(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(54)【発明の名称】薬剤送達装置のためのキー付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/24 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A61M5/24 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521391
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2020077459
(87)【国際公開番号】W WO2021069284
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510199605
【氏名又は名称】メドミクス スウィッツァランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケイテル、ヨアキム
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066FF05
4C066GG18
4C066GG20
4C066HH02
4C066HH13
4C066LL30
(57)【要約】
2つ以上の用量送達機構および2つ以上の薬剤容器の集合体は、第1のキー付きコネクタを含む近位端を有する第1の用量送達機構と、第2のキー付きコネクタを含む近位端を有する第2の用量送達機構とを含む。第1のホルダは、第1の薬剤を収容する第1の薬剤容器を受け入れて保持するように構成され、第1のホルダの遠位端は、第3のキー付きコネクタを含む。第2のホルダは、第2の薬剤を収容する第2の薬剤容器を受け入れて保持するように構成され、第2のホルダの遠位端は第4のキー付きコネクタを含み、第2の薬剤は第1の薬剤とは異なる。第1のキー付きコネクタは、第4のキー付きコネクタとの接続を形成せず、第2のキー付きコネクタは、第3のキー付きコネクタとの接続を形成しない。第1のキー付きコネクタは、第3のキー付きコネクタと係合して接続を形成することができ、第2のキー付きコネクタは、第4のキー付きコネクタと係合して接続を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の用量送達機構および2つ以上の薬剤容器の集合体であって、
第1のキー付きコネクタを含む近位端を有する第1の用量送達機構と、
第2のキー付きコネクタを含む近位端を有する第2の用量送達機構と、
第1の薬剤を収容する第1の薬剤容器を受け入れて保持するように構成された第1のホルダであって、前記第1のホルダの遠位端が第3のキー付きコネクタを含む、第1のホルダと、
第2の薬剤を収容する第2の薬剤容器を受け入れて保持するように構成された第2のホルダであって、前記第2のホルダの遠位端が第4のキー付きコネクタを含み、前記第2の薬剤が前記第1の薬剤とは異なる、第2のホルダと、
を含み、
前記第1のキー付きコネクタは前記第4のキー付きコネクタとの接続を形成せず、前記第2のキー付きコネクタは前記第3のキー付きコネクタとの接続を形成せず、
前記第1のキー付きコネクタは、前記第3のキー付きコネクタと係合して接続を形成することができ、前記第2のキー付きコネクタは、前記第4のキー付きコネクタと係合して接続を形成することができる、集合体。
【請求項2】
前記第1および第2のホルダの各々が、前記第1のホルダが前記第1の用量送達機構に取り付けられているときにピストンロッドが前記近位端を越えて前記第1のホルダ内に移動するように、前記第1または第2の用量送達機構のうちの一方内に収容された前記ピストンロッドの軸方向移動を可能にするように構成された開放近位端を有する、請求項1に記載の集合体。
【請求項3】
前記第1のキー付きコネクタおよび前記第2のキー付きコネクタがそれぞれねじ形態を含む、請求項2に記載の集合体。
【請求項4】
前記ねじ形態がそれぞれ同じコア直径を有する、請求項3に記載の集合体。
【請求項5】
前記ねじ形態がそれぞれ同じ外側ねじ直径を有する、請求項3に記載の集合体。
【請求項6】
前記第1のキー付きコネクタの前記ねじ形態が、前記第2のキー付きコネクタの前記ねじ形態とは逆向きである、請求項3に記載の集合体。
