分解ユニット38に直接送られる。
【0113】
電気分解セルZの陰極空間16には、7.25kg/hのK2SO4、123.6kg/hのKCl、487.15kg/hのH2Oからなり、72℃である618kg/hの陰極液17が供給される。陰極ハーフシェル1におけるガス空間4には30.34kg/hのCO2が供給される。
【0114】
陰極空間16から取り出されるのは、123.6kg/hのKCl、19.3kg/hのK2CO3、7.25kg/hのK2SO4および501.4kg/hの水で構成される651.6kg/hの陰極液である。排出される陰極液は87.3℃の温度を有した。
【0115】
さらに、陰極ハーフシェル1におけるガス空間4から取り出されるのは、2.66kg/hのCO、0.09kg/hのH2、および20kg/hのCO2からなる22.75kg/hのガスである。
【0116】
CO2からCOへの陰極変換は68%であった。
陽極で生成されたCl2(9.92kg/h)は、乾燥22およびO2の除去25の後、生成され乾燥されたCOおよびさらなるCOと一緒になって、ホスゲンに変換され、イソシアネート製造60に送られた。
【0117】
イソシアネート製造60から分離されたHClガス62は、炭酸塩分解ユニット38に送られた(10.2kg/h)。
【符号の説明】
【0118】
図面において、参照記号は以下の意味を有する:
Z 電気分解セル
1 陰極ハーフシェル
2 陽極ハーフシェル
3 セパレータ(ダイヤフラム、イオン交換膜)
4 ガス空間(陰極)
5 二酸化炭素の第1のガス入口(陰極空間)
6 ガス状反応生成物の第1のガス出口(陰極空間)
7 陽極反応生成物のための第2のガス出口
8 陽極液供給部
9 ガス収集管路20へ排出される塩素含有陽極液
10 陽極
11 陰極(ガス拡散電極)
12 陰極液空間(電解質空間)
12a 陰極液ギャップ(電解質空間)
13 陰極液供給部
14 陰極液排出部
14a 陰極液65のための収集管路からガス分離ユニット66に排出されるCO/H2含有陰極液
15 陽極空間
15a 陽極液
16 陰極空間
17 陰極液
18 濃度調整用の水または濃縮若しくは希釈された電解質の供給
18a 電解質の排出
20 陽極液&Cl2ガス混合物収集管路
22 Cl2ガス乾燥
23 陽極液脱塩素化
24 流動抵抗
25 Cl2-O2ガス分離ユニット
25a 清浄化されたCl2ガス
25b Cl2/O2テールガス
31 陰極電源リード
32 陽極電源リード
34 分配チャネル
35 導電性の頂部構造
36 GDE11と頂部構造35との間の弾性導電性接続
38 炭酸塩分解ユニット
38a 炭酸塩分解ユニットからのCO2流の導管
38b 炭酸塩分解ユニットからのアルカリ金属塩化物溶液の再循環導管
40 陽極液分配管路
42 陽極液熱交換器
44 CO2用の分配管路
46 陽極液のpHを調整するための酸または塩基の計量添加
50 陰極液分配管路
53 分離された二酸化炭素ガスの再循環導管
54 陰極液熱交換器
55 二酸化炭素ガス源
56 陰極液のpHを調整するための酸または塩基の計量添加
60 イソシアネート製造
61 ホスゲン合成
62 HClガス供給
65 陰極液収集管路
66 CO/H2ガス分離ユニット
66a ガス分離ユニット66からの陰極液から分離されたCO/H2ガス
66b 清浄化された陰極液
67 電解質回収装置
68 CO/CO2/H2ガス混合物用収集管路
68a CO2、CO、H2の混合物
69 未変換CO2とCO2、H2を分離するためのCO2ガス分離
70 CO/H2ガス分離
70a 一酸化炭素ガス
70b 水素ガス
90 陽極と陽極ハーフシェルとの導電性接続
91 GDE11、弾性構造体36、導電性上部構造体35の陰極ハーフシェル1への導電性接続
100 電解セルZ(n)を備えた電解槽、n=電解セルZの数
【国際調査報告】