【請求項7】
前記第1のキー付きコネクタの前記ねじ形態が第1のピッチを有し、前記第2のキー付きコネクタの前記ねじ形態が第2のピッチを有する、請求項3に記載の集合体。
【請求項8】
前記第1のピッチおよび前記第2のピッチが異なる、請求項7に記載の集合体。
【請求項9】
前記第1のキー付きコネクタの前記ねじ形態が第1のねじ幅を有し、前記第2のキー付きコネクタの前記ねじ形態が第2の幅を有する、請求項3に記載の集合体。
【請求項10】
前記第1のキー付きコネクタの前記ねじ形態が第1のねじ幾何学的形状を有し、前記第2のキー付きコネクタの前記ねじ形態が第2の幾何学的形状を有する、請求項3に記載の集合体。
【請求項11】
前記第1のねじ幾何学的形状が前記第2の幾何学的形状とは異なる、請求項10に記載の集合体。
【請求項12】
前記第1および第2のキー付きコネクタがそれぞれ、同じコア直径および異なる外径を有する雄ねじ形態を含む、請求項1に記載の集合体。
【請求項13】
各雄ねじ形態が異なる幾何学的形状を有する、請求項12に記載の集合体。
【請求項14】
各雄ねじ形態が異なるピッチを有する、請求項12に記載の集合体。
【請求項15】
前記第1のキー付きコネクタの前記雄ねじ形態が、前記第2のキー付きコネクタの前記雄ねじ形態とは逆向きである、請求項12に記載の集合体。
【請求項16】
前記第1のキー付きコネクタおよび前記第2のキー付きコネクタがそれぞれ、雄ねじ形態を含む、請求項1に記載の集合体。
【請求項17】
前記第1のキー付きコネクタおよび前記第2のキー付きコネクタがそれぞれ、雌雄ねじ形態を含む、請求項1に記載の集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、一般に、薬物送達装置およびリザーバ、特に薬剤を収容するリザーバに関する。より詳細には、本出願は、用量設定および送達機構に取り付けられた薬剤容器アセンブリを有する注射送達装置に関し、特に、適切な薬剤容器アセンブリが適切な用量設定および送達機構に接続されることを確実にするために、用量設定および送達機構上の相補的または協働するコード化特徴部に係合するコード化特徴部を有するそのような薬剤ホルダアセンブリに関する。換言すれば、本開示は、薬剤の望ましくない交差使用を防止するための機械的解決策を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の用量を自動的に、半自動的に、または手動で送達することができるいくつかの薬剤送達装置が市販されている。既知の種類の送達装置のうち、「ペン型」注射器は一般的であり、再使用可能な設計および使い捨ての設計の両方で利用可能である。そのような装置は、用量の設定、用量取消、および設定された用量の最終的な送達などの所望の機能を達成するための様々な相互作用機械的構成要素を含む用量設定および送達機構で構成される。そのような装置は、典型的には、医療的に訓練されていない個人が薬剤を自己投与するために設計されている。そのような装置のユーザには、糖尿病患者が含まれ、ここで、投薬管理およびコンプライアンス、すなわち、患者が医学的指示およびプロトコルに従う程度は、非常に重要であることが多い。本開示は、再使用可能かつ半再使用可能な薬剤送達装置に焦点を当てており、これは、用量設定および送達機構が、以前に使用された各容器が空になるにつれてそれらを置き換える薬剤の新しい容器と共に繰り返し使用されることを意味する。
【0003】
アンプル、カートリッジ、またはバイアルなどの薬剤容器またはリザーバが一般に知られている。そのようなリザーバは、特に、患者によって自己投与され得る薬剤に使用される。例えば、インスリンに関して、糖尿病に罹患している患者は、ペン型注射器を介して注射されるか、またはポンプを介して注入されるかのいずれかである一定量のインスリンを必要とし得る。特定の既知の再使用可能なペン型薬物送達装置に関して、患者は、薬剤を収容するカートリッジを、カートリッジホルダの遠位端に装填する。カートリッジが正しく装填され、カートリッジホルダが用量設定機構に適切に接続された後に、ユーザは、薬剤の用量を選択するように求められ得る。複数回の用量をカートリッジから投与することができる。薬物送達装置が再使用可能な装置を含む場合、カートリッジが空になると、カートリッジホルダが薬物送達装置から取り外され、空のカートリッジが取り外されて新しいカートリッジと交換される。そのようなカートリッジのほとんどの供給業者は、ユーザが空のカートリッジを適切に廃棄することを推奨する。
【0004】
薬物送達装置が半使い捨て装置を含む場合、カートリッジが空になると、ユーザは、カートリッジとカートリッジホルダの両方を一緒に廃棄するが、これは、典型的には単一のアセンブリとして提供され、カートリッジがホルダ内に密封されるか、そうでなければ恒久的に固定されることを意味する。次いで、新しいアセンブリ(カートリッジ+ホルダ)が、再使用可能な用量設定および送達機構に取り付けられる。
【0005】
空のカートリッジの取り外しおよび再装填を必要とするそのような既知の自己投与システムには、一定の制限がある。例えば、特定の一般的に知られているシステムでは、ユーザは新しいカートリッジをカートリッジホルダに単に装填するだけで、正しいカートリッジおよび/または薬剤が確実に装填される機構はない。すなわち、薬物送達装置は、カートリッジに収容された薬剤が実際に患者によって投与されるべき正しい種類の薬剤であるかどうかを判定するための機構を有さない。あるいは、特定の既知の薬物送達装置は、カートリッジ内の正しい種類の薬剤をその特定の薬物送達システムと共に使用すべきかどうかを決定するための機構を提示しない。この潜在的な問題は、糖尿病に罹患している患者などの特定の高齢患者が、手の器用さが限られている可能性があることを考慮すると、悪化する可能性がある。不正確な薬剤を特定することは非常に重要であり、その理由は、長いインスリンの代わりに、潜在的に不正確な用量の薬剤、例えば、短時間作用型インスリンを投与することは、傷害または死さえももたらし得るからである。
【0006】
そのような使い捨てカートリッジで生じ得る別の懸念は、これらのカートリッジが本質的に標準的なサイズで製造され、特定の認識された地域および国際規格に準拠するように製造されていることである。その結果、そのようなカートリッジは、典型的には、標準的なサイズのカートリッジ(例えば、3mlカートリッジ)で供給される。したがって、いくつかの異なる供給業者によって供給され、異なる薬剤を収容する様々なカートリッジが存在し得るが、それらはすべて、薬物送達装置に取り付けられる単一のカートリッジホルダに適合し得る。単なる一例として、第1の供給業者からの第1の薬剤を収容する第1のカートリッジは、第2の供給業者によって提供される第2の医療送達装置に嵌合することができる。したがって、使用者は、医療送達装置がおそらくそのような薬剤のカートリッジと共に使用されるように設計も意図もされていなかったことを認識することなく、誤った薬剤を装填し、次いでそれを薬物送達装置を通して分配することができる可能性がある。
【0007】
薬剤の不正確なカートリッジのこのような相互使用を最小化または完全に緩和するために、本開示は、薬物送達装置の用量設定および送達機構部分の対応するコード化コネクタと一致するコード化またはキー付きコネクタを有する薬剤容器ホルダに関する。そのようなホルダにコード化されたコネクタを使用することにより、アンプル、カートリッジ、バイアル、またはパウチなどの本開示における薬剤リザーバの使用が可能になる。例示的な医療送達装置には、シリンジ、ペン型注射シリンジ、ポンプ、吸入器、または少なくとも1つの薬剤を収容する少なくとも1つのリザーバを必要とする他の同様の注射または注入装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
以下に提示される開示は、医療処置プロトコルに対するユーザの遵守のより正確な評価を可能にし、薬剤の誤用を防止する固有の安全機能を提供する注射器設計を提供することによって上述の目的を達成する。
【発明の概要】
【0009】
上述のように、本開示は、薬剤の容器を受け入れて保持することができる任意の数の薬剤ホルダであって、ホルダが、薬物送達装置の用量設定および送達機構部分上の対応するコード化コネクタと一致するコード化コネクタを有する、任意の数の薬剤ホルダに関する。例えば、本発明のホルダは、ホルダがホルダ内に恒久的に固定された薬剤容器を収容する構成で、ユーザに利用可能にすることができる。別の言い方をすれば、薬剤の容器は、意図された対応する用量設定および送達機構、またはその上任意の送達機構で動作不能になるようにホルダが破損または損傷しない限り、ホルダから取り外すことができない。
【0010】
あるいは、薬剤の容器は、空の容器を新しいフル充填された容器と交換できるように、コード化されたホルダから取り外し可能であり得る。そのような状況では、容器自体が、誤った容器がコード化されたホルダに挿入されるのを防止するコード化特徴部を含んでいれば、有益であろう。本開示は、薬剤容器ホルダが用量設定および送達機構に恒久的に取り付けられている使い捨て薬物送達装置に関するものではない。使い捨て装置の場合、薬剤の容器が空になると、送達装置全体が廃棄される。そのような使い捨て装置では、空の薬剤容器を取り外し、ピストンロッドをリセットし、または新しい充填された容器を挿入する機構はない。
【0011】
好ましくは、本開示の薬物送達装置は、可変であり、ユーザが設定可能であり、単一の薬剤容器からの複数回投与が可能なペン型注射装置であり、容器は好ましくはカートリッジである。そのような装置の例は、米国特許第8,512,296号明細書、米国特許出願公開第2018/0001031号明細書、および2017年7月13日に出願された米国特許出願第15/649,287号に記載されており、これらの特許出願の各々の内容は、参照により本出願に完全に組み込まれる。そのような注射装置は、例えば空のカートリッジをフル充填されたカートリッジと交換し、ピストンロッドを用量設定機構に引き戻すことによって、注射装置の用量設定および送達機構部分の部分的な分解およびリセットを通じて、薬剤の容器、典型的にはカートリッジが交換可能であるように再使用可能であり得る。再使用可能な装置では、用量設定機構の近位端からカートリッジホルダを取り外し、使用済みの空のカートリッジを新しいフル充填のカートリッジに交換し、次いでカートリッジホルダを用量設定機構に再取り付けする必要がある。
【0012】
本開示の一実施形態では、薬物送達装置の少なくとも2つ以上の用量設定および送達部分、すなわち、送達機構部分、および2つ以上の薬剤容器で構成される注射装置の集合体が提示される。第1の用量送達機構は、第1のキー付きコネクタを含む近位端を有し、第2の用量送達機構は、第2のキー付きコネクタを含む近位端を有する。第1のホルダは、第1の薬剤を収容する第1の薬剤容器を受け入れて保持するように構成され、第1のホルダの遠位端は、第3のキー付きコネクタを含む。第2のホルダは、第2の薬剤を収容する第2の薬剤容器を受け入れて保持するように構成され、第2のホルダの遠位端は第4のキー付きコネクタを含み、第2の薬剤は第1の薬剤とは異なる。
【0013】
第1のキー付きコネクタは、第4のキー付きコネクタとの接続を形成せず、第2のキー付きコネクタは、第3のキー付きコネクタとの接続を形成せず、第1のキー付きコネクタは、第3のキー付きコネクタと係合して接続を形成することができ、第2のキー付きコネクタは、第4のキー付きコネクタと係合して接続を形成することができる。
【0014】
本開示の一実施形態の用量送達機構および薬剤容器の集合体は、第1のホルダが第1の用量送達機構に取り付けられているときにピストンロッドが近位端を越えて第1のホルダ内に移動するように、第1および第2のホルダが、第1または第2の用量送達機構のうちの一方内に収容されたピストンロッドの軸方向移動を可能にするように構成された開放近位端を有するように構成することができる。第1のキー付きコネクタおよび第2のキー付きコネクタは各々ねじ形態を含むこともでき、ねじ形態は各々同じコア直径を有する。同様に、ねじ形態はそれぞれ、同じ外側ねじ直径を有することができる。いくつかの実施形態では、第1のキー付きコネクタのねじ形態は、第2のキー付きコネクタのねじ形態とは反対側のものであり、および/または第1のキー付きコネクタのねじ形態は、第1のピッチを有し、第2のキー付きコネクタのねじ形態は、第2のピッチを有することが好ましい。第1のピッチと第2のピッチは異なっていてもよい。
【0015】
第1のキー付きコネクタのねじ形態はまた、第1のねじ幅を有することができ、第2のキー付きコネクタのねじ形態は、第2の幅を有する。さらに、第1のキー付きコネクタのねじ形態は第1のねじ幾何学的形状を有することができ、第2のキー付きコネクタのねじ形態は第2の幾何学的形状を有することができ、第1のねじ幾何学的形状は第2の幾何学的形状とは異なる。いくつかの例では、第1および第2のキー付きコネクタはそれぞれ、同じコア直径および異なる外径を有する雄ねじ形態を含む。雄ねじが第1および第2のキー付きコネクタ上で使用される場合、各雄ねじ形態は、異なる幾何学的形状および/または異なるピッチを有することができる。さらに、第1のキー付きコネクタの雄ねじ形態は、第2のキー付きコネクタの雄ねじ形態とは逆向きであってもよい。当然ながら、第1および第2のキー付きコネクタがそれぞれ雌雄ねじ形態として構成される本開示の実施形態が存在する。
【0016】
本開示のこれらおよび他の態様および利点は、本開示の以下の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0017】
本開示の以下の詳細な説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の構造的構成要素を含む可能な完全な薬剤送達装置の斜視図である。
【
図2】キャップが取り外されてカートリッジホルダへのペンニードルの取り付けを可能にする状態の、
図1の装置の斜視図である。
【
図4】キー付きコネクタが互いに一致し、部分的に係合している、本開示の一実施形態の断面側面図である。
【
図5A】用量設定および送達機構の近位端の1つの可能なキー付きコネクタの側面図である。
【
図6A】用量設定および送達機構の近位端の別の可能なキー付きコネクタの側面図である。
【
図7A】用量設定および送達機構の近位端の別の可能なキー付きコネクタの側面図である。
【
図8】2つの同一のカートリッジホルダと、各々が2つの異なるキー付きコネクタを有する2つの異なる用量設定および送達機構ハウジングとの切頭断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願において、「遠位部/端部」という用語は、装置の使用に従って患者の送達/注射部位から最も遠くに位置する装置の部分/端部、または構成要素もしくはその部材の部分/端部を指す。これに対応して、「近位部/端部」という用語は、装置の使用に従って患者の送達/注射部位に最も近い位置にある装置の部分/端部、またはその部材の部分/端部を指す。
【0020】
本開示は、いくつかの薬剤送達装置、例えば注射装置に適用可能である。1つの可能な注射装置は、
図1~
図3に示すペン型設計であって、ペン型注射設計10は、カートリッジ8(
図3)を保持するカートリッジホルダ2に接続された用量設定機構3を有し、カートリッジホルダ2は、ニードルコネクタ7を有する。注射装置10は、用量設定機構30を有し、ハウジング3の窓3aを通して0を示す印40によって示されるようにゼロ用量状態で示される。ハウジング3は、その近位端で、ねじ形態3bbを有するものとして示されているキー付きコネクタ3b内で終端する。
【0021】
図3は、カートリッジホルダ2および近位ニードルコネクタ7を露出させるためにキャップ1が取り外された装置10を示す。ペンニードル4は、典型的には、ダブルエンドニードルカニューレ6がカートリッジホルダ2内に配置されたカートリッジ8に収容された薬剤との流体連通を達成することができるように、ハブ5とのスナップ嵌合、ねじ、ルアーロック、または他の固定取り付け部を介してニードルコネクタ7に取り付けられる。カートリッジ8は、隔壁8aによって、近位端で密封され、反対側の遠位端に摺動ピストン9を有する。
【0022】
図4は、カートリッジホルダ2が、ハウジング3のキー付きコネクタ3cと一致するキー付きコネクタ2aを有する本開示の一実施形態を示す。
【0023】
図5A~
図7Bは、各々がハウジング3の近位端に位置する異なるキー付きコネクタ3b、3cおよび3dを有する3つの異なる用量送達機構ハウジング3が存在する本開示の可能な実施形態を示す。
図5B、
図6Bおよび
図7Bは、ハウジング3を示さずに、キー付きコネクタのみを斜視図で示す。
図5A~
図7Bのキー付きコネクタの各々は、雄コネクタとして示されており、各々は異なるねじ形態3bb、3cc、および3ddを有する。各キー付きコネクタは、同じコア直径(CD)を有するが、
図5A、
図6Aおよび
図7AにD
1、D
2およびD
3として示される、異なる外ねじ直径(D)を有する。さらに、3つの異なるキー付きコネクタ3b、3c、および3dの各々は、異なるねじ幅(W)、すなわちW
1、W
2、およびW
3を有する雄ねじ形態を有し、ここで、示されている実施形態では、W
3>W
2>W
1である。ねじ3bb、3cc、および3ddもまた、示されているキー付きコネクタの各々が同じCDを有する場合であっても、それぞれ異なる幾何学的形状を有する。実際、キー付きコネクタはすべて同じCD、同じD、および同じWを有することができるが、ねじの幾何学的形状はすべて異なる可能性がある。別の言い方をすれば、キー付きコネクタ3bと対応する雌のキー付きコネクタ適合継手は、同じCD、D、およびWを有するが異なるねじ幾何学的形状を有するキー付きコネクタの取り付けを可能にしない(防止する)。
【0024】
図8は、2つの同一のカートリッジホルダ2と、各々が2つの異なるキー付きコネクタ3cおよび3c’を有する2つの異なる用量設定および送達機構ハウジング3および3’と、の切頭断面側面図を示す。
図8の上側の図において、キー付きコネクタ3cおよび2aは一致しており、したがって、ハウジング3とカートリッジホルダ2とを互いに接続することができる。
図8の下の図では、キー付きコネクタ3c’は3cまたは2aとは異なり、したがってハウジング3’はカートリッジホルダ2に接続することができない。
【0025】
いくつかの状況では、製造効率は、薬剤送達装置用のキー付きコネクタのセットを設計するときに、どのキーパラメータが一定に保たれるかを決定し得る。例えば、キー付きコネクタのセットについてCDを同じに保ち、ねじの幾何学的形状Dおよび/またはWのみを変えることが望ましい場合がある。
【0026】
本開示は、カートリッジホルダ2などの薬剤ホルダを含み、ホルダの遠位端にはキー付きコネクタ2aがあり、キー付きコネクタ2aは、対応するキー付きコネクタ、すなわち、3b、3cまたは3dとの接続を形成するように適合し、係合を可能にする。繰り返すが、ホルダ上の対応するキー付きコネクタは、W、CD、Dのパラメータおよびねじの幾何学的形状がすべて、用量送達機構の近位端に位置するキー付きコネクタと一致することを必然的に必要とする。これらのパラメータの1つが異なっていれば、薬剤ホルダを、一致しない用量送達機構にしっかりと接続することはできない。
【0027】
装置10の特定の設計は、スナップ要素33と用量セレクタ35との相互作用を介して所定の固定用量のうちの1つまたは複数の設定を可能にする。用量ノブおよびスナップ要素の回転は、用量設定中に生じ、ハウジング3に対するものである。用量送達処置の開始中、用量ノブ31は近位方向に押圧され、用量ノブおよび用量セレクタをスナップ要素に対して軸方向に移動させる。
【0028】
装置10を含むほとんどのペン型注入器の用量設定および送達機構の一部は、
図3に示すようにピストンロッド42である。そのようなピストンロッドは、通常、非円形断面を有し、ピストンロッドが回転するのを防止するが近位方向に直線的に移動することを可能にするように設計された2つの平坦面を有する。ナット36およびクラッチ32は、スプライン接続を介して用量設定機構のアセンブリ中に互いに恒久的にスプライン結合される。スプライン接続は、クラッチ32およびナット36が用量設定および用量送達の両方の間に常に互いに回転可能に固定されることを保証する。このスプライン接続はまた、クラッチおよびナットが互いに対して軸方向に移動することを可能にする。摺動接続は、ナットとピストンロッドの外面との間のねじのピッチと、用量スリーブと本体との間のねじのピッチとの差を補償するために必要である。ドライバとピストンガイドとの間のねじは、ピストンロッドとナットとの間のねじと基本的に同じピッチを有する。
【0029】
ナット36の近位端は、ピストンロッド42のねじ60と一致する雌ねじ70を有する。クラッチ32の遠位端は、用量ボタン72として構成され、スナップロック、接着剤および/または音波溶接も含み得るコネクタの係合によって、用量ノブ31の遠位端に恒久的に取り付けられる。この接続は、クラッチが用量設定および用量送達の両方の間に用量ノブに回転および軸方向の両方で固定されることを保証する。
【0030】
ピストンロッド42の末端近位端には、ディスクまたは足部42aと接続するスナップ嵌合として示されるコネクタ62がある。ピストンロッド42の遠位端には、拡大セクション63として示されている、用量設定機構の最後の用量特徴部がある。この拡大セクション63は、カートリッジ8内に残っている薬剤の量が次に高い所定の用量設定よりも少ない場合に、ねじ60の周りのナット36の回転を停止するように設計されている。換言すれば、ユーザがカートリッジ内に残っている薬剤の量を超える所定の固定用量設定のうちの1つを設定しようとする場合、拡大セクション63は、ユーザが所望の所定の固定用量設定に到達しようとするときにナットがねじ60に沿ってさらに回転するのを防止するハードストップとして作用する。
【0031】
ピストンロッド42は、ピストンロッドガイド43の中心の非円形通過貫通孔内に配置されているため、用量設定および用量送達の両方の間、ハウジング3に対して非回転状態に保持される。ピストンロッドガイドは、回転方向および軸方向の両方でハウジング3に固定されている。この固定は、ピストンロッドガイドが図示するようにハウジング3とは別個の構成要素である場合に達成することができ、またはピストンロッドガイドをハウジングと一体化することができる。ピストンロッドガイド43はまた、ねじりばね90として示される回転付勢部材の近位端に係合し、その機能は以下で説明される。回転付勢部材のピストンロッドガイドへのこの接続は、一端をハウジングに対して回転固定位置に固定する。
【0032】
回転付勢部材、例えばねじりばね90の遠位端は、ドライバ41に接続されている。ドライバ41は、ドライバの遠位外面上のスプライン接続を介して、用量スリーブ38の内面に接続されて回転可能に固定される。ドライバ41の外面の近位端には、ピストンロッドガイド43の内側遠位面の一致するねじと係合するねじ67がある。
【0033】
ドライバとピストンガイドとの間のねじは、用量スリーブとハウジングとの間のねじとは著しく異なるピッチを有する。ナットおよびドライバは、用量設定および用量取消の両方の間、一緒に回転し、したがって、それらは本質的に同じ軸方向運動を行う。しかしながら、この動きは互いに独立している、すなわち、ナットは、クラッチにより回動されてピストンロッドへねじによる軸方向移動を行い、一方、ドライバは、用量スリーブにより回動されてピストンガイドへねじによる軸方向移動を行う。ドライバは注射中も回転しているため、注射中に近位方向に能動的に移動する。しかし、ナットは注射中に回転せず、したがって能動的な軸方向移動を行わない。ナットは、ドライバによって軸方向に押されているため、注射中に近位方向にのみ移動している。非回転ナットを押す回転ドライバは、ナットとのねじ係合によってピストンロッドが前方に押されるため、注射を引き起こす。
【0034】
ねじりばねがドライバ41に取り付けられ、ドライバが用量スリーブ38に回転可能に固定されているので、用量設定中の用量スリーブの第1の方向への回転は、ねじりばねが用量スリーブに反対の第2の方向に逆回転力を及ぼすようにねじりばねを巻き付ける。この逆回転力は、用量スリーブを用量取消方向に回転させるように付勢する。
【0035】
次に、本開示による完全な注射装置10および用量設定機構30の機能を説明する。注射装置10は、再使用可能または半再使用可能な装置としてユーザに提供される。半再使用可能とは、薬剤の新しいカートリッジを含む新しい薬剤カートリッジホルダ3がハウジング3に接続されるたびに、ハウジング3に収容された用量設定および送達機構30のみが再使用されることを意味する。再使用可能な装置は、ユーザが薬剤の新しいフル装填のカートリッジを挿入した古いまたは以前に使用されたカートリッジホルダの再取り付けを可能にする。本開示の好ましい構成は、カートリッジ内の薬剤が排出または空にされるたびに、ユーザが、ホルダから取り外しできない空のカートリッジを収容するカートリッジホルダを取り外す必要がある半再使用可能な設計である。したがって、ユーザは、ホルダおよび空のカートリッジを一緒に廃棄することになる。ハウジング上のキー付きコネクタがカートリッジホルダの遠位端のキー付きコネクタと一致すれば、新しいカートリッジホルダおよびカートリッジアセンブリがハウジングに接続される。
【0036】
用量設定機構がプライミングされると、ユーザは、その後に、適切な用量停止が起こり、所望の用量値が窓3aに現れるまで、用量ノブがプライミング停止部を過ぎて回転されることを除いて、プライミングに使用されるのと同じステップを繰り返すことによって所望の固定用量を選択して設定する。場合によっては、所定の用量設定間をダイヤルするときに窓に印を表示しないことが好ましく、他の場合では、固定用量設定間の設定不可能な用量位置を示す印を窓に表示することが望ましい。
【0037】
所定の用量設定のうちの1つが用量設定機構上でダイヤルされると、ユーザは近位方向に軸力を加えて用量送達処置を開始することができる。ユーザによって加えられる軸力は、第2の付勢部材91によって加えられる遠位方向の力に打ち勝ち、用量ノブ31、クラッチ32および用量セレクタ35を、スナップ要素33およびハウジング3に対して近位方向に軸方向に移動させる。この初期移動は、クラッチおよび用量ノブを、浮動スプライン34と用量セレクタ35内のスプラインとの間のスプライン接続を介してハウジングに回転可能に固定する。用量セレクタと浮動スプライン34との間のスプライン接続は、用量セレクタ35が用量ノブ31と共に浮動スプライン34に対して軸方向に移動しても、用量設定中および用量送達中に係合したままである。
【0038】
ユーザが用量送達処置の継続中に用量ノブ31および用量ボタン72の両方に軸力を維持すると、クラッチ32はスナップ要素の遠位端に当接し、スナップ要素を近位方向に軸方向に移動させる。クラッチはスナップ要素を押す。スナップ要素は用量スリーブに固定されているため、クラッチは用量スリーブを押す。用量スリーブが本体に対して十分に高いピッチを有するねじを有するので、用量スリーブへの軸力は、用量スリーブおよびしたがってスナップ要素を本体に対して回転させ、本体に対して回転することによって、用量スリーブは近位方向に移動する。用量セレクタは、ハウジング内に摺動するが、ハウジングとのスプライン係合に起因してハウジング3に対して回転しない。用量スリーブ38の回転はまた、ピストンロッドガイド43とのねじ接続へのドライバ41の回転を引き起こし、ピストンロッドを近位方向に駆動して、ねじりばね90の同時の張力解除をもたらす。ドライバは、ピストンロッドを直接駆動しない。ドライバが回転すると、ドライバは近位方向に移動し、ナットを前方に押す。ナットが回転しないとき、ドライバはナットおよびピストンロッドを前方に押す。
【0039】
ナット36は、用量ノブ、浮動スプラインおよびハウジングの回転的に固定された関係を通じてハウジングに回転的に固定されたクラッチ32との回転的に固定された関係のために、用量送達中に回転しない。したがって、ナットは、ピストンロッド上の平坦部203と係合する非円形開口部64によってピストンロッドが回転するのを防止されるため、ナットと共にピストンロッド42を軸方向にのみ移動することができる。ピストンロッドは、用量設定中にナットがピストンロッドに対して最初に並進した距離と同じ距離だけ軸方向に移動する。ピストンロッドの軸方向移動はまた、摺動ピストン9を固定カートリッジ8の内壁に対して軸方向に移動させ、用量設定手順中に設定された所定の固定用量に相当する量の薬剤をニードルカニューレ6から押し出す。
【0040】
ユーザが用量ノブへの軸力を除去することによって用量送達処置を停止または休止すると、フェールセーフ機構が作動する。軸力の除去により、圧縮ばね91が用量ノブを遠位方向に付勢する。ユーザが2つの所定の固定用量設定間で用量送達を休止する場合、用量セレクタおよび用量ノブの軸方向移動を停止させる用量セレクタ内の突出リブのために、用量ノブおよび軸方向に固定された用量セレクタの両方が近位方向に移動することが防止される。この突出リブがなければ、用量セレクタは、用量ノブがスナップ要素と再係合するように遠位に移動し、したがって、用量ノブ、クラッチおよびナットをスナップ要素との回転係合状態に戻す。次いで、ドライバを介してスナップ要素に及ぼされるトルクは、ナットを逆回転させ、したがって設定用量を未知の量だけ減少させる。この逆回転は、次に低い所定の固定用量設定に達するまで継続し、対応する用量停止が逆回転を停止する。したがって、休止された用量送達手順の再開は、設定された用量の未知の減少なしに継続し、したがって最初に設定された所定の用量を送達することを可能にする。
【0041】
上述され、図面に示す実施形態は、安全アセンブリの可能な設計の非限定的な例としてのみ見なされるべきであり、そのような設計は多くの方法で修正されてもよく、依然として本開示の範囲内であり得ることを理解されたい。
【国際調査報告】